説明

光学活性3−キヌクリジノールの製造方法

【課題】 医薬品の中間体として有用な光学活性3−キヌクリジノールの効率的かつ工業的な製造方法を提供することにある。
【解決手段】 3−キヌクリジノンに、該化合物を不斉還元する能力を有する微生物、その処理物、酵素、または該酵素を産生する能力を有する形質転換体及びその処理物を作用させて還元することにより、光学活性3−キヌクリジノールを製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学活性3−キヌクリジノールの製造方法に関する。光学活性な3−キヌクリジノールは、医薬品、農薬等の合成原料及び中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
光学活性な3−キヌクリジノールは、医薬品、農薬等の合成原料及び中間体として有用な化合物である。光学活性な3−キヌクリジノールの製造方法としては、3−キヌクリジノンのカルボニル基を微生物もしくは酵素により不斉還元する方法が知られている。しかし、これらの方法で使用されている微生物及び酵素は、以下の微生物もしくは植物由来のものしか知られていない。
【0003】
3−キヌクリジノンのカルボニル基を立体選択的に還元して(S)−3−キヌクリジノールを生成する微生物還元反応としては、アルスロバクター(Arthrobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、キャンディダ(Candida)、ピキア(Pichia)、ミクロコッカス(Micrococcus)に属する微生物によるものが知られている(特許文献1、2、3)。
【0004】
また、3−キヌクリジノンのカルボニル基を立体選択的に還元して(S)−3−キヌクリジノールを生成する酵素としてはコリネバクテリウム(Corynebacterium)属由来のものが知られている(特許文献4)。
【0005】
また、3−キヌクリジノンのカルボニル基を立体選択的に還元して(R)−3−キヌクリジノールを生成する微生物還元反応としては、ナカザワエア(Nakazawaea)、キャンディダ(Candida)、プロテウス(Proteus)属、ロドトルラ(Rhodotorula)、スポリディオボラス(Sporidiobolus)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、ゴルドニア(Gordonia)、ノカルディア(Nocardia)、アルカリジェネス(Alcaligenes)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、アルスロバクター(Arthrobacter)、フィロバシディウム(Filobasidium)、オーレオバシディウム(Aureobasidium)、ヤロウィア(Yarrowia)、ゲオトリカム(Geotrichum)、ツカムレラ(Tsukamurella)、クルシア(Kurthia)、ミクロバクテリウム(Microbacterium)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、アクレモニウム(Acremonium)、ムコール(Mucor)に属する微生物によるものが知られている(特許文献1、2、3、5)。
【0006】
また、3−キヌクリジノンのカルボニル基を立体選択的に還元して(R)−3−キヌクリジノールを生成する酵素としてはミクロバクテリウム(Microbacterium)、ロドトルラ(Rhodotorula)属の微生物及びダチュラ(Datura)、ヒヨス(Hyoscyamus)属の植物由来のものが知られている(特許文献6、7、8)。
【特許文献1】特開平10−243795
【特許文献2】特許第3891522
【特許文献3】特開2002−153293
【特許文献4】特開2003−093089
【特許文献5】特許第3858505
【特許文献6】特開2003−334069
【特許文献7】特開2007−124922
【特許文献8】特開2003−230398
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、医薬品の中間体として有用な光学活性3−キヌクリジノールの効率的かつ工業的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、光学活性3−キヌクリジノールの簡便かつ効率的な製造方法を開発すべく検討を重ねた結果、これまでに知られていない3−キヌクリジノンを光学活性3−キヌクリジノールに変換する微生物及び酵素を新たに発見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の1又は複数の特徴を有する。
【0010】
即ち、本発明は、3−キヌクリジノンもしくはその塩にカルボニル基を立体選択的に還元する能力を有する酵素源を作用させる光学活性な3―キヌクリジノールの製造方法において、生成物が(R)−3−キヌクリジノールであり、前記酵素源がメシュニコワ(Metschnikowia)、オガタエア(Ogataea)、ピキア(Pichia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)、アエロバクター(Aerobacter)、アースロバクター(Arthrobacter)、バチルス(Bacillus)、ブレビバシラス(Brevibacillus)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ブレブンディモナス(Brevundimonas)、セルロモナス(Cellulomonas)、セルロシミクロビウム(Cellulosimicrobium)、デセムジア(Desemzia)、デボシア(Devosia)、ジェンセニア(Jensenia)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、パラコッカス(Paracoccus)、ラルストニア(Ralstonia)、ロドコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトフィアレ(Cryptophiale)、ピクノポラス(Pycnoporus)、リゾプス(Rhizopus)、シゾフィラム(Schizophyllum)、ベルティシリウム(Verticillium)属からなる群より選ばれた微生物の、菌体、培養液、それらの処理物、及び、それら微生物から得られる酵素のいずれかであるか、もしくは、生成物が(S)−3−キヌクリジノールであり、前記酵素源がデバリオマイセス(Debaryomyces)、オガタエア(Ogataea)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、ウィリオプシス(Williopsis)、モルガネラ(Morganella)、オクロバクトラム(Ochrobactrum)、オエルスコフィア(Oerskovia)、パエニバチルス(Paenibacillus)、プロテウス(Proteus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、キサントモナス(Xanthomonas)ラクトバチルス(Lactobacillus)属からなる群より選ばれた微生物の、菌体、培養液、それらの処理物、及び、それら微生物から得られる酵素のいずれかであることを特徴とする、光学活性3−キヌクリジノールの製造方法である。
【0011】
また、別の好ましい実施態様としては、酸化型ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド(以下、NAD+と省略する)及び/または酸化型ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチドりん酸(以下、NADP+と省略する)をそれぞれの還元型へ還元する酵素と、該還元のための基質を共存させることを特徴とする上記製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、医薬品の中間体として有用な光学活性3−キヌクリジノールの効率的かつ工業的な製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態で詳細に説明する。本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、本明細書において記述されている、DNAの単離、ベクターの調製、形質転換等の遺伝子操作は、特に明記しない限り、Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience)等の成書に記載されている方法により実施できる。また、以下の記載において、「%」は特に断らない限り「重量%」を意味する。
【0014】
本発明は3−キヌクリジノンもしくはその塩にカルボニル基を立体選択的に還元する能力を有する酵素源を作用させる光学活性な3―キヌクリジノールの製造方法に関する。光学活性な3−キヌクリジノールには(R)−3−キヌクリジノール(R体)と(S)−3−キヌクリジノール(S体)の2種類がある。
【0015】
なお、ここでいう「光学活性」とは、考えられる各種光学異性体のうち、ひとつの光学異性体の光学純度が高いことをいう。
【0016】
本発明において光学活性3−キヌクリジノールの光学純度は50%ee.以上が好ましく、より好ましくは70%ee.以上である。最も好ましくは90%ee.以上である。
【0017】
なお、光学活性3−キヌクリジノールの光学純度は高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィー分析し、下記式より求めることができる。
(R体の光学純度(%ee.)={(R体のピーク面積)−(S体のピーク面積)}÷{(R体のピーク面積)+(S体のピーク面積)}×100
(S体の光学純度(%ee.)={(S体のピーク面積)−(R体のピーク面積)}÷{(S体のピーク面積)+(R体のピーク面積)}×100
【0018】
反応に用いる3−キヌクリジノンはそのものでもよく、また、有機酸塩、無機酸塩としても用いることができる。前記塩の形成に用いる酸としては、塩フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバル酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、L−酒石酸、D−酒石酸、マンデル酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。好ましくは塩化水素、臭化水素、硫酸、酢酸、ピバル酸、シュウ酸、L−酒石酸、D−酒石酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、又はカンファースルホン酸を用いることができる。さらに好ましくは塩化水素である。
【0019】
本発明で使用される酵素源は、上記3−キヌクリジノンを光学活性3−キヌクリジノールに不斉還元する能力を有する微生物由来のものを用いることが出来る。
【0020】
ここでいう「微生物由来のもの」としては、該微生物の菌体そのもの、微生物の培養液、あるいは菌体処理物、または該微生物から得られる酵素であってもよいし、さらには該微生物由来の上記還元活性を有する酵素をコードするDNAが導入された形質転換体も含む。
【0021】
上記微生物の菌体処理物としては特に限定されず、例えば、アセトンや五酸化二リンによる脱水処理またはデシケーターや扇風機を利用した乾燥によって得られる乾燥菌体、界面活性剤処理物、溶菌酵素処理物、固定化菌体または菌体を破砕した無細胞抽出標品などをあげることができる。更に、培養物より不斉還元反応を触媒する酵素を精製し、これを使用してもよい。
【0022】
これらを単独で用いても、2種以上組み合わせて用いても良い。また、これら微生物は周知の方法で固定化して用いても構わない。
【0023】
本発明に使用しうる酵素源としては、3−キヌクリジノンを(R)−3−キヌクリジノールに変換しようとする場合には、前記酵素源がメシュニコワ(Metschnikowia)、オガタエア(Ogataea)、ピキア(Pichia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)、アエロバクター(Aerobacter)、アースロバクター(Arthrobacter)、バチルス(Bacillus)、ブレビバシラス(Brevibacillus)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ブレブンディモナス(Brevundimonas)、セルロモナス(Cellulomonas)、セルロシミクロビウム(Cellulosimicrobium)、デセムジア(Desemzia)、デボシア(Devosia)、ジェンセニア(Jensenia)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、パラコッカス(Paracoccus)、ラルストニア(Ralstonia)、ロドコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトフィアレ(Cryptophiale)、ピクノポラス(Pycnoporus)、リゾプス(Rhizopus)、シゾフィラム(Schizophyllum)、ベルティシリウム(Verticillium)属由来のものであることが好ましい。
【0024】
更に好ましくは、メシュニコワ・ビクスピダタ・バー・ビクスピダタ(Metschnikowia bicuspidata var.bicuspidata)、オガタエア・ミヌタ・バー・ノンファーメンタス(Ogataea minuta var.nonfermentans)、ピキア・ロダネンシス(Pichia rhodanensis)、ピキア・ウイッカーハミー(Pichia wickerhamii)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)、サッカロマイコプシス・ジャバネンシス(Saccharomycopsis javanensis)、サッカロマイコプシス・リポリティカ(Saccharomycopsis lipolytica)、サッカロマイコプシス・セレノスポラ(Saccharomycopsis selenospora)、スポロボロマイセス・サルモニカラー(Sporobolomyces salmonicolor)、アエロバクター・クロアカエ(Aerobacter cloacae)、アースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ブレビバシラス・パラブレビス(Brevibacillus parabrevis)、ブレビバクテリウム・イオジナム(Brevibacterium iodinum)、ブレブンディモナス・ディミヌータ(Brevundimonas diminuta)、セルロモナス・フラビジエナ(Cellulomonas flavigena)、セルロシミクロビウム・セルランス(Cellulosimicrobium cellulans)、デセムジア・インセルタ(Desemzia incerta)、デボシア・リボフラビナ(Devosia riboflavina)、ジェンセニア・カニクルリア(Jensenia canicruria)、マイコバクテリウム・アウストロアフリカナム(Mycobacterium austroafricanum)、パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)、ラルストニア・ピケッティ(Ralstonia pikettii)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス・ロドコラス(Rhodococcus rhodochrous)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、アスペルギルス・パラシティカス(Aspergillus parasiticus)、アスペルギルス・ホォエニシス(Aspergillus phoenicis)、クリプトフィアレ・ガダルカナレンセ(Cryptophiale guadalcanalense)、ピクノポラス・コシネウス(Pycnoporus coccineus)、リゾプス・ニヴェウス(Rhizopus niveus)、シゾフィラム・コミューネ(Schizophyllum commune)、ベルティシリウム・ニベオストラトサム(Verticillium niveostratosum)由来のものである。
【0025】
また、3−キヌクリジノンを(S)−3−キヌクリジノールに変換しようとする場合には、酵素源がデバリオマイセス(Debaryomyces)、オガタエア(Ogataea)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、ウィリオプシス(Williopsis)、モルガネラ(Morganella)、オクロバクトラム(Ochrobactrum)、オエルスコフィア(Oerskovia)、パエニバチルス(Paenibacillus)、プロテウス(Proteus)、プロテウス(Proteus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、キサントモナス(Xanthomonas)ラクトバチルス(Lactobacillus)属の微生物由来であることが好ましい。
【0026】
更に好ましくは、デバリオマイセス・ハンセニイ(Debaryomyces hansenii)、オガタエア・グルコザイマ(Ogataea glucozyma)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ウィリオプシス・サツルヌス・バー・マラキイ(Williopsis saturnus var.mrakii)、ウィリオプシス・サツルヌス・バー・シュアベリレンス(Williopsis saturnus var.suaveolens)、ウィリオプシス・サツルヌス・バー・サツルヌス(Williopsis saturnus var.saturnus)、モルガネラ・モルガニ・サブエスピー・モルガニ(Morganella morganii subsp. morganii)、オクロバクトラム・エスピー(Ochrobactrum sp.)、オエルスコフィア・ジエネンシス(Oerskovia jenensis)、パエニバチルス・アルベイ(Paenibacillus alvei)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、キサントモナス・エスピー(Xanthomonas sp.)ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)由来のものである。
【0027】
これら微生物は一般に、入手または購入が容易な保存株から得ることができるが、自然界から分離することもできる。なお、これらの微生物に変異を生じさせて、より本反応に有利な性質を有する菌株を得ることもできる。
【0028】
3−キヌクリジノンを光学活性3−キヌクリジノールに不斉還元する能力を有する微生物は、以下に説明する方法によって見いだすことができる。
【0029】
例えば、以下のようにして行う。グルコース40g、酵母エキス3g、リン酸水素二アンモニウム6.5g、リン酸二水素カリウム1g、硫酸マグネシウム七水和物0.8g、硫酸亜鉛七水和物60mg、硫酸鉄七水和物90mg、硫酸銅五水和物5mg、硫酸マンガン四水和物10mg、塩化ナトリウム100mg(いずれも1L当たり)の組成からなる液体培地(pH7)5mlを試験管に入れて殺菌後、無菌的に微生物を接種し、30℃で2〜3日間振とう培養する。
【0030】
その後、菌体を遠心分離により集め、グルコース2〜10%を含んだリン酸緩衝液1〜5mlに懸濁し、あらかじめ3−キヌクリジノンもしくはその塩を2.5〜25mgいれた試験管に加えて、2〜3日間30℃で振とうする。この際、遠心分離により得た菌体をデシケーター中またはアセトンにより乾燥したものを用いることもできる。更に、これら微生物もしくはその処理物と3−キヌクリジノンを反応させる際に、NAD+及び/またはNADP+と、グルコース脱水素酵素及びグルコース、もしくはギ酸脱水素酵素及びギ酸、を添加してもよい。また、反応系に有機溶媒を共存させてもかまわない。変換反応ののち適当な有機溶媒で抽出を行ない、生成する光学活性3−キヌクリジノールをガスクロマトグラフィーなどにより分析する。
【0031】
これらの微生物の培養には、通常これらの微生物が資化しうる栄養源を含む培地であれば何でも使用しうる。例えば、グルコース、シュークロース、マルトース等の糖類、乳酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸等の有機酸類、エタノール、グリセリン等のアルコール類、パラフィン等の炭化水素類、大豆油、菜種油等の油脂類、またはこれらの混合物等の炭素源;硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、尿素、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、コーンスチープリカー等の窒素源;更に、その他の無機塩、ビタミン類等の栄養源;を適宜混合・配合した通常の培地を用いることが出来る。これら培地は用いる微生物の種類によって適宜選択すればよい。また、目的の還元酵素を誘導させるために、各種カルボニル化合物を培地に添加すると優れた結果が得られるため、好ましい。例えば、3−キヌクリジノンを0.01〜50%(W/V)培地に添加する。
【0032】
微生物の培養は通常一般の条件により行なうことができ、例えば、pH4.0〜9.5、温度範囲20℃〜45℃の範囲で、好気的に10〜96時間培養するのが好ましい。3−キヌクリジノンに微生物を反応させる場合においては、通常、上記微生物の菌体を含んだ培養液をそのまま反応に使用することもできるが、培養液の濃縮物も用いることができる。また、培養液中の成分が反応に悪影響を与える場合には、培養液を遠心分離等により処理して得られる菌体または菌体処理物を使用することもできる。
【0033】
還元反応の際には、基質である3−キヌクリジノンを反応の初期に一括して添加してもよく、反応の進行にあわせて分割して添加してもよい。反応時の温度は通常10〜60℃、好ましくは、20〜40℃であり、反応時のpHは2.5〜9、好ましくは、5〜9の範囲である。反応液中の微生物の量はこれらの基質を還元する能力に応じ適宜決定すればよい。また、反応液中の基質濃度は0.01〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、0.1〜30%(W/V)である。反応は通常、振とうまたは通気攪拌しながら行なう。反応時間は基質濃度、微生物の量及びその他の反応条件により適宜決定される。通常、2〜168時間で反応が終了するように各条件を設定することが好ましい。
【0034】
還元反応を促進させるために、反応液にグルコース、エタノール、イソプロパノールなどのエネルギー源を0.5〜30%の割合で加えると優れた結果が得られるので好ましい。一般に生物学的方法による還元反応に必要とされている還元型ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド(以降NADHと省略する)、還元型ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチドリン酸(以降NADPHと省略する)等の補酵素を添加することにより、反応を促進させることもできる。この場合、具体的には、反応液に直接これらを添加する。
【0035】
また、還元反応を促進させるために、NAD+及び/またはNADP+をそれぞれの還元型へ還元する酵素と、該還元のための基質を共存させて反応を行うと優れた結果が得られるので好ましい。例えば、還元型へ還元する酵素としてグルコース脱水素酵素、還元のための基質としてグルコースをそれぞれ共存させるか、または、還元型へ還元する酵素としてギ酸脱水素酵素、還元のための基質としてギ酸をそれぞれ共存させる。
【0036】
また更に、トリトン(ナカライテスク株式会社製)、スパン(関東化学株式会社製)、ツイーン(ナカライテスク株式会社製)などの界面活性剤を反応液に添加することも効果的である。更に、基質及び/または還元反応の生成物であるアルコール体による反応の阻害を回避する目的で、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルエーテル、トルエン、ヘキサンなどの水に不溶な有機溶媒を反応液に添加してもよい。更に、基質の溶解度を高める目的で、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどの水に可溶な有機溶媒を添加することもできる。
【0037】
還元反応により生成した光学活性3−キヌクリジノールの採取は、特に限定されないが、反応液から直接、あるいは菌体等を分離後、酢酸エチル、トルエン、t−ブチルメチルエーテル、ヘキサン、n−ブタノール、ジクロロメタン等の溶剤で抽出し、脱水後、蒸留やシリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製すれば高純度の光学活性3−キヌクリジノールを容易に得ることができる。
【0038】
本発明の還元反応を触媒する酵素源として、キヌクリジノンのカルボニル基を立体選択的に還元する酵素をコードするDNAを含む形質転換体を使用すると、より効率的に光学活性3−キヌクリジノールを製造することができる。好ましくはサッカロマイセス(Saccharomyces)属由来の還元酵素をコードするDNAを含む形質転換体である。(R)−キヌクリジノールを得る酵素としては最も好ましくは配列表の配列番号1に示すポリペプチドである。(S)−キヌクリジノールを得る酵素としては最も好ましくは配列表の配列番号2に示すポリペプチドである。また、配列表の配列番号1または2に示したアミノ酸配列において1若しくは複数個(例えば、40個、好ましくは20個、より好ましくは15個、さらに好ましくは10個、さらに好ましくは5個、4個、3個、または2個以下)のアミノ酸が置換、挿入、欠失及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、キヌクリジノン還元活性を有するポリペプチドであってもよい。
【0039】
配列表の配列番号1または2に示したアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失及び/または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドは、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc., 1989)等に記載の公知の方法に準じて調製することができ、キヌクリジノンを立体選択的に還元する能力を有する限り上記ポリペプチドに包含される。
【0040】
配列表の配列番号1または2に示したアミノ酸配列において、アミノ酸が置換、挿入、欠失及び/または付加される場所は特に制限されないが、高度保存領域を避けるのが好ましい。ここで、高度保存領域とは、由来の異なる複数の酵素ついて、アミノ酸配列を最適に整列させて比較した場合に、複数の配列間でアミノ酸が一致している位置を表す。高度保存領域は、配列番号1に示したアミノ酸配列と、前述した他の微生物由来のアミノ基転移酵素のアミノ酸配列とを、GENETYX等のツールを用いて比較することにより確認することができる。
【0041】
置換、挿入、欠失及び/又は付加により改変されたアミノ酸配列としては、1種類のタイプ(例えば置換)の改変のみを含むものであっても良いし、2種以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいても良い。
【0042】
また、置換の場合には、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸(同族アミノ酸)であることが好ましい。ここでは、以下に挙げる各群の同一群内のアミノ酸を同族アミノ酸とする。
(第1群:中性非極性アミノ酸)Gly, Ala, Val, Leu, Ile, Met, Cys, Pro, Phe
(第2群:中性極性アミノ酸)Ser, Thr, Gln, Asn, Trp, Tyr
(第3群:酸性アミノ酸)Glu, Asp
(第4群:塩基性アミノ酸)His, Lys, Arg
【0043】
置換、挿入、欠失及び/または付加されるアミノ酸の数としては、改変後のポリペプチドがアミノ基転移酵素(A)の活性を有する限り、特に制限されないが、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と、配列同一性が85%以上であることが好ましい。配列同一性90%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましく、99%以上が最も好ましい。配列同一性は、前記の高度保存領域の確認と同様にして、配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列と改変されたアミノ酸配列とを比較し、両方の配列でアミノ酸が一致した位置の数を比較総アミノ酸数で除し、さらに100を乗じた値で表される。
【0044】
キヌクリジノン還元活性を有する限り、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列に、付加的なアミノ酸配列を結合することができる。たとえば、ヒスチジンタグやHAタグのような、タグ配列を付加することができる。あるいは、他のタンパク質との融合タンパク質とすることもできる。また、キヌクリジノン還元活性を有する限り、ペプチド断片であってもよい。
【0045】
上記の形質転換体に用いるベクターとしては、適当な宿主生物内でキヌクリジノン還元酵素をコードする遺伝子を発現できるものであれば、特に限定されない。このようなベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターなどが挙げられ、さらに、他の宿主株との間での遺伝子交換が可能なシャトルベクターも使用できる。
【0046】
このようなベクターは、例えば大腸菌の場合では、通常、lacUV5プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、lppプロモーター、tufBプロモーター、recAプロモーター、pLプロモーター等の制御因子を含み、本発明のDNAと作動可能に連結された発現単位を含む発現ベクターとして好適に使用できる。例えば、pUCN18(実施例2参照)、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUCNT(国際公開第WO94/03613号パンフレット)などが挙げられる。
【0047】
本明細書で用いる用語「制御因子」は、機能的プロモーター及び、任意の関連する転写要素(例えばエンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、SPI部位など)を有する塩基配列をいう。
【0048】
本明細書で用いる用語「作動可能に連結」とは、遺伝子の発現を調節するプロモーター、エンハンサー等の種々の調節エレメントと遺伝子が、宿主細胞中で作動し得る状態で連結されることをいう。制御因子のタイプ及び種類が、宿主に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
【0049】
各種生物において利用可能なベクター、プロモーターなどに関して「微生物学基礎講座8遺伝子工学」(共立出版、1987)などに詳細に記述されている。
【0050】
各酵素を発現させるために用いる宿主生物は、各酵素をコードするDNAを含む酵素発現ベクターにより形質転換され、DNAを導入した酵素を発現することができる生物であれば、特に制限はされない。利用可能な微生物としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、及びラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属及びストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、及びキャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母、ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、及びトリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ、などが挙げられる。また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫(Nature,315,592−594(1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており、好適に利用できる。これらのうち、導入及び発現効率から細菌が好ましく、大腸菌が特に好ましい。
【0051】
キヌクリジノン還元酵素するDNAを含むベクターは、公知の方法により宿主微生物に導入できる。例えば、宿主微生物として大腸菌を用いる場合は、市販のE. coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を用いることにより、当該ベクターを宿主細胞に導入できる。
【0052】
キヌクリジノン還元酵素をコードするDNAを含むベクターの例としては、参考例に示すpNSC1が挙げられる。また、キヌクリジノン還元酵素をコードするDNAを含む形質転換体の例としては、ベクターpNSC1でE.coli HB101を形質転換して得られる、E.coli HB101(pNSC1)が挙げられる。
【0053】
また、キヌクリジノン還元酵素をコードするDNA、および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者を含む形質転換体を本発明に用いることにより、より効率的にカルボニル化合物を製造することができる。キヌクリジノン還元酵素をコードするDNA、および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者を含む形質転換体は、キヌクリジノン還元酵素をコードするDNA、および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者を、同一のベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入することにより得られるほか、これら2種のDNAを不和合性グループの異なる2種のベクターにそれぞれ組み込み、それら2種のベクターを同一の宿主細胞に導入することによっても得られる。
【0054】
補酵素再生能を有するポリペプチドとしては、NAD+もしくはNADP+をNADH、もしくはNADPHに変換する能力を有している酸化還元酵素が好ましい。
【0055】
このような酵素としては、例えば、ヒドロゲナーゼ、ギ酸脱水素酵素、グルコース−6−リン酸脱水素酵素及びグルコース脱水素酵素などが挙げられる。好適には、グルコース脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素が使用される。
【0056】
ギ酸脱水素酵素としては、例えば、キャンディダ(Candida)属、クロイッケラ(Kloeckera)属、ピキア(Pichia)属、リポマイセス(Lipomyces)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、モラキセラ(Moraxella)属、ハイホマイクロビウム(Hyphomicrobium)属、パラコッカス(Paracoccus)属、チオバシラス(Thiobacillus)属、アンシロバクター(Ancylobacter)属、などの微生物、特にチオバシラス・エスピー(Thiobacillus sp.)から得られる酵素が挙げられる。
【0057】
グルコース脱水素酵素としては、例えば、バシラス(Bacillus)属などの微生物、特にバシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)から得られる酵素が挙げられる。
【0058】
得られた形質転換体の培養は、通常これらの微生物が資化できる栄養源を含む培地であれば何でも使用しできる。例えば、グルコース、シュークロース、マルトース等の糖類、乳酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸等の有機酸類、エタノール、グリセリン等のアルコール類、パラフィン等の炭化水素類、大豆油、菜種油等の油脂類、またはこれらの混合物等の炭素源;硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、尿素、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、コーンスチープリカー等の窒素源;更に、その他の無機塩、ビタミン類等の栄養源;を適宜混合・配合した通常の培地を用いることが出来る。これら培地は用いる微生物の種類によって適宜選択すればよい。
【0059】
形質転換体を用いたキヌクリジノンの還元反応や反応液からのキヌクリジノールの採取については前述した方法と同様にして実施することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において、「%」は特に断らない限り「重量%」を意味する。
【0061】
(実施例1)(R)又は(S)−3−キヌクリジノールの製造
グルコース40g、酵母エキス3g、リン酸水素二アンモニウム6.5g、リン酸二水素カリウム1g、硫酸マグネシウム七水和物0.8g、硫酸亜鉛七水和物60mg、硫酸鉄七水和物90mg、硫酸銅五水和物5mg、硫酸マンガン四水和物10mg、塩化ナトリウム100mg(いずれも1L当たり)の組成からなる液体培地(pH7)5mlを大型試験管に分注し、120℃で20分間蒸気殺菌を行った。
【0062】
これらの液体培地に表1に示す微生物を無菌的に一白金耳接種して、30℃で72時間振とう培養した。培養後、各培養液を遠心分離にかけて菌体を集め、7mMキヌクリジノン塩酸塩、グルコース4%を含んだ0.5Mリン酸緩衝液1ml(pH6.5)に菌体を懸濁し、30℃で24時間反応させた。反応後、各反応液を5N NaOHにてpH12に調整した後、酢酸エチル2mlを加えよく混合した。この混合液を遠心分離後、有機層を下記条件でガスクロマトグラフィー分析し、変換率及び生成したキヌクリジノールの光学純度を求めた。
【0063】
<ガスクロマトグラフィー分析条件>
カラム:γ−DEX225キャピラリーカラム
(0.25mm(内径)×30m;Spelco社製)
検出器:水素炎イオン化検出器
注入部温度:220℃、カラム温度:150℃、
検出器温度:220℃
キャリアーガス:ヘリウム、流量70KPa
結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
(実施例2)(R)又は(S)−3−キヌクリジノールの製造
肉エキス10g、ペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム3g(いずれも1L当たり)の組成からなる液体培地(pH7)5mlを大型試験管に分注し、120℃で20分間蒸気殺菌を行った。これらの液体培地に表2に示す微生物を無菌的に一白金耳接種して、28℃で72時間振とう培養した。また、還元酵素を誘導するため、無菌的にキヌクリジノン塩酸塩を終濃度0.5%になるように添加して培養した。
【0066】
培養後、各培養液を遠心分離にかけて菌体を集め、実施例1と同条件で反応及び抽出、分析した。
【0067】
結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
(実施例3)(R)又は(S)−3−キヌクリジノールの製造
MRSブロス(Difco製)55g(1L当たり)を含む液体培地10mlを大型試験管に分注し、120℃で20分間蒸気殺菌を行った。これらの液体培地に表3に示す微生物を無菌的に一白金耳接種して、30℃で5日間静置培養した。培養後、各培養液を遠心分離にかけて菌体を集め、実施例1と同条件で反応及び抽出、分析した。
【0070】
結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
(実施例4)(R)又は(S)−3−キヌクリジノールの製造
肉エキス1g、グルコース10g、酵母エキス1g、NZアミン2g(いずれも1L当たり)の組成からなる液体培地(pH7)5mlを大型試験管に分注し、120℃で20分間蒸気殺菌を行った。これらの液体培地に表4に示す微生物を無菌的に一白金耳接種して、28℃で72時間振とう培養した。
【0073】
培養後、各培養液を吸引ろ過により菌体を分離し、実施例1と同条件で反応及び抽出、分析した。
【0074】
結果を表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
(実施例5)(R)又は(S)−3−キヌクリジノールの製造
肉エキス10g、ペプトン10g、酵母エキス5g、グルコース10g、塩化ナトリウム1g、硫酸マグネシウム七水和物0.5g(いずれも1L当たり)の組成からなる液体培地(pH7)7mlを大型試験管に分注し、120℃で20分間蒸気殺菌を行った。これらの液体培地に表5に示す微生物を無菌的に一白金耳接種して、28℃で72時間振とう培養した。
【0077】
培養後、各培養液を吸引ろ過により菌体を分離し、実施例1と同条件で反応及び抽出、分析した。
【0078】
結果を表5に示す。
【0079】
【表5】

【0080】
(参考例1)Saccharomyces由来還元酵素発現組換え大腸菌の作製
3−キヌクリジノンのカルボニル基を立体選択的に還元し、(R)−キヌクリジノールを生成するサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来還元酵素RSC1(配列表の配列番号1)を発現する組換え菌E.coli HB101(pNSC1)の作製の方法を以下に示す。プライマー1(配列表の配列番号3):5’−GGGAATTCCATATGTCCCAAGGTAGAAAAG−3’、プライマー2(配列表の配列番号4):5’−CCGGAATTCTTATCCACGGAAGATATGAT−3’を用い、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)S288C(ATCC26108)株の染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。その結果、還元酵素RSC1遺伝子の開始コドン部分にNdeI認識部位が付加され、かつ終始コドンの直後にEcoRI認識部位が付加された二本鎖DNAを得た。PCRは、DNAポリメラ−ゼとして、Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いて行い、反応条件はその取り扱い説明書に従った。
【0081】
上記のPCRで得られたDNA断片をNdeI及びEcoRIで消化し、プラスミドpUCN18(PCR法によりpUC18(タカラバイオ社製、GenBank Accession No.L09136)の185番目のTをAに改変してNdeIサイトを破壊し、更に471−472番目のGCをTGに改変することにより新たにNdeIサイトを導入したプラスミド)のlacプロモーターの下流のNdeI認識部位とEcoRI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNCMを構築した。この組換えベクターpNCMを用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、E.coli HB101(pNSC1)を得た。
【0082】
また、3−キヌクリジノンのカルボニル基を立体選択的に還元し、(S)−キヌクリジノールを生成するサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来還元酵素RSC2(配列表の配列番号2)を発現する組換え菌E.coli HB101(pNSC2)も同様の方法で作製した。二本鎖DNAの増幅にはプライマー3(配列表の配列番号5):5’−GGGAATTCCATATGCTTTACCCAGAAAAAT−3’、プライマー4(配列表の配列番号6):5’−CCGGAATTCCTATTTATGGAATTTCTTATC−3’を用いた。その他はE.coli HB101(pNSC1)の作製と同様に操作した。
【0083】
(実施例6)還元酵素組換え大腸菌を用いた(R)又は(S)−3−キヌクリジノールの製造
トリプトン16g、酵母エキス10g、NaCl 5g(いずれも1L当たり)の組成からなる液体培地(pH=7)5mlを大型試験管に分注し、120℃で20分間蒸気殺菌を行った。これらの液体培地に表6に示す各種組み換え大腸菌を無菌的にそれぞれ一白金耳接種して、37℃で24時間振とう培養した。
【0084】
培養後、超音波ホモジナイザーによる菌体破砕を実施し、各菌体破砕液0.9ml、キヌクリジノール塩酸塩10mg、NAD・NADP各1mg、グルコース20mg、グルコース脱水素酵素(商品名:GLUCDH”Amano”II、天野エンザイム社製)5U、1Mリン酸緩衝液(pH6.5)0.1mlを加えて、30℃で24時間反応させた。
【0085】
反応終了後、実施例1と同様に分析し、変換率と生成物の光学純度を分析した。
【0086】
結果を表6に示す。
【0087】
【表6】

【0088】
(実施例7)還元酵素組換え大腸菌を用いた(R)−3−キヌクリジノールの製造
トリプトン16g、酵母エキス10g、NaCl5g(いずれも1L当たり)の組成からなる液体培地(pH=7)50mlを500ml容坂口フラスコに分注し、120℃で20分間蒸気殺菌を行った。これらの液体培地にE.coli HB101(pNSC1)を無菌的に一白金耳接種して、37℃で24時間振とう培養した。
【0089】
培養後、超音波ホモジナイザーによる菌体破砕を実施し、菌体破砕液20mlにキヌクリジノール塩酸塩2.5g、NADP 1mg、グルコース3.2g、グルコース脱水素酵素(商品名:GLUCDH”Amano”II、天野エンザイム社製)10Uを加えて、30℃で30時間反応させた。反応中は5Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpH6.5を維持した。
【0090】
反応終了後、反応液を10N NaOHにてpH12に調整し、反応液の2倍量のn−ブタノールで3回抽出した。減圧下で溶媒を留去後、乾燥して2gの結晶を得た。実施例1と同様に分析し、キヌクリジノール含量と生成物の光学純度を分析した。その結果、キヌクリジノール含量88%、R体光学純度93.1%ee.であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−キヌクリジノンもしくはその塩にカルボニル基を立体選択的に還元する能力を有する酵素源を作用させる光学活性3―キヌクリジノールの製造方法において、前記酵素源がアンボロシオジマ(Ambrosiozyma)、ブレタノマイセス(Brettanomyces)、シテロマイセス(Citeromyces)、クラビスポラ(Clavispora)、キストフィロバシディウム(Cystofilobasidium)、デバリオマイセス(Debaryomyces)、ディポダスカス(Dipodascus)、ガラクトマイセス(Galactomyces)、ハンセニアスポラ(Hanseniaspora)、ハンセヌラ(Hansenula )、イサチェンキア(Issatchenkia)、コマガタエラ(Komagataella)、リポマイセス(Lipomyces)、ロデロマイセス(Lodderomyces)、メシュニコワ(Metschnikowia)、オガタエア(Ogataea)、ピキア(Pichia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)、サツルニスポラ(Saturnispora)、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)、トルラスポラ(Torulaspora)、トルロプシス(Torulopsis)、トリゴノプシス(Trigonopsis)、ウィッカーハミア(Wickerhamia)、ウィリオプシス(Williopsis)、ヤマダジマ(Yamadazyma)、アシドフィラム(Acidiphilium )、アシネトバクター(Acinetobacter)、アエロバクター(Aerobacter)、アースロバクター(Arthrobacter)、バチルス(Bacillus)、ブレビバシラス(Brevibacillus)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ブレブンディモナス(Brevundimonas)、セルロモナス(Cellulomonas)、セルロシミクロビウム(Cellulosimicrobium)、シトロバクター(Citrobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、デセムジア(Desemzia)、デボシア(Devosia)、エンテロバクター(Enterobacter)、エシェリヒア(Escherichia)、 ジェンセニア(Jensenia)、クレブシエラ(Klebsiella)、ルテオコッカス(Luteococcus)、モルガネラ(Morganella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、オクロバクトラム(Ochrobactrum)、オエルスコフィア(Oerskovia)、パエニバチルス(Paenibacillus)、パラコッカス(Paracoccus)、ペクトバクテリウム(Pectobacterium)、プロテウス(Proteus)、プロビデンシア(Providencia)、ラルストニア(Ralstonia)、ロドコッカス(Rhodococcus)、 セラチア(Serratia)、シモンシェラ(Simonsiella )、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、キサントモナス(Xanthomonas)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、アブシジア(Absidia)、アエジェリタ(Aegerita)、アミロステレウム(Amylostereum)、アスペルギルス(Aspergillus)、カエトミディアム(Chaetomidium)、コリオラス(Coriolus)、コリネスポラ(Corynespora)、クリプトフィアレ(Cryptophiale)、クルブラリア(Curvularia)、フサリウム(Fusarium)、ジベレラ(Gibberella)、グロエオフィルム(Gloeophyllum)、レンチヌラ(Lentinula )、マクロフォマ(Macrophoma)、モナスカス(Monascus)、モルティエレラ(Mortierella)、プレウロタス(Pleurotus)、ピクノポラス(Pycnoporus)、リゾプス(Rhizopus)、シゾフィラム(Schizophyllum )、タラロマイセス(Talaromyces)、ベルティシリウム(Verticillium)属からなる群より選ばれた微生物の、菌体、培養液、それらの処理物、及び、それら微生物から得られる酵素のいずれかであることを特徴とする、光学活性3−キヌクリジノールの製造方法。
【請求項2】
前記酵素源がメシュニコワ(Metschnikowia)、オガタエア(Ogataea)、ピキア(Pichia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)、アエロバクター(Aerobacter)、アースロバクター(Arthrobacter)、バチルス(Bacillus)、ブレビバシラス(Brevibacillus)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ブレブンディモナス(Brevundimonas)、セルロモナス(Cellulomonas)、セルロシミクロビウム(Cellulosimicrobium)、デセムジア(Desemzia)、デボシア(Devosia)、ジェンセニア(Jensenia)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、パラコッカス(Paracoccus)、ラルストニア(Ralstonia)、ロドコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトフィアレ(Cryptophiale)、ピクノポラス(Pycnoporus)、リゾプス(Rhizopus)、シゾフィラム(Schizophyllum)、ベルティシリウム(Verticillium)、デバリオマイセス(Debaryomyces)、ウィリオプシス(Williopsis)、モルガネラ(Morganella)、オクロバクトラム(Ochrobactrum)、オエルスコフィア(Oerskovia)、パエニバチルス(Paenibacillus)、プロテウス(Proteus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、キサントモナス(Xanthomonas)ラクトバチルス(Lactobacillus)属からなる群より選ばれた微生物由来のものである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記生成物が(R)−3−キヌクリジノールであり、前記酵素源がメシュニコワ(Metschnikowia)、オガタエア(Ogataea)、ピキア(Pichia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)、アエロバクター(Aerobacter)、アースロバクター(Arthrobacter)、バチルス(Bacillus)、ブレビバシラス(Brevibacillus)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ブレブンディモナス(Brevundimonas)、セルロモナス(Cellulomonas)、セルロシミクロビウム(Cellulosimicrobium)、デセムジア(Desemzia)、デボシア(Devosia)、ジェンセニア(Jensenia)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、パラコッカス(Paracoccus)、ラルストニア(Ralstonia)、ロドコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトフィアレ(Cryptophiale)、ピクノポラス(Pycnoporus)、リゾプス(Rhizopus)、シゾフィラム(Schizophyllum)、ベルティシリウム(Verticillium)属からなる群より選ばれた微生物由来のものである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記生成物が(R)−3−キヌクリジノールであり、前記酵素源がメシュニコワ・ビクスピダタ・バー・ビクスピダタ(Metschnikowia bicuspidata var.bicuspidata)、オガタエア・ミヌタ・バー・ノンファーメンタス(Ogataea minuta var.nonfermentans)、ピキア・ロダネンシス(Pichia rhodanensis)、ピキア・ウイッカーハミー(Pichia wickerhamii)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)、サッカロマイコプシス・ジャバネンシス(Saccharomycopsis javanensis)、サッカロマイコプシス・リポリティカ(Saccharomycopsis lipolytica)、サッカロマイコプシス・セレノスポラ(Saccharomycopsis selenospora)、スポロボロマイセス・サルモニカラー(Sporobolomyces salmonicolor)、アエロバクター・クロアカエ(Aerobacter cloacae)、アースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ブレビバシラス・パラブレビス(Brevibacillus parabrevis)、ブレビバクテリウム・イオジナム(Brevibacterium iodinum)、ブレブンディモナス・ディミヌータ(Brevundimonas diminuta)、セルロモナス・フラビジエナ(Cellulomonas flavigena)、セルロシミクロビウム・セルランス(Cellulosimicrobium cellulans)、デセムジア・インセルタ(Desemzia incerta)、デボシア・リボフラビナ(Devosia riboflavina)、ジェンセニア・カニクルリア(Jensenia canicruria)、マイコバクテリウム・アウストロアフリカナム(Mycobacterium austroafricanum)、パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)、ラルストニア・ピケッティ(Ralstonia pikettii)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス・ロドコラス(Rhodococcus rhodochrous)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、アスペルギルス・パラシティカス(Aspergillus parasiticus)、アスペルギルス・ホォエニシス(Aspergillus phoenicis)、クリプトフィアレ・ガダルカナレンセ(Cryptophiale guadalcanalense)、ピクノポラス・コシネウス(Pycnoporus coccineus)、リゾプス・ニヴェウス(Rhizopus niveus)、シゾフィラム・コミューネ(Schizophyllum commune)、ベルティシリウム・ニベオストラトサム(Verticillium niveostratosum)からなる群より選ばれた微生物由来のものである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記生成物が(S)−3−キヌクリジノールであり、前記酵素源がデバリオマイセス(Debaryomyces)、オガタエア(Ogataea)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、ウィリオプシス(Williopsis)、モルガネラ(Morganella)、オクロバクトラム(Ochrobactrum)、オエルスコフィア(Oerskovia)、パエニバチルス(Paenibacillus)、プロテウス(Proteus)、プロテウス(Proteus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、キサントモナス(Xanthomonas)ラクトバチルス(Lactobacillus)属からなる群より選ばれた微生物由来のものである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記生成物が(S)−3−キヌクリジノールであり、前記酵素源がデバリオマイセス・ハンセニイ(Debaryomyces hansenii)、オガタエア・グルコザイマ(Ogataea glucozyma)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ウィリオプシス・サツルヌス・バー・マラキイ(Williopsis saturnus var.mrakii)、ウィリオプシス・サツルヌス・バー・シュアベリレンス(Williopsis saturnus var.suaveolens)、ウィリオプシス・サツルヌス・バー・サツルヌス(Williopsis saturnus var.saturnus)、モルガネラ・モルガニ・サブエスピー・モルガニ(Morganella morganii subsp. morganii)、オクロバクトラム・エスピー(Ochrobactrum sp.)、オエルスコフィア・ジエネンシス(Oerskovia jenensis)、パエニバチルス・アルベイ(Paenibacillus alvei)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、キサントモナス・エスピー(Xanthomonas sp.)ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)からなる群より選ばれた微生物由来のものである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記生成物が(R)−3−キヌクリジノールであり、前記酵素源が、以下の(a)又は(b)で表されるポリペプチドである、請求項1または2に記載の製造方法。
(a)配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3−キヌクリジノンのカルボニル基を還元し、(R)−3−キヌクリジノールを生成するポリペプチド。
【請求項8】
前記生成物が(S)−3−キヌクリジノールであり、前記酵素源が、以下の(c)又は(d)で表されるポリペプチドである、請求項1または2に記載の製造方法。
(c)配列表の配列番号2に示したアミノ酸配列からなるポリペプチド
(d)配列表の配列番号2に示したアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3−キヌクリジノンのカルボニル基を還元し、(S)−3−キヌクリジノールを生成するポリペプチド。
【請求項9】
酸化型ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド、及び/または、酸化型ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチドリン酸をそれぞれの還元型へ還元する酵素と、該還元のための基質を、共存させることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
酸化型ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド、及び/または、酸化型ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチドリン酸をそれぞれの還元型へ還元する酵素がグルコース脱水素酵素もしくはギ酸脱水素酵素である、請求項9に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−130912(P2010−130912A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307401(P2008−307401)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】