説明

光学データ記憶媒体及びそれを使用する方法

【課題】高密度マイクロホログラフィックデータを記録することができ、それにより材料の記憶容量をさらに拡大するように、回折効率を支持するのに充分な屈折率変化を有する光学データ記憶媒体を提供する。
【解決手段】光学データ記憶媒体は、ポリマーマトリックス、三重項励起の際に変化を受けることにより屈折率の変化を起こすことができる反応体、及び化学線を吸収して前記反応体への上位三重項エネルギー移動を起こすことができる非線形増感剤を含む。媒体の屈折率変化能力は少なくとも約0.005である。非線形増感剤はトリアリールメタン色素からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学データ記憶媒体に関する。より特定的には、本開示は、ホログラフィック記憶媒体並びにそれを作成し使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報技術産業の急速な成長により、データ保存システムに対する需要が増大している。データの読み出し又は書き込みが例えばディスクに光を当てることによって行われる光学データ保存は、他の手段、例えば磁気媒体を読み出すための磁気感受性ヘッド、又はビニールに記録された媒体を読み出すための針によって読み出さなければならない媒体に記録されたデータと比べて長所がある。また、ビニール媒体に記憶することができるよりも多くのデータをより小さい媒体に光学的に保存することができる。さらに、光媒体はデータを読み出すのに接触を必要としないので、繰り返して使用する期間の間ビニール媒体ほど劣化を受けやすくない。
【0003】
にもかかわらず、当業者には公知のように、従来の光学データ記憶媒体には制限がある。代わりのデータ保存方法としてホログラフィックストレージがある。これは、データがホログラムとして表される光学データ保存方法の一種である。ホログラフィックストレージにおける初期の試みはページに基づくアプローチによっており、すなわち、ディジタル情報のビットは論理0及び1の二次元のアレイとして体積ホログラム中にコード化され、これらはホログラムが記録される必然的に線形の媒体の『スライス』を横切る。ホログラフィックデータ記憶のより最新の研究はビット様のアプローチに焦点を当てている。すなわち、情報の各々のビット(又は少数のビット)が、媒体内の微細な容積に局在化されて光を反射する領域を創成するホログラムにより表される。ビット様のデータ記憶アプローチに適応することができる物質が大いに追求されている。すなわち、かかる物質に読み書きするのに利用される装置が現在市販されているか、又は市販の読み出し・書き込み装置に適用できるように容易に修正できるからである。さらに、ビット様のアプローチによるホログラフィックデータ記憶は、温度、波長、強度変動、及び振動に対して、ページに基づくアプローチを用いて保存されたホログラフィックデータより強い。ホログラム、特にマイクロホログラムの記録に最適に有用であるために、ビット様のデータ記憶物質は非線形で、さらに記録用の光に応答して望ましい屈折率変化を示さなければならない。記録用の光により物質中に生成する屈折率変調の大きさは、所与のシステム構成に対する回折効率を定め、これはSN比(信号対雑音比)、ビット誤り率、及び達成可能なデータ密度に言い換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7459263号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、記録する光の強度に対して非線形の(又は「閾値」)応答を示すことができ、ビット様のホログラフィックデータの保存に適した光学データ記憶媒体に対するニーズが残されている。特に、媒体内に保存されるホログラムの深さが制限されて増大した容量を実現することができれば有利であろう。かかるデータ記憶媒体は、取り囲む媒体の屈折率が有意に変わることなく、様々な深さにおけるホログラム効率の実質的な悪化が見られないように書き込まれるのがさらに望ましいであろう。望ましくは、かかる提供されるいかなる材料も、高密度マイクロホログラフィックデータを記録することができ、それにより材料の記憶容量をさらに拡大するように、回折効率を支持するのに充分な屈折率変化を有するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、光学データ記憶媒体が提供される。この光学データ記憶媒体は、ポリマーマトリックス、三重項励起の際に変化を受けることにより屈折率の変化を起こすことができる反応体、及び、化学線を吸収して前記反応体への上位三重項エネルギー移動を起こすことができる非線形増感剤を含んでいる。媒体の屈折率変化能力は少なくとも約0.005である。この非線形増感剤はトリアリールメタン色素を含む。
【0007】
別の実施形態では、光学データ記憶が提供される。この方法は光学データ記憶媒体を提供することを含んでいる。この光学データ記憶媒体は、ポリマーマトリックス、三重項励起の際に変化を受けることにより屈折率変化を起こすことができるシンナメート、シンナメート誘導体及び/又はシンナムアミド誘導体を含む反応体、及び、化学線を吸収して前記反応体への上位三重項エネルギー移動を起こすことができる非線形増感剤を含んでいる。媒体の屈折率変化能力は少なくとも約0.005である。非線形増感剤はトリアリールメタンを色素を含む。
【0008】
さらに別の実施形態では、光学データの保存方法が提供される。この方法は、光学データ記憶媒体を提供する第1の工程を含む。光学データ記憶媒体は、ポリマーマトリックス、三重項励起の際に変化を受けることにより屈折率変化を起こすことができる反応体、及び、化学線を吸収して前記反応体への上位三重項エネルギー移動を起こすことができる非線形増感剤を含んでいる。媒体の屈折率変化能力は少なくとも約0.005である。非線形増感剤はトリアリールメタン色素を含んでいる。この方法は前記光学データ記憶媒体内にマイクロホログラムを記録する第2の工程を含んでいる。
【0009】
本発明の上記及びその他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めばより良好に理解されるであろう。図面を通して類似の符号は類似の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、化学線に対する線形増感剤の応答のグラフ表示である。
【図2】図2は、化学線に対する閾値増感剤の応答のグラフ表示である。
【図3】図3は、光学記憶媒体の断面図であり、媒体が線形増感剤を含む場合の化学線の衝撃の領域、及び媒体が閾値増感剤である場合の化学線の衝撃の領域を示す。
【図4】図4は、逆可飽和吸収(reverse saturable absorption)を示す増感剤に対する上位三重項励起状態吸収及び得られるエネルギー移動を示す概略エネルギーレベル図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に従って光学データ記憶媒体に記録されたマイクロホログラムのアレイの反射率のグラフ表示である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に従う強度の関数としての光学データ記憶媒体の一実施形態の感度のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲を通じてここで使用する場合、近似する言語は、それが関連する基本的な機能に変化を生じさせることなく変化することが可能であるあらゆる量的表示を修飾するために適用し得る。従って、「約」のような用語により修飾された値はその明示された正確な値に限定されることはない。場合によって、近似する言語はその値を測定するための機器の精度に対応し得る。同様に、「含まない(free)」は、用語と一緒に使用され得、実体のない数、又は痕跡量を含み得るが、それでもその修飾された用語を含まないと考えられる。
【0012】
本明細書で使用する場合、用語「し得る(may)」及び「あり得る(may be)」は、一組の状況内の存在の可能性、明示された性質、特性若しくは機能の所有を示す。これらの用語はまた、修飾される動詞に関連する1以上の才能、能力、又は可能性を表すことによって別の動詞を修飾し得る。従って、用法「し得る」及び「あり得る」は、状況により修飾された用語が適当、可能、若しくは適切でないこともあり得るということを考慮して、修飾された用語が指示された能力、機能、若しくは用法に対して明らかに適当、可能、若しくは適切であることを指示している。例えば、状況によってはある事象又は能力を期待することができるが、他の状況ではその事象又は能力が起こることができない。この違いは用語「し得る」及び「あり得る」によって捕らえられる。
【0013】
本発明の1以上の具体的な実施形態を以下に記載する。これらの実施形態を簡潔に説明するために、実際の実施に関する全ての特徴を明細書に記載しないことがある。かかる実際の実施の進行中、あらゆるエンジニアリング又はデザインプロジェクトと同様に、実施の毎に変化し得るシステム及びビジネスに関連する制約との適合のような実施者の具体的な目的を達成するために数多くの実施に固有の決定をしなければならないことが了解されよう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、それでも本開示を利用する当業者にとっては設計、作製、及び製造の日常の活動であることが了解されよう。
【0014】
本発明の様々な実施形態の要素を導入する際、単数形態はその要素が1以上あることを意味するものである。用語「からなる」、「含む」及び「有する」は包括的なものであり、記載されている要素以外に追加の要素があり得ることを意味している。さらに、本明細書中の用語「第1」、「第2」などはいかなる順序、量、又は重要さも意味するものではなく、1つの要素を別の要素から区別するために使用されている。
【0015】
本明細書に記載する本発明の実施形態は上記従来技術の欠点に対処する。これらの実施形態は有利なことに改良された光学データ記憶媒体を提供する。一実施形態では、光学データ記憶媒体が提供される。この光学データ記憶媒体は、ポリマーマトリックス、三重項励起の際に変化を受けることにより屈折率変化を生起することができる反応体、及び、化学線を吸収して前記反応体への上位三重項エネルギー移動を生起することができる非線形増感剤を含んでいる。媒体の屈折率変化能力は少なくとも約0.005である。非線形増感剤はトリアリールメタン色素からなる。約1パーセントより大きいような回折効率は、約300ジュール/センチメートル〜約 ジュール/センチメートルのレーザーフルエンスのような当技術分野で通例使われているものより比較的低い約190ジュール/センチメートルのレーザーフルエンスを用いて達成可能である。これは、本明細書に記載するように複雑な電荷移動ドナー−アクセプタータイプに起因する事前配列(pre-alignment)のためであり得る。また、光学記憶媒体の感度は量子効率データから得られるように約10-4平方センチメートル/ジュールの程度である。
【0016】
本明細書で使用する場合、「回折効率」とは入射プローブビーム出力に対するホログラム位置で測定したホログラムにより反射されたビーム出力の割合を意味し、「量子効率」とは吸収された光子が屈折率変化を生じる化学的変化を起こす確率を意味する。「フルエンス」とは、ビーム断面の単位面積を横切った光学的ビームエネルギーの量(例えば、ジュール/平方センチメートルで測定する)を意味し、「強度」とは光学的放射流束密度、例えば単位時間でビーム断面の単位面積を横切るエネルギーの量(例えば、ワット/平方センチメートルで測定する)を意味する。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「非線形増感剤」とは、光強度に対して依存性を有する感受性をもつ材料を指し、すなわち、その感受性は高い(記録)強度では十分に高く、より低い(読み出し)強度では十分に低い。例えば、読む強度が書く強度より約20〜約50倍低い状況の場合、(その材料が存続するべき読み出し寿命及び/又は読み出しサイクル数に関する特定の仮定に基づく)感度は約104倍〜約105倍より大きい程度低下し得る。この強度及び感度の差は非線形性の量を構成する。
【0018】
本発明では、ビット様のアプローチにおけるマイクロホログラフィックデータを記録するのに適した光学データ記憶媒体が提供される。この媒体は、化学線に対して非線形の応答を示すのが望ましく、すなわち、閾値より低い入射レーザー光では屈折率に実質的な変化がなく、閾値より高いと屈折率が大きく変化する。有利なことに、かかる媒体への記録は閾値を越える出力、又は強度を有する光でのみ可能であり、記録されたデータは閾値より低い強度を有する光で繰返し、そして実質的に非破壊的に読むことができる。本発明の光学データ記憶媒体に記録されたマイクロホログラムは、記録するのに用いたビームより大きさが小さいことが期待される。
【0019】
一実施形態では、光学データ記憶媒体は、ポリマーマトリックス内に分散した非線形増感剤及び反応体を含み、高いデータ密度におけるマイクロホログラムの記録に適した屈折率変化を示すことができる。一実施形態では、媒体の屈折率変化能力は少なくとも約0.005である。一実施形態では、屈折率変化能力は約0.005〜約0.25の範囲である。別の実施形態では、屈折率変化能力は約0.01〜約0.2の範囲である。さらに別の実施形態では、屈折率変化能力は約0.005〜約0.1の範囲である。
【0020】
二、三の例を挙げると記録速度、記録強度、及び透明性のような他の性質もビット様式でマイクロホログラフィックデータを記録する光学データ記憶媒体の能力に影響する可能性があるが、個々の媒体の達成可能な回折効率及び/又は屈折率変化がビット様式でマイクロホログラフィックデータを記録する媒体の能力を制御していると考えられる。本発明の光学データ記憶媒体により達成可能な回折効率のため、本媒体は単一のCD又は単一のDVDに匹敵する大きさのディスクに約1テラバイトの情報を記憶することができ得る。
【0021】
一実施形態では、本発明の媒体は三重項励起の際に変化を受ける(Tn;n>1)ことができる反応体を含む。本明細書で使用する場合、用語「変化」とは、反応体のあらゆる間接的な光化学反応、例えば光二量化又は異性化を含めて意味する。光二量化は、構造的に類似及び/又は同一の化学種の未励起の分子による付加を受ける電子的に励起された不飽和分子が関与する二分子の光化学過程である(例えば2つのオレフィンが結合してシクロブタン環構造を形成する)。この反応で起こる共有結合は、一般に光生成物として分類することができる新たな部分を生成する。光二量化、光化学反応又は光反応のような用語と共に使用する場合「間接的」という言葉は、反応体が光子の吸収により直接エネルギーを受け取ってはいないが、最初に光子を吸収し、その後そのエネルギーの一部分を当該反応体に移動する(例えば、増感剤又はメディエイターのような)別の分子からエネルギーを受け取りその後二量化することを意味する。
【0022】
幾つかの実施形態では、記載した光学データ記憶媒体に使用するのに適した反応体は次の特性及び機能性を有し得る。一実施形態では、反応体は、反応体から生成物になるのに必要な容積変化がより少ない二量化を受けることができる。例えば、反応体の直接の光励起ではなく光励起された増感剤から反応体への間接的な「非放射エネルギー移動」(本発明の場合三重項−三重項エネルギー移動)経路による二量化過程を受ける反応体である。これらの反応体では、非線形の増感剤が二光子過程からエネルギーを受け取り、そのエネルギーを、その後第2の反応体と縮合して生成物を生じる1つの反応体に伝える。ポリマーバックボーン上で誘導体化されたときその材料の利用可能な能力に対応する非常に大きい屈折率変化を提供することができる反応体は、例えば、反応体の約85パーセントより多くが生成物に変換されると少なくとも約0.005の屈折率変化能力を達成し得る。最後に、ポリマーバックボーン上で誘導体化されたとき、分子間及び分子内の両方の縮合反応を受け、それによりその消費を加速することができる。これらの反応体は、増感された光反応のより高い量子効率の結果として10ジュール/平方センチメートル未満の入射フルエンスで所望の屈折率変化を提供することができ、これがまたより大きい回折効率とより短い記録時間も提供し得る。
【0023】
一実施形態では、化学線を吸収することができる線形増感剤として、シンナメート物質、シンナメート誘導体、及びシンナムアミド誘導体を挙げることができる。一実施形態では、[2+2]の間接的な光二量化及び間接的な光重合を受けることができるシンナメート物質を使用し得る。これらのシンナメート物質は、約405ナノメートル又は約532ナノメートルにおけるその透明性(無視し得る紫外吸収)のために、シンナメートの線形白化(linear bleaching)を最小に保ち、励起された増感剤からの三重項−三重項エネルギー移動のみを促進する。あらゆるシンナメート物質を使用し得、当業者は光学データ記憶媒体に使用するのに適した多くのものを知っている。幾つかの実施形態では、シンナメート物質は、望ましくは、ポリビニルシンナメート(PVCm)からなり、ポリビニル骨格のシンナメート含有率はポリビニルシンナメートの総重量を基準にして約54重量%〜約75重量%で変化する。
【0024】
ポリビニルシンナメート、シンナメート誘導体及びシンナムアミド類似体の例として、限定されることはないが、ポリビニルシンナメート(PVCm)、ポリビニル4−クロロシンナメート(PV4−ClCm)、ポリビニル3−クロロシンナメート(PV3−ClCm)、ポリビニル2−クロロシンナメート(PV2−ClCm)、ポリビニル4−メトキシシンナメート(PV4−MeOCm)、ポリビニル3−メトキシシンナメート(PV3−MeOCm)、ポリビニル2−メトキシシンナメート(PV2−MeOCm)、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリレート)、(2E,2’E)−(1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(4−クロロフェニルアクリレート)、(2E,2’E)−(1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(4−メトキシフェニル)アクリレート)、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニル)アクリルアミド、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリルアミド)、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジアリール)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリルアミドがある。これらを以下に示す。
【0025】
【化1】

ここで、R=H又はシンナメートであり、X=H(ポリビニルシンナメート(PVCm)、OMe(ポリビニル4−メトキシシンナメート(PV4−MeOCm)、又はCl(ポリビニル4−クロロシンナメート(PV4−ClCm)であり、
【0026】
【化2】

ここで、X=(パラ)−H:すなわち、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリレート)又は
X=(パラ)−Cl:すなわち、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリレート)又は
X=(パラ)−MeO:すなわち、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリレート)であり、
【0027】
【化3】

ここで、X=(パラ)−H:すなわち、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニル)アクリルアミド)又は
X=(パラ)−Cl:すなわち、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリルアミド)又はX=(パラ)−MeO:すなわち、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリルアミド)。
【0028】
一実施形態では、本発明の光学データ記憶媒体に利用する反応体は三重項励起の際に変化を受けることができる。図4を参照すると、概略エネルギーレベル図400が示されている。この図400は励起された状態吸収の上位三重項Tnと、逆可飽和吸収を示す増感剤に対するエネルギー移動とを示している。本発明の光学データ記憶媒体に使用される反応体は、矢印424で表わされる増感剤のT2状態よりも低いが、矢印426で示される増感剤のT1状態より高い、矢印422で表される三重項エネルギーを有している。また、これらの反応体は、増感剤の上位三重項状態(T2以上)からエネルギーを受け取ることができ反応して、ポリマーマトリックス内で、従って記録されたホログラム内で生成物を形成して屈折率変化を提供する。
【0029】
上述の利益に加えて、本明細書に記載した光学データ記憶媒体中の反応体としてかかる物質を使用することで、ポリマーバックボーン上で誘導体化されたとき従来の反応体より高い充填量の可能性も提供され得る。例えば、ポリマーバックボーン上で誘導体化されたとき従来の反応体の充填率(loading)は約30重量%に制限され得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した反応体は、ポリマーバックボーン上にずっと大きな充填率で、すなわち、光学データ記憶媒体の総重量を基準にして約90重量%まで充填し得る。
【0030】
ある種の実施形態では、本発明で提供された反応体を使用することにより、従来の反応体と比較して複屈折が大幅に低下する。幾つかの他の実施形態では、記載した光学的記録媒体では、熱の生成と近隣の位置への信号の漏れ(これは、捕られたホログラフィックパターンの染み(smearing)を生じる可能性がある)を最小にして高分解能のマイクロホログラムを迅速に創成する能力が提供される。
【0031】
反応体は通常、ポリマーマトリックス内で光学的性質の大きい変化を生じさせると共に効率的な三重項エネルギー移動を促進するように比較的に高い濃度で存在する。一実施形態では、反応体は光学データ記憶媒体の総重量を基準にして約2モルパーセント〜約90モルパーセントの範囲の量で光学データ記憶媒体中に存在し得る。別の実施形態では、反応体は光学データ記憶媒体の総重量を基準にして約5モルパーセント〜約85モルパーセントの範囲の量で光学データ記憶媒体中に存在し得る。さらに別の実施形態では、反応体は光学データ記憶媒体の総重量を基準にして約10モルパーセント〜約80モルパーセントの範囲の量で光学データ記憶媒体中に存在し得る。
【0032】
反応体は共有結合又はその他でポリマーマトリックスに結合し得る。例えば、シンナメートで官能化されたポリマーをポリマーマトリックスとして利用し得る。この場合、一実施形態では、光学データ記憶媒体はより高い充填量の反応体を含み得、例えば、光学データ記憶媒体の総重量を基準にして約90重量%まで含み得る。
【0033】
上記反応体に加えて、本発明の光学データ記憶媒体は1以上の非線形増感剤を含むのが望ましい。非線形増感剤は、例えば1以上の光子の形態の入射化学線を吸収し、次にそのエネルギーを反応体分子に移して反応体の分子の再配列を誘起することができ、その結果の生成物が、次いで、媒体の屈折率に変調を起こさせる。この変調は入射化学線からの強度と相情報の両者をホログラムとして記録する。線形増感剤と対照的に、非線形(又は「閾値」)増感剤を使用することの利点は図1A、1B、及び2を参照するとさらに理解することができる。
【0034】
図1を参照すると、化学線に対する線形増感剤の応答のグラフ表示100が示されている。グラフ100は、フルエンスをジュール/平方センチメートルで表すX軸110と、屈折率の変化を表すY軸112とを含んでいる。曲線114は入射化学線に対する線形光感受性物質の応答(最大の屈折率変化)を示す。図2を参照すると、化学線に対する閾値物質の応答のグラフ表示100が示されている。グラフ200は、フルエンスをジュール/平方センチメートルで表すX軸210と、屈折率の変化を表すY軸212とを含んでいる。曲線214は入射化学線に対する線形光感受性物質の応答(最大の屈折率変化)を示す。図1の連続的に上昇する曲線114は、線形光感受性物質が記録光のあらゆる出力密度(強度)で反応し、達成される屈折率変化の量(デルタn)がその物質が受け取る同じ放射エネルギー(フルエンス)では同じであることを示している。対照的に、閾値物質に対する曲線214は、閾値物質が記録光の一定の光強度以上でのみ反応を起こすことを示した。
【0035】
結果として、図3に示されているように、線形光感受性物質を含む光学データ記憶媒体300において、動的範囲の消費はセクション310として示されている対処してない容積内で、化学線が通過する実質的に全ての場所で起こる。対照的に、データ記憶媒体300が閾値物質を含む場合、対処してない容積内の動的範囲の消費は低減又は削除され、消費は実質的に標的容積内のみ、すなわち化学線の焦点312部分のみで起こる。従って、本発明の光学データ記憶媒体内に閾値物質を使用することによって、既に記録されたデータの隣接する層又はその後の記録に利用可能な空の空間を破壊することなく媒体のバルク内に埋められたビット様のデータの層中への記録が促進される。また、厳密に焦点を当てたレーザービームの光強度は焦点の深さによって劇的に変化し、通常はそのビームのくびれ(最も狭い断面)で最大であるので、媒体の閾値応答は当然物質変換がビームのくびれのすぐ近辺でのみ起こるように制限される。このため、各層内のマイクロホログラムの大きさの低下、従って本媒体の層データ記憶能力の増大が促進され得、そのため媒体の全体のデータ記憶能力も増大し得る。データ記憶媒体はまた有利なことに周囲の光内で実質的に安定であり、そのため周囲の光に曝露されても媒体には実質的な劣化又は損傷が起こらない。
【0036】
本発明の光学データ記憶媒体に使用される非線形の増感剤は、非常に短い寿命(ナノ秒〜数μ(マイクロ)秒)を有する上位三重項状態(Tn、n>1)から反応体へエネルギーを移すことができる。Tn状態からエネルギーを移す能力により、本発明により提供される光学記憶媒体に非線形の閾値特性が提供される。すなわち、Tn励起状態吸収は、増感剤が高強度の光、例えば周囲の光より少なくとも2オーダー以上大きい強度を有する光で励起されたときにのみ感知でき、低エネルギーの放射線では無視できるほど小さい。このため、非線形の増感剤を含む本発明の光学データ記憶媒体は、低強度の放射線、例えば、読み出し又は周囲の光に対しては実質的に透明で不活性のままであり、その焦点又はその付近における高エネルギーの記録光に応答してのみその特性(吸収率、従って屈折率)を変化させることができる。結果として、本発明の光学データ記憶媒体はマイクロホログラフィックデータのビット様の記録のために所望及び/又は必要な閾値挙動を示す。
【0037】
図4は、逆可飽和吸収を示す増感剤に対する上位三重項Tn励起状態吸収及び得られるエネルギー移動を示す概略エネルギーレベル図である。エネルギーレベル図300に示されているように、矢印410は、光子が一重項基底状態S0から第1励起状態S1に遷移するときのその光子の基底状態吸収断面積を示す。矢印412で表される系間−交差速度は、増感剤が励起された一重項状態S1から対応する三重項状態T1に移動するときに起こるエネルギーの移動を意味する。矢印414は励起三重項状態吸収断面積を示す。その後の線形吸収により上位レベルの三重項状態Tnが達成されると、2つの上位励起減衰過程が可能である。図4に矢印416で示した1つの可能な減衰過程は、より低いT1状態への内部変換(IC)による非放射性緩和である。他の可能な減衰過程は図4に矢印418で表わされており、増感剤からのエネルギーの放出及び三重項−三重項エネルギー移動を介した反応体へのこのエネルギーの移動を含む。次にこの反応体は矢印420で 表される変化を受けてホログラフィック回折格子を形成し、データを記録する。この場合この変化は化学的反応であり、より特定的には、その三重項状態に電子的に励起されたシンナメート分子が関与する二分子光化学過程で未励起又は基底状態のシンナメート分子の付加を受けてシクロブタン環構造を形成する。
【0038】
幾つかの実施形態では、本発明の非線形の増感剤は2つの光子を、通例は順次に吸収し得る。また、本明細書に記載した増感剤はその吸収したエネルギーを(図4に418で示されているように)反応体に移動すると、元の状態に戻り、この過程を何度も繰り返し得る。従って、増感剤は実質的に経時的に消費されないが、エネルギーを吸収しそのエネルギーを1以上の反応体に放出する能力は経時的に低下し得る。これは、従来光感受性物質として公知の物質と対照的であり、従来の物質はエネルギー(通例単一の光子)を吸収することができるがそのエネルギーを他の分子に移動することはなく、新たな構造に変換されるか、又は別の分子と反応して新たな化合物を形成する。
【0039】
一実施形態では、非線形の増感剤は逆可飽和吸収剤(RSA)からなる。本出願の目的から、逆可飽和吸収剤(RSA)は、所与の波長(例えば、532又は405ナノメートル)で極めて低い線形吸収を有し、その光の殆ど全てを透過する化合物である。しかし、これらの所与の波長において高強度のレーザー出力を当てると、低レベルの線形吸収は、分子がより高い吸収断面積を持ち、同じ波長で大いに吸収するようになり、その後光子を強く吸収する状態に導くことができる。この非線形吸収は逐次二光子吸収といわれることが多い。本発明の光学データ記憶媒体に使用するのに適したRSAの例は、Perry et al., “Enhanced reverse saturable absorption and optical limiting in heavy atom-substituted phthalocyanines”, Optics Letters, May 1, 1994, Vol. 19, No. 9, pages 625-627(援用によりその全体が本明細書の内容の一部をなす)に開示されている。
【0040】
多くのRSAは、532ナノメートルの波長を有する入射化学線が衝突したときに光励起を起こす。この波長は可視スペクトルの可視スペクトルの緑色部分内であるので、これらのRSAは通例「緑色」RSAといわれ得る。これらの緑色RSAのうち光励起により上位三重項(T2)状態に入ることができるものはいずれも本発明の光学データ記憶媒体に利用し得る。一実施形態では、RSAはトリアリールメタン色素である。トリアリールメタン色素の適切な例として、下記表Iに掲げる色素がある。
【0041】
【表1】

光学データ記憶媒体に使用する非線形の増感剤の量はホログラムを記録するのに使用する光の波長におけるその光学密度に依存し得る。増感剤の溶解性もまた1つの要因であり得る。一実施形態では、増感剤はデータ記憶媒体の総重量を基準にして約0.002重量%〜約15重量%の量で使用し得る。別の実施形態では、増感剤は約0.01重量%〜約4.5重量%の量で使用し得る。さらに別の実施形態では、増感剤は約1重量%〜約5重量%の量で使用し得る。
【0042】
幾つかの実施形態では、光安定剤もまた、本明細書に記載した光学データ記憶媒体に含まれ得る。通例、この光安定剤は、本発明で利用する非線形増感剤の光安定化を補助する。当業者は、この目的に有用な化合物/物質、及びこれらの有用な量を承知しており、これらのいずれかを任意の適切な量で使用し得る。1つの代表的な実施形態では、例えば、フタロシアニン色素の光安定化を補助し得る化合物として、ビスジチオベンジルニッケルがある。
【0043】
場合により、データ記憶媒体はさらに、増感剤から反応体への上位三重項エネルギー移動を補助するためにメディエイターを含み得る。メディエイターの三重項状態(T1m)は、(a)増感剤の三重項状態(Tn;n>1)より低いが増感剤のT1より高く、かつ(b)反応体の三重項状態(T1r)より高いのが望ましく、理想的には約50キロカロリー/モル〜約90キロカロリー/モルである。
【0044】
メディエイターを使用する幾つかの実施形態では、試料中のメディエイターの存在は、書く強度(write intensities)において感度を改良するのに役立ち得る。エネルギー−移動システムで感度を制限し得る要因の1つは、RSA色素のT2状態(エチルバイオレット、約110)とアクセプター(シンナメート)分子のT1状態(約58キロカロリー/モル)との間のより大きいエネルギー差、約52キロカロリー/モルである。三重項−三重項エネルギー移動(TTET)は、通例、ドナー−アクセプターエネルギー差が約20キロカロリー/モル未満であるときにのみ、より効率的であることが認められている。この制限を克服するために、我々は、メディエイター、すなわち、光を直接は吸収しないが、RSA色素分子からエネルギーを受け取り、そのエネルギーをさらに、増感剤からアクセプターへの直接の移動よりも高い効率でインデックス変化物質分子に移すことによってエネルギー移動に関与する分子を使用する。メディエイターは、その三重項エネルギー(T1)がRSA色素のT2状態より低いがアクセプターT1状態より高いように選択される。ドナー−アクセプターエネルギー差の非線形機能のため、得られる2つの逐次エネルギー移動過程(ドナー→メディエイター→アクセプター)の効率は直接のドナー→アクセプター移動より効率的であり得る。
【0045】
適切なメディエイターの例としては、限定されることはないが、アセトフェノン(T1≒78キロカロリー/モル)、ジメチルフタレート(T1≒73キロカロリー/モル)、プロピオフェノン(T1≒72.8キロカロリー/モル)、イソブチロフェノン(T1≒71.9キロカロリー/モル)、シクロプロピルフェニルケトン(T1≒71.7キロカロリー/モル)、デオキシベンゾイン(T1≒71.7キロカロリー/モル)、カルバゾール(T1≒69.76キロカロリー/モル)、ジフェニレンオキシド(T1≒69.76キロカロリー/モル)、ジベンゾチオフェン(T1≒69.5キロカロリー/モル)、2−ジベンゾイルベンゼン(T1≒68.57キロカロリー/モル)、ベンゾフェノン(T1≒68キロカロリー/モル)、ポリビニルベンゾフェノン(T1≒68キロカロリー/モル)、1,4−ジアセチルベンゼン(T1≒67.38キロカロリー/モル)、9H−フルオレン(T1≒67キロカロリー/モル)、トリアセチルベンゼン(T1≒65.7キロカロリー/モル)、チオキサントン(T1≒65.2キロカロリー/モル)、ビフェニル(T1≒65キロカロリー/モル)、フェナントレン(T1≒62キロカロリー/モル)、フェナントレン(T1≒61.9キロカロリー/モル)、フラボン(T1≒61.9キロカロリー/モル)、1−ナフトニトリル(T1≒57.2キロカロリー/モル)、ポリ(β−ナフトイルスチレン)(T1≒55.7キロカロリー/モル)、フルオレノン(T1≒55キロカロリー/モル)、及びこれらの組合せがある。
【0046】
利用する場合、メディエイターは、必要により、ポリマーマトリックスと共有結合させるか、又はその他で会合させ得る。このようにしてメディエイターをポリマーマトリックス中に組み込むことにより、より高い濃度のメディエイターを利用することが可能になり、その結果データ記憶媒体の記録効率を増大することができる。
【0047】
存在する場合メディエイターの使用量は、自己消光を起こす、すなわち、メディエイターの2つの三重項が互いに出会ってメディエイターの一重項状態と基底状態を生成する程に、多くてはならない。メディエイターの最適の量はまた特定の増感剤にも依存し得る。一実施形態では、メディエイターがポリマーマトリックス内に分散している場合、メディエイターは約1重量%〜約20重量%の範囲の量でポリマーマトリックス中に存在し得る。別の実施形態では、メディエイターは約1.5重量%〜約10重量%の範囲の量でポリマーマトリックス中に存在し得る。さらに別の実施形態では、メディエイターは約2重量%〜約8重量%の範囲の量でポリマーマトリックス中に存在し得る。一実施形態では、メディエイターがポリマーマトリックスと共有結合している場合、メディエイターは約2重量%〜約50重量%の範囲の量でポリマーマトリックス中に存在し得る。別の実施形態では、メディエイターは約5重量%〜約40重量%の範囲の量でポリマーマトリックス中に存在し得る。さらに別の実施形態では、メディエイターは約4重量%〜約30重量%の範囲の量でポリマーマトリックス中に存在し得る。
【0048】
所望の増感剤及び反応体はポリマーマトリックス全体に実質的に均一に分散させ得るか、又は媒体内のビット様のデータ記録が容易になるようにして分散させ得る。ポリマーマトリックスは線状の、枝分かれした、又は架橋したポリマー又はコポリマーからなり得る。増感剤及び反応体が実質的に均一に分散することができる限りいかなるポリマーも使用し得る。さらに、利用するポリマーはいずれも、上位三重項エネルギー移動過程に実質的に干渉しないのが望ましい。ポリマーマトリックスは望ましくは、光学データ記憶媒体に記録し読み出すのに考えられる波長で光学的に透明であるか、又は少なくとも高い透明性を有するポリマーからなり得る。
【0049】
ポリマーマトリックスに使用するのに適切なポリマーの特定の例としては、限定されることはないが、ポリ(アルキルメタクリレート)、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリビニルアルコール、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルアセテート)、などがある。上述のように、増感剤もポリマーマトリックスに共有結合するか、又はその他で会合させ得る。例えば、スチルベンを含むポリエステル、ポリカーボネート及びポリアクリレートのようなポリマーが容易に入手可能であるか、又はスチルベン単位を含むように容易に官能化される。
【0050】
ポリマーマトリックスはまたジブチルフタレート、ジブチルセバケート又はジ(2−エチルヘキシル(bexy))アジペートのような可塑剤も含有し得る。可塑剤は分子運動を促進することにより記録効率を高めることができる。典型的な可塑剤レベルは記憶媒体の総重量を基準にして約1重量%〜約20重量%、又は約2重量%〜約10重量%の範囲であり得る。
【0051】
本明細書に記載した光学データ記憶媒体は自己支持性の形態であり得る。又は、データ記憶媒体はポリメチル(メタクリレート)(PMMA)、ポリカーボネート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリスチレン、又はセルロースアセテートのような支持材料上にコートしてもよい。ガラス、石英又はシリコンのような無機支持材料も、支持材料の使用が望まれ得る実施形態で使用し得る。
【0052】
かかる実施形態では、光学データ記憶媒体の支持体への接着を改良するために支持材料の表面を処理してもよい。例えば、光学データ記憶媒体を設置する前に支持材料の表面をコロナ放電によって処理してもよい。代わりに、ハロゲン化フェノール又は部分的に加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーのようなアンダーコートを支持材料に施してそれに対する記憶媒体の接着を増大させることができる。
【0053】
一般的に言って、本明細書に記載した光学データ記憶媒体は、所望の増感剤、反応体、メディエイター(必要により)及びポリマーマトリックスをブレンドすることによって調製することができる。これらの割合は広範囲に渡って変えることができ、最適な割合とブレンドする方法は当業者が容易に決定し得る。例えば、光学データ記憶媒体の総重量を基準にして、増感剤は約0.01重量%〜約90重量%の濃度で存在し得、反応体は約2重量%〜約80重量%、さらには約90重量%までの濃度で存在し得る。
【実施例】
【0054】
出発原料は市販品を購入したか又は公知の方法で作成した。置換及び非置換のポリビニルシンナメート合成のための出発原料塩化シンナモイル、塩化オキサリル、p−メトキシケイ皮酸、p−クロロケイ皮酸は販売元(全てAldrich)から入手し、ポリビニルシンナメートはまた販売元(Scientific Polymer)からも入手し、受領したままで使用した。
【0055】
実施例1〜2(E1〜E2):塩化シンナモイル誘導体を付加したポリビニルアルコールの合成
250ミリリットルの丸底フラスコに、88パーセント加水分解したポリビニルアルコール(1.4グラム、0.0292モル繰返し単位)及び25ミリリットルのN−メチルピロリジノンを加えた。得られた混合物を窒素雰囲気下で約2時間セ氏約80度に加熱した。加熱により、ポリビニルアルコールが完全に溶解した。得られた混合物をセ氏約50度に冷却した。塩化シンナモイル誘導体を約2時間の期間に渡って少しずつ固体として加えた。添加が完了した後混合物をさらに約1時間セ氏約50度で撹拌した。得られた混合物を、75ミリリットルのメタノールを含有する配合機中に沈殿させた。得られた固体を吸引ろ過により回収した後30ミリリットルの塩化メチレンに溶解させ、75ミリリットルのメタノール中で再度沈殿させた。得られた固体を室温の真空オーブン中で4時間、その後セ氏50度で一晩乾燥させた。添加した様々な反応体の量を以下の表1に示す。
【0056】
【表2】

比較例1〜2(CE1及びCE2):塩化シンナモイル誘導体を付加したホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−グルタリルフェノキシド(サブPC)の合成
250ミリリットルの丸底フラスコに、88パーセント加水分解したポリビニルアルコール(1.4グラム、0.0292モル繰返し単位)及び25ミリリットルのN−メチルピロリジノンを加えた。得られた混合物を窒素雰囲気下で約2時間セ氏約80度に加熱した。加熱によりポリビニルアルコールが完全に溶解した。得られた混合物をセ氏約50度に冷却した。塩化シンナモイル誘導体を約2時間の期間に渡って少しずつ固体として加えた。約40モルパーセントの塩化シンナモイル誘導体の添加が完了した後、各々の実施例で、塩化メチレン中のホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−グルタリルフェノキシド酸塩化物の対応する重量%溶液2ミリリットルを混合物に加えた(サブPC)。残りの塩化シンナモイルを加えた後、混合物をさらに約1時間セ氏約50度で撹拌した。得られた混合物を、75ミリリットルのメタノールを含有する配合機中で沈殿させた。得られた固体を吸引ろ過により回収した後30ミリリットルの塩化メチレンに溶解させ、75ミリリットルのメタノール中で再度沈殿させた。得られた固体を真空オーブン中室温で4時間、その後一晩セ氏50度で乾燥した。添加した様々な反応体の量を下記表2に示す。
【0057】
【表3】

実施例3〜10(E3〜E10):E1及びE2で調製した塩化シンナモイル誘導体を付加したポリビニルアルコールからの、量子効率研究に使用するためのポリマーフィルムの調製
テトラクロロエタン中0.04モルのトリアリールメタン色素を独立してドープした、それぞれE1及びE2で調製したPV4−MeOCm及びPVCmの2.2重量%溶液を調製した。幾つかの実施例ではメディエイターを加えた。溶液をホットプレート上でセ氏約70度に加熱することによって中味を溶解させた。この溶液を0.45マイクロメートルWhatmanフィルターに通してろ過した。ろ過した溶液を50ミリメートル×25ミリメートルの顕微鏡スライド上に注ぎ入れ、この溶液を毎分約2000回転のスピンコーターで30秒間スピンキャストした。次に、スライドをセ氏約70度の温度のオーブン内で約20分〜約30分乾燥した。生成したポリマーフィルムの厚さはおよそ100ナノメートルであった。使用した色素とメディエイター、及びドープした色素の量を下記表3に示す。書き読む強度における感度を提供する量子効率測定値も表3に示す。
【0058】
本発明者らのエネルギー移動(ET)過程の量子効率(QE)及び感度を定めるために、以下に記載する光学セットアップを使用した。このセットアップは、1つがUV−Visランプに由来し、他が光学パラメーター式発振器(OPO)に由来する2つの光源からなる。材料特性のために、指標変化物質は280ナノメートルに最大の吸収を有する。選択したUVプローブは約280ナノメートル〜約320ナノメートルの範囲に波長を有していた。RSA色素は405ナノメートルの波長域に一部の吸収を有すると仮定されるので、OPOシステムの出力からの405ナノメートルの波長をポンプ曝露源として使用した。
【0059】
【表4】

E3〜E10で調製したフィルム試料で、より高い三重項状態(Tn>1)からシンナメートへの三重項エネルギー移動中の非線形又は閾値特性を試験した。表3に挙げたデータから分かるように、PVCm材料に対して試験したいろいろな色素の中で、量子効率測定値に基づいて、エチルバイオレット塩化物塩が約8.8×10-5という感度値を示した。最も重要なことに、READ(読む)とWRITE(書く)の感度の差はエチルバイオレットの場合10の5乗のオーダーで異なり(8.8×10-5と1.25×10-10)、これはエチルバイオレット/PVCmシステムが低強度の(周囲の)光に対して非常に安定であり得るが高強度レーザーによる書き込み過程中非常に効率的に機能することを示すので極めて重要なパラメーターである。加えて、メディエイターを使用すると、E9及びE10に示されているように、感度はさらに増大した。
【0060】
実施例11(E11):ホログラフィック研究に使用するための、E1及びE2で調製した塩化シンナモイル誘導体を付加したポリビニルアルコールからのポリマーフィルムの調製
マイクロホログラムを実証し、マイクロホログラムの書き込み後の反射率を記録するための厚いフィルム試料を以下のようにして調製した。塩化メチレン:ジクロロエタン(9:1)中の、0.04モルのトリアリールメタン色素(例えばエチルバイオレット塩化物塩)をドープした1グラムのPVCm(E2で調製した)及び4重量%(40ミリグラム、ポリマーに対して)のメディエイターベンゾフェノンの10重量%溶液を調製した。この溶液を0.45ミクロンWhatmanシリンジフィルターに通してろ過した。次に、この溶液を、円形のガラスリム上に溶液を含ませることにより(5センチメートル×5センチメートル)のパイレックス(登録商標)ガラス上にソルベントキャストした。上記セットアップの全体をセ氏45度に設定したホットプレートに載せた。試料を反転ガラス漏斗で覆って、試料全体を覆い、漏斗の先端の開口をKimwipeで覆って溶剤の遅い蒸発を維持した。溶剤は約24時間〜約48時間の期間に渡って蒸発させた。溶液を0.45マイクロメートルWhatmanフィルターに通してろ過した。その後、ガラスプレート上にコートした試料を真空オーブン中に入れ、セ氏65度で3〜4日乾燥して残留する溶剤を追い出した。生成したポリマーフィルムの厚さはおよそ約300マイクロメートル〜約320マイクロメートルであった。
【0061】
マイクロホログラフィック静止テスターシステムを用いて、本発明の光学データ記憶媒体に記録するマイクロホログラムの実験的立証を行った。
【0062】
405ナノメートル装置:405ナノメートルの波長で作動するチューナブルな光学パラメーター式発振器システムを、マイクロホログラムの記録及び読み出しのためのパルス状光源として用いた。開口数(NA)0.16のオプティクスを用いて媒体試料中に光の焦点を当てて、記録体積の概略寸法を1.6×1.6×17マイクロメートルとした。マイクロホログラム記録用に用いたパルスエネルギーは数十〜数百ナノジュールであり、このためかかる集束記録用ビームの焦点で1平方センチメートル当たり数百メガワット〜1平方センチメートル当たり数ギガワットの光強度値を達成することが可能であった。マイクロホログラムから反射した光の読み出しは、記録用の出力に対しておよそ100〜1000倍減弱した同じビームを用いて行った。
【0063】
増感剤に適当なシステムを用いることにより、光学データ記憶媒体へのマイクロホログラムの記録は、明暗領域(フリンジ)からなる強度フリンジパターンを生成する記録媒体のバルクに焦点を当て重なった2つの高強度対抗伝搬パルス状記録ビームによって行った。干渉縞の照射された領域は上記のような変化を受け、その結果その物質の屈折率が局部的に変化し、一方暗領域はそのままであるので、体積ホログラムを創成する。本発明の光学データ記憶媒体は高強度の光に感受性であり、低強度の放射線に対して比較的に不活性である。記録用ビームの出力は、ビームの焦点領域付近の光強度が記録用閾値(これより上では変化が容易に起こる)より上になるが、ビームの焦点から離れた記録可能な領域外では低いままであり、従って意図していない媒体材料を削除する(記録又は消去)ように調節した。
【0064】
マイクロホログラム記録中、一次記録用ビームは半波プレート(λ/2)及び第1偏光ビームスプリッターを用いて信号と基準に分割された。2つの二次ビームは対抗伝搬幾何学で試料に向けられ、開口数(NA)0.4以下の同じ非球面レンズによって光学データ記憶媒体のバルクに焦点を当て、重ねられた。両方のビームの偏光は2つの四分の一波プレート(λ/4)により円偏光に変換され、そのためビームが確実に干渉して高コントラストのフリンジパターンを創成した。試料及び信号ビームレンズを、25ナノメートルの分解能を有する閉回路の三軸位置決めステージに取り付けた。試料の基準側の位置感受性検出器を使用して、媒体の焦点を当てた信号及び基準ビームの最適化された重なりが得られるように信号レンズを配列し、従って、最適化された記録が得られた。
【0065】
可変の減衰器及び半波プレート/PBSアセンブリを使用して、記録及び/又は読み出し中の出力レベルを制御した。これにより、光学データ記憶媒体のマイクロホログラフィック記録特性を、記録出力及び/又はエネルギーの関数として測定することが可能になる。この関数依存性により、記録されるホログラムの強度が媒体が受け取る光エネルギーの合計量により大いに定められるが光強度には依存しない線形光学データ記憶媒体/記録と、記録効率が光の強度に大いに依存する非線形の閾値光学データ記憶媒体/記録とが区別される。線形の媒体では、小さい露出で低強度のホログラムが得られ、露出が大きくなるにつれて次第に増大する。対照的に、非線形の閾値媒体では、閾値を越える強度でのみ記録が可能である。
【0066】
読み出し中、信号ビームを遮断し、基準ビームをマイクロホログラムにより入射方向と反対の方向に反射した。この反射したビームを四分の一波プレート及び第2の偏光ビームスプリッターを用いて入射ビーム経路から連結し(coupled out)、共焦点幾何学の校正光ダイオードに集めて、回折効率の絶対の尺度を提供した。読み出しオプティクスに対して試料を並進させることにより、マイクロホログラム回折応答の3Dプロフィールを得、マイクロホログラムの寸法を評価することが可能であった。
【0067】
図5は、実施例11で調製した試料に記録した一連のマイクロホログラムの反射率のグラフ表示である。グラフ500は、Y軸512上に百分率の反射率を、X軸510上にマイクロメートル単位の横方向の位置を示す。反射率の値は約360メガワット/平方センチメートルの強度で0.012パーセントに達した。
【0068】
実施例12〜13(E12及びE13)並びに比較例3〜4(CE3及びCE4):感度の比較研究で使用するための、E1及びE2で調製した塩化シンナモイル誘導体を付加したポリビニルアルコールから、及び塩化シンナモイル誘導体を付加したホウ素サブフタロシアニン3−ヨード−5−グルタリルフェノキシドからのポリマーフィルムの調製
これらのフィルムは上記実施例3〜10に記載したのと同様にして調製した。表4は、CE3で調製したフィルムとE12で調製したものとの比較、及びCE4で調製したフィルムとE13で調製したものとの比較を示す。同様な充填レベルの場合、感度の値は、サブフタロシアニン色素と比較してエチルバイオレット色素は数オーダー程度良好である。感度は360メガワットの一定強度で試験した。
【0069】
【表5】

図6は、本発明の一実施形態に従う3.5ジュール/平方センチメートル及び5ジュール/平方センチメートルの固定された記録フルエンスに対する強度の関数としての光学データ記憶媒体の一実施形態の感度のグラフ表示である。グラフ600は、Y軸612上に平方センチメートル/ジュール単位の感度を、X軸610上にメガワット/平方センチメートル単位の強度を示す。曲線614は、実施例12で調製したフィルム試料に対して3.5ジュール/平方センチメートルの固定されたフルエンスで記録した感度を示す。曲線616は、実施例13で調製したフィルム試料に対して5ジュール/平方センチメートルの固定されたフルエンスで記録した感度を示す。図6から分かるように、感度は約360メガワット/平方センチメートルの強度で4×10-5平方センチメートル/ジュールの値に達した。図6及び表4から明らかなように、エチルバイオレット色素を含む試料は、サブPC色素を含む試料より低いフルエンスでより高い値の感度を示す。
【0070】
本明細書には本発明の幾つかの特徴のみを示し記載したが、多くの修正と変化が当業者には自明であろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の思想内に入るものとしてかかる修正と変化の全てを包含するものと理解されたい。
【符号の説明】
【0071】
100 グラフ
110 x軸−フルエンス
112 y軸−屈折率変化
114 曲線
200 グラフ
210 x軸−フルエンス
212 y軸−屈折率変化
214 曲線
300 光学データ記憶媒体
310 セクション
312 焦点
400 エネルギーレベル図
412 系間交差速度
414 励起三重項状態吸収断面積
416 減衰過程
418 減衰過程
420 反応体変化
422 三重項エネルギー
424 三重項エネルギー
426 三重項エネルギー
500 グラフ
510 y軸 百分率の反射率
512 x軸 横方向の位置
600 グラフ
610 y軸 感度
612 x軸 強度
614 曲線
616 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス、
三重項励起の際に変化を受けることにより屈折率の変化を引き起こすことができる反応体、及び
化学線を吸収して前記反応体への上位三重項エネルギー移動を起こすことができる非線形増感剤
を含んでなり、
媒体の屈折率変化能力が少なくとも約0.005であり、
非線形増感剤がトリアリールメタン色素を含む、
光学データ記憶媒体。
【請求項2】
媒体の屈折率変化が少なくとも0.05である、請求項1記載の光学データ記憶媒体。
【請求項3】
反応体がシンナメート、シンナメート誘導体、シンナムアミド誘導体、又はこれらの組合せからなる、請求項1記載の光学データ記憶媒体。
【請求項4】
反応体が、ポリビニルシンナメート(PVCm)、ポリビニル4−クロロシンナメート(PV4−ClCm)、ポリビニル3−クロロシンナメート(PV3−ClCm)、ポリビニル2−クロロシンナメート(PV2−ClCm)、ポリビニル4−メトキシシンナメート(PV4−MeOCm)、ポリビニル3−メトキシシンナメート(PV3−MeOCm)、ポリビニル2−メトキシシンナメート(PV2−MeOCm)、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリレート)、(2E,2’E)−(1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(4−クロロフェニルアクリレート)、(2E,2’E)−(1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(4−メトキシフェニル)アクリレート)、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニル)アクリルアミド、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリルアミド)、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジアリール)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリルアミド、又はこれらの組合せからなる、請求項3記載の光学データ記憶媒体。
【請求項5】
媒体がマイクロホログラフィックデータを記憶することができる、請求項1記載の光学データ記憶媒体。
【請求項6】
さらに、非線形増感剤と反応体との間でエネルギーを移動することができるメディエイターを含む、請求項1記載の光学データ記憶媒体。
【請求項7】
メディエイターがアセトフェノン、ジメチルフタレート、ベンゾフェノン、9H−フルオレン、ビフェニル、フェナントレン、1−ナフトニトリル、又はこれらの組合せからなる、請求項6記載の光学データ記憶媒体。
【請求項8】
非線形増感剤が、逆可飽和吸収剤による逐次二光子吸収過程を含む、請求項1記載の光学データ記憶媒体。
【請求項9】
非線形増感剤が、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ローズベンガル、ローダミン123、ピロニンY、又はクリスタルバイオレットラクトンからなる、請求項8記載の光学データ記憶媒体。
【請求項10】
さらに、光安定剤を含む、請求項9記載の光学データ記憶媒体。
【請求項11】
光安定剤がビスジチオベンジルニッケルからなる、請求項10記載の光学データ記憶媒体。
【請求項12】
ポリマーマトリックスが、1以上のポリビニルアルコール、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(酢酸ビニル)、又はこれらの組合せからなる、請求項1記載の光学データ記憶媒体。
【請求項13】
反応体及び非線形増感剤がポリマーマトリックス全体に実質的に均一に分布している、請求項1記載の光学データ記憶媒体。
【請求項14】
ポリマーマトリックス、
三重項励起の際に変化を受けることにより屈折率の変化を引き起こすことができるシンナメート、シンナメート誘導体及び/又はシンナムアミド誘導体からなる反応体、及び
化学線を吸収して前記反応体への上位三重項エネルギー移動を起こすことができる逆可飽和吸収剤からなる非線形増感剤
を含んでなり、
媒体の屈折率変化能力が少なくとも約0.005であり、
非線形増感剤がトリアリールメタン色素を含む、
マイクロホログラフィックデータのビット様記録のための光学データ記憶媒体。
【請求項15】
媒体の屈折率変化が少なくとも約0.05である、請求項14記載の光学データ記憶媒体。
【請求項16】
反応体が、ポリビニルシンナメート(PVCm)、ポリビニル4−クロロシンナメート(PV4−ClCm)、ポリビニル3−クロロシンナメート(PV3−ClCm)、ポリビニル2−クロロシンナメート(PV2−ClCm)、ポリビニル4−メトキシシンナメート(PV4−MeOCm)、ポリビニル3−メトキシシンナメート(PV3−MeOCm)、ポリビニル2−メトキシシンナメート(PV2−MeOCm)、(2E,2’E)−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニルアクリレート)、(2E,2’E)−(1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(4−クロロフェニルアクリレート)、(2E,2’E)−(1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(4−メトキシフェニル)アクリレート)、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−フェニル)アクリルアミド、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイル)ビス(3−(4−クロロフェニル)アクリルアミド)、(2E,2’E)−N,N’−((1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジアリール)ビス(3−(4−メトキシフェニル)アクリルアミド、又はこれらの組合せからなる、請求項14記載の光学データ記憶媒体。
【請求項17】
非線形増感剤が、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ローズベンガル、ローダミン123、ピロニンY、及びクリスタルバイオレットラクトンから選択される、請求項14記載の光学データ記憶媒体。
【請求項18】
さらに、非線形増感剤と反応体との間でエネルギーを移動することができるメディエイターを含む、請求項14記載の光学データ記憶媒体。
【請求項19】
メディエイターがアセトフェノン、ジメチルフタレート、ベンゾフェノン、9H−フルオレン、ビフェニル、フェナントレン、1−ナフトニトリル、又はこれらの組合せからなる、請求項18記載の光学データ記憶媒体。
【請求項20】
ポリマーマトリックス、三重項励起の際に変化を受けることにより屈折率の変化を起こすことができる反応体、及び化学線を吸収して前記反応体への上位三重項エネルギー移動を起こすことができる非線形増感剤を含み、媒体の屈折率変化能力が少なくとも約0.005であり、非線形増感剤がトリアリールメタン色素を含む、光学データ記憶媒体を準備し、
前記光学データ記憶媒体にマイクロホログラムを記録する
ことを含んでなる、光学データの保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−138162(P2012−138162A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−255656(P2011−255656)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】