説明

光学機器用グリップ

【課題】天然皮革を3次元曲面の把持形状部を有する光学機器用グリップにおいて、天然皮革の密着性を確保でき、縁部からの剥がれ発生を防止し、めくれなどを防止できる光学機器用グリップの提供。
【解決手段】山部と谷部を有した3次元曲面の把持形状部を複数箇所形成し、光学機器に固定される光学機器用グリップ10であって、光学機器は、突合せ面3を光学機器本体の表面2aから連続形成した取付部を有し、光学機器用グリップは、グリップ本体11と、グリップ本体の表面を覆う形状の弾性部材12と、弾性部材をグリップ本体に接着する第1の接着層15と、山部と谷部とに密着するように弾性部材の表面全体を覆い、かつその縁部13aを弾性部材の縁部裏面にかけて一部覆うように第2の接着層14で接着される天然皮革部材13とを備え、天然皮革部材の外側頂点部分を、突合せ面に対向させて取付部に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器用グリップに係り、特に光学機器と一体的に設けた機種に使用される光学機器用グリップに関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器であるカメラにおいて、天然皮革部材をその外装部分に用いることで高い質感と良好な手触り感を得るとともに、カメラの保管時または携帯時においてソフトケースを不要にすることが提案されている、(特許文献1)
一方、カメラ底面の三脚固定用ネジ穴を利用して後付け可能に設けられた専用グリップが製造販売されている。この専用グリップは、シャッターに連動するボタンを把持部に設けるとともに、山部と谷部の間で少なくとも3mm以上の高低差を有した3次元曲面の把持形状部をゴム部材などから形成している。
【0003】
また、グリップをカメラ本体と一体的に設けた機種も多く製造販売されている。このようにグリップをカメラ本体と一体的に設けた機種において、グリップに天然皮革を用いれば、高い質感と良好な手触り感を得ることができる。
【0004】
したがって、特に高級品としての価値が上がるとともに、天然皮革特有の長期使用後のフィット感を得ることが可能になる。
【特許文献1】特開平8−95133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、グリップ部分に対して天然皮革を接着した場合には、切断面の縁部からの剥がれが発生し、やがてめくれ上がりが発生する。さらに、3次元曲面の把持形状部への天然皮革の密着性の確保が困難であるなどの理由から耐久性に乏しい問題がある。
【0006】
したがって、本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであり、天然皮革を3次元曲面の把持形状部を有する光学機器用グリップに用いる場合において、天然皮革の密着性を確保でき、縁部からの剥がれ発生を防止し、めくれなどを防止できる光学機器用グリップの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、山部(10b)と谷部(10a)の間で少なくとも3mm以上の高低差を有した3次元曲面の把持形状部を複数箇所形成するとともに、光学機器(1)に固定される光学機器用グリップ(10)であって、前記光学機器は、突合せ面(3)を光学機器本体の表面から連続形成した取付部を有し、前記光学機器用グリップは、前記把持形状部と前記取付部に固定される固定部とを形成したグリップ本体(11)と、前記把持形状部を形成するとともに、前記グリップ本体の表面を覆う形状の弾性部材(12)と、前記弾性部材を前記グリップ本体に接着する第1の接着層(15)と、前記山部と前記谷部とに密着するように前記弾性部材の表面全体を覆い、かつその縁部(13a)を前記弾性部材の縁部裏面にかけて一部覆うように第2の接着層(14)で接着される天然皮革部材(13)と、を備え、前記一部覆われた前記天然皮革部材の外側頂点部分を、前記突合せ面に対向させた状態で前記固定部を前記取付部に対して固定することを特徴としている。
【0008】
また、前記取付部は、前記光学機器本体(2)から延設される上部延設部(4)と下部延設部(5)と、前記上部延設部と前記下部延設部との間に形成される開口部(22)とから構成され、前記グリップ本体は前記上部延設部と前記下部延設部と前記開口部とを同時に覆う略U字横断面形状を有し、前記固定部は前記開口部の左右縁部に形成される左右取付部(6、7)に対して固定されることを特徴としている。
【0009】
また、前記左右取付部は、前記突合せ面から連続する段差部として形成されることを特徴としている。
【0010】
また、前記グリップ本体と前記弾性部材の間において、相互位置決めを行うための位置決め部材(11c、12c)が設けられることを特徴としている。
【0011】
そして、前記光学機器は、デジタル一眼カメラであり、前記グリップ本体は、樹脂射出成形品であり、前記弾性部材は成形可能な天然ゴム、化学合成ゴム、高分子樹脂素材、エラストマーを含ゴム製であり、前記天然皮革部材は、牛なめし革であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天然皮革部材の外側頂点部分を、突合せ面に対向させた状態で光学機器の取付部に対して固定することで、天然皮革部材の切断面の縁部からの剥がれ発生を防止して、めくれ上がり発生を防止することで耐久性を向上することができる光学機器用グリップを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の好適な一実施形態について、添付図面を参照して説明する。ここで、以下の実施形態では光学機器用グリップとして、デジタル一眼カメラの構成例について述べるが、この他に、銀塩フィルムカメラ、ビデオカメラ等の機器の他にも適用可能であることは言うまでもない。
【0014】
図1は、デジタル一眼カメラ1から交換式レンズを取り外し、光学機器用グリップ10(以下、グリップ10と言う)を固定する様子を示した外観斜視図である。本図において、デジタル一眼カメラ1は、突合せ面3を、本体2の表面2aから略直角に連続形成した取付部を図示のように形成している。
【0015】
この取付部は、本体2の左上方から手前に延設される上部延設部4と本体2の左下方から手前に延設される下部延設部5と、上部延設部4と下部延設部5との間に形成される開口部22とから構成されている。
【0016】
グリップ10は、上部延設部4と下部延設部5と開口部22とを同時に覆う略U字横断面形状を有しており、後述する固定部は開口部の左右縁部に形成される左右取付部6、7に対して固定されるように構成されている。また、このグリップ10は、図示のように山部10bと谷部10aの間で少なくとも3mm以上の高低差Hを有した3次元曲面の把持形状部を2箇所以上形成している。
【0017】
次に、図2はグリップ10の立体分解図である。また、図3(a)は、図1のX-X線矢視断面図であり、図3(b)は、別構成の光学機器用グリップ10における図1のX-X線矢視断面図である。
【0018】
両図において、本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、樹脂成形されて準備されるグリップ本体11は、把持形状部と取付部に固定される固定部11b、11aとを形成している。また、図示のように山部と谷部とを形成した把持形状部を形成するとともに、このグリップ本体11の表面を覆う形状の弾性部材12が成形可能な天然ゴム、化学合成ゴム、高分子樹脂素材、エラストマー材料から準備される。
【0019】
この弾性部材12はグリップ本体11に対して第1の接着層15により接着される。また、牛なめし皮の天然皮革部材13は、弾性部材12の山部と谷部とに密着するように弾性部材の表面全体を覆うように実線矢印方向に不図示の治具にセットされて引っ張られてから、幅W分の縁部13aが弾性部材12の縁部12kの裏面にかけて図中の二重矢印で示すように裏打ちされて一部を覆うように第2の接着層14を用いて接着される。
【0020】
以上のようにして、図3に図示したように天然皮革部材13の外側頂点部分が突合せ面3に対向させた状態で固定部を取付部に対して固定して完成する。
【0021】
具体的には、左右取付部6、7は、突合せ面3から連続する段差部として形成されており、グリップ本体11の溝部11aが左取付部7の突起7aに入りこみ、右取付部6に穿設されたネジ孔6aに皿ネジ20を螺合させて固定する。
【0022】
またグリップ本体11と弾性部材12の間において、相互位置決めを行うための位置決め部材11c、12cが設けられており、接着の際にこれらを挿入することで位置ずれを防止できるようにしている。
【0023】
また、図3(b)の別構成の光学機器用グリップ10によれば、グリップ本体11と一体成形されるフック部11kが本体2のフック部2kに嵌合することで固定されるように構成されている。また、突合せ面3は、図示のように表面から約30度の角度で斜めに形成されている。この構成によれば、天然皮革部材13の外側頂点部分を、突合せ面3に対向させた状態でカメラ側の取付部に固定することで、図3に図示したように本体の表面2aと天然皮革部材13の表面部分とが略面一状態になる。
【0024】
この結果、天然皮革部材の切断面の縁部からの剥がれ発生を防止できるようなる。さらに、弾性部材12の硬度を任意に設定できるので把持したときの反発力を適度に設定することも可能になる。さらには、皮革が薄くても上記のようにゴム層ととともに2重構造にする事により高い質感と良好な手触り感を得る事ができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】デジタル一眼カメラ1から交換式レンズを取り外し、光学機器用グリップ10を固定する様子を示した外観斜視図である。
【図2】光学機器用グリップ10の立体分解図である。
【図3】(a)は、図1のX-X線矢視断面図、(b)は、別構成の光学機器用グリップ10における図1のX-X線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 デジタル一眼カメラ(光学機器)
2 光学機器本体
2a 表面
3 突合せ面
10 光学機器用グリップ
11 グリップ本体
12 弾性部材
13 天然皮革
14 第2の接着層
15 第1の接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と谷部の間で少なくとも3mm以上の高低差を有した3次元曲面の把持形状部を複数箇所形成するとともに、光学機器に固定される光学機器用グリップであって、
前記光学機器は、光学機器本体の表面から突合せ面を連続形成した取付部を有し、
前記光学機器用グリップは、
前記把持形状部と前記取付部に固定される固定部とを形成したグリップ本体と、
前記把持形状部を形成するとともに、前記グリップ本体の表面を覆う形状の弾性部材と、
前記弾性部材を前記グリップ本体に接着する第1の接着層と、
前記山部と前記谷部とに密着するように前記弾性部材の表面全体を覆い、かつその縁部を前記弾性部材の縁部裏面にかけて一部覆うように第2の接着層で接着される天然皮革部材と、を備え、
前記天然皮革部材の前記一部覆われた外側頂点部分を、前記突合せ面に対向させた状態で前記固定部を前記取付部に固定することを特徴とする光学機器用グリップ。
【請求項2】
前記取付部は、前記光学機器本体から延設される上部延設部と下部延設部と、前記上部延設部と前記下部延設部との間に形成される開口部とから構成され、
前記グリップ本体は、前記上部延設部と前記下部延設部と前記開口部とを同時に覆う略U字横断面形状を有し、前記固定部は、前記開口部の左右縁部に形成される左右取付部に対して固定されることを特徴とする請求項1に記載の光学機器用グリップ。
【請求項3】
前記左右取付部は、前記突合せ面から連続する段差部として形成されることを特徴とする請求項2に記載の光学機器用グリップ。
【請求項4】
前記グリップ本体と前記弾性部材の間において、相互位置決めを行うための位置決め部材が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学機器用グリップ。
【請求項5】
前記光学機器は、デジタル一眼カメラであり、前記グリップ本体は、樹脂射出成形品であり、前記弾性部材は成形可能な天然ゴム、化学合成ゴム、高分子樹脂素材、エラストマーを含み、前記天然皮革部材は、牛なめし革であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学機器用グリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−14977(P2010−14977A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174900(P2008−174900)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000126517)株式会社アサヒ (30)
【Fターム(参考)】