説明

光学モジュールおよびその製造方法、並びに撮像装置

【課題】光学モジュールをMEMS加工技術により製造可能に構成する。
【解決手段】基板10と、基板10の所定領域11に直接作り込まれた光学素子20と基板10上に、光学素子20の外周に沿って、直接形成された圧電素子30とを備え、圧電素子30が、基板10の所定領域11を変位させることにより、光学素子20を、その光軸方向に、もしくはその光軸を傾けるように変位駆動させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子とアクチュエータを備えた光学モジュールおよびMEMS加工技術によるその製造方法に関するものである。また、さらには、その光学モジュールを備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話で撮影した画像をそのまま電子メールに添付して送ることが出来るようなデジタルカメラ機能内蔵の電話機が販売されている。これら携帯電話のカメラ機能の多くはデジタルカメラと同じく、CMOSセンサかCCDセンサ等の固体撮像センサとレンズ、フィルター、絞り部材を1つのケースに組み込んで一体化した小型な撮像装置が用いられている。
【0003】
こうした小型撮影装置は量産化、低コスト化がさらに進むと応用分野が一気に拡大していく可能性が高く、自動車、ホーム・セキュリティ、ゲーム機、カプセル内視鏡などへの応用が期待される。
【0004】
撮像装置においては、撮像センサとレンズとの距離が焦点距離として重要であり、この距離を一定の間隔に保つ必要がある。通常のデジタルカメラにおいては、カメラ機構内に焦点距離調整のための伸縮手段が設けられているが、携帯電話用の小型モジュールの場合は、付属の機能であるカメラ機能に対して複雑な伸縮手段を設けることは費用、スペースの面から困難である。
【0005】
そこで、小型撮影装置においては、一般に、圧電素子をアクチュエータとしてレンズホルダーを駆動させるよう構成された光学モジュールが採用されている。例えば特許文献1では、圧電素子、レンズホルダー等の各部品を組み立てて構成された光学モジュールおよびこれを備えた撮影装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−184565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような、各部品を組み立てて構成する光学モジュールは、組み立てが煩雑であり、コスト的に課題が残る。
【0008】
一方、近年、センサ、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化したデバイスをMEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)加工技術で作製するという動きがある。MEMS加工技術を用いれば、光学モジュールをより安価に、小型に構成できる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、MEMS加工技術により製造可能な光学モジュールおよびその製造方法、ならびにその光学モジュールを備えた撮影装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光学モジュールは、基板と、該基板の所定領域に直接作り込まれた光学素子と、
該基板上に、前記光学素子の外周に沿って、直接形成された圧電素子とを備え、前記圧電素子が、前記基板の前記所定領域を変位させることにより、前記光学素子を、その光軸方向に、もしくはその光軸を傾けるように変位駆動させるものであることを特徴とする。
【0011】
ここで、「直接作り込まれた」、「直接形成された」とは、別途作製された光学素子や圧電素子を、基板上に配置して貼り付け等により一体的に構成したものを含まないことを意味する。従って、例えば、従来技術の欄の特許文献1に記載のような、光学素子、圧電素子などの各部品を個別に形成し、基板上に組み立てて構成された光学モジュールは本発明に含まれない。
【0012】
前記圧電素子は、前記基板上に成膜された下部電極層と、該下部電極層上に成膜された圧電体膜と、該圧電体膜上にパターン形成された上部電極層とを備えてなるものであり、該上部電極層が、前記光学素子の外周に沿った、連続的または断続的なリング型にパターン形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記基板が、前記所定領域の該基板の裏面側に所定深さの開口を有するものである場合、前記リング型に形成されている前記上部電極層のリング外周径が、前記開口の開口径よりも大きいことが好ましい。
【0014】
前記光学素子は、レンズであってもよいし、ミラーであってもよい。
【0015】
前記基板が、前記開口を備え、前記光学素子がレンズである場合、前記基板が、表面に酸化膜を備えたシリコン基板であり、前記開口が、前記所定領域の該基板の裏面側から前記酸化膜に至る深さの開口であり、前記光学素子が、前記シリコン基板の前記開口の前記酸化膜の表面および裏面から樹脂材料により該酸化膜を挟みこむようにして形成されたレンズであることが好ましい。
【0016】
前記圧電素子が、前記基板上に成膜された下部電極層と、該下部電極層上に成膜された圧電体膜と、該圧電体膜上にパターン形成された上部電極層とを備えてなるものであり、該上部電極層が、前記光学素子の外周に沿った、連続的または断続的なリング型にパターン形成されているものであり、前記光学素子が、前記圧電体膜上の前記所定領域の中央領域に対応する領域に蒸着形成されたミラーである場合、前記上部電極層が、前記圧電体膜上に、前記ミラーの外周に沿って該ミラーと離間して配置されているものであることが好ましい。
【0017】
本発明の光学モジュールの製造方法は、基板の表面に下部電極層を成膜し、
前記下部電極層上に圧電体膜を成膜し、
前記圧電体膜の所定領域の外周に沿って上部電極層をパターン形成し、
前記所定領域の前記圧電体膜および該圧電体膜下の前記下部電極層を除去して前記基板表面を露出させ、
前記基板の、前記所定領域に対応する領域を含む、該所定領域より広く、かつ前記上部電極層の外周内側となる領域を、該基板の裏面側からエッチング除去して、前記基板の一部に開口を設けて該一部を薄膜化し、
該基板の薄膜化された部分に、該部分を表面および裏面から樹脂部材で挟み込むようにして該部分および樹脂部材からなるレンズを作り込むことを特徴とする。この製造方法により、レンズと該レンズの外周に沿って配置された圧電素子とが基板に一体的に形成されてなる光学モジュールを製造することができる。
【0018】
本発明の撮像装置は、本発明の光学モジュールにおいて、光学素子としてレンズを備えた光学モジュールを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光学モジュールによれば、基板に直接作り込まれた光学素子と圧電素子とを備え、圧電素子が、基板の所定領域を変位させることにより、光学素子を、その光軸方向に、もしくはその光軸を傾けるように変位駆動させるものであり、従来の、別途で作製された光学素子と、圧電素子とを基板上で組み立てて構成される光学モジュールと比較して、非常に小型に形成することができる。また、MEMS加工技術を利用した製造が可能であり、量産化、低コスト化を図ることができる。
【0020】
光学モジュールが光学素子としてレンズを備えたものであれば、レンズを光軸に沿って変位させたり、レンズの光軸を傾斜させたりすることができるので、撮像装置の焦点距離調整、手ぶれ補正機能等に好ましく利用することができる。
【0021】
また、光学モジュールが光学素子としてミラーを備えたものであれば、ミラーの曲率を変位させたり、ミラーの反射光軸、反射波面形状を変化させたりすることができる。
【0022】
本発明の撮影装置によれば、本発明の光学素子としてレンズを備えた光学モジュールを備えているため、限られた狭いスペース内に余分な構成をほとんど設けることなく焦点距離調整機能を付加することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態の光学モジュールの構成を示す断面図
【図2】第1の実施形態の光学モジュールの構成を示す平面図
【図3】第1の実施形態の光学モジュール駆動時の状態を示す断面図
【図4A】第1の実施形態の光学モジュールの製造工程を示す断面図(その1)
【図4B】第1の実施形態の光学モジュールの製造工程を示す断面図(その2)
【図4C】第1の実施形態の光学モジュールの製造工程を示す断面図(その3)
【図4D】第1の実施形態の光学モジュールの製造工程を示す断面図(その4)
【図4E】第1の実施形態の光学モジュールの製造工程を示す断面図(その5)
【図5】第2の実施形態の光学モジュールの要部平面図
【図6】第2の実施形態の光学モジュール駆動時の状態を示す断面図
【図7】第3の実施形態の光学モジュールの構成を示す断面図
【図8】第3の実施形態の光学モジュールの構成を示す平面図
【図9】第3の実施形態の光学モジュール駆動時の状態を示す断面図
【図10】第1または第2の実施形態の光学モジュールを備えた撮像装置の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
「第1の実施形態の光学モジュール」
図1および図2を参照して、本発明に係る第1実施形態の光学モジュールの構造について説明する。図1は光学モジュールの要部断面図、図2は光学モジュールの要部平面図である。また、図3は光学モジュールの駆動時の状態を示す断面図である。なお、視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0025】
本実施形態の光学モジュール1は、基板10の所定領域に作り込まれた光学素子としてのレンズ20と、該レンズ20の外周に沿って形成された圧電素子30とを備えている。ここで、基板10は、シリコン基板10aの表面に酸化膜10bを備えたものであり、所定領域の裏面側には、酸化膜10bを残す深さ(所定深さ)の開口12が設けられており、この開口12に、酸化膜10b(薄膜化された基板10の一部)を挟みこむようにしてレンズ20が形成されている。
【0026】
レンズ20は、酸化膜10bおよびそれを挟み込み形成されたものであり、UV硬化型樹脂等で形成されている。UV硬化型樹脂としては、例えば、共栄化学社製ポリエチレングリコール4EG−Aに、重合開始剤としてルシリンTPO−L:(BASF社製)を添加したものを用いることが出来る。
【0027】
圧電素子30は、基板10の表面に形成された下部電極層31と、該下部電極層31上に成膜された圧電体膜32と、該圧電体膜32上にパターン形成された上部電極層33とから構成されており、圧電体膜32に対して下部電極31と上部電極33とにより、その厚み方向に電界が印加される。図2に示すように、上部電極層33は、レンズ20の外周に沿った連続的なリング状にパターン形成されており、この上部電極層33のパターン形状が圧電素子30の形状に相当する。この圧電素子30は、レンズ20を、その光軸方向に変位駆動させるものであり、その変位量は圧電素子への印加電圧により制御することができる。
【0028】
圧電体膜32は、その伸縮方向が、膜面内方向となるように形成されており、電圧が印加されることにより、レンズ光軸方向上向きに、あるいは下向きに反る内部応力が働く。圧電素子30に電圧を印加する、すなわち上下電極層間に電圧を印加して圧電体膜32に電界を加えることにより、図3に本実施形態の光学モジュール1の駆動時の状態を示すように、圧電体膜32の反り(図3においては上に凸方向への反り)に伴って、レンズ20を光軸Aに沿って(図3においては上方)に変位させることができる。圧電体膜32を上に凸、下に凸のいずれの方向に反るか、すなわちレンズを上方、下方のいずれに変位させるかは、印加電圧の正負により制御することができる。またその変位量は電圧の大きさにより制御することができる。
【0029】
基板10としては、上記の例に限るものではなく、シリコン,酸化シリコン,ステンレス(SUS),イットリウム安定化ジルコニア(YSZ),アルミナ,サファイヤ,SiC,及びSrTiO等、少なくとも薄膜化(例えば10μm厚程度)としたときに、光透過性を示すものであればよく、レンズの屈折率を考慮して材料を選択すればよい。
【0030】
下部電極層31の組成は特に制限なく、Au,Pt,Ir,IrO,RuO,LaNiO,及びSrRuO等の金属又は金属酸化物、及びこれらの組合せが挙げられる。上部電極層33の組成は特に制限なく、下部電極層31で例示した材料,Al,Ta,Cr,Cu等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、及びこれらの組合せが挙げられる。下部電極層31と上部電極層33の厚みは特に制限なく、50〜500nmであることが好ましい。
【0031】
圧電体膜32としては、10nm〜100μmの薄膜が好ましく、100nm〜20μmの薄膜が特に好ましい。
【0032】
圧電体膜32の成膜方法は特に制限されず、スパッタ法、プラズマCVD法、MOCVD法、及びPLD法等の気相法;ゾルゲル法及び有機金属分解法等の液相法;及びエアロゾルデポジション法等が挙げられる。
【0033】
圧電体膜32の組成は特に制限されず、下記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物からなる(不可避不純物を含んでいてもよい)ことが好ましい。
一般式ABO・・・(P)
(A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。◎
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物としては、
チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、ニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、亜鉛ニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等の鉛含有化合物、及びこれらの混晶系;
チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム等の非鉛含有化合物、及びこれらの混晶系が挙げられる。
【0034】
電気特性がより良好となることから、上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物は、Mg,Ca,Sr,Ba,Bi,Nb,Ta,W,及びLn(=ランタニド元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,及びLu))等の金属イオンを、1種又は2種以上含むものであることが好ましい。
【0035】
「第1実施形態の光学モジュールの製造方法」
次に、図面を参照して、上記第1実施形態の光学モジュールの製造方法の例について説明する。図4A〜図4Fは、第1の実施形態の光学モジュールの製造工程を示す断面図である。
【0036】
はじめに、シリコン基板10aを用意し、シリコン基板10aを長時間熱酸化させることにより、表面に10μm厚程度の熱酸化膜10b(以下において、SiO2膜10b)を形成する(図4A参照)。
【0037】
SiO2膜10b上に下部電極層31(たとえは、Ti/Pt)、圧電体膜32(例えば、5μm厚のPZT膜)をスパッタ法により成膜する(図4B参照)。
【0038】
次に、図4Cに示すように、リソグラフィとスパッタ法により、圧電体膜32の上にリング状の上部電極層33をパターン形成する。上部電極層33は、圧電体膜32上の上部電極層33の非形成領域にレジストマスクを形成した後、上部電極層33の材料を成膜し、リフトオフ法により、レジストマスクおよびこの上に形成された上部電極材料を除去することにより形成することができる。
【0039】
次に、図4Dに示すように、リング状の上部電極層33の内側の領域(所定領域)11の圧電体膜32および下部電極層31をドライエッチングにより除去して、SiO2膜10bの表面を露出させる。
【0040】
さらに、図4Eに示すように、基板10の圧電素子が形成されていない面(裏面)側から、ボッシュ法によりSiO膜10bの裏面が露出する深さまでエッチング除去して、開口12を形成する。開口12は、圧電体膜32および下部電極層31が除去された所定領域11に対向する領域に形成され、該所定領域11以上、かつ、上部電極層33のリング外周33aより狭い外周12aを有するものとなるように形成する。開口の外周12aを上部電極のリング外周33aより小さくすることが、変位量を上げるためには好ましい。しかしながら、開口はレンズが形成可能な程度であればよく、所定領域11とほぼ同等の領域が開口していればよい。所定領域11の開口径サイズはφ100μm〜2mm程度である。
【0041】
最後に、UV硬化型樹脂20a、20bを透明な金型で、所定領域11および開口12において表面および裏面が露出されたSiO膜の上下から挟み込みUVを照射し、レンズ20を形成する(図1参照)。レンズの形成方法としては、例えば、特表2006-519711に記載の方法を採用することができる。
【0042】
以上のように、MEMS加工技術と薄膜圧電成膜技術を用いることにより、光学モジュールを容易に製造することができる。なお、第1実施形態の光学モジュールの製造方法は、ここに記載のプロセスに限定されず、適宜変更可能である。
【0043】
本実施形態の光学モジュールは例えば、上記のような製造方法により、非常に小型に、例えば5mm角程度に形成することができる。また、上記製造方法によりウエハ単位で複数の素子を同時に製造し、最後に個片化することにより、量産化、低コスト化を実現することができる。
【0044】
「第2の実施形態の光学モジュール」
第2の実施形態の光学モジュール2について説明する。図5は光学モジュール2の要部平面図、図6は光学モジュール2の駆動時の状態を示す断面図である。
第2の実施形態の光学モジュール2は、上部電極層の形状が第1の実施形態の光学モジュール1と異なるが、その他の構成は同様である。図面において、第1の実施形態の光学モジュール1と同一の構成のものは同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0045】
本光学モジュール2の上部電極層33’は、複数の電極33A〜33Dにより断続的なリング状に形成されている。各電極33A〜33Dは個別に制御可能となっており、図6に示すように、例えば電極33Dにのみ電圧を印加することにより、レンズの光軸AをA’へと傾斜させることができる。電極33A〜33Dに選択的に電圧を印加することにより、光軸を所望の方向へ傾けることができ、全ての電極33A〜33Dに同時に同一の電圧を印加することにより、第1の実施形態の光学モジュール1の場合と同様に、レンズを光軸に沿った上下方向に変位させることもできる。
【0046】
本実施形態の光学モジュール2は、第1の実施形態の光学モジュール1と同様の製造方法により製造することができる。
【0047】
「第3の実施形態の光学モジュール」
第3の実施形態の光学モジュール3について説明する。図7は光学モジュール3の要部平面図、図8は光学モジュール3の要部断面図、図9は光学モジュール3の駆動時の状態を示す断面図である。
【0048】
本実施形態の光学モジュール3は、可変曲率ミラーデバイスであり、基板50の所定領域に作り込まれた光学素子としてのミラー60と、該ミラー60の外周に沿って形成された圧電素子30とを備えている。
【0049】
ここで、基板50は、シリコン基板50a上にSiO膜50bとSi活性層50cとが順次積層された積層基板(SOI基板)50であり、ミラー60が設けられている領域(所定領域)の裏面側には、SiO2膜50bおよびSi活性層50cを残す深さ(所定深さ)の開口12が設けられている。
【0050】
圧電素子30は、基板50のSi活性層50c表面に形成された下部電極層31と、該下部電極層31上に成膜された圧電体膜32と、該圧電体膜32上にパターン形成された上部電極層33とから構成されており、圧電体膜32に対して下部電極31と上部電極33とにより、その厚み方向に電界が印加される。図7に示すように、上部電極層33は、ミラー60と離間し、かつその外周に沿った連続的なリング状にパターン形成されており、この上部電極層33のパターン形状が圧電素子30の形状に相当する。この圧電素子30は、ミラー60の曲率を変化させるものであり、その曲率の変化量は圧電素子への印加電圧により制御することができる。
【0051】
ミラー60は、圧電体膜32上の所定領域に形成されている。ミラー60の材料としては、反射率の高い銀やアルミなどの金属材料が好適である。上部電極層33と同一材料で構成し、上部電極層の形成工程時に同時に形成するのが好ましい。
【0052】
圧電素子30の圧電体膜32は、その伸縮方向が、膜面内方向となるように形成されており、電圧が印加されることにより、ミラー60が形成されている領域を上に凸、あるいは下に凸に変化させる内部応力が働く。圧電素子30に電圧を印加する、すなわち上下電極層間に電圧を印加して圧電体膜32に電界を加えることにより、図9に本実施形態の光学モジュール1の駆動時の状態を示すように、例えば、下に凸に変位させることができる。
【0053】
このような可変曲率ミラーは、例えば、大気のゆらぎなどにより乱れた光波面を修正する補償光学系として天文分野や眼底検査、顕微鏡観察などへの応用が考えられる。
【0054】
なお、光学素子としてミラーを備えた光モジュールの場合も、上部電極層を、第2の実施形態の光モジュールの場合と同様に複数の電極からなる断続的なリング状に形成してもよい。複数の電極に選択的に電圧を印加させることにより、曲率のみならず、光軸を傾斜させることができる。
【0055】
このような第3の実施形態の光学モジュールも、第1および第2の実施形態の光モジュールと同様の製造方法により、すなわち、MEMS加工技術と薄膜圧電成膜技術を用いて製造することができる。
【0056】
以上、説明した第1〜第3の実施形態の光学モジュールは、アレイ状にも容易に作製することが可能であり、光学素子としてレンズを備えた場合には可動型マイクロレンズアレイ、光学素子としてミラーを備えた場合にはDMD(デジタルミラーデバイス)などとしての応用が考えられる。
【0057】
「撮像装置」
上記第1の実施形態の光学モジュール1を備えた撮影装置5について説明する。図10は本実施形態の撮影装置5の概略構成を示す断面図である。
【0058】
撮影装置5は、光学モジュール1と、撮像センサとしてCMOSセンサ81とインターポーザ82を含む撮影センサ部8と、回路基板9とから構成される。CMOSセンサ81がレンズ20に対向して配置され、CMOSセンサ81は埋め込み電極83を介して回路基板9の回路と接続している。
【0059】
撮影装置5は、光学モジュールウエハ、撮影センサ部ウエハ、回路基板ウエハをそれぞれ作製し、それらを位置決め積層して接合した後に、個片化することにより、個々のサイズが5mm角程度のものとして製造することができる。光学モジュールウエハの製造方法は第1の実施形態の光モジュールの製造方法のとおりである。
【0060】
撮影装置5は、光学モジュール1を備え、光学モジュール1において圧電素子30を駆動することによりレンズを光軸方向に変位することができるので、焦点距離調整が可能となっている。なお、光学モジュール1に代えて、第2の実施形態の光学モジュール2を備えれば、さらにレンズの光軸を傾斜することもできるため、手振れ補正機能を付加することもできる。
【0061】
既存の携帯電話搭載撮影装置は、1cm角程度の大きさであり、本発明の撮影装置によれば格段にサイズを縮小することができる。また、製造も容易であり、量産性、歩留まりの向上に伴いコストを抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
1、2、3 光学モジュール
5 撮影装置
8 撮影センサ部
9 回路基板
10 基板
10a シリコン基板
10b 酸化膜
11 所定領域
12 開口
12a 開口の外周
20 レンズ(光学素子)
20a、20b 熱可塑性樹脂
30 圧電素子
31 下部電極層
32 圧電体膜
33 上部電極層
33A-33D 上部電極
33a リング外周
50 基板
50a シリコン基板
50b SiO2
50c Si活性層
60 ミラー(光学素子)
81 撮像センサ
82 インターポーザ
83 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板の所定領域に直接作り込まれた光学素子と、
該基板上に、前記光学素子の外周に沿って、直接形成された圧電素子とを備え、
前記圧電素子が、前記基板の前記所定領域を変位させることにより、前記光学素子を、その光軸方向に、もしくはその光軸を傾けるように変位駆動させるものであることを特徴とする光学モジュール。
【請求項2】
前記圧電素子は、前記基板上に成膜された下部電極層と、該下部電極層上に成膜された圧電体膜と、該圧電体膜上にパターン形成された上部電極層とを備えてなるものであり、
該上部電極層が、前記光学素子の外周に沿った、連続的または断続的なリング型にパターン形成されていることを特徴とする請求項1記載の光学モジュール。
【請求項3】
前記基板が、前記所定領域の該基板の裏面側に所定深さの開口を有するものであり、
前記リング型に形成されている前記上部電極層のリング外周径が、前記開口の開口径よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の光学モジュール。
【請求項4】
前記光学素子が、レンズであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の光学モジュール。
【請求項5】
前記基板が、表面に酸化膜を備えたシリコン基板からなり、前記開口が、前記所定領域の該基板の裏面側から前記酸化膜に至る深さの開口であり、
前記光学素子が、前記シリコン基板の前記開口の前記酸化膜の表面および裏面から樹脂材料により該酸化膜を挟みこむようにして形成されたレンズであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の光学モジュール。
【請求項6】
前記光学素子が、ミラーであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の光学モジュール。
【請求項7】
前記光学素子が、前記圧電体膜上の前記所定領域の中央領域に対応する領域に蒸着形成されたミラーであり、
前記上部電極層が、前記圧電体膜上に、前記ミラーの外周に沿って該ミラーと離間して配置されているものであることを特徴とする請求項2または3記載の光学モジュール。
【請求項8】
基板の表面に下部電極層を成膜し、
前記下部電極層上に圧電体膜を成膜し、
前記圧電体膜の所定領域の外周に沿って上部電極層をパターン形成し、
前記所定領域の前記圧電体膜および該圧電体膜下の前記下部電極層を除去して前記基板の表面を露出させ、
前記基板の、前記所定領域に対応する領域を含む、該所定領域より広く、かつ前記上部電極層の外周内側となる領域を、該基板の裏面側からエッチング除去して、前記基板の一部に開口を設けて該一部を薄膜化し、
該基板の薄膜化された部分に、該部分を表面および裏面から樹脂部材で挟み込むようにして該部分および樹脂部材からなるレンズを作り込むことを特徴とする、前記レンズと該レンズの外周に沿って配置された圧電素子とが前記基板に一体的に形成されてなる光学モジュールの製造方法。
【請求項9】
請求項4または5記載の光学モジュールを備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−210968(P2010−210968A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57289(P2009−57289)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】