説明

光学基板を洗浄する方法

酸および酸化剤を含む洗浄材料を使用して、光学材料を処理する方法を説明する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、酸および酸化剤を使用して、光学デバイスのための材料および基板を洗浄する方法に関する。
【0002】
背景
光学材料は、一般的に、所望の伝送、屈折、および電磁(例えば、可視)波長の反射を含む材料特性に基づいて動作する。これらの特性は、放射線が伝送され、屈折されまたは反射される、デバイスの極めて清浄な表面の使用によって増強される。更に、光学デバイスの様々な表面は、その表面と放射線との特定の相互作用、または、そのデバイスまたは別のデバイスの他の表面とのある種の相互作用のために設計されたコーティングまたは接着剤を含むことができる。また、これらの表面は、コーティングまたは接着剤の結合ならびに光学的性質が向上するという利益も高度の清浄さから得られる。而して、表面の清浄度の更なる改良は、常に、光学デバイスの光学活性表面のための目標である。
【0003】
光学部品の光学活性表面は、最終の製品またはデバイスへの処理中に、多くのそして様々な異なる材料と接触する。それらの材料としては、酸、塩基、研磨剤、溶媒、および接着剤、特に処理助剤が挙げられる。例えば、「ブロッキングワックス」のような熱可塑性接着剤を使用して、基板を処理するために、別のピースに基板を一時的に結合させてもよい。処理に使用されるこれらの接着剤および他の材料は、最終的には除去しなければならない。
他の汚染物質、例えば塵、人間のデトリタラス、指紋なども、光学活性表面の性能を妨げ得る。完全に除去されずに、光学材料の表面に残留している何らかの前記の残留物または汚染物質は、光学材料の光学的な性質および特性に強い影響を及ぼすことがある。
【0004】
特定の光学デバイスでは、残留表面汚染は、様々な有害な影響を及ぼすことがある。表面汚染は、鏡性能における光学散乱を生起し得る。ジャイロスコープで使用される誘電体鏡のような高度に精密なマイナーな用途では、この散乱は、キャビティ損失およびアングルランダムウォーク(ARW)の形態で性能に影響を及ぼすことがある。パッシブまたはアクティブ表面波線路では、表面汚染は、表面散乱および表面損失をも結果として招くことがある。光学封止用途では、表面汚染は、光学接触(すなわち、セメントを使用しない2つの充分に清浄で且つぴったり合う表面の接着)を妨げることがある。界面強度は、2つの各表面の原子間のファンデルワールス力と関連があるので、任意の量の汚染は、この相互作用を低下させ、、劇的に界面強度を低下させることがある。真空用途では、表面汚染物質は、揮発性であり得るので、汚染物質の再配置およびデバイスまたは真空チャンバの再汚染が起こり得る。
【0005】
而して、光学デバイスおよび光学デバイスプロセシングにおける残留表面汚染のマイナスの影響は多種多様であるが、光学デバイスを処理するのに使用される多くの材料は、それらの有用性にしたがって容易には除去されない。特に除去するのが困難であり得る材料のクラスの例は、有機(例えばポリマー熱可塑性)接着剤のような有機材料である。コアリング、グラインディング、ラッピング、ポリッシング、または他の処理工程のような処理中に、基板を一時的に取り付けるために使用される標準的なブロッキングワックスは、除去するのが非常に難しいことがある。これらの材料を除去するための標準的な方法は、溶媒で、例えば加熱された溶媒浴または溶媒蒸気脱脂剤を使用する方法である。しかしながら、有機溶媒におけるこれらのワックスの限られた溶解度は、基板表面の不完全な洗浄を結果として招く。多くの基板が洗浄される溶媒中に有機材料を溶解する洗浄法の性質も、基板表面上に有機材料を再沈殿または再堆積させ、残留物を残す可能性がある。
【0006】
光学基板を洗浄する効果的な方法、特に、光学活性表面から有機材料(例えば汚染物質)を洗浄する方法に関するニーズが絶えず存在している。
概要
本発明は、酸および酸化剤を含む洗浄材で、光学デバイスにおいて有用な表面を洗浄する方法を提供する。長年、硫酸および過酸化水素は、湿式浴で一緒に使用して、半導体ウェハを洗浄し、半導体ウェハ表面から感光性で反応性のポリマー材料を除去してきた。前記の感光性ポリマー材料は、半導体ウェハをマスキングまたはパターニングする場合に使用される感光性で反応性のポジティブおよびネガティブフォトレジスト材料である。しかしながら、光学機能表面から非感光性材料を除去するために同じ洗浄材を使用することの有用性および潜在的な利点は、従来評価されてこなかった。
【0007】
而して、本発明にしたがって、非感光性ポリマー材料のような有機材料は、酸および酸化剤を使用して、光学活性表面から除去される。感光性とは、光または他の電磁エネルギーに対して感受性または応答性(反応性)の材料を意味している。
【0008】
本発明のある種の実施態様では、本発明の洗浄法は、光学活性表面を洗浄するために使用される従来の方法に比べて、光学基板から有機表面材料および汚染物質をより有効に洗浄できる。より詳しくは、光学表面から接着剤を除去する例示的方法は、現在使用されている工業的方法、例えば有機溶媒を使用して表面から接着剤を溶かすことを含む方法によって達成されるレベルに等しいかまたはそれを超える表面の清浄性レベルをもたらすことができる。表面清浄効果は、洗浄された光学活性表面を光学的(例えば光学顕微鏡的)な検査によって、残留有機材料、例えば接着剤、塵、人間のデトリタス、指紋などに関して、客観的に測定および比較することができる。洗浄効果は、洗浄された光学基板を使用するよう用意される光学デバイスまたは光学機器の性能を測定することによって、測定および比較することもできる。なお更に、洗浄効果は、光学的性質、例えば透過率、反射率または屈折率の客観的な測定に基づいて測定および比較することができる。鏡では、詳しくは、表面汚染は、表面散乱の観点から鏡面の反射率性能に基づいて検出できる。
【0009】
本発明の方法が基板表面のより良好な洗浄をもたらす場合、洗浄された光学基板を使用している市販製品の当然の結果は、基板廃棄物の減少および基板収率の改善であり、また、洗浄された基板から作製された製品の収率の改善、ならびに、より良好な特性である。
【0010】
本発明の一つの面は、光学基板から非感光性有機材料を除去する方法に関する。その方法は、光学基板を、酸化剤および酸を含む洗浄材料と接触させる工程を含む。
本発明の一つの面は、光学基板から非感光性有機材料を除去する方法に関する。本方法は、表面上に有機接着材料を有する光学基板を提供する工程、酸化剤を提供する工程、酸を提供する工程、酸化剤と酸を組み合わせて洗浄材料を提供する工程、およびその洗浄材料中に光学基板を浸漬する工程を含む。
【0011】
別の面では、本発明は、光学基板を処理する方法に関する。本方法は、光学基板を提供する工程、有機接着剤を使用してその光学基板を処理装置に接着させる工程、光学基板を処理装置に接着させながら基板の表面を処理する工程、処理された基板を処理装置から取り出す工程、そして、酸化剤および酸を含む洗浄材料と光学基板を接触させることによって光学基板から接着剤を除去する工程を含む。
【0012】
説明
本明細書で使用される「光学基板」または単に「基板」)とは、基板の一部分としてまたはより大型の光学デバイスの一部分として含まれるとき光学機能を発揮する光学活性表面を含む物品、ピースまたは他の物体もしくは構造である。光学活性表面は、光学スペクトル内で光学的に有用な反射率、透過率または反応性のうちの1つ以上を示す表面であることができる。光学活性表面は、前記用途における公知の有用性を有する材料、例えば、1つ以上の表面が任意に被覆されたガラスおよび石英を含む透過性および高度に透過性の材料;研磨された金属および任意に被覆できる金属合金のような高度に反射性の材料;反射性のまたは光学的に活性な材料で、例えば金属、金属合金もしくは金属酸化物などで表面を被覆された基板のような他の反射性材料(例えば、ポリマー、セラミック、金属またはその他)から作製できる。光学活性表面を含む材料は、光学基板の唯一の成分であることができるか、または、前記材料は、機能的または構造的であることができる他の材料と一緒に含まれ得る。シリコンウェハは反射性を示すことができるか、シリコンウェハ単独では、例えばシリコンウェハは、それ自体、光学機能を発揮しないので、本明細書で使用されるような光学基板であるとはみなされない。更に、本発明にしたがって処理される光学基板は、例えば光学活性表面を有し且つ光学機能を発揮する材料にケイ素を加える場合、電子的または構造的役割を発揮するケイ素および関連材料を含むことができる。
【0013】
光学基板は、作製または使用の様々な段階のうちのいずれかにおける基板、例えば、完成された(例えば機能的な)光学基板、部分的に完成された光学基板、または光学デバイスに取り付けられ且つ光学デバイスで使用される光学基板であることができる。例えば、光学基板製造中に光学基板を洗浄するために、すなわち、光学材料または光学基板が、より大型の光学部品または光学デバイス内で機能する形態へと作製されるとき、光学材料または光学基板を「製造過程中に」洗浄するために、本発明の洗浄法を使用できる。あるいは、本方法は、光学基板の製造および仕上げ後に洗浄するために、例えば、光学デバイスの耐用寿命中における使用中に断続的に光学基板を洗浄するために使用できる。
【0014】
一般的に、光学デバイスは、電磁放射の透過、反射または屈折のうちの1つ以上である光学材料を含む。本発明によると、この種の光学材料およびそれらの表面は、高度に精密な電子または電気機械式機器、例えばジャイロスコープ、レーザー、位相および振幅光変調器などで有用であり得る。これらの機器は、高度に精密で且つ正確な測定を提供できる。
このように、これらの機器は、極めて清浄な表面を含むように本発明にしたがって処理された光学基板から作製できる。本発明の方法は、光学活性表面を最高レベルの清浄度まで処理することができ、それにより、精度および正確さが増した組立光学デバイスのその後の作製が可能となる。
【0015】
光学デバイスおよび光学基板のいくつかの具体例としては、放射線を、望ましく反射、透過、屈折、配向、偏光、回転もしくは集中させるか、または、光学的に放射線に影響を及ぼすような仕方で、例えば可視光、赤外光または紫外光のような光学スペクトル内の電磁放射、例えばレーザー光に作用するように設計され且つ使用される物品およびアセンブリが挙げられる。光学スペクトルは、概して、0.001μmの真空紫外波長と100μmの遠赤外波長との間の電磁スペクトルであると考えることができ、光学用途の大部分は、0.1〜2ミクロンの範囲内である。
【0016】
光学活性表面の具体例は、鏡、導波路、光学フィルター、レンズ、視覚楔(例えば複屈折楔)、偏光子、ビームスプリッター、プリズム、音響光学変調器および電気光学変調器、レーザー、および光増幅器などと関連のある光学活性表面である。光学活性表面は、電子デバイスまたは超小型電子デバイスとして主に機能することが意図されるデバイスの表面、例えば半導体材料の表面および半導体デバイスの表面を含まないが、本発明にしたがって作製される光学基板および光学デバイスは、電子または超小型電子の材料およびデバイスを含むことができるかまたはそれらと一緒に使用できる。
【0017】
反射光学基板の具体例は、鏡または鏡の背面である。典型的な鏡は、反射鏡表面として機能するコーティング(例えば、金属フィルムまたは誘電体多層コーティングまたは「多層スタック」)で被覆された、滑らかに研磨された固体材料、例えばガラス材料、ポリマー(例えばプラスチック)材料または研磨された金属を含むことができる。鏡は、更に、例えば反射面において、他の層またはコーティング、例えば反射防止コーティングを含むこともできる。鏡は、用途にしたがって、所望の反射率で、可視または近可視スペクトルで光を好ましくは反射できる。鏡の具体例としては、レーザー、トランスデューサおよびジャイロスコープで使用される鏡が挙げられる。
【0018】
極めて清浄な光学活性表面から一般的に利益を得ることができる他の光学基板としては:導波路構造、例えば光エネルギーを誘導する能力を有する構造;ある範囲の波長を選択的に透過させることができるか、または、ブロックすることができる光学フィルター構造;レンズ構造;偏光子;ビームスプリッター、例えば電磁放射のビームを所望の大きさの2つ以上の分離ビームへと分割するのに有用である光学デバイス;ビームコンバイナなどが挙げられる。例外的に清浄な光学活性表面から追加の利益を生起できる光学基板のある種のより具体的な例としては、ボールレンズ、屈折率分布型レンズ、導波路光増幅器(例えばエルビウムドープ導波路増幅器(EDWA))、ガラスベースのパッシブスプリッター、変調器、例えばニオブ酸リチウムをベースとする変調器(ニオブ酸リチウム変調器)および機械切りグレーティング(ruled grating)(例えば機械切りグレーティング基板)用途が挙げられる。
【0019】
光学基板の表面に位置することができ、また、本発明にしたがって表面から除去または洗浄することができる表面汚染物質は、前記基板を処理するときに使用される多くの材料、ならびに、大気条件下での処理または接触に起因して存在し得る他の汚染物質を含む。本明細書で説明される方法は、光学基板から有機材料を除去するのに有効であり得る。前記有機材料としては、非感光性ポリマー有機材料(例えば接着剤、熱可塑性材料);指紋、人間のデトリタス;塵などが挙げられる。
【0020】
光学活性表面上の表面汚染として存在できる有機材料のクラスの一つの具体例は、熱可塑性接着剤、硬化したまたは硬化可能な接着剤、感圧型接着剤、熱硬化性接着剤などを含む接着剤として有用な有機材料のクラスである。有機接着材料の比較的より具体的な例としては、溶解し且つ凝固して構造用接着剤として使用できるワックスのような有機熱可塑性材料が挙げられる。これらのワックスのいくつかは、ブロッキングワックスと称され、一般的には、直鎖の、任意に置換されたまたは分岐された、比較的長鎖の飽和炭化水素部分を含む成分から構成されている疎水性有機材料を含む。これらの材料は、光学基板を処理する技術において公知であり、一般的に、種々のワックスまたはピッチ、例えばラノリン系ワックス、密蝋系ワックス、松系またはバルサム系ピッチが挙げられる。光学基板処理で使用される具体的な一時取付接着剤の例としては、Crystalbond(商標)509(ニューヨーク州Valley CottageにあるAremco Products Inc.から市販されている)、およびCrystalbond系製品が挙げられ、それらは熱可塑性有機ポリマーも含む。前記接着材料は、しばしば、光学基板を処理するときに使用して、光学基板を処理工程のための、例えば機械処理、スライシング、ドリリング、ダイシング、コアリング、グラインディング、ラッピング、ポリッシングなどによって基板の表面を処理する工程のための処理装置に一時的に取り付ける。接着剤が有用である処理工程後に、その接着剤を、基板表面に極力残らないように除去しなければならない。
【0021】
本発明にしたがって、酸および酸化剤の両方を含む洗浄材料(例えば洗浄液)と基板を接触させることによって、光学基板の表面を洗浄して、表面から有機材料または有機残留物を除去する。理論に束縛されずに、酸および酸化剤によって基板表面から有機材料を除去するための可能なメカニズムは、酸が有機材料を分解することができ、そして、酸化剤が、その反応生成物と反応して(そしてそれによって減少させて)、反応生成物を二酸化炭素へと分解できるというものである。
【0022】
例えば基板表面で有機材料を分解することによって、基板表面から有機材料を除去するのに、酸化剤と組み合わせた洗浄材料において酸は有効であり得る。酸は、任意の有効濃度またはpHであることができ、また、有機または無機であることができる。強酸(実質的に100%イオン化した)、例えば硫酸は、ある種の用途で有用であり、また、他の有機酸、他の強酸または無機酸単独でまたは組み合わせて、且つ、任意に濃縮してもしくは非濃縮で使用することもできる。例としては硝酸および塩酸が挙げられる。酸の特定のタイプおよび濃度の選択は、特定の方法、例えばその方法で使用される酸化剤の量およびタイプ、酸と光学基板(例えば、基板の材料、例えば金属層)との適合性、光学基板を洗浄材料に対して曝露するタイミングおよび温度などに関する様々なファクターによって影響され得る。ある種の実施態様のためには、硫酸を使用してもよい。
【0023】
酸化剤は、本発明にしたがって、酸と組み合わせて使用して光学活性表面から有機材料を除去するときに酸化剤として作用する化合物(酸を含まない)を指している任意の有用な酸化剤であることができる。いくつかの酸化剤は、別の化合物と反応中に酸素原子を与える化合物である。この種の酸化剤の例は過酸化水素である。酸化剤の他の例としては、特に、オゾン、酸素(O)、フッ素元素、硝酸金属、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、二クロム酸ナトリウム、過硼酸ナトリウムが挙げられる。
【0024】
過酸化水素は、反応生成物として水だけを生成するという利点があるので、ある種の用途では特に望ましいかもしれない。過酸化水素水溶液は、例えば、有用な濃度で、例えば85重量%または90重量%までの過酸化水素の濃厚溶液で使用できる。この種の高濃度の過酸化水素溶液は、反応性および着火性により、危険で扱い難く、安全上の問題がある。
而して、これらのファクターにより、過酸化水素の希薄溶液を代わりに使用することができ、本発明の方法で使用するのに更に有効である。希釈過酸化水素水溶液は、例えば、50重量%未満、例えば40重量%未満、または、25〜40重量%、典型的には約30重量%もしくは31重量%の過酸化水素濃度を有することができる。
【0025】
酸および酸化剤を組み合わせて、光学基板表面から有機材料を除去するのに本発明にしたがって有用である洗浄材料(例えば溶液)を作ることができる。使用される酸および酸化剤の相対量は、任意の所望で有用な量であることができる。本発明のある種の実施態様にしたがって、使用される洗浄材料が硫酸であり、また、使用される酸化剤が過酸化水素である場合、これらの材料は、硫酸(無水)対過酸化水素(無水)の体積比3:1〜10:1、例えば3:1〜5:1で含有され得る。
【0026】
洗浄材料は、充分な安全予防策をとりながら酸化剤と酸を組み合わせることによって調製できる。または、酸化剤と酸性材料との組み合わせは商業的に利用可能である。この種の市販製品の一つの例は、カリフォルニア州フリーモントにあるCyantekから市販されているNanostrip系製品であり、現在ではNanostripおよびNanostrip 2Xが挙げられる。これらは、安定化された形態で硫酸および過酸化水素を含む溶液である。
【0027】
本発明は、光学表面を洗浄する場合、酸、酸化剤またはそれらの組み合わせによる任意のある種の作用機序に左右されない。本明細書で説明される方法は、有用であり、また、少なくともいくつかの実施態様にしたがって、その作用機序に関係なく、所望の利点を示すことができる。理論に束縛されずに、酸および酸化剤を含む洗浄材料の使用は、有機材料と反応し且つ分解する酸および酸化剤の総合能力に基づいて、表面から有機材料(例えば汚染物質)を除去するのに特に有効であると考えられる。一般的に、酸、酸化剤および有機材料を組み合わせると二酸化炭素が生成する。その二酸化炭素は、酸による有機材料の分解と、酸化剤による初期反応から生じる炭素の酸化とを示している。これは、酸化剤による反応生成物の酸化を可能にする程度まで有機材料と反応し且つ分解する酸によって起こると考えられる。恐らく、より詳しくは、有機材料と酸の反応は、酸化剤によって酸化されて二酸化炭素を生成する炭素(例えば元素炭素)を結果として生成する。有利には、溶媒浴洗浄法の機能であるように、有機材料は、洗浄材料中に簡単に溶解しない。結果として、溶媒浴法に対して、有機材料は、別の基板表面上で簡単に再沈殿または再堆積して表面を再汚染できない。
【0028】
所望ならば、本明細書に記載の洗浄材料は、酸および酸化剤に加えて、所望の且つ有用な他の成分を含むことができる。これらの他の成分は、洗浄法の効率を向上させることができるか、または、大規模な方法の効率を促進もしくは増すことができる成分を含むことができる。前記成分としては、界面活性剤;有機溶媒;希釈剤、例えば水または有機材料;
安定剤、例えば米国特許第6,294,145号に記載されているペルオキソ二硫酸;
緩衝剤などを所望の量で含むことができる。
【0029】
本発明にしたがって、洗浄材料を基板表面に接触させて有機材料を除去する。これは、任意の有用な方法によって、例えば、スプレーもしくはブラシによって洗浄材料を基板に施用することによって、または、洗浄材料を含む浴中に基板を浸漬することによって、達成できる。任意には、その方法は、基板、洗浄材料または有機材料のいくつかの撹拌形態を含むことができる。前記の撹拌の例としては、望ましく且つ有効な、機械的作用、例えばスクラビングまたはブラッシング;運動(movement)、例えば基板の回転または振動;運動、例えば洗浄材料スプレーの回転または振動;音波撹拌などが挙げられる。一つの具体例は、洗浄材料を含む加熱槽の使用であり、その中に基板をディップまたは浸漬して洗浄する。酸化剤(および酸)は、洗浄材料におけるそれぞれの所望の濃度を維持するために必要に応じて連続的または定期的に加えることができる。
【0030】
任意には、本方法は、洗浄を容易にするために熱エネルギーを含むことができる。而して、本方法は、室温または高温を含む任意の温度で行うことができる。基板および洗浄材料のいずれかまたは両方を加熱できる。有用な処理温度、例えば基板または洗浄材料の温度は、室温を超えるまたは室温を下回る温度であることができ;例えば、室温(70F)〜高温、例えば250Fであることができる。例示的な高温は、180〜220Fであることができる。本発明方法のある種の具体的な実施態様によると、洗浄法は、室温または室温付近の温度、例えば華氏60度〜80度の範囲内で、有利に実施して、洗浄材料または基板を加熱することのコストおよび複雑化を低減できる。
【0031】
基板を洗浄材料と接触させる時間量は、任意の有効時間量であることができる。任意の特有な方法のための特定のタイミングは、様々なある種のファクター、特に、例えば基板および基板成分;基板から除去しようとする有機材料の量(例えば、本発明は、付着している全ての有機接着剤を洗浄するのに、または、微少量(汚染付着物の小面積率)を洗浄するのに有効であることができる);有機材料のタイプ;酸および酸化剤の濃度および相対濃度;接触および使用される洗浄装置のタイプ、例えば、スプレー法または浴法が使用されるか否か、また、機械的撹拌かまたは超音波撹拌か否か;加熱された基板または洗浄材料の使用に左右される。重要なファクターは、除去しようとする有機材料の量であることができる。例示的なタイミングは、秒、分、時間であることができ、しばしば1分〜1時間が有用である。少量の有機表面不純物(例えば接着剤またはワックス)を除去するある種の好ましい方法は、5分未満のような比較的短時間、例えば30秒〜3分を要するように設計できる。
【0032】
より大量の有機不純物を除去する方法では、より長時間、例えば最大60分まで設定できる。本発明による有用なプロセス特徴の唯一つの具体例として、交互高/低屈折率誘電(酸化物)フィルムを有する透光基板(例えばBK7またはZerodur(登録商標)R基板)を、60〜100C(140F〜212F)で10分間、硫黄対過酸化水素の4:1混合物を使用して洗浄して、Crystalbond接着剤またはポリッシングワックス/ピッチの極微量から付着している全てを除去できる。
【0033】
洗浄法の後、基板は、望み通りに処理できる。任意には、洗浄された基板は、脱イオン水ですすいで、あらゆる残留物を除去することができ、次いで、任意の所望の乾燥法によって、例えば、遠心脱水、清浄な乾燥ガスなどを使用するブロー乾燥によって、乾燥させることができる。
【0034】
本発明の他の実施態様は、この明細書を検討すれば、または、本明細書で開示される発明の実施から当業者には明らかだろう。当業者は、以下の請求項によって示される本発明の真の範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書で説明される原理および実施態様に関する様々な省略、改良および改変を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学基板を酸化剤と酸を含む洗浄材料と接触させる工程を含む、該光学基板から非感光性有機材料を除去する方法。
【請求項2】
該有機材料が、非感光性ポリマー材料を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
該有機材料が、有機汚染物質を含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
該汚染物質が、塵、指紋、人間のデトリタスおよびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項3記載の方法。
【請求項5】
該有機材料が、接着剤由来の残留物を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
該接着剤が、ブロッキングワックスである請求項5記載の方法。
【請求項7】
該光学基板が、鏡、導波路、光学フィルター、レンズ、偏光子、プリズムおよびビームスプリッターから成る群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項8】
該光学基板が、ボールレンズ、屈折率分布型レンズ、導波路光増幅器、ガラスベースのパッシブスプリッター、ニオブ酸リチウム変調器および機械切りグレーティングから成る群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項9】
該酸が、硫酸である請求項1記載の方法。
【請求項10】
該酸が、濃硫酸である請求項1記載の方法。
【請求項11】
該酸化剤が、25〜50重量%の濃度を有する過酸化水素である請求項1記載の方法。
【請求項12】
該酸が硫酸を含み、且つ該酸化剤が過酸化水素を含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
該洗浄材料が、酸(無水)対酸化剤(無水)を3:1〜10:1の容積比で含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
該洗浄材料中に光学部品を浸漬することによって、該洗浄材料と該光学基板表面とを接触させる工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項15】
該洗浄材料が、華氏60度〜華氏250度の温度である請求項14記載の方法。
【請求項16】
該洗浄材料が、華氏60度〜華氏80度の温度である請求項1記載の方法。
【請求項17】
以下の工程:すなわち、
表面上に有機接着材料を有する光学基板を提供する工程、
酸化剤を提供する工程、
酸を提供する工程、
該酸化剤と該酸とを組み合わせて、洗浄材料を提供する工程、そして
該洗浄材料中に該光学基板を浸漬する工程
を含む、光学基板から有機接着剤を除去する方法。
【請求項18】
該光学基板表面を、30秒〜60分間、該洗浄材料中に浸漬する請求項14記載の方法。
【請求項19】
該洗浄材料が、華氏60度〜華氏80度の温度である請求項14記載の方法。
【請求項20】
以下の工程:すなわち、
該有機材料が、有機熱可塑性接着剤であり、
該酸化剤が、25〜50%の濃度を有する過酸化水素であり、
酸が濃硫酸であり、そして、
該酸化剤および該酸が、3:1〜5:1の酸(無水)対酸化剤(無水)固体の比で組み合わされる請求項17記載の方法。
【請求項21】
該洗浄材料を、華氏140度〜華氏212度の温度まで加熱する工程を含む請求項16記載の方法。
【請求項22】
該洗浄材料が、華氏60度〜華氏80度の温度である請求項1記載の方法。
【請求項23】
以下の工程:すなわち、
光学基板を提供する工程、
有機熱可塑性接着剤を使用して該光学基板を処理装置に接着させる工程、
該光学基板を該処理装置に接着させながら、該光学基板の表面を処理する工程、
該処理装置から該処理された基板を取り出す工程、そして
該光学基板を、酸化剤および酸を含む洗浄材料と接触させることによって、該光学基板から該接着剤を除去する工程
を含む、光学基板を処理する方法。
【請求項24】
該光学基板の表面を処理する工程が、該光学基板を機械処理、スライシング、ドリリング、ダイシング、コアリング、グラインディング、ラッピングおよびポリッシングすることから成る群より選択される方法を含む請求項23記載の方法。
【請求項25】
該光学基板の表面を処理する工程が、該光学基板を、ラッピングおよびポリッシングすることから成る群より選択される方法を含む請求項23記載の方法。

【公表番号】特表2008−512729(P2008−512729A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531393(P2007−531393)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/032262
【国際公開番号】WO2006/029363
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】