説明

光学接続構造および光学接続方法

【課題】メカニカルスプライスを用いる光伝送媒体同士の接続において、接続の度に光伝送媒体端部に粘着性接続部材を形成する一連の作業を必要とせず、迅速かつ正確に接続を行うことができる光学接続構造および光学接続方法を提供する。
【解決手段】光伝送媒体がメカニカルスプライスの両端からそれぞれ挿入され光学的に接続されている光学接続構造であって、メカニカルスプライスはスリット部を有し、スリット部には粘着性接続部材が固着された光接続チップが挿入されており、光伝送媒体は粘着性接続部材に当接している。また、光伝送媒体がメカニカルスプライスの両端からそれぞれ挿入され光学的に接続されている光学接続構造であって、メカニカルスプライスは2つの基板を有し、基板の一方に粘着性接続部材が固着された凸部を有し、基板の他方に凸部に対応した凹部を有し、光伝送媒体は粘着性接続部材に当接している。さらに、これらの接続方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送媒体同士を接続する光学接続構造および光学接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ファイバ等の光伝送媒体同士を接続する方法としては、光伝送媒体同士を突き合わせたり、光伝送媒体を挿入したフェルール同士を突き合わせることによって、物理的に接続する方法が一般的に採用されてきた。
【0003】
光伝送媒体の接続が永久的に行われ変更がない場合は、融着接続の他、対向する光伝送媒体同士を挟持して固定するメカニカルスプライスが用いられ(例えば、特許文献1または2参照)、接続が頻繁に着脱される場合は、光伝送媒体端部をフェルールで保護した上で光コネクタ接続を行っている。これらの場合において、対向する光伝送媒体は、端部が物理的に接触することで接続されている。
【0004】
しかしながら、光伝送媒体同士を直接接触させて接続を行うと、微細な傷等が接続特性に大きな影響を及ぼすという問題があった。また、仮に端面が平滑であっても、微視的には対向する端部間に空隙があり、この部分における接続損失も無視することができない。さらに、光伝送媒体は強度が低いため、端部への押圧力が増大すると光伝送媒体を破損してしまうおそれがあった。
【0005】
上述した方法のうちメカニカルスプライスを用いる技術として、接続される光伝送媒体の端部に粘着性接続部材を設け、続いて光伝送媒体同士を対向させて接続する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この方法では、一方の光伝送媒体の端部を粘着性接続部材シートに当接させ、押し破ることによって、光伝送媒体の端部に粘着性接続部材層を設け、続いて、他方の光伝送媒体を対向させ、接続を行っている。この接続を、メカニカルスプライス内で行うこともできる旨、開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−241660号公報
【特許文献2】特開2002−22997号公報
【特許文献3】特開2005−274839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の光学接続構造では、光伝送媒体の接続が必要とされる際に、光伝送媒体を粘着性接続部材に押し当てて密着させたまま、粘着性接続部材を移動させて切り離し、粘着性接続部材層を光伝送媒体の端部に設けるといった一連の工程をその都度行わなければならず非効率的であり、光学回路を作製する際の作業環境によっては、そのような一連の工程を現場で行うことが困難である場合もあり、より簡易的かつ正確な接続のための改善が求められていた。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、メカニカルスプライス構造を用いる光伝送媒体同士の接続において、接続が行われる度に光伝送媒体端部に粘着性接続部材を形成する一連の作業を必要とせず、迅速かつ正確に接続を行うことができる光学接続構造および光学接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光伝送媒体がメカニカルスプライスの両端からそれぞれ挿入され光学的に接続されている光学接続構造であって、メカニカルスプライスは、スリット部を有し、スリット部には、粘着性接続部材が固着された光接続チップが挿入されており、光伝送媒体は、粘着性接続部材に当接していることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、光伝送媒体がメカニカルスプライスの両端からそれぞれ挿入され光学的に接続されている光学接続構造であって、メカニカルスプライスは2つの基板を有し、基板の一方に粘着性接続部材が固着された凸部を有し、基板の他方に上記凸部に対応した凹部を有し、光伝送媒体は、粘着性接続部材に当接していることを特徴としている。
【0011】
本発明の光学接続構造においては、上記2つの基板は、凸部を有する押さえ基板と、凹部を有するV溝基板であることを好ましい態様としている。
【0012】
さらに、本発明は、光伝送媒体をメカニカルスプライスの両端からそれぞれ挿入して光学的に接続する光学接続方法であって、メカニカルスプライスは、スリット部を有し、スリット部に、粘着性接続部材が固着された光接続チップを挿入して、光伝送媒体をメカニカルスプライスの両端から挿入して粘着性接続部材に当接させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光学接続構造および光学接続方法によれば、予め粘着性接続部材を設けた光接続チップがメカニカルスプライスの内部に備えられているので、光伝送媒体同士を接続する際に、光伝送媒体へ粘着性接続部材を設ける工程を省略することができ、当該メカニカルスプライスの両端から光伝送媒体を挿入して光接続チップに保持された粘着性接続部材に当接させるだけで、正確かつ迅速に接続を完了することが可能となる。また、空気混入のない接続が可能となる。
【0014】
また、スリットを通じて光接続チップの出し入れを行うことができるので、光接続チップの交換を容易に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の光学接続構造の実施形態について具体的に説明する。
(実施形態1)
図1は、メカニカルスプライス構造を模式的に示した斜視図である。メカニカルスプライス1は、押さえ基板11と、V溝基板12とを接合することによってなり、その外周部に断面コ字状のクランプスプリング14を取り付けて、両基板を固定する。V溝基板12には、光伝送媒体21を挿入する一方の端面から他方の端面に貫通する、断面V字状の溝13が切ってあり、この溝13によって光伝送媒体21がガイドされる。また、押さえ基板11によって、光伝送媒体21は、溝13内に固定される。また、符号22は、光伝送媒体21の被覆部であり、必要に応じて光伝送媒体21から除去される。
【0016】
図2(a)は、本発明のメカニカルスプライス構造を用いた光学接続構造の斜視図であり、図2(b)は、その断面図である。図2(a)に示すように、本発明では、メカニカルスプライス1において溝13が形成する通路と交わるようにスリット部15が形成されており、このスリット部15に、光接続チップ23を挿入することができる。
【0017】
光接続チップ23は、中央部に貫通孔を有しており、この貫通孔に粘着性接続部材3を保持している。図2(b)に示すように、光接続チップ23をスリット部15に挿入することで、溝13の形成する通路上に、粘着性接続部材3を保持することができる。次に、光伝送媒体21をメカニカルスプライス1の両端から挿入して、粘着性接続部材3に当接させる。これらの工程によって、光伝送媒体の接続を行う。
【0018】
このように、貫通孔に粘着性接続部材を備えた光接続チップを保持するメカニカルスプライスを予め作製しておくことで、光伝送媒体の接続が必要とされる際には、両端から光伝送媒体を挿入するという簡便な工程のみによって、光伝送媒体の接続を完了することができて、好適である。
【0019】
さらに、一旦接続が完了した光伝送媒体を接続解除して再接続する必要が生じた際は、メカニカルスプライスを解体して、スリット部を通じて光接続チップを交換し、再度光伝送媒体を当接させて接続することにより、迅速かつ簡便に再接続を行うことができる。このときV溝基板のスリット部周辺に窪みを設けておけば、光接続チップを摘み易くて好ましい。なお、回数が少なければ光接続チップの交換なしで再接続することもできる。
【0020】
光接続チップ23の貫通孔に粘着性接続部材3を設ける工程は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、図3に示すような、貫通孔を形成したチップ部品に未硬化の粘着性接続部材を付着させ、これを加熱して硬化させる方法や、図4に示すような、筒状部材の貫通孔に粘着性接続部材を充填し、加熱硬化させてから輪切りにする方法等が挙げられるが、これらのみに限定されない。特に、後者の方法による場合は、筒状部材として熱収縮チューブを用いると、加熱時にチップ部品と粘着性接続部材との密着性が向上し、好ましい。
【0021】
チップ材料は特に限定されないが、高分子材料、ガラスなどのセラミックス、金属等を用いることができる。高分子材料としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン、エチレンプロピレンゴム、フッ化エラストマー、シリコーンエラストマー、アクリルポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、ガラス混入エポキシ材料、PPS(ポリフェニルサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等を用いることができ、特に、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン、エチレンプロピレンゴム、フッ化エラストマー、シリコーンエラストマー等の熱収縮性樹脂チューブであれば図4に示す方法でチップを量産できて好ましい。
【0022】
光接続チップの厚さは5〜100μmが好ましい。100μmを越えると、接続特性に問題が生じ、5μm未満では、光接続チップの強度が不足し、接続時に光伝送媒体の押圧によって破損してしまう虞がある。好ましくは10〜50μmであり、特に好ましくは20μm程度である。
【0023】
粘着性接続部材3としては、光伝送媒体21に接触した際、適度なタック性を伴って密着する屈折率整合体であればよい。
【0024】
適度なタック性を有するには、粘着力が1〜100gf/25mmであることが好ましく、より好ましくは5〜50gf/25mm、特に好ましくは10〜30gf/25mmである。粘着力が1gf/25mm未満だと接続が安定せず、100gf/25mmを超えると取り外した光伝送媒体21に粘着性物質が付着して好ましくない。
【0025】
なお、上記の粘着力はJIS Z 0237の90度引きはがし粘着力に準拠して測定した値である。
【0026】
次に、屈折率整合体であるには、光伝送媒体21と屈折率が近ければよい。具体的には、フレネル反射の回避による伝送損失の面から屈折率の差が±0.1以内であることが好ましく、特に0.05以内であることが好ましい。なお、接続される2つの光伝送媒体の屈折率差が大きい場合には、これらの屈折率の平均値と粘着性接続部材の屈折率とが上記範囲内であることが好ましい。なお、上記屈折率は20℃での値であり、測定には波長1310nmの光源を用いる。
【0027】
また、粘着性接続部材3は、硬度がJIS(A型)5〜100であれば凝集破壊が起こり難く、そのまま再接続可能となるので好ましい。さらに好ましくは20〜90である。上記の硬度はJIS K−6253に準拠して測定した値である。なお、粘着性接続部材3を交換して再接続することもできる。
【0028】
粘着性接続部材3には、高分子材料、例えばアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系等の各種粘着材料を用いることが好ましい。
【0029】
中でも、耐環境性及び接着性の面から、シリコーン系及びアクリル系の粘着材料が特に好ましい。また、適宜架橋剤、添加剤、軟化剤、粘着調整剤等の添加により接着力、濡れ性を調節してもよく、耐水性や耐湿性、耐熱性を付加してもよい。
【0030】
本発明における光伝送媒体21は、単心の光ファイバに限られず、光ファイバを複数本テープ化したテープ心線等でもよく、一度に接続される光伝送媒体の数量に制限はない。光伝送媒体21を複数本の光ファイバとする場合は、その本数に対応した面積を有する粘着性接続部材を保持した光接続チップをメカニカルスプライス内に予め収納することとなる。
【0031】
また、光伝送媒体21としては、石英ファイバ等を好適に用いることができるが、これは、簡単に加工できる光ファイバの一例であり、その材料は限定されない。また、光伝送媒体として、光導波路を用いることができ、その形状および材質は、適宜選択して使用することができる。さらに、光伝送媒体における屈折率分布は、ステップ分布やグレーテッド分布等、使用目的により適宜選択することができる。
【0032】
また、本発明におけるメカニカルスプライスの押さえ基板やV溝基板に用いられる材料は、接続される光伝送媒体の材料や、要求される強度や位置合わせ精度により適宜選択されるが、特に熱的寸法変化が小さいプラスチック、セラミック、金属等で作製されたものが好ましく使用される。プラスチック材料としては、ガラス混入エポキシ材料、PPS(ポリフェニルサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の結晶性高分子が好ましく使用される。
【0033】
本発明のV溝基板12に形成されている溝13は、押さえ基板と共に光伝送媒体を固定するものであればV字状に限定されず、U字状、半円や矩形であってもよい。また、これらの溝は、接続される光伝送媒体と同数形成されることが好ましい。
【0034】
(実施形態2)
図5を用いて実施形態2について説明する。図5は、実施形態2の光学接続構造の分解斜視図である。符号1’はメカニカルスプライス、11’は、凸部23’を有する押さえ基板、12’は、凹部15’を有するV溝基板、15’は凹部、23’は凸部である。その他の構成は実施形態1と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0035】
図5に示すように、実施形態2の光学接続構造は、光接続チップに代わる凸部23’を押さえ基板11’と一体成型し、スリット部に代わる凹部15’をV溝基板12’と一体成型してなる。これにより、部品点数を少なくすることができる。
【0036】
押さえ基板11’およびV溝基板12’は、射出成型等により作製することができる。なお、粘着性接続部材3は該成型後に図3に示す方法で設けることができる。なお、凸部をV溝基板に、凹部を押さえ基板に設けることもできる。しかし、この場合は未硬化の粘着性接続部材が毛細管現象でV溝に広がってしまう恐れがあるので、凸部を押さえ基板に、凹部をV溝基板に設けることが好ましい。
【実施例】
【0037】
次に、本発明の光学接続構造について、実施例を用いてさらに詳細に説明する。
<実施例1>
まず、粘着性接続部材の材料として、屈折率を1.46に調整したアクリル系粘着材料を用意した。このアクリル系粘着材料は、n−ブチルアクリレート/メチルアクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(配合重量比=82/15/2.7/0.3)の30%酢酸エチル溶液100部に、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト)1.0部を配合して混合してなる溶液である。なお、当該溶液の粘度は0.1Pa・s程度である。
【0038】
次に、フィルム厚50μmのポリエチレンテレフタラートシートを用意し、レーザー加工機(キーエンス社製 COレーザーマーカ ML−Z9500)にて縦2mm×横2mm、中央に内径0.5mmの貫通孔を有するチップにカットした。剥離シートに上記チップを載せ、チップの貫通孔に上記アクリル系粘着材料をディスペンサ(武蔵エンジニアリング社製、ML606GX)で滴下した。そして、該チップを100℃のオーブンに1.5h入れ、アクリル系粘着材料を固化させて光接続チップを作製した。なお、粘着性接続部材の粘着力は30gf/25mm、屈折率は1.46、硬度は25、膜厚は20μmであった。
【0039】
次に、市販のメカニカルスプライス(単心メカニカルスプライス「H」型式:HOT−HMS−1−125)を分解して屈折率整合オイルを除去した。そして、切削工具(東洋アソシエイツ社製 商品名:小型卓上フライス盤FV−10M)を用いてV溝基板の中央にスリット部(2.1mm×60μm)を穿設した。
【0040】
次に、上部スリット部に光接続チップを挿入して、組み立て治具を用いてメカニカルスプライスを組み立てた。そして、一端にFCコネクタを有する石英系シングルモードの光ファイバF2(住友電工社製、外径0.25mm、20℃での屈折率1.452、長さ3.5m)を2本用意した。
【0041】
次に、当該光ファイバF2のFCコネクタのない端面について、周囲の被覆部を除去して光ファイバカッタ(古河電工社製、商品名:「S325A」)により鏡面カットした。そして、メカニカルスプライスのV溝基板と押さえ基板の間に接続工具(日立電線社製 単心メカニカルスプライス接続工具「H」(組))を用いてくさびを挿入し、メカニカルスプライスの両端からそれぞれ光ファイバF2の鏡面カットした端面を挿入し、光接続チップの粘着性接続部材に当接させた。次に、くさびを抜いて光ファイバを固定した。以上により、実施例1の光学接続構造を作製した。
【0042】
<実施例2>
実施例2では、光接続チップではなく一体型のメカニカルスプライスを用いた。すなわち、図5に示す押さえ基板11’およびV溝基板12’を射出成型により作製した。その後、押さえ基板11’の凸部23’の貫通孔に、上記アクリル系粘着材料をディスペンサ(武蔵エンジニアリング社製、ML606GX)で滴下した。そして、該押さえ基板11’を100℃のオーブンに1.5h入れ、アクリル系粘着材料を固化させた。なお、粘着性接続部材の粘着力は30gf/25mm、屈折率は1.46、硬度は25、膜厚は20μmであった。この一体型のメカニカルスプライスを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の光学接続構造を作製した。
【0043】
<比較例1>
比較例1では、市販のメカニカルスプライスをそのまま用いた。すなわち、市販のメカニカルスプライス(単心メカニカルスプライス「H」 型式:HOT−HMS−1−125)を用意した。そして、メカニカルスプライスのV溝基板と押さえ基板の間に接続工具(日立電線社製 単心メカニカルスプライス接続工具「H」(組))を用いてくさびを挿入し、メカニカルスプライスの両端からそれぞれ光ファイバF2の鏡面カットした端面を挿入し、内部に備えられている屈折率整合オイルに当接させた。次に、くさびを抜いて光ファイバを固定した。以上により、比較例1の光学接続構造を作製した。
【0044】
<比較例2>
比較例2では、光接続チップを用いず粘着性接続部材シートを用いた。
すなわち、予め粘着性接続部材シート(粘着力は30gf/25mm、屈折率は1.46、硬度は25、膜厚は20μm)を用意した。そして、2本の光ファイバF2のうちの1本について、FCコネクタのない端面を当該粘着性接続部材シートに当接させ、押し破ることによって端部に粘着性接続部材層を設けた。以上のように、光接続チップやスリットを用いず、該粘着性接続部材層を設けた光ファイバを用いた。それ以外は実施例1と同様にして、比較例2の光学接続構造を作製した。なお、後の実験のために実施例および比較例の光学接続構造は5つずつ作製した。実施例および比較例の主な条件を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
<接続に要する時間>
まず、実施例および比較例の光学接続構造について、メカニカルスプライスが組み立てられた状態から接続に要する時間を測定した。具体的には、実施例1、実施例2および比較例1については、メカニカルスプライスにくさびを挿入し、メカニカルスプライスに光ファイバF2を挿入し、くさびを抜いて光ファイバを固定するのに要した時間を測定した。
【0047】
比較例2については、光ファイバF2端部に粘着性接続部材層を設け、メカニカルスプライスにくさびを挿入し、メカニカルスプライスに光ファイバF2を挿入し、くさびを抜いて光ファイバを固定するのに要した時間を測定した。なお、接続に要する時間は300秒以上だと実用上問題がある。
【0048】
<接続損失>
次に、実施例および比較例の光学接続構造について接続損失の評価を行った。
[基準実験]
まず、接続箇所がない状態で接続損失0の標準状態を示すために基準実験を行った。図6は、基準実験の回路図である。符号100は光パワーメータ(ADVANTEST社製、商品名:OPTICAL MULTI POWER METER 「Q8221」)、CはFCコネクタ、F1は両端にFCコネクタを有する石英系シングルモードの光ファイバ(住友電工社製、FCコネクタ付光ファイバ250μm心線、長さ1mである。なお、光パワーメータ100は、センサーユニットとして「Q82208」、1.55μmLDユニットとして「Q81212」を用いた。
【0049】
光ファイバF1の両端のFCコネクタを、それぞれ光パワーメータ100の入射用端子および出射用端子に接続した。この回路を5つ作製し、波長1550nmの光を入射用端子から入射させ、出射用端子から出射された光パワーを測定した。そして、5つの回路の平均値を基準値とした。
【0050】
[実施例および比較例の評価]
次に実施例および比較例の光学接続構造について接続損失を評価した。図7は、実施例および比較例の回路図である。符号F2は、一端にFCコネクタを有する石英系シングルモードの光ファイバである。
【0051】
まず、実施例1の光学接続構造について、2つのFCコネクタをそれぞれ光パワーメータ100の入射用端子および出射用端子に接続した。この回路を5つ作製し、波長1550nmの光を入射用端子から入射させ、出射用端子から出射された光パワーを測定し、5つの回路の平均値と基準値との差異を実施例1の接続損失とした。その後、接続工具を用いてくさびを挿入し、光ファイバF2をメカニカルスプライスから抜き出し、そのまま光ファイバF2をメカニカルスプライスに挿入し、くさびを抜いて光ファイバを再接続させた。この回路も5つ作製し、波長1550nmの光を入射用端子から入射させ、出射用端子から出射された光パワーを測定し、5つの回路の平均値と基準値との差異を実施例1の再接続損失とした。そして、実施例2、比較例1および比較例2の光学接続構造についても同様に評価した。なお、接続損失は、0.25dB以上だと実用上問題があり、0.15dB未満だと特に優れている。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
[評価結果]
表2から明らかなように、実施例1および実施例2の光学接続構造は接続に要する時間、接続損失、再接続損失のいずれも実用上問題なく、接続損失は特に優れている。これに対し、比較例1の光学接続構造は、接続に要する時間は実用上問題ないが、接続損失、再接続損失は実用上問題がある。また、比較例2の光学接続構造は、接続損失、再接続損失は実用上問題ないが、接続に要する時間は実用上問題がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】メカニカルスプライス構造を示す斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の光学接続構造を示す斜視図であり、(b)は、その断面図である。
【図3】光接続チップの製造方法の一例を示す模式図である。
【図4】光接続チップの製造方法の他の例を示す模式図である。
【図5】実施形態2の光学接続構造を示す分解斜視図である。
【図6】基準実験の回路図である。
【図7】実施例および比較例の回路図である。
【符号の説明】
【0055】
1、1’…メカニカルスプライス、11…押さえ基板、11’…凸部を有する押さえ基板、12…V溝基板、12’…凹部を有するV溝基板、13…溝、14…クランプスプリング、15…スリット部、15’…凹部、21…光伝送媒体、22…被覆部、
23…光接続チップ、23’…凸部、24…筒状部材、3…粘着性接続部材、
100…光パワーメータ、C…FCコネクタ、
F1…両端にFCコネクタを有する光ファイバ、
F2…一端にFCコネクタを有する光ファイバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送媒体がメカニカルスプライスの両端からそれぞれ挿入され光学的に接続されている光学接続構造であって、
上記メカニカルスプライスは、スリット部を有し、
上記スリット部には、粘着性接続部材が固着された光接続チップが挿入されており、
上記光伝送媒体は、上記粘着性接続部材に当接していることを特徴とする光学接続構造。
【請求項2】
光伝送媒体がメカニカルスプライスの両端からそれぞれ挿入され光学的に接続されている光学接続構造であって、
上記メカニカルスプライスは2つの基板を有し、
上記基板の一方に粘着性接続部材が固着された凸部を有し、
上記基板の他方に上記凸部に対応した凹部を有し、
上記光伝送媒体は、上記粘着性接続部材に当接していることを特徴とする光学接続構造。
【請求項3】
上記2つの基板は、凸部を有する押さえ基板と、凹部を有するV溝基板であることを特徴とする請求項2に記載の光学接続構造。
【請求項4】
光伝送媒体をメカニカルスプライスの両端からそれぞれ挿入して光学的に接続する光学接続方法であって、
上記メカニカルスプライスは、スリット部を有し、
上記スリット部に、粘着性接続部材が固着された光接続チップを挿入して、
上記光伝送媒体を上記メカニカルスプライスの両端から挿入して上記粘着性接続部材に当接させることを特徴とする光学接続方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−265243(P2009−265243A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112578(P2008−112578)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】