説明

光学検出デバイスを作製する方法

基板(2)上に複数の金属ナノ球体を作製するオペレーションを含む光学検出デバイスを製造する方法。当該プロセスは、以下のオペレーションを含むことを特徴とする:- 金属ナノ球体を受容することができる複数のリソグラフィーナノ構造体(4a、4b、4c)を上記基板(2)上に形成すること(100)、- 各リソグラフィーナノ構造体(4a、4b、4c)においてそれぞれ金属のナノ球体が形成されるように、少なくとも一種の金属の自己凝集析出を実行すること(102)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然放出に基づいた検出システム(例えば、蛍光検出システム若しくはラマン検出システム等)の作製方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、表面プラズモンに関連付けられた放出を助力することができる複数の金属ナノ球体を有する検出デバイスを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
動作が表面プラズモンの発生に基づく装置が数多く存在する。表面プラズモンは、可視光レーザ又は近紫外線レーザを貴金属(例えば、金及び/又は銀等)の表面に照射した場合に、その表面に発生する特有の電場である。
【0004】
このような効果は、これらの金属は典型的な挙動を示さず、金属内の電子は外部のレーザ場に近い発振周波数(プラズマ周波数)を獲得するという事実に基づいている。これに加えて、それらの誘電定数はマイナスになり、それゆえ、金属(特に金属の表面)において、”スキン深さ”に近い深さまで、高い局在性を有する電磁場が進行する可能性がある。
【0005】
プラズモン場は局所的な特性であるため非常に強力であり、個々の分子を検出するためのデバイスを作製するために用いられる。
【0006】
米国特許7,397,043は、当該システムのオペレーション波長において、表面プラズモン共鳴を実現することができる金属薄膜層により被覆された誘電体ナノ球体を含む検出プラットフォームを備えるシステムを開示する。
【0007】
ナノ球体なる用語は、100nm未満の半径を有する球体を意味する。
【0008】
当該ナノ球体は、励起レベルの増加及び放出放射線の回収効率の増加に寄与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、複数のナノ球体を有する検出デバイスを作製するための新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当該目的及びその他の目的は、その特徴が請求項1に規定されている方法により達成される。
【0011】
特定の実施態様は、従属請求項の主題であり、その内容は、本明細書の結合部分及び統合部分として理解される。
【0012】
本発明の別の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明は非限定的な具体例としてのみ与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係るデバイスの上面図である。
【図2】図2は、本発明の方法に係るオペレーションのフロー図である。
【図3】図3は、図2における一のオペレーションの間に実行されたステージのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、本発明に係るデバイスが、概して1で示されている。デバイス1は、例えばシリコン等の基板2を有する。基板2上には、複数のナノ構造体4a、4b、及び4cが存在する。特に、方向Dに沿って並列された3つの球状ナノレンズが存在する。ここで、第1ナノレンズ4a及び第2ナノレンズ4bは、第1の距離d1(例えば、40nm)離間されており、一方、第2ナノレンズ4b及び第3ナノレンズ4cは、第2の距離d2(例えば、5nm、第2の距離d2は第1の距離d1未満である)離間されている。3つのナノレンズ4a、4b及び4cは、好ましくは、それぞれ、90nm、45nm、及び10nmの半径を有する。
【0015】
図2は、本発明に係る検出デバイスを得るために実行されるオペレーションのフロー図を示す。
【0016】
第1オペレーション100として、高解像度電子リソグラフィーの工程を基板2上で実行しナノレンズ4a、4b、4cを作製する。
【0017】
その後、ステップ102において、金属(好ましくは例えば銀若しくは金等の貴金属)の自己凝集(無電解)析出を行う。このようにして、当該金属の酸化−還元反応を行う。当該酸化−還元反応により、各ナノレンズ4a、4b、4c内にそれぞれ金属のナノ球体が形成される。当該自己凝集析出には、図3のフロー図に例示された複数の連続工程が含まれる。
【0018】
第1ステージ102aにおいて、リソグラフィー基板2(以後サンプルと称する)を、所定の温度において、所定の時間(特に銀のナノ球体の析出の場合には、50℃において、1分間、金のナノ球体の析出の場合には、45℃において、1分間)、所定のフッ酸水溶液(例えば0.15Mのフッ酸水溶液)に浸漬する。
【0019】
第2ステージ102bにおいて、サンプルを脱イオン水で洗浄し、フッ酸の残留物を除去する。
【0020】
第3ステージ102cにおいて、サンプルを、所定の溶液に、所定の温度において、所定の時間浸漬する(例えば、1mMのオーダーの銀の塩(例えばAgNO)の水溶液に、50℃において、30秒間浸漬し、又は、例えば金硫化物を含む、10mMのオーダーの金の塩の溶液に、45℃において、3分間浸漬する)。
【0021】
第4ステージ10dにおいて、サンプルを脱イオン水でさらに洗浄し、銀若しくは金のナノ球体の生成反応を抑制する。
【0022】
最終的に、ステップ102eにおいて、当該サンプルを窒素のフローにより乾燥させる。
【0023】
上記リソグラフ処理されたサンプルをフッ酸に浸漬すること(102a)は、基板2上に元来存在する酸化物を除去すること、並びに、酸素及びその化合物(例えばO、CO又はCO)との反応に対して不活性であり、そのため、自己凝集析出の後段の工程において利用可能な表面を残存させることを目的としている。
【0024】
基板2がシリコンである場合(当該シリコンは、酸素の存在によりその表面上においてシリコン酸化物となる)、フッ酸とシリコン酸化物との反応は以下の通りである:
SiO+6HF→2H+SiF2−+2HO (1)
【0025】
しかしながら、Si−F結合は、熱力学的にSi−H結合より優位であるけれども、Si−H結合は、Siδ+δ−結合が強い極性を有するため、上記表面において拡散する。当該結合は、基板2の表面とフッ酸との反応が開始されると直ぐに形成される。上記Siδ+δ−結合は、上記表面の下に位置する基板2の層においてSi−Si結合を弱めてしまう。以下の反応により、フッ酸による求核攻撃をより受けやすくする:
Siバルク−Si−Siδ+δ−+4HF→Siバルク−Si−H+SiF (2)
ここで、Siバルク−Si−Siδ+δ−は基板2を表す。その表面はフッ酸により攻撃され、その結果、上記表面に接合されたSiδ+δ−が形成されている。Siバルクなる用語は、基板2のうち、上記表面層下に位置する部分を表す。
【0026】
当該表面層と多量のフッ酸との反応により、生成物として、Siバルク−Si−H(水素化シリコンの層)が形成され、SiF、すなわち基板2から離脱する揮発性分子が生成される。
【0027】
水素化シリコンの表面層を有する基板を銀の塩若しくは金の塩の溶液に浸漬すること(102c)により、それぞれ、銀のナノ球体若しくは金のナノ球体が形成されることになる。
【0028】
シリコンの酸化及び銀又は金の還元をそれぞれ引き起こす2つの電気化学的反応が、ナノレンズ4a、4b及び4cの近くにおいて起こる:
Si+2HO→SiO+4H+4e (3)
Ag+e→Ag (4)
もしくは、金の場合:
Au3++3e→Au (5)
【0029】
窒素は反応しないが、溶液の中に、NOとして残留する。基板2について言えば、水素化されたシリコンの表面層は最初反応し、その後、下層のSiバルクにおけるシリコンが反応する。
【0030】
半反応式(3)〜(4)は、それらのポテンシャルの相違から起こる。半反応式(3)〜(4)は、ともに、酸化/還元反応を表している。反応式(3)及び(4)の標準的な酸化/還元ポテンシャルは:
0_反応3=−0.9V
0_反応4=0.8V
である。
【0031】
標準的な酸化/還元ポテンシャルから、ネルンストの式:
【数1】


(ここで、nは、酸化/還元反応において移動した電子の数、Fはファラデー定数、Tは反応が起こる温度である)を用いて、酸化/還元反応について、平衡定数Keを計算により求めることができる。
【0032】
銀ナノ球体が形成される反応において、温度は、好ましくは45〜50℃である。
【0033】
銀ナノ球体を形成する反応機構は、最初シリコン表面近傍においてAgイオンを介して起こり、当該Agイオンはシリコン自身の価電子帯から電子を捕捉し、Agに還元される。このようにして形成された銀の核は、高い電気陰性度を有し、シリコンから別の電子を引き寄せる傾向があり、そのため、マイナスに帯電し、他のAgイオンの還元反応を触媒する。これにより、気泡がより大きくなる。したがって、脱イオン水で洗浄することにより、及び/又は温度を下げ当該プロセスを熱力学的に不所望の状態とすることにより、反応は抑制され、他の利用可能な銀イオンが除去される。
【0034】
一組の半反応式(3)及び(5)のケースにおいて、標準的な酸化/還元ポテンシャルは:
0_反応3=−0.9V
0_反応5=1.52V
である。
【0035】
反応機構は、銀のものと同様であるが、反応速度論は、金が銀より多くの小粒子を形成するように反応する点で異なる。このため、ナノ球体形成ステージにおける反応時間を、ナノレンズ4a、4b及び4cを完全に充填するため減少させるべきである。
【0036】
金のナノ球体が形成される反応において、温度は、好ましくは40〜50℃である。
【0037】
本発明の原理を変更しない限り、添付の特許請求の範囲により規定された本発明の保護範囲を超えない範囲で、非限定的な具体例のみにより記載され例示されたものからその実施の形態及びその詳細を幅広く変更してもよいことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)上に複数の金属ナノ球体を作製するオペレーションを含む光学検出デバイスの作製方法であって、
以下のオペレーションを含むことを特徴とする方法:
- 金属ナノ球体を受容することができる複数のリソグラフィーナノ構造体(4a、4b、4c)を基板(2)上に形成すること(100)、
- 各リソグラフィーナノ構造体(4a、4b、4c)においてそれぞれ金属のナノ球体が形成されるように、少なくとも一種の金属の自己凝集析出を行うこと(102)。
【請求項2】
上記の複数のリソグラフィーナノ構造体(4a、4b、4c)を作製するオペレーション(100)が、高分解能電子リソグラフィーを行って複数のナノレンズ(4a、4b、4c)を作製するステップを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記のナノレンズ(4a、4b及び4c)を作製するオペレーションが、上記ナノレンズ(4a、4b、4c)を所望の方向(D)に配列するステップを含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
上記のナノレンズ(4a、4b、4c)を作製するオペレーションが、上記ナノレンズ(4a、4b、4c)を上記方向(D)に沿って各相互距離(d1、d2)だけ離間して配置するステップを含み、上記相互距離は減少する請求項3記載の方法。
【請求項5】
上記の自己凝集析出を行うオペレーション(102)が:
- 上記基板(2)をフッ酸溶液に浸漬するオペレーション、
- 上記基板(2)を上記少なくとも1種の金属の溶液に浸漬するオペレーション、
を含む請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
上記基板(2)を脱イオン水で洗浄するオペレーション(102b、102d)をさらに備える請求項5記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−514748(P2012−514748A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544935(P2011−544935)
【出願日】平成21年12月31日(2009.12.31)
【国際出願番号】PCT/IB2009/056004
【国際公開番号】WO2010/079410
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(511051328)カルメド・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (3)
【氏名又は名称原語表記】CALMED S.r.l.
【Fターム(参考)】