説明

光学レンズ及びその製造方法

【課題】植物由来の原料から製造され、高い耐熱性、高い透明性、高いアッベ数、高強度、高染色性を有し、低複屈折であるプラスチックレンズを提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(イソソルビドなど)から誘導される構成単位を含み、且つ還元粘度が0.2〜1.5dl/gであるポリカーボネート樹脂を主成分とする材料を用いて射出成形し、眼鏡レンズ等の光学レンズを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の原料から製造された、高透明性、高耐熱性、高アッベ数、高強度、及び高染色性を有し且つ低複屈折であるプラスチックレンズに関する。詳しくは、本発明は、特定構造を有する脂肪族ポリカーボネートからなる光学レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メガネレンズの材料としては無機ガラスが主流を占めていたが、成形加工性、軽量性、耐衝撃性などにより、現在プラスチックがメガネレンズの80%以上を占めるようになっている。このように、プラスチックレンズは無機ガラスレンズと異なり、軽量でしかも割れにくいことから、眼鏡レンズやカメラレンズ等の光学素子として広く使われている。
【0003】
プラスチックレンズの素材として現在広く用いられている樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ジエチレングリコールカーボネート樹脂、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0004】
これらのプラスチック素材のうち、CR−39に代表されるポリジエチレングリコールビスアリルカーボネートが、透明性に優れ各種処理に耐えうる耐熱性を有しているため、眼鏡レンズ材料として主流になっている。
【0005】
ところが、この樹脂は熱硬化性樹脂であるため、ガラスモールド型での注型重合に15〜20時間を要し生産性が悪いという問題を有しており、また耐衝撃性が低く、安全性の面でも不十分である。
【0006】
一方、生産性を改善するために、熱可塑性樹脂で射出成形もしくは射出圧縮成形によりメガネレンズをつくることも試みられ、ポリメチルメタクリレート製の眼鏡レンズ、ポリカーボネート製の眼鏡レンズが市販されている。
【0007】
このうち、ポリメチルメタクリレートは、歪みが小さく透明性に優れた材料であるが、耐熱性が悪く、耐衝撃性の面でも不十分である。
【0008】
ポリカーボネート樹脂(以下PCと略する。)は、ビスフェノールを炭酸エステルにより連結させたポリマーであり、その中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)より得られるポリカーボネート樹脂は透明性に優れ、また耐衝撃性などの機械特性に優れた性質を有する。そのため各種レンズ、光ディスク等の光学分野においては、その耐衝撃性、透明性、低吸水性などの特性が注目され光学材料として使用されている。
【0009】
しかし、ビスフェノールA由来のPCはアッベ数が低くまた複屈折がでるため、像のにじみ等が生じる問題点がある。また、眼鏡レンズ材料においては簡易な染色方法により容易に染色可能であることが強く求められるが、PCは分散染料などによる一般的な染色方法では染色性が極めて乏しいという問題点を有しているため、PCによって眼鏡レンズを製造する場合は染色可能なハードコート材により該レンズ上にコート層を設け該コート層を染色する等の複雑な工程を経る必要があった。
【0010】
また、これらの樹脂は一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造されるが、近年石油資源の枯渇が危惧されていることや、二酸化炭素排出量の増加蓄積による地球温暖化が気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料とするプラスチック材料が求められている。
【0011】
植物由来のモノマーを原料とするプラスチック材料としては、イソソルビド等の複素環式ジオールとビスフェノールとの共重合ポリカーボネート(特許文献1)、イソソルビドと脂肪族ジオールとの共重合ポリカーボネート(特許文献2、特許文献3)、ウンデカン構造を有するジヒドロキシ化合物とイソソルビド等との共重合ポリカーボネート(特許文献4)などが提案されている。
しかしながら、眼鏡レンズに求められる高いアッベ数、高強度、高染色性、及び低複屈折をすべて備えた植物由来の原料からなるプラスチックレンズとしては、満足できるものは未だ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭56−110723号公報
【特許文献2】特開2003−292603号公報
【特許文献3】国際公開WO2004/111106号公報
【特許文献4】特開2006−232897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、植物由来の原料から製造され、高い耐熱性、高い透明性、高いアッベ数、高強度、高染色性を有し、低複屈折であるプラスチックレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定構造を有する脂肪族ポリカーボネートが上記問題点を見事に解決する事実を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に示す光学レンズに関する。
1)下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位を含み、且つ還元粘度が0.2〜1.5dl/gであるポリカーボネート樹脂を主成分とする光学レンズ用材料からなる光学レンズ。
【0015】
【化1】

【0016】
2)前記式(1)で表される糖質がイソソルビドである、(1)記載の光学レンズ。
3)前記式(1)で表される糖質がイソマンニドである、(1)記載の光学レンズ。
4)分散染料により染色されていることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の光学レンズ。
5)眼鏡レンズである、(1)〜(4)のいずれかに記載の光学レンズ。
【0017】
6)(1)〜(5)のいずれかに記載の光学レンズを製造する方法であって、下記工程(a)及び必要に応じ(b)を含むことを特徴とする、光学レンズの製造方法。
(a)下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位を含み、且つ還元粘度が0.2〜1.5dl/gであるポリカーボネート樹脂を主成分とする光学レンズ用材料を射出成形により成形する射出成形工程
(b)前記射出成形工程で得られる射出成形体を、媒体中において分散染料により染色する染色工程
【0018】
【化2】

【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い耐熱性、高い透明性、高いアッベ数、高強度、高染色性を有し、光学歪のない優れた光学レンズを得ることができる。本発明の光学レンズは射出成形可能で生産性が高く、カメラ、望遠鏡、双眼鏡などのレンズや特に眼鏡レンズに有用である。
また、本発明の光学レンズは、今まで存在しなかった植物由来の原料から製造されたものであり、カーボンニュートラルなプラスチック材料である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1)ポリカーボネート樹脂
本発明の光学レンズは、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位(以下、「構成単位(1)」という)を含み、且つ還元粘度が0.2〜1.5dl/g(30℃、フェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=1:1wt%混合溶液中、濃度1.0g/dl)であるポリカーボネート樹脂を主成分とする光学レンズ用材料からなることを特徴とする。
【0021】
【化3】

【0022】
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、再生可能資源、例えば糖類及びでんぷんなどから容易に作られ、三種の異性体が知られている。その異性体としては、具体的には下記式(2)に示す1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(以下、「イソソルビド」と称する)、下記式(3)に示す1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(以下、「イソマンニド」と称する)、及び下記式(4)に示す1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール(以下、「イソイディド」と称する)である。
【0023】
【化4】

【0024】
イソソルビド、イソマンニド、及びイソイディドは、それぞれD−グルコース、D−マンノース、及びL−イドースから得られる。すなわち、それぞれ対応する糖を水添した後、酸触媒を用いて脱水することにより得ることができる。
【0025】
また、本発明で用いられる上記ポリカーボネート樹脂は、その還元粘度が0.2〜1.5dl/g、好ましくは0.4〜1.0dl/gである。還元粘度が0.20gdl/g未満ではレンズ脆性破壊を起こし、1.5dl/gを超えると成形性が低下して残留複屈折を示すので上記範囲に限定される。なお、本発明における還元粘度は、溶媒としてフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの1:1(重量比)混合溶液(濃度1.0g/dl)でウベローデ粘度計を用い、温度30℃で測定される値である。
【0026】
なお、本発明に使用されるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は145〜160℃であることが好ましい。ガラス転移温度がこの範囲であれば、眼鏡レンズとしての加工条件に耐える十分な耐熱性を有し、また射出成形可能である。
【0027】
本発明の所望の効果を得るためには、本発明に使用されるポリカーボネート樹脂は前記構成単位(1)のみからなり他の構成単位を含有しないホモポリカーボネート樹脂が特に好ましい。ただし、本発明に使用されるポリカーボネート樹脂は、その物性を損なわない範囲であれば、カーボネート形成単位として上記構成単位(1)以外の他の構成単位を少量含有することも可能である。この場合、該ポリカーボネート樹脂を構成する全構成単位中に占める構成単位(1)の割合は、通常、50モル%以上、好ましくは70モル%、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。
【0028】
かかる他の構造単位を含有する場合、該他の構成単位は一種または異なる2種類以上を含有していてもよい。
このように、本発明で用いられるポリカーボネート樹脂が2種以上のカーボネート形成単位を含む場合、その共重合構造としては、ランダム、ブロック及び交互共重合構造のいずれであってもよい。
【0029】
本発明で用いられる構成単位(1)以外の構成単位としては、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位が挙げられる。かかるジヒドロキシ化合物としては、各種公知の芳香族ジヒドロキシ化合物を例示することができる。なお、脂肪族ジオールとの共重合は、Tgの低下を招き耐熱性が低下するため好ましくない。
【0030】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4‘−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4‘−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4‘−ヒドロキシフェニル)プロパン(略称ビスフェノールA)、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4‘−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’−メチル−4‘−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
4,4‘−ジヒドロキシジフェニルエーテル4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、α、α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(略称ビスフェノールP)、6,6‘−ジヒドロキシ−3,3,3’,3‘−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、9,9−ビス(4‘−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等のジヒドロキシ化合物等が例示される。
【0031】
本発明に係わるポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、塩基性化合物触媒、エステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、反応させる公知の溶融重縮合法により製造することができる。炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、等が挙げられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが好ましい。炭酸ジエステルは、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.97〜1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98〜1.10モルの比率である。
【0032】
塩基性化合物触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および含窒素化合物等があげられる。
【0033】
このような化合物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属化合物等の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド、または4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0034】
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
【0035】
アルカリ土類金属化合物としては、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0036】
含窒素化合物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が用いられる。
【0037】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0038】
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
【0039】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、1×10−9〜1×10−3モルの比率で、好ましくは1×10−7〜1×10−4モルの比率で用いられる。
【0040】
本発明にかかわる溶融重縮合法は、前記の原料、および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段行程で実施される。
【0041】
具体的には、第一段目の反応を120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には133.3Pa以下の減圧下、200〜350℃の温度で0.05〜2時間重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよく、また、これらを重合物の粘度を勘案して適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。
【0042】
本発明にかかわるポリカーボネート樹脂は、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0043】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を13.3〜133.3Paの圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0044】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、異物含有量が極力少ないことが望まれ、溶融原料の濾過、触媒液の濾過が好適に実施される。フィルターのメッシュは5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。さらに、生成する樹脂のポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。また、樹脂ペレットを採取する工程は当然低ダスト環境でなければならず、クラス1000以下であることが好ましく、より好ましくはクラス100以下である。
【0045】
(2)光学レンズ用材料
(i)他のポリマー
本発明の光学レンズを形成する光学レンズ用材料は、上述した構成単位(1)を含む本発明の特定のポリカーボネート樹脂を主成分とするが、該特定のポリカーボネート樹脂以外に、その物性を損なわない範囲で少量の他のポリマーをブレンドすることもできる。
【0046】
その場合、該他のポリマーの配合量の目安としては、本発明の光学レンズを形成する光学レンズ用材料全量に対し、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは1〜35重量%である。
【0047】
そのような他のポリマーとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物からなるポリカーボネート樹脂あるいは脂肪族ジヒドロキシ化合物からなるポリカーボネート樹脂が挙げられる。そのようなポリカーボネート樹脂の具体例としては、ビスフェノールAからなるポリカーボネート、ビスフェノキシエタノールフルオレンからなるポリカーボネート、ビスクレゾールフルオレンからなるポリカーボネートなどが挙げられる。
【0048】
また、ポリカーボネート樹脂以外のポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシベンゾイル系ポリエステルポリアリレート、ポリスルフィド等をブレンドして使用することも可能である。
【0049】
また、本発明の光学レンズ用材料には、その物性を損なわない範囲で目的に応じ各種公知の添加剤を加えることが望ましい。
そのような添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料等が挙げられ、これらは必要に応じて単独または組み合わせて用いることができる。
【0050】
酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−メチル−4−エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−メチル−4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイト、ビス(モノノニルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4−t−ブチル−6−メチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)ヘキシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ヘキシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ステアリルホスファイト等のホスファイト化合物;ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス[2−メチル−4−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]ブタン等のヒンダードフェノール系化合物;5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン等が挙げられる。これらは、単独、あるいは2種以上併用して用いてもよい。
【0051】
これらの酸化防止剤の添加量は、本発明の構成単位(1)を含むポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.005〜0.1重量部、より好ましくは0.01〜0.08重量部、さらに好ましくは0.01〜0.05重量部である。酸化防止剤の添加量が少なすぎると所望の効果、例えば成形の際の好ましくない着色及び分子量低下の抑制効果が得られず、過剰では耐熱物性、機械的物性が低下し適当ではない場合がある。
【0052】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(5−メチル―2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ジヒドロキソベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらは、単独、あるいは2種以上併用して用いてもよい。
【0053】
離型剤としては、一般的に使用されているものでよく、例えば、天然、合成パラフィン類、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス類、蜜蝋、ステアリン酸、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニン、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等の脂肪酸エステル等が挙げられ、これらは、単独、あるいは2種以上併用して用いてもよい。
【0054】
(3)光学レンズ及びその製造方法
本発明の光学レンズは、上述した光学レンズ用材料を、好ましくは射出成形又は射出圧縮成形により成形することによって得ることができる。また、本光学レンズ用材料を真空成形や圧縮成形により成形することも可能である。
より好ましくは、本発明の光学レンズは、下記工程(a)及び必要に応じ(b)を含む方法により製造することができる。
(a)上述した本発明の特定のポリカーボネート樹脂を主成分とする光学レンズ用材料を射出成形により成形する射出成形工程
(b)前記射出成形工程で得られる射出成形体を、媒体中において分散染料により染色する染色工程
【0055】
(i)射出成形工程
射出成形工程では、射出成形機又は射出圧縮成形機によりレンズ形状に射出成形し、光学レンズ用成形体を得る。
光学レンズへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス1000以下であることが好ましく、より好ましくはクラス100以下である。
【0056】
射出成形における成形条件は特に制限されず、公知の射出成形条件を採用することができる。例えば、樹脂温度;250〜320℃、金型温度;60〜120℃、射出圧力;100〜210MPa、冷却時間;20〜60秒程度である。
【0057】
このようにして得られる光学レンズ用成形体の厚みは用途に応じて適宜選択することができるが、1〜5mm程度が好ましい。
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。
【0058】
本発明の光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
【0059】
(ii)染色工程
上記射出成形工程で得られる光学レンズ用成形体は、そのまま本発明の光学レンズとして使用することができるが、必要に応じ公知の各種染色方法により染色することが可能である。代表的な染色方法としては、例えば、水性媒体中または有機溶媒中、あるいは、これらの混合溶媒中において分散染料などの染料や顔料を用いて染色する方法がある。
【0060】
水性媒体中で行う場合、使用される水性媒体としては、水、水-メタノール混合溶媒などが挙げられる。
有機溶媒中で行う場合、使用される有機溶媒として特に制限は無く一般的に使用される公知の各種有機溶媒が使用されるが、非水系有機溶媒よりもアルコール系溶媒等の水溶性の溶媒又はそれと水との混合物が好ましい。そのうち好ましいものは水性媒体であり、特に好ましいものは水である。
【0061】
染料、顔料は特に制限されるものではなく、繊維、樹脂等の染色に使用される公知の各種染料、顔料が好適に使用される。そのうち特に好ましいものは、分散染料である。
分散染料としては、例えば、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料などが例示される。分散染料の使用量としては特に制限は無いが、通常洗浴濃度で0.5〜30g/Lの濃度である。
【0062】
使用可能な染料としては、以下のものが挙げられる(ここで、C.I.はカラーインデクスの略称である。):
(1)青色系染料ダイヤニックス ブルーAC−Eダイヤニックス ブルーRNE(C.I.ディスパースブルー91)、ダイヤニックス ブルーGRE(C.I.ディスパースブルー81)、スミカロン ブルーE−R(C.I.ディスパースブルー91)、カヤロン ポリエステルブルーGR−E(C.I.ディスパースブルー81)、
(2)赤色系染料ダイヤニックス レッドAC−Eダイヤシェルトン ファストレッドR(C.I.ディスパースレッド17)、ダイヤシェルトン ファストスカーレットR(C.I.ディスパースレッド7)、ダイヤシェルトン ファストピンクR(C.I.ディスパースレッド4)、スミカロン ルビンSE−RPDカヤロン ポリエステルルビンGL−SE200(C.I.ディスパースレッド73)、
(3)黄色系染料ダイヤニックス イエローAC−Eダイヤニックス イエローYL−SE(C.I.ディスパースイエロー42)、スミカロン イエローSE−RPDダイヤシェルトン ファストイエローGL(C.I.ディスパースイエロー33)、カヤロン ファストイエローGL(C.I.ディスパースイエロー33)、カヤロン マイクロエステルイエローAQ−LE、
(4)橙色系染料ダイヤニックス オレンジB−SE200(C.I.ディスパースオレンジ13)、ダイヤシェルトン ファストオレンジGL(C.I.ディスパースオレンジ3)、ミケトン ポリエステルオレンジB(C.I.ディスパースオレンジ13)、
スミカロン オレンジSE−RPDスミカロン オレンジSE−B(C.I.ディスパースオレンジ13)、
(5)紫色系染料ダイヤニックス ヴァイオレット5R−SE(C.I.ディスパースヴァイオレット56)、スミカロン ヴァイオレットE−2RL(C.I.ディスパースヴァイオレット28)。
【0063】
顔料の使用量としては特に制限はないが、通常0.1〜10重量%の濃度である。
顔料としては、例えばCI顔料ホワイト6、CI顔料ブルー15:4、CI顔料グリーン7、CI顔料バイオレット23、CI顔料イエロー42及びCI顔料ブラウンがある(ここで、CIはカラーインデクスの略称である)。
【0064】
水性媒体中で分散染料により染色する方法としては、例えば分散染料を水性媒体中に分散させ、必要に応じて各種公知の添加剤(例えば、界面活性剤、pH調整剤、分散均染剤、染色促進剤など)を添加し、染色濃度を保って染色浴を調整し、この染色浴中にレンズを所定時間浸漬する方法などが例示される。
【0065】
本発明の光学レンズは例えば、眼鏡レンズ、自動車及び電車のヘッドライト、飛行機の標識塔、探照灯、OHP等の広範な光学機器に用いることができる。このうち特に眼鏡レンズとして好適である。
【実施例】
【0066】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
1)還元粘度:ウベローデ粘度計を用いて、30℃において濃度1.0g/dlのフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(1:1wt%)混合溶液を測定して求めた。
2)ガラス転移温度(Tg):セイコー電子社製TMAを用い、昇温速度20℃/分の条件下、ペネトレーション法で行った。
3)屈折率nD、アッベ数νD:3mm厚×8mm×8mmの直方体を切り出し、ATAGO(株)製屈折率計により測定した。
4)射出成形機:住友重機械工業(株)製、商品名「SH50」を用いた。
5)耐衝撃性:鋼球を高さ7cmの高さよりレンズの中心に向けて自然落下させて試験片が破壊する鋼球重量で表示した。
6)複屈折:日本分光エリプソメーターを用いて測定した。
7)染色濃度:「(染色前透過率−染色後透過率)/染色前透過率×100」を用いて計算した。透過率は、日立分光光度計(商品名「U−2910」)にて測定した。
【0067】
<実施例1>
イソソルビド(以下、「ISB」と略称する)5.846kg(40モル)、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と略称する)8.869kg(41.40モル)、および炭酸水素ナトリウム0.00123g(1.46×10-5モル)を攪拌機および留出装置付きの50リットル反応器に入れ、窒素雰囲気101325Paの下、1時間かけて215℃に加熱し撹拌した。
【0068】
その後、30分かけて減圧度を1998.3Paに調整し、215℃、1998.3Paの条件下で40分間保持しエステル交換反応を行った。さらに37.5℃/hrの速度で240℃まで昇温し、240℃、1998.3Paで10分間保持した。
その後、10分かけて15998.6Paに調整し、240℃、15998.6Paで70分間保持した。その後、10分かけて13332.2Paに調整し、240℃、13332.2Paで10分間保持した。
更に40分かけて133.3Pa以下とし、240℃、133.3Pa以下の条件下で30分間撹拌下重合反応を行った。
【0069】
反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成したポリカーボネート樹脂を抜き出しながらペレタイズした。得られたポリカーボネート樹脂は還元粘度=0.64dL/g、Tg=160℃であった。
【0070】
このポリカーボネート樹脂10.0kgを100℃で24時間真空乾燥し、樹脂に対して、酸化防止剤(商品名「IRGANOX1010」、チバジャパン(株)製)を500ppm、離型剤としてグリセリンモノステアレートを300ppm添加して押出機により260℃で混練してペレタイズしペレットを得た。該ペレットのMI値は、260℃、2.16kg荷重で14.8g/10minであった。
【0071】
該ペレットを100℃で24時間真空乾燥した後、シリンダー温度265℃、金型温度105℃で射出成形し、直径が75mm、厚みが3.0mmのプラノ−レンズを得た。該樹脂レンズの複屈折を測定したところ33nmであり、複屈折のきわめて小さい実質的に光学歪のないレンズであることが確かめられた。
【0072】
該レンズの全光線透過率は91.0%、耐衝撃性は160gであった。また、該樹脂の屈折率nD=1.501、アッベ数=60.1であった。各種物性の測定結果を表1に示した。
【0073】
また、分散染料として商品名「BPIブラウン」(Brain Power Incorporated社製)5gを純水1Lに添加し、90〜91.5℃に保温して茶色の染色液を得た。上で得られたレンズを約90℃で一時間浸漬して染色試験を行った。染色試験結果を表2に示した。
【0074】
<実施例2>
イソソルビド(ISB)に代えてイソマンニドを用いる以外は実施例1同様に反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度=0.55dL/g、Tg=166℃であった。このポリカーボネート樹脂10.0kgを100℃で24時間真空乾燥し、樹脂に対して、酸化防止剤(商品名「IRGANOX1010」、チバジャパン(株)製)を500pm、離型剤としてグリセリンモノステアレートを300ppm添加して押出機により260℃で混練してペレタイズしペレットを得た。該ペレットのMI値は、該ペレットのMI値は、260℃、2.16kg荷重で11.8g/10minであった。該ペレットを100℃で24時間真空乾燥した後、シリンダー温度265℃、金型温度105℃で射出成形し、直径が75mm、厚みが3.0mmのプラノレンズを得た。
【0075】
該樹脂レンズの複屈折を測定したところ38nmであり、複屈折のきわめて小さい実質的に光学歪のないレンズであることが確かめられた。該レンズの全光線透過率は91.0%、耐衝撃性は160gであった。また、該樹脂の屈折率nD=1.501、アッベ数=60.1であった。これらの結果を表1に示す。また、実施例1と同様に染色試験を行った。結果を表2に示す。
【0076】
<比較例1>
ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂として、商品名「ユーピロンH−4000」(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)を用いた。該ペレットのMIは、255℃、5.00kg荷重で25.0g/10minであった。ガラス転移温度は145℃であった。該ペレットを100℃で24時間真空乾燥した後、シリンダー温度255℃、金型温度95℃で射出成形し、直径が70mm、厚さ3.0mmのプラノーレンズを得た。該レンズの全光線透過率は89.0%、落球衝撃試験では510g以上であった。また、該樹脂の屈折率nD=1.586、アッベ数=29.7であった。該樹脂レンズの複屈折を測定したところ1240nmであり、複屈折の大きい歪の大きいレンズであることが確認された。これらの結果を表1に示す。また、実施例1と同様に染色試験を行った。結果を表2に示す。
【0077】
<比較例2>
ジエチレングリコールビスアリルカーボネート100重量部、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3重量部を加え、直径が75mm、厚みが3.0mmのプラノ−レンズ型の中に流し込み、窒素雰囲気下40℃のオーブン中に24時間保持した。その後、80℃で4時間更に120℃で2時間保持し硬化を完了させた。全光線透過率は91.0%、落球衝撃試験では15.8gであった。また、該樹脂の屈折率nD=1.499、アッベ数=58.1であった。該樹脂レンズの複屈折を測定したところ44nmであった。これらの結果を表1に示す。また、実施例1と同様に染色試験を行った。結果を表2に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明により今まで存在しなかった、植物由来の原料から製造され、高い耐熱性、高い透明性、高いアッベ数、高強度、高染色性を有し、光学歪のない優れた光学レンズを得ることができる。本発明の光学レンズは射出成形可能で生産性が高く、眼鏡レンズ、カメラ、望遠鏡、双眼鏡などのレンズに有用であり、特に眼鏡レンズに有用である。また、本発明の光学レンズは、自動車及び電車のヘッドライト、飛行機の標識塔、探照灯、OHP等の広範な光学機器に用いることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位を含み、且つ還元粘度が0.2〜1.5dl/gであるポリカーボネート樹脂を主成分とする光学レンズ用材料からなる光学レンズ。
【化1】

【請求項2】
前記式(1)で表される糖質がイソソルビドである、請求項1記載の光学レンズ。
【請求項3】
前記式(1)で表される糖質がイソマンニドである、請求項1記載の光学レンズ。
【請求項4】
分散染料により染色されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の光学レンズ。
【請求項5】
眼鏡レンズである、請求項1〜4のいずれかに記載の光学レンズ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学レンズを製造する方法であって、下記工程(a)及び必要に応じ(b)を含むことを特徴とする、光学レンズの製造方法。
(a)下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位を含み、且つ還元粘度が0.2〜1.5dl/gであるポリカーボネート樹脂を主成分とする光学レンズ用材料を射出成形により成形する射出成形工程
(b)前記射出成形工程で得られる射出成形体を、媒体中において分散染料により染色する染色工程
【化2】


【公開番号】特開2010−190919(P2010−190919A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32071(P2009−32071)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】