説明

光学シート

【課題】透過型液晶表示装置、透過型看板などにおいて用いられ、正面方向への集光を改善し、かつ、傷付きや色付きを防止できる光学シートを提供する。
【解決手段】一方の面に遮光材料40が充填された溝と透光部11とが交互に配列した視野角制御層2を有する光学シート1であって、遮光材料40が発泡性材料により膨張し、遮光材料40が溝の開口端部から突出している。特に、前記溝の開口端部から突出している遮光材料40が、1μm以上50μm以下であるのが好ましく、また、発泡性材料が熱膨張性マイクロカプセルであるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型液晶表示装置、看板などに利用される面光源に用いられる光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
透過型液晶パネルを用いた液晶表示装置はバックライトとドット状に画素を配した液晶パネルとで構成され、各画素の光の透過率がコントロールされることによって文字や映像の表示が行われる。バックライトとしては、ハロゲンランプ、反射板、レンズ等の組み合わせにより光の出射量の分布を制御するものなどが挙げられる。
【0003】
透過型液晶表示装置などでは消費電力の軽減や高輝度化が要求されている。高輝度化を実現することは冷陰極管などの光源を増やすことで可能であるが、消費電力の増加につながるため実用的ではない。そこでバックライトからの出射光のうち法線方向から大きくずれた方向へ出射する光を制御し、正面方向の輝度を高める技術が考えられており、その一例として特許文献1が公開されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、入射面に凸部を有した輝度向上シートであり、凸部の頂部を光入射部とし、凸部の斜面を光反射面とし、隣り合う頂部の間(以下溝部と称することがある)に光反射層が設けられたものである。光入射部へ入射する光線のうち、シート面への入射角が比較的小さい(シート面に垂直に近い)光線はそのまま出射側へ到達し、比較的小さい出射角で出射する。光入射部へ入射する光線のうち、シート面への入射角が比較的大きい(シート面に斜めに入射する)光線は光入射部で屈折した後、凸部斜面で反射し、正面方向へ曲げられる。光反射層へ入射した光線は光源側へ反射され、輝度向上シートの光源側に設けられた拡散シートあるいは光源下部に設けられた反射部材などで散乱反射された後、再び輝度向上シートへ入射することで再利用される。
このため、特許文献1のシートは拡散シートと組み合わせることで、拡散光である入射光を正面方向へ集光する効果がある。
【0005】
拡散シートと特許文献1の輝度向上シートを重ねて配置すると、輝度向上シートの光入射部が拡散シートの出射面と接触する。そのため、光入射部が傷付いて輝度ムラが生じる場合がある。またニュートンリング現象により色付き、色ムラ、輝度ムラが生じる場合がある。
【0006】
これらの問題は、輝度向上シートの光入射部と拡散シートの出射面とを透明接着剤などで接着することにより避けることができる。しかし、その場合は別の問題が生じる。
図1に示すように、輝度向上シートの光入射部が拡散シートの出射面と接していない場合、入射した光線は入射部で屈折するため、比較的大きな入射角で入射した光線であっても輝度向上シート内部では臨界角以内の角度で進む。そのため斜面に到達した光線は斜面に対し比較的大きな入射角となり、正面方向へ集光される。
【0007】
一方、図2に示すように輝度向上シートの光入射部が拡散シートの出射面と接着されている場合、入射した光線は入射部で屈折せず、比較的大きな入射角で入射した光線は輝度向上シート内部をそのままの角度で進む。そのため斜面に到達した光線は斜面に対し比較的小さな入射角となり、正面方向へ集光されない。
【0008】
この不具合を避けるため、図3に示すように輝度向上シートの凸部斜面の角度θを大きくすると、凸部の高さが低くなる。そのため比較的大きな入射角で入射した光線であっても斜面で反射せず、そのまま出射面へ到達し、界面で屈折して正面方向へ集光されない。
【0009】
図4に示すように輝度向上シートの凸部斜面の角度θを小さくすると、正面方向へ集光する性能を改善できるが、金型の製造、形状転写性、離形性などの点で問題がある。
【0010】
以上のように、拡散シートと特許文献1のような輝度向上シートを重ねて配置すると、傷付き、色付きなどの問題が生じる場合がある一方、接着すると正面方向へ集光されない、という問題がある。
【0011】
【特許文献1】特開平10−106327号公報
【特許文献2】特開2007−191690号公報
【特許文献3】特開平3−050274号公報
【特許文献4】特開2005−206728号公報
【特許文献5】特開2007−297580号公報
【特許文献6】特開2007−308649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、透過型液晶表示装置、透過型看板などにおいて用いられ、正面方向への集光を改善し、かつ、傷付きや色付きを防止できる光学シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、一方の面に遮光材料が充填された溝と透光部とが交互に配列した視野角制御層を有する光学シートであって、遮光材料が発泡性材料により膨張し、遮光材料が溝の開口端部から突出していることを特徴とする光学シートによって解決される。このとき、前記溝の開口端部から突出している遮光材料が、1μm以上50μm以下であることが好ましく、また、前記発泡性材料が熱膨張性マイクロカプセルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学シートは、溝に発泡性材料を含む遮光材料が充填されているので、その後の熱処理などによって遮光材料が発泡し溝部から突出する。この突出した遮光材料が拡散シートと光学シートとのスペーサとして働くので、シートの傷付きなどを防止できる。また透光部と拡散シートとの間に空気層が存在するのでニュートンリング現象による色付きなどを防止できる。また透光部で光が屈折するので正面方向へ効率的に集光できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の光学シート1は、図5に示すように一方の面に略V字状の溝20と略台形の透光部11とが交互に配列されて視野角制御層2を構成している。溝20には発泡性材料により膨張した遮光材料が充填されて遮光部40を形成し、遮光材料が溝の開口端部から突出している。
発泡性材料としては、例えば重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルが一般に知られており(例:特許文献2)、本発明ではこれを用いることができる。発泡性材料を含んだインクとして発泡性インクが一般に知られており(例:特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)、本発明では発泡性インクに遮光材料を混合することができる。
【0016】
遮光材料としては顔料、拡散材、金属粒子などを含有したインクなどを用いることができる(以下、本明細書ではインクを遮光材料と同義で用いることがある)。
インクの基材としては、例えば熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などを用いることができる。インクの基材の屈折率は、透光部の屈折率より低いことが好ましい。これにより、インクが充填された溝の側面においても全反射による光の利用効率向上が期待できる。
【0017】
溝20の形状は、その側面21が直線、放物線の一部などとすることができる。直線であると金型の設計製造が簡単である点で好ましい。溝20の形状は放物線の一部に近似される折れ線、楕円、双曲線などであっても良い。透光部11の断面形状を放物線の一部に近似される形状とすると、放物線の焦点から発した光線が放物線で反射し、シートに垂直な平行光となることを利用でき、正面方向へ効率的に集光できる。図6に示すような、放物線の頂部を放物線の焦点Fを通りその対称軸に垂直な線で切断した形状(頂部が平坦な放物線)を透光部11の形状とすることが好ましい。
【0018】
溝の側面21の角度θは3度以上30度以下が好ましい。これより小さいと金型の耐久性や成形転写性、離型性に問題が生じる場合がある。これより大きいと溝の深さDが小さくなりすぎ、透光部11に入射した光線が斜面に入射せず、正面方向へ効率的に集光できない場合がある。溝20の形状が折れ線や曲線である場合でも、やはり斜面の角度θが最大30度、最小3度とすることが上記と同じ理由で好ましい。
【0019】
遮光部40の形成は、例えば溝20を有する一方の面全体に、溝20を充分埋めるようにインクを塗布し、掻き取り具で溝20以外に塗布されたインクを除去した後、インクを硬化する方法を採用できる。このほか、溝20を有する一方の面の端部にインク溜まりを形成し、掻き取り具でインク溜まりを塗り広げながら掻き取ることによっても溝部のみにインクを充填できる(以下、このような遮光部の形成法を掻き取り法あるいは掻き取り印刷法と称することがある)。
【0020】
発泡性材料としては、掻き取り印刷法の後に発泡させて遮光材料を膨張させることのできるものであれば種々のものが適用可能であるが、発泡性材料として熱膨張性マイクロカプセルを使用した場合は、掻き取った後にインクを加熱し、インクの一部を溝の開口端部から突出させることができる。発泡による見かけの体積増加率は、突出させたいインクの量、インクの掻き取り工程に伴う凹み、インクの乾燥硬化時の体積収縮などを勘案して、適宜発泡性材料の種類や濃度を調節して設定すればよい。
【0021】
掻き取り具は、通常の掻き取り印刷法で用いられる物、例えば金属製またはゴム製のスキージなどを使用できる。ゴム製のスキージを用いる場合は、ゴム硬度(JIS K6253に準ずる)を60〜90程度とするのが好ましい。
【0022】
本発明の光学シート1を液晶表示装置用のバックライトに用いる場合、溝のピッチPが液晶表示装置の画素と干渉し、モアレ障害が発生する場合がある。これを回避するため、溝のピッチPは1mm以下とすることが好ましく、さらに0.5mm以下、特には0.2mm以下とすることが好ましい。
溝の開口端部22の幅WはピッチPに対し0.2〜0.8倍とすることが好ましい。これより小さいと溝の側面21の角度θが小さくなり過ぎ、効率的に正面方向へ集光することが困難になる場合がある。これより大きいと遮光部11の面積割合が大きくなり過ぎ、光の利用効率が低下することがある。遮光部11に入射した光線は遮光材料により拡散シート側へ反射され、拡散シートあるいは光源下部に設けられた反射部材などで散乱反射された後、再び本発明の光学シートへ入射することで再利用されるが、実際の反射率は100%ではないため、再利用される光の割合が大きすぎると光の利用効率が低下するためである。
【0023】
本発明の光学シート1の厚みTは光学性能に特に影響は無いが、例えば0.1〜2mmとすることができる。これより小さいとシートの剛性不足でバックライト組立工程などでの取り扱い性などに問題が生じる場合がある。これより大きくすると、むしろバックライトの薄型化、軽量化の妨げとなる場合がある。
溝の深さDはシートの厚みTに対し5%〜70%とすることが好ましい。これより大きいとシートが裂けやすくなるなど、取り扱い性などに問題が生じる場合がある。これより小さくすると本発明の効果が発揮できない場合がある。
【0024】
溝の開口端部22から突出した遮光材料の高さCは1μm以上とすることが好ましい。これより小さいと傷付き防止など本発明の効果が不十分となる場合がある。また、溝の開口端部22から突出した遮光材料の高さCは50μm以下とすることが好ましい。これより大きいと突出部の形成が困難となることがある。
【0025】
溝を有する基材シート10を製造するには、例えば押出し製造法、プレス成形法、光硬化性樹脂を使用したいわゆる2P(Photo Polymerization)成形法などを利用できる。
押出し製造法、プレス成形法の場合、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂を使用することができる。2P成形法の場合、基材シートとして上記樹脂のほか、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を使用することができ、光硬化性樹脂としてはウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂を使用することができる。
【0026】
上記成形法における成形型の耐久性や成形品の離形性などを考慮し、溝の先端部23(成形型としては凸状部)に面取りやフラット部、曲面部を設けることが好ましい(図7参照)。面取り部の幅Rは溝の開口端部22の幅Wに対し、1〜5%程度が好ましい。
本発明の光学シート1は開口端部22から突出した遮光部40のみを拡散シートと貼り合せて使用してもよい。
溝20を有する一方の面とは反対側の面に、プリズム列、レンチキュラーレンズ列を設けても良い。また前記プリズム列、レンチキュラーレンズ列の配置は一方の面の溝と対応していても良い。
【実施例】
【0027】
図8に実施例で作製した光学シートの断面図を示す。
この光学シートは図9の(a)〜(d)の過程を経て作製される。まず、略V字状溝列を有する基材シート10はポリカーボネート樹脂を使用し、押出し製造法により作製した。ついで遮光部40は、遮光材料として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルおよび白色顔料粒子を含有したウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂からなるインク41を用いて、V字状の溝20を埋めるように塗布し、余分のインク41をスキージゴムにより除去する掻き取り印刷を行った後、加熱処理によって膨張させ、溝部の開口端部22から突出させて形成した。
【0028】
ここで、基材シートの表面形状の仕様は次の通りとした。
基材シート
溝の幅W:50μm
底部の面取り幅R:4μm
溝のピッチP:100μm
溝の深さD:86μm
溝の側面が基材シートの厚さ方向となす角θ:15°
基材シートの厚さT:400μm
溝の開口端部から突出した遮光層の高さC:10μm
【0029】
得られた光学シートの断面を光学顕微鏡により観察したところ、インクが溝の開口端部から10μm突出していた。
【0030】
<比較例>
インクに熱膨張性マイクロカプセルを含有せず、掻き取り印刷後の熱処理をしないことの他は実施例と同様にして光学シートを作製した。
【0031】
実施例および比較例で得られた光学シートを蛍光管と乳白色板からなる液晶表示装置用バックライトに組み込んで評価を行った。
実施例の光学シートを液晶表示装置用バックライトの出射側に重ねて正面から観察した結果、光学シートを重ね合わせない状態より明るかった。
一方、比較例の光学シートを液晶表示装置用バックライトの出射側に重ねて正面から観察した結果、光学シートを重ね合わせない状態より明るかったものの、実施例の光学シートを重ねた場合とは異なり、しみ状の明るさムラがあった。また比較例の光学シートを液晶表示装置用バックライトの乳白色板表面に極薄い透明接着材で貼り合せて正面から観察した結果、明るさムラはなかったが、接着前とほとんど明るさは変わらなかった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来技術を説明する図である。
【図2】従来技術の他の態様を説明する図である。
【図3】従来技術の課題を説明する図である。
【図4】従来技術の他の課題を説明する図である。
【図5】本発明の光学シートを示す図である。
【図6】本発明の光学シートにおける溝部の一例を示す図である。
【図7】本発明の光学シートにおける溝部の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施例に係る光学シートを示す図である。
【図9】本発明の実施例に係る光学シートの作製過程を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 光学シート
2 視野角制御層
10 基材シート
11 透光部
20 溝
21 側面
22 開口端部
23 底部
40 遮光部
41 インク
T 基材シートの厚さ
θ 側面が基材シートの厚さ方向となす角度
D 溝の深さ
W 開口端部の溝幅
P 溝のピッチ
C 溝の開口端部から突出した遮光層の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に遮光材料が充填された溝と透光部とが交互に配列した視野角制御層を有する光学シートであって、遮光材料が発泡性材料により膨張し、遮光材料が溝の開口端部から突出していることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記溝の開口端部から突出している遮光材料が、1μm以上50μm以下である請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記発泡性材料が、熱膨張性マイクロカプセルである請求項1または2に記載の光学シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−145476(P2010−145476A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319501(P2008−319501)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】