光学的情報を分離するためのアレイを用いて、粒子を光学的に検出するためのシステムおよびデバイス、ならびに同製造方法
本発明は、所定の波長を有する照射光によって照らされることに適した観察領域(11)内に配置された粒子(10)を光学的に検出するためのシステム(1)に関する。本システムは、光学的検出のための手段(4)と、一方の端部(6’、6”、6”’)が観察領域(11)に十分に近いことによって光学的情報をチャンネル(5’、5”、5”’)の一方の端部からもう一方の端部へ転送することを可能にする、単一平面(XY)上に設置された金属製プラズモンチャンネル(5’、5”、5”’)のアッセンブリー(5)とを備えている。本システムにおいて、上記チャンネル(5’、5”、5”’)は、アッセンブリー(5)が観察領域(11)の周囲に光学的情報を転送するためのアレイ(5)を形成するように構成されている。上記アレイ(5)の少なくとも1つの空間的な特徴の値が、各チャンネル(5、5”、5”’)の観察領域(11)に近い側の端部(6’、6”、6”’)、および、観察領域(11)から離れた側の端部では、それぞれ上記波長より小さい、および、上記波長より大きい。本システムは、この観察領域(11)から離れた側の端部(7’、7”、7”’)と上記光学的検出のための手段(4)との間を光学的に分離するための手段(8’、8”、8”’)を備えている。本発明は、粒子(10)を光学的に検出するためのデバイス(40)にも関し、さらに、このようなシステムおよびデバイスを製造する方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子を光学的に検出する顕微鏡法の分野に関する。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、所定の波長を有する照射光によって照らされることに適した観察領域内に配置された粒子を光学的に検出するためのシステムに関連する。本システムは、光学的検出のための手段と、一方の端部が上記観察領域に十分に近いことによって光学的情報を金属製ワイヤを介して転送することを可能にする、単一平面上に配置された金属製ワイヤのアッセンブリーとを備えている。
【0003】
本発明は、このような光学的検出システムを複数備え、単一の基板上に構成された、粒子を光学的に検出するための機器にも関し、さらに、このようなシステムおよび機器の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
生物学やバイオ化学などの分野において、例えばタンパク質とタンパク質との間のハイブリダイゼーション、抗体と抗原との間のハイブリダイゼーション、ストレプトアビジンとビオチンとの間のハイブリダイゼーション、さらにウイルスと膜受容体との間のハイブリダイゼーションなどの化学的選択性を有する分子レベルの現象の検出は、ますます重大になっている。しかし、顕微鏡法における一般的な問題は、対物レンズによって捕捉した像において高い解像度を得ることである。この解像度は、レーリーの基準によれば、対物レンズの物体空間開口数に反比例するが、実際には、光学軸に対して横方向の波動ベクトルのスペクトルの最大値に限定される。実際に、像は、物体平面に存在するすべての詳細な情報に対してローパスフィルタを適用することによって得られる。ただし、イメージングの対象となるソース(物体平面)から対物レンズが場を集光する遠方場では、いわゆるサブ波長の詳細な情報が伝送されない。
【0005】
この解像度の制限を解消して、ナノ粒子をより良く検出するために、「近接場」顕微鏡法またはSNOM顕微鏡法(scanning near-field optical microscopy)と呼ばれる、いくつかの解決方法が、例えば仏国特許出願公開第2 785 045号明細書において提案されている。この手法によれば、最大空間周波数を含む電磁場の局部(近接場)が、構造化された物質に結合される。これらの周波数は、空間的にもっとも詳細な情報を含んでおり、実際に遠方空間に広がることができずにエバネッセント波が発生するだけであり、せいぜい数百nmまたは数μm離れると検出不可能になる。この近接場を利用した解決方法を用いると、構造化された物質は近接場の成分を遠方場の成分に変換することを可能にし、この遠方場の成分を捕捉すればよい。この構造化された物質は、例えば、微細な金属性先端もしくはテーパ形状のガラスファイバー、または非常に薄い金属層でコーティングされたガラスファイバーであればよい。
【0006】
ただし、この解決方法は、準備の再生可能性の問題、さらに、先端部に接近する問題、誘電性先端部の小さな効率的な断面の問題、特に並列性(parallelism)の欠如の問題に関連する複数の短所を有している。したがって、このような解決方法は、研究用測定機器に合わせて構成すると、工業的には達成が依然困難である。実現際の主な障害は、サンプルを手で設置する繊細な作業、および、調査対象とする領域の選択にある。この対象領域は、サンプルに比較すると非常に小さく、標準的な顕微鏡機器で局部的な測定に先立って特定することが困難でも面倒でもある。
【0007】
これらの短所を解消する第1の解決方法は、プラズモンの存在条件、特にプラズモンのカットオフ周波数を最適化することである。こうすることによって、金属の厚みを約12nmに最適化(この厚さは使用する貴金属によってばらつきがあることもある)することによって、損失の多いプラズモンを用いても、可能な限り最大の空間周波数が得られるようになることがわかった。このタイプの解決方法は、文献「Planar metal plasmon waveguides: frequency-dependent dispersion, propagation, localization, and loss beyond the free electron model (J.A. Dionne, L.A. Sweatlock, H. A. Atwater and A. Polman; Phys. Rev. B; Vol. 72; p. 075405; 2005)」、文献「Plasmon slot waveguides: Towards chip-scale propagation with subwavelength-scale localization (J. A. Dionne, L.A. Sweatlock, H. A. Atwater, and A. Polman; Phys. Rev. B; Vol. 73; p. 035407; 2006)」、文献「Plasmon-polariton waves guided by thin lossy metal films of finite width: Bound modes of symmetric structures (P. Berini; Phys. Rev. B; Vol. 61; p. 10484-10502; 2000)」、および、文献「Plasmon-polariton waves guided by thin lossy metal films of finite width: Bound modes of asymmetric structures, (P. Berini, Phys. Rev. B, Vol. 53, p. 125417, 2001)」に提示されている。この最初の2つの文献では、スロット状導波路の形状を示す値についても示唆されている。また、他の形状も提案されており、例えばV字状溝などの断面が小さなプラズモン金属製チャンネルをうまく形成したことが、文献「Channel Plasmon-Polariton Guiding by Subwavelength Metal Grooves (S.I. Bozhevolnyi, V. S. Volkov, E. Devaux, and T.W. Ebbesen, Phys. Rev. Lett; Vol. 95; p. 046802 (1-4); 2005)」において報告されている。これらの代替となる解決方法は、上述の細いワイヤに比較すると閉じ込められるプラズモンが少ないが、ここで対象とする適用分野においては依然注目される可能性もある。
【0008】
第2の解決方法は、金属多層中におけるエバネッセント波の特定の伝播を利用することである。金属の平面は、対応する負の屈折率を有するので、単位倍率(unit-magnification)および高いサブ波長の解像度で、下側に位置する点の像を上側の点に写すことができる、いわゆる「スーパーレンズ」として作用する。従来の光学機器のように可変倍率(magnification)で像を形成するために、スーパーレンズの改善例も提案された。したがって、第1の他の改善例によれば、円形のスライス部材を用いて拡大スーパーレンズを形成することが、例えば文献「Magnifying Superlens in the Visible Frequency Range (Igor I. Smolyaninov, Yu-Ju Hung, Christopher C. Davis; SCIENCE; Vol. 315; p. 1699-1701; March 23, 2007」において提案されている。第2の改善例によれば、マイクロメートル規模の半円筒上にスーパーレンズ式の金属多層アッセンブリーを構築することが、例えば文献「Far-Field Optical Hyperlens Magnifying Sub-Diffraction-Limited Objects (Zhaowei Liu, Hyesog Lee, Yi Xiong, CHen Sun, Xiang Zhang; SCIENCE; Vol. 315; p. 1686; March 23, 2007)」において提案された。この結果得られる曲線によって、該半円筒の下の領域の拡大像を写すことができるようになる。
【0009】
上記第1の解決方法は、SNOMの先端部より製造は簡単であるが、サブ波長の解像度はもとより、または、いわゆる「超解像度」でさえも得られるようにはならない。このレベルの解像度は、金属およびプラズモンによって特に制限される。第2の解決方法は、超解像度に到達可能な、より良好な光学的な可能性を提供するが、半円筒は完全なものでなければならず、また、もっとも構造化された系の領域の真上に位置しなければならないので、流体ダクトの近傍では実行することが困難である。さらに、目的の解像度は、半円筒の軸に沿う領域では達成されず、円筒を跨ぐ領域だけでしか達成されない。
【0010】
したがって、現在の技術的状況では、いずれの解決方法も、工業的に生産するのに適したものになるような特性を有すると同時に、サブ波長の解像度を実現し、ナノメートル程度の寸法までの微小な粒子の光学的検出を改善する顕微鏡法を提供できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、プラズモンチャンネルを個別化する金属製システム、特に断続的な金属製システムを提供することによって、この技術的問題を解決することである。この目的を達成するために、本発明は、検出しようとするナノ粒子の観察領域に向かって収束する複数の金属製プラズモンチャンネルを基にして構成される。なお、このナノ粒子は流体中を流れていてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明は、所定の波長を有する照射光によって照らされることに適した観察領域内に配置された粒子を光学的に検出するためのシステムに関する。本システムは、光学的検出のための手段と、一方の端部が観察領域に十分に近いことによって光学的情報を一方の端部からもう一方の端部へ転送することを可能にする、単一平面上に設置された金属製プラズモンチャンネルのアッセンブリーとを備えている。本システムにおいて、上記チャンネルは、アッセンブリーが観察領域の周囲に光学的情報を転送するためのアレイを形成するように構成されている。上記アレイの少なくとも1つの空間的な特徴の値が、各チャンネルの観察領域に近い側の端部では上記波長より小さい。また、上記アレイの少なくとも1つの空間的な特徴の値が、チャンネルの観察領域から離れた側の端部では上記波長より大きい。本システムは、この観察領域から離れた側の端部と光学的検出手段との間を光学的に分離するための手段を備えている。
【0013】
本特許では、金属製プラズモンチャンネルとは、プラズモンを利用した光学的情報の伝送を可能にするチャンネルを意味している。このタイプのチャンネルは、さまざまな方法で実現可能であり、特に金属製ワイヤによって、または、金属層に形成された溝によって実現可能である。
【0014】
本解決方法は、金属製プラズモンチャンネルの独自の構成と光学的信号を分離するための手段とを組み合わせた解決法であり、拡大された光学的情報を転写することを可能にし、その結果、該光学的情報が、顕微鏡法の分野において公知である光学的検出手段によって遠方場において取得される。実際に、アレイ形状を有するチャンネルによって、サブ波長の近接場領域を、チャンネルの空間的特性が修正される再生領域に結合することができるようになる。なお、この再生領域では、局部的に取得されてアレイの通過にともなって拡大された光学的情報が従来の検出手段に照射される。上記プラズモンチャンネルの各端部における空間的特性によって、サブ波長の顕微鏡の解像度を達成することができ、ナノメートルスケールの粒子を検出できるようになる。
【0015】
好ましくは、上記チャンネルのアレイの少なくとも1つの空間的な特徴の値は、観察領域に近い側の端部では上記波長の半分より小さい。
【0016】
第1の実施形態によれば、上記チャンネルのアレイの空間的な特徴は隣り合う2つのチャンネル間の距離である。
【0017】
第2の実施形態によれば、上記チャンネルのアレイの空間的な特徴はチャンネルの幅である。
【0018】
本発明の第1の実施態様によれば、上記金属製プラズモンチャンネルは金属製ワイヤで形成されている。
【0019】
本発明の第2の実施態様によれば、上記金属製プラズモンチャンネルは金属層を掘り込んで形成されたV字状溝から形成されている。
【0020】
この最後の場合には、上記チャンネルのアレイの空間的な特徴は該アレイを形成する溝の深さであってもよい。
【0021】
同じくプラズモンチャンネルが溝形状を有する場合、好ましくは、上記溝の傾斜角が、上記観察領域に近い側の端部では、上記観察領域から離れた側の端部より大きい。
【0022】
好適な実施形態では、上記転送アレイの各チャンネルが基板上に積層されている。これによって、アレイを保持することが可能になる。上記アレイのワイヤは埋設されてもよい。この場合、対称なシステムを形成して、文献「Plasmon-polariton waves guided by thin lossy metal films of finite width: Bound modes of symmetric structures (P. Berini; Phys. Rev. B; Vol. 61; p. 10484-10502; 2000)」の教示を使用することができる。
【0023】
上記アレイのワイヤが埋設される場合、該ワイヤは、互いに接近した平行なチャンネルの形態で観察領域において延長されてもよい。本実施形態では、上記観察領域の底部とこの領域の下に埋設されたチャンネルとの間の距離はサブ波長のままであり、その結果、必要な光学的情報がアクセス可能なままであり、十分な信号が得られる。この手法によって、観察領域の縁部で切り落とされたアレイの場合に比較して、良好に形状を制御することができる可能性がある。
【0024】
好ましくは、溝が、検出しようとする粒子を搬送する流体を流動させるためのチャンネルを形成するように基板に設けられている。蒸発を防止するために、溝自身に沿って蓋を被せるか、または、基板上に全体を覆う上側基板を設けるかのいずれかによって、この溝が覆われてもよい。後者の場合の具体例としては、エラストマーやシリコーンなどの屈曲性を有する素材でできた上側基板があげられる。これらは、当業者には、微小流体および「ラボ・オン・チップ」として知られている。
【0025】
本発明は、上述のように、上記転送アレイの各チャンネルが埋設され、かつ、観察領域の下で延びて、互いに平行なチャンネルのネットワークを形成し、隣り合う2つの互いに平行なチャンネル間の距離が上記照射光の波長より小さく、これらのチャンネルが、観察領域の下の上記照射光の波長より浅いところに配置されている、光学的検出のためのシステムにも関する。
【0026】
流体がチャンネルに沿って流動できる場合に、上記観察領域では、複数の小型電気機械変換器が、流体の流線を制御するために、または、この流体中を運動する粒子に対して特定の制御を行うために、上記転送アレイのチャンネルに関連付けられてもよい、または、チャンネルによって制御されてもよい。
【0027】
ある特定の実施形態によれば、上記光学的分離手段は、観察領域から離れた側の端部に配置されたネットワーク抽出器を有する。これによって、プラズモンモードを、アレイ面に対して鉛直な線にほぼ沿って上側基板に向かって結合することが可能になる。
【0028】
これらのネットワーク抽出器のある特定の変形例によれば、これらの抽出器は、転送アレイの端部の幅を上記波長のスケールで調整することからなる。
【0029】
別のある特定の実施形態によれば、上記光学的に分離するための手段は、各チャンネルの観察領域から離れた側の端部と、各チャンネルの延長部とに設置された屈折率が高い誘電性ワイヤに配置されたネットワーク抽出器を有する。金属の場合と比較すると、これらの抽出器は長い伝播距離を提供し、したがって、アレイの開放側は観察領域から任意に離れたところに配置されてもよい。
【0030】
これらのネットワーク抽出器のある特定の実施形態によれば、これらの抽出器は、誘電性ワイヤの幅または断面を調整することからなる。
【0031】
これらのネットワーク抽出器の別のある特定の実施形態によれば、これらの抽出器は、中央の誘電性ワイヤのすべてまたはその一部に穴を開けることからなる。
【0032】
照射の第1の変形実施形態によれば、上記システムは、照射手段と、一方の端部が観察領域に一層近く、情報を光学的に転送するための第2のアレイを、観察領域の周囲に観察領域を基準として第1の転送アレイに対して全体的に対称に形成するように構成された、単一平面上に設置された金属製チャンネルの第2のアッセンブリーとを備える。第2のアッセンブリーを第1のアッセンブリーに対して互い違いに配置してもよい。
【0033】
本変形例において、上記システムは、好ましくは、上記観察領域から離れた側の端部と照射手段との間に光学的結合のための手段を有する。これによって、各チャンネルの内側で外部のビームからの光を結合して観察領域に集光することが可能になり、したがって、特に効果的な照射が達成できるようになる。
【0034】
本発明は、上述のように、照射手段と、光学的情報を転送するための第2のアレイを観察領域を基準として第1の転送アレイに対して対称に形成するように構成された、金属製チャンネルの第2のアッセンブリーとを備え、上記第1のアッセンブリーおよび第2のアッセンブリーが、上記波長より浅いところで観察領域の下に埋設され、上記第1のアッセンブリーおよび第2のアッセンブリーが、照射光の波長より短い距離だけ互いに離間した、互いに平行なチャンネルのネットワークによって互いに接続される、光学的検出のためのシステムにも関する。
【0035】
各種の実施形態によれば、上記互いに平行なチャンネルが、一定の断面を有していてもよく、あるいは、短い長さの被修正部によって調整されてもよい。この被修正部とは、上記波長より短く、チャンネルの他の部分より小さいか大きい、または、これに等しい幅を有する。こうして、インピーダンスの変化によって、および、被修正部の周囲のエバネッセント場によって強制的に伝送させることによって、プラズモンの大部分が直接伝送されないようにする。この構成によって、本システムは、上記アレイ間の接続部の上方の溝中の粒子の存在に対する感度が高くなる。
【0036】
上記アレイのワイヤが埋設されて観察領域の下で延びている場合、照射結合手段も、観察領域の側の端部が金属およびプラズモン接触部によって分離チャンネルに接続された、埋設されたアレイであってよい。この場合、埋設されたプラズモンチャンネルの上方の観察領域の粒子は、これらのワイヤに沿った照射光の伝送を調整または変更するように作用する。こうして、特に、該接続部分が、照射アレイの側と分離アレイの側との間のトンネル効果に対するプラズモンの結合性を低減する、サブ波長のサイズを減縮する形状を有していれば、観察領域の下のプラズモンチャンネル同士の間の接続部分が、照射光のプラズモンチャンネルの直接の流れを限定し、上方に位置する粒子によって実行される修正を最適化するように、規定され得る。
【0037】
照射手段は、集積光学系中において動作してもよく、第2の転送アレイの平面上に配置されてもよい。
【0038】
好ましくは、上記光学的結合手段は、観察領域から離れた側の端部に配置されたネットワーク抽出器/結合器を有し、こうすることによって、光をプラズモンチャンネルに効率的に転送することができる。
【0039】
好ましくは、上記ネットワーク抽出器は、転送アレイの端部の幅を上記波長のスケールで調整することからなる。したがって、プラズモンチャンネルを介した入射光の良好な伝播が、特に光がチャンネルに対して鉛直な軸から入射する場合に、確保される。
【0040】
別の変形例では、上記光学的結合手段は、各チャンネルの観察領域から離れた側の端部と、各チャンネルの延長部とに設置された屈折率が高い誘電性ワイヤに配置されたネットワーク結合器を有する。
【0041】
これらのネットワーク結合器のある特定の実施形態では、これらの結合器は、誘電性ワイヤの幅または断面を調整することからなる。
【0042】
これらのネットワーク結合器の別のある特定の実施形態では、これらは、中央の誘電性ワイヤのすべてまたはその一部に穴を開けることからなる。
【0043】
照射の第2の変形実施形態によれば、上記システムは、上記観察領域を直接照らす照射手段と、第2の光学的情報転送アレイを観察領域の周囲に形成するように構成された、金属製チャンネルの第2のアッセンブリーとを備えている。
【0044】
この変形例では、上記システムは、上記観察領域に対して互いに異なる高さに配置された、同一平面に平行な複数のアレイを備えていてもよい。これらのアレイは、互いに異なる高さで積層され、適切に構成すれば収差の解消を容易にするように形成され得るという効果がある。
【0045】
こうすることによって、好ましくは、上記アレイの高さおよび形状的特性が、例えば、光学的検出手段の色収差に応じて色収差を導入できるように決定される。こうすることによって、光学的検出手段(好ましくは顕微鏡の対物レンズを含む)の色収差が補償でき、色収差のない像が得られる。
【0046】
また、好ましくは、上記システムは、光学的検出によって再生される像の横方向の形状および色収差を補償するための手段を備えている。これにより、像の品質が改善される。
【0047】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つのプラズモンチャンネルが、観察領域から得られる光学的情報のインピーダンスマッチングのための被修正部を観察領域にもっとも近いその端部に有する。
【0048】
別のある特定の実施形態では、少なくとも1つの光学的情報転送アレイが、静電ポテンシャルを制御して観察領域において粒子を引きつけるまたははじくための電気的接触部を有する。
【0049】
別のある特定の実施形態では、光学的情報の転送のための少なくとも1つのアレイが、観察領域において電気化学反応を制御するための電気的接触部を有する。
【0050】
本発明は、上記実施形態のうちの1つに係る、粒子を光学的に検出するための基本システムを複数備え、単一の基板上に設置されている、粒子を光学的に検出するための機器にも関する。この機器によって、前記の基本システムの効果に加えて、このような基本システムの全体的な製造手法の効果を享受することができるようになる。蓋として作用する上側基板にもこれらの手法を利用でき、これらの教示を広けることによって、一般的に、基板に提供されるすべての機能性が揃えられる。
【0051】
この機器のある特定の実施形態では、複数の基本システムが基板の平面上にネットワークを形成する。
【0052】
好ましくは、少なくとも1つの流体回路が、少なくとも2つの光学的検出基本システムを相互につなぐ。
【0053】
ある特定の変形例では、少なくとも2つの基本システムが干渉分光器の腕部を形成し、これらの基本システムの各々に関連する観察領域が、互いに非常に近い。それゆえ、2つの腕部間の干渉信号によって、特に高い感度でナノ粒子が存在することを明らかにすることができるようになる。
【0054】
粒子の動きの分析については、観察領域において検出される運動を推定することによって、光学的検出手段によって遠方場において受信される光学的信号をリアルタイムで分析するための手段を、上記機器が備えていてもよい。
【0055】
本発明は、粒子を光学的に検出するためのシステムを製造する方法にも関する。本方法は、所定の波長を有する照射光によって照らされ得る観察領域の近くに一方の端部が位置するように、基板上に積層された金属層に対してリソグラフィーを実行して、金属製プラズモンチャンネルを基板の単一の平面上に構成するステップを含む。本方法では、上記リソグラフィーステップにおいて、チャンネルは、アッセンブリーが光学的情報の転送のためのアレイを観察領域の周囲に形成するように構成され、上記アレイの少なくとも1つの空間的な特徴の値が、各チャンネルの観察領域に近い側の端部では上記波長より小さく、かつ、各チャンネルの観察領域から離れた側の端部では上記波長より大きい。この方法は、この観察領域から離れた側の端部と光学的検出手段との間を光学的に分離するための手段を設けるステップをさらに含む。
【0056】
最後に、本発明は、粒子を光学的に検出するための機器を製造する方法に関する。本方法は、単一の基板上に、上述の製造方法によって得られる粒子を光学的に検出するための基本システムを複数設けることからなる。
【0057】
本方法の変形例によれば、本方法は、少なくとも2つの光学的検出基本システムの各々に接続する少なくとも1つの流体チャンネルを形成するために、基板に対してリソグラフィーを実行して少なくとも1つの溝を設けるステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明のその他の特性および効果は、添付の図面を参照する以下の記載から明らかになるであろう。
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る、光学的検出のためのシステムの三次元図である。
【図2】図2は、本発明のこの第1の実施形態に係る、光学的検出のためのシステムの概略的な上面図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係る、光学的検出システムの概略的な上面図である。
【図4】図4は、本発明のこの第2の実施形態に係る、光学的検出システムの概略的な断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態に係る、光学的検出システムの概略的な上面図である。
【図6】図6は、本発明の第4の実施形態に係る、光学的検出システムの三次元拡大図である。
【図7】図7は、本発明の第5の実施形態に係る、光学的検出システムの概略的な上面図である。
【図8】図8は、本発明の第5の実施形態に係る、光学的検出システムの断面図である。
【図9】図9は、第6の実施形態に係る、光学的検出機器の第1の変形例の上面図である。
【図10】図10は、この第6の実施形態に係るこの光学的検出機器の第2の変形例の上面図である。
【図11】図11は、第7の実施形態に係る光学的検出機器の上面図である。
【図12】図12は、この第7の実施形態に係るこの光学的検出機器の三次元拡大図である。
【図13】図13は、金属製プラズモンチャンネルのアレイの各種の変形例を示す図である。
【図14】図14は、金属製プラズモンチャンネルのアレイの各種の変形例を示す図である。
【図15】図15は、金属製プラズモンチャンネルのアレイの各種の変形例を示す図である。
【図16】図16は、本発明の第8の実施形態に係る、光学的検出システムの三次元概略図である。
【図17】図17は、本発明の第9の実施形態に係る、光学的検出システムの三次元概略図である。
【0059】
分かりやすくするために、同一または類似の構成要素には、図面全体を通じて同一の参照番号をふる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1および図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る粒子検出のためのシステムは、
照射手段(図示しない)と、
光学的検出手段4と、
溝3が掘り込んで形成されている基板2と、
粒子10を含む、溝3内に設けられた観察領域11と、
アレイを形成する、金属製プラズモンチャンネル5’、5”、および、5”’のアッセンブリー5とを備えている。
【0061】
上記金属製プラズモンチャンネル5’、5”、および、5”’は、これらのチャンネル全体がマルチモード手段を構成し、ある場において走査することなく情報を取得して、これを拡大したものを転写できるように、アレイ中に設置されたワイヤから形成されている。このアレイは、サブ波長の近接場ゾーン6(観察領域11)を、後方領域7に結合する。この後方領域7では、金属製ワイヤは間隔が広く、情報を含む照射光を局部的に収集して、検出手段4に向かうアレイ5の通過にともなって拡大することを可能にする。
【0062】
光学的情報をサブ波長の近接場から遠方場へ転送することを可能にするために、隣り合う2本のワイヤ5’、5”、および、5”’間の距離は、観察領域11に近い側の端部6’、6”、および、6”’における上記波長より小さく、かつ、観察領域11から離れた側の端部7’、7”、および、7”’における上記波長より大きい。
【0063】
基板2によって、アレイが基板2上に設けられる際に、アレイを保持することができるようになる。この基板は、通常100nm〜30000nmの非結晶シリコンの層で覆ったガラスまたはシリコンで形成されればよい。重合体製の支持部を使用してもよい。例としては、透明なプラスチック(ポリメチルメタクリレート、シクロブチルベンゼン、ABS、PVC、ポリプロピレンなど)、エラストマーやシリコーン(ポリジメチルシロキサン(PDMS)およびその誘導体)、さらに、重合体(例えばポリイミドやカプトン(登録商標))などがあげられる。プラズモンの場合、屈折率がさらに高い酸化物からなる支持部を使用してもかまわない。例えばニオブ酸リチウム、サファイア(AI2O3)、石英などの酸化物も可能な選択肢である。
【0064】
これらの金属製ワイヤは、達成すべきスケールを考慮しながら、薄い一様な金属層をリソグラフィー(例えば樹脂の使用および電子ビームによる露光など)によって切削する手法を用いて得られる。
【0065】
拡大した断面の拡大率、幅、および、高さは、近接場の情報がアレイの拡大部7においてもっともよく伝送されるように最適化される。当業者であれば、このような最適化を実現することはできるはずである。例えば、まず、厚さを最適化して、損失について最良の妥協ができる値に設定するか、または、システムの全体的な最適化の微妙な各種態様を考慮して、この値よりわずかに高いまたは小さい値に設定すればよい。次に、角度の差を、アレイの2本のワイヤの間(および、可能であればその規則性も)、および他の金属部において、特に本モードの観察領域および拡大領域において最適化すればよい。
【0066】
ここで、当業者は、これらの金属製ワイヤによって伝送可能な光の波長が、プラズモン共鳴のためにワイヤを構成する金属(例えば銀)によってほぼ決まってしまい、これにより低波長場より高い解像度が保証できないことに気づくであろう。ただし、この後者の場合、解像度を上げないのであれば、遠方場における良好な顕微鏡の対物レンズと同じオーダーの倍率(magnitude)のままであってもよい。また、これらのワイヤについては、3μm〜300μmの長さが適していると考えられる。また、選択する厳密な長さの決定は、プラズモンに損失が発生するので、さまざまな経路に沿って使用されるプラズモンの減衰に依存し、したがって、特に使用する光の周波数に依存する。
【0067】
アレイの金属製ワイヤ間の角度は、その本数に依存する。ワイヤが約20本の場合であれば、角度は約0.10ラジアンになる。したがって、ワイヤの間隔は1μmから約10μmに達する。含まれている情報を空き領域に向かって分離するために、波形の周期は、真空における波長を抽出器のワイヤにおけるプラズモンモードの屈折率の実効値で割ったものにほぼ等しい。屈折率が1.5、かつ、波長が600nmであれば、上記分離において400nmの幅を有する調整周期が得られる。超解像度に特有の場合に屈折率の実効値を高くすれば、原理的にはさらに弱い周期も得られるが、ワイヤを抽出器において上記の数値で作動させたいのであれば、より高い結合オーダーで作動させることもでき、こうすることによって、発生する環境しだいで0.5波長〜1波長の周期に近づくことができる。
【0068】
好適な実施形態によれば、例えば注目している粒子10を検出しようとする場所であるナノ流体チャンネルを通すために、穴3が(または構成もしくは溝も)基板の観察領域11に配置される。
【0069】
観察領域11は、例えば、周囲に金属製ワイヤ5’、5”、および、5”’が配置される縦軸Zを有する円筒であってもよい。この円筒は、約400nm〜約1000nmの直径を有していてもよい。
【0070】
ある特定の実施形態では、この穴3は、観察領域11の表面を局部的に化学的に機能化し、例えば、さらに別の反応種を分析したいナノ粒子の表面の化学的な”キー”として選択的に固定することができるようになる。
【0071】
分離手段8は、ワイヤ5’、5”、および、5”’内の光をイメージングに使用可能な光を得るために分離することを可能にする。この目的を実現するために、本手段は、各ワイヤ5’、5”、または、5”’について、アレイの先端部の幅を注目している波長のスケールで調節する、アレイの拡大部7に配置されたネットワーク抽出器8’、8”、または、8”’から構成されている。この幅の調整は、屈折率の実効値の調整である。回折条件が十分に満たされれば、周期性によって伝送されるプラズモンモードは、縦軸Zに沿って大きく広がる。
【0072】
ワイヤの端部におけるネットワーク8’、8”、および、8”’の周期パターンは、ワイヤの品位が維持できるように設計されている。ワイヤの幅がもともと30nmであれば、端部では約100nm〜250nm、すなわち、波長より短くなければならない。側面と側面との間の角度が0.010ラジアン〜0.015ラジアンであれば、ワイヤは、数値範囲の最大値に達し、約10μm後には180μmの幅に達する。この値は所望の倍率(magnitude)のオーダーに対応する。
【0073】
エネルギーおよびワイヤが運ぶ情報をより良好に伝播させるために、上記調整は、ワイヤに沿って段階的に徐々に実行される。前記のスケールにおける最大の調整は、局部的にワイヤの幅を半分(120nm)にまで低減し、大きな部分と小さな部分との比を1:2とすることからなる。
【0074】
上記周期パターンは、アレイ全体にフォーカスしていてもよい。アレイの狭い入力部においてワイヤを等しく励起し、かつ、アレイ上で250μmの光を集光するために、上側基板(空気または液体または重合体)の経路のこの部分に関する角度は、鉛直方向の傾斜が15/250の範囲にあり、したがって、0.1ラジアン未満であると考えられる。ただし、これは、光学軸に到達し、全体像を形成しない光線に関するものである(全体像には、傾め方向の光線がさらに含まれている可能性がある)。
【0075】
検出手段4は、従来の遠方場検出手段であり、例えば顕微鏡の対物レンズである。検出手段4は、分離手段8で回折した光が集光できるように縦軸Zに沿って設置されている。情報を最大空間周波数(つまり、分離ゾーンにおいて隣り合う2つのワイヤ間で起こる、スカラ場と考えた場合の電場の正負の記号の交替に対応する周波数)で収集するためには、開口が大きな集光対物レンズが好ましい。前記の例では、2つの分離素子間の典型的な差が約1.5μmであるので、最小開口数が0.7であることが必要とされる。
【0076】
本システム1の基本的な態様は、観察領域10の局部的な光学的情報が、放射状に延びる各ワイヤの位相の分布の形態で依然利用可能であることである。観察領域11にある検出しようとする攪乱物10は、一般にアレイの複数の金属製ワイヤに対して影響し、それゆえ、撮影される対象は、アレイの後部の全体的な放射であって、この放射の方向から各成分間の位相関係がわかる。このように、周期性をうまく選択するために、本発明に係るシステムは任意の拡大部を有していてもよい。このように、アレイ上に位置する顕微鏡4の対物レンズの平面状の観察対象の見かけの位置によって、この対象を観察領域11内のアレイ5が狭い側で見ることができるようになる。
【0077】
図16および図17は、ワイヤ5’、5”、および、5”’が基板に埋設された、つまり基板を掘り込んで形成された穴の中に配置された一実施形態を示している。
【0078】
アレイのワイヤが図16および図17に示すように埋設されている場合には、ワイヤ5’、5”、および、5”’は溝3の下の溝3の深さより小さい、サブ波長の深さで延びていてもよく、溝3の底部の近くの粒子10の存在について観察領域11における情報を提供することができる。ただし、底部の上方の高すぎる位置にある粒子10は、底部の近くの粒子としての解像度で見える。
【0079】
次に、図3および図4を参照しながら、本発明の、照射手段を備えた第2の実施形態について説明する。
【0080】
観察対象物10の照射手段は、観察領域11の近傍に配置された高出力の光源を備えている。この光源は、分離アレイ5に対して対称に構成された結合アレイ22によって観察領域11に結合される。銀Agによってサポートされるプラズモンについては、光子のエネルギーは通常3eV〜3.5eVであり、これは、近UV領域の380nm〜320nmに相当する。キセノンランプもしくはGaNレーザダイオードもしくは約325nmのヘリウム−カドミウムレーザ、または、ELダイオード(LED)もしくはAlGaNレーザダイオードのいずれかを使用すればよい。この範囲のLEDは、通例として単体での出力が約数mWで市販されており、その「明るさ」(1cm2当たり、かつ、1ステラジアン当たりのワット数)が非常に重要である。金によってサポートされるプラズモンの場合、光子のエネルギーは通常2.2eV〜2.5eVであり、これはスペクトルの黄色から緑色の領域に相当する。LEDは、これらの波長をカバーするが、明るさは中程度であることが多い。ここでは、ダブル気体レーザまたは固体レーザが、好ましい選択肢である(532nm、514nm)。
【0081】
観察領域11に向かって光を照射するために、光源4はまず、光を、Z方向にゾーン24に向かって結合アレイの端部における結合ネットワーク23’、23”、および、23”’の方向に照射する。そしてこの光は、金属製ワイヤによってXY平面において結合し、すべて観察領域11(矢印25’)に集まる。したがって、光はナノ粒子10を照らすことを可能にし、そしてその一部が金属製ワイヤ5’、5”、および、5”’を通り抜けて(矢印25”)、これに続いてネットワーク8’、8”、および、8”’によって分離され、検出手段4に到達する。
【0082】
アレイのワイヤが図16および図17に示すように埋設されている場合には、ワイヤ5’、5”、および、5”’は溝3の下の溝3の深さより小さい、上記波長未満の深さで延びて、互いに近接しほぼ平行なチャンネル32によって照明システムのチャンネル22’、22”、22”’に接続する。この場合、チャンネル22’、22”、22”’も埋設されている。そして、求められている情報、つまり、粒子10が溝3の底部の近くに位置している場合にはるかに強力な情報は、観察領域11の下でアレイに繋がる薄いプラズモンチャンネル32に沿った伝送における修正を行うことによって提供される。
【0083】
図16に示すように、観察領域の下でアレイに繋ぐコネクタ32は、直接接続するものであってもよい。
【0084】
図17に示す別の一実施形態では、直接的なプラズモンの伝送の大半を、インピーダンスの変化、および、エバネッセント場によって実現される伝送を被修正部の周囲に集中させることによって防止するために、観察領域の下でアレイに繋がるコネクタ33は、長さが短く(すなわち上記波長より短い)、チャンネル32のほかの部分より小さいか、これに等しいか、または、これより大きな幅を有する被修正部34によって調整されてもよい。なお、この構成は、アレイ間の接続部の上方の溝11内の粒子10の存在に対する、システムの感度を向上させる。
【0085】
ここで、当業者は、システムの色収差に注目すべきであることに気づくはずである。このシステムは実際に単一の波長付近で機能する傾向があるが、短いネットワークや、これ以外の、他のネットワーク形状の調整例(例えば金属構造中における複数のネットワークの同時登録)によって、特に複数の波長または非常に大きなウインドウを有することができるようになり、こうすることによって、使用されるプラズモンの効果の恩恵を適切に受けられるようになる。しかし、抽出器のネットワークのピッチ、および、その振幅を微調整することによって、上側基板(または基板)において、明確な収差を搬送する波面を有するビームを形成することが可能になる。したがって、これらの収差は、遠方場4の光学系に由来する収差を用いて補償することが可能であり、全体で収差が見かけ上存在しなくなる。したがって、アレイのワイヤの1つにおけるネットワークからの波の見かけの焦点は、基板2の上方に位置することも、下方に位置していることもある。
【0086】
図5に示す本発明の第3の実施形態によれば、光学的情報を分離するために、2つのアレイが使用される。したがって、照射手段は、ナノ粒子10まで真っ直ぐに延びる第3の空間Zの次元における光源であって、例えばELのダイオード、レーザ、または、任意のその他の指向性を示す光源である。
【0087】
次に、図6を参照しながら、本発明の、複数の重ね合わせたアレイを有する第4の実施形態について記載する。
【0088】
この例では、システムは、溝3の同じ側に、互いに平行に、かつ、同一XY平面に沿って、ただし、軸Zに沿って異なる高さに設置された、金属製ワイヤを有する複数のアレイ5、30、および、31を備えている。各アレイ5、30、または、31は、本発明の第1の実施形態において記載したアレイと同様である。本システムは、アレイを最初の部分(つまり最深部)から最後の部分(つまり最浅部分)まで連続的に積層および加工することによって実現される。
【0089】
隣り合うアレイは、誘電体を有するスペーサ層(図示しない)によって離間されている。これらの層は、ナノテク技術でよく使用される、例えばブチルシクロベンゼンなどの酸化物、窒化物、または、有機材料で形成されてもよい。
【0090】
観察領域11では、金属製ワイヤの起点が、例えばマイクロ流体チャンネルに対応する平行六面体の周囲で一群の点として規定される。別の実施形態によれば、これらの起点の他の形態(具体的には、球状や楕円状)も考えられる。これらの形状を、望ましい流体チャンネルに合わせればよい。このように、適切な形状を選択することによって、流体の制約(例えば層流または乱流の確立)および物理化学的特性の一部を考慮に入れることができるようになる。
【0091】
分離ネットワーク(図示しないが、前記の第1の実施形態の分離ネットワークと同じである)では、上下に積層される各アレイの回折手段間においてシェーディング効果を回避するために、ある予防策をとることが必要である。この目的を実現するために、下にあるアレイの金属製ワイヤは、これより上にある金属製ワイヤの範囲を超えて延びるように設けられてもよい。
【0092】
この第4の実施形態のある特定の変形例(図示しない)では、分離アレイ5、30、および、31の溝3の反対側において、照射手段が複数の光学的情報結合アレイに結合される。これらの結合アレイは、前記の第2の実施形態において記載した結合アレイと同様である。照射手段は直接光の光源であってもよい。したがって、これにより、照射手段に対してアレイがより強く結合され、また、観察領域11全体にわたって一層均一に分布する照射光が実現する。
【0093】
重ね合わせた複数のアレイを用いた変形例によれば、上記アレイは、所定の色収差を導入することができる特性を有するように構成されている。異なる高さに配置され、中心からいくらか離れた位置に分離ネットワークを有するアレイは、現実の収束点または仮想的な収束点の周囲にビームを導くような、ネットワーク特性(調整周期および振幅)を有していてもよい。したがって、この収束点の周囲の領域は中心でイメージングされる領域に結合されて、拡大レポートを生成する。このように、色効果が、光学的回折レンズと同様に、システムにも意図的に導入されてよい。波長が異なるビームが現れる平均角度は、アレイのワイヤの屈折率の実効値を有するネットワークに対する入射ビームを考慮した、ネットワークの原理にしたがって移動する。
【0094】
本発明の他の変形例によれば、システムは、さらに収差補正手段を備えている。これらの手段は、光学的な補償だけからなっていてもよく、または、例えば、再生外部光学系の複数の焦点深度で像を撮影することによって、大量の情報をさらに処理することからなっていてもよい。
【0095】
図7および図8に示す本発明の第5の実施形態では、照射手段21は、例えば、レポートされた光源、ポンプされた写真、または、電気的にポンプされた写真を用いて基板2の平面に配置された軸を有する、集積光学系照明素子を備えている。この照射手段は、光の周波数に達する電磁気的な励起を観察領域11まで導くように、アレイ22に結合される。
【0096】
本第5の実施形態の別の変形例によれば、照射光を、基板2に集積された光源から観察領域11にビームによって直接導くことができる。
【0097】
次に、図9および図10を参照しながら、複数の基本検出システムを備えた本発明の第6の実施形態について記載する。
【0098】
図9の実施形態は、粒子10を光学的に検出するための機器40に対応する。この機器は、粒子を光学的に検出するための複数の基本システム1a〜1iを備えている。これらのシステム1a〜1iは、同一基板2上に設置されている。こうすることによって、集約的な製造手法が利用できるようになる。ここで、基本システムの分布が一次元的であっても、二次元的であってもよいことに注目すべきである。
【0099】
図10に提案する変形例によれば、ナノ流体回路が、基本的なネットワークシステムと関連して備えられていてもよい。観察領域は、右チャンネル41、または、より複雑なトポロジーのチャンネル42の周囲に規則的に分布する。繋がれるシステムに基づいて、チャンネルは湾曲していても、螺旋状であっても、曲がりくねっていても、あるいは他の形状であってよい。
【0100】
これらのマイクロ流体チャンネルは所定の標識を使用することによって機器内で規定され、こうすることによって、チャンネルのエッチングマスクの境界標識をアレイを基準にして(または、その逆)一列に並べることができるようになる。そして、機器には、観察領域における流体の流れの制御を可能にする蓋および開口部が設けられる。
【0101】
図10の変形例によれば、観察領域は、チップ面に配置され、積層されたマイクロパイプの1つ以上の平面からなる主回路にアクセスするためのチャンネルのうちの、”マイクロ流体チップ”の鉛直方向および斜め方向のチャンネルの周囲に設置される。
【0102】
エラストマーのような屈曲性を有する素材(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)やその誘導体)からなるチップの場合には、プラズモン回路が互いにごく近傍に位置するマイクロンレベルの金属製島の連続からなるように、プラズモン回路を変更することによって、チップの屈曲性との互換性を維持することが可能である。こうすることによって、光学的情報通信手段(つまり上記アレイ)は、PDMSチップの変形に対処できる。これは、予想できない切断や光学特性の劣化を起こすことがあり得る、連続的な金属製ワイヤからなる構造とは異なる。ナノスケールの切断部をもともと作製しておくことによって、このタイプの問題を回避し、機器の許容度を高めることができるようになる。
【0103】
本発明のある特定の実施形態では、ワイヤが、観察領域11にもっとも近いその端部において断面(または”ギャップ”)を示す。この端部は、中間情報を利用したマイクロ波の導波と同様に、通信しようとする局部的な情報の波長の1/4の波長を通常有する、観察領域から対応するワイヤへの情報のインピーダンスマッチングの条件を満たす。
【0104】
機器の流体チャンネルを再生するために、この後者は、光学的再生の領域において特に薄膜化された(例えば、集光を行う部分において250μm未満にまで薄膜化された)薄い蓋部で覆われる。
【0105】
次に、図11および図12を参照しながら、干渉分光型の第7の実施形態について記載する。
【0106】
この機器は、微弱な信号に対する干渉系の感度を利用する。この理由によって、干渉計の1つの腕部50aに配置された光学システムのように、観察領域11aのどちらの側からも集光する2つのアレイからなるアッセンブリーを考慮することが必要である。この干渉計は、マイケルソン型、マッハツェンダー(Mach−Zehnder)型、トワイマングリーン(Twyman−Green)型などであればよい。上記分離器は、好ましくは照射結合領域の上流に設置され、そしてもう1つの分離器(または同じマイケルソン型)が集光方向の下流において使用される。こうすることによって、2つの腕部における光の通路が利用できて、位相情報が比較される。参照用腕部50bが、第1の腕部50aに追加される。この第2の腕部50bは、第1の観察領域11aに隣接するほぼ同一の観察領域11bに基づいている。これらの条件の下で、後者の対物レンズ51を介して検出手段の平面52において得られる、2つの腕部50aおよび50b間の干渉信号53によって、ナノ粒子の存在が判明する。位相シフトを有する信号を見るためにここで使用される観察領域の横方向の寸法は、位置に依存する。
【0107】
ここでは、観察領域が、2つの経路間のバランスへの直線の縁を有する線状となる状況に入るために、アレイの外で、システムの出力時に位相シフトを導入することが可能であることに注目すべきである。したがって、完全なバランスからのずれは、攪乱の位相および振幅を明らかにする位置およびコントラストの変化に対応する、縁54の局部的な修正として現れる。
【0108】
マイクロ流体チャンネルおよび観察領域の共有について、電気導電性を有するアレイのいくつかの長所が、光学的情報の伝送部となるという長所以外にも観察される。アレイのワイヤ間に電気的な接続がなければ、これらのワイヤは、電気的な導体として作用する。そして、該ワイヤは、観察領域を強制的に所定のポテンシャルにする。これらのポテンシャルは、帯電している粒子にとって引き付けるように作用してもよく、反発するように作用してもよい。該ワイヤは、逆に、空間電荷を選り分けて、電荷が0ではない粒子が目的の相互作用部位に到達できるようにする。該ワイヤは、観察領域におけるMEMS型またはNEMS型のナノ駆動部(例えばチャンネルの透水性またはその局部的な熱的性質に影響する可動部)の開発も可能にする。もう1つの可能性は、特に通常表面プラズモンをサポートする金の層に対して実行されるように、適切な電気化学反応によってインサイツで機能化を行うことである。測定のこのような機能化を実行するために、リソグラフィーを用いて小さな開口部を規定し、これらの開口部を介して気相または液相における化学処理を適用し、さらに、機能化素子を、化学的または物理化学的に(例えば静電結合によって)形成してもよい。
【0109】
本第7の実施形態のある特定の変形例では、アレイのワイヤに効果的に接触するためにCMOS型の電子インターフェース回路を有する。このタイプのセンサは、砒化ガリウム(GaAs)マトリクスなどの読み出し回路としてよく使用されている。そして、この回路は、アレイのワイヤのネットワークに対して、外向き(さらに具体的には適切な操作用インターフェースを備えたコンピュータに対する)インターフェースを形成する。
【0110】
最後に、従来の顕微鏡において公知であるの便利な特徴を外部に集めることによって、外部読み出しシステムを設計することが可能である。このシステムは、例えば偏光板、場および開口の仕切り板、色フィルタ、ノッチフィルタなどの、従来の顕微鏡にあるような付属品を備えていてもよい。これにより、注目しているナノ粒子に対して相対的な信号対雑音比がさらに増加する。
【0111】
最後に、図13〜図15に示すように、プラズモン金属製チャンネルのアレイの各種変形実施形態が可能である。
【0112】
第1の変形例(図13)では、上記プラズモン金属製チャンネル5’、5”、および、5”’が一定の幅を有する金属製ワイヤであり、さらに、隣り合う2つのワイヤ間の間隙が、観察領域の近位端(半波長より小さな間隙D1)と遠位端(半波長より大きな間隙D2)との間では増加する。
【0113】
第2の変形例(図14)では、上記プラズモン金属製チャンネル5’、5”、および、5”’が金属製ワイヤであり、さらに、ワイヤ間の間隙がどちらの端部においても同一である。ただし、ワイヤの幅は、観察領域に近い側の端部と観察領域から遠い端部との間では増加する。
【0114】
第3の変形例(三次元図を示す図15)では、金属製ワイヤの機能が、厚い金属膜におけるV字状溝によってサポートされるプラズモンチャンネルによって提供される。さらに、このVの傾斜角が観察領域11に近い側の端部ではより急峻であり、遠い側の端部ではそれほど急峻ではない。また、これらの溝5’、5”、および、5”’の幅は、観察領域に近い側の端部と観察領域から離れた側の端部との間では増加する。
【0115】
金属製プラズモンチャンネルのこれらの複数の変形実施形態を組み合わせることもできる。
【0116】
本発明の、前記の実施形態は、単なる例示であって、特に本発明を限定するものではない。当業者であれば、特許の技術範囲から逸脱せずに本発明の各種の実施形態を実行できることは明らかである。
【0117】
特に、当業者は、流体チャンネルまたは溝の使用が好ましいが、これらのチャンネルがナノ粒子の光学的信号を得るために本質的なものではないことが理解できるはずである。実際に、金属リソグラフィーによってシステムを製造すれば、小さなブロックを観察領域内の戦略的な位置に残して、流体がなくても、または、チャンネルもしくは溝がなくてもナノ粒子の存在に関する信号を集めることが可能になる。これは、信号を早期に検出するため、または、微弱な信号を較正するためのデバイスの実現に有利な、非常によく較正された場合にもなり得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子を光学的に検出する顕微鏡法の分野に関する。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、所定の波長を有する照射光によって照らされることに適した観察領域内に配置された粒子を光学的に検出するためのシステムに関連する。本システムは、光学的検出のための手段と、一方の端部が上記観察領域に十分に近いことによって光学的情報を金属製ワイヤを介して転送することを可能にする、単一平面上に配置された金属製ワイヤのアッセンブリーとを備えている。
【0003】
本発明は、このような光学的検出システムを複数備え、単一の基板上に構成された、粒子を光学的に検出するための機器にも関し、さらに、このようなシステムおよび機器の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
生物学やバイオ化学などの分野において、例えばタンパク質とタンパク質との間のハイブリダイゼーション、抗体と抗原との間のハイブリダイゼーション、ストレプトアビジンとビオチンとの間のハイブリダイゼーション、さらにウイルスと膜受容体との間のハイブリダイゼーションなどの化学的選択性を有する分子レベルの現象の検出は、ますます重大になっている。しかし、顕微鏡法における一般的な問題は、対物レンズによって捕捉した像において高い解像度を得ることである。この解像度は、レーリーの基準によれば、対物レンズの物体空間開口数に反比例するが、実際には、光学軸に対して横方向の波動ベクトルのスペクトルの最大値に限定される。実際に、像は、物体平面に存在するすべての詳細な情報に対してローパスフィルタを適用することによって得られる。ただし、イメージングの対象となるソース(物体平面)から対物レンズが場を集光する遠方場では、いわゆるサブ波長の詳細な情報が伝送されない。
【0005】
この解像度の制限を解消して、ナノ粒子をより良く検出するために、「近接場」顕微鏡法またはSNOM顕微鏡法(scanning near-field optical microscopy)と呼ばれる、いくつかの解決方法が、例えば仏国特許出願公開第2 785 045号明細書において提案されている。この手法によれば、最大空間周波数を含む電磁場の局部(近接場)が、構造化された物質に結合される。これらの周波数は、空間的にもっとも詳細な情報を含んでおり、実際に遠方空間に広がることができずにエバネッセント波が発生するだけであり、せいぜい数百nmまたは数μm離れると検出不可能になる。この近接場を利用した解決方法を用いると、構造化された物質は近接場の成分を遠方場の成分に変換することを可能にし、この遠方場の成分を捕捉すればよい。この構造化された物質は、例えば、微細な金属性先端もしくはテーパ形状のガラスファイバー、または非常に薄い金属層でコーティングされたガラスファイバーであればよい。
【0006】
ただし、この解決方法は、準備の再生可能性の問題、さらに、先端部に接近する問題、誘電性先端部の小さな効率的な断面の問題、特に並列性(parallelism)の欠如の問題に関連する複数の短所を有している。したがって、このような解決方法は、研究用測定機器に合わせて構成すると、工業的には達成が依然困難である。実現際の主な障害は、サンプルを手で設置する繊細な作業、および、調査対象とする領域の選択にある。この対象領域は、サンプルに比較すると非常に小さく、標準的な顕微鏡機器で局部的な測定に先立って特定することが困難でも面倒でもある。
【0007】
これらの短所を解消する第1の解決方法は、プラズモンの存在条件、特にプラズモンのカットオフ周波数を最適化することである。こうすることによって、金属の厚みを約12nmに最適化(この厚さは使用する貴金属によってばらつきがあることもある)することによって、損失の多いプラズモンを用いても、可能な限り最大の空間周波数が得られるようになることがわかった。このタイプの解決方法は、文献「Planar metal plasmon waveguides: frequency-dependent dispersion, propagation, localization, and loss beyond the free electron model (J.A. Dionne, L.A. Sweatlock, H. A. Atwater and A. Polman; Phys. Rev. B; Vol. 72; p. 075405; 2005)」、文献「Plasmon slot waveguides: Towards chip-scale propagation with subwavelength-scale localization (J. A. Dionne, L.A. Sweatlock, H. A. Atwater, and A. Polman; Phys. Rev. B; Vol. 73; p. 035407; 2006)」、文献「Plasmon-polariton waves guided by thin lossy metal films of finite width: Bound modes of symmetric structures (P. Berini; Phys. Rev. B; Vol. 61; p. 10484-10502; 2000)」、および、文献「Plasmon-polariton waves guided by thin lossy metal films of finite width: Bound modes of asymmetric structures, (P. Berini, Phys. Rev. B, Vol. 53, p. 125417, 2001)」に提示されている。この最初の2つの文献では、スロット状導波路の形状を示す値についても示唆されている。また、他の形状も提案されており、例えばV字状溝などの断面が小さなプラズモン金属製チャンネルをうまく形成したことが、文献「Channel Plasmon-Polariton Guiding by Subwavelength Metal Grooves (S.I. Bozhevolnyi, V. S. Volkov, E. Devaux, and T.W. Ebbesen, Phys. Rev. Lett; Vol. 95; p. 046802 (1-4); 2005)」において報告されている。これらの代替となる解決方法は、上述の細いワイヤに比較すると閉じ込められるプラズモンが少ないが、ここで対象とする適用分野においては依然注目される可能性もある。
【0008】
第2の解決方法は、金属多層中におけるエバネッセント波の特定の伝播を利用することである。金属の平面は、対応する負の屈折率を有するので、単位倍率(unit-magnification)および高いサブ波長の解像度で、下側に位置する点の像を上側の点に写すことができる、いわゆる「スーパーレンズ」として作用する。従来の光学機器のように可変倍率(magnification)で像を形成するために、スーパーレンズの改善例も提案された。したがって、第1の他の改善例によれば、円形のスライス部材を用いて拡大スーパーレンズを形成することが、例えば文献「Magnifying Superlens in the Visible Frequency Range (Igor I. Smolyaninov, Yu-Ju Hung, Christopher C. Davis; SCIENCE; Vol. 315; p. 1699-1701; March 23, 2007」において提案されている。第2の改善例によれば、マイクロメートル規模の半円筒上にスーパーレンズ式の金属多層アッセンブリーを構築することが、例えば文献「Far-Field Optical Hyperlens Magnifying Sub-Diffraction-Limited Objects (Zhaowei Liu, Hyesog Lee, Yi Xiong, CHen Sun, Xiang Zhang; SCIENCE; Vol. 315; p. 1686; March 23, 2007)」において提案された。この結果得られる曲線によって、該半円筒の下の領域の拡大像を写すことができるようになる。
【0009】
上記第1の解決方法は、SNOMの先端部より製造は簡単であるが、サブ波長の解像度はもとより、または、いわゆる「超解像度」でさえも得られるようにはならない。このレベルの解像度は、金属およびプラズモンによって特に制限される。第2の解決方法は、超解像度に到達可能な、より良好な光学的な可能性を提供するが、半円筒は完全なものでなければならず、また、もっとも構造化された系の領域の真上に位置しなければならないので、流体ダクトの近傍では実行することが困難である。さらに、目的の解像度は、半円筒の軸に沿う領域では達成されず、円筒を跨ぐ領域だけでしか達成されない。
【0010】
したがって、現在の技術的状況では、いずれの解決方法も、工業的に生産するのに適したものになるような特性を有すると同時に、サブ波長の解像度を実現し、ナノメートル程度の寸法までの微小な粒子の光学的検出を改善する顕微鏡法を提供できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、プラズモンチャンネルを個別化する金属製システム、特に断続的な金属製システムを提供することによって、この技術的問題を解決することである。この目的を達成するために、本発明は、検出しようとするナノ粒子の観察領域に向かって収束する複数の金属製プラズモンチャンネルを基にして構成される。なお、このナノ粒子は流体中を流れていてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明は、所定の波長を有する照射光によって照らされることに適した観察領域内に配置された粒子を光学的に検出するためのシステムに関する。本システムは、光学的検出のための手段と、一方の端部が観察領域に十分に近いことによって光学的情報を一方の端部からもう一方の端部へ転送することを可能にする、単一平面上に設置された金属製プラズモンチャンネルのアッセンブリーとを備えている。本システムにおいて、上記チャンネルは、アッセンブリーが観察領域の周囲に光学的情報を転送するためのアレイを形成するように構成されている。上記アレイの少なくとも1つの空間的な特徴の値が、各チャンネルの観察領域に近い側の端部では上記波長より小さい。また、上記アレイの少なくとも1つの空間的な特徴の値が、チャンネルの観察領域から離れた側の端部では上記波長より大きい。本システムは、この観察領域から離れた側の端部と光学的検出手段との間を光学的に分離するための手段を備えている。
【0013】
本特許では、金属製プラズモンチャンネルとは、プラズモンを利用した光学的情報の伝送を可能にするチャンネルを意味している。このタイプのチャンネルは、さまざまな方法で実現可能であり、特に金属製ワイヤによって、または、金属層に形成された溝によって実現可能である。
【0014】
本解決方法は、金属製プラズモンチャンネルの独自の構成と光学的信号を分離するための手段とを組み合わせた解決法であり、拡大された光学的情報を転写することを可能にし、その結果、該光学的情報が、顕微鏡法の分野において公知である光学的検出手段によって遠方場において取得される。実際に、アレイ形状を有するチャンネルによって、サブ波長の近接場領域を、チャンネルの空間的特性が修正される再生領域に結合することができるようになる。なお、この再生領域では、局部的に取得されてアレイの通過にともなって拡大された光学的情報が従来の検出手段に照射される。上記プラズモンチャンネルの各端部における空間的特性によって、サブ波長の顕微鏡の解像度を達成することができ、ナノメートルスケールの粒子を検出できるようになる。
【0015】
好ましくは、上記チャンネルのアレイの少なくとも1つの空間的な特徴の値は、観察領域に近い側の端部では上記波長の半分より小さい。
【0016】
第1の実施形態によれば、上記チャンネルのアレイの空間的な特徴は隣り合う2つのチャンネル間の距離である。
【0017】
第2の実施形態によれば、上記チャンネルのアレイの空間的な特徴はチャンネルの幅である。
【0018】
本発明の第1の実施態様によれば、上記金属製プラズモンチャンネルは金属製ワイヤで形成されている。
【0019】
本発明の第2の実施態様によれば、上記金属製プラズモンチャンネルは金属層を掘り込んで形成されたV字状溝から形成されている。
【0020】
この最後の場合には、上記チャンネルのアレイの空間的な特徴は該アレイを形成する溝の深さであってもよい。
【0021】
同じくプラズモンチャンネルが溝形状を有する場合、好ましくは、上記溝の傾斜角が、上記観察領域に近い側の端部では、上記観察領域から離れた側の端部より大きい。
【0022】
好適な実施形態では、上記転送アレイの各チャンネルが基板上に積層されている。これによって、アレイを保持することが可能になる。上記アレイのワイヤは埋設されてもよい。この場合、対称なシステムを形成して、文献「Plasmon-polariton waves guided by thin lossy metal films of finite width: Bound modes of symmetric structures (P. Berini; Phys. Rev. B; Vol. 61; p. 10484-10502; 2000)」の教示を使用することができる。
【0023】
上記アレイのワイヤが埋設される場合、該ワイヤは、互いに接近した平行なチャンネルの形態で観察領域において延長されてもよい。本実施形態では、上記観察領域の底部とこの領域の下に埋設されたチャンネルとの間の距離はサブ波長のままであり、その結果、必要な光学的情報がアクセス可能なままであり、十分な信号が得られる。この手法によって、観察領域の縁部で切り落とされたアレイの場合に比較して、良好に形状を制御することができる可能性がある。
【0024】
好ましくは、溝が、検出しようとする粒子を搬送する流体を流動させるためのチャンネルを形成するように基板に設けられている。蒸発を防止するために、溝自身に沿って蓋を被せるか、または、基板上に全体を覆う上側基板を設けるかのいずれかによって、この溝が覆われてもよい。後者の場合の具体例としては、エラストマーやシリコーンなどの屈曲性を有する素材でできた上側基板があげられる。これらは、当業者には、微小流体および「ラボ・オン・チップ」として知られている。
【0025】
本発明は、上述のように、上記転送アレイの各チャンネルが埋設され、かつ、観察領域の下で延びて、互いに平行なチャンネルのネットワークを形成し、隣り合う2つの互いに平行なチャンネル間の距離が上記照射光の波長より小さく、これらのチャンネルが、観察領域の下の上記照射光の波長より浅いところに配置されている、光学的検出のためのシステムにも関する。
【0026】
流体がチャンネルに沿って流動できる場合に、上記観察領域では、複数の小型電気機械変換器が、流体の流線を制御するために、または、この流体中を運動する粒子に対して特定の制御を行うために、上記転送アレイのチャンネルに関連付けられてもよい、または、チャンネルによって制御されてもよい。
【0027】
ある特定の実施形態によれば、上記光学的分離手段は、観察領域から離れた側の端部に配置されたネットワーク抽出器を有する。これによって、プラズモンモードを、アレイ面に対して鉛直な線にほぼ沿って上側基板に向かって結合することが可能になる。
【0028】
これらのネットワーク抽出器のある特定の変形例によれば、これらの抽出器は、転送アレイの端部の幅を上記波長のスケールで調整することからなる。
【0029】
別のある特定の実施形態によれば、上記光学的に分離するための手段は、各チャンネルの観察領域から離れた側の端部と、各チャンネルの延長部とに設置された屈折率が高い誘電性ワイヤに配置されたネットワーク抽出器を有する。金属の場合と比較すると、これらの抽出器は長い伝播距離を提供し、したがって、アレイの開放側は観察領域から任意に離れたところに配置されてもよい。
【0030】
これらのネットワーク抽出器のある特定の実施形態によれば、これらの抽出器は、誘電性ワイヤの幅または断面を調整することからなる。
【0031】
これらのネットワーク抽出器の別のある特定の実施形態によれば、これらの抽出器は、中央の誘電性ワイヤのすべてまたはその一部に穴を開けることからなる。
【0032】
照射の第1の変形実施形態によれば、上記システムは、照射手段と、一方の端部が観察領域に一層近く、情報を光学的に転送するための第2のアレイを、観察領域の周囲に観察領域を基準として第1の転送アレイに対して全体的に対称に形成するように構成された、単一平面上に設置された金属製チャンネルの第2のアッセンブリーとを備える。第2のアッセンブリーを第1のアッセンブリーに対して互い違いに配置してもよい。
【0033】
本変形例において、上記システムは、好ましくは、上記観察領域から離れた側の端部と照射手段との間に光学的結合のための手段を有する。これによって、各チャンネルの内側で外部のビームからの光を結合して観察領域に集光することが可能になり、したがって、特に効果的な照射が達成できるようになる。
【0034】
本発明は、上述のように、照射手段と、光学的情報を転送するための第2のアレイを観察領域を基準として第1の転送アレイに対して対称に形成するように構成された、金属製チャンネルの第2のアッセンブリーとを備え、上記第1のアッセンブリーおよび第2のアッセンブリーが、上記波長より浅いところで観察領域の下に埋設され、上記第1のアッセンブリーおよび第2のアッセンブリーが、照射光の波長より短い距離だけ互いに離間した、互いに平行なチャンネルのネットワークによって互いに接続される、光学的検出のためのシステムにも関する。
【0035】
各種の実施形態によれば、上記互いに平行なチャンネルが、一定の断面を有していてもよく、あるいは、短い長さの被修正部によって調整されてもよい。この被修正部とは、上記波長より短く、チャンネルの他の部分より小さいか大きい、または、これに等しい幅を有する。こうして、インピーダンスの変化によって、および、被修正部の周囲のエバネッセント場によって強制的に伝送させることによって、プラズモンの大部分が直接伝送されないようにする。この構成によって、本システムは、上記アレイ間の接続部の上方の溝中の粒子の存在に対する感度が高くなる。
【0036】
上記アレイのワイヤが埋設されて観察領域の下で延びている場合、照射結合手段も、観察領域の側の端部が金属およびプラズモン接触部によって分離チャンネルに接続された、埋設されたアレイであってよい。この場合、埋設されたプラズモンチャンネルの上方の観察領域の粒子は、これらのワイヤに沿った照射光の伝送を調整または変更するように作用する。こうして、特に、該接続部分が、照射アレイの側と分離アレイの側との間のトンネル効果に対するプラズモンの結合性を低減する、サブ波長のサイズを減縮する形状を有していれば、観察領域の下のプラズモンチャンネル同士の間の接続部分が、照射光のプラズモンチャンネルの直接の流れを限定し、上方に位置する粒子によって実行される修正を最適化するように、規定され得る。
【0037】
照射手段は、集積光学系中において動作してもよく、第2の転送アレイの平面上に配置されてもよい。
【0038】
好ましくは、上記光学的結合手段は、観察領域から離れた側の端部に配置されたネットワーク抽出器/結合器を有し、こうすることによって、光をプラズモンチャンネルに効率的に転送することができる。
【0039】
好ましくは、上記ネットワーク抽出器は、転送アレイの端部の幅を上記波長のスケールで調整することからなる。したがって、プラズモンチャンネルを介した入射光の良好な伝播が、特に光がチャンネルに対して鉛直な軸から入射する場合に、確保される。
【0040】
別の変形例では、上記光学的結合手段は、各チャンネルの観察領域から離れた側の端部と、各チャンネルの延長部とに設置された屈折率が高い誘電性ワイヤに配置されたネットワーク結合器を有する。
【0041】
これらのネットワーク結合器のある特定の実施形態では、これらの結合器は、誘電性ワイヤの幅または断面を調整することからなる。
【0042】
これらのネットワーク結合器の別のある特定の実施形態では、これらは、中央の誘電性ワイヤのすべてまたはその一部に穴を開けることからなる。
【0043】
照射の第2の変形実施形態によれば、上記システムは、上記観察領域を直接照らす照射手段と、第2の光学的情報転送アレイを観察領域の周囲に形成するように構成された、金属製チャンネルの第2のアッセンブリーとを備えている。
【0044】
この変形例では、上記システムは、上記観察領域に対して互いに異なる高さに配置された、同一平面に平行な複数のアレイを備えていてもよい。これらのアレイは、互いに異なる高さで積層され、適切に構成すれば収差の解消を容易にするように形成され得るという効果がある。
【0045】
こうすることによって、好ましくは、上記アレイの高さおよび形状的特性が、例えば、光学的検出手段の色収差に応じて色収差を導入できるように決定される。こうすることによって、光学的検出手段(好ましくは顕微鏡の対物レンズを含む)の色収差が補償でき、色収差のない像が得られる。
【0046】
また、好ましくは、上記システムは、光学的検出によって再生される像の横方向の形状および色収差を補償するための手段を備えている。これにより、像の品質が改善される。
【0047】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つのプラズモンチャンネルが、観察領域から得られる光学的情報のインピーダンスマッチングのための被修正部を観察領域にもっとも近いその端部に有する。
【0048】
別のある特定の実施形態では、少なくとも1つの光学的情報転送アレイが、静電ポテンシャルを制御して観察領域において粒子を引きつけるまたははじくための電気的接触部を有する。
【0049】
別のある特定の実施形態では、光学的情報の転送のための少なくとも1つのアレイが、観察領域において電気化学反応を制御するための電気的接触部を有する。
【0050】
本発明は、上記実施形態のうちの1つに係る、粒子を光学的に検出するための基本システムを複数備え、単一の基板上に設置されている、粒子を光学的に検出するための機器にも関する。この機器によって、前記の基本システムの効果に加えて、このような基本システムの全体的な製造手法の効果を享受することができるようになる。蓋として作用する上側基板にもこれらの手法を利用でき、これらの教示を広けることによって、一般的に、基板に提供されるすべての機能性が揃えられる。
【0051】
この機器のある特定の実施形態では、複数の基本システムが基板の平面上にネットワークを形成する。
【0052】
好ましくは、少なくとも1つの流体回路が、少なくとも2つの光学的検出基本システムを相互につなぐ。
【0053】
ある特定の変形例では、少なくとも2つの基本システムが干渉分光器の腕部を形成し、これらの基本システムの各々に関連する観察領域が、互いに非常に近い。それゆえ、2つの腕部間の干渉信号によって、特に高い感度でナノ粒子が存在することを明らかにすることができるようになる。
【0054】
粒子の動きの分析については、観察領域において検出される運動を推定することによって、光学的検出手段によって遠方場において受信される光学的信号をリアルタイムで分析するための手段を、上記機器が備えていてもよい。
【0055】
本発明は、粒子を光学的に検出するためのシステムを製造する方法にも関する。本方法は、所定の波長を有する照射光によって照らされ得る観察領域の近くに一方の端部が位置するように、基板上に積層された金属層に対してリソグラフィーを実行して、金属製プラズモンチャンネルを基板の単一の平面上に構成するステップを含む。本方法では、上記リソグラフィーステップにおいて、チャンネルは、アッセンブリーが光学的情報の転送のためのアレイを観察領域の周囲に形成するように構成され、上記アレイの少なくとも1つの空間的な特徴の値が、各チャンネルの観察領域に近い側の端部では上記波長より小さく、かつ、各チャンネルの観察領域から離れた側の端部では上記波長より大きい。この方法は、この観察領域から離れた側の端部と光学的検出手段との間を光学的に分離するための手段を設けるステップをさらに含む。
【0056】
最後に、本発明は、粒子を光学的に検出するための機器を製造する方法に関する。本方法は、単一の基板上に、上述の製造方法によって得られる粒子を光学的に検出するための基本システムを複数設けることからなる。
【0057】
本方法の変形例によれば、本方法は、少なくとも2つの光学的検出基本システムの各々に接続する少なくとも1つの流体チャンネルを形成するために、基板に対してリソグラフィーを実行して少なくとも1つの溝を設けるステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明のその他の特性および効果は、添付の図面を参照する以下の記載から明らかになるであろう。
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る、光学的検出のためのシステムの三次元図である。
【図2】図2は、本発明のこの第1の実施形態に係る、光学的検出のためのシステムの概略的な上面図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係る、光学的検出システムの概略的な上面図である。
【図4】図4は、本発明のこの第2の実施形態に係る、光学的検出システムの概略的な断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態に係る、光学的検出システムの概略的な上面図である。
【図6】図6は、本発明の第4の実施形態に係る、光学的検出システムの三次元拡大図である。
【図7】図7は、本発明の第5の実施形態に係る、光学的検出システムの概略的な上面図である。
【図8】図8は、本発明の第5の実施形態に係る、光学的検出システムの断面図である。
【図9】図9は、第6の実施形態に係る、光学的検出機器の第1の変形例の上面図である。
【図10】図10は、この第6の実施形態に係るこの光学的検出機器の第2の変形例の上面図である。
【図11】図11は、第7の実施形態に係る光学的検出機器の上面図である。
【図12】図12は、この第7の実施形態に係るこの光学的検出機器の三次元拡大図である。
【図13】図13は、金属製プラズモンチャンネルのアレイの各種の変形例を示す図である。
【図14】図14は、金属製プラズモンチャンネルのアレイの各種の変形例を示す図である。
【図15】図15は、金属製プラズモンチャンネルのアレイの各種の変形例を示す図である。
【図16】図16は、本発明の第8の実施形態に係る、光学的検出システムの三次元概略図である。
【図17】図17は、本発明の第9の実施形態に係る、光学的検出システムの三次元概略図である。
【0059】
分かりやすくするために、同一または類似の構成要素には、図面全体を通じて同一の参照番号をふる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1および図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る粒子検出のためのシステムは、
照射手段(図示しない)と、
光学的検出手段4と、
溝3が掘り込んで形成されている基板2と、
粒子10を含む、溝3内に設けられた観察領域11と、
アレイを形成する、金属製プラズモンチャンネル5’、5”、および、5”’のアッセンブリー5とを備えている。
【0061】
上記金属製プラズモンチャンネル5’、5”、および、5”’は、これらのチャンネル全体がマルチモード手段を構成し、ある場において走査することなく情報を取得して、これを拡大したものを転写できるように、アレイ中に設置されたワイヤから形成されている。このアレイは、サブ波長の近接場ゾーン6(観察領域11)を、後方領域7に結合する。この後方領域7では、金属製ワイヤは間隔が広く、情報を含む照射光を局部的に収集して、検出手段4に向かうアレイ5の通過にともなって拡大することを可能にする。
【0062】
光学的情報をサブ波長の近接場から遠方場へ転送することを可能にするために、隣り合う2本のワイヤ5’、5”、および、5”’間の距離は、観察領域11に近い側の端部6’、6”、および、6”’における上記波長より小さく、かつ、観察領域11から離れた側の端部7’、7”、および、7”’における上記波長より大きい。
【0063】
基板2によって、アレイが基板2上に設けられる際に、アレイを保持することができるようになる。この基板は、通常100nm〜30000nmの非結晶シリコンの層で覆ったガラスまたはシリコンで形成されればよい。重合体製の支持部を使用してもよい。例としては、透明なプラスチック(ポリメチルメタクリレート、シクロブチルベンゼン、ABS、PVC、ポリプロピレンなど)、エラストマーやシリコーン(ポリジメチルシロキサン(PDMS)およびその誘導体)、さらに、重合体(例えばポリイミドやカプトン(登録商標))などがあげられる。プラズモンの場合、屈折率がさらに高い酸化物からなる支持部を使用してもかまわない。例えばニオブ酸リチウム、サファイア(AI2O3)、石英などの酸化物も可能な選択肢である。
【0064】
これらの金属製ワイヤは、達成すべきスケールを考慮しながら、薄い一様な金属層をリソグラフィー(例えば樹脂の使用および電子ビームによる露光など)によって切削する手法を用いて得られる。
【0065】
拡大した断面の拡大率、幅、および、高さは、近接場の情報がアレイの拡大部7においてもっともよく伝送されるように最適化される。当業者であれば、このような最適化を実現することはできるはずである。例えば、まず、厚さを最適化して、損失について最良の妥協ができる値に設定するか、または、システムの全体的な最適化の微妙な各種態様を考慮して、この値よりわずかに高いまたは小さい値に設定すればよい。次に、角度の差を、アレイの2本のワイヤの間(および、可能であればその規則性も)、および他の金属部において、特に本モードの観察領域および拡大領域において最適化すればよい。
【0066】
ここで、当業者は、これらの金属製ワイヤによって伝送可能な光の波長が、プラズモン共鳴のためにワイヤを構成する金属(例えば銀)によってほぼ決まってしまい、これにより低波長場より高い解像度が保証できないことに気づくであろう。ただし、この後者の場合、解像度を上げないのであれば、遠方場における良好な顕微鏡の対物レンズと同じオーダーの倍率(magnitude)のままであってもよい。また、これらのワイヤについては、3μm〜300μmの長さが適していると考えられる。また、選択する厳密な長さの決定は、プラズモンに損失が発生するので、さまざまな経路に沿って使用されるプラズモンの減衰に依存し、したがって、特に使用する光の周波数に依存する。
【0067】
アレイの金属製ワイヤ間の角度は、その本数に依存する。ワイヤが約20本の場合であれば、角度は約0.10ラジアンになる。したがって、ワイヤの間隔は1μmから約10μmに達する。含まれている情報を空き領域に向かって分離するために、波形の周期は、真空における波長を抽出器のワイヤにおけるプラズモンモードの屈折率の実効値で割ったものにほぼ等しい。屈折率が1.5、かつ、波長が600nmであれば、上記分離において400nmの幅を有する調整周期が得られる。超解像度に特有の場合に屈折率の実効値を高くすれば、原理的にはさらに弱い周期も得られるが、ワイヤを抽出器において上記の数値で作動させたいのであれば、より高い結合オーダーで作動させることもでき、こうすることによって、発生する環境しだいで0.5波長〜1波長の周期に近づくことができる。
【0068】
好適な実施形態によれば、例えば注目している粒子10を検出しようとする場所であるナノ流体チャンネルを通すために、穴3が(または構成もしくは溝も)基板の観察領域11に配置される。
【0069】
観察領域11は、例えば、周囲に金属製ワイヤ5’、5”、および、5”’が配置される縦軸Zを有する円筒であってもよい。この円筒は、約400nm〜約1000nmの直径を有していてもよい。
【0070】
ある特定の実施形態では、この穴3は、観察領域11の表面を局部的に化学的に機能化し、例えば、さらに別の反応種を分析したいナノ粒子の表面の化学的な”キー”として選択的に固定することができるようになる。
【0071】
分離手段8は、ワイヤ5’、5”、および、5”’内の光をイメージングに使用可能な光を得るために分離することを可能にする。この目的を実現するために、本手段は、各ワイヤ5’、5”、または、5”’について、アレイの先端部の幅を注目している波長のスケールで調節する、アレイの拡大部7に配置されたネットワーク抽出器8’、8”、または、8”’から構成されている。この幅の調整は、屈折率の実効値の調整である。回折条件が十分に満たされれば、周期性によって伝送されるプラズモンモードは、縦軸Zに沿って大きく広がる。
【0072】
ワイヤの端部におけるネットワーク8’、8”、および、8”’の周期パターンは、ワイヤの品位が維持できるように設計されている。ワイヤの幅がもともと30nmであれば、端部では約100nm〜250nm、すなわち、波長より短くなければならない。側面と側面との間の角度が0.010ラジアン〜0.015ラジアンであれば、ワイヤは、数値範囲の最大値に達し、約10μm後には180μmの幅に達する。この値は所望の倍率(magnitude)のオーダーに対応する。
【0073】
エネルギーおよびワイヤが運ぶ情報をより良好に伝播させるために、上記調整は、ワイヤに沿って段階的に徐々に実行される。前記のスケールにおける最大の調整は、局部的にワイヤの幅を半分(120nm)にまで低減し、大きな部分と小さな部分との比を1:2とすることからなる。
【0074】
上記周期パターンは、アレイ全体にフォーカスしていてもよい。アレイの狭い入力部においてワイヤを等しく励起し、かつ、アレイ上で250μmの光を集光するために、上側基板(空気または液体または重合体)の経路のこの部分に関する角度は、鉛直方向の傾斜が15/250の範囲にあり、したがって、0.1ラジアン未満であると考えられる。ただし、これは、光学軸に到達し、全体像を形成しない光線に関するものである(全体像には、傾め方向の光線がさらに含まれている可能性がある)。
【0075】
検出手段4は、従来の遠方場検出手段であり、例えば顕微鏡の対物レンズである。検出手段4は、分離手段8で回折した光が集光できるように縦軸Zに沿って設置されている。情報を最大空間周波数(つまり、分離ゾーンにおいて隣り合う2つのワイヤ間で起こる、スカラ場と考えた場合の電場の正負の記号の交替に対応する周波数)で収集するためには、開口が大きな集光対物レンズが好ましい。前記の例では、2つの分離素子間の典型的な差が約1.5μmであるので、最小開口数が0.7であることが必要とされる。
【0076】
本システム1の基本的な態様は、観察領域10の局部的な光学的情報が、放射状に延びる各ワイヤの位相の分布の形態で依然利用可能であることである。観察領域11にある検出しようとする攪乱物10は、一般にアレイの複数の金属製ワイヤに対して影響し、それゆえ、撮影される対象は、アレイの後部の全体的な放射であって、この放射の方向から各成分間の位相関係がわかる。このように、周期性をうまく選択するために、本発明に係るシステムは任意の拡大部を有していてもよい。このように、アレイ上に位置する顕微鏡4の対物レンズの平面状の観察対象の見かけの位置によって、この対象を観察領域11内のアレイ5が狭い側で見ることができるようになる。
【0077】
図16および図17は、ワイヤ5’、5”、および、5”’が基板に埋設された、つまり基板を掘り込んで形成された穴の中に配置された一実施形態を示している。
【0078】
アレイのワイヤが図16および図17に示すように埋設されている場合には、ワイヤ5’、5”、および、5”’は溝3の下の溝3の深さより小さい、サブ波長の深さで延びていてもよく、溝3の底部の近くの粒子10の存在について観察領域11における情報を提供することができる。ただし、底部の上方の高すぎる位置にある粒子10は、底部の近くの粒子としての解像度で見える。
【0079】
次に、図3および図4を参照しながら、本発明の、照射手段を備えた第2の実施形態について説明する。
【0080】
観察対象物10の照射手段は、観察領域11の近傍に配置された高出力の光源を備えている。この光源は、分離アレイ5に対して対称に構成された結合アレイ22によって観察領域11に結合される。銀Agによってサポートされるプラズモンについては、光子のエネルギーは通常3eV〜3.5eVであり、これは、近UV領域の380nm〜320nmに相当する。キセノンランプもしくはGaNレーザダイオードもしくは約325nmのヘリウム−カドミウムレーザ、または、ELダイオード(LED)もしくはAlGaNレーザダイオードのいずれかを使用すればよい。この範囲のLEDは、通例として単体での出力が約数mWで市販されており、その「明るさ」(1cm2当たり、かつ、1ステラジアン当たりのワット数)が非常に重要である。金によってサポートされるプラズモンの場合、光子のエネルギーは通常2.2eV〜2.5eVであり、これはスペクトルの黄色から緑色の領域に相当する。LEDは、これらの波長をカバーするが、明るさは中程度であることが多い。ここでは、ダブル気体レーザまたは固体レーザが、好ましい選択肢である(532nm、514nm)。
【0081】
観察領域11に向かって光を照射するために、光源4はまず、光を、Z方向にゾーン24に向かって結合アレイの端部における結合ネットワーク23’、23”、および、23”’の方向に照射する。そしてこの光は、金属製ワイヤによってXY平面において結合し、すべて観察領域11(矢印25’)に集まる。したがって、光はナノ粒子10を照らすことを可能にし、そしてその一部が金属製ワイヤ5’、5”、および、5”’を通り抜けて(矢印25”)、これに続いてネットワーク8’、8”、および、8”’によって分離され、検出手段4に到達する。
【0082】
アレイのワイヤが図16および図17に示すように埋設されている場合には、ワイヤ5’、5”、および、5”’は溝3の下の溝3の深さより小さい、上記波長未満の深さで延びて、互いに近接しほぼ平行なチャンネル32によって照明システムのチャンネル22’、22”、22”’に接続する。この場合、チャンネル22’、22”、22”’も埋設されている。そして、求められている情報、つまり、粒子10が溝3の底部の近くに位置している場合にはるかに強力な情報は、観察領域11の下でアレイに繋がる薄いプラズモンチャンネル32に沿った伝送における修正を行うことによって提供される。
【0083】
図16に示すように、観察領域の下でアレイに繋ぐコネクタ32は、直接接続するものであってもよい。
【0084】
図17に示す別の一実施形態では、直接的なプラズモンの伝送の大半を、インピーダンスの変化、および、エバネッセント場によって実現される伝送を被修正部の周囲に集中させることによって防止するために、観察領域の下でアレイに繋がるコネクタ33は、長さが短く(すなわち上記波長より短い)、チャンネル32のほかの部分より小さいか、これに等しいか、または、これより大きな幅を有する被修正部34によって調整されてもよい。なお、この構成は、アレイ間の接続部の上方の溝11内の粒子10の存在に対する、システムの感度を向上させる。
【0085】
ここで、当業者は、システムの色収差に注目すべきであることに気づくはずである。このシステムは実際に単一の波長付近で機能する傾向があるが、短いネットワークや、これ以外の、他のネットワーク形状の調整例(例えば金属構造中における複数のネットワークの同時登録)によって、特に複数の波長または非常に大きなウインドウを有することができるようになり、こうすることによって、使用されるプラズモンの効果の恩恵を適切に受けられるようになる。しかし、抽出器のネットワークのピッチ、および、その振幅を微調整することによって、上側基板(または基板)において、明確な収差を搬送する波面を有するビームを形成することが可能になる。したがって、これらの収差は、遠方場4の光学系に由来する収差を用いて補償することが可能であり、全体で収差が見かけ上存在しなくなる。したがって、アレイのワイヤの1つにおけるネットワークからの波の見かけの焦点は、基板2の上方に位置することも、下方に位置していることもある。
【0086】
図5に示す本発明の第3の実施形態によれば、光学的情報を分離するために、2つのアレイが使用される。したがって、照射手段は、ナノ粒子10まで真っ直ぐに延びる第3の空間Zの次元における光源であって、例えばELのダイオード、レーザ、または、任意のその他の指向性を示す光源である。
【0087】
次に、図6を参照しながら、本発明の、複数の重ね合わせたアレイを有する第4の実施形態について記載する。
【0088】
この例では、システムは、溝3の同じ側に、互いに平行に、かつ、同一XY平面に沿って、ただし、軸Zに沿って異なる高さに設置された、金属製ワイヤを有する複数のアレイ5、30、および、31を備えている。各アレイ5、30、または、31は、本発明の第1の実施形態において記載したアレイと同様である。本システムは、アレイを最初の部分(つまり最深部)から最後の部分(つまり最浅部分)まで連続的に積層および加工することによって実現される。
【0089】
隣り合うアレイは、誘電体を有するスペーサ層(図示しない)によって離間されている。これらの層は、ナノテク技術でよく使用される、例えばブチルシクロベンゼンなどの酸化物、窒化物、または、有機材料で形成されてもよい。
【0090】
観察領域11では、金属製ワイヤの起点が、例えばマイクロ流体チャンネルに対応する平行六面体の周囲で一群の点として規定される。別の実施形態によれば、これらの起点の他の形態(具体的には、球状や楕円状)も考えられる。これらの形状を、望ましい流体チャンネルに合わせればよい。このように、適切な形状を選択することによって、流体の制約(例えば層流または乱流の確立)および物理化学的特性の一部を考慮に入れることができるようになる。
【0091】
分離ネットワーク(図示しないが、前記の第1の実施形態の分離ネットワークと同じである)では、上下に積層される各アレイの回折手段間においてシェーディング効果を回避するために、ある予防策をとることが必要である。この目的を実現するために、下にあるアレイの金属製ワイヤは、これより上にある金属製ワイヤの範囲を超えて延びるように設けられてもよい。
【0092】
この第4の実施形態のある特定の変形例(図示しない)では、分離アレイ5、30、および、31の溝3の反対側において、照射手段が複数の光学的情報結合アレイに結合される。これらの結合アレイは、前記の第2の実施形態において記載した結合アレイと同様である。照射手段は直接光の光源であってもよい。したがって、これにより、照射手段に対してアレイがより強く結合され、また、観察領域11全体にわたって一層均一に分布する照射光が実現する。
【0093】
重ね合わせた複数のアレイを用いた変形例によれば、上記アレイは、所定の色収差を導入することができる特性を有するように構成されている。異なる高さに配置され、中心からいくらか離れた位置に分離ネットワークを有するアレイは、現実の収束点または仮想的な収束点の周囲にビームを導くような、ネットワーク特性(調整周期および振幅)を有していてもよい。したがって、この収束点の周囲の領域は中心でイメージングされる領域に結合されて、拡大レポートを生成する。このように、色効果が、光学的回折レンズと同様に、システムにも意図的に導入されてよい。波長が異なるビームが現れる平均角度は、アレイのワイヤの屈折率の実効値を有するネットワークに対する入射ビームを考慮した、ネットワークの原理にしたがって移動する。
【0094】
本発明の他の変形例によれば、システムは、さらに収差補正手段を備えている。これらの手段は、光学的な補償だけからなっていてもよく、または、例えば、再生外部光学系の複数の焦点深度で像を撮影することによって、大量の情報をさらに処理することからなっていてもよい。
【0095】
図7および図8に示す本発明の第5の実施形態では、照射手段21は、例えば、レポートされた光源、ポンプされた写真、または、電気的にポンプされた写真を用いて基板2の平面に配置された軸を有する、集積光学系照明素子を備えている。この照射手段は、光の周波数に達する電磁気的な励起を観察領域11まで導くように、アレイ22に結合される。
【0096】
本第5の実施形態の別の変形例によれば、照射光を、基板2に集積された光源から観察領域11にビームによって直接導くことができる。
【0097】
次に、図9および図10を参照しながら、複数の基本検出システムを備えた本発明の第6の実施形態について記載する。
【0098】
図9の実施形態は、粒子10を光学的に検出するための機器40に対応する。この機器は、粒子を光学的に検出するための複数の基本システム1a〜1iを備えている。これらのシステム1a〜1iは、同一基板2上に設置されている。こうすることによって、集約的な製造手法が利用できるようになる。ここで、基本システムの分布が一次元的であっても、二次元的であってもよいことに注目すべきである。
【0099】
図10に提案する変形例によれば、ナノ流体回路が、基本的なネットワークシステムと関連して備えられていてもよい。観察領域は、右チャンネル41、または、より複雑なトポロジーのチャンネル42の周囲に規則的に分布する。繋がれるシステムに基づいて、チャンネルは湾曲していても、螺旋状であっても、曲がりくねっていても、あるいは他の形状であってよい。
【0100】
これらのマイクロ流体チャンネルは所定の標識を使用することによって機器内で規定され、こうすることによって、チャンネルのエッチングマスクの境界標識をアレイを基準にして(または、その逆)一列に並べることができるようになる。そして、機器には、観察領域における流体の流れの制御を可能にする蓋および開口部が設けられる。
【0101】
図10の変形例によれば、観察領域は、チップ面に配置され、積層されたマイクロパイプの1つ以上の平面からなる主回路にアクセスするためのチャンネルのうちの、”マイクロ流体チップ”の鉛直方向および斜め方向のチャンネルの周囲に設置される。
【0102】
エラストマーのような屈曲性を有する素材(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)やその誘導体)からなるチップの場合には、プラズモン回路が互いにごく近傍に位置するマイクロンレベルの金属製島の連続からなるように、プラズモン回路を変更することによって、チップの屈曲性との互換性を維持することが可能である。こうすることによって、光学的情報通信手段(つまり上記アレイ)は、PDMSチップの変形に対処できる。これは、予想できない切断や光学特性の劣化を起こすことがあり得る、連続的な金属製ワイヤからなる構造とは異なる。ナノスケールの切断部をもともと作製しておくことによって、このタイプの問題を回避し、機器の許容度を高めることができるようになる。
【0103】
本発明のある特定の実施形態では、ワイヤが、観察領域11にもっとも近いその端部において断面(または”ギャップ”)を示す。この端部は、中間情報を利用したマイクロ波の導波と同様に、通信しようとする局部的な情報の波長の1/4の波長を通常有する、観察領域から対応するワイヤへの情報のインピーダンスマッチングの条件を満たす。
【0104】
機器の流体チャンネルを再生するために、この後者は、光学的再生の領域において特に薄膜化された(例えば、集光を行う部分において250μm未満にまで薄膜化された)薄い蓋部で覆われる。
【0105】
次に、図11および図12を参照しながら、干渉分光型の第7の実施形態について記載する。
【0106】
この機器は、微弱な信号に対する干渉系の感度を利用する。この理由によって、干渉計の1つの腕部50aに配置された光学システムのように、観察領域11aのどちらの側からも集光する2つのアレイからなるアッセンブリーを考慮することが必要である。この干渉計は、マイケルソン型、マッハツェンダー(Mach−Zehnder)型、トワイマングリーン(Twyman−Green)型などであればよい。上記分離器は、好ましくは照射結合領域の上流に設置され、そしてもう1つの分離器(または同じマイケルソン型)が集光方向の下流において使用される。こうすることによって、2つの腕部における光の通路が利用できて、位相情報が比較される。参照用腕部50bが、第1の腕部50aに追加される。この第2の腕部50bは、第1の観察領域11aに隣接するほぼ同一の観察領域11bに基づいている。これらの条件の下で、後者の対物レンズ51を介して検出手段の平面52において得られる、2つの腕部50aおよび50b間の干渉信号53によって、ナノ粒子の存在が判明する。位相シフトを有する信号を見るためにここで使用される観察領域の横方向の寸法は、位置に依存する。
【0107】
ここでは、観察領域が、2つの経路間のバランスへの直線の縁を有する線状となる状況に入るために、アレイの外で、システムの出力時に位相シフトを導入することが可能であることに注目すべきである。したがって、完全なバランスからのずれは、攪乱の位相および振幅を明らかにする位置およびコントラストの変化に対応する、縁54の局部的な修正として現れる。
【0108】
マイクロ流体チャンネルおよび観察領域の共有について、電気導電性を有するアレイのいくつかの長所が、光学的情報の伝送部となるという長所以外にも観察される。アレイのワイヤ間に電気的な接続がなければ、これらのワイヤは、電気的な導体として作用する。そして、該ワイヤは、観察領域を強制的に所定のポテンシャルにする。これらのポテンシャルは、帯電している粒子にとって引き付けるように作用してもよく、反発するように作用してもよい。該ワイヤは、逆に、空間電荷を選り分けて、電荷が0ではない粒子が目的の相互作用部位に到達できるようにする。該ワイヤは、観察領域におけるMEMS型またはNEMS型のナノ駆動部(例えばチャンネルの透水性またはその局部的な熱的性質に影響する可動部)の開発も可能にする。もう1つの可能性は、特に通常表面プラズモンをサポートする金の層に対して実行されるように、適切な電気化学反応によってインサイツで機能化を行うことである。測定のこのような機能化を実行するために、リソグラフィーを用いて小さな開口部を規定し、これらの開口部を介して気相または液相における化学処理を適用し、さらに、機能化素子を、化学的または物理化学的に(例えば静電結合によって)形成してもよい。
【0109】
本第7の実施形態のある特定の変形例では、アレイのワイヤに効果的に接触するためにCMOS型の電子インターフェース回路を有する。このタイプのセンサは、砒化ガリウム(GaAs)マトリクスなどの読み出し回路としてよく使用されている。そして、この回路は、アレイのワイヤのネットワークに対して、外向き(さらに具体的には適切な操作用インターフェースを備えたコンピュータに対する)インターフェースを形成する。
【0110】
最後に、従来の顕微鏡において公知であるの便利な特徴を外部に集めることによって、外部読み出しシステムを設計することが可能である。このシステムは、例えば偏光板、場および開口の仕切り板、色フィルタ、ノッチフィルタなどの、従来の顕微鏡にあるような付属品を備えていてもよい。これにより、注目しているナノ粒子に対して相対的な信号対雑音比がさらに増加する。
【0111】
最後に、図13〜図15に示すように、プラズモン金属製チャンネルのアレイの各種変形実施形態が可能である。
【0112】
第1の変形例(図13)では、上記プラズモン金属製チャンネル5’、5”、および、5”’が一定の幅を有する金属製ワイヤであり、さらに、隣り合う2つのワイヤ間の間隙が、観察領域の近位端(半波長より小さな間隙D1)と遠位端(半波長より大きな間隙D2)との間では増加する。
【0113】
第2の変形例(図14)では、上記プラズモン金属製チャンネル5’、5”、および、5”’が金属製ワイヤであり、さらに、ワイヤ間の間隙がどちらの端部においても同一である。ただし、ワイヤの幅は、観察領域に近い側の端部と観察領域から遠い端部との間では増加する。
【0114】
第3の変形例(三次元図を示す図15)では、金属製ワイヤの機能が、厚い金属膜におけるV字状溝によってサポートされるプラズモンチャンネルによって提供される。さらに、このVの傾斜角が観察領域11に近い側の端部ではより急峻であり、遠い側の端部ではそれほど急峻ではない。また、これらの溝5’、5”、および、5”’の幅は、観察領域に近い側の端部と観察領域から離れた側の端部との間では増加する。
【0115】
金属製プラズモンチャンネルのこれらの複数の変形実施形態を組み合わせることもできる。
【0116】
本発明の、前記の実施形態は、単なる例示であって、特に本発明を限定するものではない。当業者であれば、特許の技術範囲から逸脱せずに本発明の各種の実施形態を実行できることは明らかである。
【0117】
特に、当業者は、流体チャンネルまたは溝の使用が好ましいが、これらのチャンネルがナノ粒子の光学的信号を得るために本質的なものではないことが理解できるはずである。実際に、金属リソグラフィーによってシステムを製造すれば、小さなブロックを観察領域内の戦略的な位置に残して、流体がなくても、または、チャンネルもしくは溝がなくてもナノ粒子の存在に関する信号を集めることが可能になる。これは、信号を早期に検出するため、または、微弱な信号を較正するためのデバイスの実現に有利な、非常によく較正された場合にもなり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長を有する照射光によって照らされることに適した観察領域(11)内に配置された粒子(10)を光学的に検出するためのシステム(1)であって、
光学的検出のための手段(4)と、
一方の端部(6’、6”、6”’)が観察領域(11)に十分に近いことによって光学的情報を金属製プラズモンチャンネル(5’、5”、5”’)の一方の端部からもう一方の端部へ転送することを可能にする、単一平面(XY)上に設置された上記チャンネル(5’、5”、5”’)のアッセンブリー(5)とを備えており、
上記チャンネル(5’、5”、5”’)は、上記アッセンブリー(5)が上記観察領域(11)の周囲に光学的情報を転送するためのアレイ(5)を形成するように構成され、
上記アレイ(5)の少なくとも1つの空間的な特徴の値が、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記観察領域(11)に近い側の上記端部(6’、6”、6”’)では上記波長より小さく、かつ、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)では上記波長より大きく、
上記システム(1)は、上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)と上記光学的検出手段(4)との間を光学的に分離するための手段(8’、8”、8”’)を備えていることを特徴とする、システム(1)。
【請求項2】
チャンネル(5’、5”、5”’)の上記アレイ(5)の少なくとも1つの空間的な特徴の上記値が、上記観察領域(11)に近い側の上記端部(6’、6”、6”’)では上記波長の半分より小さい、請求項1に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項3】
チャンネル(5’、5”、5”’)の上記アレイ(5)の1つの空間的な特徴が、隣り合う2つのチャンネル(5’、5”、5”’)間の距離である、請求項1または2に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項4】
上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記アレイ(5)の1つの空間的な特徴が、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の幅である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項5】
上記プラズモン金属製チャンネル(5’、5”、5”’)が金属製ワイヤで形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項6】
上記プラズモン金属製チャンネル(5’、5”、5”’)が金属層内に掘り込んで形成されたV字状溝から形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項7】
上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記アレイ(5)の空間的な特徴が該アレイ(5)を形成する溝の深さである、請求項6に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項8】
上記溝の傾斜角が、上記観察領域(11)に近い側の上記端部(6’、6”、6”’)では、上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)より大きい、請求項7に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項9】
上記転送アレイ(5)の上記チャンネル(5’、5”、5”’)が基板(2)上に積層されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項10】
溝(3)が、検出しようとする上記粒子(10)を搬送する流体を循環させるためのチャンネルを形成するように上記基板(2)に設けられている、請求項9に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項11】
上記転送アレイ(5)の上記チャンネル(5’、5”、5”’)が埋設され、かつ、観察領域の下で延びて、互いに平行なチャンネル(32、33)のネットワークを形成し、
隣り合う2つの互いに平行なチャンネル間の距離が上記照射光の上記波長より小さく、
これらのチャンネルが、観察領域の下の上記照射光の上記波長より浅いところに配置されている、請求項10に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項12】
上記観察領域(11)では、複数の電気機械変換器が、流体の流線にもとづいて上記粒子の流れ(10)を制御するために、上記転送アレイ(5)の上記チャンネル(5’、5”、5”’)に関連付けられている、請求項10に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項13】
上記光学的分離手段(8’、8”、8”’)が、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)に配置されたネットワーク抽出器を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項14】
上記ネットワーク抽出器(8’、8”、8”’)が、上記転送アレイ(5)の上記端部(7’、7”、7”’)の幅を上記波長のスケールで調整することからなる、請求項13に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項15】
上記分離手段が、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)と、当該チャンネル(5’、5”、5”’)の延長部とに設置された屈折率が高い誘電性ワイヤに配置されたネットワーク抽出器を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項16】
上記ネットワーク抽出器が、誘電性ワイヤの幅または断面を調整することからなる、請求項15に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項17】
上記ネットワーク抽出器が、中央の誘電性ワイヤのすべてまたはその一部において貫通する2つの穴からなる、請求項15に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項18】
上記ネットワーク抽出器(8’、8”、8”’)が、上記転送アレイ(5)の上記端部(7’、7”、7”’)の幅を上記波長のスケールで調整することからなる、請求項13〜17のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項19】
照射手段(20)と、
単一平面(XY)上に設置された金属製チャンネル(22’、22”、22”’)の第2のアッセンブリー(22)とを備え、
一方の端部(6’、6”、6”’)が観察領域(11)に一層近く、上記第2のアッセンブリー(22)は、光学的情報の転送のための第2のアレイ(22)を、上記観察領域(11)の周囲に上記観察領域(11)を基準として第1の転送アレイ(5)に対して対称に形成するように構成された、請求項1〜18のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項20】
上記観察領域(11)から離れた側の端部と照射手段(20)との間に光学的結合手段(23’、23”、23”’)を備えた、請求項19に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項21】
照射手段(20)と、
第2の光学的情報転送アレイ(22)を上記観察領域(11)を基準として第1の転送アレイ(5)に対して対称に形成するように構成された、金属製チャンネル(22’、22”、22”’)の第2のアッセンブリー(22)とを備え、
上記第1のアッセンブリーおよび第2のアッセンブリー(5、22)が、上記波長より浅いところで観察領域の下に埋設され、
上記第1のアッセンブリーおよび第2のアッセンブリー(5、22)が、照射光の波長より短い距離だけ互いに離間した、互いに平行なチャンネルのネットワークによって互いに接続される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項22】
上記照射手段(20)が、集積光学系において機能し、上記第2の転送アレイ(22)の平面(XY)上に配置されている、請求項19〜21のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項23】
上記光学的結合手段(23’、23”、23”’)が、観察領域(11)から離れた側の端部に配置されたネットワーク結合器(23’、23”、23”’)を有する、請求項19〜22のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項24】
上記ネットワーク結合器(23’、23”、23”’)が、転送アレイ(22)の端部の幅を上記波長のスケールで調整することからなる、請求項23に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項25】
上記光学的結合手段(23’、23”、23”’)が、上記チャンネル(22’、22”、22”’)の観察領域(11)から離れた側の端部と、上記チャンネル(22’、22”、22”’)の延長部とに設置された屈折率が高い誘電性ワイヤに配置されたネットワーク結合器を有する、請求項19〜22のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項26】
上記ネットワーク結合器が、誘電性ワイヤの幅または断面を調整することからなる、請求項25に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項27】
上記ネットワーク結合器が、中央の誘電性ワイヤのすべてまたはその一部において貫通する穴からなる、請求項25に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項28】
上記観察領域(11)を直接照らす照射手段(20’)と、
第2の光学的情報転送アレイ(22)を観察領域(11)の周囲に形成するように構成された、金属製チャンネル(22’、22”、22”’)の第2のアッセンブリー(22)とを備えた、請求項1〜18のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項29】
上記観察領域(11)に対して互いに異なる高さ(Z)に配置された、単一の平面(XY)に平行な複数のアレイ(5、30、31)を備えた、請求項1〜28のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項30】
上記アレイ(5、30、31)の高さ(Z)および形状的特性が、光学的検出手段(4)の色収差に応じて色収差を導入できるように決定される、請求項29に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項31】
上記光学的検出手段(4)によって再生される像の収差を補償するための手段を備えた、請求項1〜30のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項32】
少なくとも1つのチャンネル(5’、5”、5”’)が、観察領域(11)から得られる光学的情報のインピーダンスマッチングのための断面を、観察領域(11)にもっとも近いその端部(6’、6”、6”’)に有する、請求項1〜31のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項33】
少なくとも1つの光学的情報転送アレイ(5)が、静電ポテンシャルを制御して上記観察領域(11)において粒子(10)を引きつけるまたははじくための電気的接触部を有する、請求項1〜32のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項34】
少なくとも1つの光学的情報転送アレイ(5)が、上記観察領域(11)において電気化学反応を制御するための電気的接触部を有する、請求項1〜33のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか一項に記載の、粒子(10)を光学的に検出するための基本システムを複数(1a、1b、...、1i)備え、
単一の基板(2)上に設置されていることを特徴とする、粒子(10)を光学的に検出するための機器(40)。
【請求項36】
上記複数の基本システム(1a、1b、...、1i)が上記基板(2)の上記平面(XY)上にネットワークを形成する、請求項35に記載の光学的検出機器(40)。
【請求項37】
少なくとも1つの流体回路(41、42)が、少なくとも2つの光学的検出基本システム(1a、1b、1i)を相互につなぐ、請求項34または36に記載の光学的検出機器(40)。
【請求項38】
少なくとも2つの基本システム(1a、1b)が干渉分光器の腕部(50a、50b)を構成し、
少なくとも2つの基本システム(1a、1b)の各々に関連する上記観察領域(11a、11b)が、互いに非常に近い、請求項35〜37のいずれか一項に記載の光学的検出機器(40)。
【請求項39】
上記光学的検出手段(4)によって遠方場において受信される光学的信号をリアルタイムで分析し、上記観察領域(11)において検出される運動を推定するための手段を備えた、請求項35〜38のいずれか一項に記載の光学的検出機器(40)。
【請求項40】
所定の波長を有する照射光によって照らされ得る観察領域(11)の近くに一方の端部(6’、6”、6”’)が位置するように、基板(2)上に積層された金属層に対してリソグラフィーを実行して、プラズモン金属製チャンネル(5’、5”、5”’)を上記基板(2)の同一平面(XY)上に形成するステップを含む、粒子(10)を光学的に検出するためのシステム(1)を製造する方法であって、
上記リソグラフィーステップにおいて、上記金属製プラズモンチャンネル(5’、5”、5”’)は、上記アッセンブリー(5)が光学的情報転送アレイ(5)を上記観察領域(11)の周囲に形成するように構成され、
上記アレイ(5)の少なくとも1つの空間的な特徴の値が、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記観察領域(11)に近い側の上記端部(6’、6”、6”’)では上記波長より小さく、かつ、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)では上記波長より大きく、
上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)と光学的検出手段(4)との間に光学的分離手段(8’、8”、8”’)を設けるステップをさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項41】
粒子(10)を光学的に検出するためのデバイス(40)を製造する方法であって、
単一の基板(2)上に、請求項40に記載の方法によって得られる、粒子(10)を光学的に検出するための基本システムを複数(1a、1b、...、1i)設けることを特徴とする、方法。
【請求項42】
少なくとも2つの光学的検出基本システム(1a、1b、...、1i)の各々に繋がる少なくとも1つの流体チャンネル(41、42)を形成するために、基板(2)に対してリソグラフィーを実行して少なくとも1つの溝(3)を設けるステップを含む、請求項41に記載の製造方法。
【請求項1】
所定の波長を有する照射光によって照らされることに適した観察領域(11)内に配置された粒子(10)を光学的に検出するためのシステム(1)であって、
光学的検出のための手段(4)と、
一方の端部(6’、6”、6”’)が観察領域(11)に十分に近いことによって光学的情報を金属製プラズモンチャンネル(5’、5”、5”’)の一方の端部からもう一方の端部へ転送することを可能にする、単一平面(XY)上に設置された上記チャンネル(5’、5”、5”’)のアッセンブリー(5)とを備えており、
上記チャンネル(5’、5”、5”’)は、上記アッセンブリー(5)が上記観察領域(11)の周囲に光学的情報を転送するためのアレイ(5)を形成するように構成され、
上記アレイ(5)の少なくとも1つの空間的な特徴の値が、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記観察領域(11)に近い側の上記端部(6’、6”、6”’)では上記波長より小さく、かつ、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)では上記波長より大きく、
上記システム(1)は、上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)と上記光学的検出手段(4)との間を光学的に分離するための手段(8’、8”、8”’)を備えていることを特徴とする、システム(1)。
【請求項2】
チャンネル(5’、5”、5”’)の上記アレイ(5)の少なくとも1つの空間的な特徴の上記値が、上記観察領域(11)に近い側の上記端部(6’、6”、6”’)では上記波長の半分より小さい、請求項1に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項3】
チャンネル(5’、5”、5”’)の上記アレイ(5)の1つの空間的な特徴が、隣り合う2つのチャンネル(5’、5”、5”’)間の距離である、請求項1または2に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項4】
上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記アレイ(5)の1つの空間的な特徴が、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の幅である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項5】
上記プラズモン金属製チャンネル(5’、5”、5”’)が金属製ワイヤで形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項6】
上記プラズモン金属製チャンネル(5’、5”、5”’)が金属層内に掘り込んで形成されたV字状溝から形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項7】
上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記アレイ(5)の空間的な特徴が該アレイ(5)を形成する溝の深さである、請求項6に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項8】
上記溝の傾斜角が、上記観察領域(11)に近い側の上記端部(6’、6”、6”’)では、上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)より大きい、請求項7に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項9】
上記転送アレイ(5)の上記チャンネル(5’、5”、5”’)が基板(2)上に積層されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項10】
溝(3)が、検出しようとする上記粒子(10)を搬送する流体を循環させるためのチャンネルを形成するように上記基板(2)に設けられている、請求項9に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項11】
上記転送アレイ(5)の上記チャンネル(5’、5”、5”’)が埋設され、かつ、観察領域の下で延びて、互いに平行なチャンネル(32、33)のネットワークを形成し、
隣り合う2つの互いに平行なチャンネル間の距離が上記照射光の上記波長より小さく、
これらのチャンネルが、観察領域の下の上記照射光の上記波長より浅いところに配置されている、請求項10に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項12】
上記観察領域(11)では、複数の電気機械変換器が、流体の流線にもとづいて上記粒子の流れ(10)を制御するために、上記転送アレイ(5)の上記チャンネル(5’、5”、5”’)に関連付けられている、請求項10に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項13】
上記光学的分離手段(8’、8”、8”’)が、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)に配置されたネットワーク抽出器を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項14】
上記ネットワーク抽出器(8’、8”、8”’)が、上記転送アレイ(5)の上記端部(7’、7”、7”’)の幅を上記波長のスケールで調整することからなる、請求項13に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項15】
上記分離手段が、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)と、当該チャンネル(5’、5”、5”’)の延長部とに設置された屈折率が高い誘電性ワイヤに配置されたネットワーク抽出器を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項16】
上記ネットワーク抽出器が、誘電性ワイヤの幅または断面を調整することからなる、請求項15に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項17】
上記ネットワーク抽出器が、中央の誘電性ワイヤのすべてまたはその一部において貫通する2つの穴からなる、請求項15に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項18】
上記ネットワーク抽出器(8’、8”、8”’)が、上記転送アレイ(5)の上記端部(7’、7”、7”’)の幅を上記波長のスケールで調整することからなる、請求項13〜17のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項19】
照射手段(20)と、
単一平面(XY)上に設置された金属製チャンネル(22’、22”、22”’)の第2のアッセンブリー(22)とを備え、
一方の端部(6’、6”、6”’)が観察領域(11)に一層近く、上記第2のアッセンブリー(22)は、光学的情報の転送のための第2のアレイ(22)を、上記観察領域(11)の周囲に上記観察領域(11)を基準として第1の転送アレイ(5)に対して対称に形成するように構成された、請求項1〜18のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項20】
上記観察領域(11)から離れた側の端部と照射手段(20)との間に光学的結合手段(23’、23”、23”’)を備えた、請求項19に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項21】
照射手段(20)と、
第2の光学的情報転送アレイ(22)を上記観察領域(11)を基準として第1の転送アレイ(5)に対して対称に形成するように構成された、金属製チャンネル(22’、22”、22”’)の第2のアッセンブリー(22)とを備え、
上記第1のアッセンブリーおよび第2のアッセンブリー(5、22)が、上記波長より浅いところで観察領域の下に埋設され、
上記第1のアッセンブリーおよび第2のアッセンブリー(5、22)が、照射光の波長より短い距離だけ互いに離間した、互いに平行なチャンネルのネットワークによって互いに接続される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項22】
上記照射手段(20)が、集積光学系において機能し、上記第2の転送アレイ(22)の平面(XY)上に配置されている、請求項19〜21のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項23】
上記光学的結合手段(23’、23”、23”’)が、観察領域(11)から離れた側の端部に配置されたネットワーク結合器(23’、23”、23”’)を有する、請求項19〜22のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項24】
上記ネットワーク結合器(23’、23”、23”’)が、転送アレイ(22)の端部の幅を上記波長のスケールで調整することからなる、請求項23に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項25】
上記光学的結合手段(23’、23”、23”’)が、上記チャンネル(22’、22”、22”’)の観察領域(11)から離れた側の端部と、上記チャンネル(22’、22”、22”’)の延長部とに設置された屈折率が高い誘電性ワイヤに配置されたネットワーク結合器を有する、請求項19〜22のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項26】
上記ネットワーク結合器が、誘電性ワイヤの幅または断面を調整することからなる、請求項25に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項27】
上記ネットワーク結合器が、中央の誘電性ワイヤのすべてまたはその一部において貫通する穴からなる、請求項25に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項28】
上記観察領域(11)を直接照らす照射手段(20’)と、
第2の光学的情報転送アレイ(22)を観察領域(11)の周囲に形成するように構成された、金属製チャンネル(22’、22”、22”’)の第2のアッセンブリー(22)とを備えた、請求項1〜18のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項29】
上記観察領域(11)に対して互いに異なる高さ(Z)に配置された、単一の平面(XY)に平行な複数のアレイ(5、30、31)を備えた、請求項1〜28のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項30】
上記アレイ(5、30、31)の高さ(Z)および形状的特性が、光学的検出手段(4)の色収差に応じて色収差を導入できるように決定される、請求項29に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項31】
上記光学的検出手段(4)によって再生される像の収差を補償するための手段を備えた、請求項1〜30のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項32】
少なくとも1つのチャンネル(5’、5”、5”’)が、観察領域(11)から得られる光学的情報のインピーダンスマッチングのための断面を、観察領域(11)にもっとも近いその端部(6’、6”、6”’)に有する、請求項1〜31のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項33】
少なくとも1つの光学的情報転送アレイ(5)が、静電ポテンシャルを制御して上記観察領域(11)において粒子(10)を引きつけるまたははじくための電気的接触部を有する、請求項1〜32のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項34】
少なくとも1つの光学的情報転送アレイ(5)が、上記観察領域(11)において電気化学反応を制御するための電気的接触部を有する、請求項1〜33のいずれか一項に記載の光学的検出システム(1)。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか一項に記載の、粒子(10)を光学的に検出するための基本システムを複数(1a、1b、...、1i)備え、
単一の基板(2)上に設置されていることを特徴とする、粒子(10)を光学的に検出するための機器(40)。
【請求項36】
上記複数の基本システム(1a、1b、...、1i)が上記基板(2)の上記平面(XY)上にネットワークを形成する、請求項35に記載の光学的検出機器(40)。
【請求項37】
少なくとも1つの流体回路(41、42)が、少なくとも2つの光学的検出基本システム(1a、1b、1i)を相互につなぐ、請求項34または36に記載の光学的検出機器(40)。
【請求項38】
少なくとも2つの基本システム(1a、1b)が干渉分光器の腕部(50a、50b)を構成し、
少なくとも2つの基本システム(1a、1b)の各々に関連する上記観察領域(11a、11b)が、互いに非常に近い、請求項35〜37のいずれか一項に記載の光学的検出機器(40)。
【請求項39】
上記光学的検出手段(4)によって遠方場において受信される光学的信号をリアルタイムで分析し、上記観察領域(11)において検出される運動を推定するための手段を備えた、請求項35〜38のいずれか一項に記載の光学的検出機器(40)。
【請求項40】
所定の波長を有する照射光によって照らされ得る観察領域(11)の近くに一方の端部(6’、6”、6”’)が位置するように、基板(2)上に積層された金属層に対してリソグラフィーを実行して、プラズモン金属製チャンネル(5’、5”、5”’)を上記基板(2)の同一平面(XY)上に形成するステップを含む、粒子(10)を光学的に検出するためのシステム(1)を製造する方法であって、
上記リソグラフィーステップにおいて、上記金属製プラズモンチャンネル(5’、5”、5”’)は、上記アッセンブリー(5)が光学的情報転送アレイ(5)を上記観察領域(11)の周囲に形成するように構成され、
上記アレイ(5)の少なくとも1つの空間的な特徴の値が、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記観察領域(11)に近い側の上記端部(6’、6”、6”’)では上記波長より小さく、かつ、上記チャンネル(5’、5”、5”’)の上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)では上記波長より大きく、
上記観察領域(11)から離れた側の上記端部(7’、7”、7”’)と光学的検出手段(4)との間に光学的分離手段(8’、8”、8”’)を設けるステップをさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項41】
粒子(10)を光学的に検出するためのデバイス(40)を製造する方法であって、
単一の基板(2)上に、請求項40に記載の方法によって得られる、粒子(10)を光学的に検出するための基本システムを複数(1a、1b、...、1i)設けることを特徴とする、方法。
【請求項42】
少なくとも2つの光学的検出基本システム(1a、1b、...、1i)の各々に繋がる少なくとも1つの流体チャンネル(41、42)を形成するために、基板(2)に対してリソグラフィーを実行して少なくとも1つの溝(3)を設けるステップを含む、請求項41に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12(A)】
【図12(B)】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12(A)】
【図12(B)】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−517602(P2012−517602A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549622(P2011−549622)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000109
【国際公開番号】WO2010/092255
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(506066777)サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティ フィック セーエヌエールエス (22)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000109
【国際公開番号】WO2010/092255
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(506066777)サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティ フィック セーエヌエールエス (22)
【Fターム(参考)】
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