説明

光学機能膜貼着装置

【課題】異なる複数サイズの基板への光学機能膜を貼着するに当って、光学機能膜を吸着保持する部材の吸着孔の開閉機構の構成を簡略化でき、基板に貼り付ける際に、空気の巻き込みを防止する。
【解決手段】左右に設けたホルダドラム10,10に複数の吸着孔11aからなる先頭吸着孔群11Hと、小判後端側吸着孔群11S,中判後端側吸着孔群11M,大判後端側吸着孔群11Lが形成され、積層フィルム体4S,4M,4Lの偏光フィルム2S,2M,2Lのいずれかの先端部を先頭吸着孔群11Hに、後端側の部位を吸着孔群11S,11M,11Lに吸着させて、パネル基板1S,1Mまたは1Lをホルダドラム10,10間に挟持させて、これらホルダドラム10を回転させることにより偏光フィルムをパネル基板側に貼着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等からなる薄板で長方形や正方形といった四角形状の基板に偏光板,位相差板,反射防止フィルムその他の光学機能膜を貼着するための光学機能膜貼着装置に関するものであり、特に異なるサイズの基板に、それぞれほぼ全面に光学機能膜を密着するように貼着できる光学機能膜貼着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラス基板等からなるパネル基板の表裏両面またはいずれか一方の面に偏光板,位相差板,反射防止フィルムその他の光学機能を有する光学機能膜が貼り付けられる。これら光学機能膜はフィルム部材で形成され、その表面に保護膜が積層されて積層フィルム体として構成するのが一般的である。そして、保護膜はパネル基板に貼り付ける直前に光学機能膜から剥離される。従って、光学機能膜貼着装置は、光学機能膜と保護膜とを積層した積層フィルム体を位置決め保持するようになし、次いで保護膜を剥離し、その後に基板に貼り付けることになる。
【0003】
光学機能膜の貼着装置としては、特許文献1のように構成したものが従来から用いられている。この公知の装置は、光学機能膜としてフィルム状の偏光板を液晶セル基板に貼り付けるように構成したものであり、基板は立てた状態で搬送され、この搬送経路の途中位置に所要の処理がなされるものである。この処理としては、まず基板の洗浄・乾燥が行われ、次のステージで偏光板が貼着されることになる。偏光板には保護フィルムが積層されて、積層フィルムとして構成されており、基板に貼着される前に、保護フィルムは除去される。このために、偏光板と保護フィルムとの積層フィルムを概略垂直方向に向けた吸着面を有するセットテーブルが基板の搬送ラインの両側に配置されており、このセットテーブルの吸着面に保護膜を外側にして積層フィルムが吸着保持させるようにしている。そして、偏光板から保護膜を剥離して、基板が搬送されると、両側のセットテーブルを基板に向けて移動させ、両側から加圧することによって、基板の両面に偏光板が貼着される。
【特許文献1】特開2004−144913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した偏光板と保護フィルムとからなる積層フィルムを吸着保持するセットテーブルは、その表面全体に吸着孔が設けられており、この積層フィルムが全面で吸着保持されることになる。従って、セットテーブルは原則的には1つのサイズの積層フィルムしか保持できない。即ち、セットテーブルに保持可能なサイズの積層フィルムより小さいサイズの積層フィルムを保持させる場合には、一部の吸着孔が開放状態となってしまう。従って、一部の吸着孔を閉鎖させなければならないが、この吸着孔の閉鎖はセットテーブルの縦横に及ぶことになるので、使用しない吸着孔を閉鎖するための吸着孔開閉機構の構成が複雑になってしまう。しかも、サイズが多様になれば、その分だけ開閉しなければならない吸着孔が増えることから、吸着孔開閉機構はさらに複雑かつ大型化する。
【0005】
一方、基準サイズの積層フィルムより大きいサイズのものを保持させる場合には、開放状態になる吸着孔は存在しないが、積層フィルムの全面に対して吸着力を作用させることができなくなる。その結果、偏光板が部分的に浮き上がることがある。特に、積層フィルムの平面度が正確に確保されておれば良いが、カールした状態等、平面度が確保されていない場合には、偏光板と基板との間に空気が巻き込まれることになる。このように、偏光板と基板との間に空気が気泡として巻き込まれると、たとえ貼着後に偏光板の表面をしごくようにしても、巻き込んだ気泡を除去できないことがある。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、異なる複数サイズの基板への光学機能膜を貼着するに当って、光学機能膜を吸着保持する部材の吸着孔の開閉機構の構成を簡略化でき、しかも基板に貼り付ける際に、空気の巻き込みを確実に防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明は、薄板方形を有する基板に光学機能膜を貼着するための装置であって、前記光学機能膜を外周面に巻き付けるホルダドラムと、前記ホルダドラムの外周面に開口し、前記光学機能膜の先頭位置に対して負圧吸引力を作用させるために、前記ホルダドラムの軸線方向に配列した複数の吸着孔からなる先頭吸着孔群と、前記先頭吸着孔群から円周方向に所定間隔だけ離れた位置において、それぞれサイズの異なる光学機能膜の後端側部位に対して負圧吸引力を作用させるために、所定の間隔を置いて形成され、前記ホルダドラムの軸線方向に配列した複数の吸着孔からなる後端側吸着孔群と、前記各吸着孔群をそれぞれ負圧源と接離する切換手段と、前記ホルダドラムを回転させて、前記基板をこのホルダドラムに巻き付けた前記光学機能膜に押圧させながら前進させる駆動手段とから構成したことをその特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、積層フィルム体を保持する手段としては、テーブルのように平面形状のものではなく、積層フィルム体を巻回するようにして保持するドラム形状のものを用いる。そして、このドラムの外周面に吸着孔を開口させて、積層フィルム体を吸着保持するホルダドラムとして構成する。ホルダドラムには、所定の位置に複数の吸着孔をその軸線方向に向けて配列することによって、積層フィルム体の先頭部分に対して負圧吸引力を作用させて、吸着保持する。積層フィルム体は、異なるサイズのものであっても、常に先頭位置を同じにすることができる。そこで、吸着孔は積層フィルム体の先頭部分を吸着するように、ホルダドラムの外周面における所定の位置に、このホルダドラムの軸線方向に向けて複数の吸着孔を配列する。これが先頭吸着孔群である。
【0009】
積層フィルム体は、その先頭部分を吸引保持させた状態から、ホルダドラムに押圧しながら巻き付けるようにするが、ホルダドラムの回転時にホルダドラムを回転駆動し、かつ積層フィルム体を押し付けローラによりホルダドラムの外周面に押圧するように巻き付ける。これによって、光学機能膜はホルダドラムの外周面に密着する。この押し付けローラでこれによって、たとえ積層フィルム体がカールしたり、部分的に曲がったりしていたとしても、真っ直ぐに伸ばされて、全面がホルダドラムの外周面に確実に密着する。
【0010】
積層フィルム体は、その中間位置をホルダドラムに吸着させず、後端側に負圧吸引力を作用させる。このために、ホルダドラムの外周面に後端側吸着孔群を設ける。この後端側吸着孔群による積層フィルム体の吸着は、後端部でなければならない訳ではなく、後端側における端部近傍位置とすることができる。従って、積層フィルム体の後端側は部分的に自由状態となることがあるが、たとえ後端部が自由状態となっていても、格別支障を来さない。ただし、自由状態の部分があまり長くなると、ホルダドラムへの巻き付けの安定性を欠くことがある。
【0011】
ホルダドラムには複数種類の積層フィルム体が吸着保持できるようにする。どのサイズの積層フィルム体であっても、先頭位置を一定にする。従って、後端位置はサイズにより異なってくる。必ずしも積層フィルム体の後端の縁部ではなく、後端近傍の位置を吸着させれば良いことから、積層フィルム体のサイズが多少異なっていても、共通の後端側吸着孔群とすることができる。
【0012】
例えば、積層フィルム体を大判サイズ、中判サイズ、小判サイズの3種類として、それぞれのサイズ範囲の積層フィルム体のうち、最も小さいものの後端部を吸着できる位置に後端側吸着孔群を形成することができる。この場合には、ホルダドラムの外周面に、先頭吸着孔群と、3列の後端側吸着孔群とから構成される。先頭吸着孔群及び後端側吸着孔群はそれぞれライン状に配置されるが、それぞれの群の吸着孔は各々負圧チャンバに接続して、負圧吸引力の作用を制御するように構成する。即ち、負圧チャンバと負圧源との間にバルブを設けて負圧の切り換えを行うようにする。
【0013】
積層フィルム体のサイズは長辺側だけでなく、短辺側も異なってくる。ホルダドラムにおいて、積層フィルムの長辺部を円周方向に向けたとして、後端側吸着孔群はそれぞれのサイズに応じて軸線方向における吸着孔の配設領域を形成すれば良いが、先頭吸着孔群はサイズに関係なく、積層フィルム体の端部を吸着させることになる。従って、短辺方向の長さが異なる場合には、先頭給吸着孔群の長さ方向の領域を変化させるようにする。このためには、先頭吸着孔群を構成する各吸着孔と負圧チャンバとの間を接離可能に構成すれば良い。
【0014】
基板に光学機能膜を貼着するために、まず積層フィルム体から保護膜を剥離する。保護膜剥離手段を設け、積層フィルム体の先頭側(若しくは後端側であっても良い)から保護膜を剥離する。保護膜剥離手段の具体的な構成としては、粘着部材を有するものとし、この粘着部材を保護膜に押し付けることによって、粘着部材に保持させて、光学機能膜から引き剥がすことができる。
【0015】
光学機能膜を基板に貼着するには、光学機能膜と基板との間に押圧力を作用させ、かつホルダドラムを回転させる。また、必要に応じて基板を前進させるようにすることもできる。基板の一側の面のみに光学機能膜を貼着する場合と、基板の両面に光学機能膜を貼着する場合とがある。いずれにしろ、光学機能膜と基板との間に押圧力を作用させるために一対のドラムを用いるのが望ましい。片面に光学機能膜を貼着する場合には、一方のドラムを光学機能膜が保持されているホルダドラムとし、他方のドラムは基板を押圧するための押圧ドラムとする。また、両面に光学機能膜を貼着する場合は、両ドラムが光学機能膜を保持したホルダドラムとする。
【0016】
光学機能膜を基板に貼着する前の段階で、ホルダドラムに積層フィルム体を保持させ、その後に保護膜を剥離する。このために、押圧ドラムまたは他のホルダドラムに対して近接・離間する方向に変位可能とする。また、ドラムの回転と基板の直進とは、それぞれに駆動手段を設けるようにしても良いが、一対のドラムに基板を差し込む場合には、ドラムを回転させるだけで、基板を直進駆動させることができる。ただし、基板がドラム間に差し込まれるまでは基板を直進方向に送るようにする。また、ホルダドラムにおいて、先頭及び後端側の各吸着孔群が基板と対面する位置となったときには、それぞれの吸着孔群に対する負圧を解除することになる。
【発明の効果】
【0017】
異なる複数サイズの基板に光学機能膜を貼着するに当って、この光学機能膜をホルダドラムに吸着保持させることによって、各吸着孔及びその負圧源との接離構造を簡略化することができ、かつこの光学機能膜を基板に貼り付ける際に、空気の巻き込みを防止して、正確な貼着を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、基板として、液晶ディスプレイのパネル基板の表裏両面に、光学機能膜として、偏光フィルムを貼着する装置として構成したものについて説明する。ただし、パネル基板の片面に偏光フィルムを貼着するものであっても、また光学機能膜として位相差板,反射防止フィルムその他の光学機能を有する光学機能膜であっても良い。さらに、基板としては、少なくとも一側の面に光学機能膜を貼着するものであれば、液晶ディスプレイのパネル基板以外にも、各種のフラットディスプレイやそれ以外の基板にも適用可能である。
【0019】
まず、図1において、1はパネル基板であり、2,2は偏光フィルムである。パネル基板1は液晶が封入された上下2枚のガラス基板から構成されている。このパネル基板1の表裏両面に貼着される偏光フィルム2は、そのほぼ全面に及んでいる。図2に示したように、偏光フィルム2はそのパネル基板1への貼着面が保護膜3で覆われて積層フィルム体4として構成されており、この積層フィルム体4は長手方向を円周方向に向けるようにしてホルダドラム10の外周面に巻き付けて吸着保持される。基板1に貼着する直前に保護膜3が剥離されて、保護膜3を剥離した偏光フィルム2がパネル基板1の表面に貼着されることになる。
【0020】
ここで、本発明の偏光フィルム貼着装置は、異なる複数のサイズを有するパネル基板1の表裏両面に偏光フィルム2を貼着できるようにしている。液晶ディスプレイは様々なサイズのものがあり、以下の説明においては、例えば26インチ〜57インチのサイズのものにおいて、それぞれのほぼ全面に偏光フィルムを貼着することができるように構成したものについて説明するが、対応可能なサイズについては、以上のものに限定されるものではない。そして、パネル基板を小判,中判及び大判の3段階のサイズに分けるようにしている。ここで、以下の説明においては、小判サイズのパネル基板を1Sとし、中判サイズのパネル基板を1M、大判サイズのパネル基板を1Lとし、またこれら各種のパネル基板1S,1M,1Lに貼着される偏光フィルムをそれぞれ2S,2M,2Lとする。さらに、各サイズの偏光フィルム2S,2M,2Lを構成する積層フィルム体を4S,4M,4Lとして引用する。なお、この偏光フィルム貼着装置で取り扱われるのは、最大サイズのパネル基板1Gに対する偏光フィルム2Gの積層フィルム体4Gまでである。
【0021】
ホルダドラム10には、積層フィルム体4を吸着保持するために、多数の吸着孔11aが設けられている。そこで、図3にホルダドラム10を展開して示す。同図において、矢印はホルダドラム10の回転方向である。このホルダドラム10には、吸着孔11aが軸線方向に向けて所定のピッチ間隔で配列されて、吸着孔群を構成している。図示したものにあっては、吸着孔群は4群形成されており、第1群の吸着孔群は先頭吸着孔群11Hである。また、この先頭吸着孔群11Hより回転方向の後方側には、第2群乃至第4群の後端側吸着孔群11S,11M,11Lが設けられており、これらはパネル基板1の後端側を吸着するものである。第2群は小判サイズのパネル基板1Sに貼着される偏光フィルム2Sを含む積層フィルム体4Sの後端部を吸着する小判後端側吸着孔群11S、第3群は中判サイズのパネル基板1Mに貼着される偏光フィルム2Mを含む積層フィルム体4Mの後端部を吸着する中判後端側吸着孔群11M、第4群は大判サイズのパネル基板1Lに貼着される偏光フィルム2Lを含む積層フィルム体4Lの後端部を吸着する大判後端側吸着孔群11Lである。
【0022】
ここで、小判サイズのパネル基板1Sは1種類ではなく、小判後端側吸着孔群11Sで吸着可能なサイズから、中判後端側吸着孔群11Mの配設位置の手前位置までのサイズの任意のサイズの積層フィルム体を吸着させることができる。ただし、小判後端側吸着孔群11Sに届かないサイズのものは取り扱わない。勿論、それ以下のサイズのパネル基板を取り扱う場合には、先頭吸着孔群11Hに近い位置にさらに吸着孔群を設けるようにする。中判後端側吸着孔群11Mでは、中判サイズのパネル基板11M用の積層フィルム体4Mから大判後端側吸着孔群11Lに届かないサイズのものまで吸着させるようにする。さらに、大判後端側吸着孔群11Lは大判サイズのパネル基板1L用の積層フィルム体4Lより大きい最大サイズのパネル基板1Gまで取り扱われる。そして、大判後端側吸着孔群11Lで吸着可能なサイズの積層フィルム体4Lより大きなサイズのものを取り扱うには、大判後端側吸着孔群11Lよりさらにホルダドラム10の回転方向の後方側に吸着孔群を設ければ良い。
【0023】
各吸着孔群11を構成する吸着孔11aはそれぞれ負圧チャンバ12H,12S,12M,12Lに接続されている。そして、これら各負圧チャンバ12H,12S,12M,12Lは、切換手段としての開閉弁13H,13S,13M,13Lを介して負圧源14と接続されている。従って、開閉弁を操作することによって、任意の吸着孔群を構成する各吸着孔11aが負圧源14と接続される。パネル基板のサイズに拘わらず、先頭吸着孔群11Hの吸着孔11aが負圧チャンバ12Hからの負圧吸引力によって、先頭側の端部近傍位置が吸着保持される。そして、パネル基板の後端側は、そのサイズに応じて端側吸着孔群11S,11M,11Lのいずれかが負圧チャンバ12S,12M,12Lと接続されて、負圧吸引力が作用するようになっている。
【0024】
ここで、パネル基板1のサイズが異なると、長辺側だけでなく短辺側の長さも異なってくる。そこで、どのサイズのパネル基板であっても、下端側のコーナが基準位置に設定されるように設定されている。従って、先頭吸着孔群11Hにおいて、上部側に位置する吸着孔11aは、パネル基板のサイズに応じて閉鎖することによって、外部に負圧チャンバ12Hが外部と連通しないように保持する。このために、可動隔壁15を設けて、この可動隔壁15を上下方向にスライド変位させることによって、先頭側吸着孔群11Hを構成する上方の一部の吸着孔11aには負圧吸引力を作用させないように設定することができる。
【0025】
ホルダドラム10は、その回転軸16を水平状態に配置することができ、また垂直状態に配置しても良い。さらに、垂直方向から左右いずれかの方向に所定角度傾けた状態にすることもできる。いずれにしろ、図4に示したように、ホルダドラム10は、回転軸16が平行となるようにして2個設けるようになし、両ホルダドラム10は近接・離間する方向に変位可能となっている。そして、これらの回転軸16は、同図に矢印RL,RRで示したように、相互に反対方向に回転駆動されるようになっている。パネル基板1は回転軸16が水平方向に配置されている場合には、パネル基板1も水平とし、また回転軸16が垂直乃至垂直に近い角度としている場合には、パネル基板1もそれと平行になるように設置する。そして、パネル基板1は図示しない搬送手段によって、ガイドレール17に沿って搬送されるように構成されている。また、ホルダドラム10は、その回転軸16を回転駆動する回転駆動手段と、左右のホルダドラム10,10を相互に近接・離間させる方向に移動させる往復動移動手段を有する駆動機構に装着されることになるが、その図示及び詳細な説明は省略する。
【0026】
各ホルダドラム10の駆動機構には、積層フィルム体4をホルダドラム10の外周面に押し付けるための押し付けローラ20及び積層フィルム体4から保護膜3を剥離する保護膜剥離手段21が付設されている。ここで、押し付けローラ20はホルダドラム10に対して近接・離間する方向に変位可能となっている。また、保護膜剥離手段21は本体部21aに、粘着部材からなる剥離ローラ21b及び剥離用爪21cを備えるものである。従って、剥離ローラ21bを保護膜3に押し付けて粘着させ、次いで剥離ローラ21bと剥離爪21cとの間で保護膜3を挟持させ、この保護膜剥離手段21の全体をホルダドラム10から引き離すことによって、保護膜3が偏光フィルム2から剥離される。その後に、偏光フィルム2がパネル基板1に貼着されることになる。さらに、ホルダドラム10の外周部において、押し付けローラ20の回転方向の前方位置にテンションロッド22が配置されており、このテンションロッド22はホルダドラム10に支持されている積層フィルム体4の保護膜3に当接可能となっている。これによって、保護膜3が保護膜剥離手段21により偏光フィルム2から引き剥がされる際に、この保護膜3に張りが与えられるようになる。
【0027】
そこで、図5乃至図10に基づいてパネル基板1に偏光フィルム2を貼着する方法について説明する。以下においては、パネル基板の一例として、中判サイズのパネル1Mに、このサイズに合った偏光フィルム2Mを表裏両面に貼着するものとする。従って、積層フィルム体としては、中判サイズの積層フィルム体4Mが用いられる。この場合には、先頭吸着孔群11Hと、中判後端側吸着孔群11Mに負圧吸引力を作用させることができ、小判後端側吸着孔群11S及び大判後端側吸着孔群11Lには負圧吸引力を作用させない状態とする。また、先頭吸着孔群11Hにおいて、下端部の吸着孔11aから積層フィルム体4Mの短辺の長さ分以上の高さ位置にある吸着孔11aは可動隔壁15により閉鎖状態とする。
【0028】
まず、図4に示されているように、左右両側に配置したホルダドラム10,10を離間させた状態にして、それらを回転駆動すると共に、積層フィルム体4Mを移動させて、この積層フィルム体4Mの先端がホルダドラム10の接線方向において、先頭吸着孔群11Hと対面する位置に位置調整する。そして、積層フィルム体4Mをホルダドラム10の外周面に当接させ、かつ先頭吸着孔群11Hの各吸着孔11aが接続されている負圧チャンバ12Hを負圧源14と連通させて、この先頭吸着孔群11Hにより積層フィルム体4Mの先端部分を吸着させる。ここで、積層フィルム体4Mは必ずしもその先頭側の端部位置を吸着させる必要はなく、先端近傍位置が吸着されれば良い。
【0029】
そして、積層フィルム体4Mがホルダドラム10に吸着されている部位の外側から押し付けローラ20を当接させて、所定の加圧力を作用させる。これによって、積層フィルム体4Mの先頭位置のホルダドラム10へのセットが行われたことになる。ここで、ホルダドラム10と積層フィルム体4Mと押し付けローラ20とを当接させるために、いずれの側を作動させても良いが、ホルダドラム10を2段階で変位させることにより積層フィルム体4Mの先頭位置がホルダドラム10にセットされる。
【0030】
次に、図5に示したように、積層フィルム体4Mをホルダドラム10に巻き付ける。この動作は、押し付けローラ20で積層フィルム体4Mをホルダドラム10に押圧しながら、ホルダドラム10を回転駆動するようにして行われる。これによって、積層フィルム体4Mはホルダドラム10の外周面に密着する。そして、この積層フィルム体4Mの後端部がホルダドラム10の中判後端側吸着群11Mの部位に当接すると、開閉弁13Mにより負圧チャンバ12Mを負圧源14と接続することによって、積層フィルム体4Mの後端部が吸着される。
【0031】
ここで、積層フィルム体4Mは押し付けローラ20によりホルダドラム10の外周面に押し付けられながら巻き付けられるので、この積層フィルム体4Mの後端部までホルダドラム10の外周面に密着することになる。従って、自由状態では積層フィルム体4が短辺方向または長辺方向にカールしていたり、湾曲していたりする等のように曲がり癖があっても、この曲がり癖を矯正することができて、ホルダドラム10の外周面に密着させることができる。
【0032】
そして、図6に示したように、この積層フィルム体4Mのホルダドラム10への巻き付けが完了した後、若しくは巻き付けを行っている間に、積層フィルム体4Mから保護膜3が剥離される。このために、保護膜剥離手段21が設けられており、この保護膜剥離手段21の本体部21aを作動させて、剥離ローラ21bを積層フィルム体4Mの先頭部位に当接させることによって、保護膜3の端部を粘着させる。その後に、本体部21aをホルダドラム10から離間する方向に僅かに変位させて、保護膜3の端部を捲り上げるようになし、剥離用爪21cを作動させて、剥離ローラ21bと剥離用爪21cとの間で保護膜3の端部を把持する。その後、保護膜剥離手段21を大きく変位させて、保護膜3を剥離する。この動作の途中で保護膜3はテンションロッド22に当接することになり、それ以後はこのテンションロッド22の位置が剥離端位置となる。
【0033】
両側のホルダドラム10において、積層フィルム体4Mから保護膜3が剥離されて、それらの先頭吸着孔群11Hの位置がガイドレール17と対面するまで回転させて、図7に示した状態とする。これによって、積層フィルム体4Mから保護膜3を剥離した偏光フィルム2Mの先端部分が相互に対面する状態となる。この状態から、図8に示したように、左右両側のホルダドラム10,10を相互に近接させると共に、ガイドレール17に沿ってパネル基板1Mの先端を両ホルダドラム10,10間に差し込ませて、パネル基板1Mの両面に偏光フィルム2Mを押圧するようにして挟持させる。このために、ホルダドラム10,10間の近接時の間隔はパネル基板1Mの厚みとほぼ一致させるようにしておく。そして、ホルダドラム10,10を図9に矢印で示した方向に回転駆動するが、このときには開閉弁13Hを閉じて、両ホルダドラム10,10における先頭吸着孔群11Hを構成する各吸着孔11aにおける負圧吸引力を解除する。これによって、偏光フィルム2Mはホルダドラム10側からパネル基板1M側に密着する状態に移行することになる。
【0034】
ホルダドラム10,10の回転によりパネル基板1Mが進行し、ホルダドラム10に保持されていた偏光フィルム2Mは、このホルダドラム10の外周面から離れて、パネル基板1Mの両面に押し付けられるようにして貼着される。このときにおいて、ガイドレール17による駆動は行わなくても、パネル基板1Mが前進することになり、ホルダドラム10による押圧力によって、偏光フィルム2Mをパネル基板1Mに密着させることになる。ここで、偏光フィルム2Mには接着剤が塗布されており、この接着剤により偏光フィルム2Mがパネル基板1Mに固着されることになる。しかも、偏光フィルム2Mはパネル基板1Mに一端側から他端側に向けて押圧されながら貼り付けられるので、途中で空気を巻き込んだりすることがなく、全面にわたって密着するようになる。
【0035】
ホルダドラム10の回転によって、パネル基板1Mが中判後端側吸着孔群11Mと対面する位置になったとき、またはその直前で中判後端側吸着孔群11Mの各吸着孔11aにおける負圧吸引力を遮断する。これによって、図10に示したように、偏光フィルム2Mはパネル基板1M側に移行する。さらに、中判後端側吸着孔群11Mを通過した後の偏光フィルム2Mが延在されて、この偏光フィルム2Mが自由端となっているが、ホルダドラム10の回転によって、偏光フィルム2Mの自由端側を円滑に巻き込むことができる。従って、偏光フィルム2Mの後端部はある程度まで自由状態となっていても、パネル基板1Mに対して円滑に貼着でき、空気の巻き込み等が発生することはない。
【0036】
そして、ホルダドラム10が所定角度分だけ回転すると、両面に偏光フィルム2Mを貼着したパネル基板1Mがホルダドラム10,10の間から抜け出すことになる。従って、この後はガイドレール17によりパネル基板1Mの送りを継続させることによって、偏光フィルム2の貼着ステージを通過する。
【0037】
これによって、たとえ偏光フィルム2Mにカール癖や曲がり癖等があったにしても、パネル基板1Mに密着させることができ、しかも両層間に気泡等が巻き込まれるおそれがない。従って、パネル基板1Mに偏光フィルム2Mを高精度に貼着することができる。そして、このようにパネル基板1Mが中判サイズであれば、多少の寸法が異なっていても、確実に偏光フィルム2Mを貼着することができる。
【0038】
また、この偏光フィルム貼着装置では、中判サイズのパネル基板1Mよりサイズの小さい小判のパネル基板1Sであっても、また大判のパネル基板1Lであっても、格別段取り変えを行う必要がなく取り扱うことができる。即ち、3箇所設けられている後端側吸着孔群11S,11Lのいずれかに負圧吸引力を作用させる状態となし、他の吸着孔群には負圧吸引力が作用しないように設定し、また先頭吸着孔群11Hにおける吸着孔11aをどの位置まで負圧吸引源から遮断するかを設定するだけで良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】光学機能膜としての偏光フィルムを両面に貼着したパネル基板を示す断面図である。
【図2】偏光フィルムに保護膜を積層させた積層フィルム体を巻き付けたホルダドラムを示す構成説明図である。
【図3】図2のホルダドラムの展開図である。
【図4】本発明の実施の一形態において、積層フィルム体がホルダドラムに供給されている状態を示す偏光フィルム貼着装置の概略構成図である。
【図5】ホルダドラムに積層フィルム体を巻き付ける状態を示す動作説明図である。
【図6】積層フィルムから保護膜を剥離している状態を示す動作説明図である。
【図7】両ホルダドラムに巻き付けた偏光フィルムの端部が相互に対面する状態を示す動作説明図である。
【図8】パネル基板に対して偏光フィルムの貼り付けを開始した状態を示す動作説明図である。
【図9】パネル基板に対して偏光フィルムを貼着している途中の状態を示す動作説明図である。
【図10】パネル基板に偏光フィルムへの貼着動作が完了した状態を示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1,1S,1M,1L パネル基板
2,2S,2M,2L 偏光フィルム
3 保護膜
4,4S,4M,4L 積層フィルム体
10 ホルダドラム
11H 先頭吸着孔群
11S 小判後端側吸着孔群
11M 中判後端側吸着孔群
11L 大判後端側吸着孔群
12H,12S,12M,12L 負圧チャンバ
13H,13S,13M,13L 開閉弁
14 負圧源
16 回転軸
17 ガイドレール
20 押し付けローラ
21 保護膜剥離手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角角形の基板の表面に光学機能膜を貼着するための装置において、
前記光学機能膜を外周面に巻き付けるホルダドラムと、
前記ホルダドラムの外周面に開口し、前記光学機能膜の先頭位置に対して負圧吸引力を作用させるために、前記ホルダドラムの軸線方向に配列した複数の吸着孔からなる先頭吸着孔群と、
前記先頭吸着孔群から円周方向に所定間隔だけ離れた位置において、それぞれサイズの異なる光学機能膜の後端側部位に対して負圧吸引力を作用させるために、所定の間隔を置いて形成され、前記ホルダドラムの軸線方向に配列した複数の吸着孔からなる後端側吸着孔群と、
前記各吸着孔群をそれぞれ負圧源と接離する切換手段と、
前記ホルダドラムを回転させて、前記基板をこのホルダドラムに巻き付けた前記光学機能膜に押圧させながら前進させる駆動手段と
を備える構成としたことを特徴とする光学機能膜貼着装置。
【請求項2】
前記光学機能膜は、その表面に保護膜を積層させて積層フィルム体として構成し、前記ホルダドラムの外周面に、前記積層フィルム体を、その光学機能膜が当接するようにして巻き付けるために、前記光学機能膜を前記ホルダドラムの外周面に密着させるように押圧するための押し付けローラを設け、このようにして巻き付けた積層フィルム体から前記保護膜を保護膜剥離手段で剥離する構成としたことを特徴とする請求項1記載の光学機能膜貼着装置。
【請求項3】
前記ホルダドラムは前記基板を挟んだ両側に配置され、これらのホルダドラムの少なくとも一方の外周面に前記光学機能膜を巻き付けるようになし、これら両ホルダドラムは相互に近接・離間する方向に変位可能であり、これら両ホルダドラムで前記基板を挟み込んで、前記両ホルダドラムを回転駆動する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の光学機能膜貼着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−134079(P2010−134079A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308392(P2008−308392)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】