説明

光学素子ヘッドおよび光学素子ヘッドの製造方法

【課題】
連続通電した場合でも光学素子の光量の低下が比較的小さい光学素子ヘッドおよび光学素子ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る光学素子ヘッド1は、一方主面側に複数の光学素子を列状に有するとともに前記一方主面側に凸状に湾曲した長方形状の光学素子アレイ10を、長尺の基板20の上面に熱硬化性の接着剤30を介して列状に複数個接着した光学素子ヘッド1であって、前記光学素子アレイ10は、前記基板20への接着前に予め前記一方主面側に凹状に湾曲させた状態で前記基板20の上面に配列されて、前記接着剤30の硬化後の応力によって前記一方主面側に凸状に湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子または光学素子が列状に複数配置された光学素子ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真等の露光手段として用いられる光学素子ヘッドは、例えば特許文献1に記載されているように、多数の光学素子が配列された光学素子アレイを基板に複数個実装した構造を有している。このような光学素子ヘッドは、光学素子を外部からの画像データに基づいて選択的に発光させるとともに、その光をレンズアレイを介して外部の感光体に照射させ、感光体の表面に静電潜像を形成する機能を有する。そして、感光体に形成された静電潜像は、現像等のプロセスを経てトナー像となり、このトナー像を記録紙に転写および定着させることにより、記録紙に記録される。
【0003】
しかしながら、このような光学素子ヘッドでは、光学素子アレイに配列された多数の光学素子のうち外端部に位置する光学素子の光量が連続通電により低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−268875
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、連続通電した場合でも光学素子の光量の低下が比較的小さい光学素子ヘッドおよび光学素子ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光学素子ヘッドは、一方主面側に複数の光学素子を列状に有するとともに前記一方主面側に凸状に湾曲した長方形状の光学素子アレイを、長尺の基板の上面に熱硬化性の接着剤を介して列状に複数個接着した光学素子ヘッドであって、前記光学素子アレイは、前記基板への接着前に予め前記一方主面側に凹状に湾曲させた状態で前記基板の上面に配列されて、前記接着剤の硬化後の応力によって前記一方主面側に凸状に湾曲していることを特徴とする。
【0007】
また、前記光学素子アレイは、ベース基板と発光層を有する半導体層とを有し、前記ベース基板の熱膨張係数が前記半導体層の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記光学素子アレイの熱膨張係数は、前記基板の熱膨張係数と異なっていることを特徴とする。
【0009】
また、前記光学素子アレイの前記基板への接着前後の湾曲量の変化量が3μm以上であ
り、かつ前記光学素子アレイの接着後の湾曲量が3μm以下であることを特徴とする。
【0010】
さらに、一方主面側に複数の光学素子を列状に有する長方形状の光学素子アレイを、前記一方主面側に凹状に湾曲させた状態で準備する工程と、長尺の基板の上面に熱硬化性の接着剤を介して前記光学素子アレイを列状に複数個配列する工程と、前記光学素子アレイが前記一方主面側に凸状に湾曲して接着されるように、前記接着剤を硬化させる工程とを
含むことを特徴とする光学素子ヘッドの製造方法を併せて提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学素子ヘッドによれば、基板への接着前に予め凹状に湾曲させた光学素子アレイは基板の上面に接着剤を介して配列され、接着剤の硬化後の応力によって凸状に湾曲していることにより、基板への接着後に光学素子アレイの内部に発生する応力を比較的小さくできることから、光学素子に連続通電を行なったとしても光学素子の光量変動を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る光学素子ヘッドの平面図である。
【図2】図2(a)は図1に示した光学素子ヘッドを構成する光学素子アレイの断面図である。図2(b)は光学素子アレイに形成された光学素子の断面図である。図2(c)は光学素子アレイの平面図である。
【図3】図3は光学素子アレイの基板実装前後の湾曲状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(光学素子ヘッド)
以下、本発明の光学素子ヘッドについて、図面を参照しつつ説明する。以下の実施の形態は例示するものであって、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
図1に示す光学素子ヘッド1は、ページプリンター等の電子写真装置に組み込まれ、露光装置として機能する。
【0015】
光学素子ヘッド1は、複数の長方形状の光学素子アレイ10と長尺の基板20とを備えている。複数の光学素子アレイ10は、接着剤30を介して長尺の基板20の上面に、光学素子アレイ10の長手方向と、基板20の長手方向が平行となるように実装されている。本実施形態では光学素子アレイを一列に配列して実装している。
【0016】
基板20は光学素子アレイ10を支持する支持体として、また光学素子アレイ10と外部電源などとの電気的な接続を行う回路基板として機能する。
【0017】
基板20の構成材料としてはいかなる材料であってもよいが、基板20の熱膨張係数は光学素子アレイ10の熱膨張係数と異なっており、本実施形態では基板20の熱膨張係数は、光学素子アレイ10の熱膨張係数よりも大きい。本実施形態ではガラスエポキシ樹脂からなる回路基板を用いている。本実施形態では基板20は矩形状であるが、このような形状に限られない。
【0018】
また、接着剤30は、例えばエポキシ系接着剤のような熱硬化性接着剤により形成されており、基板20の長手方向に沿って基板20の上面に帯状に被着されている。かかる接着剤30は、その一部が基板20と光学素子アレイ10との間に介在され、基板20と光学素子アレイ10とを接着している。
【0019】
一方、光学素子アレイ10は、図2に示すように複数の光学素子11、ベース基板12、第1の電極40、第1の電極パッド40a、第2の電極41、第2の電極パッド41a、絶縁膜15および絶縁保護膜16とを一方主面側に有しており、露光装置の光源として機能する。かかる光学素子アレイ10は、一方主面側が突出するように凸状に湾曲した状態で、基板20に対して固着されている。複数の光学素子11は、ベース基板12の上面の中央領域に列状に配列されて形成されていて、外部からの画像データに基づいて選択的に発光させられる。なお、本実施形態ではベース基板12の上面の中央領域に光学素子1
1を配列したが、ベース基板12の上面における一方の長辺側に沿って配列されていてもよく、光学素子11の配列方法は特に限定する必要はない。
【0020】
ベース基板12は、例えばシリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)などの単結晶半導体基板やサファイア(Al)などの単結晶絶縁基板により形成される。
【0021】
光学素子11の主要部分は、一導電型半導体層13および逆導電型半導体層14より構成されている。
【0022】
一導電型半導体層13は、バッファ層13a、第1のオーミックコンタクト層13b、電子の注入層13cで構成され、本実施形態ではn型の導電型を有している。バッファ層13aは2〜4μm程度の厚みに形成され、第1のオーミックコンタクト層13bは0.1〜1.0μm程度の厚みに形成され、電子の注入層13cは0.2〜0.4μm程度の厚みに形成される。バッファ層13aと第1のオーミックコンタクト層13bとはガリウム砒素(GaAs)などで形成され、電子の注入層13cはアルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)などで形成される。また、第1のオーミックコンタクト層13bはシリコン(Si)などの一導電型半導体不純物を1×1016〜1019atoms/cm程度含有し、電子の注入層13cはシリコン(Si)などの一導電型半導体不純物を1×1016〜1019atoms/cm程度含有する。
【0023】
バッファ層13aはベース基板12と半導体層との格子定数の不整合に基づくミスフィット転位を防止するために設けるものであり、半導体不純物を含有させる必要はない。
【0024】
この一導電型半導体層13の第1のオーミックコンタクト層13bには、第1の電極40が接続される。第1の電極40は更に第1の電極パッド40aと接続され、電極パッド40aと外部の駆動回路とが金(Au)やアルミニウム(Al)などのワイヤー50を介して接続される。
【0025】
また、逆導電型半導体層14は、発光層14a、クラッド層14bおよび第2のオーミックコンタクト層14cで構成され、本実施形態ではp型の導電型を有している。
【0026】
発光層14aとクラッド層14bは0.2〜0.4μm程度の厚みに形成され、第2のオーミックコンタクト層14cは0.02〜0.2μm程度の厚みに形成される。発光層14aとクラッド層14bはアルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)などで形成され、第2のオーミックコンタクト層14cはガリウム砒素(GaAs)などで形成される。発光層14aとクラッド層14bは、電子の閉じ込め効果と光の取り出し効率を考慮してアルミニウム砒素(AlAs)とガリウム砒素(GaAs)との混晶比を異ならしめる。発光層14aとクラッド層14bは亜鉛(Zn)などの逆導電型半導体不純物を1×1016〜1021atoms/cm程度含有し、第2のオーミックコンタクト層14cは亜鉛(Zn)などの逆導電型半導体不純物を1×1019〜1021atoms/cm程度含有する。
【0027】
逆導電型半導体層14の第2のオーミックコンタクト層14cには、第2の電極41が接続される。第2の電極41は更に第2の電極パッド41aと接続され、電極パッド41aと外部の駆動回路とが金(Au)やアルミニウム(Al)などのワイヤー50を介して接続される。
【0028】
そして、ベース基板12の上面における光学素子11が配列された領域Lを挟んで、主に第1の電極40が形成される領域Fおよび第2の電極41が形成される領域Sには絶縁膜15が形成される。絶縁膜15はベース基板12と第1の電極40および第2の電極4
1とを電気的に絶縁する機能を有する。
【0029】
絶縁膜15は、酸化シリコンや窒化シリコンなどにより形成される。ベース基板材料がシリコン(Si)である場合、基板表面の熱酸化処理により形成できる。また、その他の基板材料の場合には、シランガス(SiH)や必要に応じてアンモニアガス(NH)を用いて従来周知のプラズマCVD法などにより被着形成する。
【0030】
第1の電極40および第2の電極41は、ベース基板12の上面に形成した平坦な面を有する絶縁膜15の上面に、例えば、下地導体膜としてクロム(Cr)を150Å以上形成した後、アルミニウム(Al)層、そして金(Au)層などを順次積層形成した多層構造体から成る。第1の電極40の厚みは、例えば1μmである。なお、下地導体膜上に金(Au)層のみ、またはアルミニウム(Al)層のみを形成して、金/クロム(Au/Cr)、アルミニウム/クロム(Al/Cr)の多層構造体であってもよい。
【0031】
絶縁保護膜16は、第1の電極40の形成領域Cおよび第2の電極41の形成領域Sの一部、さらには、光学素子11を覆うように形成されるものであり、例えば透明な材料で構成される。具体的には第1の電極形成領域F、第2の電極形成領域Sの一部とは、少なくとも第1の電極パッド40aおよび第2の電極パッド41aが形成される領域を除いて形成されていることをいう。絶縁保護膜16を形成する材料は、ポリイミド合成樹脂、感光性樹脂、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン、ポリイミドシリコンなどから成る。絶縁保護膜16は2000〜20000Å程度の厚みに形成する。
【0032】
かくして、上述した光学素子ヘッド10は、外部からの画像データに基づいて、複数の発光素子11を選択的に発光させ、その光を電子写真装置内の感光体に照射する露光手段として機能する。
(光学素子ヘッドの製造方法)
次に、図3を用いて光学素子ヘッド10の製造方法について説明する。
【0033】
上述したように、光学素子アレイ10は複数の光学素子11を一方主面10a側に一列に配列されて形成されている。基板20に実装する前の光学素子アレイ10は、図3(a)のように一方主面10a側に凹状に湾曲している。光学素子アレイ10は、従来周知のMOCVD法などにより半導体層を形成し、プラズマCVD法などにより絶縁膜や絶縁保護膜を形成する。
【0034】
光学素子アレイ10を一方主面10a側に凹状に湾曲させるには、例えば、プラズマCVD法により絶縁膜15および保護絶縁膜16を形成する際、RFパワー、温度、圧力、混合ガス比などを調整することにより絶縁膜15や保護絶縁膜16に引張応力を与えることにより実現される。
【0035】
また、ベース基板の熱膨張係数が半導体層の熱膨張係数よりも低い材料とすることが好ましい。例えば、ベース基板をシリコン(Si)とし、半導体層をガリウム砒素(GaAs)などで形成するのが好ましい。なぜならば、半導体層の形成は比較的高温で行われるため、ベース基板の熱膨張係数が半導体層の熱膨張係数よりも小さければ、高温で半導体層の形成を行った後の冷却において、半導体層の収縮量がベース基板の収縮量よりも大きくなるため、半導体層側(光学素子アレイ10の一方主面10a側)に凹状に湾曲することとなる。
【0036】
このように一方主面10a側に凹状に湾曲した光学素子アレイ10を複数個準備する。そして、基板20の上面の所定の位置に接着剤30をディスペンサーなどを用いて薄く均一に帯状に塗布する。ここで所定の位置とは、光学素子アレイ10が配列される部分に対
応する領域である。接着剤30の材料としては、導電性のAgペーストやエポキシ樹脂など、非導電性のエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0037】
次に、基板20の上面に塗布された接着剤30を介して、複数の光学素子アレイ10を光学素子アレイ10の長手方向と、基板20の長手方向が略平行となるように並べて配列する。本実施形態では光学素子アレイ10は一列状に配列されている。
【0038】
そして、基板20に熱を加えることにより接着剤を硬化させる。基板20に熱を加える方法としては、接着剤の硬化温度よりも高い温度に設定したホットプレートに基板20を一定時間載置してもよいし、オーブンに基板20を一定時間載置してもよく、いかなる方法を選択してもよい。
【0039】
光学素子アレイ10と基板20を接着する過程で、光学素子アレイ10を接着剤30を介して配列した基板20を硬化温度まで温度上昇させた場合に、光学素子アレイ10と基板20の熱膨張係数差により、光学素子アレイ10よりも基板20が全体として大きく伸びる。この状態で接着剤30を硬化させ、光学素子アレイ10を接着剤30を介して実装した基板20を冷却すると、光学素子アレイ10および基板20は収縮する。このとき、光学素子アレイ10と基板20の熱膨張係数差により、光学素子アレイ10よりも基板20が全体として大きく収縮する。冷却後の収縮量の差により、光学素子アレイ10には応力がかかる。この応力が光学素子アレイ10の湾曲方向や湾曲度合いに影響を与える。
【0040】
また、接着剤30の弾性率も湾曲度合いに影響を与える。なぜならば、弾性率の比較的高い接着剤30により光学素子アレイ10を基板20へ実装した場合には、光学素子アレイ10と基板20は比較的強固に接着されるため、基板20の収縮に伴い光学素子アレイ10も比較的大きく湾曲する。
【0041】
一方、弾性率の比較的低い接着剤30により光学素子アレイ10を基板20へ実装した場合には、光学素子アレイ10と基板20は比較的柔軟に接着されるため、基板20が大きく収縮したとしても、接着剤30が緩衝材としての役割を果たし、光学素子アレイ10への影響を抑え、光学素子アレイ10の湾曲量は比較的小さく抑えられる。
【0042】
そして、光学素子アレイ10に形成された第1の電極パッド40aと第2の電極パッド41aとを、金(Au)やアルミニウム(Al)などのワイヤー50を介して外部の駆動回路にワイヤーボンディングすることにより光学素子ヘッド1は完成する。
【0043】
本実施形態の光学素子ヘッド1によれば、予め一方主面10a側に凹状に湾曲した光学素子アレイ10を、基板20に接着剤30を介して配列し、接着剤を硬化させるときの熱応力によって一方主面10a側に凸状に湾曲した光学素子アレイ10とすることができるため、光学素子11に連続通電を行なったとしても光学素子11の光量の低下を小さくすることが可能となる。
【0044】
光学素子11の連続通電による光量の低下が小さくなる理由を次のように考える。
【0045】
光学素子アレイ10の製造過程や光学素子ヘッド1の製造過程で、光学素子11には内部応力が多かれ少なかれ発生する。特に、光学素子アレイ10が長尺になればなるほど、光学素子アレイ10の光学素子11の配列方向の両端部には応力が集中しやすくなる。その原因は、ベース基板12の熱膨張係数と光学素子11の熱膨張係数の差であったり、絶縁膜15や絶縁保護膜16を形成するときに保護膜の有する内部応力であったり、光学素子アレイ10を基板20に実装する際の応力などが考えられる。
【0046】
上記の原因により、光学素子アレイ10の内部に応力が発生し、さらに連続通電を行うことにより、光学素子アレイ10の内部に空孔などの欠陥が増加し、最終的には空孔などの欠陥が結合して光学素子アレイ10の内部クラックを誘発し、結果として発光機能を失うものと考えられる。
【0047】
そこで、光学素子アレイ10の製造過程で光学素子11に印加される応力を、光学素子
ヘッド1の製造過程で緩和することで、光学素子11の連続通電による光量低下が抑えられるものと考える。
【0048】
光学素子11の連続通電による光量低下を少なくするためには、光学素子アレイ10を予め一方主面10a側に凹状に湾曲させ、基板20に対して実装した後の一方主面側に凸状の湾曲量は3μm以下であり、かつ基板20へ実装する前後の湾曲量の変化量が3μm以上とするのが好ましい。
【0049】
ここで湾曲量とは、光学素子アレイ10の一方主面10aの反り量のことであり、レーザーなどを利用した非接触型反り測定装置、プローブピンなどを利用した接触型反り測定装置などで測定する。
【0050】
レーザーやプローブピンを利用した測定装置では、光学素子アレイ10の長手方向に光学素子アレイ10の一端から他端までレーザーやプローブピンを走査させ、光学素子アレイの表面プロファイルを測定する。そして、光学素子アレイ10の両端を基準とする仮想の基準線を作成し、該基準線から最も離れた表面プロファイルまでの距離を反り量(湾曲量)とすればよい。反り量(湾曲量)の正負は、光学素子アレイ10の一方主面側に凸状の場合を正、凹状の場合を負とする。
【0051】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は実施形態に示したものだけに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で改良や変更することができることは言うまでもない。
【0052】
例えば、本実施形態では基板20の上面には光学素子アレイ10のみが実装されているが、光学素子アレイ10と光学素子11の発光を制御する駆動ICを基板20の上面に実装し、光学素子アレイ10とワイヤーボンディング接続を行ってもよい。
【0053】
また、光学素子11(光学素子アレイ10)の一方主面10aに第1の電極パッド40aおよび第2の電極パッド4a1の両方を形成したが、光学素子11(光学素子アレイ10)の一方主面10aに第2の電極パッドを形成し、光学素子11(光学素子アレイ10)の他方主面に第1の電極パッドを形成し、接着剤30を導電性にすることにより基板20に形成された接続パッド(不図示)と接続してもよい。
【実施例】
【0054】
ベース基板、半導体層ともにガリウム砒素(GaAs)からなる0.3mm×8.1mmの光学素子アレイを26個、9×260mmのエポキシ樹脂基板に実装した光学素子ヘッドを作製した。光学素子アレイにはそれぞれ192個の光学素子が形成されている。光学素子アレイをエポキシ基板に接着する接着剤として、高弾性率(6400N/mm
のエポキシ系接着剤と、低弾性率(2500N/mm)のエポキシ系接着剤の2種類を
用いた。
【0055】
光学素子アレイの湾曲量(反り量)は、エポキシ基板への実装前後のそれぞれにおいてレーザーによる非接触型反り測定装置により測定した。そして、実装後の湾曲量(反り量)から実装前の湾曲量(反り量)を引いた値を湾曲量の変化量とした。
【0056】
また、光学素子のそれぞれに17mAを500時間連続通電し、連続通電前後の光量低下を評価した。フォトセンサーにより通電前後の各光学素子の光量を測定し、通電前後の光量変動率(=通電前の光量÷通電後の光量×100[%])が、すべての光学素子において5%以内であれば光量低下◎、5%を超え10%以内であれば光量低下○、10%を超えれば光量低下×と判断した。評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1のNo.1、2および6が実施例であり、No.3〜5は比較例である。
【0059】
光学素子アレイの基板への実装前湾曲量が正の値を持つ場合、つまり光学素子アレイの一方主面側に凸状となる湾曲を有している光学素子ヘッドはいずれも連続通電による光学素子の光量変動率が10%を超え、光量低下×の判定であった。
【0060】
光学素子アレイの基板への実装前湾曲量が負の値を持つ場合、つまり光学素子アレイの一方主面側に凹状となる湾曲を有している光学素子ヘッドであっても、実装前後の湾曲量の変化量が3μm以下である場合には、連続通電による光学素子の光量変動が5%を超え10%以内であり、光量低下○の判定であった。
【0061】
光学素子アレイの基板への実装前の湾曲量が負の値を持ち、つまり光学素子アレイが一方主面側に凹状となる湾曲を有し、実装後の湾曲量が3μm以下であり、かつ実装前後の湾曲量の変化量が3μm以上である場合には連続通電による光学素子の光量低下は5%以内であり、光量低下◎の判定であった。
【符号の説明】
【0062】
1 光学素子ヘッド
10 光学素子アレイ
10a 一方主面
11 光学素子
12 ベース基板
13 一導電型半導体層
13a バッファ層
13b 第1のオーミックコンタクト層
13c 電子の注入層
14 逆導電型半導体層
14a 発光層
14b クラッド層
14c 第2のオーミックコンタクト層
15 絶縁膜
16 絶縁保護膜
20 基板
30 接着剤
40 第1の電極
40a 第1の電極パッド
41 第2の電極
41a 第2の電極パッド
50 ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方主面側に複数の光学素子を列状に有するとともに前記一方主面側に凸状に湾曲した長方形状の光学素子アレイを、長尺の基板の上面に熱硬化性の接着剤を介して列状に複数個接着した光学素子ヘッドであって、
前記光学素子アレイは、前記基板への接着前に予め前記一方主面側に凹状に湾曲させた状態で前記基板の上面に配列されて、前記接着剤の硬化後の応力によって前記一方主面側に凸状に湾曲していることを特徴とする光学素子ヘッド。
【請求項2】
前記光学素子アレイは、ベース基板と発光層を有する半導体層とを有し、前記ベース基板の熱膨張係数が前記半導体層の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の光学素子ヘッド。
【請求項3】
前記光学素子アレイの熱膨張係数は、前記基板の熱膨張係数と異なっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学素子ヘッド。
【請求項4】
前記光学素子アレイの前記基板への接着前後の湾曲量の変化量が3μm以上であり、か
つ前記光学素子アレイの接着後の湾曲量が3μm以下であることを特徴とする請求項1乃
至請求項3のいずれか1項に記載の光学素子ヘッド。
【請求項5】
一方主面側に複数の光学素子を列状に有する長方形状の光学素子アレイを、前記一方主面側に凹状に湾曲させた状態で準備する工程と、
長尺の基板の上面に熱硬化性の接着剤を介して前記光学素子アレイを列状に複数個配列する工程と、
前記光学素子アレイが前記一方主面側に凸状に湾曲して接着されるように、前記接着剤を硬化させる工程とを含むことを特徴とする光学素子ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−228779(P2012−228779A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96694(P2011−96694)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】