光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法及び光学活性化合物
【課題】光学活性が高度に制御された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法、及び該製造方法により得られる光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の提供を目的とする。
【解決手段】光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基を保護した誘導体(I)と、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基を保護した誘導体(II)とを縮合する縮合工程を有する光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法。また、該製造方法により得られる光学活性化合物。
【解決手段】光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基を保護した誘導体(I)と、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基を保護した誘導体(II)とを縮合する縮合工程を有する光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法。また、該製造方法により得られる光学活性化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法及び光学活性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸の光学活性を維持して縮合した、所望の光学活性を有する高分子量の光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体が得られれば、該縮合体における芳香族環同士が効率的に相互作用でき、耐熱性、力学特性、配向特性、光学特性等に優れた高機能性材料として有用であると考えられる。また、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸はその構造が乳酸と類似(乳酸のメチル基が芳香族炭化水素基に置換された化合物。)していることから、得られる光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体は酸・アルカリ加水分解や生分解が行える高機能性材料として利用できる可能性がある。
光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸の代表例としては、D−マンデル酸あるいはL−マンデル酸が知られている。
【0003】
しかし、マンデル酸を重縮合しようとすると、2分子が縮合して縮合度が2の環状化合物(マンデライド)が生成されるため、高分子量の縮合体を得ることができない(非特許文献1)。
そこで、高分子量のマンデル酸縮合体を得る方法として、環状化合物であるマンデライドの開環重縮合を行う方法が示されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Whitesell, J. Pojman, Chem. Mater., 2, 248 (1990)
【非特許文献2】T. Liu, T. L. Simmons, D. A. Bohnsack, M. E. Mackay, M. R. Smith, G. L. Baker, Macromolecules, 40, 6040 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献2に記載の方法では、環状化合物(マンデライド)を開環する際に立体反転してラセミ化してしまい、用いるマンデル酸の光学活性をそのまま維持した芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体を得ることができない。
以上のように従来の方法では、芳香族環同士が効率的に相互作用でき、耐熱性等に優れた高機能性材料として利用できると考えられる、光学活性が高度に制御された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体を得ることはできなかった。
【0006】
本発明は、光学活性が高度に制御された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法、及び光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を有する光学活性が高度に制御された光学活性化合物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]下記式(1)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)と、下記式(2)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)とを縮合する縮合工程を有する光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
【0010】
(式(1)及び式(2)中、p及びqはそれぞれ独立に1以上の整数である。R11は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基又はオキシカルボニル型保護基のいずれかであり、R21は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基又はシリル型保護基のいずれかである。p個のR31は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。q個のR32は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。*で示した炭素原子は不斉炭素原子を意味する。)
[2]前記R11とR21とがオルトゴナルな保護基であり、前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)と前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)とを縮合して得られる、下記式(3)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体(III)のR11又はR21のいずれか一方を脱保護する脱保護工程を更に有し、該R11又はR21のいずれか一方を脱保護した縮合体を、前記縮合工程における前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)及び/又は前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)として用いる、前記[1]に記載の光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法。
【0011】
【化3】
【0012】
(式(3)中、nは2以上の整数であり、pとqの和である。n個のR3は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。)
【0013】
[3]下記式(4)で表される光学活性化合物。
【0014】
【化4】
【0015】
(式(4)中、nは2以上の整数である。R1は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基又はオキシカルボニル型保護基のいずれかであり、R2は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基又はシリル型保護基のいずれかであり、R1及びR2の少なくとも一方は前記いずれかの保護基である。n個のR3は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。)
[4]前記R3がフェニル基である前記[3]に記載の光学活性化合物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、光学活性が高度に制御された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体が得られる。
また、本発明の光学活性化合物は、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を有し、光学活性が高度に制御されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】合成例1で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸(tBu−MDA)の1H−NMRスペクトルである。
【図2】合成例2で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸ベンジル(tBu−MDA−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図3】合成例3で得られたD−マンデル酸ベンジル(MDA−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図4】実施例1で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ベンジル(tBu−MDA2−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図5】実施例1で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ベンジル(tBu−MDA2−Bn)の13C−NMRスペクトルである。
【図6】実施例2で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体(tBu−MDA2)の1H−NMRスペクトルである。
【図7】実施例3で得られたD−マンデル酸2量体ベンジル(MDA2−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図8】実施例4で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)のHMBCスペクトルである。
【図9】図8のHMBCスペクトルにおけるH:4.8〜6.2ppm、C:165〜175ppmの拡大図である。
【図10】実施例4で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)のHMQCスペクトルである。
【図11】図10のHMQCスペクトルにおけるH:4.8〜6.2ppm、C:65〜80ppmの拡大図である。
【図12】実施例4で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図13】実施例4で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)の13C−NMRスペクトルである。
【図14】実施例4で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)のMALDI−TOF−MSスペクトルである。
【図15】実施例5で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体(tBu−MDA4)の1H−NMRスペクトルである。
【図16】実施例6で得られたD−マンデル酸4量体ベンジル(MDA4−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図17】実施例7で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)のHMBCスペクトルである。
【図18】実施例7で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)のHMQCスペクトルである。
【図19】実施例7で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図20】実施例7で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)の13C−NMRスペクトルである。
【図21】実施例7で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)のMALDI−TOF−MSスペクトルである。
【図22】合成例4で得られたD−マンデル酸フェナシル(MDA−Pac)の1H−NMRスペクトルである。
【図23】実施例8で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体フェナシル(tBu−MDA2−Pac)の1H−NMRスペクトルである。
【図24】実施例8で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体フェナシル(tBu−MDA2−Pac)のMALDI−TOF−MSスペクトルである。
【図25】実施例9で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体(tBu−MDA2)の1H−NMRスペクトルである。
【図26】実施例11で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)のHMBCスペクトルである。
【図27】図26のHMBCスペクトルにおけるH:5.0〜6.6ppm、C:150.0〜200.0ppmの拡大図である。
【図28】実施例11で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)のHMBCスペクトルである。
【図29】図28のHMBCスペクトルにおけるH:5.0〜6.5ppm、C:65.0〜80.0ppmの拡大図である。
【図30】実施例11で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)の1H−NMRスペクトルである。
【図31】実施例11で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)の13C−NMRスペクトルである。
【図32】実施例11で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)のMALDI−TOF−MSスペクトルである。
【図33】合成例5で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ニトロベンジル(tBu−MDA2−NBn)の1H−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法]
本発明の光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体(以下、「本縮合体」という。)の製造方法は、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基が保護された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)(以下、「誘導体(I)」という。)と、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基が保護された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)(以下、「誘導体(II)」という。)とを縮合する縮合工程を有する方法である。
【0019】
誘導体(I)は、下記式(1)で表される、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸の誘導体である。誘導体(I)は、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基が保護基R21により保護されている。
【0020】
【化5】
【0021】
式(1)中、*で示した炭素原子は不斉炭素原子を意味する。
pは1以上の整数である。pは、目的の本縮合体の縮合度により適宜選定すればよく、縮合反応の効率の点から、10000以下が好ましい。
【0022】
R21は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基又はシリル型保護基のいずれかの保護基である。
アラルキルエーテル型保護基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、2−メチル−1−フェニルプロピル基、1−フェニルペンチル基、2−メチル−1−フェニルブチル基、3−メチル−1−フェニルブチル基、ジフェニルメチル基、1,1−ジフェニルエチル基、ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基が挙げられる。前記保護基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、ニトロ基、アシル基、ハロゲン原子が挙げられる。置換基を有する保護基の具体例としては、フェナシル基、ニトロベンジル基等が挙げられる。
アラルキルエーテル型保護基としては、前記したものの中でも、脱保護反応時の主鎖エステル結合の切断が抑制できる点から、フェナシル基、ニトロベンジル基が好ましい。
アルキルエーテル型保護基としては、例えば、メチル基、tert−ブチル基、1−エトキシエチル基、3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基、1−メトキシ−1−メチルエチル基、メトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基が挙げられる。前記保護基は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子が挙げられる。
シリル型保護基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基が挙げられる。
【0023】
R31は、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。また、p個のR31は、全て同一であってもよく、2種以上であってもよいが、全て同一であることが好ましい。
R31の具体例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基が挙げられる。
R31の芳香族炭化水素基は、置換基及び/又はヘテロ原子を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子が挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。
R31は、原料入手の容易さと、得られた重合体の溶剤溶解性が良好な点から、フェニル基であることが好ましい。
【0024】
誘導体(II)は、下記式(2)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸の誘導体である。誘導体(II)は、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基が保護基R11により保護されている。
【0025】
【化6】
【0026】
式(2)中、*で示した炭素原子は不斉炭素原子を意味する。
qは1以上の整数である。qは、目的の本縮合体の縮合度により適宜選定すればよく、縮合反応の効率の点から、10000以下が好ましい。
【0027】
R11は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基、又はオキシカルボニル型保護基のいずれかの保護基である。
アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基は、R21で挙げたものと同じ保護基が挙げられる。
エステル型保護基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、イソプロパノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、4−ニトロベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−tert−ブチルベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、4−ブロモベンゾイル基、4−フェニルベンゾイル基、4−メトキシカルボニルベンゾイル基が挙げられる。
オキシカルボニル型保護基としては、例えば、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、ベンジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0028】
R32は、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。また、q個のR32は、全て同一であってもよく、2種以上であってもよいが、全て同一であることが好ましい。
R32の具体例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基が挙げられる。
R32の芳香族炭化水素基は、置換基及び/又はヘテロ原子を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子が挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。
R32は、原料入手の容易さと、得られた重合体の溶剤溶解性が良好な点から、フェニル基であることが好ましい。
また、耐熱性、力学特性、配向特性、光学特性等に優れた本縮合体が得られやすい点から、全てのR31及びR32が同一の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0029】
誘導体(I)及び誘導体(II)の製造方法としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基を保護基で保護する際に通常使用される保護方法が使用できる。
また、縮合工程の原料となる誘導体(I)及び誘導体(II)は、ナトリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩、水和物、溶媒和物、結晶多形等の様々な形態で使用できる。
【0030】
縮合工程では、前述した誘導体(I)と誘導体(II)を縮合する。該縮合は、縮合反応を促進する点から、溶媒中で行うことが好ましい。縮合反応に用いる溶媒は、水、メタノール等のアルコール類、N−メチルアミン等の1級アミン類、N,N−ジメチルアミン等の2級アミン類、酢酸等のカルボン酸類、無水酢酸等のカルボン酸無水物、塩酸等の鉱酸類等の縮合反応に活性な溶媒を用いない限りは特に限定されない。縮合反応に用いる溶媒の具体例としては、例えば、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N,N−トリメチルアミン、ピリジン等の3級アミン類、トルエン等の芳香族化合物類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
【0031】
縮合反応における誘導体(I)の濃度は、縮合反応が充分に進行する濃度であればよく、0.01〜10mol/Lが好ましい。誘導体(I)の濃度が0.01mol/L以上であれば、縮合反応が進行しやすい。また、誘導体(I)の濃度が10mol/L以下であれば、安定して縮合反応を進行させやすい。
縮合反応における誘導体(II)の濃度は、誘導体(I)と同じ濃度とすることが好ましい。
【0032】
誘導体(I)と誘導体(II)の縮合は、縮合反応の進行を促進させるために縮合剤を添加して行ってもよい。
縮合剤としては、反応系中で活性カルボン酸誘導体を生成するものであればよく、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、「DCC」という。)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(別名、水溶性カルボジイミドともいう。以下、「WSCI」という。)、ジフェニルリン酸アジド、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリスジメチルアミノホスホニウム塩等のBOP試薬が挙げられる。
【0033】
縮合剤の添加量は、縮合反応を促進できる量であればよく、誘導体(I)と誘導体(II)の少ない方の仕込み量に対して、等モル量〜5倍モル量が好ましく、1.1〜3倍モル量がより好ましい。縮合剤の前記添加量が等モル量以上であれば、縮合反応を完結させやすい。また、縮合剤の前記添加量が5倍モル量以下であれば、精製工程が簡素化できる。
【0034】
また、誘導体(I)と誘導体(II)の縮合は、縮合反応の進行をさらに促進させるために、縮合剤とともに触媒を添加して行ってもよい。
触媒としては、縮合反応を促進できるものであればよく、例えば、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(以下、「DMAP」という。)が挙げられる。
【0035】
触媒の添加量は、縮合反応を促進できる量であればよく、誘導体(I)と誘導体(II)の少ない方の仕込み量に対して、0.01〜0.7倍モル量が好ましく、0.05〜0.5倍モル量がより好ましい。触媒の前記添加量が0.01倍モル量以上であれば、縮合反応が完結しやすい。また、触媒の前記添加量が0.7倍モル量以下であれば、精製工程が簡素化できる。
【0036】
誘導体(I)と誘導体(II)の縮合反応における反応容器内の雰囲気は、縮合反応に不活性な雰囲気であればよく、窒素又はアルゴンの雰囲気が好ましい。
また、縮合反応における反応温度は、−100〜100℃が好ましく、0〜80℃がより好ましい。反応温度が−100℃以上であれば、縮合反応が進行しやすい。また、反応温度が100℃以下であれば、得られる本縮合体の熱劣化を抑制しやすい。また、前記縮合剤を用いる場合、縮合剤を添加すると激しく発熱することから、反応開始時には冷媒等で反応容器を冷却しておいてもよい。
誘導体(I)と誘導体(II)の縮合反応における反応時間は、10分〜50時間が好ましく、2〜30時間がより好ましい。反応時間が10分以上であれば、縮合反応が充分に進行しやすい。また、反応時間が50時間以下であれば、生産性が向上する。
【0037】
本発明の製造方法では、以上のように誘導体(I)と誘導体(II)を縮合することにより、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の両方が保護基で保護された本縮合体が得られる。
また、本発明の製造方法では、誘導体(I)及び誘導体(II)におけるR11とR21がオルトゴナルな保護基であることが好ましい。これにより、誘導体(I)と誘導体(II)を縮合して得られる、下記式(3)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体(III)(以下、「縮合体(III)」という。)におけるR11又はR21のいずれか一方のみを脱保護する脱保護工程を行うことが可能となる。該脱保護工程によりR11又はR21のいずれか一方のみが脱保護された縮合体は、前述した誘導体(I)及び/又は誘導体(II)として再度縮合工程に用いることができる。
【0038】
【化7】
【0039】
縮合体(III)におけるnは、2以上の整数であり、pとqの和である。
R3は、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、縮合する誘導体(I)及び誘導体(II)のR31、R32によって決まる。n個のR3は、全て同一あってもよく、2種以上であってもよいが、全て同一であることが好ましい。すなわち、誘導体(I)のR31と誘導体(II)のR32が全て同じ芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0040】
R11とR21がオルトゴナルな保護基となる組み合わせとしては、特定の反応条件で一方の保護基のみが脱保護される組み合わせであればよく、例えば、R11がtert−ブチル基、R21がベンジル基の組み合わせ、R11がtert−ブチル基、R21がトリエチルシリル基の組み合わせ、R11がtert−ブチル基、R21がアリル基の組み合わせ、R11がメトキシメチル基、R21がトリエチルシリル基の組み合わせ、R11がトリエチルシリル基、R21がtert−ブチル基の組み合わせ、R11がアリル基、R21がtert−ブチル基の組み合わせ、R11がtert−ブチル基、R21がフェナシル基の組み合わせ、R11がtert−ブチル基、R21がニトロベンジル基の組み合わせが挙げられる。
【0041】
脱保護工程を行ったものを再度縮合工程に用いる場合の具体例としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
下記式に示すように、D−マンデル酸のカルボキシ基をR21で保護した誘導体(I−A)(p=1、R3がフェニル基の誘導体(I))と、D−マンデル酸のヒドロキシ基を前記R21とはオルトゴナルな関係のR11で保護した誘導体(II−A)(q=1、R3がフェニル基の誘導体(II))とを縮合することにより、縮合度2で直鎖状のD−マンデル酸の縮合体(III−A)(n=2、R3がフェニル基の縮合体(III))が得られる。
【0042】
【化8】
【0043】
そして、得られた縮合体(III−A)におけるR21及びR11の一方をそれぞれ脱保護することにより、下記式で表される誘導体(I−B)(p=2、R3がフェニル基の誘導体(I))及び誘導体(II−B)(q=2、R3がフェニル基の誘導体(II))が得られる。これら誘導体(I−B)及び誘導体(II−B)は、さらに縮合工程にて縮合することにより、縮合度4で直鎖状のD−マンデル酸の縮合体(III−B)(n=4、R3がフェニル基の縮合体(III))が得られる。
また、縮合体(III−B)を脱保護した縮合体は、さらに縮合工程における誘導体(I)及び誘導体(II)として用いることができる。つまり、前記と同様に脱保護工程及び縮合工程を行うことでn=8のD−マンデル酸の縮合体を得ることができる。このように、オルトゴナルな保護基R11及びR21を用いて縮合工程と脱保護工程繰り返すことにより、高分子量の本縮合体を高い効率で製造できる。
【0044】
【化9】
【0045】
また、脱保護工程後の縮合体は、誘導体(I)又は誘導体(II)のいずれか一方のみとして用いてもよい。例えば、前記誘導体(I−B)と前記誘導体(II−A)とを縮合してn=3のD−マンデル酸の縮合体を得る方法としてもよい。
【0046】
縮合体(III)の脱保護は、脱保護反応の進行を促進する点から、溶媒中で行うことが好ましい。
脱保護に用いる溶媒としては、脱保護反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、水、メタノール等のアルコール類、N−メチルアミン等の1級アミン類、N,N−ジメチルアミン等の2級アミン類、酢酸等のカルボン酸類、無水酢酸等のカルボン酸無水物、塩酸等の鉱酸類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N,N−トリメチルアミン、ピリジン等の3級アミン類、トルエン等の芳香族化合物類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
【0047】
また、縮合体(III)の脱保護は脱保護剤を用いて行う。
脱保護剤としては、ヒドロキシ基又はカルボキシル基のいずれか一方の保護基、すなわちR11又はR21を選択的に脱保護できるものであればよく、例えば、トリフルオロ酢酸(以下、「TFA」という。)、酢酸等の有機酸;前記有機酸の亜鉛、マグネシウム等の金属塩;塩酸等の鉱酸;水酸化ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフッ化物(以下、「TBAF」という。)等のアルカリ;パラジウム−炭素と水素の混合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム;リンドラー触媒が挙げられる。
【0048】
例えば、ヒドロキシ基の保護基R11がtert−ブチル基、カルボキシル基の保護基R21がベンジル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にパラジウム−炭素と水素の混合物、またはリンドラー触媒の組み合わせが使用できる。R11がtert−ブチル基、R21がトリエチルシリル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にTBAFの組み合わせが使用できる。R11がtert−ブチル基、R21がアリル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの組み合わせが使用できる。R11がメトキシメチル基、R21がトリエチルシリル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にTBAFの組み合わせが使用できる。R11がトリエチルシリル基、R21がtert−ブチル基であれば、R11の脱保護反応にTBAF、R21の脱保護反応にTFAの組み合わせが使用できる。R11がアリル基、R21がtert−ブチル基であれば、R11の脱保護反応にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、R21の脱保護反応にTFAの組み合わせが使用できる。R11がtert−ブチル基、R21がフェナシル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にTBAFの組み合わせが使用できる。R11がtert−ブチル基、R21がニトロベンジル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にTBAF、酢酸亜鉛、あるいは酢酸マグネシウムの組み合わせが使用できる。
前記脱保護剤は、反応溶媒として兼用してもよく、前記溶媒と組み合わせて用いてもよい。
【0049】
脱保護剤の添加量は、脱保護反応が充分に進行できる量であればよく、縮合体(III)の全質量に対して、0.01〜30倍モル量が好ましく、0.05〜20倍モル量がより好ましい。脱保護剤の前記添加量が0.01倍モル量以上であれば、脱保護反応を完結させやすい。また、脱保護剤の前記添加量が30倍モル量以下であれば、精製工程が簡素化できる。
【0050】
脱保護反応における縮合体(III)の濃度は、脱保護反応が充分に進行する濃度であればよく、0.01〜10mol/Lが好ましい。縮合体(III)の濃度が0.01mol/L以上であれば、本縮合体の生産性が向上する。また、縮合体(III)の濃度が10mol/L以下であれば、脱保護反応が進行しやすい。
【0051】
縮合体(III)の脱保護反応における反応容器内の雰囲気は、脱保護反応に不活性な雰囲気であればよく、窒素又はアルゴンの雰囲気とすることが好ましい。また、脱保護反応に必要な元素を供給するためには水素を用いる必要があるため、窒素やアルゴンを用いずに水素雰囲気とすることも好ましい。
縮合体(III)の脱保護反応における反応温度は、−100〜100℃が好ましく、0〜80℃がより好ましい。反応温度が−100℃以上であれば、脱保護反応が進行しやすい。また、反応温度が100℃以下であれば、得られる本縮合体の熱劣化を抑制しやすい。
縮合体(III)の脱保護反応における反応時間は、10分〜50時間が好ましく、2〜30時間がより好ましい。反応時間が10分以上であれば、縮合反応が充分に進行しやすい。また、反応時間が50時間以下であれば、生産性が向上する。
【0052】
また、縮合工程や脱保護工程の後には、精製工程を行うことが好ましい。精製工程を行うことにより、縮合工程及び脱保護工程を繰り返し行う際、各工程の反応効率が向上する。精製方法は、縮合工程、脱保護工程の各工程における目的生成物を精製できる方法であれば特に限定されず、例えば、再結晶法が挙げられる。
【0053】
本発明の製造方法は、少ない工程数で光学活性が高度に制御された高分子量の本縮合体が得られる点から、前述のようにオルトゴナルな保護基を用いて縮合工程と脱保護工程を繰り返して、nが2、4、8、16等と順次構成単位が長くなるように縮合体(III)を製造していく方法(以下、「方法(X)」という。)が好ましい。
方法(X)は、前記誘導体(I−B)と前記誘導体(II−A)を縮合して縮合度が3(n=3)の縮合体(III)とし、その縮合体(III)を基にnが6、12、24等のように順次構成単位が長くなるように縮合体(III)を製造する方法であってもよい。
ただし、本発明の製造方法は方法(X)には限定されず、例えば、誘導体(II−A)に対して、誘導体(I−A)を加えて縮合した後、R21を脱保護することを繰り返して、誘導体(I−A)を1つずつ縮合していく方法であってもよい。
【0054】
従来のマンデル酸の重縮合方法では、D−マンデル酸やL−マンデル酸を重縮合しようとしても、縮合度が2の環状化合物であるマンデライドが生成してしまうために高分子量の縮合体を得ることができなかった。また、非特許文献2に記載のようにマンデライドの開環重縮合によれば高分子量の縮合体を得ることは可能であるが、立体反転によりラセミ化してしまうため光学活性を高度に制御した縮合体を得ることはできなかった。
【0055】
これに対し、本発明の製造方法では、誘導体(I)及び誘導体(II)をそれらの光学活性を維持したまま縮合できるため、光学活性が高度に制御された、光学的に純粋な本縮合体が得られる。
例えば、D−マンデル酸のカルボキシ基を保護した誘導体(I)と、D−マンデル酸のヒドロキシ基を保護した誘導体(II)を用い、方法(X)により縮合工程と脱保護工程を繰り返していくことにより、D−マンデル酸の光学活性が全ての構成単位において維持された、鏡像体過剰率が100%eeの高分子量の縮合体(III)を得ることができる。
また、D−マンデル酸及びL−マンデル酸のカルボキシ基又はヒドロキシ基を保護した誘導体(I)、誘導体(II)を適宜用いることで、D−マンデル酸とL−マンデル酸とが所望の順に縮合した縮合体(III)を得ることもできる。
【0056】
[光学活性化合物]
本発明の光学活性化合物(以下、「本化合物」という。)は、下記式(4)で表される化合物である。
【0057】
【化10】
【0058】
式(4)中のnは2以上の整数である。nは特に制限されないが、本化合物が効率良く得られる点から10000以下が好ましい。
R1は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基、又はオキシカルボニル型保護基のいずれかである。
R2は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、又はシリル型保護基のいずれかである。
R1とR2は、少なくとも一方が前記いずれかの保護基である。R1とR2における前記各保護基は、前述のR11とR21で挙げたものと同じ保護基が挙げられる。R1とR2の両方が水素原子でない場合、化学的に安定である点から、R1とR2はオルトゴナルな保護基であることが好ましい。オルトゴナルな保護基の組み合わせは、R11とR21の場合と同様である。
【0059】
R3は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。n個のR3は、全て同一あってもよく、2種以上であってもよいが、全て同一であることが好ましい。
R3は、フェニル基が特に好ましい。すなわち、下記式(5)で表される本縮合体であることが好ましい。
【0060】
【化11】
【0061】
本化合物の鏡像体過剰率は、耐熱性、力学特性、配向特性、光学特性等に優れる点から、70〜100%eeであることが好ましく、80〜100%eeがより好ましく、90〜100%eeがさらに好ましい。
【0062】
また、本化合物の形態は特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩、水和物、溶媒和物、結晶多形等の様々な形態とすることができる。
【0063】
本化合物の製造方法としては、前述の製造方法を用いることが好ましい。前述の製造方法を用いることにより、光学活性が高度に制御された本化合物を得ることができる。すなわち、本化合物は、前述の製造方法により誘導体(I)と誘導体(II)を縮合して得られるヒドロキシ基及びカルボキシ基の両方が保護された縮合体、又はオルトゴナルな保護基R11、R21で保護された縮合体(III)のR11又はR21のいずれか一方を脱保護した縮合体からなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。この場合、本化合物は、R1が水素原子又はR11であり、R2が水素原子又はR21であり、R1とR2のいずれか一方が保護基である。
前記式(5)で表わされる本化合物の製造方法としては、D−マンデル酸、L−マンデル酸のヒドロキシ基又はカルボキシ基を保護した誘導体(I−A)及び誘導体(II−A)を縮合する方法、又は該方法により得られた縮合体(III−A)におけるR11又はR21のいずれか一方を脱保護する方法が好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[NMR分析]
本実施例で得られた縮合体及び誘導体の化学構造は、1H−NMR、13C−NMR(日本電子株式会社製、JNM−ECX400)により確認した。測定条件は、測定溶媒を重水素化クロロホルム、試料濃度2質量/容量%、測定温度を室温とした。積算回数は、観測核が1Hのときは16回、観測核が13Cのときは5000回とした。
【0065】
[質量分析]
縮合体の質量は、窒素レーザーを備えたマトリックス支援レーザー脱離イオン化時間飛行型質量分析計(以下、「MALDI−TOF−MS」という。)(株式会社島津製作所製、AXIMA−CFRplus)により確認した。
MALDI−TOF−MS測定試料は、以下の手順で準備した。
まず、カチオン化剤としてヨウ化ナトリウム1mgを1mLのテトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)に溶解した溶液を調製し、該溶液を試料プレートに1μL滴下し、自然乾燥させた。次に、実施例で合成した縮合体1mgを1mLの塩化メチレンに溶解した溶液を、前記試料プレートのヨウ化ナトリウムが析出した部分に1μL滴下し、自然乾燥させた。そして、マトリクス剤としてトランス−2−[3−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチル−2−プロペニルインデン]マロノニトリル10mgを1mLのTHFに溶解した溶液を、前記試料プレートのヨウ化ナトリウムと化合物が析出した部分に1μL滴下し、自然乾燥させた。
また、質量のキャリブレーションは、Triton X−100(商品名、和光純薬工業株式会社製)を用いて外部標準法で行った。キャリブレーションに用いたTriton X−100の質量は、10量体の669.4172、11量体の713.4433、12量体の757.4694(いずれも、ナトリウムイオン付加体。)であった。
【0066】
[比旋光度]
縮合体及び誘導体の比旋光度は、クロロホルム10mLに試料0.1gを溶解させた溶液について、旋光計(日本分光株式会社製、DIP−360)を用いて室温にて測定した。
【0067】
[融点]
縮合体及び誘導体の融点は、微量融点測定装置(ヤナコ株式会社製、MP−S2)を用いて測定した。
【0068】
[合成例1]D−マンデル酸ベンジル(MDA−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた500mLのナスフラスコに、下記式(6)で表されるD−マンデル酸30.4g(200mmol)、炭酸カリウム15.2g(110mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド100mL、及び臭化ベンジル34.2g(200mmol)を加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで2時間攪拌し、カルボキシ基の保護反応を行った。反応終了後、反応液を分液漏斗に移した。また、反応液が入っていたフラスコを酢酸エチル200mLで洗浄し、該洗浄液も分液漏斗に移した。分液漏斗に移した溶液を、蒸留水300mLで3回洗浄した。
洗浄後の有機相を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(7)で表される白色固体のD−マンデル酸ベンジルの粗体(粗MDA−Bn)を42.2g(収率87%)得た。
【0069】
【化12】
【0070】
粗MDA−Bnの入った500mLナスフラスコに、室温にて粗MDA−Bnが完全に溶解するまで酢酸エチルを加えた後、−30℃の冷暗所に24時間保持し、再結晶により精製した。
得られた結晶を5Cろ紙を用いてろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した白色固体のD−マンデル酸ベンジル(MDA−Bn、誘導体(I))を35.4g(収率73%)得た。
得られたMDA−Bnの化学構造は1H−NMRにより確認した。1H−NMRスペクトルを図1に示す。また、MDA−Bnの比旋光度[α]Dは−56°であり、融点は106.0〜106.5℃であった。
【0071】
[合成例2]O−t−ブチル−D−マンデル酸ベンジル(tBu−MDA−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた500mLのナスフラスコに、合成例1と同様の方法で得られた前記式(7)で表されるMDA−Bnを48.5g(200mmol)、塩化メチレンを300mL加え、内容物を溶解した後、ドライアイス/メタノール浴にて、溶液を−78℃に冷却した。
一方、ドライアイス/メタノール浴にてあらかじめ冷却したデュワー冷却器付きの密閉した200mLナスフラスコに、ボンベ充填されたイソブテン(沸点−6.9℃)を導入し、液化したイソブテン100mLを捕集した。
前述の−78℃に冷却したMDA−Bn/塩化メチレン溶液の入ったフラスコに液化イソブテン100mLを移した後、濃硫酸9.2gを加えた。このフラスコに三方コックを取り付けて密封した状態で、−78℃にてスターラーで3時間攪拌し、さらに、氷水浴(0℃)にて21時間攪拌し、ヒドロキシ基の保護反応を行った。
反応終了後、反応液を分液漏斗に移した。また、反応液の入っていたフラスコを塩化メチレン200mLで洗浄し、その洗浄液も分液漏斗に移した。分液漏斗に移した溶液を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液100mLで1回、蒸留水300mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(8)で表されるクリーム色の液体のD−マンデル酸t−ブチルエーテル−ベンジルエステル(tBu−MDA−Bn)を56.7g(収率95%)得た。
得られたtBu−MDA−Bnの化学構造は1H−NMRで確認した。tBu−MDA−Bnの1H−NMRスペクトルを図2に示す。
【0072】
【化13】
【0073】
[合成例3]O−t−ブチル−D−マンデル酸(tBu−MDA)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた500mLのナスフラスコに、合成例2で得られた前記式(8)のtBu−MDA−Bnを56.7g(190mmol)、約55%の水で湿潤されたパラジウム/炭素混合物(パラジウム含有量5質量%)を5.0g加え、三方コックを取り付けた。次いで、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。その後、さらにフラスコ内を真空ポンプで減圧した後、水素ガスを導入して常圧に戻す水素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を水素雰囲気で保持したまま、安定剤無添加のTHF200mLをフラスコに加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで24時間攪拌し、脱保護反応を行った。
パラジウムに吸着した水素を脱離させるため、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻した。フラスコ内の反応液を30分間スターラーで攪拌した後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を安定剤無添加のTHF100mLで洗浄した。
ろ液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、式(9)で表される淡黄色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸(tBu−MDA、誘導体(II))を39.2g(収率99%)得た。
得られたMDA−Bnの化学構造は1H−NMRで確認した。MDA−Bnの1H−NMRスペクトルを図3に示す。また、MDA−Bnの比旋光度[α]Dは−112°であり、融点は87.5〜88.5℃であった。
【0074】
【化14】
【0075】
[実施例1]O−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ベンジル(tBu−MDA2−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、合成例1で得られた前記式(7)のMDA−Bnを2.4g(10mmol)、合成例3で得られた前記式(9)のtBu−MDAを2.1g(10mmol)、縮合剤としてDCCを2.5g(12mmol)、触媒としてDMAPを0.24g(2mmol)加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を窒素雰囲気で保持したまま、脱水塩化メチレン20mLをフラスコに加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで24時間攪拌し、縮合反応を行った。
【0076】
反応終了後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を塩化メチレン80mLで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液100mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(10)で表される無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ベンジルの粗体(粗tBu−MDA2−Bn)を3.7g(収率98%)得た。
500mLナスフラスコに粗tBu−MDA2−Bnを全量移し、メタノール10mLを加え、粗tBu−MDA2−Bnが完全に溶解するまでジエチルエーテルを加えた後、−30℃の冷暗所に24時間保持し、再結晶で精製した。
得られた結晶を5Cろ紙でろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ベンジル(tBu−MDA2−Bn)を2.8g(収率75%)得た。
得られたtBu−MDA2−Bnの化学構造は1H−NMR及び13C−NMRで確認した。tBu−MDA2−Bnの1H−NMRスペクトルを図4、13C−NMRスペクトルを図5に示す。また、tBu−MDA2−Bnの比旋光度[α]Dは−57°であり、融点は92.0〜93.0℃であった。
【0077】
【化15】
【0078】
[実施例2]O−t−ブチル−D−マンデル酸2量体(tBu−MDA2)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例1で得られた前記式(10)のtBu−MDA2−Bnを5.2g(12mmol)、約55%の水で湿潤されたパラジウム/炭素混合物(パラジウム含有量5質量%)を0.5g加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。さらに、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、水素ガスを導入して常圧に戻す水素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を水素雰囲気で保持したまま、安定剤無添加のTHF20mLをフラスコに加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで1時間攪拌し、脱保護反応を行った。
【0079】
反応液を薄層クロマトグラフィーで展開して原料スポットの消失を確認した後に、パラジウムに吸着した水素を脱離させるためにフラスコ内を真空ポンプで減圧し、その後乾燥窒素を導入して常圧に戻した。なお、展開液はn−ヘキサン/酢酸エチル=1/4(容量比)を用いた。下記式(10)で表される原料のRf値は0.34、下記式(11)で表される生成物のRf値は0.11であった。
フラスコ内の反応液を30分間スターラーで攪拌した後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を安定剤無添加のTHF80mLで洗浄した。
ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(11)で表される無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体の粗体(粗tBu−MDA2)を4.1g(収率99%)得た。
500mLナスフラスコに粗tBu−MDA2を全量移し、n−ヘキサン10mLを加え、粗tBu−MDA2が完全に溶解するまでジエチルエーテルを加えた後、−30℃の冷暗所に24時間保持し、再結晶により精製した。
得られた結晶を5Cろ紙でろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した針状で無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体(tBu−MDA2)を3.3g(収率80%)得た。
得られたtBu−MDA2の化学構造は1H−NMRで確認した。tBu−MDA2の1H−NMRスペクトルを図6に示す。また、tBu−MDA2の比旋光度[α]Dは−94°であり、融点は145.5〜146.5℃であった。
【0080】
【化16】
【0081】
[実施例3]D−マンデル酸2量体ベンジル(MDA2−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例1で得られた前記式(10)のtBu−MDA2−Bnを6.5g(15mmol)、TFAを62mL加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで3時間攪拌し、脱保護反応を行った。
フラスコ内の反応液をエバポレーターで濃縮した後、ジエチルエーテルを20mL加え、残留物を溶解した後、分液漏斗に移した。また、フラスコを80mLのジエチルエーテルで洗浄し、前記分液漏斗に移した。分液漏斗内の溶液を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液100mLで3回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(12)で表される無色〜白色固体のD−マンデル酸2量体ベンジルの粗体(粗MDA2−Bn)を5.5g(収率98%)得た。
500mLナスフラスコに粗MDA2−Bnを全量移し、n−ヘキサン10mLを加え、粗MDA2−Bnが完全に溶解するまでジエチルエーテルを加えた後、−30℃の冷暗所に24時間保持し、再結晶により精製した。
得られた結晶を5Cろ紙でろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した無色〜白色固体のD−マンデル酸2量体ベンジル(MDA2−Bn)を4.6g(収率82%)得た。
得られたMDA2−Bnの化学構造は1H−NMRで確認した。MDA2−Bnの1H−NMRスペクトルを図7に示す。また、MDA2−Bnの比旋光度[α]Dは−79°であり、融点は82.5〜83.0℃であった。
【0082】
【化17】
【0083】
[実施例4]O−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例2で得られた前記式(11)のtBu−MDA2を0.58g(1.7mmol)、実施例3で得られた前記式(12)のMDA2−Bnを0.64g(1.7mmol)、縮合剤としてWSCIを0.31g(2.0mmol)、触媒としてDMAPを0.05g(0.4mmol)加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を窒素雰囲気で保持したまま、脱水塩化メチレン10mLをフラスコに加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで24時間攪拌し、縮合反応を行った。
反応終了後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を塩化メチレン140mLで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液150mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(13)で表される薄い黄褐色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジルの粗体(粗tBu−MDA4−Bn)を2.3g(収率95%)得た。
500mLナスフラスコに粗tBu−MDA4−Bnを全量移し、メタノール10mLを加え、粗tBu−MDA4−Bnが完全に溶解するまでジエチルエーテルを加えた後、−30℃の冷暗所に24時間保持し、再結晶により精製した。
得られた結晶を5Cろ紙でろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn、本縮合体)を2.1g(収率87%)得た。
【0084】
【化18】
【0085】
得られたtBu−MDA4−Bnの化学構造は1H−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSで確認した。tBu−MDA4−BnのHMBCスペクトルを図8及び図9、HMQCスペクトルを図10及び図11、1H−NMRスペクトルを図12、13C−NMRスペクトルを図13、MALDI−TOF−MSスペクトルを図14に示す。
HMBCスペクトルにてプロトンのアサインを行った後、HMQCスペクトルにてカーボンのアサインを行なった。図9に示すように、得られたtBu−MDA4−BnではHMBCスペクトルにおいて領域αに相関ピークが見られない。これは、得られたtBu−MDA4−Bnにおいて、D−マンデル酸の光学活性を維持したまま縮合して分子鎖が伸張し、結合角が固定されているためである。ラセミ体のtBu−MDA4−Bnであれば領域αに相関ピークが見られるはずであり、この結果からD−マンデル酸の光学活性を維持したn=4の縮合体(4量体)が得られたことが確認できた。
また、tBu−MDA4−Bnの比旋光度[α]Dは−84°であり、融点は109.0〜110.0℃であった。
【0086】
[実施例5]O−t−ブチル−D−マンデル酸4量体(tBu−MDA4)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例4で得られた前記式(13)のtBu−MDA4−Bnを1.00g(1.4mmol)、リンドラー触媒を0.1g加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。さらに、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、水素ガスを導入して常圧に戻す水素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を水素雰囲気で保持したまま、安定剤無添加のTHF20mLをフラスコに加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで2時間攪拌し、脱保護反応を行った。
【0087】
反応液を薄層クロマトグラフィーで展開して原料スポットの消失を確認した後に、リンドラー触媒に吸着した水素を脱離させるためにフラスコ内を真空ポンプで減圧し、その後に乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。なお、展開液はn−ヘキサン/酢酸エチル=1/4(容量比)を用いた。下記式(13)で表される原料のRf値は0.278、下記式(14)で表される生成物のRf値は0.00であった。
フラスコ内の反応液を30分間スターラーで攪拌した後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を安定剤無添加のTHF80mLで洗浄した。
ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(14)で表される無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体の粗体(粗tBu−MDA4)を0.90g(収率99%)得た。
得られた粗tBu−MDA4の化学構造は1H−NMRで確認した。tBu−MDA4の1H−NMRスペクトルを図15に示す。
【0088】
【化19】
【0089】
[実施例6]D−マンデル酸4量体ベンジル(MDA4−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例4で得られた前記式(13)のtBu−MDA4−Bnを1.00g(1.4mmol)、TFAを5mL加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで3時間攪拌し、脱保護反応を行った。
フラスコ内の反応液をエバポレーターで濃縮した後、塩化メチレンを20mL加え、残留物を溶解した後、分液漏斗に移した。また、フラスコを60mLの塩化メチレンで洗浄し、前記分液漏斗に移した。分液漏斗内の溶液を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液100mLで3回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(15)で表される無色〜白色固体のD−マンデル酸4量体ベンジルの粗体(粗MDA4−Bn)を0.88g(収率96%)得た。
得られた粗MDA4−Bnの化学構造は1H−NMRで確認した。MDA4−Bnの1H−NMRスペクトルを図16に示す。
【0090】
【化20】
【0091】
[実施例7]O−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例5で得られた前記式(14)の粗tBu−MDA4を0.88g、実施例6で得られた前記式(15)の粗MDA4−Bnを0.95g、縮合剤としてEDCを0.33g(1.73mmol)、触媒としてDMAPを0.035g(0.288mmol)加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を窒素雰囲気で保持したまま、フラスコを0℃の氷浴へ浸漬した。その後、脱水塩化メチレン10mLをフラスコに加え、内容物を溶解し、0℃にてスターラーで2時間攪拌した。その後、フラスコを室温へ移し、さらに22時間撹拌し、縮合反応を行った。
反応終了後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を塩化メチレン80mLで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液100mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(16)で表される薄い黄褐色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジルの粗体(粗tBu−MDA8−Bn)を1.67g(収率94%)得た。
【0092】
【化21】
【0093】
得られた粗tBu−MDA8−Bnの化学構造は1H−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSで確認した。tBu−MDA8−BnのHMBCスペクトルを図17、HMQCスペクトルを図18、1H−NMRスペクトルを図19、13C−NMRスペクトルを図20、MALDI−TOF−MSスペクトルを図21に示す。
MALDI−TOF−MSスペクトルにて、質量/電荷比(m/z)=1259.54の信号が最も強く観測された。このm/zは、tBu−MDA8−Bnのナトリウムイオン付加体のモノアイソトープ質量(1259.40Da)と誤差範囲で一致した。
また、実施例4と同様に、HMBCスペクトル及びHMQCスペクトルから、D−マンデル酸の光学活性を維持したn=8の縮合体(8量体)が得られたことが確認できた。
【0094】
[合成例4]D−マンデル酸フェナシル(MDA−Pac)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた300mLのナスフラスコに、下記式(6)で表されるD−マンデル酸16.74g(110mmol)、炭酸カリウム8.36g(60mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド55mL、及び2−ブロモアセトフェノン21.89g(110mmol)を加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで2時間攪拌し、カルボキシ基の保護反応を行った。なお、前記保護反応は、暗所にて行った。反応終了後、反応液を分液漏斗に移した。また、反応液が入っていたフラスコを酢酸エチル200mLで洗浄し、該洗浄液も分液漏斗に移した。分液漏斗に移した溶液を、蒸留水300mLで3回洗浄した。
洗浄後の有機相を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(17)で表される白色固体のD−マンデル酸フェナシルの粗体(粗MDA−Pac)を25.75g(収率99%)得た。
【0095】
【化22】
【0096】
粗MDA−Pacの入った500mLナスフラスコに、40℃にて粗MDA−Pacが完全に溶解するまで酢酸エチルを加えた後、5℃の冷暗所に48時間保持し、再結晶により精製した。
得られた結晶を5Cろ紙を用いてろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した白色固体のD−マンデル酸フェナシル(MDA−Pac、誘導体(I))を25.8g(収率87%)得た。
得られたMDA−Pacの化学構造は1H−NMRにより確認した。1H−NMRスペクトルを図22に示す。また、MDA−Pacの比旋光度[α]Dは110°であり、融点は97.0〜99.0℃であった。
【0097】
[実施例8]O−t−ブチル−D−マンデル酸2量体フェナシル(tBu−MDA2−Pac)の合成
まず、縮合剤である31.6g(153mmol)のDCCと、触媒である3.7g(30.6mmol)のDMAPを、脱水塩化メチレン100mLに溶解し、この溶液を200mLの滴下漏斗へ移した。
あらかじめ攪拌子を入れ、前記滴下漏斗を接続した1000mLの三ツ口フラスコに、合成例4で得られた前記式(17)のMDA−Pacを33.1g(122.5mmol)、合成例3で得られた前記式(9)のtBu−MDAを27.5g(122.5mmol)加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を窒素雰囲気で保持したまま、脱水塩化メチレン300mLをフラスコに加え、内容物を溶解した。
三ツ口フラスコを0℃の氷浴へ浸漬した後、滴下漏斗内の溶液を、三ツ口フラスコへ1時間かけて滴下し、さらに0℃、2時間スターラーで攪拌した後、三ツ口フラスコを室温へ移し、さらに22時間撹拌し、縮合反応を行った。
【0098】
反応終了後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を塩化メチレン150mLで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液200mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液200mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム20gを加えて12時間保持して脱水し、5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を1000mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(18)で表される無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体フェナシルの粗体(粗tBu−MDA2−Pac)を70.6g(収率125%)得た。
70.6gの粗tBu−MDA2−Pacを、展開溶媒を酢酸エチル/n−ヘキサン=2/3(容積比)としたカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
得られた溶液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した白色固体のtBu−MDA2−Bnを56.6g(収率94%)得た。
得られたtBu−MDA2−Pacの化学構造は1H−NMR、MALDI−TOF−MSで確認した。tBu−MDA2−Pacの1H−NMRスペクトルを図23、MALDI−TOF−MSスペクトルを図24に示す。
MALDI−TOF−MSスペクトルにて、質量/電荷比(m/z)=483.15の信号が最も強く観測された。このm/zは、tBu−MDA2−Pacのナトリウムイオン付加体のモノアイソトープ質量(483.19Da)と誤差範囲内で一致した。
また、tBu−MDA2−Pacの比旋光度[α]Dは58.9°であり、融点は100.0〜101.0℃であった。
【0099】
【化23】
【0100】
[実施例9]tBu−MDA2−Pacのフェナシル基脱保護によるO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体(tBu−MDA2)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例8で得られた前記式(18)のtBu−MDA2−Pacを0.10g(0.217mmol)、1mol/Lのテトラブチルアンモニウムフルオリド/THF溶液を1.00mL、蒸留水を0.06g、THFを2mL加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで30分間攪拌し、脱保護反応を行った。
【0101】
フラスコ内の反応液をエバポレーターで濃縮した後、塩化メチレンを20mL加え、残留物を溶解した後、分液漏斗に移した。また、フラスコを60mLの塩化メチレンで洗浄し、前記分液漏斗に移した。分液漏斗内の溶液を、水酸化ナトリウム飽和水溶液100mLで3回、クエン酸飽和水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(11)で表される薄い黄色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体の粗体(粗tBu−MDA2)を得た。
得られた粗tBu−MDA2の化学構造は1H−NMRで確認した。tBu−MDA2の1H−NMRスペクトルを図25に示す。
【0102】
【化24】
【0103】
[実施例10]D−マンデル酸2量体フェナシル(MDA2−Pac)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた300mLのナスフラスコに、実施例8で得られた前記式(18)のtBu−MDA2−Pacを21.9g(47.6mmol)、TFAを48mL加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで3時間攪拌し、脱保護反応を行った。
フラスコ内の反応液をエバポレーターで濃縮した後、塩化メチレンを50mL加え、残留物を溶解した後、分液漏斗に移した。また、フラスコを100mLの塩化メチレンで洗浄し、前記分液漏斗に移した。分液漏斗内の溶液を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液200mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液200mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム20gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(19)で表される淡黄色固体のD−マンデル酸2量体フェナシルの粗体(粗MDA2−Pac)を19.5g(収率98%)得た。
【0104】
【化25】
【0105】
[実施例11]O−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)の合成
まず、縮合剤である12.8g(60mmol)のDCCと、触媒である1.5g(12mmol)のDMAPを、脱水塩化メチレン100mLに溶解し、この溶液を200mLの滴下漏斗へ移した。
あらかじめ攪拌子を入れた1000mLの三ツ口フラスコに、実施例9で得られた前記式(11)のtBu−MDA2を16.6g、実施例10で得られた前記式(19)の粗MDA2−Pacを19.5g加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を窒素雰囲気で保持したまま、脱水塩化メチレン150mLをフラスコに加え、内容物を溶解した。
三ツ口フラスコを0℃の氷浴へ浸漬した後、滴下漏斗内の溶液を、三ツ口フラスコへ1時間かけて滴下し、さらに0℃、2時間スターラーで攪拌した後、三ツ口フラスコを室温へ移し、さらに22時間撹拌し、縮合反応を行った。
【0106】
反応終了後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を塩化メチレン100mLで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液200mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液200mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を500mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(20)で表される薄い黄褐色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシルの粗体(粗tBu−MDA4−Pac)を37.3g(収率106%)得た。
37.3gの粗tBu−MDA4−Pacを、展開溶媒を酢酸エチル/n−ヘキサン=1/2(容積比)としたカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
得られた溶液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した薄い黄褐色固体のtBu−MDA4−Pacを34.0g(収率97%)得た。
【0107】
【化26】
【0108】
得られた粗tBu−MDA4−Pacの化学構造は1H−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSで確認した。tBu−MDA4−PacのHMBCスペクトルを図26及び図27、HMQCスペクトルを図28及び図29、1H−NMRスペクトルを図30、13C−NMRスペクトルを図31、MALDI−TOF−MSスペクトルを図32に示す。
MALDI−TOF−MSスペクトルにて、質量/電荷比(m/z)=751.30の信号が最も強く観測された。このm/zは、tBu−MDA4−Pacのナトリウムイオン付加体のモノアイソトープ質量(751.25Da)と誤差範囲内で一致した。
また、実施例4と同様に、HMBCスペクトル及びHMQCスペクトルから、D−マンデル酸の光学活性を維持したn=4の縮合体(4量体)が得られたことが確認できた。
【0109】
[合成例5]O−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ニトロベンジル(tBu−MDA2−NBn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例2で得られた前記式(11)のtBu−MDA2を1.00g(2.9mmol)、炭酸カリウムを0.24g(1.74mmol)、N,N−ジメチルホルムアミドを7mL、及び4−ニトロベンジルブロミドを0.94g(2.9mmol)加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで2時間攪拌し、カルボキシ基の保護反応を行った。反応終了後、反応液を分液漏斗に移した。また、反応液が入っていたフラスコを酢酸エチル80mLで洗浄し、該洗浄液も分液漏斗に移した。分液漏斗に移した溶液を、蒸留水120mLで3回洗浄した。
【0110】
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム5gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(21)で表される白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ニトロベンジルの粗体(粗tBu−MDA2−NBn)を1.33g(収率96%)得た。
1.33gの粗tBu−MDA2−NBnを、展開溶媒を酢酸エチル/n−ヘキサン=1/2(容積比)としたカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
得られた溶液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した白色固体のtBu−MDA2−NBnを1.03g(収率74%)得た。
得られたtBu−MDA2−NBnの化学構造は1H−NMRで確認した。tBu−MDA2−Pacの1H−NMRスペクトルを図33に示す。
【0111】
【化27】
【0112】
実施例1〜11のように、オルトゴナルな保護基でD−マンデル酸のヒドロキシ基又はカルボキシ基を保護した誘導体(I)及び誘導体(II)を用いて、縮合工程と脱保護工程を繰り返すことにより、D−マンデル酸の光学活性を維持した縮合度が2、4、及び8の縮合体が得られた。さらに、同様の脱保護工程及び縮合工程を繰り返すことで、さらに高分子量の縮合体も得ることができると考えられる。
また、合成例5のように、R21の保護基がニトロベンジル基である前記式(21)で表される化合物も得られた。該化合物からは、tert−ブチル基を脱保護すれば、R21の保護基がニトロベンジル基である誘導体(I)を得ることができ、該誘導体(I)によっても高分子量の縮合体を得ることができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の製造方法は、光学活性が高度に制御された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体が得られるため、極めて有用である。また、本発明の光学活性化合物は、光学活性が高度に制御されているため、耐熱性、力学特性、配向特性、光学特性等に優れた高機能性材料として、ディスプレイ配向フィルム、環境調和材料、構造/建築材料等に好適に利用できると考えられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法及び光学活性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸の光学活性を維持して縮合した、所望の光学活性を有する高分子量の光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体が得られれば、該縮合体における芳香族環同士が効率的に相互作用でき、耐熱性、力学特性、配向特性、光学特性等に優れた高機能性材料として有用であると考えられる。また、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸はその構造が乳酸と類似(乳酸のメチル基が芳香族炭化水素基に置換された化合物。)していることから、得られる光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体は酸・アルカリ加水分解や生分解が行える高機能性材料として利用できる可能性がある。
光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸の代表例としては、D−マンデル酸あるいはL−マンデル酸が知られている。
【0003】
しかし、マンデル酸を重縮合しようとすると、2分子が縮合して縮合度が2の環状化合物(マンデライド)が生成されるため、高分子量の縮合体を得ることができない(非特許文献1)。
そこで、高分子量のマンデル酸縮合体を得る方法として、環状化合物であるマンデライドの開環重縮合を行う方法が示されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Whitesell, J. Pojman, Chem. Mater., 2, 248 (1990)
【非特許文献2】T. Liu, T. L. Simmons, D. A. Bohnsack, M. E. Mackay, M. R. Smith, G. L. Baker, Macromolecules, 40, 6040 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献2に記載の方法では、環状化合物(マンデライド)を開環する際に立体反転してラセミ化してしまい、用いるマンデル酸の光学活性をそのまま維持した芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体を得ることができない。
以上のように従来の方法では、芳香族環同士が効率的に相互作用でき、耐熱性等に優れた高機能性材料として利用できると考えられる、光学活性が高度に制御された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体を得ることはできなかった。
【0006】
本発明は、光学活性が高度に制御された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法、及び光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を有する光学活性が高度に制御された光学活性化合物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]下記式(1)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)と、下記式(2)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)とを縮合する縮合工程を有する光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
【0010】
(式(1)及び式(2)中、p及びqはそれぞれ独立に1以上の整数である。R11は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基又はオキシカルボニル型保護基のいずれかであり、R21は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基又はシリル型保護基のいずれかである。p個のR31は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。q個のR32は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。*で示した炭素原子は不斉炭素原子を意味する。)
[2]前記R11とR21とがオルトゴナルな保護基であり、前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)と前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)とを縮合して得られる、下記式(3)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体(III)のR11又はR21のいずれか一方を脱保護する脱保護工程を更に有し、該R11又はR21のいずれか一方を脱保護した縮合体を、前記縮合工程における前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)及び/又は前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)として用いる、前記[1]に記載の光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法。
【0011】
【化3】
【0012】
(式(3)中、nは2以上の整数であり、pとqの和である。n個のR3は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。)
【0013】
[3]下記式(4)で表される光学活性化合物。
【0014】
【化4】
【0015】
(式(4)中、nは2以上の整数である。R1は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基又はオキシカルボニル型保護基のいずれかであり、R2は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基又はシリル型保護基のいずれかであり、R1及びR2の少なくとも一方は前記いずれかの保護基である。n個のR3は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。)
[4]前記R3がフェニル基である前記[3]に記載の光学活性化合物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、光学活性が高度に制御された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体が得られる。
また、本発明の光学活性化合物は、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を有し、光学活性が高度に制御されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】合成例1で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸(tBu−MDA)の1H−NMRスペクトルである。
【図2】合成例2で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸ベンジル(tBu−MDA−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図3】合成例3で得られたD−マンデル酸ベンジル(MDA−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図4】実施例1で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ベンジル(tBu−MDA2−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図5】実施例1で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ベンジル(tBu−MDA2−Bn)の13C−NMRスペクトルである。
【図6】実施例2で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体(tBu−MDA2)の1H−NMRスペクトルである。
【図7】実施例3で得られたD−マンデル酸2量体ベンジル(MDA2−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図8】実施例4で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)のHMBCスペクトルである。
【図9】図8のHMBCスペクトルにおけるH:4.8〜6.2ppm、C:165〜175ppmの拡大図である。
【図10】実施例4で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)のHMQCスペクトルである。
【図11】図10のHMQCスペクトルにおけるH:4.8〜6.2ppm、C:65〜80ppmの拡大図である。
【図12】実施例4で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図13】実施例4で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)の13C−NMRスペクトルである。
【図14】実施例4で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)のMALDI−TOF−MSスペクトルである。
【図15】実施例5で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体(tBu−MDA4)の1H−NMRスペクトルである。
【図16】実施例6で得られたD−マンデル酸4量体ベンジル(MDA4−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図17】実施例7で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)のHMBCスペクトルである。
【図18】実施例7で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)のHMQCスペクトルである。
【図19】実施例7で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)の1H−NMRスペクトルである。
【図20】実施例7で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)の13C−NMRスペクトルである。
【図21】実施例7で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)のMALDI−TOF−MSスペクトルである。
【図22】合成例4で得られたD−マンデル酸フェナシル(MDA−Pac)の1H−NMRスペクトルである。
【図23】実施例8で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体フェナシル(tBu−MDA2−Pac)の1H−NMRスペクトルである。
【図24】実施例8で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体フェナシル(tBu−MDA2−Pac)のMALDI−TOF−MSスペクトルである。
【図25】実施例9で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体(tBu−MDA2)の1H−NMRスペクトルである。
【図26】実施例11で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)のHMBCスペクトルである。
【図27】図26のHMBCスペクトルにおけるH:5.0〜6.6ppm、C:150.0〜200.0ppmの拡大図である。
【図28】実施例11で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)のHMBCスペクトルである。
【図29】図28のHMBCスペクトルにおけるH:5.0〜6.5ppm、C:65.0〜80.0ppmの拡大図である。
【図30】実施例11で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)の1H−NMRスペクトルである。
【図31】実施例11で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)の13C−NMRスペクトルである。
【図32】実施例11で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)のMALDI−TOF−MSスペクトルである。
【図33】合成例5で得られたO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ニトロベンジル(tBu−MDA2−NBn)の1H−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法]
本発明の光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体(以下、「本縮合体」という。)の製造方法は、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基が保護された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)(以下、「誘導体(I)」という。)と、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基が保護された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)(以下、「誘導体(II)」という。)とを縮合する縮合工程を有する方法である。
【0019】
誘導体(I)は、下記式(1)で表される、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸の誘導体である。誘導体(I)は、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基が保護基R21により保護されている。
【0020】
【化5】
【0021】
式(1)中、*で示した炭素原子は不斉炭素原子を意味する。
pは1以上の整数である。pは、目的の本縮合体の縮合度により適宜選定すればよく、縮合反応の効率の点から、10000以下が好ましい。
【0022】
R21は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基又はシリル型保護基のいずれかの保護基である。
アラルキルエーテル型保護基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、2−メチル−1−フェニルプロピル基、1−フェニルペンチル基、2−メチル−1−フェニルブチル基、3−メチル−1−フェニルブチル基、ジフェニルメチル基、1,1−ジフェニルエチル基、ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基が挙げられる。前記保護基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、ニトロ基、アシル基、ハロゲン原子が挙げられる。置換基を有する保護基の具体例としては、フェナシル基、ニトロベンジル基等が挙げられる。
アラルキルエーテル型保護基としては、前記したものの中でも、脱保護反応時の主鎖エステル結合の切断が抑制できる点から、フェナシル基、ニトロベンジル基が好ましい。
アルキルエーテル型保護基としては、例えば、メチル基、tert−ブチル基、1−エトキシエチル基、3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基、1−メトキシ−1−メチルエチル基、メトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基が挙げられる。前記保護基は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子が挙げられる。
シリル型保護基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基が挙げられる。
【0023】
R31は、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。また、p個のR31は、全て同一であってもよく、2種以上であってもよいが、全て同一であることが好ましい。
R31の具体例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基が挙げられる。
R31の芳香族炭化水素基は、置換基及び/又はヘテロ原子を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子が挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。
R31は、原料入手の容易さと、得られた重合体の溶剤溶解性が良好な点から、フェニル基であることが好ましい。
【0024】
誘導体(II)は、下記式(2)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸の誘導体である。誘導体(II)は、光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基が保護基R11により保護されている。
【0025】
【化6】
【0026】
式(2)中、*で示した炭素原子は不斉炭素原子を意味する。
qは1以上の整数である。qは、目的の本縮合体の縮合度により適宜選定すればよく、縮合反応の効率の点から、10000以下が好ましい。
【0027】
R11は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基、又はオキシカルボニル型保護基のいずれかの保護基である。
アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基は、R21で挙げたものと同じ保護基が挙げられる。
エステル型保護基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、イソプロパノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、4−ニトロベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−tert−ブチルベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、4−ブロモベンゾイル基、4−フェニルベンゾイル基、4−メトキシカルボニルベンゾイル基が挙げられる。
オキシカルボニル型保護基としては、例えば、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、ベンジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0028】
R32は、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。また、q個のR32は、全て同一であってもよく、2種以上であってもよいが、全て同一であることが好ましい。
R32の具体例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基が挙げられる。
R32の芳香族炭化水素基は、置換基及び/又はヘテロ原子を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子が挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。
R32は、原料入手の容易さと、得られた重合体の溶剤溶解性が良好な点から、フェニル基であることが好ましい。
また、耐熱性、力学特性、配向特性、光学特性等に優れた本縮合体が得られやすい点から、全てのR31及びR32が同一の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0029】
誘導体(I)及び誘導体(II)の製造方法としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基を保護基で保護する際に通常使用される保護方法が使用できる。
また、縮合工程の原料となる誘導体(I)及び誘導体(II)は、ナトリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩、水和物、溶媒和物、結晶多形等の様々な形態で使用できる。
【0030】
縮合工程では、前述した誘導体(I)と誘導体(II)を縮合する。該縮合は、縮合反応を促進する点から、溶媒中で行うことが好ましい。縮合反応に用いる溶媒は、水、メタノール等のアルコール類、N−メチルアミン等の1級アミン類、N,N−ジメチルアミン等の2級アミン類、酢酸等のカルボン酸類、無水酢酸等のカルボン酸無水物、塩酸等の鉱酸類等の縮合反応に活性な溶媒を用いない限りは特に限定されない。縮合反応に用いる溶媒の具体例としては、例えば、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N,N−トリメチルアミン、ピリジン等の3級アミン類、トルエン等の芳香族化合物類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
【0031】
縮合反応における誘導体(I)の濃度は、縮合反応が充分に進行する濃度であればよく、0.01〜10mol/Lが好ましい。誘導体(I)の濃度が0.01mol/L以上であれば、縮合反応が進行しやすい。また、誘導体(I)の濃度が10mol/L以下であれば、安定して縮合反応を進行させやすい。
縮合反応における誘導体(II)の濃度は、誘導体(I)と同じ濃度とすることが好ましい。
【0032】
誘導体(I)と誘導体(II)の縮合は、縮合反応の進行を促進させるために縮合剤を添加して行ってもよい。
縮合剤としては、反応系中で活性カルボン酸誘導体を生成するものであればよく、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、「DCC」という。)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(別名、水溶性カルボジイミドともいう。以下、「WSCI」という。)、ジフェニルリン酸アジド、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリスジメチルアミノホスホニウム塩等のBOP試薬が挙げられる。
【0033】
縮合剤の添加量は、縮合反応を促進できる量であればよく、誘導体(I)と誘導体(II)の少ない方の仕込み量に対して、等モル量〜5倍モル量が好ましく、1.1〜3倍モル量がより好ましい。縮合剤の前記添加量が等モル量以上であれば、縮合反応を完結させやすい。また、縮合剤の前記添加量が5倍モル量以下であれば、精製工程が簡素化できる。
【0034】
また、誘導体(I)と誘導体(II)の縮合は、縮合反応の進行をさらに促進させるために、縮合剤とともに触媒を添加して行ってもよい。
触媒としては、縮合反応を促進できるものであればよく、例えば、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(以下、「DMAP」という。)が挙げられる。
【0035】
触媒の添加量は、縮合反応を促進できる量であればよく、誘導体(I)と誘導体(II)の少ない方の仕込み量に対して、0.01〜0.7倍モル量が好ましく、0.05〜0.5倍モル量がより好ましい。触媒の前記添加量が0.01倍モル量以上であれば、縮合反応が完結しやすい。また、触媒の前記添加量が0.7倍モル量以下であれば、精製工程が簡素化できる。
【0036】
誘導体(I)と誘導体(II)の縮合反応における反応容器内の雰囲気は、縮合反応に不活性な雰囲気であればよく、窒素又はアルゴンの雰囲気が好ましい。
また、縮合反応における反応温度は、−100〜100℃が好ましく、0〜80℃がより好ましい。反応温度が−100℃以上であれば、縮合反応が進行しやすい。また、反応温度が100℃以下であれば、得られる本縮合体の熱劣化を抑制しやすい。また、前記縮合剤を用いる場合、縮合剤を添加すると激しく発熱することから、反応開始時には冷媒等で反応容器を冷却しておいてもよい。
誘導体(I)と誘導体(II)の縮合反応における反応時間は、10分〜50時間が好ましく、2〜30時間がより好ましい。反応時間が10分以上であれば、縮合反応が充分に進行しやすい。また、反応時間が50時間以下であれば、生産性が向上する。
【0037】
本発明の製造方法では、以上のように誘導体(I)と誘導体(II)を縮合することにより、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の両方が保護基で保護された本縮合体が得られる。
また、本発明の製造方法では、誘導体(I)及び誘導体(II)におけるR11とR21がオルトゴナルな保護基であることが好ましい。これにより、誘導体(I)と誘導体(II)を縮合して得られる、下記式(3)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体(III)(以下、「縮合体(III)」という。)におけるR11又はR21のいずれか一方のみを脱保護する脱保護工程を行うことが可能となる。該脱保護工程によりR11又はR21のいずれか一方のみが脱保護された縮合体は、前述した誘導体(I)及び/又は誘導体(II)として再度縮合工程に用いることができる。
【0038】
【化7】
【0039】
縮合体(III)におけるnは、2以上の整数であり、pとqの和である。
R3は、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、縮合する誘導体(I)及び誘導体(II)のR31、R32によって決まる。n個のR3は、全て同一あってもよく、2種以上であってもよいが、全て同一であることが好ましい。すなわち、誘導体(I)のR31と誘導体(II)のR32が全て同じ芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0040】
R11とR21がオルトゴナルな保護基となる組み合わせとしては、特定の反応条件で一方の保護基のみが脱保護される組み合わせであればよく、例えば、R11がtert−ブチル基、R21がベンジル基の組み合わせ、R11がtert−ブチル基、R21がトリエチルシリル基の組み合わせ、R11がtert−ブチル基、R21がアリル基の組み合わせ、R11がメトキシメチル基、R21がトリエチルシリル基の組み合わせ、R11がトリエチルシリル基、R21がtert−ブチル基の組み合わせ、R11がアリル基、R21がtert−ブチル基の組み合わせ、R11がtert−ブチル基、R21がフェナシル基の組み合わせ、R11がtert−ブチル基、R21がニトロベンジル基の組み合わせが挙げられる。
【0041】
脱保護工程を行ったものを再度縮合工程に用いる場合の具体例としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
下記式に示すように、D−マンデル酸のカルボキシ基をR21で保護した誘導体(I−A)(p=1、R3がフェニル基の誘導体(I))と、D−マンデル酸のヒドロキシ基を前記R21とはオルトゴナルな関係のR11で保護した誘導体(II−A)(q=1、R3がフェニル基の誘導体(II))とを縮合することにより、縮合度2で直鎖状のD−マンデル酸の縮合体(III−A)(n=2、R3がフェニル基の縮合体(III))が得られる。
【0042】
【化8】
【0043】
そして、得られた縮合体(III−A)におけるR21及びR11の一方をそれぞれ脱保護することにより、下記式で表される誘導体(I−B)(p=2、R3がフェニル基の誘導体(I))及び誘導体(II−B)(q=2、R3がフェニル基の誘導体(II))が得られる。これら誘導体(I−B)及び誘導体(II−B)は、さらに縮合工程にて縮合することにより、縮合度4で直鎖状のD−マンデル酸の縮合体(III−B)(n=4、R3がフェニル基の縮合体(III))が得られる。
また、縮合体(III−B)を脱保護した縮合体は、さらに縮合工程における誘導体(I)及び誘導体(II)として用いることができる。つまり、前記と同様に脱保護工程及び縮合工程を行うことでn=8のD−マンデル酸の縮合体を得ることができる。このように、オルトゴナルな保護基R11及びR21を用いて縮合工程と脱保護工程繰り返すことにより、高分子量の本縮合体を高い効率で製造できる。
【0044】
【化9】
【0045】
また、脱保護工程後の縮合体は、誘導体(I)又は誘導体(II)のいずれか一方のみとして用いてもよい。例えば、前記誘導体(I−B)と前記誘導体(II−A)とを縮合してn=3のD−マンデル酸の縮合体を得る方法としてもよい。
【0046】
縮合体(III)の脱保護は、脱保護反応の進行を促進する点から、溶媒中で行うことが好ましい。
脱保護に用いる溶媒としては、脱保護反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、水、メタノール等のアルコール類、N−メチルアミン等の1級アミン類、N,N−ジメチルアミン等の2級アミン類、酢酸等のカルボン酸類、無水酢酸等のカルボン酸無水物、塩酸等の鉱酸類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N,N−トリメチルアミン、ピリジン等の3級アミン類、トルエン等の芳香族化合物類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
【0047】
また、縮合体(III)の脱保護は脱保護剤を用いて行う。
脱保護剤としては、ヒドロキシ基又はカルボキシル基のいずれか一方の保護基、すなわちR11又はR21を選択的に脱保護できるものであればよく、例えば、トリフルオロ酢酸(以下、「TFA」という。)、酢酸等の有機酸;前記有機酸の亜鉛、マグネシウム等の金属塩;塩酸等の鉱酸;水酸化ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフッ化物(以下、「TBAF」という。)等のアルカリ;パラジウム−炭素と水素の混合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム;リンドラー触媒が挙げられる。
【0048】
例えば、ヒドロキシ基の保護基R11がtert−ブチル基、カルボキシル基の保護基R21がベンジル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にパラジウム−炭素と水素の混合物、またはリンドラー触媒の組み合わせが使用できる。R11がtert−ブチル基、R21がトリエチルシリル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にTBAFの組み合わせが使用できる。R11がtert−ブチル基、R21がアリル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの組み合わせが使用できる。R11がメトキシメチル基、R21がトリエチルシリル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にTBAFの組み合わせが使用できる。R11がトリエチルシリル基、R21がtert−ブチル基であれば、R11の脱保護反応にTBAF、R21の脱保護反応にTFAの組み合わせが使用できる。R11がアリル基、R21がtert−ブチル基であれば、R11の脱保護反応にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、R21の脱保護反応にTFAの組み合わせが使用できる。R11がtert−ブチル基、R21がフェナシル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にTBAFの組み合わせが使用できる。R11がtert−ブチル基、R21がニトロベンジル基であれば、R11の脱保護反応にTFA、R21の脱保護反応にTBAF、酢酸亜鉛、あるいは酢酸マグネシウムの組み合わせが使用できる。
前記脱保護剤は、反応溶媒として兼用してもよく、前記溶媒と組み合わせて用いてもよい。
【0049】
脱保護剤の添加量は、脱保護反応が充分に進行できる量であればよく、縮合体(III)の全質量に対して、0.01〜30倍モル量が好ましく、0.05〜20倍モル量がより好ましい。脱保護剤の前記添加量が0.01倍モル量以上であれば、脱保護反応を完結させやすい。また、脱保護剤の前記添加量が30倍モル量以下であれば、精製工程が簡素化できる。
【0050】
脱保護反応における縮合体(III)の濃度は、脱保護反応が充分に進行する濃度であればよく、0.01〜10mol/Lが好ましい。縮合体(III)の濃度が0.01mol/L以上であれば、本縮合体の生産性が向上する。また、縮合体(III)の濃度が10mol/L以下であれば、脱保護反応が進行しやすい。
【0051】
縮合体(III)の脱保護反応における反応容器内の雰囲気は、脱保護反応に不活性な雰囲気であればよく、窒素又はアルゴンの雰囲気とすることが好ましい。また、脱保護反応に必要な元素を供給するためには水素を用いる必要があるため、窒素やアルゴンを用いずに水素雰囲気とすることも好ましい。
縮合体(III)の脱保護反応における反応温度は、−100〜100℃が好ましく、0〜80℃がより好ましい。反応温度が−100℃以上であれば、脱保護反応が進行しやすい。また、反応温度が100℃以下であれば、得られる本縮合体の熱劣化を抑制しやすい。
縮合体(III)の脱保護反応における反応時間は、10分〜50時間が好ましく、2〜30時間がより好ましい。反応時間が10分以上であれば、縮合反応が充分に進行しやすい。また、反応時間が50時間以下であれば、生産性が向上する。
【0052】
また、縮合工程や脱保護工程の後には、精製工程を行うことが好ましい。精製工程を行うことにより、縮合工程及び脱保護工程を繰り返し行う際、各工程の反応効率が向上する。精製方法は、縮合工程、脱保護工程の各工程における目的生成物を精製できる方法であれば特に限定されず、例えば、再結晶法が挙げられる。
【0053】
本発明の製造方法は、少ない工程数で光学活性が高度に制御された高分子量の本縮合体が得られる点から、前述のようにオルトゴナルな保護基を用いて縮合工程と脱保護工程を繰り返して、nが2、4、8、16等と順次構成単位が長くなるように縮合体(III)を製造していく方法(以下、「方法(X)」という。)が好ましい。
方法(X)は、前記誘導体(I−B)と前記誘導体(II−A)を縮合して縮合度が3(n=3)の縮合体(III)とし、その縮合体(III)を基にnが6、12、24等のように順次構成単位が長くなるように縮合体(III)を製造する方法であってもよい。
ただし、本発明の製造方法は方法(X)には限定されず、例えば、誘導体(II−A)に対して、誘導体(I−A)を加えて縮合した後、R21を脱保護することを繰り返して、誘導体(I−A)を1つずつ縮合していく方法であってもよい。
【0054】
従来のマンデル酸の重縮合方法では、D−マンデル酸やL−マンデル酸を重縮合しようとしても、縮合度が2の環状化合物であるマンデライドが生成してしまうために高分子量の縮合体を得ることができなかった。また、非特許文献2に記載のようにマンデライドの開環重縮合によれば高分子量の縮合体を得ることは可能であるが、立体反転によりラセミ化してしまうため光学活性を高度に制御した縮合体を得ることはできなかった。
【0055】
これに対し、本発明の製造方法では、誘導体(I)及び誘導体(II)をそれらの光学活性を維持したまま縮合できるため、光学活性が高度に制御された、光学的に純粋な本縮合体が得られる。
例えば、D−マンデル酸のカルボキシ基を保護した誘導体(I)と、D−マンデル酸のヒドロキシ基を保護した誘導体(II)を用い、方法(X)により縮合工程と脱保護工程を繰り返していくことにより、D−マンデル酸の光学活性が全ての構成単位において維持された、鏡像体過剰率が100%eeの高分子量の縮合体(III)を得ることができる。
また、D−マンデル酸及びL−マンデル酸のカルボキシ基又はヒドロキシ基を保護した誘導体(I)、誘導体(II)を適宜用いることで、D−マンデル酸とL−マンデル酸とが所望の順に縮合した縮合体(III)を得ることもできる。
【0056】
[光学活性化合物]
本発明の光学活性化合物(以下、「本化合物」という。)は、下記式(4)で表される化合物である。
【0057】
【化10】
【0058】
式(4)中のnは2以上の整数である。nは特に制限されないが、本化合物が効率良く得られる点から10000以下が好ましい。
R1は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基、又はオキシカルボニル型保護基のいずれかである。
R2は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、又はシリル型保護基のいずれかである。
R1とR2は、少なくとも一方が前記いずれかの保護基である。R1とR2における前記各保護基は、前述のR11とR21で挙げたものと同じ保護基が挙げられる。R1とR2の両方が水素原子でない場合、化学的に安定である点から、R1とR2はオルトゴナルな保護基であることが好ましい。オルトゴナルな保護基の組み合わせは、R11とR21の場合と同様である。
【0059】
R3は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。n個のR3は、全て同一あってもよく、2種以上であってもよいが、全て同一であることが好ましい。
R3は、フェニル基が特に好ましい。すなわち、下記式(5)で表される本縮合体であることが好ましい。
【0060】
【化11】
【0061】
本化合物の鏡像体過剰率は、耐熱性、力学特性、配向特性、光学特性等に優れる点から、70〜100%eeであることが好ましく、80〜100%eeがより好ましく、90〜100%eeがさらに好ましい。
【0062】
また、本化合物の形態は特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩、水和物、溶媒和物、結晶多形等の様々な形態とすることができる。
【0063】
本化合物の製造方法としては、前述の製造方法を用いることが好ましい。前述の製造方法を用いることにより、光学活性が高度に制御された本化合物を得ることができる。すなわち、本化合物は、前述の製造方法により誘導体(I)と誘導体(II)を縮合して得られるヒドロキシ基及びカルボキシ基の両方が保護された縮合体、又はオルトゴナルな保護基R11、R21で保護された縮合体(III)のR11又はR21のいずれか一方を脱保護した縮合体からなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。この場合、本化合物は、R1が水素原子又はR11であり、R2が水素原子又はR21であり、R1とR2のいずれか一方が保護基である。
前記式(5)で表わされる本化合物の製造方法としては、D−マンデル酸、L−マンデル酸のヒドロキシ基又はカルボキシ基を保護した誘導体(I−A)及び誘導体(II−A)を縮合する方法、又は該方法により得られた縮合体(III−A)におけるR11又はR21のいずれか一方を脱保護する方法が好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[NMR分析]
本実施例で得られた縮合体及び誘導体の化学構造は、1H−NMR、13C−NMR(日本電子株式会社製、JNM−ECX400)により確認した。測定条件は、測定溶媒を重水素化クロロホルム、試料濃度2質量/容量%、測定温度を室温とした。積算回数は、観測核が1Hのときは16回、観測核が13Cのときは5000回とした。
【0065】
[質量分析]
縮合体の質量は、窒素レーザーを備えたマトリックス支援レーザー脱離イオン化時間飛行型質量分析計(以下、「MALDI−TOF−MS」という。)(株式会社島津製作所製、AXIMA−CFRplus)により確認した。
MALDI−TOF−MS測定試料は、以下の手順で準備した。
まず、カチオン化剤としてヨウ化ナトリウム1mgを1mLのテトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)に溶解した溶液を調製し、該溶液を試料プレートに1μL滴下し、自然乾燥させた。次に、実施例で合成した縮合体1mgを1mLの塩化メチレンに溶解した溶液を、前記試料プレートのヨウ化ナトリウムが析出した部分に1μL滴下し、自然乾燥させた。そして、マトリクス剤としてトランス−2−[3−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチル−2−プロペニルインデン]マロノニトリル10mgを1mLのTHFに溶解した溶液を、前記試料プレートのヨウ化ナトリウムと化合物が析出した部分に1μL滴下し、自然乾燥させた。
また、質量のキャリブレーションは、Triton X−100(商品名、和光純薬工業株式会社製)を用いて外部標準法で行った。キャリブレーションに用いたTriton X−100の質量は、10量体の669.4172、11量体の713.4433、12量体の757.4694(いずれも、ナトリウムイオン付加体。)であった。
【0066】
[比旋光度]
縮合体及び誘導体の比旋光度は、クロロホルム10mLに試料0.1gを溶解させた溶液について、旋光計(日本分光株式会社製、DIP−360)を用いて室温にて測定した。
【0067】
[融点]
縮合体及び誘導体の融点は、微量融点測定装置(ヤナコ株式会社製、MP−S2)を用いて測定した。
【0068】
[合成例1]D−マンデル酸ベンジル(MDA−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた500mLのナスフラスコに、下記式(6)で表されるD−マンデル酸30.4g(200mmol)、炭酸カリウム15.2g(110mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド100mL、及び臭化ベンジル34.2g(200mmol)を加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで2時間攪拌し、カルボキシ基の保護反応を行った。反応終了後、反応液を分液漏斗に移した。また、反応液が入っていたフラスコを酢酸エチル200mLで洗浄し、該洗浄液も分液漏斗に移した。分液漏斗に移した溶液を、蒸留水300mLで3回洗浄した。
洗浄後の有機相を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(7)で表される白色固体のD−マンデル酸ベンジルの粗体(粗MDA−Bn)を42.2g(収率87%)得た。
【0069】
【化12】
【0070】
粗MDA−Bnの入った500mLナスフラスコに、室温にて粗MDA−Bnが完全に溶解するまで酢酸エチルを加えた後、−30℃の冷暗所に24時間保持し、再結晶により精製した。
得られた結晶を5Cろ紙を用いてろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した白色固体のD−マンデル酸ベンジル(MDA−Bn、誘導体(I))を35.4g(収率73%)得た。
得られたMDA−Bnの化学構造は1H−NMRにより確認した。1H−NMRスペクトルを図1に示す。また、MDA−Bnの比旋光度[α]Dは−56°であり、融点は106.0〜106.5℃であった。
【0071】
[合成例2]O−t−ブチル−D−マンデル酸ベンジル(tBu−MDA−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた500mLのナスフラスコに、合成例1と同様の方法で得られた前記式(7)で表されるMDA−Bnを48.5g(200mmol)、塩化メチレンを300mL加え、内容物を溶解した後、ドライアイス/メタノール浴にて、溶液を−78℃に冷却した。
一方、ドライアイス/メタノール浴にてあらかじめ冷却したデュワー冷却器付きの密閉した200mLナスフラスコに、ボンベ充填されたイソブテン(沸点−6.9℃)を導入し、液化したイソブテン100mLを捕集した。
前述の−78℃に冷却したMDA−Bn/塩化メチレン溶液の入ったフラスコに液化イソブテン100mLを移した後、濃硫酸9.2gを加えた。このフラスコに三方コックを取り付けて密封した状態で、−78℃にてスターラーで3時間攪拌し、さらに、氷水浴(0℃)にて21時間攪拌し、ヒドロキシ基の保護反応を行った。
反応終了後、反応液を分液漏斗に移した。また、反応液の入っていたフラスコを塩化メチレン200mLで洗浄し、その洗浄液も分液漏斗に移した。分液漏斗に移した溶液を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液100mLで1回、蒸留水300mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(8)で表されるクリーム色の液体のD−マンデル酸t−ブチルエーテル−ベンジルエステル(tBu−MDA−Bn)を56.7g(収率95%)得た。
得られたtBu−MDA−Bnの化学構造は1H−NMRで確認した。tBu−MDA−Bnの1H−NMRスペクトルを図2に示す。
【0072】
【化13】
【0073】
[合成例3]O−t−ブチル−D−マンデル酸(tBu−MDA)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた500mLのナスフラスコに、合成例2で得られた前記式(8)のtBu−MDA−Bnを56.7g(190mmol)、約55%の水で湿潤されたパラジウム/炭素混合物(パラジウム含有量5質量%)を5.0g加え、三方コックを取り付けた。次いで、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。その後、さらにフラスコ内を真空ポンプで減圧した後、水素ガスを導入して常圧に戻す水素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を水素雰囲気で保持したまま、安定剤無添加のTHF200mLをフラスコに加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで24時間攪拌し、脱保護反応を行った。
パラジウムに吸着した水素を脱離させるため、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻した。フラスコ内の反応液を30分間スターラーで攪拌した後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を安定剤無添加のTHF100mLで洗浄した。
ろ液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、式(9)で表される淡黄色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸(tBu−MDA、誘導体(II))を39.2g(収率99%)得た。
得られたMDA−Bnの化学構造は1H−NMRで確認した。MDA−Bnの1H−NMRスペクトルを図3に示す。また、MDA−Bnの比旋光度[α]Dは−112°であり、融点は87.5〜88.5℃であった。
【0074】
【化14】
【0075】
[実施例1]O−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ベンジル(tBu−MDA2−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、合成例1で得られた前記式(7)のMDA−Bnを2.4g(10mmol)、合成例3で得られた前記式(9)のtBu−MDAを2.1g(10mmol)、縮合剤としてDCCを2.5g(12mmol)、触媒としてDMAPを0.24g(2mmol)加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を窒素雰囲気で保持したまま、脱水塩化メチレン20mLをフラスコに加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで24時間攪拌し、縮合反応を行った。
【0076】
反応終了後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を塩化メチレン80mLで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液100mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(10)で表される無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ベンジルの粗体(粗tBu−MDA2−Bn)を3.7g(収率98%)得た。
500mLナスフラスコに粗tBu−MDA2−Bnを全量移し、メタノール10mLを加え、粗tBu−MDA2−Bnが完全に溶解するまでジエチルエーテルを加えた後、−30℃の冷暗所に24時間保持し、再結晶で精製した。
得られた結晶を5Cろ紙でろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ベンジル(tBu−MDA2−Bn)を2.8g(収率75%)得た。
得られたtBu−MDA2−Bnの化学構造は1H−NMR及び13C−NMRで確認した。tBu−MDA2−Bnの1H−NMRスペクトルを図4、13C−NMRスペクトルを図5に示す。また、tBu−MDA2−Bnの比旋光度[α]Dは−57°であり、融点は92.0〜93.0℃であった。
【0077】
【化15】
【0078】
[実施例2]O−t−ブチル−D−マンデル酸2量体(tBu−MDA2)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例1で得られた前記式(10)のtBu−MDA2−Bnを5.2g(12mmol)、約55%の水で湿潤されたパラジウム/炭素混合物(パラジウム含有量5質量%)を0.5g加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。さらに、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、水素ガスを導入して常圧に戻す水素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を水素雰囲気で保持したまま、安定剤無添加のTHF20mLをフラスコに加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで1時間攪拌し、脱保護反応を行った。
【0079】
反応液を薄層クロマトグラフィーで展開して原料スポットの消失を確認した後に、パラジウムに吸着した水素を脱離させるためにフラスコ内を真空ポンプで減圧し、その後乾燥窒素を導入して常圧に戻した。なお、展開液はn−ヘキサン/酢酸エチル=1/4(容量比)を用いた。下記式(10)で表される原料のRf値は0.34、下記式(11)で表される生成物のRf値は0.11であった。
フラスコ内の反応液を30分間スターラーで攪拌した後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を安定剤無添加のTHF80mLで洗浄した。
ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(11)で表される無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体の粗体(粗tBu−MDA2)を4.1g(収率99%)得た。
500mLナスフラスコに粗tBu−MDA2を全量移し、n−ヘキサン10mLを加え、粗tBu−MDA2が完全に溶解するまでジエチルエーテルを加えた後、−30℃の冷暗所に24時間保持し、再結晶により精製した。
得られた結晶を5Cろ紙でろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した針状で無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体(tBu−MDA2)を3.3g(収率80%)得た。
得られたtBu−MDA2の化学構造は1H−NMRで確認した。tBu−MDA2の1H−NMRスペクトルを図6に示す。また、tBu−MDA2の比旋光度[α]Dは−94°であり、融点は145.5〜146.5℃であった。
【0080】
【化16】
【0081】
[実施例3]D−マンデル酸2量体ベンジル(MDA2−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例1で得られた前記式(10)のtBu−MDA2−Bnを6.5g(15mmol)、TFAを62mL加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで3時間攪拌し、脱保護反応を行った。
フラスコ内の反応液をエバポレーターで濃縮した後、ジエチルエーテルを20mL加え、残留物を溶解した後、分液漏斗に移した。また、フラスコを80mLのジエチルエーテルで洗浄し、前記分液漏斗に移した。分液漏斗内の溶液を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液100mLで3回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(12)で表される無色〜白色固体のD−マンデル酸2量体ベンジルの粗体(粗MDA2−Bn)を5.5g(収率98%)得た。
500mLナスフラスコに粗MDA2−Bnを全量移し、n−ヘキサン10mLを加え、粗MDA2−Bnが完全に溶解するまでジエチルエーテルを加えた後、−30℃の冷暗所に24時間保持し、再結晶により精製した。
得られた結晶を5Cろ紙でろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した無色〜白色固体のD−マンデル酸2量体ベンジル(MDA2−Bn)を4.6g(収率82%)得た。
得られたMDA2−Bnの化学構造は1H−NMRで確認した。MDA2−Bnの1H−NMRスペクトルを図7に示す。また、MDA2−Bnの比旋光度[α]Dは−79°であり、融点は82.5〜83.0℃であった。
【0082】
【化17】
【0083】
[実施例4]O−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例2で得られた前記式(11)のtBu−MDA2を0.58g(1.7mmol)、実施例3で得られた前記式(12)のMDA2−Bnを0.64g(1.7mmol)、縮合剤としてWSCIを0.31g(2.0mmol)、触媒としてDMAPを0.05g(0.4mmol)加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を窒素雰囲気で保持したまま、脱水塩化メチレン10mLをフラスコに加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで24時間攪拌し、縮合反応を行った。
反応終了後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を塩化メチレン140mLで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液150mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(13)で表される薄い黄褐色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジルの粗体(粗tBu−MDA4−Bn)を2.3g(収率95%)得た。
500mLナスフラスコに粗tBu−MDA4−Bnを全量移し、メタノール10mLを加え、粗tBu−MDA4−Bnが完全に溶解するまでジエチルエーテルを加えた後、−30℃の冷暗所に24時間保持し、再結晶により精製した。
得られた結晶を5Cろ紙でろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体ベンジル(tBu−MDA4−Bn、本縮合体)を2.1g(収率87%)得た。
【0084】
【化18】
【0085】
得られたtBu−MDA4−Bnの化学構造は1H−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSで確認した。tBu−MDA4−BnのHMBCスペクトルを図8及び図9、HMQCスペクトルを図10及び図11、1H−NMRスペクトルを図12、13C−NMRスペクトルを図13、MALDI−TOF−MSスペクトルを図14に示す。
HMBCスペクトルにてプロトンのアサインを行った後、HMQCスペクトルにてカーボンのアサインを行なった。図9に示すように、得られたtBu−MDA4−BnではHMBCスペクトルにおいて領域αに相関ピークが見られない。これは、得られたtBu−MDA4−Bnにおいて、D−マンデル酸の光学活性を維持したまま縮合して分子鎖が伸張し、結合角が固定されているためである。ラセミ体のtBu−MDA4−Bnであれば領域αに相関ピークが見られるはずであり、この結果からD−マンデル酸の光学活性を維持したn=4の縮合体(4量体)が得られたことが確認できた。
また、tBu−MDA4−Bnの比旋光度[α]Dは−84°であり、融点は109.0〜110.0℃であった。
【0086】
[実施例5]O−t−ブチル−D−マンデル酸4量体(tBu−MDA4)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例4で得られた前記式(13)のtBu−MDA4−Bnを1.00g(1.4mmol)、リンドラー触媒を0.1g加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。さらに、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、水素ガスを導入して常圧に戻す水素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を水素雰囲気で保持したまま、安定剤無添加のTHF20mLをフラスコに加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで2時間攪拌し、脱保護反応を行った。
【0087】
反応液を薄層クロマトグラフィーで展開して原料スポットの消失を確認した後に、リンドラー触媒に吸着した水素を脱離させるためにフラスコ内を真空ポンプで減圧し、その後に乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。なお、展開液はn−ヘキサン/酢酸エチル=1/4(容量比)を用いた。下記式(13)で表される原料のRf値は0.278、下記式(14)で表される生成物のRf値は0.00であった。
フラスコ内の反応液を30分間スターラーで攪拌した後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を安定剤無添加のTHF80mLで洗浄した。
ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(14)で表される無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体の粗体(粗tBu−MDA4)を0.90g(収率99%)得た。
得られた粗tBu−MDA4の化学構造は1H−NMRで確認した。tBu−MDA4の1H−NMRスペクトルを図15に示す。
【0088】
【化19】
【0089】
[実施例6]D−マンデル酸4量体ベンジル(MDA4−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例4で得られた前記式(13)のtBu−MDA4−Bnを1.00g(1.4mmol)、TFAを5mL加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで3時間攪拌し、脱保護反応を行った。
フラスコ内の反応液をエバポレーターで濃縮した後、塩化メチレンを20mL加え、残留物を溶解した後、分液漏斗に移した。また、フラスコを60mLの塩化メチレンで洗浄し、前記分液漏斗に移した。分液漏斗内の溶液を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液100mLで3回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(15)で表される無色〜白色固体のD−マンデル酸4量体ベンジルの粗体(粗MDA4−Bn)を0.88g(収率96%)得た。
得られた粗MDA4−Bnの化学構造は1H−NMRで確認した。MDA4−Bnの1H−NMRスペクトルを図16に示す。
【0090】
【化20】
【0091】
[実施例7]O−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジル(tBu−MDA8−Bn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例5で得られた前記式(14)の粗tBu−MDA4を0.88g、実施例6で得られた前記式(15)の粗MDA4−Bnを0.95g、縮合剤としてEDCを0.33g(1.73mmol)、触媒としてDMAPを0.035g(0.288mmol)加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を窒素雰囲気で保持したまま、フラスコを0℃の氷浴へ浸漬した。その後、脱水塩化メチレン10mLをフラスコに加え、内容物を溶解し、0℃にてスターラーで2時間攪拌した。その後、フラスコを室温へ移し、さらに22時間撹拌し、縮合反応を行った。
反応終了後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を塩化メチレン80mLで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液100mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(16)で表される薄い黄褐色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸8量体ベンジルの粗体(粗tBu−MDA8−Bn)を1.67g(収率94%)得た。
【0092】
【化21】
【0093】
得られた粗tBu−MDA8−Bnの化学構造は1H−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSで確認した。tBu−MDA8−BnのHMBCスペクトルを図17、HMQCスペクトルを図18、1H−NMRスペクトルを図19、13C−NMRスペクトルを図20、MALDI−TOF−MSスペクトルを図21に示す。
MALDI−TOF−MSスペクトルにて、質量/電荷比(m/z)=1259.54の信号が最も強く観測された。このm/zは、tBu−MDA8−Bnのナトリウムイオン付加体のモノアイソトープ質量(1259.40Da)と誤差範囲で一致した。
また、実施例4と同様に、HMBCスペクトル及びHMQCスペクトルから、D−マンデル酸の光学活性を維持したn=8の縮合体(8量体)が得られたことが確認できた。
【0094】
[合成例4]D−マンデル酸フェナシル(MDA−Pac)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた300mLのナスフラスコに、下記式(6)で表されるD−マンデル酸16.74g(110mmol)、炭酸カリウム8.36g(60mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド55mL、及び2−ブロモアセトフェノン21.89g(110mmol)を加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで2時間攪拌し、カルボキシ基の保護反応を行った。なお、前記保護反応は、暗所にて行った。反応終了後、反応液を分液漏斗に移した。また、反応液が入っていたフラスコを酢酸エチル200mLで洗浄し、該洗浄液も分液漏斗に移した。分液漏斗に移した溶液を、蒸留水300mLで3回洗浄した。
洗浄後の有機相を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(17)で表される白色固体のD−マンデル酸フェナシルの粗体(粗MDA−Pac)を25.75g(収率99%)得た。
【0095】
【化22】
【0096】
粗MDA−Pacの入った500mLナスフラスコに、40℃にて粗MDA−Pacが完全に溶解するまで酢酸エチルを加えた後、5℃の冷暗所に48時間保持し、再結晶により精製した。
得られた結晶を5Cろ紙を用いてろ別し、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した白色固体のD−マンデル酸フェナシル(MDA−Pac、誘導体(I))を25.8g(収率87%)得た。
得られたMDA−Pacの化学構造は1H−NMRにより確認した。1H−NMRスペクトルを図22に示す。また、MDA−Pacの比旋光度[α]Dは110°であり、融点は97.0〜99.0℃であった。
【0097】
[実施例8]O−t−ブチル−D−マンデル酸2量体フェナシル(tBu−MDA2−Pac)の合成
まず、縮合剤である31.6g(153mmol)のDCCと、触媒である3.7g(30.6mmol)のDMAPを、脱水塩化メチレン100mLに溶解し、この溶液を200mLの滴下漏斗へ移した。
あらかじめ攪拌子を入れ、前記滴下漏斗を接続した1000mLの三ツ口フラスコに、合成例4で得られた前記式(17)のMDA−Pacを33.1g(122.5mmol)、合成例3で得られた前記式(9)のtBu−MDAを27.5g(122.5mmol)加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を窒素雰囲気で保持したまま、脱水塩化メチレン300mLをフラスコに加え、内容物を溶解した。
三ツ口フラスコを0℃の氷浴へ浸漬した後、滴下漏斗内の溶液を、三ツ口フラスコへ1時間かけて滴下し、さらに0℃、2時間スターラーで攪拌した後、三ツ口フラスコを室温へ移し、さらに22時間撹拌し、縮合反応を行った。
【0098】
反応終了後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を塩化メチレン150mLで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液200mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液200mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム20gを加えて12時間保持して脱水し、5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を1000mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(18)で表される無色〜白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体フェナシルの粗体(粗tBu−MDA2−Pac)を70.6g(収率125%)得た。
70.6gの粗tBu−MDA2−Pacを、展開溶媒を酢酸エチル/n−ヘキサン=2/3(容積比)としたカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
得られた溶液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した白色固体のtBu−MDA2−Bnを56.6g(収率94%)得た。
得られたtBu−MDA2−Pacの化学構造は1H−NMR、MALDI−TOF−MSで確認した。tBu−MDA2−Pacの1H−NMRスペクトルを図23、MALDI−TOF−MSスペクトルを図24に示す。
MALDI−TOF−MSスペクトルにて、質量/電荷比(m/z)=483.15の信号が最も強く観測された。このm/zは、tBu−MDA2−Pacのナトリウムイオン付加体のモノアイソトープ質量(483.19Da)と誤差範囲内で一致した。
また、tBu−MDA2−Pacの比旋光度[α]Dは58.9°であり、融点は100.0〜101.0℃であった。
【0099】
【化23】
【0100】
[実施例9]tBu−MDA2−Pacのフェナシル基脱保護によるO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体(tBu−MDA2)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例8で得られた前記式(18)のtBu−MDA2−Pacを0.10g(0.217mmol)、1mol/Lのテトラブチルアンモニウムフルオリド/THF溶液を1.00mL、蒸留水を0.06g、THFを2mL加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで30分間攪拌し、脱保護反応を行った。
【0101】
フラスコ内の反応液をエバポレーターで濃縮した後、塩化メチレンを20mL加え、残留物を溶解した後、分液漏斗に移した。また、フラスコを60mLの塩化メチレンで洗浄し、前記分液漏斗に移した。分液漏斗内の溶液を、水酸化ナトリウム飽和水溶液100mLで3回、クエン酸飽和水溶液100mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(11)で表される薄い黄色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体の粗体(粗tBu−MDA2)を得た。
得られた粗tBu−MDA2の化学構造は1H−NMRで確認した。tBu−MDA2の1H−NMRスペクトルを図25に示す。
【0102】
【化24】
【0103】
[実施例10]D−マンデル酸2量体フェナシル(MDA2−Pac)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた300mLのナスフラスコに、実施例8で得られた前記式(18)のtBu−MDA2−Pacを21.9g(47.6mmol)、TFAを48mL加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで3時間攪拌し、脱保護反応を行った。
フラスコ内の反応液をエバポレーターで濃縮した後、塩化メチレンを50mL加え、残留物を溶解した後、分液漏斗に移した。また、フラスコを100mLの塩化メチレンで洗浄し、前記分液漏斗に移した。分液漏斗内の溶液を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液200mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液200mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム20gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(19)で表される淡黄色固体のD−マンデル酸2量体フェナシルの粗体(粗MDA2−Pac)を19.5g(収率98%)得た。
【0104】
【化25】
【0105】
[実施例11]O−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシル(tBu−MDA4−Pac)の合成
まず、縮合剤である12.8g(60mmol)のDCCと、触媒である1.5g(12mmol)のDMAPを、脱水塩化メチレン100mLに溶解し、この溶液を200mLの滴下漏斗へ移した。
あらかじめ攪拌子を入れた1000mLの三ツ口フラスコに、実施例9で得られた前記式(11)のtBu−MDA2を16.6g、実施例10で得られた前記式(19)の粗MDA2−Pacを19.5g加え、三方コックを取り付けた。その後、フラスコ内を真空ポンプで減圧した後、乾燥窒素を導入して常圧に戻す窒素置換操作を合計3回繰り返した。
フラスコ内を窒素雰囲気で保持したまま、脱水塩化メチレン150mLをフラスコに加え、内容物を溶解した。
三ツ口フラスコを0℃の氷浴へ浸漬した後、滴下漏斗内の溶液を、三ツ口フラスコへ1時間かけて滴下し、さらに0℃、2時間スターラーで攪拌した後、三ツ口フラスコを室温へ移し、さらに22時間撹拌し、縮合反応を行った。
【0106】
反応終了後、反応液中の固形物を5Cろ紙でろ別した。また、フラスコと固形物を塩化メチレン100mLで洗浄した。ろ液を分液漏斗に移し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液200mLで2回、10質量%塩化ナトリウム水溶液200mLで1回洗浄した。
洗浄後の有機相を500mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム10gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(20)で表される薄い黄褐色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸4量体フェナシルの粗体(粗tBu−MDA4−Pac)を37.3g(収率106%)得た。
37.3gの粗tBu−MDA4−Pacを、展開溶媒を酢酸エチル/n−ヘキサン=1/2(容積比)としたカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
得られた溶液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した薄い黄褐色固体のtBu−MDA4−Pacを34.0g(収率97%)得た。
【0107】
【化26】
【0108】
得られた粗tBu−MDA4−Pacの化学構造は1H−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSで確認した。tBu−MDA4−PacのHMBCスペクトルを図26及び図27、HMQCスペクトルを図28及び図29、1H−NMRスペクトルを図30、13C−NMRスペクトルを図31、MALDI−TOF−MSスペクトルを図32に示す。
MALDI−TOF−MSスペクトルにて、質量/電荷比(m/z)=751.30の信号が最も強く観測された。このm/zは、tBu−MDA4−Pacのナトリウムイオン付加体のモノアイソトープ質量(751.25Da)と誤差範囲内で一致した。
また、実施例4と同様に、HMBCスペクトル及びHMQCスペクトルから、D−マンデル酸の光学活性を維持したn=4の縮合体(4量体)が得られたことが確認できた。
【0109】
[合成例5]O−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ニトロベンジル(tBu−MDA2−NBn)の合成
あらかじめ攪拌子を入れた100mLのナスフラスコに、実施例2で得られた前記式(11)のtBu−MDA2を1.00g(2.9mmol)、炭酸カリウムを0.24g(1.74mmol)、N,N−ジメチルホルムアミドを7mL、及び4−ニトロベンジルブロミドを0.94g(2.9mmol)加え、内容物を溶解した後、室温にてスターラーで2時間攪拌し、カルボキシ基の保護反応を行った。反応終了後、反応液を分液漏斗に移した。また、反応液が入っていたフラスコを酢酸エチル80mLで洗浄し、該洗浄液も分液漏斗に移した。分液漏斗に移した溶液を、蒸留水120mLで3回洗浄した。
【0110】
洗浄後の有機相を200mLビーカーに移した後、硫酸ナトリウム5gを加えて12時間保持して脱水し、その後に5Cろ紙で硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を200mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、下記式(21)で表される白色固体のO−t−ブチル−D−マンデル酸2量体ニトロベンジルの粗体(粗tBu−MDA2−NBn)を1.33g(収率96%)得た。
1.33gの粗tBu−MDA2−NBnを、展開溶媒を酢酸エチル/n−ヘキサン=1/2(容積比)としたカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
得られた溶液を500mLナスフラスコに移し、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプで減圧乾燥し、精製した白色固体のtBu−MDA2−NBnを1.03g(収率74%)得た。
得られたtBu−MDA2−NBnの化学構造は1H−NMRで確認した。tBu−MDA2−Pacの1H−NMRスペクトルを図33に示す。
【0111】
【化27】
【0112】
実施例1〜11のように、オルトゴナルな保護基でD−マンデル酸のヒドロキシ基又はカルボキシ基を保護した誘導体(I)及び誘導体(II)を用いて、縮合工程と脱保護工程を繰り返すことにより、D−マンデル酸の光学活性を維持した縮合度が2、4、及び8の縮合体が得られた。さらに、同様の脱保護工程及び縮合工程を繰り返すことで、さらに高分子量の縮合体も得ることができると考えられる。
また、合成例5のように、R21の保護基がニトロベンジル基である前記式(21)で表される化合物も得られた。該化合物からは、tert−ブチル基を脱保護すれば、R21の保護基がニトロベンジル基である誘導体(I)を得ることができ、該誘導体(I)によっても高分子量の縮合体を得ることができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の製造方法は、光学活性が高度に制御された光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体が得られるため、極めて有用である。また、本発明の光学活性化合物は、光学活性が高度に制御されているため、耐熱性、力学特性、配向特性、光学特性等に優れた高機能性材料として、ディスプレイ配向フィルム、環境調和材料、構造/建築材料等に好適に利用できると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)と、下記式(2)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)とを縮合する縮合工程を有する光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法。
【化1】
【化2】
(式(1)及び式(2)中、p及びqはそれぞれ独立に1以上の整数である。R11は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基又はオキシカルボニル型保護基のいずれかであり、R21は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基又はシリル型保護基のいずれかである。p個のR31は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。q個のR32は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。*で示した炭素原子は不斉炭素原子を意味する。)
【請求項2】
前記R11とR21とがオルトゴナルな保護基であり、
前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)と前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)とを縮合して得られる、下記式(3)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体(III)のR11又はR21のいずれか一方を脱保護する脱保護工程を更に有し、
該R11又はR21のいずれか一方を脱保護した縮合体を、前記縮合工程における前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)及び/又は前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)として用いる、請求項1に記載の光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法。
【化3】
(式(3)中、nは2以上の整数であり、pとqの和である。n個のR3は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。)
【請求項3】
下記式(4)で表される光学活性化合物。
【化4】
(式(4)中、nは2以上の整数である。R1は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基又はオキシカルボニル型保護基のいずれかであり、R2は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基又はシリル型保護基のいずれかであり、R1及びR2の少なくとも一方は前記いずれかの保護基である。n個のR3は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。)
【請求項4】
前記R3がフェニル基である請求項3に記載の光学活性化合物。
【請求項1】
下記式(1)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)と、下記式(2)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)とを縮合する縮合工程を有する光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法。
【化1】
【化2】
(式(1)及び式(2)中、p及びqはそれぞれ独立に1以上の整数である。R11は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基又はオキシカルボニル型保護基のいずれかであり、R21は、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基又はシリル型保護基のいずれかである。p個のR31は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。q個のR32は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。*で示した炭素原子は不斉炭素原子を意味する。)
【請求項2】
前記R11とR21とがオルトゴナルな保護基であり、
前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)と前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)とを縮合して得られる、下記式(3)で表される光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体(III)のR11又はR21のいずれか一方を脱保護する脱保護工程を更に有し、
該R11又はR21のいずれか一方を脱保護した縮合体を、前記縮合工程における前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(I)及び/又は前記光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(II)として用いる、請求項1に記載の光学活性芳香族ヒドロキシカルボン酸縮合体の製造方法。
【化3】
(式(3)中、nは2以上の整数であり、pとqの和である。n個のR3は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。)
【請求項3】
下記式(4)で表される光学活性化合物。
【化4】
(式(4)中、nは2以上の整数である。R1は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基、シリル型保護基、エステル型保護基又はオキシカルボニル型保護基のいずれかであり、R2は、水素原子、アラルキルエーテル型保護基、アルキルエーテル型保護基又はシリル型保護基のいずれかであり、R1及びR2の少なくとも一方は前記いずれかの保護基である。n個のR3は、それぞれ独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。)
【請求項4】
前記R3がフェニル基である請求項3に記載の光学活性化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2010−285420(P2010−285420A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107438(P2010−107438)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】
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