光学的情報再生方法
【課題】位相誤差検出用の特別なピット列を挿入する必要がなく、再生信号から再生クロックを生成するための位相誤差情報を抽出することが可能な情報再生方法を提供する。
【解決手段】記録情報の一部に多値度を落としたセルを設け、例えば、N値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、光スポットの中央がM値のセルの中央に来た時に再生信号をサンプリングしてセル中央値を検出する。一方、予めセル中央値の理想値及びセル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配を導出し、これらの値と検出したセル中央値に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【解決手段】記録情報の一部に多値度を落としたセルを設け、例えば、N値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、光スポットの中央がM値のセルの中央に来た時に再生信号をサンプリングしてセル中央値を検出する。一方、予めセル中央値の理想値及びセル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配を導出し、これらの値と検出したセル中央値に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3値以上の値を用いて多値情報を再生する光学的情報再生方法に関し、特に、記録情報から再生時の再生クロック生成するPLLのための位相誤差情報の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光メモリ産業は拡大しつつあり、再生専用のCDやDVDから、金属薄膜や色素系記録材料を用いた追記型、更には、光磁気材料や相変化材料を用いた書換え型まで開発され、その応用も民生からコンピュータの外部メモリへと拡大している。
【0003】
そして、更に記録容量の高密度化の研究開発が進められており、情報の記録再生に関わる光スポットを微小化する技術として、光源の波長は赤色(650nm)から、青紫色(405nm)になりつつある。また、対物レンズの開口数も0.6や0.65から0.85へと高められようとしている。一方では、同じ光スポットの大きさを用いて、より効率のよい多値記録再生の技術も提案されている。
【0004】
例えば、多値記録再生技術の方式として、特開平5−128530号公報で提案された方法がある(特許文献1)。同公報には光学的情報記録媒体の情報トラック上に情報ピットのトラック方向の長さと、その情報ピットの再生用光スポットに対するトラック方向のシフト量の組み合わせによって多値情報を記録する記録方法が開示されている。また、その多値記録した情報ピットを再生する際、予め学習しておいた検出信号と光スポットから得られた検出信号との相関より多値情報を再生する再生方法が開示されている。
【0005】
また、光ディスク分野の研究における国際学会であるISOM2003(Write−once Disks for Multi-level Optical Recording:予稿集Fr−Po−04)において、以下の発表がなされている(非特許文献1)。即ち、青紫色の光源(405nm)とNA0.65の光学系を用い、トラックピッチが0.46μmの光ディスクを用いる。その光ディスクに対して、仮想的に設けた一つの情報ピットを記録する領域(以下、セルと記述する)のトラック方向の幅を0.26μmとして、8レベルの多値記録再生を行った発表がなされている。
【0006】
8レベルの情報ピットを選択するには、例えば、図20に示すようにセルのトラック方向(図中A方向)の長さを16等分し、レベル0を何も情報ピットを記録しないとする。また、レベル1を2/16セル分の幅、レベル2を4/16セル分の幅、レベル3を6/16セル分の幅、レベル4を8/16セル分の幅、レベル5を10/16セル分の幅、レベル6を12/16セル分の幅、レベル7を14/16セル分の幅とする。
【0007】
このように選択した情報ピットをランダムに記録し、その反射光量を光検出器で受光する。そして、得られた多値情報ピットからの再生信号を、光スポットの中央が、セルのトラック方向の中央に来た時のタイミングでサンプリングすると、各レベルに対する再生信号の振幅は図21のような分布となる。
【0008】
この時、情報をサンプリングするためのクロックは記録情報中に所定間隔で挿入された所定ピット列の再生により位相誤差情報を検出し、フェーズロックドループ回路(PLL回路)において生成する構成が採られている。
【0009】
図22は位相誤差検出用のピット列挿入例を示す。図中、(A)〜(I)は記録情報列を示しており、(A)は記録データ先頭に位置するPLL引き込み用ピット列である。これは多値記録の如何に拘わらず採用する場合が多い。(B)は既知ピット列の再生信号を得るための学習ピット列である。
【0010】
(C)、(E)、(G)、(I)は符号化されたユーザ情報である。(D)、(F)、(H)は再生クロックを生成するPLLのための位相誤差検出用ピット列である。例えば、レベルスライスによる2値化処理を行ってエッジを抽出し、このエッジと再生クロックとの位相誤差情報を位相比較器により検出し、再生クロックのPLL処理に利用する。多値記録においては、記録ピットサイズの如何に拘わらずエッジ周期は一定になるため、SN比の良い位相情報を得るためには、位相誤差検出用のピット列を最小レベルと最大レベルが交互に現れるようにするのが望ましい。
【0011】
図21の説明に戻る。情報ピットが何も書かれていないレベル0が続く時の再生信号レベルを『1』、レベル7の情報ピットが連続して記録されている時の再生信号レベルを『0』として規格化している。
【0012】
各レベルに対応する再生信号の値が幅を持つのは、注目している情報ピットの前後に書かれている情報ピットからの影響(符号間干渉)を受けるからである。図21に示すように隣のレベルと再生信号の振幅分布が重なっていると、固定した閾値では分離検出できない。
【0013】
ISOM2003(Write−once Disks for Multi-level Optical Recording:予稿集Fr−Po−04)には、これを解決するための方法が開示されている。即ち、注目している情報ピットの値と、その前後の情報ピットの値とが予め分かっているピット列からの再生信号を読み取り記憶しておく(学習)。そして、実際の情報ピットからの再生信号と記録しておいた値とを比べて(相関をみる)、分離検出する方式が述べられている。この方式では、記録密度はおよそ16Gbit/inch2である。
【特許文献1】特開平5−128530号公報
【非特許文献1】ISOM2003(Write−once Disks for Multi-level Optical Recording:予稿集Fr−Po−04)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記多値レベルの情報記録再生方法では、再生信号レベルを検出するための再生クロックを生成する場合、位相誤差信号を十分な精度で得ようとすると、以下の課題がある。即ち、所定間隔、所定の長さで、且つ、固定スライスによる2値化により位相情報が検出可能なように十分大きなピット列を挿入しておく必要がある。
【0015】
この位相誤差検出のためのピット列を挿入すると、情報記録媒体の記録フォーマットの情報効率の低下を招き、多値記録における線密度の向上を妨げるという欠点があった。
【0016】
本発明の目的は、位相誤差検出用の特別なピット列を挿入する必要がなく、再生信号から再生クロックを生成するための位相誤差情報を抽出することが可能な光学的情報再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、光学的情報媒体のトラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、M値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル中央値を検出する。そして、検出されたセル中央値、予め導出しているセル中央値の理想値、及びセル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【0018】
また、本発明は、光学的情報媒体のトラック上にN値ピット(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する2つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、連続する2つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル間値を検出する。そして、検出されたセル間値、予め導出しているセル間値の理想値、及びセル間値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【0019】
更に、本発明は、光学的情報媒体のトラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する3つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、連続する3つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして連続する3つM値のセルのうち中央のセルのセル中央値を検出する。そして、検出されたセル中央値、予め導出しているセル中央値の理想値、及びセル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【0020】
また、本発明は、トラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、M値で記録されたセルの再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングを検出する。また、再生信号が予め導出しているセル中央値の理想値に来た時のタイミングを検出する。そして、検出された再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングと、再生信号がセル中央値の理想値に来た時のタイミングとの差に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、記録情報の再生信号から直接再生クロック生成のための位相誤差情報を検出することが可能となる。そのため、記録媒体上にPLLのための特別な領域が不要となり、記録媒体の情報の記録効率(フォーマット効率)を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る光学的情報記録再生装置の一実施形態を示すブロック図である。光学的情報記録再生装置1は、制御回路2、スピンドルモータ3、光ディスク4、光ヘッド5、光ヘッド制御回路6、情報記録回路7、情報再生回路8、スピンドルモータコントローラ9及びインターフェースコントローラ10を有する。
【0023】
制御回路2は外部のコンピュータ等の情報処理装置との情報の送受信を制御し、光ディスク4に対する情報の記録や再生を情報記録回路7と情報再生回路8を用いて制御し、また、その他の稼働部を制御する。情報記録回路7は後述するように多値情報の記録を行い、情報再生回路8は多値情報の再生を行う。
【0024】
スピンドルモータ3は、スピンドルモータコントローラ9により制御され、光ディスク4を回転駆動する。光ディスク4は、不図示の機構により光学的情報記録再生装置1に対して挿入または排出可能な光学的情報記録媒体である。
【0025】
光ヘッド5は光ディスク4に光学的に情報を記録或いは再生する。光ヘッド5としては、例えば、光源の波長を405nm、対物レンズの開口数を0.85とすると、光スポットの大きさは、およそ0.405μmとなる。光ディスク4のトラックピッチは0.32μmとする。光ヘッド制御回路6は光ヘッド5による光スポットの位置を制御するものであり、オートトラッキング制御、シーク動作の制御、オートフォーカシング制御を行う。
【0026】
本発明に係る情報再生における位相誤差信号の生成は、情報再生回路8が担うことになる。情報再生回路8は後述するセル中央値やセル間値の検出或いは再生信号勾配の算出や位相誤差の算出等を行う。
【0027】
まず、本発明に係る多値情報記録再生方法及び装置に関して説明する。図2は本発明の光学的情報記録再生装置に用いる多値度を8値とした多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向(図中A方向)の幅を説明する図である。説明の便宜上、多値情報ピットのトラック方向と垂直な方向の幅は実際よりも小さく示している。以下、同図で示す多値情報ピットをN値ピットと表現する。
【0028】
本発明では、N値で記録されたセルによる多値情報を基本として、これに多値度を落としたM値で記録したセルを一部に挿入する構成をとる。つまり、NとMの関係は、N>Mの関係である。
【0029】
図2において、2本の太い実線に挟まれた領域がセルを示す。本実施形態では光スポットの大きさは約0.405μm、光ディスクのトラックピッチ0.32μm、セルの幅を0.2μmとする。
【0030】
この場合、最短の情報ピット(レベル1)の幅は25nmとなり、以下順にレベル2が50nm、レベル3が75nm、レベル4が100nm、レベル5が125nm、レベル6が150nm、レベル7が175nmとなっている。レベル0は何も記録しない状態とする。
【0031】
N値ピットの多値情報は、例えば、8値記録とする。つまり、一つのセルに3ビットを記録することができる。例えば、3ビットの情報に対して図2に示すように(0,0,0)は0レベル、(0,0,1)は1レベル、(0,1,0)は2レベル、(0,1,1)は3レベル、(1,0,0)は4レベルとする。また、(1,0,1)は5レベル、(1,1,0)は6レベル、(1,1,1)は7レベルに対応するものとする。もちろん、他の対応方式でもよい。
【0032】
図3は本発明の光学的情報記録再生装置に用いる多値度を落としたピットであるM=4とした4値で記録された多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向(図中A方向)の幅を説明する図である。以下、同図で示す多値情報ピットをM値ピットと表現する。
【0033】
この場合、最短の情報ピット(レベル0)の幅は25nmとなり、以下順にレベル1が75nm、レベル2が125nm、レベル3が175nmとなっている。もちろん、レベル0を何も記録しない状態として、レベル毎に50nm間隔で増やす方式でもよい。
【0034】
M値ピットの多値情報は4値記録であるので、一つのセルに2ビットを記録することができる。例えば、2ビットの情報に対して図3に示すように(0,0)は0レベル、(0,1)は1レベル、(1,0)は2レベル、(1,1)は3レベルに対応するものとする。もちろん、他の対応方式でもよい。
【0035】
図4は光ディスク4上のトラック11に対して従来のN値ピットのみで構成されたランダムな情報ピット12を記録した時の模式図と、光スポット13の関係を示す。例えば、記録消去可能な記録材料として相変化材を利用する場合、光ディスク4に光スポット13を照射し、記録パルス、消去パルス、冷却パルスのそれぞれの光量とタイミングを調整する。それにより、情報ピットの形状を変化させ、複数の再生レベルの情報ピットが形成される。
【0036】
図4では、便宜上、矩形の情報ピットとして示しており、トラック方向の長さを変化させた様子を示している。その際、各レベルが情報ピットの面積に対応していれば矩形の情報ピットでなくても、例えば、円形、楕円形、或いは矢尻型等のピットであっても本発明の本質は変わらない。
【0037】
なお、記録消去可能な記録材料としては相変化材料以外にも光磁気材料が利用できる。この場合、上述した光学的情報記録再生装置で光スポット以外に図示しない磁気ヘッドからの磁界との協調作業により、情報ピットの形状を変化させ、複数の再生レベルの情報ピットを形成する。
【0038】
更に、追記のみ可能な記録材料を適用することも可能であり、記録材料として有機色素や金属膜を利用でき、光ディスクに光スポットを照射し、記録光量とそれらのタイミングを調整する。それにより、情報ピットの形状を変化させ、複数の再生レベルの情報ピットが形成される。また、再生専用の記録媒体でも同様に情報ピットは位相ピットと呼ばれる凹凸形状として基板に形成でき、この位相ピットの面積或いは位相ピットの光学的な深さを変調することで多値レベルの記録が可能である。
【0039】
記憶容量を増やすためには、セルの大きさを小さくする必要があり、小さくすると図4に示すように光スポット13内に2〜3個のセルの情報ピットが含まれることになる。このような多値レベルの記録を前提に本発明の原理を相変化材を利用した場合を例として説明する。
【0040】
図4において、矢印A方向は同様にトラック方向を示し、11は情報ピットを記録する光ディスク4上のトラックを示す。破線で区切られた領域がトラック11上に仮想的に設けられたそれぞれのセルである。また、図2の方式に従って図4の上部に記載しているレベル数に対応する情報ピットが12の如く記録されている。13は光スポットである。
【0041】
本発明においては、図4に示すようにN値ピットのみで記録するのではなく、一部に多値度を落としたM値ピットを記録する。この模式図を、図5、図6、及び図7に示す。即ち、
第1及び第4の手段として、1ブロックの中にM値ピットを1つ設ける(図5)。
第2の手段として、1ブロックの中に連続した2つのM値ピットを設ける(図6)。
第3の手段として、1ブロックの中に連続した3つのM値ピットを設ける(図7)。
【0042】
いずれも、説明を簡略化するため1ブロックのN値ピットの数は3つとしているが、もちろんこれより多くても何ら問題はない。
【0043】
ここで、第1〜第4の手段で記録された多値情報の再生クロック生成のための位相誤差を検出し、位相誤差情報を生成するためサンプリングした再生信号を用いる。第1及び第3の手段はセルの中央でサンプリングした再生信号レベル(セル中央値)を、第2の手段は隣接するセルの境界でサンプリングした再生信号レベル(セル間値)をそれぞれ用いて生成する。第4の手段は再生信号が理想の所定値をクロスした場合の検出タイミングと実際の検出タイミングとから位相誤差を検出する。
【0044】
次に、本発明に係る位相誤差情報検出に用いるセル中央値及びセル間値を、再生信号の光学シミュレーションを行った結果に基づいて説明する。
【0045】
図8は光学シミュレーションに用いたパラメータを示す。トラックピッチは0.32μm、光スポットの大きさは0.405μm(波長405nm、対物レンズの開口数:NA0.85)とする。セルの大きさは0.2μm、与えた情報ピットは図2に示す通り8値記録とする。図9はその場合のそれぞれのレベルに対する情報ピットを示すものである。
【0046】
上記条件で連続する3つのセルに8種類のレベルを順次組み合わせて与え(全ての組み合わせは8×8×8=512通り)、光スポットを初めのセル中央から3つ目のセル中央まで移動させたときの再生信号(反射光量)を計算した。図10は2つ目のセルの中央で得られる再生信号レベル(セル中央値)の分布を示すものである。横軸は1つのセルのレベル、縦軸は再生信号レベルである。
【0047】
図11は光学シミュレーション結果を示すもので連続する3つのセルに書かれた情報ピットの組み合わせに対する再生信号レベルを示す。図11ではセルのレベルの組み合わせ(0,1,6)から(7,1,6)の8通りを例に取って示す(3つのセル以外はすべて0レベルとする)。
【0048】
図中3本の実線の位置はそれぞれのセル中央に光スポットがある場合の再生信号(セル中央値)を示し、2本の破線の位置はセルとそれに続くセルの境界に光スポットがある場合の再生信号(セル間値)を示す。
【0049】
(第1の手段)
まず、本発明のセル中央値を用いる第1の手段の位相誤差情報の検出方法を説明する。図12を用いて第1の手段の位相誤差情報検出方法を説明する。図中セル中央値の状態を(0,1,6)の組み合わせとした一例を示す。
【0050】
(A)はM値ピットの1レベル(N値ピットの3レベル、75nmに相当)で記録されたセルの理想的な再生信号をセル中央時刻kでサンプリングした値を示す。ここで、再生クロックを得るためのPLL制御を考え、セル中央値における位相誤差情報の検出を考える。
【0051】
仮に実際のサンプリング時刻がk’のようにずれていたとし、実再生信号をサンプリングした値が(B)だったとする。図中破線で示す曲線はセル中央値の理想値(0)、(A)、(6)をプロットした各点を結んだものであり、これに実再生信号のセル中央値(B)がプロットされている。
【0052】
この時のセル中央値が(0,1,6)の既知状態であれば、セル中央値の理想状態は図12に示すように(0)、(A)、(6)の関係になり、M値で記録されたセルのセル中央値の理想値及びセル中央値近傍の再生信号勾配も既知状態となる。
【0053】
そのため、(1)セル中央値近傍理想再生信号勾配(セル中央値の理想値近傍における再生信号勾配)(Δv/Δt)、(2)セル中央値理想値(A)、更に(3)実再生信号でのセル中央値(B)の3点を考慮する。そうすることによりサンプリングクロックの位相誤差状態を算出することが可能となる。サンプリングクロックの位相誤差Δt’は、
Δt’=[(A)−(B)]/(Δv/Δt)
で得られる。
【0054】
ここで、(1)、(2)の理想状態はシミュレーション等により得られ、更に後述するように記録データ列の先頭に設ける既知記録列の学習領域から得られる再生レベルから得ることもできる。むしろ、後者の方が記録状態等の種々の影響を反映した状態となるため好ましい。
【0055】
次に、学習データを利用する場合のセル中央値近傍の再生信号の傾きの算出、位相誤差の算出に関して説明する。セル中央値近傍における再生信号勾配の算出に関しては学習データ上の連続する3つのセル中央値の値を利用して曲線近似を行い、セル中央値(A)における接線勾配によりセル中央値近傍の勾配(Δv/Δt)を算出する手法がある。或いは、曲線近似曲線そのものを勾配曲線として適用する方法が最も簡単な例として挙げられる。
【0056】
上述の学習データ上の連続する3つのセル中央値とは、例えば、後述するように学習ピット列として記録するN値、M値、N値のセルであり、各々のセル中央値を検出する。これら3つのセル中央値を用いて曲線近似を行い、真中のM値セルの中央における接線勾配により再生信号勾配を算出する。セル中央値の理想値は学習ピット列のうち中央のM値セルのセル中央値である。
【0057】
実際の装置動作時には、再生中にM値セルのセル中央値のレベル判定を行う(図12のB)。そして、学習時に上述のような方法にて導出された再生信号勾配(Δv/Δt)、及びセル中央値の理想値(A)と再生中のセル中央値(B)との差からサンプリング時刻のずれ時間、即ち、位相誤差信号を検出する。
【0058】
更に、傾き算出に使用するセル中央値を、位相誤差を算出するセル中央値を挟む両側5点に拡張すれば、より精度良くセル中央時刻kにおける傾きを算出することも可能となる。
【0059】
以上のように学習時において再生されるセル中央値のレベル情報に基づいてセル中央近傍における再生信号勾配(Δv/Δt)を算出する。そして、再生時において再生信号勾配(Δv/Δt)、及び学習時に得られたセル中央値の理想レベル(A)と実再生信号でのセル中央値(B)から、多値情報再生において再生信号から直接位相誤差信号を抽出する。
【0060】
ここで、精度の高い位相誤差信号を検出するには、再生中のセル中央値のレベル判定をいかに精度良く行うかが重要となる。判定値が仮に間違っている場合、当然学習データから算出されるセル中央値近傍理想再生信号勾配とセル中央値理想値の精度が悪くなるためである。
【0061】
本発明は、多値度を落としたM値ピットを設けているので、レベル判定を従来より精度良く行うことが可能である。例えば、光スポットの大きさが約0.405μm、光ディスクのトラックピッチ0.32μm、セルの幅を0.2μmとして、すべて8値で記録された多値情報を再生した場合、レベル判定値のエラーは正解値に対してすべて±1レベルであった。
【0062】
この結果から、仮に4値で記録された多値情報を再生すれば、判定値がエラーとなることはほとんどないことになる。従って、本発明の如く多値度を落としたM値ピットを設けることで精度の高い位相誤差信号を検出することが可能となる。
【0063】
ここで、再生時において図12に示すN値、M値、N値の3つの連続するセルのセル中央値を検出する。その場合、中央のM値セルのセル中央値に対して、前後のN値セルのセル中央値のレベル差が無い場合、或いはレベル差が小さい場合には、セル中央値において再生信号の勾配は極めて小さくなる。この勾配情報を基に位相誤差を算出すると位相誤差情報の精度が悪くなる。
【0064】
従って、再生時において中央のM値セルのセル中央値に対して前後のセルのセル中央値のうち、少なくとも一方のセル中央値が所定差に至らない場合には、位相誤差情報を検出しない動作をするのが良い。そうすることで、PLL制御精度をより向上させることができる。
【0065】
例えば、連続するセル中央値(k−1,k,k+1)における各レベルV(k−1)、V(k)、V(k+1)が|V(k−1)−V(k)|≦2、|V(k)−V(k+1)|≦2なる関係の場合には、位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。
【0066】
また、V(k−1)<V(k)>V(k+1)、或いはV(k−1)>V(k)<V(k+1)なる関係の場合には位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。ここで、V(k)はM値のレベルをN値に換算したものとする。
【0067】
本発明は、以上のように光学的情報媒体のトラック上で仮想的に一定間隔のセルを設け、光スポットを用いて、セルでトラック方向の情報ピットの長さ又は情報ピットの面積を変えて多値情報を記録する。そして情報ピットから多段階の再生信号のレベルを検出することにより多値情報を再生するための記録再生領域を有する光学的情報媒体に対して多値情報を再生する光学的情報再生方法である。
【0068】
本発明は、トラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、M値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル中央値を検出する工程を含む。また、検出されたセル中央値、予め導出しているセル中央値の理想値、及びセル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程を含む。
【0069】
セル中央値の理想値及び勾配は記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出する。或いは、セル中央値の理想値及び勾配はシミュレーションにより導出する。
【0070】
位相誤差取得工程は、セル中央値の理想値を挟む2つ以上のセル中央値によって算出された勾配と、セル中央値の理想値と検出されたセル中央値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。位相誤差取得工程において、M値で記録されたセル及びその両側のN値で記録されたセルのうち、M値セルのセル中央値に対して、少なくとも一方のN値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止する。
【0071】
(第2の手段)
次に、本発明のセル間値の再生信号レベルを用いる第2の手段の位相誤差情報を生成する方法を説明する。まず、図11に戻り、セル間値の特徴を詳細に説明する。
【0072】
図11中、隣り合うセルの境界での再生信号(セル間値)に注目してみると、右側のセルと真中のセルとの境界のセル間値がほぼ同じ値を取ることが分かる。つまり、左右のレベルの組み合わせが同じであれば(この場合は『1』と『6』)、その外側(この場合は左側のセル)のレベルが何であっても、セル間値に大きな影響を与えないことが分かり、符号間干渉の影響が軽微であることが分かる。
【0073】
図14は左右のセルの境界に光スポットが来た時の位置関係を示すものである。光スポットの大きさ0.405μmに対して、2つ分のセルの幅が0.4μmであり、光スポットのほとんどが左右のセル上にある。つまり、その外側からの影響がほとんど無いことが直感的にも分かる。
【0074】
図15の左図は左右のセルの組み合わせ(全ての組み合わせは8×8=64通り)に対して、セル間値の再生信号の振幅分布を示す(ピット部と非ピット部の反射率で規格化している)。ここで、左右のセルレベルの合計を横軸にとっている。つまり、(0,0)の0値から、(7,7)の14値まで15値に分類できる。
【0075】
波形等化等の信号処理を加えなくても、0から14の15値に分離していることが分かる。そして、それぞれの15値に対応する左右のセルレベルの組み合わせを、図15の右図に示す。
【0076】
次に、本発明の第2の手段の原理となる現象に関して上記再生信号の特徴を基に説明する。図11において、セル中央値−セル間値−セル中央値の信号レベル変化に着目すると、セル間値に信号レベルの良好な分離に加えて、セル間値近傍では信号変化の勾配がほぼ一定となっていることが併せて理解できる。
【0077】
このことから、セル間値に前後するセル中央値の多値のレベル値が確定すれば、その理想状態におけるセル間値が推測でき、同時にセル間値近傍での再生信号の勾配を推測することが可能となる。
【0078】
本発明の第2の手段ではこの現象を利用することにより位相誤差情報を再生信号そのものから得ること特徴とする。第2の手段では、セル中央値(情報再生に使用)と、位相誤差の検出に用いるセル間値の両方をサンプリングすることが必要となるため、再生クロックはセル周期の2倍以上の速度が必要となる。
【0079】
図16を用いて第2の手段の位相誤差検出方法について説明する。図中、セル中央値の状態を(0,3)の組み合わせとした一例を示す。(A)はM値ピットの0レベル(N値ピットの1レベル、25nmに相当)とM値ピットの3レベル(N値ピットの7レベル、175nmに相当)で記録されたセルの理想的な再生信号を、セル間の時刻kでサンプリングした値を示す。
【0080】
ここで、再生クロックを得るためのPLL制御を考え、セル間値における位相誤差情報の検出を考える。仮に実際のサンプリング時刻がk’のようにずれていたとし、実再生信号をサンプリングした値が(B)だったとする。図中破線で示す曲線はセル中央値、セル間値の理想値(0)、(3)、(A)をプロットした各点を結んだものであり、これに実再生信号のセル間値(B)がプロットされている。
【0081】
この時のセル中央値が(0,3)の既知状態であれば、セル中央値、セル間値の理想状態は図16に示すように(0)、(3)、(A)の関係になり、セル間値の理想値、及びセル間値近傍の再生信号勾配も既知状態となる。
【0082】
そのため、(1)セル間値近傍理想再生信号勾配(セル間値の理想値近傍における再生信号勾配)(Δv/Δt)、(2)セル間値理想値(A)、更に(3)実再生信号でのセル間値(B)の3点を考慮する。そうすることによりサンプリングクロックの位相誤差状態Δt’を算出することが可能となる。サンプリングクロックの位相誤差Δt’は、
Δt’=[(A)−(B)]/(Δv/Δt)
で得られる。
【0083】
ここで、(1)、(2)の理想状態はシミュレーション等により得られ、更に後述するように記録データ列の先頭に設ける既知記録列の学習領域から得られる再生レベルから得ることもできる。むしろ、後者の方が記録状態等の種々の影響を反映した状態となるため好ましい。
【0084】
次に、学習データを利用する場合のセル間値近傍の再生信号の傾きの算出、位相誤差の算出に関して説明する。セル間近傍における再生信号勾配の算出に関しては学習データ上の連続する2つのセル中央値の値を線形近似し、セル間近傍における勾配を算出する方法が最も簡単な例として挙げられる。
【0085】
上述の学習データ上の連続する2つのセル中央値とは、例えば、後述するように学習ピット列として記録された連続する2つのM値セルであり、各々のセル中央値を検出する。これら2つのセル中央値を線形近似し、2つのM値セルのセル間近傍における再生信号勾配を算出する。セル間値の理想値は学習ピットとして記録された2つのM値セル間の再生信号レベルである。
【0086】
実際の動作時には、再生中にセル間値のレベル判定を行う(図16のBに対応)。そして、学習時に上述のような方法にて導出された再生信号勾配(Δv/Δt)、及びセル間値の理想値(A)と再生中のセル間値(B)との差からサンプリング時刻のずれ時間、即ち、位相誤差信号を検出する。
【0087】
更に学習データにおいて連続する2つのM値セルのセル中央値に加え、その間に位置するセル間値の値を加えた3点の値を利用して曲線近似を行い、セル間値(A)における接線勾配によりセル間値近傍における勾配(Δv/Δt)を算出する手法がある。或いは、曲線近似曲線そのものを勾配曲線として適用することで、学習におけるセル間値(A)と再生中のセル間値(B)との差から、位相誤差信号をより高精度に算出することも可能である。
【0088】
更に、傾き算出に使用するセル中央値を、位相誤差を算出するセル間値を挟む両側4点に拡張すれば、より精度良くセル間時刻kにおける傾きを算出することも可能となる。
【0089】
以上のように学習時において再生されるセル中央値或いはセル間値のレベル情報に基づいてセル間近傍における再生信号勾配(Δv/Δt)を算出する。そして、再生時において再生信号勾配(Δv/Δt)、及び学習時に得られたセル間値の理想レベル(A)と実再生信号でのセル間値(B)の差から、多値情報再生において再生信号から直接位相誤差信号を抽出することが可能となる。
【0090】
ここで、再生時において図16に示す2つの連続するM値セルのセル中央値のレベル差が無い場合、或いはレベル差が小さい場合には、セル間において再生信号の勾配は極めて小さくなる。この勾配情報を基に位相誤差を算出すると位相誤差情報の精度が悪くなる。従って、再生中レベル判定された連続する2つのセル中央値が所定差に至らない場合には、位相誤差情報を検出しない動作をすることで、PLL制御精度をより向上させることができる。
【0091】
例えば、連続するセル中央値(k−1,k)における各レベルV(k−1)、V(k)が|V(k−1)−V(k)|≦3なる関係の場合には位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。V(k−1)、V(k)はM値のレベルをN値に換算したものとする。
【0092】
本発明は、以上のようにトラック上にN値ピット(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する2つのM値(M<N)で記録されているセルを設ける。そして連続する2つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル間値を検出する工程を含む。また、検出されたセル間値、予め導出しているセル間値の理想値、及びセル間値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程を含む。
【0093】
また、セル間値の理想値及び勾配は記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出する。或いは、セル間値の理想値及び勾配はシミュレーションにより導出する。
【0094】
位相誤差取得工程は、2つの連続するM値で記録されたセルのセル中央値から算出された勾配と、セル間値の理想値と検出されたセル間値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。位相誤差取得工程において、M値で記録された2つの連続するセルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止する。
【0095】
(第3の手段)
次に、本発明のセル中央値を用いる第3の手段の位相誤差検出方法を説明する。図13を用いて本発明に係る第3の手段の位相誤差検出方法を説明する。図中セル中央値の状態を(0,1,3)の組み合わせとした一例を示す。(A)はM値ピットの1レベル(N値ピットの3レベル、75nmに相当)で記録されたセルの理想的な再生信号を、セル中央時刻kでサンプリングした値を示す。
【0096】
ここで、再生クロックを得るためのPLL制御を考え、セル中央値における位相誤差情報の検出を考える。仮に実際のサンプリング時刻がk’のようにずれていたとし、実再生信号をサンプリングした値が(B)だったとする。図中破線で示す曲線はセル中央値の理想値(0)、(A)、(3)をプロットした各点を結んだものであり、これに実再生信号のセル中央値(B)がプロットされている。
【0097】
この時のセル中央値が(0,1,3)の既知状態であれば、セル中央値の理想状態は図13に示すように(0)、(A)、(3)の関係になり、M値で記録された真中のセルのセル中央値の理想値及びセル中央値近傍の再生信号勾配も既知状態となる。
【0098】
そのため、(1)セル中央値近傍理想再生信号勾配(セル中央値の理想値近傍における再生信号勾配)(Δv/Δt)、(2)セル中央値理想値(A)、更に(3)実再生信号でのセル中央値(B)の3点を考慮する。そうすることによりサンプリングクロックの位相誤差状態Δt’を算出することが可能となる。サンプリングクロックの位相誤差Δt’は、
Δt’=[(A)−(B)]/(Δv/Δt)
で得られる。
【0099】
ここで、(1)、(2)の理想状態はシミュレーション等により得られ、更に後述するように記録データ列の先頭に設ける既知記録列の学習領域から得られる再生レベルから得ることもできる。むしろ、後者の方が記録状態等の種々の影響を反映した状態となるため好ましい。
【0100】
次に、学習データを利用する場合のセル中央値近傍の再生信号の傾きの算出、位相誤差の算出に関して説明する。セル中央近傍における再生信号勾配の算出に関しては学習データ上の連続する3つのセルのセル中央値の値を利用して曲線近似を行い、セル中央値(A)における接線勾配によりセル間値近傍における勾配(Δv/Δt)を算出する手法がある。或いは、曲線近似曲線そのものを勾配曲線として適用する方法が最も簡単な例として挙げられる。
【0101】
上述の学習データ上の3つの連続するセルとは、例えば、後述するように学習ピットとして記録された3つの連続するM値セルであり、各々のセルのセル中央値を検出する。これら3つのセル中央値の曲線近似を行い、中央のM値セルのセル中央における接線勾配によりセル中央近傍における再生信号勾配を算出する。セル中央値の理想値は中央のM値セルの中央における再生信号レベルである。
【0102】
実際の再生動作時には、再生中にセル中央値のレベル判定を行う(図13のBに対応)。そして、学習時に上述のような方法にて導出された再生信号勾配(Δv/Δt)、及びセル中央値の理想値(A)と再生中のセル中央値(B)との差からサンプリング時刻のずれ時間、即ち、位相誤差信号を検出する。
【0103】
更に、傾き算出に使用するセル中央値を、位相誤差を算出するセル中央値を挟む両側5点に拡張すれば、より精度良くセル中央時刻kにおける傾きを算出することも可能となる。
【0104】
以上のように学習時において、再生するセル中央値のレベル情報に基づいてセル中央近傍における再生信号勾配(Δv/Δt)を算出する。そして、この再生信号勾配(Δv/Δt)、セル中央値の理想レベル(A)、及び実再生信号でのセル中央値(B)に基づいて多値情報再生において再生信号から直接位相誤差信号を抽出することが可能となる。
【0105】
ここで、精度の高い位相誤差信号を検出するには、再生中のセル中央値のレベル判定をいかに精度良く行うかが重要となる。判定値が仮に間違っている場合、当然学習データから算出されるセル中央値近傍理想再生信号勾配とセル中央値理想値の精度が悪くなるためである。
【0106】
第3の手段では、多値度を落としたM値ピットを3つ連続して設けているので、レベル判定を従来より精度良く行うことが可能である。例えば、光スポットの大きさを約0.405μm、光ディスクのトラックピッチを0.32μm、セルの幅を0.2μmとして、すべて8値で記録された多値情報を再生した場合、レベル判定値のエラーは正解値に対してすべて±1レベルであった。
【0107】
この結果から、仮に4値で記録された多値情報を再生すれば、判定値がエラーとなることはほとんどないことになる。従って、本発明の如く多値度を落としたM値ピットを設けることで精度の高い位相誤差信号を検出することが可能となる。
【0108】
ここで、再生時において図13に示す3つの連続するM値セルのセル中央値を検出する。その場合、中央のM値セルのセル中央値に対して、前後のM値セルのセル中央値のレベル差が無い場合、或いはレベル差が小さい場合には、セル中央において再生信号の勾配は極めて小さくなる。この勾配情報を基に位相誤差を算出すると位相誤差情報の精度が悪くなる。
【0109】
従って、再生時において中央のM値セルのセル中央値に対して前後のM値セルのセル中央値のうち、少なくとも一方のセル中央値が所定差に至らない場合には、位相誤差情報を検出しない動作をするのが良い。そうすることで、PLL制御精度をより向上させることができる。
【0110】
例えば、連続するセル中央値(k−1,k,k+1)における各レベルV(k−1)、V(k)、V(k+1)が|V(k−1)−V(k)|≦1、|V(k)−V(k+1)|≦1の場合には位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。
【0111】
また、V(k−1)<V(k)>V(k+1)或いはV(k−1)>V(k))<V(k+1)なる関係の場合には、位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。ここで、V(k−1)、V(k)、V(k+1)はM値のレベルをN値に換算したものとする。
【0112】
本発明の第3の手段は、多値度を落としたセルが3つとなるのでフォーマット効率としては低下するが、前後セルのレベルをより確度良く検出できるので、精度の高い位相誤差情報を得ることが可能となる。
【0113】
本発明は、以上のようにトラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する3つのM値(M<N)で記録されているセルを設ける。そして連続する3つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして連続する3つM値のセルのうち中央のセルのセル中央値を検出する工程を含む。また、検出されたセル中央値、予め導出しているセル中央値の理想値、及びセル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程を含む。
【0114】
セル中央値の理想値及び勾配は前記記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出する。或いは、セル中央値の理想値及び勾配はシミュレーションにより導出する。位相誤差取得工程は、3つの連続するM値で記録されたセルのセル中央値から算出された勾配と、セル間値の理想値と検出されたセル間値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【0115】
また、位相誤差取得工程において、M値で記録された3つの連続するセルのうち中央のM値セルのセル中央値に対して、少なくともその両側のM値セルのうち一方のM値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止する。
【0116】
(第4の手段)
最後に、本発明のセル中央値を用いる第4の手段の位相誤差情報を生成する方法を説明する。第4の手段は、第1〜第3の手段とは異なり、セル中央値又はセル間値近傍の理想再生信号勾配(Δv/Δt)を用いずに、サンプリングクロックの位相誤差状態Δt’を算出する。
【0117】
図23を用いて本発明の第4の手段の位相誤差について説明する。図中、セル中央値の状態を(0,1,6)の組み合わせとした一例を示す。(A)はM値ピットの1レベル(N値ピットの3レベル、75nmに相当)で記録されたセルの理想的な再生信号を、セル中央時刻kでサンプリングした値を示している。
【0118】
ここで、再生クロックを得るためのPLL制御を考え、セル中央値における位相誤差情報の検出を考える。仮に実際のサンプリング時刻がk’とずれていたとし、実再生信号をサンプリングした値が(B)だったとする。図中破線で示す曲線はセル中央値の理想値(0)、(A)、(6)をプロットした各点を結んだものであり、これに実再生信号のセル中央値(B)がプロットされている。
【0119】
この時のセル中央値が(0,1,6)の既知状態であれば、セル中央値の理想状態は図23に示す(0)、(A)、(6)の関係になり、M値で記録されたセルのセル中央値の理想値も既知状態となる。
【0120】
そのため、(1)実再生信号がセル中央値理想値(A)を通過するタイミングで抽出されるセル中央時刻k、(2)実再生信号のセル中央値(B)のサンプリング時刻k’の2点を考慮する。そうすることによりサンプリングクロックの位相誤差状態Δt’=k−k’を算出することが可能となる。(2)の実再生信号のセル中央値(B)のサンプリング時刻k’とは、実際の再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングをいう。
【0121】
また(1)のセル中央時刻kは実再生信号がセル中央値理想値(A)を通過するタイミングで抽出する。これは、実再生信号がセル中央値理想値(A)をクロスする点(これを(A)クロス点とする)を検出することによって求められる。その際、サンプリングクロックより周波数の高いクロックで実再生信号を細かくサンプリングし、データ検出することを考える。
【0122】
例えば、データ検出点での実再生信号が、2つの連続するサンプリング点で“>(A)”の値から“<(A)”の値に変化する、あるいは“<(A)”の値から“>(A)”の値に変化するタイミングの(A)クロス点を検出する手段がある。その他には、実再生信号が3つの連続するサンプリング点で、“>(A)”の値から“(A)”を経由して“<(A)”の値に変化する際の(A)クロス点を検出する手段がある。あるいは、“<(A)”の値から“(A)”を経由して“>(A)”の値に変化する際の(A)クロス点を検出する手段がある。このように(A)クロス点を検出してタイミングを抽出し、セル中央時刻kを求める。
【0123】
セル中央時刻kと、(2)のサンプリング時刻k’との差からサンプリング時刻のズレ時間、即ち、位相誤差信号を検出する。
【0124】
セル中央値理想値(A)はシミュレーション等の理想状態に加え、後述するように記録データ列の先頭に設ける既知記録列の学習領域から得られる再生レベルを適用することもできる。むしろ、後者の方が記録状態等の種々の影響を反映した状態となるため好ましいとも言える。
【0125】
以上のように、学習時に再生されるセル中央値のレベル情報に基づき、セル中央値の理想レベル(A)を通過するタイミングで抽出するセル中央時刻kを、実再生信号のセル中央値(B)のサンプリング時刻k’と比較する。そうすることで、多値情報再生において再生信号から直接位相誤差信号を抽出することが可能となる。
【0126】
ここで、精度の高い位相誤差信号を検出するには、再生中のセル中央値のレベル判定をいかに精度良く行うかが重要となる。判定値が仮に間違っている場合、当然学習データから算出されるセル中央値近傍理想再生信号勾配とセル中央値理想値の精度が悪くなるためである。
【0127】
本発明は、多値度を落としたM値ピットを設けているので、レベル判定を従来より精度良く行うことが可能である。例えば、光スポットの大きさが約0.405μm、光ディスクのトラックピッチ0.32μm、セルの幅を0.2μmとしてすべて8値で記録された多値情報を再生した場合、レベル判定値のエラーは正解値に対してすべて±1レベルであった。この結果から、仮に4値で記録された多値情報を再生すれば、判定値がエラーとなることはほとんどないことになる。従って、本発明の如く多値度を落としたM値ピットを設けることで精度の高い位相誤差信号を検出することが可能となる。
【0128】
なお、3つの連続するセルの、少なくとも2つのセル中央値のレベル差が無い場合、或いはレベル差が小さい場合は、セル中央値において再生信号の勾配は極めて小さくなる。この勾配情報を基に位相誤差を算出すると位相誤差情報の精度が悪くなる。従って、再生中レベル判定された3つの連続するセルの、少なくとも2つのセル中央値が所定差に至らない場合は、位相誤差情報を検出しない動作をすることで、PLL制御精度をより向上させることができる。
【0129】
例えば、連続するセル中央値(k−1,k,k+1)における各レベルV(k−1)、V(k)、V(k+1)が|V(k−1)−V(k))|≦2、|V(k)−V(k+1)|≦2なる関係の場合には、位相誤差検出情報の停止する等の処理を行う。
【0130】
また、V(k−1)<V(k)>V(k+1)或いはV(k−1>V(k)<V(k+1)なる関係の場合には位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。ここで、V(k)はM値のレベルをN値に換算したものとする。
【0131】
本発明は、以上のようにトラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、M値で記録されたセルの再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングを検出する工程を含む。また、再生信号が予め導出しているセル中央値の理想値に来た時のタイミングを検出する工程を含む。更に、検出された再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングと、再生信号がセル中央値の理想値に来た時のタイミングとの差に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程を含む。
【0132】
セル中央値の理想値は記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出する。或いは、セル中央値の理想値はシミュレーションにより導出する。位相誤差取得工程において、M値で記録されたセル及びその両側のN値で記録されたセルのうち、M値セルのセル中央値に対して、少なくとも一方のN値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止する。
【0133】
次に、本発明に係る位相誤差検出方法を使用する実際の装置動作に関して説明する。まず、図17は記録情報列を示す。
(A)は記録データ先頭に位置するPLL引き込み用ピット列であり、これは多値記録の如何に拘わらず採用する場合が多い。
(B)は上述した既知ピット列の理想再生信号を得るための、学習のためのピット列である。
(C)は記録すべきユーザ情報であり、エラー訂正等の処理を施して生成されている。このように本発明によれば再生クロックのPLL制御のための特別な挿入ピット列の必要性がない。
【0134】
次に、記録動作に関して図17及び図18のフローチャートを用いて説明する。情報を記録する場合、図1の光学的情報記録再生装置1は情報の記録の命令を受けると記録動作を開始する。
【0135】
まず、記録開始に当たりPLLの引き込みに使用するピット列(A)を生成する(ステップ1)。ここで、PLLの引き込みに使用するピット列(A)に関しては、従来の2値化により周波数及び位相誤差情報が得られ、PLLが掛けられるピット列が望ましい。
【0136】
例えば、多値の記録情報列とは関係なく、セル全体がピット或いはピットが存在しないセルの繰り返し、更にはより高いSN比の再生信号を得るために、2つのセルを全てピット、非ピットの連続といったものを考えても良い。更に、これら組み合わせからなるものを考えてもよい。
【0137】
次に、多値情報列の学習ピット列(B)を生成し、図17に示すようにPLLの引き込みピット列に続き、記録データを付加する(ステップ2)。この学習ピット列のパターンは前後のセル中央値の組み合わせから考え、少なくとも第1、第4の手段では(N×M×N)、第2の手段では(M×M)、第3の手段では(M×M×M)パターン以上を組み合わせた学習ピット列が必要である。
【0138】
次に、送られてきた記録情報を、例えば、図2に示すように記録情報を3ビット毎に8つのレベルに変換し(ここで、変調、エラー訂正符号を付加等の処理を行う)、図17に示す記録情報列(C)を生成し、記録情報列として付加する(ステップ3)。
【0139】
次に、以上のように生成された記録情報列を受け、各多値レベルに対応した記録パルス列を用いて、光学的情報媒体である光ディスク4上の目標トラックに光ヘッド5を用いて多値情報を記録する(ステップ4)。記録情報が続く間、上記ステップ1〜4を繰り返し行い、全ての記録情報の記録が終了すると、記録の操作を終了する(ステップ5)。
【0140】
次に、図19を用いてこのように記録された多値情報を再生する手順を説明する。ここで、近年、光ディスク内でのアドレス情報等を情報トラックの案内溝をウォブルさせることにより形成し、これを再生することでアドレス情報を得る方法が主流となっており、記録情報等に直接付加する必要がない手法が多く採用されている。図19では、アドレス情報等がウォブルにより形成された光ディスクを再生する場合を例として説明する。
【0141】
光学的情報記録再生装置1は情報の再生命令を受けると、再生動作を開始する。その際、上述のように情報トラックに形成されたウォブル情報からアドレス情報を再生し、光ディスク4の目標トラックをサーチする。まず、光ヘッド5を用いて図17の情報記録単位の先頭のPLL引き込み領域(A)の再生を開始し、セル長に同期した再生クロックを生成する(ステップ6)。
【0142】
次に、記録セルに同期した再生クロックを用い、学習ピット列を再生する。その場合、上述のように第1の手段、第2の手段、第3の手段或いは第4の手段に応じて記録パターンが記録されており、対応する手段に応じて再生信号のセル中央値或いはセル間値をサンプリングし、メモリに格納する(ステップ7)。
【0143】
例えば、第1の手段を用いる場合には、上述のように学習ピットとして(N×M×N)の記録パターンが記録されているので、各々のセル中央値をサンプリングする。そして、例えば、上述のように各セル中央値を用いて曲線近似を行い、真中のM値セルの中央における接線勾配により再生信号勾配を算出する。セル中央値の理想値は学習ピット列のうち中央のM値セルのセル中央値である。これら再生信号勾配及びセル中央値の理想値をメモリに格納する(ステップ7)。再生信号勾配の算出方法としては上述のようにこれ以外の方法を用いても良いことはもちろんである。
【0144】
また、第4の手段に関しては第1の手段の場合と同様にM値セルのセル中央値の理想値を求めてメモリに格納しておく。但し、第4の手段の場合には再生信号勾配は必要ではない。
【0145】
また、第2の手段或いは第3の手段を用いる場合には、同様に対応する記録パターンを再生してセル中央値或いはセル間値を検出する。そして、同様に再生信号勾配を上述のような方法を用いて算出し、得られた再生信号勾配とセル中央値の理想値或いはセル間値の理想値をメモリに格納する。
【0146】
なお、この時の再生クロックはPLL引き込みピット列により、再生信号に同期した状態を維持するために、特に再生クロック位相制御を行う必要はなく、PLL引き込みピット列再生後、位相誤差情報を“ゼロ”に設定する。そしてPLL状態を保持することで十分な位相精度が得られる。
【0147】
上記学習結果を基づき再生信号から記録情報の再生を開始する(ステップ8)。記録情報の再生方法は本発明と直接関係しないため個々の説明は割愛する。この時、再生情報を正確に得るために、再生クロックを再生信号に対して常に同期した状態に維持、制御することが重要となる。そのためには、上述したように再生クロックと再生信号との位相誤差情報を得ることが必要になる。
【0148】
次に、ステップ7で学習により得られた再生信号勾配やセル中央値の理想値或いはセル間値の理想値をメモリから読み出す(ステップ9)。もちろん、第1の手段〜第4の手段に対応して該当する再生信号勾配やセル中央値の理想値或いはセル間値の理想値を読み出す。
【0149】
次いで、メモリから読み出した再生信号勾配、セル中央値の理想値或いはセル間値の理想値、及び再生中に得られた実再生信号でのセル中央値やセル間値を用いて再生中の再生信号とクロックとの位相誤差情報を算出する(ステップ10)。位相誤差の算出方法は第1の手段〜第4の手段において先に詳しく説明したので、詳しい説明は省略する。
【0150】
なお、この時、上述のように第1〜第4の手段において位相誤差抽出を一時的に中止する処理も併せて行う。
【0151】
この位相誤差情報を基にPLL制御を行い、再生クロックを生成する(ステップ11)。PLL回路は特別な仕様を必要とするものではなく、再生信号周波数帯に対応して特性を最適化すれば良く、詳しい説明は割愛する。情報再生中は再生信号から直接位相誤差を抽出し、同期クロックを生成し続ける。
【0152】
更に、上記動作を図17の情報記録列(A)、(B)、(C)の一連の単位毎に繰り返し行い、情報の再生を行う。そして、再生命令の終了を受けると、再生動作を終了する(ステップ12)。これらの動作により、位相誤差情報ピット列を設けることなく情報の再生が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明に係る光学的情報記録再生装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る8値で記録された多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向の幅とそれに対応する3ビットの組み合わせを説明する図である。
【図3】本発明に係る多値度を落としたピットである4値で記録された多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向の幅を説明する図である。
【図4】本発明に係るトラックに対してランダムな情報ピットを記録した時の模式図と光スポットの関係を示す図である。
【図5】1ブロックの中にM値ピットを1つ設ける第1の手段を説明するための模式図である。
【図6】1ブロックの中に連続した2つのM値ピットを設ける第2の手段を説明するための模式図である。
【図7】1ブロックの中に連続した3つのM値ピットを設ける第3の手段を説明するための模式図である。
【図8】本発明の再生原理を説明するための光学シミュレーションのパラメータを説明する図である。
【図9】本発明の再生原理を説明するための光学シミュレーションで与えた情報ピットの形状を説明する図である。
【図10】本発明に係る光学的情報記録再生装置の光学系パラメータによるセル中央値の振幅分布を示す図である。
【図11】本発明の再生原理を説明するための光学シミュレーションの計算結果で、連続する3つのセルに書かれた情報ピットの組み合わせに対する再生信号を説明するための図である。
【図12】本発明に係る第1の手段の位相誤差検出方法を説明する再生信号変化図である。
【図13】本発明に係る第3の手段の位相誤差検出方法を説明する再生信号変化図である。
【図14】セル間値をサンプリングしている際の前後のセルと光スポットの位置関係を説明する図である。
【図15】本発明に係る光学的情報記録再生装置の光学系パラメータによるセル間値の振幅分布と、左右のセルのレベルの組み合わせを示す図である。
【図16】本発明に係る第2の手段の位相誤差検出方法を説明する再生信号変化図である。
【図17】本発明に係る記録情報列を説明する図である。
【図18】本発明に係る光学的情報記録再生装置の情報記録を説明するフローチャートである。
【図19】本発明に係る光学的情報記録再生装置の情報再生を説明するフローチャートである。
【図20】従来の多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向の幅を説明する図である。
【図21】従来のセル中央値の振幅分布を説明する図である。
【図22】従来の記録情報列を説明する図である。
【図23】本発明に係る第4の手段の位相誤差検出方法を説明する再生信号変化図である。
【符号の説明】
【0154】
1 光学的情報記録再生装置
2 制御回路
3 スピンドルモータ
4 光ディスク
5 光ヘッド
6 光ヘッド制御回路
7 情報記録回路
8 情報再生回路
9 スピンドルモータコントローラ
10 インターフェースコントローラ
11 トラック
12 情報ピット
13 光スポット
【技術分野】
【0001】
本発明は、3値以上の値を用いて多値情報を再生する光学的情報再生方法に関し、特に、記録情報から再生時の再生クロック生成するPLLのための位相誤差情報の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光メモリ産業は拡大しつつあり、再生専用のCDやDVDから、金属薄膜や色素系記録材料を用いた追記型、更には、光磁気材料や相変化材料を用いた書換え型まで開発され、その応用も民生からコンピュータの外部メモリへと拡大している。
【0003】
そして、更に記録容量の高密度化の研究開発が進められており、情報の記録再生に関わる光スポットを微小化する技術として、光源の波長は赤色(650nm)から、青紫色(405nm)になりつつある。また、対物レンズの開口数も0.6や0.65から0.85へと高められようとしている。一方では、同じ光スポットの大きさを用いて、より効率のよい多値記録再生の技術も提案されている。
【0004】
例えば、多値記録再生技術の方式として、特開平5−128530号公報で提案された方法がある(特許文献1)。同公報には光学的情報記録媒体の情報トラック上に情報ピットのトラック方向の長さと、その情報ピットの再生用光スポットに対するトラック方向のシフト量の組み合わせによって多値情報を記録する記録方法が開示されている。また、その多値記録した情報ピットを再生する際、予め学習しておいた検出信号と光スポットから得られた検出信号との相関より多値情報を再生する再生方法が開示されている。
【0005】
また、光ディスク分野の研究における国際学会であるISOM2003(Write−once Disks for Multi-level Optical Recording:予稿集Fr−Po−04)において、以下の発表がなされている(非特許文献1)。即ち、青紫色の光源(405nm)とNA0.65の光学系を用い、トラックピッチが0.46μmの光ディスクを用いる。その光ディスクに対して、仮想的に設けた一つの情報ピットを記録する領域(以下、セルと記述する)のトラック方向の幅を0.26μmとして、8レベルの多値記録再生を行った発表がなされている。
【0006】
8レベルの情報ピットを選択するには、例えば、図20に示すようにセルのトラック方向(図中A方向)の長さを16等分し、レベル0を何も情報ピットを記録しないとする。また、レベル1を2/16セル分の幅、レベル2を4/16セル分の幅、レベル3を6/16セル分の幅、レベル4を8/16セル分の幅、レベル5を10/16セル分の幅、レベル6を12/16セル分の幅、レベル7を14/16セル分の幅とする。
【0007】
このように選択した情報ピットをランダムに記録し、その反射光量を光検出器で受光する。そして、得られた多値情報ピットからの再生信号を、光スポットの中央が、セルのトラック方向の中央に来た時のタイミングでサンプリングすると、各レベルに対する再生信号の振幅は図21のような分布となる。
【0008】
この時、情報をサンプリングするためのクロックは記録情報中に所定間隔で挿入された所定ピット列の再生により位相誤差情報を検出し、フェーズロックドループ回路(PLL回路)において生成する構成が採られている。
【0009】
図22は位相誤差検出用のピット列挿入例を示す。図中、(A)〜(I)は記録情報列を示しており、(A)は記録データ先頭に位置するPLL引き込み用ピット列である。これは多値記録の如何に拘わらず採用する場合が多い。(B)は既知ピット列の再生信号を得るための学習ピット列である。
【0010】
(C)、(E)、(G)、(I)は符号化されたユーザ情報である。(D)、(F)、(H)は再生クロックを生成するPLLのための位相誤差検出用ピット列である。例えば、レベルスライスによる2値化処理を行ってエッジを抽出し、このエッジと再生クロックとの位相誤差情報を位相比較器により検出し、再生クロックのPLL処理に利用する。多値記録においては、記録ピットサイズの如何に拘わらずエッジ周期は一定になるため、SN比の良い位相情報を得るためには、位相誤差検出用のピット列を最小レベルと最大レベルが交互に現れるようにするのが望ましい。
【0011】
図21の説明に戻る。情報ピットが何も書かれていないレベル0が続く時の再生信号レベルを『1』、レベル7の情報ピットが連続して記録されている時の再生信号レベルを『0』として規格化している。
【0012】
各レベルに対応する再生信号の値が幅を持つのは、注目している情報ピットの前後に書かれている情報ピットからの影響(符号間干渉)を受けるからである。図21に示すように隣のレベルと再生信号の振幅分布が重なっていると、固定した閾値では分離検出できない。
【0013】
ISOM2003(Write−once Disks for Multi-level Optical Recording:予稿集Fr−Po−04)には、これを解決するための方法が開示されている。即ち、注目している情報ピットの値と、その前後の情報ピットの値とが予め分かっているピット列からの再生信号を読み取り記憶しておく(学習)。そして、実際の情報ピットからの再生信号と記録しておいた値とを比べて(相関をみる)、分離検出する方式が述べられている。この方式では、記録密度はおよそ16Gbit/inch2である。
【特許文献1】特開平5−128530号公報
【非特許文献1】ISOM2003(Write−once Disks for Multi-level Optical Recording:予稿集Fr−Po−04)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記多値レベルの情報記録再生方法では、再生信号レベルを検出するための再生クロックを生成する場合、位相誤差信号を十分な精度で得ようとすると、以下の課題がある。即ち、所定間隔、所定の長さで、且つ、固定スライスによる2値化により位相情報が検出可能なように十分大きなピット列を挿入しておく必要がある。
【0015】
この位相誤差検出のためのピット列を挿入すると、情報記録媒体の記録フォーマットの情報効率の低下を招き、多値記録における線密度の向上を妨げるという欠点があった。
【0016】
本発明の目的は、位相誤差検出用の特別なピット列を挿入する必要がなく、再生信号から再生クロックを生成するための位相誤差情報を抽出することが可能な光学的情報再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、光学的情報媒体のトラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、M値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル中央値を検出する。そして、検出されたセル中央値、予め導出しているセル中央値の理想値、及びセル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【0018】
また、本発明は、光学的情報媒体のトラック上にN値ピット(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する2つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、連続する2つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル間値を検出する。そして、検出されたセル間値、予め導出しているセル間値の理想値、及びセル間値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【0019】
更に、本発明は、光学的情報媒体のトラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する3つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、連続する3つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして連続する3つM値のセルのうち中央のセルのセル中央値を検出する。そして、検出されたセル中央値、予め導出しているセル中央値の理想値、及びセル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【0020】
また、本発明は、トラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、M値で記録されたセルの再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングを検出する。また、再生信号が予め導出しているセル中央値の理想値に来た時のタイミングを検出する。そして、検出された再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングと、再生信号がセル中央値の理想値に来た時のタイミングとの差に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、記録情報の再生信号から直接再生クロック生成のための位相誤差情報を検出することが可能となる。そのため、記録媒体上にPLLのための特別な領域が不要となり、記録媒体の情報の記録効率(フォーマット効率)を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る光学的情報記録再生装置の一実施形態を示すブロック図である。光学的情報記録再生装置1は、制御回路2、スピンドルモータ3、光ディスク4、光ヘッド5、光ヘッド制御回路6、情報記録回路7、情報再生回路8、スピンドルモータコントローラ9及びインターフェースコントローラ10を有する。
【0023】
制御回路2は外部のコンピュータ等の情報処理装置との情報の送受信を制御し、光ディスク4に対する情報の記録や再生を情報記録回路7と情報再生回路8を用いて制御し、また、その他の稼働部を制御する。情報記録回路7は後述するように多値情報の記録を行い、情報再生回路8は多値情報の再生を行う。
【0024】
スピンドルモータ3は、スピンドルモータコントローラ9により制御され、光ディスク4を回転駆動する。光ディスク4は、不図示の機構により光学的情報記録再生装置1に対して挿入または排出可能な光学的情報記録媒体である。
【0025】
光ヘッド5は光ディスク4に光学的に情報を記録或いは再生する。光ヘッド5としては、例えば、光源の波長を405nm、対物レンズの開口数を0.85とすると、光スポットの大きさは、およそ0.405μmとなる。光ディスク4のトラックピッチは0.32μmとする。光ヘッド制御回路6は光ヘッド5による光スポットの位置を制御するものであり、オートトラッキング制御、シーク動作の制御、オートフォーカシング制御を行う。
【0026】
本発明に係る情報再生における位相誤差信号の生成は、情報再生回路8が担うことになる。情報再生回路8は後述するセル中央値やセル間値の検出或いは再生信号勾配の算出や位相誤差の算出等を行う。
【0027】
まず、本発明に係る多値情報記録再生方法及び装置に関して説明する。図2は本発明の光学的情報記録再生装置に用いる多値度を8値とした多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向(図中A方向)の幅を説明する図である。説明の便宜上、多値情報ピットのトラック方向と垂直な方向の幅は実際よりも小さく示している。以下、同図で示す多値情報ピットをN値ピットと表現する。
【0028】
本発明では、N値で記録されたセルによる多値情報を基本として、これに多値度を落としたM値で記録したセルを一部に挿入する構成をとる。つまり、NとMの関係は、N>Mの関係である。
【0029】
図2において、2本の太い実線に挟まれた領域がセルを示す。本実施形態では光スポットの大きさは約0.405μm、光ディスクのトラックピッチ0.32μm、セルの幅を0.2μmとする。
【0030】
この場合、最短の情報ピット(レベル1)の幅は25nmとなり、以下順にレベル2が50nm、レベル3が75nm、レベル4が100nm、レベル5が125nm、レベル6が150nm、レベル7が175nmとなっている。レベル0は何も記録しない状態とする。
【0031】
N値ピットの多値情報は、例えば、8値記録とする。つまり、一つのセルに3ビットを記録することができる。例えば、3ビットの情報に対して図2に示すように(0,0,0)は0レベル、(0,0,1)は1レベル、(0,1,0)は2レベル、(0,1,1)は3レベル、(1,0,0)は4レベルとする。また、(1,0,1)は5レベル、(1,1,0)は6レベル、(1,1,1)は7レベルに対応するものとする。もちろん、他の対応方式でもよい。
【0032】
図3は本発明の光学的情報記録再生装置に用いる多値度を落としたピットであるM=4とした4値で記録された多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向(図中A方向)の幅を説明する図である。以下、同図で示す多値情報ピットをM値ピットと表現する。
【0033】
この場合、最短の情報ピット(レベル0)の幅は25nmとなり、以下順にレベル1が75nm、レベル2が125nm、レベル3が175nmとなっている。もちろん、レベル0を何も記録しない状態として、レベル毎に50nm間隔で増やす方式でもよい。
【0034】
M値ピットの多値情報は4値記録であるので、一つのセルに2ビットを記録することができる。例えば、2ビットの情報に対して図3に示すように(0,0)は0レベル、(0,1)は1レベル、(1,0)は2レベル、(1,1)は3レベルに対応するものとする。もちろん、他の対応方式でもよい。
【0035】
図4は光ディスク4上のトラック11に対して従来のN値ピットのみで構成されたランダムな情報ピット12を記録した時の模式図と、光スポット13の関係を示す。例えば、記録消去可能な記録材料として相変化材を利用する場合、光ディスク4に光スポット13を照射し、記録パルス、消去パルス、冷却パルスのそれぞれの光量とタイミングを調整する。それにより、情報ピットの形状を変化させ、複数の再生レベルの情報ピットが形成される。
【0036】
図4では、便宜上、矩形の情報ピットとして示しており、トラック方向の長さを変化させた様子を示している。その際、各レベルが情報ピットの面積に対応していれば矩形の情報ピットでなくても、例えば、円形、楕円形、或いは矢尻型等のピットであっても本発明の本質は変わらない。
【0037】
なお、記録消去可能な記録材料としては相変化材料以外にも光磁気材料が利用できる。この場合、上述した光学的情報記録再生装置で光スポット以外に図示しない磁気ヘッドからの磁界との協調作業により、情報ピットの形状を変化させ、複数の再生レベルの情報ピットを形成する。
【0038】
更に、追記のみ可能な記録材料を適用することも可能であり、記録材料として有機色素や金属膜を利用でき、光ディスクに光スポットを照射し、記録光量とそれらのタイミングを調整する。それにより、情報ピットの形状を変化させ、複数の再生レベルの情報ピットが形成される。また、再生専用の記録媒体でも同様に情報ピットは位相ピットと呼ばれる凹凸形状として基板に形成でき、この位相ピットの面積或いは位相ピットの光学的な深さを変調することで多値レベルの記録が可能である。
【0039】
記憶容量を増やすためには、セルの大きさを小さくする必要があり、小さくすると図4に示すように光スポット13内に2〜3個のセルの情報ピットが含まれることになる。このような多値レベルの記録を前提に本発明の原理を相変化材を利用した場合を例として説明する。
【0040】
図4において、矢印A方向は同様にトラック方向を示し、11は情報ピットを記録する光ディスク4上のトラックを示す。破線で区切られた領域がトラック11上に仮想的に設けられたそれぞれのセルである。また、図2の方式に従って図4の上部に記載しているレベル数に対応する情報ピットが12の如く記録されている。13は光スポットである。
【0041】
本発明においては、図4に示すようにN値ピットのみで記録するのではなく、一部に多値度を落としたM値ピットを記録する。この模式図を、図5、図6、及び図7に示す。即ち、
第1及び第4の手段として、1ブロックの中にM値ピットを1つ設ける(図5)。
第2の手段として、1ブロックの中に連続した2つのM値ピットを設ける(図6)。
第3の手段として、1ブロックの中に連続した3つのM値ピットを設ける(図7)。
【0042】
いずれも、説明を簡略化するため1ブロックのN値ピットの数は3つとしているが、もちろんこれより多くても何ら問題はない。
【0043】
ここで、第1〜第4の手段で記録された多値情報の再生クロック生成のための位相誤差を検出し、位相誤差情報を生成するためサンプリングした再生信号を用いる。第1及び第3の手段はセルの中央でサンプリングした再生信号レベル(セル中央値)を、第2の手段は隣接するセルの境界でサンプリングした再生信号レベル(セル間値)をそれぞれ用いて生成する。第4の手段は再生信号が理想の所定値をクロスした場合の検出タイミングと実際の検出タイミングとから位相誤差を検出する。
【0044】
次に、本発明に係る位相誤差情報検出に用いるセル中央値及びセル間値を、再生信号の光学シミュレーションを行った結果に基づいて説明する。
【0045】
図8は光学シミュレーションに用いたパラメータを示す。トラックピッチは0.32μm、光スポットの大きさは0.405μm(波長405nm、対物レンズの開口数:NA0.85)とする。セルの大きさは0.2μm、与えた情報ピットは図2に示す通り8値記録とする。図9はその場合のそれぞれのレベルに対する情報ピットを示すものである。
【0046】
上記条件で連続する3つのセルに8種類のレベルを順次組み合わせて与え(全ての組み合わせは8×8×8=512通り)、光スポットを初めのセル中央から3つ目のセル中央まで移動させたときの再生信号(反射光量)を計算した。図10は2つ目のセルの中央で得られる再生信号レベル(セル中央値)の分布を示すものである。横軸は1つのセルのレベル、縦軸は再生信号レベルである。
【0047】
図11は光学シミュレーション結果を示すもので連続する3つのセルに書かれた情報ピットの組み合わせに対する再生信号レベルを示す。図11ではセルのレベルの組み合わせ(0,1,6)から(7,1,6)の8通りを例に取って示す(3つのセル以外はすべて0レベルとする)。
【0048】
図中3本の実線の位置はそれぞれのセル中央に光スポットがある場合の再生信号(セル中央値)を示し、2本の破線の位置はセルとそれに続くセルの境界に光スポットがある場合の再生信号(セル間値)を示す。
【0049】
(第1の手段)
まず、本発明のセル中央値を用いる第1の手段の位相誤差情報の検出方法を説明する。図12を用いて第1の手段の位相誤差情報検出方法を説明する。図中セル中央値の状態を(0,1,6)の組み合わせとした一例を示す。
【0050】
(A)はM値ピットの1レベル(N値ピットの3レベル、75nmに相当)で記録されたセルの理想的な再生信号をセル中央時刻kでサンプリングした値を示す。ここで、再生クロックを得るためのPLL制御を考え、セル中央値における位相誤差情報の検出を考える。
【0051】
仮に実際のサンプリング時刻がk’のようにずれていたとし、実再生信号をサンプリングした値が(B)だったとする。図中破線で示す曲線はセル中央値の理想値(0)、(A)、(6)をプロットした各点を結んだものであり、これに実再生信号のセル中央値(B)がプロットされている。
【0052】
この時のセル中央値が(0,1,6)の既知状態であれば、セル中央値の理想状態は図12に示すように(0)、(A)、(6)の関係になり、M値で記録されたセルのセル中央値の理想値及びセル中央値近傍の再生信号勾配も既知状態となる。
【0053】
そのため、(1)セル中央値近傍理想再生信号勾配(セル中央値の理想値近傍における再生信号勾配)(Δv/Δt)、(2)セル中央値理想値(A)、更に(3)実再生信号でのセル中央値(B)の3点を考慮する。そうすることによりサンプリングクロックの位相誤差状態を算出することが可能となる。サンプリングクロックの位相誤差Δt’は、
Δt’=[(A)−(B)]/(Δv/Δt)
で得られる。
【0054】
ここで、(1)、(2)の理想状態はシミュレーション等により得られ、更に後述するように記録データ列の先頭に設ける既知記録列の学習領域から得られる再生レベルから得ることもできる。むしろ、後者の方が記録状態等の種々の影響を反映した状態となるため好ましい。
【0055】
次に、学習データを利用する場合のセル中央値近傍の再生信号の傾きの算出、位相誤差の算出に関して説明する。セル中央値近傍における再生信号勾配の算出に関しては学習データ上の連続する3つのセル中央値の値を利用して曲線近似を行い、セル中央値(A)における接線勾配によりセル中央値近傍の勾配(Δv/Δt)を算出する手法がある。或いは、曲線近似曲線そのものを勾配曲線として適用する方法が最も簡単な例として挙げられる。
【0056】
上述の学習データ上の連続する3つのセル中央値とは、例えば、後述するように学習ピット列として記録するN値、M値、N値のセルであり、各々のセル中央値を検出する。これら3つのセル中央値を用いて曲線近似を行い、真中のM値セルの中央における接線勾配により再生信号勾配を算出する。セル中央値の理想値は学習ピット列のうち中央のM値セルのセル中央値である。
【0057】
実際の装置動作時には、再生中にM値セルのセル中央値のレベル判定を行う(図12のB)。そして、学習時に上述のような方法にて導出された再生信号勾配(Δv/Δt)、及びセル中央値の理想値(A)と再生中のセル中央値(B)との差からサンプリング時刻のずれ時間、即ち、位相誤差信号を検出する。
【0058】
更に、傾き算出に使用するセル中央値を、位相誤差を算出するセル中央値を挟む両側5点に拡張すれば、より精度良くセル中央時刻kにおける傾きを算出することも可能となる。
【0059】
以上のように学習時において再生されるセル中央値のレベル情報に基づいてセル中央近傍における再生信号勾配(Δv/Δt)を算出する。そして、再生時において再生信号勾配(Δv/Δt)、及び学習時に得られたセル中央値の理想レベル(A)と実再生信号でのセル中央値(B)から、多値情報再生において再生信号から直接位相誤差信号を抽出する。
【0060】
ここで、精度の高い位相誤差信号を検出するには、再生中のセル中央値のレベル判定をいかに精度良く行うかが重要となる。判定値が仮に間違っている場合、当然学習データから算出されるセル中央値近傍理想再生信号勾配とセル中央値理想値の精度が悪くなるためである。
【0061】
本発明は、多値度を落としたM値ピットを設けているので、レベル判定を従来より精度良く行うことが可能である。例えば、光スポットの大きさが約0.405μm、光ディスクのトラックピッチ0.32μm、セルの幅を0.2μmとして、すべて8値で記録された多値情報を再生した場合、レベル判定値のエラーは正解値に対してすべて±1レベルであった。
【0062】
この結果から、仮に4値で記録された多値情報を再生すれば、判定値がエラーとなることはほとんどないことになる。従って、本発明の如く多値度を落としたM値ピットを設けることで精度の高い位相誤差信号を検出することが可能となる。
【0063】
ここで、再生時において図12に示すN値、M値、N値の3つの連続するセルのセル中央値を検出する。その場合、中央のM値セルのセル中央値に対して、前後のN値セルのセル中央値のレベル差が無い場合、或いはレベル差が小さい場合には、セル中央値において再生信号の勾配は極めて小さくなる。この勾配情報を基に位相誤差を算出すると位相誤差情報の精度が悪くなる。
【0064】
従って、再生時において中央のM値セルのセル中央値に対して前後のセルのセル中央値のうち、少なくとも一方のセル中央値が所定差に至らない場合には、位相誤差情報を検出しない動作をするのが良い。そうすることで、PLL制御精度をより向上させることができる。
【0065】
例えば、連続するセル中央値(k−1,k,k+1)における各レベルV(k−1)、V(k)、V(k+1)が|V(k−1)−V(k)|≦2、|V(k)−V(k+1)|≦2なる関係の場合には、位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。
【0066】
また、V(k−1)<V(k)>V(k+1)、或いはV(k−1)>V(k)<V(k+1)なる関係の場合には位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。ここで、V(k)はM値のレベルをN値に換算したものとする。
【0067】
本発明は、以上のように光学的情報媒体のトラック上で仮想的に一定間隔のセルを設け、光スポットを用いて、セルでトラック方向の情報ピットの長さ又は情報ピットの面積を変えて多値情報を記録する。そして情報ピットから多段階の再生信号のレベルを検出することにより多値情報を再生するための記録再生領域を有する光学的情報媒体に対して多値情報を再生する光学的情報再生方法である。
【0068】
本発明は、トラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、M値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル中央値を検出する工程を含む。また、検出されたセル中央値、予め導出しているセル中央値の理想値、及びセル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程を含む。
【0069】
セル中央値の理想値及び勾配は記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出する。或いは、セル中央値の理想値及び勾配はシミュレーションにより導出する。
【0070】
位相誤差取得工程は、セル中央値の理想値を挟む2つ以上のセル中央値によって算出された勾配と、セル中央値の理想値と検出されたセル中央値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。位相誤差取得工程において、M値で記録されたセル及びその両側のN値で記録されたセルのうち、M値セルのセル中央値に対して、少なくとも一方のN値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止する。
【0071】
(第2の手段)
次に、本発明のセル間値の再生信号レベルを用いる第2の手段の位相誤差情報を生成する方法を説明する。まず、図11に戻り、セル間値の特徴を詳細に説明する。
【0072】
図11中、隣り合うセルの境界での再生信号(セル間値)に注目してみると、右側のセルと真中のセルとの境界のセル間値がほぼ同じ値を取ることが分かる。つまり、左右のレベルの組み合わせが同じであれば(この場合は『1』と『6』)、その外側(この場合は左側のセル)のレベルが何であっても、セル間値に大きな影響を与えないことが分かり、符号間干渉の影響が軽微であることが分かる。
【0073】
図14は左右のセルの境界に光スポットが来た時の位置関係を示すものである。光スポットの大きさ0.405μmに対して、2つ分のセルの幅が0.4μmであり、光スポットのほとんどが左右のセル上にある。つまり、その外側からの影響がほとんど無いことが直感的にも分かる。
【0074】
図15の左図は左右のセルの組み合わせ(全ての組み合わせは8×8=64通り)に対して、セル間値の再生信号の振幅分布を示す(ピット部と非ピット部の反射率で規格化している)。ここで、左右のセルレベルの合計を横軸にとっている。つまり、(0,0)の0値から、(7,7)の14値まで15値に分類できる。
【0075】
波形等化等の信号処理を加えなくても、0から14の15値に分離していることが分かる。そして、それぞれの15値に対応する左右のセルレベルの組み合わせを、図15の右図に示す。
【0076】
次に、本発明の第2の手段の原理となる現象に関して上記再生信号の特徴を基に説明する。図11において、セル中央値−セル間値−セル中央値の信号レベル変化に着目すると、セル間値に信号レベルの良好な分離に加えて、セル間値近傍では信号変化の勾配がほぼ一定となっていることが併せて理解できる。
【0077】
このことから、セル間値に前後するセル中央値の多値のレベル値が確定すれば、その理想状態におけるセル間値が推測でき、同時にセル間値近傍での再生信号の勾配を推測することが可能となる。
【0078】
本発明の第2の手段ではこの現象を利用することにより位相誤差情報を再生信号そのものから得ること特徴とする。第2の手段では、セル中央値(情報再生に使用)と、位相誤差の検出に用いるセル間値の両方をサンプリングすることが必要となるため、再生クロックはセル周期の2倍以上の速度が必要となる。
【0079】
図16を用いて第2の手段の位相誤差検出方法について説明する。図中、セル中央値の状態を(0,3)の組み合わせとした一例を示す。(A)はM値ピットの0レベル(N値ピットの1レベル、25nmに相当)とM値ピットの3レベル(N値ピットの7レベル、175nmに相当)で記録されたセルの理想的な再生信号を、セル間の時刻kでサンプリングした値を示す。
【0080】
ここで、再生クロックを得るためのPLL制御を考え、セル間値における位相誤差情報の検出を考える。仮に実際のサンプリング時刻がk’のようにずれていたとし、実再生信号をサンプリングした値が(B)だったとする。図中破線で示す曲線はセル中央値、セル間値の理想値(0)、(3)、(A)をプロットした各点を結んだものであり、これに実再生信号のセル間値(B)がプロットされている。
【0081】
この時のセル中央値が(0,3)の既知状態であれば、セル中央値、セル間値の理想状態は図16に示すように(0)、(3)、(A)の関係になり、セル間値の理想値、及びセル間値近傍の再生信号勾配も既知状態となる。
【0082】
そのため、(1)セル間値近傍理想再生信号勾配(セル間値の理想値近傍における再生信号勾配)(Δv/Δt)、(2)セル間値理想値(A)、更に(3)実再生信号でのセル間値(B)の3点を考慮する。そうすることによりサンプリングクロックの位相誤差状態Δt’を算出することが可能となる。サンプリングクロックの位相誤差Δt’は、
Δt’=[(A)−(B)]/(Δv/Δt)
で得られる。
【0083】
ここで、(1)、(2)の理想状態はシミュレーション等により得られ、更に後述するように記録データ列の先頭に設ける既知記録列の学習領域から得られる再生レベルから得ることもできる。むしろ、後者の方が記録状態等の種々の影響を反映した状態となるため好ましい。
【0084】
次に、学習データを利用する場合のセル間値近傍の再生信号の傾きの算出、位相誤差の算出に関して説明する。セル間近傍における再生信号勾配の算出に関しては学習データ上の連続する2つのセル中央値の値を線形近似し、セル間近傍における勾配を算出する方法が最も簡単な例として挙げられる。
【0085】
上述の学習データ上の連続する2つのセル中央値とは、例えば、後述するように学習ピット列として記録された連続する2つのM値セルであり、各々のセル中央値を検出する。これら2つのセル中央値を線形近似し、2つのM値セルのセル間近傍における再生信号勾配を算出する。セル間値の理想値は学習ピットとして記録された2つのM値セル間の再生信号レベルである。
【0086】
実際の動作時には、再生中にセル間値のレベル判定を行う(図16のBに対応)。そして、学習時に上述のような方法にて導出された再生信号勾配(Δv/Δt)、及びセル間値の理想値(A)と再生中のセル間値(B)との差からサンプリング時刻のずれ時間、即ち、位相誤差信号を検出する。
【0087】
更に学習データにおいて連続する2つのM値セルのセル中央値に加え、その間に位置するセル間値の値を加えた3点の値を利用して曲線近似を行い、セル間値(A)における接線勾配によりセル間値近傍における勾配(Δv/Δt)を算出する手法がある。或いは、曲線近似曲線そのものを勾配曲線として適用することで、学習におけるセル間値(A)と再生中のセル間値(B)との差から、位相誤差信号をより高精度に算出することも可能である。
【0088】
更に、傾き算出に使用するセル中央値を、位相誤差を算出するセル間値を挟む両側4点に拡張すれば、より精度良くセル間時刻kにおける傾きを算出することも可能となる。
【0089】
以上のように学習時において再生されるセル中央値或いはセル間値のレベル情報に基づいてセル間近傍における再生信号勾配(Δv/Δt)を算出する。そして、再生時において再生信号勾配(Δv/Δt)、及び学習時に得られたセル間値の理想レベル(A)と実再生信号でのセル間値(B)の差から、多値情報再生において再生信号から直接位相誤差信号を抽出することが可能となる。
【0090】
ここで、再生時において図16に示す2つの連続するM値セルのセル中央値のレベル差が無い場合、或いはレベル差が小さい場合には、セル間において再生信号の勾配は極めて小さくなる。この勾配情報を基に位相誤差を算出すると位相誤差情報の精度が悪くなる。従って、再生中レベル判定された連続する2つのセル中央値が所定差に至らない場合には、位相誤差情報を検出しない動作をすることで、PLL制御精度をより向上させることができる。
【0091】
例えば、連続するセル中央値(k−1,k)における各レベルV(k−1)、V(k)が|V(k−1)−V(k)|≦3なる関係の場合には位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。V(k−1)、V(k)はM値のレベルをN値に換算したものとする。
【0092】
本発明は、以上のようにトラック上にN値ピット(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する2つのM値(M<N)で記録されているセルを設ける。そして連続する2つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル間値を検出する工程を含む。また、検出されたセル間値、予め導出しているセル間値の理想値、及びセル間値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程を含む。
【0093】
また、セル間値の理想値及び勾配は記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出する。或いは、セル間値の理想値及び勾配はシミュレーションにより導出する。
【0094】
位相誤差取得工程は、2つの連続するM値で記録されたセルのセル中央値から算出された勾配と、セル間値の理想値と検出されたセル間値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。位相誤差取得工程において、M値で記録された2つの連続するセルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止する。
【0095】
(第3の手段)
次に、本発明のセル中央値を用いる第3の手段の位相誤差検出方法を説明する。図13を用いて本発明に係る第3の手段の位相誤差検出方法を説明する。図中セル中央値の状態を(0,1,3)の組み合わせとした一例を示す。(A)はM値ピットの1レベル(N値ピットの3レベル、75nmに相当)で記録されたセルの理想的な再生信号を、セル中央時刻kでサンプリングした値を示す。
【0096】
ここで、再生クロックを得るためのPLL制御を考え、セル中央値における位相誤差情報の検出を考える。仮に実際のサンプリング時刻がk’のようにずれていたとし、実再生信号をサンプリングした値が(B)だったとする。図中破線で示す曲線はセル中央値の理想値(0)、(A)、(3)をプロットした各点を結んだものであり、これに実再生信号のセル中央値(B)がプロットされている。
【0097】
この時のセル中央値が(0,1,3)の既知状態であれば、セル中央値の理想状態は図13に示すように(0)、(A)、(3)の関係になり、M値で記録された真中のセルのセル中央値の理想値及びセル中央値近傍の再生信号勾配も既知状態となる。
【0098】
そのため、(1)セル中央値近傍理想再生信号勾配(セル中央値の理想値近傍における再生信号勾配)(Δv/Δt)、(2)セル中央値理想値(A)、更に(3)実再生信号でのセル中央値(B)の3点を考慮する。そうすることによりサンプリングクロックの位相誤差状態Δt’を算出することが可能となる。サンプリングクロックの位相誤差Δt’は、
Δt’=[(A)−(B)]/(Δv/Δt)
で得られる。
【0099】
ここで、(1)、(2)の理想状態はシミュレーション等により得られ、更に後述するように記録データ列の先頭に設ける既知記録列の学習領域から得られる再生レベルから得ることもできる。むしろ、後者の方が記録状態等の種々の影響を反映した状態となるため好ましい。
【0100】
次に、学習データを利用する場合のセル中央値近傍の再生信号の傾きの算出、位相誤差の算出に関して説明する。セル中央近傍における再生信号勾配の算出に関しては学習データ上の連続する3つのセルのセル中央値の値を利用して曲線近似を行い、セル中央値(A)における接線勾配によりセル間値近傍における勾配(Δv/Δt)を算出する手法がある。或いは、曲線近似曲線そのものを勾配曲線として適用する方法が最も簡単な例として挙げられる。
【0101】
上述の学習データ上の3つの連続するセルとは、例えば、後述するように学習ピットとして記録された3つの連続するM値セルであり、各々のセルのセル中央値を検出する。これら3つのセル中央値の曲線近似を行い、中央のM値セルのセル中央における接線勾配によりセル中央近傍における再生信号勾配を算出する。セル中央値の理想値は中央のM値セルの中央における再生信号レベルである。
【0102】
実際の再生動作時には、再生中にセル中央値のレベル判定を行う(図13のBに対応)。そして、学習時に上述のような方法にて導出された再生信号勾配(Δv/Δt)、及びセル中央値の理想値(A)と再生中のセル中央値(B)との差からサンプリング時刻のずれ時間、即ち、位相誤差信号を検出する。
【0103】
更に、傾き算出に使用するセル中央値を、位相誤差を算出するセル中央値を挟む両側5点に拡張すれば、より精度良くセル中央時刻kにおける傾きを算出することも可能となる。
【0104】
以上のように学習時において、再生するセル中央値のレベル情報に基づいてセル中央近傍における再生信号勾配(Δv/Δt)を算出する。そして、この再生信号勾配(Δv/Δt)、セル中央値の理想レベル(A)、及び実再生信号でのセル中央値(B)に基づいて多値情報再生において再生信号から直接位相誤差信号を抽出することが可能となる。
【0105】
ここで、精度の高い位相誤差信号を検出するには、再生中のセル中央値のレベル判定をいかに精度良く行うかが重要となる。判定値が仮に間違っている場合、当然学習データから算出されるセル中央値近傍理想再生信号勾配とセル中央値理想値の精度が悪くなるためである。
【0106】
第3の手段では、多値度を落としたM値ピットを3つ連続して設けているので、レベル判定を従来より精度良く行うことが可能である。例えば、光スポットの大きさを約0.405μm、光ディスクのトラックピッチを0.32μm、セルの幅を0.2μmとして、すべて8値で記録された多値情報を再生した場合、レベル判定値のエラーは正解値に対してすべて±1レベルであった。
【0107】
この結果から、仮に4値で記録された多値情報を再生すれば、判定値がエラーとなることはほとんどないことになる。従って、本発明の如く多値度を落としたM値ピットを設けることで精度の高い位相誤差信号を検出することが可能となる。
【0108】
ここで、再生時において図13に示す3つの連続するM値セルのセル中央値を検出する。その場合、中央のM値セルのセル中央値に対して、前後のM値セルのセル中央値のレベル差が無い場合、或いはレベル差が小さい場合には、セル中央において再生信号の勾配は極めて小さくなる。この勾配情報を基に位相誤差を算出すると位相誤差情報の精度が悪くなる。
【0109】
従って、再生時において中央のM値セルのセル中央値に対して前後のM値セルのセル中央値のうち、少なくとも一方のセル中央値が所定差に至らない場合には、位相誤差情報を検出しない動作をするのが良い。そうすることで、PLL制御精度をより向上させることができる。
【0110】
例えば、連続するセル中央値(k−1,k,k+1)における各レベルV(k−1)、V(k)、V(k+1)が|V(k−1)−V(k)|≦1、|V(k)−V(k+1)|≦1の場合には位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。
【0111】
また、V(k−1)<V(k)>V(k+1)或いはV(k−1)>V(k))<V(k+1)なる関係の場合には、位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。ここで、V(k−1)、V(k)、V(k+1)はM値のレベルをN値に換算したものとする。
【0112】
本発明の第3の手段は、多値度を落としたセルが3つとなるのでフォーマット効率としては低下するが、前後セルのレベルをより確度良く検出できるので、精度の高い位相誤差情報を得ることが可能となる。
【0113】
本発明は、以上のようにトラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する3つのM値(M<N)で記録されているセルを設ける。そして連続する3つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして連続する3つM値のセルのうち中央のセルのセル中央値を検出する工程を含む。また、検出されたセル中央値、予め導出しているセル中央値の理想値、及びセル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程を含む。
【0114】
セル中央値の理想値及び勾配は前記記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出する。或いは、セル中央値の理想値及び勾配はシミュレーションにより導出する。位相誤差取得工程は、3つの連続するM値で記録されたセルのセル中央値から算出された勾配と、セル間値の理想値と検出されたセル間値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得する。
【0115】
また、位相誤差取得工程において、M値で記録された3つの連続するセルのうち中央のM値セルのセル中央値に対して、少なくともその両側のM値セルのうち一方のM値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止する。
【0116】
(第4の手段)
最後に、本発明のセル中央値を用いる第4の手段の位相誤差情報を生成する方法を説明する。第4の手段は、第1〜第3の手段とは異なり、セル中央値又はセル間値近傍の理想再生信号勾配(Δv/Δt)を用いずに、サンプリングクロックの位相誤差状態Δt’を算出する。
【0117】
図23を用いて本発明の第4の手段の位相誤差について説明する。図中、セル中央値の状態を(0,1,6)の組み合わせとした一例を示す。(A)はM値ピットの1レベル(N値ピットの3レベル、75nmに相当)で記録されたセルの理想的な再生信号を、セル中央時刻kでサンプリングした値を示している。
【0118】
ここで、再生クロックを得るためのPLL制御を考え、セル中央値における位相誤差情報の検出を考える。仮に実際のサンプリング時刻がk’とずれていたとし、実再生信号をサンプリングした値が(B)だったとする。図中破線で示す曲線はセル中央値の理想値(0)、(A)、(6)をプロットした各点を結んだものであり、これに実再生信号のセル中央値(B)がプロットされている。
【0119】
この時のセル中央値が(0,1,6)の既知状態であれば、セル中央値の理想状態は図23に示す(0)、(A)、(6)の関係になり、M値で記録されたセルのセル中央値の理想値も既知状態となる。
【0120】
そのため、(1)実再生信号がセル中央値理想値(A)を通過するタイミングで抽出されるセル中央時刻k、(2)実再生信号のセル中央値(B)のサンプリング時刻k’の2点を考慮する。そうすることによりサンプリングクロックの位相誤差状態Δt’=k−k’を算出することが可能となる。(2)の実再生信号のセル中央値(B)のサンプリング時刻k’とは、実際の再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングをいう。
【0121】
また(1)のセル中央時刻kは実再生信号がセル中央値理想値(A)を通過するタイミングで抽出する。これは、実再生信号がセル中央値理想値(A)をクロスする点(これを(A)クロス点とする)を検出することによって求められる。その際、サンプリングクロックより周波数の高いクロックで実再生信号を細かくサンプリングし、データ検出することを考える。
【0122】
例えば、データ検出点での実再生信号が、2つの連続するサンプリング点で“>(A)”の値から“<(A)”の値に変化する、あるいは“<(A)”の値から“>(A)”の値に変化するタイミングの(A)クロス点を検出する手段がある。その他には、実再生信号が3つの連続するサンプリング点で、“>(A)”の値から“(A)”を経由して“<(A)”の値に変化する際の(A)クロス点を検出する手段がある。あるいは、“<(A)”の値から“(A)”を経由して“>(A)”の値に変化する際の(A)クロス点を検出する手段がある。このように(A)クロス点を検出してタイミングを抽出し、セル中央時刻kを求める。
【0123】
セル中央時刻kと、(2)のサンプリング時刻k’との差からサンプリング時刻のズレ時間、即ち、位相誤差信号を検出する。
【0124】
セル中央値理想値(A)はシミュレーション等の理想状態に加え、後述するように記録データ列の先頭に設ける既知記録列の学習領域から得られる再生レベルを適用することもできる。むしろ、後者の方が記録状態等の種々の影響を反映した状態となるため好ましいとも言える。
【0125】
以上のように、学習時に再生されるセル中央値のレベル情報に基づき、セル中央値の理想レベル(A)を通過するタイミングで抽出するセル中央時刻kを、実再生信号のセル中央値(B)のサンプリング時刻k’と比較する。そうすることで、多値情報再生において再生信号から直接位相誤差信号を抽出することが可能となる。
【0126】
ここで、精度の高い位相誤差信号を検出するには、再生中のセル中央値のレベル判定をいかに精度良く行うかが重要となる。判定値が仮に間違っている場合、当然学習データから算出されるセル中央値近傍理想再生信号勾配とセル中央値理想値の精度が悪くなるためである。
【0127】
本発明は、多値度を落としたM値ピットを設けているので、レベル判定を従来より精度良く行うことが可能である。例えば、光スポットの大きさが約0.405μm、光ディスクのトラックピッチ0.32μm、セルの幅を0.2μmとしてすべて8値で記録された多値情報を再生した場合、レベル判定値のエラーは正解値に対してすべて±1レベルであった。この結果から、仮に4値で記録された多値情報を再生すれば、判定値がエラーとなることはほとんどないことになる。従って、本発明の如く多値度を落としたM値ピットを設けることで精度の高い位相誤差信号を検出することが可能となる。
【0128】
なお、3つの連続するセルの、少なくとも2つのセル中央値のレベル差が無い場合、或いはレベル差が小さい場合は、セル中央値において再生信号の勾配は極めて小さくなる。この勾配情報を基に位相誤差を算出すると位相誤差情報の精度が悪くなる。従って、再生中レベル判定された3つの連続するセルの、少なくとも2つのセル中央値が所定差に至らない場合は、位相誤差情報を検出しない動作をすることで、PLL制御精度をより向上させることができる。
【0129】
例えば、連続するセル中央値(k−1,k,k+1)における各レベルV(k−1)、V(k)、V(k+1)が|V(k−1)−V(k))|≦2、|V(k)−V(k+1)|≦2なる関係の場合には、位相誤差検出情報の停止する等の処理を行う。
【0130】
また、V(k−1)<V(k)>V(k+1)或いはV(k−1>V(k)<V(k+1)なる関係の場合には位相誤差情報の検出を停止する等の処理を行う。ここで、V(k)はM値のレベルをN値に換算したものとする。
【0131】
本発明は、以上のようにトラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、M値で記録されたセルの再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングを検出する工程を含む。また、再生信号が予め導出しているセル中央値の理想値に来た時のタイミングを検出する工程を含む。更に、検出された再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングと、再生信号がセル中央値の理想値に来た時のタイミングとの差に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程を含む。
【0132】
セル中央値の理想値は記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出する。或いは、セル中央値の理想値はシミュレーションにより導出する。位相誤差取得工程において、M値で記録されたセル及びその両側のN値で記録されたセルのうち、M値セルのセル中央値に対して、少なくとも一方のN値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止する。
【0133】
次に、本発明に係る位相誤差検出方法を使用する実際の装置動作に関して説明する。まず、図17は記録情報列を示す。
(A)は記録データ先頭に位置するPLL引き込み用ピット列であり、これは多値記録の如何に拘わらず採用する場合が多い。
(B)は上述した既知ピット列の理想再生信号を得るための、学習のためのピット列である。
(C)は記録すべきユーザ情報であり、エラー訂正等の処理を施して生成されている。このように本発明によれば再生クロックのPLL制御のための特別な挿入ピット列の必要性がない。
【0134】
次に、記録動作に関して図17及び図18のフローチャートを用いて説明する。情報を記録する場合、図1の光学的情報記録再生装置1は情報の記録の命令を受けると記録動作を開始する。
【0135】
まず、記録開始に当たりPLLの引き込みに使用するピット列(A)を生成する(ステップ1)。ここで、PLLの引き込みに使用するピット列(A)に関しては、従来の2値化により周波数及び位相誤差情報が得られ、PLLが掛けられるピット列が望ましい。
【0136】
例えば、多値の記録情報列とは関係なく、セル全体がピット或いはピットが存在しないセルの繰り返し、更にはより高いSN比の再生信号を得るために、2つのセルを全てピット、非ピットの連続といったものを考えても良い。更に、これら組み合わせからなるものを考えてもよい。
【0137】
次に、多値情報列の学習ピット列(B)を生成し、図17に示すようにPLLの引き込みピット列に続き、記録データを付加する(ステップ2)。この学習ピット列のパターンは前後のセル中央値の組み合わせから考え、少なくとも第1、第4の手段では(N×M×N)、第2の手段では(M×M)、第3の手段では(M×M×M)パターン以上を組み合わせた学習ピット列が必要である。
【0138】
次に、送られてきた記録情報を、例えば、図2に示すように記録情報を3ビット毎に8つのレベルに変換し(ここで、変調、エラー訂正符号を付加等の処理を行う)、図17に示す記録情報列(C)を生成し、記録情報列として付加する(ステップ3)。
【0139】
次に、以上のように生成された記録情報列を受け、各多値レベルに対応した記録パルス列を用いて、光学的情報媒体である光ディスク4上の目標トラックに光ヘッド5を用いて多値情報を記録する(ステップ4)。記録情報が続く間、上記ステップ1〜4を繰り返し行い、全ての記録情報の記録が終了すると、記録の操作を終了する(ステップ5)。
【0140】
次に、図19を用いてこのように記録された多値情報を再生する手順を説明する。ここで、近年、光ディスク内でのアドレス情報等を情報トラックの案内溝をウォブルさせることにより形成し、これを再生することでアドレス情報を得る方法が主流となっており、記録情報等に直接付加する必要がない手法が多く採用されている。図19では、アドレス情報等がウォブルにより形成された光ディスクを再生する場合を例として説明する。
【0141】
光学的情報記録再生装置1は情報の再生命令を受けると、再生動作を開始する。その際、上述のように情報トラックに形成されたウォブル情報からアドレス情報を再生し、光ディスク4の目標トラックをサーチする。まず、光ヘッド5を用いて図17の情報記録単位の先頭のPLL引き込み領域(A)の再生を開始し、セル長に同期した再生クロックを生成する(ステップ6)。
【0142】
次に、記録セルに同期した再生クロックを用い、学習ピット列を再生する。その場合、上述のように第1の手段、第2の手段、第3の手段或いは第4の手段に応じて記録パターンが記録されており、対応する手段に応じて再生信号のセル中央値或いはセル間値をサンプリングし、メモリに格納する(ステップ7)。
【0143】
例えば、第1の手段を用いる場合には、上述のように学習ピットとして(N×M×N)の記録パターンが記録されているので、各々のセル中央値をサンプリングする。そして、例えば、上述のように各セル中央値を用いて曲線近似を行い、真中のM値セルの中央における接線勾配により再生信号勾配を算出する。セル中央値の理想値は学習ピット列のうち中央のM値セルのセル中央値である。これら再生信号勾配及びセル中央値の理想値をメモリに格納する(ステップ7)。再生信号勾配の算出方法としては上述のようにこれ以外の方法を用いても良いことはもちろんである。
【0144】
また、第4の手段に関しては第1の手段の場合と同様にM値セルのセル中央値の理想値を求めてメモリに格納しておく。但し、第4の手段の場合には再生信号勾配は必要ではない。
【0145】
また、第2の手段或いは第3の手段を用いる場合には、同様に対応する記録パターンを再生してセル中央値或いはセル間値を検出する。そして、同様に再生信号勾配を上述のような方法を用いて算出し、得られた再生信号勾配とセル中央値の理想値或いはセル間値の理想値をメモリに格納する。
【0146】
なお、この時の再生クロックはPLL引き込みピット列により、再生信号に同期した状態を維持するために、特に再生クロック位相制御を行う必要はなく、PLL引き込みピット列再生後、位相誤差情報を“ゼロ”に設定する。そしてPLL状態を保持することで十分な位相精度が得られる。
【0147】
上記学習結果を基づき再生信号から記録情報の再生を開始する(ステップ8)。記録情報の再生方法は本発明と直接関係しないため個々の説明は割愛する。この時、再生情報を正確に得るために、再生クロックを再生信号に対して常に同期した状態に維持、制御することが重要となる。そのためには、上述したように再生クロックと再生信号との位相誤差情報を得ることが必要になる。
【0148】
次に、ステップ7で学習により得られた再生信号勾配やセル中央値の理想値或いはセル間値の理想値をメモリから読み出す(ステップ9)。もちろん、第1の手段〜第4の手段に対応して該当する再生信号勾配やセル中央値の理想値或いはセル間値の理想値を読み出す。
【0149】
次いで、メモリから読み出した再生信号勾配、セル中央値の理想値或いはセル間値の理想値、及び再生中に得られた実再生信号でのセル中央値やセル間値を用いて再生中の再生信号とクロックとの位相誤差情報を算出する(ステップ10)。位相誤差の算出方法は第1の手段〜第4の手段において先に詳しく説明したので、詳しい説明は省略する。
【0150】
なお、この時、上述のように第1〜第4の手段において位相誤差抽出を一時的に中止する処理も併せて行う。
【0151】
この位相誤差情報を基にPLL制御を行い、再生クロックを生成する(ステップ11)。PLL回路は特別な仕様を必要とするものではなく、再生信号周波数帯に対応して特性を最適化すれば良く、詳しい説明は割愛する。情報再生中は再生信号から直接位相誤差を抽出し、同期クロックを生成し続ける。
【0152】
更に、上記動作を図17の情報記録列(A)、(B)、(C)の一連の単位毎に繰り返し行い、情報の再生を行う。そして、再生命令の終了を受けると、再生動作を終了する(ステップ12)。これらの動作により、位相誤差情報ピット列を設けることなく情報の再生が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明に係る光学的情報記録再生装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る8値で記録された多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向の幅とそれに対応する3ビットの組み合わせを説明する図である。
【図3】本発明に係る多値度を落としたピットである4値で記録された多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向の幅を説明する図である。
【図4】本発明に係るトラックに対してランダムな情報ピットを記録した時の模式図と光スポットの関係を示す図である。
【図5】1ブロックの中にM値ピットを1つ設ける第1の手段を説明するための模式図である。
【図6】1ブロックの中に連続した2つのM値ピットを設ける第2の手段を説明するための模式図である。
【図7】1ブロックの中に連続した3つのM値ピットを設ける第3の手段を説明するための模式図である。
【図8】本発明の再生原理を説明するための光学シミュレーションのパラメータを説明する図である。
【図9】本発明の再生原理を説明するための光学シミュレーションで与えた情報ピットの形状を説明する図である。
【図10】本発明に係る光学的情報記録再生装置の光学系パラメータによるセル中央値の振幅分布を示す図である。
【図11】本発明の再生原理を説明するための光学シミュレーションの計算結果で、連続する3つのセルに書かれた情報ピットの組み合わせに対する再生信号を説明するための図である。
【図12】本発明に係る第1の手段の位相誤差検出方法を説明する再生信号変化図である。
【図13】本発明に係る第3の手段の位相誤差検出方法を説明する再生信号変化図である。
【図14】セル間値をサンプリングしている際の前後のセルと光スポットの位置関係を説明する図である。
【図15】本発明に係る光学的情報記録再生装置の光学系パラメータによるセル間値の振幅分布と、左右のセルのレベルの組み合わせを示す図である。
【図16】本発明に係る第2の手段の位相誤差検出方法を説明する再生信号変化図である。
【図17】本発明に係る記録情報列を説明する図である。
【図18】本発明に係る光学的情報記録再生装置の情報記録を説明するフローチャートである。
【図19】本発明に係る光学的情報記録再生装置の情報再生を説明するフローチャートである。
【図20】従来の多値情報ピットのレベルの違いによるトラック方向の幅を説明する図である。
【図21】従来のセル中央値の振幅分布を説明する図である。
【図22】従来の記録情報列を説明する図である。
【図23】本発明に係る第4の手段の位相誤差検出方法を説明する再生信号変化図である。
【符号の説明】
【0154】
1 光学的情報記録再生装置
2 制御回路
3 スピンドルモータ
4 光ディスク
5 光ヘッド
6 光ヘッド制御回路
7 情報記録回路
8 情報再生回路
9 スピンドルモータコントローラ
10 インターフェースコントローラ
11 トラック
12 情報ピット
13 光スポット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的情報媒体のトラック上で仮想的に一定間隔のセルを設け、光スポットを用いて、前記セルでトラック方向の情報ピットの長さ又は情報ピットの面積を変えて多値情報を記録し、前記情報ピットから多段階の再生信号のレベルを検出することにより多値情報を再生するための記録再生領域を有する光学的情報媒体に対して多値情報を再生する光学的情報再生方法において、
前記トラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、
前記M値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル中央値を検出する工程と、
前記検出されたセル中央値、予め導出しているセル中央値の理想値、及び前記セル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程とを含むことを特徴とする光学的情報再生方法。
【請求項2】
前記セル中央値の理想値及び前記勾配は前記記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出されることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報再生方法。
【請求項3】
前記セル中央値の理想値及び前記勾配はシミュレーションにより導出されることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報再生方法。
【請求項4】
前記位相誤差取得工程は、前記セル中央値の理想値を挟む2つ以上のセル中央値によって算出された前記勾配と、前記セル中央値の理想値と前記検出されたセル中央値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得することを特徴とする請求項2又は3に記載の光学的情報再生方法。
【請求項5】
前記位相誤差取得工程において、前記M値で記録されたセル及びその両側のN値で記録されたセルのうち、前記M値セルのセル中央値に対して、少なくとも一方のN値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学的情報再生方法。
【請求項6】
光学的情報媒体のトラック上で仮想的に一定間隔のセルを設け、光スポットを用いて、前記セルでトラック方向の情報ピットの長さ又は情報ピットの面積を変えて多値情報を記録し、前記情報ピットから多段階の再生信号のレベルを検出することにより多値情報を再生するための記録再生領域を有する光学的情報媒体に対して多値情報を再生する光学的情報再生方法において、
前記トラック上にN値ピット(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する2つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、
前記連続する2つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル間値を検出する工程と、
前記検出されたセル間値、予め導出しているセル間値の理想値、及び前記セル間値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程とを含むことを特徴とする光学的情報再生方法。
【請求項7】
前記セル間値の理想値及び前記勾配は前記記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出されることを特徴とする請求項6に記載の光学的情報再生方法。
【請求項8】
前記セル間値の理想値及び前記勾配はシミュレーションにより導出されることを特徴とする請求項6に記載の光学的情報再生方法。
【請求項9】
前記位相誤差取得工程は、2つの連続するM値で記録されたセルのセル中央値から算出された前記勾配と、前記セル間値の理想値と前記検出されたセル間値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得することを特徴とする請求項6又は7に記載の光学的情報再生方法。
【請求項10】
前記位相誤差取得工程において、前記M値で記録された2つの連続するセルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の光学的情報再生方法。
【請求項11】
光学的情報媒体のトラック上で仮想的に一定間隔のセルを設け、光スポットを用いて、前記セルでトラック方向の情報ピットの長さ又は情報ピットの面積を変えて多値情報を記録し、前記情報ピットから多段階の再生信号のレベルを検出することにより多値情報を再生するための記録再生領域を有する光学的情報媒体に対して多値情報を再生する光学的情報再生方法において、
前記トラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する3つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、
前記連続する3つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして前記連続する3つのM値のセルのうち中央のセルのセル中央値を検出する工程と、
前記検出されたセル中央値、予め導出している前記セル中央値の理想値、及び前記セル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程とを含むことを特徴とする光学的情報再生方法。
【請求項12】
前記セル中央値の理想値及び前記勾配は前記記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出されることを特徴とする請求項11に記載の光学的情報再生方法。
【請求項13】
前記セル中央値の理想値及び前記勾配はシミュレーションにより導出されることを特徴とする請求項11に記載の光学的情報再生方法。
【請求項14】
前記位相誤差取得工程は、3つの連続するM値で記録されたセルのセル中央値から算出された前記勾配と、前記セル間値の理想値と前記検出されたセル間値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得することを特徴とする請求項11又は12に記載の光学的情報再生方法。
【請求項15】
前記位相誤差取得工程において、前記M値で記録された3つの連続するセルのうち中央のM値セルのセル中央値に対して、少なくともその両側のM値セルのうち一方のM値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止することを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の光学的情報再生方法。
【請求項16】
光学的情報媒体のトラック上で仮想的に一定間隔のセルを設け、光スポットを用いて、前記セルでトラック方向の情報ピットの長さ又は情報ピットの面積を変えて多値情報を記録し、前記情報ピットから多段階の再生信号のレベルを検出することにより多値情報を再生するための記録再生領域を有する光学的情報媒体に対して多値情報を再生する光学的情報再生方法において、
前記トラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、
前記M値で記録されたセルの再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングを検出する工程と、
前記再生信号が予め導出しているセル中央値の理想値に来た時のタイミングを検出する工程と、
前記検出された再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングと、前記再生信号が前記セル中央値の理想値に来た時のタイミングとの差に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程とを含むことを特徴とする光学的情報再生方法。
【請求項17】
前記セル中央値の理想値は前記記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出されることを特徴とする請求項16に記載の光学的情報再生方法。
【請求項18】
前記セル中央値の理想値はシミュレーションにより導出されることを特徴とする請求項16又は17に記載の光学的情報再生方法。
【請求項19】
前記位相誤差取得工程において、前記M値で記録されたセル及びその両側のN値で記録されたセルのうち、前記M値セルのセル中央値に対して、少なくとも一方のN値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止することを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の光学的情報再生方法。
【請求項1】
光学的情報媒体のトラック上で仮想的に一定間隔のセルを設け、光スポットを用いて、前記セルでトラック方向の情報ピットの長さ又は情報ピットの面積を変えて多値情報を記録し、前記情報ピットから多段階の再生信号のレベルを検出することにより多値情報を再生するための記録再生領域を有する光学的情報媒体に対して多値情報を再生する光学的情報再生方法において、
前記トラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、
前記M値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル中央値を検出する工程と、
前記検出されたセル中央値、予め導出しているセル中央値の理想値、及び前記セル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程とを含むことを特徴とする光学的情報再生方法。
【請求項2】
前記セル中央値の理想値及び前記勾配は前記記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出されることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報再生方法。
【請求項3】
前記セル中央値の理想値及び前記勾配はシミュレーションにより導出されることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報再生方法。
【請求項4】
前記位相誤差取得工程は、前記セル中央値の理想値を挟む2つ以上のセル中央値によって算出された前記勾配と、前記セル中央値の理想値と前記検出されたセル中央値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得することを特徴とする請求項2又は3に記載の光学的情報再生方法。
【請求項5】
前記位相誤差取得工程において、前記M値で記録されたセル及びその両側のN値で記録されたセルのうち、前記M値セルのセル中央値に対して、少なくとも一方のN値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学的情報再生方法。
【請求項6】
光学的情報媒体のトラック上で仮想的に一定間隔のセルを設け、光スポットを用いて、前記セルでトラック方向の情報ピットの長さ又は情報ピットの面積を変えて多値情報を記録し、前記情報ピットから多段階の再生信号のレベルを検出することにより多値情報を再生するための記録再生領域を有する光学的情報媒体に対して多値情報を再生する光学的情報再生方法において、
前記トラック上にN値ピット(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する2つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、
前記連続する2つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして再生信号のセル間値を検出する工程と、
前記検出されたセル間値、予め導出しているセル間値の理想値、及び前記セル間値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程とを含むことを特徴とする光学的情報再生方法。
【請求項7】
前記セル間値の理想値及び前記勾配は前記記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出されることを特徴とする請求項6に記載の光学的情報再生方法。
【請求項8】
前記セル間値の理想値及び前記勾配はシミュレーションにより導出されることを特徴とする請求項6に記載の光学的情報再生方法。
【請求項9】
前記位相誤差取得工程は、2つの連続するM値で記録されたセルのセル中央値から算出された前記勾配と、前記セル間値の理想値と前記検出されたセル間値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得することを特徴とする請求項6又は7に記載の光学的情報再生方法。
【請求項10】
前記位相誤差取得工程において、前記M値で記録された2つの連続するセルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の光学的情報再生方法。
【請求項11】
光学的情報媒体のトラック上で仮想的に一定間隔のセルを設け、光スポットを用いて、前記セルでトラック方向の情報ピットの長さ又は情報ピットの面積を変えて多値情報を記録し、前記情報ピットから多段階の再生信号のレベルを検出することにより多値情報を再生するための記録再生領域を有する光学的情報媒体に対して多値情報を再生する光学的情報再生方法において、
前記トラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に連続する3つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、
前記連続する3つのM値で記録されたセルの再生信号をサンプリングして前記連続する3つのM値のセルのうち中央のセルのセル中央値を検出する工程と、
前記検出されたセル中央値、予め導出している前記セル中央値の理想値、及び前記セル中央値の理想値近傍における再生信号の勾配に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程とを含むことを特徴とする光学的情報再生方法。
【請求項12】
前記セル中央値の理想値及び前記勾配は前記記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出されることを特徴とする請求項11に記載の光学的情報再生方法。
【請求項13】
前記セル中央値の理想値及び前記勾配はシミュレーションにより導出されることを特徴とする請求項11に記載の光学的情報再生方法。
【請求項14】
前記位相誤差取得工程は、3つの連続するM値で記録されたセルのセル中央値から算出された前記勾配と、前記セル間値の理想値と前記検出されたセル間値の差とから再生クロックを生成するための位相誤差を取得することを特徴とする請求項11又は12に記載の光学的情報再生方法。
【請求項15】
前記位相誤差取得工程において、前記M値で記録された3つの連続するセルのうち中央のM値セルのセル中央値に対して、少なくともその両側のM値セルのうち一方のM値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止することを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の光学的情報再生方法。
【請求項16】
光学的情報媒体のトラック上で仮想的に一定間隔のセルを設け、光スポットを用いて、前記セルでトラック方向の情報ピットの長さ又は情報ピットの面積を変えて多値情報を記録し、前記情報ピットから多段階の再生信号のレベルを検出することにより多値情報を再生するための記録再生領域を有する光学的情報媒体に対して多値情報を再生する光学的情報再生方法において、
前記トラック上にN値(N≧3)で記録されている複数のセル毎に1つのM値(M<N)で記録されているセルを設け、
前記M値で記録されたセルの再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングを検出する工程と、
前記再生信号が予め導出しているセル中央値の理想値に来た時のタイミングを検出する工程と、
前記検出された再生信号のセル中央値をサンプリングするタイミングと、前記再生信号が前記セル中央値の理想値に来た時のタイミングとの差に基づいて再生クロックを生成するための位相誤差を取得する工程とを含むことを特徴とする光学的情報再生方法。
【請求項17】
前記セル中央値の理想値は前記記録再生領域の先頭に記録されている学習するための情報ピットからなる多値学習領域を再生することにより導出されることを特徴とする請求項16に記載の光学的情報再生方法。
【請求項18】
前記セル中央値の理想値はシミュレーションにより導出されることを特徴とする請求項16又は17に記載の光学的情報再生方法。
【請求項19】
前記位相誤差取得工程において、前記M値で記録されたセル及びその両側のN値で記録されたセルのうち、前記M値セルのセル中央値に対して、少なくとも一方のN値セルのセル中央値のレベル差が予め設定された値以内の場合には、位相誤差検出を停止することを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の光学的情報再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−41235(P2008−41235A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107045(P2007−107045)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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