説明

光学素子用モノマーおよびポリマー

マトリックスポリマーおよびモノマー混合物を含む組成物が、ポリマー混合物の製造に使用され、このポリマー混合物は、マトリックスポリマーと、モノマー混合物から形成される第2ポリマーとを含有するものである。好ましくは、このマトリックスポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、またはこれらの混合物を含むものである。好ましくは、このモノマー混合物は、チオールモノマーと、エンモノマーおよびインモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の第2モノマーとを含む。これらの組成物を、レンズなどの光学素子を製造ため使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモノマー材料およびポリマー材料、ならびにレンズなどの光学素子を作製するために有用なモノマー材料およびポリマー材料の安定化混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズなどの光学素子は通常、ポリカーボネート、ソーラ社製「Finalite」(TM)(Sola)、三井化学株式会社製MR‐8ポリマー、およびピー・ピー・ジー・インダストリーズ株式会社製(PPG Industries)ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)ポリマー(CR‐39)などのガラスまたはプラスチックを材料とするレンズブランクを注型、研削、および/または研磨することにより作製される。しかし、これらの材料および加工技術を用いて作製されるレンズは、比較的単純な光学的ひずみしか補正することができない。より複雑な光学的ひずみを補正するレンズを製造するために、他の加工技術およびポリマー組成物が開発されてきた。しかし、現在入手できる適切なポリマー組成物の数が比較的少ないため、当該のレンズの商品化は難行している。米国特許第5,236,970号、第5,807,906号、第6,391,983号、および第6,450,642号に記載されているようなポリマー組成物は完全に満足できるものとはいえない。したがって、光学素子、特に、複雑な光学的ひずみを補正できる光学素子の製造に適したポリマー組成物が求められている。
【特許文献1】米国特許第5,236,970号
【特許文献2】米国特許第5,807,906号
【特許文献3】米国特許第6,391,983号
【特許文献4】米国特許第6,450,642号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、上記の如き問題点に鑑みてなされたものであり、複雑な光学的ひずみを補正するレンズを製造するために、内部に分散されたモノマー混合物を有するマトリックスポリマーを含む組成物を提供することである。又このマトリックスポリマーを含む組成物は、光学的に透明であり、フイルム状をなし、屈折率を有するものを提供することを含む。又このマトリックスポリマーを含む組成物を光学素子の製造に利用する手段を提供することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明におけるマトリックスポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択される。このモノマー混合物は、チオールモノマーと、エンモノマーおよびインモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の第2モノマーとを含んでいる。又、マトリックスポリマー、チオールモノマー、および第2モノマーを任意の順序で混入するステップを含む、当該の組成物を作製する方法を提供することによって、本発明の課題を解決する。
【0005】
更には、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含む混合物を含む組成物を提供する。この第1ポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択される。第1ポリマーおよび第2ポリマーを含む混合物は、少なくとも1つの領域を含み、この領域では、第1ポリマーが第1硬化度を有しており、且つ第2ポリマーが第1硬化度とは別の第2硬化度を有している。別の好ましい実施形態においては、組成物を作製する方法を提供するものであり、この方法は、内部に分散されたモノマー混合物を有するマトリックスポリマーを含む組成物を提供するステップと、モノマー混合物の少なくとも一部を重合させて第2ポリマーを形成するステップとを含む。マトリックスポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択される。モノマー混合物は、チオールモノマーと、エンモノマー、インモノマー、およびこれらの混合物からなる群より選択される第2モノマーとを含んでいる。好ましくは、モノマー混合物の重合ステップは、常温または高温で組成物を照射することを含む。
【0006】
別の好ましい実施形態は、次の一般式で示される化合物を提供する。
但し、式中、nは約1〜約6の範囲の整数である。
【0007】
【化46】

【0008】
別の好ましい実施形態は、キットを提供するものであり、前記キットは、チオールモノマーを含む第1容器および第2容器を具備する。この第2容器は、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、エポキシポリマー、イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されるマトリックスポリマーを含み、また、エンモノマーおよびインモノマーからなる群より選択される第2モノマーを含む。
【0009】
別の好ましい実施形態は、第1レンズ、カバー、および第1レンズとカバーの間に挟み込まれたマトリックスポリマーを含む光学素子を提供する。このマトリックスポリマーは、内部に分散されたモノマー混合物を有しており、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択される。このモノマー混合物は、チオールモノマーと、エンモノマーおよびインモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の第2モノマーとを含んでいる。好ましくは、このカバーはレンズ、平面型素子、または被覆である。より好ましくは、第1レンズはレンズブランクである。
【0010】
別の実施形態は、第1レンズ、カバー、および第1レンズとカバーの間に挟み込まれたポリマー混合物を含む光学素子を提供する。このポリマー混合物は、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含んでいる。第1ポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択される。第2ポリマーは、チオールエンポリマーおよびチオールインポリマーからなる群より選択される。ポリマー混合物は、少なくとも1つの領域を含み、この領域では、第1ポリマーが第1硬化度を有しており、且つ第2ポリマーが第1硬化度とは異なる第2硬化度を有している。好ましくは、このカバーは第2レンズ、平面型素子、または被覆である。より好ましくは、第1レンズはレンズブランクである。
【0011】
重合性組成物を提供する。この重合性組成物は、第1屈折率を共有する第1エンモノマーおよび第1チオールモノマーと、第2屈折率を共有する第2エンモノマーおよび第2チオールモノマーを含むものであり、該第1エンモノマーは、スチレン、ジビニルベンゼン、構造式
【0012】
【化47】

【0013】
、構造式
【0014】
【化48】

【0015】
、及び構造式
【0016】
【化49】

【0017】
からなる群より選択されるものであり、該第1チオールモノマーは、チオビスベンゼンチオール、構造式
【0018】
【化50】

【0019】
、及び構造式
【0020】
【化51】

【0021】
からなる群より選択されるものである。
別の実施形態は、キットを提供するものであり、このキットは、第1屈折率を有する高屈折率組成物を含む第1容器と、第2屈折率を有する低屈折率組成物を含む第2容器を具備し、前記高屈折率組成物は、第1エンモノマーおよび第1チオールモノマーを含み、前記低屈折率組成物は、第2エンモノマーおよび第2チオールモノマーを含み、前記第1屈折率と前記第2屈折率の差が約0.001〜約0.5の範囲である。
【0022】
別の実施形態は、光学素子における屈折率を安定化させる方法を提供するものであり、上記光学素子では、マトリックスポリマーが、モノマー混合物の重合を少なくとも部分的に防止するのに効果的であるかなりの量の重合阻止剤を含んでいる。
以下、これらの実施形態およびその他の実施形態について詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のこれらの局面およびその他の局面は以下の説明および添付図面(正確な縮尺ではない)から容易に理解される。但し、これらの図面は例示的なものであって、本発明を限定するものではない。
「ポリマー」という用語は本明細書においてその通常の意味で用いられ、例えば、より小さい分子を結合することにより形成される比較的大きい分子、天然ポリマー、合成ポリマー、プレポリマー、オリゴマー、架橋ポリマー、ブレンド、相互貫入ポリマー網目構造体、フォトポリマー、および共重合体(ブロック共重合体およびグラフト共重合体を含むがこれに限定されない)が含まれる。同様に、「重合」という用語も本明細書においてその通常の意味で用いられ、例えば、より小さい分子を結合してポリマーを形成するプロセス、架橋結合、オリゴマー化、および共重合が含まれる。重合には、光重合(照射によって誘発される重合)および熱光重合(熱および照射によって誘起される重合)が含まれる。
【0024】
「モノマー」という用語は本明細書においてその通常の意味で用いられ、例えば、マクロマなど、1以上の重合可能な基を含有する分子が含まれる。本明細書では、複数の重合可能な基を含有するモノマーを「多官能性モノマー」と称する場合がある。多官能性モノマーは、下記のように架橋剤である。「繰り返し単位」および「反復単位」という用語は本明細書においてその通常の意味で用いられ、例えば、互いに結合し合うモノマーに相当する、ポリマー内の構造が含まれる。「マトリックスポリマー」という用語は本明細書において、マトリックスとして機能できるポリマー、例えば、ポリマーやモノマーなど様々な分子をその格子間に含有させることができるポリマーを指す。マトリックスポリマーは、架橋ポリマーであっても非架橋ポリマーであってもよい。マトリックスポリマーは、アクリレート、ビニル、アリル、メタクリレート、エポキシ、チオール、ヒドロキシなど、フリーの反応基を有している。
【0025】
「ポリエステル」または「エステルポリマー」とは、複数のエステル繰り返し単位を含有し、そのため、不飽和ポリエステルを含むポリマーである。「ポリスチレン」または「スチレンポリマー」とは、複数の置換および/または非置換のスチレン繰り返し単位を含有するポリマーであり、そのため、ポリ(アリルオキシスチレン)などの機能性スチレンポリマーが含まれる。「ポリアクリレート」または「アクリレートポリマー」とは、複数の−(CH−C(RXCO))―単位を含有するポリマーである。ここで、Rは水素またはC〜Cのアルキルを表し、Rは水素、C〜C12のアリール、C〜C12のハロゲン化アリール、C〜Cのアルキル、またはC〜Cのヒドロキシアルキルを表す。エポキシポリマーとは、1以上のエポキシ基を含有するポリマーである。「チオール硬化エポキシポリマー」とは、チオール含有化合物をエポキシポリマーと反応させることにより形成されるポリマーである。イソシアネートポリマーとは、1以上のイソシアネート基を含有するポリマーである。「チオール硬化イソシアネートポリマー」とは、チオール含有化合物をイソシアネートポリマーと反応させることにより形成されるポリマーである。「ポリエチレンイミン」とは、エチレン繰り返し単位およびイミン基を含有するポリマーである。「不飽和」ポリマーとは、1以上の炭素炭素二重結合を含有するポリマーである。
【0026】
「エン」または「エンモノマー」とは、1以上の炭素炭素二重結合を含有するモノマーである。「チオール」または「チオールモノマー」とは、1以上の硫黄水素結合を含有するモノマーである。「チオール‐エンポリマー」とは、エンモノマーとチオールモノマーの重合によって形成されるポリマーである。「イン」または「インモノマー」とは、1以上の炭素炭素三重結合を含有するモノマーである。「チオール‐インポリマー」とは、インモノマーとチオールモノマーの反応によって形成されるポリマーである。「架橋剤」とは、通常は架橋結合を形成することにより、2種類のモノマーを互いに結合させることができる、またはポリマー分子を他のモノマーまたはポリマー分子と結合させることができる化合物である。架橋剤は「架橋剤」、たとえば、結果として架橋結合されるポリマーに取り込まれる多官能化合物であってもよいし、「硬化剤」、たとえば、モノマー間の反応、ポリマー分子間の反応、ポリマー分子と架橋剤との反応、および/またはポリマーとモノマーとの反応を引き起こして架橋結合を形成する触媒または開始剤であってもよい。硬化剤は通常、結果として架橋結合されるポリマーに取り込まれることはない。このため、架橋剤は架橋剤、硬化剤、またはこれらの混合物であり得る。架橋結合されるポリマーは、適宜に、不溶解性および/または不溶性を帯びる程度まで架橋結合されたものを云う。「架橋度」および「硬化度」という用語は、特定のポリマーの重合または架橋結合の程度を指すものであって、そのポリマーの未硬化バージョン(モノマー)と完全に硬化されたバージョンの屈折率差の割合として表すことができる。
【0027】
「混合物」という用語は本明細書において、化合物の様々な組み合わせを含むようにその通常の意味で用いられ、そのため、ポリマーブレンドおよび相互貫入網目構造体(半相互貫入網目構造体を含む)が含まれる。ポリマーの「ブレンド」または「ポリマーブレンド」とは、2種以上の異なるポリマーのよく混じった混合物、例えば、顕微鏡スケールでは相分離しているポリマーの混合物である。ポリマーの「相溶性ブレンド」とは、可視光を用いた顕微鏡スケールで相分離を呈さないポリマーブレンドである。「相互貫入ポリマー網目構造体」(IPN)とは、ポリマーが相互貫入してある程度まで絡み合っている、2種以上のポリマーのよく混じった混合物である。IPNは通常、モノマーおよび/または別のポリマーの存在下でポリマーを形成および/または架橋結合することにより作製される。
【0028】
「膜」という用語は本明細書において、その高さまたは幅を下回る厚さを有する形態の材料を指すために用いられる。膜は通常、約10mm以下の厚さを有している。膜は自立性膜、および/またはその機械的安定性を高めるためにハードコートされたり、表面上にコーティングを施したり、あるいは他の材料の間にサンドイッチにされたりしたものである。例えば、膜は基体とカバーの間に挟み込まれている間に形成してもよいし、形成後に基体とカバーの間に配置してもよい。この基体および/またはカバーは、後で容易に除去できる、ポリエチレンやフッ素化ポリマーなど比較的くっつかない材料である。また、この基体および/またはカバーは、最終生成物、例えば光学素子に組み込まれる材料(例えばレンズやレンズブランク)であってもよい。組成物がレンズ、ミラー、またはプリズムなどの光学素子で使用するのに適している場合、その組成物は「光放射に対して実質的に透明である」とであると考えてよい。このため、例えばサングラスやカラーコンタクトレンズの一般的な方法で当該の組成物にある程度、着色または色味付けを施すことができる。但しそれでも、当該の組成物は「光放射に対して実質的に透明である」と考えられる。
上記の定義およびそこで挙げた例は限定的なものではなく、相互に排他的なものでもない。このため、例えば、相溶性ポリマーブレンドはPNであり得、またその逆でもあり得る。
【0029】
好ましい実施形態は、前記マトリックスポリマーと、その内部に分散されたモノマー混合物とからなる組成物である。該マトリックスポリマーは好ましくは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択される。マトリックスポリマーは市販のものを入手してもよいし、当業者にとって公知の方法で作製してもよい。好ましいマトリックスポリマーは、架橋結合を促進する反応基(例えば二重結合および/またはエポキシ基)を含有している(または、当該の反応基を含有するポリマーから調製される)。好ましくは、マトリックスポリマーは不飽和である(例えば二重結合を含有している)、および/またはエポキシ基を含有している、および/またはイソシアネート基を含有している。架橋結合は化学的に遂行してもよいし(例えば、好ましくはアミン、スズ化合物、リン酸化合物、またはこれらの混合物などの硬化剤の存在下で、マトリックスポリマーをチオールなどの架橋剤と反応させることにより)、光化学的に遂行してもよい(例えば、可視光線または紫外線への暴露によって)。ポリマーの架橋結合に用いられる架橋剤の量は好ましくは、所望の硬化度と、マトリックスポリマーおよび架橋剤の各硬化特性とに基づいて、当業者にとって概ね周知の方法で選択される。
【0030】
好ましい実施形態においては、前記マトリックスポリマーは、架橋剤と不飽和ポリエステル、不飽和ポリスチレン、不飽和ポリアクリレート、またはこれらの混合物の間の化学反応の生成物である。好ましい不飽和ポリエステルの例は以下の構造式(I)で表される。式中、nは約2〜約5000、好ましくは約2〜約100の範囲の整数である。
【0031】
【化52】

【0032】
構造式(I)に包含される不飽和ポリマーは市販のものを利用してもよいし(例えば、リーチホールド社製ATLAC 382‐E(Reichhold)、当業者にとって公知の方法で(例えば、ビスフェノールAや無水マレイン酸から)調製してもよい。好ましくは、構造式(T)の不飽和ポリマーは、より好ましくはアミンの存在下で、場合により加熱を用いてチオールと混合することにより架橋結合される。本発明は理論に縛られるものではないが、チオールはフマル酸繰り返し単位によるマイケル付加を受けて、不飽和ポリマーの架橋結合を引き起こすと考えられている。不飽和ポリマーの架橋結合に有用な好ましいアミンの例には、ポリエチレンイミンおよびハロゲン化テトラアルキルアンモニウムが含まれる。アンソニー・ジャコビン(Anthony Jacobine)のジェイ・ピー・フアシエ及びジェー・エフ・ラベック編「ポリマーの放射線硬化科学技術」、第3巻、219〜268頁、エルセヴィアー・アプライド・サイエンス出版、(J.P.Fouassier
and J.F. Rabek、Elsevier Applied Science、pp219〜268)を参照するとよい。
【0033】
好ましい不飽和ポリスチレンの例は、好ましくは以下の構造式(II)で表されるポリ(アリルオキシスチレン)である。式中、nは約2〜約5000、好ましくは約2〜約100の範囲の整数である。
【0034】
【化53】

【0035】
構造式(H)の不飽和ポリスチレンは市販のものを利用してもよいし、当業者にとって公知の方法で調製してもよい。不飽和ポリスチレンは好ましくは、場合により加熱を用いて、可視線または紫外線への暴露によって架橋結合される。本発明は理論に縛られるものではないが、不飽和基(例えば、アリルオキシ基)は適切な硬化剤(例えば、開始剤)の存在下で、互いに反応するかチオールと反応して、不飽和ポリスチレンの架橋結合を引き起こすと考えられている。
【0036】
好ましい実施形態においては、前記マトリックスポリマーはエポキシポリマー、イソシアネートポリマー、またはこれらの混合物、より好ましくはチオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、またはこれらの混合物である。好ましいエポキシポリマーの例は以下の構造式(III)で表される。式中、nは約2〜約5000、好ましくは約2〜約100の範囲の整数である。
【0037】
【化54】

【0038】
この構造式(III)のエポキシポリマーは市販のものを利用してもよいし、当業者にとって公知の方法で調製してもよい。当業者にとって概ね公知の方法を用いた、エポキシモノマーとコモノマー(例えば、アミン、アルコール、カルボン酸、および/またはチオール)の反応によって、様々なエポキシポリマーを調製することができる。好ましいエポキシモノマーおよびエポキシポリマーの例には、以下の構造式で表されるものが含まれる。式中、nは約2〜約5000、好ましくは約2〜約100の範囲の整数である。
【0039】
【化55】

【0040】
【化56】

【0041】
【化57】

【0042】
【化58】

【0043】
【化59】

【0044】
エポキシポリマーは好ましくは、場合により加熱を用いて、チオールモノマー(架橋剤)およびアミン硬化剤と混合することにより架橋結合される。チオール硬化エポキシポリマーが好ましい。
【0045】
好ましいイソシアネートポリマーの例は以下の構造の式(IV)で表される。式中、各Xは、O、NH、およびSからなる群より個別に選択される。また、RおよびRはそれぞれ、C〜C18の脂肪族化合物およびC〜C18の芳香族化合物からなる群より個別に選択される。また、mは約1〜約5000、好ましくは約1〜約100の範囲の整数である。
【0046】
【化60】

【0047】
構造式(IV)のイソシアネートポリマーは市販のものを利用してもよいし、当業者にとって公知の方法で調製してもよい。好ましい市販のイソシアネートポリマーの例には、デスモヂュール3300AR3600、CAS 28182‐81‐2、バイエル社から入手できる、ヘキサメチレンジイソシアネートのホモポリマー(Desmodur
3300 AR3600,CAS 28182-81−2)が含まれる。当業者にとって概ね公知の方法を用いた、イソシアネートモノマーとコモノマー(例えば、アルコール、アミン、および/またはチオール)の反応によって、様々なイソシアネートポリマーを調製することができる。好ましい市販のイソシアネートモノマーの例、バイエル社のモンヂュールには、以下の構造の式で表されるものが含まれる。
【0048】
【化61】

【0049】
【化62】

【0050】
【化63】

【0051】
イソシアネートポリマーは好ましくは、場合により加熱を用いて、架橋剤(例えば、チオール、アミン、アルコール、スズ化合物、および/またはリン酸化合物)と混合することにより架橋結合される。チオール硬化イソシアネートポリマーが好ましい。好ましくは、チオール架橋剤は、本明細書のあちこちで記載したチオールモノマーである。
【0052】
マトリックスポリマー中に分散されるモノマー混合物は好ましくは、段階的に重合が進む、ないし逐次重合が進むモノマーを含んでおり、より好ましくは、放射線逐次重合が進むモノマーを含んでいる。例えば、好ましいモノマー混合物は、チオールモノマーおよび少なくとも1種の第2モノマーを含んでいる。この第2モノマーは好ましくは、エンモノマー、インモノマー、またはこれらの混合物、より好ましくは、多官能性エンモノマーである。チオールモノマーは好ましくは、多官能性チオールモノマーである。好ましいチオールモノマーの非限定的な例には、以下の構造の式で表されるものが含まれる。
【0053】
【化64】

【0054】
【化65】

【0055】
【化66】

【0056】
好ましいチオールモノマーの追加例の構造を表1に示している。ここで、n、m、x、y、およびzはそれぞれ個別に、約2〜約5000、好ましくは2〜100の範囲である。様々なチオールモノマーは市販のものを購入してもよいし、当業者にとって公知の方法で調製してもよい。
【0057】
【表1−1】

【0058】
【表1−2】

【0059】
【表1−3】

【0060】
第2モノマーは好ましくは、エンモノマー、インモノマー、またはこれらの混合物である。第2モノマーは好ましくは、多官能性モノマーである。これに限定されるものではないが、好ましいエンモノマーの例には、以下の構造の式で表されるものが含まれる。
【0061】
【化67】

【0062】
【化68】

【0063】
好ましい第2モノマーの追加例の構造を表2に示している。ここで、n、m、x、y、およびzはそれぞれ個別に、約2〜約5000、好ましくは約2〜約100の範囲である。
【0064】
【表2−1】

【0065】
【表2−2】

【0066】
【表2−3】

【0067】
【表2−4】

【0068】
【表2−5】

【0069】
【表2−6】

【0070】
【表2−7】

【0071】
【表2−8】

【0072】
【表2−9】

【0073】
【表2−10】

【0074】
【表2−11】

【0075】
特に好ましい種類のエンモノマーは、構造(V)で表される。式中、nは好ましくは約1〜約6の範囲の整数である。n=1の場合に構造式(V)で表されるエンモノマーを調製する好ましい方法を、後述の実施例で示している。
【0076】
【化69】

【0077】
マトリックスポリマーおよび内部に分散されたモノマー混合物を含むポリマー組成物が、硬化剤(好ましくは光開始剤)および場合により、重合阻止剤、酸化防止剤、フォトクロミック色素、および/または紫外線吸収剤など1種以上の添加剤をさらに含むことが好ましい。当該の添加剤は、市販のものを利用できる。光開始剤は、先行する光重合(例えば、マトリックスポリマーの調製における)の残留物としてポリマー組成物中に存在してもよいし、他の目的で、好ましくはモノマー混合物の重合を開始するために含めてもよい。光開始剤の量および種類は好ましくは、当業者にとって概ね公知の選択基準を用いて、所望のポリマーを生成するように選択される。好ましい光開始剤の例として、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン(「イルガキュアー184」という商標名でチバ社から市販されている(Irgacure
184, Ciba)という化合物が挙げられる。その他の好ましい光開始剤には、ベンゾイン、「Irgacure 500」(商標)(50%の1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン+50%のベンゾフェノン)、「Irgacure 651」(商標)(2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オン)、「Irgacure 819」(商標)(ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド)、および「Irgacure 2959」(商標)(1‐[4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)‐フェニル]‐2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐プロパン‐1‐オン)が含まれる。好ましい重合阻止剤の例には、N‐PAL(N‐ニトロソ‐N‐フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)およびMEHQ(4‐メトキシフェノール)が含まれる。好ましい紫外線吸収剤の例には、Tinuvin 327(2,4‐ジ‐t‐ブチル‐6‐(5‐クロロベンゾトリアゾール‐2‐イル)フェノール)およびTinuvin 144(ビス(1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル)(3,5‐ジ‐(t)‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ブチルプロパンジオアート)が含まれる。好ましい酸化防止剤の例には、TTIC(トリス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート)およびIRGANOX 1010(テトラキス(メチレン‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロシンナメート)メタン)が含まれる。フォトクロミック色素の例には、スピロナフトオキサジンおよびナフトピラン(例えば、イギリスのジェームズ・ロビンソン社(James
Robinson))のReversacol色素およびPCT 国際公開公報第02091030号で開示されているものが含まれる。この公開公報が、特にフォトクロミック色素を説明することを目的として、参照により本明細書で参考として引用する。
【0078】
マトリックスポリマーおよび内部に分散されたモノマー混合物を含むポリマー組成物は、マトリックスポリマー、チオールモノマー、および第2モノマーを任意の順序で混合することにより作製することができる。好ましくは、混合は、チオールモノマーおよび第2モノマーの存在下でマトリックスポリマーを形成および/または架橋結合することにより行われる。例えば、好ましい実施形態においては、不飽和ポリエステルマトリックスポリマーが光開始剤、チオールモノマー、エンモノマー、および場合により架橋剤(例えば、アミン)と混合されて、不飽和ポリエステルマトリックスポリマーおよび内部に分散されたモノマー混合物(チオールおよびエン)を含む組成物が形成される。別の実施形態においては、この組成物が加熱および/または照射を受けて、不飽和ポリエステルを少なくとも部分的に架橋結合させ、それにより、チオール硬化ポリエステル、残りのチオールモノマー、およびエンモノマーを含む組成物が形成される。好ましくは、残りのチオールモノマーの量はエンモノマーと反応するのに十分である。エンモノマーの一部が、不飽和ポリエステルに拘束されたペンダントチオール基とも反応してチオール硬化ポリエステルの一部になることは当業者にとって了解されよう。後述する追加実施形態においては、これらの組成物のいずれか(それぞれ、マトリックスポリマーおよび内部に分散されたモノマー混合物を含んでいる)が照射を受けて、チオールモノマーおよびエンモノマーを少なくとも部分的に重合させ、チオール‐エンポリマーが形成され、それにより、マトリックスポリマー(例えば、ポリエステル)およびチオール‐エンポリマーからなる混合物が形成される。重合性組成物におけるエンモノマーおよびチオールモノマーの相対量は、好ましくは、エン官能基の数がチオール官能基の数とほぼ同じであるようなものである。
【0079】
図1は、マトリックスポリマーおよび内部に分散されたモノマー混合物を含むポリマー組成物を作製する好ましいプロセスを概略的に示している。例示した実施形態においては、マトリックスポリマーはポリエステルであり、モノマー混合物はチオールモノマーおよびエンモノマーからなっている。当然のことながら、本明細書に記載したものを含め、他のマトリックスポリマーおよびモノマーを、図1に関して本明細書に記載したプロセスで使用してもよい。また、本明細書中の教示に照らして、当業者の知識を活用して、好ましいプロセスの変形形態を実施することもできる。
【0080】
図1に示した組成物310は、構造式(I)で表される不飽和ポリエステルを13部、エンモノマー(ペンタエリスリトールトリアリルエーテル)を10部、チオールモノマー(トリメチロールプロパントリ(3‐メルカプトプロピオン酸))を21部、アミン(ポリエチレンイミン)を1.1部、および光開始剤「Irgacure 184」を0.075部、含んでいる(特に明記しない限り、すべての部は重量部である)。組成物310は真空下でガス抜きされ、ガラスカバー315とガラス基体320の間に挟み込まれ、次に、約65℃〜75℃の温度で約40分間、加熱325することにより架橋結合される。他のポリマーを架橋結合するために、これよりも長いまたは短い加熱時間を採用してもよい。加熱325の結果、組成物310において不飽和ポリエステルとチオールの架橋結合が生じる。これにより、遊離チオール基を有するチオール硬化ポリエステル、エンモノマー、残りのチオールモノマー、光開始剤、および(通常)少量の残留アミン(例えば、架橋結合で消費されないアミン)を含有する組成物330が形成される。当然のことながら、少量のエンモノマー、チオールモノマー、および/または光開始剤が架橋結合中に消費されることもある(例えば、組成物330における架橋ポリエステルに取り込まれる)。
【0081】
ガラスカバー315および基体320によって、一定の厚さを有する膜の形態で組成物330を調製することが可能になる。例えば、場合によりスペーサを両プレート間に配置して、所望の厚さを有する膜を形成してもよい。カバー315と基体320は平坦なまたは曲がったプレートであってもよいがそれらの一方または両方が、所望のトポロジーを有する膜を形成するのに使用できる。好ましくは、カバーは光放射に対して実質的に透明である。適切なカバーおよび基体の材料の例には、ガラスおよびプラスチック、好ましくはポリカーボネート、ソーラ社製「Finalite」(商標)、三井化学株式会社製MR‐8ポリマー、ならびにジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)ポリマー(CR‐39)(PPG Industries社)など、約1.5〜約1.74の範囲の屈折率を有する、光学的に透明な材料が含まれる。カバーは保護コーティングであってもよい。好ましくは、カバーの一方または両方はレンズ、平面型レンズ、またはレンズブランクである。
【0082】
当然のことながら、ガラスカバー315および基体320は任意選択的である。例えば、組成物310を基体上に流し込み、架橋結合させて、自己保持膜、例えばカバーを用いることなく基体から剥離することができる程、十分な機械的強度を有する膜を形成することができる。好ましくは、組成物330の物理的形態はゲル、例えば膜状のゲルである。膜状のゲルを表面から容易に剥離できるように、組成物310の塗布に先立って離型剤で基体の表面を処理すること、および/またはハードコート紫外線カットCR‐39基体を使用することが好ましい。剥離した膜にハードコートを施して、その機械的安定性を高めることができる。
【0083】
マトリックスポリマーおよびその内部にモノマー混合物が分散されたを含むポリマー組成物を用いて、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含む組成物を作製することができる。この第2ポリマーはモノマー混合物の重合によって形成される。例えば、図1に示したように、ガラスカバー315と基体320の間に挟み込まれた組成物330が放射340に暴露され(好ましくは加熱を用いて)、それによって光開始剤が活性化され、架橋ポリエステルの存在下で、組成物330の中に分散されたモノマーが重合345されてチオール−エンポリマーが形成される。フォトマスク347を用いて、組成物330の様々の異なる点において受け取られる放射量が制御される。フォトマスク347は、基本的に放射を透過しない領域342、基本的に放射を透過する領域343、および放射の一部を透過する領域344などの領域を含むことができる。このため、結果として生成される組成物350は、架橋ポリエステル、チオール−エンポリマー(例えば、放射340に暴露された領域352、353における)、部分的に重合されたチオール−エン(例えば、放射340に暴露された領域352における)、および(場合により)大部分が重合されていないチオールモノマーおよびエンモノマー(例えば、放射340に暴露されなかった領域351における)を含有している。
【0084】
当然のことながら、どの特定領域におけるチオール−エンポリマーの硬化度も、フォトマスク347によって当該領域まで透過する放射の量に関連する。したがって、チオール‐エンポリマーの硬化度をフォトマスクによって制御できるため、様々な硬化パターンを組成物350に書き込むことが可能になる。例えば、図1に示した実施形態においては、組成物350の硬化パターンは、領域351、352、353での硬化度が異なった結果の産物である。さらに透過性の変化に富んだフォトマスクの追加領域を用いてもよい。当然のことながら、図1では、例示の目的で比較的単純な硬化パターンを挙げたのであって、これよりもはるかに複雑な硬化パターンを得ることができる。例えば、周知のフォトリソグラフィー技術を利用して複雑なパターンをフォトマスクにおいて作成することができ、そのフォトマスクを用いて、相応に複雑な硬化パターンをポリマー組成物において作成することができる。デジタル・ライト・プロジェクター(DLP)(Digital
Light Projector)など、その他のデジタルマスクシステムを、紫外線源または紫外線垂直キャビティ面発光レーザ(UV‐VSCEL)またはレーザ(例えば、3YAG)またはバンドルUV‐LEDと共に用いることができる。
【0085】
好ましくは、組成物350はポリマーブレンド、より好ましくはIPNまたは相溶性ブレンドである。組成物330におけるモノマーの重合は、1つまたは複数の段階、例えば1回または複数回の放射線への暴露によるものであり得る。同様に、組成物350の様々な領域351、352、353においてモノマーを同じ程度または異なる程度、および/または同じ回数または異なる回数、重合させることができる。したがって、例えば、フォトマスク347を図1に示したように用いて組成物330の様々な領域を同時に照射し、チオール‐エンポリマーがこれらの様々な領域351、352、353において異なる程度に重合されるような、組成物を生成することができる。様々な領域を順次照射することにより、例えば、組成物330全体にわたって走査光源(例えば、レーザ)の光度を変えることにより、これと同じまたは類似の効果を達成することができる。1種以上の追加モノマーをプロセスの任意の段階で追加することができる。例えば、後述の実施例16に示したように、1種以上のモノマーを組成物330および/または組成物350の中に分散させ、次に後で重合させることができる。
【0086】
前記マトリックスポリマーの架橋結合およびモノマーの重合は同時に行っても、連続して(いずれの順序で)行ってもよいが、連続して行うことが好ましい。また、各ポリマーの重合および架橋結合の程度が組成物内の場所によって異なる(または同じになる)ように、これらの程度を個別に制御することができる。好ましくは、マトリックスポリマーはモノマーの重合に先立って架橋結合される。例えば、図1に示した組成物350は、組成物全体にわたって架橋度が実質的に一定である架橋ポリエステルと、様々な領域351、352、353において、互いに異なる重合度を有するチオール−エンポリマーとを含有している。
【0087】
多くの最終用途、例えばレンズにおいては、組成物350が、わずかに重合された、または重合されていない材料を含有することが望ましくない場合がある。好ましい実施形態においては、モノマーが大部分の領域において少なくとも部分的に重合され、それにより、有利なことに、残留するモノマー含有量が低減され、組成物の安定性が向上する。例えば、図1において組成物350の全体が放射355に暴露され、それにより、組成物350の全体にわたってチオールモノマーおよびエンモノマーが少なくとも部分的に重合360されて、ポリマー組成物365が生成される。好ましくは、以前に組成物350に書き込まれた硬化パターンが大部分保持されるように、チオールモノマーおよびエンモノマーの硬化度(重合度)が制御される。当該の制御は、例えば、組成物350全体の硬化度をほぼ同じ程度上げるように組成物350を放射に暴露することにより実施できる。例えば、組成物350の領域352が以前に約60%の硬化度まで硬化されており、別の領域353が約20%の硬化度まで硬化されている場合、これら2つの領域352、353の硬化度の差は約40%である。両方の領域352、353を、結果としてもたらされる2つの領域362、363における硬化度をそれぞれ70%および30%に上げる量の放射に暴露することで、この硬化度の差を大部分保持することができる(したがってさらに、物理的特性の差、例えば屈折率の差を大部分保持することができる)。
【0088】
第1ポリマーおよび第2ポリマーを含有する混合物からなる組成物(例えば、組成物350、365)では、第1ポリマーおよび第2ポリマーの相対量は重量比で、好ましくは約0.01:9.99〜約9.99:0.01、より好ましくは約3:7〜約7:3の範囲である。第1ポリマーおよび第2ポリマーの相対量は、対応する量のマトリックスポリマーおよびモノマーで前駆体組成物(例えば、組成物330)を作製することにより、および/または所望の組成物の作製プロセス中に追加のモノマーおよび/またはポリマーを加えることにより制御できる。
【0089】
本明細書の内容を踏まえて、第1ポリマーおよび第2ポリマーの物理的特性を、時間的にも空間的にもそれぞれ個別に制御できることは、当業者によってよく了解されるところである。このため例えば、好ましい実施形態は、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含む混合物を含む組成物を提供する。この混合物は、第1ポリマーが第1硬化度を有しており、且つ第2ポリマーが、第1硬化度とは異なる第2硬化度を有している、少なくとも1つの領域を含んでいる。例えば、図1では、組成物350の領域353における第1ポリマー(架橋ポリエステルマトリックス)の硬化度は、その領域における第2ポリマー(チオール‐エンポリマー)の硬化度と同じであってもよいが、これらの硬化度は異なることが好ましい。また、該組成物は好ましくは、2つの硬化度が両方とも互いに異なり、場合により第1領域における硬化度とは異なっているような、第2領域を含んでいる。例えば、組成物350では、領域353におけるチオール−エンポリマーの硬化度は、領域353における架橋ポリエステルマトリックスの硬化度とは異なっており、領域352におけるチオール‐エンポリマーの硬化度とも異なっている。好ましい実施形態においては、下記のように、未硬化第1ポリマーと硬化された第1ポリマーの屈折率差に基づいて、第1硬化度は約50%〜約100%の範囲であり、および/または第2硬化度は約1%〜約100%の範囲である。より好ましくは、第1ポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択され、および/または第2ポリマーは、チオール−エンポリマーおよびチオール−インポリマーからなる群より選択される。
【0090】
好ましくは、該組成物の様々な領域における硬化度の差によって光学特性の差がもたらされる。このため、光学特性の測定が硬化度を表すのに便利な方法である場合が多い。屈折率の測定が、この目的にとって特に都合が良いことが判ったのである。なぜならば、モノマーまたはモノマー混合物の屈折率は一般に、そのモノマーまたはモノマー混合物から形成される対応するポリマーとは異なるからである。したがって、未硬化ポリマーと硬化されたポリマーの屈折率差に基づいて、硬化度をパーセントの数値で表すことができる。例えば、仮想上のモノマーが屈折率1.5を有しており、そのモノマーから形成されるポリマーが屈折率1.6を有しているとする。このモノマーから形成される、部分的に重合された組成物の硬化度は、屈折率が1.51の場合10%、屈折率が1.54の場合40%、屈折率が1.58の場合80%などとみなされるであろう。硬化度を特定する別の方法として、Zygo干渉計を用いた光路差(OPD)の測定が挙げられる。
【0091】
本明細書に記載した組成物(第1マトリックスポリマー及びモノマー混合物を含む、または第1ポリマー及び第2ポリマーを含む)は好ましくは、約1.5〜約1.74の範囲の屈折率を有している。組成物が2つ以上の屈折率を有する(例えば、組成物内の位置によって屈折率が異なる)場合、様々な屈折率のいずれかが約1.5〜約1.74の範囲であれば、組成物は約1.5〜約1.74の範囲の屈折率を有すると考えられる。2つ以上の屈折率領域を有する組成物は、例えば上記のように、フォトマスク、デジタルマスク(DLP)、または走査型レーザなどを用いて組成物の様々な点における硬化度を制御することにより作製できる。好ましくは、フォトマスクによって、0%〜100%の範囲の様々な硬化度が可能になる。例えば、フォトマスクが、フォトマスク内の位置に応じて様々な量の放射を伝導し、それにより、組成物の特定の領域において伝導される放射の強度(および硬化度)が制御される。同様に、走査型レーザを用いて、組成物の第1領域においてポリマーを、その第1領域において望ましい程度まで選択的に硬化し、次に第2領域まで走査して、第2領域においてポリマーを、第1領域における硬化度と同じまたは異なる(望みに応じて)程度まで選択的に硬化し、次に第3領域まで走査して、第3領域においてポリマーを、第1領域および/または第2領域における硬化度と同じまたは異なる(必要に応じて)程度まで選択的に硬化するなどの処理を実施することができる。
【0092】
異なる硬化度を有する複数の領域を含む組成物の安定性は、重力(例えば、密度の高い領域は沈みやすい)、分散(例えば、モノマーは高分子量成分よりも速く分散しやすい)、重合(例えば、モノマーおよび/または部分的に硬化された領域の熱重合は常温で遅くなる)といった様々な要因の影響を受ける場合があることが判明した。好ましい実施形態においては、後述の実施例で明らかにしているように、当該の安定性に関する1以上の問題への対処がなされ、向上した安定性を有する組成物が本発明によって提供される。好ましい組成物は、その組成物のモノマーおよび/または部分的に硬化された領域の重合を少なくとも部分的に防止するのに有効な量の重合阻止剤を含んでいる。
【0093】
光学素子の作製に有用な様々なモノマー、ポリマー、および/または添加剤を調達するのが困難であったり費用がかかる場合がある。好ましい実施形態は、本明細書に記載した組成物の調製に使用される少なくとも1つの容器および1種以上の成分を含むキットに関する。例えば、好ましいキットは少なくとも1つの容器、マトリックスポリマー、チオールモノマー、および第2モノマーからなっている。好ましくは、このマトリックスポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、エポキシポリマー、イソシアネートポリマー、またはこれらの混合物である。好ましくは、この第2モノマーは、エンモノマー、インモノマー、またはこれらの混合物である。好ましい実施形態においては、第1容器はチオールモノマーを含んでおり、第2容器は第2モノマー(より好ましくは、エンモノマーおよびインモノマーからなる群より選択される)およびマトリックスポリマー(より好ましくは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、エポキシポリマー、イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択される)を含んでいる。好ましいキットは、光開始剤、重合阻止剤、酸化防止剤、フォトクロミック色素、および/または紫外線吸収剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含んでいる。好ましくは、マトリックスポリマー、チオールモノマー、および第2モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の材料は、約1.5〜約1.74の範囲の屈折率を有している。より好ましくは、マトリックスポリマー、チオールモノマー、および第2モノマーはそれぞれ、約1.5〜約1.74の範囲の屈折率を有している。
【0094】
本明細書に記載した組成物は様々な用途に応用することができる。例えば、好ましい組成物は光学的放射に対してを実質的に透明であり、そのため、光学素子として、例えば眼鏡レンズ、眼内レンズ、コンタクトレンズ、および各種光学機器で使用されるレンズとして有用である。本明細書に記載した方法によって、光学素子内のどのような特定の点においても屈折率を制御できるような光学素子の製造が可能である。当該の光学素子は、例えば、人間の眼の高次収差を補正する光学素子の製造に役立つ。例えば、米国特許第6,712,466号、および2004年9月7日出願の同時係属中の米国特許出願(代理人整理番号OPH.032A、「光学レンズの製造方法」と題する)を参照されたい。これらの両方の全体が本明細書に取り入れられている。
【0095】
好ましい実施形態を付け加えるならば、それは光学素子を作製するのに有用な重合性組成物である。これらの重合性組成物は、米国特許出願公報第2004‐0008319 Al号として公開されている、米国特許出願第10/253,956号に記載されている方法を用いて光学素子を製造するのに特に有用である。これらの両方が全体として参照により本明細書に組み入れられる。米国特許出願公報第2004‐0008319 Al号(以下「8319公報」と表す)において、とりわけ、基体の上に付置するポリマーのタイプ、位置、および量を正確に制御するマイクロジェットプリンティング法を用いて光学素子を作製する技術が開示されている。好ましい実施形態においては、1種以上の異なるポリマー組成物の比率が、基体表面上に膜の形態で、隣接するポリマーピクセルを付置させる付置プロセスの経過とともに変化する。特定の値の屈折率を含め所定の光学特性をもたらすように、隣接する各ポリマーピクセルの光学特性を選択することができる。好ましくは、この膜は、半径方向にモノトーンでない屈折率プロファイルおよび/または角度方向にモノトーンでない屈折率プロファイルを有している。
【0096】
「8319公報」に記載されているように、光学素子を作製する好ましい方法は、基体上の事前に選ばれた場所への2つ以上のポリマー組成物の投射を含んでいる。「8139公報」で用いられる「ポリマー組成物」という用語は、ポリマーを含む組成物を指す幅広い用語であり、「ポリマー」という用語には、プレポリマーなど重合性組成物を含め、あらゆる形態のポリマーおよびその前駆物質が包含される。
【0097】
重合性組成物が、「8319公報」に記載されている方法で使用するのに特に好適であることが判明したが、勿論その他の用途への応用にも有用である。好ましい重合性組成物は、第1エンモノマーおよび第1チオールモノマーが第1屈折率を共有しており第2エンモノマーおよび第2チオールモノマーとが第2屈折率を共有しており、第1屈折率と第2屈折率の差は約0.001〜約0.5の範囲、好ましくは約0.001〜約0.1の範囲であることからなっているものである。これらのモノマーを任意の順序で混合して、重合性組成物を形成することができる。重合性組成物は好ましくは、第1エンモノマーおよび第1チオールモノマーからなる高屈折率組成物を調製するステップと、第2エンモノマーおよび第2チオールモノマーを含む低屈折率組成物を調製するステップとによって製造されるが、高屈折率組成物および低屈折率組成物を相互貫入して重合性組成物を形成するステップを伴ってもよい。各モノマーペアの屈折率(例えば、第1エンモノマーおよび第1チオールモノマーの第1屈折率)が、重合性組成物とは別に計測される。重合性組成物とは別にエンモノマーおよびチオールモノマーの屈折率を求めるために、重合性組成物においてと同じ組成比でエンモノマーおよびチオールモノマーを共に含有する試験試料が調製される。次に、この試験試料の屈折率が25℃で求められる。これらの成分の各種混合物がそれ自体、重合性組成物であることは、当業者によって理解されるところである。例えば、第1エンモノマーおよび第1チオールモノマーが一緒に、重合性組成物を形成し、同様に、第2エンモノマーおよび第2チオールモノマーが一緒に、重合可能な第2組成物を形成する。
【0098】
前記高屈折率組成物および前記低屈折率組成物は、好ましくは、「8319公報」に記載されている方法によって相互貫入される。例えば、「8319公報」の図1Aにおいて、コンピュータ化されたコントローラ105で制御されるスプレー装置100を用いて2種のポリマー組成物が基体上に投射される、好ましい実施形態が示されている。このスプレー装置100は、第1スプレーヘッド110および第2スプレーヘッド115を含んでいる(参照数字は、「8319公報」で使用されているものである)。好ましくは、第1スプレーヘッド110は、高屈折率組成物を含むか、またはこの組成物で満たされており、第2スプレーヘッド115は、低屈折率組成物を含むか、またはこの組成物で満たされている。次に、「8319公報」に記載されているように、高屈折率組成物と低屈折率組成物を相互貫入して、重合性組成物を形成するステップを実施することができる。これは、例えば、第1スプレーヘッド110から第1ポリマー液滴を基体120上の事前に選ばれた場所に投射して、第1付置ポリマー液滴125を形成するステップと、第1付置ポリマー液滴125に極めて接近している第2スプレーヘッド115から第2ポリマー液滴130を投射するステップと、第1付置ポリマー液滴125と第2ポリマー液滴130を混合して第1ポリマーピクセル135を形成するステップとによって実施することができる。したがって、この実施形態においては、第1ポリマーピクセル135は、高屈折率組成物(重合性組成物とは別に計測された第1屈折率を共に有する第1エンモノマーおよび第1チオールモノマーを含む)および低屈折率組成物(重合性組成物とは別に計測された第2屈折率を共に有する第2エンモノマーおよび第2チオールモノマーを含む)から形成される、重合性組成物を含んでいる。好ましくは、第1屈折率と第2屈折率の差は約0.001〜約0.5の範囲、好ましくは約0.001〜約0.1の範囲である。重合性組成物は、「8319公報」に記載されているのとは別の他の方法によって形成または使用することもできる。
【0099】
高屈折率組成物および低屈折率組成物の相対量を変えることと、エンモノマーおよびチオールモノマー自体を適切に選択することとによって、重合性組成物の屈折率を広範囲にわたって変えることができる。重合性組成物における高屈折率組成物と低屈折率組成物の比率は、約0:100〜約100:0の広範囲にわたって変えることができる。好ましくは、結果として生成される混合物が、重合後に所望の屈折率をもたらすことを確認するルーチンの実験によって、個々の成分の屈折率を考慮することにより、この比率が選択される。好ましくは、後続の重合によって所望の物理的特性、例えば機械的特性および光学的特性を有するポリマーが形成されるように、エンモノマーおよびチオールモノマーの相対量が選択される。より好ましくは、重合性組成物におけるエンモノマーおよびチオールモノマーの相対量は、エン官能基の数がチオール官能基の数とほぼ同じであるところから決まる。
【0100】
多種多様なエンモノマーおよびチオールモノマーが、重合性組成物を製造するのに有用である。表1および表2に挙げたチオールモノマー、エンモノマー、およびインモノマーは好ましいものである。好ましい高屈折率組成物および低屈折率組成物の屈折率を下記の各実施例で示している。その他の高屈折率組成物および低屈折率組成物の屈折率は、ルーチンの実験によって求めることができる。特定の重合性組成物において、
第1エンモノマーが第2エンモノマーと同じであってもよいし、第1チオールモノマーが第2チオールモノマーと同じであってもよい。但し、
第1エンモノマーと第1チオールモノマーとが重合性組成物とは別に測定された第一屈折率を共有し、且つ第2エンモノマーおよび第2チオールモノマーがやはり重合性組成物とは別に計測された第2屈折率を共有しており、第1屈折率と第2屈折率の差が約0.001〜約0.5の範囲、より好ましくは約0.001〜約0.1の範囲である場合に限られる。好ましくは、第1エンモノマーはスチレン、ジビニルベンゼン、
【0101】
【化70】

【0102】
、及び
【0103】
【化71】

【0104】
からなる群より選択される。好ましくは、重合性組成物における第1チオールモノマーおよび第2チオールモノマーは、チオビスベンゼンチオール、
【0105】
【化72】

【0106】
、及び
【0107】
【化73】

【0108】
からなる群より選択される。好ましくは、第2エンモノマーは以下の構造式のモノマーである。
【0109】
【化74】

【0110】
前記重合性組成物は、溶剤、界面活性剤、架橋剤、重合阻止剤、重合開始剤、着色剤、流れ調整剤、および/または安定剤など、1種以上の添加剤をさらに含むことができる。好ましくは、重合性組成物は、重合開始剤(例えば、光開始剤、熱開始剤)、重合阻止剤、酸化防止剤、フォトクロミック色素、および紫外線吸収剤からなる群より選択される1種以上の添加剤を含んでいる。
【0111】
好ましい実施形態においては、重合性組成物の成分はキットの形態で提供される。好ましいキットは、第1屈折率を有する高屈折率組成物からなる第1容器と、第2屈折率を有する低屈折率組成物からなる第2容器とからなっており、該高屈折率組成物は第1エンモノマー及び第1チオールモノマーを含んだものであり、該低屈折率組成物は第2エンモノマー及び第2チオールモノマーを含んだものであり、該第1屈折率と該第2屈折率の差は好ましくは、約0.001〜約0.5の範囲内、より好ましくは約0.001〜約0.1の範囲内にあるところのものである。このキットで有用なチオールモノマーおよびエンモノマーは上記のとおりである。これらの容器は、上記のように、架橋剤、重合阻止剤、重合開始剤、着色剤、流れ調整剤、および/または安定剤など、1種以上の添加剤をさらに含むことができる。容器の大きさ、形状、および構造は、組成物の供給源として便利なように都合なように、必要に応じて変更することができる。例えば、このキットは、「8319公報」に記載されているポリマー投射付置システムで使用するのに適したカートリッジの形態であってもよい。

【実施例】
【0112】
材料:出発原料は市販のものを利用した。ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(70%のトリアリル)(エンモノマー)およびトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)(チオールモノマー)はオールドリッチ社(Aldrich)から入手した。ビスフェノールAおよびフマル酸の共重合体(ATLAC 382‐E(不飽和ポリエステル))はリーチホールド社(Reichhold)社から入手した。アミン(1838‐L 3M Scotch Weld(Part A))はアール・エス・ヒューズ社から(R.S.Hughes)から入手した。イルガキュアー184(「Irgacure 184」(光開始剤)はチバ(Ciba)社から入手した。N‐PAL(重合阻止剤)はアルベマール(Albemarle)社から入手した。ATLACをアセトンに溶解させ、2.5μフィルタでろ過し、アセトン中に蓄え、ATLACのアセトン溶液として用いた。構造式(JS)で表されるエポキシポリマーであるポリ[(フェニルグリシジルエーテル)−CO−ホルムアルデヒド]およびポリエチレンイミンはオールドリッチ社から購入した。ジアリルエーテルビスフェノールAはバイマックス(Bimax)社から入手した。臭化テトラブチルアンモニウムはオールドリッチ社から入手した。HPLC級のアセトンはフィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)社から入手した。
【0113】
実施例1
パートIおよびパーIIを有するキットを次のように作製した。
パートI:ラベルした容量100mLの瓶に、6.000gのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(70%のトリアリル)、13.000gのトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)、13.000gのATLAC(事前にアセトンに溶解させ、2.5μフィルタでろ過し、乾燥させたもの)、0.0088gのN‐PAL、および0.044gの「Irgacure 184」を秤量した。攪拌棒および電磁攪拌器を用いてこれら内容物を約10分間攪拌し、均一混合物を得た。この混合物を50℃で1〜2時間回転蒸発させて、すべてのアセトンを溜去した。
【0114】
パートII:別にラベルした容量30mLの琥珀製バイアルに、4.000gのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(70%のトリアリル)、8.000gのトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)、および0.528gのアミン(1838‐L 3M Scotch Weld(Part A))を秤量した。攪拌棒および電磁攪拌器を用いてこの配合物を約10分間攪拌し、均一混合物を得た。
【0115】
実施例2
パートIおよびIIの一部(実施例1のキットからの)を、それぞれ2.53:1の比率で混合した。パートI組成物を100mLのビーカーで慎重に秤量した。パートI配合物の量に基づいて、パーIIの計算した量を同じビーカーに追加した。この2種類の組成物をまず、ガラス攪拌棒(ガラスは金属よりも効果的であることがわかっている)を用いて手で十分に混ぜ、次に電磁攪拌器で混ぜて混合物を形成し、次に実施例3に示したように、この混合物を直ちに使用した。
【0116】
実施例3
実施例2の混合物を、ワイヤスペーサを備えるガラスプレートに移した。プレート上の混合物をガス抜きして、閉じ込められた空気を除去した。ガス抜きした混合物を間に挟むように、慎重にこのガラスプレートの上に薄いガラスプレートを配置し、両方のプレートを互いにしっかりと押しつけた。紫外線ランプ(EXFO強度=16.6mW/cm)を用いて5分間、紫外線に暴露することにより、挟み込まれた混合物を硬化した。挟み込まれた混合物と硬化した膜の屈折率差の測定結果は0.024であった。
【0117】
実施例4
実施例2の混合物を、ワイヤスペーサを備えるガラスプレートに移した。プレート上の混合物をガス抜きして、閉じ込められた空気を除去した。ガス抜きした混合物を間に挟むように、慎重にこのガラスプレートの上に薄いガラスプレートを配置し、両方のプレートを互いにしっかりと押しつけた。挟み込まれた混合物を約40分間、約60℃に維持して、挟み込まれたゲルを形成した。このゲルは、内部に分散されたペンタエリスリトールトリアリルエーテル(70%のトリアリル)およびトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)を有するチオール硬化ポリエステルポリマーを含んでいた。挟み込まれたゲルをマスクし、このゲルの中央部分を約5分間、約80℃で紫外線(EXFO強度=16.6mW/cm)に暴露してエンモノマーおよびチオールモノマーを重合させ、それにより、暴露領域においてチオール−エンポリマーおよび架橋ポリエステルの混合物が形成された。マスクされた領域とマスクされていない領域の屈折率差の測定結果は0.0181であった。
【0118】
実施例5
実施例4の挟み込まれたゲルからマスクを取り除き、2枚のプレートに挟み込まれたゲル全体を約2分間、室温で紫外線(EXFO照強度=4.8mW/cm)に暴露し、それにより、以前にはマスクの下にあった領域においてチオールモノマーおよびエンモノマーが部分的に重合された。以前にマスクされていた領域とマスクされていない領域の屈折率差の測定結果は0.014であった。この暴露期間によって、マスクされた領域とマスクされていない領域の屈折率差の安定性が向上することがわかった。
【0119】
実施例6
【0120】
【化75】

1,1,1トリス(4‐アリルオキシ‐フェニル)エタンの合成:コンデンサー、電磁攪拌棒、滴下漏斗、およびアルゴン入口を備える500mLの三つ口丸底フラスコに、15.00g(49ミリモル)の1,1,1トリス(4‐ヒドロキシ‐フェニル)エタンを、塩化メチレンとテトラヒロドフランの1:1混合物に溶解させた。60mLの蒸留水に溶解している水酸化ナトリウム10.70g(267ミリモル)の溶液をしっかり攪拌しながら、この混合物に追加した。33.36g(276ミリモル)の臭化アリルを追加し、続いて、2.5g(5.96ミリモル)のテトラフェニルホスホニウムブロマイドを追加した。反応混合物を、室温で攪拌しながら正圧のアルゴン下に放置した。この反応をTLCで監視し、36時間後に止めた。反応混合物を分液漏斗に移し、200mLの塩化メチレンを用いて2回、生成物を抽出した。有機層を混合して、蒸留水で複数回、充分に洗浄した。この有機抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ワットマンろ紙を用いてろ過した。このろ液に活性炭を添加し、その混合物を12時間攪拌した。活性炭をろ過し、回転蒸発器を用いて溶剤を蒸発させた。生成された粘性化合物を、固定相としてシリカを用い、溶離剤として塩化メチレンを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製した。溶剤を回転蒸発器を用いて除去し、14.50g(70%)の1,1,1トリス(4‐アリルオキシ‐フェニル)エタンの無色透明な粘稠液体を得た。H NMRスペクトルおよびIRスペクトルは、1,1,1トリス(4‐アリルオキシ‐フェニル)エタンと一致した。
1H NMR(CDCl3):4.58(m,CH20,6H),
2.17(s,-CH3), 5.2(m,=CH2,6H), 6.1(m,=CH,3H),
6.81(dd, 6 aromatic H ortho to OR),
7.03(dd, 6 aromatic H meta to OR). IR
(NaCl): Major bands at 1293 cm-1(aromatic ether), 2912 cm-1(aliphatic
hydrocarbon), and 1648 cm-1(unsaturated hydrocarbon).
【0121】
実施例7
パートIおよびパートIIを有するキットを次のように作製した。
パートI:ラベルした容量100mLの瓶に、10.00gのポリ[(フェニルグリシジルエーテル)‐CO‐ホルムアルデヒド]、10.89gのトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)、2.30gのペンタエリスリトールトリアリルエーテル、0.0056gのN‐PAL、および0.0281gの「Irgacure 184」を秤量した。アセトンを添加して、これらの成分を溶解させた。攪拌棒および電磁攪拌器を用いてこれらの成分を約10分間攪拌し、均一混合物を得た。この混合物を50℃で1〜2時間回転蒸発させて、すべてのアセトンを蒸発、溜去した。
【0122】
パートII:別のやはりラベルした容量30mLの琥珀色ガラスビンにおいて、2.3689gのペンタエリスリトールトリアリルエーテル、2.5782gのトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)、および0.7034gのポリエチレンイミンを秤量した。攪拌棒および電磁攪拌器を用いてこの配合物を微温で加熱しながら約10分間攪拌し、均一混合物を得た。
【0123】
実施例8
パートIおよびIIの一部(実施例7のキットからの)を、それぞれ4.10:1の比率で混合した。パートI組成物を100mLのビーカーで慎重に秤量した。パートI配合物の量に基づいて、パートIIの計算した量を同じビーカーに追加した。この2種類の組成物をまず、ガラス攪拌棒(ガラスは金属よりも効果的であることがわかっている)を用いて手で十分に混ぜ、次に電磁攪拌器で混ぜて、1.5316の屈折率を有する混合物を形成し、次に実施例9に示したように、この混合物を直ちに使用した。
【0124】
実施例9
実施例8の混合物を、スペーサ(スライド端の周囲の直径20ミリのワイヤ)を備えるスライドガラス(厚さ1mm)に移した。スライド上の混合物をガス抜きして、閉じ込められた空気を除去した。ガス抜きした混合物を間に挟むようにサンドイッチ状に、慎重にこの第1スライドガラスの上に別のスライドガラスを配置し、両方のスライドガラスを互いにしっかりと押した。サンドイッチにされた混合物を約5.5時間、約65℃に維持して、挟み込まれたゲルを形成した。このゲルは、内部に分散されたペンタエリスリトールトリアリルエーテルおよびトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)を有し、且つ1.5550の屈折率を有する架橋エポキシポリマーを含んでいた。
【0125】
実施例10
実施例9で調製された、サンドイッチにされたゲルをマスクし、このゲルの中央部分を約10分間、約90℃で紫外線(EXFO強度=100mW/cm)に暴露してエンモノマーおよびチオールモノマーを重合させ、それにより、暴露領域においてチオール‐エンポリマーおよび架橋エポキシの混合物が形成された。中央の照射された領域は1.5668の屈折率を有しており、マスクされた外側領域は1.5550の屈折率を有していた(マスクされた領域とマスクされていない領域の屈折率差は0.0118)。マスクされていない領域と、実施例8に示した配合物からなる混合物の屈折率差は0.0352であった。
【0126】
実施例11
パートIおよびパートIIを有するキットを次のように作製した。
パートI:ラベルした容量100mLの瓶に、6.000gのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(70%のトリアリル)、13.000gのトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)、13.000gのATLAC(以前にアセトンに溶解させ、2.5μフィルタでろ過し、乾燥させた)、および0.044gのIrgacure 184(TM)を秤量した。攪拌棒および電磁攪拌器を用いてこれらの成分を約10分間攪拌し、均一混合物を得た。この混合物を50℃で1〜2時間回転蒸発させて、すべてのアセトンを蒸発させた。
【0127】
パートII:別にラベルした容量30mLの琥珀製バイアル中に、4.000gのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(70%のトリアリル)、8.000gのトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)、および0.660gのアミン(1838‐L 3M Scotch Weld(Part A))を秤量した。攪拌棒および電磁攪拌器を用いてこの配合物を約10分間攪拌し、均一混合物を得た。
【0128】
実施例12
パートIおよびIIの一部(実施例11のキットからの)を、それぞれ2.53:1の比率で混合した。パートI組成物を100mLのビーカーで慎重に秤量した。パートI配合物の量に基づいて、パートIIの計算した量を同じビーカーに追加した。この2種類の組成物をまず、ガラス攪拌棒(ガラスは金属よりも効果的であることがわかっている)を用いて手で十分に混ぜ、次に電磁攪拌器で混ぜて混合物を形成し、次に実施例13に示したように、この混合物を直ちに使用した。
【0129】
実施例13
実施例12の混合物を、ワイヤスペーサを備えるガラスプレートに移した。プレート上の混合物をガス抜きして、閉じ込められた空気を除去した。ガス抜きした混合物を間に挟むように、慎重にこのガラスプレートの上に薄い水晶プレートを配置し、両方のプレートを互いにしっかりと押した。紫外線ランプ(EXFO照度=1.5〜2.0mW/cm)を用いて30分間、紫外線に暴露することにより、サンドイッチされた混合物を硬化した。完全に硬化された混合物と挟み込まれた混合物の屈折率差の測定結果は0.025であった。
【0130】
実施例14
実施例12の混合物を、ワイヤスペーサを備えるガラスプレートに移した。プレート上の混合物をガス抜きして、閉じ込められた空気を除去した。ガス抜きした混合物を間に挟むように、慎重にこのガラスプレートの上に薄い水晶プレートを配置し、両方のプレートを互いにしっかりと押した。サンドイッチにされた混合物を約40分間、約60℃に維持して、サンドイッチされたゲルを形成した。このゲルは、内部に分散されたペンタエリスリトールトリアリルエーテル(70%のトリアリル)およびトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)を有する架橋ポリエステルポリマーからなっていた。サンドイッチにされゲルをマスクし、このゲルの中央部分を約5分間、紫外線(EXFO照度=8〜10mW/cm)に暴露してエンモノマーおよびチオールモノマーを重合させ、それにより、暴露領域においてチオール−エンポリマーおよび架橋ポリエステルの混合物が形成された。マスクされた領域とマスクされていない領域の屈折率差の測定結果は0.020であった。
【0131】
実施例15
実施例14のサンドイッチにされたゲルからマスクを取り除き、2枚のプレートに挟み込まれたゲル全体を約2〜5分間、紫外線(EXFO照度=8〜10mW/cm)に暴露し、それにより、事前にはマスクの下にあった領域においてチオールモノマーおよびエンモノマーが部分的に重合された。事前にはマスクされた領域とマスクされていない領域の屈折率差の測定結果は0.007であった。この暴露期間によって、マスクされた領域とマスクされていない領域の屈折率差の安定性が向上することが判った。
【0132】
実施例16
実施例12、14、および15に示したプロセスを繰り返す。但し、この実施例16では、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(70%のトリアリル)およびトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)の追加量を、実施例14に示したように調製され、サンドイッチにされたゲルの、暴露されていない領域に更に添加する。次に、添加モノマーを含有する、生成され、サンドイッチにされたゲルを、実施例15に示した方法で紫外線に暴露し、それにより、マスクされていない領域においてチオールモノマーおよびエンモノマーが部分的に重合される。事前にはマスクされた領域とマスクされていない領域の屈折率差は、追加モノマーが存在するせいで0.007を上回る。
【0133】
実施例17
パートIおよびパートIIを有するキットを次のように作製した。
パートI:500mLのフラスコ中に、100gのポリ[(フェニルグリシジルエーテル)‐CO−ホルムアルデヒド]、49.42gのジアリルエーテルビスフェノールA、0.2761gの「Irgacure 184」、および0.0552gのN‐PALをアセトンに溶解させた。次に、この混合物を0.2μmのシリンジフィルタでろ過して、別の清浄な500mLのフラスコに入れた。このろ液を60℃で2時間ロータリーエバポレーターにかけて、すべてのアセトンを溜去した。
【0134】
パートII:別の500mlのフラスコ中、3.27gの臭化テトラブチルアンモニウムおよび150gのトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)をアセトンに溶解させた。次に、この混合物を0.2μmのシリンジフィルタでろ過して、別の清浄な500mLのフラスコに入れた。このろ液を50℃で2時間ロータリーエバポレーターにかけて、すべてのアセトンを溜去した。
【0135】
実施例18
パートIおよびIIの一部(実施例17のキットからの)を、それぞれ1.157:1の比率で混合した。パートI組成物を20mLのシンチレーションバイアルで慎重に秤量した。パートI配合物の量に基づいて、パートIIの計算した量を同じバイアルに追加した。この2種類の組成物をガラス攪拌棒を用いて手で十分に混ぜた。
【0136】
実施例19
実施例18の混合物約2.6gを、スペーサ220(カバーレンズの凹面側の端の周囲に配置された厚さ20ミルの粘着テープ)を備えるサムソン・アイテック・紫外線カット1.6カバー(Samsung EyeTech UV‐Clear 1.6cover)210(図2に概略的に示した)の凹面に移した。カバー210上の該混合物230をガス抜きして、閉じ込められた空気を除去した。ガス抜きした混合物230を間に挟むように、5.0のベースカーブを有するサムソン・UV−カット1.6ベースレンズ240をカバーレンズの上に慎重に配置し、両方のレンズを互いにしっかりと押さえて、レンズアセンブリ250(図3に概略的に示した)を作製した。該レンズアセンブリ250を5時間30分間75℃に維持して、サンドイッチにされた混合物230を硬化し、ゲルを形成した。このゲル230は、内部に分散されたジアリルエーテルビスフェノールAおよびトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)を有するチオール硬化エポキシからなっていた。レンズアセンブリ250を室温まで冷却した後、ベースレンズ240を平面型のものにまで研磨して光学素子を形成した。
【0137】
実施例20
実施例19のレンズアセンブリ250を85℃の温度に加熱するために、レンズホルダーを備えるホットボックス内に配置した。紫外線暴露に先立って、ZYGO干渉計を用いてレンズアセンブリの光路差(OPD)パターンを測定した。このOPDパターンを基準OPDパターンとした。統合ロッドを備えるダイマックス(Dymax)紫外線ランプを用いて、均一な紫外線ビーム(照度=53mW/cm)を生成した。レンズアセンブリ250におけるサンドイッチにされたゲル230の中心領域を、トレフォイルパターンを有するフォトマスク(図4)を透過した紫外線に22分間、暴露した。トレフォイルフォトマスクを透過した紫外線暴露の結果として、サンドイッチにされたゲル230に作成されたOPDパターンを、ZYGO干渉計を用いて測定した。この新しいOPDパターンから基準OPDパターンを差し引いて、インテリウエーブ(Intelliwave)ソフトウェアを用いてOPDマップ(図5)を作成した。レンズの中心領域において6mmの直径にわたって、3.27ミクロンという頂上から谷の範囲(ピーク・トウ・バレー)(照射された領域とマスクされた領域の屈折率差0.01に対応し、人口の大部分の高次収差を補正するのに十分である)が得られた。
【0138】
実施例21
パートIおよびパートIIを有するキットを次のように作製した。
パートI:500mLのフラスコにおいて、100gのポリ[(フェニルグリシジルエーテル)‐コ−ホルムアルデヒド]、33.61gのジアリルエーテルビスフェノールA、0.2466gのIrgacure 184、および0.0740gのN‐PALをアセトンに溶解させた。次に、この混合物を0.2μmのシリンジフィルタでろ過して、別の清浄な500mLのフラスコに入れた。この濾液を60℃で2時間ロータリーエバポレーターにかけて、すべてのアセトンを溜去した。
【0139】
パートII:別の500mlのフラスコ中、3.27gの臭化テトラブチルアンモニウムおよび150gのトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)をアセトンに溶解させた。次に、この混合物を0.2μmのシリンジフィルタで濾過して、別の清浄な500mLのフラスコに入れた。この濾液を50℃で2時間ロータリーエバポレーターにかけて、すべてのアセトンを溜去した。
【0140】
実施例22
パートIおよびIIの一部(実施例21のキットからの)を、それぞれ1.61:1の比率で混合した。パートI組成物を20mLのシンチレーションバイアルで慎重に秤量した。パートI配合物の量に基づいて、パートIIの計算した量を同じバイアルに追加した。この2種類の組成物をガラス攪拌棒を用いて手で十分に混ぜた。この混合物をガス抜きして、閉じ込められた空気を除去した。
【0141】
実施例23
実施例22の混合物約0.3gを、スペーサ(厚さ20ミリの粘着テープを方形ガラスプレートの隅に配置した)を備える、縦1インチ横1インチの方形ガラスプレートに移した。ガス抜きした混合物を間に挟むように、慎重にこの第1ガラスプレートの上に別の縦1インチ横1インチの方形水晶プレートを配置し、両方のプレートを互いにしっかりと押して試験セルを作製した。このセルを5時間15分間75℃に維持して、挟み込まれた混合物を硬化し、ゲルを形成した。このゲルは、内部に分散されたジアリルエーテルビスフェノールAおよびトリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトプロピオン酸)を有するチオール硬化エポキシを含んでいた。
【0142】
実施例24
試験セルを85℃の温度に加熱するために、実施例23の試験セルをセルホルダーを備えるホットボックス内に配置した。紫外線暴露に先立って、ZYGO干渉計を用いてレンズアセンブリの光路差(OPD)パターンを測定した。このOPDパターンを基準OPDパターンとした。統合ロッドを備えるダイマックス紫外線ランプを用いて、均一な紫外線ビーム(照度=53mW/cm)を生成した。レンズアセンブリにおけるサンドイッチにされたゲルの中心領域を、トレフォイルパターンを有するフォトマスク(図4)を透過した紫外線に3分15秒間、暴露した。照射後、試験セルを室温まで冷却した。トレフォイルフォトマスクを透過した紫外線暴露の結果として、挟み込まれたゲルに作成されたOPDパターンを、ZYGO干渉計を用いて測定した。この新しいOPDパターンから基準OPDパターンを差し引き、インテリウェーヴ・ソフトウェアを用いてOPDマップを作成した。試験セルの中心領域において6mmの直径にわたって、1.6ミクロンというピーク・トウ・バレー範囲が得られた。これは、この試験セルにおける潜在的な最大ピークヴァレー範囲(別の試験セルで得られた2.96ミクロン)のほぼ半分であった。
【0143】
実施例25
サンドイッチにされたゲル材料に書き込まれたトレフォイルパターンの安定性を評価するために、実施例24に示したように照射された試験セルに対して、促進熱老化試験を実施した。温度が10℃上昇するたびに劣化率が2倍になると想定した(促進老化研究における一般的な想定)。試験室における室温の測定結果は23℃であり、実施例24の試験セルを83℃でオーブン内に維持した(60℃の差)。想定によれば、劣化は83℃において、23℃(室温)におけるよりも64(または2)倍速く進行する。このため、試験セルをオーブン内で83℃で2時間38分間老化させることが、室温で1週間(168時間)老化させることのシミュレーションになる、という計算である。試験セルを83℃でオーブン内に維持し、様々な時点でオーブンから短時間引き出して、ZYGO干渉計を用いてOPDパターンを測定した。測定前には必ず、試験セルを室温まで冷却した。促進熱暴露によるOPDパターンの変化を定量化するために、各測定後、新しいOPDパターンを実施例24で得られた元のOPDパターンと比較した。図6は、トレフォイルパターンのピーク・トウ・バレーの変化率とシミュレーション時間(83℃で2時間38分間=23℃で1週間)との関係を示す図である。この図は、2年間のシミュレーションにわたって、最初はピーク・トウ・バレーが元の値をやや上回り、次に元の値の約81%に下がる(劣化はわずか19%)ことを示している。
【0144】
実施例26
その安定性を評価するために、実施例21のキットのパートI配合物に対して促進熱老化試験を実施した。温度が10℃上昇するたびに老化率が2倍になると想定した(促進老化研究における一般的な想定)。室温で測定されたパートI配合物の元の屈折率は1.5891であった。この想定に従って、パートI配合物を274時間83℃でオーブン内に維持し、室温における2年間の老化をシミュレートした。2年間の老化をシミュレートした後、パートI配合物をオーブンから取り出し、室温まで冷却した。その屈折率の測定結果は1.5891であった(元の値から0%の変化)。
【0145】
実施例27
その安定性を評価するために、実施例21のキットのパートII配合物に対して実施例26の促進熱老化試験を実施した。パートII配合物の元の屈折率は1.5167であった。2年間シミュレーションの後、パートII配合物の屈折率は1.5188に上昇していた(元の値からわずか0.14%の変化)。
【0146】
実施例28
その安定性を評価するために、実施例23のサンドイッチ化されたゲルに対して実施例26の促進熱老化試験を実施した。サンドイッチにされたゲルの元の屈折率は1.5758であった。2年間シミュレーションの後、サンドイッチにされたゲルの屈折率は1.5758のままであった(元の値から0%の変化)。
【0147】
実施例29
実施例8の混合物を用いて、実施例19に示した方法で2つのレンズアセンブリを作製した(但し、実施例29では、カバーレンズおよびベースレンズとしてサムソン・アイテック・UVカット1.6の代わりにUVカットCR‐39を用いた)。サンドイッチにされたゲルの保存寿命を評価するために実験ではこの2つのレンズアセンブリを用いた。一方のレンズアセンブリを室温で2ヶ月間保管し、次に、実施例20に示した装備を用いて照射した。約20分間の照射後、トレフォイルパターンについて、4.11ミクロンというピーク・トウ・バレー範囲(または動的範囲)が得られた。第2のレンズアセンブリを室温で6ヶ月間保管し、次に、実施例20に示した装備を用いて照射した。約18分間の照射後、トレフォイルパターンについて、4.57ミクロンというピーク・トウ・バレー範囲(または動的範囲)が得られた。この実施例の2つのレンズの硬化曲線(ピーク・トウ・バレーと時間の関係)を図7に示している。両レンズについてほぼ同様のピーク・トウ・バレー範囲(または動的範囲)および硬化曲線が得られたことから、この実施例のサンドイッチ化されたゲルが少なくとも6ヶ月の保存寿命を有していることが実証された。このことは、重要な実用的意義を有している。なぜならば、このサンドイッチにされたゲルを有するレンズアセンブリを製造、保管、および/または配布し、次に、書き込むことができる補正の大きさ(ピーク・トウ・バレー範囲)を犠牲にすることなく、しばらく経ってから特注の方法で(患者に固有の高次収差に対応するパターンで)照射することができることを意味しているからである。
【0148】
実施例30
次の成分を混入することにより、パートIおよびパートIIを有するキットを作製した。
パートI:23.0gの反応性ビスフェノールAグリセロレート(1グリセロール/フェノール)、ジアクリレート(BPGDA、n=1.557)(オールドリッチ社)、46.0gのエタノール(オールドリッチ社)、0.23gの光開始剤(「Irgacure 184」)。
パートII:25.0gの反応性2‐ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、n=1.453)(オールドリッチ社)、25.0gのエタノール、0.25gの光開始剤(「Irgacure 184」)。
【0149】
実施例31〜36
表3に示したように、実施例30のキットのパートIおよびIIの相対量(重量ベース)を相互混入することにより、一連の重合性組成物を調製した。また、表3は、各重合性組成物の屈折率(<<)、および各重合性組成物の紫外線硬化によって得られたポリマーの対応する屈折率も示している。
【0150】
【表3】

【0151】
実施例37
次の成分を混入することにより、パートIおよびパートIIを有するキットを作製した。
パートI:50.0gの反応性トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート(TPGDA、n=1.450)(オールドリッチ社)、50.0gのエタノール、0.51gの光開始剤、「Irgacure 184」、および0.52gの熱開始剤、アゾイソブチロニトリル(AIBN)(オールドリッチ社)。
パートII:162.8gの反応性ビスフェノールAグリセロレート(1グリセロール/フェノール)ジアクリレート(BPGDA、n=1.557)、162.8gのエタノール、1.63gの光開始剤、「Irgacure 184」、および1.63gの熱開始剤、アゾイソブチロニトリル(AIBN)。
【0152】
実施例38〜43
表4に示したように、実施例37のキットのパートIおよびIIの相対量(重量ベース)を相互混入することにより、一連の重合性組成物を調製した。また、表4は、各重合性組成物の屈折率(nD)、および各重合性組成物の熱/紫外線硬化によって得られたポリマーの対応する屈折率も示している。
【0153】
【表4】

【0154】
実施例44
次の成分を混入することにより、パートIおよびパートIIを有するキットを作製した。
パートI:
【0155】
【化76】

【0156】
【化77】

【0157】
、1%の「Irgacure 184」、および1%の「Irgacure 819」。
パートII:
【0158】
【化78】

【0159】
【化79】

【0160】
、1%の「Irgacure 184」、および1%の「Irgacure 819」。
【0161】
実施例45〜50
表5に示したように、実施例44のキットのパートIおよびIIの相対量(重量ベース)を相互混入することにより、一連の重合性組成物を調製した。また、表5は、各重合性組成物の屈折率(n)、および各重合性組成物の紫外線硬化によって得られたポリマーの対応する屈折率も示している。
【0162】
【表5】

【0163】
実施例51
次の成分を混入することにより、パートIおよびパートIIを有するキットを作製した。

パートI:スチレン、ジビニルベンゼン、チオビスベンゼンチオール、1%のIrgacure 184、および1%のIrgacure819。
パートII:PPGインダストリー社製CR-39:構造式、
【0164】
【化80】

【0165】
【化81】

【0166】
、「1%のIrgacure 184」、および1%の「Irgacure 819」。
【0167】
実施例52〜57
表6に示したように、実施例51のキットのパートIおよびIIの相対量(重量ベース)を相互混入することにより、一連の重合性組成物を調製した。また、表6は、各重合性組成物の屈折率(<<)、および重合性組成物の紫外線硬化によって得られたポリマーのいずれかの屈折率も示している。
【0168】
【表6】

【0169】
実施例58
次の成分を混入することにより、パートIおよびパートIIを有するキットを作製した。
パートI:実施例6に示した方法で調製されたエン、1%の「Irgacure 184」、1%の「Irgacure 819」および次の構造式のチオール。
【0170】
【化82】

【0171】
パートII:1%の「Irgacure 184」、1%の「Irgacure 819」、以下の構造式のエンおよびチオール。
【0172】
【化83】

【0173】
【化84】

【0174】
実施例59〜64
表7に示したように、実施例58のキットのパートIおよびIIの相対量(重量ベース)を相互混入することにより、一連の重合性組成物を調製した。また、表7は、各重合性組成物の屈折率(<<)、および各重合性組成物の紫外線硬化によって得られたポリマーの対応する屈折率も示している。
【0175】
【表7】

【0176】
実施例65
次の成分を混入することにより、パートIおよびパートIIを有するキットを作製した。
パートI:1%の「Irgacure 184」、1%の「Irgacure 819」、以下の構造式のエンおよびチオール。
【0177】
【化85】

【0178】
【化86】

【0179】
パートII:1%の「Irgacure 184」、1%の「Irgacure 819」及び以下の構造式のエンおよびチオール。
【0180】
【化87】

【0181】
【化88】

【0182】
実施例66〜71
表8に示したように、実施例65のキットのパートIおよびIIの相対量(重量ベース)を相互混入することにより、一連の重合性組成物を調製した。また、表8は、各重合性組成物の屈折率(n)、および各重合性組成物の紫外線硬化によって得られたポリマーの対応する屈折率も示している。
【0183】
【表8】

【0184】
実施例72
次の成分を混入することにより、パートIおよびパートIIを有するキットを作製した。
パートI:実施例6に示した方法で調製されたエン、1%の「Irgacure 184」及び以下の構造式のエンおよびチオール。
【0185】
【化89】

【0186】
【化90】

【0187】
パートII:1%の「Irgacure 184」、1%の「Irgacure 819」及び以下の構造式のエンおよびチオール。
【0188】
【化91】

【0189】
【化92】

【0190】
実施例73〜78
表9に示したように、実施例72のキットのパートIおよびIIの相対量(重量ベース)を相互混入することでことにより、一連の重合性組成物を調製した。また、表9は、各重合性組成物の屈折率(<<)、および各重合性組成物の紫外線硬化によって得られたポリマーの対応する屈折率も示している。
【0191】
【表9】

【0192】
実施例79
次の成分を混入することにより、パートIおよびパートIIを有するキットを作製した。
パートI:実施例6に示した方法で調製されたエン18g、以下の構造式のチオール10.98g、「Brij 52」(オールドリッチ社製界面活性剤) 0.02g、「Brij 58」(オールドリッチ社製界面活性剤)0.02g、「Irgacure 184」0.161g、および「Irgacure 819」0.119g。
【0193】
【化93】

【0194】
パートII:以下の構造の式のエン50g、およびチオール32.66g、「Irgacure 184」0.27g。
【0195】
【化94】

【0196】
【化95】

【0197】
実施例80〜85
表10に示したように、実施例79のキットのパートIおよびIIの相対量(重量ベース)を混入することにより、一連の重合性組成物を調製した。また、表10は、各重合性組成物の屈折率(<<)、および各重合性組成物の紫外線硬化によって得られたポリマーの対応する屈折率も示している。
【0198】
【表10】

【0199】
本発明の精神から逸脱することなく、前述のプロセスに対して様々な省略、追加、および修正を実施できることと、当該の修正および変更はすべて、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲に収まることを意図されていることは、当業者によって了解されるところである。
本発明のこれらの局面およびその他の局面は上記の説明および以下の図面(正確な縮尺ではない)から容易に理解されるべきものである。但し、これらの図面は例示的なものであって、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】ポリマー組成物を作製する好ましいプロセスを概略的に示す断面図である。
【図2】好ましいレンズ組立プロセスを概略的に示す断面図である。
【図3】好ましいレンズ組立プロセスを概略的に示す断面図である。
【図4】光学素子にトレフォイルパターンを書き込むのに適したフォトマスクの写真の複製である。
【図5】光学素子上で得られる光路差(OPD)マップを示している。
【図6】挟み込まれたポリマーゲルに書き込まれたトレフォイルについて、時間に応じたOPDパターンの変化を示す図である。
【図7】実施例29に示した方法で作製された2枚のレンズの硬化曲線(動的範囲と時間の関係)を示している。
【符号の説明】
【0201】
210 カバー
220 スペーサ
230 混合物、ゲル
240 ベースレンズ
250 レンズアセンブリ
310 組成物
315 ガラスカバー、カバー
320 ガラス基体、基体
325 加熱
330 組成物
340 放射
342 基本的に放射を透過しない領域
343 基本的に放射を透過する領域
344 放射の一部を透過する領域
345 重合
347 フォトマスク
350 組成物
351 放射に暴露されなかった領域、領域
352 放射に暴露された領域、領域
353 放射に暴露された領域、領域
355 放射
360 チオールモノマーおよびエンモノマーが少なくとも部分的に重合
362 領域
363 領域
365 ポリマー組成物、組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー混合物がその内部に分散されたマトリックスポリマーであり、該マトリックスポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されたものであって、このモノマー混合物が、一種のチオールモノマーと、エンモノマーおよびインモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の第2モノマーとからなることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記マトリックスポリマーは、不飽和である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記マトリックスポリマーが、架橋剤と、不飽和ポリエステル、不飽和ポリスチレン、不飽和ポリアクリレート、エポキシポリマー、イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されるポリマーとの間の化学反応の生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋剤が、チオール、アミン、オクタン酸スズ、およびこれらの混合物からなる群より選択されたものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アミンが、ポリエチレンイミンおよびハロゲン化テトラアルキルアンモニウムからなる群より選択されたものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記チオールモノマーは、多官能性モノマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第2モノマーは、多官能性モノマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記マトリックスポリマーは、一般式
【化1】

、一般式
【化2】

、一般式
【化3】

及び一般式
【化4】

から成る群より選択された構造式で表される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物である。但し、ここで、式中、各XはO、NH、およびSからなる群より個別に選択され、RおよびRはそれぞれ、C〜C18のアルキール基およびC〜C18の芳香族化合物基からなる群より個別に選択され、nは約2〜約5000の範囲の整数であり、mは約1〜約5000の範囲の整数である。
【請求項9】
前記チオールモノマーは、構造式
【化5】

、構造式
【化6】

及び構造式
【化7】

で表される構造式を有するものからなる群より選択されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2モノマーは、構造式
【化8】

、構造式
【化9】

、及び構造式
【化10】

で表される構造式を有するものからなる群より選択されたものである請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
光開始剤、重合阻害剤、酸化防止剤、フォトクロミック色素、および紫外線吸収剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
フイルム状の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記フイルムは、基体とカバーの間に挟み込まれている、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前フイルムは、被覆によって保護されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
光放射に対して実質的に透明である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
約1.5〜約1.74の範囲の屈折率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記マトリックスポリマー、前記チオールモノマー、および前記第2モノマーを任意の順序で混入することを特徴とする、請求項1に記載の組成物を製造する方法。
【請求項18】
添加剤および架橋剤を更に混入することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1ポリマーおよび第2ポリマーからなる混合物であり、該第1ポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されるものであり、該第2ポリマーは、チオール−エンポリマーおよびチオール−インポリマーからなる群より選択されるものであり、前記混合物は、、該領域では、前記第1ポリマーは第1硬化度を有しており且つ前記第2ポリマーは前記第1硬化度とは異なる第2硬化度を有している、少なくとも1つの領域からなることを特徴とする、組成物。
【請求項20】
前記混合物が、その領域では、前記第2ポリマーが前記第2硬化度とは異なるある硬化度を有する、少なくとももう1つの追加領域を含むことを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記混合物は、相互貫入ネットワーク構造をなしている、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記混合物は、相溶性ブレンドである、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記第1硬化度は、前記第2硬化度を大きい、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
未硬化第1ポリマーと硬化された第1ポリマーの屈折率差に基づくと、前記第1硬化度は、約50%〜約100%の範囲である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
未硬化第2ポリマーと硬化された第2ポリマーの屈折率差に基づくと、前記第2硬化度は、約1%〜約100%の範囲である、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
フイルム状の形態である、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
前記フイルムが基体とカバーの間に挟み込まれている、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記フイルムが被覆または積層板によって保護されている、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
該組成物がその領域では、前記屈折率が互いに異なる、少なくとも2つの領域からなっていることを特徴とする、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
光放射に対して実質的に透明である、請求項19に記載の組成物。
【請求項31】
約1.5〜約1.74の範囲の屈折率を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項32】
前記第1ポリマーは、架橋剤と、不飽和ポリエステル、不飽和ポリスチレン、不飽和ポリアクリレート、およびこれらの混合物からなる群より選択される不飽和ポリマーとの間の化学反応産物である、請求項19に記載の組成物。
【請求項33】
前記架橋剤が、チオール、アミン、オクタン酸スズ、およびこれらの混合物からなる群より選択されたものである、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記アミンは、ポリエチレンイミンおよびハロゲン化テトラアルキルアンモニウムからなる群より選択されたものである、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記第1ポリマーは、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されたものである、請求項19に記載の組成物。
【請求項36】
前記マトリックスポリマーが、一般式
【化11】

、一般式
【化12】

、一般式
【化13】

及び一般式
【化14】

から成る群より選択された構造式で表される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項19に記載の組成物である。但し、ここで、式中、各XはO、NH、およびSからなる群より個別に選択され、RおよびRはそれぞれ、C〜C18のアルキール基およびC〜C18の芳香族化合物基からなる群より個別に選択され、nは約2〜約5000の範囲の整数であり、mは約1〜約5000の範囲の整数である。
【請求項37】
前記第2ポリマーが、チオール−エンポリマーである、請求項19に記載の組成物。
【請求項38】
前記チオール‐エンポリマーが、1個のチオールモノマーと1個のエンモノマーとの間の化学反応の生成物であり、該チオールモノマーは、構造式
【化15】

、構造式
【化16】

、及び構造式
【化17】

で表される構造式を有するものからなる群より選択されたものの一であり、且つ、該エンモノマーは、構造式
【化18】

、構造式
【化19】

、及び構造式
【化20】

で表される構造式を有するものからなる群より選択されたものの一である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
光開始剤、重合阻止剤、酸化防止剤、フォトクロミック色素、および紫外線吸収剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項40】
その内部にモノマー混合物が分散されているマトリックスポリマーを含む組成物を創出する工程と、該モノマー混合物の少なくとも一部を重合するさせる工程とからなり、該マトリックスポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されたものであり、該モノマー混合物は、チオールモノマーとエンモノマー、インモノマー、およびこれらの混合物からなる群より選択される第2モノマーとからなるものである、ことを特徴とする、請求項19に記載の組成物を製造する方法。
【請求項41】
前記モノマー混合物を重合させるステップは、該組成物を照射することを特徴とする、請求項40に記載の組成物を製造する方法。
【請求項42】
前記モノマー混合物を重合させる工程は、該組成物を加熱し、そして照射することを特徴とする、請求項40に記載の組成物を製造する方法。
【請求項43】
一般式
【化21】

で示される化合物。但し、この一般式中のnは約1〜6の範囲内の整数である。
【請求項44】
チオールモノマーからなる第1容器、及び、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、エポキシポリマー、イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されるマトリックスポリマーと、エンモノマーおよびインモノマーからなる群より選択される一の第2モノマーとからなる第2容器とからなることを特徴とする、キット。
【請求項45】
前記第2容器が、光開始剤、重合阻止剤、酸化防止剤、フォトクロミック色素、および紫外線吸収剤からなる群より選択される1種以上の添加剤からなっている、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記第1容器は、架橋剤を含んでいる、請求項44に記載のキット。
【請求項47】
前記マトリックスポリマーは、一般式
【化22】

、一般式
【化23】

、一般式
【化24】

、及び一般式
【化25】

からなる群より選択される構造式で表される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項44に記載のキット、但し上記一般式における各XはO、NH、およびSからなる群より個別に選択され、RおよびRはそれぞれ、C〜C18の脂肪族基およびC〜C18の芳香族基からなる群より個別に選択され、nは約2〜約5000の範囲の整数であり、mは約1〜約5000の範囲の整数である。
【請求項48】
前記チオールモノマーは、構造式
【化26】

、構造式
【化27】

、及び構造式
【化28】

からなる群より選択される構造式で表される、請求項44に記載のキット。
【請求項49】
前記第2モノマーは、構造式
【化29】

、構造式
【化30】

、及び構造式
【化31】

からなる群より選択される構造式で表される、請求項44に記載のキット。
【請求項50】
光開始剤、重合阻止剤、酸化防止剤、フォトクロミック色素、および紫外線吸収剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含む、請求項44に記載のキット。
【請求項51】
前記マトリックスポリマー、前記チオールモノマー、および前記第2モノマーからなる群より選択される少なくとも1種の原料が約1.5〜約1.74の範囲の屈折率を有している、請求項44に記載のキット。
【請求項52】
前記マトリックスポリマー、前記チオールモノマー、および前記第2モノマーがそれぞれ、約1.5〜約1.74の範囲の屈折率を有している、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
第1レンズと、カバーと、前記第1レンズと前記カバーの間に挟み込まれたマトリックスポリマーとからなる光学素子であって、該マトリックスポリマーは、その内部に分散されたモノマー混合物を有しており、該マトリックスポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されるものであり、且つ、該モノマー混合物は、チオールモノマーと、エンモノマーおよびインモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の第2モノマーとからなっているものである。
【請求項54】
前記カバーが第2レンズである、請求項53に記載の光学素子。
【請求項55】
前記第1レンズがレンズブランクである、請求項54に記載の光学素子。
【請求項56】
前記マトリックスポリマーは、前記モノマー混合物の重合を少なくとも部分的に阻止するのに有効な量の重合阻止剤を含んでいる、請求項53に記載の光学素子。
【請求項57】
第1レンズと、カバーと、前記第1レンズと前記カバーの間に挟み込まれたポリマー混合物とからなる光学素子であって、該ポリマー混合物は、第1ポリマーと第2ポリマーを含んでおり、該第1ポリマーは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、チオール硬化エポキシポリマー、チオール硬化イソシアネートポリマー、およびこれらの混合物からなる群より選択されたものであり、該第2ポリマーは、チオール−エンポリマーおよびチオール−インポリマーからなる群より選択されたものであり、該ポリマー混合物は、少なくとも1つの領域を含み、、第1屈折率を有する該第1ポリマーと、第一ポリマーとは異なる第2屈折率を有する第2ポリマーとを有する少なくとも一つの領域からなっている。
【請求項58】
前記カバーは、第2レンズである、請求項57に記載の光学素子。
【請求項59】
前記カバーは、被覆である、請求項57に記載の光学素子。
【請求項60】
前記第1レンズは、レンズブランクである、請求項58に記載の光学素子。
【請求項61】
前記ポリマー混合物は、少なくとも1つの追加領域を含み、該領域では、前記第2ポリマーが前記第2屈折率とは異なる屈折率を有している、請求項57に記載の光学素子。
【請求項62】
前記ポリマー混合物は、前記屈折率が互いに異なる少なくとも2つの領域を含んでいる、請求項57に記載の光学素子。
【請求項63】
第1屈折率を共有する第1エンモノマーおよび第1チオールモノマーと、第2屈折率を共有する第2エンモノマーおよび第2チオールモノマーとからなる、重合性組成物であって、該第1エンモノマーが、スチレン、ジビニルベンゼン、構造式
【化32】

、構造式
【化33】

、及び構造式
【化34】

からなる群より選択されるものであり、そして、該第1チオールモノマーが、チオビスベンゼンチオール、構造式
【化35】

、及び構造式
【化36】

からなる群より選択されるものである、重合性組成物。
【請求項64】
前記第2エンモノマーは、構造式
【化37】

で表されるモノマーである、請求項63に記載の重合性組成物。
【請求項65】
前記第2チオールモノマーは、チオビスベンゼンチオール、構造式
【化38】

および構造式
【化39】

からなる群より選択されるものである、請求項63に記載の重合性組成物。
【請求項66】
重合開始剤をさらに含む、請求項63に記載の重合性組成物。
【請求項67】
前記重合開始剤は、熱性開始剤および光開始剤からなる群より選択されたものである、請求項66に記載の重合性組成物。
【請求項68】
光開始剤、重合阻止剤、酸化防止剤、フォトクロミック色素、および紫外線吸収剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含む、請求項63に記載の重合性組成物。
【請求項69】
前記第1屈折率と前記第2屈折率の差が約0.001〜約0.5の範囲である、請求項63に記載の重合性組成物。
【請求項70】
請求項63に記載の重合性組成物を重合させることにより製造されるポリマー組成物。
【請求項71】
第1屈折率を有する高屈折率組成物を含む第1容器であって、該高屈折率組成物が、第1エンモノマーおよび第1チオールモノマーからなっており、そして第2屈折率を有する低屈折率組成物を含む第2容器であって、該低屈折率組成物が、第2エンモノマーと第2チオールモノマーからなっており、該第1屈折率と該第2屈折率の差が約0.001〜約0.5の範囲である、キット。
【請求項72】
前記第1エンモノマーは、スチレン、ジビニルベンゼン、構造式
【化40】

、構造式
【化41】

、及び構造式
【化42】

からなる群より選択されるものである、請求項71に記載のキット。
【請求項73】
前記第1チオールモノマーが、チオビスベンゼンチオール、構造式
【化43】

、及び構造式
【化44】

からなる群より選択されるものである、請求項71に記載のキット。
【請求項74】
前記第2エンモノマーが、構造式
【化45】

で表されるものである、請求項71に記載のキット。
【請求項75】
重合開始剤をさらに含む、請求項71に記載のキット。
【請求項76】
前記重合開始剤は、光開始剤および熱性開始剤からなる群より選択される、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
光開始剤、重合阻止剤、酸化防止剤、フォトクロミック色素、および紫外線吸収剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含む、請求項71に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−512524(P2008−512524A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530498(P2007−530498)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/031988
【国際公開番号】WO2006/029264
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(506265989)オフソニックス,インク (6)
【氏名又は名称原語表記】Ophthonix,Inc..
【Fターム(参考)】