説明

光学異方性体、その製造方法、並びにそれを用いた光学素子及び表示素子

【課題】 赤色、緑色及び青色の三色の表示領域からなる画素を有するカラー画像表示装置、とりわけカラー液晶表示装置に組み込まれて用いられる場合、視野角特性の改善に寄与する光学異方性体を提供する。
【解決手段】 赤色、緑色及び青色の三色の表示領域からなる画素を有する表示素子に組み込まれて用いられる光学異方性体であって、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化され、且つ各々のパターン化された単位が複数個の分割領域により構成され、それぞれの分割領域が、ディスコティック液晶分子を含む光学異方性体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子等の表示素子に組み込まれて用いられる光学異方性体、その製造方法、及びそれを用いた表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶化合物を高度に配向固定した光学異方性層を有する光学フィルムは、液晶表示装置の光学補償フィルム、輝度向上フィルム、投射型表示装置の光学補償フィルム等、近年になって様々な用途に展開されつつあり、中でも液晶表示装置の光学補償フィルムとしての発展は目覚しいものがある。通常、液晶表示装置は、偏光板と液晶セルとを備える。現在主流であるTN方式のTFT液晶表示装置においては、光学補償フィルムを偏光板と液晶セルの間に挿入し、表示品位の高い液晶表示装置を実現している。また、偏光膜の片面に位相差フィルム、他方の面に保護フィルムを有する楕円偏光板を用いることで、液晶表示装置を厚くすることなく、正面コントラストを高くすることができる発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ところが、前記構成の位相差フィルム(光学補償フィルム)では、十分な視野角改良効果が得られず、液晶表示装置の表示品位は低下してしまうという問題があった。
【0003】
現在では、透明支持体上にディスコティック(円盤状)液晶化合物から形成された光学異方性層を塗設した光学補償フィルムを、直接偏光板の保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置を厚くすることなく、視野角に関する問題は大きく改善されている(例えば、特許文献2および3参照)。
【0004】
一方、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化された光学異方性体を光学補償フィルムに用いる方法も検討され、棒状液晶化合物からなる液晶層を光学異方性体として用いた例において、液晶表示装置の視野角や表示特性が改善されるとされている(例えば、特許文献4および5)。
【0005】
しかしながら、このような光学補償フィルムにおいても、視野角特性はまだ十分とはいえず。さらなる改良が求められていた。
【特許文献1】特開平2−247602号公報
【特許文献2】特開平7−191217号公報
【特許文献3】欧州特許第0911656A2号明細書
【特許文献4】特開平6−194521号公報
【特許文献5】特開2004−191832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、赤色、緑色及び青色の三色の表示領域からなる画素を有するカラー画像表示装置、とりわけカラー液晶表示装置に組み込まれて用いられる場合、視野角特性の改善に寄与する光学異方性体、それを備えた表示素子及び光学異方性体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、以下の(1)〜(8)によって達成された。
(1) 赤色、緑色及び青色の三色の表示領域からなる画素を有する表示素子に組み込まれて用いられる光学異方性体であって、
赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化され、且つ各々のパターン化された単位が複数個の分割領域により構成され、それぞれの分割領域が、ディスコティック液晶分子を含む光学異方性体。
(2) 前記分割領域において、ディスコティック液晶分子がネマティックハイブリッド配向状態に固定されている(1)の光学異方性体。
(3) 前記分割領域のうちの少なくとも一つの領域のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が厚さ方向に形成するカーブと、前記分割領域のうちの他の一つの領域のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が厚さ方向に形成するカーブとが互いに異なる(2)の光学異方性体。
(4) 前記分割領域のうちの少なくとも一つの領域のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が厚さ方向に形成するカーブが左回りのカーブであり、前記分割領域のうちの他の一つの領域のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が厚さ方向に形成するカーブが右回りのカーブである(2)又は(3)の光学異方性体。
(5) 隣接する少なくとも2つの分割領域のネマティックハイブリッド配向が、互いに実質的に鏡面対称である(2)〜(4)のいずれかの光学異方性体。
(6) 複数個の分割領域が、2〜8個の領域である(1)〜(5)のいずれかの光学異方性体。
(7) 前記分割領域の各辺の長さが0.1μm〜200μmである(1)〜(6)のいずれかの光学異方性体。
(8) 前記分割領域がそれぞれ、重合性基又は架橋性基を有するディスコティック液晶性化合物を含有する組成物から形成された領域である(1)〜(7)のいずれかの光学異方性体。
(9) 基板と、該基板上に配置された(1)〜(8)のいずれかの光学異方性体とを有する光学素子。
(10) 赤色、緑色及び青色の各色の微細パターンを有する基板と、該基板上に配置された(1)〜(8)のいずれかの光学異方性体とを有する光学素子。
(11) (1)〜(8)のいずれかの光学異方性体、又は(9)もしくは(10)の光学素子を含む表示素子。
【0008】
(12) 赤色、緑色及び青色の三色の表示領域からなる画素を有する表示素子に組み込まれて用いられる光学異方性体の製造方法であって、
1)基板、あるいはカラーフィルター上に光配向膜を形成する工程、
2)光配向膜を光照射して、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化し、且つ各々のパターンを複数個の分割領域に分割する工程、
3)光照射されて複数個の分割領域に分割された光配向膜表面に、ディスコティック液晶性化合物を含有する組成物を適用して、ディスコティック液晶性化合物の分子を配向させて、前記光配向膜の分割領域の各々の表面に液晶層を形成する工程、及び
4)前記液晶層を重合反応により硬化させる工程、
を含む光学異方性体の製造方法。
(13) 光配向膜に光照射を施す2)工程において、複数の半導体レーザーからそれぞれ出射された複数のレーザービームを合波したレーザービームを、マルチモード光ファイバを介して光照射することを特徴とする(12)の光学異方性体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学異方性体は、赤色、緑色及び青色の三色の表示領域からなる画素を有するカラー画像表示装置、特にカラー液晶表示装置に組み込んで用いることにより、視野角特性の改善に寄与し、本発明の光学異方性体を有するカラー画像表示装置は優れた視野角特性を呈する。
【発明の実施の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
本明細書において、Reは各々、波長λにおける面内のリターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光を基板に対して法線方向に入射させて測定される。Re(40)、Re(−40)は、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として基板の法線方向に対して+40度傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および基板の法線方向に対して−40度傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値を示す。
本明細書におけるλは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmを指し、特に色に関する記載がなければ545±5nmまたは590±5nmを指す。
【0012】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5度未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明の一実施の形態に係る光学異方性体について説明する。
(光学異方性体)
図1に示すように、本実施の形態に係る光学異方性体11は、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)に相当する各々の副画素に対応する単位14、15及び16にパターン化され、且つ各々のパターン化された単位14、15及び16が、複数個の分割領域14a及び14b、15a及び15b、ならびに16a及び16bにより構成される。さらに、それぞれの分割領域14a、14b、15a、15b、16a及び16bが、ディスコティック液晶分子を含む。ディスコティック液晶分子はそれぞれの領域において、所定の配向状態、例えば、ネマティックハイブリッド配向状態に固定されているのが好ましい。
【0014】
図1では、各々の単位が2つの分割領域に分割された態様を示したが、本発明では、各単位が2以上の分割領域を含む態様のいずれであってもよい。一般的には2〜8個の分割領域に分割されているのが好ましく、2〜4個の分割領域に分割されているのがさらに好ましい。分割領域は、画素の相似形状であるのが好ましく、一般的には、直方体又は立方体であるのが好ましい。かかる形状の場合、各辺の長さは、一般的には、0.1〜200μmであるのが好ましい。各辺のうち横又は縦の長さは、1〜200μmであるのが好ましく、1〜100μmであるのが好ましい。また、各辺のうち高さ(厚み)は、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。なお、形状が立方体又は直方体でなく、例えば、円柱状もしくは楕円柱状である場合は、断面の短径及び長径が1〜200μmであるのが好ましく、高さが0.1〜20μmであるのが好ましい。
【0015】
本実施の形態の光学異方性体11は、基板12上に形成される。光学異方性体11と基板12の間には、必要に応じて配向層13を設けてもよい。また、基板は、カラーフィルターであってもよく、即ち、赤色、緑色及び青色の各色の微細パターンを有する基板であってもよい。
【0016】
本発明の光学異方性体は、ディスコティック液晶性分子を含む複数の分割領域から構成されるが、各分割領域においてディスコティック液晶性分子は、ネマティック配向状態に固定されているのが好ましい。さらに、前記分割領域のうちの少なくとも一つの領域(例えば図1中14a)のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が深さ方向に形成するカーブと、前記分割領域のうちの他の一つの領域(例えば図1中14b)のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が深さ方向に形成するカーブとが、互いに異なるのが好ましい。
ここで、「ネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が深さ方向に形成するカーブ」について説明する。図2に示す様に、ネマティックハイブリッド配向では、ディスコティック液晶分子は、その円盤面を層平面に対して所定の傾斜角で配向しているとともに、その傾斜角が、一方の界面(例えば配向膜界面)から他方の界面(例えば空気界面)に向かって、即ち層の厚さ方向に、増大(又は減少)している。ディスコティック液晶性分子の円盤面の中心点を、厚さ方向に結んだ線は、図2に示す様に、カーブを形成する。このカーブを、本明細書では、「ネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が深さ方向に形成するカーブ」という。
【0017】
前記分割領域中のディスコティック液晶性分子が形成するカーブが互いに異なるとは、カーブの向きが異なることをいう。例えば、前記分割領域のうちの少なくとも一つの領域(例えば図1中14a、15a、16a)のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が深さ方向に形成するカーブが、図2に示す様に、左回りのカーブである場合、前記分割領域のうちの他の一つの領域(例えば図1中14b、15b、16b)のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が深さ方向に形成するカーブは、図3に示す様に右回りであるのが好ましい。隣接する分割領域中のネマティックハイブリッド配向は互いに実質的に鏡面対称の関係にあるのが好ましく、即ち、一方が右回りのカーブを形成し、他方が左回りのカーブを形成しているのが好ましい。
【0018】
各々の分割領域中のディスコティック分子によって形成されるカーブは、副画素に対応する一単位に含まれる分割領域全体で平均化されているのが好ましい。例えば、図1に示す様に、一単位に含まれる分割領域が2つの場合は、上記した様に、一の分割領域中の分子が左回りのカーブを形成し、他の分割領域中の分子は右回りのカーブを形成して、鏡面対称となり、平均化されているのが好ましい。分割領域が2列×2行(4個)、2列×3行(6個)及び2列×4行(8個)等で配置されている場合も、同様に、一列は、右回りのカーブの分割領域を配置し、他列については左回りのカーブの分割領域を配置してもよい。また、分割領域が2×2の場合は、4つの分割領域ごとに、カーブの方向を90°ずつずらして平均化してもよい。この様に、一単位中に含まれる分割領域の数及び配置に応じて、各分割領域中のネマティックハイブリッド配向のカーブを調整し、平均化するのが好ましい。
【0019】
本発明において、前記光学異方性体をなす分割領域は、重合性基又は架橋性基を有するディスコティック液晶性化合物を含有する組成物から形成されているのが好ましい。前記組成物に、熱、光等を照射して、ディスコティック液晶分子を重合反応又は架橋反応させて、結果的に、ディスコティック液晶性分子が高分子量化して、液晶性を失った重合体または架橋体から、前記分割領域を形成してもよい。前記分割領域において、ディスコティック液晶性分子は、配向状態で固定されているのが好ましく、重合または架橋反応によりその配向状態が固定されているのが最も好ましい。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0020】
本発明の光学異方性体は、光配向膜を利用した、下記工程を含む方法によって容易に製造することができる。
1)基板等の表面上に光配向膜を形成する工程、
2)光配向膜を光照射して、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化し、且つ各々のパターンを複数個の分割領域に分割する工程、
3)光照射されて複数個の分割領域に分割された光配向膜表面に、ディスコティック液晶性化合物を含有する組成物を適用して、ディスコティック液晶性化合物の分子を配向させて、前記光配向膜の分割領域の各々の表面に液晶層を形成する工程、及び
4)前記液晶層を重合反応により硬化させる工程。
【0021】
1)の工程に用いられる基板は、透明基板であるのが好ましい。透明基板の例としては、ガラス基板、および光透過率が80%以上である高分子基板が特に好ましい例としてあげられる。本発明において、高分子基板には、高分子フィルムも含まれる。高分子基板の例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホンが含まれる。市販の高分子(ノルボルネン系ポリマーでは、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)など)を用いてもよい。
【0022】
また、基板は着色していてもよく、ブラックマトリックス等で区切られた赤色、緑色及び青色の各色の微細パターンを有するカラーフィルター等の基板でもよく、また、カラーフィルターの表面に、本発明の光学異方性体を形成してもよい。
【0023】
1)の工程では、光配向膜を、基板等の表面に形成する。「光配向膜」とは、光の照射により配向機能を発現させる膜をいう。光配向膜の形成に用いられる材料としては、光配向機能を発現させる光配向性基を有する化合物が好ましく、例えば、アゾ基等の光異性化する光配向基を有する化合物、シンナモイル基、クマリン基、カルコン基等の光二量化する光配向基を有する化合物が好適である。また、ベンゾフェノン基等の光架橋により配向機能を発現させる化合物やポリイミド樹脂等の光分解により配向機能を発現させる化合物も好ましい例としてあげることができる。
【0024】
光配向膜は、基板、あるいはカラーフィルター上に、光配向膜用の材料、例えば、光配向性基を有する化合物を含有する組成物を適用することで形成することができる。該組成物を塗布液として調製し、基板等の表面に塗布・乾燥して形成するのが好ましい。具体的には、前記光配向性基を有する化合物等を、適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、該塗布液を、基板、あるいはカラーフィルター表面に塗布・乾燥して、形成するのが好ましい。塗布液は、公知の方法(例、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施することができる。
光配向膜の厚さは、0.01〜2μmが好ましく、0.01〜0.1μmがさらに好ましい。
【0025】
2)の工程では、光配向膜に光照射を施す(光配向膜のパターン化工程)。光照射により、光配向膜は、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化され、且つ各々のパターンを複数個の分割領域に分割される。パターン形成のための光照射には、マスクを用いる方法、あるいはレーザーによる直接描写を用いる方法を採用することができる。光照射において、用いる光の波長は、用いる光配向膜により異なり特に限定されるものではない。好ましくは、光照射に用いる光のピーク波長が200nm以上700nm以下であり、より好ましくは光のピーク波長が300nm以上700nm以下である。
【0026】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、カーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー(例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザー)、発光ダイオード、陰極線管などを挙げることができる。光照射は非偏光でも偏光でもよく、偏光を用いる場合は直線偏光を用いることが好ましい。さらに、フィルターや波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0027】
マスクを用いる方法に関しては、光配向膜を形成した基板、あるいはカラーフィルター上に前記、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化され、それぞれのパターンがさらに複数の分割された微細領域に相当するパターンマスクを配し、光照射を必要な回数を施す。光照射においては、光を基板の斜め方向から照射することが好ましい。照射角度は特に限定されず、それぞれの微細領域に相当する必要な照射角度から照射される。一般に、基板の法線方向に対して5度〜75度が好ましく、10度〜60度であることが好ましい。さらに、右回りカーブ、あるいは左回りカーブのネマティックハイブリッド配向の形成に対しては、それぞれの微細領域に相当する必要な方向から照射される。例えば、鏡面対称の方向(層平面に対する垂線から、+α°(0<α<90)の方向と−α°の方向)から光を照射して分割領域を形成すれば、該光配向膜の分割領域上にそれぞれ形成される光学異方性体のネマティックハイブリッド配向も、それぞれ右回りのカーブ及び左回りのカーブになり、実質的に鏡面対称になる。
【0028】
また、光配向膜を形成した基板、あるいはカラーフィルター上に一方向から全面に光照射を施した後に、前記、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化され、それぞれのパターンがさらに複数の分割された微細領域に相当するパターンマスクを配し、光照射を必要な回数を施してもよい。この時、光配向膜には、例えば、アゾ基等の光異性化する光配向基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0029】
レーザーによる直接描写を用いる方法に関しては、例えば、図4に示す装置を用いて直接描写することができる。図4は、レーザーによる非偏光斜め照射の方法の例を示す。図示されるように、放熱ブロック(64)上に配列固定された複数の半導体レーザー(LD1〜LD7)からそれぞれ出射されたレーザービームは、それぞれの半導体レーザー毎に設けられたコリメーターレンズ(L1〜L7)で平行光化され、一つの合波レンズ(66)により合波されて(B1〜B7)、マルチモード光ファイバ(63)のコア(63a)の入射端面で収束される。そして、光ファイバ(63)の出射端部より、基板等の表面に形成された光配向膜の表面に、所定の方向から照射される。ここで、半導体レーザーとして、チップ状態のシングルキャビティ窒化物系化合物半導体レーザーが好適であり、特にGaN系半導体レーザーが好ましい例として挙げられる。前記半導体レーザーの射出光の波長としてはとしては、350nm〜800nmが好ましく、350nm〜450nmが特に好ましい。
【0030】
なお上述の光学系の構成においては、複数の半導体レーザーが、各々の活性層と平行な方向に発光点が1列に並ぶように配設され、合波光学系が、前記発光点の並び方向の開口径が該方向に直角な方向の開口径よりも小さく形成されて、各半導体レーザー毎に設けられた複数のコリメーターレンズ、およびこれらのコリメーターレンズで平行光化された複数のレーザービームをそれぞれ合波して前記マルチモード光ファイバの端面で収束させる合波レンズから構成されていることが望ましい。また、上記複数のコリメーターレンズは互いに一体化されて、レンズアレイとして構成されることが望ましい。他方、上記複数の半導体レーザーを実装するブロックは、複数に分割され、互いに張り合わせて一体化されていることが望ましい。また複数の半導体レーザーは、一列に並べて配置する場合には3〜10個、さらに好ましくは6または7個設けられることが望ましい。またこの半導体レーザーとしては、発光幅が1.5〜5μm、さらに好ましくは2〜3μmのものが用いられるのが望ましい。
【0031】
上記マルチモード光ファイバとしては、コア径が50μm以下で、NA(開口数)が0.3以下のものが用いられることが望ましい。
【0032】
上述したマルチモード光ファイバを1本だけ用いて構成されてもよいが、好ましくは、該マルチモード光ファイバを複数用いて、それらのマルチモード光ファイバの各々に複数の半導体レーザーおよび合波光学系を組み合わせ、各マルチモード光ファイバから高出力のレーザービームを発するように構成することもできる。
【0033】
光源の具体的な構成の例としては、特開2004−47650号公報、特開2004−47651号公報、特開2004−96088号公報等のレーザー装置を参照することができる。
【0034】
レーザービームは、マルチモード光ファイバの出射端部からの光を、光配向膜を形成した支持体表面に対する垂線から所定の角度傾斜させた方向へ出射させて、光配向膜に入射させることで、斜め照射することができる。垂線と入射方向のなす角度は5度〜75度が好ましく、10度〜60度がより好ましい。単位面積当たりの照射エネルギー量は樹脂の特性、照射波長などに大きく依存するが、5mJ/cm2〜30J/cm2程度、より好ましくは50mJ/cm2〜10J/cm2の範囲である。
【0035】
レーザービームの照射に関しては、出射端部を走査すること等により任意の大きさの照射が可能となる。また、複数のマルチモード光ファイバを出射端部において1次元アレイ状に配設することもできる。さらに、マルチモード光ファイバの出射端部の先には必要に応じて円筒レンズ等を配置してもよい。
【0036】
上記方法では、光配向膜を利用する製造方法を例に挙げたが、勿論、通常の配向膜を利用して、本発明の光学異方性体を作製してもよい。配向膜は、例えば、有機化合物(高分子も含まれる。)のラビング処理や光配向処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログループを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコ酸、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリル酸メチルなど)の累積のような手段で設けることができる。
【0037】
次に、3)の工程で、ディスコティック液晶性化合物を少なくとも含有する組成物を、光照射により分割領域に分割された光配向膜表面に適用して、ディスコティック液晶性化合物の分子を配向させて、前記光配向膜の分割領域の各々の表面に液晶層を形成する。
前記組成物は、少なくとも一種のディスコティック液晶性化合物を含有する。本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
【0038】
ディスコティック液晶性化合物としては、トリフェニレン化合物、三置換ベンゼン化合物、六置換ベンゼン化合物、トルキセン化合物等が好ましく、トリフェニレン系ディスコティック液晶化合物、三置換ベンゼン系ディスコティックが特に好ましい。
【0039】
また、ディスコティック液晶性化合物としては、重合性基または架橋基を有するディスコティック液晶化合物が特に好ましく、重合性基または架橋基を有するディスコティック液晶性化合物については、例えば特開2001−4387号公報、特願2005−097613号明細書等に開示されている。
【0040】
前記組成物は、必要に応じて、ディスコティック液晶性化合物以外の添加剤を含有していてもよい。添加剤の例としては、水平配向剤、風ムラ防止剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、配向温度を低下させる添加剤(可塑剤)、重合性モノマー等である。加える添加剤の量は組成物の液晶性を損なわない範囲なら特に限定されないが、その総量が構成成分の30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。以下、各添加剤について説明する。
【0041】
前記組成物は、水平配向剤を含有していてもよい。水平配向剤とは、ディスコティック液晶化合物のメソゲンコアとなる円盤面と支持体の水平面を平行、あるいはほぼ平行にする添加剤を意味する。本明細書では、水平配向とは水平面とのなす角が10度未満であることを指し、その角は0度〜5度が好ましく、0度〜3度がより好ましい。トリアジンやトリフェニレン骨格を有する円盤状化合物が具体的な好ましい例として挙げられる。
【0042】
前記組成物は、風ムラ防止剤を含有していてもよい。ディスコティック液晶性化合物とともに使用して、塗布時の風ムラを防止するための材料としては、一般にフッ素系ポリマーを好適に用いることができる。使用するフッ素系ポリマーとしては、液晶性化合物のチルト角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。風ムラ防止剤として使用可能なフッ素ポリマーの例としては、特開2004−198511号公報(段落番号[0049]〜[0057]{[化20]〜[化28]}に記載の化合物)、特願2003−129354号明細書、特願2003−394998号明細書、特願2004−12139号明細書に記載がある。ディスコティック液晶性化合物とフッ素系ポリマーとを併用することによって、ムラを生じることなく表示品位の高い画像を表示することができる。さらに、ハジキなどの塗布性も改善される。液晶性化合物の配向を阻害しないように、風ムラ防止目的で使用されるフッ素系ポリマーの添加量は、液晶性化合物に対して一般に0.1〜2質量%の範囲であるのが好ましく、0.1〜1質量%の範囲にあるのがより好ましく、0.4〜1質量%の範囲にあるのがさらに好ましい。
【0043】
前記組成物は、ハジキ防止剤を含有していてもよい。ディスコティック液晶性化合物とともに使用して、塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。使用するポリマーとしては、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物のチルト角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。ハジキ防止剤として使用可能なポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、液晶性化合物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあるのがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあるのがさらに好ましい。
【0044】
前記組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤には、熱重合開始剤と光重合開始剤等が含まれるが、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号明細書、米国特許第2367670号明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号明細書、米国特許第2951758号明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が含まれる。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0045】
前記組成物は、重合性モノマーを含有していてもよい。本発明に使用可能な重合性モノマーとしては、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物のチルト角変化や配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため特に好ましい。
【0046】
前記組成物は、塗布液として調製してもよい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0047】
塗布液の光配向膜表面への塗布は、公知の方法(例えば、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。また、塗布液における液晶性化合物の含有量は1〜50質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、20〜40質量%がさらに好ましい。
【0048】
前記組成物を、例えば塗布液として調製した後、光照射によりパターニングを施した光配向膜状に塗布する。次に、必要に応じて加熱を施し、前記ディスコティック液晶層が液晶を呈する温度域において、ディスコティック液晶をネマティックハイブリッド配向させる。ディスコティック液晶性分子は、互いに異なる照射方向から光を照射されることで分割された光配向膜のそれぞれ分割領域上で、それぞれの領域に発現された配向能に応じて、所定のネマティックハイブリッド配向状態になる。その結果、光配向膜が、光照射によって、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化され、且つ各々のパターンが複数個の分割領域に分割されたのと同様に、該光配向膜上に形成された液晶層も、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化され、且つ各々のパターンが複数個の分割領域に分割される。
【0049】
前記4)の工程では、前記液晶層を重合反応により硬化させて、光学異方性体を得る。液晶組成物が液晶を呈する温度付近において重合を施し、液晶組成物の配向を固定化することにより、安定な光学異方性体を作製することができる。液晶性分子の重合には、熱あるいは電磁波による公知の種々の架橋法が採用できるが、紫外光による光重合開始剤を用いるラジカル重合が特に好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
光学異方性体の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
【0050】
4)工程により、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化され、それぞれのパターンがさらに複数の分割された分割領域により構成されている光学異方性体であって、前記分割領域が、ネマティックハイブリッド配向状態に固定されたディスコティック液晶分子を含む光学異方性体が製造される。
【0051】
本発明の光学異方性体は、赤色、緑色及び青色の三色の表示領域からなる画素を有する表示素子に組み込まれて用いられる。本発明の光学異方性体は、基板上に配置された状態で、表示素子中に組み込むことができる。基板として、赤色、緑色及び青色の各色の微細パターン、即ちカラーフィルター層を有する基板を用いてもよい。かかる場合は、カラーフィルター層上に本発明の光学異方性体を配置してもよいし、カラーフィルター層が形成された表面とは反対側の表面に、本発明の光学異方性体を配置してもよい。
【0052】
本発明の表示素子は、本発明の光学異方性体を含むことを特徴とする。以下、本発明の一実施の形態に係る表示素子について説明する。
(表示素子)
図5は、本発明の光学異方性体11を有する液晶表示素子20の一例の概略断面図である。図5の例は、液晶セル40、液晶セル40の両側に偏光板30、およびバックライト部50を有する表示装置である。
【0053】
液晶セル40は、一対の対向基板41と、これらの対向基板41内に配置された液晶45とを有している。一対の対向基板41の一方には、TFT駆動素子46が配置されている。また、対向基板41の間には、赤色42R、緑色42G及び青色42Bの三色の表示領域に対応する副画素を有するカラーフィルター42、透明電極層44、配向層43が配置されている。
【0054】
偏光板30は、二枚の基板(保護層)31及び33と、それに挟持される偏光層32からなる。バックライト部50は、導光板52、拡散板51及び光源53からなる。
【0055】
図5に示す表示素子20において、本発明の光学異方性体11は、偏光板30を構成する部材として用いることができる。例えば、上下の偏光板として、高分子フィルム等からなる基板に本発明の光学異方性体11を配置した保護層を有する偏光板30を用いて、該保護層が液晶セル側になる様に組み込んでもよい。光学異方性体11は、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素(14、15、16)に対応する単位にパターン化されており、それぞれのパターンはさらに複数の分割された微細領域(例えば、14a、14b、15a、15b、16a、16b)により構成されている。
【0056】
図6に、本発明の液晶表示素子の他の実施形態を示す。
図6中、図5と同一の部材については同一の番号を付し、説明は省略する。図6に示す液晶表示素子は、液晶セル内に、本発明の光学異方性体11を有する。上側の液晶セルの基板として、ガラス基板上に、カラーフィルター層42及び本発明の光学異方性体11を有する基板を用いることで、光学異方性体11を液晶セル内に組み込むことができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[実施例1]
光配向性化合物A−1(特開2004−83810号公報に記載の方法により合成した)の1%ジメチルホルムアミド溶液を光配向膜塗布液を調製し、該塗布液を、ガラス基板上にスピンコート(2000rpmにて20秒間)して、光配向膜を形成した。
そして、光配向膜を形成した基板に対し、紫外線照射装置により基板に対する法線より45度の角度から150mWの紫外線を100秒間照射した。続いて、100μm角の網点パターンを光配向膜を塗布した基板上に配置し、基板に対する法線より−45度の角度から150mWの紫外線を100秒間再び照射した。
【0058】
次に、下記に示す組成の液晶組成物の塗布液を、光照射を施した光配向膜上にスピンコート(2000rpmにて20秒間)により塗布し、膜面温度130℃で加熱してネマティックハイブリッド配向させた。その後、同温度を保持したまま0.4J/cm2の紫外線を照射して該液晶層の配向状態を固定してパターン化された光学異方性体を作製した。形成した光学異方性体の厚さは1.5μmであった。
【0059】
────────────────────────────────────
液晶組成物塗布液
────────────────────────────────────
下記のディスコティック液晶性化合物 D−1 100質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
光重合開始剤 3.3質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
────────────────────────────────────
【0060】
【化1】

【0061】
【化2】

【0062】
なお、上記ディスコティック液晶性化合物は、Polym.Adv.Technol.、第11巻、398頁(2000)に記載の方法により合成した。
光学異方性体が形成された基板を、対角位において水平にした状態(図7)、水平に対して右に10度傾けた状態(図8)、及び左に10度傾けた状態(図9)にて偏光顕微鏡(Nikon製 ECLIPE E600W POL)による切片観察を行った。図7〜9に示す観察結果から明らかなように、光配向膜のパターンに応じて、右回りカーブのネマティックハイブリッド配向と左回りカーブのネマティックハイブリッド配向からなる微細構造を有していることを確認した。さらに、その配向膜側のチルト角がそれぞれおよそ30度であることを確認した。
その光学特性をKOBRA・21ADH(王子計測機器製)により測定した結果、波長589nmにおける正面レターデーションであるReが64nm、基板の法線方向から40度傾斜した方向から測定したレターデーションであるRe(40)が66nm、基板の法線方向から−40度傾斜した方向から測定したレターデーションであるRe(―40)が63nmであった。
本結果より、右回りカーブのネマティックハイブリッド配向と左回りカーブのネマティックハイブリッド配向からなる微細構造を形成することにより、その対面方向からの光学特性が平均化され、ハイブリッド配向に基づく視野角特性が改善できることを確認できた。
【0063】
[実施例2]
実施例1と同様にしてガラス基板上に光配向膜を形成した。得られた試料をその配向層側を上にしてステージ上に設置した。図4に示すように、放熱ブロック(65)上に配列固定された7つのGaN系半導体レーザー(LD1〜LD7)からそれぞれ出射されたレーザービーム(レーザービーム波長;406nm)を、それぞれの半導体レーザー毎に設けられたコリメーターレンズ(L1〜L7)で平行光化し、一つの合波レンズ(66)によりマルチモード光ファイバ(63)に収束させ、出射端部に配置した円筒レンズ(62)へと導き、光配向膜(13)を塗布した基板(12)に対して法線方向から45度、あるいは−45度の角度をなす方向から照射した。このとき、単位面積あたりの照射エネルギーが均一に5J/cm2、一つのパターンが20μm角になるようにステージを走査し、光照射を行った。
次に、実施例1と同様の方法により液晶組成物塗布液を塗布し、重合によりそのネマティックハイブリッド配向を固定化し、任意にパターン化された光学異方性体を作製した。
【0064】
[実施例3]
下記に示す光配向性化合物A−2の1%ジメチルホルムアミド溶液を光配向膜塗布液として、ガラス基板上にスピンコート(2000rpmにて20秒間)により光配向膜を形成した。
【0065】
【化3】

なお、上記光配向性化合物は、Macromol. Symp.、第137巻、129頁(1999)に記載の方法により合成した。
【0066】
そして、光配向膜を形成した基板に対し、紫外線照射装置により基板に対する法線より45度の角度から150mWの紫外線を150秒間照射した。続いて、100μm角の網点パターンを光配向膜を塗布した基板上に配置し、基板に対する法線より−45度の角度から150mWの紫外線を150秒間再び照射した。
次に、実施例1と同様の方法により液晶組成物塗布液を塗布し、重合によりそのネマティックハイブリッド配向を固定化し、任意にパターン化された光学異方性体を作製した。形成した光学異方性体の厚さは1.5μmであった。その光学特性をKOBRA・21ADH(王子計測機器製)により測定した結果、波長589nmにおける正面レターデーションであるReが27nm、基板の法線方向から40度傾斜した方向から測定したレターデーションであるRe(40)が44nm、基板の法線方向から−40度傾斜した方向から測定したレターデーションであるRe(―40)が47nmであった。
さらに、偏光顕微鏡(Nikon製 ECLIPE E600W POL)による切片観察の結果を行い、右回りカーブのネマティックハイブリッド配向と左回りカーブのネマティックハイブリッド配向からなる微細構造を有していることを確認した。さらに、その配向膜側のチルト角がそれぞれおよそ7度であることを確認した。
本結果より、右回りカーブのネマティックハイブリッド配向と左回りカーブのネマティックハイブリッド配向からなる微細構造を形成することにより、その対面方向からの光学特性が平均化され、ハイブリッド配向に基づく視野角特性が改善できることを確認できた。
【0067】
[比較例1]
実施例1と同様にしてガラス基板上に光配向膜を形成した。そして、光配向膜を形成した基板に対し、紫外線照射装置により基板に対する法線より45度の角度から150mWの紫外線を100秒間照射した。
次に、実施例1と同様の方法により液晶組成物塗布液を塗布し、重合によりそのネマティックハイブリッド配向を固定化し、光学異方性体を作製した。形成した光学異方性体の厚さは1.5μmであった。
その光学特性をKOBRA・21ADH(王子計測機器製)により測定した結果、波長589nmにおける正面レターデーションであるReが62nm、基板の法線方向から40度傾斜した方向から測定したレターデーションであるRe(40)が105nm、基板の法線方向から−40度傾斜した方向から測定したレターデーションであるRe(―40)が21nmであり、その対面方向からの光学特性が非対称であった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の光学異方性体を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明の光学異方性体を構成する一分割領域中のディスコティック液晶分子の配向を模式的に示す模式図であり、左回りのカーブでネマティックハイブリッド配向した分子の配向を示す模式図である。
【図3】本発明の光学異方性体を構成する一分割領域中のディスコティック液晶分子の配向を模式的に示す模式図であり、右回りのカーブでネマティックハイブリッド配向した分子の配向を示す模式図である。
【図4】本発明に使用可能な、斜め光照射に用いる合波レーザー光源の例を示す平面図である。
【図5】本発明の光学異方性体を含む液晶表示装置の一例の概略断面図である。
【図6】本発明の光学異方性体を含む液晶表示装置の他の例の概略断面図である。
【図7】実施例1における、本発明の光学異方性体の対角位における偏光顕微鏡観察結果である。
【図8】実施例1における、本発明の光学異方性体を対角位において水平に対して10度傾けた時の偏光顕微鏡観察結果である。
【図9】実施例1における、本発明の光学異方性体を対角位において水平に対して−10度傾けた時の偏光顕微鏡観察結果である。
【符号の説明】
【0069】
11 光学異方性体
12 基板
13 配向層
14 赤色に相当する副画素に対応するパターン
14a 赤色用パターンにおいて分割された微細領域
14b 赤色用パターンにおいて分割された別なる微細領域
15 緑色に相当する副画素に対応するパターン
15a 緑色用パターンにおいて分割された微細領域
15b 緑色用パターンにおいて分割された別なる微細領域
16 青色に相当する副画素に対応するパターン
16a 青色用パターンにおいて分割された微細領域
16b 緑色用パターンにおいて分割された別なる微細領域
17 ディスコティック液晶分子
20 液晶表示装置
30 偏光板
31 保護層
32 偏光子
33 保護層
40 液晶セル
41 透明基板
42 カラーフィルター
43 透明電極層
44 配向層
45 液晶
46 TFT
47 ブラックマトリクス
50 バックライト部
51 拡散板
52 導光板
53 光源
61 ステージ
62 円筒レンズ
63 マルチモード光ファイバ
63a マルチモード光ファイバのコア
64 サブマウント
65 ヒートブロック
66 合波レンズ
LD1〜7 GaN系半導体レーザー
L1〜7 コリメーターレンズ
B1〜7 レーザービーム
A 支持体に対して垂直方向から角度(入射角)
B 合波されたレーザービーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色、緑色及び青色の三色の表示領域からなる画素を有する表示素子に組み込まれて用いられる光学異方性体であって、
赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化され、且つ各々のパターン化された単位が複数個の分割領域により構成され、それぞれの分割領域が、ディスコティック液晶分子を含む光学異方性体。
【請求項2】
前記分割領域において、ディスコティック液晶分子がネマティックハイブリッド配向状態に固定されている請求項1に記載の光学異方性体。
【請求項3】
前記分割領域のうちの少なくとも一つの領域のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が厚さ方向に形成するカーブと、前記分割領域のうちの他の一つの領域のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が厚さ方向に形成するカーブとが互いに異なる請求項2に記載の光学異方性体。
【請求項4】
前記分割領域のうちの少なくとも一つの領域のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が厚さ方向に形成するカーブが左回りのカーブであり、前記分割領域のうちの他の一つの領域のネマティックハイブリッド配向状態に固定された分子が厚さ方向に形成するカーブが右回りのカーブである請求項2又は3に記載の光学異方性体。
【請求項5】
隣接する少なくとも2つの分割領域のネマティックハイブリッド配向が、互いに実質的に鏡面対称である請求項2〜4のいずれか1項に記載の光学異方性体。
【請求項6】
複数個の分割領域が、2〜8個の領域である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学異方性体。
【請求項7】
前記分割領域の各辺の長さが0.1μm〜200μmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学異方性体。
【請求項8】
前記分割領域がそれぞれ、重合性基又は架橋性基を有するディスコティック液晶性化合物を含有する組成物から形成された領域である請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学異方性体。
【請求項9】
基板と、該基板上に配置された請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学異方性体とを有する光学素子。
【請求項10】
赤色、緑色及び青色の各色の微細パターンを有する基板と、該基板上に配置された請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学異方性体とを有する光学素子。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学異方性体、又は請求項9もしくは10に記載の光学素子を含む表示素子。
【請求項12】
赤色、緑色及び青色の三色の表示領域からなる画素を有する表示素子に組み込まれて用いられる光学異方性体の製造方法であって、
1)基板、あるいはカラーフィルター上に光配向膜を形成する工程、
2)光配向膜を光照射して、赤色、緑色及び青色に相当する各々の副画素に対応する単位にパターン化し、且つ各々のパターンを複数個の分割領域に分割する工程、
3)光照射されて複数個の分割領域に分割された光配向膜表面に、ディスコティック液晶性化合物を含有する組成物を適用して、ディスコティック液晶性化合物の分子を配向させて、前記光配向膜の分割領域の各々の表面に液晶層を形成する工程、及び
4)前記液晶層を重合反応により硬化させる工程、
を含む光学異方性体の製造方法。
【請求項13】
光配向膜に光照射を施す2)工程において、複数の半導体レーザーからそれぞれ出射された複数のレーザービームを合波したレーザービームを、マルチモード光ファイバを介して光照射することを特徴とする請求項12に記載の光学異方性体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−71952(P2007−71952A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256177(P2005−256177)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】