説明

光学材料、光学素子、光学装置、及び光学素子の表示方法

【課題】単一画素で多色表示が可能な、光学材料、光学素子、光学装置、及び光学素子の表示方法を提供すること。
【解決手段】例えば、光学素子は、スペーサー22により所定の間隙をもって対向配置された一対の透明基板10及び背面基板12を備え、当該透明基板10及び背面基板12の間隙内に、一対の透明電極14及び背面電極16と、光学材料として周期構造体18、移動流体20A及び保持流体20Bを配置させている。この光学材料の周期構造体の空隙構造の内部に、移動流体20Aが吸液されることで(入り込み)当該周期構造体の構造色を変化させる。これにより、多色表示が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料、光学素子、光学装置、及び光学素子の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サブマイクロスケールの周期構造体(規則構造体)を利用した『構造色』による発色機構を用いた表示・調色システムが提案されている。現在までにシリカやポリマーの単分散粒子を用いたコロイド結晶、ブロック共重合体のミクロドメイン構造、界面活性剤のラメラ構造等による周期構造体を利用した構造色の発色が報告されている。
【0003】
特に、コロイド結晶による周期構造体は多くの報告がなされており、粒子同士の斥力を利用した非最密充填型、及び粒子を密にパッキングした最密充填型の2種に分類することができる。
【0004】
例えば、コロイド結晶を刺激応答性ゲルの中に固定化し刺激の付与にともなうゲルの膨潤度変化により構造色を変化させることが提案されている(例えば、非特許文献1)。また、コロイド結晶を固定するマトリックスの酸化還元を利用した調色(例えば、非特許文献2)、溶媒添加による膨潤・屈折率変化による調色(例えば、非特許文献3)も提案されている。また、積層膜に電界を作用させることで接触−剥離による構造色の消色−発色システムを用いたディスプレイが提案されている(例えば、非特許文献4)が提案さている。
【非特許文献1】K. Lee, S. A. Asher, J. Am. Chem. Soc., 122, 9534 (2000).
【非特許文献2】T. Iyoda, et al., Polymer Preprints, Japan, 50 (3), 472 (2001).
【非特許文献3】H. Fudouziand U. Xia, Adv. Mater., 15, 892-896 (2003).
【非特許文献4】QUALCOMM社(米国)資料(http://www.qualcomm.com/qmt/technology/index.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、単一画素で多色表示が可能な、光学材料、光学素子、光学装置、及び光学素子の表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
内部に外部と通じる空隙構造を有する周期構造体と、
前記周期構造体の前記空隙構造に吸収又は排出される第1流体と、
を有する光学材料である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記第1流体は、水性の液体である請求項1に記載の光学材料である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記第1流体は、油性の液体である請求項1に記載の光学材料である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
前記第1流体とは非相溶で且つ屈折率が異なる第2流体をさらに有する請求項1に記載の光学材料である。
【0010】
請求項5に係る発明は、
前記周期構造体の素材が有色である請求項1に記載の光学材料である。
【0011】
請求項6に係る発明は、
前記周期構造体の素材が無色である請求項1に記載の光学材料である。
【0012】
請求項7に係る発明は、
一対の基板と、前記一対の基板間に配置される光学材料と、前記第1流体を前記周期構造体の前記空隙構造に吸収又は排出させる吸収・排出手段と、を備え、
前記光学材料は、内部に外部と通じる空隙構造を有する周期構造体と前記周期構造体の前記空隙構造に吸収又は排出される第1流体とを含む光学素子である。
【0013】
請求項8に係る発明は、
前記第1流体は、水性の液体である請求項7に記載の光学素子である。
【0014】
請求項9に係る発明は、
前記第1流体は、油性の液体である請求項7に記載の光学素子である。
【0015】
請求項10に係る発明は、
前記光学材料は、前記第1流体とは非相溶で且つ屈折率が異なる第2流体をさらに有する請求項7に記載の光学素子である。
【0016】
請求項11に係る発明は、
前記周期構造体の素材が有色である請求項7に記載の光学素子である。
【0017】
請求項12に係る発明は、
前記周期構造体の素材が無色である請求項7に記載の光学素子である。
【0018】
請求項13に係る発明は、
前記吸収・排出手段は、前記周期構造体に対する前記第1液体の表面張力を変化させる手段である請求項7に記載の光学素子である。
【0019】
請求項14に係る発明は、
前記吸収・排出手段は、前記周期構造体へ電圧を印加する一対の電極である請求項7に記載の光学素子である。
【0020】
請求項15に係る発明は、
前記一対の基板のうち一方が有色である、又は有色体を有する、請求項7に記載の光学素子である。
【0021】
請求項16に係る発明は、
光学素子が備えられ、
光学素子が一対の基板と、前記一対の基板間に配置される光学材料と、前記第1流体を前記周期構造体の前記空隙構造に吸収又は排出させる吸収・排出手段と、を備え、前記光学材料が内部に外部と通じる空隙構造を有する周期構造体と前記周期構造体の前記空隙構造に吸収又は排出される第1流体とを含む光学装置である。
【0022】
請求項17に係る発明は、
前記第1流体は、水性の液体である請求項16に記載の光学装置である。
【0023】
請求項18に係る発明は、
前記第1流体は、油性の液体である請求項16に記載の光学装置である。
【0024】
請求項19に係る発明は、
前記光学材料は、前記第1流体とは非相溶で且つ屈折率が異なる第2流体をさらに有する請求項16に記載の光学装置である。
【0025】
請求項20に係る発明は、
前記周期構造体の素材が有色である請求項16に記載の光学装置である。
【0026】
請求項21に係る発明は、
前記周期構造体の素材が無色である請求項16に記載の光学装置である。
【0027】
請求項22に係る発明は、
前記吸収・排出手段は、前記周期構造体に対する前記第1液体の表面張力を変化させる手段である請求項16に記載の光学装置である。
【0028】
請求項23に係る発明は、
前記吸収・排出手段は、前記周期構造体へ電圧を印加する一対の電極である請求項16に記載の光学装置である。
【0029】
請求項24に係る発明は、
前記一対の基板のうち一方が有色である、又は有色体を有する、請求項16に記載の光学装置である。
【0030】
請求項25に係る発明は、
内部に外部と通じる空隙構造を有する周期構造体の当該空隙構造の内部に、第1流体を吸収させる流体吸収工程と、
前記周期構造体の前記空隙構造の外部に、第1流体を排出させる流体排出工程と、
を有する光学素子の表示方法である。
【0031】
請求項26に係る発明は、
前記流体吸収工程及び前記流体排出工程は、前記周期構造体に対する前記第1液体の表面張力を変化させて、第1流体の吸収・排出を行う工程である請求項25に記載の光学素子の表示方法である。
【0032】
請求項27に係る発明は、
前記第1流体は、水性の液体である請求項25に記載の光学素子の表示方法である。
【0033】
請求項28に係る発明は、
前記第1流体は、油性の液体である請求項25に記載の光学素子の表示方法である。
【発明の効果】
【0034】
請求項1に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、単一画素で多色表示が可能となる、といった効果を奏する。
【0035】
請求項2に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、応答速度が速く、大きな色変化を生じさせることができる、といった効果を奏する。
【0036】
請求項3に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、大きな色変化を生じさせることができる、といった効果を奏する。
【0037】
請求項4に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、安定した多色表示が可能となる、といった効果を奏する。
【0038】
請求項5に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、より多くの色を表示可能となる、といった効果を奏する。
【0039】
請求項6に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、より多くの色を表示可能となる、といった効果を奏する。
【0040】
請求項7に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、単一画素で多色表示が可能となる、といった効果を奏する。
【0041】
請求項8に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、応答速度が速く、大きな色変化を生じさせることができる、といった効果を奏する。
【0042】
請求項9に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、大きな色変化を生じさせることができる、といった効果を奏する。
【0043】
請求項10に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、安定した多色表示が可能となる、といった効果を奏する。
【0044】
請求項11に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、より多くの色を表示可能となる、といった効果を奏する。
【0045】
請求項12に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、より多くの色を表示可能となる、といった効果を奏する。
【0046】
請求項13に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、安定して第1流体を周期構造体の内部に吸収・排出することが可能となる、といった効果を奏する。
【0047】
請求項14に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、簡易且つ低コスト化可能、といった効果を奏することができる。
【0048】
請求項15に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、より多くの色を表示可能となる、といった効果を奏する。
【0049】
請求項16に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、単一画素で多色表示が可能となる、といった効果を奏する。
【0050】
請求項17に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、応答速度が速く、大きな色変化を生じさせることができる、といった効果を奏する。
【0051】
請求項18に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、大きな色変化を生じさせることができる、といった効果を奏する。
【0052】
請求項19に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、安定した多色表示が可能となる、といった効果を奏する。
【0053】
請求項20に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、より多くの色を表示可能となる、といった効果を奏する。
【0054】
請求項21に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、より多くの色を表示可能となる、といった効果を奏する。
【0055】
請求項22に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、安定して第1流体を周期構造体の内部に吸収・排出することが可能となる、といった効果を奏する。
【0056】
請求項23に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、簡易且つ低コスト化可能、といった効果を奏することができる。
【0057】
請求項24に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、より多くの色を表示可能となる、といった効果を奏する。
【0058】
請求項25に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、単一画素で多色表示が可能となる、といった効果を奏する。
【0059】
請求項26に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、安定して第1流体を周期構造体の内部に吸収・排出することが可能となる、といった効果を奏する。
【0060】
請求項27に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、応答速度が速く、大きな色変化を生じさせることができる、といった効果を奏する。
【0061】
請求項28に係る発明は、本構成を有していない場合に比較して、大きな色変化を生じさせることができる、といった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0063】
図1は、実施形態に係る光学素子を示す概略構成図である。本実施形態に係る光学素子は、図1に示すように、スペーサー22により所定の間隙をもって対向配置された一対の透明基板10及び背面基板12を備え、当該透明基板10及び背面基板12の間隙内に、光学材料として周期構造体18、移動流体20A(第1流体)、保持流体20B(第2流体)とが配置されている。なお、基板間とは、各基板の対向面で挟まれる空間を意味する。
【0064】
透明基板10には、背面基板12との対向面に透明電極14が設けられている。一方、背面基板12には、透明基板10との対向面に背面電極16が設けられている。そして、周期構造体18は、層状に背面電極16に接して配設されている。
【0065】
一方、移動流体20A及び保持流体20Bは、周期構造体18と接触するように、基板の間隙に封入されている。移動流体20A及び保持流体20Bは、互いに非相溶で且つ異なる屈折率の流体で構成され、相分離して基板間に存在している。なお、各屈折率はアッベ屈折率計で求めることができる。
【0066】
まず、周期構造体18について説明する。光の波長程度の大きさで屈折率の異なる2つ以上の領域がサブマイクロスケール程度で周期的に並べられた周期構造を持つものであり、ある条件下において、当該周期構造によって可視光が干渉され、周期構造色特有の構造色を呈するものが利用できる。無論、周期構造体18はその構造体に由来する構造色が無色、即ち構造色が可視領域に存在せず、周期構造体18単独では素材の色を呈しており、後述する移動流体20Aによって平均屈折率が変化し、構造色が可視領域に達し所定の構造色を呈するようにしてもよい。なお、光学素子用に最適化された周期構造体18は、フォトニック結晶構造体とも呼ばれている。
【0067】
周期構造体18の素材の色は、有色であってもよし、無色であってもよい。周期構造体18の構造色が無色、又は移動流体20Aによって平均屈折率が変化し、構造色が無色である(即ち可視領域外れた)場合には、周期構造体18の素材の色を表示する。例えば、周期構造体18の素材色が黒色(有色)であると、構造色が可視領域外れたときには光学素子が黒色を表示する。また、周期構造体18の素材色が透明(無色)であると、構造色が可視領域外れたときには光学素子が光を透過させる。
【0068】
周期構造体18は、移動流体20Aが入り込めるように、その内部に外部と通じる空隙構造を有する必要があり、空隙構造としては例えば多孔質構造体が挙げられる。
【0069】
周期構造体18として具体的には、コロイド結晶構造体、ミクロドメイン構造体、ラメラ構造体などのポジ型構造体、これらポジ型構造体を鋳型として用いたネガ型構造体が挙げられる。ポジ型構造体の場合、単位構造体(例えば粒子等)間の間隙により空隙構造(多孔質構造)を持たせる。一方、ネガ型構造体は、ポジ型構造体の単位構造体(例えば粒子等)間の間隙に被鋳型物質を充填し当該構造体を除去することで、空隙構造(多孔質構造)を持たせる。これらの構造体の間隙に移動流体20Aが吸収したり、排出されたりすることで、その構造体に由来する構造色を変化させる。
【0070】
周期構造体18は、絶縁性物質であることがよい。周期構造体18が電極を兼ねる場合は、導電性物質であることがよいが、その表面(空隙構造内部の表面も含む)が絶縁性物質層(後述する撥水層)によって被覆されている。
【0071】
なお、「絶縁性」とは、対象物質の電気の通しにくさ意味し、固有抵抗値で10−3〜10−9(単位Ωcm)以上のものを一般に絶縁性物質と呼ぶ。以下、同様である。
抵抗値は、抵抗試験(条件2端子法)で測定され、固有抵抗測定装置(R441B、(株)アドバンテスト製)を用いて抵抗値を測定されるものである。
【0072】
また、「導電性」とは、対象物質の電気の通しやすさを意味し、固有抵抗値で、10−3〜10−9([Ωcm]以下のものを一般に導電性物質と呼ぶ。以下、同様である。
導電率は、上記した測定法により抵抗値を求め、その価の逆数[S・m-1]で表されることもある。
【0073】
周期構造体18は、図3に示すように、撥水層18A(親油性層)が表面(空隙構造内部表面も含む)に被覆されている。撥水層18Aは、絶縁層としても機能する。撥水層18Aに適用され得る撥水材料(親油性材料)としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコンゴム、パーフルオロアルキルアクリレート、ハイドロカーボンアクリレート、メチルシロキサン等が挙げられる。
【0074】
ここで、撥水性(新油性)とは、水への濡れ難さを意味し、厳密な定義はないが、一般に水滴の接触角が30〜70°以上の場合の物質を指すことが多い。以下、同様である。
接触角は、接触角測定装置(FTA200、日本分光(株)製)を用い、試験片に1〜2μlの蒸留水を滴下し、液滴と試験片との接触角を測定するものである。θ/2法、接線法、カーブフィット法などの解析法がよく用いられる。
【0075】
ここで、空隙構造を構成する孔の長径は、10nm以上1000nm以下の範囲内であることが望ましい。空隙構造を構成する孔の長径が、10nm未満又は1000nmより高くなると、周期構造体18による反射光の波長が可視光範囲から大きく外れるため、移動性粒子の作用によって得られる色変化に制限が生じることがある。また、空隙構造を構成する孔間あるいは外部との間には通路(穴)が存在する必要があり、その通路(穴)の径はその長径で1nm以上1000nm以下であることが望ましい。この通路(穴)が1nm以下であると粒子の移動を抑制してしまい、また1000nmよりも大きいと多孔質構造体の強度が低下する恐れが生じることがある。
【0076】
ここで、空隙構造を構成する孔、空隙構造を構成する孔間あるいは外部との間に存在する通路(穴)の大きさは、走査電子顕微鏡(SEM、VE−9800、キーエンス)で測定した。
【0077】
コロイド結晶構造体は、コロイド粒子同士の斥力を利用して充填した非最密充填型構造体、コロイド粒子を密に充填した最密充填型構造体である。コロイド粒子としては、例えば体積平均粒子径10nm〜1000nmの粒子で、シリカ粒子、ポリマー粒子(ポリスチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど)、その他、酸化チタンなどの無機物粒子)がある。
【0078】
コロイド粒子は、例えば、乳化重合、懸濁重合、二段階鋳型重合、化学的気相反応法、電気炉加熱法、熱プラズマ法、レーザ加熱法、ガス中蒸発法、共沈法、均一沈殿法、化合物沈殿法、金属アルコキシド法、水熱合成法、ゾルゲル法、噴霧法、冷凍凍結法、硝酸塩分解法で作製することができる。また、コロイド結晶構造体は、コロイド粒子分散液を用いて基板上にコロイド粒子を重力沈降法や塗布乾燥法によって自己組織的に堆積させる方法、あるいは電場や磁場の作用によって基板上に堆積させる方法、さらにはコロイド粒子の分散液に基板を浸漬、引き上げて、基板上に形成させる方法によって作製することができる。
【0079】
コロイド結晶構造体は厚さが100nm〜5mm、望ましくは500nm〜1mmであることがよい。
【0080】
また、ミクロドメイン構造体は、例えば、異種高分子を化学結合で繋げたブロック共重合体を利用し、当該異種高分子間の反発により、数ナノメートル〜サブマイクロメートルの周期構造を持つものである。ブロック共重合体としては、例えば、ポリ(スチレン−co−イソプレン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)ブロック共重合体ポリ(スチレン−co−ビニルピリジン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン−co−エチレンプロピレン)ブロック共重合体などがあり、繰り返し単位が複数になってもかまわない。
【0081】
ミクロドメイン構造体は、例えば流動温度以上に上昇させたのちに冷却して固化させたり、溶媒に溶解させた後に溶媒を蒸散させて固化させることで作製することができる。
【0082】
ミクロドメイン構造体は、それぞれのドメインの屈折率差が0.1〜10であって、ドメインの特長距離が10nm〜1000nmであることがよい。
【0083】
また、ラメラ構造体は、液晶構造の一つであり、分子膜が層状にスタックし、分子膜間相互の斥力により安定化されているものである。分子膜を構成する材料としては、界面活性剤等がある。
【0084】
ラメラ構造体は、例えば、界面活性剤を用いた多層二分子膜によるラメラ層間を反応場としてアルコキシシランのゾル−ゲル合成より作製することができる。さらにこの手法は界面活性剤が形成するヘキサゴナル相、逆ヘキサゴナル相を反応場に用いても周期構造体を得ることができる。
【0085】
ラメラ構造体は、それぞれの層の屈折率差が0.1〜10であって、層間距離が10nm〜1000nmであることがよい。
【0086】
また、蒸着法、スパッタ法、塗布法、引き上げ法など薄膜作製法により異なる屈折率を有する素材を積層することでも周期構造体を得ることができる。
【0087】
また、周期構造体18としてネガ型構造体を作製するための被鋳型物質としては、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリスチレン及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、セルロース誘導体、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアセタール系樹脂などが挙げられる。また、導電性の周期構造体18を得るための導電性物質としては、炭素材料、金属(銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、プラチナなど等)、金属酸化物(酸化スズ、酸化スズ−酸化インジウム(ITO)等)、導電性高分子(ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類等)、などが挙げられる。これらの中でも、炭素材料はその素材の色が本来黒色であるため、望ましい。
【0088】
また、周期構造体18としてのネガ型構造体(中空構造体)を構成する被鋳型物質(導電性物質を含む)として高分子を適用すること、光学素子にフレキシブル性(可とう性、屈曲性)を付与できる。
【0089】
周期構造体18のうちポジ型構造体に導電性を付与する場合には、上記コロイド結晶構造体、ミクロドメイン構造体、ラメラ構造体などの表面に、例えば、めっき、電解重合などにより導電性物質を被覆して作製することができる。なお、導電性物質前駆体を被覆した後、焼成などの処理を施し、導電性物質としてもよい。
【0090】
一方、周期構造体18のうちネガ型構造体(中空構造体)は、上記コロイド結晶構造体、ミクロドメイン構造体、ラメラ構造体などの間隙に、例えば、めっき、電解重合などにより被鋳型物質(導電性物質を含む)を充填し、その後、当該構造体を除去することで作製することができる。なお、被鋳型物質(導電性物質を含む)前駆体を被覆・充填した後、焼成などの処理を施し、被鋳型物質(導電性物質を含む)としてもよい。
【0091】
具体的には、例えば、図2に示すように、例えばシリカ粒子のコロイド結晶構造体30を作製し(図2(A))、その後、コロイド結晶構造体30の表面及び間隙(粒子間隙)に、被鋳型物質(例えばフルフリルアルコール樹脂などの導電性物資前駆体も含む)を被覆・充填し、焼成することで、結果、被鋳型物質32として難黒鉛化炭素を充填する(図2(B))。そして、コロイド結晶構造体30を、フッ酸などによりエッチングして除去すると、コロイド結晶構造体30と同じ形状の空隙34が形成される(図2(C))。その後、図示しないが、撥水材料(親油性材料)を表面(空隙構造内部表面も含む)に被覆して、撥水層を形成する。このようにして、撥水層で被覆された被鋳型物質32で構成されたネガ型の周期構造体18を作製することができる。
【0092】
また、周期構造体18の細分は、例えば、一辺10μm〜5mm角四方の1画素ごとで行うことができる。また、周期構造体18の厚さは500nm〜5mmとすることがよい。
【0093】
次に、移動流体20Aについて説明する。移動流体20Aは、周期構造体18の空隙構造に入り込むことで平均屈折率を変化させ、構造色を変化させるものである。
【0094】
移動流体20Aは、水性の液体、又は油性の液体が挙げられる。いずれも、導電性の液体が適用されることがよい。
【0095】
水性の液体は、屈折率調整物質(例えば、電解質などの塩)を溶解し易く、屈折率を大きさせ、構造色を大きく変化させる。水性の液体は、油性の液体に比べ粘度が低く、周期構造体18の空隙構造内部への吸収・排出の際の粘度抵抗が低くなるので、応答速度が向上する。一方、油性の液体は、それ自体が屈折率が大きいものが多く、構造色を大きく変化させる。
【0096】
移動流体20Aとして適用し得る水性の液体としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、尿素等が挙げられる。また、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシドやこれら高分子を含む共重合体を用いることも好ましい。これらのうち、特にメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルなどアルコール類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、水溶性のイオン液体などが挙げられる。
【0097】
移動流体20Aとして適用し得る油性の液体としては、脂肪族類、芳香族類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アルコール類、シリコーン類、などが使用可能である。具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、高級エステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、イオン液体などや、それらの混合物が挙げられる。
【0098】
次に、保持流体20Bについて説明する。保持流体20Bは、移動流体20Aとは非相溶で且つ屈折率の異なる流体が用いられる。即ち、例えば、移動流体20Aとして水性の液体を適用する場合、油性の液体を適用し、移動流体20Aとして油性の液体を適用する場合、水性の液体を適用することがよい。また、保持流体20Bは、周期構造体の空隙構造内部に吸収されることで、周期構造体の平均屈折率を変化させることができる場合、移動流体としての機能も担う。
ここで、非相溶とは、複数の物質系が混じりあわずにそれぞれ独立した相で存在する状態を示す。
【0099】
保持流体20Bとして適用し得る水性の液体としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、尿素等が挙げられる。また、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシドやこれら高分子を含む共重合体を用いることも好ましい。これらのうち、特にメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルなどアルコール類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、水溶性のイオン液体などが挙げられる。
【0100】
保持流体20Bとして適用し得る油性の液体としては、脂肪族類、芳香族類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アルコール類、シリコーン類、などが使用可能である。具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、高級エステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、イオン液体などや、それらの混合物が挙げられる。
【0101】
また、保持流体20Bとしては、液体に限られず、空気、希ガスなどの気体を適用してもよい。
【0102】
ここで、移動流体20Aと保持流体20Bとの体積比(移動流体20A/保持流体20B)は0.01〜100であることが望ましく、0.05〜50であることがより望ましく。0.1〜10であることがさらに望ましい。
【0103】
なお、「水性」とは、水へのなじみやすさ(親水性)を意味し、分配係数(LogPow)で1〜5以下のことを意味する。また、「油性」とは水へのなじみにくさ(疎水性)を意味し、分配係数で1〜5以上のことをする。以下、同様である。
ここでいう分配係数とはn−オクタノール中の対象物質の濃度÷水中の対象物質の濃度を求め、これを常用対数(LogPow)で示したものであり、測定方法については、OECD Test Guideline 107または日本工業規格Z7260−107(2000)などに示されている。以下にその測定法の一例を示す。n−オクタノールと水の比率および被検物質の添加量は1)分配係数の予備試験で得られた分配係数の推定値、2)分析方法の感度から、水層及び1−オクタノール層の分析における必要な被験物質の量、3)水層及び1−オクタノール層中の被験物質の濃度は、0.01mol/l以下であり、かつ、それぞれの層の溶解度以下であること、4)平衡容器中に占める溶媒の全体積の割合は、ほぼ一杯(90%以上)であること、の4つのパラメーターを考慮し決定する。混合した被検混合物質を25±2℃に保ち5分間振とう機にて振とうし、遠心分離操作を行い水層とn−オクタノールを分離させる。それぞれの層のサンプルを注射器などで取り出し、被検物質に適した分析法にてそれぞれの層の濃度を測定する。上記の測定法の他、高速液体クロマトグラフィーやコンピューターによる計算などでも算出が可能である。
【0104】
次に透明電極14及び背面電極16について説明する。流体吸収・排出手段としての透明電極14及び背面電極16の構成材料としては、炭素材料、金属(銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、プラチナなど等)、金属酸化物(酸化スズ、酸化スズ−酸化インジウム(ITO)等)、導電性高分子(ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類等)、導電性高分子と前述の金属や金属酸化物の粒子との複合材料を含んで構成された電極などが好適に用いられる。
【0105】
なお、流体吸収・排出手段としては、電極に限られず、導電性材料で構成されていればよく、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、銀、カドニウム、インジウムなどの金属、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリメチルチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレンなどの導電性高分子、高分子マトリックスに金属粒子あるいは炭素粒子などを混練して導電性を持たせた樹脂、炭素材料などが挙げられる。
【0106】
但し、透明電極14は光透過性を有する一方で、背面電極16は光透過性を有してもよいし有色体でもよい。
【0107】
次に透明基板10及び背面基板12について説明する。透明基板10及び背面基板12の構成材料としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のフイルムや板状基板、ガラス基板、金属、金属フイルム、セラミックス等が使用可能である。また、透明基板10及び背面基板12として屈曲性のあるフイルム基板を用いるともできる。
【0108】
また、背面基板12は、有色であってもよし、有色体を有していてもよい(例えば、着色フィルムを基板面に貼り付ける)。例えば、周期構造体18の素材の色が透明(無色)であると、構造色が可視領域外れたときには周期構造体18が光を透過させるため、背面基板12の色又は有色体の色が表示される。これにより、例えば、背面基板12を黒色、又は有色体を黒色とすると、周期構造体18の構造色の変化では表現しにくい、黒色が表示される。なお、本実施形態の場合、有色体は背面電極16が兼ねることもできる。
【0109】
但し、透明基板10は光透過性を有する一方で、背面基板12は光透過性を有してもよいし有色体でもよい。
【0110】
ここで、「透明」とは、外部から進入してきた光の多くを散乱させずに透過させる性質を意味し、光の透過率が5〜90以上でヘイズが2〜50%以下あることを意味する。
この透過度は、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業(株)製)を用い、測定対象物に対する透過光と、入射光方向以外に散乱した光を測定することにより求めるものである。
【0111】
スペーサー22としては、例えば、樹脂、金属酸化物、ガラスなどで構成することができる。また、スペーサー22は、特に制限はないが、基板間の間隙が、周期構造体18、移動流体20A、及び保持流体20Bの配置領域が確保するために間隙が確保されるように配置する。
【0112】
スペーサー22の形状は間隙を維持できるものであれば特に限定されないが、例えば、球、立方体、柱状のものなどの独立した形状のものが好ましく用いられる。
【0113】
その他、本実施形態に係る光学素子には、上記した構成要素の他にも、表面保護層、カラーフィルター層、UV吸収層、反射防止層、配線、電気回路、IC、LSI、電源等の要素を備えていてもかまわない。
【0114】
なお、各構成要素は、電界を付与する電圧においても、分解しない材料や不活性な材料で構成することがよい。
【0115】
上記構成の本実施形態に係る光学素子では、次のようにして移動流体20Aが周期構造体18の内部へ吸収・排出が行われる。
【0116】
まず、移動流体20Aとして、油性の液体よりも誘電率が大きい水性の液体を適用し、保持流体20Bとして、水生の液体より誘電率が小さい油性の液体を適用した場合を説明する。なお、本例の場合、保持流体20Bとして適用する油性の液体が周期構造体18の空隙構造内部へ入り込み(吸液される)、周期構造体の平均屈折率を変えるため、移動流体20Aとしての機能も果している。
【0117】
移動流体20Aとして水性の液体を適用し、且つ保持流体20Bとして油性の液体を適用した場合、流体吸収・排出手段としての一対の透明電極14及び背面電極16に電圧を印加しない状態では、移動流体20Aにおける周期構造体18表面に対する表面張力が大きいため、保持流体20Bが吸液されて、移動流体20Aは周期構造体18内部へは入り込まない一方、保持流体20Bにおける周期構造体18表面に対する表面張力が小さいため、保持流体20Bは周期構造体18内部へ入り込んでいる((図3(A)参照))。
【0118】
このとき、周期構造体18は、保持流体20Bにより平均屈折率が変化した状態で構造色を呈している。無論、保持流体20Bとして液体よりも屈折率が小さい気体が入り込んでいるときは、周期構造体18に由来する構造色を呈することとなる。
【0119】
次に、一対の透明電極14及び背面電極16に電圧を印加すると、移動流体20Aにおける周期構造体18表面に対する表面張力が低下し、移動流体20Aが周期構造体18内部へ入り込むようになる(吸収するようになる)一方で、保持流体20Bが周期構造体18表面に対する表面張力が上昇し、周期構造体18内部から排出されようになる(図3(A)参照)へは入り込むようになる。そして、この入り込んだ移動流体20Aにより周期構造体18の平均屈折率が変化し、言い換えれば、周期構造体18内部に入り込んでいる流体の屈折率が異なるので、周期構造体18の構造色が変化する。
【0120】
無論、保持流体20Bとして屈折率の小さい気体が入り込んでいる状態から、空隙構造に流体が入り込んでいない状態から、移動流体20Aが入り込めば、周期構造体18に由来する構造色から色が変化する。
【0121】
一方、一対の透明電極14及び背面電極16への電圧印加を解除すると、移動流体20Aにおける周期構造体18表面に対する表面張力が上昇するため(元にもどるため)、移動流体20Aが周期構造体18内部から排出される一方で、保持流体20Bにおける周期構造体18表面に対する表面張力が低下するため(元にもどる)、保持流体20Bは周期構造体18内部へは入り込んでいく((図3(A)参照))。
【0122】
このように、移動流体20Aにより平均屈折率を変化させることで、周期構造体18が呈する色を変化させる。また、移動流体20Aの周期構造体18内部の存在率によっても平均屈折率変化量が異なるため、当該存在率によって調色される。この存在率の調整は、付与する印加電圧、電流量やその時間により行うことができる。
【0123】
なお、移動流体20Aの周期構造体18内部の存在率とは、周期構造体18の空隙構造の単位体積当りに、当該空隙構造に移動流体20Aが存在する割合(空隙構造単位体積当りに存在する移動流体の体積)である。
【0124】
ここで、油性の液体よりも誘電率が高い水性の液体の周期構造体18内部への吸液・排出の原理について詳細に説明する。なお、以下、電極が周期構造体に相当し、電解質(溶液)が移動流体(保持流体含む)に相当する。
【0125】
上述した吸液・排出は、エレクトロウェッティング現象あるいは電気毛管現象と呼ばれる手法を用いる。エレクトロウエッテイング現象とは、電極を電解質(溶液)に接触させる電極表面と溶液との接触面で界面が形成され、この界面には電極側での金属イオン及び自由電子と、溶液側の電解質イオンとにより、いわゆる電気二重層EDL(electrical double layer)が形成され、そして電極−電解質の境界に電界が加わると表面張力の変化を誘発する現象をいう。
【0126】
具体的には、図4(A)に示すように、外部電圧Vの印加がない場合、電荷は電極−電解質の境界に現れて、電気二重層EDLを形成する。一方、図4(B)に示すように、外部電圧が印加された場合、電気二重層EDLにおける電荷密度は変化をし、その結果、表面張力γと接触角は増減する。ここで、図4はエレクトロウェッティング現象を説明するための模式図である。
【0127】
そして、印加された電圧(V)とその結果の表面張力(γ)との関係式は、境界における熱力学解析によって導き出されることができ、その結果はリップマンの式を用いて式(1)のように表される。
γ=γ− 1/2cV ・・・(1)
ここで、γは電圧ゼロ(すなわち、固体の表面は電荷ゼロ)時の固体−液体境界における表面張力、cは単位面積当たりのキャパシタンスであり、電荷層は対称なヘルムホルツ・キャパシタをモデルとして仮定している。
【0128】
外部から電圧が電解質と固体の間に加えられると、電荷と双極子には状態変化が起き、境界での表面エネルギに変化が生じる。特に、境界に電荷があると、表面領域を拡張するのに要する仕事が電荷間の反発力で減らされるため、表面張力の低下が起きるので拡張し易くなると考えられる。
【0129】
リップマンの式(1)は、ヤング式(2)の導入によって接触角θを用いて表される。
γSL=γSG−γLGcosθ ・・・(2)
cosθ=cosθ+(1/γLG)×(1/2)cV ・・・(3)
ここで、θは境界層を横切る電界がゼロのときの接触角、γSLは固体−液体表面張力、γLGは液体−ガス表面張力、γSGは固体−ガス表面張力である。γLG及びγSGは印加電位に無関係な定数であると仮定する。また、式(3)における接触角は液体と電極との間の印加電圧の関数となっている。
【0130】
したがって図4(B)のように、液体と電極との間に電圧を印加すると、接液体が拡張する。
【0131】
一方、水性の液体よりも誘電率が低い油性の液体の場合、外部電圧Vの印加がない場合と外部電圧が印加された場合とで逆の現象が生じる。即ち、外部電圧Vの印加がない場合には、表面張力が高い状態を維持し、外部電圧Vの印加がない場合に表面張力が低下する。
【0132】
上記エレクトロウェッティング現象を利用して、表面張力を変えて、移動流体20Aを周期構造体18の空隙構造内部へ吸収・排出を行い、平均屈折率を変化させ、その呈する構造色を変化させる。なお、電極と電解質との間に絶縁性の層(例えば、周期構造体全体が絶縁性の場合)を介していても同様な現象が生じる。
【0133】
次に、周期構造体18が構造色を呈するメカニズム、及び周期構造体の空隙構造に移動流体20Aが入り込むことによる調色のメカニズムを、コロイド結晶構造体を例にして説明する。
【0134】
まず、図5に示すように、コロイド結晶構造体による可視光の干渉のメカニズムはX線回折による結晶構造解析に用いられるブラッグの法則(下記式(1))を適用することができる。
【0135】
【数1】

【0136】
式(1)中、mは定数、λは光の波長、lは格子定数、θは入射角である。ここではしかしX線回折による手法コロイド結晶構造体の干渉は波長と対象物のスケールの比率が大きく異なるためそのままは用いることはできない。つまり、コロイド結晶構造体は可視光の波長と同程度であるので屈折率の影響を考慮しなければならない。
【0137】
そこで、図6に示すように、αの角度で進入した光の波長(λair)とコロイド結晶構造体によりθの角度に屈折した光の波長(λcry)との関係は、nair、ncryをそれぞれ空気及びコロイド結晶構造体の屈折率としたとき、式(2)で表される(スネルの法則)。
【0138】
【数2】

【0139】
さらに、図7に示すように、コロイド結晶構造体はエネルギー的に最も安定な面心立方結晶の(111)面を表層にしていることから(図7中ACF面、hfda面)、コロイド粒子の粒径(体積平均粒径)をdで表すと格子定数lは式(2’)となり、式(1)、式(2)をまとめることで式(3)を得る。
【0140】
【数3】

【0141】
ここで、式(3)中、mはフラッグ定数(m=1)を示す。nはコロイド粒子の屈折率であり、コロイド結晶粒子を構成する成分の屈折率nとコロイド結晶粒子の体積分率Vからn=Σnで表される。このλmaxが可視光領域(例えば400nm〜800nm)に収まったとき構造色として認識できることになる。
【0142】
そして、外部からコロイド結晶構造体の空隙構造内部に移動流体が吸収・排出されることは、nが変化することとなる。このため、コロイド結晶構造体の構造色が変化することとなる。また、移動流体の量(存在率)によって調色されることも示される。
【0143】
このように、本実施形態に係る光学素子は、移動流体20Aにより周期構造体18が呈する構造色を変化させる。また、構造色の変化の際、光学材料の大きさの変化は伴わず、1画素(単一画素:単一画素とは、画像を構成する最小の単位要素のことを示す。)ごとに表示が行われる。また、カラーフィルターの如く第3手段を必要とすることもない。
【0144】
なお、本実施形態に係る光学素子では、流体吸収・排出手段としての透明電極14及び背面電極16を透明基板10及び背面基板12の内面(対向面)に配置した形態を説明したが、例えば、図8に示すように、透明電極14及び背面電極16を透明基板10及び背面基板12の外面(非対向面)に配置した形態であってもよい。
【0145】
また、本実施形態に係る光学素子では、流体吸収・排出手段としての背面電極16を別途設けた形態を説明したが、図9に示すように、背面電極16を周期構造体18が兼ねてもよい。
【0146】
また、本実施形態に係る光学素子では、1画素単位(単一素子)の構成について説明したが、例えば、当該1画素単位をマトリクス状又はセグメント状に配置した表示装置などの光学装置に適用される。無論、電極対をマトリクス状又はセグメント状に配置してもよい。また、表示装置などの光学装置の駆動装置及び駆動方法としては、従来公知のものを用いることができる。
【0147】
また、本実施形態に係る光学素子に適用した光学材料は、光学素子のみならず、例えば、光スイッチング素子、光導波路、光記録、レーザー発振器、光コンピュータ等に適用される。
【実施例】
【0148】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0149】
(実施例1)
体積平均粒径300nmの単分散シリカ粒子(商品名:シーホスターKE−W30、(株)日本触媒)のエタノール懸濁液にシリコン基板を浸漬しディップコート法を用いて基板上に最密充填型コロイド結晶を作製した。なお、ここでは基板の引き上げ速度を0.8μm/sとし、コロイド結晶を厚さ10μmで作製した。得られた最密充填型コロイド結晶は構造色(青)を呈しており、走査電子顕微鏡(SEM)により表層を(1,1,1)面とした面心立方格子を形成していることが確認できた。
【0150】
次に、このコロイド結晶構造体を鋳型として、当該構造体の粒子間隙にフルフリルアルコール樹脂を充填した後、温度1000℃で焼成し、フッ酸によりシリカコロイド結晶構造体をエッチングして、厚さ5μmの炭素構造体(周期構造体:ネガ型構造体)を得た。得られた炭素構造体は構造色(青)を発色していた。また、SEMにより観察したところ、シリカコロイド結晶構造体と同形状の空隙構造が形成された多孔質体で、穴が繋がっていることが観察された。この空隙構造を構成する孔大きさは長径が300nm、空隙構造を構成する孔間あるいは外部との間の通路(穴)の大きさは長径が90nmであった。
【0151】
得られた炭素構造体表面(空隙構造内部表面含む)に対しディップコート法によりフルオロアルキルシラン(製造元:Gelest社)をコートして撥水層(親油性層)を形成した。この撥水層は絶縁層としても機能する。
【0152】
次に、撥水層を形成した炭素構造体をITO電極基板に銀ペースト接着剤にて接着した。そして、この基板と対向するように、白金電極が形成された基板を配置し、当該基板間にNaCl溶液(屈折率1.34、粘度1cSt)及びシリコーンオイル(屈折率1.53、粘度10cSt)を体積比(3:1)で封入したのちに周りを封止し光学素子を作製した(図1参照)。
【0153】
この光学素子における炭素構造体は、電極を印加しない場合にはその空隙構造にシリコーンオイルが吸収されおり、周期構造体の平均屈折率が変わって、炭素構造体は赤色を呈していた。そして、光学素子における炭素構造体(周期構造体)を接着した側のITO電極を陰極(作用局)、他方を陽極(対極)として電圧を印加したところ、シリコーンオイルは炭素構造体の空隙構造から排出される一方で、NaCl溶液が当該空隙構造体に吸収された。これにより、空隙構造体内部に吸収されていた流体が変わって、炭素構造体(屈折率)の平均屈折率が低下し、炭素構造体は赤色から緑色に変色した。また、色変化の応答速度は1秒以下であった。
【0154】
なお、本実施例の構成の場合、NaCl溶液及びシリコーンオイルはいずれも屈折率が高く炭素構造体の空隙構造内部に吸収されることで、炭素構造体(屈折率)の平均屈折率を変化させる移動流体としての機能、そして他方の流体を保持する保持流体としての機能を果している。
【0155】
(実施例2)
NaCl溶液及びシリコーンオイルに代えて、移動流体としてNaCl溶液、保持流体として空気を基板間に封入した以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製した。
【0156】
得られた光学素子における炭素構造体は、電極を印加しない場合にはその空隙構造に空気が吸収されおり、周期構造体の平均屈折率が変わらず、炭素構造体は青色を呈していた。そして、光学素子における炭素構造体(周期構造体)を接着した側のITO電極を陰極(作用局)、他方を陽極(対極)として電圧を印加したところ、NaCl溶液が当該空隙構造体に吸収された。これにより、空隙構造体内部に吸収されていた流体が変わって、炭素構造体(屈折率)の平均屈折率が低下し、炭素構造体は青色から緑色に変色した。また、色変化の応答速度は1秒以下であった。
【0157】
(実施例3)
NaCl溶液及びシリコーンオイルに代えて、移動流体としてシリコーンオイル、保持流体として空気を基板間に封入した以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製した。
【0158】
得られた光学素子における炭素構造体は、電極を印加しない場合にはその空隙構造にシリコーンオイルが吸収されおり、周期構造体の平均屈折率が変わって、炭素構造体は赤色を呈していた。そして、光学素子における炭素構造体(周期構造体)を接着した側のITO電極を陰極(作用局)、他方を陽極(対極)として電圧を印加したところ、シリコーンオイルは炭素構造体の空隙構造から排出される一方で、空気が当該空隙構造体に吸収された。これにより、空隙構造体内部に吸収されていた流体が変わって、炭素構造体(屈折率)の平均屈折率が変化し、炭素構造体は青色から赤色に変色した。また、色変化の応答速度は1秒以下であった。
【0159】
(実施例4)
鋳型として体積平均粒径200nmの単分散シリカ粒子を用い、NaCl溶液及びシリコーンオイルに代えて、移動流体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI−TFSI)、保持流体としてハイドロフルオロエーテルを基板間に封入した以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製した。
【0160】
この光学素子における炭素構造体は、電極を印加しない場合にはその空隙構造にハイドロフルオロエーテルが吸収されおり、周期構造体の平均屈折率が変わって構造色が可視領域から外れ、炭素構造体は素材の色の黒色を呈していた。そして、光学素子における炭素構造体(周期構造体)を接着した側のITO電極を陰極(作用局)、他方を陽極(対極)として電圧を印加したところ、ハイドロフルオロエーテルは炭素構造体の空隙構造から排出される一方で、EMI−TFSIが当該空隙構造体に吸収された。これにより、空隙構造体内部に吸収されていた流体が変わって、炭素構造体(屈折率)の平均屈折率が変化し、炭素構造体は黒色から緑色に変色した。また、色変化の応答速度は1秒以下であった。
【0161】
なお、本実施例の構成の場合でも、ハイドロフルオロエーテル及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI−TFSI)はいずれも屈折率が高く炭素構造体の空隙構造内部に吸収されることで、炭素構造体(屈折率)の平均屈折率を変化させる移動流体としての機能、そして他方の流体を保持する保持流体としての機能を果している。
(実施例5)
体積平均粒径400nmの単分散ポリスチレン粒子(商品名:エスタポールES−K040、メルク)のエタノール懸濁液にITO基板を浸漬しディップコート法を用いて基板上に最密充填型コロイド結晶を作製した。なお、ここでは基板の引き上げ速度を0.5μm/sとし、コロイド結晶を厚さ10μmで作製した。得られた最密充填型コロイド結晶は構造色(緑)を呈しており、SEMにより表層を(1,1,1)面とした面心立方格子を形成していることが確認できた。
【0162】
このコロイド結晶構造体を鋳型として、SiO粒子懸濁水溶液(SiO粒子の体積平均粒径6nm、濃度10重量%、商品名:カタロイド、触媒化成工業(株))をディップコート法により当該構造体の粒子間隙に充填し、さらに500℃で1時間加熱することでコロイド結晶構造体を消失させると共に、厚さ5μmのシリカ構造体(周期構造体:ネガ型構造体)を得た。得られたシリカ構造体は構造色(青)を発色していた。また、SEMにより観察したところ、ポリスチレンコロイド結晶構造体と同形状の空隙構造が形成された多孔質体で、穴が繋がっていることが観察された。この空隙構造を構成する孔大きさは長径が400nm、空隙構造を構成する孔間あるいは外部との間にの通路(穴)の大きさは長径が90nmであった。
【0163】
得られたシリカ構造体表面(空隙構造内部表面含む)に対しディップコート法によりフロオロアルキルシラン(Gelest社)をコートして撥水層(親油性層)を形成した。この撥水層は絶縁層としても機能する。
【0164】
次に、撥水層を形成したシリカ構造体表面をITO電極基板に銀ペースト接着剤にて接着した。そして、この基板と対向するように、白金電極が形成された基板を配置し、当該基板間にNaCl水溶液(水性の液体:屈折率1.34粘度1cSt)及びシリコーンオイル(油性の液体:屈折率1.53、粘度:10cSt)を体積比(3:1)で封入したのちに周りを封止し光学素子を作製した(図1参照)。
【0165】
この光学素子における炭素構造体は、電極を印加しない場合にはその空隙構造にシリコーンオイル(油性の液体)が吸収されおり、周期構造体の平均屈折率が変わって、炭素構造体は素材の色(無色・透明)を呈して基板の色を表現した。そして、光学素子における炭素構造体(周期構造体)を接着した側のITO電極を陰極(作用局)、他方を陽極(対極)として電圧を印加したところ、シリコーンオイルは炭素構造体の空隙構造から排出される一方で、NaCl溶液が当該空隙構造体に吸収された。これにより、空隙構造体内部に吸収されていた流体が変わって、炭素構造体(屈折率)の平均屈折率が低下し、シリカ構造体は透明から緑色に変色した。また、色変化の応答速度は1秒以下であった。
【0166】
なお、本実施例の構成の場合でも、NaCl水溶液は屈折率が高くシリカ構造体の空隙構造内部に吸収されることで、炭素構造体(屈折率)の平均屈折率を変化させる移動流体としての機能、そして他方の流体を保持する保持流体としての機能を果している。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】実施形態に係る光学素子を示す概略構成図である。
【図2】実施形態に係る光学素子における周期構造体の製造例を説明する模式的な図である。
【図3】実施形態に係る光学素子における周期構造体の空隙構造に移動流体を吸収させる例を示す模式図であり、(A)が空隙構造に移動流体が吸収した例であり、(B)が空隙構造から移動流体が排出した例を示す。
【図4】エレクトロウェッティング現象を説明するための模式図である。
【図5】ブラッグの法則を説明するための図である。
【図6】スネルの法則を説明するための図である。
【図7】面心立法結晶の結晶構造を示す概略図である。
【図8】他の実施形態に係る光学素子を示す概略構成図である。
【図9】他の実施形態に係る光学素子を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0168】
10 透明基板
12 背面基板
14 透明電極
16 背面電極
18 周期構造体
18A 撥水層
20A 移動流体
20B 保持流体
22 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に外部と通じる空隙構造を有する周期構造体と、
前記周期構造体の前記空隙構造に吸収又は排出される第1流体と、
を有する光学材料。
【請求項2】
前記第1流体は、水性の液体である請求項1に記載の光学材料。
【請求項3】
前記第1流体は、油性の液体である請求項1に記載の光学材料。
【請求項4】
前記第1流体とは非相溶で且つ屈折率が異なる第2流体をさらに有する請求項1に記載の光学材料。
【請求項5】
前記周期構造体の素材が有色である請求項1に記載の光学材料。
【請求項6】
前記周期構造体の素材が無色である請求項1に記載の光学材料。
【請求項7】
一対の基板と、前記一対の基板間に配置される光学材料と、前記第1流体を前記周期構造体の前記空隙構造に吸収又は排出させる吸収・排出手段と、を備え、
前記光学材料は、内部に外部と通じる空隙構造を有する周期構造体と前記周期構造体の前記空隙構造に吸収又は排出される第1流体とを含む光学素子。
【請求項8】
前記第1流体は、水性の液体である請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1流体は、油性の液体である請求項7に記載の光学素子。
【請求項10】
前記光学材料は、前記第1流体とは非相溶で且つ屈折率が異なる第2流体をさらに有する請求項7に記載の光学素子。
【請求項11】
前記周期構造体の素材が有色である請求項7に記載の光学素子。
【請求項12】
前記周期構造体の素材が無色である請求項7に記載の光学素子。
【請求項13】
前記吸収・排出手段は、前記周期構造体に対する前記第1液体の表面張力を変化させる手段である請求項7に記載の光学素子。
【請求項14】
前記吸収・排出手段は、前記周期構造体へ電圧を印加する一対の電極である請求項7に記載の光学素子。
【請求項15】
前記一対の基板のうち一方が有色である、又は有色体を有する、請求項7に記載の光学素子。
【請求項16】
光学素子が備えられ、
前記光学素子は、一対の基板と、前記一対の基板間に配置される光学材料と、前記第1流体を前記周期構造体の前記空隙構造に吸収又は排出させる吸収・排出手段と、を備え、前記光学材料が内部に外部と通じる空隙構造を有する周期構造体と前記周期構造体の前記空隙構造に吸収又は排出される第1流体とを含む光学装置。
【請求項17】
前記第1流体は、水性の液体である請求項16に記載の光学装置。
【請求項18】
前記第1流体は、油性の液体である請求項16に記載の光学装置。
【請求項19】
前記光学材料は、前記第1流体とは非相溶で且つ屈折率が異なる第2流体をさらに有する請求項16に記載の光学装置。
【請求項20】
前記周期構造体の素材が有色である請求項16に記載の光学装置。
【請求項21】
前記周期構造体の素材が無色である請求項16に記載の光学装置。
【請求項22】
前記吸収・排出手段は、前記周期構造体に対する前記第1液体の表面張力を変化させる手段である請求項16に記載の光学装置。
【請求項23】
前記吸収・排出手段は、前記周期構造体へ電圧を印加する一対の電極である請求項16に記載の光学装置。
【請求項24】
前記一対の基板のうち一方が有色である、又は有色体を有する、請求項16に記載の光学装置。
【請求項25】
内部に外部と通じる空隙構造を有する周期構造体の当該空隙構造の内部に、第1流体を吸収させる流体吸収工程と、
前記周期構造体の前記空隙構造の外部に、第1流体を排出させる流体排出工程と、
を有する光学素子の表示方法。
【請求項26】
前記流体吸収工程及び前記流体排出工程は、前記周期構造体に対する前記第1液体の表面張力を変化させて、第1流体の吸収・排出を行う工程である請求項25に記載の光学素子の表示方法。
【請求項27】
前記第1流体は、水性の液体である請求項25に記載の光学素子の表示方法。
【請求項28】
前記第1流体は、油性の液体である請求項25に記載の光学素子の表示方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−46359(P2008−46359A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221888(P2006−221888)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】