光学素子及び表示装置
【課題】多色画像を優れた色再現性で表示可能とする。
【解決手段】本発明の光学素子10は、誘電率異方性を有する材料LCとソルバトクロミック色素SDとを含んだ光学的可変層13と、前記光学的可変層13に電圧を印加する電極12a,12bとを具備する。
【解決手段】本発明の光学素子10は、誘電率異方性を有する材料LCとソルバトクロミック色素SDとを含んだ光学的可変層13と、前記光学的可変層13に電圧を印加する電極12a,12bとを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパは、表示すべき画像の変更が可能であり、紙に匹敵する携帯性を有している表示装置である。電子ペーパは、情報伝達に使用する紙の一部を置換し得る。それ故、電子ペーパは、森林資源の保護に寄与し得る。
【0003】
このような表示装置において多色画像を表示すべくカラーフィルタを使用した場合、高い解像度と紙に匹敵する厚さとを達成することは難しい。また、表示すべき画像の変更は、電気的な手法によって行うことが有利である。即ち、カラーフィルタなしで多色画像を表示可能であることが望ましい。
【0004】
特許文献1乃至3には、金属イオンを含んだ電解液を使用する表示技術が記載されている。この表示技術では、電解液に通電することによって、電解液から金属を析出させる。表示色は、例えば金属微粒子の粒径に応じて変化する。従って、この表示技術によると、カラーフィルタなしで多色画像を表示することが可能である。
【特許文献1】特開2007−11260号公報
【特許文献2】特開2007−240668号公報
【特許文献3】特開2007−279163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属微粒子の粒径を高い精度で制御することは困難である。それ故、先の表示技術によると、色再現性が不十分になり易い。
本発明の目的は、多色画像を優れた色再現性で表示可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によると、誘電率異方性を有する材料とソルバトクロミック色素とを含んだ光学的可変層と、前記光学的可変層に電圧を印加する第1及び第2電極とを具備した光学素子が提供される。
【0007】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る光学素子と、前記第1及び第2電極間に駆動電圧を印加する駆動回路とを含んだ表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、多色画像を優れた色再現性で表示することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
まず、ソルバトクロミズムについて説明する。
ソルバトクロミズムは、溶媒の種類に応じて色素溶液の色が変化する現象であり、次のように解釈されている。
【0011】
大きな電気双極子モーメント(以下、「双極子モーメント」は、「電気双極子モーメント」を意味することとする)を有しており、基底状態と励起状態とで双極子モーメントの大きさが著しく異なる色素分子は、溶媒の極性が高いほど基底状態又は励起状態の一方がより安定化される。その結果、基底状態から励起状態への電子遷移エネルギーが変化し、吸収波長のシフトを引き起こす。この現象はソルバトクロミズムと呼ばれており、このような色素はソルバトクロミック色素と呼ばれている。
ソルバトクロミズムについて、数式及び図面を参照しながら、更に詳しく説明する。
【数1】
【0012】
上記数式(1)において、ΔE及びΔE’は、それぞれ、溶媒の極性が低い場合及び高い場合におけるソルバトクロミック色素の基底状態から励起状態への電子遷移エネルギーを表している。μ(g)及びμ(ex)は、それぞれ、基底状態及び励起状態における色素分子の双極子モーメントを表している。ε及びnは、それぞれ、溶媒の誘電率及び屈折率を表している。なお、等式(1)におけるL(ε)及びL(n2)の各々は、上記等式(2)から算出される値である。
【0013】
数式(1)は、溶媒の極性が高い場合における電子遷移エネルギーΔE’と溶媒の極性が低い場合の電子遷移エネルギーΔEとの差、即ち電子遷移エネルギーの変化量ΔE’―ΔEが、双極子モーメントμ(g)及びμ(ex)と誘電率εと屈折率nとの関数であることを示すものであり、McRaeモデルと呼ばれている。ここでは、簡単のため、励起状態の双極子モーメントと基底状態の双極子モーメントとが成す角度は0°(又は180°)としている。なお、溶媒の極性の概念には、水素結合性や電子供与性も含まれるが、McRaeモデルではこれらは考慮されていない。
【0014】
数式(1)から、色素の基底状態と励起状態とで双極子モーメントの大きさが著しく異なっていることが分かる。即ち、双極子モーメントμ(ex)の大きさと双極子モーメントμ(g)の大きさとの差μ(ex)−μ(g)が大きい場合には変化量ΔE’―ΔEが大きいことと、双極子モーメントμ(ex)及びμ(g)の各々が大きい場合には変化量ΔE’―ΔEが大きいことが分かる。換言すれば、色素の双極子モーメントと吸収波長のシフト量、即ち色の変化量との関係が分かる。また、変化量ΔE’―ΔEの極性、即ち吸収波長の変化の方向は、差μ(ex)−μ(g)の符号に依存していることが分かる。
【0015】
図1は、正のソルバトクロミズムを示す色素の一例と、その基底状態及び励起状態における双極子モーメントとを示す図である。図2は、負のソルバトクロミズムを示す色素の一例と、その基底状態及び励起状態における双極子モーメントとを示す図である。図3は、図1に示す色素が示すソルバトクロミズムのエネルギー図である。図4は、図2に示す色素が示すソルバトクロミズムのエネルギー図である。図1には、正のソルバトクロミズムを示す色素の一例として、Phenol Blue色素を示している。図2には、負のソルバトクロミズムを示す色素の一例として、Reichardt色素を示している。なお、図1及び図2に示す構造式は、必ずしも化合物内における電子密度を正確に表現しているものではない。
【0016】
図1に示すように差μ(ex)−μ(g)が正の値である場合、ソルバトクロミズムは、正のソルバトクロミズムと呼ばれる。この場合、図3に示すように、溶媒の極性を高めると、吸収波長は長波長方向にシフトする。
【0017】
図2に示すように差μ(ex)−μ(g)が正の値である場合、ソルバトクロミズムは、負のソルバトクロミズムと呼ばれる。この場合、図4に示すように、溶媒の極性を高めると、吸収波長は短波長方向にシフトする。
【0018】
溶媒がソルバトクロミズムに及ぼす影響について、更に詳しく説明する。
等式(1)において、値L(n2)は電子分極を表し、値L(ε)と値L(n2)との差L(ε)−L(n2)は、誘電率から電子分極の寄与を差し引いたものである配向分極を表している。等式(1)から分かるように、溶媒の配向分極及び電子分極が大きい場合、変化量ΔE’―ΔEが大きい。即ち、この場合、色素の色変化量が大きい。
【0019】
溶媒の配向分極は、溶媒の双極子に起因するものである。他方、溶媒の電子分極は、溶媒の誘起双極子に起因するものである。それ故、ソルバトクロミズムは、色素分子の双極子と色素分子の近傍に存在している溶媒の双極子及び誘起双極子との相互作用に由来した現象であると言える。従って、この相互作用の大きさを電場によって変化させることができれば、溶媒を変えることなしに、ソルバトクロミック色素の色、特には色相を変化させることができる筈である。
【0020】
そこで、後で詳しく説明する本発明の各態様では、誘電率異方性を有している材料をソルバトクロミック色素の近傍に位置させ、誘電率異方性を有している材料に対して電気駆動信号を与える。これにより、溶媒を変えることなしに、ソルバトクロミック色素の色変化を実現する。
【0021】
この色変化について、図5及び図6を参照しながら説明する。
図5は、色素分子の双極子モーメントと溶媒分子の配向状態との関係を概略的に示す図である。なお、図5は、誘電率異方性を有している材料として液晶材料を使用した場合を想定している。
【0022】
前述の通り、溶媒の極性は、単純に誘電率で解釈できるものではないが、ここでは、McRaeモデルに基づき、誘電率に着目して溶媒の極性を考える。
【0023】
液晶材料は、分子長軸に平行な誘電率と長軸に垂直な誘電率とが異なるという誘電率異方性を有している材料である。
【0024】
図5に示す配向状態A1では、ソルバトクロミック色素分子SDの双極子モーメントμdyeは、液晶分子LCの長軸に対して平行である。他方、図5に示す配向状態A2では、ソルバトクロミック色素分子SDの双極子モーメントμdyeは、液晶分子LCの長軸に対して垂直である。
【0025】
従って、配向状態A1では、ソルバトクロミック色素分子SDは、液晶分子LCの長軸に平行な誘電率ε‖の環境下に置かれていると考えられる。他方、配向状態A2では、ソルバトクロミック色素分子SDは、液晶分子LCの長軸に垂直な誘電率ε⊥の環境下に置かれていると考えられる。
【0026】
図6は、色素分子の双極子と溶媒分子の双極子及び誘起双極子との相互作用を概略的に示す図である。ここでは、液晶分子LCは、正の誘電異方性(ε‖>ε⊥)を有しているネマチック液晶であるとする。
【0027】
配向状態A1では、液晶分子LCの短軸に平行な屈折率α0⊥に起因する誘起双極子モーメントμLC⊥は、色素分子SDの双極子モーメントμdyeに対して垂直である。他方、配向状態A2では、液晶分子LCの双極子モーメントμLC及び液晶分子LCの長軸に平行な屈折率α0‖に起因する誘起双極子モーメントμLC‖は、色素分子SDの双極子モーメントμdyeと直交している。直交している双極子モーメントの相互作用はゼロである。
【0028】
それ故、配向状態A1では、液晶分子LCの双極子モーメントμLCと、液晶分子LCの長軸に平行な屈折率α0‖に起因する誘起双極子モーメントμLC‖とが、色素分子SDの双極子モーメントμdyeと相互作用する。他方、配向状態A2では、液晶分子LCの短軸に平行な屈折率α0⊥に起因する誘起双極子モーメントμLC⊥が、色素分子SDの双極子モーメントμdyeと相互作用する。
【0029】
従って、配向状態A1において色素分子SDの双極子モーメントμdyeが受ける相互作用エネルギーは、−μdyeμLC/(4πε0r3)−2μdye2α0‖/((4πε0)2r6)である。そして、配向状態A2において色素分子SDの双極子モーメントμdyeが受ける相互作用エネルギーは、−2μdye2α0⊥/((4πε0)2r6)である。なお、ここで、ε0は真空の誘電率を表し、rは液晶分子LCと色素分子SDの距離を表している。
【0030】
このように、配向状態A1は、配向状態A2と比較して、色素分子SDの双極子と液晶分子LCの双極子及び誘起双極子との相互作用が大きい。上記の通り、この相互作用の大きさは、ソルバトクロミック色素の色と相関している。そして、配向状態A1と配向状態A2との間の変化は、電場によって生じさせることができる。従って、ソルバトクロミック色素と液晶材料とを組み合わせると、ソルバトクロミック色素の色を電場によって変化させることができる。それ故、この技術を利用すると、カラーフィルタなしで多色画像を表示することができる。
【0031】
また、上記の通り、ソルバトクロミック色素の色は、色素分子SDの双極子と液晶分子LCの双極子及び誘起双極子との相互作用の大きさと相関している。従って、電場の強さを3つ以上の値の間で変化させると、3つ以上の色を表示することができる。それ故、この技術を表示装置に適用した場合、画素に比較的単純な構造を採用しながらも、多色画像を表示することができる。
【0032】
例えば、減法混色を利用したゲスト−ホストモードの液晶表示装置では、3原色に対応した3つの液晶層を積層する必要がある。これに対し、上述した技術によると、ソルバトクロミック色素と液晶材料とを含んだ単一の層に、例えば、3原色、それらの中間色及び白色を表示させることができる。それ故、高精細化した場合であっても、視差に起因した表示品位の劣化を生じ難い。
【0033】
更に、電場の大きさは、高い精度で制御できる。従って、上述した技術によると、優れた色再現性を達成できる。
【0034】
また、複屈折を利用した液晶表示装置では、広い視野角を達成することが難しい。加えて、複屈折を利用した液晶表示装置では、偏光子が必要である。これに対し、上述した技術では、ソルバトクロミック色素の吸収を利用しているため、広い視野角を容易に達成することができる。しかも、この技術では、偏光子は不要であるため、明るい表示が可能である。
【0035】
次に、上述した技術を適用した光学素子について説明する。
図7は、本発明の第1態様に係る光学素子が黄色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。図8は、図7に示す光学素子がマゼンタ色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。図9は、図7に示す光学素子がシアン色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。
【0036】
図7乃至図9に示す光学素子10は、反射型の光学素子である。この光学素子10は、基板11a及び11bと、図示しないシール層と、電極12a及び12bと、光学的可変層13と、図示しない反射層とを含んでいる。この光学素子10は、基板11a側が背面側であり、基板11b側が前面側である。
【0037】
基板11a及び11bは、互いに向き合っている。基板11aは、光透過性を有しており、典型的には無色及び/又は透明である。
【0038】
シール層は、枠形状を有しており、基板11a及び11b間に介在している。基板11a及び11bとシール層とは、中空構造を有しているセルを構成している。なお、このセル内には、基板11a及び11b間の距離の均一性を向上させるべく、スペーサを配置してもよい。
【0039】
電極12a及び12bは、基板11aと基板11bとの間に位置している。電極12a及び12bは、それぞれ、基板11a及び11bに支持されている。電極12a及び12bは、光透過性を有しており、典型的には無色及び/又は透明である。
【0040】
光学的可変層13は、誘電率異方性を有する材料とソルバトクロミック色素とを含んでいる。具体的には、光学的可変層13は、色素層13SDと液晶層13LCとを含んでいる。
【0041】
色素層13SDは、電極12aを被覆している。色素層13SDは、電極12a上に固定化されたソルバトクロミック色素SDを含んでいる。ここでは、一例として、ソルバトクロミック色素SDは、負のソルバトクロミズムを示すとする。また、ここでは、一例として、ソルバトクロミック色素SDは、基底状態又は励起状態における双極子モーメントが基板11aの基板11bとの対向面に対して平行な1方向を向くように配向しているとする。以下、この方向を、「色素分子SDの配向方向」と呼ぶ。なお、色素層13SDと電極12aとの間には、絶縁層が介在していてもよい。或いは、色素層13SDは、絶縁層とこれに固定化されたソルバトクロミック色素SDとを含んでいてもよい。
【0042】
液晶層13LCは、色素層13SDと電極12bとの間に介在している。液晶層13LCは、基板11a及び11bとシール層とによって囲まれた密閉空間を満たした液晶材料からなる。ここでは、一例として、液晶材料は、誘電率異方性が正のネマチック液晶であり、電圧無印加状態において、液晶分子LCの長軸又は双極子モーメントが色素の配向方向と略平行となるように配向しているとする。以下、液晶分子LCの長軸又は双極子モーメントの方向を、「液晶分子LCの配向方向」と呼ぶ。
【0043】
なお、液晶材料は、例えば、液晶層13LCに隣接して配向膜を設けるか、又は、液晶層13LCに隣接した層に配向処理を施すことにより配向させることができる。配向膜の形成又は配向処理には、例えば、ラビング処理又は光配向技術を利用することができる。
【0044】
反射層は、基板11aの背面側に設置されている。反射層は、基板11aと色素層13SDとの間に設置してもよい。或いは、反射層を設ける代わりに、電極12aとして、金属層又は合金層などの光反射性の電極を使用してもよい。
【0045】
この光学素子10の電極12a及び12bは、駆動回路20に接続されている。駆動回路は、可変電圧源を含んでいる。可変電圧源は、交流電圧源であってもよく、直流電圧源であってもよい。
【0046】
なお、光学素子10と駆動回路20との組み合わせは、例えば、表示装置として利用することができる。
【0047】
この光学素子10を前方から白色光で照明すると、この白色光は、基板11b、電極12b及び液晶層13LCをこの順に透過し、色素層13SDに入射する。色素層13SDは、この入射光の一部を吸収し、他の一部を透過させる。色素層13SDを透過した光は、基板11aを透過し、反射層によって反射される。この反射光は、基板11aを透過し、色素層13SDに入射する。色素層13SDは、この入射光の一部を吸収し、他の一部を透過させる。色素層13SDを透過した光は、液晶層13LC、電極12b及び基板11bをこの順に透過する。観察者は、この透過光を表示光として知覚する。即ち、観察者は、色素層13SDが吸収した光の色の補色を知覚する。
【0048】
図7に示すように、電極12a及び12bに電圧を印加していない場合、液晶分子LCの配向方向は、色素分子SDの配向方向に対して平行である。この状態は、図5及び図6を参照しながら説明した配向状態A1に相当している。この状態では、色素層13SDは、例えば青色の光を吸収する。この場合、観察者は、青色の補色である黄色を知覚する。
【0049】
電極12a及び12bに絶対値が比較的小さな電圧(以下、「電圧」は「電圧の絶対値」を意味していることとする)を印加すると、液晶分子LCは、図8に示すように、基板11aに対して傾く。その結果、色素層13SDの吸収波長域は、長波長方向にシフトする。この状態では、色素層13SDは、例えば緑色の光を吸収する。この場合、観察者は、緑色の補色であるマゼンタ色を知覚する。
【0050】
電極12a及び12bに印加する電圧を更に高くすると、液晶分子LCは、図9に示すように、基板11aの主面に対して略垂直に、即ち、表示面に対して略垂直に配向する。この状態は、図5及び図6を参照しながら説明した配向状態A2に相当している。この状態では、色素層13SDは、例えば赤色の光を吸収する。この場合、観察者は、赤色の補色であるシアン色を知覚する。
【0051】
なお、正のソルバトクロミズムを示すソルバトクロミック色素SDを使用した場合、電極12a及び12b間に印加する電圧を高めると、色素層13SDの吸収波長域は短波長方向にシフトする。従って、この場合、例えば、電極12a及び12bに電圧を印加していないときに、色素層13SDが赤色の光を吸収するように設計してもよい。電圧無印加時における吸収波長域、並びに、印加電圧の上昇に伴う吸収波長域のシフト方向及びシフト量は、例えば、使用する液晶材料及びソルバトクロミック色素材料並びに電圧の大きさによって制御できる。
【0052】
次に、本発明の第2態様を説明する。第2態様では、電極12a及び12bをそれぞれ基板11a及び11bに支持させる代わりに、電極12a及び12bの双方を基板11aに支持させる。
【0053】
図10は、本発明の第2態様に係る光学素子が黄色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。図11は、図10に示す光学素子がマゼンタ色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。図12は、図10に示す光学素子がシアン色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。
【0054】
図13は、図11に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図である。図14は、図12に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図である。図15は、図13に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図である。なお、図13乃至図15は、表示面に垂直な方向から観察したソルバトクロミック色素分子及び液晶分子の配置を描いている。
【0055】
図10乃至図12に示す光学素子10は、以下の構成を採用したこと以外は、図7乃至図9を参照しながら説明した光学素子10と同様の構成を有している。
【0056】
即ち、この光学素子10では、電極12a及び12bの双方が基板11aと光学的可変層13との間に位置している。電極12a及び12bは、各々が一方向に延びた形状を有しており、それらの長さ方向が平行になるように配置されている。ソルバトクロミック色素分子SDの配向方向は、電極12a及び12bの長さ方向に対して略平行である。そして、液晶分子LCの電圧無印加状態における配向方向も、電極12a及び12bの長さ方向に対して略平行である。
【0057】
電極12a及び12bに電圧を印加していない場合、液晶分子LCの配向方向は、図10及び図13に示すように、色素分子SDの配向方向に対して平行である。この状態は、図7を参照しながら説明した状態と同様である。従って、この場合、観察者は、例えば、青色の補色である黄色を知覚する。
【0058】
電極12a及び12bに比較的低い電圧を印加すると、液晶分子LCは、図11及び図14に示すように、表示面に対して略平行であり且つ電極12a及び12bの長さ方向に対して傾いた方向に配向する。この状態は、図8を参照しながら説明した状態と等価である。従って、この場合、観察者は、例えば、緑色の補色であるマゼンタ色を知覚する。
【0059】
電極12a及び12bに印加する電圧を更に高くすると、液晶分子LCは、図12及び図15に示すように、表示面に対して略平行であり且つ電極12a及び12bの長さ方向に対して略垂直な方向に配向する。この状態は、図9を参照しながら説明した状態と等価である。従って、この場合、観察者は、例えば、赤色の補色であるシアン色を知覚する。
【0060】
次に、本発明の第3態様を説明する。第3態様では、ソルバトクロミック色素を固定化せずに、液晶材料と混合する。
【0061】
図16は、本発明の第3態様に係る光学素子が或る色を表示している様子を概略的に示す断面図である。図17は、図16に示す光学素子が他の色を表示している様子を概略的に示す断面図である。なお、参照符号15及び16は、それぞれ、上述したシール層及び反射層16を示している。
【0062】
図16及び図17に示す光学素子10は、以下の構成を採用したこと以外は、図7乃至図9を参照しながら説明した光学素子10と同様の構成を有している。
【0063】
即ち、この光学素子10では、光学的可変層13は、単層構造を有している。光学的可変層13は、ソルバトクロミック色素と液晶材料とを含んだ混合物からなる。そして、電極12a及び12bは、それぞれ、絶縁層17a及び17bによって被覆されている。
【0064】
図16に示すように、電圧無印加状態においては、液晶分子LCの双極子モーメントの向きはランダムであるか、又は、液晶材料は低い配向秩序度で配向している。同様に、ソルバトクロミック色素SDの双極子モーメントの向きはランダムであるか、又は、ソルバトクロミック色素SDは低い配向秩序度で配向している。ここでは、一例として、電圧無印加状態において、液晶分子LCの双極子モーメントの向き及びソルバトクロミック色素SDの双極子モーメントの向きはランダムであるとする。この場合、ソルバトクロミック色素分子SDは、液晶材料の平均的な誘電率環境下に置かれている。
【0065】
電極12a及び12b間に十分に高い電圧を印加すると、液晶分子LCは、表示面に対して略垂直に配向する。これに伴い、ソルバトクロミック色素SDの配向秩序度も高くなる。その結果、ソルバトクロミック色素SDの色が変化する。即ち、表示色、特には色相が変化する。
【0066】
例えば、ソルバトクロミック色素SDとして、Reichardt色素などの負のソルバトクロミズムを示すものを用いた場合には、電極12a及び12b間に印加する電圧を高くすると、光学的可変層13の吸収スペクトルは短波長方向へとシフトする。他方、ソルバトクロミック色素SDとして、Phenol Blue色素などの正のソルバトクロミズムを示すものを用いた場合には、電極12a及び12b間に印加する電圧を高くすると、光学的可変層13の吸収スペクトルは長波長方向へとシフトする。
【0067】
このように、ソルバトクロミック色素と液晶材料とを混合した場合であっても、電極12a及び12b間に印加する電圧の大きさに応じた表示色の変化を生じさせることができる。
【0068】
また、この光学素子10では、ソルバトクロミック色素と液晶材料とを混合しているので、色素層13SDを形成する必要がない。従って、この光学素子10は、図7乃至図9を参照しながら説明した光学素子10と比較して製造が容易である。
【0069】
ソルバトクロミック色素と液晶材料とを含んだ混合は、マイクロカプセル化してもよい。即ち、この混合物とこれを収容した透明膜とを含んだマイクロカプセルを用いて、光学的可変層13を構成してもよい。
【0070】
ソルバトクロミック色素の一部のみを液晶材料と混合し、ソルバトクロミック色素の残りを固定化してもよい。また、電極12a及び12bの双方を基板11aに支持させてもよい。
【0071】
次に、本発明の第4態様を説明する。第4態様では、ソルバトクロミック色素を配向させることなしに又は低い配向秩序度で配向させて固定化する。
【0072】
図18は、本発明の第4態様に係る光学素子が或る色を表示している様子を概略的に示す断面図である。図19は、図18に示す光学素子が他の色を表示している様子を概略的に示す断面図である。なお、図18及び図19には、光学素子10のうち光学的可変層13の一部のみを描いている。また、図18には電圧無印加状態を描いており、図19には、十分な大きさの電圧を印加した状態を描いている。
【0073】
図18及び図19に示す光学素子10は、以下の構成を採用したこと以外は、図7乃至図9を参照しながら説明した光学素子10と同様の構成を有している。
【0074】
即ち、この光学素子10では、光学的可変層13は、ソルバトクロミック色素SD及び液晶材料に加えて、多孔質体13Pを更に含んでいる。多孔質体13Pは、電極12a及び12b間に挟まれた層を形成している。ソルバトクロミック色素SDは、多孔質体13Pの細孔の壁面上に固定化されている。
【0075】
電圧無印加状態では、図18に示すように、液晶分子LCの双極子モーメントは、その近傍に位置したソルバトクロミック色素SDの双極子モーメントに対して略平行である。従って、光学的可変層13は、例えば、図7を参照しながら説明したのと同様の色を表示する。
【0076】
電極12a及び12b間に十分に高い電圧を印加すると、図19に示すように、液晶分子LCは、略一方向に配向する。これに伴い、液晶分子LCの双極子モーメントとその近傍に位置したソルバトクロミック色素SDの双極子モーメントとが成す平均角度が大きくなる。その結果、ソルバトクロミック色素SDの色が変化する。即ち、表示色、特には色相が変化する。
【0077】
このように、ソルバトクロミック色素を多孔質体上に固定化した場合であっても、電極12a及び12b間に印加する電圧の大きさに応じた表示色の変化を生じさせることができる。
【0078】
また、多孔質体13Pは、電極12aと比較して面積が遥かに大きい。従って、多孔質体13Pを使用した場合、より多くのソルバトクロミック色素SDを固定化することができる。それ故、より高い色濃度を達成できる。
【0079】
なお、ソルバトクロミック色素の一部のみ固定化し、ソルバトクロミック色素の残りを液晶材料と混合してもよい。また、電極12a及び12bの双方を基板11aに支持させてもよい。
【0080】
次に、上述した光学素子10の材料等について説明する。
基板11a及び11bとしては、例えば、十分な強度と絶縁性とを有しているものを使用する。基板11aとしては、光透過性を有している基板、典型的には透明基板を使用する。基板11bは、光透過性を有していてもよく、有していなくてもよい。基板11a及び11bの材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、セラミック及び金属を使用することができる。
【0081】
電極12a及び12bのうち、光学的可変層13と観察者との間に設置するものは、光透過性を有しており、典型的には透明である。光透過性を有している電極の材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電性材料を使用することができる。不透明又は半透明な電極の材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金及び白金など金属又はそれらの合金を使用することができる。電極12a及び12bは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。電極12a及び12bは、例えば、蒸着及びスパッタリングなどの気相堆積法による成膜を行い、必要に応じて例えばフォトリソグラフィを利用したパターニングを行うことにより得られる。
【0082】
シール層15の材料としては、例えば接着剤を使用することができる。
基板11a及び11b間にスペーサを設置する場合、スペーサとしては、例えば、液晶表示装置で使用されているのと同様の粒状スペーサ又は柱状スペーサを使用することができる。粒状スペーサ及び柱状スペーサは、電気的に絶縁性である。粒状スペーサの材料としては、例えば、ジビニルベンゼン及びポリスチレンなどの高分子、又は、アルミナ及びシリカなどの無機酸化物を使用することができる。柱状スペーサの材料としては、例えば、フォトリソグラフィを利用可能なポジ型又はネガ型の感光性樹脂を使用することができる。例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、環化ゴム、ノボラック樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビスフェノール樹脂又はゼラチンを含んだ感光性樹脂を使用することができる。
【0083】
電極12a及び12bの少なくとも一方の表面を、絶縁層で被覆してもよい。絶縁層の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、環化ゴム、ノボラック樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビスフェノール樹脂及びゼラチンなどの有機物、又は、酸化シリコン及び窒化シリコンなどの無機物を使用することができる。絶縁層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。絶縁層は、例えば、スピンコートなどの塗布法、水面上に形成された単分子膜を電極上に写し取るラングミュア・ブロジェット法、又は蒸着法などの気相堆積法により形成することができる。絶縁層には、液晶材料などの誘電率異方性を有する材料の配向を制御するために、ラビング処理などの配向処理を施してもよい。
【0084】
誘電率異方性を有している材料は、分子内に誘電率異方性を有するもの、即ち、配向分極、電子分極及び原子分極などの分極が分子内で異方性を有するものである。誘電率異方性を有している材料は、有機材料であってもよく、無機材料であってもよい。
【0085】
誘電率異方性を有している材料としては、例えば、液晶材料を使用することができる。液晶材料は、液晶化合物であってもよく、複数の液晶化合物を含んだ組成物であってもよい。或いは、液晶材料は、1つ以上の液晶化合物と他の1つ以上の化合物とを含んだ組成物であってもよい。液晶材料としては、例えば、ネマチック液晶材料、コレステリック液晶材料若しくはカイラルネマチック液晶材料(以下、コレステリック液晶材料及び/又はカイラルネマチック液晶材料を「コレステリック液晶材料」と呼ぶ)、ネマチック液晶材料とコレステリック液晶材料若しくはカイラル剤との混合物、又はスメクチック液晶材料を使用することができる。誘電率異方性を有している材料は、誘電率異方性を有している成分のみで構成されていてもよく、誘電率異方性を持たない材料を更に含んでいてもよい。
【0086】
液晶材料の誘電率異方性は、その絶対値が大きいことが好ましい。カラー表示を行う光学素子で必要とされる波長シフト量を考慮すると、液晶分子の長軸方向の比誘電率から短軸方向の比誘電率を減算した値である誘電率異方性の絶対値は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上である。
【0087】
ソルバトクロミック色素としては、ソルバトクロミズムを示す化合物、又は、ソルバトクロミズムを示す複数の化合物を含んだ組成物を使用することができる。ソルバトクロミズムを示す化合物としては、例えば、Chem.Rev.,94,2319(1994)に記載されているソルバトクロミック色素を使用することができる。
【0088】
ソルバトクロミック色素は、分子内電荷移動構造を有しているもののように、溶媒の極性の変化に応じた吸収波長シフト量が大きいものであることが好ましい。また、色濃度の観点からは、ソルバトクロミック色素は、吸光度が大きな有機材料であることが望ましい。そのようなソルバトクロミック色素としては、例えば、Reichardt色素を挙げることができる。
【0089】
ソルバトクロミック色素の固定化には、化学的結合又は物理吸着などの物理的結合を利用できる。より安定な固定化には、化学的結合が好ましい。ソルバトクロミック色素は、有機材料上に固定化してもよく、無機材料上に固定化してもよい。例えば、ソルバトクロミック色素は、電極12a又は12bに支持された高分子材料の主鎖又は側鎖に組み込まれていてもよい。ソルバトクロミック色素は、上記の通り、多孔質体上に固定化することが好ましい。
【0090】
ソルバトクロミック色素を配向させる場合、例えば、配向膜を利用することができる。例えば、ソルバトクロミック色素を含んだ液を配向膜上に塗布し、塗膜を乾燥させることにより、ソルバトクロミック色素を配向させ且つ固定化することができる。或いは、ソルバトクロミック色素が高分子材料の主鎖又は側鎖に組み込まれている場合、この高分子材料を含んだ層を形成し、この層に延伸処理又はラビング処理を施すことにより、ソルバトクロミック色素を配向させることができる。
【0091】
ソルバトクロミック色素の吸収軸は、表示面に対して略垂直であることが好ましい。この場合、ソルバトクロミック色素材料によるより効率的な光吸収を実現できる。
【0092】
ソルバトクロミック色素を配向させる場合、ソルバトクロミック色素の基底状態又は励起状態における双極子モーメントの方向は、例えば、配向膜が液晶材料を配向させる配向方向に対して平行とし、電極12a及び12b間に電圧を印加した場合に生じる電場の向きに対して垂直とする。或いは、ソルバトクロミック色素の基底状態又は励起状態における双極子モーメントの方向は、配向膜が液晶材料を配向させる配向方向に対して垂直とし、電極12a及び12b間に電圧を印加した場合に生じる電場の向きに対して平行とする。この場合、印加電圧の変化に伴う吸収波長の変化を最大とすることができる。なお、ここで、「平行」は、2つの方向が成す角度が−20°乃至+20°の範囲内にあることを意味する。また、「垂直」は、2つの方向が成す角度が+70°乃至+110°の範囲内にあることを意味する。
【0093】
反射層16の材料としては、アルミニウム及び銀などの金属又はそれらの合金を使用することができる。反射層16は、例えば、電極12aが反射層を兼ねている場合や光学素子10が透過型である場合には、省略することができる。
【0094】
駆動回路20が駆動電圧として直流電圧を出力する場合、光学素子10に表示させるべき色は、この駆動電圧の大きさによって制御することができる。駆動回路20が駆動電圧として交流電圧を出力する場合、光学素子10に表示させるべき色は、この駆動電圧の大きさと周波数との少なくとも一方によって制御することができる。イオン性不純物に起因したオフセット電圧などを考慮すると、直流駆動ではなく交流駆動が望ましい。光学素子10を表示装置に適用し且つ交流駆動を行う場合、その周波数は、フリッカ現象抑制及び低消費電力の観点から、好ましくは10Hz乃至1KHzの範囲内に設定し、より好ましくは30Hz乃至240Hzの範囲内に設定する。
【0095】
駆動回路20は、例えば、吸収極大波長を可視光領域のほぼ全域に亘って変化させ得る。この場合、カラー写真に用いられるシアン、マゼンタ及びイエロー色の色素の吸収極大波長がそれぞれ約650、約550及び約450nmであることを考慮すると、駆動回路20は、好ましくは吸収極大波長が最大で100nm以上変化するように、より好ましくは吸収極大波長が最大で250nm以上変化するように光学素子10の動作を制御する。なお、「可視光領域」は400nm乃至800nmの波長領域を意味している。
【実施例】
【0096】
以下に本発明の例を記載する。
【0097】
(例1)
本例では、図16及び図17を参照しながら説明した光学素子10を、以下の方法により製造した。
【0098】
ITO電極12a及び12bがそれぞれ設けられた透明な無アルカリガラス基板11a及び11bを2枚準備した。各ガラス基板の厚さは、0.7mmであった。
【0099】
次に、電極12a上に、ポリイミドを70nmの厚さにスピナーによりキャストして、絶縁層17aを形成した。ポリイミドとしては、日本合成ゴム社製のAL−1051を使用した。続いて、基板11aの上記主面の周縁部に、シール層15として使用するエポキシ接着剤をディスペンスした。
【0100】
電極12b上にも、絶縁層17aについて説明したのと同様の方法により絶縁層17bを形成した。絶縁層17b上には、直径が10μmの樹脂製スペーサボールを散布した。
【0101】
その後、基板11a及び11bを、絶縁層17a及び17bが向き合うように貼り合せ、エポキシ接着剤を硬化させた。これにより、空セルを得た。
【0102】
次に、96質量部のネマチック液晶材料と4質量部のソルバトクロミック色素とを含んだ混合物を、等方相の状態で空セルへ真空注入して、光学的可変層13を形成した。ネマチック液晶材料としては、Aldrich−Sigma社製の4−シアノ−4’−ペンチルビフェニルを使用した。ソルバトクロミック色素としては、Aldrich−Sigma社製のReichardt色素を使用した。
【0103】
空セルの注入口を封止した後、基板11a上に反射フィルム16を貼りつけた。以上のようにして、図16及び図17に示す光学素子10を完成した。
【0104】
この光学素子10を、駆動回路20に接続した。そして、電極12a及び12b間に交流電圧を印加し、電圧変化に伴う色変化を観察した。なお、この交流電圧の波形は矩形波とし、周波数は30Hzとした。結果を図20に示す。
【0105】
図20は、電圧変化に伴う色変化の一例を示すグラフである。図中、横軸は波長を示し、縦軸は吸光度(任意単位)を示している。
【0106】
この光学素子10は、電圧無印加状態(0V)においては緑色を表示し、このときの吸収極大波長は、図20に示すように680nmであった。そして、この光学素子10は、印加電圧を20Vとしたときに赤色を表示し、このときの吸収極大波長は、図20に示すように580nmであった。
【0107】
(例2)
本例では、図16及び図17を参照しながら説明した光学素子10を、以下の方法により製造した。
まず、例1において説明したのと同様の方法により、空セルを形成した。
【0108】
次に、96質量部のネマチック液晶材料と4質量部のソルバトクロミック色素とを含んだ混合物を、等方相の状態で空セルへ真空注入して、光学的可変層13を形成した。ネマチック液晶材料としては、メルク社製のZLI−4900−000を使用した。ソルバトクロミック色素としては、Aldrich−Sigma社製のReichardt色素を使用した。
【0109】
空セルの注入口を封止した後、基板11a上に反射フィルム16を貼りつけた。以上のようにして、図16及び図17に示す光学素子10を完成した。
【0110】
この光学素子10を、駆動回路20に接続した。そして、電極12a及び12b間に交流電圧を印加し、電圧変化に伴う色変化を観察した。なお、この交流電圧の波形は矩形波とし、周波数は30Hzとした。
【0111】
その結果、この光学素子10は、電圧無印加状態(0V)においては薄い橙色を表示し、印加電圧を15Vとしたときに赤紫色を表示した。
【0112】
(例3)
図21は、例3に係る光学素子を概略的に示す断面図である。本例では、図21に示す光学素子10を、以下の方法により製造した。
【0113】
ITO電極12a及び12bがそれぞれ設けられた透明な無アルカリガラス基板11a及び11bを2枚準備した。各ガラス基板の厚さは、0.7mmであった。
【0114】
次に、電極12aにラビング処理を施した。次いで、電極12a上に、ソルバトクロミック色素を含んだ液を50nmの厚さにスピナーによりキャストした。これにより、色素層13SDを得た。ソルバトクロミック色素としては、Aldrich−Sigma社製のReichardt色素を使用した。続いて、基板11aの上記主面の周縁部に、シール層15として使用するエポキシ接着剤をディスペンスした。
【0115】
次に、電極12b上に、ポリイミドを70nmの厚さにスピナーによりキャストし、塗膜にラビング処理を施すことにより、絶縁層17bを形成した。ポリイミドとしては、日本合成ゴム社製のAL−1051を使用した。そして、絶縁層17b上に、直径が10μmの樹脂製スペーサボールを散布した。
【0116】
その後、基板11a及び11bを、絶縁層17a及び17bが向き合うように及びラビング方向が平行になるように貼り合せ、エポキシ接着剤を硬化させた。これにより、空セルを得た。
【0117】
次に、フッ素系ネマチック液晶材料を、液晶相の状態で空セルへ真空注入して、液晶層13LCを形成した。ネマチック液晶材料としては、チッソ社製のJC−1041を使用した。
【0118】
空セルの注入口を封止した後、基板11a上に反射フィルム16を貼りつけた。以上のようにして、図21に示す光学素子10を完成した。
【0119】
この光学素子10を、駆動回路20に接続した。そして、電極12a及び12b間に30Vの交流電圧を印加し、電圧変化に伴う色変化を観察した。なお、この交流電圧の波形は矩形波とし、周波数は30Hzとした。結果を図22に示す。
【0120】
図22は、電圧変化に伴う色変化の他の例を示すグラフである。図中、横軸は波長を示し、縦軸は吸光度(任意単位)を示している。また、曲線COFFは電圧無印加状態における吸収スペクトルを示している。そして、曲線CON(0)、CON(30)及びCON(90)は、それぞれ、電圧を印加した直後、電圧印加を開始してから30秒経過後、及び電圧印加を開始してから90秒経過後における吸収スペクトルを示している。
【0121】
(例4)
本例では、図21に示す光学素子10を、以下の方法により製造した。
ITO電極12a及び12bがそれぞれ設けられた透明な無アルカリガラス基板11a及び11bを2枚準備した。各ガラス基板の厚さは、0.7mmであった。
【0122】
次に、電極12aにラビング処理を施した。次いで、電極12a上に、ソルバトクロミック色素を側鎖に有している高分子を含んだ液を30nmの厚さにスピナーによりキャストした。更に、この塗膜にラビング処理を施すことにより、色素層13SDを得た。この高分子としては、下記化学式に示す化合物を使用した。続いて、基板11aの上記主面の周縁部に、シール層15として使用するエポキシ接着剤をディスペンスした。
【化1】
【0123】
次に、電極12b上に、ポリイミドを70nmの厚さにスピナーによりキャストし、塗膜にラビング処理を施すことにより、絶縁層17bを形成した。ポリイミドとしては、日本合成ゴム社製のAL−1051を使用した。そして、絶縁層17b上に、直径が10μmの樹脂製スペーサボールを散布した。
【0124】
その後、基板11a及び11bを、絶縁層17a及び17bが向き合うように及びラビング方向が平行になるように貼り合せ、エポキシ接着剤を硬化させた。これにより、空セルを得た。
【0125】
次に、Merck社製のネマチック液晶材料を、液晶相の状態で空セルへ真空注入して、液晶層13LCを形成した。ネマチック液晶材料としては、誘電率異方性Δεが20であり、屈折率異方性Δnが0.15であるものを使用した。
【0126】
空セルの注入口を封止した後、基板11a上に反射フィルム16を貼りつけた。以上のようにして、図21に示す光学素子10を完成した。
【0127】
この光学素子10を、駆動回路20に接続した。そして、電極12a及び12b間に交流電圧を印加し、電圧変化に伴う色変化を観察した。なお、この交流電圧の波形は矩形波とし、周波数は30Hzとした。
【0128】
その結果、この光学素子10は、電圧無印加状態(0V)においては赤色を表示し、印加電圧を15Vとしたときに緑色を表示した。
【0129】
(例5)
本例では、図18及び図19を参照しながら説明した光学素子を、以下の方法により製造した。
【0130】
まず、ホウケイ酸ソーダガラスの熱処理とそれに続く酸処理とにより、厚さが3μmであり、細孔径が1μmの多孔質ガラスビーズ13Pを作製した。この多孔質ガラスビーズにReichardt色素のエタノール溶液を含浸させて、Reichardt色素を細孔の壁面に固定化した。
【0131】
このようにして得られた粒子を、ITO電極がその表面に設けられた透明な2枚のガラス基板とシール層とからなるセルの中に封入した。ガラス基板としては、厚さが0.7mmの無アルカリガラス基板を使用した。
【0132】
その後、セルの中に、Merck社製のネマチック液晶材料を等方相の状態で真空注入した。ネマチック液晶材料としては、誘電率異方性Δεが15であり、屈折率異方性Δnが0.18であるものを使用した。
【0133】
セルの注入口を封止した後、一方の基板上に反射フィルム16を貼りつけた。以上のようにして、図18及び図19を参照しながら説明した光学素子を完成した。
【0134】
この光学素子10を、駆動回路20に接続した。そして、電極12a及び12b間に交流電圧を印加し、電圧変化に伴う色変化を観察した。なお、この交流電圧の波形は矩形波とし、周波数は30Hzとした。
【0135】
その結果、この光学素子10は、電圧無印加状態(0V)においては赤紫色を表示し、印加電圧を50Vとしたときに黄緑色を表示した。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】正のソルバトクロミズムを示す色素の一例と、その基底状態及び励起状態における双極子モーメントとを示す図。
【図2】負のソルバトクロミズムを示す色素の一例と、その基底状態及び励起状態における双極子モーメントとを示す図。
【図3】図1に示す色素が示すソルバトクロミズムのエネルギー図。
【図4】図2に示す色素が示すソルバトクロミズムのエネルギー図。
【図5】色素分子の双極子モーメントと溶媒分子の配向状態との関係を概略的に示す図。
【図6】色素分子の双極子と溶媒分子の双極子及び誘起双極子との相互作用を概略的に示す図。
【図7】本発明の第1態様に係る光学素子が黄色を表示している様子を概略的に示す斜視図。
【図8】図7に示す光学素子がマゼンタ色を表示している様子を概略的に示す斜視図。
【図9】図7に示す光学素子がシアン色を表示している様子を概略的に示す斜視図で。
【図10】本発明の第2態様に係る光学素子が黄色を表示している様子を概略的に示す斜視図。
【図11】図10に示す光学素子がマゼンタ色を表示している様子を概略的に示す斜視図。
【図12】図10に示す光学素子がシアン色を表示している様子を概略的に示す斜視図。
【図13】図10に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図。
【図14】図11に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図。
【図15】図12に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図。
【図16】本発明の第3態様に係る光学素子が或る色を表示している様子を概略的に示す断面図。
【図17】図16に示す光学素子が他の色を表示している様子を概略的に示す断面図。
【図18】本発明の第4態様に係る光学素子が或る色を表示している様子を概略的に示す断面図。
【図19】図18に示す光学素子が他の色を表示している様子を概略的に示す断面図。
【図20】電圧変化に伴う色変化の一例を示すグラフ。
【図21】例3に係る光学素子を概略的に示す断面図。
【図22】電圧変化に伴う色変化の他の例を示すグラフ。
【符号の説明】
【0137】
10…光学素子、11a…基板、11b…基板、12a…電極、12b…電極、13…光学的可変層、13LC…液晶層、13P…多孔質体、13SD…色素層、15…シール層、16…反射層、17a…絶縁層、17b…絶縁層、20…駆動回路、A1…配向状態、A2…配向状態、LC…液晶分子、SD…ソルバトクロミック色素分子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパは、表示すべき画像の変更が可能であり、紙に匹敵する携帯性を有している表示装置である。電子ペーパは、情報伝達に使用する紙の一部を置換し得る。それ故、電子ペーパは、森林資源の保護に寄与し得る。
【0003】
このような表示装置において多色画像を表示すべくカラーフィルタを使用した場合、高い解像度と紙に匹敵する厚さとを達成することは難しい。また、表示すべき画像の変更は、電気的な手法によって行うことが有利である。即ち、カラーフィルタなしで多色画像を表示可能であることが望ましい。
【0004】
特許文献1乃至3には、金属イオンを含んだ電解液を使用する表示技術が記載されている。この表示技術では、電解液に通電することによって、電解液から金属を析出させる。表示色は、例えば金属微粒子の粒径に応じて変化する。従って、この表示技術によると、カラーフィルタなしで多色画像を表示することが可能である。
【特許文献1】特開2007−11260号公報
【特許文献2】特開2007−240668号公報
【特許文献3】特開2007−279163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属微粒子の粒径を高い精度で制御することは困難である。それ故、先の表示技術によると、色再現性が不十分になり易い。
本発明の目的は、多色画像を優れた色再現性で表示可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によると、誘電率異方性を有する材料とソルバトクロミック色素とを含んだ光学的可変層と、前記光学的可変層に電圧を印加する第1及び第2電極とを具備した光学素子が提供される。
【0007】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る光学素子と、前記第1及び第2電極間に駆動電圧を印加する駆動回路とを含んだ表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、多色画像を優れた色再現性で表示することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
まず、ソルバトクロミズムについて説明する。
ソルバトクロミズムは、溶媒の種類に応じて色素溶液の色が変化する現象であり、次のように解釈されている。
【0011】
大きな電気双極子モーメント(以下、「双極子モーメント」は、「電気双極子モーメント」を意味することとする)を有しており、基底状態と励起状態とで双極子モーメントの大きさが著しく異なる色素分子は、溶媒の極性が高いほど基底状態又は励起状態の一方がより安定化される。その結果、基底状態から励起状態への電子遷移エネルギーが変化し、吸収波長のシフトを引き起こす。この現象はソルバトクロミズムと呼ばれており、このような色素はソルバトクロミック色素と呼ばれている。
ソルバトクロミズムについて、数式及び図面を参照しながら、更に詳しく説明する。
【数1】
【0012】
上記数式(1)において、ΔE及びΔE’は、それぞれ、溶媒の極性が低い場合及び高い場合におけるソルバトクロミック色素の基底状態から励起状態への電子遷移エネルギーを表している。μ(g)及びμ(ex)は、それぞれ、基底状態及び励起状態における色素分子の双極子モーメントを表している。ε及びnは、それぞれ、溶媒の誘電率及び屈折率を表している。なお、等式(1)におけるL(ε)及びL(n2)の各々は、上記等式(2)から算出される値である。
【0013】
数式(1)は、溶媒の極性が高い場合における電子遷移エネルギーΔE’と溶媒の極性が低い場合の電子遷移エネルギーΔEとの差、即ち電子遷移エネルギーの変化量ΔE’―ΔEが、双極子モーメントμ(g)及びμ(ex)と誘電率εと屈折率nとの関数であることを示すものであり、McRaeモデルと呼ばれている。ここでは、簡単のため、励起状態の双極子モーメントと基底状態の双極子モーメントとが成す角度は0°(又は180°)としている。なお、溶媒の極性の概念には、水素結合性や電子供与性も含まれるが、McRaeモデルではこれらは考慮されていない。
【0014】
数式(1)から、色素の基底状態と励起状態とで双極子モーメントの大きさが著しく異なっていることが分かる。即ち、双極子モーメントμ(ex)の大きさと双極子モーメントμ(g)の大きさとの差μ(ex)−μ(g)が大きい場合には変化量ΔE’―ΔEが大きいことと、双極子モーメントμ(ex)及びμ(g)の各々が大きい場合には変化量ΔE’―ΔEが大きいことが分かる。換言すれば、色素の双極子モーメントと吸収波長のシフト量、即ち色の変化量との関係が分かる。また、変化量ΔE’―ΔEの極性、即ち吸収波長の変化の方向は、差μ(ex)−μ(g)の符号に依存していることが分かる。
【0015】
図1は、正のソルバトクロミズムを示す色素の一例と、その基底状態及び励起状態における双極子モーメントとを示す図である。図2は、負のソルバトクロミズムを示す色素の一例と、その基底状態及び励起状態における双極子モーメントとを示す図である。図3は、図1に示す色素が示すソルバトクロミズムのエネルギー図である。図4は、図2に示す色素が示すソルバトクロミズムのエネルギー図である。図1には、正のソルバトクロミズムを示す色素の一例として、Phenol Blue色素を示している。図2には、負のソルバトクロミズムを示す色素の一例として、Reichardt色素を示している。なお、図1及び図2に示す構造式は、必ずしも化合物内における電子密度を正確に表現しているものではない。
【0016】
図1に示すように差μ(ex)−μ(g)が正の値である場合、ソルバトクロミズムは、正のソルバトクロミズムと呼ばれる。この場合、図3に示すように、溶媒の極性を高めると、吸収波長は長波長方向にシフトする。
【0017】
図2に示すように差μ(ex)−μ(g)が正の値である場合、ソルバトクロミズムは、負のソルバトクロミズムと呼ばれる。この場合、図4に示すように、溶媒の極性を高めると、吸収波長は短波長方向にシフトする。
【0018】
溶媒がソルバトクロミズムに及ぼす影響について、更に詳しく説明する。
等式(1)において、値L(n2)は電子分極を表し、値L(ε)と値L(n2)との差L(ε)−L(n2)は、誘電率から電子分極の寄与を差し引いたものである配向分極を表している。等式(1)から分かるように、溶媒の配向分極及び電子分極が大きい場合、変化量ΔE’―ΔEが大きい。即ち、この場合、色素の色変化量が大きい。
【0019】
溶媒の配向分極は、溶媒の双極子に起因するものである。他方、溶媒の電子分極は、溶媒の誘起双極子に起因するものである。それ故、ソルバトクロミズムは、色素分子の双極子と色素分子の近傍に存在している溶媒の双極子及び誘起双極子との相互作用に由来した現象であると言える。従って、この相互作用の大きさを電場によって変化させることができれば、溶媒を変えることなしに、ソルバトクロミック色素の色、特には色相を変化させることができる筈である。
【0020】
そこで、後で詳しく説明する本発明の各態様では、誘電率異方性を有している材料をソルバトクロミック色素の近傍に位置させ、誘電率異方性を有している材料に対して電気駆動信号を与える。これにより、溶媒を変えることなしに、ソルバトクロミック色素の色変化を実現する。
【0021】
この色変化について、図5及び図6を参照しながら説明する。
図5は、色素分子の双極子モーメントと溶媒分子の配向状態との関係を概略的に示す図である。なお、図5は、誘電率異方性を有している材料として液晶材料を使用した場合を想定している。
【0022】
前述の通り、溶媒の極性は、単純に誘電率で解釈できるものではないが、ここでは、McRaeモデルに基づき、誘電率に着目して溶媒の極性を考える。
【0023】
液晶材料は、分子長軸に平行な誘電率と長軸に垂直な誘電率とが異なるという誘電率異方性を有している材料である。
【0024】
図5に示す配向状態A1では、ソルバトクロミック色素分子SDの双極子モーメントμdyeは、液晶分子LCの長軸に対して平行である。他方、図5に示す配向状態A2では、ソルバトクロミック色素分子SDの双極子モーメントμdyeは、液晶分子LCの長軸に対して垂直である。
【0025】
従って、配向状態A1では、ソルバトクロミック色素分子SDは、液晶分子LCの長軸に平行な誘電率ε‖の環境下に置かれていると考えられる。他方、配向状態A2では、ソルバトクロミック色素分子SDは、液晶分子LCの長軸に垂直な誘電率ε⊥の環境下に置かれていると考えられる。
【0026】
図6は、色素分子の双極子と溶媒分子の双極子及び誘起双極子との相互作用を概略的に示す図である。ここでは、液晶分子LCは、正の誘電異方性(ε‖>ε⊥)を有しているネマチック液晶であるとする。
【0027】
配向状態A1では、液晶分子LCの短軸に平行な屈折率α0⊥に起因する誘起双極子モーメントμLC⊥は、色素分子SDの双極子モーメントμdyeに対して垂直である。他方、配向状態A2では、液晶分子LCの双極子モーメントμLC及び液晶分子LCの長軸に平行な屈折率α0‖に起因する誘起双極子モーメントμLC‖は、色素分子SDの双極子モーメントμdyeと直交している。直交している双極子モーメントの相互作用はゼロである。
【0028】
それ故、配向状態A1では、液晶分子LCの双極子モーメントμLCと、液晶分子LCの長軸に平行な屈折率α0‖に起因する誘起双極子モーメントμLC‖とが、色素分子SDの双極子モーメントμdyeと相互作用する。他方、配向状態A2では、液晶分子LCの短軸に平行な屈折率α0⊥に起因する誘起双極子モーメントμLC⊥が、色素分子SDの双極子モーメントμdyeと相互作用する。
【0029】
従って、配向状態A1において色素分子SDの双極子モーメントμdyeが受ける相互作用エネルギーは、−μdyeμLC/(4πε0r3)−2μdye2α0‖/((4πε0)2r6)である。そして、配向状態A2において色素分子SDの双極子モーメントμdyeが受ける相互作用エネルギーは、−2μdye2α0⊥/((4πε0)2r6)である。なお、ここで、ε0は真空の誘電率を表し、rは液晶分子LCと色素分子SDの距離を表している。
【0030】
このように、配向状態A1は、配向状態A2と比較して、色素分子SDの双極子と液晶分子LCの双極子及び誘起双極子との相互作用が大きい。上記の通り、この相互作用の大きさは、ソルバトクロミック色素の色と相関している。そして、配向状態A1と配向状態A2との間の変化は、電場によって生じさせることができる。従って、ソルバトクロミック色素と液晶材料とを組み合わせると、ソルバトクロミック色素の色を電場によって変化させることができる。それ故、この技術を利用すると、カラーフィルタなしで多色画像を表示することができる。
【0031】
また、上記の通り、ソルバトクロミック色素の色は、色素分子SDの双極子と液晶分子LCの双極子及び誘起双極子との相互作用の大きさと相関している。従って、電場の強さを3つ以上の値の間で変化させると、3つ以上の色を表示することができる。それ故、この技術を表示装置に適用した場合、画素に比較的単純な構造を採用しながらも、多色画像を表示することができる。
【0032】
例えば、減法混色を利用したゲスト−ホストモードの液晶表示装置では、3原色に対応した3つの液晶層を積層する必要がある。これに対し、上述した技術によると、ソルバトクロミック色素と液晶材料とを含んだ単一の層に、例えば、3原色、それらの中間色及び白色を表示させることができる。それ故、高精細化した場合であっても、視差に起因した表示品位の劣化を生じ難い。
【0033】
更に、電場の大きさは、高い精度で制御できる。従って、上述した技術によると、優れた色再現性を達成できる。
【0034】
また、複屈折を利用した液晶表示装置では、広い視野角を達成することが難しい。加えて、複屈折を利用した液晶表示装置では、偏光子が必要である。これに対し、上述した技術では、ソルバトクロミック色素の吸収を利用しているため、広い視野角を容易に達成することができる。しかも、この技術では、偏光子は不要であるため、明るい表示が可能である。
【0035】
次に、上述した技術を適用した光学素子について説明する。
図7は、本発明の第1態様に係る光学素子が黄色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。図8は、図7に示す光学素子がマゼンタ色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。図9は、図7に示す光学素子がシアン色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。
【0036】
図7乃至図9に示す光学素子10は、反射型の光学素子である。この光学素子10は、基板11a及び11bと、図示しないシール層と、電極12a及び12bと、光学的可変層13と、図示しない反射層とを含んでいる。この光学素子10は、基板11a側が背面側であり、基板11b側が前面側である。
【0037】
基板11a及び11bは、互いに向き合っている。基板11aは、光透過性を有しており、典型的には無色及び/又は透明である。
【0038】
シール層は、枠形状を有しており、基板11a及び11b間に介在している。基板11a及び11bとシール層とは、中空構造を有しているセルを構成している。なお、このセル内には、基板11a及び11b間の距離の均一性を向上させるべく、スペーサを配置してもよい。
【0039】
電極12a及び12bは、基板11aと基板11bとの間に位置している。電極12a及び12bは、それぞれ、基板11a及び11bに支持されている。電極12a及び12bは、光透過性を有しており、典型的には無色及び/又は透明である。
【0040】
光学的可変層13は、誘電率異方性を有する材料とソルバトクロミック色素とを含んでいる。具体的には、光学的可変層13は、色素層13SDと液晶層13LCとを含んでいる。
【0041】
色素層13SDは、電極12aを被覆している。色素層13SDは、電極12a上に固定化されたソルバトクロミック色素SDを含んでいる。ここでは、一例として、ソルバトクロミック色素SDは、負のソルバトクロミズムを示すとする。また、ここでは、一例として、ソルバトクロミック色素SDは、基底状態又は励起状態における双極子モーメントが基板11aの基板11bとの対向面に対して平行な1方向を向くように配向しているとする。以下、この方向を、「色素分子SDの配向方向」と呼ぶ。なお、色素層13SDと電極12aとの間には、絶縁層が介在していてもよい。或いは、色素層13SDは、絶縁層とこれに固定化されたソルバトクロミック色素SDとを含んでいてもよい。
【0042】
液晶層13LCは、色素層13SDと電極12bとの間に介在している。液晶層13LCは、基板11a及び11bとシール層とによって囲まれた密閉空間を満たした液晶材料からなる。ここでは、一例として、液晶材料は、誘電率異方性が正のネマチック液晶であり、電圧無印加状態において、液晶分子LCの長軸又は双極子モーメントが色素の配向方向と略平行となるように配向しているとする。以下、液晶分子LCの長軸又は双極子モーメントの方向を、「液晶分子LCの配向方向」と呼ぶ。
【0043】
なお、液晶材料は、例えば、液晶層13LCに隣接して配向膜を設けるか、又は、液晶層13LCに隣接した層に配向処理を施すことにより配向させることができる。配向膜の形成又は配向処理には、例えば、ラビング処理又は光配向技術を利用することができる。
【0044】
反射層は、基板11aの背面側に設置されている。反射層は、基板11aと色素層13SDとの間に設置してもよい。或いは、反射層を設ける代わりに、電極12aとして、金属層又は合金層などの光反射性の電極を使用してもよい。
【0045】
この光学素子10の電極12a及び12bは、駆動回路20に接続されている。駆動回路は、可変電圧源を含んでいる。可変電圧源は、交流電圧源であってもよく、直流電圧源であってもよい。
【0046】
なお、光学素子10と駆動回路20との組み合わせは、例えば、表示装置として利用することができる。
【0047】
この光学素子10を前方から白色光で照明すると、この白色光は、基板11b、電極12b及び液晶層13LCをこの順に透過し、色素層13SDに入射する。色素層13SDは、この入射光の一部を吸収し、他の一部を透過させる。色素層13SDを透過した光は、基板11aを透過し、反射層によって反射される。この反射光は、基板11aを透過し、色素層13SDに入射する。色素層13SDは、この入射光の一部を吸収し、他の一部を透過させる。色素層13SDを透過した光は、液晶層13LC、電極12b及び基板11bをこの順に透過する。観察者は、この透過光を表示光として知覚する。即ち、観察者は、色素層13SDが吸収した光の色の補色を知覚する。
【0048】
図7に示すように、電極12a及び12bに電圧を印加していない場合、液晶分子LCの配向方向は、色素分子SDの配向方向に対して平行である。この状態は、図5及び図6を参照しながら説明した配向状態A1に相当している。この状態では、色素層13SDは、例えば青色の光を吸収する。この場合、観察者は、青色の補色である黄色を知覚する。
【0049】
電極12a及び12bに絶対値が比較的小さな電圧(以下、「電圧」は「電圧の絶対値」を意味していることとする)を印加すると、液晶分子LCは、図8に示すように、基板11aに対して傾く。その結果、色素層13SDの吸収波長域は、長波長方向にシフトする。この状態では、色素層13SDは、例えば緑色の光を吸収する。この場合、観察者は、緑色の補色であるマゼンタ色を知覚する。
【0050】
電極12a及び12bに印加する電圧を更に高くすると、液晶分子LCは、図9に示すように、基板11aの主面に対して略垂直に、即ち、表示面に対して略垂直に配向する。この状態は、図5及び図6を参照しながら説明した配向状態A2に相当している。この状態では、色素層13SDは、例えば赤色の光を吸収する。この場合、観察者は、赤色の補色であるシアン色を知覚する。
【0051】
なお、正のソルバトクロミズムを示すソルバトクロミック色素SDを使用した場合、電極12a及び12b間に印加する電圧を高めると、色素層13SDの吸収波長域は短波長方向にシフトする。従って、この場合、例えば、電極12a及び12bに電圧を印加していないときに、色素層13SDが赤色の光を吸収するように設計してもよい。電圧無印加時における吸収波長域、並びに、印加電圧の上昇に伴う吸収波長域のシフト方向及びシフト量は、例えば、使用する液晶材料及びソルバトクロミック色素材料並びに電圧の大きさによって制御できる。
【0052】
次に、本発明の第2態様を説明する。第2態様では、電極12a及び12bをそれぞれ基板11a及び11bに支持させる代わりに、電極12a及び12bの双方を基板11aに支持させる。
【0053】
図10は、本発明の第2態様に係る光学素子が黄色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。図11は、図10に示す光学素子がマゼンタ色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。図12は、図10に示す光学素子がシアン色を表示している様子を概略的に示す斜視図である。
【0054】
図13は、図11に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図である。図14は、図12に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図である。図15は、図13に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図である。なお、図13乃至図15は、表示面に垂直な方向から観察したソルバトクロミック色素分子及び液晶分子の配置を描いている。
【0055】
図10乃至図12に示す光学素子10は、以下の構成を採用したこと以外は、図7乃至図9を参照しながら説明した光学素子10と同様の構成を有している。
【0056】
即ち、この光学素子10では、電極12a及び12bの双方が基板11aと光学的可変層13との間に位置している。電極12a及び12bは、各々が一方向に延びた形状を有しており、それらの長さ方向が平行になるように配置されている。ソルバトクロミック色素分子SDの配向方向は、電極12a及び12bの長さ方向に対して略平行である。そして、液晶分子LCの電圧無印加状態における配向方向も、電極12a及び12bの長さ方向に対して略平行である。
【0057】
電極12a及び12bに電圧を印加していない場合、液晶分子LCの配向方向は、図10及び図13に示すように、色素分子SDの配向方向に対して平行である。この状態は、図7を参照しながら説明した状態と同様である。従って、この場合、観察者は、例えば、青色の補色である黄色を知覚する。
【0058】
電極12a及び12bに比較的低い電圧を印加すると、液晶分子LCは、図11及び図14に示すように、表示面に対して略平行であり且つ電極12a及び12bの長さ方向に対して傾いた方向に配向する。この状態は、図8を参照しながら説明した状態と等価である。従って、この場合、観察者は、例えば、緑色の補色であるマゼンタ色を知覚する。
【0059】
電極12a及び12bに印加する電圧を更に高くすると、液晶分子LCは、図12及び図15に示すように、表示面に対して略平行であり且つ電極12a及び12bの長さ方向に対して略垂直な方向に配向する。この状態は、図9を参照しながら説明した状態と等価である。従って、この場合、観察者は、例えば、赤色の補色であるシアン色を知覚する。
【0060】
次に、本発明の第3態様を説明する。第3態様では、ソルバトクロミック色素を固定化せずに、液晶材料と混合する。
【0061】
図16は、本発明の第3態様に係る光学素子が或る色を表示している様子を概略的に示す断面図である。図17は、図16に示す光学素子が他の色を表示している様子を概略的に示す断面図である。なお、参照符号15及び16は、それぞれ、上述したシール層及び反射層16を示している。
【0062】
図16及び図17に示す光学素子10は、以下の構成を採用したこと以外は、図7乃至図9を参照しながら説明した光学素子10と同様の構成を有している。
【0063】
即ち、この光学素子10では、光学的可変層13は、単層構造を有している。光学的可変層13は、ソルバトクロミック色素と液晶材料とを含んだ混合物からなる。そして、電極12a及び12bは、それぞれ、絶縁層17a及び17bによって被覆されている。
【0064】
図16に示すように、電圧無印加状態においては、液晶分子LCの双極子モーメントの向きはランダムであるか、又は、液晶材料は低い配向秩序度で配向している。同様に、ソルバトクロミック色素SDの双極子モーメントの向きはランダムであるか、又は、ソルバトクロミック色素SDは低い配向秩序度で配向している。ここでは、一例として、電圧無印加状態において、液晶分子LCの双極子モーメントの向き及びソルバトクロミック色素SDの双極子モーメントの向きはランダムであるとする。この場合、ソルバトクロミック色素分子SDは、液晶材料の平均的な誘電率環境下に置かれている。
【0065】
電極12a及び12b間に十分に高い電圧を印加すると、液晶分子LCは、表示面に対して略垂直に配向する。これに伴い、ソルバトクロミック色素SDの配向秩序度も高くなる。その結果、ソルバトクロミック色素SDの色が変化する。即ち、表示色、特には色相が変化する。
【0066】
例えば、ソルバトクロミック色素SDとして、Reichardt色素などの負のソルバトクロミズムを示すものを用いた場合には、電極12a及び12b間に印加する電圧を高くすると、光学的可変層13の吸収スペクトルは短波長方向へとシフトする。他方、ソルバトクロミック色素SDとして、Phenol Blue色素などの正のソルバトクロミズムを示すものを用いた場合には、電極12a及び12b間に印加する電圧を高くすると、光学的可変層13の吸収スペクトルは長波長方向へとシフトする。
【0067】
このように、ソルバトクロミック色素と液晶材料とを混合した場合であっても、電極12a及び12b間に印加する電圧の大きさに応じた表示色の変化を生じさせることができる。
【0068】
また、この光学素子10では、ソルバトクロミック色素と液晶材料とを混合しているので、色素層13SDを形成する必要がない。従って、この光学素子10は、図7乃至図9を参照しながら説明した光学素子10と比較して製造が容易である。
【0069】
ソルバトクロミック色素と液晶材料とを含んだ混合は、マイクロカプセル化してもよい。即ち、この混合物とこれを収容した透明膜とを含んだマイクロカプセルを用いて、光学的可変層13を構成してもよい。
【0070】
ソルバトクロミック色素の一部のみを液晶材料と混合し、ソルバトクロミック色素の残りを固定化してもよい。また、電極12a及び12bの双方を基板11aに支持させてもよい。
【0071】
次に、本発明の第4態様を説明する。第4態様では、ソルバトクロミック色素を配向させることなしに又は低い配向秩序度で配向させて固定化する。
【0072】
図18は、本発明の第4態様に係る光学素子が或る色を表示している様子を概略的に示す断面図である。図19は、図18に示す光学素子が他の色を表示している様子を概略的に示す断面図である。なお、図18及び図19には、光学素子10のうち光学的可変層13の一部のみを描いている。また、図18には電圧無印加状態を描いており、図19には、十分な大きさの電圧を印加した状態を描いている。
【0073】
図18及び図19に示す光学素子10は、以下の構成を採用したこと以外は、図7乃至図9を参照しながら説明した光学素子10と同様の構成を有している。
【0074】
即ち、この光学素子10では、光学的可変層13は、ソルバトクロミック色素SD及び液晶材料に加えて、多孔質体13Pを更に含んでいる。多孔質体13Pは、電極12a及び12b間に挟まれた層を形成している。ソルバトクロミック色素SDは、多孔質体13Pの細孔の壁面上に固定化されている。
【0075】
電圧無印加状態では、図18に示すように、液晶分子LCの双極子モーメントは、その近傍に位置したソルバトクロミック色素SDの双極子モーメントに対して略平行である。従って、光学的可変層13は、例えば、図7を参照しながら説明したのと同様の色を表示する。
【0076】
電極12a及び12b間に十分に高い電圧を印加すると、図19に示すように、液晶分子LCは、略一方向に配向する。これに伴い、液晶分子LCの双極子モーメントとその近傍に位置したソルバトクロミック色素SDの双極子モーメントとが成す平均角度が大きくなる。その結果、ソルバトクロミック色素SDの色が変化する。即ち、表示色、特には色相が変化する。
【0077】
このように、ソルバトクロミック色素を多孔質体上に固定化した場合であっても、電極12a及び12b間に印加する電圧の大きさに応じた表示色の変化を生じさせることができる。
【0078】
また、多孔質体13Pは、電極12aと比較して面積が遥かに大きい。従って、多孔質体13Pを使用した場合、より多くのソルバトクロミック色素SDを固定化することができる。それ故、より高い色濃度を達成できる。
【0079】
なお、ソルバトクロミック色素の一部のみ固定化し、ソルバトクロミック色素の残りを液晶材料と混合してもよい。また、電極12a及び12bの双方を基板11aに支持させてもよい。
【0080】
次に、上述した光学素子10の材料等について説明する。
基板11a及び11bとしては、例えば、十分な強度と絶縁性とを有しているものを使用する。基板11aとしては、光透過性を有している基板、典型的には透明基板を使用する。基板11bは、光透過性を有していてもよく、有していなくてもよい。基板11a及び11bの材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、セラミック及び金属を使用することができる。
【0081】
電極12a及び12bのうち、光学的可変層13と観察者との間に設置するものは、光透過性を有しており、典型的には透明である。光透過性を有している電極の材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電性材料を使用することができる。不透明又は半透明な電極の材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金及び白金など金属又はそれらの合金を使用することができる。電極12a及び12bは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。電極12a及び12bは、例えば、蒸着及びスパッタリングなどの気相堆積法による成膜を行い、必要に応じて例えばフォトリソグラフィを利用したパターニングを行うことにより得られる。
【0082】
シール層15の材料としては、例えば接着剤を使用することができる。
基板11a及び11b間にスペーサを設置する場合、スペーサとしては、例えば、液晶表示装置で使用されているのと同様の粒状スペーサ又は柱状スペーサを使用することができる。粒状スペーサ及び柱状スペーサは、電気的に絶縁性である。粒状スペーサの材料としては、例えば、ジビニルベンゼン及びポリスチレンなどの高分子、又は、アルミナ及びシリカなどの無機酸化物を使用することができる。柱状スペーサの材料としては、例えば、フォトリソグラフィを利用可能なポジ型又はネガ型の感光性樹脂を使用することができる。例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、環化ゴム、ノボラック樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビスフェノール樹脂又はゼラチンを含んだ感光性樹脂を使用することができる。
【0083】
電極12a及び12bの少なくとも一方の表面を、絶縁層で被覆してもよい。絶縁層の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、環化ゴム、ノボラック樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビスフェノール樹脂及びゼラチンなどの有機物、又は、酸化シリコン及び窒化シリコンなどの無機物を使用することができる。絶縁層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。絶縁層は、例えば、スピンコートなどの塗布法、水面上に形成された単分子膜を電極上に写し取るラングミュア・ブロジェット法、又は蒸着法などの気相堆積法により形成することができる。絶縁層には、液晶材料などの誘電率異方性を有する材料の配向を制御するために、ラビング処理などの配向処理を施してもよい。
【0084】
誘電率異方性を有している材料は、分子内に誘電率異方性を有するもの、即ち、配向分極、電子分極及び原子分極などの分極が分子内で異方性を有するものである。誘電率異方性を有している材料は、有機材料であってもよく、無機材料であってもよい。
【0085】
誘電率異方性を有している材料としては、例えば、液晶材料を使用することができる。液晶材料は、液晶化合物であってもよく、複数の液晶化合物を含んだ組成物であってもよい。或いは、液晶材料は、1つ以上の液晶化合物と他の1つ以上の化合物とを含んだ組成物であってもよい。液晶材料としては、例えば、ネマチック液晶材料、コレステリック液晶材料若しくはカイラルネマチック液晶材料(以下、コレステリック液晶材料及び/又はカイラルネマチック液晶材料を「コレステリック液晶材料」と呼ぶ)、ネマチック液晶材料とコレステリック液晶材料若しくはカイラル剤との混合物、又はスメクチック液晶材料を使用することができる。誘電率異方性を有している材料は、誘電率異方性を有している成分のみで構成されていてもよく、誘電率異方性を持たない材料を更に含んでいてもよい。
【0086】
液晶材料の誘電率異方性は、その絶対値が大きいことが好ましい。カラー表示を行う光学素子で必要とされる波長シフト量を考慮すると、液晶分子の長軸方向の比誘電率から短軸方向の比誘電率を減算した値である誘電率異方性の絶対値は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上である。
【0087】
ソルバトクロミック色素としては、ソルバトクロミズムを示す化合物、又は、ソルバトクロミズムを示す複数の化合物を含んだ組成物を使用することができる。ソルバトクロミズムを示す化合物としては、例えば、Chem.Rev.,94,2319(1994)に記載されているソルバトクロミック色素を使用することができる。
【0088】
ソルバトクロミック色素は、分子内電荷移動構造を有しているもののように、溶媒の極性の変化に応じた吸収波長シフト量が大きいものであることが好ましい。また、色濃度の観点からは、ソルバトクロミック色素は、吸光度が大きな有機材料であることが望ましい。そのようなソルバトクロミック色素としては、例えば、Reichardt色素を挙げることができる。
【0089】
ソルバトクロミック色素の固定化には、化学的結合又は物理吸着などの物理的結合を利用できる。より安定な固定化には、化学的結合が好ましい。ソルバトクロミック色素は、有機材料上に固定化してもよく、無機材料上に固定化してもよい。例えば、ソルバトクロミック色素は、電極12a又は12bに支持された高分子材料の主鎖又は側鎖に組み込まれていてもよい。ソルバトクロミック色素は、上記の通り、多孔質体上に固定化することが好ましい。
【0090】
ソルバトクロミック色素を配向させる場合、例えば、配向膜を利用することができる。例えば、ソルバトクロミック色素を含んだ液を配向膜上に塗布し、塗膜を乾燥させることにより、ソルバトクロミック色素を配向させ且つ固定化することができる。或いは、ソルバトクロミック色素が高分子材料の主鎖又は側鎖に組み込まれている場合、この高分子材料を含んだ層を形成し、この層に延伸処理又はラビング処理を施すことにより、ソルバトクロミック色素を配向させることができる。
【0091】
ソルバトクロミック色素の吸収軸は、表示面に対して略垂直であることが好ましい。この場合、ソルバトクロミック色素材料によるより効率的な光吸収を実現できる。
【0092】
ソルバトクロミック色素を配向させる場合、ソルバトクロミック色素の基底状態又は励起状態における双極子モーメントの方向は、例えば、配向膜が液晶材料を配向させる配向方向に対して平行とし、電極12a及び12b間に電圧を印加した場合に生じる電場の向きに対して垂直とする。或いは、ソルバトクロミック色素の基底状態又は励起状態における双極子モーメントの方向は、配向膜が液晶材料を配向させる配向方向に対して垂直とし、電極12a及び12b間に電圧を印加した場合に生じる電場の向きに対して平行とする。この場合、印加電圧の変化に伴う吸収波長の変化を最大とすることができる。なお、ここで、「平行」は、2つの方向が成す角度が−20°乃至+20°の範囲内にあることを意味する。また、「垂直」は、2つの方向が成す角度が+70°乃至+110°の範囲内にあることを意味する。
【0093】
反射層16の材料としては、アルミニウム及び銀などの金属又はそれらの合金を使用することができる。反射層16は、例えば、電極12aが反射層を兼ねている場合や光学素子10が透過型である場合には、省略することができる。
【0094】
駆動回路20が駆動電圧として直流電圧を出力する場合、光学素子10に表示させるべき色は、この駆動電圧の大きさによって制御することができる。駆動回路20が駆動電圧として交流電圧を出力する場合、光学素子10に表示させるべき色は、この駆動電圧の大きさと周波数との少なくとも一方によって制御することができる。イオン性不純物に起因したオフセット電圧などを考慮すると、直流駆動ではなく交流駆動が望ましい。光学素子10を表示装置に適用し且つ交流駆動を行う場合、その周波数は、フリッカ現象抑制及び低消費電力の観点から、好ましくは10Hz乃至1KHzの範囲内に設定し、より好ましくは30Hz乃至240Hzの範囲内に設定する。
【0095】
駆動回路20は、例えば、吸収極大波長を可視光領域のほぼ全域に亘って変化させ得る。この場合、カラー写真に用いられるシアン、マゼンタ及びイエロー色の色素の吸収極大波長がそれぞれ約650、約550及び約450nmであることを考慮すると、駆動回路20は、好ましくは吸収極大波長が最大で100nm以上変化するように、より好ましくは吸収極大波長が最大で250nm以上変化するように光学素子10の動作を制御する。なお、「可視光領域」は400nm乃至800nmの波長領域を意味している。
【実施例】
【0096】
以下に本発明の例を記載する。
【0097】
(例1)
本例では、図16及び図17を参照しながら説明した光学素子10を、以下の方法により製造した。
【0098】
ITO電極12a及び12bがそれぞれ設けられた透明な無アルカリガラス基板11a及び11bを2枚準備した。各ガラス基板の厚さは、0.7mmであった。
【0099】
次に、電極12a上に、ポリイミドを70nmの厚さにスピナーによりキャストして、絶縁層17aを形成した。ポリイミドとしては、日本合成ゴム社製のAL−1051を使用した。続いて、基板11aの上記主面の周縁部に、シール層15として使用するエポキシ接着剤をディスペンスした。
【0100】
電極12b上にも、絶縁層17aについて説明したのと同様の方法により絶縁層17bを形成した。絶縁層17b上には、直径が10μmの樹脂製スペーサボールを散布した。
【0101】
その後、基板11a及び11bを、絶縁層17a及び17bが向き合うように貼り合せ、エポキシ接着剤を硬化させた。これにより、空セルを得た。
【0102】
次に、96質量部のネマチック液晶材料と4質量部のソルバトクロミック色素とを含んだ混合物を、等方相の状態で空セルへ真空注入して、光学的可変層13を形成した。ネマチック液晶材料としては、Aldrich−Sigma社製の4−シアノ−4’−ペンチルビフェニルを使用した。ソルバトクロミック色素としては、Aldrich−Sigma社製のReichardt色素を使用した。
【0103】
空セルの注入口を封止した後、基板11a上に反射フィルム16を貼りつけた。以上のようにして、図16及び図17に示す光学素子10を完成した。
【0104】
この光学素子10を、駆動回路20に接続した。そして、電極12a及び12b間に交流電圧を印加し、電圧変化に伴う色変化を観察した。なお、この交流電圧の波形は矩形波とし、周波数は30Hzとした。結果を図20に示す。
【0105】
図20は、電圧変化に伴う色変化の一例を示すグラフである。図中、横軸は波長を示し、縦軸は吸光度(任意単位)を示している。
【0106】
この光学素子10は、電圧無印加状態(0V)においては緑色を表示し、このときの吸収極大波長は、図20に示すように680nmであった。そして、この光学素子10は、印加電圧を20Vとしたときに赤色を表示し、このときの吸収極大波長は、図20に示すように580nmであった。
【0107】
(例2)
本例では、図16及び図17を参照しながら説明した光学素子10を、以下の方法により製造した。
まず、例1において説明したのと同様の方法により、空セルを形成した。
【0108】
次に、96質量部のネマチック液晶材料と4質量部のソルバトクロミック色素とを含んだ混合物を、等方相の状態で空セルへ真空注入して、光学的可変層13を形成した。ネマチック液晶材料としては、メルク社製のZLI−4900−000を使用した。ソルバトクロミック色素としては、Aldrich−Sigma社製のReichardt色素を使用した。
【0109】
空セルの注入口を封止した後、基板11a上に反射フィルム16を貼りつけた。以上のようにして、図16及び図17に示す光学素子10を完成した。
【0110】
この光学素子10を、駆動回路20に接続した。そして、電極12a及び12b間に交流電圧を印加し、電圧変化に伴う色変化を観察した。なお、この交流電圧の波形は矩形波とし、周波数は30Hzとした。
【0111】
その結果、この光学素子10は、電圧無印加状態(0V)においては薄い橙色を表示し、印加電圧を15Vとしたときに赤紫色を表示した。
【0112】
(例3)
図21は、例3に係る光学素子を概略的に示す断面図である。本例では、図21に示す光学素子10を、以下の方法により製造した。
【0113】
ITO電極12a及び12bがそれぞれ設けられた透明な無アルカリガラス基板11a及び11bを2枚準備した。各ガラス基板の厚さは、0.7mmであった。
【0114】
次に、電極12aにラビング処理を施した。次いで、電極12a上に、ソルバトクロミック色素を含んだ液を50nmの厚さにスピナーによりキャストした。これにより、色素層13SDを得た。ソルバトクロミック色素としては、Aldrich−Sigma社製のReichardt色素を使用した。続いて、基板11aの上記主面の周縁部に、シール層15として使用するエポキシ接着剤をディスペンスした。
【0115】
次に、電極12b上に、ポリイミドを70nmの厚さにスピナーによりキャストし、塗膜にラビング処理を施すことにより、絶縁層17bを形成した。ポリイミドとしては、日本合成ゴム社製のAL−1051を使用した。そして、絶縁層17b上に、直径が10μmの樹脂製スペーサボールを散布した。
【0116】
その後、基板11a及び11bを、絶縁層17a及び17bが向き合うように及びラビング方向が平行になるように貼り合せ、エポキシ接着剤を硬化させた。これにより、空セルを得た。
【0117】
次に、フッ素系ネマチック液晶材料を、液晶相の状態で空セルへ真空注入して、液晶層13LCを形成した。ネマチック液晶材料としては、チッソ社製のJC−1041を使用した。
【0118】
空セルの注入口を封止した後、基板11a上に反射フィルム16を貼りつけた。以上のようにして、図21に示す光学素子10を完成した。
【0119】
この光学素子10を、駆動回路20に接続した。そして、電極12a及び12b間に30Vの交流電圧を印加し、電圧変化に伴う色変化を観察した。なお、この交流電圧の波形は矩形波とし、周波数は30Hzとした。結果を図22に示す。
【0120】
図22は、電圧変化に伴う色変化の他の例を示すグラフである。図中、横軸は波長を示し、縦軸は吸光度(任意単位)を示している。また、曲線COFFは電圧無印加状態における吸収スペクトルを示している。そして、曲線CON(0)、CON(30)及びCON(90)は、それぞれ、電圧を印加した直後、電圧印加を開始してから30秒経過後、及び電圧印加を開始してから90秒経過後における吸収スペクトルを示している。
【0121】
(例4)
本例では、図21に示す光学素子10を、以下の方法により製造した。
ITO電極12a及び12bがそれぞれ設けられた透明な無アルカリガラス基板11a及び11bを2枚準備した。各ガラス基板の厚さは、0.7mmであった。
【0122】
次に、電極12aにラビング処理を施した。次いで、電極12a上に、ソルバトクロミック色素を側鎖に有している高分子を含んだ液を30nmの厚さにスピナーによりキャストした。更に、この塗膜にラビング処理を施すことにより、色素層13SDを得た。この高分子としては、下記化学式に示す化合物を使用した。続いて、基板11aの上記主面の周縁部に、シール層15として使用するエポキシ接着剤をディスペンスした。
【化1】
【0123】
次に、電極12b上に、ポリイミドを70nmの厚さにスピナーによりキャストし、塗膜にラビング処理を施すことにより、絶縁層17bを形成した。ポリイミドとしては、日本合成ゴム社製のAL−1051を使用した。そして、絶縁層17b上に、直径が10μmの樹脂製スペーサボールを散布した。
【0124】
その後、基板11a及び11bを、絶縁層17a及び17bが向き合うように及びラビング方向が平行になるように貼り合せ、エポキシ接着剤を硬化させた。これにより、空セルを得た。
【0125】
次に、Merck社製のネマチック液晶材料を、液晶相の状態で空セルへ真空注入して、液晶層13LCを形成した。ネマチック液晶材料としては、誘電率異方性Δεが20であり、屈折率異方性Δnが0.15であるものを使用した。
【0126】
空セルの注入口を封止した後、基板11a上に反射フィルム16を貼りつけた。以上のようにして、図21に示す光学素子10を完成した。
【0127】
この光学素子10を、駆動回路20に接続した。そして、電極12a及び12b間に交流電圧を印加し、電圧変化に伴う色変化を観察した。なお、この交流電圧の波形は矩形波とし、周波数は30Hzとした。
【0128】
その結果、この光学素子10は、電圧無印加状態(0V)においては赤色を表示し、印加電圧を15Vとしたときに緑色を表示した。
【0129】
(例5)
本例では、図18及び図19を参照しながら説明した光学素子を、以下の方法により製造した。
【0130】
まず、ホウケイ酸ソーダガラスの熱処理とそれに続く酸処理とにより、厚さが3μmであり、細孔径が1μmの多孔質ガラスビーズ13Pを作製した。この多孔質ガラスビーズにReichardt色素のエタノール溶液を含浸させて、Reichardt色素を細孔の壁面に固定化した。
【0131】
このようにして得られた粒子を、ITO電極がその表面に設けられた透明な2枚のガラス基板とシール層とからなるセルの中に封入した。ガラス基板としては、厚さが0.7mmの無アルカリガラス基板を使用した。
【0132】
その後、セルの中に、Merck社製のネマチック液晶材料を等方相の状態で真空注入した。ネマチック液晶材料としては、誘電率異方性Δεが15であり、屈折率異方性Δnが0.18であるものを使用した。
【0133】
セルの注入口を封止した後、一方の基板上に反射フィルム16を貼りつけた。以上のようにして、図18及び図19を参照しながら説明した光学素子を完成した。
【0134】
この光学素子10を、駆動回路20に接続した。そして、電極12a及び12b間に交流電圧を印加し、電圧変化に伴う色変化を観察した。なお、この交流電圧の波形は矩形波とし、周波数は30Hzとした。
【0135】
その結果、この光学素子10は、電圧無印加状態(0V)においては赤紫色を表示し、印加電圧を50Vとしたときに黄緑色を表示した。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】正のソルバトクロミズムを示す色素の一例と、その基底状態及び励起状態における双極子モーメントとを示す図。
【図2】負のソルバトクロミズムを示す色素の一例と、その基底状態及び励起状態における双極子モーメントとを示す図。
【図3】図1に示す色素が示すソルバトクロミズムのエネルギー図。
【図4】図2に示す色素が示すソルバトクロミズムのエネルギー図。
【図5】色素分子の双極子モーメントと溶媒分子の配向状態との関係を概略的に示す図。
【図6】色素分子の双極子と溶媒分子の双極子及び誘起双極子との相互作用を概略的に示す図。
【図7】本発明の第1態様に係る光学素子が黄色を表示している様子を概略的に示す斜視図。
【図8】図7に示す光学素子がマゼンタ色を表示している様子を概略的に示す斜視図。
【図9】図7に示す光学素子がシアン色を表示している様子を概略的に示す斜視図で。
【図10】本発明の第2態様に係る光学素子が黄色を表示している様子を概略的に示す斜視図。
【図11】図10に示す光学素子がマゼンタ色を表示している様子を概略的に示す斜視図。
【図12】図10に示す光学素子がシアン色を表示している様子を概略的に示す斜視図。
【図13】図10に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図。
【図14】図11に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図。
【図15】図12に示す状態におけるソルバトクロミック色素分子と液晶分子とを概略的に示す図。
【図16】本発明の第3態様に係る光学素子が或る色を表示している様子を概略的に示す断面図。
【図17】図16に示す光学素子が他の色を表示している様子を概略的に示す断面図。
【図18】本発明の第4態様に係る光学素子が或る色を表示している様子を概略的に示す断面図。
【図19】図18に示す光学素子が他の色を表示している様子を概略的に示す断面図。
【図20】電圧変化に伴う色変化の一例を示すグラフ。
【図21】例3に係る光学素子を概略的に示す断面図。
【図22】電圧変化に伴う色変化の他の例を示すグラフ。
【符号の説明】
【0137】
10…光学素子、11a…基板、11b…基板、12a…電極、12b…電極、13…光学的可変層、13LC…液晶層、13P…多孔質体、13SD…色素層、15…シール層、16…反射層、17a…絶縁層、17b…絶縁層、20…駆動回路、A1…配向状態、A2…配向状態、LC…液晶分子、SD…ソルバトクロミック色素分子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電率異方性を有する材料とソルバトクロミック色素とを含んだ光学的可変層と、
前記光学的可変層に電圧を印加する第1及び第2電極と
を具備した光学素子。
【請求項2】
前記誘電率異方性を有する材料は液晶材料である請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記ソルバトクロミック色素は固定化されている請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記ソルバトクロミック色素は多孔質体に支持されている請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記ソルバトクロミック色素は化学結合によって固定化されている請求項3に記載の光学素子。
【請求項6】
前記ソルバトクロミック色素は高分子材料の主鎖又は側鎖に組み込まれている請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
前記ソルバトクロミック色素は配向している請求項3に記載の光学素子。
【請求項8】
前記ソルバトクロミック色素の吸収軸は前記光学的可変層の主面に平行である請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記誘電率異方性を有する材料は液晶材料である請求項7に記載の光学素子。
【請求項10】
前記光学的可変層の主面と接し、前記液晶材料の配向を制御するように構成された配向膜を更に具備した請求項7に記載の光学素子。
【請求項11】
前記ソルバトクロミック色素の基底状態又は励起状態における電気双極子モーメントの方向は、前記配向膜が前記液晶材料を配向させる配向方向に対して平行であり、前記第1及び第2電極間に電圧を印加した場合に生じる電場の向きに対して垂直である請求項10に記載の光学素子。
【請求項12】
前記ソルバトクロミック色素の基底状態又は励起状態における電気双極子モーメントの方向は、前記配向膜が前記液晶材料を配向させる配向方向に対して垂直であり、前記第1及び第2電極間に電圧を印加した場合に生じる電場の向きに対して平行である請求項10に記載の光学素子。
【請求項13】
前記ソルバトクロミック色素の少なくとも一部は前記誘電率異方性を有する材料と混合されている請求項1に記載の光学素子。
【請求項14】
前記誘電率異方性を有する材料は液晶材料である請求項13に記載の光学素子。
【請求項15】
前記ソルバトクロミック色素は有機材料である請求項1に記載の光学素子。
【請求項16】
前記ソルバトクロミック色素は分子内電荷移動構造を有している請求項1に記載の光学素子。
【請求項17】
請求項1に記載の光学素子と、前記第1及び第2電極間に駆動電圧を印加する駆動回路とを含んだ表示装置。
【請求項18】
前記誘電率異方性を有する材料は液晶材料である請求項17に記載の表示装置。
【請求項19】
前記ソルバトクロミック色素は固定化されている請求項17に記載の表示装置。
【請求項20】
前記ソルバトクロミック色素の少なくとも一部は前記誘電率異方性を有する材料と混合されている請求項17に記載の表示装置。
【請求項1】
誘電率異方性を有する材料とソルバトクロミック色素とを含んだ光学的可変層と、
前記光学的可変層に電圧を印加する第1及び第2電極と
を具備した光学素子。
【請求項2】
前記誘電率異方性を有する材料は液晶材料である請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記ソルバトクロミック色素は固定化されている請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記ソルバトクロミック色素は多孔質体に支持されている請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記ソルバトクロミック色素は化学結合によって固定化されている請求項3に記載の光学素子。
【請求項6】
前記ソルバトクロミック色素は高分子材料の主鎖又は側鎖に組み込まれている請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
前記ソルバトクロミック色素は配向している請求項3に記載の光学素子。
【請求項8】
前記ソルバトクロミック色素の吸収軸は前記光学的可変層の主面に平行である請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記誘電率異方性を有する材料は液晶材料である請求項7に記載の光学素子。
【請求項10】
前記光学的可変層の主面と接し、前記液晶材料の配向を制御するように構成された配向膜を更に具備した請求項7に記載の光学素子。
【請求項11】
前記ソルバトクロミック色素の基底状態又は励起状態における電気双極子モーメントの方向は、前記配向膜が前記液晶材料を配向させる配向方向に対して平行であり、前記第1及び第2電極間に電圧を印加した場合に生じる電場の向きに対して垂直である請求項10に記載の光学素子。
【請求項12】
前記ソルバトクロミック色素の基底状態又は励起状態における電気双極子モーメントの方向は、前記配向膜が前記液晶材料を配向させる配向方向に対して垂直であり、前記第1及び第2電極間に電圧を印加した場合に生じる電場の向きに対して平行である請求項10に記載の光学素子。
【請求項13】
前記ソルバトクロミック色素の少なくとも一部は前記誘電率異方性を有する材料と混合されている請求項1に記載の光学素子。
【請求項14】
前記誘電率異方性を有する材料は液晶材料である請求項13に記載の光学素子。
【請求項15】
前記ソルバトクロミック色素は有機材料である請求項1に記載の光学素子。
【請求項16】
前記ソルバトクロミック色素は分子内電荷移動構造を有している請求項1に記載の光学素子。
【請求項17】
請求項1に記載の光学素子と、前記第1及び第2電極間に駆動電圧を印加する駆動回路とを含んだ表示装置。
【請求項18】
前記誘電率異方性を有する材料は液晶材料である請求項17に記載の表示装置。
【請求項19】
前記ソルバトクロミック色素は固定化されている請求項17に記載の表示装置。
【請求項20】
前記ソルバトクロミック色素の少なくとも一部は前記誘電率異方性を有する材料と混合されている請求項17に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−122454(P2010−122454A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295851(P2008−295851)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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