説明

光学用粘着剤組成物、光学用粘着剤層及び光学用粘着性積層体

【課題】 粘着特性と高い屈折率とを両立させた光学用粘着層を形成できる光学用粘着剤組成物、光学用粘着剤層、及び光学用粘着性積層体を提供する。
【解決手段】 炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする原料単量体を重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して、芳香環を有する粘着付与樹脂を40〜200質量部、芳香族リン酸エステル系可塑剤を20〜220質量部含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用粘着剤組成物、光学用粘着剤層及び光学用粘着性積層体に関し、偏光板などの光学部材を被接着体に接着する際に用いるのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶パネル等に用いられる基板、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、反射シート、及び輝度向上フィルム、並びに光記録媒体用基板などの光学部材は、粘着剤組成物から形成された粘着剤層を介して被接着体に貼り合わされ、又は粘着剤層によってかかる光学部材同士が貼り合わされることによって光学部材として成立することが多い。しかしながら、光学部材が高い屈折率(例えば、1.50以上)を有することが多いのに対し、アクリル系粘着剤層は屈折率が低い(例えば、1.47)。このため、光学部材又は光学部材の個々の材料と粘着剤層との界面に屈折率差が生じ、界面において反射がおきてしまい、光の有効活用ができないという問題があった。
【0003】
そこで、高い屈折率を有するアクリル系粘着剤として、タッキファイヤー樹脂を添加したアクリル系粘着剤(特許文献1参照)、臭素などのハロゲンを導入したモノマーを共重合したアクリル系粘着剤(特許文献2参照)、芳香環を有するモノマーを共重合したアクリル系粘着剤(特許文献3参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−14225号公報
【特許文献2】特表2003−535921号公報
【特許文献3】特開2002−173656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の粘着剤は、タッキファイヤーの添加量を増やすと、相溶性が悪くなり白化現象が起きるという問題や、弾性率が高くなるため粘着性が低下してしまうという問題があった。特許文献2の粘着剤は、ハロゲンの環境対応や、被接着体等へのハロゲンの影響を考慮すると好ましくない。また、特許文献3の粘着剤は、芳香環を有するモノマーの共重合量を増やすと、弾性率が高くなるため粘着性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、粘着特性と高い屈折率とを両立させた光学用粘着層を形成できる光学用粘着剤組成物、光学用粘着剤層、及び光学用粘着性積層体を提供することを目的とする。
【0007】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする原料単量体を重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して、芳香環を有する粘着付与樹脂を40〜200質量部、芳香族リン酸エステル系可塑剤を20〜220質量部含むことを特徴とする光学用粘着剤組成物にある。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記芳香族リン酸エステル系可塑剤が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする第1の態様に記載の光学用粘着剤組成物にある。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(1)において、nは1又は2の整数であり、Rは、それぞれ独立にH又はCHであり、Rはそれが付加する芳香環に複数付加していてもよく、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、又はアルキルエーテル基(ただし、全てのRの炭素数の合計が12以下であり、Rは直鎖であっても分岐していてもよい。)である。)
【0011】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の光学用粘着剤組成物から形成されたことを特徴とする光学用粘着剤層にある。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記光学用粘着剤層は屈折率が1.535以上であることを特徴とする第3の態様に記載の光学用粘着剤層にある。
【0013】
本発明の第5の態様は、支持体の少なくとも片面に第3又は第4の態様に記載の光学用粘着剤層を備えることを特徴とする光学用粘着性積層体にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学用粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、芳香環を有する粘着付与樹脂と、芳香族リン酸エステル系可塑剤と、を特定の割合で含むことにより、粘着特性と高い屈折率とを両立させた粘着剤層を形成することができるものである。また、本発明によれば、粘着特性と高い屈折率とを両立させた光学用粘着剤層及び光学用粘着性積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を(1)光学用粘着剤組成物、(2)光学用粘着剤層、及び(3)光学用粘着性積層体に項分けして詳細に説明する。
【0016】
(1)光学用粘着剤組成物
本発明の光学用粘着剤組成物は、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする原料単量体を重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して、芳香環を有する粘着付与樹脂を40〜200質量部、芳香族リン酸エステル系可塑剤を20〜220質量部含むものである。このように、(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、芳香環を有する粘着付与樹脂と、芳香族リン酸エステル系可塑剤と、を所定の割合で含むものとすることにより、優れた粘着特性と、高い屈折率とを両立させた光学用粘着剤層を形成することができるものである。
【0017】
ここで、本発明において、「原料単量体」とは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得る過程で、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を形成するために反応系中に添加する全ての単量体を指す。すなわち、本実施形態にかかる(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、アクリル酸エステルをその規定された質量比含む原料単量体を使用して得られるものである。本発明において「固形分」とは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体や架橋剤等が溶剤希釈物である場合に溶剤を除いたものを指す。また、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸の総称であり、他の「(メタ)」もこれに準拠する。重合体とは、単独重合体及び共重合体の総称であるものとする。
【0018】
本発明では、芳香環を有する粘着付与樹脂と、芳香族リン酸エステル系可塑剤とを併有することにより、高屈折率の粘着剤層を形成することができるものとしている。また、粘着特性の高い(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、芳香環を有する粘着付与樹脂と、芳香族リン酸エステル系可塑剤とを併有することにより、芳香環を有する粘着付与樹脂を含むことによる粘着剤層の弾性率の上昇を、芳香族リン酸エステル系可塑剤により抑制して、高い粘着特性を維持することができる。これにより、優れた粘着特性と高い屈折率とを両立した光学用粘着剤組成物となる。
【0019】
なお、芳香族リン酸エステル系可塑剤を含まない場合、粘着剤組成物は高屈折率の粘着剤層を形成することができないものとなり、また、この粘着剤組成物から形成される粘着剤層は弾性率が上昇して、粘着力が著しく低くなることもある。一方、芳香環を有する粘着付与樹脂を有さない場合は、高い屈折率の粘着剤層を形成することができないものとなる。
【0020】
本発明にかかる(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする原料単量体を重合して得られるものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする原料単量体を重合して得られた重合体である。この原料単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするものであればよいが、架橋剤と反応する架橋性官能基を有する単量体を含むのが好ましい。また、その他の共重合性単量体を含むものとしてもよい。
【0021】
炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体は、原料単量体における割合が50質量%〜100質量%であることが好ましく、70質量%〜99.9質量%であることがより好ましく、70質量%〜99質量%であることがさらに好ましい。炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、炭素数2〜10の炭素数アルキル基又は炭素数2〜10のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0022】
本発明の光学用粘着剤組成物は、後述するように、芳香族リン酸エステル系可塑剤を極端に多く含むものである。このような光学用粘着剤組成物において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体のアルキル基の炭素数の平均値が低いほど、芳香族リン酸エステル系可塑剤との相溶性が高くなり、形成される光学用粘着剤層の透明性が維持されたり、粘着特性の経時変化が抑制されたりしやすくなることを本発明者らは確認している。この効果は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の原料単量体のほとんどが炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体である場合(例えば、90質量%以上)に特に顕著である。(メタ)アクリル酸エステル系重合体の原料単量体は、例えば、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体のアルキル基の炭素数の平均値が5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましい。このように(メタ)アクリル酸エステル単量体のアルキル基の炭素数の平均値を低くすることにより、光学用粘着剤層の用途において重要な特性となる透明性がより高いものとすることができる。
【0023】
他の共重合性単量体としては、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な化合物であれば特に制限はない。
【0024】
他の共重合性単量体としては、分子内に架橋性官能基を有する単量体が挙げられ、官能基として水酸基、アミノ基、アミド基、イソシアナート基、エポキシ基の少なくとも1種を含むものが好ましい。分子内に架橋性官能基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナート、メタクリロイルイソシアナート、アリルイソシアナート;ジイソシアナート化合物またはポリイソシアナート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアナート化合物;ジイソシアナート化合物またはポリイソシアナート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアナート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有ウレタン(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル;などが挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが、芳香族リン酸エステル系可塑剤の変質を惹起しにくい点で好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋性官能基を有する単量体は、(メタ)アクリル酸エステルの原料単量体中に0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
【0025】
また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、他の共重合性単量体としてカルボキシル基を有する単量体を含まないことが好ましい。カルボキシル基を有する単量体は、場合によって光学用粘着剤層を形成した際に芳香族リン酸エステル系可塑剤の変質を惹起し、光学用粘着剤層の粘着特性の経時変化を引き起こすことがあるためである。カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸等が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、カルボキシル基以外の極性基を有する共重合性単量体を原料単量体中に含んでいてもよい。上述のとおり、本発明の光学用粘着剤層は、芳香族リン酸エステル系可塑剤を多量に含み、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の原料単量体組成によっては、相溶性が悪くなる場合があるが、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が、カルボキシル基以外の極性基を有する共重合性単量体を原料単量体中に含むことで、芳香族リン酸エステル系可塑剤の光学用粘着剤層中における相溶性を高いものとすることができる。このようなカルボキシル基以外の極性基を有する共重合性単量体の極性基としては、水酸基、アミノ基、アミド基、フェニル基等が挙げられ、水酸基、アミノ基、アミド基を有する共重合性単量体としては、上述の架橋性官能基を有する単量体として挙げたものと同一のものを用いることができ、場合によってはこれらの極性基を有する共重合性単量体は、架橋性官能基を有する単量体としての機能も兼ねる。フェニル基を有する共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシブチル、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル;ビニル安息香酸、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルベンジルメチルエーテルなどの芳香族ビニル化合物等が挙げられる。フェニル基を有する共重合性単量体は、光学用粘着剤層の屈折率を高める効果があるので好ましい。特に、芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステルは、芳香族ビニル化合物よりも光学用粘着剤層の弾性率を高めず、粘着特性を低下させにくいので好ましい。これらのカルボキシル基以外の極性基を有する共重合性単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
また、他の共重合性単量体として、モノビニルエーテル、ジビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;エチレン、プロピレン、α−メチルオレフィン類等のオレフィン系化合物;酢酸ビニル、ビニルアセトアミド等のビニル化合物と酸の縮合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル化合物;などが挙げられる。
【0028】
本発明にかかる(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、重量平均分子量(Mw)は、10,000〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは60,000〜900,000である。これにより、ブリードアウトを防止して、粘着物性に優れた光学用粘着剤層を形成することができる光学用粘着剤組成物とすることができる。なお、重量平均分子量はGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0029】
なお、本発明にかかる(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、溶液重合や塊状重合等の任意の公知の重合方法によって製造することができる。重合の際に用いる開始剤の例としては、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。
【0030】
共重合体形態については特に限定はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0031】
本発明にかかる芳香環を有する粘着付与樹脂としては、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール系樹脂、不均化ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明では、上述したように、芳香族リン酸エステル系可塑剤を配合することにより、高屈折率の粘着剤層を形成する粘着剤組成物とすることができるだけではなく、粘着付与樹脂を配合することによる粘着剤層の弾性率の上昇を抑制することができる。
【0033】
本発明にかかる芳香族リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。芳香族リン酸エステル系可塑剤として、下記一般式(1)で表される芳香族リン酸エステル系可塑剤を用いることにより、容易に、優れた粘着特性と高屈折率を両立させた粘着剤層を形成することができる光学用粘着剤組成物とすることができる。なお、芳香族リン酸エステル系可塑剤としては、下記一般式(1)で表される芳香族リン酸エステル系可塑剤のnの値、RやRの置換基が異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。下記式において、全てのRの炭素数の合計が12より大きくなると、屈折率の向上効果が低下し、好ましくない。これは、芳香族リン酸エステル系可塑剤の屈折率向上効果は、単位重量あたりの芳香環の個数が多いほど高いが、単位重量あたりの芳香環の個数はRの炭素数の合計の増加により減少するためである。
【0034】
【化2】

【0035】
(一般式(1)において、nは1又は2の整数であり、Rは、それぞれ独立にH又はCHであり、Rはそれが付加する芳香環に複数付加していてもよく、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、又はアルキルエーテル基である(ただし、全てのRの炭素数の合計が12以下であり、Rは直鎖であっても分岐していてもよい。)。)
【0036】
アルキル基としては、Rの全ての炭素数の合計が12以下であるので、ドデシル基よりも炭素数の少ない官能基を適宜選択できるが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが好ましい。アルコキシ基についても同様に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数12以下のものを選択できる。アルキルエーテル基としても、炭素数12以下のアルキルエーテル基を適宜に選択できる。
【0037】
一般式(1)で表される芳香族リン酸エステル系可塑剤の典型的な例としては、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(n=1、Rがメチル基、Rが水素)が挙げられる。なお、単独で用いてもよいし、これと一般式(1)で表される他の構造のものとを組み合わせてもよいし、これと他の芳香族リン酸エステル系可塑剤とを組み合わせてもよい。
【0038】
また、他の芳香族リン酸エステル系可塑剤としては、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェートクレジルジフェニルホスフェート、クレジル2,6−キシレニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等の非縮合型の液体芳香族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート等の非縮合型の固体芳香族リン酸エステル;1,3−フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等の縮合型の液体芳香族リン酸エステル;1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等の縮合型の固体芳香族リン酸エステルなどを挙げることができる。これらの芳香族リン酸エステル系可塑剤として、固体の芳香族リン酸エステル系可塑剤を用いる場合は液体の芳香族リン酸エステル系可塑剤と併用するのが好ましい。これらの芳香族リン酸エステル系可塑剤を用いる場合は、例えば、固体の芳香族リン酸エステル系可塑剤と液体の芳香族リン酸エステル系可塑剤との質量比が0:100〜60:40となるようにするのが好ましい。固体の芳香族リン酸エステルの質量比が60%を超えると、固体の芳香族リン酸エステルが析出することがあるためである。なお、芳香族リン酸エステル系可塑剤の性状を示す語句として、「固体」は25℃において固体であることを示し、「液体」は25℃において液体であることを示す。
【0039】
本発明の光学用粘着剤組成物は、上述した(メタ)アクリル酸エステル系重合体の固形分100質量部に対して、芳香環を有する粘着付与樹脂の固形分の総量を40〜200質量部、芳香族リン酸エステル系可塑剤の固形分の総量を20〜220質量部を配合したものである。これにより、優れた粘着特性と高い屈折率とを両立させた光学用粘着剤層を形成できる光学用粘着剤組成物となる。
【0040】
上述したように、芳香環を有する粘着付与樹脂の固形分の総量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して40〜200質量部である。なお、芳香環を有する粘着付与樹脂を40質量部未満とすると、十分に高い屈折率のものを得られなくなり、芳香環を有する粘着付与樹脂を200質量部より多くすると、十分な粘着特性が得られなくなる。また、芳香環を有する粘着付与樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して50〜170質量部であることがより好ましく、60〜150質量部であることがさらに好ましい。芳香環を有する粘着剤付与樹脂を60質量部以上とすることにより、より高い屈折率を実現することができ、かつ芳香族リン酸エステル系可塑剤の可塑効果の影響が粘着力の向上に寄与し、光学用粘着剤層の粘着特性の制御が容易となる。具体的には、後述する実施例2のように、芳香環を有する粘着付与樹脂を50質量部とし、固体の芳香族リン酸エステル系可塑剤を200部と多量に添加した場合は、屈折率は1.5479であるが、後述する実施例4や、実施例9のとおり、芳香環を有する粘着付与樹脂が60質量部以上であれば、同等又はより少ない芳香族リン酸エステル系可塑剤の配合量であっても、1.55以上の高い屈折率を有する光学用粘着剤層を形成できる。
【0041】
また、上述したように、芳香族リン酸エステル系可塑剤の固形分の総量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して20〜220質量部である。芳香族リン酸エステル系可塑剤を20質量部未満とすると、十分に高い屈折率のものを得られなくなり、芳香族リン酸エステル系可塑剤を220質量部より多くすると、十分な粘着特性が得られなくなる。また、芳香族リン酸エステル系可塑剤は(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して40〜160質量部であることがより好ましい。本発明の光学用粘着剤組成物は、芳香族リン酸エステル系可塑剤を所定量含むので、光学用粘着剤層の屈折率を上げるために、芳香環を有する粘着付与樹脂を増やした場合であっても、光学用粘着剤層の弾性率の上昇を抑え、強い粘着特性を維持することができる。
【0042】
さらに、光学用粘着剤組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、芳香族リン酸エステル系可塑剤以外の可塑剤(軟化剤)、硬化促進剤、充填剤、老化防止剤、顔料、染料、カップリング剤等の各種添加剤等を添加することができる。軟化剤としては、例えば、液状ポリエーテル、グリコールエステル、液状ポリテルペン、液状ポリアクリレート、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル等が挙げられる。また、芳香環を有する粘着付与樹脂以外の粘着付与剤を添加してもよい。芳香環を有する粘着付与樹脂以外の粘着付与剤としては、例えば、ロジン及びその誘導体、ポリテルペン、石油系樹脂等が挙げられる。しかし、これらの芳香環を有する粘着付与樹脂以外の粘着付与剤は、配合量が増えると光学用粘着剤層の屈折率を低下させる場合があるため、発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。芳香族リン酸エステル以外の可塑剤としては、例えば、非芳香族リン酸エステル系可塑剤、液状ポリエーテル、グリコールエステル、液状ポリテルペン、液状ポリアクリレート、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル等が挙げられるが、これらは芳香族リン酸エステル系可塑剤と異なり、添加により光学用粘着剤組成物の屈折率を下げる要因となる場合があるので、発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0043】
さらに、光学用粘着剤組成物は、必要に応じて有機溶剤系等の溶媒を含んでいてもよい。なお、光学用粘着剤組成物が溶媒を含む場合、固形成分(本発明にかかる(メタ)アクリル酸エステル系重合体、芳香環を有する粘着付与樹脂、芳香族リン酸エステル系可塑剤、架橋剤等)の濃度は特に限定されず、所定の基材にそのまま塗工できる濃度であっても、塗工の際に希釈して用いる濃度であってもよい。
【0044】
かかる溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒;クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;およびこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;などが挙げられる。
【0045】
本発明の光学用粘着剤組成物は、必要に応じて希釈した後、所定の基材等の支持体に塗工することにより光学用粘着剤層となる。なお、光学用粘着剤組成物を塗工する際は、粘度調整のため、これらの有機溶剤等を使用して濃度を調整するのが好ましい。濃度は10〜60質量%の範囲になるように調製するのが好ましい。
【0046】
光学用粘着剤組成物は、予め調製しておいて一定期間保管した後に塗工してもよいし、例えば架橋剤のみを塗工の数時間前に添加するなどして、光学用粘着剤組成物の完成後に日をおかずに塗工してもよいし、2液以上をスタティックミキサー等で混合して、光学用粘着剤組成物の完成と塗工とを連続して行ってもよい。
【0047】
上述したように、本発明の光学用粘着剤組成物は、粘着特性と高い屈折率とを両立させた光学用粘着層を形成することができるものである。また、この光学用粘着剤組成物は、ハロゲン等を用いていないため、被接着体等の汚染や環境汚染の問題もない。
【0048】
(2)光学用粘着剤層
本発明の光学用粘着剤層は、上述した光学用粘着剤組成物から形成されたものである。
【0049】
上述した光学用粘着剤組成物を用いて光学用粘着剤層を形成する場合には、光学用粘着剤組成物を架橋剤で架橋することが好ましい。
【0050】
架橋剤は、種類に特に制限はなく、具体例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、メラミン系樹脂、アジリジン化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられる。適度な凝集力を得る観点から、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が特に好ましく用いられる。これらの化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
イソシアネート化合物としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3付加物(例えば、日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートL,東洋インキ社製、商品名:BHS−8515、綜研化学社製、商品名:L−45)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3付加物(例えば、日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(例えば、日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートHX)などのイソシアネート付加物;などが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
エポキシ化合物としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(例えば、三菱瓦斯化学社製、商品名:TETRAD−X)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(例えば、三菱瓦斯化学社製、商品名:TETRAD−C)などとして市販されているものが挙げられる。これらの化合物は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
これらの架橋剤は、本発明の光学用粘着剤組成物に予め含有させておいてもよい。これらの架橋剤の使用量は、本発明にかかる(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して、0.01〜15質量部含有されていることが好ましく、0.1〜5質量部含有されていることがより好ましい。架橋剤を上記範囲とすることにより、良好な密着性と耐久性が得られる。架橋剤の含有量が0.01質量部よりも少ない場合、架橋形成が不十分となり、光学用粘着剤組成物の凝集力が小さくなって、糊残りの原因となることがある。一方、含有量が15質量部より多い場合、凝集力が大きくなり、流動性が低下し、被着体への濡れが不十分となって、はがれの原因となることがある。
【0054】
本発明の光学用粘着剤組成物により形成される光学用粘着剤層は、高い屈折率を有するものであり、例えば、23℃の雰囲気下、ナトリウムD線を照射し、アッベ屈折率計((株)アタゴ社製:ABBE REFRACTO METER DR−M2)にて測定される屈折率が1.535以上のものとすることができる。
【0055】
本発明では、光学用粘着剤組成物において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対する芳香環を有する粘着付与樹脂の配合量を増やすと、光学用粘着剤層の屈折率はこれに伴って単調に上昇することを本発明者らは確認している。また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対する芳香族リン酸エステル系可塑剤の配合量が増加することにより光学用粘着剤層の屈折率が単調に上昇することを確認している。このことから、芳香環を有する粘着付与樹脂の配合量及び/又は芳香族リン酸エステル系可塑剤の配合量を適宜に調整することにより、本発明の光学用粘着剤組成物の屈折率を所望の値、例えば1.535以上となるようにすることができる。
【0056】
本発明の光学用粘着剤層の好ましい粘着特性は、それが用いられる用途により異なるが、50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として、20μmの光学用粘着剤層を設け、JIS Z0237:2000に準拠し、貼付から1分以内に測定した粘着力が、0.5N/25mm〜25N/25mmであることが好ましく、1.5N/25mm〜20N/25mmであることがより好ましい。
【0057】
本発明の光学用粘着剤層は、接着される高屈折率光学部材との屈折率差を低下させられる点で、屈折率が1.535以上であることが好ましく、1.540以上であることがより好ましい。
【0058】
本発明の光学用粘着剤層は高い屈折率を示すため、光学部材と他の部材とを接着させたり、光学部材同士を接着させたりする場合に、隣接する層との屈折率差を低いものとすることができ、隣接する層と光学用粘着剤層との界面における光の反射を低いものとすることができる。本発明の光学用粘着剤層は、高い屈折率(例えば、1.535以上)を有するので、本発明の光学用粘着剤層と隣接する層が、屈折率が1.535以上の材料からなるものであっても、隣接する層との屈折率差がない状態とする又は屈折率差を著しく小さくすることができ、界面における反射の抑制と、粘着特性との両立が実現されるので好適に用いることができる。また、隣接する層が、屈折率が1.535未満である場合にも本発明の光学用粘着剤層を用いることができる。
【0059】
(3)光学用粘着性積層体
本発明の光学用粘着性積層体は、支持体の少なくとも片面に、本発明の光学用粘着剤層を有するものである。ここでいう支持体は、ベース基材の他、剥離シートを含むものである。ベース基材は、光学用粘着性積層体が目的とする使用に供された後もなお除去されることなく光学用粘着性積層体に付加しており芯材、保護材、非透過性材、光学部材等としての役割を果たすものである。
【0060】
なお、光学用粘着性積層体は、ベース基材を有していてもよいし、有していなくてもよい。具体例としては、ベース基材の少なくとも片面に光学用粘着剤層を有するものやベース基材の両面に光学用粘着剤層を有するもの、ベース基材に替えて、剥離シートの剥離処理面に光学用粘着剤層を有するものが挙げられる。また、必要に応じて光学用粘着剤層の上(光学用粘着剤層の露出面)に剥離シートを貼着してもよい。剥離シートにより、光学用粘着剤層を保護することができる。
【0061】
ベース基材は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体の不飽和炭素結合を有する化合物の重付加体;シクロオレフィンポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド、ポリノルボルネン系樹脂;トリアセチルセルロース;ポリウレタン系樹脂;ポリイミド系樹脂等の1種単独又は2種以上の混合物をシート状としたプラスチック材料、又はこれらの積層体が挙げられる。また、ベース基材は、コート層、蒸着層等を備えていてもよく、コロナ処理、電子線処理等の物理的改質がされていてもよい。ベース基材は、光学用粘着性積層体の用途により、適宜選択する。このようなベース基材の厚さは、通常6〜300μm、好ましくは12〜200μmである。
【0062】
剥離シートは、特に限定されるものではなく、紙やフィルム等のシートに、剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。紙としては、例えば、グラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、クラフト紙、または上質紙にポリエチレン等のフィルムをラミネートした紙等が挙げられる。フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムが挙げられる。剥離剤としては、フッ素樹脂やシリコーン樹脂、または長鎖アルキル基含有カルバメート樹脂等が挙げられる。剥離剤を乾燥質量で0.1〜3g/m2程度になるようにシートに塗工し、熱硬化やUV硬化等によって剥離層を設けたものが剥離シートとして適宜使用される。
【0063】
本発明の光学用粘着性積層体が接着される被接着体としては、ディスプレイ用基板、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、反射シート、輝度向上フィルム、及びコントラスト向上フィルム、並びに光記録媒体用基板等の光学部材が挙げられる。これらに用いられる材料としてもベース基材と同様のもの等が挙げられる。
【0064】
本発明の光学用粘着性積層体に用いられる本発明の光学用粘着剤層は、高い屈折率を示すので、支持体及び/又は被接着体が用途に応じて種々選択された場合であっても屈折率差を小さいものとすることができ、支持体及び/又は被接着体と光学用粘着剤層との界面における光の反射を低いものとすることができる。
【0065】
本発明の光学用粘着剤積層体の支持体及び/又は被接着体を構成する材料の具体的な屈折率の値は、例えば、ポリビニルアルコールは1.49〜1.53、ポリメチルメタクリレートは1.49、ポリスチレンは1.59、ポリ塩化ビニルは1.53、ポリエチレンは1.53〜1.54、シクロオレフィンポリマーは1.53、ポリエチレンテレフタレートは1.60、ポリアリレートは1.61、ポリカーボネートは1.585、ポリエーテルスルホンは1.63、トリアセチルセルロースは1.49、フッ素系ポリイミドは1.53である。本発明の光学用粘着性積層体は、光学用粘着剤層が高い屈折率を有するので、支持体及び/又は被接着体が屈折率1.535以上の材料からなる場合、支持体及び/又は被接着体の有する高い屈折率を維持しつつ、支持体及び/又は被接着体と光学用粘着剤層との粘着性が優れたものを実現することができる。また、光学用粘着剤層の屈折率は制御することが容易であるので、支持体及び/又は被接着体が屈折率1.535未満の材料からなる場合にも、支持体及び/又は被接着体と光学用粘着剤層との界面の屈折率の差が小さく、支持体及び/又は被接着体と光学用粘着剤層との粘着性が優れたものを実現することができる。
【0066】
本発明の光学用粘着性積層体の製造方法について説明する。
【0067】
まず、光学用粘着剤組成物を、予め有機溶剤等を含有させる、有機溶剤等により希釈する、加温する等により流動化させて光学用粘着剤組成物塗工液を調製する。
【0068】
そして、得られた光学用粘着剤組成物塗工液をベース基材の表面に直接塗布して、ベース基材上に光学用粘着剤層を形成してもよいし、剥離シート上に光学用粘着剤組成物塗工液を塗布して光学用粘着剤層を形成したのち、これをベース基材または別の剥離シートに転写してもよい。光学用粘着剤組成物塗工液を塗布する方法としては特に限定されず、例えばロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング等の方法が挙げられる。これらの方法によって光学用粘着剤組成物塗工液を塗布した後、架橋を促進させる及び/又は溶媒を含む場合に溶媒を除去するために、光学用粘着剤層を加熱処理してもよく、加熱処理温度は、例えば、50〜150℃である。光学用粘着剤層の厚さは、特に制限されず、用途に応じて適宜選定されるが、通常、乾燥状態で1〜200μm程度が好ましく、10〜100μm程度がより好ましい。
【0069】
本発明の光学用粘着性積層体は、上述した光学用粘着剤組成物からなる光学用粘着剤層を具備するものであり、優れた粘着特性と高い屈折率とを両立させたものである。
【0070】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0071】
(実施例1)
アクリル酸n−ブチル(表1においてBAと記載する)95質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(表1においてHEAと記載する)5質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.6質量部、酢酸エチル150質量部を混合し、窒素雰囲気下、60℃で18時間重合し、質量平均分子量50万のアクリル酸エステル共重合体溶液(固形分35質量%)を得た。なお、重合体の質量平均分子量は、GPC(ポリスチレン換算)にて測定を行った。
【0072】
得られた共重合溶液100質量部に対して、α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)(固形分100質量%)(イーストマンケミカル社製:ピコテックスLC)を17.5質量部、縮合液体リン酸エステル系可塑剤であるビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(固形分100質量%)(表1においてBPBDPPと記載する)(大八化学工業社製:CR−741)を35質量部、キシレンジイソシアナート系架橋剤(固形分35.0質量%)(東洋インキ製造社製:BXX5640)2.7質量部を配合し、粘着剤組成物を得た。
【0073】
この粘着剤組成物を、ロールナイフコーターを用いて剥離フィルム(リンテック社製:SP−PET381031)の剥離処理面に塗布し、90℃で1分間加熱・乾燥することにより、厚さ約20μmの粘着剤層とし、この粘着剤層の表面にポリエチレンテレフタレートフィルム50μm(東レ社製:ルミラー50T60)をラミネートし、粘着性積層体を作製した。
【0074】
(実施例2)
ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を70質量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着性積層体を作製した。
【0075】
(実施例3)
α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を24.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着性積層体を作製した。
【0076】
(実施例4)
α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を24.5質量部、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を70質量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着性積層体を作製した。
【0077】
(実施例5)
α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を35質量部、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を17.5質量部とした以外は実施例1と同様にして、粘着性積層体を作製した。
【0078】
(実施例6)
α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を35質量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着性積層体を作製した。
【0079】
(実施例7)
α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を45.5質量部、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を10.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着性積層体を作製した。
【0080】
(実施例8)
α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を45.5質量部、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を17.5質量部とした以外は実施例1と同様にして、粘着性積層体を作製した。
【0081】
(実施例9)
α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を56質量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着性積層体を作製した。
【0082】
(実施例10)
α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)35質量部の代わりに、スチレン系粘着付与樹脂(2)(固形分100質量%)(ヤスハラケミカル(株)社製:SX−100)24.5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着性積層体を作製した。
【0083】
(実施例11)
ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)の代わりに、非縮合液体リン酸エステルであるクレジル2,6−キシレニルホスフェート(固形分100質量%)(表1においてCDXPと記載する。)(大八化学工業(株)社製:PX−110)31.5質量部を用い、α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を31.5質量部とし、キシレンジイソシアナート系架橋剤を1.4質量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着性積層体を作製した。
【0084】
(実施例12)
ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)の代わりに、非縮合液体リン酸エステルであるクレジル2,6−キシレニルホスフェート(大八化学工業(株)社製:PX−110)21質量部及び縮合固体リン酸エステルである1,3−フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)(固形分100質量%)(表1においてPDXPと記載する。)(大八化学工業(株)社製:PX−200)28質量部を用い、α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を28質量部とし、キシレンジイソシアナート系架橋剤を1.4質量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着性積層体を作製した。
【0085】
(比較例1)
アクリル酸n−ブチルを98質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを2質量部とし、α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)及びビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして粘着性積層体を作製した。
【0086】
(比較例2)
アクリル酸n−ブチルを98質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを2質量部とし、α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)の代わりに、スチレン系粘着付与樹脂(2)を10.5質量部用い、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、粘着性積層体を作製したが、アクリル酸エステル共重合体とスチレン系粘着付与樹脂(2)が相分離し、粘着剤層を得ることができなかった。
【0087】
(比較例3)
アクリル酸n−ブチルを98質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを2質量部とし、α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)の代わりに、芳香族変性テルペン系粘着付与樹脂(3)(ヤスハラケミカル(株)社製:TO125)(固形分100質量%)9.7質量部とし、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、粘着性積層体を作製したが、アクリル酸エステル共重合体と芳香族変性テルペン系粘着付与樹脂(3)が相分離し、粘着剤層を得ることができなかった。
【0088】
(比較例4)
アクリル酸n−ブチルを98質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを2質量部とし、α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を3.6質量部とし、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、粘着性積層体を作製した。
【0089】
(比較例5)
アクリル酸n−ブチルを98質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを2質量部とし、α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を10.6質量部とし、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、粘着性積層体を作製した。
【0090】
(比較例6)
アクリル酸n−ブチルを98質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを2質量部とし、α−メチルスチレン系粘着付与樹脂(1)を10.6質量部とし、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を35.2質量部とした以外は、実施例1と同様にして、粘着性積層体を作製した。
【0091】
(比較例7)
ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、粘着性積層体を作製した。
【0092】
(比較例8)
ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用いなかった以外は、実施例3と同様にして、粘着性積層体を作製した。
【0093】
(比較例9)
ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用いなかった以外は、実施例5と同様にして、粘着性積層体を作製した。
【0094】
(比較例10)
ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用いなかった以外は、実施例7と同様にして、粘着性積層体を作製した。
【0095】
(比較例11)
ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用いなかった以外は、実施例9と同様にして、粘着性積層体を作製した。
【0096】
上記の各実施例及び各比較例の粘着性積層体の評価を、以下のようにして行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0097】
<屈折率>
粘着剤層の屈折率を、23℃の雰囲気下、ナトリウムD線を照射し、アッベ屈折率計((株)アタゴ社製:ABBE REFRACTO METER DR−M2)にて屈折率を測定した。なお、アクリル酸エステル共重合体と芳香環を有する粘着付与樹脂が相分離し、粘着剤層を得られなかったものについては屈折率を測定せず、表2において「−」と記載している。
【0098】
<粘着力測定>
粘着性積層体の剥離フィルムを剥離し、PETフィルムを支持体とした試験用粘着性積層体のSUS板#360に対する粘着力をJIS Z 0237に準拠して測定した。なお、測定は、貼付後1分以内に(23℃×50%RH)行った。なお、粘着力測定において、ジッピングが発生した場合は表1及び表2において「Z」と記載し、凝集破壊により糊残りが発生した場合は表1において「Cf」と記載し、粘着剤層が支持体から剥がれてしまった場合は表1及び表2において「AT」と記載した。また、これらがわずかに発生した場合は、「LL」と記載した。なお、アクリル酸エステル共重合体と芳香環を有する粘着付与樹脂が相分離し、粘着剤層を得られなかったものについては屈折率を測定せず、表2において「−」と記載している。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
(結果のまとめ)
芳香族を含有する粘着付与樹脂及び芳香族リン酸エステル系可塑剤を含有していない粘着剤組成物から形成される比較例1の粘着剤層は、屈折率が1.4664であった。
【0102】
これに対し、芳香族を含有する粘着付与樹脂と、芳香族リン酸エステル系可塑剤とを所定の割合で配合した実施例1〜12の粘着剤層は、いずれも、優れた粘着特性を有すると共に、高い屈折率(屈折率が1.5358以上)を有するものであった。
【0103】
実施例1〜12の粘着剤層は、いずれも芳香族リン酸エステル系可塑剤を含有していない粘着剤層と比較して、屈折率が上昇していた。具体的には、実施例1及び2の粘着剤層は、リン酸エステル系可塑剤を配合していない比較例7の粘着剤層と比較して、屈折率が0.0277以上上昇していた。実施例3及び4の粘着剤層は、リン酸エステル系可塑剤を配合していない比較例8の粘着剤層と比較して、屈折率が0.0218以上上昇していた。実施例5及び6の粘着剤層は、リン酸エステル系可塑剤を配合していない比較例9の粘着剤層と比較して、屈折率が0.0102以上上昇していた。実施例7及び8の粘着剤層は、リン酸エステル系可塑剤を配合していない比較例10の粘着剤層と比較して、屈折率が0.0036以上上昇していた。実施例9の粘着剤層は、リン酸エステル系可塑剤を配合していない比較例11の粘着剤層と比較して、屈折率が0.0112上昇していた。
【0104】
また、芳香族リン酸エステル系可塑剤を含有し、芳香環を有する粘着付与樹脂の配合量が40質量%未満である比較例6の粘着剤層では、芳香族リン酸エステル系可塑剤を配合していない比較例5と比較すると屈折率が上昇していたが、例えば1.535以上といった十分な屈折率を有するものではなかった。
【0105】
芳香族リン酸エステル系可塑剤を含有していない比較例10及び比較例11の粘着剤層は、高い屈折率を有するものであったが、粘着剤層が硬くなってしまったため、接着強度が低かった。これより、芳香族リン酸エステル系可塑剤を配合せずに、芳香環を有する粘着付与樹脂を多量に配合した場合には、粘着特性が大幅に低下してしまうことがわかった。
【0106】
以上より、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して、芳香環を有する粘着付与樹脂を40〜200質量部、芳香族リン酸エステル系可塑剤を20〜220質量部含む光学用粘着剤組成物は、優れた粘着特性と高い屈折率とを両立させた光学用粘着層を形成できるものであることがわかった。
【0107】
また、上述した実施例では、アクリル酸n−ブチルと、アクリル酸2−ヒドロキシエチルとを原料単量体としたアクリル酸エステル共重合体を用いることにより、優れた粘着特性と高い屈折率とを両立させた光学用粘着層を形成できるものとなることが確認されたが、他の炭素数のアルキル基又はシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合も、本発明の作用効果を損なうものを特別使用しない限り、優れた粘着特性と高い屈折率とを両立させた光学用粘着層を形成できるものとなることが予測される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする原料単量体を重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して、芳香環を有する粘着付与樹脂を40〜200質量部、芳香族リン酸エステル系可塑剤を20〜220質量部含むことを特徴とする光学用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記芳香族リン酸エステル系可塑剤が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【化1】

(一般式(1)において、nは1又は2の整数であり、Rは、それぞれ独立にH又はCHであり、Rはそれが付加する芳香環に複数付加していてもよく、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、又はアルキルエーテル基(ただし、全てのRの炭素数の合計が12以下であり、Rは直鎖であっても分岐していてもよい。)である。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学用粘着剤組成物から形成されたことを特徴とする光学用粘着剤層。
【請求項4】
前記光学用粘着剤層は屈折率が1.535以上であることを特徴とする請求項3に記載の光学用粘着剤層。
【請求項5】
支持体の少なくとも片面に請求項3又は4に記載の光学用粘着剤層を備えることを特徴とする光学用粘着性積層体。

【公開番号】特開2012−167188(P2012−167188A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29198(P2011−29198)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】