説明

光学用樹脂組成物及びそれを用いた光学用樹脂シート並びにこれらを用いたプラズマディスプレイ用光学フィルタ及びプラズマディスプレイ

【課題】 透明で、適度な粘着力、耐湿信頼性に優れ、プラズマディスプレイ等のディスプレイの保護に寄与する衝撃吸収性を有する樹脂材料提供する。
【解決手段】 炭素数が4〜18であるアルキルアクリレートとヒドロキシアルキルアクリレートのコポリマー15〜60重量部及びコポリマーと類似組成のモノマー混合物39〜84重量部、アクリロイル基を2個以上有するモノマー0.5〜10重量部及び光重合開始剤0.3〜3重量部を含有する光学用樹脂組成物。この樹脂組成物からなる光学用樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のディスプレイ装置の割れ防止、応力及び衝撃の緩和に有用な光学用樹脂組成物及びそれを用いた光学用樹脂シート並びにこれらを用いたプラズマディスプレイ用光学フィルタ及びプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製ブラウン管(CRT)はテレビ用、ディスプレイ用としてUL規格や電波取締法等で鋼球落下による耐衝撃試験により飛散防止性や貫通しないことが決められている。
そのため、この規格を満たすためCRTのガラスを厚く設計する必要がありCRTの重量を重くしていた。そこで、ガラスを厚くすること無く飛散防止性を持たせる手段として自己修復性を有する合成樹脂保護フィルムをガラスに積層する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。しかし、この提案は、飛散防止性を特徴としているが、ガラスの割れ防止機能は兼ね備えていない。
一方、フラットパネルディスプレイ(FPD)の一つであるPDP)は、PDPの割れを防止するため、PDPから1〜5mm程度の空間を設け、厚さ3mm程度のガラス等の前面板を前面(視認面側)に設けている。そのため、PDPの大型化に伴い、前面板の面積も大きくなるため、PDPの重量が重くなってしまう。
【0003】
そこで、ディスプレイの割れ防止のために、特定の樹脂をディスプレイ表面に積層すること、又は特定の樹脂を積層した光学フィルタをディスプレイ表面に積層することが提案されている(特許文献3,4,5参照)
【0004】
【特許文献1】特開平06−333515号公報
【特許文献2】特開平06−333517号公報
【特許文献3】特開2004−58376号公報
【特許文献4】特開2005−107199号公報
【特許文献5】特開2004−263084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献3,4では、使用する樹脂材料の組成に関する考察が特になく、接着性や透明性を発現させる手段が不明瞭である。特に、特許文献3では、樹脂の耐湿信頼性に関する考察がなく、実施例に具体的に示される組成の樹脂材料ではディスプレイに適用後、短時間の耐湿試験において白濁してしまう。また、特許文献4でも、実施例で具体的に示される樹脂の一部にアクリル酸を使用しており、長時間の耐湿試験において、樹脂が白濁してしまい、耐湿試験時に接触している金属を腐食させてしまうという問題が発生する。さらに、特許文献3,4では、より優れた衝撃吸収性を得るという観点からは、検討が不十分であると考えられる。特許文献4では、樹脂を用いた耐衝撃層の厚みが0.2〜1mmとされるが、厚さを大きくしてより衝撃吸収性を向上させるという観点での開示はない。特許文献5では耐湿熱性に関する考察がなされているが、本特許文献に記載の樹脂原料組成では、耐衝撃性の大幅な向上は望めない。また、実施例おける樹脂層の厚みは1mmであり、より優れた衝撃吸収性を得るという観点からは、検討が不十分であると考えられる。また、特許文献5の実施例に記載されるような、どちらかというと硬化後に柔らかい樹脂は、厚く使用した場合、前面フィルタの表面硬度が低下し、耐擦傷性に問題が出てくることが考えられる。
そこで、本発明は、透明で、適度な粘着力、耐湿信頼性に優れ、ディスプレイの保護に寄与する衝撃吸収性を有する光学用樹脂組成物及びそれを用いた光学用樹脂シート並びにこれらを用いたプラズマディスプ−レイ用光学フィルタを提供することを目的とする。また、本発明は、さらに、特に優れた耐衝撃性を有する光学用樹脂組成物及びそれを用いた光学用樹脂シート並びにこれらを用いたプラズマディスプレイ用光学フィルタ及びプラズマディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次のものに関する。
1. コポリマー 15〜60重量部
アクリロイル基を1個有するモノマー 39〜84重量部
アクリロイル基を2個以上有するモノマー 0.5〜10重量部
及び
光重合開始剤 0.3〜3重量部
を含有し、
上記のコポリマーが、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキルアクリレート(以下、AAモノマーという。)50〜87重量%と下記一般式(I)
【0007】
【化1】

(ただし、式中、mは2、3又は4、nは1〜10の整数をしめす。)
で表されるヒドロキシル基含有アクリレート(以下、HAモノマーという。)13〜50重量%を重合させて得られるものであり、
上記のアクリロイル基を1個有するモノマーとして、AAモノマーを50〜87重量%及びHAモノマーを13〜50重量%の割合になるように使用し、
上記コポリマー中のHAモノマーの割合(P重量%)と、アクリロイル基を1個有するモノマーにおけるHAモノマーの割合(M重量%)との間に、
【0008】
【数1】

の関係があるように配合されてなる光学用樹脂組成物。
2. 重合開始剤がα−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物あるいはアシルフォスフィンオキサイド系化合物あるいはオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)である項1記載の光学用樹脂組成物。
3. AAモノマーが2−エチルヘキシルアクリレートまたはイソオクチルアクリレートまたはn−オクチルアクリレートであり、HAモノマーが2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは1−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシプロピルアクリレートまたは3−ヒドロキシプロピルアクリレートまたは1−ヒドロキシプロピルアクリレートまたは4−ヒドロキシブチルアクリレートまたは3−ヒドロキシブチルアクリレートまたは2−ヒドロキシブチルアクリレートまたは1−ヒドロキシブチルアクリレートである項1又は2記載の 樹脂組成物。
4. コポリマーの重量平均分子量が200,000〜350,000である項1〜3のいずれかに記載の光学用樹脂組成物。
5. コポリマ 40〜60重量部、
アクリロイル基を1個有するモノマー 39〜59 重量部、
アクリロイル基を2個以上有するモノマー 1〜5重量部、
及び
光重合開始剤 0.5〜2.0重量部
を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の光学用樹脂組成物。
6. 項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物からなる光学用樹脂シート。
7. 項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物又は請求項6記載の光学用樹脂シートを使用して得られるプラズマディスプレイパネル用衝撃吸収層を備えたプラズマディスプレイ用光学フィルタ。
8. 項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物又は請求項6記載の光学用樹脂シートを使用して得られるプラズマディスプレイ。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る光学用樹脂組成物は、衝撃吸収性を有し、耐湿信頼性に優れ、特に多湿条件下でも白濁しない。
また、本発明に係る光学用樹脂組成物及び光学用樹脂シートはポリマーとモノマーの組成がほぼ同じであるためポリマーの溶解性が高く、高分子量のポリマーを使用しても透明な樹脂組成物や硬化物を作製できる。さらにモノマーで希釈されているため無溶剤で成形が可能であり、気泡の無い厚いフィルムを作製できる。
また、高分子量のポリマを比較的高濃度で含有しているため薄い膜厚でも衝撃吸収性に優れる。また、そのために硬さがあり、耐擦傷性の低下を抑制できる。この硬さのため塑性変形しにくく、厚い膜厚でより優れた衝撃吸収性を発揮することができる。さらに、凝集力が高く伸縮性もあるためフィルムがたわんだときやロールに巻きつけたときに亀裂が入ったり、筋が入ったりすることが少ない。
また、本発明に係る光学用樹脂組成物は、一般にディスプレイに使用される材料を侵すことが無い。
本発明に係る光学用樹脂組成物は、光学用樹脂シートの作製が可能であり、この樹脂シートも、上記した光学用樹脂組成物と同様の作用効果を示す。
以上の光学用樹脂組成物又は光学用樹脂シートを使用して得られる衝撃吸収層を備えたプラズマディスプレイ用光学フィルタ及びプラズマディスプレイは上記した光学用樹脂組成物と同様の作用効果を継承する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明におけるAAモノマーとしてはn−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等が挙げられるが、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレートが好ましく、2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。またこれらのアクリレートは2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0011】
本発明におけるHAモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、1−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有アクリレート、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール等のポリエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールやトリプロピレングリコール等のポリプロピレングリコールモノアクリレート、ジブチレングリコールやトリブチレングリコール等のポリブチレングリコールモノアクリレートなどが挙げられるが、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、1−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレートが特に好ましい。また、これらのアクリレートは2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0012】
本発明おけるAAモノマーとHAモノマー重合させて得られるコポリマーはその重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したもの、以下同様)が、100,000〜600,000であるものが好ましく、150,000〜400,000がより好ましく、200,000〜350,000がより好ましい。
コポリマーの合成方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合及び塊状重合等の既知の重合方法を用いることができるが、溶液重合あるいは塊状重合が好ましい。重合開始剤としては、熱によりラジカルを発生する化合物を用いることができ、具体的には、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド、ジドデシルパーオキシドの様な有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニル)。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]のようなアゾ系化合物が挙げられる。
【0013】
本発明おいて、アクリロイル基を2個以上有するモノマーとしては、ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリブチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のアクリレートモノマ、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリルアクリレート等のアクリルオリゴマが挙げられるが、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等のジアクリレートが好ましい。
【0014】
本発明において光重合開始剤としては、紫外線等の光線に感度を有するものが使用される。例えば、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、2,2−ジメトキシ―1,2−ジフェニルエタン―1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等が挙げられるが、樹脂組成物を着色させないものとしては1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)及びこれらを組み合わせたものが好ましい。また特に厚いシートを作製するためにはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物を含む光重合開始剤が好ましい。また、シートの臭気を減らすためにはオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)が好ましい。これらの光重合開始剤は複数を組み合わせて使用しても良い。
【0015】
本発明の光学用樹脂組成物は、
コポリマー 15〜60重量部、好ましくは、30〜60重竜部、より好ましくは40〜60重量部
アクリロイル基を1個有するモノマー 39〜84重量部、好ましくは、39〜69重量部、より好ましくは39〜59重量部、
アクリロイル基を2個以上有するモノマー 0.5〜10重量部、好ましくは、1〜10重量部、
及び
光重合開始剤 0.3〜3重量部、好ましくは、0.5〜2重量部
を含有するものである。
コポリマーが少なすぎると機械的特性に問題が生じ、PDP用衝撃吸収層に使用した場合に衝撃吸収性が低下する。また硬化収縮が大きくなり膜の平坦性に問題が生じやすくなる。逆に多すぎると組成物の粘度が高くなりすぎシート作製が困難になる。
アクリロイル基を1個有するモノマーが、少なすぎると組成物の粘度が高くなりすぎシート作製が困難になり、多すぎると機械的特性に問題が生じる。
アクリロイル基を2個以上有するモノマーが少なすぎると、樹脂組成物の硬化物が形状を保つことが困難であり、逆に多すぎると樹脂組成物の硬化物が脆くなり機械的特性に問題が生じる。
光重合開始剤が少なすぎると反応が十分に進行せず、逆に多すぎると光重合開始剤が大量に残存し、光学的な特性や機械的特性に問題が生じる。なお、上記の光学用樹脂組成物を電子線の照射で硬化させる場合には、光重合開始剤を使用しなくてもよい。
【0016】
前記コポリマーは、AAモノマー50〜87重量%、好ましくは60〜70重量%とHAモノマー13〜50重量%、好ましくは30〜40重量%を重合させて得られたものである。
また、前記したアクリロイル基を1個有するモノマーとしては、AAモノマー50〜87重量%、好ましくは60〜70重量%とHAモノマー13〜50重量%、好ましくは30〜40重量%を使用するものである。
これらにおいて、AAモノマーが多すぎると、従って、HAモノマーが少なすぎると吸湿時に本発明に係る樹脂組成物の硬化物が白濁しやすくなり、逆に、HAモノマーが多すぎると、従って、AAモノマーが少なすぎると吸湿時に本発明に係る樹脂組成物の硬化物が変形しやすくなる。
【0017】
また、本発明おいて、上記コポリマー中のHAモノマーの割合(P重量%)と、アクリロイル基を1個有するモノマーにおけるHAモノマーの割合(M重量%)との間に、
【0018】
【数1】

の関係があるようにそれぞれの配合が調整される。(P−M)が上記の式を満足しない場合、硬化時に本発明に係る樹脂組成物が白濁しやすくなる。前記コポリマー及びアクリロイル基を1個有するモノマーにおいて、AAモノマー(及びHAモノマー)が、前記した好ましい割合にあるときは、常にこの条件を満足する。
【0019】
本発明における光学用樹脂組成物は、ディスプレイ表面に膜厚が0.1mm〜3mmになるように製膜又は積層することが好ましい。衝撃吸収性を考慮すると0.2mm以上の厚さがより好ましい。特に、衝撃吸収性を大きくしたいときは、厚さを1.3mm以上にすることが好ましい。ディスプレイ表面、又は光学フィルタの基材等に塗布して製膜した後、紫外線等の光線、電子線などの放射線を照射して硬化させる。光学フィルタを作製する場合、光学フィルタの基材又は機能層の上に本発明における光学用樹脂組成物を製膜した後、さらに、光学フィルタの基材、機能層又は保護層を積層してから、放射線を照射して硬化させてもよい。
本発明における光学用樹脂シートは、膜厚が0.1mm〜3mmのものであることが好ましい。衝撃吸収性を考慮すると0.2mm以上の厚さがより好ましい。特に、衝撃吸収性を大きくしたいときは、厚さを1.3mm以上にすることが好ましい。これは、前記したモノマー原料と重合開始剤の混合物を注形成形することにより製造することができる。また、汎用の塗工機を用い所望の厚みを塗工し、紫外線等の光線、電子線などの放射線を照射して硬化させることにより製造することができる。
本発明における光学用樹脂組成物に紫外線等で酸素が存在すると重合が阻害される場合には、樹脂表面を酸素を遮断するための透明フィルム又は透明ガラスで覆うことが好ましい。紫外線照射装置としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が使用できる。
本発明の光学用樹脂組成物は厚く製膜しても、また、本発明の光学用樹脂シートは厚いものであっても、高分子量のコポリマーを含むので、その硬化樹脂は、硬さがあり、衝撃に対して、塑性変形しにくく、従って、厚くして衝撃吸収性を向上させやすい。
【0020】
本発明における光学用樹脂組成物又は上記光学用樹脂シートは、反射防止層、電磁波遮蔽層、近赤外線遮蔽層などの機能性を有する層、ポリエチレンフィルム等の基材フィルムなどに製膜又は積層され、多層物として、また、このような多層物からなる光学用フィルタとして使用することができる。
電磁波遮蔽層としては可視光透過率60%以上で電磁波遮蔽性を有していれば既知の電磁波遮蔽層を用いることができる。透明導電膜、導電性繊維メッシュ、導電性インキにより作製されたメッシュ等を使用することができるが、高透明、高電磁波遮蔽性の観点から、金属メッシュが最も好ましい。金属メッシュの作製は、ポリエステルフィルム等の透明基材と銅箔、アルミ箔等の導電性金属箔のどちらか一方又は両方に接着剤を塗布し両者を貼り合わせ、次いで金属箔をケミカルエッチングプロセスによりエッチング加工して得られる。この時、導電性金属箔としては、密着性の確保から表面が粗面であるものを使用することが好ましい。導電性金属箔の粗面が上記の接着剤層に面するように積層される。上記のエッチングにより金属製メッシュが作製されたなら、その上に、樹脂を塗布し、特に好ましくは紫外線、電子線等の放射線の照射で硬化可能な樹脂を塗布し、紫外線、電子線等の放射線を照射し硬化することによって、粗面が転写された接着剤層を透明化することが好ましい。透明化に用いる樹脂としてあるいは透明化と衝撃吸収層を兼ねた樹脂として本発明の樹脂組成物を用いることが可能である。
また、反射防止層は、可視光反射率が5%以下となる反射防止性を有している層であればよく、透明なプラスチックフィルム等の透明基材に既知の反射防止方法で処理された層を用いることができる。
さらに、近赤外線遮蔽層は、イモニウム塩等の近赤外線吸収材や近赤外線遮蔽材を分散させた樹脂層からなり、透明なプラスチックフィルム等の透明基材に積層させておくことができる。本発明における光学用樹脂組成物又は上記光学用樹脂シートにイモニウム塩等の近赤外線吸収材や近赤外線遮蔽材を分散させて近赤外線遮蔽能を付与することができる。
【0021】
本発明における光学用樹脂組成物又は上記光学用樹脂シート、電磁波遮蔽層、反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能性を有する層は、適宜必要なものを積層して使用することができる。この場合、機能性を有する層は、透明基材の一方に積層されていてもよく、透明基材の両側に機能の異なる層が別々に、その両側に機能の同じ層が積層されていても良い。機能性を有する層の積層順序は任意である。
このような多層物とする場合、本発明における光学用樹脂組成物又は上記光学用樹脂シートが最外層となるようにすることが好ましい。
これらの層は、各層の間に粘着層を介しロールラミネートや枚葉貼合機で積層することができる。さらに、ロールラミネートや枚葉貼合機で積層した多層材は、ロールラミネータ又は枚葉貼合機を用いてディスプレイ前面又はディスプレイ用前面板に貼合することができる。この場合、本発明の保護部材からなる層が、ディスプレイ前面又はディスプレイ用前面板(多くの場合、光学フィルタとして機能する)に面して貼り合わされることが好ましい。ディスプレイとしては、PDP、液晶表示(LCD)パネル、陰極線管(CRT)等がある。
【実施例1】
【0022】
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び窒素注入管の付いた反応容器に初期モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート84.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート36.0g並びにメチルイソブチルケトン150.0gをとり100ml/minの風量で窒素置換しながら、15分間で常温から70℃まで加熱した。その後、この温度に保ちながら、追加モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート21.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート9.0gを使用し、これらに並びにラウリルパーオキシド0.6gを溶解した溶液を準備し、この溶液を60分間かけて滴下し滴下終了後さらに2時間反応させた。続いて、メチルイソブチルケトンを溜去することにより2−エチルヘキシルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートのコポリマー(重量平均分子量250,000)を得た。
次に、このコポリマー 44.50g、
2−エチルヘキシルアクリレート 38.25g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 16.25g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を加え、攪拌混合した後、幅100mm、奥行き100mm、深さ0.5mmの枠に流し込み、上部を紫外線透過ガラスで覆った状態で、紫外線照射装置を用いて紫外線を2,000mJ照射したところ透明なシートを得た。このシートは吸湿試験後も透明であった。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、1.1Jの衝撃でガラスが破損せず、1.2Jの衝撃でガラスが破損した。また樹脂シートの破損は見られなかった。
【実施例2】
【0023】
実施例1で得られたコポリマー 19.75g、
2−エチルヘキシルアクリレート 55.50g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 23.75g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
及び
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を用いて、実施例1と同様にしてシートを作製した。このシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、1.1Jの衝撃でガラスが破損せず、1.2Jの衝撃でガラスが破損した。また樹脂シートの破損は見られなかった。
【実施例3】
【0024】
実施例1で得られたコポリマー 54.50g、
2−エチルヘキシルアクリレート 31.25g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 13.25g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
及び
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を用いて、実施例1と同様にしてシートを作製した。このシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、1.1Jの衝撃でガラスが破損せず、1.2Jの衝撃でガラスが破損した。また樹脂シートの破損は見られなかった。
【実施例4】
【0025】
初期モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート102.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート18.0g、追加モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート25.5gと2−ヒドロキシエチルアクリレート4.5gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして2−エチルヘキシルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートのコポリマー(重量平均分子量200,000)を得た。
次に、このコポリマー 44.50g、
2−エチルヘキシルアクリレート 46.25g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 8.25g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を用いて、実施例1と同様にしてシートを作製した。このシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、1.3Jの衝撃でガラスが破損せず、1.4Jの衝撃でガラスが破損した。また樹脂シートの破損は見られなかった。
【実施例5】
【0026】
初期モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート60.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート60.0g、追加モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート15.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート15.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして2−エチルヘキシルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートのコポリマー(重量平均分子量350,000)を得た。
次に、このコポリマー 44.50g、
2−エチルヘキシルアクリレート 27.25g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 27.25g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を加えること以外は実施例1と同様にしてシートを作製した。このシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、1.1Jの衝撃でガラスが破損せず、1.2Jの衝撃でガラスが破損した。
また樹脂シートの破損は見られなかった。
【実施例6】
【0027】
光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの代わりにビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを使用し、幅100mm、奥行き100mm、深さ3.0mmの枠を使用し、紫外線の露光量を4,500mJとしたこと以外は実施例1と同様にしてシートを作製した。このシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、2.0Jの衝撃でもガラスが破損しなかった。また樹脂シートの破損は見られなかった。
【実施例7】
【0028】
光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの代わりにオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)を2.00g使用し、紫外線の露光量を2,500mJとしたこと以外は実施例1と同様にしてシートを作製した。このシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。またこのシートは特に低臭気であった。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、1.1Jの衝撃でガラスが破損せず、1.2Jの衝撃でガラスが破損した。また樹脂シートの破損は見られなかった。
【実施例8】
【0029】
幅100mm、奥行き100mm、深さ1.5mmの枠を使用し、紫外線の露光量を3,500mJとしたこと以外は実施例1と同様にしてシートを作製した。このシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、2.0Jの衝撃でもガラスが破損しなかった。また樹脂シートの破損は見られなかった。
【実施例9】
【0030】
幅100mm、奥行き100mm、深さ2.0mmの枠を使用し、紫外線の露光量を4,000mJとしたこと以外は実施例1と同様にしてシートを作製した。このシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、2.0Jの衝撃でもガラスが破損しなかった。また樹脂シートの破損は見られなかった。
【実施例10】
【0031】
実施例1で得られたコポリマー 40.20g、
2−エチルヘキシルアクリレート 44.10g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 14.70g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
及び
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を用いて、実施例1と同様にしてシートを作製した。このシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、1.1Jの衝撃でガラスが破損せず、1.2Jの衝撃でガラスが破損した。また樹脂シートの破損は見られなかった。
【0032】
比較例1
実施例1で得られたコポリマー 44.50g、
2−エチルヘキシルアクリレート 54.50g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 13.25g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
及び
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を用いて、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートは白濁していた。
【0033】
比較例2
実施例1で得られたコポリマー 44.50g、
2−エチルヘキシルアクリレート 54.50g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
及び
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を用いて、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートは白濁していた。
【0034】
比較例3
初期モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート108.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート12.0g、追加モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート27.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート3.0gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてコポリマー(重量平均分子量220,000)を得た。
上記で得られたコポリマー 49.50g、
2−エチルヘキシルアクリレート 44.50g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 5.00g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
及び
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を用いて、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートは透明であったが、吸湿試験後は白濁した。
【0035】
比較例4
初期モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート12.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート108.0g、追加モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート3.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート27.0gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてコポリマーを得た。
上記で得られたコポリマー 49.50g、
2−エチルヘキシルアクリレート 5.00g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 44.50g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
及び
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を用いて、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートは透明であったが、吸湿試験後は外形寸法が5%以上拡大し、外周部にうねりが発生した。
【0036】
比較例5
光重合開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を使用する以外は実施例1と同様にしてシートを作製した。作製したシートは黄色に着色していた。
【0037】
比較例6
2−エチルヘキシルアクリレート 84.15g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 14.85g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を用いて、実施例1と同様にしてシートを作製した。このシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、0.5Jの衝撃で樹脂シートが破損した。
【0038】
比較例7
電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aをその電磁波遮蔽層が接するように直接ガラスに貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、0.5Jの衝撃でガラスが破損した。
比較例8
実施例1で得られたコポリマー 10.00g、
2−エチルヘキシルアクリレート 62.30g、
2−ヒドロキシエチルアクリレート 26.70g、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 1.00g、
及び
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 0.50g
を用いて、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートは透明であり、吸湿試験後も透明性を維持した。次にこのシートを日立化成工業株式会社製の電磁波シールドフィルムU(TT42−01)Aの電磁波遮蔽層の上に貼合し、耐衝撃性の試験を行ったところ、0.7Jの衝撃でガラスが破損せず、0.8Jの衝撃でガラスが破損した。
【0039】
実施例及ぶ比較例での試験方法を次に示す。また、これらの試験結果を表1又は表2に示す。
(吸湿試験)
吸湿試験は、樹脂シートを60℃、90%RHの高温高湿試験槽に50時間入れることで行い、評価方法は目視観察を行った。また試験後の全光線透過率を測定した。
(分子量測定)
分子量の測定はTHFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して行い、ポリスチレンを標準物質として使用して分子量を決定した。
(耐衝撃性試験)
耐衝撃性試験は、電磁波シールドフィルムに前記の樹脂シートを貼合したものをさらに厚さ2.8mmのソーダガラスに貼合し、鋼球を落下させて評価した。0.1J単位で衝撃を大きくし、ガラスあるいは樹脂シートが破損した1つ手前の値を耐衝撃性とした。
(全光線透過率)
全光線透過率の測定は色差・濁度測定器COH−300A(日本電色工業(株)製)を使用して行った。


【0040】
【表1】

【0041】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリマー 15〜60重量部
アクリロイル基を1個有するモノマー 39〜84重量部
アクリロイル基を2個以上有するモノマー 0.5〜10重量部
及び
光重合開始剤 0.3〜3重量部
を含有し、
上記のコポリマーが、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキルアクリレート(以下、AAモノマーという。)50〜87重量%と下記一般式(I)
【化1】

(ただし、式中、mは2、3又は4、nは1〜10の整数をしめす。)
で表されるヒドロキシル基含有アクリレート(以下、HAモノマーという。)13〜50重量%を重合させて得られるものであり、
上記のアクリロイル基を1個有するモノマーとして、AAモノマーを50〜87重量%及びHAモノマーを13〜50重量%の割合になるように使用し、
上記コポリマー中のHAモノマーの割合(P重量%)と、アクリロイル基を1個有するモノマーにおけるHAモノマーの割合(M重量%)との間に、
【数1】

の関係があるように配合されてなる光学用樹脂組成物。
【請求項2】
重合開始剤がα−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物あるいはアシルフォスフィンオキサイド系化合物あるいはオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)である請求項1記載の光学用樹脂組成物。
【請求項3】
AAモノマーが2−エチルヘキシルアクリレートまたはイソオクチルアクリレートまたはn−オクチルアクリレートであり、HAモノマーが2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは1−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシプロピルアクリレートまたは3−ヒドロキシプロピルアクリレートまたは1−ヒドロキシプロピルアクリレートまたは4−ヒドロキシブチルアクリレートまたは3−ヒドロキシブチルアクリレートまたは2−ヒドロキシブチルアクリレートまたは1−ヒドロキシブチルアクリレートである請求項1又は2記載の光学用樹脂組成物。
【請求項4】
コポリマーの重量平均分子量が200,000〜350,000である請求項1〜3のいずれかに記載の光学用用樹脂組成物。
【請求項5】
コポリマ 40〜60重量部、
アクリロイル基を1個有するモノマー 39〜59重量部、
アクリロイル基を2個以上有するモノマー 1〜5重量部、
及び
光重合開始剤を0.5〜2.0重量部
含有する請求項1〜4のいずれかに記載の光学用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物からなる光学用樹脂シート。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物又は請求項6記載の光学用樹脂シートを使用して得られるプラズマディスプレイパネル用衝撃吸収層を備えたプラズマディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項8】
項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物又は請求項6記載の光学用樹脂シートを使用して得られるプラズマディスプレイパネル。



【公開番号】特開2007−9116(P2007−9116A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194020(P2005−194020)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】