説明

光学プローブ

本発明は、例えば光学繊維といった光学ガイド2と、上記光学ガイドの端部2aにしっかりと結合されるレンズシステム6とを備える光学プローブ1に関する。このプローブは、上記光学ガイドに関する空腔を持ち、透明なウィンドウ4を遠位端部に持つ筐体3を含む。上記ウィンドウが、上記前記レンズシステム6の屈折力と比較して、小さい屈折力を持つ。作動手段8が、関心領域ROIの光学スキャンを可能にするよう、上記レンズシステムを変位させる。本発明は特に、小型用途に、例えば生体内医療分野に適している。マウント7を介して光学ガイド2にレンズシステム6を付けることにより、光学プローブ1の撮像野FOVは、光学繊維2の横断ストロークにより直接決定されることができる。こうして、比較的小さなストロークだけが必要とされる。従って、撮像野は、もはや上記横断ストロークにより事実上制限されることはない。光学プローブは、非線形光学撮像に関して特に有利である。この場合、光学ガイドが、比較的低い出口開口数を持つ光学繊維とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型用途に適した光学プローブに関し、例えば生体内医療検査及び手順、又は例えば食品又は小さなデバイスの検査といった産業検査に適用される。本発明は、対応する撮像システム及び斯かる撮像システムを用いる撮像方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば癌といった様々な疾患の正確な診断のため、生検法がしばしば行われる。これは、内視鏡のルーメンを介して又は針生検を介して行われることができる。生検を行うための正確な位置を見つけるため、例えばX線、MRI及び超音波といった様々な撮像モダリティが使用される。例えば前立腺癌の場合、多くの場合、生検は、超音波により誘導される。有用ではあるものの、これらの誘導方法は決して最適でない。なぜなら、分解能は制限され、更に、これらの撮像モダリティはほとんどの場合、良性及び悪性組織間を識別することができないからである。結果として、組織の正しい部分で生検法が行われることを確かめることができない。我々は、ほぼブラインド生検を行っており、組織の検査後癌細胞が検出されない場合であっても、我々が単に生検を行うべき正しいスポットを逃したかを確かさをもって知ることができない。
【0003】
生検手順を改善するため、生検が行われる前に、生検位置の直接検査が必要とされる。これを実現する方法は、生検位置での顕微鏡検査により行われる。これは、小型化された共焦顕微鏡を必要とする。より詳細な組織検査に関しては、非線形光学技術が、組織を染色することを必要とせずに、高分子コントラストを可能にする(J. PaleroらによるSPIE vol.6089 (2006) pp.192-202を参照)。これらの技術は、2つの光子及び2次高調スペクトル撮像に基づかれる。スキャナをこれらの非線形技術と互換性を持つようにするため、光学繊維自体における非線形効果を減らすよう、大きいコア直径を持つフォトニック結晶繊維が使用されるべきである。これらの繊維の欠点は、通常はおよそ0.04といった低い出口ビーム開口数を持つ点にある。結果として、固定された対物レンズシステムがおよそ0.7の開口数を持つとき、横倍率は、0.057である。合理的な撮像野(およそ100マイクロメートル)を持つためには、光学繊維の横断ストロークは、1.75mm程度必要になる。これは、かなり大きく、顕微鏡検査を小型化するには制限事項となる。
【0004】
US2001/0055462号は、最小侵襲医療手順(MIMPs)に使用される、一体化された内視鏡画像取得及び治療供給システムを開示する。このシステムは、高品質画像と内視鏡のサイズとの間の従来のトレードオフを外見上は解決する。このシステムは、一体化された撮像及び診断/治療器具の遠位端部に含まれる例えば圧電アクチュエータにより駆動される、スキャン光学繊維又は光導波管により提供される、方向付けされスキャンされる光学照明を使用する。方向付けされた照明は、従来の可撓性内視鏡により生成される画像に整合する又はそれを上回る高分解能撮像を、広い撮像野(FOV)でかつフルカラーで提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スキャンされる光学照明を使用すると、光子検出器のサイズ及び数は、結果として生じる画像の分解能及びピクセル数を制限しない。追加的な特性は、診断、監視及び/又は器具を用いた治療の提供を容易にする、患者の体における関心領域の局所解剖学的特徴の強化、立体表示及び特徴サイズの正確な測定を含む。しかしながら、このシステムは、固定されたレンズが内視鏡の端に適用され、撮像野をより制限したものにするという欠点がある。また、このシステムは、非線形光学における実際的な適用が容易ではない。なぜなら、特に斯かる繊維の低い開口数が原因で、この光学システムは単一モード繊維に対して直接的に適用可能ではないからである。
【0006】
まとめると、従来において開示され提案される繊維スキャニング・システムのいずれも、対物レンズシステムに対する合理的な撮像野(FOV)を持つためにより大きい横断スキャナ・ストロークが必要とされるという問題を何ら解決しない。
【0007】
従って、改良型の光学プローブが有利であり、特に、より効率的な及び/又は信頼性の高い光学プローブが有利である。
【0008】
本発明の更なる目的は、従来技術に対する変形例を提供することである。
【0009】
特に、本発明の目的は、充分な撮像野及び高画像分解能を持ち、上述した従来技術の問題を解決する光学プローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
こうして、上記目的及び他の複数の目的は、本発明の第1の側面において得られる光学プローブを提供することにより解決されることが意図される。このプローブは、
光学ガイドと、
光学ガイドの端部に結合されるレンズシステムと、
光学ガイドに関する空腔を持ち、透明なウィンドウを遠位端部に持つ筐体であって、上記ウィンドウが、上記レンズシステムの屈折力と比較して、小さい屈折力を持つ、筐体と、
上記レンズシステムを変位させることができる作動手段とを有し、
上記前記ウィンドウの外側で関心領域(ROI)の光学スキャンを可能にするよう、上記作動手段が、上記レンズシステムを変位させるよう構成される。
【0011】
本発明は特に、しかし排他的にではなく、小型用途、例えば生体内医療分野に特に適した改良された光学プローブを得る点に関して有利である。例えば光学繊維といった光学ガイドに確実にレンズシステムを付ける又は装着することにより、光学プローブの撮像野(FOV)は、光学繊維の横断ストロークにより直接決定されることができる。従って、比較的小さなストロークだけが必要とされる。従って、撮像野は、もはや横断ストロークにより事実上制限されることはない。レンズシステム自身は、光学軸の近くを撮像するためだけに使用されるので(即ち、小さな撮像野)、これは、高画像分解能を持ちつつ、製造を容易にするより簡単な(即ち、複雑さが少なく、より少ないレンズ要素で済む)光学デザインを可能にすることができる。
【0012】
レンズシステムが光学ガイドの末端部分に変位可能に取り付けられるので、本発明による光学プローブは、比較的簡単で及び大規模な製造に特に適している点を更に理解されたい。実際的な観点から、これは、製造の間必要とされる精度を減らすことができ、続いて、プローブ当たりのユニット価格を下げることができる。これは特に重要である。なぜなら、光学プローブが埋め込まれた内視鏡、カテーテル又は針は通常、衛生上の要件から、1回使用すれば廃棄されることになるからである。
【0013】
サンプル媒体(生体内、即ち体組織)が、例えばレーザ光といった放射線の印加電場に非線形に反応する誘電偏光を持つような非線形光学処理に適用されることができる光学プローブを与えるため、本発明は、かなりの利点も提供する。なぜなら、光学プローブのレンズシステムが、一体化され、更に変位可能であるからである。非線形光学を用いる作業は、プローブにおける光学ガイドとして、ほとんど又は全く分散(実際には歪み)を持たない単一モード光ファイバ(SMF)の使用を必要とする場合がある。しかしながら、単一モード光ファイバは通常、横方向の分解能及び従って撮像野(FOV)を制限する比較的低い出口開口数に苦しむ。にもかかわらず、本発明の光学プローブは、簡単かつ堅牢なソリューションを提供する。このソリューションでは、少なくともある程度まで単一モードファイバのこの特性を補償するよう、高い開口数のレンズシステムがプローブに組み込まれることができる。
【0014】
光学プローブがより簡単なレンズデザインを可能にするので、レンズ要素の量は減らされることができる。結果として、レンズ物質の量、これは、レンズ物質によりもたらされる分散の量に直接関係するが、この量も減らされることができる。このことは、非線形用途に拡張されるパルス低減をもたらす。
【0015】
本発明の文脈において、「光学ガイド」という語は、以下に限定されるものではないが、光学繊維(マルチモード及びシングルモード)、薄膜光学経路、フォトニック結晶繊維、フォトニック・バンドギャップ繊維(PBG)、偏光維持繊維などを含むことができる点を理解されたい。光学プローブは、1つ以上の繊維、即ち複数の繊維又は繊維束を有することもできる。
【0016】
ある実施形態において、レンズシステムは、単一レンズシステムとすることができる。なぜなら、これは、製造を一層簡単化し、小型化要件をより簡単に満たすようにすることができるからである。
【0017】
可能であれば、レンズシステムは、非球面レンズを有することができる。即ち、このレンズは、比較的高い開口数(NA)を容易にする球形レンズでない。従って、かなりコンパクトなレンズシステムが得られる。
【0018】
別の実施形態では、レンズシステムは、可変の開口数を持つ流体レンズを有することができる。例えば、レンズシステムは、油水2相システムを持つ流体レンズを有することができる。これにより、焦点深度変化が促進されるよう、開口数は調整されることができる。
【0019】
可能であれば、ウィンドウが非集束であり、これによりレンズシステムの撮像を歪めないよう、透明なウィンドウが平面部分を有することができる。詳細には、透明なウィンドウとレンズシステムとの間の屈折力の比率は、最大20%、最大10%又は最大5%である。例えば最大25%、最大15%又は最大1%といった他の比率も可能である。
【0020】
通常、光学ガイドは、光学繊維とすることができ、このレンズシステムは、光学繊維の光学出口から離れて距離(L)の所に配置される。この距離(L)は、光学繊維のコア直径より明らかに大きい。距離(L)と、出口位置での繊維径との間の比率は、5、10、20又は30及びそれ以上とすることができる。追加的に又は代替的に、レンズシステムは、光学ガイドの遠位端部に固定され、レンズシステムに固定される中間マウントを用いて光学ガイドにしっかりと接続されることができる。
【0021】
好ましくは、光学ガイドの遠位端部におけるレンズシステムは、撮像野(FOV)を強調するため、光学ガイドの横断方向において変位可能に取り付けられることができる。それは、弾性的に取り付けられることができる。
【0022】
いくつかの用途において、このレンズシステムは、非線形光学現象、例えば詳細が以下に説明される2つの光子イベント及び周波数混合を可能にするような開口数を持つことができる。少なくとも0.4、少なくとも0.5又は少なくとも0.6という開口数は、非線形光学現象を実行することをより容易にする。
【0023】
非線形用途に対して、光学ガイドは、単一モード光ファイバとすることができる。代替的に又は追加的に、光学ガイドは、フォトニック結晶繊維又は偏光維持繊維とすることができる。なぜなら、これらの種類の光学ガイドは、本発明の文脈において採用すると特に有益な複数の有利な光学特性を持つからである。
【0024】
いくつかの用途では、光学プローブは、内視鏡、カテーテル、針、生検針又は当業者であれば容易に理解するであろう他の類似する用途の一部を形成することができる。本発明の適用分野は、以下に限定されるものではないが、小さな撮像デバイスが有益である分野、例えば、小さいスケールのデバイスを用いて検査を行う産業といった分野を含むことができることが想定される。
【0025】
第2の側面において、本発明は、光学撮像システムに関し、このシステムは、
第1の側面による光学プローブと、
上記光学プローブに光学的に結合される放射線源(IS)であって、上記プローブが、上記放射線源から関心領域(ROI)へと放出される放射線をガイドするよう構成される、放射線源と、
上記光学プローブに光学的に結合され、上記関心領域から反射される放射線を用いて撮像するよう構成される、撮像検出器(ID)とを有する。
【0026】
本発明の文脈において、「放射線源」という語は、任意の種類の適切な放射線源を有することができ、以下に限定されるものではないが、レーザ(任意の波長、及び任意の動作モード、即ち連続的又は任意の期間のパルス化されたもの、フェムト秒レーザを含む)、LED、ガス放電ランプ、任意の種類の発光等を含むと理解されたい。
【0027】
好ましくは、例えば2つの光子撮像及び周波数混合といった非線形光学現象を可能にするよう、光学撮像システムの放射線源は、ある強度及び/又は時空間分布を持つ放射線を放出することができる。
【0028】
こうして、このシステムは、2つの光子撮像システム又は2次高調波生成(SHG)撮像を行うことができる。好ましくは、放射線源は、フェムト秒(fs)パルスレーザを持つレーザ源である。撮像システムは、適切な分散補償手段を有することができる。しかしながらこの撮像システムは、より線形の光学撮像を実行することもできる。例えばこの撮像システムは、蛍光撮像システム等とすることができる。
【0029】
ある実施形態において、放射線源は、波長λ及びパルス長Δτを持つパルス化されたレーザとすることができ、このプローブにおけるレンズシステムの焦点距離fは、

を満たす。ここで、Vは、レンズシステムのアッビ数であり、NAobjは、光学プローブにおけるレンズシステムの開口数である。
【0030】
第3の側面において、本発明は光学撮像方法に関する。この方法は、
第1の側面による光学プローブを提供するステップと、
上記光学プローブに光学的に結合される放射線源を提供するステップであって、上記プローブが、上記放射線源から関心領域(ROI)へと放出される放射線をガイドするよう構成される、ステップと、
上記光学プローブに光学的に結合される撮像検出器を用いて撮像処理を実行するステップであって、上記検出器が、上記関心領域から反射される放射線を用いて撮像するよう構成される、ステップとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による光学撮像プローブの概略的な断面図である。
【図2】本発明による光学撮像プローブの2つの可能な実施形態の概略的な断面図である。
【図3】本発明による光学撮像システムの概略的な図である。
【図4】本発明による光学撮像プローブの別の実施形態の概略的な断面図である。
【図5】本発明による光学プローブに関する光学経路の概略的な図である。
【図6】流体レンズを持つ光学プローブに関する光学経路の概略的な図である。
【図7】本発明による方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の個別の側面は、他のいずれかの側面とそれぞれ組み合わされることができる。本発明のこれら及び他の側面は、記載される実施形態を参照し、以下の説明から明らかとなるであろう。
【0033】
本発明が、添付の図面を参照して以下更に詳細に説明されることになる。図面は、本発明を実現する1つの態様を示すものであり、添付のクレームセットの範囲に含まれる他の可能な実施形態に限定するものとして解釈されるべきではない。
【0034】
図1は、本発明による光学撮像プローブ1の概略的な断面図である。光学プローブ1は、例えば光学繊維といった光学ガイド2と、光学ガイド1が埋められることができる空腔を持つ筐体3とを有する。筐体3は、その末梢部又はサンプリング端部に、透明かつ実質的に非集束なウィンドウ4を持つ。ウィンドウ4は、光学搬送ガラス又はポリマーの平面部分とすることができる。好ましくは、ウィンドウ4は、非集束である。即ち、この窓は、何ら屈折力を持たない。しかし、いくつかの用途では、ウィンドウ4が、何らかの集束効果を持つことができることが想定される。しかしながら、これは通常の場合にはあてはまらない。なぜなら、集束効果は、レンズシステム6の性能に影響を与える場合があるからである。にもかかわらず、いくつかの場合において、出口ウィンドウ4がフィールド・フラットナ(flattener)レンズとすることができることが想定される。このレンズは、画像平面を平坦にし、湾曲したものにしない。これは、少量の屈折力を必要とする。
【0035】
レンズシステム6は、光学ガイド2の端部2aにしっかりと結合される。レンズシステム6は、単に図面における明確さのため単一レンズとして示される。以下に明白にされることになるが、レンズシステム6は、1つ以上のレンズを持つこともでき、回折要素又はミラー要素を含むこともできる。レンズシステム6と光学ガイド2との間の結合は好ましくは、機械的である。即ち、レンズシステム6の位置を保つ中間マウント7が存在し、光学ガイド6の光学出口は、互いに固定された位置にある。
【0036】
レンズシステム6を変位させることができる作動手段8も、提供される。作動手段8が、矢印A1により示されるように、レンズシステム6上で多かれ少なかれ直接作用することができる。実際的な実現において、作動手段8は、マウント7と機械的接触状態にある可能性が最も高い。代替的に又は追加的に、作動手段8は、矢印A2により示されるように、光学ガイド2の端部2aを介してレンズシステム6を間接的に作動させることができる。作動手段8の機能は、ウィンドウ4の外側で関心領域ROIの光学スキャンを可能にするため、レンズシステム6を変位させるよう、作動手段8が構成される点にある。通常、光学ガイド2は、簡単にはアクセスできない位置での検査、例えば生体内医療検査及び/又はサンプル摂取を容易にするよう、可撓性物質で造られる。その場合、光学ガイド2は、端部2aからいくらか距離を置かれた点に固定されるか又は載せられることができる。この構成は、作動手段8により光学ガイド2の少なくとも一部を弾性的に変位させることを可能にする。プローブ端部での光学ガイド2の変位に関する様々なソリューションは、US2001/0055462号に記載される。この文献は、本書において参照により完全に含まれる。
【0037】
コンパクトな光学プローブ1を得るため、レンズシステム6は好ましくは、非球面レンズを有する。これにより、相対的に高い開口数(NA)を持つことが可能にされる。
【0038】
図2は、本発明による光学撮像プローブの2つの可能な実施形態の概略的な断面図である。好ましくは、筐体2は、中央軸の周りで対称性のある円筒状である。
【0039】
上面図において、光学ガイド2及びレンズシステム6は、筐体3における中央位置から離れて配置される。こうして、レンズシステム6は、筐体3の側面の近くに配置されることができる。製造におけるいくつかの場合において、これは、好ましいソリューションとなる場合がある。光学撮像点から関連する範囲にわたり横方向に変位されるよう、光学ガイド2が十分に柔軟である場合、これは、いくつかの利点を持つことができる。特に、アクチュエータ8は可能性として、光学プローブ1における光学ガイド2の中央取付けと比較して単純化されることができる。これを行う別の理由は、追加的な光源のための空間となることになる点、又は例えば薬又は最小侵襲手順に関する器具を投与するためのワーキング(中空)チャネルを生み出す点にある。
【0040】
光学ガイド2が、十分に柔軟又は弾性的である場合、作動手段8が、筐体3の軸方向の方向に沿ってガイド2を変位させることもできることが更に想定される。これは、光学プローブ1の光学軸に沿った深度スキャンにとって有益な場合がある。
【0041】
図2の底面図において、光学プローブ1が2つの光学ガイド2'及び2''を有する実施形態が示される。各ガイドはそれぞれ、対応するレンズシステム6及び6'を持つ。これは、プローブ1の可能なダウンスケールを制限することができるが、いくつかの用途では、撮像の間、同時に又は連続的に働く2つの異なる更に補完的な撮像モダリティが有利である場合がある。
【0042】
第3のオプションは、繊維2が1つ以上の繊維からなる、即ち繊維束であるというものである。これは、非線形スキャンにとって重要であり、より高速にスキャンすることを可能にするより多くの光を収集するのに使用されることができる。
【0043】
図3は、本発明による光学撮像システム100の概略的な図である。光学撮像システムは、サンプル・アーム30の端部に上述したような光学プローブ1を有する。サンプル・アーム30は好ましくは、非常に可撓性があり、ある程度まで屈曲可能である。図1と同様、光学プローブ1の拡大された部分が表示される。
【0044】
追加的に、放射線源RSは、カプラCを介して光学プローブ1に光学的に結合される。プローブ1は、放射線源RSから関心領域ROIへと放出される例えばレーザ光といった放射線を誘導するよう、これに従って構成される。更に、撮像検出器IDが、光学プローブ1に光学的に結合される。撮像検出器は、サンプル(図示省略)における関心領域ROIから反射された放射線を用いて撮像を行うよう構成される。撮像検出器IDは、結果にアクセスし、及び/又は撮像処理を制御するためのユーザ・インタフェース(UI)も有することができる。
【0045】
図4は、本発明による光学撮像プローブ1の別の実施形態の概略的な断面図である。コンパクト・レンズシステムを持つために、レンズ6aの非球面が適用される。適切なポリマー内にレンズ6aを製造することにより、コンパクト・レンズシステム6aは、大量生産に適した設計にされることができる。好ましくは、ポリマーは、レンズシステム6の簡単な変位を提供する低密度ポリマーであるべきである。
【0046】
レンズシステム6は、マウント7により規定される光学繊維2の光学出口から離れて、距離Lの所に配置される。距離(L)は、光学繊維2のコア直径より明らかに大きい。
【0047】
レンズシステム6は、磁石41a及び41bと共働するコイル40a、40b、40c及び40dを備える電気機械モーター・システムと共に筐体3に取り付けられる部品とすることができる。磁石は、モーター・システムの動作により光学繊維2及びレンズ6aを用いてスキャンを実行するよう、光学繊維2に機械的に付けられる。
【0048】
この実施形態では、図4において明らかであるように、レンズ6aは、薄い平坦な出口ウィンドウ・ガラスプレート4の前のシングレット平面非球面レンズ6aである。非球面レンズ6aは、PMMAから作られ、0.82mmの入口瞳孔径を持つ。開口数(NA)は0.67であり、(空気中で測定される)焦点距離は0.678mmである。レンズシステム6aは、780nmの波長に対して最適化される。出口ウィンドウ4は、平坦であり、屈折力を持たない。
【0049】
対物レンズ6の自由ワーキング距離(FWD)は、出口ウィンドウ4の厚みHより大きくなければならない。対物レンズ6は、出口ウィンドウ4の前でスキャンされることになる。出口ウィンドウ4は、堅牢であるよう特定の厚みを持たなければならない。通常は、この厚みは、0.1mmより大きく、従って、H>0.1mmである。これは、出口ウィンドウの前で対象のスキャンを可能にするため、厚さHと対物レンズ6及び出口ウィンドウ4の間に必要とされる追加的な自由空間とを考慮し、対物レンズ6の焦点距離fが、

を満たさなければならないことを意味する。
【0050】
スキャニング・システム、即ち採用されるレンズシステム6aのラスタリング(rastering)は、「Optical Fibers and Sensorsfor Medical Diagnosis and TreatmentApplications」、Ed. I Gannot、Proc. SPIE vol. 6083、E.J. Seibelらによる「A full-color scanningfiber endoscope」という記事に記載されるように、圧電性モーターに基づかれる共振スキャンに基づかれることができる。代替的にスキャンは、米国特許第6967772号及び米国特許第7010978号に記載されるように、音叉の共振スキャンとすることができるか、又は、別の変形例として、スキャニング・システムは、電磁スキャナとすることができる。
【0051】
図5は、図4と共に説明された光学プローブ1に関する光学経路の概略的な図である。光ビームが光学繊維2の出口2cの後で集められるよう、レンズ4は比較的高い開口数(NA)を持つ。光ビームは、組織Sに焦束される。この場合組織は、主に水を含むと想定される。
【0052】
図6は、図4及び図5のプローブにいくらか類似する別の光学プローブ1に関する光学経路の概略的な図である。しかし、図6のプローブは更に、非球面レンズ及び光学繊維(図示省略)の間に挿入される流体レンズ6''を持つ。図5において、プローブの前のサンプルは、組織である。流体レンズは、不混和性の流体6''a及び6''bを持ち、レンズ6''の開口数を変化させるよう、操作されることができる。好ましくは、位相6''a及び6''bは、油及び水である。好ましくは、流体は、エレクトロウェッティングにより制御可能である。エレクトロウェッティング・レンズの更なる詳細は、本書において参照により完全に含まれる、米国特許第7,126,903号に見つけることができる。
【0053】
以下のパラグラフにおいて、非線形光学の場合に対して、何らかの記載が与えられる。サンプル媒体(生体内、即ち体組織)が、例えばレーザ光といった放射線の印加電場に非線形に反応する誘電偏光を持つ。
【0054】
非線形光学は、周波数混合処理による様々な範囲の分光学及び撮像技術を提供する。2つの例は、2つの光子撮像システム及び2次高調波生成(SHG)撮像である。撮像システム100の放射線源RS(図3を参照)は、非線形光学現象を可能にするよう、ある強度を持ち、時空間分布を持つ放射線を放出することができるべきである。このシステムは、分散補償手段に含まれることもできる。非線形光学に関する更なる参照のため、理解ある読者は、Alberto Diasproにより編集される「Confocal and Two-Photon Microscopy: Foundations, Applications, and Advances」(Wiley-Liss, Inc., 2002, New York)を参照されたい。
【0055】
特に、対物レンズ6の周辺光線と原理光線との間の色彩時間シフトΔTが、パルス化された放射線源RS、即ちレーザの時間Δτにおけるパルス長より短くなければならないよう、レンズシステム6の色彩分散は小さくなければならない。これは、レンズ6に以下の要件をセットする。
【0056】
J. Mod. Opt. 35, (1988), 1907におけるZ. Borから、この要件は、

と記載されることができる。ここで、λは、波長であり、NAobjは、対物レンズの開口数であり、fは、対物レンズの焦点距離であり、cは、光速であり、nは、レンズの屈折率であり、dn/dλは、波長に伴う屈折率における変化である。レンズ物質の分散に関するアッビ数Vの式を用いと、上記式は、

となることがわかる。λ=486.13nm及びλ=656.27nmを用いると、これは、最終的に

となる。ここで、λは、nm単位の波長であり、Vは、アッビ数であり、NAobjは、対物レンズの開口数であり、Δτは、fs単位のレーザのパルス長であり、fは、mm単位の対物レンズの焦点距離である。
【0057】
1つ以上のレンズ物質を有する対物レンズに関しては、式(4)において、物質の最低アッビ数が選択されるべきである。
【0058】
大きいコアのフォトニック結晶繊維の開口数は通常、かなり小さく、通常は、

である。以下、対物レンズの開口数は、NAobjにより与えられる。繊維2の出口と対物レンズ6との間の距離Lは、繊維2に付けられる追加的な重みを限界があるものとするため、制限されなければならない。通常、Dが光学繊維2の直径である場合、距離Lは、繊維の直径Dより実質的に大きいが、通常はL<25Dfで制限されるようにしなければならない。
【0059】
この状態は、以下の制約条件に再公式化されることができる。D=2NAobjf及び

を用いると、上記の不等式は、

により与えられることもできる。別の制約条件は、対物レンズ6の開口数(NA)NAjが好ましくは、控えめなレーザ出力で2つの光子相互作用を生成することが可能であるよう、NAobj>0.5という要件を満たすべきである。従って、

が成り立つ。可能であれば、NAobjは少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.6又は少なくとも0.7とすることもできる。
【0060】
対物レンズ6は、できるだけ製造が簡単であるべきである。従って、対物レンズの瞳孔径Dは好ましくは、約0.2mmより大きい。これは、

という制約条件へと変換される。ここで、fは、mm単位である。
【0061】
対物レンズ6は、繊維の出口から10.0mmの距離の所にあり、780nmの波長で屈折率1.4862を持ち、アッビ数がV=57.4であるPMMAから作られる。レンズの瞳孔径はD=0.82mmであり、軸上の厚みは0.647mmである。対物レンズの開口数は、NAobj=0.67である。表面の「下落(sag)」又はz座標を表す式が、

により与えられる。ここで、Rは、各表面のレンズ半径を表し、rは、光学軸からの距離を表し、zは、光学軸に沿ってz方向における表面の下落の位置を表す。係数A2〜A16は、表面の非球面係数である。それらは、
R=0.2743594mm、
k=−6.54、
A2=−0.30479289 mm−1
A4=28.308315 mm−3
A6=−527.54424mm−5
A8=7899.4624 mm−7
A10=−77012.804 mm−9
A12=459584.12 mm−11
A14=−1510148.3 mm−13
A16=2090233.2 mm−15により与えられる。
【0062】
対物レンズ6とガラスプレート出口ウィンドウ4との間の距離は、0.1mmである。出口ウィンドウ4は、厚さ0.2mmであり、780nmの波長で屈折率1.5111を持ち、アッビ数Vが64.2であるBK7ショットガラスから作られる。ビームは、780nmの波長で屈折率1.330を持ち、アッビ数Vが33.1である水の様な組織に集束される。
【0063】
図7は、本発明による方法に関するフローチャートである。この方法は、
請求項の第1の側面に記載の光学プローブ1を与えるステップS1と、
上記光学プローブ1に対してCを通り光学的に結合される放射線源(RS)を与えるステップS2であって、上記プローブが、放射線源から関心領域(ROI)へと放出される放射線をガイドするよう構成される、ステップS2と、
上記光学プローブ1に光学的に結合される撮像検出器(ID)を用いて撮像処理を実行するステップS3であって、上記検出器が、関心領域(ROI)から反射される放射線を用いて撮像するよう構成される、ステップS3とを有する。
【0064】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの任意の組合せを用いて実現されることができる。本発明又はその特徴のいくらかは、1つ又は複数のデータプロセッサ及び/又はデジタル信号プロセッサで実行されるソフトウェアとして実現されることもできる。
【0065】
本発明の実施形態の個別の要素は、任意の適切な態様で、例えば、単一のユニットで、複数のユニットで、又は別々の機能ユニットの一部として、物理的に、機能的に及び論理的に実現されることができる。本発明は、単一のユニットで実現されることができるか、又は異なるユニット及びプロセッサ間に物理的及び機能的に分散されることができる。
【0066】
本発明が特定の実施形態と共に説明されたが、本発明は如何なる態様でもこの説明された実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付のクレームセットに照らして解釈されるべきである。請求項の文脈において、「有する」という語は、他の可能な要素又はステップを除外するものではない。また、「a」又は「an」等による参照言及は、複数性を排除するものとして解釈されるべきではない。図面に示される要素に対する請求項における参照符号の使用も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。更に、異なる請求項に記載される個別の特徴は、可能であれば有利に結合されることができ、異なる請求項においてこれらの特徴が言及されるからといって、特徴の組み合わせが可能ではなく有利でもないことを示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学プローブであって、
光学ガイドと、
前記光学ガイドの端部に結合されるレンズシステムと、
前記光学ガイドに関する空腔を持ち、透明なウィンドウを遠位端部に持つ筐体であって、前記ウィンドウが、前記レンズシステムの屈折力と比較して、小さい屈折力を持つ、筐体と、
前記レンズシステムを変位させることができる作動手段とを有し、
前記前記ウィンドウの外側で関心領域の光学スキャンを可能にするよう、前記作動手段が、前記レンズシステムを変位させるよう構成される、光学プローブ。
【請求項2】
前記レンズシステムが、単一レンズシステムである、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記レンズシステムが、非球面レンズを有する、請求項1又は2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記レンズシステムが、可変の開口数を持つ流体レンズを有する、請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
前記透明なウィンドウが、平面部分を有する、請求項1に記載のプローブ。
【請求項6】
前記透明なウィンドウと前記レンズシステムとの間の前記屈折力の比率が、最大20%、最大10%又は最大5%である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項7】
前記光学ガイドが、光学繊維であり、前記レンズシステムは、前記光学繊維の前記光学出口から離れた距離Lの所に配置され、前記距離Lが、前記光学繊維のコア直径より大きい、請求項1に記載のプローブ。
【請求項8】
前記レンズシステムが、前記光学ガイドの前記遠位端部に固定され、及び前記レンズシステムに固定される中間マウントを用いて前記光学ガイドに接続される、請求項1又は7に記載のプローブ。
【請求項9】
前記光学ガイドの前記遠位端部における前記レンズシステムが、前記光学ガイドの横断方向において変位可能に取り付けられる、請求項1に記載のプローブ。
【請求項10】
前記レンズシステムが、非線形光学現象を可能にするような開口数を持つ、請求項1に記載のプローブ。
【請求項11】
前記光学ガイドが、単一モード光ファイバである、請求項1に記載のプローブ。
【請求項12】
前記光学ガイドが、フォトニック結晶繊維又は偏光維持繊維である、請求項1又は11に記載のプローブ。
【請求項13】
前記プローブが、内視鏡、カテーテル、針又は生検針の一部を形成する、請求項1に記載のプローブ。
【請求項14】
光学撮像システムであって、
請求項1に記載の光学プローブと、
前記光学プローブに光学的に結合される放射線源であって、前記プローブが、前記放射線源から関心領域へと放出される放射線をガイドするよう構成される、放射線源と、
前記光学プローブに光学的に結合され、前記関心領域から反射される放射線を用いて撮像するよう構成される、撮像検出器とを有する、光学撮像システム。
【請求項15】
前記光学撮像システムの前記放射線源が、非線形光学現象を可能にするような、強度及び/又は時空間分布を持つ放射線を放出することができる、請求項14に記載の光学撮像システム。
【請求項16】
前記システムが、2つの光子撮像システム、2次高調波生成撮像システム、又は蛍光撮像システムである、請求項14又は15に記載の光学撮像システム。
【請求項17】
前記放射線源が、波長λ及びパルス長Δτを持つパルス化されたレーザであり、
前記プローブにおける前記レンズシステムの焦点距離fは、

を満たし、Vが、前記レンズシステムのアッビ数であり、NAobjは、前記レンズシステムの開口数である、請求項16に記載の光学撮像システム。
【請求項18】
光学撮像方法において、
請求項1に記載の光学プローブを提供するステップと、
前記光学プローブに光学的に結合される放射線源を提供するステップであって、前記プローブが、前記放射線源から関心領域へと放出される放射線をガイドするよう構成される、ステップと、
前記光学プローブに光学的に結合される撮像検出器を用いて撮像処理を実行するステップであって、前記検出器が、前記関心領域から反射される放射線を用いて撮像するよう構成される、ステップとを有する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−508889(P2011−508889A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541123(P2010−541123)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/IB2008/055483
【国際公開番号】WO2009/087527
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】