説明

光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置

【課題】従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性に優れ、液晶表示装置に組み込んだときに観察される円状の色味変化が改善された光学フィルムの提供。
【解決手段】外層/コア層/外層の3層構成からなり、前記コア層が(メタ)アクリル系樹脂を主成分として含み、前記外層が下記式を満たす湿度依存性改良剤を含み、かつ、セルロースアシレートを主成分として含むことを特徴とする光学フィルム(ΔRth(rh、3)はセルロースアセテート100質量部に対して湿度依存性改良剤を3質量部添加したフィルムの相対湿度10%におけるRthから、相対湿度80%におけるRthを引いた値;ΔRth(rh、0)は、湿度依存性改良剤が添加されていないセルロースアセテートフィルムの相対湿度10%におけるRthから、相対湿度80%におけるRthを引いた値)。
(ΔRth(rh、3)−ΔRth(rh、0)≦−4nm

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低消費電力で、薄層化が可能であることから、TVやパーソナルコンピューター等の画像表示装置として広く採用されている。近年、液晶表示装置はその普及にともない、更なる薄層化および高性能化が求められている。液晶表示装置は液晶セルの両側に偏光板が設けられており、偏光板はヨウ素や染料を吸着配向させた偏光子の両面を透明樹脂で挟み込んだ構成をしている。このような透明樹脂は偏光子を保護する目的を持ち、セルロースエステルフィルムが最も一般的に使用されている。
【0003】
偏光板保護フィルムとしては、透過率が高く、アルカリ水溶液に浸漬させてその表面を鹸化し親水化することで偏光子との優れた接着性を実現できることから、セルロースエステルフィルムが広く用いられている。
また偏光子を両面から挟み込む2枚の偏光板保護フィルムのうち、液晶セル側に用いられるフィルムは、液晶表示装置の視野角を補償する位相差フィルムとしての機能も持っていることが薄層化の要請から一般的となっている。この機能の点においても、液晶表示装置の視野角補償に必要とされる位相差を持たせることができるセルロースエステルフィルムが有効に用いられてきた。
【0004】
しかしながら、セルロースエステルフィルムは、素材の特徴として、環境湿度の変化によりフィルムの特性が変化するという問題があった。
この課題を解決するために、セルロースエステルに代わるフィルムとして、吸湿性が低く、複屈折性も有する、メチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂フィルムが提案されている。(特許文献1参照)。このような(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、従来から共重合化や、他の樹脂層との積層が検討されている(例えば、特許文献2〜5参照)。特許文献2〜5には、(メタ)アクリル系樹脂は着色が少なく、耐熱水、耐溶媒、耐候および耐衝撃性などや機械的強度に優れることが記載されている。
【0005】
一方、低レテーデーションであり光学的ひずみが少なく、輝点異物が少なく、高湿度化での寸度安定性が少ない、ガラス基板との密着性のよい偏光板用保護フィルムを提供する観点から、外層としてセルロース系樹脂層を設け、コア層としてアクリル系樹脂をはじめとして様々なバリエーションの樹脂層を設けて、積層したフィルムが提案されている(特許文献6)。ここで、特許文献6には、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、一軸PET等の樹脂フィルムを偏光板用保護フィルムに用いるとき、これらのポリマーは偏光子との接着性が不十分であったと記載があり、同文献に記載の構成の積層フィルムとすることでこの問題点を解決することができたと記載がある。しかしながら、特許文献6には、アクリル樹脂について、偏光子との接着性の問題があるかについては言及されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−119217号公報
【特許文献2】特開2000−230016号公報
【特許文献3】特開2001−151814号公報
【特許文献4】特開2002−120326号公報
【特許文献5】特開2002−254544号公報
【特許文献6】特開2001−215331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らが(メタ)アクリル系樹脂をそのまま単層で偏光板保護フィルムとして用いたところ、従来のアルカリ鹸化による手法で偏光子と(メタ)アクリル系樹脂フィルムを貼り合わせると、偏光子との接着性がセルロースエステルフィルムに劣る問題があることがわかった。そのため偏光子との接着性を向上させるための易接着処理(例えば、コロナ処理)をフィルム面に行うか、紫外性線硬化型の接着剤を用いて接着層を設ける等、従来のアルカリ鹸化による手法よりも工程が増え、歩留まり低下の要因となるとともに、偏光板保護フィルムの製法としてもコスト上の問題が生じることがわかった。
【0008】
このような状況に対し、本発明者らが特許文献6に記載の(メタ)アクリル系樹脂をコア層として外層にセルロース誘導体からなる表層を設ける積層構成のフィルムを用いる方法を検討したところ、同文献に記載のフィルムを偏光板保護フィルムとして用いると、外層に対して従来のアルカリ鹸化の手法を行うことにより偏光子との接着性が改善することがわかった。
【0009】
しかしながら、本発明者らが実際に特許文献6に記載のフィルムを偏光板保護フィルムとして用いて液晶表示装置に組み込んだところ、環境湿度を変化させると液晶表示装置を斜めから観察ときに円状の色味変化が生じてしまう問題が生じることが新たにわかり、この新たな問題を解決する必要があることが判明した。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性に優れ、液晶表示装置に組み込んだときに観察される円状の色味変化が改善された光学フィルムを提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、該光学フィルムの生産性に優れた製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が鋭意検討をした結果、コア層として(メタ)アクリル系樹脂を用い、かつ、偏光子との貼り合わせ克服のためにセルロースアセテートの層を外層として同時に併せ持つフィルムとし、外層にセルロースアセテートの弱点である湿度の変化による位相差値の変化を抑制する添加剤を用いることによって、理由は不明であるが、特許文献6に記載のフィルムを液晶表示装置に組み込んだときに観察されていた円状の色味変化が顕著に改善されることを見出すに至った。すなわち、以下の構成の光学フィルムにより、上記課題を解決できることを見出した。あわせて、上記(メタ)アクリル系樹脂とセルロースアセテートを、溶液製膜・共流延法により同時に製膜できる、該光学フィルムの生産性に優れた製造方法を見出した。
【0012】
すなわち、本発明は以下の構成である。
[1] 外層/コア層/外層の3層構成からなり、前記コア層が(メタ)アクリル系樹脂を主成分として含み、前記外層が下記式(I)を満たす湿度依存性改良剤を含み、かつ、セルロースアシレートを主成分として含むことを特徴とする光学フィルム。
式(I) ΔRth(3)≦−4nm
式(I’) ΔRth(3)=(ΔRth(rh、3)−ΔRth(rh、0)
(式(I)中、ΔRth(rh、3)はアセチル置換度2.86のセルロースアセテート100質量部に対して湿度依存性改良剤を3質量部添加した厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。ΔRth(rh、0)は、湿度依存性改良剤が添加されていない、アセチル置換度2.86のセルロースアセテートからなる厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。Rthは波長590nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーション(単位:nm)を表す。)
[2] 下記式(II)で定義されるΔRth(10%−80%)が、−10〜5nmであることを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
式(II) ΔRth(10%−80%)=Rth(10%)−Rth(80%)
(式(II)中、Rth(10%)はフィルムの波長590nm、25℃、相対湿度10%におけるフィルムの膜厚方向のレターデーションRthの値を表す。Rth(80%)はフィルムの波長590nm、25℃、相対湿度80%におけるフィルムの膜厚方向のレターデーションRthの値を表す。)
[3] 前記コア層の主成分である前記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が80万〜200万であることを特徴とする[1]または[2]に記載の光学フィルム。
[4] 前記湿度依存性改良剤が、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム:
【化1】

一般式(1)中、Yはメチン基又は窒素原子を表し;Qa、Qb及びQcはそれぞれ、単結合又は2価の連結基を表し;Ra、Rb、及びRcはそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRbは連結して環を形成してもよく;X2は、単結合又は2価の連結基を表し、X1は、単結合又は下記2価の連結基群(5)
【化2】

(各式中、*側が前記各式で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。)から選択される2価の基を表し;R1及びR2はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。
[5] 前記湿度依存性改良剤が、下記一般式(101)または一般式(102)で表される化合物の少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【化3】

(一般式(101)中、RAはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基又はアリール基を表す。X101、X102、X103及びX104はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。R101、R102、R103及びR104はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表す。)
【化4】

(一般式(102)中、RB及びRCはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基又はアリール基を表す。X105及びX106はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。R105及びR106はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表す。)
[6] 前記一般式(101)または(102)におけるX101〜X106がそれぞれ独立に単結合または下記一般式(103)で表される群の中から選ばれることを特徴とする[5]に記載の光学フィルム。
一般式(103)
【化5】

[7] 前記外層の合計膜厚が20μm以下であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[8] 前記コア層の膜厚が10〜100μmであることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[9] 全膜厚に占める、前記外層の合計膜厚の割合が、2〜40%であることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[10] 光弾性係数の値が−3.0×10-12Pa-1〜3.0×10-12Pa-1であることを特徴とする、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[11] セルロースアシレートと下記式(I)を満たす湿度依存性改良剤と有機溶媒を含有するドープ(A)、および(メタ)アクリル系樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を、流延基材側から(A)−(B)−(A)の順番に共流延法により同時に流延基材上に流延する工程を含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
式(I) ΔRth(3)≦−4nm
式(I’) ΔRth(3)=(ΔRth(rh、3)−ΔRth(rh、0)
(式(I)中、ΔRth(rh、3)はアセチル置換度2.86のセルロースアセテート100質量部に対して湿度依存性改良剤を3質量部添加した厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。ΔRth(rh、0)は、湿度依存性改良剤が添加されていない、アセチル置換度2.86のセルロースアセテートからなる厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。Rthは波長590nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーション(単位:nm)を表す。)
[12] 前記ドープ(B)に含まれる前記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が80万〜200万であることを特徴とする[11]に記載の光学フィルムの製造方法。
[13] 前記ドープ(A)の流延厚みを、ドープ(A)の乾燥厚みの合計が20μm以下になるように制御することを特徴とする[11]または[12]に記載の光学フィルムの製造方法。
[14] 前記ドープ(A)の複素粘度ηAと、前記ドープ(B)の複素粘度ηBが、下記式(III)の関係を満たすように制御することを特徴とする、[11]〜[13]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(III) ηA≦ηB
[15] 前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の25℃における複素粘度がいずれも10〜80Pa・sであることを特徴とする[11]〜[14]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[16] 前記ドープ(A)の固形分濃度が15〜25質量%であることを特徴とする[11]〜[15]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[17] [11]〜[16]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする、光学フィルム。
[18] 偏光子と、[1]〜[10]および[17]のいずれか一項に記載の光学フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
[19] [1]〜[10]および[17]のいずれか一項に記載の光学フィルム、または、[15]に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
[20] IPS方式であることを特徴とする、[19]に記載の液晶表示装置。
[21] バックライト側偏光板表面とバックライト側のフィルム部材との距離が10mm以下であることを特徴とする、[19]または[20]に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性に優れ、液晶表示装置に組み込んだときに観察される円状の色味変化が改善された光学フィルムを提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、本発明の光学フィルムの生産性にすぐれた製造方法を提供できる。また、本発明の液晶表示装置は、円状の色味変化を生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】バンド流延装置の一例を示す模式図である。
【図2】ドラム流延装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の光学フィルム及びその製造方法、並びに本発明の光学フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、外層/コア層/外層の3層構成からなり、前記コア層が(メタ)アクリル系樹脂を主成分として含み、前記外層が下記式(I)を満たす湿度依存性改良剤を含み、かつ、セルロースアシレートを主成分として含むことを特徴とする。
式(I) ΔRth(3)≦−4nm
式(I’) ΔRth(3)=(ΔRth(rh、3)−ΔRth(rh、0)
(式(I)中、ΔRth(rh、3)はアセチル置換度2.86のセルロースアセテート100質量部に対して湿度依存性改良剤を3質量部添加した厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。ΔRth(rh、0)は、湿度依存性改良剤が添加されていない、アセチル置換度2.86のセルロースアセテートからなる厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。Rthは波長590nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーション(単位:nm)を表す。)
以下、本発明のフィルムの好ましい態様について説明する。
【0017】
<フィルム層構成>
(外層の厚み)
本発明の光学フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を含有するコア層の両側に下記式(I)を満たす湿度依存性改良剤を含み、かつ、セルロースアシレートを主成分として含む外層を有する。このような構成により、本発明のフィルムは、偏光子との接着性および液晶表示装置に組み込んだときに観察される円状の色味変化が改善できる機能を持つ。
セルロースアシレートを含む前記外層の合計膜厚は、20μm以下であることが好ましく、3μmより厚く20μm以下の厚みであることがより好ましく、3.5〜15μmであることが特に好ましく、より特に好ましくは4〜8μmである。厚いセルロースアシレートフィルムをコア層として用いてその上に薄いアクリル機能層を表層として塗布等により積層したフィルムと比べて、本発明のフィルムはこのような厚みのフィルム層構成とすることで光弾性係数を小さくすることができる。
【0018】
(コア層の厚み)
本発明の光学フィルムは、通常20〜40μmの偏光子の保護フィルムとしての機能を発揮することが好ましい。このため、(メタ)アクリル系樹脂を含むコア層の厚みは、10〜100μmであることが好ましい。さらに好ましくは20〜80μmであり、より好ましくは20〜60μmであり、特に好ましくは30〜60μmである。
【0019】
(積層態様)
本発明のフィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を含有するコア層の両側にセルロースアシレートからなる外層を有する。
本発明のフィルムは、前記コア層の両面に前記外層を1層ずつ有することがより好ましい。
【0020】
本発明のフィルムは、積層体としての光学フィルム全体の膜厚は、10〜240μmが好ましく、より好ましくは10〜150μmであり、特に好ましくは10〜100μmであり、より特に好ましくは、20〜60μmである。
【0021】
本発明のフィルムは、さらに、全膜厚に占める、前記外層の合計膜厚の割合が、2〜40%であることが好ましく、3〜30%であることがより好ましく、5〜20%であることが特に好ましい。ただし、ここでいう外層の合計膜厚とは、外層が2層ある場合は2層の合計膜厚を意味する。
【0022】
(フィルム幅)
本発明のフィルムは、フィルム幅が400〜2500mmであることが好ましく、1000mm以上であることがより好ましく、1500mm以上であることが特に好ましく、1800mm以上であることがより特に好ましい。
【0023】
次に、本発明のフィルムの各層に含まれる成分の詳細と好ましい態様について、説明する。
以下、コア層、外層の構成について順に説明する。
【0024】
<コア層>
本発明の光学フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を含有するコア層を有する。本明細書中、(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル系樹脂とアクリル系樹脂の両方を含む概念である。また、(メタ)アクリル系樹脂には、アクリレート/メタクリレートの誘導体、特にアクリレートエステル/メタクリレートエステルの(共)重合体も含まれる。
【0025】
((メタ)アクリル系樹脂)
前記(メタ)アクリル酸系樹脂の繰り返し構造単位は、特に限定されない。前記(メタ)アクリル酸系樹脂は、繰り返し構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位を有することが好ましい。
【0026】
前記(メタ)アクリル酸系樹脂は、繰り返し構造単位として、さらに、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸および下記一般式(201)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される繰り返し構造単位を含んでいてもよい。
一般式(201)
CH2=C(X)R201
(式中、R201は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−CN基、−CO−R202基、または−O−CO−R203基を表し、R202およびR203は水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。)
【0027】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、耐熱性、透明性が優れる点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは10〜100重量%、さらに好ましくは40〜100重量%、特に好ましくは50〜100重量%である。
【0028】
前記水酸基含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水酸基含有単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
【0029】
前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
前記不飽和カルボン酸を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
【0030】
前記一般式(201)で表される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
前記一般式(201)で表される単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
【0031】
前記単量体成分は重合した後にラクトン環を形成していてもよい。その場合、単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得ることが好ましい。
前記単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るための重合反応の形態としては、溶剤を用いた重合形態であることが好ましく、溶液重合が特に好ましい。
【0032】
溶剤を用いた重合形態の場合、重合溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられ、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の製造方法では、(メタ)アクリル系樹脂を有機溶媒に溶解させて溶液流延を行って前記コア層を形成するため、(メタ)アクリル系樹脂の合成時における有機溶媒は、溶融製膜を行う場合よりも限定されず、沸点が高い有機溶媒を用いて合成してもよい。
【0033】
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
重合開始剤の量の調整により、重合体の重量平均分子量を調整することができる。
【0034】
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑止するために、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50重量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50重量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して50重量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中の生成した重合体の濃度は、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。
【0035】
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されず、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中の生成した重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化をより十分に抑止することができる。添加する重合溶剤としては、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、1種のみの溶剤であってもよいし、2種以上の混合溶剤であってもよい。
【0036】
重合工程で得られた前記単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体の重量平均分子量は、80万〜200万が好ましく、100万より大きく200万以下の範囲であることがより好ましく、100万より大きく180万以下の範囲であることが特に好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル系樹脂は、重量平均分子量(質量平均分子量と称することもある)が(メタ)アクリル系樹脂のコア層の両側にセルロースアシレートを主成分とする外層を設ける。両者の重量平均分子量の組合せに制限はないが、製膜の過程で最適となるよう、適宜、重量平均分子量を選択できる。
【0038】
ここで、アクリル樹脂として一般に分子量10万程度のものが製膜に用いられている。詳しくは、溶融製膜では、高分子量のアクリル樹脂フィルムを製膜することがそもそも不可能である。また、アクリル樹脂フィルムは溶液製膜によっても製膜可能だが、その場合は溶液流延しやすい粘度のドープを調製する必要がある。分子量30万以上のアクリル樹脂であれば、流延適性が高いドープを調製しやすく、このようなアクリル樹脂が従来製膜に用いられていた。
これに対し、本発明の光学フィルムではセルロースアシレートの外層との共流延を実現するため、さらに大きい重量平均分子量のアクリル樹脂を用いて製膜されたことが好ましい。すなわち、本発明の光学フィルムに用いられる(メタ)アクリル系樹脂は、特に光学フィルムとしての脆性、自己成膜性の観点で、重量平均分子量(Mw)は80万〜200万の範囲であることが好ましく、溶液流延適性の観点から100万より大きく〜200万までの範囲であることがより好ましく、100万より大きく180万までの範囲であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
(メタ)アクリル系樹脂が、重量平均分子量80万〜200万であり、分子内にメチルメタクリレート単位を50質量%以上有する(メタ)アクリル系樹脂であることが特に好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上℃である。
【0040】
(コア層に含まれてもよいその他の熱可塑性樹脂)
本発明における前記コア層は、上記(メタ)アクリル系樹脂以外のその他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。その他の熱可塑性樹脂は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に種類は問わないが、熱力学的に相溶する熱可塑性樹脂の方が、透明性や機械強度を向上させる点において好ましい。
【0041】
上記その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。ゴム質重合体は、表面に本発明のラクトン環重合体と相溶し得る組成のグラフ卜部を有するのが好ましく、また、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルム状とした際の透明性向上の観点から、100nm以下である事が好ましく、70nm以下である事が更に好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル系樹脂と熱力学的に相溶する熱可塑性樹脂としては、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体、具体的にはアクリロニトリル−スチレン系共重合体やポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル酸エステル類を50重量%以上含有する重合体を用いるとよい。それらの中でもアクリロニトリル−スチレン系共重合体を用いると、ガラス転移温度が120℃以上、面方向の100μmあたりの位相差が20nm以下で、全光線透過率が85%以上である前記コア層を容易に得ることが可能となる。
【0043】
本発明における前記コア層が上記その他の熱可塑性樹脂を含有するとき、上記(メタ)アクリル系樹脂とその他の熱可型樹脂の含有割合は、好ましくは60〜99:1〜40重量%、より好ましくは70〜97:3〜30重量%、さらに好ましくは80〜95:5〜20重量%である。但し、本発明における前記コア層は、本発明の液晶表示装置のななめ方向の円状の色味変化を改善する観点からは、前記その他の熱可塑性樹脂を含有しないことが好ましい。
【0044】
(残留溶媒量)
本発明のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって共流延によって製膜されることが好ましい。このように溶液製膜によって、(メタ)アクリル系樹脂を含む前記コア層を形成することによって、(メタ)アクリル系樹脂を含む層を溶融製膜により形成した場合よりも、前記外層の表面面状を改善することができる。
【0045】
<外層>
次に、本発明のフィルムの外層について説明する。
本発明のフィルムは、前記式(I)を満たす湿度依存性改良剤を含み、かつ、セルロースアシレートを主成分として含む外層を有する。
【0046】
(厚み)
前記外層の厚みの好ましい態様については、本発明の層構成の説明において上述したとおりである。
【0047】
(セルロースアシレート)
本発明に用いられるセルロースアシレートは、特に定めるものではない。原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0048】
本発明に用いられるセルロースアシレートは、アシル基の総置換度が1.2以上3.0以下であることが好ましい。
さらに、本発明に用いられるセルロースアシレートは、アシル基の総置換度をTA全、炭素数が2のアシル基の置換度をTA2、炭素原子数が3以上7以下のアシル基の置換度をTA3としたときに、以下の条件を満たすことが好ましい。以下の範囲にすることで、隣接層との密着性、流延時の支持体からの剥離性、フィルムのカール低減の観点で優れた光学フィルムを得ることができる。
2.2≦TA全≦3.0
1.5≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.7
【0049】
また、セルロースアシレートは、より好ましくは以下の条件を満たすセルロースアシレート系樹脂である。
2.5≦TA全≦3.0
2.4≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.1
さらに好ましくは、TA2、すなわちアセチル置換度が2.8〜2.94である。また、セルロースアシレートは、TA全が2.8〜2.94であることが特に好ましく、TA3は0であることが特に好ましい。セルロースアシレートは、アセチル置換度が2.8〜2.94のセルロースアセテートであることがより特に好ましい。
【0050】
本発明に用いられるセルロースアシレートとしては、特にセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でより好ましいセルロースアシレートは、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートであり、更に好ましくはセルロースアセテートである。
【0051】
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めることができる。
【0052】
本発明に用いられるセルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル系樹脂との密着性の観点から、好ましくは75000以上であり、75000〜300000の範囲であることがより好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)が75000以上であればセルロースアシレート系樹脂層自身の自己成膜性や密着の改善効果が発揮され、好ましい。本発明では2種以上のセルロースアシレート樹脂を混合して用いることもできる。
【0053】
(湿度依存性改良剤)
本発明の光学フィルムは、前記外層に、下記式(I)で定義されるΔRth(3)が−4nm以下となる湿度依存性改良剤を含むことを特徴とする。
なお、本発明において、「湿度依存性改良剤」とは、高分子フィルムに添加すると、該高分子フィルムの湿度に依存したRthの変動を軽減できる剤をいうものとする。具体的には、無添加の高分子フィルムと、試料を添加した高分子フィルムを準備し、それぞれ25℃・相対湿度10%にて12時間調湿したときのRth、並びに25℃・相対湿度80%にて12時間調湿したときのRthをそれぞれ測定し、且つ比較する。試料を添加した高分子フィルムのほうが、無添加の高分子フィルムと比較して、Rthの変動が小さい場合、該試料を、湿度依存性改良剤というものとする。
【0054】
式(I) ΔRth(3)≦−4nm
式(I’) ΔRth(3)=(ΔRth(rh、3)−ΔRth(rh、0)
(式(I)中、ΔRth(rh、3)はアセチル置換度2.86のセルロースアセテート100質量部に対して湿度依存性改良剤を3質量部添加した厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。ΔRth(rh、0)は、湿度依存性改良剤が添加されていない、アセチル置換度2.86のセルロースアセテートからなる厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。Rthは波長590nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーション(単位:nm)を表す。)
このような化合物を外層のセルロースアシレート層に使用すると、得られたフィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだときに円状の色味変化を顕著に抑制することができる。
また、ΔRth(3)がより小さい湿度依存性改良剤を用いることで、少ない添加量でも効果的にΔRthを低減することができるため、セルロースエステルに対する添加剤の総量を減らすことができ、例えば、製膜過程での添加剤の揮散を抑制したり、フィルムの搬送性を向上させたり、フィルムのブリードアウトを抑制したりすることができる。
【0055】
前記湿度依存性改良剤となり得る化合物としては、水素結合性基を有しており、かつ分子量あたりの水素結合性基密度が高い化合物を挙げることができる。
前記水素結合性基としては、少なくとも1つの−OH基又は−NH基を含有する基であるのが好ましく、例えば、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、カルバモイル基(−CONHR)、スルファモイル基(−SONHR)、ウレイド基(−NHCONHR)、アミノ基(−NHR)、ウレタン基(−NHCOOR)、アミド基(−NHCOR)がより好ましい(ただし、Rは水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基又はヘテロ環基を表すが、好ましくは、水素原子を表す)。より好ましくは、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、スルファモイル基又はウレイド基であり、更に好ましくはアミノ基、ヒドロキシル基である。そしてヒドロキシル基のうち、少なくとも1つはフェノール性水酸基であることが更にまた好ましい。
前記レターデーションの湿度依存性改良剤としては、(1)下記一般式(1)で表される化合物、(2)下記一般式(101)または(102)で表される化合物、(3)ヒドロキシル基を含む化合物などを挙げることができる。その中でも、(1)下記一般式(1)で表される化合物、あるいは、(2)下記一般式(101)または(102)で表される化合物が好ましく、(1)下記一般式(1)で表される化合物がより好ましい。
以下、(1)下記一般式(1)で表される化合物、(2)下記一般式(101)または(102)で表される化合物、(3)ヒドロキシル基を含む化合物の順に、前記湿度依存性改良剤としてこのましく用いられる化合物についてそれぞれの好ましい態様を説明する。
【0056】
(1) 一般式(1)で表される化合物
本発明の高分子フィルムは、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。また、親水性高分子、特に水酸基を有する高分子、を主成分として含有する高分子フィルムでは、使用環境の湿度変化に伴うReの変動及びRthの変動が顕著になる傾向があるが、下記一般式(1)で表される化合物は、使用環境の湿度変化に伴うRthの変動を、軽減させる作用があり、即ち、高分子フィルム用湿度依存性改良剤として作用する。なお、下記一般式(1)で表される化合物は、高分子フィルムのRe及び/又はRthを上昇させる作用があること、即ち、レターデーション上昇剤として作用することも好ましい。
【0057】
さらに、下記一般式(1)で表される化合物は、有機溶媒に溶解した状態での安定性に優れ、これらの化合物を使用することは、高分子フィルムの製造、特に溶液製膜法による製造の安定性改善にも寄与する。
以下、下記一般式(1)及びその好ましい例である一般式(2)について詳細に説明する。なお、本明細書では、「アルキル基」、「アルケニル基」及び「アルキニル基」については、直鎖状及び分岐鎖状のいずれも含む意味で用いるものとする。
【0058】
【化6】

【0059】
一般式(1)中、Yはメチン基又は窒素原子を表し;Qa、Qb及びQcはそれぞれ、単結合又は2価の連結基を表し;Ra、Rb、及びRcはそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRbは連結して環を形成してもよく;X2は、単結合又は2価の連結基を表し、X1は、単結合又は後述する2価の連結基群(5)から選択される2価の基を表わし;R1及びR2はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。
【0060】
【化7】

【0061】
一般式(2)中の各記号は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;X4は、単結合又は2価の連結基を表し、X3は、単結合又は後述する2価の連結基群(5)から選択される2価の基を表わし;R3及びR4はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。
【0062】
一般式(1)及び(2)中、Yがメチン基である場合は、式中の6員環はピリジン環であり、Yが−N−である場合は、式中の6員環はピリミジン環である。
【0063】
一般式(1)及び(2)中、Qa、Qb及びQcがそれぞれ表す2価の連結基の例には、−O−、−S−、−N(Xa−Rh)−、−N(Xa−Rh)−Xb−で表される2価の連結基が含まれる。ここで、Xa及びXbはそれぞれ、単結合又は2価の連結基を表す。Xa及びXbでそれぞれ表される2価の連結基の例には、−CO−、−COO−、−CONH−が含まれる。Rhは水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、又は炭素原子数2〜10の複素環基を表す。Qa、Qb及びQcがそれぞれ表す2価の連結基の好ましい例としては、単結合、−O−、−N(Xa−Rh)−、−N(Xa−Rh)−Xb−を挙げることができ、単結合、−O−、−NH−、及び−NH−Xb−が特に好ましい。−NH−Xb−の好ましい例には、−NH−CO−、−NH−COO−、−NH−CONH−、−NH−SO2−などが含まれ、−NH−CO−、−NH−COO−であることがさらに好ましい。
【0064】
一般式(1)及び(2)中、Ra、Rb及びRcはそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRbは連結して環を形成してもよい。
a、Rb及びRcがそれぞれアルキル基である場合、炭素原子数1〜20であることが好ましく、炭素原子数1〜8であることがより好ましく、炭素原子数1〜4であることが特に好ましい。なお、Ra、Rb及びRcがそれぞれアルキル基である場合、1つ又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子(−NH−又は−N(R)−(Rはアルキル基)を含む)から選択されるヘテロ原子に置き換えられていてもよい。例えば、Ra、Rb及びRcはそれぞれ、アルキレン(例えば、エチレン、プロピレン)オキシ基であってもよい。
a、Rb及びRcがそれぞれアルケニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
a、Rb及びRcがそれぞれアルキニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
【0065】
a、Rb及びRcがそれぞれアリール基である場合、炭素原子数6〜24であることが好ましく、炭素原子数6〜18であることがより好ましく、炭素原子数6〜10であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。具体的にはベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
a、Rb及びRcがそれぞれ複素環基である場合、炭素原子数4〜20であることが好ましく、炭素原子数4〜10であることがより好ましく、炭素原子数4〜6であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。具体的には、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基を挙げることができる。
【0066】
aとRbは連結して環を形成してもよい。形成される環は、炭化水素環であっても、複素環であってもよい。5員環又は6員環であるのが好ましい。
【0067】
a、Rb及びRcはそれぞれ、可能であれば、さらに1以上の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。Ra、Rb及びRcがそれぞれ有していてもよい置換基の例には、以下の置換基群Tが含まれる。
置換基群T:
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、及びシリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が2つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0068】
一般式(1)及び(2)中、Ra及びRbはそれぞれ、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基であるのが好ましい。一般式(1)中、Rcは、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、及び置換もしくは無置換の複素環基であるのが好ましい。
【0069】
但し、一般式(1)及び(2)で表される化合物の例には、Yが窒素原子であって、且つ、−Qa−Ra及び−Qc−Rcがそれぞれ、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。
【0070】
一般式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。
1、R2、R3及びR4がそれぞれアルキル基である場合、炭素原子数1〜20であることが好ましく、炭素原子数1〜8であることがより好ましく、炭素原子数1〜4であることが特に好ましい。なお、R1、R2、R3及びR4がそれぞれアルキル基である場合、1つ又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子(−NH−又は−N(R)−(Rはアルキル基)を含む)から選択されるヘテロ原子に置き換えられていてもよい。例えば、R1、R2、R3及びR4は、アルキレン(例えば、エチレン、プロピレン)オキシ基であってもよい。
1、R2、R3及びR4がそれぞれアルケニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
1、R2、R3及びR4がそれぞれアルキニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
【0071】
1、R2、R3及びR4がそれぞれアリール基である場合、炭素原子数6〜24であることが好ましく、炭素原子数6〜18であることがより好ましく、炭素原子数6〜10であることが湿度依存性軽減の観点から特に好ましい。具体的にはベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
1、R2、R3及びR4がそれぞれ複素環基である場合、炭素原子数4〜20であることが好ましく、炭素原子数4〜10であることがより好ましく、炭素原子数4〜6であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。具体的には、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基を挙げることができる。
【0072】
一般式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又は複素環基であるのが好ましい。
【0073】
1、R2、R3及びR4はそれぞれ、可能であれば、さらに1以上の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。R1、R2、R3及びR4がそれぞれ有していてもよい置換基の例には、前述の置換基群Tが含まれる。
【0074】
一般式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基が好ましい。
1及びR2のいずれか一方、並びにR3及びR4のいずれか一方は、それぞれ、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基であるのが好ましく、水素原子であるのが特に好ましい。湿度依存性軽減の観点では、他方は、置換もしくは無置換のアリール基であるのが好ましい。
【0075】
一般式(1)及び(2)中、X2及びX4はそれぞれ、単結合又は2価の連結基を表し;X1及びX3はそれぞれ、単結合又は下記2価の連結基群(5)から選択される基を表す。
2及びX4がそれぞれ表す2価の連結基の例には、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは炭素原子数2)、アリーレン基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは、炭素原子数6〜10)、又は下記2価の連結基群(5)が含まれる。
【0076】
【化8】

【0077】
各式中、*側が前記各式で表される化合物中のピリミジン環またはピリジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。それぞれの基中の炭素原子数の好ましい範囲は、Xa及びXbがそれぞれ表す基中の炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0078】
2及びX4がそれぞれ、単結合又は2価の連結基群(5)から選ばれるいずれかの基を表すのが好ましく、X2が単結合で且つX1が2価の連結基群(5)から選ばれるいずれかの基を表し;並びにX4が単結合で且つX3が2価の連結基群(5)から選ばれるいずれかの基を表すのが好ましい。
その場合、X1及びX3はそれぞれ、−CO−、−COO−、−CO(NRg)−のいずれかであることがより好ましく、−CO−であることが特に好ましい。
例えば、X1が所定の2価の連結基(特に好ましくは−CO−)で、且つX2が単結合である場合は、R1は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基であり(湿度依存性軽減の観点では、好ましくは置換もしくは無置換のアリール基であり)、且つR2は水素原子であるのが好ましく;同様に、X3が所定の2価の連結基(好ましくは−CO−)で、且つX4が単結合である場合は、R3は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基であり(湿度依存性軽減の観点では、好ましくは置換もしくは無置換のアリール基であり)、且つR4は水素原子であるのが特に好ましい。
【0079】
さらに、一般式(1)中、X1が所定の2価の連結基である場合、R1は、アリール基であるのが好ましく、中でもフェニル基であるのが好ましい。アリール基は、上記置換基群Tから選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。該置換基の置換位置についても特に制限はない、X1に対して、オルト、メタ及びパラ位のいずれの位置が置換されていてもよい。好ましい置換基の例には、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキルアミノ基)、又はジアルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8のジアルキルアミノ基)が含まれ、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基)がより好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基またはアルコキシ基であることがさらに好ましい。
【0080】
一般式(2)中、X1及びX3がそれぞれ2価の連結基である場合、R1及びR3はそれぞれ、アリール基であるのが好ましく、中でもフェニル基であるのが好ましい。アリール基は、上記置換基群Tから選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。該置換基の置換位置についても特に制限はない、X1及びX3それぞれに対して、オルト、メタ及びパラ位のいずれの位置が置換されていてもよい。好ましい置換基の例には、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキルアミノ基)、又はジアルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8のジアルキルアミノ基)が含まれ、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基)がより好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基またはアルコキシ基であることがさらに好ましい。
【0081】
一方、一般式(1)及び(2)中のX1、X2、X3及びX4のそれぞれが、前記一般式(5)で表される2価の連結基群であらわされる2価の連結基のいずれかでない場合は、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ単結合であるのが好ましく、それぞれに結合するR1、R2、R3及びR4は、水素原子であるのが好ましい。
【0082】
前記一般式(1)で表される化合物の例には、下記一般式(3)で表される化合物が含まれる。
【0083】
【化9】

【0084】
一般式(3)中の各記号は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。一般式(3)で表される化合物の例には、−Qa−Raが、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。
【0085】
前記一般式(1)で表される化合物の例には、下記一般式(4)で表される化合物が含まれる。
【0086】
【化10】

【0087】
一般式(4)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。
【0088】
前記一般式(1)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(6)で表される化合物が含まれる。
【0089】
【化11】

【0090】
一般式(6)中の各記号の定義は、一般式(2)中のそれぞれと同義であり;Ar1及びAr2はそれぞれ、アリール基を表す。
Ar1及びAr2がそれぞれ表すアリール基は、フェニル基又はナフチル基であるのが好ましく、フェニル基であるのがより好ましい。Ar1及びAr2がそれぞれ表すアリール基は、1以上の置換基を有していてもよく、該置換基の例には、上記置換基群Tが含まれる。好ましい置換基の例は、前記一般式(2)中のR1及びR3がそれぞれ有する置換基の好ましい例と同様である。Ar1及びAr2は、勿論同一であっても、互いに異なっていてもよい。例えば、一方が無置換のアリール基で、他方が同一のアリール基であって、1以上の置換基を有する置換アリール基であってもよい。また双方とも互いに同一のアリール基であって、但し異なる置換基で置換された互いに異なる置換アリール基であってもよい。
【0091】
前記一般式(6)の合成方法の一例では、互いに異なるAr1及びAr2を導入するための試薬をそれぞれ用いて、Ar1及びAr2が互いに異なる化合物を製造しようとすると、Ar1が導入された化合物、双方にAr2が導入された化合物、及び互いに異なるAr1及びAr2をそれぞれ有する1種又は2種の化合物(Yが窒素原子である場合は2種の化合物として特定される)の3種又は4種の混合物が得られる場合がある。本発明では、当該混合物をそのまま高分子フィルムの添加剤として用いてもよい。即ち、下記一般式(6a)〜(6d)(但し、Yがメチン基の場合は(6a)〜(6c))で表される化合物の混合物を、添加剤として使用してもよい。
【0092】
【化12】

【0093】
一般式(6a)〜(6d)中の各記号の定義は、一般式(2)中のそれぞれと同義であるが、但し、Ar1及びAr2はそれぞれ互いに異なる基を表す。
【0094】
aは、単結合、又は−O−、−S−、−N(Xa−Rh)−、もしくは−N(Xa−Rh)−Xb−で表される2価の連結基であるのが好ましい。中でも、単結合、又は−O−、−S−、−NH−又は−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基)であるのがより好ましく、単結合又は−O−であることが更に好ましい。Raは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数6〜18のアリール基(例えば、ベンゼン環及びナフタレン環の基)、炭素原子数4〜10の複素環の基(例えば、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基)が好ましく;及び、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基であるのが好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。置換基の例には、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基等が含まれる。またRaは、Qaが−N(R)−である場合には、Rと結合して環(例えば5又は6員の環)を形成していてもよい。一般式(6)で表される化合物の例には、−Qa−Raが、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。
【0095】
一般式(6)、並びに後述する一般式(7)〜(10)の化合物は、これらの化合物を添加することによってRthが制御された高分子フィルムは、湿度に依存してRthが変動するのがより軽減されているという特徴がある。
【0096】
前記一般式(1)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(7)で表される化合物が含まれる。
【0097】
【化13】

【0098】
一般式(7)中の各記号の定義は、一般式(2)中のそれぞれと同義であり;Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基であることが好ましく、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基であることが特に好ましい。R11〜R16は勿論互いに同一であっても異なっていてもよい。例えばR11〜R13又はR14〜R16が全て水素原子で、且つR14〜R16のいずれか少なくとも1つ又はR11〜R13のいずれか少なくとも1つが前記置換基であってもよいし;またR11〜R13の少なくとも1つ、及びR14〜R16の少なくとも1つが互いに異なる前記置換基であってもよい。
【0099】
一般式(7)で表される化合物の例には、下記一般式(8)〜(10)のそれぞれで表される化合物が含まれる。
【0100】
【化14】

【化15】

【化16】

【0101】
式(8)〜(10)中の各記号の定義は、一般式(7)中のそれぞれと同義であり;Ra8、Ra9及びRa10はそれぞれ、炭素原子数1〜8(好ましくは炭素原子数1〜4)のアルキル基を表す。
【0102】
また、下記式(11)(好ましくは下記一般式(11a))で表される化合物は、上記一般式(6)〜(10)で表される化合物と比較して、Re及びRthの上昇作用が小さいが、比較的低いRe及びRthを必要とする用途等において、好ましく用いられるであろう。
【0103】
【化17】

【0104】
式中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び好ましい例も同様である。一般式(11)及び(11a)で表される化合物の例には、−Qa−Raが、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。
【0105】
また、下記式(12)で表される化合物も、前記一般式(6)〜(10)の化合物と同様に、高いレターデーション上昇作用を示す。
【化18】

【0106】
式中の各基の定義は、上記一般式(1)〜(10)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Q12は、単結合、−NH−、−O−、又は−S−であり、R12は水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基(例えば、ベンゼン環及びナフタレン環の基)、又は炭素原子数4〜10の複素環の基(例えば、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基)であり、好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数6〜18のアリール基である。Q12が、単結合、−O−、又は−S−である場合は、特に、R12は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基であるのが好ましく、Q12が−NH−である場合は、特に、R12は炭素原子数6〜18のアリール基(より好ましくはベンゼン環の基)であるのが好ましい。一般式(12)で表される化合物の例には、−Qa−Raが、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。
【0107】
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明に使用可能な化合物は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0108】
【化19】

【0109】
【化20】

【0110】
【化21】

【0111】
【化22】

【0112】
【化23】

【0113】
【化24】

【0114】
【化25】

【0115】
【化26】

【0116】
【化27】

【0117】
【化28】

【0118】
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物は、分子量が200〜2000であることが好ましく、200〜1000であることがより好ましく、200〜600であることが特に好ましい。
【0119】
一般式(1)で表される化合物の製造方法は、特に限定はなく、種々の方法により製造することができる。
一般式(1)の化合物は、例えば、下記スキーム1−1の方法で合成することができる。即ち、一般式(1a)の化合物と一般式(1b)の化合物を有機溶剤中にて塩基存在下で反応させることにより合成することができる。一般式(1a)及び一般式(1b)中の各基の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義である。また、Zは脱離基を表し、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基などを好ましく用いることができる。
【0120】
一般式(1a)及び一般式(1b)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン)、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン)、ニトリル(例、アセトニトリル)あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコール及びアミドが好ましく、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンが特に好ましい。また、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンの混合溶媒も特に好適な例である。
【0121】
塩基としては、無機塩基(例、炭酸カリウム)と有機塩基(例、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)のいずれも使用でき、Zの種類に応じて適宜選択することができる。Zがアルコキシ基である場合には無機塩基が好ましく、ナトリウムメトキシドが特に好ましい。用いる塩基の使用量は、一般式(1b)で表される化合物に対して0.5〜10当量の範囲であることが好ましく、1〜3当量の範囲であることが特に好ましい。
【0122】
反応温度は、通常、−20℃〜用いる溶媒の沸点の範囲とするのが好ましく、室温〜溶媒の沸点の範囲にするが好ましい。
反応時間は、通常10分〜3日間であり、好ましくは1時間〜1日間である。反応を窒素雰囲気下、あるいは減圧下で行ってもよい。特に脱離基Zがアルコキシ基、アリールオキシ基の場合は減圧下で行うことも好ましい。
【0123】
【化29】

【0124】
一般式(1)で表される化合物の製造方法の他の例は、下記スキーム1−2で示される方法である。即ち、一般式(1c)の化合物と一般式(1d)の化合物とを有機溶剤中にて塩基の非存在下で、あるいは塩基存在下で反応させることにより合成することができる。
一般式(1c)及び一般式(1d)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン)、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン)、ニトリル(例、アセトニトリル)あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコール及びアミドが好ましく、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンが特に好ましい。また、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンの混合溶媒も特に好適な例である。
【0125】
塩基を用いる場合、塩基としては、無機塩基(例、炭酸カリウム)と有機塩基(例、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)のいずれも使用できる。無機塩基が好ましく、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。用いる塩基の使用量は、一般式(1c)で表される化合物に対して0.5〜10当量の範囲であることが好ましく、1〜3当量の範囲であることが特に好ましい。
【0126】
反応温度は、通常、−20℃〜用いる溶媒の沸点の範囲であるのが好ましく、室温〜溶媒の沸点の範囲であるのがより好ましい。
反応時間は、通常、10分〜3日間であり、好ましくは1時間〜1日間である。反応を窒素雰囲気下、あるいは減圧下で行ってもよい。
【0127】
【化30】

【0128】
一般式(1c)及び一般式(1d)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(1)中のそれぞれと同義である。Z1は脱離基を表し、ハロゲン原子などを好ましく用いることができる。
一般式(1c)及び一般式(1d)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(1)中のそれぞれと同義である。Zは脱離基を表す。
【0129】
また、一般式(2)の一例である一般式(2)’の化合物は、例えば、下記スキーム2−1の方法で合成することができる。即ち、一般式(2a)の化合物と、一般式(2b)の化合物とを有機溶剤中にて、塩基存在下で反応させることにより合成することができる。一般式(2a)、及び一般式(2b)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。使用可能な有機溶媒及び塩基の例は、前記スキーム1−1及び1−2の反応と同様であり、反応温度及び反応時間についても、上記スキームの反応と同様である。
【0130】
【化31】

【0131】
一般式(2a)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(2)中のそれぞれと同義である。また、一般式(1b)について前述したものと同様である。
【0132】
また、一般式(7)の一例である一般式(7)’の化合物は、例えば、下記スキーム3−1の方法で合成することができる。即ち、一般式(7a)の化合物と、一般式(7b)の化合物とを有機溶剤中にて、塩基存在下で反応させることにより合成することができる。一般式(7a)及び一般式(7b)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。使用可能な有機溶媒及び塩基の例は、前記スキーム1−1及び1−2の反応と同様であり、反応温度及び反応時間についても、上記スキームの反応と同様である。
【0133】
【化32】

【0134】
一般式(7a)及び一般式(7b)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(7)中のそれぞれと同義である。また、Zの定義は、一般式(1b)中のそれと同義である。
【0135】
(2) 一般式(101)または(102)で表される化合物
本発明で湿度依存性改良剤として好ましく用いられる化合物としては、さらに、下記一般式(101)又は(102)で表される化合物が挙げられる。
【0136】
一般式(101)
【0137】
【化33】

【0138】
(一般式(101)中、RAはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基又はアリール基を表す。X101、X102、X103及びX104はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。R101、R102、R103及びR104はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表す。)
【0139】
一般式(102)
【0140】
【化34】

【0141】
(一般式(102)中、RB及びRCはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基又はアリール基を表す。X105及びX106はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表す。)
前記、X101〜X106は、単結合又は2価の連結基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、2価の連結基としては、下記一般式(103)で表される群の中から選ばれることが好ましい。
【0142】
一般式(103)
【0143】
【化35】

【0144】
以下、前記湿度依存性改良剤として、本発明に好ましく用いることのできる一般式(101)または(102)で表される化合物を示す。但し、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0145】
【化36】

【0146】
【化37】

【0147】
(3)ヒドロキシル基を含む化合物
本発明で前記湿度依存性改良剤として好ましく用いられるヒドロキシル基を含む化合物であって、より好ましくはフェノール性水酸基を含む化合物としては、例えば、特開2008−89860号の13〜19ページに記載のある化合物Aや、特開2008−233530号の7〜9ページに記載のある一般式(I)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0148】
(外層に含まれるその他の樹脂)
本発明においては、アクリル樹脂を前記外層に添加することもできる。セルロースアシレートに対する、アクリル樹脂の割合は、セルロースアシレートを基準とした場合に、2〜140質量%が好ましく、より好ましくは4〜100質量%、最も好ましくは6〜60質量%である。また、アクリル樹脂の分子量は、1000〜20万が好ましく、更に好ましくは1000〜10万、最も好ましくは1500〜5万以下であり、特に好ましくは1500〜1万である。この分子量範囲にすることで、セルロースアシレート層の透明性に優れる。
【0149】
<添加剤>
本発明の光学フィルムには、前記コア層および前記外層のそれぞれにおいて、主原料となる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂とともに、前記湿度依存性改良剤以外の添加剤を、本発明の趣旨に反しない限りにおいて含有させてもよい。
以下、本発明の光学フィルムに添加してもよい添加剤について説明する。
【0150】
(可塑剤)
本発明においては、光学フィルムに柔軟性を与え、寸法安定性を向上させ、耐湿性を向上させるために可塑剤を用いてもよい。
【0151】
好ましく添加される可塑剤としては、上記の物性の範囲内にある分子量190〜5000程度の低分子〜オリゴマー化合物が挙げられ、例えばリン酸エステル、カルボン酸エステル、ポリオールエステル等が用いられる。
【0152】
リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が含まれる。好ましくは、トリフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェートである。
【0153】
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート等が挙げられる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
これらの好ましい可塑剤は、25℃においてTPP(融点約50℃)以外は液体であり、沸点も250℃以上である。
【0154】
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。グリコール酸エステルの例としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなどがある。
【0155】
また、特開平5−194788号、特開昭60−250053号、特開平4−227941号、特開平6−16869号、特開平5−271471号、特開平7−286068号、特開平5−5047号、特開平11−80381号、特開平7−20317号、特開平8−57879号、特開平10−152568号、特開平10−120824号の各公報などに記載されている可塑剤も好ましく用いられる。これらの公報によると可塑剤の例示だけでなくその利用方法あるいはその特性についての好ましい記載が多数あり、本発明においても好ましく用いられるものである。
【0156】
その他の可塑剤としては、特開平11−124445号記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号記載の置換フェニルリン酸エステル類、特開2003−165868号等記載の芳香環とシクロヘキサン環を含有するエステル化合物などが好ましく用いられる。
【0157】
また、分子量1000〜10万の樹脂成分を有する高分子可塑剤も好ましく用いられる。例えば、特開2002−22956号公報に記載のポリエステルおよびまたはポリエーテル、特開平5−197073号公報に記載のポリエステルエーテル、ポリエステルウレタンまたはポリエステル、特開平2−292342号公報に記載のコポリエステルエーテル、特開2002−146044号公報等記載のエポキシ樹脂またはノボラック樹脂等が挙げられる。
また、耐揮発性、ブリードアウト、低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、例えば特開2009−98674号公報に記載の両末端が水酸基であるポリエステルジオールを用いるのが好ましい。また、光学フィルムの平面性や低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、WO2009/031464号公報に記載の糖エステル誘導体も好ましい。
【0158】
これらの可塑剤は単独もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。可塑剤の添加量は熱可塑性樹脂100質量部に対して2〜120質量部使用することができ、2〜70質量部が好ましく、更に好ましくは2〜30質量部、特に5〜20質量部が好ましい。また、後述する本発明の製造方法に用いる外層ドープ(A)、コア層ドープ(B)のうち隣接する層に共通の可塑剤を用いると、流延時のドープの界面の乱れの発生が少なくなったり、界面の密着が良化したり、カールが低減したりする観点から、好ましい。特に、外層ドープ(A)、コア層ドープ(B)が共通の可塑剤を含有することが好ましい。
【0159】
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムには、フィルム自身の耐光性向上、或いは偏光板、液晶表示装置の液晶化合物等の画像表示部材の劣化防止のために、更に紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0160】
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを用いることが好ましい。特に、波長370nmでの透過率が、20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。このような紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、前記のような紫外線吸収性基を含有する高分子紫外線吸収化合物等があげられるが、これらに限定されない。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
【0161】
本発明の光学フィルムには、主原料となる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂とともに、添加剤を含有していてもよい。添加剤の例には、フッ素系界面活性剤(好ましい添加量は熱可塑性樹脂に対して0.001〜1質量%)、剥離剤(0.0001〜1質量%)、劣化防止剤(0.0001〜1質量%)、光学異方性制御剤(0.01〜10質量%)、赤外線吸収剤(0.001〜1質量%)等が含まれる。
【0162】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、微量の有機材料、無機材料及びそれらの混合物からなる粒子を分散含有していてもよい。これらの粒子は、製膜時におけるフィルムの搬送性向上を目的として(マット剤として)添加される場合には、粒子の粒径は5〜3000nmであるのが好ましく、添加量は1質量%以下であるのが好ましい。
フィルムの表面に凹凸を与えたりフィルム内部に光散乱性を付与したりするために粒子を添加することもでき、その場合には、粒子の粒径は1〜20μmであるのが好ましく、添加量は2〜30質量%好ましい。これら粒子屈折率は本発明のポリマーフィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。
【0163】
<光学フィルム上への付加的な層の積層>
本発明の光学フィルムは、例えば、その上に更に0.1μm以上15μm以下の厚みの硬化性樹脂層を設けてもよい。また、本発明の光学フィルムは、該硬化性樹脂層の上に、帯電防止層、高屈折率層、低屈折率層等の光学機能層を設けることもできる。また、硬化性樹脂層が帯電防止層や高屈折率層を兼ねることもできる。
硬化性樹脂層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を光透過性基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
また、硬化性樹脂層には、公知のレベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、屈折率調節用無機フィラー、散乱粒子、チキソトロピー剤等の添加剤を用いることができる。
【0164】
また、硬化性樹脂層を設けた光学フィルムの強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましい。
【0165】
<フィルム特性>
(光弾性係数)
光弾性係数は物質固有の性質であり、光弾性係数をほとんど発現しない物質はむしろまれである。例えば、高分子樹脂の多くは、外部応力や熱応力により複屈折を発現する。光弾性係数は、印加される応力の方向に関連して符号を定義することができる。即ち、媒体(高分子樹脂) に引っ張り応力を加えた場合、引っ張り応力と平行な方向に偏光面を有する偏光に対する屈折率nparaと、それに直交する方向に偏光面を有する偏光に対する屈折率に対して、下記(1B)式で表される光弾性係数cの正負で光弾性係数の符号が表現される。
c=Δn/σ=(npara−nperp)/σ ・・・・・(1B)
つまり、nparaの方がよりnperpも大きい場合に光弾性係数は正、小さい場合は負となる。
【0166】
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして使用した場合には、偏光子の収縮による応力などにより複屈折(Re、Rth)が変化する場合がある。このような応力に伴う複屈折の変化は光弾性係数として測定できるが、その範囲は、−3×10-12Pa-1〜3×10-12Pa-1であることが好ましく、−1×10-12Pa-1〜1×10-12Pa-1であることがより好ましい。
光弾性係数を上記範囲に制御することで、本発明のフィルムを用いた偏光板を組み込んだパネルを湿熱耐久試験にかけた後の、液晶表示装置ななめ方向から観察した場合の円状の色味変化発生を抑制できる。
【0167】
(レターデーション)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、590nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
【0168】
本明細書において、Re、Rth(単位;nm)は次の方法に従って求めたものである。まず、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、プリズムカップラー(MODEL2010 Prism Coupler:Metricon製)を用い、25℃、相対湿度60%において、532nmの固体レーザーを用いて下記式(10)で表される平均屈折率(n)を求める。
式(10): n=(nTE×2+nTM)/3
[式中、nTEはフィルム平面方向の偏光で測定した屈折率であり、nTMはフィルム面法線方向の偏光で測定した屈折率である。]
【0169】
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
【0170】
【数1】

上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
式(12)
Rth={(nx+ny)/2−nz}xd
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0171】
本発明の光学フィルムは、−5nm≦Re≦5nmであることが好ましく、-3nm≦Re≦3nmであることがより好ましく、-2nm≦Re≦2nmであることが特に好ましい。
本発明の光学フィルムは、−15nm≦Rth≦15nmであることが好ましく、10nm≦Rth≦−10nmであることがより好ましく、−7nm≦Rth≦7nmであることが特に好ましい。
【0172】
(Rthの湿度依存性)
本発明において、Rthの湿度依存性(ΔRth(10%−80%))は、相対湿度がH(単位;%)であるときの膜厚方向のレターデーション値:Rth(H%)から算出される。
本発明の光学フィルムの湿度を変化させた場合のレターデーション値は、下記式(II)で定義されるΔRth(10%−80%)が、−10〜5nmであることが好ましい。
式(II) ΔRth(10%−80%)=Rth(10%)−Rth(80%)
(式(II)中、Rth(10%)はフィルムの波長590nm、25℃、相対湿度10%におけるフィルムの膜厚方向のレターデーションRthの値を表す。Rth(80%)はフィルムの波長590nm、25℃、相対湿度80%におけるフィルムの膜厚方向のレターデーションRthの値を表す。)
Rth(H%)は、フィルムを25℃、相対湿度H%にて24時間調湿後、25℃、相対湿度H%において、前記方法と同様にして、相対湿度H%における測定波長が590nmであるときのレターデーション値を測定、算出したものである。なお、相対湿度を明記せずに単にRthと表記されている場合は、相対湿度60%で測定した値である。
本発明の光学フィルムのΔRth(10%−80%)は、−5〜5nmであることがより好ましく、−3〜3nmであることが特に好ましい。
上記湿度を変化させた場合のレターデーション値を制御することにより、外部環境が変化した場合のレターデーション変化を低下させることができ、信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。
また、本発明の光学フィルムのΔRthを低減させることによって、特定の条件で液晶表示装置を表示面の斜めから観察した際に視認される円形状の色味変化が改善されるという効果が得られる。
【0173】
[本発明の光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、セルロースアシレートと下記式(I)を満たす湿度依存性改良剤と有機溶媒を含有するドープ(A)、および(メタ)アクリル系樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を、流延基材側から(A)−(B)−(A)の順番に共流延法により同時に流延基材上に流延する工程を含むことを特徴とする。
式(I) ΔRth(3)≦−4nm
式(I’) ΔRth(3)=(ΔRth(rh、3)−ΔRth(rh、0)
(式(I)中、ΔRth(rh、3)はアセチル置換度2.86のセルロースアセテート100質量部に対して湿度依存性改良剤を3質量部添加した厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。ΔRth(rh、0)は、湿度依存性改良剤が添加されていない、アセチル置換度2.86のセルロースアセテートからなる厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。Rthは波長590nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーション(単位:nm)を表す。)
以下、本発明の製造方法について、好ましい態様を説明する。
【0174】
(フィルム製膜方法)
本発明の光学フィルムの製膜の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。本発明の製造方法は、これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)を用いることで、本発明のフィルムを生産性よく製造することを特徴とする。
【0175】
<ドープの調製>
本発明の光学フィルムに用いる熱可塑性樹脂の溶液(ドープ)の調製について、その溶解方法は、室温溶解法、冷却溶解法又は高温溶解方法により実施され、更にはこれらの組合せで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にはセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明の熱可塑性樹脂に対しても、これらの技術を適宜適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、前記の公技番号2001−1745号の22〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。更に熱可塑性樹脂のドープ溶液は、溶液濃縮、濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0176】
(有機溶媒)
本発明の製造方法において、前記セルロースアシレートおよび前記(メタ)アクリル系樹脂をそれぞれ溶解しドープを形成する有機溶媒について記述する。用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。溶解度パラメーターは、例えばJ.Brandrup、E.H等の「PolymerHandbook(4th.edition)」、VII/671〜VII/714に記載の内容のものを表す。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報 段落番号[0020]、同11−60807号公報 段落番号[0037]等に記載の化合物)等が挙げられる。
【0177】
本発明で用いられる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが面状安定性を付与するために好ましく、更に好ましくは、良溶剤と貧溶剤の混合比率は良溶剤が60〜99質量%であり、貧溶剤が40〜1質量%である。本発明において、良溶剤とは使用する樹脂を単独で溶解するもの、貧溶剤とは使用する樹脂を単独で膨潤するか又は溶解しないものをいう。本発明に用いられる良溶剤としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類が挙げられる。また、本発明に用いられる貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン等が好ましく用いられる。
【0178】
前記ドープ(A)及び(B)に含有される有機溶媒のうちアルコールの割合が有機溶剤全体の10〜50質量%であることが製膜後の支持体(流延基材)上での乾燥時間を短縮し、早く剥ぎ取って乾燥することができるという理由から好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。
【0179】
(ドープの固形分濃度)
光学フィルムを形成する材料は、有機溶媒に10〜60質量%の固形分濃度(乾燥後固体となる成分の和)で溶解していることが好ましく、更に好ましくは10〜50質量%である。セルロースアシレート系樹脂を主成分とする場合には、10〜30質量%溶解していることが好ましく、15〜25質量%であることが好ましく、18〜20質量%であることが最も好ましい。但し、用途によっては、有機溶剤の含有量を少なくでき、乾燥時間の短縮ができるという理由などからドープ(A)の固形分濃度が20質量%を超え22質量%以下であっても好ましい場合がある。これらの固形分濃度に調製する方法は、溶解する段階で所定の固形分濃度になるように調製してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。更に、予め高濃度の光透過性基材を形成する材料の溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度の溶液としてもよい。
支持体離型性、界面密着性、低カールを達成する観点から、ドープ(A)、(B)中の熱可塑性樹脂の組成は、以下の条件を満たすことが好ましい。ドープ(A)中の熱可塑性樹脂中セルロースアシレート系樹脂の占める割合は、50〜100質量%が好ましく、更に好ましくは70〜100質量%、最も好ましくは80〜100質量%である。またドープ(B)中の熱可塑性樹脂中アクリル系樹脂の占める割合は、30〜100質量%が好ましく、更に好ましくは50〜100質量%、最も好ましくは70〜100質量%である。
一方、共流延製膜にて良好な面状のフィルムを得るためには、ドープ(B)とドープ(A)の固形分濃度の差が10質量%以内であることが好ましく、5質量%以内であることがより好ましい。
特に、ドープ(B)において、固形分濃度が16〜30質量%であり、かつ、ドープ(B)とドープ(A)の固形分濃度の差が10質量%以内であることが好ましい。
【0180】
(ドープの複素粘度)
本発明の製造方法では、また、25℃における流前記ドープ(A)の複素粘度ηAと、前記ドープ(B)の複素粘度ηBが、下記式(III)の関係を満たすように制御することが、好ましい。
(式III) ηA≦ηB
本発明の製造方法では、その中でも、前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の複素粘度がいずれも10〜80Pa・s以下であり、かつ、前記ドープ(B)の複素粘度が前記ドープ(A)の複素粘度よりも大きいことが、製膜後のフィルム面状を改善する観点から、好ましい。
【0181】
本発明の製造方法では、前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の複素粘度がいずれも10〜80Pa・s以下であることが好ましい。複素粘度をこのような範囲とすることにより、溶液流延適性がより向上する傾向にあり好ましい。ここで、本発明におけるドープの複素粘度とは、溶液剪断レオメータ測定によって測定した粘度をいう。
この範囲内であれば、フィルムの白化の抑制効果がさらに高まる。さらに好ましくは、20〜80Pa・sであり、とくに好ましくは、25〜70Pa・sである。粘度の測定は次のようにして行った。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。
試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜35℃である。上記のとおり、本発明では、25℃における値を採用した。
【0182】
<共流延工程>
(流延)
本発明の光学フィルムの製造方法においては、セルロースアシレートと有機溶媒を含有するドープ(A)、(メタ)アクリル系樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を流延基材側から(A)−(B)−(A)の順番に、共流延法により同時に流延基材上に流延する工程を含む。
【0183】
さらに、前記ドープ(A)の流延厚みを該ドープ(A)の乾燥厚みが3μmより厚く20μm以下になるように制御することが好ましい。このような流延厚みの方法については特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。より好ましい乾燥厚みの範囲は、本発明の光学フィルムの前記外層の好ましい厚みと同様である。
【0184】
ドープは、支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成することがきる。ここで、前記支持体は、特に制限はないが、ドラムまたはバンドであることが好ましい。支持体の表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
【0185】
図1はバンドを有する流延設備の要部を示す概略図であって、側面からの平面図である。流延設備11は、流延ダイ14と、第1及び第2のバックアップローラ32、33と、バンド31と、剥ぎ取りローラ37と、温調板51と、複数の凝縮板52と、複数の液受け53と、回収タンク56と、送液管とからなる。なお、流延ドープ12として3種類のドープをそれぞれ調製し、これらを一度の流延操作によって、流延膜を3層構造とすることもできる。PSは流延開始位置を表す。36はフィルムを表す。
図2はドラムを含む流延設備を示す図である。図2は流延設備101の要部を示す概略図であって、側面からの平面図である。なお、上述の図1と同様の装置及び部材については、同じ符号を付し、説明を略する。図2では図1のバンドの代わりにドラム102を用いている。流延ダイ14からの流延ドープ12は、ドラム102上に形成された流延膜が流延開始位置PSから下方に向かうように、ドラム102の最上部よりやや下方に流延されている。この場合も、ドラム102上の流延開始位置PSにおける接線と流延ダイ14からの流延曲線の接線とができるだけ一致するように、流延開始位置PSを定めることが好ましい。
【0186】
ドラム102は、温度調整機能を有している。流延膜の外側には、複数の凝縮板105が設置されており、凝縮板105同士の隙間の傾斜をつたわって、外部の液受け53に入り、回収タンク56に回収される。ドラム102上を走行した流延膜は、フィルム36として剥ぎ取りローラ37により剥ぎ取られ、次の工程である乾燥設備に送られる。これにより、液だれを防止しながら、流延膜を均一に乾燥し、溶媒を高収率で回収することができる。ただし、ドラム102の回転方向を逆として、流延膜の走行方向が流延開始位置PSから上向きになされた場合にも、流延膜の均一乾燥と、フィルム36の厚みの均一化効果は得られる。
【0187】
ドープは、表面温度が5℃以下の支持体上に流延することが好ましい。流延基材(支持体)の表面温度は−30〜5℃が好ましく、−10〜2℃がより好ましい。
流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムを支持体から剥ぎ取り、更に100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時の支持体の表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0188】
本発明では、流延基材としての支持体上に前記2種以上のドープを流延して製膜する。本発明のフィルムの製造方法としては、上記以外に特に制限はなく公知の共流延方法を用いることができる。例えば、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からドープ溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からドープ溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。
【0189】
本発明の製造方法は、積層体の界面密着及びカールの低減の観点から、流延基材側から順にドープ(A)、(B)、(A)の順に同時共流延する。ここで、一つの積層フィルム中の複数の(A)は、組成が全く同一でも異なっていてもよい。
【0190】
<乾燥工程>
本発明の製造方法は、前記有機溶媒を除去する工程を含む。
ドラムやバンド上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
本発明では、多層流延したドープを乾燥させてから、支持体から剥離することが好ましい。
【0191】
本発明では、ドープが流延基材上に流延され剥離される時間、すなわち、流延基材上を搬送される時間が60秒以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましい。
【0192】
<延伸工程>
本発明の製造方法は、前記製膜工程のあとに、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程を含んでもよい。
本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
【0193】
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜35質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
【0194】
延伸倍率は、一般的に5%〜100%で行うことができ、15%〜40%にすることも好ましい。ここで、一方の方向に対して5%〜100%延伸するとは、フィルムを支持しているクリップやピンの間隔を延伸前の間隔に対して1.05〜2.00倍の範囲にすることを意味している。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよい。
【0195】
本発明では、溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。本発明では、前記延伸工程における延伸温度は、110〜190℃であることが好ましく、120〜150℃であることがより好ましい。延伸温度が120℃以上であることが低ヘイズ化の観点から好ましく、150℃以下であることが光学発現性を高める観点(薄膜化の観点)から好ましい。
一方、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、可塑剤として揮散しやすい低分子可塑剤を用いる場合は、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。
【0196】
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの光学発現性を高める観点、特にフィルムのRth(レターデーション)の値を高める観点から、有効な方法である。
【0197】
本発明では、延伸工程において同時に2軸方向に延伸してもよいし、逐次に2軸方向に延伸してもよい。逐次に2軸方向に延伸する場合は、それぞれの方向における延伸ごとに延伸温度を変更してもよい。
同時2軸延伸する場合、延伸温度は110℃〜190℃で行った場合でも本発明のフィルムを得ることができ、同時2軸延伸する場合の延伸温度は、120℃〜150℃であることがより好ましく、130℃〜150℃であることが特に好ましい。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性を更に高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記同時2軸延伸を行う延伸温度範囲と同様である。
【0198】
<熱処理工程>
本発明のフィルムの製造方法は乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。本発明においては乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記熱処理工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。同様の理由で熱処理工程直前において残留溶媒量が2質量%未満、好ましくは0.4質量%未満まで乾燥されていることが好ましい。
【0199】
熱処理は、搬送中のフィルムに所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法により行われる。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことが更に好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことが更に好ましい。
【0200】
<加熱水蒸気処理工程>
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造される光学フィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
【0201】
<表面処理工程>
本発明の光学フィルムを、偏光板の保護フィルムとして使用し、偏光子と接着させる場合には、偏光子との接着性の観点から、酸処理、アルカリ処理、プラズマ処理、コロナ処理等の表面を親水的にする処理を実施することが特に好ましい。
その中でも、本発明の光学フィルムは、前記コア層の両側にセルロースアシレートの外層を有するため、このセルロースアシレートの外層をアルカリ鹸化して、通常使用される、ポリビニルアルコール偏光子との貼り合わせを改善することが好ましい。外層がなければ、接着剤を使用する必要があり、生産効率に劣るため不利となる。
【0202】
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明の光学フィルムを含むことを特徴とする。
本発明の光学フィルムは、偏光子とその少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する偏光板において、その保護フィルムとして使用することができる。
【0203】
また偏光板の構成として、偏光子の両面に保護フィルムを配置する形態においては、一方の保護フィルム又は、位相差フィルムとして用いることもできる。
【0204】
偏光子には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
【0205】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、本発明の光学フィルム、または、本発明の偏光板を用いることを特徴とする。
前記光学フィルム、及び偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、バックライト側の最表層に用いることが好ましい。
【0206】
一般的に、液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。更に、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、又は液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置されることもある。
【0207】
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましく、IPSモードであることがより好ましい。
【0208】
本発明の光学フィルムは、特にIPSモード液晶表示装置に好ましく用いることができる。本発明の光学フィルムは、面内のレターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthをいずれも小さくすることができやすいため、IPSモード液晶表示装置においては、好ましい。
本発明の光学フィルムは、さらに特定の構造の液晶表示装置のななめ方向の円状の色味変化を顕著に改良することができる。すなわち、本発明の液晶表示装置は、バックライト側偏光板表面とバックライト側のフィルム部材との距離が0mm以下であることが好ましい。
【0209】
バックライト側のフィルム部材とは、バックライトユニットの光を効率よく利用する輝度向上フィルムや、光を集光するプリズムシート、マイクロレンズシートや、光の拡散機能をもつ拡散シートなどを総称して言う。ここでこれらバックライト側のフィルム部材の積層順や積層枚数は限定されることはなく、本発明の液晶表示装置はもっとも液晶パネルに近い側に配置されたこれらいずれかのバックライト側のフィルム部材と、バックライト側偏光板表面との距離が10mm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0210】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0211】
[比較例1]
(ドープ溶液A−0の調整)
アセチル置換度2.86のセルロースアセテート(重量平均分子量22万。以下、セルロースアセテート1とも言う)100質量部を、メチレンクロライド:メタノール(重量比80:20)の混合溶剤に溶解し、ドープ溶液A−0を得た。このドープA−0を、ダイから金属支持体上に、流延した。金属支持体上にある間、ドープを40℃の乾燥風により乾燥してフィルムを形成した後に剥ぎ取り、フィルム両端をピンで固定し、その間を同一の間隔で保ちつつ105℃の乾燥風で5分間乾燥した。ピンを外した後、さらに130℃で20分間乾燥して、コア層のみからなる厚み50μmのフィルムとした。これを比較例1の光学フィルムとした。
【0212】
(光学特性の評価)
サンプルフィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃、相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向及び遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差を測定して、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出する。
また、レターデーション値の湿度に伴う変化については、フィルムを25℃、相対湿度10%にて12時間調湿した以外は、上記の方法と同様にして測定して算出したRthと、25℃、相対湿度80%にて12時間調湿した以外は上記の方法と同様にして測定して算出したRthから、Rthの湿度依存性を算出した。
比較例1の光学フィルムの相対湿度10%のときのRthと、相対湿度80%のときのRthを測定し、湿度依存性ΔRth(10A%−80%)を求めたところ、28nmであった。
その結果を下記表1に示した。
【0213】
[比較例2]
(ドープ溶液B−1の調整)
重量平均分子量150万のポリメチルメタクリレートであるPMMA1をアクリル系樹脂として用い、メチレンクロライド:メタノール(重量比80:20)の混合溶剤に溶解し、ドープ溶液B−1(固形分濃度22%、複素粘度50Pa・s)を得た。
【0214】
(光学フィルムの作製)
比較例1において、上記のドープ溶液A−0の代わりに上記にて調製したドープ溶液B−1をコア層に用い、アクリルドープのみからなる単層の溶液製膜とした以外は比較例1の光学フィルムの作製と同様の操作により比較例2の光学フィルムを作製した。
これを比較例2の光学フィルムとした。
【0215】
[比較例3]
(光学フィルムの作製)
上記にて調製したドープ溶液A−0を外層に、上記にて調製したドープ溶液B−1をコア層に用いて、溶液流延製膜を行い、下記表1の構成となるように比較例3の光学フィルムを作製した。具体的には、3層同時の共流延が可能なダイから金属支持体上に、下記表1に記載の層構成となるように連続製膜を行い、金属支持体面側から、外層A−0、コア層B−1、外層A−0となるよう、各層の厚みを下記表1のようにして、流延した。膜厚構成は、各ドープ流量から均一厚みの膜が形成されたと仮定したときの換算膜厚である。金属支持体上にある間、ドープを40℃の乾燥風により乾燥してフィルムを形成した後に剥ぎ取り、フィルム両端をピンで固定し、その間を同一の間隔で保ちつつ105℃の乾燥風で5分間乾燥した。ピンを外した後、さらに130℃で20分間乾燥した。
これを比較例3の光学フィルムとした。
【0216】
[実施例1]
(湿度依存性改良剤である化合物(2−2)の合成)
2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジン10g(81mmol)のN−エチルピロリドン100mL溶液に、m−メチル安息香酸メチル23g(169mmol)とナトリウムメトキシド22g(407mmol)とを加え、40℃で2時間加熱攪拌した。反応系の温度を室温に戻し、反応溶液を1N塩酸水溶液に注ぎ固体を濾取した。得られた粗生成物を2−プロパノールで再結晶し、化合物(2−2)を得た。
得られた化合物(2−2)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.38(6H,s)
2.50(3H,s)
7.36−7.47(4H,m)
7.70−7.90(5H,m)
10.77(1H,s)
10.99(1H,s)
【0217】
【化38】

【0218】
(化合物(2−2)の湿度依存性改良効果の性能評価)
この化合物(2−2)を3質量部、アセチル置換度2.86のアセチルセルロース(前記セルロースアセテート1)100質量部を、メチレンクロライド:メタノール(重量比80:20)の混合溶剤に溶解し、比較例1と同様にして50μmのフィルムとした。この時の湿度依存性ΔRth(10%−80%)を測定したところ、17nmとなった。比較例1の膜厚50μmの添加剤を添加していないアセチル置換度2.86セルロースアセテートフィルムの湿度依存性ΔRth(10%−80%)との差は−11nmであった。すなわち、前記式(I)の左辺で計算される化合物(2−2)の性能は、−11nmであった。
【0219】
(ドープ溶液A−1の調整)
アセチル置換度2.86のアセチルセルロース(前記セルロースアセテート1)100質量部、合成例1で合成した化合物(2−2)3質量部を、メチレンクロライド:メタノール(重量比80:20)の混合溶剤に溶解し、ドープ溶液A−1(固形分濃度18質量%、複素粘度15Pa・s)を得た。
【0220】
(光学フィルムの作製)
上記のドープ溶液A−1を外層に、ドープ溶液B−1をコア層に用い、それ以外は比較例3の光学フィルムの作製と同様の操作により実施例1の光学フィルムを作製した。
【0221】
[実施例2]
(湿度依存性改良剤である化合物(2−9)の合成)
2,4−ジアミノ−6−メトキシピリミジン10g(81mmol)のN−エチルピロリドン100mL溶液に、m−メチル安息香酸メチル23g(169mmol)とナトリウムメトキシド22g(407mmol)とを加え、40℃で2時間加熱攪拌した。反応系の温度を室温に戻し、反応溶液を1N塩酸水溶液に注ぎ固体を濾取した。得られた粗生成物を2−プロパノールで再結晶し、化合物(2−9)を得た。
得られた化合物(2−9)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.40(6H,s)
3.92(3H,s)
7.35−7.45(5H,m)
7.73−7.87(4H,m)
10.67(1H,s)
10.88(1H,s)
【0222】
【化39】

【0223】
(化合物(2−9)の湿度依存性改良効果の性能評価)
この化合物(2−9)を3質量部、アセチル置換度2.86のアセチルセルロース(前記セルロースアセテート1)100質量部を、メチレンクロライド:メタノール(重量比80:20)の混合溶剤に溶解し、比較例1と同様にして50μmのフィルムとした時の湿度依存性ΔRth(10%−80%)を測定したところ、19nmとなった。比較例1の膜厚50μmの添加剤を添加していないアセチル置換度2.86セルロースアセテートフィルムの湿度依存性ΔRth(10%−80%)との差は−9nmであった。すなわち、前記式(I)の左辺で計算される化合物(2−9)の性能は、−9nmであった。
【0224】
(ドープ溶液A−2の調整)
実施例1の光学フィルムの作製において、ドープ溶液A−1に用いた化合物(2−2)を合成例1で合成した化合物(2−9)に変えたドープ溶液A−2(固形分濃度18質量%、複素粘度15Pa・s)を調製した。
【0225】
(光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、ドープ溶液A−1の代わりに上記にて調製したドープ溶液A−2を用いた以外は同様の操作により、実施例2の光学フィルムを作製した。
【0226】
[実施例3]
(ドープ溶液A−3、B−2の調整)
実施例2の光学フィルムの作製において、ドープ溶液A−2、およびドープ溶液B−1に、さらに下記化合物A10質量部を加えてそれぞれドープ溶液A−3(固形分濃度18質量%、複素粘度14Pa・s)、B−2(固形分濃度22質量%、複素粘度45Pa・s)を調製した。
【0227】
【化40】

(上記繰り返し単位のオリゴマー、重量平均分子量1000)
【0228】
(光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、ドープ溶液A−1の代わりに上記にて調製したドープ溶液A−3を、ドープ溶液B−1の代わりに上記にて調製したドープ溶液B−2をそれぞれ用いた以外は同様の操作により、実施例3の光学フィルムを作製した。
【0229】
[実施例4]
(ドープ溶液A−4の調整)
実施例3の光学フィルムの作製において、セルロースアシレート溶液A−3に用いた化合物(2−9)を3質量部から6質量部に変えてセルロースアシレート溶液A−4(固形分濃度18質量%、複素粘度14Pa・s)を調製した。
【0230】
(光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、ドープ溶液A−1の代わりに上記にて調製したドープ溶液A−4を、ドープ溶液B−1の代わりに上記にて調製したドープ溶液B−2をそれぞれ用いた以外は同様の操作により、実施例4の光学フィルムを作製した。
【0231】
[比較例4]
(比較化合物A−2の合成)
下記比較化合物A−2(特開2007−138119号公報に記載の化合物)をGazzetta Chimica Italiana (1935), 65 566−88に記載の方法で合成した。
【0232】
【化41】

【0233】
(比較化合物A−2の湿度依存性改良効果の性能評価)
この比較化合物A−2を3質量部、アセチル置換度2.86のアセチルセルロース(前記セルロースアセテート1)100質量部を、メチレンクロライド:メタノール(重量比80:20)の混合溶剤に溶解し、比較例1と同様にして50μmのフィルムとした時の湿度依存性ΔRth(10%−80%)を測定したところ、24.5nmとなった。比較例1の膜厚50μmの添加剤を添加していないアセチル置換度2.86セルロースアセテートフィルムの湿度依存性ΔRth(10%−80%)との差は−3.5nmであった。すなわち、前記式(I)の左辺で計算される比較化合物A−2の性能は、−3.5nmであった。
【0234】
(光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、ドープ溶液A−1に用いた化合物(1)を上記にて合成した比較化合物A−2に変えた以外は同様の操作により、比較例4の光学フィルムを作製した。
【0235】
[比較例5]
(光学フィルムの作製)
実施例3の光学フィルムの作製において、ドープ溶液A−3の調製において前記化合物(2−9)を添加しなかった以外は同様の操作により、比較例5の光学フィルムを作製した。
【0236】
[比較例6]
(比較化合物2の湿度依存性改良効果の性能評価)
比較化合物2として一般的なセルロースアシレートフィルムのリン酸エステル系可塑剤として一般に用いられるTPP(トリフェニルフォスフェート)を使用した。
この比較化合物2を3質量部、アセチル置換度2.86のアセチルセルロース(前記セルロースアセテート1)100質量部を、メチレンクロライド:メタノール(重量比80:20)の混合溶剤に溶解し、比較例1と同様にして50μmのフィルムとした時の湿度依存性ΔRth(10%−80%)を測定したところ、27nmとなった。比較例1の膜厚50μmの添加剤を添加していないアセチル置換度2.86セルロースアセテートフィルムの湿度依存性ΔRth(10%−80%)との差は−1.0nmであった。すなわち、前記式(I)の左辺で計算される比較化合物A−2の性能は、−1.0nmであった。
【0237】
(光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、ドープ溶液A−1に用いた化合物(1)を上記にて合成した比較化合物2に変えた以外は同様の操作により、比較例5の光学フィルムを作製した。
【0238】
[評価]
(Re、RthおよびRth湿度依存性(ΔRth))
比較例1と同様にして、各実施例および比較例の光学フィルムのレターデーションの値を測定し、その後ΔRthの値を求めた。
得られた結果を下記表1に記載した。
【0239】
(光弾性係数)
作製した各実施例および比較例の光学フィルムから1cm×5cmのサンプルを切り出し、分光エリプソメーター(M−220、日本分光株式会社製)を用いて、サンプルに25℃で応力をかけながら、フィルム面内のレターデーション値を測定し、レターデーション値と応力の関数の傾きから算出した。
得られた結果を下記表1に記載した。
【0240】
(偏光板の作製)
実施例及び比較例で作成した各光学フィルム及びフジタックTD60UL(富士フイルム(株)製)を37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光子を調製した。
このようにして得た偏光子と、前記鹸化処理したフィルムのうちから2枚選び、これらで前記偏光子を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼り合わせて偏光板を作成した。ここで、偏光子の一方のフィルムは、表2記載のフィルム群から選択される1枚を鹸化したフィルムとし、他方のフィルムはフジタックTD60ULとした。
【0241】
(PVA偏光子への貼り合わせ評価)
このとき、以下の基準でPVA偏光子への貼り合わせを評価した結果を下記表1に記載した。
○:フィルムがポリビニルアルコールから剥離しない。
×:フィルムがポリビニルアルコールから容易に剥離する。
【0242】
(液晶表示装置への実装評価)
(IPS型液晶表示装置への実装)
市販の液晶テレビ(IPSモードのスリム型42型液晶テレビ。バックライト側偏光板表面とバックライトの距離が1.5mmである)から、液晶セルを挟んでいる偏光板を剥がし取り、上記にて作製した偏光板を、下記表1に記載の本発明の光学フィルム側が液晶セル側に配置されるように、粘着剤を介して液晶セルに再貼合した。組みなおした液晶テレビを、40℃・相対湿度80%の環境で10日間保持した後に、25℃・相対湿度60%の環境に移し、黒表示状態で点灯させ続け、48時間後に目視観察して、色味変化を評価した。
【0243】
(ななめ方向の色味変化)
装置ななめ方向から観察した場合の色味変化を観察し、以下の基準で評価した。その結果を下記表1に記載した。
○ : 円状の色味変化がほとんど視認されない。
× : 円状の色味変化が淡いものの、明らかに視認される。
×× : 円状の色味変化が視認される。
【0244】
【表1】

【0245】
表1より、実施例1〜4の光学フィルムは、Rthの湿度依存性が小さく、偏光子との貼り合わせが良好であることがわかった。すなわち本発明の光学フィルムを用いた偏光板の場合には、偏光子の密着性に優れ、ポリビニルアルコールとの貼合性は十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。
また、実施例1〜4の光学フィルムを用いた偏光板を液晶表示装置に組み込んだ各実施例の液晶表示装置は、各比較例の光学フィルムを用いた偏光板を液晶表示装置に組み込んだ各比較例の液晶表示装置に対して、パネルをななめ方向から観察したときの円状の色味変化評価性能に優れていることがわかった。
重量平均分子量10万のアクリル樹脂を用いて実施例1と同様のアクリルを含むコア層用ドープを作成したところ、粘度が不十分であり、外層ドープとの3層共流延で製膜したフィルムの面状が実施例1と比べると平滑とならず、平滑性の観点からは問題があった。
【0246】
比較例1はセルロースアシレート単層のフィルムであり、Rthの湿度依存性が大きく、パネルに組み込んだときのななめ方向の円状の色味変化評価が悪いことがわかった。比較例2はアクリル単層のフィルムであり、通常のPVAとの貼り合わせ工程では接着力に問題があるために偏光板を作製することができず、パネル実装ができなかった。比較例3は外層のセルロースアシレート層に添加剤を添加していない態様であり、Rthの湿度依存性が大きく、パネルに組み込んだときのななめ方向の円状の色味変化評価が悪いことがわかった。比較例4は外層のセルロースアシレート層に本発明で規定する性能以下の湿度依存性改良剤を添加した態様であり、Rthの湿度依存性が大きく、パネルに組み込んだときのななめ方向の円状の色味変化評価が悪いことがわかった。比較例5は、湿度依存性改良剤を添加せず、化合物Aをセルロースアシレート層および(メタ)アクリル層に添加した態様であり、Rthの湿度依存性が大きく、パネルに組み込んだときのななめ方向の円状の色味変化評価が悪いことがわかった。比較例6は、本発明で規定する性能の湿度依存性改良剤の代わりに一般的な可塑剤を添加した態様であり、Rthの湿度依存性が大きく、パネルに組み込んだときのななめ方向の円状の色味変化評価が悪いことがわかった。
【符号の説明】
【0247】
11 流延設備
12 ドープ
14 流延ダイ
31 バンド
32 バックアップローラ
33 バックアップローラ
36 フィルム
37 剥ぎ取りローラ
51 温調板
52 凝縮板
53 液受け
56 回収タンク
101 流延設備
102 ドラム
105 凝縮板
PS 流延開始位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層/コア層/外層の3層構成からなり、
前記コア層が(メタ)アクリル系樹脂を主成分として含み、
前記外層が下記式(I)を満たす湿度依存性改良剤を含み、かつ、セルロースアシレートを主成分として含むことを特徴とする光学フィルム。
式(I) ΔRth(3)≦−4nm
式(I’) ΔRth(3)=(ΔRth(rh、3)−ΔRth(rh、0)
(式(I)中、ΔRth(rh、3)はアセチル置換度2.86のセルロースアセテート100質量部に対して湿度依存性改良剤を3質量部添加した厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。ΔRth(rh、0)は、湿度依存性改良剤が添加されていない、アセチル置換度2.86のセルロースアセテートからなる厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。Rthは波長590nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーション(単位:nm)を表す。)
【請求項2】
下記式(II)で定義されるΔRth(10%−80%)が、−10〜5nmであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
式(II) ΔRth(10%−80%)=Rth(10%)−Rth(80%)
(式(II)中、Rth(10%)はフィルムの波長590nm、25℃、相対湿度10%におけるフィルムの膜厚方向のレターデーションRthの値を表す。Rth(80%)はフィルムの波長590nm、25℃、相対湿度80%におけるフィルムの膜厚方向のレターデーションRthの値を表す。)
【請求項3】
前記コア層の主成分である前記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が80万〜200万であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記湿度依存性改良剤が、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム:
【化1】

一般式(1)中、Yはメチン基又は窒素原子を表し;Qa、Qb及びQcはそれぞれ、単結合又は2価の連結基を表し;Ra、Rb、及びRcはそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRbは連結して環を形成してもよく;X2は、単結合又は2価の連結基を表し、X1は、単結合又は下記2価の連結基群(5)
【化2】

(各式中、*側が前記各式で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。)から選択される2価の基を表し;R1及びR2はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。
【請求項5】
前記湿度依存性改良剤が、下記一般式(101)または一般式(102)で表される化合物の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【化3】

(一般式(101)中、RAはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基又はアリール基を表す。X101、X102、X103及びX104はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。R101、R102、R103及びR104はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表す。)
【化4】

(一般式(102)中、RB及びRCはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基又はアリール基を表す。X105及びX106はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。R105及びR106はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基又は複素環基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(101)または(102)におけるX101〜X106がそれぞれ独立に単結合または下記一般式(103)で表される群の中から選ばれることを特徴とする請求項5に記載の光学フィルム。
一般式(103)
【化5】

【請求項7】
前記外層の合計膜厚が20μm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記コア層の膜厚が10〜100μmであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
全膜厚に占める、前記外層の合計膜厚の割合が、2〜40%であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
光弾性係数の値が−3.0×10-12Pa-1〜3.0×10-12Pa-1であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
5nm<|Rth|
セルロースアシレートと下記式(I)を満たす湿度依存性改良剤と有機溶媒を含有するドープ(A)、および(メタ)アクリル系樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を、流延基材側から(A)−(B)−(A)の順番に共流延法により同時に流延基材上に流延する工程を含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
式(I) ΔRth(3)≦−4nm
式(I’) ΔRth(3)=(ΔRth(rh、3)−ΔRth(rh、0)
(式(I)中、ΔRth(rh、3)はアセチル置換度2.86のセルロースアセテート100質量部に対して湿度依存性改良剤を3質量部添加した厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。ΔRth(rh、0)は、湿度依存性改良剤が添加されていない、アセチル置換度2.86のセルロースアセテートからなる厚さ50μmのフィルムの25℃、相対湿度10%におけるRthから、25℃、相対湿度80%におけるRthを引いた値を表す。Rthは波長590nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーション(単位:nm)を表す。)
【請求項12】
前記ドープ(B)に含まれる前記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が80万〜200万であることを特徴とする請求項11に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記ドープ(A)の流延厚みを、ドープ(A)の乾燥厚みの合計が20μm以下になるように制御することを特徴とする請求項11または12に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記ドープ(A)の複素粘度ηAと、前記ドープ(B)の複素粘度ηBが、下記式(III)の関係を満たすように制御することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
式(III) ηA≦ηB
【請求項15】
前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の25℃における複素粘度がいずれも10〜80Pa・sであることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記ドープ(A)の固形分濃度が15〜25質量%であることを特徴とする請求項11〜15のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項17】
請求項11〜16のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする、光学フィルム。
【請求項18】
偏光子と、請求項1〜10および17のいずれか一項に記載の光学フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
【請求項19】
請求項1〜10および17のいずれか一項に記載の光学フィルム、または、請求項18に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項20】
IPS方式であることを特徴とする、請求項19に記載の液晶表示装置。
【請求項21】
バックライト側偏光板表面とバックライト側のフィルム部材との距離が10mm以下であることを特徴とする請求項19または20に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−215687(P2012−215687A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80592(P2011−80592)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】