説明

光学用アクリルフィルム、導光板およびバックライトユニット

【課題】透明性と強度が両立した光学用アクリルフィルムを提供する。
【解決手段】ゴム成分を含むアクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)とを混合してなる樹脂組成物(C)からなり、アクリル樹脂(A)中のゴム成分の含有量が1〜45質量%の範囲にあり、アクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)の質量比(A/B)が50/50〜99.9/0.1の範囲にある光学用アクリルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い透明性が求められる光学フィルムに好適な光学用アクリルフィルム、これを用いた導光板及びバックライトユニットに関するものであり、特に高い透過率と薄型化が求められる導光板の用途に好適な光学用アクリルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子保護フィルム、拡散板保護フィルム、導光フィルム、マイクロレンズアレイ、反射防止基材などの種々の光学部材、内装材などの建材、自動車用の部材、道路標識などに用いられる反射材など、様々な用途で透明性の高い樹脂フィルムが使用されている。
【0003】
特に液晶ディスプレイに用いられる樹脂フィルムは、その使用量が年々増加しており、より高い透明性が要求されている。
【0004】
その中でも、液晶装置のバックライトユニットに使用される導光板は長光路で使用されるため、このような導光板に用いられる樹脂フィルムには、光の吸収、散乱、反射などによる透過損失ができるだけ少ないことが求められている。従来、このような樹脂フィルムには、高い光線透過率を有するアクリル樹脂からなるフィルム(アクリルフィルム)、特にポリメチルメタクリレートのキャストシートが用いられてきた。
【0005】
一方、近年、消費電力低減のために、液晶表示装置の一次光源として、蛍光ランプなどの線状または棒状のものに代わって、発光ダイオード(LED)等の点状のものが広く利用されている。LEDは小寸法のものが形成可能であるため、このようなLEDを用いた液晶表示装置のより一層の薄型化が要請されている。また、液晶表示装置の使用分野の拡大につれて、特に小型の液晶表示装置にはバックライトユニットの薄型化が強く要請されており、バックライトユニットに使用される導光板の薄型化も進められている。
【0006】
しかし、導光板が薄くなると、導光板中を進む光は導光板表面で反射する回数が増えるために、同じ組成であっても、厚いものと比較すると、光の透過損失が大きくなり、輝度が低下しやすいという問題がある。また、導光板を薄くすると、導光板の製造工程において、各工程を通過する移送時や所定サイズへのスリット時、打ち抜き時、表面に凹凸形状を付与する際に割れや欠けなどが発生しやすくなり、従来のアクリルフィルムからなる導光板は、このような脆さに起因する強度不足が問題となっていた。
【0007】
アクリルフィルムとして、例えば、特許文献1には、アクリル樹脂系フィルムの耐衝撃性を改善する技術として、メチルメタクリレートを主成分とするアクリル樹脂と、多層構造を有するアクリル系エラストマーと、フッ化ビニリデンを主成分とするフッ素樹脂からなる耐衝撃性フィルムが開示されている。
【0008】
特許文献2には、ポリフッ化ビニリデンとポリメタクリル樹脂との混合物を主体とした光記録媒体用カバーフィルムが開示されている。
【特許文献1】特開平3−124754号公報
【特許文献2】特開昭61−78857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通常、アクリル樹脂とアクリル系エラストマー、フッ素樹脂を混合すると、マトリクスとエラストマーとの層の屈折率の差が大きくなり透過率が低下するため、特許文献1に記載のような技術ではアクリルフィルムの強度と透過率を高いレベルで両立することは困難であった。また、特許文献1には、長光路で使用した際の透過率について記載はない。
【0010】
特許文献2に記載されているようにポリフッ化ビニリデンとポリメタクリル樹脂を混合する技術では、強度を十分に高めるためには高価なポリフッ化ビニリデンを多量に使用する必要があり、コストが高くなるという問題があった。また、特許文献2に記載のフィルムは光記録媒体用カバーフィルムであり、長光路で使用した際の透過率について記載はない。
【0011】
本発明の目的は、透明性と強度が両立したアクリルフィルム、並びに薄型で高輝度の導光板およびバックライトユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、ゴム成分を含むアクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)とを混合してなる樹脂組成物(C)からなるアクリルフィルムであって、
アクリル樹脂(A)中のゴム成分の含有量が1〜45質量%の範囲にあり、
アクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)の質量比(A/B)が50/50〜99.9/0.1の範囲にあり、
前記アクリルフィルムの端面から光を入射させ、該端面に対向する反対側の端面から出射した光の輝度が、同条件で測定した前記アクリル樹脂(A)のみからなるフィルムの輝度以上となる、光学用アクリルフィルムが提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、前記アクリル樹脂(A)が、アクリル重合体(A−1)と、ゴム含有多段重合体(A−2)からなる請求項1に記載の光学用アクリルフィルムであって、溶媒可溶分と溶媒不溶分の屈折率差が0.005以下となる、上記の光学用アクリルフィルムが提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、上記のアクリルフィルムの両面又は片面に、凹凸形状を付与してなる導光板が提供される。
【0015】
本発明の他の態様によれば、上記の導光板が組み込まれたバックライトユニットが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、透明性と強度が両立したアクリルフィルムを得ることができ、このアクリルフィルムを用いることにより、薄型で高輝度の導光板およびバックライトユニットを低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態であるアクリルフィルムは、ゴム成分を含むアクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)とを含む樹脂組成物(C)からなる。このアクリルフィルムは、特に導光板用途に好適である。
【0018】
このアクリル樹脂(A)中のゴム成分の含有量は1〜45質量%の範囲にあることが好ましく、アクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)の質量比(A/B)は50/50〜99.9/0.1の範囲にあることが好ましい。
【0019】
このアクリルフィルムの端面(I)から光を入射させ、この端面に対向する反対側の端面(O)から出射した光の輝度をL1とし、同条件で測定した前記アクリル樹脂(A)のみからなるフィルムの輝度をL2とすると、これらのフィルムの輝度の比(L1/L2)は1以上となることが好ましく、1.01以上がより好ましく、1.05以上がさらに好ましい。後述するように、特に、膜厚が350μmであり、端面(I)から端面(O)の距離が20cmである、平面形状が方形のフィルムにおいて、上記の輝度の比(L1/L2)が得られることが好ましい。
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
〔アクリル樹脂(A)〕
本発明におけるゴム成分を含むアクリル樹脂(A)として、アクリル重合体(A−1)と、ゴム含有多段重合体(A−2)とを混合してなる樹脂が用いられる。ゴム含有多段重合体(A−2)自体がアクリル系重合体であれば、ゴム含有重合体(A−2)のみからなる樹脂を用いることも可能である。
【0022】
アクリル樹脂(A)のゴム含量は1〜45%であることが好ましい。ここでゴム含量とは、アクリル樹脂(A)100質量部中のゴム成分の割合(質量百分率)を示す。例えば、ゴム成分が60質量部及びグラフト成分が40質量部から構成されるゴム含有多段重合体(A−2)30質量部と、アクリル重合体(A−1)70質量部とからなるアクリル樹脂(A)の場合、そのゴム含量は、モノマー仕込み量と生成するポリマー量は同等とすると、以下の式:
ゴム含量(%)=30×0.6/(70+30)=18
より求めることができる。
【0023】
アクリル樹脂(A)中のゴム含量が少なすぎると強度の改善効果が小さく、逆にゴム含量が多すぎると透明性が低下するため好ましくない。強度の点から、ゴム含量は1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がより好ましく、透明性の点から、ゴム含量は45%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、25%以下がさらに好ましく、20%以下が特に好ましい。透明性と強度のバランスの点から、5〜25%の範囲内であることがより好ましく、10〜20%の範囲内であることが最も好ましい。
【0024】
アクリル重合体(A−1)とゴム含有多段重合体(A−2)との配合比は、上記のゴム含量が得られるように設定することができるが、アクリル重合体(A−1)44.5〜98質量%とゴム含有多段重合体(A−2)2〜45.5質量%の範囲が好ましい。
【0025】
〔アクリル重合体(A−1)〕
アクリル重合体(A−1)は、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルメタクリレート単位50〜100質量%、およびこれと共重合可能な他のビニル単量体単位0〜50質量%からなる重合体が好ましい。前記のアルキルメタクリレート単位の含有量は、アクリル重合体(A−1)の所望の特性を得る点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0026】
上記のアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0027】
ここで「重合体」とは、単独重合体又は共重合体を意味する。アクリル重合体が単独重合体の場合は、例えばポリメチルメタクリレートであり、共重合体の場合は、例えばメチルメタクリレートとメチルメタクリレート以外のビニル単量体との共重合体である。
【0028】
上記のアルキルメタクリレートと共重合可能な他のビニル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜4のアルキルメタクリレート(前記のアルキルメタクリレート以外のもの);フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等の芳香族メタクリレート;イソボルニルメタクリレート等の脂環式メタクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。
【0029】
これらの中でも、フッ素系樹脂(B)との相溶性、得られるフィルムの透明性、耐熱性、耐候性の観点から、メチルメタクリレートとアルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとの共重合体が好ましく、メチルメタクリレートとメチルアクリレートとの共重合体がより好ましい。この共重合体の組成は、メチルメタクリレート単位が80〜99質量%、アルキルアクリレート単位が1〜20質量%であることが好ましく、メチルメタクリレート単位90〜99質量%、アルキルアクリレート単位が1〜10質量%であることがより好ましい。
【0030】
アクリル重合体(A−1)の重量平均分子量は5万〜20万の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎると、良好な機械強度が得られなくなり、大きすぎると溶融成形が困難になる。この重量平均分子量は7万〜17万がより好ましく、8万〜12万がさらに好ましい。
【0031】
アクリル重合体(A−1)を得るための重合方法は、特に限定されるものではなく、通常の懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法等の各種方法が適用できるが、得られる樹脂の透明性に優れることから、懸濁重合法又は塊状重合法を用いることが好ましい。
【0032】
アクリル重合体(A−1)として、三菱レイヨン(株)製のダイヤナール(登録商標)BRシリーズ、三菱レイヨン(株)製のアクリペット(登録商標)シリーズを好適に用いることができ、工業的に入手可能である。
【0033】
〔ゴム含有多段重合体(A−2)〕
ゴム含有多段重合体(A−2)は、内側に1層以上のゴム層と外側にグラフト層を有する、いわゆるコアシェル型と呼ばれる積層構造をもつ、多段重合により形成されたグラフト重合体を用いることができる。
【0034】
このゴム層は、ガラス転移温度が25℃以下の重合体からなることが好ましい。ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して測定することができる。
【0035】
ゴム層を形成するゴム成分の種類は特に限定されないが、アルキルアクリレート系単量体、シリコーン系単量体、スチレン系単量体、ニトリル系単量体、共役ジエン系単量体、ウレタン結合を生成する単量体、エチレン系単量体、プロピレン系単量体、イソブテン系単量体などを重合させたものから形成されるゴムが挙げられる。
【0036】
ゴム層は、架橋剤による架橋結合が形成され、また、ゴム層と当該ゴム層と隣接する層との間に架橋剤による結合が形成されていてもよい。
【0037】
ゴム含有多段重合体(A−2)は、2層以上を有していればよく、3層以上または4層以上であってもよい。ゴム層は、内側のいずれの層を構成してもよく、1層または2層以上設けることができる。
【0038】
アクリルフィルムの屈折率は、溶媒可溶分と溶媒不溶分の屈折率差が絶対値で0.005以下となることが必要である。この屈折率差が大きすぎると、光学フィルムとして使用するにはフィルムヘーズが大きくなりすぎるため、0.003以下となることが最も好ましい。
【0039】
例えば、溶媒可溶分の屈折率が1.485ならば、溶媒不溶分の屈折率は1.480〜1.490であることが必要であり、1.482〜1.488の範囲であることが最も好ましい。
【0040】
溶媒可溶分および不溶分とは、アクリル樹脂(A−1)およびフッ素樹脂(B)の共通溶媒にアクリルフィルムを溶解させた後、遠心分離を行い、沈殿した成分を溶媒不溶分、それ以外を溶媒可溶分とする。
【0041】
共通溶媒はアクリル樹脂(A−1)とフッ素樹脂(B)単体を溶解させて遠心分離した際に沈殿物が無い状態となるかで判断すれば良い。
【0042】
アクリル樹脂(A−1)とフッ素樹脂(B)の共通溶媒としては、例えばアクリル樹脂(A−1)がポリメチルメタクリレート、フッ素樹脂(B)がポリフッ化ビニリデンの場合はN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドやなどが例示できる。
可溶成分と不溶成分を分離した後、それぞれプレス法などを用いて適宜フィルム化を行い、JIS K 7142に準拠して屈折率を測定する。
【0043】
本発明にいう各重合体の屈折率は、「POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION」に示された20℃又は25℃におけるホモポリマーの値(ポリメチルメタクリレート:1.490、ポリn−ブチルアクリレート:1.466、ポリスチレン:1.59、ポリメチルアクリレート:1.472、ポリフッ化ビニリデン:1.42)を基準として、組成重量割合に応じて加成則により計算することで予測することが出来る。
【0044】
屈折率を合わせることにより、得られるアクリルフィルムのヘーズが小さくなり、へーズに起因する輝度の低下を抑えることができるため、光学フィルムとして好適に用いることができる。
【0045】
ゴム含有多段重合体(A−2)の平均粒子径は0.01〜0.5μmの範囲にあることが好ましい。粒子径が大きすぎると光の散乱が起こりやすくなり、輝度が低下する傾向にある。そのため、平均粒子径は0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.15μm以下がさらに好ましい。逆に粒子径が小さすぎると、強度の改善効果が得られにくくなる。そのため、平均粒子径は0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。なお、本発明で、平均粒子径とは重合終了時のラテックスのポリマーから吸光度法により求められるものをいう。
【0046】
ゴム含有多段重合体(A−2)のゴム層の形成に使用される単量体としては、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレートが好ましく、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートがより好ましい。
【0047】
このアルキルアクリレートの使用量は、ゴム層を形成する単量体中、35質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。このような使用量にすることにより、形成されるアクリルフィルムが十分な伸度を持ち、成形や加工を容易に行うことができる。
【0048】
ゴム層の形成には、上記アルキルアクリレートと共重合可能な他のビニル単量体を併用してもよい。このビニル単量体の使用量は、65質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。このビニル単量体としては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のシクロアルキルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用できる。
【0049】
ゴム層の形成に使用される架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルシンナメート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用できる。
【0050】
架橋剤は、ゴム層を形成する単量体100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で使用することが好ましい。0.1質量部未満では、ゴム層にグラフトされる単量体量が極端に少なくなる。10質量部を超えて使用してもよいが、添加量に見合う効果は発現しない。より好ましい使用量の範囲は0.3〜7質量部である。
【0051】
ゴム層にグラフトされるグラフト成分は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜8のアルキルメタクリレート、シクロへキシルメタクリレート等のシクロアルキル基の炭素数が3〜8のシクロアルキルメタクリレートが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用できる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
【0052】
グラフト成分は、上記のメタクリレートと、当該メタクリレートと共重合可能な他のビニル単量体とを併用してもよい。このビニル単量体としては、メチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート;シクロヘキシルアクリレート等のシクロアルキル基の炭素数が3〜8のシクロアルキルアクリレート;スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のビニルシアン化合物などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用できる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートが好ましく、メチルアクリレートが特に好ましい。
【0053】
グラフト成分における前記メタクリレートの使用量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0054】
グラフト成分とゴム層を形成する成分(以下「ゴム形成成分」)との質量比は、ゴム形成成分(a)とグラフト成分(b)との合計に対して、ゴム形成成分が20〜91質量%、グラフト成分が9〜80質量%の範囲内であることが好ましく、ゴム形成成分33〜83質量%、グラフト成分17〜67質量%の範囲内であることがより好ましく、ゴム形成成分50〜80質量%、グラフト成分20〜50質量%の範囲内であることがさらに好ましい。すなわち質量比(a/b)が20/80〜91/9の範囲内が好ましく、33/67〜83/17の範囲内がより好ましく、50/50〜80/20の範囲内がさらに好ましい。なお、この質量比は、ゴム層が複数ある場合はその合計量、グラフト層が複数ある場合その合計量に基づく。
【0055】
ゴム含有多段重合体(A−2)は、通常の乳化重合によって調製することができる。
【0056】
この重合において、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を使用してもよい。連鎖移動剤は公知のものが使用でき、特にメルカプタン類が好ましい。連鎖移動剤の使用量は、ゲル含有量と重合体分子量の制御の観点から、単量体混合物全量100質量部に対して0.1〜3.0質量部の割合が好ましい。
【0057】
乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、およびノニオン系の界面活性剤が使用できるが、特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、ロジン石鹸、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩が好ましい。
【0058】
上記界面活性剤の好ましい具体例としては、三洋化成工業社製のNC−718、東邦化学工業社製のフォスファノールRS−610NA、フォスファノールLS−529、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA、フォスファノールRS−660NA、花王社製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406、ラテムルP−0407(以上いずれも商品名)等が挙げられる。
【0059】
乳化液を調製する方法としては、水中に単量体成分を仕込んだ後に界面活性剤を投入する方法、水中に界面活性剤を仕込んだ後に単量体成分を投入する方法、単量体成分中に界面活性剤を仕込んだ後に水を投入する方法等が挙げられる。これらのうち、水中に単量体成分を仕込んだ後に界面活性剤を投入する方法、および水中に界面活性剤を仕込んだ後に単量体成分を投入する方法が好ましい。
【0060】
乳化液を調製するための混合装置としては、攪拌翼を備えた攪拌機;ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置;膜乳化装置等が挙げられる。
【0061】
調製する乳化液としては、W/O型、O/W型のいずれの分散構造でもよいが、水中に単量体成分の油滴が分散したO/W型が好ましい。分散相の油滴の直径は100μm以下であることが好ましい。
【0062】
〔フッ素系樹脂(B)〕
フッ素系樹脂(B)は、アクリル重合体(A−1)との相溶性が十分に高いものを用いる。フッ素系樹脂(B)とアクリル重合体(A−1)との相溶性は、形成するフィルムの配合条件下、JIS K7121に準拠したガラス転移点の測定において、アクリル重合体(A−1)とフッ素系樹脂(B)に由来する2つのガラス転移点が検出されず、ガラス転移点が1つだけ検出される状態となることが好ましい。
【0063】
また、フッ素系樹脂(B)は、アクリル重合体(A−1)と形成するフィルムの配合条件下、JIS K7121に準拠した融解温度の測定において、フッ素系樹脂(B)の結晶構造に由来する融解ピークが全く観察されない状態となることが好ましい。
【0064】
フッ素系樹脂(B)としては、トリフルオロアルキルメタクリレート単独重合体、テトラフルオロアルキルメタクリレート単独重合体、ペンタフルオロアルキルメタクリレート単独重合体、オクタフルオロアルキルメタクリレート単独重合体、ヘプタデカフルオロアルキルメタクリレート単独重合体、フッ素化アルキルメタクリレート/アルキルメタクリレート共重合体などのフッ素化アルキルメタクリレート系重合体;トリフルオロアルキルα−フルオロアクリレート単独重合体、テトラフルオロアルキルα−フルオロアクリレート単独重合体、ペンタフルオロアルキルα−フルオロアクリレート単独重合体、オクタフルオロアルキルα−フルオロアクリレート単独重合体、ヘプタデカフルオロアルキルα−フルオロアクリレート単独重合体などのα−フルオロメタクリレート系重合体;フッ化ビニリデン単独重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体が挙げられ、これらの2種以上からなる混合物を用いてもよい。
【0065】
これらの中でも、アクリル重合体(A−1)とブレンドした際の透明性の点から、フッ化ビニリデン系重合体が好ましく、フッ化ビニリデン単独重合体がより好ましい。
【0066】
〔樹脂組成物(C)〕
本発明のアクリルフィルムは樹脂組成物(C)からなり、この樹脂組成物(C)はアクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)をブレンドすることにより形成することができる。
ブレンド方法としては、通常使用される方法を用いることが可能である。例えば、ヘンシェルミキサー等のミキサーで予備的に混合した後に、2軸押出機により溶融混練する方法が挙げられるが、この方法に限定されない。
【0067】
アクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)との混合比は、これらの合計を100質量部としたとき、アクリル樹脂(A)が50〜99.9質量部、フッ素系樹脂(B)が0.1〜50質量部、すなわち、混合比(A/B)が、50/50〜99.9/0.1の範囲にあることが必要である。
【0068】
フッ素系樹脂(B)のより十分な透明性向上効果を得る点から、フッ素系樹脂(B)の上記混合比は、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。すなわち、混合比(A/B)は、99/1以上であることがより好ましく、97/3以上であることがさらに好ましい。
【0069】
フッ素系樹脂(B)が多すぎると、フッ素系樹脂(B)の結晶化が起こりやすくなり、得られるアクリルフィルムが白濁し光線透過率が低下しやすくなる。また、一般的にフッ素系樹脂(B)は微黄色であり、フッ素系樹脂(B)の添加量が多くなると、得られるアクリルフィルムの黄色味が強くなる傾向にある。特にディスプレイ用途ではフィルムの黄色味は小さいことが望まれる。また、フッ素系樹脂(B)のガラス転移温度はアクリル樹脂(A)と比較すると低く、フッ素系樹脂(B)の添加量が多いと、得られるアクリルフィルムの耐熱性が低下する。さらに、一般的にはフッ素系樹脂(B)はアクリル樹脂(A)と比較すると非常に高価であり、フッ素系樹脂(B)の添加量を多くすると、コストが増加する。これらの観点から、フッ素樹脂(B)の上記混合比は、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。すなわち、混合比(A/B)は、70/30以下であることがより好ましく、80/20以下であることがさらに好ましく、90/10以下であることが特に好ましい。
【0070】
上記の事項を考慮すると、アクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)との混合比は、これらの合計を100質量部としたとき、アクリル樹脂(A)が50〜99質量部で、フッ素系樹脂(B)が1〜50質量部であることがより好ましく、アクリル樹脂(A)が70〜99質量部、フッ素系樹脂(B)が1〜30質量部であることがさらに好ましく、アクリル樹脂(A)が80〜97質量部、フッ素系樹脂(B)が3〜20質量部であることが特に好ましく、アクリル樹脂(A)が90〜97質量部、フッ素系樹脂(B)が3〜10質量部であることが最も好ましい。
【0071】
樹脂組成物(C)は、アクリルフィルムの耐熱性の点から、JIS K7121に準拠して測定した補外ガラス転移開始温度が70℃以上であることが好ましく、80℃以上がより好ましい。十分な耐熱性を有するアクリルフィルムを用いることにより、信頼性の高いディスプレイを提供することができる。
【0072】
〔アクリルフィルムの輝度〕
本発明におけるアクリルフィルムの輝度とは、アクリルフィルムの端面(I)から光を入射させ、この端面(I)に対向する端面(O)から出射した光の輝度のことを示す。
図1に、アクリルフィルムの輝度の測定方法を説明するための光の進行方法に沿った断面図を示す。図中の符号1はアクリルフィルム、符号2は反射シート、符号3は光源、符号4は端面(I)、符号5は端面(O)を示す。
【0073】
アクリルフィルムの輝度を測定する際、端面(I)から端面(O)までの距離は、携帯電話やゲーム機などの小型のディスプレイに用いられる導光板の長さを想定した場合、5cm以上であることが好ましい。さらに大きな画面に用いられることを想定した場合、10cm以上であることがより好ましく、20cm以上であることがさらに好ましい。端面(I)から端面(O)の距離が20cm以上であると、わずかな、光の吸収、散乱、反射などによる透過損失の差が大きな輝度差となって観察される。端面(I)から端面(O)の距離が長い場合でも高い輝度が得られるフィルムは、とりわけ長光路で使用される、導光板用途に好適である。
【0074】
〔助剤〕
本発明における樹脂組成物(C)は、輝度を損なわない程度に、助剤を添加することができる。具体的には、滑剤、可塑剤、抗菌剤、防カビ剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、熱安定剤等を添加してもよい。
【0075】
〔アクリルフィルムの厚さ〕
本発明のアクリルフィルムの厚さは500μm以下であることが好ましい。500μm以下の厚みであれば、特に、薄膜化の要請を満たし、薄型の導光板用途として好適に使用することができる。アクリルフィルムの厚みは、50〜500μmがより好ましく、50〜400μmがさらに好ましく、50〜350μmが特に好ましい。
【0076】
〔アクリルフィルムの成形方法〕
本発明のアクリルフィルムはTダイなどを用いた溶融押出法、又は溶液流延法を用いて成形することができる。これらの中でも効率よく安価に生産することができるため溶融押出法が好ましい。
【0077】
成形したアクリルフィルムは、紙管やプラスチックコア等のロールに巻いた状態や、一枚ずつ所定のサイズに切り抜く又は打ち抜いた状態とすることができる。転写型を用いて表面凹凸構造を有する導光板を生産する場合は、連続的に効率よく安価に生産することができるため、ロール状に巻いた状態とすることが好ましい。
【0078】
〔導光板〕
本発明の導光板は、本発明のアクリルフィルムの両面又は片面に、凹凸形状を付与した薄型導光板の形態をとることができる。
【0079】
凹凸形状を付与する方法としては、例えば、表面に凹凸形状を有する転写用型部材を用いて熱プレスする方法、アクリルフィルム表面に光硬化性樹脂組成物を塗布し、光硬化性樹脂組成物塗布層に転写用型部材の転写面の凹凸形状を転写する方法がある。また、印刷によってドット形状を付与してもよい。これら凹凸形状と凹凸形状を付与する方法は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。
【0080】
導光板の凹凸形状は、具体的には、マット構造、ドット形状、プリズム列配列構造などが挙げられる。本発明のアクリルフィルムは、連続的にこれらの形状を付与することができるために、生産性良く導光板を製造できる。
【0081】
本発明の導光板は、優れた透光特性を持ち、薄膜化の要請を満たすため、特に薄型液晶表示装置用導光板として好適に使用できる。
【0082】
〔バックライトユニット〕
本発明のバックライトユニットは、本発明の導光板を組み込んだことを特徴とするものであり、それ以外の構成は従来のバックライトユニットと同様のものを使用できる。例えば、導光板の側面(入射面)に光源(複数のLED等)を配置し、導光板の下面側には必要に応じて反射シートを積層するなどして、本発明の導光板を組み込んだバックライトユニットを作製すればよい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されることはない。
【0084】
以下の説明における化合物名の略号は下記のとおりである。
メチルメタクリレート :MMA、
メチルアクリレート :MA、
ブチルアクリレート :BA、
スチレン :St、
アリルメタクリレート :AMA、
t−ブチルハイドロパーオキサイド:tBH、
n−オクチルメルカプタン :nOM、
エチレンジアミン四酢酸 :EDTA、
乳化剤(1):モノ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸ナトリウム(商品名:フォスファノールRS−610NA、東邦化学工業(株)製)。
実施例における測定方法について以下に示す。
【0085】
〔アクリルフィルムの全光線透過率〕
得られた平均厚み350μmのアクリルフィルムを5cm角に切り出し、JIS K7361−1に準拠して、日本電色工業(株)製のNDH2000を用いて測定した。
【0086】
〔アクリルフィルムのヘーズ〕
得られた平均厚み350μmのアクリルフィルムを5cm角に切り出し、JIS K7136に準拠して、日本電色工業(株)製のNDH2000を用いて測定した。
【0087】
〔アクリルフィルムの輝度〕
光源として、厚み450μmのLEDランプ(日亜化学製 NSCW335)20個を設置した基盤上に、(株)麗光製の反射シート1枚を設置し、その上にアクリルフィルムを設置し、さらにその上に反射シート1枚を設置した(図1参照)。アクリルフィルムは、平面形状を方形とし、そのサイズは縦20cm、横5cmとし、膜厚350μmとした。端面(I)から端面(O)までの距離は20cmである。なお、端面(I)と端面(O)は、回転式研磨機(笠井商工株式会社製 AP−120)を使用し、#1200の研磨紙を用いて、表面を研磨した。
【0088】
端面(O)から1mの位置に、コニカミノルタ製の輝度計CS−100Aを設置して、端面(I)から光を透過させ、端面(O)から出射した光の輝度を測定した。
【0089】
〔アクリルフィルムの破断伸度〕
得られた平均厚み350μmのアクリルフィルムを、株式会社ダンベル製スーパーダンベルカッター(商品名:SDK−100D)を用いてダンベル1号型に打ち抜き、引張速度50mm/minで5回引張試験を室温で行った。その際にシートが破断した時点の伸度の平均を破断伸度とした。
【0090】
〔溶媒に可溶な成分の屈折率と不溶な成分の分離、および屈折率の測定〕
得られた平均厚み350μmのアクリルフィルムをN,N−ジメチルアセトアミドへ溶解させ、還流下で6時間抽出処理した。次いで、抽出処理液を雰囲気温度4℃、14000rpmで30分間遠心分離することによって溶媒不溶分と溶媒可溶分に分別した。
【0091】
分離した溶媒可溶分はヘキサン溶媒を用いて、再沈殿法によって回収した。可溶分はそのまま濾過を行うことで回収した。可溶分と不溶分をそれぞれ220℃でプレスを行い、室温まで急冷することで、厚さ0.2mmのシートを作成し、それぞれ縦20mm、横10mmのサンプル片とした。
【0092】
得られたサンプル片の屈折率をJIS K 7142に準拠し、アッベ屈折計(NAR−2:株式会社アタゴ製)、接触液には1−ブロモナフタレンを用いて測定した。

以下に、アクリルフィルムの原料の調製方法、並びにアクリルフィルムの実施例および比較例について説明する。

〔合成例1〕ゴム含有多段重合体(A−2−イ)の合成
冷却器付き反応容器内に、イオン交換水142.5質量部、炭酸ナトリウム0.02質量部、乳化剤(1)0.1質量部を投入し、80℃に昇温した。
【0093】
次いで、イオン交換水5質量部、硫酸第一鉄0.0001質量部、EDTA0.0002質量部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3質量部を加えて5分間保持した。
【0094】
次いで、ST11.5質量部、BA51質量部、AMA0.56質量部、tBH0.19質量部、乳化剤(1)0.79質量部を120分間かけて滴下した後、60分間反応を継続させて最内重合体を得た。
【0095】
次いで、イオン交換水2.5質量部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.075質量部を投入し、20分間保持した後、MMA35.6質量部、MA1.9質量部、tBH0.06質量部、nOM0.17質量部、乳化剤(1)0.25質量部を90分間かけて滴下し60分間反応を継続させて最外層重合体を形成して、多層構造を有するゴム含有多段重合体(A−2−イ)のラテックスを得た。
【0096】
ゴム含有多段重合体(A−2−イ)のラテックスを、酢酸カルシウム3質量部含有する水溶液中に投入してゴム含有多段重合体(A−2−イ)を塩析させ、水洗し、分離回収した後、乾燥して、粉体状のゴム含有多段重合体(A−2−イ)を得た。
【0097】
得られたゴム含有多段重合体(A−2−イ)のラテックスのポリマー粒子径を、紫外可視分光光度計(島津製作所UVmini−1240)を用いて吸光度法により測定した結果、0.12μmであった。なお、ゴム含有多段重合体(A−2−イ)のゴム含量は62.5質量%である。
【0098】
〔合成例2〕ゴム含有多段重合体(A−2−ロ)の合成
ST5質量部、BA57.5質量部とした以外は合成例1と同様にしてゴム含有多段重合体(A−2−ロ)を得た。
【0099】
〔合成例3〕ゴム含有多段重合体(A−2−ハ)の合成
ST1.2質量部、BA61.3質量部とした以外は合成例1と同様にしてゴム含有多段重合体(A−2−ハ)を得た。
【0100】
〔アクリル重合体(A−1)〕
アクリル重合体(A−1)としては、三菱レイヨン(株)製のアクリル樹脂(商品名:ダイヤナールBR80)を用いた。
【0101】
〔フッ素系樹脂(B)〕
フッ素系樹脂(B−1−イ)としては、(株)クレハ製のフッ化ビニリデン単独重合体(商品名:クレハKFポリマーT#1000)を用いた。
フッ素系樹脂(B−1−ロ)としては、アルケマ(株)製のフッ化ビニリデン単独重合体(商品名:Kynar720)を用いた。
【0102】
〔実施例1〕
ゴム含有多段重合体(A−2−イ)30質量部、アクリル重合体(A−1)70質量部からなるアクリル樹脂(A)(ゴム含量は18.8%である。)95質量部とフッ素系樹脂(B−1−イ)を5質量部、ヘンシェルミキサーで混合し、得られた混合物を200〜240℃に加熱したベント式2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−35B)に供給、混練してペレットを得た。
【0103】
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、この乾燥ペレットを、15cm幅のTダイを取り付けた30mmφのノンベントスクリュー型押出機に供給して、押出機温度200〜240℃、Tダイ温度240℃、冷却ロール温度95℃で製膜を行い、厚さ350μmのアクリルフィルムを作製した。このアクリルフィルムの輝度、全光線透過率、ヘーズ、破断伸度を表1に示す。このアクリルフィルムの溶媒可溶分と溶媒不溶分の屈折率差は0.003だった。
【0104】
〔比較例1〕
ゴム含有多段重合体(A−2−イ)を30質量部、アクリル重合体(A−1)を70質量部からアクリル樹脂(A)を調製し、フッ素系樹脂(B)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして厚さ350μmのアクリルフィルムを作製した。このアクリルフィルムの輝度、全光線透過率、ヘーズ、破断伸度を表1に示す。
【0105】
〔比較例2〕
ゴム含有多段重合体(A−2−イ)を20質量部、アクリル重合体(A−1)を80質量部のみからアクリル樹脂(A)を調製した以外は、実施例1と同様にして厚さ350μmのアクリルフィルムを作製した。
【0106】
〔実施例2〕
ゴム含有多段重合体(A−2−ロ)20質量部、アクリル重合体(A−1)64質量部からなるアクリル樹脂(A)(ゴム含量は14.9%である。)84質量部とフッ素系樹脂(B−1−ロ)を16質量部とした以外は実施例1と同様にして厚さ350μmのアクリルフィルムを作製した。なお、このアクリルフィルムの溶媒可溶分と溶媒不溶分の屈折率差は0だった。
【0107】
〔実施例3〕
ゴム含有多段重合体(A−2−ハ)20質量部、アクリル重合体(A−1)56質量部からなるアクリル樹脂(A)(ゴム含量は15.6%である。)76質量部とフッ素系樹脂(B−1−ロ)を24質量部とした以外は実施例1と同様にして厚さ350μmのアクリルフィルムを作製した。なお、このアクリルフィルムの溶媒可溶分と溶媒不溶分の屈折率差は0だった。
【0108】
〔比較例3〕
実施例2において、ゴム含有多段共重合体の種類を(A−2−イ)とした以外は同様にして厚さ350μmのアクリルフィルムを製作した。なお、なお、このアクリルフィルムの溶媒可溶分と溶媒不溶分の屈折率差は0.012でだった。このアクリルフィルムの輝度を測定したところ散乱が著しく生じ、端面の輝度はゼロであった。

これらの結果から、特定のアクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)を特定の組成で配合することにより、アクリル樹脂(A)のみからなるアクリルフィルムと比較すると、透光損失が抑えられ、端面(ロ)の輝度が向上したフィルムが得られることがわかる。
【0109】
比較例3より、溶媒可溶分と不溶分の屈折率差が大きい場合には光の散乱が大きくなり、端面(ロ)の輝度が低下することが分かる
【0110】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明により提供されたアクリルフィルムは、薄型の液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイ、携帯電話ディスプレイ、携帯電話キーパッド照明、パソコンキーボード照明、その他看板などに用いられる導光板に適用できる。
【0112】
また、導光板用途の他に、電気・電子部品、光学フィルター、自動車部品、機械機構部品、OA機器・家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など、透明性が要求される種々の分野に適用可能である。具体的には、フレネルレンズ、偏光フィルム、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、マイクロレンズアレイ、タッチパネル用導電フィルム、道路標識などに用いられる反射材などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】アクリルフィルムの輝度の測定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0114】
1 アクリルフィルム
2 反射シート
3 光源
4 端面(I)
5 端面(O)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分を含むアクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)とを混合してなる樹脂組成物(C)からなるアクリルフィルムであって、
アクリル樹脂(A)中のゴム成分の含有量が1〜45質量%の範囲にあり、
アクリル樹脂(A)とフッ素系樹脂(B)の質量比(A/B)が50/50〜99.9/0.1の範囲にあり、
前記アクリルフィルムの端面から光を入射させ、該端面に対向する反対側の端面から出射した光の輝度が、同条件で測定した前記アクリル樹脂(A)のみからなるフィルムの輝度以上となる、光学用アクリルフィルム。
【請求項2】
前記アクリル樹脂(A)が、アクリル重合体(A−1)と、ゴム含有多段重合体(A−2)からなる請求項1に記載の光学用アクリルフィルムであって、溶媒可溶分と溶媒不溶分の屈折率差が0.005以下となるアクリルフィルム。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載のアクリルフィルムの両面又は片面に凹凸形状を付与してなる導光板。
【請求項4】
請求項3に記載の導光板が組み込まれたバックライトユニット。

【図1】
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【公開番号】特開2010−95712(P2010−95712A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213469(P2009−213469)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】