光学素子
【課題】出射光を入射光と直交する平面方向にも分岐できる光学素子を提供する。
【解決手段】入射光を該入射光と直交する平面方向に5〜7つの出射光に分岐する回折格子1を有し、回折格子1は正方形の領域の所定位置に上面が正方形である直方体からなる凸部12が形成された格子パターン10が平面上に多数配列されてなり、正方形の領域一辺の長さに対する凸部12の上面一辺の長さ比率を0.5〜0.8としてなる。また、正方形の領域一辺の長さに対する凸部12の上面一辺の長さ比率が0.6である場合には、凸部12の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.212±0.125)λの条件を満たす。
【解決手段】入射光を該入射光と直交する平面方向に5〜7つの出射光に分岐する回折格子1を有し、回折格子1は正方形の領域の所定位置に上面が正方形である直方体からなる凸部12が形成された格子パターン10が平面上に多数配列されてなり、正方形の領域一辺の長さに対する凸部12の上面一辺の長さ比率を0.5〜0.8としてなる。また、正方形の領域一辺の長さに対する凸部12の上面一辺の長さ比率が0.6である場合には、凸部12の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.212±0.125)λの条件を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を平面方向に5〜7つの出射光に分岐する回折格子を有した光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素子の表面に回折格子が形成されてなる光学素子が知られており、この光学素子は入射光を複数の出射光に分岐することができる。回折格子は所定ピッチの溝あるいは突起が直線状あるいは同心円状に形成されて、所定ピッチの凹凸パターンが多数形成されて構成される。このような回折格子を有する光学素子としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。この光学素子を例えば光通信装置に用いた場合、光学素子の一方側には1本の光ファイバを、他方側には複数本の光ファイバを配置し、光学素子を挟んだ双方の光ファイバ間で光信号を送受信することができる。
【特許文献1】特開2002−341125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の回折格子を有する光学素子は、出射光を一方向の異なる角度にのみ分岐するものであり、出射光を入射光と直交する平面方向、すなわち横方向(x軸方向)か縦方向(y軸方向)のいずれか一方だけでなく両方の方向に分岐するものではなかった。このため、光通信装置に用いた場合、複数本を配置する側の光ファイバを一直線状にしか配置できず、機器内におけるスペース効率が悪かった。
【0004】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、出射光を入射光と直交する平面方向にも分岐できる光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明に係る光学素子は、入射光を該入射光と直交する平面方向に5〜7つの出射光に分岐する回折格子を有した光学素子であって、
前記回折格子は正方形の領域の所定位置に上面が正方形である直方体からなる凸部が形成された格子パターンが平面上に多数配列されてなり、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.5〜0.8であることを特徴として構成されている。
【0006】
また、本発明に係る光学素子は、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.6であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.212±0.125)λの条件を満たすことを特徴として構成されている。
【0007】
さらに、本発明に係る光学素子は、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.7であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.080)λの条件を満たすことを特徴として構成されている。
【0008】
さらにまた、本発明に係る光学素子は、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.5であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことを特徴として構成されている。
【0009】
そして、本発明に係る光学素子は、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.8であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る光学素子によれば、回折格子は正方形の領域の所定位置に上面が正方形である直方体からなる凸部が形成された格子パターンが平面上に多数配列されてなり、正方形の領域一辺の長さに対する凸部の上面一辺の長さ比率が0.5〜0.8であることにより、入射光を該入射光と直交する平面に対しx軸方向とy軸方向の両方に投影するように分岐することができ、光通信機器に用いれば光ファイバの配置の自由度が上がってスペース効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る光学素子によれば、正方形の領域一辺の長さに対する凸部の上面一辺の長さ比率が0.6であり、凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.212±0.125)λの条件を満たすことにより、回折格子によって入射光を5分岐させることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る光学素子によれば、正方形の領域一辺の長さに対する凸部の上面一辺の長さ比率が0.7であり、凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.080)λの条件を満たすことにより、回折格子によって入射光を6分岐させることができる。
【0013】
さらにまた、本発明に係る光学素子によれば、正方形の領域一辺の長さに対する凸部の上面一辺の長さ比率が0.5であり、凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことにより、回折格子によって入射光を5分岐させることができる。
【0014】
そして、本発明に係る光学素子によれば、正方形の領域一辺の長さに対する凸部の上面一辺の長さ比率が0.8であり、凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことにより、回折格子によって入射光を7分岐させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には本実施形態における光学素子の部分的な拡大正面図を、図2には図1のA−A断面図を、それぞれ示している。本実施形態の光学素子は、表面に回折格子1が形成されてなり、回折格子1は凹凸状の格子パターン10が平面状に多数配列され構成されている。
【0016】
格子パターン10は、図1に示すように正方形の領域内に1つの凸部12が形成されてなり、凸部12は上面が正方形である直方体からなっている。凸部12が形成されていない領域は、凸部12に比べると凹んだ凹部11を構成している。この格子パターン10が左右及び上下方向にそれぞれ列をなすように配列されて回折格子1が形成されている。
【0017】
図3には、第1の例の格子パターン10を1つ取り出した平面図及び側面図を示している。本例では、格子パターン10を構成する正方形の領域一辺の長さであるピッチPに対する凸部12の上面一辺の長さAの比率は、0.6となるように凸部12が形成されている。ここで、ピッチPは20μmであり、したがって凸部12の上面一辺の長さAは12μmとなる。なお、光学素子の素材は屈折率nが1.5であり、この光学素子により分岐される光の波長λは1.3μmとする。
【0018】
このような格子パターン10において、凸部12の凹部11に対する高さ、すなわち格子高さdを1.15μmとした場合、回折格子1に入射する光は、この入射光と直交する平面方向に複数分岐されて出射される。図4には、本例における出射光を投影した図を示している。この図は、入射光と直交する平面上における出射光の投影位置を表しており、(0,0)の原点位置が入射光の入射位置である。
【0019】
図4に示すように、第1の例において入射光は、回折格子1によって5つの出射光に分岐される。具体的には、入射光と同軸の0次回折光が(0,0)の位置に、入射光に対してx方向及びy方向に出射される1次回折光が(1,0)、(−1,0)、(0,1)、(0,−1)の位置に、それぞれ投影されるように分岐されている。
【0020】
図5には、本例における各座標点での回折光強度を表した図を示している。図5(a)はx=0のラインにおける各座標点の回折光強度を、図5(b)はx=1のラインにおける各座標点の回折光強度を、図5(c)はx=2のラインにおける各座標点の回折光強度を、それぞれ表している。x=−1、x=−2のラインについては、それぞれx=1、x=2のラインと同じ特性を示すので、省略する。なお、縦軸の回折光強度は、入射光強度に対する出射光強度の割合で示されており、これが0.05以上の強度を示す場合に分岐された光とし、0.05より小さい強度の場合には、当該方向には分岐されていないものとする。
【0021】
これら各図に示すように、座標(0,0)、(0,1)、(0,−1)、(1,0)の各位置と、図示しない(−1,0)の位置において、回折光強度が0.05以上となり、図4にも示す5つの方向に出射光が分岐されることとなる。この格子パターン10について、出射光を5つの方向に分岐するために必要な条件は、位相差(n−1)dが(0.212±0.125)λの範囲となることであり、この条件に合致するように格子高さdを設定する必要がある。この条件は、格子高さdをパラメータとして図5と同様の特性を示す範囲をシミュレーションにより求めたものである。
【0022】
次に、第2の例の格子パターンについて説明する。図6には、第2の例の格子パターン10を1つ取り出した平面図及び側面図を示している。本例では、格子パターン10を構成する正方形の領域一辺の長さであるピッチPに対する凸部12の上面一辺の長さAの比率は、0.7となるように凸部12が形成されている。なお、ピッチPや入射光の波長λは、第1の例と同様である。
【0023】
本例の格子パターン10において格子高さdを1.35μmとした場合、回折格子1に入射する光は、この入射光と直交する平面方向に複数分岐されて出射される。図7には、本例における出射光を投影した図を示している。この図に示すように、第2の例において入射光は、回折格子1によって6つの出射光に分岐される。具体的には、入射光に対してx方向及びy方向に出射される1次回折光が(1,0)、(−1,0)、(0,1)、(0,−1)の位置に、入射光に対してy方向に出射される2次回折光が(0,2)、(0,−2)の位置に、それぞれ投影されるように分岐されている。
【0024】
図8には、本例における各座標点での回折光強度を表した図を示している。これら各図に示すように、座標(0,1)、(0,2)、(0,−1)、(0,−2)、(1,0)の各位置と、図示しない(−1,0)の位置において、回折光強度が0.05以上となり、図7にも示す6つの方向に出射光が分岐されることとなる。この格子パターン10について、出射光を6つの方向に分岐するために必要な条件は、位相差(n−1)dが(0.260±0.080)λの範囲となることであり、この条件に合致するように格子高さdを設定する必要がある。
【0025】
次に、第3の例の格子パターンについて説明する。図9には、第3の例の格子パターン10を1つ取り出した平面図及び側面図を示している。本例では、格子パターン10を構成する正方形の領域一辺の長さであるピッチPに対する凸部12の上面一辺の長さAの比率は、0.5となるように凸部12が形成されている。なお、ピッチPや入射光の波長λは、第1の例と同様である。
【0026】
本例の格子パターン10は格子高さdを1.4μmとしている。図10には、本例における出射光を投影した図を示している。この図に示すように、第3の例において入射光は、回折格子1によって5つの出射光に分岐される。具体的には、入射光と同軸の0次回折光が(0,0)の位置に、入射光に対してx方向及びy方向に出射される1次回折光が(1,0)、(−1,0)、(0,1)、(0,−1)の位置に、それぞれ投影されるように分岐されている。
【0027】
図11には、本例における各座標点での回折光強度を表した図を示している。これら各図に示すように、座標(0,0)、(0,1)、(0,−1)、(1,0)の各位置と、図示しない(−1,0)の位置において、回折光強度が0.05以上となり、図10にも示す5つの方向に出射光が分岐されることとなる。この格子パターン10について、出射光を5つの方向に分岐するために必要な条件は、位相差(n−1)dが(0.260±0.125)λの範囲となることであり、この条件に合致するように格子高さdを設定する必要がある。
【0028】
次に、第4の例の格子パターンについて説明する。図12には、第4の例の格子パターン10を1つ取り出した平面図及び側面図を示している。本例では、格子パターン10を構成する正方形の領域一辺の長さであるピッチPに対する凸部12の上面一辺の長さAの比率は、0.8となるように凸部12が形成されている。なお、ピッチPや入射光の波長λは、第1の例と同様である。
【0029】
本例の格子パターン10は格子高さdを1.35μmとしている。図13には、本例における出射光を投影した図を示している。この図に示すように、第4の例において入射光は、回折格子1によって7つの出射光に分岐される。具体的には、入射光と同軸の0次回折光が(0,0)の位置に、入射光に対してx方向及びy方向に出射される1次回折光が(1,0)、(−1,0)、(0,1)、(0,−1)の位置に、入射光に対してx方向に出射される2次回折光が(2,0)、(−2,0)の位置に、それぞれ投影されるように分岐されている。
【0030】
図14には、本例における各座標点での回折光強度を表した図を示している。これら各図に示すように、座標(0,0)、(0,1)、(0,−1)、(1,0)、(2,0)の各位置と、図示しない(−1,0)、(−2,0)の位置において、回折光強度が0.05以上となり、図13にも示す7つの方向に出射光が分岐されることとなる。この格子パターン10について、出射光を7つの方向に分岐するために必要な条件は、位相差(n−1)dが(0.260±0.125)λの範囲となることであり、この条件に合致するように格子高さdを設定する必要がある。
【0031】
このように、ピッチPに対する長さAの比率を変えることで、入射光を分岐させる数及び方向を様々に設定することができる。本実施形態では、A/Pを0.5〜0.8の範囲とし、格子高さdを適切に設定することにより、入射光を平面方向に5〜7分岐させることができる。この光学素子を光通信機器に用いることで、例えば発光部からの光を複数本の光ファイバに入射させる際に、光ファイバを二次元的に配置することができ、機器内におけるスペース効率を向上させることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態における光学素子の部分的な拡大正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第1の例の格子パターンを1つ取り出した平面図及び側面図である。
【図4】第1の例における出射光を投影した図である。
【図5】第1の例における各座標点での回折光強度を表した図である。
【図6】第2の例の格子パターンを1つ取り出した平面図及び側面図である。
【図7】第2の例における出射光を投影した図である。
【図8】第2の例における各座標点での回折光強度を表した図である。
【図9】第3の例の格子パターンを1つ取り出した平面図及び側面図である。
【図10】第3の例における出射光を投影した図である。
【図11】第3の例における各座標点での回折光強度を表した図である。
【図12】第4の例の格子パターンを1つ取り出した平面図及び側面図である。
【図13】第4の例における出射光を投影した図である。
【図14】第4の例における各座標点での回折光強度を表した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 回折格子
10 格子パターン
11 凹部
12 凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を平面方向に5〜7つの出射光に分岐する回折格子を有した光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素子の表面に回折格子が形成されてなる光学素子が知られており、この光学素子は入射光を複数の出射光に分岐することができる。回折格子は所定ピッチの溝あるいは突起が直線状あるいは同心円状に形成されて、所定ピッチの凹凸パターンが多数形成されて構成される。このような回折格子を有する光学素子としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。この光学素子を例えば光通信装置に用いた場合、光学素子の一方側には1本の光ファイバを、他方側には複数本の光ファイバを配置し、光学素子を挟んだ双方の光ファイバ間で光信号を送受信することができる。
【特許文献1】特開2002−341125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の回折格子を有する光学素子は、出射光を一方向の異なる角度にのみ分岐するものであり、出射光を入射光と直交する平面方向、すなわち横方向(x軸方向)か縦方向(y軸方向)のいずれか一方だけでなく両方の方向に分岐するものではなかった。このため、光通信装置に用いた場合、複数本を配置する側の光ファイバを一直線状にしか配置できず、機器内におけるスペース効率が悪かった。
【0004】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、出射光を入射光と直交する平面方向にも分岐できる光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明に係る光学素子は、入射光を該入射光と直交する平面方向に5〜7つの出射光に分岐する回折格子を有した光学素子であって、
前記回折格子は正方形の領域の所定位置に上面が正方形である直方体からなる凸部が形成された格子パターンが平面上に多数配列されてなり、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.5〜0.8であることを特徴として構成されている。
【0006】
また、本発明に係る光学素子は、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.6であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.212±0.125)λの条件を満たすことを特徴として構成されている。
【0007】
さらに、本発明に係る光学素子は、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.7であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.080)λの条件を満たすことを特徴として構成されている。
【0008】
さらにまた、本発明に係る光学素子は、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.5であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことを特徴として構成されている。
【0009】
そして、本発明に係る光学素子は、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.8であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る光学素子によれば、回折格子は正方形の領域の所定位置に上面が正方形である直方体からなる凸部が形成された格子パターンが平面上に多数配列されてなり、正方形の領域一辺の長さに対する凸部の上面一辺の長さ比率が0.5〜0.8であることにより、入射光を該入射光と直交する平面に対しx軸方向とy軸方向の両方に投影するように分岐することができ、光通信機器に用いれば光ファイバの配置の自由度が上がってスペース効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る光学素子によれば、正方形の領域一辺の長さに対する凸部の上面一辺の長さ比率が0.6であり、凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.212±0.125)λの条件を満たすことにより、回折格子によって入射光を5分岐させることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る光学素子によれば、正方形の領域一辺の長さに対する凸部の上面一辺の長さ比率が0.7であり、凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.080)λの条件を満たすことにより、回折格子によって入射光を6分岐させることができる。
【0013】
さらにまた、本発明に係る光学素子によれば、正方形の領域一辺の長さに対する凸部の上面一辺の長さ比率が0.5であり、凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことにより、回折格子によって入射光を5分岐させることができる。
【0014】
そして、本発明に係る光学素子によれば、正方形の領域一辺の長さに対する凸部の上面一辺の長さ比率が0.8であり、凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことにより、回折格子によって入射光を7分岐させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には本実施形態における光学素子の部分的な拡大正面図を、図2には図1のA−A断面図を、それぞれ示している。本実施形態の光学素子は、表面に回折格子1が形成されてなり、回折格子1は凹凸状の格子パターン10が平面状に多数配列され構成されている。
【0016】
格子パターン10は、図1に示すように正方形の領域内に1つの凸部12が形成されてなり、凸部12は上面が正方形である直方体からなっている。凸部12が形成されていない領域は、凸部12に比べると凹んだ凹部11を構成している。この格子パターン10が左右及び上下方向にそれぞれ列をなすように配列されて回折格子1が形成されている。
【0017】
図3には、第1の例の格子パターン10を1つ取り出した平面図及び側面図を示している。本例では、格子パターン10を構成する正方形の領域一辺の長さであるピッチPに対する凸部12の上面一辺の長さAの比率は、0.6となるように凸部12が形成されている。ここで、ピッチPは20μmであり、したがって凸部12の上面一辺の長さAは12μmとなる。なお、光学素子の素材は屈折率nが1.5であり、この光学素子により分岐される光の波長λは1.3μmとする。
【0018】
このような格子パターン10において、凸部12の凹部11に対する高さ、すなわち格子高さdを1.15μmとした場合、回折格子1に入射する光は、この入射光と直交する平面方向に複数分岐されて出射される。図4には、本例における出射光を投影した図を示している。この図は、入射光と直交する平面上における出射光の投影位置を表しており、(0,0)の原点位置が入射光の入射位置である。
【0019】
図4に示すように、第1の例において入射光は、回折格子1によって5つの出射光に分岐される。具体的には、入射光と同軸の0次回折光が(0,0)の位置に、入射光に対してx方向及びy方向に出射される1次回折光が(1,0)、(−1,0)、(0,1)、(0,−1)の位置に、それぞれ投影されるように分岐されている。
【0020】
図5には、本例における各座標点での回折光強度を表した図を示している。図5(a)はx=0のラインにおける各座標点の回折光強度を、図5(b)はx=1のラインにおける各座標点の回折光強度を、図5(c)はx=2のラインにおける各座標点の回折光強度を、それぞれ表している。x=−1、x=−2のラインについては、それぞれx=1、x=2のラインと同じ特性を示すので、省略する。なお、縦軸の回折光強度は、入射光強度に対する出射光強度の割合で示されており、これが0.05以上の強度を示す場合に分岐された光とし、0.05より小さい強度の場合には、当該方向には分岐されていないものとする。
【0021】
これら各図に示すように、座標(0,0)、(0,1)、(0,−1)、(1,0)の各位置と、図示しない(−1,0)の位置において、回折光強度が0.05以上となり、図4にも示す5つの方向に出射光が分岐されることとなる。この格子パターン10について、出射光を5つの方向に分岐するために必要な条件は、位相差(n−1)dが(0.212±0.125)λの範囲となることであり、この条件に合致するように格子高さdを設定する必要がある。この条件は、格子高さdをパラメータとして図5と同様の特性を示す範囲をシミュレーションにより求めたものである。
【0022】
次に、第2の例の格子パターンについて説明する。図6には、第2の例の格子パターン10を1つ取り出した平面図及び側面図を示している。本例では、格子パターン10を構成する正方形の領域一辺の長さであるピッチPに対する凸部12の上面一辺の長さAの比率は、0.7となるように凸部12が形成されている。なお、ピッチPや入射光の波長λは、第1の例と同様である。
【0023】
本例の格子パターン10において格子高さdを1.35μmとした場合、回折格子1に入射する光は、この入射光と直交する平面方向に複数分岐されて出射される。図7には、本例における出射光を投影した図を示している。この図に示すように、第2の例において入射光は、回折格子1によって6つの出射光に分岐される。具体的には、入射光に対してx方向及びy方向に出射される1次回折光が(1,0)、(−1,0)、(0,1)、(0,−1)の位置に、入射光に対してy方向に出射される2次回折光が(0,2)、(0,−2)の位置に、それぞれ投影されるように分岐されている。
【0024】
図8には、本例における各座標点での回折光強度を表した図を示している。これら各図に示すように、座標(0,1)、(0,2)、(0,−1)、(0,−2)、(1,0)の各位置と、図示しない(−1,0)の位置において、回折光強度が0.05以上となり、図7にも示す6つの方向に出射光が分岐されることとなる。この格子パターン10について、出射光を6つの方向に分岐するために必要な条件は、位相差(n−1)dが(0.260±0.080)λの範囲となることであり、この条件に合致するように格子高さdを設定する必要がある。
【0025】
次に、第3の例の格子パターンについて説明する。図9には、第3の例の格子パターン10を1つ取り出した平面図及び側面図を示している。本例では、格子パターン10を構成する正方形の領域一辺の長さであるピッチPに対する凸部12の上面一辺の長さAの比率は、0.5となるように凸部12が形成されている。なお、ピッチPや入射光の波長λは、第1の例と同様である。
【0026】
本例の格子パターン10は格子高さdを1.4μmとしている。図10には、本例における出射光を投影した図を示している。この図に示すように、第3の例において入射光は、回折格子1によって5つの出射光に分岐される。具体的には、入射光と同軸の0次回折光が(0,0)の位置に、入射光に対してx方向及びy方向に出射される1次回折光が(1,0)、(−1,0)、(0,1)、(0,−1)の位置に、それぞれ投影されるように分岐されている。
【0027】
図11には、本例における各座標点での回折光強度を表した図を示している。これら各図に示すように、座標(0,0)、(0,1)、(0,−1)、(1,0)の各位置と、図示しない(−1,0)の位置において、回折光強度が0.05以上となり、図10にも示す5つの方向に出射光が分岐されることとなる。この格子パターン10について、出射光を5つの方向に分岐するために必要な条件は、位相差(n−1)dが(0.260±0.125)λの範囲となることであり、この条件に合致するように格子高さdを設定する必要がある。
【0028】
次に、第4の例の格子パターンについて説明する。図12には、第4の例の格子パターン10を1つ取り出した平面図及び側面図を示している。本例では、格子パターン10を構成する正方形の領域一辺の長さであるピッチPに対する凸部12の上面一辺の長さAの比率は、0.8となるように凸部12が形成されている。なお、ピッチPや入射光の波長λは、第1の例と同様である。
【0029】
本例の格子パターン10は格子高さdを1.35μmとしている。図13には、本例における出射光を投影した図を示している。この図に示すように、第4の例において入射光は、回折格子1によって7つの出射光に分岐される。具体的には、入射光と同軸の0次回折光が(0,0)の位置に、入射光に対してx方向及びy方向に出射される1次回折光が(1,0)、(−1,0)、(0,1)、(0,−1)の位置に、入射光に対してx方向に出射される2次回折光が(2,0)、(−2,0)の位置に、それぞれ投影されるように分岐されている。
【0030】
図14には、本例における各座標点での回折光強度を表した図を示している。これら各図に示すように、座標(0,0)、(0,1)、(0,−1)、(1,0)、(2,0)の各位置と、図示しない(−1,0)、(−2,0)の位置において、回折光強度が0.05以上となり、図13にも示す7つの方向に出射光が分岐されることとなる。この格子パターン10について、出射光を7つの方向に分岐するために必要な条件は、位相差(n−1)dが(0.260±0.125)λの範囲となることであり、この条件に合致するように格子高さdを設定する必要がある。
【0031】
このように、ピッチPに対する長さAの比率を変えることで、入射光を分岐させる数及び方向を様々に設定することができる。本実施形態では、A/Pを0.5〜0.8の範囲とし、格子高さdを適切に設定することにより、入射光を平面方向に5〜7分岐させることができる。この光学素子を光通信機器に用いることで、例えば発光部からの光を複数本の光ファイバに入射させる際に、光ファイバを二次元的に配置することができ、機器内におけるスペース効率を向上させることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態における光学素子の部分的な拡大正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第1の例の格子パターンを1つ取り出した平面図及び側面図である。
【図4】第1の例における出射光を投影した図である。
【図5】第1の例における各座標点での回折光強度を表した図である。
【図6】第2の例の格子パターンを1つ取り出した平面図及び側面図である。
【図7】第2の例における出射光を投影した図である。
【図8】第2の例における各座標点での回折光強度を表した図である。
【図9】第3の例の格子パターンを1つ取り出した平面図及び側面図である。
【図10】第3の例における出射光を投影した図である。
【図11】第3の例における各座標点での回折光強度を表した図である。
【図12】第4の例の格子パターンを1つ取り出した平面図及び側面図である。
【図13】第4の例における出射光を投影した図である。
【図14】第4の例における各座標点での回折光強度を表した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 回折格子
10 格子パターン
11 凹部
12 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を該入射光と直交する平面方向に5〜7つの出射光に分岐する回折格子を有した光学素子であって、
前記回折格子は正方形の領域の所定位置に上面が正方形である直方体からなる凸部が形成された格子パターンが平面上に多数配列されてなり、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.5〜0.8であることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.6であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.212±0.125)λの条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項3】
前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.7であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.080)λの条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項4】
前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.5であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項5】
前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.8であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項1】
入射光を該入射光と直交する平面方向に5〜7つの出射光に分岐する回折格子を有した光学素子であって、
前記回折格子は正方形の領域の所定位置に上面が正方形である直方体からなる凸部が形成された格子パターンが平面上に多数配列されてなり、前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.5〜0.8であることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.6であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.212±0.125)λの条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項3】
前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.7であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.080)λの条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項4】
前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.5であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項5】
前記正方形の領域一辺の長さに対する前記凸部の上面一辺の長さ比率が0.8であり、前記凸部の高さdは、素子の屈折率をnとし入射光の波長をλとしたときに、(n−1)dが(0.260±0.125)λの条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−139541(P2009−139541A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314571(P2007−314571)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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