説明

光学活性ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法

【課題】光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を、より高い光学純度で安価かつ簡便に製造する新規な方法を提供する。
【解決手段】3−オキソアミノ酸誘導体のβ位のカルボニル基を立体特異的に還元する能力を有する微生物の菌体及び/または該菌体処理物を、該3−オキソアミノ酸誘導体下式(2)を生成させることを特徴とする、光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。


(式中、Rはアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルコキシ基、アリール基、又はヘテロ環基を示し、Rはアルキル基またはアリール基を示し、RからRにおけるアルキル基、アルコキシ基、アリール基及びヘテロ環基は置換されていてもよい)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボニルレダクターゼを含む微生物、同微生物の調製物もしくは同微生物を培養して得られた培養液を用いて、3−オキソアミノ酸誘導体の2位のアミノ基を立体認識しながら、3位のカルボニル基を立体選択的に還元し、医薬、農薬等の中間体原料として産業上有用な化合物である光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3−ヒドロキシアミノ酸誘導体は医薬、農薬等の中間体原料として産業上有用な化合物である。例えば(2R,3R)−3−シクロへキシル−3−ヒドロキシアミノ酸誘導体は医薬の中間体として用いられているが、これの製法としては光学活性なエポキシドを生成して3−シクロへキシル−3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に導く方法(特許文献1)、または、3−シクロへキシル−3−オキソアミノ酸誘導体を不斉触媒で還元して得られることが報告されているが(非特許文献1)、前者は原料化合物の単価が高く工業的に問題があり、また、後者は高圧水添のため特別な反応装置を必要とし、かつ光学純度も満足なものではなく、工業化は困難であった。
【0003】
カルボニルレダクターゼは、カルボニル(carbonyl)基の炭素・酸素二重結合を還元する反応を触媒する酵素であるが、酵母、細菌、カビなどの各種の微生物でその存在が報告されている。例えば、下記反応式のような、N−アセチル化された3−オキソアミノ酸誘導体の還元によるスレオニン誘導体の生成が記載されている(特許文献2、3、4)。
【0004】
【化1】

【0005】
しかしながらこの方法では、ディアステレオマーや光学異性体の選択的合成は行われていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−55358号公報
【特許文献2】特開平2−60592号公報
【特許文献3】特開平2−60593号公報
【特許文献4】特開平2−60594号公報
【非特許文献1】Angew Chem Int Ed (2004) vol43 pp882−884
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を、より高い光学純度で安価かつ簡便に製造するための新規な方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法について鋭意検討した結果、微生物の菌体及び/または該菌体処理物が、原料となる3−オキソアミノ酸誘導体の不斉還元反応を触媒することを見出した。さらに、該不斉還元反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子を導入した形質転換細胞を作製し、該細胞、該細胞の調製物、または該細胞を培養して得られた培養液を、原料となる3−オキソアミノ酸誘導体に作用させることにより、高い光学純度かつ高濃度で目的物である光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 下記一般式(1)
【化2】

(式中、R1はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルコキシ基、アリール基、又はヘテロ環基を示し、R3はアルキル基またはアリール基を示し、R1からR3におけるアルキル基、アルコキシ基、アリール基及びヘテロ環基は置換されていてもよい)
で表される3−オキソアミノ酸誘導体のβ位のカルボニル基を立体特異的に還元する能力を有する微生物の菌体及び/または該菌体処理物を、前記一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体に作用させて、下記一般式(2)
【化3】

(式中、R1、R2、及びR3は前記と同義である)
で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を生成させることを特徴とする、光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【0010】
(2) 微生物がアブシディア(Absidia)属、アクレモニウム(Acremonium)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、コマモナス(Comamonas)属、デルフティア(Delftia)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ノカルディイデス(Nocardioides)属、オクロバクトラム(Ochrobactrum)属、パラコッカス(Paracoccus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、リゾビウム(Rhizobium)属、ロドコッカス(Rhodococccus)属、セラチア(Serratia)属、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、バリドボラックス(Variovorax)属、又はエクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)属に属する微生物であることを特徴とする(1)に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【0011】
(3) 微生物が下記(A)〜(F)のいずれかのDNAを発現させた形質転換体である、(1)に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法:
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA。
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列と50%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に変換する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(C)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に変換する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(D)配列番号1に記載の塩基配列を有するDNA。
(E)配列番号1に記載の塩基配列またはその相補配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に変換する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(F)配列番号1に記載の塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失もしくは付加された塩基配列及びその相補鎖からなり、かつ一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に変換する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0012】
(4) 形質転換体が、前記DNAを染色体上に組み込むことによって形質転換されたものである、(3)に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
(5) 形質転換体が、前記DNAを含むベクターで形質転換された形質転換体である、(3)に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【0013】
(6) 一般式(1)および(2)の化合物において、R2がアリール基であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか一項に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
(7) 一般式(2)の光学純度が98%eeである(1)〜(6)のいずれか一項に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
(8) 一般式(2)の絶対配置が下記一般式(3)で表されるように2R,3Rであることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【化4】

【発明の効果】
【0014】
本発明によって、医薬、農薬等の中間体原料として産業上有用な化合物である光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を高い光学純度で得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0016】
(3−オキソアミノ酸誘導体、光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体)
本発明においては、微生物の菌体及び/または該菌体処理物を反応基質である下記一般式(1)
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、R1はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルコキシ基、アリール基、又はヘテロ環基を示し、R3はアルキル基またはアリール基を示し、R1からR3におけるアルキル基、アルコキシ基、アリール基及びヘテロ環基は置換されていてもよい)
で表される3−オキソアミノ酸誘導体に作用させて、下記一般式(2)
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、R1、R2、及びR3は前記と同義である)
で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を生成させる。
【0021】
1はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環を示す。ここで、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ターシャリーペンチル基、イソアミル基、n−へキシル基、n−デシル基等の炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0022】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ベンゾイル基、チオフェニル基などの炭素数6〜20のアリール基を挙げることができる。
【0023】
ヘテロ環基としては、N、OまたはS原子の少なくとも一つを含む3員から10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基を挙げることができ、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。ヘテロ環基として好ましくは、縮合環を有していてもよい5ないし6員の不飽和ヘテロ環基であり、より好ましくは縮合環を有していてもよい5ないし6員の芳香族ヘテロ環基である。ヘテロ環基中のヘテロ環の具体例としては、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンズセレナゾール、インドレニン、テトラザインデンなどが挙げられる。
【0024】
上記のアルキル基、アリール基及びヘテロ環基は置換されていてもよい。アルキル基、アリール基及びヘテロ環基が有していてもよい置換基としては、反応に悪影響を与えない基であれば特に限定はないが、具体的には、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基及びヒドロキシル基等が挙げられる。
【0025】
置換されたアルキル基として具体的には、ベンジル基、フェネチル基、トリフルオロメチル基、シアノメチル基、アミノメチル基、ヒドロキシメチル基、ニトロメチル基、メトキシメチル基等が挙げられる。置換されたアリール基として具体的には、トリル基、メシチル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ニトロフェニル基、メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0026】
また、上記アルキル基及びアリール基内の炭素原子は窒素原子、硫黄原子、酸素原子など複素原子で置換されていてもよい。例えば、アルキル基としては、CH3(CH2nS(CH2n−、CH3(CH2nNH(CH2n−、CH3(CH2nO(CH2n−などでもよい(ここで、nは1以上の整数を示し、好ましくは1から10を示し、より好ましくは1から5を示す)。
【0027】
1として好ましいのは、炭素数1〜30のアルキル基、アリール基またはヘテロ基である。さらに好ましくは、炭素数1〜20の鎖状、環状または分岐状アルキル基、フェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、チオフェニル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、n−デシル基、フェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、またはチオフェン基である。
【0028】
2は、炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルコキシ基、アリール基、又はヘテロ環基を示す。炭素数4以上のアルキル基としては、前記R1で挙げたアルキル基のうち炭素数4以上のものが挙げられる。炭素数4以上のアルコキシ基としては、上記した炭素数4以上のアルキル基の1個の水素原子を水酸基で置換したアルコキシ基を挙げることができ、炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜10、より好ましくは炭素数4〜6の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルコキシ基を挙げることができ、具体的には、t−ブトキシ基、−O−CH2−C65などを挙げることができる。R2が示すアリール基及びヘテロ環基としては、前記R1で挙げたアリール基及びヘテロ環基が挙げられる。
【0029】
2が示す炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルコキシ基、アリール基、又はヘテロ環基は置換されていてもよい。炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルコキシ基、アリール基、又はヘテロ環基が有していてもよい置換基としては、反応に悪影響を与えない基であれば特に限定はないが、具体的には、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基及びヒドロキシル基等が挙げられる。
【0030】
2としてはフェニル基、又はtert-ブチル基が好ましい。
【0031】
3はアルキル基またはアリール基を示す。R3が示すアルキル基及びアリール基としては、前記R1で挙げたものが挙げられる。
【0032】
3が示すアルキル基またはアリール基は置換されていてもよい。アルキル基またはアリール基が有していてもよい置換基としては、反応に悪影響を与えない基であれば特に限定はないが、具体的には、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基及びヒドロキシル基等が挙げられる。
【0033】
3としては、炭素数1〜6の直鎖状または分岐上のアルキル基、又はベンジル基が好ましい。R3として特に好ましいものはメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基である。
【0034】
一般式(1)の具体的な化合物としては以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸メチル、
2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸エチル、
2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸n−プロピル、
2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸イソプロピル、
2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸フェニル、
2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸ベンジル、
2−ベンゾイルアミノ−4−メチル−3−オキソペンタン酸メチル、
2−ベンゾイルアミノ−4−メチル−3−オキソペンタン酸エチル、
2−ベンゾイルアミノ−4−メチル−3−オキソペンタン酸n−プロピル、
2−ベンゾイルアミノ−4−メチル−3−オキソペンタン酸イソプロピル、
2−ベンゾイルアミノ−4−メチル−3−オキソペンタン酸ベンジル、
2−ベンゾイルアミノ−3−オキソブタン酸イソプロピル、
2−ベンゾイルアミノ−3−オキソペンタン酸イソプロピル、
2−ベンゾイルアミノ−3−オキソヘキサン酸イソプロピル、
2−ベンゾイルアミノ−3−オキソトリデカン酸イソプロピル、
2−ベンゾイルアミノ−4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸イソプロピル、
2−ベンゾイルアミノ−3−フェニル−3−オキソプロピオン酸イソプロピル、
2−ベンゾイルアミノ−3−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロピオン酸イソプロピル、
2−ベンゾイルアミノ−3−(チオフェン−2−イル)−3−オキソプロピオン酸イソプロピル、
2−(チオフェン−2−カルボキサミド)−3−(チオフェン−2−イル)−3−オキソプロピオン酸イソプロピル、
2−ベンゾイルアミノ−3−(ナフタレン−2−イル)−3−オキソプロピオン酸イソプロピル、
3−オキソ−3−フェニル−2−ピバロイルアミノプロピオン酸イソプロピル、
3−オキソ−2−ピバロイルアミノブタン酸イソプロピル、
3−オキソ−2−ピバロイルアミノペンタン酸イソプロピル、
3−オキソ−2−ピバロイルアミノヘキサン酸イソプロピル、
4,4−ジメチル−3−オキソ−2−ピバロイルアミノペンタン酸イソプロピル、
3−(4−クロロフェニル)−3−オキソ−2−ピバロイルアミノプロピオン酸イソプロピル、
3−オキソ−2−ピバロイルアミノ−3−(チオフェン−2−イル)プロピオン酸イソプロピル、
2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸エチル、
【0035】
一般式(2)の具体的な化合物としては、上記一般式(1)の具体的化合物のβ位のカルボニル基を立体特異的に還元することによって得られる光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体である。
【0036】
一般式(2)の化合物は、2位と3位に不斉炭素を有するため4種の異性体を有し、(2R,3R)体、(2R,3S)体、(2S,3R)体、(2S,3S)体があるが、本発明における微生物の菌体及び/または該菌体処理物を用いた製造ではその中から1種類を優先的に製造する。なお医薬の中間体として需要がある化合物としては(2R,3R)体であることが好ましい。 また(2R,3R)体および(2S,3S)体をアンチ(anti)体 (2R,3S)体および(2S,3R)体をシン(syn)体という。
【0037】
【化7】

【0038】
(本発明に用いられる微生物の菌体及び/または該菌体処理物)
本発明に用いる微生物の菌体及び/または該菌体処理物としては、一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体に作用し、β位のカルボニル基を立体特異的に還元することによって一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を生成するものであればいずれを用いてもかまわない。
【0039】
光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の生成の確認方法としては、通常、一般式(1)の3−オキソアミノ酸誘導体を含む水溶液に対象となる微生物、その菌体処理物を作用させ、その反応液を薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーを用い、基質、及び生成物である一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を定性、定量すればよい。
【0040】
本発明における一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体は光学純度が96%ee以上であることが好ましく、さらに好ましくは98%ee以上、より好ましくは99%ee以上である。光学純度が低いと、医薬中間体として用いるために更なる精製が必要となる。一般的に光学異性体同士の分離精製は特殊なカラムを用いたり、あるいは、別の光学活性体とともに晶析するなど、容易とはいえない作業であり、光学純度の高い化合物をこのような分離精製することなく製造する方法を提供する事は重要である。
【0041】
本発明に用いることのできる微生物の菌体及び/または該菌体処理物は、上記生成確認法に供し、数分以上、好ましくは1日以上反応させたときに原料基質の減少が確認しうるもの、具体的には、数時間以上、好ましくは1日以上反応させたときに原料基質が1%以上、好ましくは5%以上減少するものである。
【0042】
一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体に作用して一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を生成する微生物としては、アブシディア(Absidia)属に属する微生物、アクレモニウム(Acremonium)属に属する微生物、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属に属する微生物、アルカリゲネス(Alcaligenes)属に属する微生物、アルスロバクター(Arthrobacter)属に属する微生物、バチルス(Bacillus)属に属する微生物、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属に属する微生物、セルロモナス(Cellulomonas)属に属する微生物、シトロバクター(Citrobacter)属に属する微生物、コマモナス(Comamonas)属に属する微生物、デルフティア(Delftia)属に属する微生物、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属に属する微生物、ノカルディイデス(Nocardioides)属に属する微生物、オクロバクトラム(Ochrobactrum)属に属する微生物、パラコッカス(Paracoccus)属に属する微生物、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物、リゾビウム(Rhizobium)属に属する微生物、ロドコッカス(Rhodococccus)属に属する微生物、セラチア(Serratia)属に属する微生物、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属に属する微生物、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物、バリドボラックス(Variovorax)属に属する微生物、エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)属に属する微生物、並びにカルボニルレダクターゼをコードする遺伝子を有する組換え微生物が挙げられる。
【0043】
アブシディア(Absidia)属に属する微生物としては、具体的にはアブシディア リクテミ(Absidia lichthemi)OUT1010、が挙げられる。
アクレモニウム(Acremonium)属に属する微生物としては、具体的にはアクレモニウム クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)ATCC14615が、挙げられる。
アグロバクテリウム(Agrobacterium)属に属する微生物としては、例えばアグロバクテリウム リゾジェネス(Agrobacterium rhizogenes)MAFF03-01724、MAFF07-20001、MAFF301724 、IAM13570アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)MAFF301001、MAFF301222、IAM12048,IAM13129が挙げられる。
【0044】
アルカリゲネス(Alcaligenes)属に属する微生物としては、具体的にはアルカリゲネス フェカリス(Alcaligenes faecalis)JCM10169、が挙げられる。
アルスロバクター(Arthrobacter)属に属する微生物としては、具体的にはアルスロバクター クリスタロポエテス(Arthrobacter crystallopoietes)JCM2522アルスロバクター スルファレス(Arthrobacter sulfureus)JCM1338アルスロバクター エスピー(Arthrobacter sp)JCM1336、IFO14590、が挙げられる。
バチルス(Bacillus)属に属する微生物としては、具体的にはバチルス レンタス(Bacillus lentus)IAM11055が挙げられる。
【0045】
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物としては、具体的にはブレビバクテリウム スルフレム(Brevibacterium sulfureum)
(JCM1485)が挙げられる。
ブレブンディモナス(Brevundimonas)属に属する微生物としては、具体的にはブレブンディモナス(Brevundimonas diminuta)IFO12697が挙げられる。
セルロモナス(Cellulomonas)属に属する微生物としては、具体的にはセルロモナス(Cellulomonas biazotea)ATCC486セルロモナス(Cellulomonas flavigena)ATCC482が挙げられる。
【0046】
シトロバクター(Citrobacter)属に属する微生物としては、具体的にはシトロバクター(Citrobacter youngae)ATCC11102が挙げられる。
コマモナス(Comamonas)属に属する微生物としては、具体的にはコマモナス(Comamonas terrigena)IFO13299、IFO12685、NBRC14918が挙げられる。
デルフティア(Delftia)属に属する微生物としては、具体的にはデルフティア(Delftia acidovorans)JCM6218が挙げられる。
【0047】
マイコバクテリウム(Mycobacterium)属に属する微生物としては、具体的にはマイコバクテリウム エスピー(Mycobacterium sp.)NCIMB11678、NCIMB11677が挙げられる。
ノカルディイデス(Nocardioides)属に属する微生物としては、具体的にはノカルディイデス シンプレックス(Nocardioides simplex)IAM1398が挙げられる。
オクロバクトラム(Ochrobactrum)属に属する微生物としては、具体的にはオクロバクトラム アンスロピー(Ochrobactrum anthropi)ATCC49237 オクロバクトラム エスピー(Ochrobactrum sp)IFO12950が挙げられる。
【0048】
パラコッカス(Paracoccus)属に属する微生物としては、具体的にはパラコッカス デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)IFO12442、IFO13301が挙げられる。
シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物としては、具体的にはシュードモナス アルカリゲネスJCM5967(Pseudomonas alcaligenes)シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)NCIMB11924シュードモナス タエトロレンス(Pseudomonas taetrolens)IFO3460, シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp)DSM6426が挙げられる。
リゾビウム(Rhizobium)属に属する微生物としては、具体的にはリゾビウム ホーキー(Rhizobium haukuii)MAFF 210250 が挙げられる。
【0049】
ロドコッカス(Rhodococccus)属に属する微生物としては、具体的にはロドコッカス ロドクロス(Rhodococccus rhodochrous)ATCC21291が挙げられる。
セラチア(Serratia)属に属する微生物としては、具体的にはセラチア(Serratia marcescens)IFO3046セラチア(Serratia plymuthica)NCIMB8285が挙げられる。
シノリゾビウム(Sinorhizobium)属に属する微生物としては、具体的にはシノリゾビウム メリロティー(Sinorhizobium meliloti)IAM12611、MAFF 303042が挙げられる。
【0050】
ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物としてはストレプトマイセス アクロモゲネス サブスピーシーズ アクロモゲネス(Streptomyces achromogenes subsp. Achromogenes) IFO12735が挙げられる。
バリドボラックス(Variovorax)属に属する微生物としては、具体的には バリドボラックス パラドクサス(Variovorax paradoxus) DSM30034、DSM30162が挙げられる。
エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)属に属する微生物としては、具体的にはエクシグオバクテリウム sp(Exiguobacterium sp)MCI4322株(FERM-P-19239株)が挙げられ、独立行政法人産業総合研究所特許生物寄託センターから入手可能である。
【0051】
これらの微生物は各研究機関から取得できる。
IAMカルチャーコレクション(http://www.iam.u−tokyo.ac.jp/misyst/ColleBOX/jp/IAMcollection.html)
JCM(理化学研究所、バイオリソースセンター)(http://www.jcm.riken.jp/JCM/JCM_Home_J.html)
NBRC(旧IFOを含む)独立行政法人 製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源部門(NBRC)遺伝資源保存課
(http://www.nbrc.nite.go.jp/gene.html)
IAM(東京大学分子細胞生物学研究所 細胞機能情報研究センター IAMカルチャーコレクション)(http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/misyst/ColleBOX/jp/IAMcollection.html)
NCIMB(日本代理店 (株)エヌシーアイエムビー・ジャパン)(http://www.ncimb.co.jp/index.html)
ATCC (American Type Culture Collection(http://www.atcc.org/Home.cfm))(日本代理店:住商ファーマ インターナショナル ATCC事業グループ)
(http://www.summitpharma.co.jp/japanese/index_j.html)
DSM (http://www.dsmz.de/species/strains.htm)
CBS(Centraalbureau voor Schimmelcultures Uppsalalaan)http://www.cbs.knaw.nl/databases/index.htm
NCYC (National Collection of Yeast Cultures)http://www.ifrn.bbsrc.ac.uk/NCYC/)
OUT : Department of Fermentation Technology, Faculty of Engineering, Osaka University, Osaka, Japan
MAFF : Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries, Tsukuba, Japan
(http://www.gene.affrc.go.jp/micro/index_j.html)
NRRL : Agricultural Research Service Culture Collection, National Center for Agricultural Utilization
FERM-P;独立行政法人産業総合研究所特許生物寄託センター
【0052】
カルボニルレダクターゼは、一般には、カルボニル(carbonyl)の炭素・酸素二重結合の還元反応を触媒する酵素をいうが、本発明においては、3−オキソアミノ酸誘導体の炭素・酸素二重結合を不斉還元して光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を生成する活性を有する酵素をいう。
【0053】
本発明の製造方法において用いることのできるカルボニルレダクターゼとしては、例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するものが挙げられる。これらはエクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)由来のカルボニルレダクターゼである。
【0054】
また、本発明においては、これらのホモログであって、一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に変換する酵素活性を有するものを用いてもよい。ホモログとは、例えば、前記活性を害さない範囲内において配列番号2に記載のアミノ酸配列に一個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。ここで数個とは、具体的には20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下である。
【0055】
また、前記ホモログは、配列番号2に示されるアミノ酸配列と35%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上のホモロジーを有するタンパク質であってもよい。ちなみに上記タンパク質のホモロジー検索は、例えば、GenBankやDNA Databank of JAPAN(DDBJ)を対象に、FASTAやBLASTなどのプログラムを用いて行うことができる。配列番号2に記載のアミノ酸配列を用いて、GenBankを対象にBLAST programによりホモロジー検索を行った結果、配列番号2の配列はクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)のオキシドレダクターゼ(Accession No.AAK76748)と57%の相同性を示した。
【0056】
本発明の製造方法に用いるカルボニルレダクターゼは、カルボニルレダクターゼの一部又は全部をコードする遺伝子の塩基配列を元にして作製したプローブを用いて、カルボニルレダクターゼ活性を有する任意の微生物からカルボニルレダクターゼをコードするDNAを単離した後、該DNAを大腸菌などの宿主に発現させることによって得ることができる。また、カルボニルレダクターゼ活性を有する微生物、例えば、エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)属の細菌の菌体から精製することによって得ることもできる。細菌の菌体からカルボニルレダクターゼを取得する方法としては、例えば、Eur. J. Biochem.Vol. 97, p103(1979)に記載の方法を参考に行うことができる。
【0057】
エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)属に属する微生物としては、例えばエクシグオバクテリウム sp(Exiguobacterium sp)FERM−P−19239株(MCI4322株)が、本発明に好適に利用できるカルボニルレダクターゼを有しており、独立行政法人産業総合研究所特許生物寄託センターから入手可能である。
【0058】
本発明の製造方法においては、3−オキソアミノ酸誘導体をカルボニルレダクターゼの精製酵素と反応させてもよいが、カルボニルレダクターゼを含む細胞、同細胞の調製物、または同細胞を培養して得られた培養液を、3−オキソアミノ酸誘導体に反応させて、3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を製造してもよい。カルボニルレダクターゼを含む細胞としては、カルボニルレダクターゼをコードするDNAで形質転換された細胞が好ましい。
【0059】
この場合、カルボニルレダクターゼをコードするDNAとしては、配列番号2のアミノ酸配列を有するカルボニルレダクターゼをコードするDNAが挙げられる。また、配列番号2のアミノ酸配列と50%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に変換する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。具体的には、配列番号1の塩基配列を有するDNAを挙げることができる。また、本発明製造法においては、配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAのホモログであって、カルボニルレダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを用いてもよい。
【0060】
ここで、ホモログとは、カルボニルレダクターゼ活性を有するタンパク質をコードする限り、配列番号1に記載の塩基配列に1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列及びその相補鎖からなるDNAを含む。ここで数個とは、具体的には60個以下、好ましくは30個以下、より好ましくは10個以下である。
【0061】
また、ホモログは、配列番号1または3の塩基配列を有するDNAまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、カルボニルレダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、プローブDNAを用いて、ストリンジェントな条件下で、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を行うことにより得られるDNAを意味し、「ストリンジェントな条件」としては、例えば、コロニーハイブリダイゼーション法およびプラークハイブリダイゼーション法においては、コロニーあるいはプラーク由来のDNAまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0Mの塩化ナトリウム存在下65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSCの組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄する条件を挙げることができる。
【0062】
カルボニルレダクターゼをコードするDNAは、例えば、以下のような方法によって単離することができる。まず、カルボニルレダクターゼを上記の方法等により微生物菌体等から精製した後、N末端アミノ酸配列を解析する。N末端アミノ酸配列解析は、リジルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼなどの酵素により精製タンパク質を切断し、逆相液体クロマトグラフィーなどによりペプチド断片を精製した後、プロテインシーケンサーによりアミノ酸配列を解析して複数のアミノ酸配列を決めることにより行う。決定したアミノ酸配列を元に設計したプライマーを用い、カルボニルレダクターゼ生産微生物株の染色体DNAもしくはcDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行うことにより、カルボニルレダクターゼをコードするDNAの一部(DNA断片)を得ることができる。さらに、カルボニルレダクターゼ生産微生物株の染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーから、前記のDNA断片をプローブに用いてコロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションなどを行うことにより、カルボニルレダクターゼをコードするDNAを得ることができる。
【0063】
また、前記のPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解析し、得られた配列から、配列が決定された領域の外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、カルボニルレダクターゼ生産微生物株の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応により環化させたDNAを鋳型としてinvese PCR(Genetics vol. 120,p621−623(1988))を行うことにより、カルボニルレダクターゼをコードするDNAを得ることも可能である。
【0064】
なおカルボニルレダクターゼをコードするDNAは、配列番号1の塩基配列を有するDNAを化学合成することによって得ることもできる。
【0065】
当業者であれば、配列番号1に記載のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. vol. 10, p6487 (1982), Methods in Enzymol. vol. 100, p448(1983), Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、PCR: A Practical Approach, IRL Press, p200(1991))等を用いて適宜置換、欠失、挿入及び/または付加変異を導入することにより、本発明の製造法に用いることのできるカルボニルレダクターゼをコードするDNAを得ることが可能である。
【0066】
また、配列番号2のアミノ酸配列の全部またはその一部や、配列番号1の塩基配列の全部または一部を元に、例えばGenBankやDDBJ等のデータベースに対してホモロジー検索を行って、カルボニルレダクターゼをコードするDNAホモログの塩基配列情報を手に入れることも可能である。当業者であれば、この塩基配列情報を元に寄託菌株(ATCC、DSMZ等から入手可能)からのPCR等によりカルボニルレダクターゼをコードするDNAを手に入れることが可能である。
【0067】
さらに、カルボニルレダクターゼをコードするDNAは、配列番号1の塩基配列の全部または一部を有するDNAをプローブに用いて、カルボニルレダクターゼ活性を有する任意の微生物から調製したDNAに対し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等によりストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行い、ハイブリダイズするDNAを得ることによっても取得できる。ここで、「一部」とは、プローブとして用いるのに十分な長さのDNAのことであり、具体的には15bp以上、好ましくは50bp以上、より好ましくは100bp以上のものである。
【0068】
各ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0069】
上記のようにして単離された、カルボニルレダクターゼをコードするDNAを公知の発現ベクターに発現可能に挿入することにより、カルボニルレダクターゼ発現ベクターが提供される。この発現ベクターで形質転換された細胞を培養することにより、カルボニルレダクターゼを該細胞から得ることができる。形質転換細胞は、公知の宿主細胞の染色体DNAにカルボニルレダクターゼをコードするDNAを発現可能に組み込むことによっても得ることができる。
【0070】
形質転換細胞の作製方法としては、具体的には、微生物中において安定に存在するプラスミドベクターやファージベクター中に、カルボニルレダクターゼをコードするDNAを組み込み、構築された発現ベクターを該微生物中に導入するか、もしくは、直接宿主ゲノム中にカルボニルレダクターゼをコードするDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる必要がある。
【0071】
このとき、カルボニルレダクターゼをコードするDNAが宿主微生物中で発現可能なプロモーターを含んでいない場合には、適当なプロモーターをカルボニルレダクターゼをコードするDNA鎖の5’側上流に組み込む必要がある。さらに、ターミネーターを3’側下流に組み込むことが好ましい。このプロモーター及びターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーター及びターミネーターであれば特に限定されず、これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター及びターミネーターに関しては、例えば「微生物学基礎講座8・遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Adv.Biochem.Eng. vol. 43,p75−102(1990)、Yeast vol. 8,p423−488(1992)などに詳細に記述されている。
【0072】
本発明のカルボニルレダクターゼを発現させるための形質転換の対象となる宿主微生物としては、宿主自体が本反応に悪影響を与えない限り特に限定されることはなく、具体的には以下に示すような微生物を挙げることができる。
【0073】
エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属などに属する宿主ベクター系の確立されている細菌。
【0074】
ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属などに属する宿主ベクター系の確立されている放線菌。
【0075】
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属などに属する宿主ベクター系の確立されている酵母。
【0076】
ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属などに属する宿主ベクター系の確立されているカビ。
【0077】
上記微生物の中で宿主として好ましくは、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属であり、特に好ましくは、エシェリヒア(Escherichia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属である。
【0078】
形質転換細胞作製のための手順、宿主に適合した組換えベクターの構築および宿主の培養方法は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、「モレキュラークローニング第2版」、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年)、参照)。
【0079】
以下、具体的に、好ましい宿主微生物、各微生物における好ましい形質転換の手法、ベクター、プロモーター、ターミネーターなどの例を挙げるが、本発明はこれらの例に限定されない。
【0080】
エシェリヒア属、特にエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとしては、pBR、pUC系プラスミドなどが挙げられ、プロモーターとしては、lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、trc(lac、trpの融合)、λファージPL、PRなどに由来するプロモーターなどが挙げられる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどが挙げられる。
【0081】
バチルス属においては、ベクターとしては、pUB110系プラスミド、pC194系プラスミドなどを挙げることができ、また、染色体にインテグレートすることもできる。プロモーター及びターミネーターとしては、アルカリプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、α−アミラーゼ等の酵素遺伝子のプロモーターやターミネーターなどが利用できる。
【0082】
シュードモナス属においては、ベクターとしては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)などで確立されている一般的な宿主ベクター系や、トルエン化合物の分解に関与するプラスミド、TOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240(Gene,vol.
26,p273−82(1983))を挙げることができる。
【0083】
ブレビバクテリウム属、特にブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、ベクターとしては、pAJ43(Gene vol. 39,p281(1985))などのプラスミドベクターを挙げることができる。プロモーター及びターミネーターとしては、大腸菌で使用されている各種プロモーター及びターミネーターが利用可能である。
【0084】
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、ベクターとしては、pCS11(特開昭57−183799号公報)、pCB101(Mol.Gen.Genet.vol. 196,p175(1984))などのプラスミドベクターが挙げられる。
【0085】
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)においては、ベクターとしては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミドが挙げられる。また、アルコール脱水素酵素、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、酸性フォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ホスホグリセレートキナーゼ、エノラーゼといった各種酵素遺伝子のプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
【0086】
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、ベクターとしては、Mol.Cell.Biol.vol. 6,p80(1986)に記載のシゾサッカロマイセス・ポンベ由来のプラスミドベクターを挙げることができる。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。
【0087】
アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリジー(Aspergillus oryzae)などがカビの中で最もよく研究されており、プラスミドや染色体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology vol. 7,p283−287(1989))。
【0088】
また、上記以外でも、各種微生物に応じた宿主ベクター系が確立されており、それらを適宜使用することができる。また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が確立されており、特に蚕を用いた昆虫などの動物中(Nature vol. 315, p592−594 (1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系、及び大腸菌無細胞抽出液や小麦胚芽などの無細胞タンパク質合成系を用いた系が確立されており、好適に利用できる。
【0089】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法においては、反応基質である3−オキソアミノ酸誘導体に微生物の菌体及び/または該菌体処理物を作用させる。該菌体処理物とは、例えば、該微生物菌体をアセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン等の有機溶媒や界面活性剤により処理したもの、凍結乾燥処理したもの、物理的または酵素的に破砕したもの等の菌体細胞調製物、および、該微生物菌体中の本発明のカルボニルレダクターゼ画分を粗製物あるいは精製物として取り出したもの、さらには、これらをポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル等に代表される担体に固定化したものの事を示す。
【0090】
本発明の製造方法においては、反応液に補酵素NADP+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸酸化型)もしくはNADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸還元型)を添加するのが好ましい。添加濃度は、0.001mM〜100mM、好ましくは0.01〜10mMである。これらの補酵素を添加する場合には、NADPHから生成するNADP+をNADPHへの再生させることが生産効率向上のため好ましい。再生方法としては、(i) 宿主微生物自体のNADP+還元能を利用する方法、(ii) NADP+からNADPHを生成する能力を有する微生物やその調製物、あるいは、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素、などのNADPHの再生に利用可能な酵素(再生酵素)を反応系内に添加する方法、または(iii)形質転換細胞を作製するに当たり、NADPHの再生に利用可能な酵素である上記再生酵素類の遺伝子とカルボニルレダクターゼをコードするDNAと同時に宿主に導入する方法、が挙げられる。
【0091】
このうち、上記(i)の方法においては、反応系にグルコースや2−プロパノールなどを添加することが好ましい。
【0092】
また、上記(ii)の方法においては、上記再生酵素類を含む微生物、該微生物菌体をアセトン処理したもの、凍結乾燥処理したもの、物理的または酵素的に破砕したもの等の菌体調製物、該酵素画分を粗製物あるいは精製物として取り出したもの、さらには、これらをポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル等に代表される担体に固定化したもの等を用いてもよく、また市販の再生酵素を用いても良い。この場合、上記再生酵素の使用量としては、具体的には、本発明のカルボニルレダクターゼに比較して、酵素活性で0.01〜100倍、好ましくは0.5〜20倍程度となるよう添加する。また、上記再生酵素の基質となる化合物、例えば、グルコース脱水素酵素を利用する場合のグルコース、アルコール脱水素酵素を利用する場合のエタノールもしくはイソプロパノールなどの添加も必要となるが、その添加量としては、反応原料である3−オキソアミノ酸誘導体に対して、0.1〜100倍モル当量、好ましくは1〜20倍モル当量添加する。
【0093】
また、上記(iii)の方法においては、カルボニルレダクターゼをコードするDNAと上記再生酵素類のDNAを染色体に組み込む方法、単一のベクター中に両DNAを導入し、宿主を形質転換する方法、及び両DNAをそれぞれ別個にベクターに導入した後に宿主を形質転換する方法を用いることができるが、両DNAをそれぞれ別個にベクターに導入した後に宿主を形質転換する方法の場合、両ベクター同士の不和合性を考慮してベクターを選択する必要がある。単一のベクター中に複数の遺伝子を導入する場合には、プロモーター及びターミネーターなど発現制御に関わる領域をそれぞれの遺伝子に連結する方法やラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させることも可能である。
【0094】
本発明の製造方法は、水性媒体中または該水性媒体と有機溶媒との混合物中で行うことができる。上記の水性媒体としては、水又は緩衝液が挙げられ、また、有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ジメチルスルホキシド、イソプロパノール等、反応基質の溶解度が高いものを使用することができる。上記の水性媒体に各種の界面活性剤など反応基質の溶解度を増加させるものを使用することもできる。
【0095】
本発明の製造方法において反応基質となる一般式(1)で表される化合物は、既存の化学的合成を組み合わせる事により製造することが出来る。
【0096】
例えば、次のような経路で製造することができる。
【0097】
【化8】

【0098】
具体的には、一般式(4)で表される馬尿酸やアセチルグリシンなどのグリシン誘導体の縮合反応で、一般式(5)で表されるオキサゾロン環化合物を得る。オキサゾロン環化合物にアシル化剤を作用させ、又はO−アシル化してオキサゾール化合物とした後にさらにアシル基を転位させて、一般式(6)で表されるジアシルオキサゾロン環化合物を得る。このジアシルオキサゾロン環化合物をアルコール類と反応させて、一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を得ることができる。この反応は一般式(5)で表されるオキサゾロン環化合物及び/又は一般式(6)で表されるジアシルオキサゾロン環化合物を単離せず同一反応器で行うこともできる。
【0099】
又、次のような経路で製造することも可能である。
【0100】
【化9】

【0101】
具体的には、一般式(4)で表される馬尿酸やアセチルグリシンなどのグリシン誘導体から、一般式(7)で表されるオキサゾール化合物を得、これにルイス酸の存在下、酸クロライドを作用させることにより、一般式(8)で表されるアシルオキサゾロン化合物を得る。このアシルオキサゾロン化合物にアルコール類を作用させることにより、一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を得ることができる。
【0102】
本発明の製造方法において反応基質となる一般式(1)で表される化合物は、通常、基質濃度が0.001〜90%w/v、好ましくは0.01〜30%w/vの範囲で用いることができる。反応基質は、反応開始時に一括して添加しても良いが、基質の分解を減らすという点や基質の溶解度の観点からすると、連続的もしくは間欠的に添加することが望ましい。
【0103】
本発明の製造方法において、使用する微生物の菌体及び/または該菌体処理物の量は、反応基質となる一般式(1)で表される化合物に対して、通常、が0.01〜500倍量(W/W)、好ましくは1〜200倍の範囲で用いることができる。微生物の菌体及び/または該菌体処理物は、反応開始時に一括して添加しても良いが、反応の低下などが見られた場合、間欠的に追加添加することも有効である。
【0104】
本発明の製造方法は例えば、4〜60℃、好ましくは20〜50℃の反応温度で、pH3〜12、好ましくはpH5〜10で行うことができる。また、基質のカルボン酸エステル部分の分解を防ぐため、反応液中に、エステル部分の分解を防ぐ化合物、具体的にはエステラーゼ阻害剤を添加したり、硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムなどの塩を添加する事は有効である。同様にアミド結合の分解を防ぐために添加剤を入れても良い。具体的にはアシラーゼ阻害剤などが挙げられる。
【0105】
本発明の製造方法において反応時間は、一般式(1)で表される化合物が変換され、一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体が生成されれば特にかまわないが、通常1分から7日、好ましくは1時間から4日の間で行なわれる。
【0106】
反応形態としてはバッチ法でも連続法でも何れでも構わないが、連続法の場合には式(1)の3−オキソアミノ酸誘導体、微生物の培養液、菌体及び/または該菌体処理物を、必要に応じて、適宜添加して行われ、また、目的生成物から分離された菌体をリサイクル使用しても良い。
【0107】
本発明の製造方法により生成する光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体は、反応終了後、反応液中の菌体やタンパク質を遠心分離、膜処理などにより分離した後に、酢酸エチル、トルエンなどの有機溶媒による抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、晶析等のなどを適宜組み合わせることにより精製を行うことができる。
【0108】
(光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の用途)
一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体は、それ自体あるいは、各種の手法にて誘導化し、種々の医薬や農薬の中間体として有用である。特に下記一般式(9)
【0109】
【化10】

【0110】
で表される化合物は抗HIV活性を持つ薬剤(WO01/40227) の中間体として工業的に有用である。この(9)やその類縁体への変換の手法としては、上記一般式(2)で表される化合物を下記一般式(10)
【0111】
【化11】

【0112】
で表される化合物あるいはそのアミン塩に変換する。この変換の手法としては、酸あるいは塩基存在下、加水分解あるいは加水分解酵素にて加水分解する手法が挙げられる。
【0113】
この一般式(10)で表される化合物を塩基条件中、t−ブトキシカルボニル化を行うことで一般式(9)で表される化合物へと変換可能である。
【0114】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0115】
(合成例1)
(4−(1−シクロヘキシル−1−ヒドロキシメチリデン)−2−フェニル−5−オキサゾロンの合成)
100mlのフラスコに塩化メチレン43ml、5−アセトキシ−2−フェニルオキサゾール4.28g(21.1mmol)を仕込み、シクロヘキサンカルボン酸クロリド3.10ml(23.2mmol)を添加し、しばらく攪拌した後に四塩化スズ3.87ml(73.2mmol)を10分間かけて滴下した。24時間後、TLCにて原料の消失を確認し、4規定塩酸水溶液10ml及び酢酸エチル150mlを添加し、有機層を分離した後にさらに水50mlで2回、飽和食塩水50mlにて洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル150g, ヘキサン:酢酸エチル=100:2〜100:4)にて精製し、黄色固体として目的物4−(1−シクロヘキシル−1−ヒドロキシメチリデン)−2−フェニル−5−オキサゾロン3.20g(純度換算後の収率52%)を得た。
【0116】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ1.14−1.51(5H,m),1.68−1.79(5H, m),3.31−3.37(1H, m),7.53−7.57(3H,m),7.96−8.01(2H, m)
【0117】
(合成例2)
(2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸イソプロピルの合成)
合成例1で製造した4−(1−シクロヘキシル−1−ヒドロキシメチリデン)−2−フェニル−5−オキサゾロン47.5g(175mmol)、および2−プロパノール238mlを仕込み、加熱還流下2時間攪拌した後、減圧濃縮し、白色固体として2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸イソプロピルを66.1g(純分として53.9g、収率93%)得た。
【0118】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.20−1.38(9H,m),1.45−1.56(2H, m),1.69−1.85((4H, m),2.08−2.10(1H, br−s),2.86−2.93(1H, m),5.10−5.17 (1H,m),5.52(1H, d, J=6.6Hz),7.29(1H,d,J=6.1Hz),7.43−7.55(3H, m),7.83−7.85(m, 2H)
【0119】
(合成例3)
(2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸エチルの合成)
合成例1で製造した4−(1−シクロヘキシル−1−ヒドロキシメチリデン)−2−フェニル−5−オキサゾロン100mg(0.37mmol)、およびエタノール(2.0ml)を仕込み、加熱還流下2時間攪拌した後、減圧濃縮し、白色固体として2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸エチルを 112mg(純分として 108mg、収率96%)得た。
【0120】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.20−1.55(8H,m),1.68−1.84(4H, m),2.06−2.10(1H, br−s),2.86−2.90(1H, m),4.25−4.33(2H,m),5.56(1H, d, J=6.7Hz),7.30−7.32(1H,d,J=6.7Hz),7.43−7.48(2H, m),7.52−7.56(1H, m),7.83−7.86(m, 2H)
【0121】
(合成例4)
(2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸イソプロピルの製造)
200mLフラスコにN−ベンゾイルグリシン5.00g(27.9mmol)、4−ピコリン16mL(170mmol)、アセトン50mLを仕込み、氷冷下、シクロヘキサンカルボン酸クロリド15.2mL(112mmol)を30分かけて滴下し、氷冷下30分、室温にて20時間反応させた。反応液にイソプロパノール25mLを添加し、1時間加熱還流後、4−ジメチルアミノピリジン0.68g(5.6mmol)を2−プロパノール2.5mLに溶解して添加し、更に7時間加熱還流させた。反応終了後、反応液を濃縮し、得られた濃縮液をトルエン100mLにて抽出し、2N塩酸40mLで洗浄後、有機層を濃縮した。残渣を酢酸エチル5mL、ヘプタン90mLにて晶析し、白色結晶として2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸イソプロピル6.16g(化学純度98%、収率67%)を得た。
【0122】
(合成例5)
(4−(1−シクロヘキシルカルボニルオキシ−1−シクロヘキシルメチリデン)−2−フェニル−5−オキサゾロンの製造)
500mLフラスコにN−ベンゾイルグリシン20.0g(112mmol)、4−ピコリン65mL(670mmol)、アセトニトリル300mLを仕込み、氷冷下、シクロヘキサンカルボン酸クロリド61mL(450mmol)を30分かけて滴下した。氷冷下5時間反応させた後、1N塩酸100mLを添加し、結晶を濾取した。結晶を乾燥し、白色結晶として4−(1−シクロヘキシルカルボニルオキシ−1−シクロヘキシルメチリデン)−2−フェニル−5−オキサゾロン37.9g(少量の不純物を含む2種の幾何異性体混合物、約85:15、収率89%)を得た。
【0123】
major−isomer:1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.15−1.50(8H,m),1.62−1.93(10H,m),2.10−2.16(2H,m),2.66(1H,tt,J=11.1,3.8Hz),3.58−3.63(1H,m),7.46−7.50(2H,m),7.54−7.56(1H,m),7.97−7.99(2H,m).
【0124】
minor−isomer:1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.20−1.47(8H,m),1.59−1.85(10H,m),2.11−2.15(2H,m),2.65(1H,tt,J=11.4,3.7Hz),3.26−3.31(1H,m),7.46−7.50(2H,m),7.54−7.56(1H,m),8.04−8.07(2H,m).
【0125】
(合成例6)
(2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸メチルの製造)
30mLフラスコに合成例5の方法で得られた4−(1−シクロヘキシルカルボニルオキシ−1−シクロヘキシルメチリデン)−2−フェニル−5−オキサゾロン0.99g(26.0mmol)、4−ピコリン0.25mL(2.6mmol)、メタノール5mLを仕込み、1時間加熱還流後、4−ジメチルアミノピリジン68mg(0.56mmol)を添加して、更に4時間加熱還流させた。反応終了後、反応液を濃縮し、得られた濃縮液を酢酸エチル10mLにて抽出し、2N塩酸2mL及び飽和食塩水2mLにて洗浄後、有機層を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、白色固体として2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸メチル0.58g(少量の不純物を含む、収率約60%)を得た。
【0126】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.18−1.55(5H,m),1.65−1.87(4H,m),2.04−2.11(1H,m),2.83−2.91(1H,m),3.83(3H,s),5.59(1H,d,J=6.8Hz),7.33(1H,d,J=6.3Hz),7.43−7.49(2H,m),7.51−7.56(1H,m),7.82−7.87(2H,m).
【0127】
(合成例7)
(2−ベンゾイルアミノ−4−メチル−3−オキソペンタン酸イソプロピルの製造)
200mLフラスコにN−ベンゾイルグリシン2.5g(13.7mmol)、4−ピコリン7.66g(80.6mmol)、アセトニトリル25mLを仕込み、氷冷下、イソ酪酸クロリド6.07g(112mmol)を30分かけて滴下し、氷冷下5時間、室温にて2時間反応させた。反応液にイソプロパノール12.5mLを添加し、2時間半加熱還流後、4−ジメチルアミノピリジン0.34g(2.8mmol)を2−プロパノール1.25mLに溶解して添加し、更に4時間加熱還流させた。反応終了後、反応液を濃縮し、得られた濃縮液をトルエン100mLにて抽出し、2N塩酸40mLで洗浄後、有機層を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、淡黄色固体として2−ベンゾイルアミノ−4−メチル−3−オキソペンタン酸イソプロピル2.63g(収率66%)を得た。
【0128】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.16(3H,d,J=6.4Hz),1.26(3H,d,J=6.4Hz),1.27(3H,d,J=6.4Hz),1.32(3H,d,J=6.6Hz),3.16(1H,sept,J=6.4Hz),5.13(1H,sept,J=6.6Hz),5.56(1H,d,J=6.8Hz),7.30(1H,d,J=6.8Hz),7.44−7.47(2H,m),7.52−7.55(1H,m),7.84−7.85(2H,m).
【0129】
(合成例8)
(2−ベンゾイルアミノ−4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸イソプロピルの製造)
300mLフラスコにN−ベンゾイルグリシン2.01g(11.0mmol)、4−ピコリン6.28g(67.4mmol)、アセトン20mLを仕込み、氷冷下、ピバリン酸クロリド5.17g(42.3mmol)を30分かけて滴下し、氷冷下30分、室温にて6時間、加熱還流して14時間、さらにアセトニトリル30mL加えて4時間加熱還流した。反応液にイソプロパノール17mLを添加し、1時間加熱還流後、4−ジメチルアミノピリジン0.28g(2.3mmol)を2−プロパノール1.7mLに溶解して添加し更に1時間、2−プロパノール17mLを追加して9時間半加熱還流させた。反応液を濃縮し、トルエン75mLで希釈後、2N塩酸30mLで洗浄し、有機層を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、橙褐色固体として2−ベンゾイルアミノ−4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸イソプロピル0.36gを得た(少量の不純物を含む、収率約10%)。
【0130】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.25(3H,d,J=6.0Hz),1.30(3H,d,J=6.0Hz),1.31(9H,s),5.09(1H,sept,J=6.0Hz),5.93(1H,d,J=8.0Hz),7.12(1H,d,J=8.0Hz),7.43−7.47(2H,m),7.51−7.82(1H,m),7.83−7.84(2H,m).
【0131】
(合成例9)
(2−ベンゾイルアミノ−3−オキソトリデカン酸イソプロピルの製造)
100mLフラスコにN−ベンゾイルグリシン2.00g(10.9mmol)、4−ピコリン6.5mL(67.0mmol)、アセトニトリル20mLを仕込み、氷冷下、ウンデカノイルクロリド8.99g(42.6mmol)を25分かけて滴下し、氷冷下45分、室温にて2時間攪拌を行った。反応液にイソプロパノール10mLを添加し、2時間加熱還流後、4−ジメチルアミノピリジン0.27g(2.2mmol)を添加し更に3時間、加熱還流を続けた。反応液を濃縮し、酢酸エチル45mLで希釈後、2N塩酸15mLおよび飽和食塩水15mLで洗浄し、有機層を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、得られた油状物質をクロロホルム120mLに溶かし飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30mLで洗浄した。有機層を濃縮し白色固体として2−ベンゾイルアミノ−3−オキソトリデカン酸イソプロピル2.38g(少量の不純物を含む、収率約45%)を得た。更に得られた固体をヘキサン懸濁洗浄により精製し、白色固体として2−ベンゾイルアミノ−3−オキソトリデカン酸イソプロピル0.59g(収率14%)を得た。
【0132】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.26−1.30(14H,m),1.28(3H,d,J=6.3Hz),1.33(3H,d,J=6.3Hz),1.62−1.67(2H,m),2.78(2H,dt,J=17.4,7.5Hz),5.14(1H,sept,J=6.3Hz),5.38(1H,d,J=6.3Hz),7.30(1H,d,J=6.3Hz),7.43−7.47(2H,m),7.51−7.55(1H,m),7.82−7.85(2H,m).
【0133】
(合成例10)
(2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸フェニルの製造)
50mLフラスコに実施例1の方法で得られた4−(1−シクロヘキシルカルボニルオキシ−1−シクロヘキシルメチリデン)−2−フェニル−5−オキサゾロン2.00g(5.14mmol)、4−ピコリン0.54g(5.72mmol)、フェノール10mLおよびアセトニトリル10mLを仕込み、45℃で6時間加熱後、4−ジメチルアミノピリジン0.13g(1.0mmol)を添加し同じ温度で12時間、55℃で6時間半加熱した。反応終了後、反応液を酢酸エチル110mLにて希釈し2N塩酸10mLで2回、飽和食塩水20mLにて1回洗浄後、有機層の乾燥および濃縮をした。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸フェニル2.7gを得た(フェノールを含む、収率47%)。
【0134】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.20−1.50(4H,m),1.50−1.63(1H,m),1.68−1.76(1H,m),1.80−1.95(3H,m),2.11−2.19(1H,m),2.97−3.06(1H,m),5.79(1H,d,J=6.6Hz),7.11−7.25(2H,m),7.26−7.29(1H,m),7.37−7.42(3H,m),7.44−7.48(2H,m),7.52−7.56(1H,m),7.86−7.89(2H,m).
【0135】
(合成例11)
(N−ベンゾイルグリシンイソプロピルエステルの製造)
500mLフラスコにN−ベンゾイルグリシン24g(0.134mol)、2−プロパノール50mL、トルエン60mL、p−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、Dean stark装置を付し還流を4時間行った。冷却後、酢酸エチル60mLを加え、反応混合物を飽和重曹液30mLx2、食塩水30mLで順次洗浄し芒硝で脱水した。溶媒を濃縮し生じた無色の固体をろ取、風乾し目的物27gを得た(収率93%)。
【0136】
(合成例12)
(N−ピバロイルグリシンイソプロピルエステルの製造)
200mLフラスコにグリシンイソプロピルエステル4.8g(31.3mmol)、ジクロロメタン50mL、トリエチルアミン6.3g(62.6mmol)を入れ15℃付近に冷却しつつ、ピバロイルクロリド3.8gを含むジクロロメタン溶液10mLを徐々に滴下した。このとき反応温度を15℃以下に保った。滴下終了後さらに室温にて30分間攪拌した。反応混合液を1N塩酸20mLx2 飽和食塩水20mLx2洗浄し芒硝で脱水した。溶媒を濃縮し生じた無色の固体をろ取、風乾し目的物5.5gを得た(収率87%)。
【0137】
(合成例13)
(2−ベンゾイルアミノ−3−オキソブタン酸イソプロピルの製造)
田辺らの報告(J.Am.Chem.Soc.,2005,127,2854)を参照し、2−ベンゾイルアミノ−3−オキソブタン酸イソプロピルの製造を行った。100mLフラスコにジクロロメタン16mL、N−ベンゾイルグリシンイソプロピルエステル1.77g(8mmol)、1−メチルイミダゾール0.79g(9.6mmol)、アセチルクロリド0.63g(8mmol)をいれ、窒素雰囲気下、−45℃に冷却し10分間攪拌し、次いでその温度で四塩化チタン5.3g(28mmol)、トリn−ブチルアミン5.9g(32mmol)を徐々に滴下した。滴下終了後反応液をさらに1時間攪拌し、水50mLにあけ、有機相を取り、水、食塩水で順次洗浄し芒硝で脱水した。有機相を濃縮し シリカゲルカラムクロマトにて精製し、0.5gの目的物を得た(少量の不純物を含む、収率35%)。
【0138】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.27(3H,d,J=8Hz),1.29(3H,d,J=8Hz),2.45(3H,s),5.15(1H,septet,J=8Hz),5.40(1H,d,J=4Hz),7.30(1H,brs),7.40−7.55(3H,m),7.80−7.90(2H,m).
【0139】
(合成例14)
上記と同様にして以下の化合物を得た。
(2−ベンゾイルアミノ−3−オキソペンタン酸イソプロピル:収率35%)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.14(3H,t,J=8Hz),1.27(3H,d,J=8Hz),1.29(3H,d,J=8Hz),2.74−2.90(2H,m),5.15(1H,septet,J=8Hz),5.40(1H,d,J=4Hz),7.32(1H,brs),7.40−7.55(3H,m),7.80−7.90(2H,m).
【0140】
(2−ベンゾイルアミノ−3−オキソヘキサン酸イソプロピル:収率39%)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.98(3H,t,J=8Hz),1.27(3H,d,J=8Hz),1.29(3H,d,J=8Hz),1.65−1.74(2H,m),2.71−2.82(2H,m),5.14(1H,septet,J=8Hz),5.39(1H,d,J=4Hz),7.32(1H,brs),
7.40−7.55(3H,m),7.84−7.86(2H,m).
【0141】
(2−ベンゾイルアミノ−3−(ナフタレン−2−イル)−3−オキソプロピオン酸イソプロピル:収率11%)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.04(3H,d,J=8Hz),1.23(3H,d,J=8Hz),5.05(1H,septet,J=8Hz),6.50(1H,d,J=8Hz),7.4−7.7(6H,m),7.80−8.20(6H,m),8.84(1H,s).
【0142】
(2−ベンゾイルアミノ−3−オキソ−3−(チオフェン−2−イル)プロピオン酸イソプロピル:収率17%)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.15(3H,d,J=8Hz),1.27(3H,d,J=8Hz),5.08(1H,septet,J=8Hz),6.17(1H,d,J=4Hz),7.2−7.5(5H,m),7.8−7.9(3H,m),8.19(1H,s).
【0143】
(2−ベンゾイルアミノ−3−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロピオン酸イソプロピル:収率11%)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.10(3H,d,J=8Hz),1.26(3H,d,J=8Hz),5.05(1H,septet,J=8Hz),6.29(1H,d,J=8Hz),7.4−7.6(6H,m),7.85−7.88(2H,m),8.12−8.14(2H,m).
【0144】
(3−オキソ−3−フェニル−2−ピバロイルアミノプロピオン酸イソプロピル:収率53%)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.04(3H,d,J=8Hz),1.19(3H,d,J=8Hz),1.26(9H,s),4.98(1H,septet,J=8Hz),6.10(1H,d,J=4Hz),7.00(1H,brs),7.45−7.65(3H,m),8.10−8.13(2H,m).
【0145】
(3−(4−クロロフェニル)−3−オキソ−2−ピバロイルアミノプロピオン酸イソプロピル:収率20%)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.08(3H,d,J=8Hz),1.23(3H,d,J=8Hz),1.25(9H,s),5.02(1H,septet,J=8Hz),6.05(1H,d,J=4Hz),6.98(1H,brs),7.46−7.50(2H,m),8.05−8.08(2H,m).
【0146】
(3−オキソ−2−ピバロイルアミノ−3−(チオフェン−2−イル)プロピオン酸イソプロピル:収率35%)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ1.13(3H,d,J=8Hz),1.24(3H,d,J=8Hz),1.26(9H,s),4.98(1H,septet,J=8Hz),5.92(1H,d,J=4Hz),6.95(1H,brs),7.15−7.25(1H,m),7.70−7.80(1H,m),8.05−8.15(1H,m).
【0147】
(実施例1)
(エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)sp.MCI4322由来のカルボニルレダクターゼ遺伝子で形質転換された形質転換細胞の作製)
特開2004−267130と同様にしてプラスミドpExSDR1、および形質転換した大腸菌JM109株を得た。すなわち、エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)sp.MCI4322由来由来のカルボニルレダクターゼ(Accession No. 3016330A、配列番号2)をコードするDNA配列(genbank Accession No. gp:AB154409、配列番号1)を元に配列番号3および4に記載のプライマーを合成した。
【0148】
配列番号1:
atgaaatata cggtgattac tggagcaagt tcaggaattg gatatgagac ggcaaaacta 60
ctcgcaggaa aaggaaaatc actcgttctc gtcgcgcgac ggacgtctga gctcgaaaaa 120
cttcgggatg aagtcaaaca aatctcacca gatagtgatg tcatcctcaa gtcggtcgat 180
ctcgcagata accaaaatgt ccatgattta tatgagggat taaaggaact cgacatcgaa 240
acgtggatca acaatgctgg attcggcgat tttgatctcg tccaggacat tgagctcggg 300
aaaatcgaga aaatgcttcg cttgaacatc gaggcgctaa cgattctatc gagtctgttc 360
gtccgcgatc atcatgacat cgaaggaacg acgctcgtca atatctcgtc agcaggtggc 420
taccggatcg tgccgaacgc ggtcacgtat tgcgcgacga agttctatgt cagtgcttat 480
acagaagggc tcgcgcaaga actgcaaaaa ggtggggcaa aacttcgggc gaaagtactg 540
gcaccagctg cgactgagac agagtttgcg gatcgttcgc gcggcgaagc aggtttcgac 600
tacagcaaga acgtcaaaaa gtaccatacg gcggctgaaa tggcaggctt cctgcatcag 660
ttgattgaaa gcgacgcgat cgtcggcatc gtcgacggtg agacgtatga gttcgaattg 720
cgtggtccat tgttcaacta cgcaggataa 750
【0149】
配列番号2:
Met Lys Tyr Thr Val Ile Thr Gly Ala Ser Ser Gly Ile Gly Tyr Glu
Thr Ala Lys Leu Leu Ala Gly Lys Gly Lys Ser Leu Val Leu Val Ala
Arg Arg Thr Ser Glu Leu Glu Lys Leu Arg Asp Glu Val Lys Gln Ile
Ser Pro Asp Ser Asp Val Ile Leu Lys Ser Val Asp Leu Ala Asp Asn
Gln Asn Val His Asp Leu Tyr Glu Gly Leu Lys Glu Leu Asp Ile Glu
Thr Trp Ile Asn Asn Ala Gly Phe Gly Asp Phe Asp Leu Val Gln Asp
Ile Glu Leu Gly Lys Ile Glu Lys Met Leu Arg Leu Asn Ile Glu Ala
Leu Thr Ile Leu Ser Ser Leu Phe Val Arg Asp His His Asp Ile Glu
Gly Thr Thr Leu Val Asn Ile Ser Ser Ala Gly Gly Tyr Arg Ile Val
Pro Asn Ala Val Thr Tyr Cys Ala Thr Lys Phe Tyr Val Ser Ala Tyr
Thr Glu Gly Leu Ala Gln Glu Leu Gln Lys Gly Gly Ala Lys Leu Arg
Ala Lys Val Leu Ala Pro Ala Ala Thr Glu Thr Glu Phe Ala Asp Arg
Ser Arg Gly Glu Ala Gly Phe Asp Tyr Ser Lys Asn Val Lys Lys Tyr
His Thr Ala Ala Glu Met Ala Gly Phe Leu His Gln Leu Ile Glu Ser
Asp Ala Ile Val Gly Ile Val Asp Gly Glu Thr Tyr Glu Phe Glu Leu
Arg Gly Pro Leu Phe Asn Tyr Ala Gly
【0150】
配列番号3:ggaggcgaat tcatgaaata tacggtgatt
配列番号4:taatcactgc agttatcctg cgtagttgaa
【0151】
これらのプライマーを各15pmol、dNTP各10nmol、エクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)sp.MCI4322のゲノムDNA 25ng 、KOD −plus−用10×緩衝液(東洋紡績社製)5μL、KOD −plus− 1ユニット(東洋紡績社製)を含む50μLの反応液を用い、変性(94℃、15秒)、アニール(57℃、30秒)、伸長(68℃、2分)を30サイクルで、PTC−200(MJ Research社製)を用いてPCR反応を行った。PCR反応液の一部をアガロースゲル電気泳動により解析した結果、特異的と思われるバンドが検出できた。上記反応液をMinElute PCR Purification kit(Qiagen社製)にて精製した。精製したDNA断片を制限酵素EcoRIとPstIで消化し、アガロースゲル電気泳動を行い、目的とするバンドの部分を切り出し、Qiagen Gel Extraction kit(Qiagen社製) により精製後回収した。得られたDNA断片を、EcoRI、及びPstIで消化したpKK223−3(アマシャム−ファルマシア社製)とTakara Ligation Kitを用いて、ライゲーションし、大腸菌JM109株を形質転換した。
【0152】
形質転換細胞をアンピシリン(50μg/mL)を含むLB寒天培地上で生育させ、コロニーダイレクトPCRを行い、挿入断片のサイズを確認した。目的とするDNA断片が挿入されていると考えられる形質転換細胞を50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地で培養し、QIAPrepSpin Mini Prep kit(Qiagen社製)を用いてプラスミドを精製し、pExSDR1とした。プラスミドに挿入したDNAの塩基配列をダイターミネーター法により解析したところ、挿入されたDNA断片は、配列番号1の塩基配列と一致した。)
【0153】
(実施例2)
(カルボニルレダクターゼをコードするDNAで形質転換した大腸菌を用いた(2R,3R)−2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシルー3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピルの合成)
実施例1で得られたpExSDR1をもつ形質転換体をアンピシリン(50μg/mL)を含むCircleGrow培地(国産化学)で30℃で1.7時間生育させ、0.1mMになるように イソプロピル β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加しさらに30℃で20時間培養した。得られた菌体ブロス2mLを遠心分離により集菌し、100μLの緩衝液(10%硫酸ナトリウム、10%グルコースを含む100mMトリス(最終pH9.9))を加えよく混合した。これに30μLの10g/L NADP+(オリエンタル酵母社製)、30μLのグルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬社製、1unit/ml)、合成例2で得られた20μLの10g/L 2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸イソプロピル(DMSO溶液)を添加後40℃で18時間振とう反応させた。反応終了後の反応液を酢酸エチル抽出、濃縮し、200μLの2−プロパノールで溶かし、2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピルを定量した。
【0154】
定量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。HPLCの条件は以下の通りである。
カラム:ODSカラムAcentis Amide(Spelco社製 4.6mmx10cm) 40℃
溶離液:10mM酢酸アンモニウム/アセトニトリル=40/60
流速:1ml/min
検出:UV254nm
【0155】
この結果、2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピルの収量は14.1μgであった。
【0156】
また該遺伝子を含まないプラスミドpKK223−3を持つ大腸菌を上記と同様の方法で培養し、反応させてみたが上記生成物は認められなかった。
【0157】
次に光学純度の測定をHPLCを用いて行なった。
HPLCの条件は以下の通りである。
カラム:OD−RH(ダイセル社製 4.6mmx15cm) 30℃
溶離液:40%アセトニトリル
流速:0.5ml/min
検出:UV254nm
光学純度は100%e.e.であり、立体はR,R体であった。
【0158】
(実施例3)
(カルボニルレダクターゼをコードするDNAで形質転換した大腸菌を用いた(2R,3R)−2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルの合成)
実施例2と同様にして、形質転換体を培養した。得られた菌体ブロス2mLを遠心分離により集菌し、50μLの40%硫酸アンモニウム、50μLの50%グルコース、20μLの1Mトリスを加えよく混合した。これに30μLの10g/L NADP+(オリエンタル酵母社製)、30μLのグルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬社製、1unit/ml)、合成例2で得られた20μLの10g/L 2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸エチル(DMSO溶液)を添加後40℃で18時間振とう反応させた。反応終了後の反応液を酢酸エチル抽出、濃縮し、200μLの2−プロパノールで溶かし、2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルを実施例1と同様に定量した。
【0159】
この結果、2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルの収量は48.0μgであった。また該遺伝子を含まないプラスミドpKK223−3を持つ大腸菌を上記と同様の方法で培養し、反応させてみたが上記生成物は認められなかった。
【0160】
次に光学純度の測定を実施例2と同様にして行なった所、光学純度は100%e.e.であり、立体は2R,3R体であった。
【0161】
(実施例4)
(アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(IAM12048)による(2R,3R)−2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピルの合成)
酵母エキス10g/L、グルコース10g/L、燐酸1カリウム1g/L、燐酸2カリウム3g/L、硫酸マグネシウム0.5g/L、塩化マンガン0.01g/Lを含んだ培地を作成し、40mlを200mlのひだ付き三角フラスコにいれ120度20分間の条件で滅菌した。この培地にアグロバクテリウム ツメファシエンス(IAM12048)を植菌し30度で24時間培養した。培養液を1ml遠心し菌体を得た。これに20mMのトリス塩酸バッファー(pH7.5)を50μl、50%のグルコース液を10μl加え激しく攪拌した。この懸濁液にさらに1%のNAD+(オリエンタル酵母社製)を10μl、1%のNADP+を10μl、グルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬製 1unit/ml)を10μl、合成例2で得られた1g/Lの2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸イソプロピル(DMSO溶液)を10μl添加し30度で18時間反応させた。反応液に2−プロパノールを加え全量を1mlとし、実施例2と同様に定量したところ、2R,3R'-2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピルは1.7mg/Lの濃度であった。光学純度は100%e.e.であり、立体は2R,3R体であった。
【0162】
(実施例5)
(各種バクテリアによる2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルの合成)
実施例4と同様に表1に記載した各種バクテリアを植菌し30℃で24時間培養した。ただしVariovorax paradoxus (DSM66)は1週間培養した。培養液を30ml遠心し菌体を得た。5mlの蒸留水を加え超音波破砕し遠心分離により粗酵素液を回収した。この粗酵素液200μlに1Mのトリス塩酸バッファー(pH7.5)を30μl、50%のグルコース液を10μl加え激しく攪拌した。この懸濁液にさらに1%のNAD+(オリエンタル酵母社製)を10μl、1%のNADP+を10μl、グルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬製 1unit/ml)を10μl、合成例3で得られた10g/Lの2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸エチル(DMSO溶液)を10μl添加し30度で18時間反応させた。反応液に2−プロパノールを加え全量を1mlとし定量した。定量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。HPLCの条件は以下の通りである。
【0163】
カラム:ODSカラムAcentis Amide(Spelco社製 4.6mmx10cm) 40℃
溶離液:10mM 酢酸アンモニウム/アセトニトリル=55/45
流速:1ml/min
検出:UV254nm
【0164】
生成した還元体である2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸エチル量を表1に示す。なおいずれもanti体でありsyn体は検出されなかった。
【0165】
【表1】

【0166】
(実施例6)
(各種微生物による2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピルの合成)
実施例4と同様に、表2に記載した各種微生物を植菌し30℃で1から7日十分に生育するまで培養した。培養液を1ml遠心し菌体を得た。これに0.1Mのトリス塩酸バッファー(pH10)を100μl、50%のグルコース液を20μl、1%のNAD+(オリエンタル酵母社製)を20μl、1%のNADP+を20μl、加え激しく攪拌した。この懸濁液にさらにグルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬製 1unit/ml)を10μl、合成例3で得られた2.5g/Lの2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸イソプロピル(DMSO溶液)を20μl添加し30度で1日反応させた。反応液に2−プロパノールを0.3ml加えHPLCで定量した。生成した還元体である2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピル量を表2に示す。HPLCの条件は以下の通りである。
【0167】
カラム:ODSカラムAcentis Amide(Spelco社製 4.6mmx10cm) 40℃
溶離液:10mM 酢酸アンモニウム/アセトニトリル=40/60
流速:1ml/min
検出:UV254nm
【0168】
【表2】

【0169】
(実施例7)
実施例2と同様にして培養し得られた形質転換体5.66gに0.1mMジチオスレイトール(dithiothreitol)を含む10mM燐酸カリウム緩衝液(最終pH7.0))18mlを加えよく混合した。この菌体懸濁液を超音波破砕し遠心分離により粗酵素液を回収した。この粗酵素液は蛋白濃度49g/Lであった。
【0170】
(1)カルボニルレダクターゼ活性の測定
カルボニルレダクターゼ活性の測定は100mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)、0.32mM NADPH、10mM 3−オキソ−3−(2’−チエニル)プロピオン酸エチルエステルを含む反応液を37℃で行った。1Uは上記反応条件で1分間に1μmolのNADPHを酸化する酵素量とした。結果、5U/mlであった。
【0171】
合成例6で得られた2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸メチルを10g/Lとなるように、DMSOあるいは2−プロパノールで溶解させた。
【0172】
粗酵素液180μLあるいは粗酵素液20μLに蒸留水160μL加えたもの、さらにあるいは蒸留水180μLに25μLの1M燐酸カリウム緩衝液(最終pH7.0)、10μLの50mMNADP+(オリエンタル酵母社製)、10μLのグルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬社製、10unit/ml)、10μLの50%グルコース液、10μLの10g/L基質液を添加後30℃で90分振とう反応させた。反応終了後の反応液に500μLの酢酸エチルを添加しよく攪拌後有機層を別の容器に移し乾燥させた。乾燥後20μLイソフ゜ロハ゜ノールに溶解させうち2μLをTLCで分析した。(シリカゲルプレート 展開液 ヘキサン/酢酸エチル=1/1 UV照射で検出) 基質を溶かした溶媒がDMSOの方が還元体生成量が多かった。DMSO溶液で反応させたサンプルをLC−Massで分析した。
【0173】
LC−Mass装置:ヒューレットパッカード社1100MSD
HPLCカラム:MCI−GEL ODS−1HU(150 x 4.6 mm)
溶離液A:10mM 酢酸アンモニウム液 溶離液B:100%アセトニトリル A:B=50:50
流速: 0.5 ml/min
温度:40℃
UV220nm
イオン化電圧:20V
イオン化法:API−ES法
正イオン測定モード
【0174】
粗酵素液180μLの条件では変換率は84%、還元体収率は30%であった。ディアステレオ選択性は86%d.e.であり、アンチ体が主であった。また脱炭酸された化合物が([M+H]+=248.1)47%生成していた。
【0175】
粗酵素液20μLの条件では変換率は22%、還元体収率は7%であった。ディアステレオ選択性は91%d.e.であり、アンチ体が主であった。また脱炭酸された化合物が([M+H]+=248.1)9%生成していた。
【0176】
蒸留水180μLの条件では基質はまったく変換されなかった。
実施例4と同様に光学純度を測定したところ、100%e.e.であり、立体は2R,3R体であった。
【0177】
(実施例8)
実施例7で得られた粗酵素液を陰イオン交換クロマトグラフィーで精製を行った。塩化ナトリウム0〜0.6Mのグラジエント溶出で、カルボニル還元酵素活性は、0.15M 塩化ナトリウム付近にピークが見られた。これを粗精製酵素とした。カルボニルレダクターゼ活性は1U/mlであった。
【0178】
この粗精製酵素180μLに25μLの1M燐酸カリウム緩衝液(最終pH7.0)、10μLの50mMNADP+(オリエンタル酵母社製)、10μLのグルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬社製、10unit/ml)、5μLの1Mグルコース液、5μLの10g/L基質液を添加後30℃で3時間半反応させたところ 変換率は100%、還元体収率は99%であった。ディアステレオ選択性は90%d.e.であり、アンチ体が主であった。
【0179】
(実施例9)
(各種(2R,3R)−2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸エステルの合成)
実施例2と同様にして培養し得られた形質転換体25gに10mM燐酸カリウム緩衝液(最終pH7.0))を加え150mlとしよく混合した。この菌体懸濁液を超音波破砕し硫酸アンモニウムを30g添加し溶解させてから遠心分離により粗酵素液を回収した。この粗酵素液はカルボニルレダクターゼ活性2.6U/mlであった。これにさらにグルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬社製)を2unit/mlとなるように添加した。
【0180】
この粗精製酵素88μLに25μLの1M燐酸カリウム緩衝液(最終pH7.0)、10μLの50mMNADP+(オリエンタル酵母社製)、10μLの50%グルコース液、10μLの10g/L基質液を添加後30℃で19時間反応させた。基質は2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸エチル、2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸イソプロピル2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸n−プロピルを用いた。エチルエステルは変換率97%、還元体収率97%、イソプロピルエステルは変換率77%、還元体収率76%、n−プロピルエステルは変換率87%、還元体収率82%、であった。
【0181】
(実施例10)
(化学式1で表される各種3−オキソアミノ酸誘導体からの化学式2で表される各種光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体生成)
実施例2と同様にして培養し得られた形質転換体10gに緩衝液(10%硫酸ナトリウム、100mM炭酸水素ナトリウム-10mM炭酸ナトリウム(最終pH8.5))を加え全量を40mlとしてよく混合した。この菌体懸濁液を超音波破砕し遠心分離により粗酵素液を回収した。この粗酵素液は蛋白濃度80g/Lであった。この粗酵素液はカルボニルレダクターゼ活性5U/mlであった。これにさらにグルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬社製)を100unit/mlとなるように添加した。
【0182】
この粗酵素液100μLに10μLの50mMNADP+(オリエンタル酵母社製)、5μLの50%グルコース液、10μLの10g/L 表3に示す化学式1で表される各種3−オキソアミノ酸誘導体(DMSO溶液)を添加後37℃で1日から2日振とう反応させた。反応終了後の反応液に1000μLの2−プロパノールを添加しよく攪拌後LC-Massで分析した。
【0183】
LC-Massの条件は以下の通りである。
LC−Mass装置:ヒューレットパッカード社1100MSD
HPLCカラム:L-column ODS−1HU(250 x 4.6 mm)
溶離液A:10mM 酢酸アンモニウム液 溶離液B:100%アセトニトリル
グラジェント方法1 A:B=50:50 (0分) → A:B=0:100 (10分)
A:B=0:100 (10分〜15分)
グラジェント方法2 A:B=40:60 (0分) → A:B=0:100 (10分)
A:B=0:100 (10分〜15分)
流速:1 ml/min
温度:40℃
UV254nm
イオン化電圧:20V
イオン化法:API−ES法
正イオン測定モード
グラジェント方法1での分析を分析条件1としグラジェント方法2での分析を分析条件2とする。
分析の結果を表3に示す。
【0184】
【表3】

【0185】
なお表3中の面積%とはmassクロマトグラムで得られた還元体と基質のヒ゜ークの面積値の総和に対する比率を表す。還元体のマスイオンおよびリテンションタイムとも3−オキソアミノ酸誘導体を化学的に還元して得られた3−ヒドロキシアミノ酸誘導体と一致した。
【0186】
(実施例11)
実施例10において反応性が良くジアステロマー過剰度も高い基質に関して、得られた還元体、3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の立体構造を調べるべく反応スケールをあげて実施し、分取TLCにより還元体を掻き取り酢酸エチルで回収し濃縮した。得られた粗精製体のジアステロマー過剰度(diastereomer excess; de%)および光学純度(enantiomer excess; ee%)を調べた。
【0187】
ジアステロマー過剰度の測定は下記の条件のHPLCを用いて行なった。
カラム:Inertsil−CN(GLサイエンス社製 4.6mmx15cm)40℃
溶離液A:80%10mM酢酸アンモニウム,20%アセトニトリル液
溶離液B:100%アセトニトリル
グラジェント方法3 A:B=90:10 (0分〜20分) → A:B=0:100 (30分)
A:B=0:100 (30分〜35分)
グラジェント方法4 A:B=80:20 (0分〜20分) → A:B=0:100 (30分)
A:B=0:100 (30分〜35分)
流速:1ml/min
検出:UV230nm
グラジェント方法3での分析を分析条件3としグラジェント方法4での分析を分析条件4とする
【0188】
光学純度の測定は下記の条件のHPLCを用いて行なった。
カラム:OD−H(ダイセル社製 4.6mmx15cm)30℃
溶離液:溶離液5 Hex/IPA=95/5 溶離液6 Hex/IPA=90/10
流速:0.5ml/min
検出:UV230nm
溶離液5での分析を分析条件5とし溶離液6での分析を分析条件6とする。結果を表4に示す。
【0189】
【表4】

【0190】
次にこれらをNMRの測定に供した。以下に結果を示す。
【0191】
2−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシブタン酸イソプロピル、
【化12】

【0192】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.14(3H,d,J=6.3Hz),1.24(3H,d,J=6.3Hz),1.25(3H,d,J=6.3Hz),
3.66(1H,m),4.25(1H,m),4.78(1H,dd,J=6.6,3.0Hz),5.06(1H,sept,J=6.3Hz),
7.08(1H,brd,J=5.6Hz),7.38-7.50(3H,m),7.76-7.78(2H,m)
13C NMR(100MHz、CDCl3):δ18.48, 21.73, 59.14, 69.53,
70.23, 127.21,128.69,132.11, 133.28, 168.43, 169.71 ppm
【0193】
2−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシペンタン酸イソプロピル、
【化13】

【0194】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.95(3H,t,J=7.5Hz),1.24(3H,d,J=6.3Hz),1.25(d,J=6.3Hz),
1.47(2H,m),3.38(1H,brd,J=7.3Hz),3.92(1H,m),4.77(1H,dd,J=6.8,3.0Hz),
5.07(1H,sept,J=6.3Hz),7.09(1H,brd,J=6.0Hz),7.36-7.49(3H,m),7.73-7.78(2H,m)
【0195】
2−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸イソプロピル
【化14】

【0196】
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ1.00(3H, d, J=6.6Hz), 1.05(3H d, J=6.6Hz), 1.31(3H, d, J=6.0Hz), 1.31(3H, d, J=6.0Hz), 1.78(1H, sept, J=6.6Hz), 3.22(1H, brs), 3.64(1H, d, J=7.3Hz), 4.90(1H, dd, J=6.3,3.0Hz), 5.13(1H, sept, J=6.0Hz), 7.19(1H, d, J=6.3Hz), 7.43-7.55(3H, m), 7.82-7.84(2H, m) ppm
13C NMR(100MHz、CDCl3):δ18.04, 18.12, 20.71, 20.76, 30.67, 55.63, 68.99, 77.92, 126.14, 127.64, 130.94, 132.53, 166.56, 169.42 ppm
【0197】
2−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシヘキサン酸イソプロピル、
【化15】

【0198】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.86(3H,t,J=7.3Hz),1.24(3H,d,J=6.3Hz),1.25(3H,d,J=6.3Hz),
1.28-1.55(4H.m),3.45(1H,brd,J=7.1Hz),4.02(1H.m),4.77(1H,dd,J=6.6,3.0Hz),
5.07(1H,sept,J=6.3Hz),7.09(1H,brd,J=6.1Hz),7.37-7.49(3H,m),7.76-7.78(2H,m)
【0199】
2−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−4,4−ジメチルペンタン酸イソプロピル
【化16】

【0200】
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ1.00(9H, s), 1.31(6H, d, J=6.3Hz), 3.58-3.67(1H, brs),3.67(1H, d, J=2.8Hz), 4.92(1H, dd, J=7.6,2.8Hz), 5.07(1H, sept, J=6.3Hz), 7.14(1H, d, J=7.6Hz), 7.42-7.46(2H, m), 7.50-7.55(1H, m), 7.80-7.82(2H, m) ppm
13C NMR(100MHz、CDCl3):δ20.45, 20.74, 25.15, 34.63, 54.04, 69.08, 80.15, 126.13, 127.66, 130.94, 132.55, 166.39, 170.39 ppm
【0201】
2−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸イソプロピル、
【化17】

【0202】
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ1.27(6H, d, J=6.3Hz), 4.73(1H, d, J=6.1Hz), 5.07(1H, sept, J=6.3Hz), 5.17(1H, dd, J=6.6, 3.0Hz), 5.40(1H, m), 6.91(1H, d, J=6.1Hz), 7.26-7.34(5H, m), 7.42-7.46(2H, m), 7.51-7.55(1H, m), 7.73-7.76(2H, m) ppm
13C NMR(100MHz、CDCl3):δ20.65, 20.71, 58.88, 69.41, 74.52, 125.03, 126.15, 127.02, 127.23, 127.70, 131.14, 132.15, 138.17, 167.81, 167.88 ppm
【0203】
2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピル
【化18】

【0204】
1H−NMR(400MHz,CD3OD):δ0.80−1.27(5H,m),1.58−1.79(5H,m),1.96−
1.99(1H,m),3.42(1H,m),4.00(1H,d,J=2.3Hz).
【0205】
2−ベンゾイルアミノ−3−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピル、
【化19】

【0206】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.20(3H,d,J=6.4Hz),1.18(3H,d,J=6.4Hz), 5.00(1H,sept,J=6.4Hz), 5.05(1H,dd,J=6.3,2.8Hz),5.29(1H,m), 6.89(1H,brs),7.14-7.23(4H,m),7.34-
7.50(3H,m),7.68(2H,d,J=8.1Hz)
13C NMR(100MHz、CDCl3)δ 20.69、20.72、58.88、69.65、73.93、126.16、126.48、127.37、127.76、131.31、131.88、132.75、136.84、167.65、167.89
【0207】
2−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−3−(チオフェン−2−イル)プロピオン酸イソプロピル
【化20】

【0208】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.22(3H,d,J=6.3Hz),1.24(1H,d,J=6.0Hz), 5.03(1H,sept,J=6.0Hz), 5.16(1H,dd,J=7.4,3.3Hz),5.60(1H,m),6.83-6.89(2H,m), 6.98(1H,brd,J=6.1Hz), 7.17(1H,m), 7.37-7.72(3H,m),7.74(2H,m)
13C NMR(100MHz、CDCl3)δ 20.69、20.72、58.71、6975、71.60、123.49、124.24、125.55、126.26、127.73、131.28、131.99、141.53、167.31、168.34
【0209】
2−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−3−(ナフタレン−2−イル)プロピオン酸イソプロピル、
【化21】

【0210】
1HNMR(400MHz,CDCl3):δ1.16(6H,d,J=6.3Hz),5.00(1H,sept,J=6.3Hz)5.18(1H,dd,J=6.8,3.0Hz),5.50(1H,d,J=3.0Hz),6.56(1H,brd,J=6.6Hz),7.33-7.47(6H,m),7.67-7.76(6H,m)
13C NMR(100MHz、CDCl3)δ 20.64、20.70、58.95、69.46、74.64、122.97、124.13、
124.99、125.17、126.16、126.66、126.94、126.98、127.70、131.16、132.03、132.11、
132.14、135.76、167.84、167.89
【0211】
2−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシトリデカン酸イソプロピル、
【化22】

【0212】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.82(3H,t,J=6.9Hz), 1.12-1.21(14H,m), 1.23(3H,d,J=6.2Hz), 1.25(3H,d,J=6.2Hz), 1.26-1.57(4H,m), 3.50(1H,brs),
3.97-4.04(1H,m), 4.77(1H,dd,J=6.8,3.0Hz), 5.01-5.12(1H,m), 7.10(1H,d,J=6.8Hz),
7.36-7.42(2H,m), 7.44-7.49(1H,m), 7.75-7.78(2H,m) ppm.
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ13.09, 20.75, 21.66, 24.69, 28.30,
28.47, 28.48, 28.55, 28.58, 30.88, 32.27, 57.53, 69.08, 72.40, 126.21, 127.66,
131.03, 132.39, 167.09, 168.93 ppm.
【0213】
3−ヒドロキシ−3−フェニル−2−ピバロイルアミノプロピオン酸イソプロピル、
【化23】

【0214】
3−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ピバロイルアミノプロピオン酸イソプロピル、
【化24】

【0215】
MeCN/50mMAcONH4 =60/40 230nm L-column ODS (4.6×250mm)、1 mL/min、40℃ 4.84min
anti:rt 7.45 min, syn:rt8.01 min
【0216】
3−ヒドロキシ−2−ピバロイルアミノ−3−(チオフェン−2−イル)プロピオン酸イソプロピル、
【化25】

【0217】
MeCN/50mMAcONH4 =60/40 230nm L-column ODS (4.6×250mm)、1 mL/min、40℃
anti:rt 5.58 min,, syn:rt5.91 min
【0218】
2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸フェニル
【化26】

【0219】
MeCN/50mMAcONH4=2/8-(15min)-1/0(5minHOLD), 254nm L-column ODS (4.6×250mm)、1 mL/min、40℃ anti:rt14.10 min, syn:rt14.29 min
【0220】
3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシ−2−ピバロイルアミノプロピオン酸イソプロピル
【化27】

【0221】
MeCN/50mMAcONH4=55/45, 230nm
L-column ODS (4.6×250mm)、1 mL/min、40℃ anti:rt11.42 min, syn:rt10.96 min
【0222】
2−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸ベンジル、
【化28】

【0223】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.88(3H,d,J=6.6Hz), 0.94(3H,d,J=6.6Hz), 1.60-1.67(1H,m), 3.56(1H,dd,J=8.6,3.0Hz), 4.93(1H,dd,J=7.1,3.0Hz),
5.16(1H,d,J=12.4Hz), 5.22(1H,d,J=12.4Hz), 7.07(1H,d,J=7.1Hz), 7.24-7.34(5H,m),
7.35-7.41(2H,m), 7.44-7.49(1H,m), 7.72-7.77(2H,m) ppm.
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ17.92, 18.03, 30.55, 55.27, 66.58,
77.91, 126.15, 127.36, 127.59, 127.65, 127.66, 130.99, 132.46, 133.94, 166.50,
169.81 ppm.
【0224】
(実施例12)
(変異型カルボニルレダクターゼを共現させた大腸菌を用いた(2R,3R)−2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピルおよび(2R,3R)−2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルの合成)
配列番号2の88番目のアミノ酸のフェニルアラニンがイソロイシンに変換された変異型カルボニルレダクターゼをコードする遺伝子を用いる以外は実施例1から2と同様に行った。得られた菌体ブロス1mLを遠心分離により集菌し、70μLの緩衝液(10%硫酸アンモニウム、3%グルコースを含む100mMトリス(最終pH7.5))を加えよく混合した。これに10μLの1g/L NADP+(オリエンタル酵母社製)、10μLのグルコースデヒドロゲナーゼ(天野製薬社製、10unit/ml)、10μLの50%グルコース、10μLの2.5g/L 2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸イソプロピル(DMSO溶液)あるいは10g/L 2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−オキソプロピオン酸エチル(DMSO溶液)を添加後33℃で24時間振とう反応させた。反応終了後の反応液に750μLの2−プロパノールを加え、還元体を定量した。(2R,3R)−2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸イソプロピルおよび(2R,3R)−2−ベンゾイルアミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルはそれぞれ6.2μg、29.3μg生成されていた。ディアステレオ選択性は100%d.e.であり、アンチであった。光学純度は100%e.e.であり、立体は2R,3R体であった。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】図1は、合成例における反応の概要を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0226】
[配列表]
SEQUENCE LISTING
<110> API Corporation
<120> A method for producing an optically active hydroxyl amino acid derivative
<130> A61442A
<160> 4
<210> 1
<211> 750
<212> DNA
<213> Exiguobacterium sp.
<400> 1
atgaaatata cggtgattac tggagcaagt tcaggaattg gatatgagac ggcaaaacta 60
ctcgcaggaa aaggaaaatc actcgttctc gtcgcgcgac ggacgtctga gctcgaaaaa 120
cttcgggatg aagtcaaaca aatctcacca gatagtgatg tcatcctcaa gtcggtcgat 180
ctcgcagata accaaaatgt ccatgattta tatgagggat taaaggaact cgacatcgaa 240
acgtggatca acaatgctgg attcggcgat tttgatctcg tccaggacat tgagctcggg 300
aaaatcgaga aaatgcttcg cttgaacatc gaggcgctaa cgattctatc gagtctgttc 360
gtccgcgatc atcatgacat cgaaggaacg acgctcgtca atatctcgtc agcaggtggc 420
taccggatcg tgccgaacgc ggtcacgtat tgcgcgacga agttctatgt cagtgcttat 480
acagaagggc tcgcgcaaga actgcaaaaa ggtggggcaa aacttcgggc gaaagtactg 540
gcaccagctg cgactgagac agagtttgcg gatcgttcgc gcggcgaagc aggtttcgac 600
tacagcaaga acgtcaaaaa gtaccatacg gcggctgaaa tggcaggctt cctgcatcag 660
ttgattgaaa gcgacgcgat cgtcggcatc gtcgacggtg agacgtatga gttcgaattg 720
cgtggtccat tgttcaacta cgcaggataa 750
<210> 2
<211> 249
<212> PRT
<213> Exiguobacterium sp.
<400> 2
Met Lys Tyr Thr Val Ile Thr Gly Ala Ser Ser Gly Ile Gly Tyr Glu
1 5 10 15
Thr Ala Lys Leu Leu Ala Gly Lys Gly Lys Ser Leu Val Leu Val Ala
20 25 30
Arg Arg Thr Ser Glu Leu Glu Lys Leu Arg Asp Glu Val Lys Gln Ile
35 40 45
Ser Pro Asp Ser Asp Val Ile Leu Lys Ser Val Asp Leu Ala Asp Asn
50 55 60
Gln Asn Val His Asp Leu Tyr Glu Gly Leu Lys Glu Leu Asp Ile Glu
65 70 75 80
Thr Trp Ile Asn Asn Ala Gly Phe Gly Asp Phe Asp Leu Val Gln Asp
85 90 95
Ile Glu Leu Gly Lys Ile Glu Lys Met Leu Arg Leu Asn Ile Glu Ala
100 105 110
Leu Thr Ile Leu Ser Ser Leu Phe Val Arg Asp His His Asp Ile Glu
115 120 125
Gly Thr Thr Leu Val Asn Ile Ser Ser Ala Gly Gly Tyr Arg Ile Val
130 135 140
Pro Asn Ala Val Thr Tyr Cys Ala Thr Lys Phe Tyr Val Ser Ala Tyr
145 150 155 160
Thr Glu Gly Leu Ala Gln Glu Leu Gln Lys Gly Gly Ala Lys Leu Arg
165 170 175
Ala Lys Val Leu Ala Pro Ala Ala Thr Glu Thr Glu Phe Ala Asp Arg
180 185 190
Ser Arg Gly Glu Ala Gly Phe Asp Tyr Ser Lys Asn Val Lys Lys Tyr
195 200 205
His Thr Ala Ala Glu Met Ala Gly Phe Leu His Gln Leu Ile Glu Ser
210 215 220
Asp Ala Ile Val Gly Ile Val Asp Gly Glu Thr Tyr Glu Phe Glu Leu
225 230 235 240
Arg Gly Pro Leu Phe Asn Tyr Ala Gly
245
<210> 3
<211> 30
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> PCR primer
<400> 3
ggaggcgaat tcatgaaata tacggtgatt 30
<210> 4
<211> 30
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> PCR primer
<400> 4
taatcactgc agttatcctg cgtagttgaa 30

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルコキシ基、アリール基、又はヘテロ環基を示し、R3はアルキル基またはアリール基を示し、R1からR3におけるアルキル基、アルコキシ基、アリール基及びヘテロ環基は置換されていてもよい)
で表される3−オキソアミノ酸誘導体のβ位のカルボニル基を立体特異的に還元する能力を有する微生物の菌体及び/または該菌体処理物を、前記一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体に作用させて、下記一般式(2)
【化2】

(式中、R1、R2、及びR3は前記と同義である)
で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体を生成させることを特徴とする、光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項2】
微生物がアブシディア(Absidia)属、アクレモニウム(Acremonium)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、コマモナス(Comamonas)属、デルフティア(Delftia)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ノカルディイデス(Nocardioides)属、オクロバクトラム(Ochrobactrum)属、パラコッカス(Paracoccus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、リゾビウム(Rhizobium)属、ロドコッカス(Rhodococccus)属、セラチア(Serratia)属、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、バリドボラックス(Variovorax)属、又はエクシグオバクテリウム(Exiguobacterium)属に属する微生物であることを特徴とする請求項1に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項3】
微生物が下記(A)〜(F)のいずれかのDNAを発現させた形質転換体である、請求項1に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法:
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA。
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列と50%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に変換する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(C)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に変換する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(D)配列番号1に記載の塩基配列を有するDNA。
(E)配列番号1に記載の塩基配列またはその相補配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に変換する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(F)配列番号1に記載の塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失もしくは付加された塩基配列及びその相補鎖からなり、かつ一般式(1)で表される3−オキソアミノ酸誘導体を一般式(2)で表される光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体に変換する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項4】
形質転換体が、前記DNAを染色体上に組み込むことによって形質転換されたものである、請求項3に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項5】
形質転換体が、前記DNAを含むベクターで形質転換された形質転換体である、請求項3に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項6】
一般式(1)および(2)の化合物において、R2がアリール基であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項7】
一般式(2)の光学純度が98%eeである請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項8】
一般式(2)の絶対配置が下記一般式(3)で表されるように2R,3Rであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学活性3−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法。
【化3】


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−29089(P2007−29089A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172190(P2006−172190)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(396020464)株式会社エーピーアイ コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】