説明

光学用有機無機複合材料、光学用有機無機複合材料の製造方法、及び光学素子

【課題】本発明の目的は、低コストで製造可能なプラスチック製の光学素子でありながら、優れた耐熱性及び透明性を有し、かつ低線膨張率、低吸水率の優れた光学的安定性を有する光学用有機無機複合材料、光学用有機無機複合材料の製造方法、及びそれを用いて形成された光学素子を提供することにある。
【解決手段】硬化性樹脂組成物と、平均一次粒子径が1〜30nmである疎水性無機微粒子とを混練装置を用いて混合する工程と、この混合物を熱または活性光線で硬化させる工程とを有する光学用有機無機複合材料の製造方法において、前記硬化性樹脂組成物と前記疎水性無機微粒子を混合する工程における単位質量当りの混練トルク最大値Mが0.1≦M≦10Nm/gであることを特徴とする光学用有機無機複合材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用有機無機複合材料、光学用有機無機複合材料の製造方法、及び光学素子に関し、より詳しくは優れた耐熱性及び透明性を有し、かつ低線膨張率、低吸水率の光学用有機無機複合材料、光学用有機無機複合材料の製造方法、及びそれを用いた光学素子に関する。
【0002】
本発明の光学素子を用いることで、従来と比較して高精度な撮像光学系、撮像モジュール、光ピックアップ装置用光学系、光ピックアップ装置、電子モジュールを提供することが可能である。
【背景技術】
【0003】
一般的に、光を透過させて所望の光学的機能を達成する光学素子としては、ガラス製やプラスチック製の光学素子が用いられている。光学素子としては、様々な光学機器に用いられる光学レンズや補正素子等が挙げられる。例えば、銀塩カメラやデジタルカメラ、医療用撮影装置等の撮像装置に用いられる撮像光学系や、光ピックアップ装置の光学系、光通信モジュール等に用いられる光学素子などが挙げられる。
【0004】
特にプラスチック製の光学素子は、射出成形や押し出し成形等により成形可能であり、また、比較的低温度で成形可能である為、ガラス製の光学素子よりも低コストで製造可能である為、ガラス製の光学素子と置き換えることが可能なプラスチック製の光学素子が強く望まれている。
【0005】
従来、撮像光学系や光ピックアップ装置の光学系に用いられる光学素子としては、熱可塑性樹脂を用いた光学素子が広く知られている。例えば、光ピックアップ装置の光学素子に適用可能な熱可塑性樹脂として、環状オレフィンとαオレフィンの共重合体が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、熱可塑性樹脂を用いた光学素子は、ガラス製の光学素子と比較して耐熱性が低く、高温下にさらされたときに光学性能に変動が発生する場合がある為、高い光学精度が求められる撮像光学系用の光学素子や光ピックアップ装置の光学系用光学素子として用いられる場合には問題となる場合があった。更に、撮像光学系は撮影環境によって様々な環境にさらされる可能性があり、光ピックアップ装置は、トラッキングやフォーカシングの為の装置の駆動により熱が発生し、光学素子が高温にさらされることとなる場合があり、更に高い耐熱性が求められてきた。
【0006】
上述の理由により、熱可塑性樹脂に変わって硬化性樹脂を用いた光学素子の検討を行い、熱可塑性樹脂と比較して、優れた耐熱性を示すことが判明した。硬化性樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂や活性光線硬化性樹脂等が知られている。しかしながら、硬化性樹脂は硬化時の硬化収縮が大きい、線膨張率が大きいために温度による屈折率変動が大きい、等、撮像光学系や光ピックアップ装置の光学系等、高精度な光学性能が求められる光学素子に適用するためには課題があることが判明した。
【0007】
上記の課題を解決する手段の1つとして、硬化性樹脂中に無機微粒子を分散した光学素子が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献2には、金属酸化物微粒子と、金属酸化物微粒子と重合可能な不飽和結合を有する有機化合物とを含む光学材料用組成物を硬化させたことを特徴とする光学素子が提案されている。また、特許文献3には、半導体結晶のコアと金属酸化物のシェルからなる、数平均粒径1〜50nmのコアシェル型半導体超微粒子を含有する硬化性の樹脂組成物が提案されている。
【0009】
しかしながら、ここで開示された手段では、必要とされる透明性や低吸水性をすべて満足することはできず、高精度な光学性能が求められる光学素子に適用可能な材料を提供することはできない。
【特許文献1】特開2002−105131号公報(第4頁)
【特許文献2】特開2005−3772号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2003−155415号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、低コストで製造可能なプラスチック製の光学素子でありながら、優れた耐熱性及び透明性を有し、かつ低線膨張率、低吸水率の優れた光学的安定性を有する光学用有機無機複合材料、光学用有機無機複合材料の製造方法、及びそれを用いて形成された光学素子を提供することにある。
【0011】
加えて本発明の光学素子を用いて、従来と比較して高精度な撮像光学系、撮像モジュール、光ピックアップ装置用光学系、光ピックアップ装置、電子モジュール及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0013】
1.硬化性樹脂組成物と、平均一次粒子径が1〜30nmである疎水性無機微粒子とを混練装置を用いて混合する工程と、この混合物を熱または活性光線で硬化させる工程とを有する光学用有機無機複合材料の製造方法において、前記硬化性樹脂組成物と前記疎水性無機微粒子を混合する工程における単位質量当りの混練トルク最大値Mが0.1≦M≦10Nm/gであることを特徴とする光学用有機無機複合材料の製造方法。
【0014】
2.前記光学用有機無機複合材料中に占める前記疎水性無機微粒子の体積分率をΦと規定した時、該体積分率Φが0.2≦Φ≦0.6であることを特徴とする前記1に記載の光学用有機無機複合材料の製造方法。
【0015】
3.前記1または2に記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする光学用有機無機複合材料。
【0016】
4.前記3に記載の光学用有機無機複合材料の吸水率が、0.7質量%以下であることを特徴とする光学用有機無機複合材料。
【0017】
5.前記3または4に記載の光学用有機無機複合材料を用いたことを特徴とする光学素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、低コストで製造可能なプラスチック製の光学素子でありながら、優れた耐熱性及び透明性を有し、かつ低線膨張率、低吸水率の優れた光学的安定性を有する光学用有機無機複合材料、光学用有機無機複合材料の製造方法、及びそれを用いて形成された光学素子を提供することができる。
【0019】
本発明の光学素子を用いることで、従来と比較して高精度な撮像光学系、撮像モジュール、光ピックアップ装置用光学系、光ピックアップ装置、電子モジュールを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
始めに、光学用有機無機複合材料を構成する(1)硬化性樹脂組成物、(2)疎水性無機微粒子についてそれぞれ説明し、その後に(3)製造方法、(4)適用例についてそれぞれ説明する。
(1)硬化性樹脂組成物
当該硬化性樹脂組成物には、紫外線や電子線等の活性光線の照射を受けて硬化する活性光線硬化性樹脂を用いてもよいし、加熱処理によって硬化する熱硬化性樹脂を用いてもよい。例えば下記(1.1)〜(1.4)に列記したような種類の樹脂を好ましく使用することができる。
【0022】
また、当該硬化性樹脂組成物には、適宜、重合開始剤、架橋剤、各種添加剤が含まれ、添加剤については、格別限定はないが、主には、酸化防止剤、耐光安定剤等が挙げられる。
【0023】
本発明に係る光学用有機無機複合材料の吸水率は、屈折率、およびその温度依存性に大きく影響することから、当該硬化性樹脂組成物の硬化後の吸水率は、低いことが好ましい。具体的には0.7質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
(1.1)シリコーン樹脂
Si−O−Siを主鎖としたシロキサン結合を有するシリコーン樹脂を使用することができる。当該シリコーン樹脂として、所定量のポリオルガノシロキサン樹脂よりなるシリコーン系樹脂が使用可能である(例えば、特開平6−9937号公報参照)。
【0025】
熱硬化性のポリオルガノシロキサン樹脂は、加熱による連続的加水分解−脱水縮合反応によって、シロキサン結合骨格による三次元網状構造となるものであれば、特に制限はなく、一般に高温、長時間の加熱で硬化性を示し、一度硬化すると過熱により再軟化し難い性質を有する。
【0026】
このようなポリオルガノシロキサン樹脂は、下記一般式(A)が構成単位として含まれ、その形状は鎖状、環状、網状形状のいずれであってもよい。
【0027】
((R1)(R2)SiO)n … (A)
上記一般式(A)中、「R1」及び「R2」は同種又は異種の置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示す。具体的には、「R1」及び「R2」として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換した基、例えばクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基、γ−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが例示される。「R1」及び「R2」は水酸基およびアルコキシ基から選択される基であってもよい。また、上記一般式(A)中、「n」は50以上の整数を示す。
【0028】
ポリオルガノシロキサン樹脂は、通常、トルエン、キシレン、石油系溶剤のような炭化水素系溶剤、またはこれらと極性溶剤との混合物に溶解して用いられる。また、相互に溶解しあう範囲で、組成の異なるものを配合して用いても良い。
【0029】
ポリオルガノシロキサン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、オルガノハロゲノシランの一種または二種以上の混合物を加水分解ないしアルコリシスすることによって得ることができ、ポリオルガノシロキサン樹脂は、一般にシラノール基またはアルコキシ基等の加水分解性基を含有し、これらの基をシラノール基に換算して1〜10質量%含有する。
【0030】
これらの反応は、オルガノハロゲノシランを溶融しうる溶媒の存在下に行うのが一般的である。また、分子鎖末端に水酸基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンを、オルガノトリクロロシランと共加水分解して、ブロック共重合体を合成する方法によっても得ることができる。このようにして得られるポリオルガノシロキサン樹脂は一般に残存するHClを含むが、本実施形態の組成物においては、保存安定性が良好なことから、10ppm以下、好ましくは1ppm以下のものを使用するのが良い。
【0031】
(1.2)エポキシ樹脂
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’−4’−シクロヘキシルカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂(国際公開第2004/031257号パンフレット参照)を使用することができ、その他、スピロ環を含有したエポキシ樹脂や鎖状脂肪族エポキシ樹脂等も使用することができる。
【0032】
(1.3)アダマンタン骨格を有する硬化性樹脂
2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート(特開2002−193883号公報参照)、3,3’−ジアルコキシカルボニル−1,1’ビアダマンタン(特開2001−253835号公報参照)、1,1’−ビアダマンタン化合物(米国特許第3342880号明細書参照)、テトラアダマンタン(特開2006−169177号公報参照)、2−アルキル−2−ヒドロキシアダマンタン、2−アルキレンアダマンタン、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−tert−ブチル等の芳香環を有しないアダマンタン骨格を有する硬化性樹脂(特開2001−322950号公報参照)、ビス(ヒドロキシフェニル)アダマンタン類やビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン(特開平11−35522号公報、特開平10−130371号公報参照)等を使用することができる。
【0033】
(1.4)アリルエステル化合物を含有する樹脂
芳香環を含まない臭素含有(メタ)アリルエステル(特開2003−66201号公報参照)、アリル(メタ)アクリレート(特開平5−286896号公報参照)、アリルエステル樹脂(特開平5−286896号公報、特開2003−66201号公報参照)、アクリル酸エステルとエポキシ基含有不飽和化合物の共重合化合物(特開2003−128725号公報参照)、アクリレート化合物(特開2003−147072号公報参照)、アクリルエステル化合物(特開2005−2064号公報参照)等を好ましく用いることができる。
【0034】
(2)疎水性無機微粒子
本発明でいう疎水性無機微粒子は、無機微粒子の表面に対し、後述する疎水化表面処理を施した無機微粒子である。本発明において用いられる無機微粒子としては、酸化物微粒子、金属塩微粒子、半導体微粒子などが挙げられるが、特に酸化物微粒子が好ましく用いられる。これらの中から、光学素子として使用する波長領域において吸収、発光、蛍光等が生じないものを適宜選択して使用することができる。
【0035】
本発明において好ましく用いられる酸化物微粒子としては、金属酸化物を構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属である金属酸化物を用いることができ、具体的には、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl24)等が挙げられる。また、本発明において用いられる酸化物微粒子として希土類酸化物を用いることもでき、具体的には酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等も挙げられる。金属塩微粒子としては、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられ、具体的には炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0036】
本発明において、2種類以上の金属酸化物が複合化した複合酸化物微粒子は特に好ましく用いられ、その中でもシリカとケイ素以外の1種類以上の金属酸化物とが複合化した複合酸化物微粒子がさらに好ましく用いられる。
【0037】
上記の微粒子は、1種類の無機微粒子を用いてもよく、また複数種類の無機微粒子を併用してもよい。異なる性質を有する複数種類の微粒子を用いることで、必要とされる特性を更に効率よく向上させることもできる。
【0038】
また、本発明に係る疎水性無機微粒子は、平均一次粒子径が1nm以上、30nm以下であり、1nm以上、20nm以下が好ましく、さらに好ましくは1nm以上、10nm以下である。平均一次粒子径が1nm未満の場合、疎水性無機微粒子の分散が困難になり所望の性能が得られない恐れがあることから、平均一次粒子径は1nm以上であることが好ましく、また平均一次粒子径が30nmを超えると、得られる熱可塑性材料組成物が濁るなどして透明性が低下し、光線透過率が70%未満となる恐れがあることから、平均一次粒子径は30nm以下であることが好ましい。ここでいう平均一次粒子径は各粒子を同体積の球に換算した時の直径(球換算粒径)の体積平均値を言う。
【0039】
さらに、疎水性無機微粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状の微粒子が好適に用いられる。具体的には、粒子の最小径(微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最小値)/最大径(微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最大値)が0.5〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることが更に好ましい。
【0040】
また、粒子径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。
【0041】
本発明における疎水性無機微粒子の疎水化表面処理の方法としてはカップリング剤等の表面修飾剤による表面処理などが挙げられ、無機微粒子を表面修飾剤が溶解した溶液中で処理する湿式法、無機微粒子の粉体をヘンセルミキサーやV型ミキサーのような高速攪拌混合機の中で攪拌し、そこに表面修飾剤の溶液を滴下し反応させる乾式法等が挙げられる。
【0042】
無機微粒子の表面処理に用いられる表面修飾剤としては、シラン系カップリング剤を始め、シリコーンオイル系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。これらは特に限定されるものではないが、無機微粒子及び樹脂の種類により適宜選択することが可能である。
【0043】
上記シラン系カップリング剤としては、ビニルシラザントリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられ、無機微粒子の表面を広く覆うためにヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
【0044】
上記シリコーンオイル系カップリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイルや、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル及びフッ素変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルを用いることが可能である。
【0045】
これらの表面処理剤はヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、水等で適宜希釈して用いられてもよい。
【0046】
これらの表面修飾剤は、1種類のみが用いられてもよいし、複数種類が併用されてもよい。表面修飾の割合は、特に限定されるものではないが、表面修飾後の疎水性無機微粒子に対して、表面修飾剤の割合が10〜99質量%の範囲であることが好ましく、30〜98質量%の範囲であることがより好ましい。
【0047】
本発明における疎水性無機微粒子は、吸水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0048】
(3)製造方法
本発明に係る光学用有機無機複合材料の製造方法は、硬化性樹脂組成物と疎水性無機微粒子とを混合する工程を有し、その工程において、前記硬化性樹脂組成物と前記疎水性無機微粒子を混練装置を用いて混合し、その際の単位質量当りの混練トルク最大値Mが、下記式(1)の条件を満たしていることを特徴とする。
【0049】
0.1≦M≦10Nm/g … (1)
硬化性樹脂組成物と疎水性無機微粒子とを混練装置を用いて混練し、その際、混練に要するトルクをパラメータとし、単位質量あたりの混練トルク最大値Mを上記(1)の条件を満たす特定の範囲に制御することにより、硬化性樹脂組成物中に疎水性無機微粒子が均一に分散し、疎水性無機微粒子の凝集が少なく、高い透明性が得られることが判明した。
【0050】
混練トルク最大値Mを0.1Nm/g以上とするのは、疎水性無機微粒子の分散状態をより均一にできるからであり、10Nm/g以下とするのは、混練時の発熱による疎水性無機微粒子の凝集や硬化性樹脂組成物の劣化を抑制することができるからである。特に、熱硬化性樹脂を用いた場合、発熱による温度上昇で、部分的に硬化が進んでしまうことが懸念されて好ましくない。混練トルク最大値Mは、ミキサーの回転数、粒子の充填率を最適化することにより、制御することができる。
【0051】
本発明において用いることのできる混練装置としては、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式混練装置またはバッチ式混練装置を挙げることができる。また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いて製造することもできる。
【0052】
本発明に係る光学用有機無機複合材料の製造方法において、硬化性樹脂組成物と疎水性無機微粒子とを混練装置を用いて混合する前に、あらかじめ硬化性樹脂組成物と疎水性無機微粒子とを混合しておくことが好ましい。混練前に行う混合は、乳鉢等で混ぜ合わせても良いし、自転公転式ミキサー、ディゾルバーミキサー等を用いることも可能である。混練前に混合を行うことで、混練時により均一にトルクがかかる、混練時の発熱を抑えられる等の利点がある。
【0053】
本発明において、疎水性無機微粒子は粉体の状態で硬化性樹脂組成物と混合してもよいし、硬化性樹脂組成物が溶解可能な溶剤中に分散した疎水性無機微粒子の分散液と、硬化性樹脂組成物を混合し、十分に脱揮して溶剤を取り除いたものを混練しても良い。しかしながら、一般的に粒子作製後に乾燥・焼成工程を経ていない無機微粒子粉体は、吸水率が高く、このような粒子を用いて有機無機複合材料を作製した場合に、作製された光学素子の吸水率も高くなって、その光学性能に悪影響を及ぼす。従って、本発明において、疎水性無機微粒子は、硬化性樹脂組成物と混合する前に、乾燥・焼成工程を経ていることが好ましく、その温度は120℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることがさらに好ましい。乾燥・焼成工程は疎水化処理の前後どちらに行っても良い。
【0054】
液相中に分散した疎水性無機微粒子を取り出して、乾燥・焼成を行う場合に適用できる装置としては、ヒーター加熱を用いた焼成炉、マイクロ波加熱乾燥装置、超臨界乾燥装置などが挙げられる。また、疎水性無機微粒子の分散液を液滴化することで乾燥効率をあげ、溶媒の残留を抑制することができることから、スプレー式やディスク式、超音波噴霧方式を適用することが好ましい。この際、粒子の凝集を抑制するために、分散剤存在下で疎水性無機微粒子を分散し、分散剤が残留しない温度で乾燥・焼成工程を行うことがより好ましい。
【0055】
本発明に係る光学用有機無機複合材料の製造方法において、当該有機無機複合材料中に占める前記疎水性無機微粒子の体積分率をΦと規定した時、前記体積分率Φが0.2≦Φ≦0.6であることが好ましい。
【0056】
疎水性無機微粒子の含有量が少ない場合、本発明の目的である硬化収縮や線膨張率を低減する効果が小さくなる可能性があることから、光学用有機無機複合材料中に占める疎水性無機微粒子の体積分率Φは0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
【0057】
他方、疎水性無機微粒子の含有率が高い場合、疎水性無機微粒子の硬化性樹脂組成物への添加が難しくなったり、混合物の粘度が高くなり、単位質量当りの混練トルク最大値Mが20Nm/gより大きくなったりすることから、Φが0.6以下が好ましく、0.5以下であることがより好ましい。
【0058】
なお、光学用有機無機複合材料中に占める疎水性無機微粒子の体積分率Φは、Φ=(光学用有機無機複合材料中の疎水性無機微粒子の総体積)/(光学用有機無機複合材料の体積)によって算出されるものである。
【0059】
上記の方法により得られた混練物を型等に注入し、熱または紫外線や電子線などの活性光線で硬化させることにより、本発明に係る光学用有機無機複合材料から構成される光学素子を作製することができる。成形方法は特に限定されず、硬化性樹脂が紫外線及び電子線硬化性樹脂の場合は、透光性の所定形状の金型等に樹脂組成物を充填、あるいは基板上に塗布した後、紫外線及び電子線を照射して硬化させればよく、一方、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等により硬化成形することができる。
【0060】
(4)適用例
本発明に係る光学用有機無機複合材料の成形物は光学素子等に適用可能である。成形物としては、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、各種光学素子への適用が好適である。
【0061】
具体的な適用例としては、光学レンズや、光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズ等のレンズ;眼鏡レンズ等の全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)等の光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズ等のレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズ等が挙げられる。
【0062】
その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム等の光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板等が挙げられる。
【0063】
上述した成形物の中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズや、レーザ走査系レンズ、カメラの撮像系レンズ等の光学素子として用いられるのが好適である。
【0064】
以下、撮像装置、及び光ピックアップレンズへの適用例について図を示して説明する。
【0065】
(撮像装置)
図1で示される電子モジュールとしての撮像装置1Aは、携帯電話などの移動情報端末機器の電子回路を構成する電子部品が実装される回路基板1を有しており、回路基板1には撮像モジュール2が実装されている。撮像モジュール2はCCDイメージセンサとレンズを組み合わせた小型の基板実装用カメラであり、電子部品が実装された回路基板1をカバーケース3内に組み込んだ完成状態では、カバーケース3に設けられた撮像用開口4を介して撮像対象の画像取込ができるようになっている。なお、図2では、撮像モジュール2の電子部品以外の電子部品の図示を省略している。
【0066】
図2に示す通り、撮像モジュール2は基板モジュール5(図3(a)参照)とレンズモジュール6(図3(a)参照)より構成され、基板モジュール5を回路基板1に実装することにより、撮像モジュール2全体が回路基板1に実装される。基板モジュール5は、撮像用の電子部品であるCCDイメージセンサ11をサブ基板10上に実装した受光モジュールであり、CCDイメージセンサ11上面は樹脂12で封止されている。
【0067】
CCDイメージセンサ11の上面には、光電変換を行う画素が多数格子状に配列された受光部(図示略)が形成されており、この受光部に光学画像を結像させることにより各画素に蓄電された電荷を画像信号として出力する。サブ基板10は導電性材料18によって回路基板1に実装され、これによりサブ基板10が回路基板1に固定されるとともに、サブ基板10の接続用電極(図示略)と回路基板1上面の回路電極(図示略)とが電気的に導通する。
【0068】
レンズモジュール6はレンズ16を支持するレンズケース15を備えている。レンズケース15の上部にはレンズ16が保持されており、レンズケース15の上部はレンズ16を保持するホルダ部15aとなっている。レンズケース15の下部はサブ基板10に設けられた装着孔10a内に挿通されてレンズモジュール6をサブ基板10に固定する装着部15bとなっている。この固定には、装着部15bを装着孔10aに圧入して固定する方法や、接着材によって接着する方法などが用いられる。
【0069】
レンズ16は撮像光学系に用いられる撮像素子(光学素子)であり、本発明の光学用有機無機複合材料を用いて成形された光学素子である。
【0070】
続いて、図3を参照しながら、電子モジュールとしての撮像装置1Aの製造方法について説明する。
【0071】
始めに、基板モジュール5とレンズモジュール6とを組み立て、図3(a)に示す通り、レンズケース15内に予め装着されたカラー部材17の下端部がサブ基板10の上面に当接するまでレンズケース15の装着部15bをサブ基板10の装着孔10aに挿通・固定し、撮像モジュール2を形成する。
【0072】
その後、図3(b)に示す通り、予め導電性材料18が塗布(ポッティング)された回路基板1の所定の実装位置に撮像モジュール2やその他の電子部品を載置する。その後、図3(c)に示す通り、撮像モジュール2やその他の電子部品を載置した回路基板1をベルトコンベア等でリフロー炉(図示略)に移送し、当該回路基板1をリフロー処理に供して180〜270℃程度の温度で加熱する。その結果、導電性材料18が溶融して撮像モジュール2がその他の電子部品と一緒に回路基板1に実装される。
【0073】
(光ピックアップ装置)
本発明の光学素子の他の適用例として光ピックアップ装置が挙げられる。その好ましい態様は、光情報記録媒体に対して情報の再生及び記録のいずれかを行う光ピックアップ装置であって、光を出射する光源と該光源から出射された光の該光情報記録媒体への照射及び該光情報記録媒体で反射される光の集光のいずれかを行う光学素子ユニットとを備え、且つ当該光学素子ユニットは本発明の上記光学用有機無機複合材料を用いて成形された光学素子を備えることを特徴とする。なお、後述するように、本発明の光学素子は、集光機能を有するレンズ或いは集光装置に用いられることが好ましい態様である。また上記光源が波長390〜420nmの光を出射する光源であることが好ましい態様である。
【0074】
次に、本発明の光学素子及び光ピックアップ装置について図4及び図5を参照して説明する。
【0075】
本発明の光ピックアップ装置100は、波長650nmの光を適用する現行のDVD(以下、現行DVDと表記)、波長405nmの光を適用する、所謂次世代のDVD(以下、次世代DVDと表記)の2種類の光情報記録媒体105について情報の再生、記録を行う装置である。
【0076】
光ピックアップ装置100は、光源102から出射されるレーザー光(光)をコリメータレンズ103、後述する微細構造を有する対物レンズ(プラスチック製光学素子)110といった単玉光学素子を通過させて、光軸104上で光情報記録媒体105の情報記録面106に集めて集光スポットを形成し、情報記録面106からの反射光を偏向ビームスプリッタ107で取り込み、検出器108の受光面に再びビームスポットを形成するものである。
【0077】
光源102はレーザーダイオードを有して構成されており、公知の切り換え方法により、650nm、405nmと言う2種類の波長の光を選択して出射できる構成となっている。
【0078】
コリメータレンズ103、対物レンズ(プラスチック製光学素子)110、偏向ビームスプリッタ107は、光学素子ユニットを構成する。
【0079】
本発明に係る対物レンズ110は微細構造を有する光学素子であって、樹脂組成物を射出成形で成形することにより作製される。対物レンズ110は、図5に示すように両面非球面の単玉光学素子であり、その一方(光源側)の光学面111上に該光学面111を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造120(微細構造)を有している。
【0080】
光路差付与構造120は、光学面111が光軸4を中心とした3つの輪帯状レンズ面(以下、内側から順に第1輪帯状レンズ面121、第2輪帯状レンズ面122、第3輪帯状レンズ面123と言う)により構成され、該3つの輪帯状レンズ面121〜123の内隣り合う輪帯状レンズ面121〜123は異なる屈折力を有している。
【0081】
第1輪帯状レンズ面121と第3輪帯状レンズ面123とは同一の光学面111上にあり、第2輪帯状レンズ面122は光学面111から平行移動した面となっている。
【0082】
第1輪帯状レンズ面121は、波長650nm、405nm両方の光を通過させ、第2輪帯状レンズ面122は、現行DVDに対応した波長650nmの光を通過させ、第3輪帯状レンズ面123は、次世代DVDに対応した波長405nmの光を通過させる。そして、各輪帯状レンズ面121〜123を通過した光は、情報記録面106の同じ位置に集光されるようになっている。
【0083】
なお、図5では、第1輪帯状レンズ面121と第3輪帯状レンズ面123とは同一光学面111上に設けられているが、これら第1及び第3輪帯状レンズ面121、123とは同一光学面上に設けなくてもよく、また第2輪帯状レンズ面122は、光学面111から平行移動した面となっているが、特に平行移動した面でなくてもよい。また、3つの輪帯状レンズ面121〜123は5つであってもよく、少なくとも3つ以上であればよい。
【0084】
こうして形成された光路差付与構造120の作用により、対物レンズ110は現行DVD、次世代DVDといった複数種の光情報記録媒体105に対して、光源102で出射した光の情報記録面106への集光と、情報記録面106で反射した光の検出器108へ向けての集光を高い信頼性で行うことができる。また、対物レンズ110をなす樹脂組成物は85%以上と言う高い光透過率を有しているため、上記集光は高い効率で行うことができる。よって、光源102の消費電力を小さくすることができるので、光ピックアップ装置100全体の消費電力を軽減できる。
【0085】
なお、対物レンズ110は、上記光路差付与構造120を有するものに限らず、例えば、図6〜図9に示す光路差付与構造120a〜120dを有する対物レンズ110a〜110dとしてもよい。
【0086】
図6における光路差付与構造120aは、光軸104を中心とした複数の回折輪帯121aからなり、複数の回折輪帯121aの断面が鋸歯状であり、且つ各回折輪帯121aの光学面111aが不連続面となっている。また、複数の回折輪帯121aは光軸104から離れるにしたがって厚みが増すように形成されている。図6に示す対物レンズ110aは所謂回折レンズである。
【0087】
図7における光路差付与構造120bは、光軸4を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部121bを同心円状に有している。輪帯状凹部121bは、光学面111bの内の光軸104を中心とした一方の面(図7における光軸104を中心に上下の光学面)に5つずつ形成されている。また、隣り合う輪帯状凹部121bどうしは連続して一体になっており、各輪帯状凹部121b全体としての断面が階段状となっている。また、各輪帯状凹部121bを形成する光学面122bは、光学面111bに対して平行移動した面となっている。図7に示す対物レンズ110bは、所謂位相差レンズである。
【0088】
なお、図7では隣り合う輪帯状凹部121bどうしが連続して一体になっていて、全体の断面が階段状のものであるとしたが、単に光学面111bに輪帯状凹部121bを個々に設けたものとしてもよい(この場合、例えば、図2に示した対物レンズ110と同様の構造となる)。また、図7では輪帯状凹部121bを同心円状に有しているとしたが、図8に示すように、図8の第3輪帯状レンズ面123上に輪帯状凸部123bを有した対物レンズ110cとしてもよい(図8中、図5と同様の構成部分については同様の符号を付した)。
【0089】
図9における光路差付与構造120dは、光軸104を中心とした複数の回折輪帯121dからなり、複数の回折輪帯121dの断面が鋸歯状であり、且つ各回折輪帯121dの光学面111dが不連続面である。そして、各回折輪帯121dの断面が光軸方向に沿った3段122dの階段状であり、各段122dの光学面112dが不連続面で、光軸104に対して直交する面となっている。
【0090】
なお、図9に示すレンズ110dは、例えば、図10に示すように図9と同様の光路差付与構造120dを有するホログラム光学素子(HOE)110eと対物レンズ110fとで別体の構成としてもよい。この場合、ホログラム光学素子110eは平板状の光学素子を使用して、該光学素子の対物レンズ110fの面に光路差付与構造120dを設ける。
【0091】
なお、光ピックアップ装置100は、例えば、CD、現行DVD、次世代DVDの3種の光情報記録媒体105について情報の再生、記録を行うこととしてもよい。光ピックアップ装置100で情報の再生、記録を行う光情報記録媒体105の組み合わせは設計事項であり、適宜設定される。
【実施例】
【0092】
以下、実施例1〜3を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
実施例1
(1.1)試料1−1〜1−8の作製
疎水性無機微粒子としてRX300(日本アエロジル社製シリカ粒子 一次粒子径7nm)と、硬化性樹脂組成物としてシリコーン樹脂(信越化学社製シリコーンLPS−L500,吸水率0.12%)を、あらかじめ乳鉢で混合し、その後、混練装置としてラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミルKF−6V)を用いて、上記混合物を5分間、加熱をせずに混練した。この際、疎水性無機微粒子の体積分率Φが表1に記載された値になるように、RX300とシリコーン樹脂の添加量を調整し、ミキサーの回転数を表1に記載された値にして、単位質量当りの混練トルク最大値Mを変化させた。
【0094】
混練後、上記で得られた各混練物を、120℃、10Torr、真空下でプレスして、φ11mm、3mm厚の成形体を作製し、それぞれ190℃2時間、真空オーブンで加熱して熱アニール処理を行った。このようにして得られた成形体を「試料1−1〜1−8」とした。
【0095】
(1.2)試料の評価
(1.2.1)試料の光線透過率の測定
厚さ3mmの試料1−1〜1−8について、分光光度計(株式会社島津製作所製UV−3150)により、波長588nmの光における厚さ方向の透過率を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0096】
(1.2.2)線膨張率の測定
セイコーインスツルメンツ製、TMA/SS6100を用いて40℃、60℃におけるTMAを測定して線膨張率を計算した。疎水性無機微粒子と混合していない硬化性組成物のみの成形体を作製し、190℃2時間の熱アニール処理を行ったものの線膨張率を100とした場合の、各試料の線膨張率の変化率を計算し、得られた結果を表1に示す。
【0097】
(1.2.3)吸水率の測定および屈折率変動Δnの測定
各試料を、85℃の乾燥環境下に1週間置いて質量測定し(得られた値をAgとする。)、その後60℃で湿度90%の高湿環境下に3週間置いて質量測定した(得られた値をBgとする。)。得られた質量測定結果から、各試料の吸水率を下記の数式により算出した。その算出結果を下記表1に示す。
【0098】
吸水率(%)=(B−A)/A×100
また、85℃1週間乾燥後の試料の屈折率と、60℃で湿度90%の高湿環境下に3週間置いた直後の試料の屈折率を、自動屈折計(カルニュー光学工業製KPR−200)を用いて測定し、その差から吸水試験後の屈折率変動Δnを算出した。その算出結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1より、本発明の試料は、比較例に対して光線透過率、線膨張率変化率、吸水率、屈折率変動が総合的に優れていることが分かる。
【0101】
実施例2
(2.1)試料2−1〜2−8の作製
疎水性無機微粒子としてRX300(日本アエロジル社製シリカ粒子 一次粒子径7nm)と、硬化性樹脂組成物としてアクリル樹脂(特開2002−193883号公報に従って作製した2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート,吸水率1.2%)を、あらかじめ乳鉢で混合し、その後、混練装置としてラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミルKF−6V)を用いて、上記混合物を5分間、加熱をせずに混練した。この際、疎水性無機微粒子の体積分率Φが表1に記載された値になるように、RX300とアクリル樹脂の添加量を調整し、ミキサーの回転数を表2に記載された値にして、単位質量当りの混練トルク最大値Mを変化させた。
【0102】
混練後、上記で得られた各混練物を、120℃、10Torr、真空下でプレスして、φ11mm、3mm厚の成形体を作製し、それぞれ190℃2時間、真空オーブンで加熱して熱アニール処理を行った。このようにして得られた成形体を「試料2−1〜2−8」とした。
【0103】
(2.2)試料の評価
得られた試料について、実施例1と同様な評価を行い、結果を表2に示した。
【0104】
【表2】

【0105】
表2より、実施例を再現し、本発明の試料は、比較例に対して光線透過率、線膨張率変化率、吸水率、屈折率変動が総合的に優れていることが分かる。
【0106】
実施例3
試料1−1〜1−8、試料2−1〜2−8の光学素子と同様の組成で、射出成形によりそれぞれについて図5〜図10に記載の構成からなる光学素子(対物レンズ)を作製し、図4に記載の構成で各光ピックアップ装置を作製した。次いで、各光ピックアップ装置を用いて、レーザーダイオードによる405nmの波長の光を用い、DVDへの記録及び再生を行った。
【0107】
(評価)
本発明の光学素子を用いた光ピックアップ装置は、長時間連続照射しても、いずれも変形等が認められず良好なピックアップ特性を示した。一方、比較例の光学素子を用いると、その光学面の構造がより微細(複雑)に形成されているものほど変形が生じ、ピックアップ特性の低下が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の好ましい実施形態で使用される撮像装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態で使用される撮像装置の一部を拡大した概略的な断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態における撮像装置の製造方法を概略的に説明するための図面である。
【図4】本発明に係る光ピックアップ装置100の概略を示す側面図である。
【図5】本発明に係る対物レンズ110の断側面図である。
【図6】本発明に係る対物レンズ110aの断側面図である。
【図7】本発明に係る対物レンズ110bの断側面図である。
【図8】本発明に係る対物レンズ110cの断側面図である。
【図9】本発明に係る対物レンズ110dの断側面図である。
【図10】本発明に係るホログラム光学素子110e及び対物レンズ110fの断側面図である。
【符号の説明】
【0109】
1A 撮像装置
1 回路基板
2 撮像モジュール
3 カバーケース
4 撮像用開口
5 基板モジュール
6 レンズモジュール
10 サブ基板
10a 装着孔
11 CCDイメージセンサ
12 樹脂
15 レンズケース
15a ホルダ部
15b 装着部
16 レンズ
17 カラー部材
18 導電性材料
100 光ピックアップ装置
102 光源
103 コリメータレンズ
104 光軸
105 光情報記録媒体
106 情報記録面
107 偏光ビームスプリッタ
108 検出器
110、110a、110b、110c、110d、110f 対物レンズ(プラスチック製光学素子、対物光学素子)
111、111a、111d、112d、122b 光学面
120、120a、120b、120c、120d 光路差付与構造
121 第1輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
122 第2輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
123 第3輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
123b 輪帯状凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂組成物と、平均一次粒子径が1〜30nmである疎水性無機微粒子とを混練装置を用いて混合する工程と、この混合物を熱または活性光線で硬化させる工程とを有する光学用有機無機複合材料の製造方法において、前記硬化性樹脂組成物と前記疎水性無機微粒子を混合する工程における単位質量当りの混練トルク最大値Mが0.1≦M≦10Nm/gであることを特徴とする光学用有機無機複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記光学用有機無機複合材料中に占める前記疎水性無機微粒子の体積分率をΦと規定した時、該体積分率Φが0.2≦Φ≦0.6であることを特徴とする請求項1に記載の光学用有機無機複合材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする光学用有機無機複合材料。
【請求項4】
請求項3に記載の光学用有機無機複合材料の吸水率が、0.7質量%以下であることを特徴とする光学用有機無機複合材料。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光学用有機無機複合材料を用いたことを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−84459(P2009−84459A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256943(P2007−256943)
【出願日】平成19年9月29日(2007.9.29)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】