説明

光学機能付き非接触ICラベル

【課題】目視で光学的な効果を呈するOVDを備え、かつ非接触で外部装置との間でデータの送受信を行うことができる光学機能付き非接触ICラベルであって、ラベルを剥がす際に、確実にラベル基材が破断すると同時に非接触IC媒体のアンテナを切断して、完全に通信機能を不能にすることができる偽造防止用ICラベルを提供する。
【解決手段】透明なラベル基材1の主面上に、目視で光学的な効果を呈しかつ導電性を有するOVD機能層2と、ICチップ4のアンテナとして機能するためのインピーダンス調節部を有する導電層3と、OVD機能層と導電層とを静電容量結合させるための絶縁層9とを備える光学機能付き非接触ICラベルにおいて、インピーダンス調節部周辺位置にV字状の切り込みを設け、かつまた、そのV字状の切り込みの先端部に留め部を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目視で光学的な効果を呈するOVDを備え、かつ非接触で外部装置との間でデータの送受信を行うことができる光学機能付き非接触ICラベルであって、被貼付体から剥がそうとした際に通信機能を破壊する非接触ICラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、小売店やレンタル店での商品の管理において、ICチップとアンテナを備えた非接触ICタグが利用されている。これは非接触ICタグを商品に取り付け、専用のデータ読み書き装置によって商品のデータを非接触で読み書きし、商品の出入庫管理、在庫管理、貸し出し管理等を行うものである。ICチップを備えている為、商品コードだけでなく、入荷日、担当者などの豊富な情報を商品と一体で管理することができる。
【0003】
また、非接触ICタグが普及するにつれ、非接触ICタグにOVD(Optical Variable Device)を付与することが期待されている。OVDとは、光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現できるホログラムや回折格子、光学特性の異なる薄膜を重ねることにより見る角度により色の変化を生じる多層薄膜の総称である。これらOVDは立体画像や色の変化といった独特な印象を与えるため、優れた装飾効果を有しており、各種包装材や絵本、カタログ等の一般的な印刷物に利用されている。さらに、このOVDは高度な製造技術を要することから偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類等に形成されている。
【0004】
OVDが非接触ICタグに形成されると下記のようなメリットがある。例えば、非接触ICタグとOVDが別々に商品等に形成されていた場合に較べて、非接触ICタグとOVDを一体化して同時に形成することにより、製造および使用が容易にできる。また、OVDを非接触ICタグに形成することによって、意匠性や高級感、偽造防止効果を与えることができる。偽造防止効果例については、OVDを非接触ICタグに形成する事により、データ読み書き装置と目視の双方から非接触ICタグの真偽判定が可能となり、例えばデータ読み書き装置がない場合でも、目視にて非接触ICタグの真偽判定が可能となる。また、更に高度な偽造防止媒体として利用する場合は、OVDに機械読み取り可能な光学情報を記録しておき、非接触ICタグのICチップ内の情報と関連付ける事によって、OVDもしくはICチップのどちらかが偽造された際に真偽判定を行うことができる。
【0005】
外部のデータ読み書き装置を使って非接触でデータ通信を行う非接触ICラベルとして、非接触ICタグとOVDのアルミ蒸着等の導電材料をアンテナとして組み合わせた形態のものが既に提案されている。
【0006】
しかしながら、上記のような非接触ICラベルでは、正規物品に貼り付けられていた非接触ICラベルを取り外すことが可能なことから、ICラベルを容易に使い回すことができてしまうという問題があり、真贋判定の精度が低下してしまうので、種々の改良が提案されている。被着体から取り外そうとするとICラベルがその機能を破壊される構造が提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−150924号公報
【特許文献2】特開2008−186127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記提案により、ICラベルの使い回しに一定の歯止めはかけられるが、充分ではない。貼付および剥がしの状況によっては、剥がしを行っても必ずしもICラベルがその機能を破壊されない場合も生じる。また、OVDを付与した光学機能付き非接触ICラベルに最適な使い回し防止の構造が特に望まれる。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、被貼付体から剥がそうとする行為により、ラベル基材自体が破壊すると同時に、IC媒体のアンテナが破断して確実に通信機能を不能にすることができる光学機能付き非接触ICラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、非接触で外部装置とデータの送受信を行う非接触ICラベルであって、
透明なラベル基材と、前記ラベル基材の下面に設けられた目視で光学的な効果を呈しかつ導電性を有するOVD機能層と、前記OVD機能層の下面に接合されて設けられ、前記ICラベルを構成するICチップのアンテナとして機能するためのインピーダンス調節部を有する導電層と、前記OVD機能層と前記導電層との間に設けられ、前記OVD機能層と前記導電層とを静電容量結合させるための絶縁層と、を備える光学機能付き非接触ICラベルにおいて、
該光学機能付き非接触ICラベルに2辺の切り込みからなるV字状の切り込みが設けられ、該V字状切り込みの仮想交点近傍の先端部に切り込みが不連続である留め部を有することを特徴とする光学機能付き非接触ICラベルである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記V字形状を形成する2辺の切り込みのなす角度が25度以上かつ60度以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学機能付き非接触ICラベルである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記V字形状を形成する2辺の切り込みのうち、長い方の1辺の長さが5mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学機能付き非接触ICラベルである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記V字状切り込みのうちの1辺が、前記インピーダンス調節部を形成する1つのスリットに対してほぼ垂直な関係で設けられ、該1辺の中でスリットに最も近い開放端が前記スリットから0.8mm以上5mm以内の位置にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学機能付き非接触ICラベルである。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記V字状切り込みのうち、前記導電層の存在する領域の上方に位置するV字状切り込みの部分が存在し、その部分の深さが、前記OVD機能層まで切り込みが侵入しない程度のハーフカット状態の深さとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学機能付き非接触ICラベルである。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、前記留め部の大きさが、前記V字状切り込みの仮想交点を中心に規定すると、直径0.5mm〜3.0mmの円形領域であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学機能付き非接触ICラベルである。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、前記ラベル基材の周縁部から内側方向に切り込みを設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学機能付き非接触ICラベルである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学機能付き非接触ICラベルは上記のような構成からなるので、ICチップに所定の識別情報が記憶される封印ラベル等において、被貼付体からICラベルを剥がす際に、ラベル基材に設けたV字状の切り込みを起点として、ラベル基材が破壊すると同時に非接触IC媒体のアンテナ機能を有する導電層および/またはOVD機能層も破断することが可能となる。
さらに、V字状の切り込みの先端部に留め部を設けることで、セパレータからラベルを剥がす際にラベルが破壊してしまう、あるいは被貼付体に曲げて貼る場合にV字切り込み部が浮いてしまう、などの問題を解決するので、貼付作業の効率を向上させることができ、かつまた、被貼付体の形状に依存しないで最も効率のよい切り込みを設計することが可能となる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明によれば、被貼付体からICラベルを剥がすと導電層の中に形成された通信機能をつかさどるインピーダンス調節部で破断されるために、確実に通信機能を不能にすることができるため、正規物品に貼り付けられていたICラベルを使い回して偽造するなどの不正行為をさらに有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一例を示す平面構成図である。
【図2】本発明の一例を示す断面構成図である。
【図3】本発明の構成の主要部を説明するための配置概念図である。
【図4】本発明による非接触ICラベルの一使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態における非接触ICラベルについて、図面を参照して説明する。図1及び図2は、本発明の一実施形態としての非接触ICラベルの構成を示したものである。なお、図2は図1のY−Y’の断面を示している。
【0021】
非接触ICラベル100には、ラベル基材1の表面にOVD機能層2を設けられ、その表面にアンテナとしての機能を有する導電層3とICチップ4、さらにその表面には接着層7が設けられ、剥離シートの形態を有するセパレータ8をラベル使用時に剥がす構造となっている。接着層は粘着層の形態をとることも多い。また、前述のOVD機能層2と導電層3との間には絶縁層9が設けられており、それを挟んで電気的に容量結合され、非接触ICタグとしての機能を有する。外部読取装置との交信に使用する周波数は、マイクロ波帯(2.45GHz)およびUHF波帯(850〜950MHz)である。
【0022】
OVDとは前述した通り見る角度によって色が変化するものの総称であり、従ってOVD機能層2には、光の干渉を利用したホログラム、回折格子、多層薄膜などを用いる。
ホログラムや回折格子のようなOVDとしては、光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型や体積方向に干渉縞を記録する体積型がある。また、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる多層薄膜のようなOVDとしては、光学特性の異なるセラミックスや金属の薄膜を積層したものがある。この他に、光の干渉を利用した固有の像や色の変化を生じるものであればこれらに限られるものではない。これらのOVDの中では、量産性やコストを考慮した場合には、レリーフ型ホログラム(回折格子)や多層薄膜が好ましいものである。
【0023】
レリーフ型ホログラム(回折格子)は、光学的な撮影方法により微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のマスターホログラムを作製し、次に、このマスターホログラムから電気メッキ法により凹凸パターンを複製したニッケル製のプレス版を作製し量産する。すな
わち、このプレス版を加熱し、ホログラム形成層に押し当てて凹凸パターンを複製する、という方法により大量に作製されている。OVDにレリーフ型ホログラム(回折格子)を用いた場合、その回折効率を高めるためレリーフ面を構成する高分子材料と屈折率の異なる反射層を設けることが好ましい。この反射層を設けることにより、回折効率が向上し、より鮮明な画像や色の変化をもたらすものになる。用いる材料としては、屈折率の異なるTiO、SiO、SiO、Fe、ZnSなどの高屈折率材料や、より反射効果の高いAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au等の金属材料が挙げられる。これらの材料は単独あるいは積層して使用できるものであり、これらの材料は真空蒸着法、スパッタリング等の公知の薄膜形成技術にて形成され、その膜厚は用途によって異なるが、5〜1000nm程度で形成される。
【0024】
一方、多層薄膜でOVDが形成されるOVD機能層は、異なる光学適性を有する多層薄膜層からなり、金属薄膜、セラミックス薄膜またはそれらを併設してなる複合薄膜として積層形成される。たとえば、屈折率の異なる薄膜を積層する場合、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜を組み合わせても良く、また特定の組み合わせを交互に積層するようにしてもよい。それらの組み合わせにより、所望の多層薄膜を得ることができる。
【0025】
本発明において、上記OVD機能層2は非接触ICタグの第2のアンテナとして使われており、従ってOVD機能層2は導電性を示す。すなわち、レリーフ型ホログラムはその反射層として例えばアルミ蒸着層、また多層薄膜方式においても導電性を示す薄膜材料が用いられる。このOVD機能層2の層構成、材料等は、光学的効果を持ち、かつ導電性を有していれば特に限定されず、透明なOVD機能層であってもよい。
【0026】
本発明において、上記OVD機能層2は非接触ICタグの第2のアンテナとして使われる。従って、OVD機能層2の造形がアンテナパターンとなる。OVD機能層2の形としては、例えば図1のような長方形があげられ、その中央には非導電部21を設けることが好ましい。この非導電部21は非導電性を示せばよく、OVD部分を不連続にデザインしたり、非導電性金属を蒸着したりすることも可能である。これにより、非導電部による隙間を目立たなくさせることができ、デザインの制限を緩和することが可能である。
OVDを前述のようにパターン成形する方法としては、金属薄膜層(OVD機能層2)に耐酸あるいは耐アルカリ性樹脂を用いてポジパターンを印刷した後、金属薄膜を酸やアルカリでエッチングする方法が挙げられる。さらには光を露光することによって、溶解するあるいは溶解し難くなる樹脂材料を塗布、所望のパターン状のマスク越しに露光した後、不要部分を洗浄あるいはエッチングで除去する手法が挙げられる。この結果、OVD機能層2の表面には樹脂層から成る絶縁層9が形成される。上述したパターン成形法は一例であり、これらに限定されるものではなく、公知の部分的に金属薄膜を形成する技術であり、かつOVD機能層上に絶縁層9が形成されれば適宜利用可能である。
【0027】
本発明は、前述のOVD機能層2の上に重なるように導電層3を設ける。
導電層3は、例えば導電性ペーストを印刷によって形成する。この導電性ペーストによる導電性材料としては、銀系が好ましく、バインダーの樹脂、溶剤、銀粉を含みそれらの接触により導電性を得る蒸発乾燥型の銀ペーストがあげられる。ただし、導電性材料としては、銀系に限らず、銅、ニッケルなどの金属粉末、導電性カーボン粉末、導電性繊維、導電性ウィスカーなどをバインダーとともに溶媒に溶解または分散したものも使用できる。
【0028】
ICチップ4は、正方形状に形成されており、その辺部の長さ寸法が0.4mm、高さ寸法が0.1mmとされている。なお、辺部の長さ寸法は、0.4mmに代えて、適宜変更可能である。
【0029】
導電層3とICチップ4とは、電気的接合部を介して接続している。電気的接合部とし
ては、ACP(異方性導電ペースト)やACF(異方性導電フィルム)などのような金属粒子と接着剤バインダーから構成され、熱・圧力条件下における接着剤バインダーの硬化により電気的接続が実現されるものが好ましい。
【0030】
本発明においてOVD機能層2は、その導電性を利用して非接触ICタグの第2のアンテナとして用いられる。すなわち、印刷で形成した導電層3を第1のアンテナとした場合、導電性を示すOVD機能層2は補助アンテナであり、それらの組合せによって、外部リーダライタ装置との通信が可能となる。また、OVD機能層2と導電層3との間には絶縁層9があり、この絶縁層9が誘電体となって、導電層3とOVD機能層2とが静電容量結合され電気的に接続される。図1の平面図に示すように、OVD機能層2と導電層3は重なっており、また図2の断面図に示すように、OVD機能層2と導電層3とは上下に重なっている。このOVD機能層2と導電層3の静電容量結合の電気的な結合容量は、通信周波数が2.45GHzの場合、最低でも1PF前後の容量を有していれば高周波的には導通が得られる。
【0031】
なお、絶縁層9の下面に隠蔽層5を設けることも可能である。これにより、ICラベル100を上面から見たときに導電層3およびICチップ4を視認不能にすることが可能になり、デザイン性向上が期待できる。
隠蔽層5は、非導電性インキを印刷することにより形成される。この材料としては、非導電性を有していればよく、各種インキを用いることができる。特に、エポキシ硬化型樹脂やウレタン系樹脂などを用いた場合、耐熱性が優れることから、チップ実装時の加熱・加圧によるラベル基材の収縮を抑えてOVD機能層2の光学的効果を最大限に発揮させることができ、かつ、ACPなどとの密着性も向上して電気的接合強度が向上することが分かっている。
【0032】
図3は、本発明の構成の主要部を説明するための配置概念図である。導電層3は、図3に示すように、導電層3のインピーダンスとICチップ5の内部インピーダンスとが同等となるように調節するためのインピーダンス調節部31が形成されている。具体的には、図3に示すように、インピーダンス調節部31は、導電層3の幅方向に延びる第1スリット311と、導電層3の長手方向に延びる第2スリット312との2本のスリットから構成されており、この造型で導電層3を印刷して形成させている。
導電層3のインピーダンスはその形状によって変化するため、インピーダンス調節部31の形状もそれに伴って適宜変更することが必要である。
【0033】
ラベル基材1には2辺の切込みからなりV字形状のV字状切り込み11が設けられている。このとき、V字形状の方向は、V字形状を形成する1辺112がラベルの剥離方向に対して平行になるように配置することが好ましい。(図1では下から上方向に剥離すると想定した場合)これにより、V字形状を起点としてラベル基材の破壊が剥離方向と平行に進むためのきっかけとなり、確実なラベル基材破壊が見込まれる。
【0034】
本発明では、V字状の切り込みを設けることを特徴とする。通常、単一の直線状の線分から成る切り込みを設けることがあるが、ラベル基材を破壊せずに剥がそうとすると、特別に注意深く剥がすことによって、切り込みを進行させずに剥がし終えることも可能であった。しかしながら、本発明のV字状の切り込みは、剥離方向と平行にできる切り込みと該剥離方向と平行にできる切り込みとは一定の角度を有する切り込みとの組み合わせにより形成されているので、一定距離を特定の方向で進む剥離動作を行う限りにおいて、剥離動作に誘導されて進む切り込みの進行を防ぐことができず、ラベル基材の破壊や導電層および/またはOVD機能層の破断を防ぎつつ剥離することは殆ど不可能になる。
なお、V字状の切り込みの一辺は、非接触ICラベルの形状と使用形態とから通常考えられる剥離方向と平行にできるように設けるとともに、一辺が前記と逆方向の場合や全く異
なる角度の場合も含めて複数のV字状の切り込みを設けることもできる。
【0035】
V字形状の角度θは120度以下であることが好ましい。ある程度の角度があればその頂点近傍をきっかけとしてラベル基材の破壊が進行する。
特にV字形状の角度θが25度以上60度以下であることが好ましい。これは、角度が25度よりも小さい(V字底辺の長さが短すぎる)、もしくは60度よりも大きい(V字底辺の長さが長い)場合、V字状切り込み11を起点としてラベル基材1の破壊が進み、非接触IC媒体の導電層3まで至った際に、破断力を伝える効率が小さくなってしまうため、完全に通信機能を破断させることが出来ない場合があるからである。
【0036】
また、V字形状のV字切り込みの長い方の1辺112の長さが5mm以上であることが好ましい。1辺の長さが5mm以下である(V字面積が小さい)場合、V字切込み11を起点としてラベル基材1の破壊が進み、非接触IC媒体の導電層3まで至った際に、破断力を伝える効率が小さくなってしまうため、完全に通信機能を破断させることが出来ない場合があるからである。
特にV字形状の角度θが25度以上60度以下であり、かつ長い方の1辺112の長さが5mm以上であることが好ましい。
【0037】
またさらに図3のように、V字状切り込みの1辺112が、導電層3に形成されたインピーダンス調節部31(この場合、第2スリット312)の周辺位置に達するように設けることが好ましい。具体的には、前記V字状切り込みのうちの1辺112が、1つのスリット312に対してほぼ垂直な関係で設けられ、該1辺112の中でスリットに最も近い開放端が前記スリット312から5mm以内の位置にあることが好ましい。
これにより、被貼付体から非接触ICラベル100を剥がすと、前記ラベル基材1上のV字状切り込み11の働きによって、第2スリット312が破断される。第2スリット312を破断させると、実質的なインピーダンスが当初の適切な範囲からずれてしまい、例えば利用する波長が不適切な波長に変化してしまう等の不具合を招く。すなわち、この非接触IC媒体のICチップとデータ通信を行おうとしてもデータ通信が巧く出来ないか又は全く出来ないことになり、通信機能を完全に破壊することが可能となる。
但し、前記V字状切り込みの1辺の開放端が前記スリットに接近し過ぎると、製造時の型抜き工程でのズレの影響を受けて、通常時の通信機能を乱す恐れがあるので、通信機能に影響を及ぼさない距離、すなわちインピーダンス調節部を構成するスリットからの距離が0.8mm以上の位置に前記V字状切り込みの1辺の中でスリットに最も近い開放端を設けることとする。
【0038】
前述のように、OVD機能層2は、その導電性を利用して、非接触ICタグの導電層3と静電容量結合して第2のアンテナとして用いられる。よって、通信特性を保とうとした場合、V字状切り込みのパターンには、OVD機能層との関連で制約を設けた方が好ましい。即ち、V字状切り込みの前記導電層上の部分の深さをOVD機能層まで切り込みが侵入しない程度のハーフカット状態の深さとする。例えば、レーザー装置を用いることにより精度よく深さ方向の制御が可能であり、自由に切り込みパターンを形成することが可能となる。
これにより、V字状切り込みの1辺112を長くして、かつ図3のように導電層に重なるまで至るように設けることができるので、第2スリット312をより確実に破断することができる。
【0039】
導電層3は、導電ペーストなどを用いて印刷で設けられているため、脆い構造である。そのため、V字状切り込みをきっかけとしてラベル基材の破壊と同時に導電層3の破断が確実なものとなる。
【0040】
このように本発明では、ラベル基材を剥離しようとするとラベル基材が破壊すると同時にICタグのアンテナ機能を有する導電層が破断し、アンテナの長手方向の電圧差の発生効率が低下したり、アンテナとICチップとのインピーダンスマッチングの条件が悪くなったり、又はアンテナとICチップとの電気的接続が破断されるなどして、ICチップの稼動が停止したり、ICチップからの情報読み出しが正常に行われなくなる。この為、ICチップの情報が読み出せないということは、アンテナやICチップの不具合、及びこの組み合わせ条件の悪化を意味することになり、これは非接触ICラベルの破壊や剥離を試みようとした履歴、又はそれら破壊や剥離を試みようとする行為があった可能性を示唆する事となる。
【0041】
また、ラベル基材1をさらに破断し易くするために、図1に示すように、ラベル基材1の周縁部から内側方向に、切り込み12が形成されている。なお、切り込み12の形状は、図のように単純な線分状でも良いが、必要に応じて適宜変更可能であり、また通信機能に影響を及ぼさない限りでは、図2のようにOVD機能層に達する深さまで切込みを入れることも可能である。
【0042】
また、本発明ではV字状切り込み11の仮想交点114近傍の先端部に切り込みが不連続である留め部113を設けることを特徴とする。
留め部113が無く、切り込みが連続している場合には、セパレータ8からラベルを剥がして使用する際にラベルが破壊してしまう場合がある。また、本発明による非接触ICラベルの一使用例を示す説明図である図4において、被貼付体200にL字状に曲げて非接触ICラベル100を貼る場合には、V字状切り込み部が浮いてしまう恐れがあるため、V字状切り込み形状の角度や大きさが被貼付体に合わせて限定されてしまい、剥離時のラベル基材やアンテナの破壊の実現率が低下してしまう可能性がある。
しかし、本発明のように留め部113を設けることにより、セパレータからラベルを剥がす際にラベルが破壊してしまうことや、被貼付体に曲げて貼る場合にV字状切り込み部が浮いてしまう、などの問題が発生せず、さらに自由にV字状切り込み11を設計することができるため、被貼付体200の形体に限定されずに、剥離時のラベル基材やアンテナの破壊に対して最も確実なV字形状を選定することが可能となる。
また留め部113の大きさとしては、前記V字状切り込みの仮想交点を中心に規定すると、直径0.5〜3.0mmの円形領域であることが好ましい。この大きさは、セパレータから剥がす際にラベルが破壊しない、かつ、被貼付体からラベルを剥離する際にラベル基材が確実に破壊する範囲である。
なお、ここでいう留め部113の大きさとは、V字状の2辺の切り込みの不連続な部分を形成する大きさが前記円形領域の範囲内であるということである。
【0043】
ラベル基材1としては、絶縁性材料であれば特に限定されるものはなく、例えばPET、PVC、ABS、紙等が挙げられる。また、ラベル基材1とOVD機能層2との間に第二の剥離層を設け、被貼付体から非接触ICラベル100を剥がす際にOVD機能層2から剥がれるような構造を持たせることもできる。
【0044】
接着層7の材料としては、アクリル系の熱接着剤、ホットメルト樹脂(例えば、ポリアミド、ウレタン、EVA等)、又は粘着剤等が挙げられる。
【0045】
また、接着層7の表面には、容易に剥離できるような剥離シートから成るセパレータ8が仮粘着されている。剥離シートとしては、紙製又はプラスチック製のシートにシリコン樹脂などの離型材層がコーティングなどによって積層されているセパレータが用いられる。
【0046】
以上より、本発明における光学機能付き非接触ICラベルは、ラベルを被貼付体から剥
がそうとする際に、インピーダンス調整部周辺に設けられたV字状の切り込みを起点として、ラベル基材の破壊を効率よく進めることができ、さらに同時に通信機能を不能にすることが確実に可能となる。また、V字状切り込みの先端部に留め部を設けることによって、セパレータからラベルを剥がす際に破壊させることなく、かつ被貼付体に貼り付けた際に浮きなく貼ることが可能となり、被貼付体の形体に限定されず、アンテナ破断に最も効率のよいV字状切り込みを設計することが可能である。
また本発明の光学機能付き非接触ICラベルは、OVD機能層および導電層をアンテナとして機能しているため切り込みパターンには制約が生じるが、V字状切り込みをOVD機能層まで切り込みが侵入しない程度のハーフカット状態の深さとすることにより、自由に設計が可能となり、より破壊しやすいパターン形状、および位置に切り込みを設けることが可能である。
【実施例1】
【0047】
〈ホログラムラベル基材の作製〉
50μmの厚さのPETフィルムに、グラビアコート法を用いてウレタン系樹脂にてホログラム形成層を塗工、その上に真空蒸着法を用いて80nmのアルミニウム反射層を形成した後、ホログラム画像をエンボスで形成してホログラム蒸着シートを作製した。このシートにポリアミドイミド樹脂インキを用いてアンテナパターンを印刷し、アルカリエッチング法にて図1の形状に成形した。ポリアミドイミド樹脂インキ層が絶縁層9としてアルミニウム金属層を含むOVD機能層2を覆う構造が得られる。
〈隠蔽層の形成〉
下記配合によりインキを作製し、ラベル基材のホログラム面側にスクリーン印刷(460メッシュ)にて全面印刷・乾燥を行って、隠蔽層5を設けた。
主剤 T1000 710ブラック 100部((株)セイコーアドバンス製)
硬化剤 T1000速乾硬化剤No.5 50部((株)セイコーアドバンス製)
溶剤 K705溶剤 25部(東洋インキ製造(株)製)
〈導電層の形成〉
前述のラベル基材の隠蔽層側に、ポリエステル樹脂に銀粉を分散させた銀ペーストをスクリーン印刷(350メッシュ)にて印刷し、60℃ 30秒遠赤外乾燥後、60℃ 20分の温風乾燥機にて乾燥を行って5μm厚みの導電層3を得た。この際、図3のようにインピーダンス調整のためT型パターンを有するように印刷した。この導電層に0.4mm角のICチップ4の2つの端子をACP(異方性導電ペースト)により接合した。
〈接着層の形成〉
クラフト紙の片面にポリエチレンをラミネートし、その上にシリコン処理を施した剥離シート(厚さ112μm)にアクリル系の粘着剤を塗布し、これを上記基材に転写することで接着層を設けた。
〈切り込みの形成〉
図1のように、ラベル周囲(長さ5mm、4mm間隔)、および図3のようにインピーダンス調整部から0.8mmの位置にV字形状の1辺が入るように配置して先端部に留め部を設けたV字状切り込み(角度33度、長さ5mm、留め部直径1.5mm)を設計した抜き型を作製し、前記ICラベルを抜き型で抜いてICラベルAを作製した。
【実施例2】
【0048】
<比較例1>
実施例1と同様にしてICラベルBを作製した。但し、V字状切り込み11のない形状とした。
【実施例3】
【0049】
<比較例2>
また、実施例1と同様にしてICラベルCを作製した。但し、V字状切り込み11に11
3の留め部のない切り込みが連続した形状とした。
【0050】
このようにして作製した、実施例1及び比較例1,2のICラベルA,B,Cを、図4のように商品が内蔵されたボックス状の被貼付体200に非接触ICラベル100として貼り付けた。その後、ICラベルをボックス状の被貼付体から慎重に剥がした。
【0051】
実施例1のICラベルAでは、V字状の切り込みを起点にして、まずラベル基材が破断し、その後導電層にまで進行してインピーダンス調節部を破断、完全に通信機能を破壊することができた。
【0052】
それに対し、比較例1のICラベルBでは、勢いよく剥がした際には周辺の切り込み12からラベル基材の破断が期待できるが、慎重に剥がした際にはラベルは破断しなかった。特に、インピーダンス調節部を破断しないため、通信機能を完全に破壊することは困難であった。
【0053】
また、比較例2のICラベルCでは、まずセパレータから剥がす際にV字状切り込み部が破壊した。さらにボックスBの角部に貼り付けた際に、V字状切り込み部が浮いてしまい、貼付時の作業効率が非常に悪く、またラベルとしての機能も損なってしまった。
【0054】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・・ラベル基材
11・・・V字状切り込み
111・・V字形状を形成する1辺
112・・V字形状を形成する1辺
113・・留め部
114・・仮想交点
12・・・切り込み
2・・・・OVD機能層
21・・・非導電部
3・・・・導電層
31・・・インピーダンス調節部
311・・第1スリット
312・・第2スリット
4・・・・ICチップ
5・・・・隠蔽層
7・・・・接着層(粘着層)
8・・・・セパレータ
9・・・・絶縁層
100・・非接触ICラベル
200・・被貼付体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で外部装置とデータの送受信を行う非接触ICラベルであって、
透明なラベル基材と、前記ラベル基材の下面に設けられた目視で光学的な効果を呈しかつ導電性を有するOVD機能層と、前記OVD機能層の下面に接合されて設けられ、前記ICラベルを構成するICチップのアンテナとして機能するためのインピーダンス調節部を有する導電層と、前記OVD機能層と前記導電層との間に設けられ、前記OVD機能層と前記導電層とを静電容量結合させるための絶縁層と、を備える光学機能付き非接触ICラベルにおいて、
該光学機能付き非接触ICラベルに2辺の切り込みからなるV字状の切り込みが設けられ、該V字状切り込みの仮想交点近傍の先端部に切り込みが不連続である留め部を有することを特徴とする光学機能付き非接触ICラベル。
【請求項2】
前記V字形状を形成する2辺の切り込みのなす角度が25度以上かつ60度以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学機能付き非接触ICラベル。
【請求項3】
前記V字形状を形成する2辺の切り込みのうち、長い方の1辺の長さが5mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学機能付き非接触ICラベル。
【請求項4】
前記V字状切り込みのうちの1辺が、前記インピーダンス調節部を形成する1つのスリットに対してほぼ垂直な関係で設けられ、該1辺の中でスリットに最も近い開放端が前記スリットから0.8mm以上5mm以内の位置にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学機能付き非接触ICラベル。
【請求項5】
前記V字状切り込みのうち、前記導電層の存在する領域の上方に位置するV字状切り込みの部分が存在し、その部分の深さが、前記OVD機能層まで切り込みが侵入しない程度のハーフカット状態の深さとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学機能付き非接触ICラベル。
【請求項6】
前記留め部の大きさが、前記V字状切り込みの仮想交点を中心に規定すると、直径0.5mm〜3.0mmの円形領域であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学機能付き非接触ICラベル。
【請求項7】
前記ラベル基材の周縁部から内側方向に切り込みを設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学機能付き非接触ICラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−28373(P2011−28373A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171133(P2009−171133)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】