説明

光学的に変化する対セキュリティ要素

開示されるのは、光学的に変化する対セキュリティ要素であり、この光学的に変化する対セキュリティ要素は、光学的に変化する箔の形で、または光学的に変化する干渉顔料を含むインクで作られた印刷物の形で、第1および第2の光学的に変化する薄膜多層干渉デバイスを備え、第1および第2の干渉デバイスは、所定の入射角においてスペクトルマッチングを示す。また、光学的に変化する対セキュリティ要素を製造するための、光学的に変化するデバイスのセットおよび光学的に変化する顔料を含むコーティング組成物のセットや、書類および商品の保護へのセキュリティ要素の使用、そしてセキュリティ要素を担持する保護対象書類および商品についても開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護対象書類の分野にある。本発明は、光学的に変化する対セキュリティ要素に関するものであり、この光学的に変化する対セキュリティ要素は、光学的に変化する箔の形で、または光学的に変化する干渉顔料を含むインクで作られた印刷物の形で、第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスを備え、第1および第2の干渉デバイスは、所定の入射角においてスペクトルマッチングを示す。また、光学的に変化する対セキュリティ要素を製造するための、光学的に変化するデバイスのセットおよび光学的に変化する顔料を含むインクまたはコーティング組成物のセットや、書類および商品の保護へのセキュリティ要素の使用、そしてセキュリティ要素を担持する保護対象書類および商品についても開示される。
【背景技術】
【0002】
光学的に変化する箔、光学的に変化する顔料(optically variable pigment、OVP)、およびOVPを含むコーティング組成物、特に光学的に変化するインク(optically variable ink、OVI(登録商標))は、セキュリティ印刷の分野で知られている。このような光学的に変化する要素は、視角または入射角に依存する色を示し、一般に入手できるカラーのスキャン、印刷、およびコピー用の事務機器による違法な複製に対して銀行券などの保護対象書類を保護するための、好ましい選択肢となっている。
【0003】
光学的に変化するセキュリティ要素によって保護された書類の耐偽造性および視覚認証容易性を高めるため、光学的に変化する特徴を同一書類上で2つ以上組み合わせることが提案されている。国際公開第2005/044583号は、保護対象書類の2つ以上の構成部分に同一の光学的に変化するセキュリティ要素を用いることを開示している。国際公開第96/39307号は、光学的に変化する対デバイスを開示している。この光学的に変化する対デバイスは、同一表面上の間隔を空けた場所に第1および第2の光学的に変化するデバイスを備え、第1および第2の光学的に変化するデバイスは、第1および第2の光学的に変化するデバイスにそれぞれ配置された第1および第2の光学的に変化する顔料を有しており、これらの光学的に変化する顔料は、ある所定の入射角では同じ色を有し、他のすべての入射角では異なる色を有する。
【0004】
国際公開第96/39307号のデバイスは、顔料の色を視角または入射角の関数として表す(CIELAB) a*b*図において、2つの光学的に変化する顔料が同じ色相を有する視角または入射角に対応する交差点が存在するように、光学的に変化する対顔料の設計が選択されることを特徴とする。国際公開第96/39307号の第1および第2の光学的に変化する顔料は、全誘電体干渉顔料の場合、ほぼ同じ設計波長で異なる4分の1波長設計として具現される。金属誘電体干渉顔料の場合は、第1および第2の顔料は、ほぼ同じ設計波長で異なる半波長設計として具現される。
【0005】
国際公開第96/39307号のデバイスの一番の欠点は、必要とされる、ある所定の入射角における第1および第2の顔料の「同じ色相」が、異なる分光特性で生成されなければならない、ということである。なぜならば、異なる4分の1波長設計または半波長設計を用いて同じ分光特性を実現するのは不可能だからである。観察される色相は、単に顔料の分光反射特性、すなわち波長の関数としての反射強度の、人間の色覚の3次元空間への投影を表すにすぎず、当業者に知られるように、異なる分光特性は人間の色覚の空間への同じ投影を有し得るのである(条件等色)。
【0006】
この事実の帰結は、国際公開第96/39307号で用いられる第1および第2の光学的に変化する顔料の知覚色の、照明源の分光特性への依存が各様であり、2つの光学的に変化する顔料が同じ色相を有する交差点は、所定の種類の光源(例えば白熱灯)の下でのみ観察可能で、異なる種類の光源(例えば蛍光灯)の下では現れない場合がある、ということである。
【0007】
従来技術のこの欠点を克服すること、そして使用される照明源にかかわらず所定の入射角において常に色整合を示す、真の光学的に変化する対セキュリティ要素を開示することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0008】
次に、以下の開示および請求の範囲を参照して本発明を説明する。
本発明によれば、上述の技術的課題は、第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスを有する光学的に変化する対セキュリティ要素によって解決される。第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスは、例えば第1および第2の光学的に変化する箔、またはインクもしくはコーティング組成物中の第1および第2の光学的に変化する顔料として具現されるものであり、第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスが一緒に見えるように配置され、所定の入射角において真のスペクトルマッチングを示す一方で、他のすべての入射角では異なるスペクトルを有する。
【0009】
このように、本発明の光学的に変化する対セキュリティ要素は、少なくとも第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスを備え、これらの干渉デバイスは、異なるカラートラベルを有し、全誘電体多層スタック、または金属誘電体多層スタック、またはコレステリック(すなわちキラルネマチック)液晶膜、またはこれらの組み合わせのいずれかとして具現される。これらの干渉デバイスはさらに、スペクトルマッチングの入射角において、同じ、例えば4分の1波長または半波長の、干渉設計(交差点)を有すること、そして構成誘電体層のうちの少なくとも1つの層の屈折率が異なることを特徴とする。
【0010】
本発明は、干渉デバイスのカラートラベルはデバイスに含まれる誘電体材料の屈折率に依存する、という事実に依拠する。この依存は、干渉デバイスの異なる層の内側と外側における光の伝播速度の違いに関する物理法則であり、従って、干渉デバイスの種類が全誘電体多層薄膜であろうと、金属誘電体多層薄膜であろうと、またはコレステリック液晶であろうと、すべての種類のカラーシフト光学干渉デバイスに当てはまる。
【0011】
「カラートラベル」および「カラーシフト」は、本開示内では、光学的に変化する干渉デバイスの向きを直交入射からかすめ入射へと変えた時に観察される色の変化を意味する。「カラートラベル」は、より正確には、(CIELAB) a*b*図における視角または入射角の関数としてのデバイスの色を指し、一方「カラーシフト」は、デバイスの、変化する外観のみを指す。「光学的に変化する」は、本開示の関連では、色が視角または入射角に依存する性質を指す。
【0012】
「直交入射」は、干渉デバイスの平面に対して80°から90°の角度で見ることを意味する。「かすめ入射」は、干渉デバイスの平面に対して0°から10°の角度で見ることを意味する。通常、正反射条件での照明が想定される。
【0013】
「交差点」は、第1および第2の光学的に変化するデバイスが(CIELAB) a*b*図において同じ色相を有する視角または入射角である。
【0014】
「スペクトルマッチング」は、本開示内では、分光反射特性または分光透過特性が、波長の関数として、定性的に類似していること、すなわち第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスの分光特性が、同じ波長において同じ幅の広さを有する同じスペクトル帯を呈することを意味する。「スペクトルマッチング」は、以下では、第1および第2の光学的に変化するデバイスのスペクトル帯が同じ絶対強度を有することを意味しない。実際に、異なる材料の使用または異なる顔料添加量に起因し得るような、第1および第2のデバイスの異なる絶対反射強度または絶対透過強度は、本発明の関連では許容可能である。
【0015】
本明細書において意図された干渉デバイスの、反射色の起因および角度に応じた観察色のシフトの起因については、以下に半波長設計の金属誘電体薄膜干渉デバイスの例で説明する。同様の推論は、必要な変更を加えれば、半透明で用いられる干渉デバイスの透過色にも、そして他の種類の干渉デバイス、すなわち4分の1波長設計、全誘電体薄膜デバイス、コレステリック液晶膜、およびそうしたデバイスおよび設計の可能な組み合わせにも当てはまる。
【0016】
半波長設計の金属誘電体薄膜干渉デバイスの特徴は、デバイスが「吸収体/誘電体/反射体」層構造を備え、「吸収体」層が部分的に透過性、部分的に反射性であり、誘電体層が透過性であり、反射体層が入力光を反射することである。そのようなデバイスの例示的な実施の形態は、「クロム(5nm)/フッ化マグネシウム(400nm)/アルミニウム(40nm)」という層の配列および厚さで与えられる。
【0017】
図1を参照すると、屈折率n>1の誘電体層(D)の見た目の光学的厚さ(「光学的遅延(optical lag)」OL)は、OL=n*d*sin(θ’)に等しく、ここでθ’は、層(D)内における、層の平面に対する光の入射角を表す。光学的遅延は、直交入射(θ’=90°)において最大(n*d)であり、入射角の減少とともに、かすめ入射(θ’=0°)における最小値ゼロに向かって減少する。誘電体(D)中を前進する光波は、反射体層(R)で反射され、誘電体(D)中を戻るので、層(D)の内側から見て、最上部の吸収体層(A)で反射される光波よりも2*OL=2*n*d*sin(θ’)の分だけ遅延する。
【0018】
スネルの屈折の法則により、sin(θ’)は、層の外側の、層の平面に対する入射角θの関数として表すことができる。外側の屈折率が1(空気)であると考えると、θの関数としての光学的遅延は、OL=d*√(n−cos(θ))である。層の外側から見た誘電体多層(D)の光学的遅延は、直交入射(θ=90°)において最大(n*d)であり、入射角の減少とともに、かすめ入射(θ=0°)における最小値d*√(n−1)に向かって減少する。誘電体(D)中を前進する光波は、反射体層(R)で反射され、誘電体(D)中を戻るので、層(D)の外側から見て、最上部の吸収体層(A)で反射される光波よりも2*OL=2*d*√(n−cos(θ))の分だけ遅延する。本明細書において、ルートの記号√は、後に続く括弧内の引数の平方根を表す。
【0019】
干渉デバイスに反射される光強度(R)の総量は、入射波長(λ)の関数としてR(λ)=Imax*cos((2*OL*π)/λ)のように大きく変化する。ここで、Imaxは最大反射強度である。デバイスは、非常に多くの値のλで起きる反射(長波放射の反射)に加えて、OL=λ/2(1次)、λ(2次)、3λ/2(3次)、2λ(4次)、5λ/2(5次)、…k*λ/2(k次)において、すなわち「半波長」の倍数のすべてで、顕著な反射極大を有する。
【0020】
この数列から以下のことが容易に分かる。すなわち、660nm半波長設計に由来する、すなわち第1の反射極大を(赤色の)660nmの波長に有するデバイスは、第2の反射極大を(紫外の)330nmの波長に有し、一方1320nm半波長設計に由来する、すなわち第2の反射極大を660nmの波長に有するデバイスは、第3の反射極大を(青色の)440nmの波長に有し、1980nm半波長設計に由来する、すなわち第3の反射極大を660nmの波長に有するデバイスは、第4の反射極大を(緑色の)495nmの波長に有する、ということである。従って、異なる半波長設計の干渉デバイスに由来する見た目の同じ反射色は必然的に条件等色である、すなわちそれらが整合するか否かは常に照明条件に依存する、ということが明らかである。
【0021】
上記の事実から、以下のことが明らかになる。すなわち、国際公開第96/39307号に開示された光学的に変化する対セキュリティ要素は、異なる4分の1波長設計または半波長設計に由来する第1および第2の光学的に変化する顔料に基づいているが、この対セキュリティ要素の2つの反射スペクトルは、互いに整合し得ない、ということである(例えば、3次の緑色のスペクトルと2次の緑色のスペクトルとをそれぞれ示す図2aと図2cとを比較せよ)。このような場合、色整合は、単にこれらの反射スペクトルの人間の色覚の3次元空間への投影を扱うだけであり、知覚色は、用いられる照明条件に本質的に依存したままである。
【0022】
本発明によれば、光学的に変化する対セキュリティ要素は、スペクトルマッチングの入射角(交差点)における、例えば同じ4分の1波長設計または同じ半波長設計といった、同じ干渉設計に由来する第1および第2の光学的に変化する顔料に基づく。第1および第2の光学的に変化する顔料が同じ色相を有する交差点を、(CIELAB) a*b*図において設けるためには、第1および第2の光学的に変化する顔料の構成誘電体層のうちの少なくとも1つの層の屈折率を異なるように選んで、入射角により異なるカラーシフトを生じつつ、交差点においては同じ分光反射特性または分光透過特性、すなわち真に同じ色、を有するようにしなければならない。
【0023】
これは、d*√(n−cos(θ))=d*√(n−cos(θ))の関係を満たす視角または入射角θで成り立つ。ここで、d、n、およびd、nはそれぞれ、第1および第2の干渉デバイスの誘電体層の厚さと屈折率である。
【0024】
このように、本例における色整合は、所定の入射角における分光反射特性または分光透過特性の真の正確な整合であり、本明細書に開示された光学的に変化する対セキュリティ要素の両方の部分の、所定の入射角における整合色による書類またはアイテムの認証は、選ばれた照明条件に依存しない。
【0025】
光学的に変化する干渉デバイスにより示される、角度に応じた「カラーシフト」の量は、注目すべきことには干渉デバイスの誘電体層または複数の誘電体層の屈折率に依存し、意図された金属誘電体半波長設計について、直交入射とかすめ入射とにおける見た目の光学的厚さ(「光学的遅延」)の比(r(n))であるr(n)=n/√(n−1)から推定することができる。この比r(n)は、誘電体層の屈折率nの関数であり、直交視とかすめ視とにおけるピーク反射波長の比に対応する(√は、後に続く括弧内の引数の平方根を表す)。
【0026】
表1は、r(n)=λ直交/λかすめの計算値を屈折率nの関数として示すものである。
【表1】

【0027】
このようなわけで、本発明の光学的に変化する対セキュリティ要素は、より低い屈折率(nlow)の第1の誘電体を有し、k次の反射極大(k)が、直交入射における第1の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第2の波長(λ)への移動を示す第1の光学的に変化する干渉デバイスと、より高い屈折率(nhigh)の第2の誘電体を有し、同じk次の反射極大(k)が、直交入射における第3の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第4の波長(λ)への移動を示す第2の光学的に変化する干渉デバイスとを備え、第2のデバイスの第3および第4の波長のまたがる範囲が、第1のデバイスの第1および第2の波長のまたがる範囲以内にあることを特徴とする。この後半の特徴は、第1および第2の干渉デバイスのk次の反射極大が一致する入射角が存在するために必要な条件である。
【0028】
第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスは、スペクトルマッチングを生じるために同じ半波長設計または4分の1波長設計でなければならず、また全誘電体多層スタックと、金属誘電体多層スタックと、コレステリック液晶膜と、これらの組み合わせとからなる群から選ばれた設計によって具現され得る。
【0029】
本発明のセキュリティ要素の特定の実施の形態において、干渉デバイスは、光学的に変化する箔によって具現される。金属誘電体干渉デバイスの場合、光学的に変化する箔は、「吸収体/誘電体/反射体」層配列を備えてよく、反射体層に続いて、さらなる層や、「吸収体」層が外側になるように箔を基板に貼り付ける手段があってよい。
【0030】
本発明のセキュリティ要素の別の特定の実施の形態において、干渉デバイスは、対応するインクまたはコーティング組成物に含まれる光学的に変化する顔料によって具現され、保護されるべき書類または商品に付けられる。金属誘電体干渉デバイスの場合、光学的に変化する顔料は、「吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体」層配列を備えてよく、反射体層は、さらなる内層を備えてよい。
【0031】
さらなる特定の実施の形態において、光学的に変化する顔料は、別の種類の光学的に変化する箔が生じるように、プラスチック箔に混合される。本明細書では、光学的に変化する顔料を、箔を成型するのに用いられるプラスチック塊に混合して、制御しながら箔を引き伸ばすことによって(例えばカレンダー加工によって)なじませることもできる。あるいは、光学的に変化する顔料を、2枚のプラスチック箔の間に積層して、単一の光学的に変化する箔を構成することもできる。
【0032】
必要なスペクトルマッチング条件が満たされることが見込まれるならば、本発明のセキュリティ要素を具現するために、光学的に変化する顔料を含むインクまたはコーティングと、光学的に変化する顔料を含有する箔と、光学的に変化する箔との組み合わせを用いることもできる。
【0033】
さらに、セキュリティ要素は、透過させて見るために透明または半透明の基板内または基板上に、あるいは反射させて見るために不透明基板上に具現され得る。
【0034】
さらに具体的には、本発明のセキュリティ要素は、基板上にインクで作られた光学的に変化する印刷物の形、基板に貼り付けられた光学的に変化する箔の形、基板に組み込まれたセキュリティスレッドの形、または透明窓基板の形で具現され得る。
【0035】
また、光学的に変化する対セキュリティ要素を製造する方法も開示され、この方法は、より低い屈折率(nlow)の第1の誘電体を有し、k次の反射極大(k)が、直交入射における第1の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第2の波長(λ)への移動を示す第1の光学的に変化する干渉デバイスを基板(S)に付けるステップと、より高い屈折率(nhigh)の第2の誘電体を有し、同じk次の反射極大(k)が、直交入射における第3の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第4の波長(λ)への移動を示す第2の光学的に変化する干渉デバイスを基板(S)に付けるステップとを含み、この方法では、第2のデバイスの第3および第4の波長のまたがる範囲が第1のデバイスの第1および第2の波長のまたがる範囲以内になるように、第1および第2の光学的に変化するデバイスが選択される。
【0036】
第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスは、同じ半波長設計または4分の1波長設計であり、好ましくは第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスが一緒に見えるように配置される。
【0037】
本発明による光学的に変化する対セキュリティ要素は、銀行券、有価書類、本人確認書類、アクセス書類、ラベル、または物品税印紙、のような書類の偽造防止にも、商品のマーキングにも使用され得る。
【0038】
また、本発明による光学的に変化する対セキュリティ要素を備える、銀行券、有価書類、本人確認書類、アクセス書類、または物品税印紙、のような保護対象書類も開示される。
【0039】
本発明は、光学的に変化する対セキュリティ要素を具現する第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスのセットも含み、ここで、第1の光学的に変化する干渉デバイスは、より低い屈折率(nlow)の第1の誘電体を有し、k次の反射極大(k)が、直交入射における第1の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第2の波長(λ)への移動を示すものであり、第2の光学的に変化する干渉デバイスは、より高い屈折率(nhigh)の第2の誘電体を有し、同じk次の反射極大(k)が、直交入射における第3の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第4の波長(λ)への移動を示すものであり、第2のデバイスの第3および第4の波長のまたがる範囲は、第1のデバイスの第1および第2の波長のまたがる範囲以内にある。
【0040】
特に、第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスは、光学的に変化する箔と、光学的に変化するスレッドと、光学的に変化する窓とからなる群から選ばれ得る。
【0041】
本発明は、光学的に変化する対セキュリティ要素を具現する第1および第2の光学的に変化するコーティング組成物、特にはインク、のセットをさらに含み、ここで、第1のコーティング組成物は、より低い屈折率(nlow)の第1の誘電体を有し、k次の反射極大(k)が、直交入射における第1の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第2の波長(λ)への移動を示す第1の光学的に変化する干渉顔料、を含有するものであり、第2のコーティング組成物は、より高い屈折率(nhigh)の第2の誘電体を有し、同じk次の反射極大(k)が、直交入射における第3の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第4の波長(λ)への移動を示す第2の光学的に変化する干渉顔料、を含有するものであり、第2の顔料の第3および第4の波長のまたがる範囲は、第1の顔料の第1および第2の波長のまたがる範囲以内にある。
【0042】
特に、第1および第2の光学的に変化するコーティング組成物は、スクリーン印刷インクと、銅版凹版インクと、グラビア印刷インクとからなる群から選ばれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明で用いられ得るような吸収体/誘電体/反射体の薄膜多層スタックの知覚色およびカラーシフトの起因を説明する図である。
【図2】本発明によるセキュリティ要素の物理的な動作原理を説明する図であり、 a)は、Cr/MgF/Al金属誘電体干渉スタックの直交入射スペクトルであり、 b)は、Cr/Y/Al金属誘電体干渉スタックの直交入射スペクトルであり、 c)は、Cr/Y/Al金属誘電体干渉スタックのかすめ入射スペクトルであり、 d)は、Cr/MgF/Al金属誘電体干渉スタックのかすめ入射スペクトルである。
【図3】第1の干渉デバイスの識別印(画像の右部)および第2の干渉デバイスの識別印(画像の左部)によって具現される、本発明の光学的に変化する対セキュリティ要素を模式的に説明する図であり、 a)は、直交入射(90°)で見た対セキュリティ要素であり、左部および右部が異なる色を有し、 b)は、入射角45°で見た対セキュリティ要素であり、左部および右部が同じ色を有し、 c)は、入射角30°で見た対セキュリティ要素であり、左部および右部が異なる色を有する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に、図面および例示的な実施の形態を用いて本発明を説明する。
図1は、本発明で用いられ得るような吸収体/誘電体/反射体の薄膜多層スタックの知覚色およびカラーシフトの起因を説明する図である。反射体層(R)は、内層構造を有してよく、少なくとも1つの誘電体層(D)を担持し、そして誘電体層(D)は、外面に吸収体層(A)を担持する。入射光(I)は、入射角θでデバイス上に降り、吸収体層(A)で一次反射光線(I)と一次透過光線(I)とに分割され、後者は、屈折により変化した入射角θ’で誘電体層(D)中を前進し、反射体層(R)で反射され、誘電体層(D)および吸収体層(A)中を戻り、最後に二次反射光線(I)として入射角θでデバイスから出る。一次反射光線(I)と二次反射光線(I)とは互いに干渉し合い、その結果、部分的にまたは完全に消滅する波長もあれば、そうでない波長もあるので(弱め合う干渉および強め合う干渉)、白色光スペクトルの特定部分の選択的な反射により色が出現する。
【0045】
全誘電体設計または金属誘電体設計の干渉デバイスを具現するのに好都合な誘電体材料は、当業者に知られており、例えばH. Angus Macleod, “Thin-Film Optical Filters," 3rdedition, chapter 15などの専門的な文献に見られる。以下、表2は、本発明を具現するのに有用な例示的な誘電体材料の光学パラメータを示す。
【0046】
【表2】

【0047】
全誘電体設計または金属誘電体設計を有する光学的に変化する薄膜干渉デバイスは、当業者に知られるように、薄膜デバイスを構成する異なる材料の、好適な担持基板への連続的な物理蒸着(PVD)によって生成することができ、好適な担持基板としては、例えば米国特許第4,705,356号明細書、米国特許第4,838,648号明細書、米国特許第4,930,866号明細書、米国特許第5,084,351号明細書、米国特許第5,214,530号明細書、米国特許第5,278,590号明細書、欧州特許第0227423(B)号明細書、および欧州特許第1366380(B)号明細書、ならびに本明細書の関連文献に記載されているようなものがある。
【0048】
担体は、例えば剥離コーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)箔のような、柔軟な膜(web)であると好ましい。蒸着は、高真空コーティング機にてロール・ツー・ロール方式として行われ得る。スパッタリング、反応性スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、熱蒸着、電子ビーム支援蒸着、またはレーザービーム支援蒸着のような、当業者に知られた材料別の適切な蒸発源および工程を用いて材料が蒸着される。
【0049】
薄膜デバイスの層を堆積させる他の方法としては、化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)および湿式コーティング法、特にはゾルゲルコーティング法などがある。物理蒸着(PVD)では単に堆積対象材料が蒸発源から蒸発させられて基板上に凝縮するだけなのに対して、化学蒸着(CVD)は、(一般に加熱などにより活性化された)基板表面における1つ以上の前駆体化合物の化学反応を伴う。境界上の事例である反応性スパッタリングは、前駆体材料(例えばTi)が蒸発源からスパッタされ、存在する気相(例えばO)と減圧下で反応して、反応生成物(例えばTiO)として基板上に堆積するのであるが、以下では物理蒸着法と見なす。なぜならば、反応性スパッタリングは、PVDのような工程条件で行われ、PVDのような堆積を生じるからである。
【0050】
コレステリック液晶膜は、国際公開第9409086(A1)号、 欧州特許出願公開第0601483(A1)号明細書、米国特許第5502206号明細書、欧州特許第0661287(B1)号明細書、欧州特許第0686674(B1)号明細書、米国特許第5683622号明細書、欧州特許第0709445(B1)号明細書、欧州特許出願公開第0712013(A2)号明細書、国際公開第9729399(A1)号、欧州特許出願公開第0875525(A1)号明細書、欧州特許出願公開第0885945(A1)号明細書、および当業者に知られる関連文献で知られる。このような箔は、重合可能なコレステリック液晶前駆体混合物で担体箔をコーティングし、続いて液晶を適切な温度でコレステリック相に配向させて、例えばUV硬化などによる重合により固定することによって得られる。対応するコレステリック液晶ポリマー(cholesteric liquid crystal polymer、CLCP)顔料は、そのような箔を所望の粒子寸法まで粉砕することにより得られる。そのような顔料を含有するコーティング組成物は、米国特許第5807497号明細書、欧州特許出願公開第0758362(A1)号明細書、国際公開第9532247(A1)号、欧州特許出願公開第0887398(A1)号明細書、および当業者に知られる関連文献に開示されている。
【0051】
コレステリック液晶ポリマーの屈折率は、用いられる化学的性質を適切に選ぶことにより変更可能である。注目すべきことに、多くの架橋可能なモノマーおよびオリゴマーは、適切な条件下でコレステリック相を形成することが知られており、コレステリック相は、放射線誘起性などの誘起性の架橋反応により、所定の状態において「凍結」させられ得る。ベンゼン、ナフタレンなどの共役環のような芳香族残基をもたないモノマーおよびオリゴマーは、低屈折率のコレステリック液晶ポリマーを生じる。この種類の例は、コレステロールから誘導される液晶ポリマーである。一方、ベンゼン、ナフタレンなどの共役環のような芳香族残基を含有するモノマーおよびオリゴマーは、高屈折率のコレステリック液晶ポリマーを生じる。この種類の例は、欧州特許第0685749(B)号明細書および欧州特許第0760836(B)号明細書に記載されたポリマーである。
【0052】
ある特定の実施の形態では、あらかじめエンボス加工および剥離コーティングを施された、例えばPET製の、担体箔が用いられる。エンボス加工は、表面ホログラムの製造の当業者に知られるように、加熱されたエンボス加工用シムを用いて行われる。続いて、担体箔のエンボス加工された浮き彫り模様が、この担体箔上に蒸着された光学的に変化する多層干渉デバイスによって、またはこの担体箔上に生成された液晶膜によって、複製される。
【0053】
また、光学的に変化する干渉デバイスでコーティングされた担体箔は、知られた手順によって、書類の複写防止用のホットスタンプ転写箔またはコールドスタンプ転写箔に転化させることもできる。
【0054】
しかしながら、最も好ましくは、光学的に変化する干渉デバイス膜は、担体箔から引き離され、顔料へと粉砕されて、厚さ200nmないし3000nmの粒子寸法、好ましくは厚さ400nmないし5000nmで粒径5マイクロメートルないし50マイクロメートルにわたる粒子寸法を有する顔料薄片を生じるようにされる。この粉砕はジェットミルを用いて行われ得ると有利であり、結果として生じる粒子は、適切な寸法区分に分類されることが好ましい。
【0055】
結果として生じる光学的に変化する顔料は、好ましくは印刷インクへと調合される。印刷インクは、顔料を1重量%ないし25重量%の量で含んでよく、その際、結合剤としての少なくとも1つの有機ポリマーまたは有機ポリマー前駆体、また適宜、他の種類の顔料、特にはコーティングされた粒子および/または玉虫色の顔料、従来の染料、O. Luckert, Pigment + Fullstoff Tabellen, 5th edition, Laatzen, 1994に記載されたような無機および有機の印刷顔料、さらにはエクステンダー、レオロジー添加剤、溶媒、光増感剤、および乾燥剤とともに含んでよい。また、磁性顔料、発光顔料または発光染料、および赤外吸収顔料または赤外吸収染料等のような他のセキュリティ材料もインク中に存在してよい。
【0056】
インク組成物は、40℃において0.5Pa・sないし2Pa・sの範囲の粘度を有するなど、スクリーン印刷法用に調合されることが好ましいが、他の好ましい選択肢としては、40℃において2Pa・sないし20Pa・sの範囲の粘度を有する銅版凹版印刷法用のインクや、40℃において0.1Pa・sないし0.5Pa・sの範囲の粘度を有するフレキソ・グラビア印刷法用のインクなどがある。そのようなインクの調合は、当業者に知られている。
【0057】
結果として生じる光学的に変化するインクは、例えば保護対象書類のような保護されるべきアイテム上の識別印の印刷に用いることができ、識別印は、光学的に変化する対デバイスとして、一緒に見えるように具現される。そのようにして得られた光学的に変化するセキュリティ特徴は、例えば光学的に変化する対の特徴を構成する両方の光学的に変化するデバイスを比較し、それらが所定の入射角で同じ分光反射特性または分光透過特性を有するか調べることにより、肉眼で容易に検出される。そのような比較は環境照明条件とは真に無関係であり、そのような比較により、本発明の光学的に変化する対セキュリティ特徴を担持する書類の真正性を単純な目視検査で判断することが可能になる。
【0058】
本発明のさらなる実施の形態では、(例えば米国特許第4,838,648号明細書または欧州特許第1366380(B)号明細書による)光学的に変化する磁性顔料が用いられ、さらにインク中の磁性顔料薄片は、印刷工程の最中または後に、対応する磁場を加えることにより(例えば欧州特許第1641624(B)号明細書に従って)配向させられ、続いてそのように配向させられた薄片の位置が、インクを硬化させることによって固定される。好ましくは、この用途には紫外線硬化インク調合物が用いられる。そのような調合物は、当業者に知られているように調製され得る。
【実施例】
【0059】
剥離コーティングされたPET担体箔上に、それぞれが対称半波長金属誘電体干渉設計である異なる層を連続して物理蒸着することにより、第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスを調製した。
【0060】
当業者に知られているように、そして引用された従来技術の参照文献に記載されているように、特に電子ビーム支援蒸着源を高真空で用いて、クロム(Cr)、フッ化マグネシウム(MgF、n=1.35)、酸化イットリウム(Y、n=1.89)およびアルミニウム(Al)を堆積させた。
【0061】
[第1のデバイス]
吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の型の対称設計であり、以下の層配列を有する。
1.吸収体層…Cr、3.5ナノメートル
2.誘電体層…MgF、490ナノメートル(n=1.35)
3.反射体層…Al、40ナノメートル
4.誘電体層…MgF、490ナノメートル(n=1.35)
5.吸収体層…Cr、3.5ナノメートル
直交入射で660nmに2次の反射極大(k=2)をもつための設計であり、かすめ入射で445nmに2次の反射極大を生じる。第1の干渉デバイスのカラーシフトは、緑色(直交)からマゼンタ(かすめ)である。
【0062】
[第2のデバイス]
吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の型の対称設計であり、以下の層配列を有する。
1.吸収体層…Cr、3.5ナノメートル
2.誘電体層…Y、315ナノメートル(n=1.89)
3.反射体層…Al、40ナノメートル
4.誘電体層…Y、315ナノメートル(n=1.89)
5.吸収体層…Cr、3.5ナノメートル
直交入射で600nmに2次の反射極大(k=2)をもつための設計であり、かすめ入射で510nmに2次の反射極大を生じる。第2の干渉デバイスのカラーシフトは、紫色(直交)から緑色(かすめ)である。
【0063】
次に、本発明による光学的に変化する対セキュリティ要素の物理的な動作原理について、図2および図3を参照して説明する。
【0064】
直交入射では(図3a、右)、第1のデバイスのCr/MgF/Al金属誘電体干渉スタックは、図2aに示されたような反射スペクトルを示し、3次の反射極大を青緑色の500nmに有する。2次の反射極大(k)は赤色の660nmにある(第1の波長、λ)。第1のデバイスをかすめ入射へ傾けると(図3c、右)、図2dのスペクトルとなり、2次の反射極大は青色の445nmへと上がる(第2の波長、λ)。
【0065】
直交入射では(図3a、左)、第2のデバイスのCr/Y/Al金属誘電体干渉スタックは、図2bに示されたような反射スペクトルを示し、2次の反射極大を橙色の600nmに有する(第3の波長、λ)。第2のデバイスをかすめ入射へ傾けると(図3c、左)、図2cのスペクトルとなり、2次の反射極大は青緑色の510nmへと上がる(第4の波長、λ)。
【0066】
このように、第2のデバイスの第3および第4の波長のまたがる範囲は、第1のデバイスの第1および第2の波長のまたがる範囲以内にある。従って、第1および第2のデバイスのカラートラベルが必ず交差する入射角または視角が存在し、この交差点においては、両デバイスのスペクトル、従って色は、照明条件に関係なく等しい。
【0067】
本例では、交差点は40°の視角または入射角θに位置し、そこでは第1および第2の干渉デバイスの誘電体層を通る両方の光学干渉経路が等しい。2次の反射極大は545nmにあり、両デバイスは、同じ草緑色の干渉色を示す(図3b)。
【0068】
このようにして得られた干渉デバイスは、スタンプ箔に転化させることができる。その際は、それらが組み合わさって、本発明による光学的に変化する対セキュリティ要素を具現する第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスのセットを形成する。
【0069】
あるいは、当業者に知られ、当技術分野で記載された方法に従って、得られた干渉デバイスを担体箔から剥がし、粉砕して顔料にして、印刷インクに転化させることもできる。その際は、それらが組み合わさって、本発明による光学的に変化する対セキュリティ要素を具現する第1および第2の光学的に変化するコーティング組成物のセットを形成する。
【0070】
例示的な印刷インク調合物は、以下のように調製され得る。
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
本発明の光学的に変化する対セキュリティ要素は、このようなインクの、対応するセットを用いて、銀行券、有価書類、本人確認書類、アクセス書類、ラベル、または物品税印紙、のような保護対象書類に、または商品に、識別印の形で印刷され得る。
【0074】
当業者は、その専門知識、引用された従来技術、および本明細書における開示に基づいて、本発明のさらなる実施の形態を容易に導出できるであろう。本発明は、注目すべきことには、例示された吸収体材料、反射体材料、および誘電体材料にも、例示された干渉設計にも限定されず、本明細書に上記概説された原理が尊重されれば、他の材料および干渉設計でも実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
より低い屈折率(nlow)の第1の誘電体を有し、k次の反射極大(k)が、直交入射における第1の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第2の波長(λ)への移動を示す第1の光学的に変化する干渉デバイスと、
より高い屈折率(nhigh)の第2の誘電体を有し、同じk次の反射極大(k)が、直交入射における第3の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第4の波長(λ)への移動を示す第2の光学的に変化する干渉デバイスと
を備える光学的に変化する対セキュリティ要素であって、
前記第2のデバイスの前記第3および前記第4の波長のまたがる範囲が、前記第1のデバイスの前記第1および前記第2の波長のまたがる範囲以内にあることを特徴とするセキュリティ要素。
【請求項2】
前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが一緒に見えるように前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが配置される請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項3】
前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが、スペクトルマッチングの入射角において、同じ、特には4分の1波長または半波長の、干渉設計を有する請求項1または2に記載のセキュリティ要素。
【請求項4】
前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが、全誘電体多層スタックと、金属誘電体多層スタックと、コレステリック液晶膜と、これらの任意の組み合わせとからなる群から選ばれた干渉設計によって具現される請求項1ないし3のいずれかに記載のセキュリティ要素。
【請求項5】
前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが、光学的に変化する箔と、光学的に変化する顔料を含有する箔と、コーティング組成物に含まれる光学的に変化する顔料と、光学的に変化する箔と光学的に変化する顔料との組み合わせとからなる群から選ばれる請求項1ないし4のいずれかに記載のセキュリティ要素。
【請求項6】
前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが、透明基板と、半透明基板と、不透明基板とを含む群から選ばれた基板上に備わる請求項1ないし5のいずれかに記載のセキュリティ要素。
【請求項7】
前記セキュリティ要素が、基板上にインクで作られた光学的に変化する印刷物と、基板に貼り付けられた光学的に変化する箔と、基板に組み込まれたセキュリティスレッドと、透明窓基板とからなる群から選ばれた形で具現されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のセキュリティ要素。
【請求項8】
a)より低い屈折率(nlow)の第1の誘電体を有し、k次の反射極大(k)が、直交入射における第1の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第2の波長(λ)への移動を示す第1の光学的に変化する干渉デバイスを基板(S)に付けるステップと、
b)より高い屈折率(nhigh)の第2の誘電体を有し、同じk次の反射極大(k)が、直交入射における第3の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第4の波長(λ)への移動を示す第2の光学的に変化する干渉デバイスを前記基板(S)に付けるステップと
を含む、光学的に変化する対セキュリティ要素を製造する方法であって、
前記第2のデバイスの前記第3および前記第4の波長のまたがる範囲が前記第1のデバイスの前記第1および前記第2の波長のまたがる範囲以内になるように、前記第1および前記第2の光学的に変化するデバイスが選択されることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが一緒に見えるように前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが配置される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが、スペクトルマッチングの入射角において、同じ、例えば4分の1波長または半波長の、干渉設計を有する請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが、全誘電体多層スタックと、金属誘電体多層スタックと、コレステリック液晶膜と、これらの組み合わせとからなる群から選ばれた干渉設計によって具現される請求項8ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが、光学的に変化する箔と、光学的に変化する顔料を含有する箔と、コーティング組成物に含まれる光学的に変化する顔料と、光学的に変化する箔と光学的に変化する顔料との組み合わせとからなる群から選ばれる請求項8ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
銀行券、有価書類、本人確認書類、アクセス書類、ラベル、または物品税印紙、のような書類の偽造防止への、または商品のマーキングへの、請求項1ないし7のいずれかに記載のセキュリティ要素の使用。
【請求項14】
銀行券、有価書類、本人確認書類、アクセス書類、ラベル、または物品税印紙、のような保護対象書類、またはマーキングされた商品であって、前記保護対象書類またはマーキングされた商品が請求項1ないし7のいずれかに記載のセキュリティ要素を備えることを特徴とする保護対象書類またはマーキングされた商品。
【請求項15】
光学的に変化する対セキュリティ要素を具現する第1および第2の光学的に変化する干渉デバイスのセットであって、
より低い屈折率(nlow)の第1の誘電体を有し、k次の反射極大(k)が、直交入射における第1の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第2の波長(λ)への移動を示す第1の光学的に変化する干渉デバイスと、
より高い屈折率(nhigh)の第2の誘電体を有し、同じk次の反射極大(k)が、直交入射における第3の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第4の波長(λ)への移動を示す第2の光学的に変化する干渉デバイスと
を備えるセットにおいて、
前記第2のデバイスの前記第3および前記第4の波長のまたがる範囲が、前記第1のデバイスの前記第1および前記第2の波長のまたがる範囲以内にあることを特徴とするセット。
【請求項16】
前記第1および前記第2の光学的に変化する干渉デバイスが、光学的に変化する箔と、光学的に変化するスレッドと、光学的に変化する窓とからなる群から選ばれる請求項15に記載のセット。
【請求項17】
光学的に変化する対セキュリティ要素を具現する第1および第2の光学的に変化するコーティング組成物、好ましくはインク、のセットであって、
より低い屈折率(nlow)の第1の誘電体を有し、k次の反射極大(k)が、直交入射における第1の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第2の波長(λ)への移動を示す第1の光学的に変化する干渉顔料、を含有する第1のコーティング組成物と、
より高い屈折率(nhigh)の第2の誘電体を有し、同じk次の反射極大(k)が、直交入射における第3の反射波長(λ)から、かすめ入射における、より短い第4の波長(λ)への移動を示す第2の光学的に変化する干渉顔料、を含有する第2のコーティング組成物と
を備えるセットにおいて、
前記第2の顔料の前記第3および前記第4の波長のまたがる範囲が、前記第1の顔料の前記第1および前記第2の波長のまたがる範囲以内にあることを特徴とするセット。
【請求項18】
前記第1および前記第2の光学的に変化するコーティング組成物が、スクリーン印刷インクと、銅版凹版インクと、フレキソ・グラビア印刷インクとからなる群から選ばれる請求項17に記載のセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−504778(P2012−504778A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529501(P2011−529501)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062021
【国際公開番号】WO2010/037638
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(311003204)シクパ ホールディング エスアー (21)
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH−1008 Prilly Switzerland
【Fターム(参考)】