説明

光学積層フィルム

【課題】優れた耐熱性に加え、近赤外線のみを吸収するポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも一般式(I)で示される繰り返し単位を有する脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aを有し、ハードコーティング剤からなるハードコーティング層Bを任意に含むポリイミドフィルムにおいて、前記脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aおよび/又はハードコーティング層B中に近赤外領域の波長の光を吸収する色素を含有し、前記脂環式ポリイミド樹脂からなる層A又はハードコーティング層B中の色素含有率が0.01〜20重量%であることを特徴とするポリイミドフィルム。


(式中、Rは炭素数4〜16の4価の脂環族炭化水素基であり、Φは炭素数2〜28の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜28の脂環式炭化水素基、及び炭素数6〜27の芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基を含む2価の基。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂と近赤外線を吸収する色素からなる、近赤外線カットフィルターに利用される光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は耐熱性に優れ、機械強度に優れる樹脂として知られている。一般的にポリイミド樹脂は芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン類との重縮合反応により得られる全芳香族ポリイミド樹脂のフィルムが広く用いられている(特許文献1)
【0003】
しかし、この様な全芳香族ポリイミド樹脂は、優れた耐熱性、機械特性を有する一方で、可視光の短波長領域に吸収が存在する。このため淡黄色から赤褐色に着色しており、色素由来の色のみを選択的に示すためには色素の含有量を増やすもしくは、ポリイミド樹脂層の厚みを薄くするなどの工夫が必要であった。例えば、特定構造の全芳香族ポリイミド樹脂と可視光領域に吸収を有する色素を混合してなる、光学フィルター用ポリイミド樹脂組成物および光学フィルターが開示されている(特許文献2)。しかし上記文献に記載された光学フィルターは、具体的にはポリイミド樹脂組成物をスピンコート等の手法によって透明基板上に厚さ2μm程度に製膜したものであって、上記ポリイミド樹脂組成物はフィルム状ではなく、単独で自己保持能を有するものではない。
【0004】
また、特許文献3には近赤外線吸収成形体として、環状オレフィン系樹脂と近赤外線吸収色素を含む樹脂組成物を使用することが開示されているが、該樹脂組成物は耐熱性の点で十分とは言えない。
【0005】
一般的にポリイミドを構成するモノマーに脂肪族系のものを用いた、脂環式ポリイミド樹脂において、テトラカルボン酸二無水物部分とジアミン部分との間の電荷移動が抑制されるために可視光の短波長領域の吸収が抑制されることが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−91895号公報
【特許文献2】特開平8−100122号公報
【特許文献3】特開2005−97495号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】最新ポリイミド〜基礎と応用〜日本ポリイミド協会編第3編第1章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来用いられてきた材料の問題点を解決し、可視光領域の光透過率が高く、かつ耐熱性に優れた光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、(1)脂環族テトラカルボン酸構造を有する繰り返し単位を有する脂環式ポリイミド樹脂に、近赤外領域の波長の光を吸収する色素を所定量分散させたポリイミドフィルム(2)前記脂環式ポリイミド樹脂からなる層と、ハードコーティング剤からなるハードコーティング層を組み合わせて成るポリイミドフィルムであって、上記脂環式ポリイミド樹脂からなる層、ハードコーティング層の少なくとも一方の層に前記色素を所定量分散させたポリイミドフィルム、において、近赤外線吸収特性に優れ、可視光領域の光透過性が高く、且つ耐熱性にも優れることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明は、少なくとも一般式(I)で示される繰り返し単位を有する脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aを有し、ハードコーティング剤からなるハードコーティング層Bを任意に含むポリイミドフィルムにおいて、前記脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aおよび/又はハードコーティング層B中に近赤外領域の波長の光を吸収する色素を含有し、前記脂環式ポリイミド樹脂からなる層A及び/又はハードコーティング層B中の色素含有率が0.01〜20重量%であることを特徴とするポリイミドフィルムである。
【0011】
【化1】

(式中、Rは炭素数4〜16の4価の脂環族炭化水素基であり、Φは炭素数2〜28の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜28の脂環式炭化水素基、及び炭素数6〜27の芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基を含む2価の基であり、スルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボニル基、メトキシ基、エステル基、エーテル基、フルオロ基等を含んでもよい。)
【発明の効果】
【0012】
本願のポリイミドフィルムは、可視光の光透過率が高く、鮮明に発色した光学フィルムである。また、本願のポリイミドフィルムは耐熱性に優れるため、誘電体多層膜を蒸着する工程や、ハンダ付け工程といった加熱工程前後の寸法変化が小さい特徴があり、CCDやCMOSなどの固体撮像素子用視感度補正フィルター等に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に用いられる脂環式ポリイミド樹脂は、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する。
【0014】
【化2】

(式中、Rは炭素数4〜16の4価の脂環族炭化水素基であり、Φは炭素数2〜28の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜28の脂環式炭化水素基、及び炭素数6〜27の芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基を含む2価の基であり、スルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボニル基、メトキシ基、エステル基、エーテル基、フルオロ基等を含んでもよい。)
【0015】
本願の脂環式ポリイミド樹脂は、炭素数4〜16の4価の脂環族テトラカルボン酸またはその誘導体と、炭素数2〜28の脂肪族ジアミンまたは炭素数6〜27の芳香族ジアミンを、有機溶媒中においてイミド化触媒の存在下で反応させることにより、合成される。
【0016】
本発明において“芳香族ジアミン”とは、アミノ基が芳香族環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基、脂環基、その他の置換基を含んでいてもよい。“脂肪族ジアミン”とは、アミノ基が脂肪族基または脂環基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香族基、その他の置換基を含んでいてもよい。
【0017】
一般に、脂肪族ジアミンを構成成分として使用すると、中間生成物であるポリアミド酸と脂肪族ジアミンが強固な錯体を形成するために、高分子量ポリイミドが得られにくい。そのため、錯体の溶解性が比較的高い溶剤、例えばクレゾールを用いるなどの工夫が必要になる。しかし、シクロへキサンテトラカルボン酸またはその誘導体と脂肪族ジアミンを構成成分として用いると、ポリアミド酸と脂肪族ジアミンの結合が比較的弱い錯体が形成されるので、ポリイミドを容易に高分子量化できる。
【0018】
脂環族テトラカルボン酸またはその誘導体としては、脂環族テトラカルボン酸、脂環族テトラカルボン酸エステル類、脂環族テトラカルボン酸二無水物などが挙げられるが、最も好ましいのは脂環族テトラカルボン酸二無水物である。
【0019】
炭素数4〜16の4価の脂環族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]へプタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。これらの中でも特に1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を用いるのが好ましい。これらの脂環族テトラカルボン酸二無水物は、単独あるいは二種以上混合して使用することができるが、より好ましくは1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を単独で用いるのが良い。
【0020】
炭素数4〜16の4価の脂環族テトラカルボン酸としては、例えば、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]へプタンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0021】
炭素数4〜16の4価の脂環族テトラカルボン酸エステル類としては、例えば、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸メチルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジメチルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸トリメチルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラメチルエステル、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸メチルエステル、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジメチルエステル、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸トリメチルエステル、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸テトラメチルエステル、ビシクロ[2.2.1]へプタンテトラカルボン酸メチルエステル、ビシクロ[2.2.1]へプタンテトラカルボン酸ジメチルエステル、ビシクロ[2.2.1]へプタンテトラカルボン酸トリメチルエステル、ビシクロ[2.2.1]へプタンテトラカルボン酸テトラメチルエステル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸メチルエステル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジメチルエステル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸トリメチルエステル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸テトラメチルエステル、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸メチルエステル、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸ジメチルエステル、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸トリメチルエステル、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸テトラメチルエステルなどが挙げられる。
【0022】
炭素数2〜28の脂肪族ジアミンとしては、特に限定されないが4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ノルボルナンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ビシクロヘキシルジアミン、シロキサンジアミンなどが挙げられる。
【0023】
炭素数6〜27の芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、1,1−ビス[4―(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチル−1H−インデン‐5−アミンなどが挙げられる。
【0024】
上記の脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンは、単独あるいは二種以上混合して使用することができる。
【0025】
上記のジアミンの中でも特に、1,4−ビス(4‐アミノ‐α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチル−1H−インデン‐5−アミン、9,9−ビス(4‐アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンが、高い耐熱性が得られることから好ましい。
【0026】
本発明の脂環式ポリイミド樹脂の製造時に使用する有機溶媒は、環状エーテル、環状ケトン、環状エステル、アミド、およびウレアからなる群から選ばれる構造を少なくとも1つ含有する溶媒が好ましい。具体例としては、特に限定されないがγ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラメチルウレア、テトラヒドロフランなどの非プロトン性の極性有機溶媒から選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。中でも、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルフォルムアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンより選ばれる一種以上であることがより好ましい。
【0027】
脂環式ポリイミド樹脂の製造時に使用するイミド化触媒としては、3級アミン化合物が好ましく、具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン(TEA)、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、イミダゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリンなどが挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種の触媒の存在下で行うことができる。
【0028】
以下に脂環式ポリイミド樹脂の製造方法の例を示すが製造方法は下記に限定されない。
【0029】
30℃以下の温度においてジアミンを有機溶媒に溶解させた溶液と脂肪族テトラカルボン酸またはその誘導体を混合し、4〜30℃の温度において反応させ、ポリアミド酸溶液を得る。上記ポリアミド酸溶液にイミド化触媒を添加して、生成水を系外に留出しつつ脱水イミド化反応を行い、脂環式ポリイミド樹脂の溶液を得る。
【0030】
ジアミンと脂環族テトラカルボン酸またはその誘導体とのモル比(ジアミン/脂肪族テトラカルボン酸またはその誘導体)としては、0.95〜1.05の範囲が好ましく、特に0.99〜1.01の範囲が好ましい。ジアミンと脂環族テトラカルボン酸またはその誘導体とのモル比が0.95未満、もしくは1.05を超えると、分子量が低くなり、脆くなる恐れがある。
【0031】
イミド化触媒とジアミンの適正なモル比(イミド化触媒/ジアミン)としては、0.01〜1.0の範囲が好ましく、特に0.05〜0.5の範囲が好ましい。イミド化触媒とジアミンのモル比が0.01未満であると、触媒作用が小さく、イミド化反応が促進しにくくなり、1.0以上であると、イミド化触媒自体を除去しにくくなり、後述する脂環式ポリイミド樹脂組成物から成る薄肉成型体の着色の原因となりうるだけでなく、脂環式ポリイミド樹脂の溶解性に影響を与える恐れがある。
【0032】
脱水イミド化反応では、水を主成分とする留出液を反応槽上部に取り付けた蒸気冷却塔とそれに係合した留出液貯留装置によって反応系外へ除去する。反応温度は、通常160〜200℃の範囲であり、好ましくは170〜190℃の範囲、より好ましくは180〜190℃の範囲である。160℃未満であると、温度不足によりイミド化および高分子量化が十分に進行しない恐れがあり、200℃を超えると、溶液粘度が著しく増加した場合に反応容器の壁面に樹脂が焦げ付くなどの不具合が生じる恐れがある。なお、場合によってはトルエン、キシレンなどの共沸脱水剤を用いても良い。反応圧力は通常、常圧であるが、必要に応じて加圧でも反応を行うことができる。反応温度の保持時間としては、少なくとも1時間以上が必要であり、より好ましくは3時間以上である。1時間未満であると、イミド化および高分子量化が十分に進行しない恐れがある。反応時間について上限は特にないが、通常3〜10時間の範囲で行う。
【0033】
上記工程における有機溶媒を含む全重量部に対する脂環式ポリイミド樹脂の固形分濃度は、好ましくは20重量%以上50重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以上40重量%以下である。20重量%未満であるとポリイミド樹脂の固有粘度が上がりにくくなり、高分子量化が十分に進行せず、薄肉成型体が脆くなる恐れがある。また50重量%を超えると、ポリイミド樹脂の固有粘度の上昇に伴ってポリイミド樹脂溶液の粘度が上昇するため、撹拌が均一に行われずに樹脂の焦げ付きの原因と成り得る。上記有機溶媒に溶解させる温度としては、少なくとも20℃以上であることが望ましく、好ましくは30℃〜100℃の温度範囲である。20℃以下であると溶液粘度が高く、取り扱いが困難になる場合がある。
【0034】
上記脂環式ポリイミド樹脂溶液に対して過剰のメタノールを混合して攪拌し、脂環式ポリイミド樹脂の沈殿物を得る。上記沈殿物をろ過した後真空下で加熱し、白色粉末状の脂環式ポリイミド樹脂が得られる。
【0035】
なお上記製造方法において、イミド化触媒は脂環族テトラカルボン酸またはその誘導体を添加する以前に加えてもよい。その場合は、一般的にポリアミド酸を形成する反応条件である室温付近ないしそれ以下の温度に保つ必要なく、即座に加熱を開始し、脱水イミド化を行うことができる。
【0036】
本発明に用いられる脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aは、脂環式ポリイミド樹脂からなる溶液、または、前記脂環式ポリイミド樹脂からなる溶液に対して任意に近赤外領域の波長の光を吸収する色素、充填剤を混合し、分散させてなる脂環式ポリイミド樹脂からなる分散液を、後述するように基板上に形成した後、溶剤を除去することにより得られる。
【0037】
上記脂環式ポリイミド樹脂からなる溶液は、合成反応終了後の脂環式ポリイミド樹脂溶液に有機溶剤を混合して希釈したものであっても良い。また、前述の段落0034に記載のように、再沈殿、溶媒除去工程を経て得られる白色粉末状の脂環式ポリイミド樹脂を再び有機溶剤に溶解させてなる溶液であっても良い。
【0038】
脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aを基板上に形成する方法としては特に限定されないが、脂環式ポリイミド樹脂からなる溶液、または脂環式ポリイミド樹脂からなる分散液を基板上に塗布した後、加熱して溶剤を蒸発させることにより得られる。
【0039】
上記脂環式ポリイミド樹脂からなる溶液中、または脂環式ポリイミド樹脂を含む分散液中の、脂環式ポリイミド樹脂の含有率は、10〜50重量%であることが好ましく、20〜40重量%がより好ましい。10重量%未満であると、脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aの厚みを保持することが困難になったり、有機溶媒の除去に長時間を要するという不具合が生じる。また50重量%を超えると、上記溶液または分散液の流動性が悪くなり、脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aの形成が困難になる恐れがある。
【0040】
前記有機溶剤としては、段落0026に例示した脂環式ポリイミド樹脂の製造時に使用する有機溶媒が挙げられるが、好ましい溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、p−クロルフェノール、m−クレゾール、2−クロル−4−ヒドロキシトルエン、1,3−ジオキソラン、ガンマブチロラクトンが挙げられる。
【0041】
上記脂環式ポリイミド樹脂からなる分散液は、近赤外領域の波長の光を吸収する色素を混合してよい。前記色素としては、最大吸収波長が670nm以上の株式会社ADEKA製アデカアークルズGPZ−103、GPZ−127、山田化学工業株式会社製フタロシアニン色素YMG−6、日本化薬株式会社製Kayaset Blue K−FLである群より選ばれる1種以上を好適に用いることができる。
【0042】
脂環式ポリイミド樹脂からなる分散液中の色素含有量は、分散液中の固形分に対し、0.01〜20重量%、より好ましくは0.03〜1重量%である。0.01重量%より少ない場合は近赤外線吸収特性が十分に得られず、20重量%を超える場合は、色素が分散しにくくなって凝集し、外観不良となるため好ましくない。
【0043】
なお、色素を混合するタイミングについては特に制限はなく、脂環式ポリイミド樹脂の合成反応前、合成反応中、合成反応終了後のいずれのタイミングであってもよい。合成終了後希釈溶媒にて希釈した後に行っても良い。また前述の段落0034に記載のように、再沈殿、溶媒除去工程を経て得られる白色粉末状の脂環式ポリイミド樹脂と、前記有機溶剤と共に色素を混合してもよい。中でも、色素が分解しにくいため、合成終了後、希釈した後に混合するのが好ましい。また、色素は固体もしくは溶剤に溶かした溶液状態のいずれの状態で混合しても良い。
【0044】
色素の攪拌分散は適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽にて実施してもよく、またボールミルなどの混合を目的とした装置のいずれの装置を用いても行うことができる。
【0045】
また上記脂環式ポリイミド樹脂からなる分散液は、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、カーボン繊維などの充填剤を、透明性を保持する範囲内で含んでもよい。
【0046】
上記において、基板の材質としては、ガラス製、ステンレス製が好ましいが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのような有機高分子からなるものであってもよい。
【0047】
上記脂環式ポリイミド樹脂からなる溶液または脂環式ポリイミド樹脂からなる分散液は、公知の添加剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロへキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,2−メチレンビス−(4−エチル−6−t−メチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)などの酸化防止剤、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、p−t−ブチルフェニルサリシレートなどの紫外線吸収剤、各種界面活性剤を透明性を保持する範囲内で含んでもよい。
【0048】
上記において、脂環式ポリイミド樹脂からなる溶液、または脂環式ポリイミド樹脂からなる分散液を塗布する方法としては、公知の方法を使用できる。例えば、スピンコーティングや、ダイ押し出しによる流延法、アプリケーター、コーター等を用いる方法が挙げられる。
【0049】
脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aは、基板上に形成された状態で使用してもよく、ある程度の厚さを有する場合は、基板から剥離して使用してもよい。
【0050】
上記において、ある程度の厚さを有する脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aを製造する方法としては、下記の方法が挙げられる。
i)脂環式ポリイミド樹脂からなる溶液、または脂環式ポリイミド樹脂からなる分散液を基板上に塗布する。
ii)その後120℃以下の温度で30〜60分加熱し、有機溶媒を一部蒸発させ、自己支持性を有するフィルム状樹脂組成物を得る。
iii)次に、フィルム状樹脂組成物を基板から剥離した後、金属製固定ジグを用いてフィルム状樹脂組成物の端部を固定する。
iv)次に窒素気流下または減圧において、膜の収縮を制限しながら残留有機溶媒の突沸が起こらないように少なくとも有機溶媒の沸点か、好ましくは沸点よりも5〜10℃高い温度まで昇温し、該温度において乾燥およびアニールを行うことでフィルムを得る。
フィルム中に含まれる有機溶媒の含有率は1重量%未満であることが好ましい。有機溶媒の含有率が1重量%以上であると、可塑化の作用によりガラス転移温度が低下して熱変形等の不具合が生じる恐れがあるだけでなく、高温曝露時における溶媒の酸化分解等により着色する恐れがある。自己支持性を有するよう、フィルムの厚さは5μm以上であるのが好ましい。
【0051】
脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aの厚さは、1μm〜300μmであることが好ましく、5μm〜200μmであることがより好ましい。厚さが1μm未満の場合、脂環式ポリイミド樹脂からなる層A単独に近赤外線を吸収する色素を含有する場合において近赤外線吸収特性を十分に出すために必要な色素の含有量が20重量%を超えることとなり、前述のように色素が凝集するため好ましくない。また厚さが300μmを超える場合、均一な厚みの層を形成することが困難となる。
【0052】
本発明のポリイミドフィルムは、脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aを有し、ハードコーティング剤からなるハードコーティング層Bを任意に含むことを特徴とする。
【0053】
本発明のポリイミドフィルムは、必要に応じてハードコーティング層以外に、誘電体多層膜、紫外線吸収層、電子線吸収層、反射防止層、色調補正層、および放熱層を積層してもよい。
【0054】
前記誘電体多層膜はシリカ、チタニア、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛などを用いることが好ましい。前記誘電体多層膜の積層方法は特に制限はないが、例えば、CVD法、真空蒸着法、スパッタ法などが挙げられる。
前記誘電体多層膜を積層することで、効率よく近赤外線から赤外線を吸収でき、表示デバイス用途、オプトデバイス用途、機械部品および電子部品等の耐熱性を要求される用途に好適に用いられる。例えば、CCDやCMOSなどの固体撮像素子用視感度補正フィルターに用いることができる。
【0055】
ハードコーティング層Bはハードコーティング剤からなる高硬度の膜であって、耐傷付き性を向上させる機能を有するものである。
【0056】
本発明に用いられるハードコーティング剤は特に限定されないが、例えば(メタ)アクリレート類に代表される、紫外線硬化型、電子線硬化型、熱硬化型の樹脂からなり、光重合開始剤、有機溶剤を含んでもよい。(メタ)アクリレート類としては、ポリウレタン(メタ)アクリレートやエポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート、あるいは他の多官能(メタ)アクリレート類を好適に用いることができる。
【0057】
上記ハードコーティング剤は、近赤外領域の波長の光を吸収する色素を含んでもよい。上記の色素としては、最大吸収波長が670nm以上の株式会社ADEKA製アデカアークルズGPZ−103、GPZ−127、山田化学工業株式会社製フタロシアニン色素YMG−6、日本化薬株式会社製Kayaset Blue K−FLである群より選ばれる1種以上を好適に用いることができる。ハードコーティング剤中の色素含有量は、固形分に対し0.01〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。0.01重量%より少ない場合は十分な吸収特性が得られず、20重量%を超える場合は、分散しにくく凝集し外観不良となり好ましくない。
【0058】
また上記ハードコーティング剤は、上記成分の他に、コロイド状金属酸化物、あるいは有機溶剤を分散媒としたシリカゾル等を含んでもよい。
【0059】
上記ハードコーティング層Bは、脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aの上に直接形成してもよく、脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aの上に誘電体多層膜、紫外線吸収層、電子線吸収層、反射防止層、色調補正層、および放熱層から選ばれる少なくとも1つの層からなる積層膜形成後に、前記積層膜の上に形成してもよいが、表面平滑性に優れることから、脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aの上に直接形成することが好ましい。以下において、上記の脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aまたは、前記積層膜を含む脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aのことを、単に「基材」と記すことがある。
【0060】
以下にハードコーティング層Bを形成する方法を示す。ハードコーティング剤を基材上に塗布した後、加熱によりハードコーティング剤中の溶媒を除去する。その後、必要に応じて紫外線、電子線、加熱により硬化させて得られる。このようにして得られるコート層の厚みは0.1〜30μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。0.1μm未満の厚みでは十分な硬度が発現し難く、一方50μmを超えると硬化が困難となるだけではなく、均一な厚みのコート層を形成することが困難となる。
【0061】
ハードコーティング剤を塗布する方法としては、バーコーティング、スピンコーティング、ブレードコーティング、リバースコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング等の公知の方法が挙げられる。
【0062】
また、ハードコーティング層Bは、あらかじめハードコーティング剤からなる自己保持膜を作製後、これを接着剤や粘着剤からなる接着層を介して基材と張り合わせることによっても得ることができる。
【0063】
本発明のポリイミドフィルムは、厚さ100μmにおける光線透過率が下記であることが好ましい。すなわち、波長690nmにおける光線透過率は50%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下である。また波長540nmにおける光線透過率は80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0065】
得られたポリイミドフィルムの評価は以下のように行った。
(1)ガラス転移温度
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差走査熱量計装置(DSC6220)を用い、昇温速度10℃/minの条件でDSC測定を行い、ガラス転移温度を求めた。
(2)透過率
島津製作所製UV−3100を用い、350〜800nmの光に対する透過率を測定した。690nmの波長に対する透過率が30%未満のものを◎、30%以上50%未満のものを○、50%以上のものを×、540nmの波長に対する透過率が85%以上のものを◎、80%以上85%未満のものを○、80%未満のものを×とした。
(3)濁度
日本電色工業株式会社製色彩・濁度同時測定器(COH 400)を用いて測定した。◎:0.8未満、○:0.8以上2未満、×:2以上
(4)寸法変化率
JISK7133に準拠して200℃で30分加熱したときの寸法変化率を測定した。
○:1%未満、×:1%以上
【0066】
<参考例1>
1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の合成
内容積5リットルのハステロイ製(HC22)オートクレーブにピロメリット酸552g、活性炭にロジウムを担持させた触媒(エヌ・イーケムキャット株式会社(N.E. Chemcat Corporation)製)200g、水1656gを仕込み、攪拌をしながら反応器内を窒素ガスで置換した。次に水素ガスで反応器内を置換し、反応器の水素圧を5.0MPaとして60℃まで昇温した。水素圧を5.0MPaに保ちながら2時間反応させた。反応器内の水素ガスを窒素ガスで置換し、反応液をオートクレーブより抜き出し、この反応液を熱時濾過して触媒を分離した。濾過液をロータリーエバポレーターで減圧下に水を蒸発させて濃縮し、結晶を析出させた。析出した結晶を室温で固液分離し、乾燥して1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸481g(収率85.0%)を得た。
続いて、得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸450gと無水酢酸4000gとを、5リットルのガラス製セパラブルフラスコ(ジムロート冷却管付)に仕込み、攪拌しながら反応器内を窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下で溶媒の還流温度まで昇温し、10分間溶媒を還流させた。攪拌しながら室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を固液分離し、乾燥して一次結晶を得た。更に分離母液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、結晶を析出させた。この結晶を固液分離し、乾燥して二次結晶を得た。一次結晶、二次結晶を合わせて1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物375gが得られた(無水化の収率96.6%)。
【0067】
<参考例2>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、1,4−ビス(4‐アミノ‐α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン(BisA−P)12.1g(0.035モル)および4,4‘−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)5.5g(0.015モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン34.1g及び、N,N―ジメチルアセトアミド8.1gを仕込んで溶解させ、氷水バスを用いて5℃に冷却した。同温に保ちながら、参考例1で合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物11.2g(0.05モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.25g(0.0025モル)を一括で添加した。次に180℃に昇温して留出液を留去させながら5時間反応を行った。内温が120℃になるまで空冷し、希釈溶剤としてN,N-ジメチルアセトアミド71.9gを加えた。攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%の脂環式ポリイミドの有機溶剤溶液を得た。得られたポリイミドの有機溶剤溶液をガラス板に塗布し、90℃のホットプレート上で1時間加熱して溶剤を蒸発させた後、ガラス板から剥がして自立膜を得た。この自立膜をステンレス製の固定治具に固定して真空乾燥器中210℃で2時間乾燥して残留有機溶剤の除去を行い、無色透明でフレキシブルな膜厚100μmのフィルムを得た。このフィルムのIRスペクトルを測定したところ、ν(C=O)1770、1704(cm−1)にイミド環の特性吸収が認められ、下記式(1)の繰り返し単位を有するポリイミドであると同定された。
【0068】
【化3】

【0069】
得られたフィルムのガラス転移温度は300℃であった。また、このフィルムを、JIS K7105に準拠して、全光線透過率を測定したところ、91%と高い値を示した。このポリイミドフィルムを空気中220℃で4時間熱処理し、熱処理前後の全光線透過率を測定したが、90%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。また、このポリイミドフィルムを空気中(温度:60℃)にて、200Wの高圧水銀灯を光源として1000時間の照射を行って高エネルギー光処理し、同様に全光線透過率を測定したが、91%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。
【0070】
<参考例3>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.0g(0.05モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン34.1g及び、N,N―ジメチルアセトアミド8.1gを仕込んで溶解させた後、氷水バスを用いて5℃に冷却した。同温に保ちながら、参考例1で合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物11.2g(0.05モル)をおよびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.25g(0.0025モル)を一括で添加した。次に180℃に昇温して留出液を留去させながら5時間反応を行った。内温が120℃になるまで空冷し、希釈溶剤としてN,N-ジメチルアセトアミド71.9gを加えた。攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%の脂環式ポリイミドの有機溶剤溶液を得た。得られたポリイミドの有機溶剤溶液をガラス板に塗布し、90℃のホットプレート上で1時間加熱して溶剤を蒸発させた後、ガラス板から剥がして自立膜を得た。この自立膜をステンレス製の固定治具に固定して真空乾燥器中210℃で2時間乾燥して残留有機溶剤の除去を行い、無色透明でフレキシブルな膜厚100μmのフィルムを得た。このフィルムのIRスペクトルを測定したところ、ν(C=O)1772、1700(cm−1)にイミド環の特性吸収が認められ、下記式(2)の繰り返し単位を有するポリイミドであると同定された。
【0071】
【化4】

【0072】
得られたフィルムのガラス転移温度は315℃であった。また、このフィルムを、JIS K7105に準拠して、全光線透過率を測定したところ、90%と高い値を示した。このポリイミドフィルムを空気中220℃で4時間熱処理し、熱処理前後の全光線透過率を測定したが、90%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。また、このポリイミドフィルムを空気中(温度:60℃)にて、200Wの高圧水銀灯を光源として1000時間の照射を行って高エネルギー光処理し、同様に全光線透過率を測定したが、90%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。
【0073】
<参考例4>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン20.5g(0.05モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン34.1g及び、N,N―ジメチルアセトアミド8.1g仕込んで溶解させた後、氷水バスを用いて5℃に冷却した。同温に保ちながら、参考例1で合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物11.2g(0.05モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.25g(0.0025モル)を一括で添加した。次に180℃に昇温して留出液を留去させながら5時間反応を行った。内温が120℃になるまで空冷し、希釈溶剤としてN,N-ジメチルアセトアミド71.9gを加えた。攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%の脂環式ポリイミドの有機溶剤溶液を得た。得られたポリイミドの有機溶剤溶液をガラス板に塗布し、90℃のホットプレート上で1時間加熱して溶剤を蒸発させた後、ガラス板から剥がして自立膜を得た。この自立膜をステンレス製の固定治具に固定して真空乾燥器中210℃で2時間乾燥して残留有機溶剤の除去を行い、無色透明でフレキシブルな膜厚100μmのフィルムを得た。このフィルムのIRスペクトルを測定したところ、ν(C=O)1773、1702(cm−1)にイミド環の特性吸収が認められ、下記式(3)の繰り返し単位を有するポリイミドであると同定された。
【0074】
【化5】

【0075】
得られたフィルムのガラス転移温度は260℃であった。また、このフィルムを、JIS K7105に準拠して、全光線透過率を測定したところ、90%と高い値を示した。このポリイミドフィルムを空気中220℃で4時間熱処理し、熱処理前後の全光線透過率を測定したが、90%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。また、このポリイミドフィルムを空気中(温度:60℃)にて、200Wの高圧水銀灯を光源として1000時間の照射を行って高エネルギー光処理し、同様に全光線透過率を測定したが、90%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。
【0076】
<参考例5>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)18.4g(0.05モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン34.1g及び、N,N―ジメチルアセトアミド8.1gを仕込んで溶解させた後、氷水バスを用いて5℃に冷却した。同温に保ちながら、参考例1で合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物11.2g(0.05モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.25g(0.0025モル)を一括で添加した。次に180℃に昇温して留出液を留去させながら5時間反応を行った。内温が120℃になるまで空冷し、希釈溶剤としてN,N-ジメチルアセトアミド71.9gを加えた。攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%の脂環式ポリイミドの有機溶剤溶液を得た。得られたポリイミドの有機溶剤溶液をガラス板に塗布し、90℃のホットプレート上で1時間加熱して溶剤を蒸発させた後、ガラス板から剥がして自立膜を得た。この自立膜をステンレス製の固定治具に固定して真空乾燥器中210℃で2時間乾燥して残留有機溶剤の除去を行い、無色透明でフレキシブルな膜厚100μmのフィルムを得た。このフィルムのIRスペクトルを測定したところ、ν(C=O)1773、1702(cm−1)にイミド環の特性吸収が認められ、下記式(4)の繰り返し単位を有するポリイミドであると同定された。
【0077】
【化6】

【0078】
得られたフィルムのガラス転移温度は260℃であった。また、このフィルムを、JIS K7105に準拠して、全光線透過率を測定したところ、90%と高い値を示したこのポリイミドフィルムを空気中220℃で4時間熱処理し、熱処理前後の全光線透過率を測定したが、90%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。また、このポリイミドフィルムを空気中(温度:60℃)にて、200Wの高圧水銀灯を光源として1000時間の照射を行って高エネルギー光処理し、同様に全光線透過率を測定したが、90%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。
【0079】
<参考例6>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、1,4−ビス(4‐アミノ‐α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン(BisA−P)12.1g(0.035モル)および1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチル−1H−インデン‐5−アミン(TMDA)4.0g(0.015モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン34.1g及び、N,N―ジメチルアセトアミド8.1gを仕込んで溶解させた後、氷水バスを用いて5℃に冷却した。同温に保ちながら、参考例1で合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物11.2g(0.05モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.25g(0.0025モル)を一括で添加した。次に180℃に昇温して留出液を留去させながら5時間反応を行った。内温が120℃になるまで空冷し、希釈溶剤としてN,N-ジメチルアセトアミド71.9gを加えた。攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%の脂環式ポリイミドの有機溶剤溶液を得た。得られたポリイミドの有機溶剤溶液をガラス板に塗布し、90℃のホットプレート上で1時間加熱して溶剤を蒸発させた後、ガラス板から剥がして自立膜を得た。この自立膜をステンレス製の固定治具に固定して真空乾燥器中210℃で2時間乾燥して残留有機溶剤の除去を行い、無色透明でフレキシブルな膜厚100μmのフィルムを得た。このフィルムのIRスペクトルを測定したところ、ν(C=O)1784、1703(cm−1)にイミド環の特性吸収が認められ、下記式(5)の繰り返し単位を有するポリイミドであると同定された。
【0080】
【化7】

【0081】
得られたフィルムのガラス転移温度は320℃であった。また、このフィルムを、JIS K7105に準拠して、全光線透過率を測定したところ、91%と高い値を示した。このポリイミドフィルムを空気中220℃で4時間熱処理し、熱処理前後の全光線透過率を測定したが、91%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。また、このポリイミドフィルムを空気中(温度:60℃)にて、200Wの高圧水銀灯を光源として1000時間の照射を行って高エネルギー光処理し、同様に全光線透過率を測定したが、91%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。
【0082】
<参考例7>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、9,9−ビス(4‐アミノフェニル)フルオレン(BAFL)13.9g(0.04モル)および4,4‘−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)3.7g(0.01モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン34.1g及び、N,N―ジメチルアセトアミド8.1gを仕込んで溶解させた後、氷水バスを用いて5℃に冷却した。同温に保ちながら、参考例1で合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物11.2g(0.05モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.25g(0.0025モル)を一括で添加した。次に180℃に昇温して留出液を留去させながら5時間反応を行った。内温が120℃になるまで空冷し、希釈溶剤としてN,N-ジメチルアセトアミド71.9gを加えた。攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%の脂環式ポリイミドの有機溶剤溶液を得た。得られたポリイミドの有機溶剤溶液をガラス板に塗布し、90℃のホットプレート上で1時間加熱して溶剤を蒸発させた後、ガラス板から剥がして自立膜を得た。この自立膜をステンレス製の固定治具に固定して真空乾燥器中210℃で2時間乾燥して残留有機溶剤の除去を行い、無色透明でフレキシブルな膜厚100μmのフィルムを得た。このフィルムのIRスペクトルを測定したところ、ν(C=O)1775、1703(cm−1)にイミド環の特性吸収が認められ、下記式(6)の繰り返し単位を有するポリイミドであると同定された。
【0083】
【化8】

【0084】
得られたフィルムのガラス転移温度は410℃であった。また、このフィルムを、JIS K7105に準拠して、全光線透過率を測定したところ、90%と高い値を示した。このポリイミドフィルムを空気中220℃で4時間熱処理し、熱処理前後の全光線透過率を測定したが、90%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。また、このポリイミドフィルムを空気中(温度:60℃)にて、200Wの高圧水銀灯を光源として1000時間の照射を行って高エネルギー光処理し、同様に全光線透過率を測定したが、90%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。
【0085】
<参考例8>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン25.9g(0.05モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン34.1g及び、N,N―ジメチルアセトアミド8.1gを仕込んで溶解させた後、氷水バスを用いて5℃に冷却した。同温に保ちながら、参考例1で合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物11.2g(0.05モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.25g(0.0025モル)を一括で添加した。次に180℃に昇温して留出液を留去させながら5時間反応を行った。内温が120℃になるまで空冷し、希釈溶剤としてN,N-ジメチルアセトアミド71.9gを加えた。攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%の脂環式ポリイミドの有機溶剤溶液を得た。得られたポリイミドの有機溶剤溶液をガラス板に塗布し、90℃のホットプレート上で1時間加熱して溶剤を蒸発させた後、ガラス板から剥がして自立膜を得た。この自立膜をステンレス製の固定治具に固定して真空乾燥器中210℃で2時間乾燥して残留有機溶剤の除去を行い、無色透明でフレキシブルな膜厚100μmのフィルムを得た。このフィルムのIRスペクトルを測定したところ、ν(C=O)1773、1702(cm−1)にイミド環の特性吸収が認められ、下記式(7)の繰り返し単位を有するポリイミドであると同定された。
【0086】
【化9】

【0087】
得られたフィルムのガラス転移温度は260℃であった。また、このフィルムを、JIS K7105に準拠して、全光線透過率を測定したところ、91%と高い値を示した。このポリイミドフィルムを空気中220℃で4時間熱処理し、熱処理前後の全光線透過率を測定したが、91%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。また、このポリイミドフィルムを空気中(温度:60℃)にて、200Wの高圧水銀灯を光源として1000時間の照射を行って高エネルギー光処理し、同様に全光線透過率を測定したが、91%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。
【0088】
<参考例9>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン10.5g(0.05モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン34.1g及び、N,N―ジメチルアセトアミド8.1gを仕込んで溶解させた後、氷水バスを用いて5℃に冷却した。同温に保ちながら、参考例1で合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物11.2g(0.05モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.25g(0.0025モル)を一括で添加した。次に180℃に昇温して留出液を留去させながら5時間反応を行った。内温が120℃になるまで空冷し、希釈溶剤としてN,N-ジメチルアセトアミド71.9gを加えた。攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%の脂環式ポリイミドの有機溶剤溶液を得た。得られたポリイミドの有機溶剤溶液をガラス板に塗布し、90℃のホットプレート上で1時間加熱して溶剤を蒸発させた後、ガラス板から剥がして自立膜を得た。この自立膜をステンレス製の固定治具に固定して真空乾燥器中210℃で2時間乾燥して残留有機溶剤の除去を行い、無色透明でフレキシブルな膜厚100μmのフィルムを得た。このフィルムのIRスペクトルを測定したところ、ν(C=O)1691、1764(cm−1)にイミド環の特性吸収が認められ、下記式(8)の繰り返し単位を有するポリイミドであると同定された。
【0089】
【化10】

【0090】
得られたフィルムのガラス転移温度は281℃であった。また、このフィルムを、JIS K7105に準拠して、全光線透過率を測定したところ、91%と高い値を示した。このポリイミドフィルムを空気中220℃で4時間熱処理し、熱処理前後の全光線透過率を測定したが、91%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。また、このポリイミドフィルムを空気中(温度:60℃)にて、200Wの高圧水銀灯を光源として1000時間の照射を行って高エネルギー光処理し、同様に全光線透過率を測定したが、91%で変化は無く、目視観察でも着色は見られなかった。
【0091】
<参考例10>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.0g(0.05モル)と、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン85gを仕込んで溶解させた後、ピロメリット酸二無水物10.9g(0.05モル)を室温にて固体のまま1時間かけて分割投入し、室温下2時間撹拌した。得られたポリアミド酸の有機溶剤溶液をガラス板に塗布し、90℃のホットプレート上で1時間加熱して溶剤を蒸発させた後、ガラス板から剥がして自立膜を得た。この自立膜をステンレス製の固定治具に固定して熱風乾燥器中220℃で2時間加熱して溶剤をさらに蒸発させ、さらに300℃で1時間加熱して熱イミド化し、茶褐色のフレキシブルな膜厚100μmのフィルムを得た。このフィルムのIRスペクトルを測定したところ、ν(C=O)1772、1700(cm−1)にイミド環の特性吸収が認められ、下記式(9)の繰り返し単位を有するポリイミドであると同定された。
【0092】
【化11】

【0093】
得られたフィルムをJIS K7105に準拠して、ヘイズメーター(日本電色(株)製 Z−Σ80)により全光線透過率を測定したところ48%であった。
【0094】
<実施例1>
温度計、撹拌器、窒素導入管、冷却管を備えた300mL3つ口フラスコに、窒素気流下、参考例2で合成したポリイミドの有機溶剤溶液110g(固形分20g)と株式会社ADEKA製アデカアークルズGPZ−103を0.019g加え、攪拌しつつ80℃に加熱し1時間後、樹脂組成物を得た。続いてガラス板上に、得られた樹脂組成物を塗布し、90℃のホットプレート上で1時間加熱して溶剤を蒸発させた後、ステンレス製の固定治具に固定して熱風乾燥器中220℃で2時間加熱して溶剤をさらに蒸発させ、厚み100μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの光線透過率と濁度を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
<実施例2>
アデカアークルズGPZ−103を0.019gの代わりに山田化学工業株式会社製YMG−6を0.018g用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
<実施例3>
アデカアークルズGPZ−103を0.019gの代わりに日本化薬株式会社製Kayaset Blue K−FLを0.016g用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
<実施例4>
参考例2で合成したポリイミドの有機溶剤溶液の代わりに参考例3で合成したポリイミドの有機溶剤溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
<実施例5>
参考例2で合成したポリイミドの有機溶剤溶液の代わりに参考例4で合成したポリイミドの有機溶剤溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
<実施例6>
参考例2で合成したポリイミドの有機溶剤溶液の代わりに参考例5で合成したポリイミドの有機溶剤溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
<実施例7>
参考例2で合成したポリイミドの有機溶剤溶液の代わりに参考例6で合成したポリイミドの有機溶剤溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
<実施例8>
参考例2で合成したポリイミドの有機溶剤溶液の代わりに参考例7で合成したポリイミドの有機溶剤溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
<実施例9>
参考例2で合成したポリイミドの有機溶剤溶液の代わりに参考例8で合成したポリイミドの有機溶剤溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
<実施例10>
参考例2で合成したポリイミドの有機溶剤溶液の代わりに参考例9で合成したポリイミドの有機溶剤溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
<実施例11>
日本合成化学工業株式会社製ハードコート剤UV-7600(紫外線硬化型樹脂紫光)10gに酢酸エチル10gと株式会社ADEKA製アデカアークルズGPZ−103を0.1g加えて混合したコート剤を参考例2で得られたフィルムにバーコーターを使用して塗布し60℃で3分乾燥させた後、高圧水銀ランプ80W/cm、10cmH、積算光量450mJ/cmの光を照射し硬化させ(塗布量9μm)、ポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
<実施例12>
株式会社ADEKA製アデカアークルズGPZ−103を0.1gの代わりにGPZ−127を0.1gを用いた以外は実施例11と同様の方法でコート層の厚み7μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
<比較例1>
株式会社ADEKA製アデカアークルズGPZ−103の代わりに住友精化製シアニン色素(極大吸収波長は505nm、670nm、700nm)を0.019g用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
<比較例2>
株式会社ADEKA製アデカアークルズGPZ−103の代わりに三菱化学メディア株式会社製アゾ色素(極大吸収波長は550nm、570nm)を0.019gを用いた以外は実施例1と同様の方法で厚み100μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
<比較例3>
株式会社ADEKA製アデカアークルズGPZ−103を0.0005gを用いた以外は実施例11と同様の方法で塗布量9μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
<比較例4>
参考例2で得られたフィルムの代わりに参考例10で得られたフィルムを用いた以外は実施例11と同様の方法でコート層の厚み7μmのポリイミドフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
<比較例5>
参考例2で得られたポリイミドフィルムの代わりに環状オレフィン系樹脂フィルム(JSR株式会社製ARTON G7810厚み100μm)を用いた以外は実施例11と同様の方法でコート層の厚み7μmのフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す
【0111】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一般式(I)で示される繰り返し単位を有する脂環式ポリイミド樹脂からなる層Aを有し、ハードコーティング剤からなるハードコーティング層Bを任意に含むポリイミドフィルムにおいて、前記層A及び/又は層B中に近赤外領域の波長の光を吸収する色素を含有し、前記層A及び/又は層B中の色素含有率が0.01〜20重量%であることを特徴とするポリイミドフィルム。
【化1】

(式中、Rは炭素数4〜16の4価の脂環族炭化水素基であり、Φは炭素数2〜28の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜28の脂環式炭化水素基、及び炭素数6〜27の芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基を含む2価の基であり、スルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボニル基、メトキシ基、エステル基、エーテル基、フルオロ基等を含んでもよい。)
【請求項2】
前記一般式(I)中のRがシクロヘキサンから誘導される4価の基である請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記色素がフタロシアニン系色素、シアニン系色素、アゾ系色素、及びアントラキノン系色素からなる群より選ばれる1種以上である請求項1または2に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記色素の極大吸収波長が670nm以上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドフィルム。

【公開番号】特開2013−67718(P2013−67718A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207221(P2011−207221)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】