説明

光学シート、光学フィルター及び映像表示装置

【課題】色むらを発生を抑制し、質の良い映像を提供することのできる光学シートを提供する。
【解決手段】映像源より観察者側に配置され、該映像源側から入射した光を制御して観察者側に出射する、複数の層を有する光学シート19であって、基材層11と、該基材層に積層された光学機能層12とを備え、光学機能層は、光を透過可能にシート面に沿って並列された光透過部13と、該光透過部間に光を吸収可能に並列された光吸収部14と、を有し、光吸収部は、シート厚方向断面において基材層とは反対側の面に曲線又は折れ線状に凹んだ窪みが形成され、光透過部は、シート厚方向断面において基材層とは反対側の面の両端部が曲線又は2以上の角を有する折れ線状であるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シート、該光学シートを備えた光学フィルター、及び映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像を観察者に出射する映像表示装置には、映像源と、該映像源からの映像光の質を高めて観察者に出射するための各種機能を有する層を具備する光学フィルターと、が備えられている。
【0003】
例えば、映像源としてプラズマディスプレイパネル(PDP)を有する映像表示装置であるプラズマテレビでは、観察者側が明るい場合、コントラストが不十分となって画像品質が低下することがある。そのために、光学フィルターの中の1つの層として、コントラストを向上させるため、光を透過可能な光透過部と光を吸収可能な光吸収部とを有して外光を適切に遮蔽することができる光学機能層が設けられることがある。なお、コントラストとは、画面に白黒の表示をしたときの最大輝度となる白い部分の輝度(白輝度)と、最小輝度となる黒い部分の輝度(黒輝度)との比を意味する。
【0004】
例えば特許文献1には、フィルターベースと、前記フィルターベースの一面に形成され、透明樹脂材質の基盤と前記基盤の一面に平行に配列された多数の楔形ブラックストライプとを有する外光遮蔽層と、を備えることを特徴とするディスプレイ装置用フィルターが開示されている。
【0005】
特許文献1の例えば図3、図4からわかるように、ここに記載されている楔形の外光遮蔽層(光吸収部)のうち、入光側の面は平滑であり、光が透過する部位と面一な構造となっている。しかしながら、外光遮蔽層をより効率的に製造しようとするとき、ここには液状の組成物を充填し、余分な組成物をブレードで掻き取り、残りを硬化させるという手法が取られることが多い。この場合、外光遮蔽層(光吸収部)の面には凹状の部位(窪み)が形成される。これは充填された組成物が硬化するときに体積が収縮したり、ブレードによる掻き取りが主要な原因である。
【0006】
すなわち、このような光吸収部には特許文献2や特許文献3に記載のように、その面に窪みが生じるような形状となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−189867号公報
【特許文献2】特開2009−80198号公報
【特許文献3】特開2008−046644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献2、3に記載されたような光学シートについて、その光吸収部の窪みが観察者側に向くように配置して映像表示装置にしたとき、画面に虹状の色むらが発生することがあった。このような色むらは映像の質を高める観点から改善する必要がある。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、色むらの発生を抑制し、質の良い映像を提供することのできる光学シートとすることを課題とする。また、該光学シートを備える光学フィルター及び映像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
発明者らは鋭意検討の結果、光吸収部に形成される窪みと、これに隣接する光透過部の角部との関係が色むら発生の一因であるとの知見を得た。当該知見に基づき、以下の発明を完成させた。
【0012】
請求項1に記載の発明は、映像源(5)より観察者側に配置され、該映像源側から入射した光を制御して観察者側に出射する、複数の層を有する光学シート(19)であって、基材層(11)と、該基材層に積層された光学機能層(12)とを備え、光学機能層は、光を透過可能にシート面に沿って並列された光透過部(13)と、該光透過部間に光を吸収可能に並列された光吸収部(14)と、を有し、光吸収部は、シート厚方向断面において基材層とは反対側の面に曲線又は折れ線状に凹んだ窪み(17)が形成され、光透過部は、シート厚方向断面において基材層とは反対側の面の両端部が曲線又は2以上の角を有する折れ線状である、光学シートである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学シート(19)において、光透過部(13)の弾性率は10MPa以上2000MPa以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光学シート(19)において、光吸収部(14)の窪み(17)の深さが0.5μm以上6.0μm以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート(19)の光学機能層(12)のうち、窪み(17)が形成された側の面に粘着剤を含んでなる粘着剤層(23)が形成されている光学フィルターである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光学フィルター(10)において、粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は0.1MPa以上0.8MPa以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の光学フィルター(10)において、粘着剤層(23)の厚さが20μm以上50μm以下であることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学フィルター(10)において、最外層に反射防止層(26)又は防眩層を有することを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれか一項に記載の光学フィルター(10)において、所定の波長の光の透過を抑制する機能を有する波長フィルタ層(24)を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項4〜8のいずれか一項に記載の光学フィルター(10)において、電磁波を遮蔽する機能を有する電磁波遮蔽層(21)を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の発明は、プラズマディスプレイパネル(5)と、プラズマディスプレイパネルより観察者側に配置された請求項4〜8のいずれか一項に記載の光学フィルター(10)と、を備え、光学フィルターの光吸収部(14)の窪み(17)が観察者側に向けられていることを特徴とする映像表示装置(1)である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光学シート、該光学シートを備える光学フィルター、映像表示装置によれば、画面に生じる色むらを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】1つの実施形態にかかる光学シートを含む光学フィルターの断面の一部を概略的に示した図である。
【図2】図1に示した光学機能層の一部を拡大して示した断面図である。
【図3】光透過部の端部形状を説明する図である。
【図4】光透過部の端部形状の他の例を説明する図である。図4(a)は楕円弧の例、図4(b)は折れ線状の例である。
【図5】光吸収部の他の例を概略的に示した断面図である。図5(a)は三角形である例、図5(b)は斜辺が折れ線状の例、図5(c)は斜辺が曲線状の例である。
【図6】光学機能層の製造方法の一例について、一部の工程を概略的に説明する図である。
【図7】光学機能層の製造方法の一例について、他の工程を概略的に説明する図である。
【図8】1つの実施形態にかかる映像表示装置の構成を概略的に示した図である。
【図9】1つの実施形態にかかる映像表示装置のうち、PDP及び光学フィルターの構成を概略的に示した図である。
【図10】光学機能層を通る映像光の光路例を概略的に示した図である。
【図11】色むらについて説明するための光路例を概略的に示した図である。
【図12】実施例1に用いたダイヤモンドバイトの先端部(切削チップ)形状を説明する図である。
【図13】実施例2に用いたダイヤモンドバイトの先端部(切削チップ)形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0025】
図1は、1つの実施形態にかかる光学シート19を含む光学フィルター10の断面の一部を示し、その層構成を模式的に表した図である。この光学フィルター10は、後述するように紙面左が映像源側、紙面右が観察者側となる。また、図1では、見易さのため、繰り返しとなる構成及び説明しない構成の符号は一部省略している場合がある(以下の図について同じ。)。
【0026】
光学フィルター10は、映像源より観察者側に配置され、該映像源側から入射した光を制御して観察者側に出射する部材である。光学フィルター10は、複数の層を有しており、ここに光学シート19を含んでいる。光学シート19は、図1に示したように、基材層11と、基材層11の観察者側の面上に形成された光学機能層12と、を有する。
また、図1に示した形態の光学フィルター10は、他の層として粘着剤層20、電磁波遮蔽層21、粘着剤層22、23、波長フィルター層24、ハードコート層25、反射防止層26を備えている。すなわち、光学シート19に各種機能を有する層が積層されて光学フィルター10とされている。
【0027】
光学シート19は、基材層11と光学機能層12とを有している。
基材層11は、光学機能層12を形成するための基材となる層である。基材層11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とした材料で構成されることが好ましい。基材層11がPETを主成分とする場合、基材層11には他の樹脂が含まれてもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。一般的な添加剤としては、フェノール系等の酸化防止剤、ラクトン系等の安定剤等を挙げることができる。ここで「主成分」とは、基材層を形成する材料全体に対して上記PETが50質量%以上含有されていることを意味する(以下、同様とする。)。
【0028】
ただし、基材層11を構成する材料の主成分は、必ずしもPETである必要なく、その他の材料でもよい。これには例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
なお、本実施形態では性能に加え、量産性、価格、入手可能性等の観点からは、PETを主成分とする樹脂によって基材層11を構成した。
【0029】
光学機能層12は、映像源側からの映像光の光路を制御するとともに、迷光や外光を適切に吸収する機能を有する層である。光学機能層12は、図1に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する形状を備える。図1からわかるように、光学機能層12は、シート面に沿った方向に並列される光透過部13を備え、隣接する光透過部13間に光吸収部14が配置されている。図2には、光学機能層12の一部を拡大し、3つの光吸収部14とこれに隣接する光透過部13を拡大して示した。図1、図2及び適宜示す図を参照しつつ光学機能層12についてさらに説明する。
【0030】
光透過部13は、映像光を透過させる機能を有する部位で、断面形状略台形とされ、その短い上底及び長い下底が光学シート19のシート面に沿う方向に配置されている。ただし、光透過部13の短い上底側の面(出光面)において、該短い上底の少なくとも両端部は、角が除去されたような形状であり、断面で曲線状又は2以上の角を有する折れ線状になっている。従って厳密には光透過部13の断面形状は台形とはなっていない。図3には、図2にIIIで囲んだ部位の拡大図を示した。
【0031】
図3からわかるように、本実施形態では、光透過部13のシート面に沿った面のうち、短い上底側となる面(光吸収部14の窪み17が形成される側の面)ではその両端部の角が円弧状に形成され、いわゆるRが取られている。これにより色むらの発生を抑制することができる。その考えられる理由については後で詳しく説明する。
ここで、Rの大きさは特に限定されることはないが、後述する光吸収部14の窪み17の深さと同程度が好ましい。すなわち、0.5μm以上6.0μm以下であることが望ましい。さらに好ましくは窪み17の深さと同じである。
【0032】
本実施形態では上記のように角部を円弧で形成したが、角部が何らかの形状により除去されているような形態とされ、曲線、又は2以上の角を有する折れ線状であれば色むらを抑制することができる。図4に他の例を示した。図4は、当該他の例における図3に相当する図である。
図4(a)は光透過部13’のシート面に沿った面のうち、短い上底側の面(光吸収部14’の窪みが形成される側の面)でその両端部の角が楕円の弧により形成されている例である。図4(a)からわかるように、長軸側の半径をX、短軸側の半径をYとする楕円の弧である。このX、Yの大きさは特に限定されることはないが、Xの大きさは2μm以上15μm以下が好ましい。さらに好ましくは光吸収部14’の窪みがある側の幅(図2にIIaに相当する大きさ。)の半分である。一方、Yの大きさは後述する光吸収部14’の窪みの深さと同程度が好ましい。すなわち、0.5μm以上6.0μm以下であることが望ましい。さらに好ましくは窪みの深さと同じである。光吸収部の窪みについては、あとで説明する。
図4(b)は、光透過部13’’のシート面に沿った面のうち短い上底側の面(光吸収部14’’の窪みが形成される側の面)でその両端部の角が2つの折れ線状にされているような形状で、いわゆる面取りがされている例である。図4(b)からわかるように、大きさCの面取りである。このCの大きさは特に限定されることはないが、光吸収部14’’の窪みの深さと同程度が好ましい。すなわち、0.5μm以上6.0μm以下であることが望ましい。さらに好ましくは窪み17の深さと同じである。
【0033】
以上のように光透過部のシート面に沿った面のうち、光吸収部の窪みが形成される側の面でその角部が除去されるように、曲線状、又は2以上の角を有する折れ線状とされている。これにより色むらの発生を抑制することができる。ここでは、形状の例を3つ挙げたがこれに限定されることなく、当該光透過部の端部が曲線状又は2以上の角を有する折れ線状にされていればよい。
【0034】
光透過部13は、屈折率がNpであり、このような光透過部13は、以下に説明する光透過部構成組成物を硬化させることによって形成することができる。なお、屈折率Npの値は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。
【0035】
光透過部構成組成物としては、例えば、光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)、金型離型剤(S1)、及び光重合開始剤(I1)を配合したものが好ましく用いられる。
【0036】
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
【0037】
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0038】
また、上記金型離型剤(S1)としては、例えば、テトラデカノールエチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル/ラウリルジメチルアミンの塩、テトラデカノールエチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル/ジメチルステアリルアミンの塩、ラウリルアルコールエチレンオキシド2モル付加物のリン酸エステル/ラウリルアミンのエチレンオキシド10モル付加物の塩、テトラデカノールエチレンオキシド2モル付加物のリン酸エステル/ステアリルアミンのエチレンオキシド10モル付加物の塩およびステアリルアルコールエチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル/ステアリルアミンのエチレンオキシド15モル付加物の塩等を挙げることができる。
【0039】
また、上記光重合開始剤(I1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらのうち光透過部13の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドである。なお、上記光重合開始剤(I1)は、光透過部構成組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上5.0質量%以下含まれていることが好ましい。
【0040】
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)、金型離型剤(S1)、及び光重合開始剤(I1)は、それぞれ、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
また必要に応じて、光透過部構成組成物中に、塗膜の改質や塗布適性のため、種々の添加剤としてシリコーン系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を添加することも可能である。
【0042】
次に、図2に戻り、光吸収部14について説明する。光吸収部14は、隣り合う光透過部13の間に配置され、図1、図2に表れる断面において略台形である要素である。当該略台形断面の長い下底に相当する面が光透過部13の短い上底側に並列されている。ただし、光吸収部14の長い下底に相当する面(観察者側となる面)は曲線状又は折れ線状に凹んでおり、光吸収部14は窪み17を有する。ここで、「窪み」とは、光吸収部14の当該長い下底の両端を結ぶ線(図2にIIで表わした破線)に対して、光吸収部14の長い下底が光吸収部14の短い上底側に窪んだ部分を意味する。窪み17の深さは、最も深い所において、0.5μm以上6.0μm以下であることが好ましい。窪み17の深さが0.5μmより小さい場合は、色むらが比較的起こり難いが、このような光吸収部はその製造が難しい。一方、窪み17の深さが6.0μmを超える場合は、窪み17を有する側の面に粘着剤を塗布する場合、その後オートクレーブ処理をしても粘着剤が窪みに追従できず、気泡を巻き込む虞がある。また、当該略台形断面における斜辺は、光学機能層12のシート面の法線方向に対して0度以上10度以下の角度をなしていることが好ましい。なお、斜辺の角度が0度に近い場合は、実質台形断面ではなく矩形断面となる。
【0043】
これまでの説明では、光吸収部の断面形状が、直線状の二つの斜辺を有する略台形である形態について説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。光吸収部のその他の形態例の断面を図5に示した。図5(a)は光吸収部14aの断面形状が略三角形の例、図5(b)は光吸収部14bの斜辺が折れ線状とされた例、図5(c)は光吸収部14cの斜辺が曲線状とされた例である。
【0044】
図5(a)に示した例では、光吸収部14aの断面形状が略三角形となっている。ただし、当該略三角形の底辺に相当する面(基材層側とは反対側となる面)には窪みを有するため、底辺は直線状とはならない。また、当該略三角形断面の斜辺は光学シートのシート出光面の法線に対して角度θ1をなしている。θ1は0度より大きく10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。
【0045】
図5(b)に示した例では、光吸収部14bの断面における斜辺(光透過部13bの斜辺)は、1つの辺からではなく、2つの辺から構成されている。すなわち断面において折れ線状の斜辺を有している。詳しくは、長い下底側(紙面右側)の斜辺は光学シートのシート出光面の法線に対して角度θ2をなしている。一方、短い上底側(紙面左側)に配置される斜辺は光学シートのシート出光面の法線に対して角度θ3をなしている。この角度は、θ2>θ3の関係であるとともに、いずれも0度以上10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。また、図5(b)の例は、一方の斜辺が2つの斜辺により構成されている例であるが、さらに多くの辺で折れ線状が構成されてもよい。
【0046】
図5(c)に示した場合には、光吸収部14cの断面における斜辺(光透過部13cの斜辺)は曲線状で構成されている。このように光吸収部14cにおける断面形状略台形のうちの斜辺が曲線状であってよい。この場合でも、当該曲線と光学シートのシート出光面の法線とのなす角は、光吸収部の長い下底側(紙面右側)より短い上底側(基材層11側、紙面左側)の方が小さいことが好ましい。さらにその角度もいずれの部分でも0度より大きく10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。ここで、曲線のある部分が光学シートのシート出光面の法線との成す角は、曲線を10等分し、各隣接する端部同士を結ぶ線と、光学シートのシート出光面の法線との成す角により定義される。
【0047】
その他、光吸収部の形状は本実施形態のものに限定されることはなく、外光を適切に吸収することが可能であれば適宜変更してもよい。これには、例えば断面形状が略矩形である場合等を挙げることができる。ただし、いずれの形態の場合も、基材層と反対側となる側の面は曲線又は折れ線状に凹んだ窪みを有する。
【0048】
また、光吸収部14は、光透過部13の屈折率Npより小さい屈折率Nbを有する所定の材料により構成されている。このように光透過部13の屈折率Npと光吸収部14の屈折率NbとをNp>Nbとすることにより、光吸収部14と光透過部13との界面で、スネルの法則に基づいて所定の条件で光透過部13に入射した映像源からの映像光を適切に反射させる。また、スネルの法則に基づき、当該界面から光吸収部14に入射した光は吸収される。NpとNbとの屈折率の差は特に限定されるものではないが、0より大きく0.06以下であることが好ましい。さらに好ましくは0より大きく0.02以下、さらには0.003より大きく0.015以下であることが好ましい。正面輝度や視野角を重要とする場合にはこの範囲内で大きい方が好ましく、黒輝度を下げ、コントラストを重要とする場合にはこの範囲で小さい方が好ましい。
本実施形態では上記のようにNp>Nbの関係が好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、光透過部と光吸収部との屈折率を同じとしたり、光透過部の屈折率を光吸収部の屈折率よりも小さく形成したりすることも可能である。
【0049】
本実施形態における光吸収部14は、光吸収粒子16とバインダ15とを含む光吸収部構成組成物が光透過部13間に充填されることにより構成されている。すなわち、バインダ15の中に光吸収粒子16が分散されている。これにより、光透過部13と、光吸収部14との界面で反射せずに光吸収部14の内側に入射した映像光は光吸収粒子16で吸収することができる。さらには同様にスネルの法則により所定の角度で入射した観察者側からの外光を適切に吸収することも可能であり、コントラストが向上する。
このときバインダ15が上記の屈折率Nbである材料により構成される。当該バインダとして用いられるものは特に限定されないが、例えば、光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)及び光重合開始剤(I2)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0050】
上記光硬化型プレポリマー(P2)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびブタジエン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0051】
また、上記反応性希釈モノマー(M2)としては、例えば、単官能モノマーとして、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ベンジルメタクリレ−ト、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、多官能モノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
【0052】
また、上記光重合開始剤(I2)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置および光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。本発明において光硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(I2)の量は、光硬化型樹脂組成物の硬化性およびコストの観点から、光硬化型樹脂組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0053】
これらの光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)および光重合開始剤(I2)は、それぞれ、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
具体的には、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびメトキシトリエチレングリコールアクリレートからなる光重合性成分(詳しくは、光硬化型プレポリマーおよび反応性希釈モノマー)を、屈折率、粘度、あるいは光学機能層12の性能への影響等を考慮し、任意に配合して用いることができる。
【0055】
なお、添加剤として、シリコーン、消泡剤、レベリング剤および溶剤等を光硬化型樹脂組成物に添加してもよい。
【0056】
光吸収粒子16は、光吸収部構成組成物中に含まれ、光吸収部14を構成したとき、迷光や外光を吸収するように作用する。
【0057】
光吸収粒子16としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられる。ただし、光吸収粒子16はこれに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を光吸収粒子16として使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられる。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましく用いられる。こうした着色粒子は、着色粒子の平均粒径は、1.0μm以上20μm以下であることが好ましい。ここで「平均粒径」とは、質量分布法による粒度測定で得られるものを意味する。
【0058】
なお、光を吸収させるための手段は、本実施形態のように光吸収粒子による方法に限定されるものではない。他には例えば、光吸収部を構成する光吸収部構成組成物全体を顔料や染料によって着色し、全体が着色された光吸収部を形成することが挙げられる。
【0059】
光吸収部14は、上記光吸収部構成組成物を用いて、後に詳述するようにして形成することができる。
【0060】
図1に戻り、光学フィルター10に備えられる他の層について説明する。
粘着剤層20は、粘着剤が含まれた粘着剤組成物により構成された層である。粘着剤としては、必要な光透過性、粘着性、耐候性を得ることができる、公知のものを用いることができる。また、粘着剤組成物には紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、ネオン線吸収剤、および調色色素などを含める場合もある。
【0061】
ここで粘着剤とは、接着剤の一種をいい、接着剤のうち、接着の際には単に適度な加圧(通常、軽く手で押圧する程度)のみにより、表面の粘着性のみで接着可能なものをいう。粘着剤の接着力発現には、通常特に、加熱、加湿、放射線(紫外線や電子線等)照射といった物理的なエネルギーないし作用は不要で、かつ重合反応等の化学反応も不要である。又、粘着剤は、接着後も再剥離可能な程度の接着力を経時的に維持し得るものである。
【0062】
粘着剤層20は最も厚い部分で、その厚さが20μm以上50μm以下であることが好ましい。粘着剤層20の厚さが20μmより薄いと、凹凸への追従性が低下して、気泡を巻き込む不具合が発生し、50μmを超えると粘着剤組成物を均一に塗布することが困難になる。
さらに、粘着剤層20の粘着剤組成物の貯蔵弾性率は0.1MPa以上0.8MPa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率がこれより大きいと、被粘着層の凸凹への粘着剤の追従性が低下し、気泡を巻き込む不具合が発生する虞がある。また、貯蔵弾性率がこれより小さいと粘着剤組成物のはみ出しによる汚れの不具合が発生する等、取扱いに不便が生じることがある。
【0063】
次に電磁波遮蔽層21について説明する。電磁波遮蔽層21は、その名称が示す通り、電磁波を遮断する機能を有する層である。当該機能を有する層であれば、電磁波を遮断する手段は特に限定されるものではない。これには、例えば、図1からわかるように、透明基材21a上に銅メッシュ層21bが形成されているものを挙げることができる。銅メッシュ層21bの形成方法としては、例えばエッチング方式、印刷方式、蒸着方式、スパッタ方式等を挙げることができる。なお、銅メッシュ層21bを形成する方法として、透明基材21aと銅箔とを接着剤で積層した後にフォトリソグラフィー法を用いる(例えば、特開平11−145678号公報)場合には、当該接着剤組成物に後述する粘着剤層22と同様の酸化防止剤を添加することで、電磁波遮蔽層21の変色を防ぐことができる。透明基材21aとしては例えばPETを用いることが可能である。
【0064】
粘着剤層22は、上記した粘着剤層20に加えて、次のように構成することが好ましい。すなわち、粘着剤層22は、電磁波遮蔽層21と光学シート19の基材層11との密着性を高くするという観点から、酸価を有する粘着剤を用いることが好ましい。酸価を有する粘着剤としては、例えば天然ゴムや合成樹脂のうち酸価を有するものが挙げられる。その中には、分子中にカルボキシル基を有する物質から成るものがあり、具体的には、透明性も併せてアクリル系粘着剤であることが好ましい。
【0065】
酸価を有するアクリル系粘着剤としては、公知の粘着剤として慣用されているものの中から、適度な接着力、透明性、塗工適性を有し、本発明の光学シートの透過スペクトルを実質的に変化させることの無いものを適宜選択する。
【0066】
酸価を有するアクリル系粘着剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものであって、炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。粘着剤層22に含まれる粘着剤の接着能力は、粘着剤分子中に存在するカルボキシル基が電磁波遮蔽層21の銅メッシュ層の表面に強く吸着することによって発現する。
【0067】
ここで使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸sec−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル及び(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。中でも、アクリル酸ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましく、更に、アクリル酸ブチルとアクリル酸2−エチルヘキシルを組み合わせて用いることが好ましい。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、通常はアクリル系粘着剤中に30.0質量部〜99.5質量部の量で共重合されている。
【0068】
また、アクリル系粘着剤を形成するカルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノブチル及びβ−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマーを挙げることができる。
【0069】
さらに、アクリル系粘着剤には、上記の他に、アクリル系粘着剤の特性を損なわない範囲内で他の官能基を有するモノマーが共重合されていても良い。他の官能基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル及びアリルアルコール等の水酸基を含有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド及びN−エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;N−メチロール(メタ)アクリルアミド及びジメチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基とメチロール基とを含有するモノマー;アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を含有するモノマー;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。この他にもフッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリルなどのほか、スチレン、メチルスチレン、ビニルピリジン等のビニル基含有芳香族化合物、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル化合物などを挙げることができる。
【0070】
さらに、アクリル系粘着剤には、上記のような他の官能基を有するモノマーの他に、他のエチレン性二重結合を有するモノマーを使用することができる。ここでエチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル及びフマル酸ジブチル等のα,β−不飽和二塩基酸のジエステル;プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル;ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物等を挙げることができる。
【0071】
また、上記のようなエチレン性二重結合を有するモノマーの他に、エチレン性二重結合を2個以上有する化合物を併用することもできる。このような化合物の例としては、ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0072】
さらに、上記のようなモノマーの他に、アルコキシアルキル鎖を有するモノマー等を使用することができる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどを挙げることができる。
アクリル系粘着剤の市販品としては、例えば、日本合成化学社製、商品名:「5 407」等が好適に用いられる。
【0073】
粘着剤層22は、酸化防止剤を含有することにより、酸価を有しつつも電磁波遮蔽層21の変色を防ぐことができる。酸化防止剤として用いられる化合物は、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄含有有機金属塩系酸化防止剤等から選択して用いることができる。この中でも電磁波遮蔽層21の銅メッシュ層の青色変色防止性能の点からベンゾトリアゾール系酸化防止剤であることが好ましい。
【0074】
上記ベンゾトリアゾール系酸化防止剤としては、少なくとも下記式(1)の構造を骨格として含むことを特徴とする化合物、並びに、そのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩が挙げられる。下記式(1)の構造に有していてもよい置換基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0075】
【化1】

【0076】
具体的には、1,2,3−ベンゾトリアゾール(1H−ベンゾトリアゾール)、1H−ベンゾトリアゾールナトリウム塩、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾールカリウム塩、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールカリウム塩、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾールアミン塩、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールアミン塩、2(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられ、中でも1,2,3−ベンゾトリアゾール(1H−ベンゾトリアゾール)が好ましい。
【0077】
粘着剤層22において、粘着力と銅メッシュ層の表面の変色防止の観点から、上記粘着剤100質量部に対して上記ベンゾトリアゾール系酸化防止剤を1質量部以上含むことが好ましい。酸化防止剤の含有量が上記範囲未満の場合、酸化防止剤を粘着剤層22に含有させても電磁波遮蔽層21の銅メッシュ層の変色を十分に防ぐことができない虞がある。
【0078】
また、特に粘着剤の酸価が1以上であり、かつ、粘着剤層22が、上記粘着剤100質量部に対して上記ベンゾトリアゾール系酸化防止剤を1質量部以上含むことが好ましい。
【0079】
さらに、粘着剤層22には、イソシアネート化合物等の硬化剤(架橋剤)、粘着付与剤、シランカップリング剤、充填剤等を配合することもできる。
【0080】
粘着剤層23は上記した粘着剤層20と同様のものを用いることができる。
【0081】
次に、波長フィルター層24について説明する。波長フィルター層24は、所定の波長の光の透過を抑制する機能を有する層である。透過を抑制されるべき波長は必要に応じて適宜選択することができる。波長フィルター層24の具体例としては、プラズマディスプレイパネル(PDP)から出射されるネオン線をカットしたり、赤外線、近赤外線や紫外線をカットしたりする層、色調を調整する層等を挙げることができる。以下に、近赤外線をカットする層(近赤外線吸収フィルター)、ネオン線をカットする層(ネオン光吸収フィルター)、色調を調整する層(色調調整フィルター)、及び紫外線をカットする層(紫外線吸収フィルター)について説明する。
【0082】
近赤外線吸収フィルターとしては、近赤外線吸収剤を有する市販のフィルム(例えば、東洋紡績社製、商品名No.2832)を用いたり、近赤外線吸収色素を粘着層や樹脂層へ含有させた組成物を成膜したり、あるいはこれを透明基材又は他の機能性フィルター上に塗布し、必要に応じて乾燥、硬化処理等を経て形成したものを用いることができる。
【0083】
近赤外線吸収色素としては、PDPが発光するキセノンガス放電に起因して生じる近赤外線領域、すなわち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するものを用いる。該帯域の近赤外線の透過率が20%以下、さらには10%以下であることが好ましい。同時に近赤外線吸収フィルターは、可視光領域、すなわち、380nm〜780nmの波長域で十分な光線透過率を有することが望ましい。
【0084】
近赤外線吸収色素としては、具体的には、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類の有機系近赤外線吸収色素、酸化タングステン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン等の無機系近赤外線吸収色素、を1種、又は2種以上を併用することができる。
【0085】
また、近赤外線吸収色素を分散するバインダ樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が用いられる。バインダ樹脂の乾燥、硬化方式としては、溶液(又はエマルジョン)からの溶媒(又は分散媒)の乾燥による乾燥固化方式、熱、紫外線、電子線などのエネルギーによる重合、架橋反応を利用した硬化方式、或いは樹脂中の水酸基、エポキシ基等の官能基と硬化剤中のイソシアネート基などとの架橋、重合等の反応を利用した硬化方式などが適用できる。
【0086】
ネオン光吸収フィルターは、光学フィルターがプラズマディスプレイ用として用いられる際に、PDPから放射されるネオン光、すなわちネオン原子の発光スペクトルを吸収するべく設置される。ネオン光の発光スペクトル帯域は波長550nm〜640nmのため、ネオン光吸収フィルターの分光透過率は波長550nm〜640nmにおいて50%以下になるように設計することが好ましい。ネオン光吸収フィルターは、少なくとも550nm〜640nmの波長領域内に吸収極大を有する色素として従来から利用されてきた色素を近赤外線吸収フィルターのところに挙げたようなバインダ樹脂に分散させた組成物を成膜したり、あるいはこれを透明基材又は他の機能性フィルター上に塗布し、必要に応じ乾燥、硬化処理等を経て形成したりすることができる。該色素の具体例としては、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系等を挙げることができる。当該バインダ樹脂としては、上記近赤外線吸収フィルターのところに挙げたような樹脂を用いることができる。
【0087】
色調調整フィルターは、パネルからの発光の色純度や色再現範囲、電源OFF時のディスプレイ色などの改善のため、ディスプレイ用フィルタの色を調整するためのものである。例えば色調調整色素をバインダ樹脂に分散させた組成物を成膜したり、あるいはこれを透明基材又は他の機能性フィルター上に塗布し、必要に応じ乾燥、硬化処理等を経て形成したりすることができる。色調調整色素としては、可視領域である380nm〜780nmに最大吸収波長を有する公知の色素から、目的に応じて任意に色素を組み合わせて使用することができる。色調調整色素として用いることのできる公知の色素としては、特開2000−275432号公報、特開2001−188121号公報、特開2001−350013号公報、特開2002−131530号公報等に記載の色素が好適に使用できる。さらにこのほかにも、黄色光、赤色光、青色光等の可視光を吸収するアントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の色素を使用することができる。当該バインダ樹脂としては、上記近赤外線吸収フィルターのところに挙げたような樹脂を用いることができる。
【0088】
紫外線吸収フィルターとしては、例えば、紫外線吸収剤をバインダ樹脂に分散させた組成物を成膜したり、あるいはこれを透明基材又は他の機能性フィルター上に塗布し、必要に応じ乾燥、硬化処理等を経て形成したりすることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等の有機系化合物、微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム等からなる無機系化合物からなるものが挙げられる。当該バインダ樹脂としては、上記近赤外線吸収フィルターのところに挙げたような樹脂を用いることができる。
【0089】
波長フィルター層24は必ずしも1層で構成されている必要はなく、各機能を有する複数の層から構成されていてもよい。
【0090】
次にハードコート層25について説明する。ハードコート層25は、HC層とも呼ばれることもある。これは、画像表示面に傷がつくことを抑えるために耐擦傷性を付与することができる機能を有するフィルムが配置された層である。ここには公知のハードコート層を適用することができる。
【0091】
次に、反射防止層26について説明する。反射防止層26は最も観察者側に配置されて外光の反射を防止する機能を有する層である。これによれば、外光が光学シートの観察者側面で反射して観察者側へ戻って、いわゆる映り込みが生じて映像が見え難くなることを抑制することができる。このような反射防止層26は、公知の反射防止フィルムを用いる等して構成することが可能である。
【0092】
これまでの説明では、光学シート19(基材層11、光学機能層12)、粘着剤層20、22、23、電磁波遮蔽層21、波長フィルター層24、ハードコート層25、及び反射防止層26を備えた光学フィルター10について説明したが、本発明の光学シート、光学フィルターは、少なくとも基材層11、及び光学機能層12を備えていればよく、用途に応じてこれまでに説明した層以外の様々な機能を有する層も備えることができる。光学フィルターに備えられ得るその他の層としては、従来の光学フィルタに用いられていたものを特に限定することなく用いることができる。具体的には、防眩層等を挙げることができる。
【0093】
防眩層は、いわゆるぎらつきを抑制する機能を有する層であり、アンチグレア層、AG層と呼ばれることもある。このような防眩層としては市販のものを用いることができる。
【0094】
また、光学フィルターの層構成もこれに限定されるものでなく、適宜変更可能である。以下に3つの例を挙げる。
(1)粘着剤層/光学シート/粘着剤層/電磁波遮蔽層/波長フィルター層/ハードコート層/反射防止層
(2)粘着剤層/光学シート/粘着剤層/波長フィルター層/ハードコート層/反射防止層
(3)粘着剤層/光学シート/粘着剤層(ネオン光吸収機能を有する)/波長フィルタ層/ハードコート層/反射防止層
ここで、ネオン光吸収機能を有する粘着剤層は、粘着剤に上記したネオン光吸収のための色素を含ませたものである。
【0095】
次に、光学シート19の製造方法について説明する。図6は、光学シート19の製造方法の一例について一部の工程を概略的に説明する図である。図7は、光学機能層12の製造方法の一例について、他の工程を概略的に説明する斜視図である。
【0096】
光学シート19を製造する際、図6に示すように、基材層11となる層を含む基材11’の上に、光透過部13を形成してシート19’を得る。具体的には次の通りである。光透過部13を形成するには、所定のピッチで光透過部13の形に対応した形の溝を有する金型ロール42を準備する。次に、当該金型ロール42とニップロール41との間に基材11’を送り込む。図6に示した矢印VIは、基材11’を送り込む方向である。基材11’の送り込みに合わせて、金型ロール42と基材11’との間に供給装置40から光透過部構成組成物30の液滴を供給し続ける。供給装置40から基材11’上に光透過部構成組成物30を供給するとき、金型ロール42と基材11’との間に、光透過部構成組成物30が溜まったバンク31が形成されるようにする。このバンク31において、光透過部構成組成物30が基材11’の幅方向に広がる。
【0097】
上記のようにして金型ロール42と基材11’との間に供給された光透過部構成組成物30は、金型ロール42及びニップロール41間の押圧力により、基材11’と金型ロール42との間に充填される。その後、光照射装置44によって光透過部構成組成物30に光を照射し、光透過部構成組成物30を硬化させ、光透過部13を形成することができる。光透過部13が形成された後、基材11’上に光透過部13が形成されたシート19’は、剥離ロール43を介して引かれることによって、金型ロール42から引き剥がされる。
【0098】
次に、図7に示すように、シート19’の光透過部13間に、光吸収部14を形成して光学機能層12を得る。具体的には、光透過部13上に光吸収部構成組成物36を供給し、ドクターブレード35によって光吸収部構成組成物36を光透過部13間の溝37に充填しつつ、余剰分の光吸収部構成組成物36を掻き落とす。その後、光透過部13間の溝37に残った光吸収部構成組成物36に光を照射して硬化させることにより、光吸収部14を形成する。なお、図7に示した矢印VIIは、シート19’の送り方向である。
【0099】
ここで、光透過部13の弾性率は10MPa以上2000MPa以下であることが好ましい。さらに好ましくは、100MPa以上1000MPa以下である。光透過部13の弾性率が2000MPaより大きくなると硬くなり、光透過部13のワレや欠けの不具合が発生したり、上記のようにして光吸収部14を形成する際に、光学機能層12の表面に外観不良を生じたり、光学機能層12の透過率が低下したりする虞がある。また、光透過部13が硬すぎると、光透過部13上に供給した光吸収部構成組成物36のうち余剰分をドクターブレード35で掻き取る際、ドクターブレード35を光透過部13に押し付けても光透過部13が変形し難い。そのため、余剰分の光吸収部構成組成物36を掻き落としきれない虞がある。光透過部13の弾性率を上記範囲にすると、ドクターブレード35を押し付けた際、光透過部13の変形により、余剰分の光吸部構成組成物36の掻き取り不良をなくし、光学機能層12の表面に外観不良を生じたり、光学機能層12の透過率が低下したりすることを防止できる。なお、光透過部13の弾性率が10MPaより小さいと光透過部13が軟らか過ぎるため、図6に示した光透過部を構成する工程において、光透過部13が金型ロール42から離型し難くなる。
【0100】
次に光学フィルター10を備えた映像表示装置としてのプラズマテレビ1について説明する。図8は1つの実施形態にかかる映像表示装置であるプラズマテレビ1を模式的に示した分解斜視図である。図8では紙面右上が観察者側、紙面左下が背面側を示している。図8からわかるように、プラズマテレビ1は、前面側筐体2と背面側筐体3とにより形成される筐体の内側に、映像源ユニットであるプラズマディスプレイパネルユニット4(PDPユニット4)を備えている。
【0101】
プラズマテレビ1にはその筐体内にPDPユニット4の他にもプラズマテレビに備えられる通常の各装置が具備される。これには例えば、各種電気回路や冷却手段等を挙げることができる。
【0102】
図9は、PDPユニット4の構成を模式的に表している。PDPユニット4は、光学フィルター10がプラズマディスプレイパネル5(PDP5)の映像光出射側に配置されて構成されている。すなわち、プラズマテレビ1は、PDP5と、PDP5より観察者側に配置された光学フィルター10とを備えている。このとき、光学シート19の基材層11がPDP5側に配置され、光吸収部14の窪み17が観察者側に向けられて配置される。すなわち、光吸収部14の窪み17及び光透過部13の曲線状、又は折れ線状が形成されている部位(本実施形態ではR部)が観察者側に向けられている。
【0103】
次に、映像表示装置1における光路、特に光学機能層12を通る映像光の光路について説明する。図10、図11に光路を説明するための図を示した。
図10は光学機能層12内に入射した光の代表的な光路例を表わした図である。
光L1はPDP5から光透過部13に入射し、そのまま光透過部13を通過して観察者側に出射される。
光L2はPDP5から光透過部13に入射し、光吸収部14との界面で反射し、光透過部13を通過して観察者側に出射される。このとき、界面はシート法線に対してθの角度を有しているので、反射後の光は反射前の光よりもシート法線に対して大きな角度を有している。従って視野角を広げることができる。
光L3はPDP5から光透過部13に入射し、さらに光吸収部14に入射して光吸収粒子16に吸収される。これにより例えば迷光を吸収することができる。
ここで、光L2のように反射するか、又は光L3のように吸収されるかは、入射光の角度、光透過部13の屈折率、及び光吸収部14の屈折率によりスネルの法則に基づいて決まる。
光L4は観察者側からのいわゆる外光が光吸収部14に入射して光吸収粒子16に吸収された例である。これにより外光の一部を吸収することができ、コントラストの向上をはかることができる。
【0104】
図11(a)は、光学機能層12に入射し、光透過部13の出光面のうち上記したR部から光が出射し、これにより色むらが抑制されることを説明する図である。図11(b)には比較のために従来の例も合わせて示した。
【0105】
図11(b)に示したように、従来における光学シートでは、光吸収部114の窪みによりバインダーが薄くなった部位(光L15が透過する部位)、及び光吸収部の組成物がない部分(光L16が透過する部位)の面からも光が透過していた。そして光透過部113から光が出射する際に、波長ごとの屈折率の違いにより波長分散が起こる。従来の光学シートでは光L15、光L16をはじめとするここから出射する光の向きが揃っているため、同じように波長分散が起こる。これにより同波長の光の向きが揃ってしまい、強く表れることで虹状の色むらが生じていたと考えられる。
【0106】
これに対して、図11(a)に示した光学シート19では、光透過部13の両端が円弧状(曲線状)とされており、光L5、L6のようにここから出射する光が揃わない。従って、各光L5、L6の波長分散が起こっても各波長の光の向きが揃わないので虹状の色むらが現れることなく、これを抑制することが可能となると考えられる。
【0107】
また、図4(b)で示したような折れ線状の端部形状の場合にも、光路を従来の光学シートとは異なるものとすることができ、虹状の色むらを抑制することができると考えられる。
【0108】
以上のように、光学シート19、これを用いた光学フィルター10、及び映像表示装置1によれば、色むらの発生を抑制することができる。また、光学機能層12の基本的な機能である光路の制御(輝度向上、視野角制御、及びコントラスト向上)は十分に確保される。
【実施例】
【0109】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明は実施例に限定されるものではない。
【0110】
(実施例1)
実施例1では、光透過部の出光面の両端部を長軸6μm、短軸3μmの楕円の弧状とすることにより光透過部の端部を曲線状にした。具体的には次のように光学シートの作製をおこなった。
【0111】
(1)金型ロールの作製
光学機能層の製造に供される金型ロールを製作した。金型ロールは、全体として円柱状であり、銅メッキが施され、当該銅メッキ部分をバイトにより切削して光透過部に対応する溝を形成する。
バイトとしてはダイヤモンドバイトを用い、その先端部の形状を図12に示した。すなわち、先端幅35μmとし、その両端に深さ3μm、幅方向6μmの楕円の弧状の曲面を形成した。また、斜面角度は1.9度とし、深さ85μmのときの幅が41μmになるような形状である(図12は見やすさのため曲線部や斜面角度を誇張して表わしている。)
このようなダイヤモンドバイトを用いて、金型ロールの銅メッキ層の外周を切削して溝を形成した。これにより、溝底幅35μm、該溝底における角部に深さ3μm、幅6μm曲線形状を得た。そして金型表面側の溝幅は41μm、深さ85μmの略台形形状とされた。ロール軸方向の溝間ピッチは45μmとした。この切削したロールにクロムメッキを施した。
【0112】
(2)光透過部構成組成物の調整
ビスフェノールA−エチレンオキシド2モル付加物を40.0質量部、イソホロンジイソシアネートを15.0質量部、ウレタン化触媒としてのビスマストリ(2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキサン酸50質量%溶液)を0.02質量部混合し、80℃で5時間反応させた。その後2−ヒドロキシエチルアクリレートを5.0質量部を加え、80℃で5時間反応させ光硬化性プレポリマー(P1)を得た。
次に光硬化性プレポリマー(P1)を60.02質量部と、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシエチルアクリレートを15.0質量部、及びビスフェノールA−エチレンオキシドを4モル付加したジアクリレートを25.0質量部と、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノール−エチレンオキシドを10モル付加したリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)を0.05質量部、及びステアリルアミン−エチレンオキシドの15モル付加物を0.05質量部と、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を3質量部と、を混合し、均一化して光透過部構成組成物を得た。
なお、この光透過部構成組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させた。これを多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.550であった。
【0113】
(3)粘着剤層付き基材層の形成
アクリル系樹脂の粘着剤(商品名:SKダイン2094、綜研化学株式会社製、固形分25.0%、溶剤は酢酸エチルとメチルエチルケトン)を100質量部、架橋剤(E−5XM、L−45、綜研化学株式会社製、固形分5、0%)を0.28質量部、1,2,3−ベンゾトリアゾールを0.25質量部、及び希釈溶剤(トルエン/メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=27.69g/27.69g/4.61g)を32質量部、混合して粘着剤塗液を得た。
この塗液を、基材(PETフィルム、商品名:A4300、東洋紡績社製、厚さ100μm)上に厚さが25μmとなるように塗布して乾燥し、さらにその上に離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績社製、厚さ38μm)を貼合して、粘着剤層付き基材層(以下、単に「基材」という。)を作製した。
なお、この粘着剤層について、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.490であった。また、この粘着剤層に用いた粘着剤組成物の23℃における貯蔵弾性率は0.2MPaであった。この貯蔵弾性率は固体粘弾性アナライザー(レオメトリックス社製RSAII)を用い、圧縮モードにて測定周波数1Hz、測定温度を−50℃〜150℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定した値に基づいた。
【0114】
(4)光透過部の形成(中間部材の形成)
上記(1)で作製した金型ロールとニップロールとの間に、上記(3)で作製した粘着剤層付きの基材を挿入して搬送した。この基材の搬送に合わせ、上記(2)で得られた光透過部構成組成物を基材層上に供給装置から供給し、金型ロール及びニップロール間の押圧力により、基材層と金型ロールとの間に光透過部構成組成物を充填した。その後、基材側から高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させて、光透過部を形成した。その後、剥離ロールにより、金型ロールから光透過部を離型し、光透過部を含む厚さが273±20μmである中間シート(中間部材)を作製した。
【0115】
(5)光吸収部構成組成物の調整
光硬化型プレポリマー(P2)として、エチレンオキシド、2,2’−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビス−、ホモポリマー、2−プロペノアートを20.0を質量部と、反応性希釈モノマー(M2)としての2−フェノキシエチル=アクリラート20.0を質量部、α−アクリロイル−ω−フェノキシポリ(オキシエチレン)を20.0質量部、及び2−{2−[2−(アクリロイルオキシ)(メチル)エトキシ](メチル)エトキシ}(メチル)エチル=アクリラートを13.0質量部と、光吸収粒子としての平均粒径4.0μmのカーボンブラックを25%含有したアクリル架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製)20.0を質量部と、光重合開始剤(I2)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)7質量部と、を混合し、均一化して光吸収部構成組成物を得た。
なお、この光吸収部構成組成物の光吸収粒子を除いた組成物(すなわちバインダーの組成物)を厚さ10μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.547であった。
【0116】
(6)光吸収部の形成
上記(5)で得られた光吸収部構成組成物を、上記(4)で作製した中間部材上に供給装置から供給した。また、中間部材の進行方向と略垂直に配置されたドクターブレードを用いて、中間部材上に供給した光吸収部構成組成物を中間部材に形成された略V字形状の溝(光透過部間の溝)内に充填するとともに、余剰分の光吸収部構成組成物を掻き落とした。その後、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光吸収部構成組成物を硬化させた(これを1回目の充填と記載することがある。)。この状態では、その表面には、深さ5.0μmの窪みが発生していた。次に窪みの平坦化を目的として、上記した光吸収部構成組成物から光吸収粒子を除いた組成物を、光吸収部構成組成物と同様にして光透過部間の溝に充填し、余剰分をドクターブレードで掻きとり、同様の条件で硬化をおこなった(これを2回目の充填と記載することがある。)。これにより光吸収部の表面の窪みの深さは3.0μmとなった。以上により光吸収部を形成した。
【0117】
以上のようにして、実施例1にかかる光学シートを作製した。その後、光学シートの窪み側に粘着剤を塗布し、波長フィルター層、ハードコート層、及び反射防止層を積層し、光学フィルターとした。ここで、この粘着剤層は次のように形成した。
アクリル酸n−ブチルを65.0質量部と、アクリル酸メチルを30.0質量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを0.5質量部と、N,N−ジメチルアクリルアミドを4.5質量部と、開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリルを0.2質量部とを、酢酸エチル300質量部中に添加し、60℃で12時間攪拌し、アクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
得られたこの共重合体溶液の固形分100質量部に対し、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤TD−75(綜研化学株式会社製)を0.5質量部を加え、2−ブタノンにて濃度25質量%の溶液となるように希釈し、粘着剤溶液とした。
この塗液を、離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績社製、厚さ38μm)上に厚さが25μmとなるように塗布して乾燥し、さらにその上に他の離型フィルム(商品名:E7006、東洋紡績社製、厚さ38μm)を貼合して、ノンキャリア粘着剤フィルムを作製した。
また、この粘着剤層に用いた粘着剤組成物の23℃における貯蔵弾性率は0.22MPaであった。この貯蔵弾性率は固体粘弾性アナライザー(レオメトリックス社製RSAII)を用い、圧縮モードにて測定周波数1Hz、測定温度を−50℃〜150℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定した値に基づいた。
そして、この粘着剤組成物のE7006側を剥離し、光学機能層面に貼合した。
【0118】
(7)弾性率の測定
上記(4)で作製した中間部材について、光透過部の弾性率を、圧縮式微小硬度計(FISCHER HM2000)を用いて微小圧子材料に負荷をかけ、これを除荷することによって測定した。このとき、負荷力は100mN、負荷速度は4μm/10秒、保持時間は60秒とした。光透過部の弾性率は800MPaであった。
【0119】
(実施例2)
実施例2では、金型ロールの切削バイトの先端全体を曲線状に形成した。すなわち、図13に示したように、先端部分を深さ3μmの凸状となるように形成し、この形状に基づく光透過部の形状を得た。他の条件は実施例1と同様である。
【0120】
(実施例3)
実施例3では光透過部の弾性率が2000MPaとなる材料を用いた。具体的には次の通りである。
光硬化性プレポリマー(P1)として、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレートを40.0質量部と、反応性希釈モノマー(M1)としてのビスフェノールA−エチレンオキシドを4モル付加したジアクリレートを10.0質量部、及びジペンタエリスリトールのペンタアクリレート/ヘキサアクリレート(質量比60/40)の混合物を10.0質量部と、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノール−エチレンオキシドを10モル付加したリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)を0.05質量部、及びステアリルアミン−エチレンオキシドの15モル付加物を0.05質量部と、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を3.0質量部と、を混合し、均一化して光透過部構成組成物を得た。
【0121】
また、光透過部の形状は実施例1と同じとし、光吸収部の窪みは1回目の充填後は3.0μmとなり、2回目の充填後に1.0μmとなった。
【0122】
(実施例4)
実施例4では光透過部の弾性率が1500MPaとなる材料を用いた。具体的には次の通りである。
光硬化性プレポリマー(P1)として、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレートを5.0質量部と、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシエチルアクリレートを40.0質量部、ビスフェノールA−エチレンオキシドを4モル付加したジアクリレートを45.0質量部、及びジペンタエリスリトールのペンタアクリレート/ヘキサアクリレート(質量比60/40)の混合物を10.0質量部と、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノール−エチレンオキシドを10モル付加したリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)を0.05質量部、及びステアリルアミン−エチレンオキシドを15モル付加物を0.05質量部と、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を3.0質量部と、を混合し、均一化して光透過部構成組成物を得た。
【0123】
また、光透過部の形状は実施例1と同じとし、光吸収部の窪みは1回目の充填後は4.0μmとなり、2回目の充填後に1.5μmとなった。
【0124】
(実施例5)
実施例5では光透過部の弾性率が500MPaとなる材料を用いた。具体的には次の通りである。
光硬化性プレポリマー(P1)として、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレートを10.0質量部と、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシエチルアクリレートを50.0質量部、ビスフェノールA−エチレンオキシドを4モル付加したジアクリレートを30.0質量部、及びジペンタエリスリトールのペンタアクリレート/ヘキサアクリレート(質量比60/40)の混合物を10.0質量部と、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノール−エチレンオキシドを10モル付加したリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)を0.05質量部、及びステアリルアミン−エチレンオキシドを15モル付加物を0.05質量部と、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を3.0質量部と、を混合し、均一化して光透過部構成組成物を得た。
【0125】
また、光透過部の形状は実施例1と同じとし、光吸収部の窪みは1回目の充填後は6.0μmとなり、2回目の充填後に3.0μmとなった。
【0126】
(実施例6)
実施例6では光透過部の弾性率が20MPaとなる材料を用いた。具体的には次の通りである。
2,4−トリレンジイソシアネートを10.0質量部、ジラウリル酸ジ−n−ブチル酸を0.03質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを0.01質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレートを10.0質量部、及びポリテトラメチレングリコールを20.0質量部混合して光硬化性プレポリマー(P1)を得た。
次に得られた光硬化性プレポリマー(P1)を40.0質量部と、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシテトラエチレングリコールアクリレートを30.0質量部、2モルのエチレンオキシドを付加させたp−クミルフェノールのアクリレートを20.0質量部、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを10.0質量部と、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノール−エチレンオキシドを10モル付加したリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)を0.05質量部、及びステアリルアミン−エチレンオキシドを15モル付加物を0.05質量部と、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を3質量部と、硬化促進剤とてしてのトリフェニルホスフィンを3.0質量部混合し、均一化して光透過部構成組成物を得た。
【0127】
また、光透過部の形状は実施例1と同じとし、光吸収部の窪みは1回目の充填後は8.0μmとなり、2回目の充填後に5.0μmとなった。
【0128】
(実施例7)
実施例7では光透過部の弾性率が2500MPaとなる材料を用いた。具体的には次の通りである。
光硬化性プレポリマー(P1)としてビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレートを40.0質量部と、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシエチルアクリレートを50.0質量部、及びジペンタエリスリトールのペンタアクリレート/ヘキサアクリレート(質量比60/40)の混合物を10.0質量部と、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノール−エチレンオキシドを10モル付加したリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)を0.05質量部、及びステアリルアミン−エチレンオキシドを15モル付加物を0.05質量部と、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を3.0質量部と、を混合し、均一化して光透過部構成組成物を得た。
【0129】
また、光透過部の形状は実施例1と同じとし、光吸収部の窪みは1回目の充填後は2.0μmとなり、2回目の充填後に0.4μmとなった。
【0130】
(実施例8)
実施例8では光透過部の弾性率が9.0MPaとなる材料を用いた。具体的には次の通りである。
2,4−トリレンジイソシアネートを10.0質量部、ジラウリル酸ジ−n−ブチル酸を0.03質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを0.01質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレートを10.0質量部、及びポリテトラメチレングリコール(平均分子量647)を20.0質量部混合して光硬化性プレポリマー(P1)を得た。
次に得られた光硬化性プレポリマー(P1)を40.0質量部と、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシエチルアクリレートを15.0質量部、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレートを15.0質量部、及び2モルのエチレンオキシドを付加させたp−クミルフェノールのアクリレートを20.0質量部と、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノール−エチレンオキシドを10モル付加したリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)を0.05質量部、及びステアリルアミン−エチレンオキシドを15モル付加物を0.05質量部と、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を3.0質量部と、その他テトラエチレングリコールジアクリレートを10.0質量部混合し、均一化して光透過部構成組成物を得た。
【0131】
また、光透過部の形状は実施例1と同じとし、光吸収部の窪みは1回目の充填後は9.0μmとなり、2回目の充填後に6.5μmとなった。
【0132】
(実施例9)
実施例9では、光学シートの窪み側に形成する粘着剤層の粘着剤組成物の貯蔵弾性率を0.14MPaとした光学フィルターを形成した。当該粘着剤層以外は実施例1と共通である。粘着剤層の形成は次の通りである。
アクリル酸n−ブチルを50.0質量部と、アクリル酸メチルを30.0質量部と、メタクリル酸メチルを19.5質量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを0.5質量部と、開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリルを0.2質量部と、を酢酸エチル300質量部中に添加し、60℃で12時間攪拌し、アクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液の固形分100質量部に対し、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤TD−75(綜研化学株式会社製)を0.5質量部を加え、2−ブタノンにて濃度25質量%の溶液となるように希釈し、粘着剤溶液とした。
この塗液を、離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績社製、厚さ38μm)上に厚さが25μmとなるように塗布して乾燥し、さらにその上に他の離型フィルム(商品名:E7006、東洋紡績社製、厚さ38μm)を貼合して、ノンキャリア粘着剤フィルムを作製した。
【0133】
(実施例10)
実施例10では、光学シートの窪み側に形成する粘着剤層の粘着剤組成物の貯蔵弾性率を0.78MPaとした光学フィルターを形成した。当該粘着剤層以外は実施例1と共通である。粘着剤層の形成は次の通りである。
アクリル酸n−ブチルを50.0質量部と、アクリル酸メチルを30.0質量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを0.5質量部と、N,N−ジメチルアクリルアミドを19.5質量部と、開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部と、を酢酸エチル300質量部中に添加し、60℃で12時間攪拌し、アクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液の固形分100質量部に対し、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤TD−75(綜研化学株式会社製)0.5質量部を加え、2−ブタノンにて濃度25質量%の溶液となるように希釈し、粘着剤溶液とした。
この塗液を、離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績社製、厚さ38μm)上に厚さが25μmとなるように塗布して乾燥し、さらにその上に他の離型フィルム(商品名:E7006、東洋紡績社製、厚さ38μm)を貼合して、ノンキャリア粘着剤フィルムを作製した。
【0134】
(実施例11)
実施例11では、光学シートの窪み側に形成する粘着剤層の粘着剤組成物の貯蔵弾性率を0.09MPaとした光学フィルターを形成した。当該粘着剤層以外は実施例1と共通である。粘着剤層の形成は次の通りである。
アクリル酸n−ブチルを75.0質量部と、アクリル酸メチル20.0質量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル5.0質量部と、開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部と、を酢酸エチル300質量部中に添加し、60℃で12時間攪拌し、アクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液の固形分100質量部に対し、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤TD−75(綜研化学株式会社製)を0.5質量部を加え、2−ブタノンにて濃度25質量%の溶液となるように希釈し、粘着剤溶液とした。
この塗液を、離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績社製、厚さ38μm)上に厚さが25μmとなるように塗布して乾燥し、さらにその上に他の離型フィルム(商品名:E7006、東洋紡績社製、厚さ38μm)を貼合して、ノンキャリア粘着剤フィルムを作製した。
【0135】
(実施例12)
実施例12では、光学シートの窪み側に形成する粘着剤層の粘着剤組成物の貯蔵弾性率を1.1MPaとした光学フィルターを形成した。当該粘着剤層以外は実施例1と共通である。粘着剤層の形成は次の通りである。
アクリル酸n−ブチルを45.0質量部と、アクリル酸メチルを30.0質量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを0.5質量部と、N,N−ジメチルアクリルアミドを24.5質量部と、開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリルを0.2質量部と、を酢酸エチル300質量部中に添加し、60℃で12時間攪拌し、アクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液の固形分100質量部に対し、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤TD−75(綜研化学株式会社製)を0.5質量部加え、2−ブタノンにて濃度25質量%の溶液となるように希釈し、粘着剤溶液とした。
この塗液を、離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績社製、厚さ38μm)上に厚さが25μmとなるように塗布して乾燥し、さらにその上に他の離型フィルム(商品名:E7006、東洋紡績社製、厚さ38μm)を貼合して、ノンキャリア粘着剤フィルムを作製した。
【0136】
(比較例)
比較例では、実施例1のうち、金型ロールの切削バイトの先端部に楕円状の曲線部を形成しないバイトにより金型ロールを製作し、光透過部を得た。他の条件は実施例1と同じである。比較例はいわゆる従来の光学シートである。
【0137】
(参考例)
参考例では、比較例のうち、光吸収部に窪みがない形状の光学シートを作製した。具体的にはドクターブレードにより掻き取る際の押圧力を下げ、掻き取る量を減らすことにより窪みが形成されないように調整した。
【0138】
以上の実施例1〜12、比較例、参考例について虹状の色むらの発生、外観、及び視野角低下について評価をおこなった。虹状の色むらの発生、及び外観の評価は目視観察でおこない、虹状の色むらの発生がないときを「○」、虹状の色むらの発生があったときを「×」とした。また、外観検査において良好であるときを「○」、外観検査で不良のときを「×」とした。また、視野角の測定は正面輝度を100%ととしたとき、その半分となる視野角を測定し、実施例1を基準として、これと同等以上の場合を「○」とし、視野角が狭くなる場合を「×」とした。
表1に結果を示す。
【0139】
【表1】

【0140】
表1からわかるように、光透過部の端部を曲線状にした例では、虹状の色むらの発生がなかった。また、外観や視野角の低下も見られなかった。
一方、比較例の場合、虹状の色むらが発生し、視野角の低下も観察された。比較例における当該視野角の低下は、図11(b)に示したように光透過部113から光L15、L16が出射する場合に、視野角を小さくする方向に屈折するからであると考えられる。
また、参考例では虹状の色むらの発生はなく、視野角の低下も見られなかったが、外観不良が認められた。これは、窪みをなくすためにドクターブレードの押圧力を低く抑えたため、本来除去されるべき光吸収粒子を除去することができなかったためと考えられる。
【0141】
また、光透過部の弾性率が高い実施例7では虹状の色むら、外観、及び視野角については良好であったが、光透過部が硬いため製造時に割れが生じることがあり、製造に困難があった。一方、弾性率が低い実施例8も虹状の色むら、外観、及び視野角については良好であったが、光透過部が柔らかいため、光吸収部の形成に際して窪みが大きくなった。これにより粘着剤層を形成するときに気泡を巻き込みやすいという製造上の困難があった。
【0142】
また、粘着剤組成物の貯蔵弾性率が小さい実施例11では、虹状の色むら、外観、及び視野角については良好であったが、粘着剤層の粘着剤組成物が柔らかいため、凹歪み不良が発生し易く、品質の良い光学フィルターを製造することに困難をともなった。一方、粘着剤組成物の貯蔵弾性率が大きい実施例12でも、虹状の色むら、外観、及び視野角については良好であったが、粘着剤組成物が硬いため、光学機能層面への埋め込み性が悪く、気泡を噛み易く外観不良が発生することがあった。他の実施例では光学機能層面の埋め込み性は良好であり、かつ、製造工程中での異物による凹歪み不良が無く、品質の良い光学シートを容易に製造することができた。
【符号の説明】
【0143】
1 映像表示装置
4 PDPユニット
5 PDPパネル(映像源)
10 光学フィルター
11 基材層
12 光学機能層
13 光透過部
14 光吸収部
15 バインダー
16 光吸収粒子
17 窪み
19 光学シート
20 粘着剤層
21 電磁波遮蔽層
22 粘着剤層
23 粘着剤層
24 波長フィルター層
25 ハードコート層
26 反射防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源より観察者側に配置され、該映像源側から入射した光を制御して前記観察者側に出射する、複数の層を有する光学シートであって、
基材層と、該基材層に積層された光学機能層とを備え、
前記光学機能層は、光を透過可能にシート面に沿って並列された光透過部と、該光透過部間に光を吸収可能に並列された光吸収部と、を有し、
前記光吸収部は、シート厚方向断面において前記基材層とは反対側の面に曲線又は折れ線状に凹んだ窪みが形成され、
前記光透過部は、シート厚方向断面において前記基材層とは反対側の面の両端部が曲線又は2以上の角を有する折れ線状である、光学シート。
【請求項2】
前記光透過部の弾性率は10MPa以上2000MPa以下である、請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記光吸収部の窪みの深さが0.5μm以上6.0μm以下である、請求項1又は2に記載の光学シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シートの前記光学機能層のうち、前記窪みが形成された側の面に粘着剤を含んでなる粘着剤層が形成されている光学フィルター。
【請求項5】
前記粘着剤を構成する組成物の23℃における貯蔵弾性率は0.1MPa以上0.8MPa以下である、請求項4に記載の光学フィルター。
【請求項6】
前記粘着剤層の厚さが20μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の光学フィルター。
【請求項7】
最外層に反射防止層又は防眩層を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学フィルター。
【請求項8】
所定の波長の光の透過を抑制する機能を有する波長フィルタ層を備えることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の光学フィルター。
【請求項9】
電磁波を遮蔽する機能を有する電磁波遮蔽層を備えることを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の光学フィルター。
【請求項10】
プラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルより観察者側に配置された請求項4〜9のいずれか一項に記載の光学フィルターと、を備え、前記光学フィルターの光吸収部の窪みが観察者側に向けられていることを特徴とする映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−93416(P2012−93416A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238445(P2010−238445)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】