説明

光学機器用外装体

【課題】長時間に亙って被写体を目視しながら作業する場合であっても、その作業の合間に目の疲労を容易に軽減することができ、人間工学的にも優れた光学機器用外装体を提供する。
【解決手段】対物レンズと、前記対物レンズの視野内に被写体を載置する載置台とを備えた光学機器を外装する光学機器用外装体において、前記載置台上で前記被写体を載置する載置領域の近傍に木材を圧縮成形した圧縮木材を配設する。この圧縮木材は、前記載置台の一部をなしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズと、この対物レンズの視野内に被写体を載置する載置台とを備えた光学機器を外装する光学機器用外装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、微小な物体の組立等の作業を行う際には、実体顕微鏡や拡大鏡などの光学機器が使用される(例えば、特許文献1を参照)。このような光学機器の外装体は、合成樹脂に適当な塗装を施して形成されるのが一般的である。
【0003】
【特許文献1】特開2005−17905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した光学機器においては、使用者が長時間に亙って被写体を目視することが多いため、使用者は作業中または作業後に目の疲労を感じることが多かった。このような目の疲労を軽減するためには、例えば遠方の景色を眺めたりするのが効果的であることがよく知られているが、作業場所が窓の少ない建物の中にある場合のように、作業場所から離れずに外の景色を眺めることが困難な場合には、作業の合間に目の疲労を軽減することが難しかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、長時間に亙って被写体を目視しながら作業する場合であっても、その作業の合間に目の疲労を容易に軽減することができ、人間工学的にも優れた光学機器用外装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の発明は、対物レンズと、前記対物レンズの視野内に被写体を載置する載置台とを備えた光学機器を外装する光学機器用外装体であって、前記載置台上で前記被写体を載置する載置領域の近傍に木材を圧縮成形した圧縮木材を配設したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記圧縮木材は、前記載置台の一部をなすことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記圧縮木材は、前記対物レンズを介して前記被写体を目視する当該光学機器の使用者の手または腕の一部が接触可能な位置に設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項記載の発明において、前記光学機器は顕微鏡であることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記顕微鏡は、接眼レンズと、変倍光学系と、ズームハンドルと、焦準ハンドルと、をさらに備え、前記ズームハンドルおよび前記焦準ハンドルの少なくともいずれか一方は、前記圧縮木材を用いて形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項記載の発明において、前記光学機器は拡大鏡であることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記拡大鏡は、前記対物レンズを保持する保持部材を備え、前記保持部材は、前記圧縮木材を用いて形成されるとともに、前記載置領域の近傍に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被写体を載置する載置台上で前記被写体を載置する載置領域の近傍に木材を圧縮成形した圧縮木材を配設したことにより、長時間に亙って被写体を目視しながら作業する場合であっても、その作業の合間に目の疲労を容易に軽減することができ、人間工学的にも優れた光学機器用外装体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る光学機器用外装体の構成を示す図であり、より具体的には、光学機器が実体顕微鏡である場合の光学機器用外装体の構成を示す図である。同図に示す実体顕微鏡1は、大型の試料観察やデジタルイメージング等に適用されるものであり、変倍光学系としてガリレオ光学系またはグルノー光学系などを搭載した顕微鏡である。
【0015】
実体顕微鏡1のより具体的な構成を説明する。実体顕微鏡1は、目視対象である被写体を載置する載置台2と、載置台2に支持されて鉛直上方に延出する支柱3と、この支柱3に対して上下動可能に取り付けられたアーム4と、アーム4の先端部に嵌合支持され、変倍光学系(図示せず)を内蔵するズーム鏡体5と、ズーム鏡体5の下端面に着脱可能に装着された対物レンズ6と、ズーム鏡体5の上端面に着脱可能に装着された鏡筒7と、鏡筒7に着脱自在に取り付けられた接眼レンズ8と、ズーム鏡体5の側面に回動自在に取り付けられたズームハンドル9と、ズームハンドル9の円筒面に沿って倍率を表示する倍率表示部10と、ズーム鏡体5側に設けられて現在の倍率を指示する指標部11と、アーム4を上下動する焦準ハンドル12とを備える。
【0016】
載置台2は、被写体を載置する載置領域21と、この載置領域21の近傍であって使用者が作業時に手や腕の一部と接触可能な位置に配設され、圧縮成形された木材から成る木材部22と、アーム4を支持する支持部23とを有する。
【0017】
次に、木材部22の形成方法について説明する。まず、木材を原木から形取る。図2は、この形取工程の概要を模式的に示す図である。同図に示す木材31は、原木である無圧縮状態の無垢材30(木目Gを有する)から切削等によって形取られ、平板状をなす。この木材31は、後述する圧縮工程によって減少する分の容積を予め加えた容積を有する。
【0018】
図2に示す場合、無垢材30から形取る木材31の長手方向とその木材31の繊維方向Lとが略平行であって木材31の表面が板目面をなすように形取りを行っているが、これはあくまでも一例に過ぎない。他にも、木材31の長手方向がその木材31の繊維方向Lと略平行であって木材31の表面が柾目面または追柾面をなすように形取ることもできる。また、木材31の長手方向がその木材31の繊維方向Lと略直交し、木材31の表面が木口面をなすように形取ることもできる。このように、木材を原木からどのように形取るかは、その木材に対して要求する強度や美観等の条件に応じて定められる。なお、無垢材30は、ヒノキ、ヒバ、スギ、桐、松、桜、欅、黒檀、竹、チーク、マホガニー、ローズウッドなどの中から最適なものを選択すればよい。
【0019】
図3は、木材31を圧縮する際に使用する金型の構成および木材31を圧縮する前の状態を示す図である。同図に示すように、木材31は、一対の金型41および51の間に配置される。この一対の金型のうち、木材31の上方に位置する金型41は、木材31の一方の表面に当接する凸部42を備えたコア金型である。これに対し、圧縮時に木材31の下方に位置する金型51は、木材31の他方の表面を嵌入する凹部52を備えたキャビティ金型である。凸部42および凹部52の各形状は、木材31を挟持して圧縮したときに、その木材31が木材部22の形状に変形するように形成されている。なお、図3では、圧縮後の木材部22の中央部付近を図1における左右方向に沿い載置台2に垂直な切断面で切断した縦断面に対応する断面を示している。
【0020】
以上の構成を有する金型41および51を用いて木材31を圧縮するに際して、木材31を大気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中に所定時間放置することにより、水分を過剰に吸収させて軟化させる。ここでいう高温高圧とは、温度が100〜230℃、より好ましくは150〜230℃、さらに好ましくは180〜200℃程度であり、圧力が0.1〜3.0MPa(メガパスカル)、より好ましくは0.45〜2.5MPa、さらに好ましくは1.0〜1.6MPa程度の状態を指す。なお、上述した水蒸気雰囲気中で木材31を放置して軟化させる代わりに、例えば木材31をマイクロウェーブの如き高周波の電磁波によって加熱して軟化させてもよい。
【0021】
その後、上記同様の水蒸気雰囲気中で木材31を圧縮する。図4は、軟化した木材31を金型51上の所定の位置に配置した後、金型41を下降させて金型41と金型51との間で木材31を挟持し、この挟持した木材31に対して所定の圧縮力を加えている状態を示す図である。この図4は、木材31の圧縮力による変形がほぼ完了した状態を示す図であり、図3と同じ切断面で見た縦断面図である。図4に示すように、木材31は金型41および51から圧縮力を受けることにより、金型41と金型51との隙間に相当する3次元形状に変形される。その後、所定時間(1〜数十分、より好ましくは5〜10分程度)だけ木材31に圧縮力を加えた後、上記水蒸気雰囲気を解いて木材31を乾燥させ、金型41と金型51を離間させて圧縮を解除する。この結果、木材31の肉厚は、圧縮工程を行う前の肉厚の30〜50%程度となり、木材部22が完成する。
【0022】
以上説明した圧縮工程において金型41を金型51に対して相対的に上下動させる際には、しかるべき駆動手段を用いて金型41および51の少なくともいずれか一方を電気的に駆動させるようにしてもよいし、金型41と金型51とをねじで連結し、このねじを手動または自動で締めることによって金型41を金型51に対して相対的に上下動させるようにしてもよい。
【0023】
上記の如く形成した木材部22を載置台2の一部として配設する際には、載置台2の本体部分に対して木材部22をねじ止め等によって取り付ける。この場合には、木材部22の所定箇所に穿孔等によってねじ挿通用の孔部を設ける後工程を行う。なお、木材部22の端面等に成形ムラや成形誤差が生じている場合には、切削や研磨等によって適当な端面処理を施してもよい。
【0024】
以上説明した外観構成を有する実体顕微鏡1において、使用者は接眼レンズ8を介して載置領域21上に載置された被写体を目視しながら作業を行う。この作業を長時間(具体的には数十分〜数時間)に亙って続ける場合には、目が特定の領域を凝視しつづけるため、目に疲労が蓄積していく。本実施の形態1に係る光学機器用外装体においては、そのような作業の合間に、使用者が自分の目を接眼レンズ8から離間させると、載置領域21の近傍に配設された木材部22が自然と視野に入るような構成を有している。一般に木材は、木目のゆらぎによるリラクゼーション効果があるといわれている。したがって、本実施の形態1に係る光学機器用外装体によれば、実体顕微鏡1の載置台2に木目Gを有する木材部22を設けることにより、疲労が蓄積した目に対して容易にリラクゼーション効果をもたらし、目の疲労を軽減することができる。
【0025】
ところで、木材部22は、実体顕微鏡1の使用者が作業中に手や腕の一部が接触可能な位置に形成されているため、その木材部22を構成する木材に使用者の手または腕が接触することによって得られるリラクゼーション効果も期待できる。この際、木材部22の一部に手や腕からの皮脂や汚れ成分が付着することがあるが、木材部22が圧縮木材で形成されているため、それらは容易に除去することができる。また、木材にはヒノキのように芳香を放つものもあるため、使用者は嗅覚的にもリラクゼーション効果を得ることができる。ここで説明した木材の触感や芳香によるリラクゼーション効果は、接眼レンズ8を介して被写体を目視している最中にも得ることができるものである。この意味で、木材部22を載置領域21の近傍であって使用者が作業中に手や腕の一部が接触可能な箇所に設けることにより、目の疲労を軽減するのとは別の意味でのリラクゼーション効果を得られ、人間工学的な意味でもより好ましい効果を得ることができる。
【0026】
なお、載置領域21の近傍という意味では、載置台2の一部のみならず、ズームハンドル9、倍率表示部10、焦準ハンドル12等を圧縮木材によって形成してもよい。
【0027】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、被写体を載置する載置台上で前記被写体を載置する載置領域の近傍に木材を圧縮成形した圧縮木材を配設したことにより、長時間に亙って被写体を目視しながら作業する場合であっても、その作業の合間に目の疲労を容易に軽減することができ、人間工学的にも優れた光学機器用外装体を提供することができる。
【0028】
また、本実施の形態1によれば、圧縮木材を載置領域の近傍であって使用者が作業中に手や腕の一部が接触可能な箇所に設けることにより、木材の木目のゆらぎによるリラクゼーション効果に加えて、木材の触感や芳香によるリラクゼーション効果を得ることもできるので、人間工学的な観点からもより好ましい。
【0029】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に係る光学機器用外装体の構成を示す図であり、より具体的には、光学機器が照明拡大鏡である場合の光学機器用外装体の構成を示す図である。同図に示す照明拡大鏡61は、載置台上の被写体を拡大して作業や観察等を行うものである。この照明拡大鏡61は、目視対象である被写体を載置する載置台62と、載置台62に支持されて鉛直上方に延出する支柱63と、凸レンズから成る対物レンズ64と、対物レンズ64を保持するとともに照明器具(図示せず)を内蔵する円環状の保持部材65と、を備える。
【0030】
載置台62は、被写体を載置する載置領域621と、支柱63を支持する支持部622とを有する。保持部材65は圧縮木材を用いて構成されており、使用者は対物レンズ64を見て被写体を目視する一方、視点をずらせば保持部材65の木目Gが目に入ってくる構成となっている。
【0031】
本実施の形態2において、照明拡大鏡61の使用者は、作業時に保持部材65を容易に手で触ることができる。また、作業時の目の位置が保持部材65に近いため、保持部材65を構成する圧縮木材が放つ香りを十分に感じることができる。
【0032】
なお、載置台62のうち、例えば支柱63を支持している支持部622の表面部分の一部または全部を圧縮木材としてもよい。また、上記実施の形態1における木材部22と同様に、載置領域621の端部に木材部を設けてもよい。
【0033】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様、長時間に亙って被写体を目視しながら作業する場合であっても、その作業の合間に目の疲労を容易に軽減することができるとともに、作業中であっても木材の触感や芳香によるリラクゼーション効果を得ることが可能であるような、人間工学的にも優れた光学機器用外装体を提供することができる。
【0034】
ここまで、本発明を実施するために最良の形態を説明してきたが、本発明は上述した二つの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、本発明は、上記以外の光学機器にも適用可能であり、特にレーザ顕微鏡、半導体・FPD顕微鏡、金属顕微鏡、偏光顕微鏡、倒立顕微鏡、コンポーネント顕微鏡、測定顕微鏡等の各種工業用顕微鏡に対しても適用することができる。
【0035】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光学機器用外装体の一適用例を示す図である。
【図2】木材の原木からの形取りの概要を示す図である。
【図3】木材を圧縮する際に使用する金型の構成および木材を圧縮する前の状態を示す図である。
【図4】木材の変形がほぼ完了した状況で木材を圧縮している状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る光学機器用外装体の適用例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 実体顕微鏡
2、62 載置台
3、63 支柱
4 アーム
5 ズーム鏡体
6、64 対物レンズ
7 鏡筒
8 接眼レンズ
9 ズームハンドル
10 倍率表示部
11 指標部
12 焦準ハンドル
21、621 載置領域
22 木材部
23、622 支持部
30 無垢材
31 木材
41、51 金型
42 凸部
52 凹部
61 照明拡大鏡
65 保持部材
G 木目
L 繊維方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと、前記対物レンズの視野内に被写体を載置する載置台とを備えた光学機器を外装する光学機器用外装体であって、
前記載置台上で前記被写体を載置する載置領域の近傍に木材を圧縮成形した圧縮木材を配設したことを特徴とする光学機器用外装体。
【請求項2】
前記圧縮木材は、前記載置台の一部をなすことを特徴とする請求項1記載の光学機器用外装体。
【請求項3】
前記圧縮木材は、前記対物レンズを介して前記被写体を目視する当該光学機器の使用者の手または腕の一部が接触可能な位置に設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の光学機器用外装体。
【請求項4】
前記光学機器は顕微鏡であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光学機器用外装体。
【請求項5】
前記顕微鏡は、接眼レンズと、変倍光学系と、ズームハンドルと、焦準ハンドルと、をさらに備え、
前記ズームハンドルおよび前記焦準ハンドルの少なくともいずれか一方は、前記圧縮木材を用いて形成されたことを特徴とする請求項4記載の光学機器用外装体。
【請求項6】
前記光学機器は拡大鏡であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光学機器用外装体。
【請求項7】
前記拡大鏡は、前記対物レンズを保持する保持部材を備え、
前記保持部材は、前記圧縮木材を用いて形成されるとともに、前記載置領域の近傍に配設されていることを特徴とする請求項6記載の光学機器用外装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−171397(P2007−171397A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366742(P2005−366742)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】