説明

光学シート及びタッチパネル

【課題】製造時や運搬時等の傷付けを防止することにより光学的機能や外観の低下を防止することができる光学シート及びこれを用いたタッチパネルの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の光学シートは、ポリカーボネート系樹脂を主成分とする位相差フィルムと、この位相差フィルムの一方の面側に積層されるハードコート層と、この位相差フィルムの他方の面側に積層される粘着層とを有している。当該光学シートは、上記位相差フィルムの光弾性係数が40×10−12/Pa以下であるとよい。当該光学シートは、上記位相差フィルムの平均厚さが10μm以上500μm以下であるとよい。当該光学シートは、ヘイズ値が2%以下であるとよい。当該光学シートは、全光線透過率が87%以上であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に好適に用いられる光学シート及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示モジュール(LCD)は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてフラットパネルディスプレイとして多用されており、その用途は携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして年々拡大している。近年、液晶表示モジュールに要求される特性としては、用途により様々であるが、明るい(高輝度化)、見やすい(広視野角化)、省エネルギー化、薄型軽量化、大画面化等が挙げられる。
【0003】
このような液晶表示モジュールとしては、視認者の操作容易性、迅速性等を向上させるべくタッチパネルが搭載されているものもある。そして、このようなタッチパネルが搭載された液晶表示モジュールは、一般的には、タッチパネル、液晶表示素子、各種光学シート及びバックライトが表面側から裏面側にこの順で重畳された構造を有している。
【0004】
このようなタッチパネルとしては、静電容量方式、抵抗膜方式、電磁誘導方式等が存在しており、例えば静電容量方式としては、互いに交差する方向に電極を延在させて、指などが接触した際に電極間の静電容量が変化することを検知して入力位置を検出するものや、透光性導電膜の両端に同相、同電位の交流を印加し、指が接触又は近接してキャパシタが形成される際に流れる微弱電流を検知して入力位置を検出するもの等が存在している。
【0005】
また、このようなタッチパネルにおいては、外部光の反射を効果的に防止するためにタッチパネルの最表面に偏光板及び第一位相差フィルム(1/4λ板)をこの順で配置し、タッチパネルの裏面側に第二位相差フィルム(1/4λ板)を配置するものも存在している(特開2010−204480号公報参照)。
【0006】
しかしながら、このような位相差フィルムは、製造時や運搬時などに表面等が傷つけられた場合、かかる部分の光学的機能や外観が低下するおそれが存在している。このような問題は、抵抗膜方式、電磁誘導方式等、他の方式のタッチパネルにおいても同様に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−204480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、製造時や運搬時等の傷付けを防止することにより光学的機能や外観の低下を防止することができる光学シート及びこれを用いたタッチパネルの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
ポリカーボネート系樹脂を主成分とする位相差フィルムと、
この位相差フィルムの一方の面側に積層されるハードコート層と、
この位相差フィルムの他方の面側に積層される粘着層と
を有する光学シートである。
【0010】
当該光学シートは、位相差フィルムの一方の面側にハードコート層を有しているので、製造時や運搬時等の傷付き防止性を高めることができ、ひいては光学的機能や外観の低下を防止することができる。また、当該光学シートは、位相差フィルムの主成分としてポリカーボネート系樹脂を用いているので、耐衝撃性を向上させることができる。当該光学シートは、タッチパネル等に用いられ、タッチパネル表面を強く押下された場合や落下した場合であっても、上記位相差フィルム及びこの位相差フィルムの他方の面側に積層される粘着層によりタッチパネルのガラス基板等が破損することを防止することができる。その結果、当該光学シートは、ガラス基板の破片等が飛散するのを効果的に防止することができる。
【0011】
当該光学シートは、上記位相差フィルムの光弾性係数が40×10−12/Pa以下であるとよい。このように、位相差フィルムの光弾性係数を上記範囲とすることで、直射日光やディスプレイの発熱等によって生じる位相差の変化を抑えることができる。従って、当該光学シートは、配向によって付与される複屈折を好適に保持することができ、精細な映像表示を行うことができる。
【0012】
当該光学シートは、上記位相差フィルムの平均厚さが10μm以上500μm以下であるとよい。このように、位相差フィルムの平均厚さを上記範囲とすることで、液晶表示装置の輝度の低下を抑制しつつ、シートの強度、撓み防止性等の特性を向上させることができる。
【0013】
当該光学シートは、ヘイズ値が2%以下であるとよい。このように、ヘイズ値を上記範囲とすることで、液晶表示装置により表示される映像の視認性の低下を抑制し、表示される映像の鮮明度を保つことができる。
【0014】
当該光学シートは、全光線透過率が87%以上であるとよい。このように、全光線透過率を上記範囲とすることで、光線を十分に透過させ、視認性を向上させることができる。
【0015】
当該光学シートは、上記位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)が120℃以上180℃以下であるとよい。このように、位相差フィルムのガラス転移温度を上記範囲とすることで、熱成形を容易かつ確実に行うことができるとともに、複屈折性を好適に維持することができる。
【0016】
当該光学シートは、上記粘着層によりタッチパネルのガラス基板に貼着されるとよい。これにより、タッチパネルのガラス基板の破損を効果的に防止することができ、かつ破損時等に発生する破片の飛散防止機能を高めることができる。
【0017】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
ガラス基板と、上記粘着層によりこのガラス基板に貼着される当該光学シートとを備えるタッチパネルである。
【0018】
当該タッチパネルは、光学シートの位相差フィルムの一方の面側にハードコート層を有しているので、光学シートの製造時や運搬時等の傷付き防止性を高めることができ、ひいては光学的機能や外観の低下を防止することができる。また、当該タッチパネルは、光学シートの位相差フィルムの主成分としてポリカーボネート系樹脂を用いているので、耐衝撃性を向上させることができる。当該タッチパネルは、タッチパネル表面を強く押下された場合や落下した場合であっても、上記位相差フィルム及びこの位相差フィルムの他方の面側に積層される粘着層によりタッチパネルのガラス基板等が破損することを防止することができる。その結果、当該タッチパネルは、ガラス基板の破片等が飛散するのを効果的に防止することができる。
【0019】
なお、本発明において、「光弾性係数」は、外力による屈折率の変化の生じやすさを表す係数で、C[/Pa]=Δn/σで求められる値である。ここで、σは伸張応力[Pa]、Δnは応力付加時の屈折率であり、Δnは次式により定義される。
Δn=n−n
(式中、nは伸張応力と平行な方向の屈折率であり、nは伸張方向と垂直な方向の屈折率である。)
【0020】
また、「平均厚さ」は、JIS−K7130に規定される5.1.2のA−2法により測定した値の平均値である。「ヘイズ値」は、JIS K7136に準じた値である。「全光線透過率」は、JIS K7361に準じて日本電色工業製のヘイズメーターを用いて測定された透過率を意味する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の光学シートは、製造時や運搬時等の傷付けを防止することにより光学的機能や外観の低下を防止することができる。従って、本発明の光学シート及びこれを用いたタッチパネルによれば、光学的機能や外観の低下を抑え、視認性及びコントラストの高い映像表示を行うことができる。また、液晶パネルから出射される光は偏光している。車内環境下では偏光サングラスをかけて視認した場合に頭を傾けた際に偏光軸が揃い視認できなくなる場合がある。車載用液晶パネルの表面側にはタッチパネルが配設される場合があり、ガラス飛散防止フィルムとしてPETが使用されている。ガラス飛散防止フィルムとしてPETが使用された場合、偏光軸が揃い視認できなくなる場合があるが、本発明の光学シートによるとあらゆる角度から視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学シートを示す模式的断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るタッチパネルを示す模式的断面図である。
【図3】図2のタッチパネルと異なる形態に係るタッチパネルを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0024】
図1の光学シート1は、位相差フィルム2と、ハードコート層3と、粘着層4とを有している。
【0025】
位相差フィルム2は、光線を透過させる必要があるため透明、特に無色透明に形成されている。位相差フィルム2は、ポリカーボネート系樹脂を主成分とする1/4λ位相差フィルムとして形成されている。
【0026】
位相差フィルム2は、透明性及び所望の強度を損なわない限りは他の任意成分を含んでよいが、ポリカーボネート系樹脂からなる主成分を好ましくは90質量%以上含み、さらに好ましくは98質量%以上含む。ここでの任意成分の例としては、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、位相差低減剤、艶消し剤、抗菌剤、防かび等が挙げられる。
【0027】
位相差フィルム2を形成するポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されず、直鎖ポリカーボネート系樹脂又は分岐ポリカーボネート系樹脂のいずれかを使用することができる。また、位相差フィルム2を形成するポリカーボネート系樹脂としては、直鎖ポリカーボネート系樹脂及び分岐ポリカーボネート系樹脂からなるポリカーボネート系樹脂を使用することもできる。
【0028】
直鎖ポリカーボネート系樹脂としては、公知のホスゲン法または溶融法によって製造された直鎖の芳香族ポリカーボネート系樹脂であり、カーボネート成分とジフェノール成分とからなる。カーボネート成分を導入するための前駆物質としては、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。また、ジフェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−チオジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3−ジクロロジフェニルエーテル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。このような直鎖ポリカーボネート系樹脂は、例えば、米国特許第3989672号に記載されている方法等で製造することができる。
【0029】
分岐ポリカーボネート系樹脂としては、分岐剤を用いて製造したポリカーボネート系樹脂であり、分岐剤としては、例えば、フロログルシン、トリメリット酸、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2−トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0030】
このような分岐ポリカーボネート系樹脂は、例えば、特開平03−182524号公報に挙げられているように、芳香族ジフェノール類、上記分岐剤およびホスゲンから誘導されるポリカーボネートオリゴマー、芳香族ジフェノール類および末端停止剤を、これらを含む反応混合液が乱流となるように撹拌しながら反応させ、反応混合液の粘度が上昇した時点で、アルカリ水溶液を加えると共に反応混合液を層流として反応させる方法により製造することができる。本発明の樹脂組成物の分岐ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート系樹脂中に5重量%以上80重量%以下の範囲で含有され、好ましくは10重量%以上60重量%以下の範囲で含有される。これは、分岐ポリカーボネート系樹脂が10重量%未満では、伸長粘度が低下し押出成形での成形が困難となるためであり、80重量%を超えると樹脂の剪断粘度が高くなり成形加工性が低下するためである。
【0031】
位相差フィルム2の光弾性係数としては、特に限定されないが、例えば40×10−12/Pa以下が好ましく、20×10−12/Pa以下がさらに好ましい。位相差フィルム2の光弾性係数が上記上限を超えると、応力による位相差のバラツキが大きくなり、光学シート1の製造時等に加えられる張力等により所望の位相差が得られなくなるおそれがあり、また直射日光やディスプレイの発熱等によって生じる位相差の変化が大きくなるおそれがある。これに対し、位相差フィルム2の光弾性係数が上記範囲内であると、位相差フィルム2の製造時等の位相差のズレを抑制することができるとともに、直射日光やディスプレイの発熱等によって生じる位相差の変化を抑えることができる。その結果、当該光学シート1は、配向によって付与される複屈折を好適に保持することができ、精細な映像表示を行うことができる。
【0032】
位相差フィルム2の厚み(平均厚さ)としては、特に限定されないが、例えば10μm以上500μm以下が好ましく、50μm以上300μm以下がさらに好ましく、100μm以上200μm以下が特に好ましい。位相差フィルム2の厚みが上記上限を超えると、液晶表示装置の輝度が低下してしまうおそれがあり、また液晶表示装置の薄型化の要求に反することにもなる。一方、位相差フィルム2の厚みが上記下限未満であると、フィルムの強度、撓み防止性等の特性が低下し、飛散防止機能が低下するおそれがある。これに対し、位相差フィルム2の厚みが上記範囲内であると、液晶表示装置の輝度の低下を抑制しつつ、フィルムの強度、撓み防止性等の特性を向上させることができる。
【0033】
位相差フィルム2のガラス転移温度としては、特に限定されないが、例えば120℃以上180℃以下が好ましく、130℃以上170℃以下がさらに好ましく、140℃以上160℃以下が特に好ましい。当該光学シート1は、位相差フィルム2のガラス転移温度が上記上限を超えると、フィルムに延伸するときに延伸むらが起きやすくなり熱成型が困難になるおそれがある。一方、当該光学シート1は、位相差フィルム2のガラス転移温度が上記下限未満であると、耐熱性が劣るおそれがある。これに対し、当該光学シート1は、位相差フィルム2のガラス転移温度が上記範囲内であると、熱成形を容易かつ確実に行うことができるとともに、複屈折性を好適に維持することができる。
【0034】
位相差フィルム2の製造方法としては、特に限定されないが、ポリカーボネート系樹脂を主成分とする組成物を製膜、延伸することにより製造することができる。
【0035】
かかる製膜方法としては、特に限定されないが、例えば溶剤キャスト法、溶融押出法、カレンダー法等の公知の成膜方法が挙げられる。
【0036】
また、ダイから溶液を押出すキャスティング法やドクターナイフ法等の溶剤キャスト法で用いられる溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、ジオキソラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の有機溶媒が挙げられる。溶液濃度としては、例えば10質量%以上が好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
【0037】
一方、溶融押出法は溶剤を使用しないため生産性に優れている。従って、位相差フィルム2は、かかる溶融押出法により製造するのが好ましい。
【0038】
溶融押出法による製造方法としては、組成物を溶液ブレンド法又は溶融ブレンド法等により作成しこれを溶融押出しによってフィルムとする方法や、組成物のドライブレンドを直接溶融押出によって成膜する方法等を挙げることができる。
【0039】
溶液ブレンド法としては、例えばポリカーボネート系樹脂と必要に応じて加えられる任意の添加剤とを溶解する溶媒にそれぞれ溶解させ、均質に混合した後、必要に応じてろ過(フィルターろ過等)により異物を除去し、さらに、ポリカーボネート系樹脂に対する不溶性溶媒(又は貧溶媒)中に注入することにより、組成物を回収し、さらに、乾燥させて目的とする組成物を得る方法(溶液ブレンド)等が挙げられる。
【0040】
溶融ブレンド法としては、例えばポリカーボネート系樹脂と必要に応じて加えられる任意の添加剤とを、必要に応じて混合したのち、溶融ブレンド(溶融混練)することにより組成物を得る方法が挙げられる。溶液ブレンド法は熱履歴の少ない組成物を得ることが可能であるが、組成物に対して大量の溶媒を用い、組成物の残存溶媒が問題となる場合がある。溶融ブレンド法は溶媒の問題がなく、経済的にも有利であるため好ましい。
【0041】
ポリカーボネート系樹脂を主成分とする組成物のドライブレンドを直接溶融押出しによってフィルムとする方法としては、ポリカーボネート系樹脂を主成分とする組成物を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置等の予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーン等により造粒を行い、ベント式二軸押出機等の溶融押出機で溶融混練しフラットダイ(Tダイ)から押し出すことにより、溶融成膜を行う方法が挙げられる。また、ドライブレンドを直接溶融押出しによって成膜する方法では、各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融押出機に供給してもよい。
【0042】
溶融押出機としては、均一な位相差フィルム2を得るためにノンベント方式の溶融押出機を使用することができる。また、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有する溶融押出機を使用しても良い。ベントには、発生する水分や揮発ガスを効率よく溶融押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また、押出原料中に混入した異物等を除去するためのスクリーンを溶融押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を取り除くことも可能である。このようなスクリーンとしては、金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルター等)等が挙げられる。
【0043】
溶融押出時の樹脂温度は、組成物のガラス転移温度をTgとするとき、Tg以上が好ましく、Tg+50℃〜Tg+250℃がより好ましく、Tg+80℃〜Tg+200℃がさらに好ましい。位相差フィルム2はこれらの成膜と同時に、もしくは連続して延伸を行い、所望の1/4λ位相差フィルム2としてもよい。また、これらの成膜方法で得られたフィルムを別途延伸して1/4λ位相差フィルム2としてもよい。
【0044】
位相差フィルム2は、組成物を製膜した後、一軸延伸又は二軸延伸されることにより得ることができる。一軸延伸方法としてはテンター法による横一軸延伸、ロール間による縦一軸延伸、ロール間圧延法等の任意の方法を用いることができる。延伸倍率は通常、1.01〜5倍の範囲でフィルムの延伸性や光学特性(例えば、屈折率分布、面内位相差値、厚み方向位相差値、Nz係数)等に応じて実施することができる。この延伸は一段で行っても良く、多段で行っても良い。また、延伸時の温度は、Tg−30℃〜Tg+50℃、より好ましくはTg−10℃〜Tg+30℃である。この温度範囲であれば、ポリマーの分子運動が適度であり、延伸による配向の緩和が起こり難く、配向抑制が容易になり所望する光学特性が得られやすいため好ましい。
【0045】
ハードコート層3は、位相差フィルム2の一方の面側に積層され、当該光学シート1の硬度を向上させる。ハードコート層3を形成する材料としては、特に限定されない。ハードコート層3は、樹脂のみから形成されてもよいし、その中にシリカ微粒子、重合開始剤等が含有されてもよい。
【0046】
ハードコート層3を形成する樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂や、活性エネルギー線硬化樹脂等が挙げられる。
【0047】
ハードコート層3は、例えば、活性エネルギー線硬化樹脂の重合性モノマーや重合性オリゴマーを含む塗布組成物を位相差フィルム2の一方の面上に塗布し、重合性モノマーや重合性オリゴマーを架橋反応及び/又は重合反応させることにより形成することができる。
【0048】
かかる活性エネルギー線硬化性の重合性モノマーや重合性オリゴマーの官能基としては、紫外線、電子線又は放射線重合性のものが好ましく、紫外線重合性官能基が特に好ましい。紫外線重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和重合性官能基等を挙げることができる。
【0049】
上記塗布組成物としては、特に限定されないが、アクリルモノマー又はウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とするものが好ましい。ハードコート層3は、これらのモノマー又はオリゴマーを主成分とする組成物から形成されることで、硬度を高めることができる。なかでも、ハードコート層3は、ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートとを共に含有する組成物から形成されることが特に好ましい。
【0050】
ハードコート層3を形成するウレタンアクリレート及び(メタ)アクリレートの合計含有量としては、45質量%以上99質量%以下が好ましく、50質量%以上95質量%以下がさらに好ましく、60質量%以上90質量%以下が特に好ましい。当該ハードコート層3を形成するウレタンアクリレート及び(メタ)アクリレートの合計含有量が上記上限を超えると光重合の開始が遅くなり生産性が低下するおそれがある。また、当該ハードコート層3を形成するウレタンアクリレート及び(メタ)アクリレートの合計含有量が上記下限未満であると、柔軟性、耐摩耗性、耐擦傷性等が低下するおそれがある。一方、当該ハードコート層3を形成するウレタンアクリレート及び(メタ)アクリレートの合計含有量が上記範囲内であると、生産性を高めつつ、柔軟性、耐摩耗性、耐擦傷性等を好適に保つことができる。
【0051】
上記ウレタンアクリレートとしては、特に限定されるものではなく、モノマー又はオリゴマーのいずれであってもよい。また、ウレタンアクリレートの官能基数としては、特に限定されるものではなく、単官能であっても多官能であってもよいが、2官能以上6官能以下であることが好ましく、2官能以上3官能以下であることがさらに好ましい。ハードコート層3は、ウレタンアクリレートの官能基数を上記範囲内とすることで、硬度と伸び率とのバランスを好適に保つことができる。ウレタンアクリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ウレタンアクリレートの伸び率としては、20%以上80%以下が好ましく、25%以上75%以下がさらに好ましい。ウレタンアクリレートの伸び率が上記上限を超えるとハードコート層3の耐久性が低下するおそれがある。また、ウレタンアクリレートの伸び率が上記下限未満であると、成型時に割れが発生するおそれがある。一方、ウレタンアクリレートの伸び率が上記範囲内であると、耐久性を向上させるとともに成型時等の割れの発生を防止することができる。
【0053】
なお、ここでいう「伸び率」とは、JIS K5600に準じて測定した値のことをいう。
【0054】
ウレタンアクリレートから形成される樹脂のガラス転移温度としては、特に限定されないが、40℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がさらに好ましい。ウレタンアクリレートから形成される樹脂のガラス転移温度が上記範囲内であることにより、常温下でのハードコート層3の硬度及び耐久性を向上させることができる。
【0055】
ハードコート層3を形成するウレタンアクリレートの含有量としては、特に限定されないが、10質量%以上90質量%以下が好ましく、15質量%以上85質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上80質量%以下が特に好ましい。ハードコート層3を形成するウレタンアクリレートの含有量が上記上限を超えると、耐摩耗性及び塗膜硬度が低下するおそれがある。また、ハードコート層3を形成するウレタンアクリレートの含有量が上記下限未満であると、柔軟性が低下し、割れを発生するおそれが高くなる。一方、ハードコート層3を形成するウレタンアクリレートの含有量が上記範囲内であると、耐摩耗性及び塗膜硬度を好適に保ちつつ、適度な柔軟性を保持し、割れの発生を抑制することができる。
【0056】
上記(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではなく、モノマー又はオリゴマーのいずれであってもよい。かかる(メタ)アクリレートの官能基数としては、特に限定されるものではなく、単官能であっても多官能であってもよい。なお、ハードコート層3は、3官能以上の(メタ)アクリレートを使用することにより耐久性を向上することができる。また、かかる(メタ)アクリレートは、極性基を有する分子構造でもよいし低極性の分子構造でもよい。(メタ)アクリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(メタ)アクリレートの極性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等を挙げることができる。
【0058】
水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシル基含有エステル等が挙げられる。
【0059】
カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸の他、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0060】
アミノ基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0061】
アミド基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類等が挙げられる。
また、低極性の分子構造の(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリル酸脂環式エステル又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0062】
かかる(メタ)アクリル酸脂環式エステルとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールアクリレートが挙げられる。
【0064】
ハードコート層3を形成する(メタ)アクリレートの含有量としては、特に限定されないが、5質量%以上85質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下がさらに好ましく、15質量%以上75質量%以下が特に好ましい。ハードコート層3を形成する(メタ)アクリレートの含有量が上記上限を超えると、成型時に割れが発生するおそれが高くなる。また、ハードコート層3を形成する(メタ)アクリレートの含有量が上記下限未満であると、耐摩耗性及び塗膜硬度が低下するおそれがある。一方、ハードコート層3を形成する(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲内であると、耐摩耗性及び塗膜硬度を好適に保ちつつ、適度な柔軟性を保持し、割れの発生を抑制することができる。
【0065】
上記重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。なお、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0066】
ハードコート層3の鉛筆硬度としては、特に限定されないが、例えばH以上が好ましく、2H以上がさらに好ましく、3H以上が特に好ましい。当該光学シート1は、ハードコート層3の鉛筆硬度が上記下限未満であると、硬度に劣るおそれがある。これに対し、当該光学シート1は、ハードコート層3の鉛筆硬度が上記範囲内であると、ハードコート層3を好ましい硬度に保つことができる。これにより、当該光学シート1は、ハードコート層3の傷つき防止性を向上させ、ひいては当該光学シート1の取扱い容易性を向上させることができる。なお、「鉛筆硬度」は、JIS K5400に規定する試験方法の8.4に記載の鉛筆引っかき値に基づく値をいう。
【0067】
ハードコート層3厚み(平均厚さ)は、特に限定されないが、例えば、3μm以上50μm以下とすることができる。
【0068】
ハードコード層3の製造方法は、特に限定されないが、位相差フィルム2の一方の面に活性エネルギー線硬化樹脂を塗布し、乾燥させ、活性エネルギー線照射させることにより製造することができる。活性エネルギー線硬化樹脂の塗布方法としては、位相差フィルム2の一方の面に活性エネルギー線硬化樹脂を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されず、例えば、スピンコート法、スプレー法、スライドコート法、ディップ法、バーコート法、ロールコーター法、スクリーン印刷法等、種々の方法を挙げることができる。
【0069】
粘着層4は、位相差フィルム2の他方の面側に積層される。粘着層4は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の公知の粘着性樹脂を用いて形成することができる。また、粘着層4は、かかる公知の粘着性樹脂に加えて、高圧法低密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、合成ゴム、天然ゴム等のエラストマー、テルペン樹脂、石油樹脂等の粘着助剤等を混合することにより形成されてもよい。
【0070】
粘着層4を形成する粘着性樹脂としては、アルキル基の炭素数が8以上20以下のアルキルアクリレートモノマーに由来する構成単位、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びトリシクロデカン(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一つの脂環式モノマーに由来する構成単位、並びに官能基含有モノマーに由来する構成単位を有するアクリル系共重合体を好適に用いることができる。上記アルキルアクリレートモノマーとしては、粘着力及び粘着対象からの発泡を抑制する点から、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレートが好ましく、2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。粘着力が弱い場合は、粘着対象から発生する微量のガス成分が界面に滞留し気泡となり、粘着性や外観の低下を招来するおそれがある。上記アルキルアクリレートモノマーに由来する構成単位の含有量としては、他の構成単位の含有量を維持しつつ所定の粘着力を保持する点から、アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して29.9質量%以上55質量%以下が好ましく、35質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。また、上記脂環式モノマーとしては、粘着力及び粘着対象からの発泡を抑制する点から、シクロヘキシルアクリレートを好適に用いることができる。上記脂環式モノマーに由来する構成単位の含有量としては、アクリル系共重合体を構成する全構成単位に対して50質量%以上70質量%以下が好ましく、55質量%以上65質量%以下がさらに好ましい。脂環式モノマーに由来する構成単位の含有量が上記上限を超えると、タックが不足して粘着力が低下するおそれがある。一方、脂環式モノマーに由来する構成単位の含有量が上記下限未満であると、粘着対象からの発泡を効果的に防止することができないおそれがある。上記官能基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや各種ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はカルボキシル基を有する不飽和単量体、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。なかでも、粘着力や粘着対象からの発泡を抑制する点から、2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。上記官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量としては、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が上記上限を超えると、粘着層4の極性が大きくなり、低極性表面への粘着力が低下するおそれがある。一方、官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が上記下限未満であると、粘着層4の凝集力が低下して剪断方向の応力に対して形状を維持しにくくなるおそれがある。
【0071】
かかるアクリル系共重合体の製造方法としては、公知のラジカル重合法等が挙げられる。例えば、トルエンやキシレンのような炭化水素系や酢酸エチルのようなエステル系の有機溶媒中に上記単量体を溶解してアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤を添加して50〜90℃程度で、3〜20時間程度重合を行うことによりアクリル系共重合体の有機溶媒溶液を得ることができる。
【0072】
アクリル系共重合体の重量平均分子量としては、例えば20万以上、好ましくは40万以上200万以下、さらに好ましくは50万以上150万以下である。アクリル系共重合体の重量平均分子量が上記上限を超えると、ポリマー合成時の重合が困難となるおそれがある。一方、アクリル系共重合体の重量平均分子量が上記下限未満であると、気泡を生じるおそれが高くなる。なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0073】
アクリル系共重合体のガラス転移温度としては、粘着剤として十分な粘着力を得るため通常−10℃以下であり、好ましくは−70℃以上−20℃以下である。
【0074】
粘着層4は、粘着剤溶液を位相差フィルム2の他方の面側に塗布して乾燥させることによって位相差フィルム2に積層することができる。また、粘着層4は、粘着剤溶液を予めセパレータの片面に塗布して乾燥させておいたうえ、位相差フィルム2と貼り合わせることにより位相差フィルム2に積層することもできる。
【0075】
粘着層4の厚み(平均厚さ)は、特に限定されないが、例えば、10μm以上40μm以下とすることができる。
【0076】
当該光学シート1のヘイズ値としては、特に限定されないが、2%以下が好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。当該光学シート1は、ヘイズ値が上記上限を超えると、液晶表示装置により表示される映像の鮮明度が低下し、映像の視認性が低下するおそれがある。
【0077】
当該光学シート1は、空気中でのフィルムのヘイズ値(Ha)と水中でのフィルムのヘイズ値(Hw)の差(Ha−Hw)として得られる外部ヘイズ値が1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。当該光学シート1は、外部ヘイズ値が上記上限を超えると、表面の凹凸が比較的大きくなり、位相差精度が低下するおそれがある。
【0078】
当該光学シート1の全光線透過率としては、特に限定されないが、例えば87%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。当該光学シート1は、全光線透過率が上記下限未満であると、光線を十分に透過させることができず、視認性を低下させるおそれがある。
【0079】
当該光学シート1は、粘着層4によりタッチパネルのガラス基板に貼着されることによって、タッチパネルのガラス基板の破損を効果的に防止することができ、かつ破損時等に発生する破片の飛散防止機能を高めることができる。特に、当該光学シート1は、粘着層4がタッチパネルのガラス基板の裏面側に貼着されることにより、タッチパネル破損時におけるガラス基板の破片等の飛散防止機能をさらに効果的に高めることができる。
【0080】
当該光学シート1は、位相差フィルム2の一方の面側にハードコート層3を有しているので、製造時や運搬時等の傷付き防止性を高めることができ、ひいては光学的機能や外観の低下を防止することができる。また、当該光学シート1は、位相差フィルム2の主成分としてポリカーボネート系樹脂を用いているので、耐衝撃性を向上させることができる。当該光学シート1は、タッチパネル等に用いられ、タッチパネル表面を強く押下された場合や落下した場合であっても、位相差フィルム2及び位相差フィルム2の他方の面側に積層される粘着層4によりタッチパネルのガラス基板等が破損することを防止することができる。その結果、当該光学シート1は、ガラス基板の破片等が飛散するのを効果的に防止することができる。
【0081】
図2のタッチパネル11は、ガラス基板12、14と、電極層13と、光学シート1とを有している。ガラス基板12は、表面側の略中央領域が指先による入力が行われる入力領域として形成されている。ガラス基板12の裏面には、粘着層4が貼着されることで光学シート1が積層されている。電極層13は、透明導電膜であり、互いに交差する方向に第一電極と第二電極とが延在されている。電極層13はガラス基板14の表面側に積層されている。タッチパネル11は、ガラス基板12の入力領域に手指等が触れる前後で静電容量が変化する。タッチパネル11は、上記第一電極及び第二電極が静電容量の変化を検出し、タッチ位置を特定するように構成されている。また、タッチパネル11の裏面側には液晶パネル(図示せず)が配設されている。
【0082】
タッチパネル11には、当該光学シート1が配設されているので、上記液晶表示パネルから発せられる直線偏光は当該光学シート1によって円偏光に変換される。従って、視認者が偏光サングラスでタッチパネル11を見た場合、虹模様の発生を抑えることができるとともに、あらゆる角度から視認することができる。
【0083】
図3のタッチパネル21は、ガラス基板12、14と、電極層13と、偏光板22と、光学シート1とを有している。光学シート1(第一光学シート)は、偏光板12の裏面側に粘着層4を貼着させて偏光板12に積層されている。また、光学シート1(第二光学シート)は、粘着層4をガラス基板14の裏面側に貼着させてガラス基板14に積層されている。
【0084】
タッチパネル21の外部光遮断機能について説明する。偏光板22の表面から入射され偏光板22を透過した外部光は、第一光学シートを透過することにより円偏光に変換される。この円偏光は反射されて第一光学シートの裏面側から入射される。ここで、第一光学シートは、裏面側から入射される円偏光が偏光板22の透過軸方向と直交する直線偏光として第一光学シートの表面側から出射されるように配設されている。それゆえ、第一光学シートの表面側から出射された直線偏光は偏光板22で遮断される。すなわち、偏光板22の表面から入射されて偏光板22を透過した外部光は、反射されて再度偏光板22の裏面側に入射されるが、この反射光は偏光板22で遮断されることになり、タッチパネル21の表面側からは出射されない。これにより、当該タッチパネル21は、良好な視認性を保持することができる。
【0085】
これに対し、タッチパネル21の裏面側に配設される液晶パネル(図示せず)から出射される光は、第二光学シート及び第一光学シートを透過して偏光板22の透過軸方向の直線偏光として偏光板22の裏面側に入射されるように構成されている。従って、当該タッチパネル21によると、タッチパネル21の裏面側に配設される液晶パネル(図示せず)の表示を明確に視認することができる。
【0086】
当該タッチパネル21は、光学シート1の位相差フィルム2の一方の面側にハードコート層3を有しているので、光学シート1の製造時や運搬時等の傷付き防止性を高めることができ、ひいては光学的機能や外観の低下を防止することができる。また、当該タッチパネル21は、光学シート1の位相差フィルム2の主成分としてポリカーボネート系樹脂を用いているので、耐衝撃性を向上させることができる。当該タッチパネル21は、タッチパネル21表面を強く押下された場合や落下した場合であっても、上記位相差フィルム2及び位相差フィルム2の他方の面側に積層される粘着層4によりタッチパネル21のガラス基板12、14等が破損することを防止することができる。その結果、当該タッチパネル21は、ガラス基板12、14の破片等が飛散するのを効果的に防止することができる。
【0087】
なお、本発明の光学シート及びタッチパネルは、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば、当該光学シートは、ハードコート層が2層以上の層から形成されていてもよい。また、当該光学シートは、ハードコート層上に他の層(例えば、UV吸収層、帯電防止層及び反射防止層等)が積層されてもよい。当該光学シートは、位相差フィルムとハードコート層、又は位相差フィルムと粘着層が、他の層を介して積層されていてもよい。当該光学シートは、タッチパネルの他、立体映像表示装置等、種々の液晶表示モジュールに使用することができる。当該光学シートは、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式等、種々のタッチパネルに使用することができる。また、当該タッチパネルは、必ずしも一対の当該光学シート(第一光学シート及び第二光学シート)を備えている必要はない。当該光学シートは、タッチパネルのガラス基板の表面側に貼着されてもよく、またタッチパネルの表面側及び裏面側に貼着されてもよい。当該光学シートが有する位相差フィルムは、必ずしも1/4λ位相差フィルムである必要はなく1/2λ位相差フィルム、3/4λ位相差フィルム等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明の光学シートは、製造時や運搬時等の傷付けを防止することにより光学的機能や外観の低下を防止することができる。従って、本発明の光学シート及びこれを用いたタッチパネルは、光学的機能や外観の低下を抑え、視認性及びコントラストの高い映像表示を行うことができる液晶表示装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 光学シート
2 位相差フィルム
3 ハードコート層
4 粘着層
11 タッチパネル
12 ガラス基板
13 電極層
14 ガラス基板
21 タッチパネル
22 偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート系樹脂を主成分とする位相差フィルムと、
この位相差フィルムの一方の面側に積層されるハードコート層と、
この位相差フィルムの他方の面側に積層される粘着層と
を有する光学シート。
【請求項2】
上記位相差フィルムの光弾性係数が40×10−12/Pa以下である請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
上記位相差フィルムの平均厚さが10μm以上500μm以下である請求項1又は請求項2に記載の光学シート。
【請求項4】
ヘイズ値が2%以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の光学シート。
【請求項5】
全光線透過率が87%以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項6】
上記位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)が120℃以上180℃以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項7】
上記粘着層によりタッチパネルのガラス基板に貼着される請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項8】
ガラス基板と、上記粘着層によりこのガラス基板に貼着される請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光学シートとを備えるタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−20135(P2013−20135A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154012(P2011−154012)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】