説明

光学機器

【課題】光束制限手段を有する光学機器の小型化を実現する。
【解決手段】光学機器は、第1のレンズL2と該第1のレンズを保持する保持部材6とにより構成され、光軸方向に移動可能な可動レンズユニットと、第2のレンズL3を光軸方向とは異なる方向にシフトさせる防振ユニット9と、第2のレンズのシフトに応じて、光束が通過する開口の形状を変化させる光束制限手段8とを有する。可動レンズユニットは、光軸方向における光束制限手段の開口に挿入される位置を含む可動領域で移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の一部を構成するレンズを光軸方向とは異なる方向にシフトさせて像振れを低減する防振(像振れ補正)機能を有する光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラや交換レンズ等の光学機器には、手振れ等の光学機器の振れに応じて、光学系の一部を構成するレンズを光軸方向とは異なる方向(例えば、光軸方向に直交する方向)にシフトさせ、像振れを低減する防振機能を有するものがある。
ただし、レンズをシフトさせると、該レンズがシフトした側とは反対側の光束がカットされ、像面の周辺領域の一部の光量が低下する、すなわち周辺光量のアンバランスが生じることがある。
特許文献1には、レンズのシフトに応じて光束制限絞りの開口形状を変化させることで、周辺光量のアンバランスの発生を抑制することができる光学機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2511822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にて開示された光学機器では、光学機器において通常用いられる光量調節用の絞りとは別に光束制限絞りを光学系内に設けている。このため、光束制限絞りを設置するための光軸方向スペースを光学系内に新たに確保する必要があり、この結果、光学系の全長や光束制限絞りよりも物体側に配置されたレンズの径が増大し、光学機器の大型化を招くという問題がある。
本発明は、光束制限絞り(光束制限手段)を有しながらも、小型化を実現することができる光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面としての光学機器は、第1のレンズと該第1のレンズを保持する保持部材とにより構成され、光軸方向に移動可能な可動レンズユニットと、第2のレンズを光軸方向とは異なる方向にシフトさせる防振ユニットと、第2のレンズのシフトに応じて、光束が通過する開口の形状を変化させる光束制限手段とを有する。そして、可動レンズユニットは、光軸方向における光束制限手段の開口に挿入される位置を含む可動領域で移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、可動レンズユニットが光束制限手段の開口に挿入される位置を含む可動領域で移動するので、光束制限手段を設けても、光学系の全長や光束制限手段よりも物体側のレンズの径の増大を抑えることができる。したがって、光束制限手段を有する光学機器の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1であるビデオカメラのレンズ鏡筒部の分解斜視図。
【図2】実施例1における防振ユニットの分解斜視図。
【図3】実施例1における光束制限絞りの分解斜視図。
【図4】実施例1のビデオカメラの電気的構成を示すブロック図。
【図5】実施例1におけるレンズ鏡筒部の断面図であって、光束制限絞りの開口に第2鏡筒が挿入された状態を示す図。
【図6】実施例1における光束制限絞りを駆動した状態を示す断面図。
【図7】本発明の実施例2であるビデオカメラのレンズ鏡筒部の分解斜視図。
【図8】本発明の実施例3である交換レンズの光学構成を示す図。
【図9】実施例1における光束制限絞りの開口形状の変化を示す図。
【図10】実施例1における防振ユニットと光束制限絞りの制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
図1には、本発明の実施例1であるビデオカメラ用のレンズ鏡筒部の構成を分解して示している。ビデオカメラとレンズ鏡筒部はそれぞれ光学機器に相当し、さらに本発明は、デジタルスチルカメラや交換レンズ等の他の光学機器にも適用することができる。
まず、図1中に示した光学系(撮影光学系)は、物体側(図1の左側)から順に配置された、前玉レンズL1、光束制限絞り2、バリエータレンズL2、光量調節絞り8、補正レンズL3及びフォーカスレンズL4により構成されている。
1は前玉レンズL1を保持する第1鏡筒である。6はバリエータレンズ(第1のレンズ)L2を保持する第2鏡筒(保持部材)であり、光軸方向に移動して変倍を行う。バリエータレンズL2と第2鏡筒6とにより「可動レンズユニット」が構成される。
3は第1鏡筒1及び光束制限絞り2を保持する固定鏡筒である。4はCCDホルダであり、不図示のCCDセンサ(撮像素子:CMOSセンサでもよい)を保持する。
5は後部鏡筒であり、その後端にCCDホルダ4が取り付けられる。後部鏡筒5は、固定鏡筒3及びCCDホルダ4とともにレンズ鏡筒部の筐体を構成する。
第2鏡筒6は、光軸方向両端が固定鏡筒3と後部鏡筒5とにより保持された2本のガイドバー7a,7bによって光軸方向へ移動可能に支持されている。ガイドバー7a,7bは光軸を挟むように配置されており、これら2本のガイドバー7a,7bによって第2鏡筒6の光軸方向のガイドと光軸周りでの回り止めとを行う。
光量調節手段としての光量調節絞り8は、電磁アクチュエータによって絞り羽根を駆動して開口径を変化させる。光量調節絞り8は、固定鏡筒3と後部鏡筒5によって挟まれて保持されている。
9は像振れ補正のために補正レンズ(第2のレンズ)L3を、光軸方向とは異なる方向、具体的には光軸方向に直交する方向にシフトさせる防振ユニットである。この防振ユニット9の構成及び動作については、後述する。
該防振ユニット9は、後部鏡筒5により保持される。
光束制限絞り2は、補正レンズL3のシフトに応じて、像面における周辺領域の一部の光量を低下させるように、光束が通過する開口の形状を変化させ、補正レンズL3のシフトによって生ずる周辺光量のアンバランスを目立たなくする。この光束制限絞り2の構成及び動作については、後述する。
10はフォーカスレンズL4を保持する第4鏡筒である。該第4鏡筒10は、防振ユニット9のベース部材(後述するシフトベース)と後部鏡筒5とに両端が保持された2本のガイドバー11a,11bによって光軸方向へ移動可能に支持されている。第4鏡筒10(フォーカスレンズL4)を光軸方向に移動させることにより、焦点調節が行われる。ガイドバー11a,11bは、光軸を挟むように配置されており、これら2本のガイドバー11a,11bによって第4鏡筒10の光軸方向のガイドと光軸周りでの回り止めとを行う。
12はズームモータであり、モータ保持板12aによって保持されている。ズームモータ12の出力軸にはリードスクリュー12bが形成されている。モータ保持板12aは、固定鏡筒3に取り付けられている。
第2鏡筒6には、ラック13が取り付けられており、該ラック13はリードスクリュー12bに噛み合っている。これにより、ズームモータ12が駆動されてリードスクリュー12bが回転すると、第2鏡筒6は光軸方向に移動される。本実施例では、ズームモータ12として、ステッピングモータを使用している。ラック13は、トーションスプリング14の付勢力によって第2鏡筒6とリードスクリュー12bに押し付けられている。
15はフォトインタラプタであり、固定鏡筒3に取り付けられている。フォトインタラプタ15の出力信号は、その発光部と受光部との間に、第2鏡筒6に形成された不図示の遮光部が入り込むことで変化する。この出力信号の変化を読み取ることで、第2鏡筒6が基準位置にあることが検出され、該基準位置からズームモータ12に入力される駆動パルス信号のパルス数をカウントすることで、第2鏡筒6の位置を検出することができる。
16a,16bは駆動マグネットであり、後部鏡筒5に固定されている。17a,17bはコイルであり、第4鏡筒10に接着等の方法で固定されている。コイル17a,17b及び駆動マグネット16a,16bによってリニアアクチュエータ(ボイスコイルモータ)が構成される。コイル17a,17bに通電することによって、第4鏡筒10を光軸方向に移動させる推力が発生する。
18は第4鏡筒10の位置を検出する位置センサであり、後部鏡筒5に取り付けられている。
次に、防振ユニット9の構成について、図2を用いて説明する。図2において、50は補正レンズL3のうち物体側のレンズエレメント(図示せず)を保持するベース部材としてのシフトベースであり、固定鏡筒3と後部鏡筒5との間に挟まれて保持されている。
51は補正レンズL3のうち像面側のレンズエレメント(第2のレンズ:図示せず)を保持するシフト枠である。52はシフトベース50に、光軸周りでは回転せず、光軸方向に直交する方向に移動可能に可動に取り付けられたロール防止枠である。シフト枠51は、ロール防止枠52によって光軸周りでの回転が阻止された状態で、シフトベース50に対して光軸方向に直交する方向(上下方向であるピッチ方向及び左右方向であるヨー方向)に移動可能に保持されている。
53a,53b,53cは、シフトベース50とシフト枠51との間に配置された3つのボールである。54はシフト枠51をシフトベース50の方向に付勢するシフトスプリングである。シフトスプリング54の付勢力により、3つのボール53a,53b,53cはシフト枠51とシフトベース50との間に挟持される。
55はシフトスプリング54を保持するスプリングホルダーであり、シフトベース50に取り付けられる。
以上のような構成により、シフト枠51は、シフトベース50に対して光軸方向にて位位置決めされた状態で、ピッチ方向及びヨー方向に移動可能に支持される。なお、上述したように、実際にシフト枠51とともにシフトするのは補正レンズL3のうち像面側のレンズエレメントであるが、以下の説明では、このことを「補正レンズL3がシフトする」と表現する。
次に、シフト枠51をピッチ方向及びヨー方向にシフトさせる電磁アクチュエータについて説明する。56a,56bはピッチ方向シフト用及びヨー方向シフト用のマグネットである。57a,57bはマグネット56a,56bの光軸方向前側の磁束を閉じるための前ヨークであり、58はマグネットカバーである。前ヨーク57a,57bはマグネット56a,56bに吸着され、マグネットカバー58を介してシフトベース50に固定されている。
59a,59bはシフト枠51に接着により固定されたピッチ方向シフト用及びヨー方向シフト用のコイルである。60はマグネット56a,56bの光軸方向後側の磁束を閉じるための後ヨークである。後ヨーク60は、コイル59a,59bに対してマグネット56a,56bとは反対側に配置され、シフトベース50に固定されている。
これらマグネット56a,56b、前ヨーク57a,57b、後ヨーク60及びコイル59a,59bにより、ピッチ駆動用及びヨー駆動用の磁気回路が形成されている。コイル59a,59bに通電すると、該コイル59a,59bとマグネット56a,56bとの間に発生する磁力の相互作用によってピッチ方向とヨー方向にローレンツ力が発生する。該ローレンツ力は、シフト枠51をシフトベース50に対して、ピッチ方向とヨー方向に移動(シフト)させる。
次に、シフト枠51の位置検出について説明する。61a,61bはピッチ方向位置検出用及びヨー方向位置検出用の発光素子であり、シフト枠51に保持される。62a,62bはピッチ方向位置検出用及びヨー方向位置検出用の受光素子である。63はセンサーホルダーであり、受光素子62a,62bを保持し、シフト枠51に固定されている。
シフト枠51がピッチ方向及びヨー方向にシフトすると、発光素子61a,61bから射出した光の受光素子62a,62b上での入射位置が変化する。受光素子62a,62bは、光の入射位置に応じた信号を出力する。このような構成により、シフト枠51のピッチ方向及びヨー方向での位置を検出する位置センサが形成される。
次に、光束制限絞り2の構成について、図3を用いて説明する。図3において、80はベース部材としての絞りベースであり、第1鏡筒1と固定鏡筒3とによって挟まれて保持される。81,82は光軸方向に配置された2枚の光束制限羽根(光束制限部材)であり、それぞれに形成された穴部81a,82aには、絞りベース80に設けられたピン(図示せず)が挿入される。光束制限羽根81,82は、該支点ピンを中心として、光軸方向に直交する方向(光軸方向に直交する面内)で回動可能に絞りベース80により保持される。
光束制限羽根81に形成された開口部81bと光束制限羽根82に形成された開口部82bとは、互いに異なる形状を有する。このため、光束制限羽根81,82の回動位置に応じて両開口部81b,82bの重なる角度関係が変化し、両開口部81b,82bによって形成される開口の形状(開口形状)が変化する。
83は光束制限羽根81,82の間を仕切る仕切り板であり、絞りベース80に固定されている。84はカバーであり、絞りベース80との間に光束制限羽根81,82と仕切り板83を挟むように配置され、絞りベース80に固定されている。
85,86は光束制限羽根81,82を回動させるアクチュエータであり、絞りベース80に保持されている。アクチュエータ85,86に設けられた不図示の駆動アームに形成されたピンが、光束制限羽根81,82に形成された長穴部81c,82cに挿入されている。このため、アクチュエータ85,86を駆動すると、駆動アームを介して光束制限羽根81,82が上述した支点ピンを中心として回動され、開口部81b,82bによって形成される開口の形状が変化する。言い換えれば、光束制限羽根81,82によって形成される遮光領域の形状が変化する。なお、遮光領域は、ある程度の透過率(例えば、50%以下の透過率)を有していてもよい。
アクチュエータ85,86は、防振ユニット9におけるシフト枠51(補正レンズL3)のシフトに応じて制御される。シフト枠51が光軸に対してシフトすると、シフト前までは補正レンズL3を通過して像面(CCDセンサの受光面)の周辺領域に到達していた周辺光束の一部がカットされ、像面に到達しなくなる。このため、像面における周辺領域の一部(以下、暗周辺部分という)が暗くなる。
そこで、アクチュエータ85,86を以下のように駆動する。すなわち、図6に示すように、周辺光束のうち暗周辺部分に対して光軸を挟んだ反対側の周辺部分に向かう部分光束PLが、光束制限羽根81,82が形成する遮光領域により遮られる(又は減光される)ように光束制限羽根81,82を回動させる。これにより、像面の周辺領域のうち、シフト枠51のシフトによって生じた暗周辺部分と、光束制限羽根81,82の遮光(減光)作用によって暗くなった周辺部分とが、光軸位置又は光軸に直交するラインに関して概ね対称となる。これにより、周辺光量(言い換えれば、周辺光量落ち)のアンバランスが目立ちにくくなる。
図9(a)〜(c)には、シフト枠51(補正レンズL3)のシフトに応じて光束制限絞り2の開口形状(及び遮光領域の形状)が変化する様子を示す。ただし、光量調節絞り8は開放状態にあるものとする。AXLは光軸を示す。
図9(a)は、シフト枠51がシフトしていないときの開口Aの形状を示す。このときの開口Aは、CCDセンサの受光面の全体にかからない開放形状に設定される。また、図9(b),(c)は、シフト枠51が矢印方向にシフトしたときの開口Aの形状を示す。図中の網目ハッチング領域として示すBは、シフト枠51のシフトによって生じた暗周辺部分である。このときの開口Aは、暗周辺部分Bに対して光軸AXLを挟んだ反対側の周辺部分(斜めハッチング領域)Cを暗くする形状に設定される。
ここで、光束制限絞り2は、光量調節絞り8の最小開口サイズ(最小開口径)よりも大きな最小開口サイズを有する。光量調節絞り8は、被写体の明るさ等に応じて開口サイズを開放サイズから中間サイズを経て閉じ状態又はこれに近い小絞り開口サイズまで小さくすることができる。これに対し、光束制限絞り2は、開放サイズ(補正レンズL3がシフトしていないとき)から上記中間サイズよりも大きい開口サイズ(補正レンズL3のシフト量が最大のとき)までしか開口サイズが小さくならない。これは、光束制限絞り2は、光量調節絞り8とは異なり、周辺光束の一部のみを遮光(又は減光)するために設けられていることによる。
図4には、本実施例のカメラにおける電気的構成を示している。本図において、図1〜図3にて説明したレンズ鏡筒の構成要素については図1〜図3と同符号を付して説明に代える。
101は赤外カットフィルタとローパスフィルタが接着された光学フィルタである。102はCCDセンサである。103は光束制限絞り2の駆動源であるアクチュエータ85,86を含む光束制限絞り駆動部である。
104は第2鏡筒6の光軸方向の位置を検出するズーム位置検出部(位置検出手段)である。105は光量調節絞り8の開口径(絞り値)を検出する絞り値検出部である。106は防振ユニット9によってシフトされる補正レンズL3の位置を検出する補正レンズ位置検出部であり、前述した発光素子61a,61b及び受光素子62a,62bを含む。
107は防振駆動部であり、防振ユニット9の駆動源であるマグネット56a,56b及びコイル59a,59bを含む。108はCCDセンサ102からの出力信号を用いて、CCDセンサ102の受光面に到達する光量を検出する光量検出部である。109はカメラ全体の制御を司る、CPU等からなるマイクロコンピュータ(制御手段)である。110はカメラの振れを検出する振れ検出部であり、ジャイロセンサ等により構成されている。
上記構成において、防振ユニット9と光束制限絞り2の制御について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。
ステップ(図ではSと略記する)201において、振れ検出部110によりカメラの振れが検出されると、マイクロコンピュータ109は、振れ検出部110からの検出信号に基づいてカメラの振れ量及び振れ方向を検出する。そして、ステップ202では、マイクロコンピュータ109は、このカメラ振れによって生じる像振れをキャンセルするように、補正レンズL3(シフト枠51)の目標シフト位置を演算する。
次に、ステップ203において、マイクロコンピュータ109は、目標シフト位置の演算結果と補正レンズ位置検出部106により検出された現在のシフト枠51の位置とに応じて、防振ユニット9のコイル59a,59bに通電する。これにより、補正レンズL3を目標シフト位置にシフト駆動する。マイクロコンピュータ109は、コイル59a,59bの通電量及び通電方向に対して、補正レンズ位置検出部106により検出される補正レンズL3の位置情報を用いたフィードバック制御を行う。
次に、ステップ204では、マイクロコンピュータ109は、補正レンズL3の位置情報から像面における周辺領域の光量の変化を演算し、該演算結果に基づいて、光束制限絞り2(光束制限羽根81,82)の駆動量を算出する。
ここで、補正レンズL3のシフトに応じた光束制限量は、第2鏡筒6の位置、すなわちズーム位置によって異なる。このため、マイクロコンピュータ109は、ズーム位置検出部104により検出されるズーム位置に基づいて、光束制限絞り2の駆動量を算出する。これにより、光束制限絞り2の駆動量をズーム位置に応じて変化させることができる。
ただし、ワイド端とテレ端との間で移動可能な第2鏡筒6が、物体側の位置であるワイド端を含むワイド領域にあるときは、補正レンズL3がシフトしても光束制限量は少ない。このため、本実施例では、第2鏡筒6がワイド領域にあるときは、光束制限絞り2を駆動せず、開放状態とする。
そして、ステップ205では、マイクロコンピュータ109は、算出した駆動量に応じて、光束制限絞り2のアクチュエータ85,86を駆動する。その後、ステップ201に戻って、上記処理を繰り返す。
図5及び図6には、本実施例のレンズ鏡筒部の断面を示している。前述したように、図6には、補正レンズL3のシフトに応じて光束制限絞り2により周辺光束のうち部分光束PLを遮っている状態を示している。
また、図5に示すように、本実施例では、バリエータレンズL2を保持した第2鏡筒6は、光軸方向において、光束制限絞り2の光束制限羽根81,82により形成される開口内に挿入される位置を含む可動領域で移動可能としている。前述したように、第2鏡筒6がワイド端を含むワイド領域にあるときは、光束制限絞り2の開口が開放されるため、該開口に、第2鏡筒6のうちバリエータレンズL2を保持する円筒部分を挿入することができる。
このため、第1鏡筒1と第2鏡筒6との間に、これら第1及び第2鏡筒1,6間の間隔(ワイド端での間隔)を広げることなく、光束制限絞り2を配置することが可能となる。この結果、光束制限絞り2を有しながらも、レンズ鏡筒部の全長(光学全長)や光束制限絞り2よりも物体側の前玉レンズL1の径の増加を抑えた、小型のレンズ鏡筒部及びビデオカメラを実現することができる。
【実施例2】
【0010】
上記実施例1では、光束制限絞り2が第1鏡筒1と第2鏡筒6との間に配置された場合について説明したが、図7に示す実施例2のように、光束制限絞り20を防振ユニット9と第4鏡筒10との間に配置してもよい。
この場合、第4鏡筒10は、光束制限絞り20の開口に挿入される位置(至近端又は無限端)を含む可動領域で焦点調節のために移動可能とする。
本実施例でも、光束制限絞り20を有しながらも、レンズ鏡筒部の全長等の増加を抑えた、小型のレンズ鏡筒部及びビデオカメラを実現することができる。
【実施例3】
【0011】
また、上記実施例1,2では、前玉レンズL1、バリエータレンズL2、補正レンズL3及びフォーカスレンズL4の4つのレンズユニットにより構成されたズーム光学系に光束制限絞りを設けた場合について説明した。しかし、図8に示すような5つ以上のレンズユニットを有するズーム光学系(交換レンズ)に光束制限絞り2を設けてもよい。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記各実施例では、2枚の光束制限羽根を備えた光束制限絞りについて説明したが、光束制限羽根の数はこれに限られず、1枚でもよいし3枚以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0012】
光束制限絞りを有しながらも、小型化された光学機器を提供できる。
【符号の説明】
【0013】
1 第1鏡筒
2,20 光束制限絞り
3 固定鏡筒
4 CCDホルダ
5 後部鏡筒
6 第2鏡筒
8 光量調節絞り
9 防振ユニット
10 第4鏡筒
80 絞りベース
81,82 光束制限羽根
85,86 アクチュエータ
102 CCDセンサ
103 光束制限絞り駆動部
104 ズーム位置検出部
105 絞り値検出部
106 補正レンズ位置検出部
107 補正レンズ駆動部
108 光量検出部
109 マイクロコンピュータ
110 振れ検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレンズと該第1のレンズを保持する保持部材とにより構成され、光軸方向に移動可能な可動レンズユニットと、
第2のレンズを前記光軸方向とは異なる方向にシフトさせる防振ユニットと、
前記第2のレンズのシフトに応じて、光束が通過する開口の形状を変化させる光束制限手段とを有し、
前記可動レンズユニットは、前記光軸方向における前記光束制限手段の前記開口に挿入される位置を含む可動領域で移動することを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記可動レンズユニットが前記光軸方向に移動してワイド端とテレ端との間で変倍を行い、
該可動レンズユニットは、前記ワイド端において前記光束制限手段の前記開口に挿入されることを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記第1及び第2のレンズを含む光学系を通る光量を調節する光量調節手段を有し、
前記光束制限手段は、前記光量調節手段の最小開口サイズよりも大きな最小開口サイズを有することを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項4】
前記可動レンズユニットの位置を検出する位置検出手段と、
該位置検出手段により検出された位置に応じて前記光束制限手段の前記開口の形状を変化させる制御手段とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光学機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−262235(P2010−262235A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114817(P2009−114817)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】