説明

光学装置およびこれを備えるレーザー加工装置

【課題】簡素な構成で2ビームの分岐と2ビーム間の間隔の調整が可能な光学装置を提供すること。
【解決手段】発振器2から発振されたレーザービームLbを、透過して進む第一の分岐ビームと、反射して進む第二の分岐ビームと、に分岐させるビームスプリッター31と、このビームスプリッター31から出射した第一の分岐ビームLb1を再びビームスプリッターに向けて反射する第一のミラー34と、このビームスプリッター31から出射した第二の分岐ビームLb2を再びビームスプリッター31に向けて反射する第二のミラー36と、ビームスプリッター31におけるレーザービームLbの分岐点32を回転中心として、第一のミラー34と第二のミラー36とを一体的に回転させる円板状の回転部37と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハへレーザー照射を行う光学装置およびこれを備えるレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ワークの表面に格子状に配列されたストリート(切断ライン)によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等の回路が形成されている半導体ワークをストリートに沿って切断することによって回路毎に分割して個々の半導体チップを製造している。半導体ワークのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと称されている切削装置によって行われており、レーザー光線を照射して切断する加工方法も行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、加工の効率を向上させるためにレーザービームを2つに分岐させて2箇所を同時に加工できる光学系も提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2001−121281号公報
【特許文献3】特表2003−531393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の光学系は、ガルバノミラーや楔形プリズムをそれぞれ2軸以上回転させ、2ビームを制御する方式であり駆動制御が複雑で、コストがかかり、スペースが大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その主な技術的課題は従来よりも簡素な構成で2ビームの分岐と2ビーム間の間隔の調整が可能な光学装置およびこれを備えたレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、レーザービームを発振する発振器と、該発振器から発振されたレーザービームを2つに分岐させる分岐機構と、該分岐機構から出射された2つのレーザービームを集光する集光器と、を有する光学装置であって、該分岐機構は、該発振器から発振されたレーザービームを、透過して進む第一の分岐ビームと、反射して進む第二の分岐ビームと、に分岐させるビームスプリッターと、該ビームスプリッターから出射した該第一の分岐ビームを再び該ビームスプリッターに向けて反射する第一のミラーと、該ビームスプリッターから出射した該第二の分岐ビームを再び該ビームスプリッターに向けて反射する第二のミラーと、該ビームスプリッターにおける該レーザービームの分岐点を回転中心として、該第一のミラーと該第二のミラーとを一体的に回転させる回転部と、該回転部を回転させて該第一のミラーへの該第一の分岐ビームの入射角度と該第二のミラーへの該第二の分岐ビームの入射角度とを変更することによって、該第一のミラーで反射した後に該ビームスプリッターで反射する第一の分岐ビームと、該第二のミラーで反射した後に該ビームスプリッターを透過する第二の分岐ビームと、が成す角度を調整する制御部と、を有し、該集光器は、該ビームスプリッターを透過した後に、該第一のミラーで反射して該ビームスプリッターに再び入射し、該ビームスプリッターで反射して該ビームスプリッターから出射した該第一の分岐ビームと、該ビームスプリッターで反射した後に、該第二のミラーで反射して該ビームスプリッターに再び入射し、該ビームスプリッターを透過して該ビームスプリッターから出射した該第二の分岐ビームと、が進む光路上に配置されたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる光学装置は、上記の発明において、該ビームスプリッターは偏光ビームスプリッターであり、該分岐機構は、該レーザービームの分岐点と該第一のミラーとの間に配設された第一の1/4波長板と、該レーザービームの分岐点と該第二のミラーとの間に配設された第二の1/4波長板と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる光学装置は、上記の発明において、該ビームスプリッターはハーフミラーであることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる光学装置は、上記の発明において、該ビームスプリッターから出射された該第一の分岐ビームを、前記回転中心を通る回転軸に平行をなす方向に向けて反射する第一の中間ミラーと、該ビームスプリッターから出射された該第二の分岐ビームを、前記回転中心を通る回転軸に平行をなす方向に向けて反射する第二の中間ミラーと、を備え、該第一のミラーは該第一の中間ミラーで反射された該第一の分岐ビームを該ビームスプリッターにおける、該発振器から発振されたレーザービームが入射する位置から前記回転軸方向に離れた位置に入射させ、該第二のミラーは該第二の中間ミラーで反射された該第二の分岐ビームを該ビームスプリッターにおける、該発振器から発振されたレーザービームが入射する位置から該回転軸方向に離れた位置に入射させるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、ワークを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたワークにレーザービームを照射して加工する加工手段と、を有するレーザー加工装置であって、該加工手段は上記の光学装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、1軸の回転駆動機構のみで2ビームの分岐と2ビーム間の間隔の調整が可能な光学装置およびレーザー加工装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る光学装置の概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る光学装置における分岐機構を示す説明図である。
【図3−1】図3−1は、本発明の実施の形態1に係る光学装置における分岐機構のミラーへの入射角度が0度の場合の分岐ビームを示す図である。
【図3−2】図3−2は、本発明の実施の形態1に係る光学装置における分岐機構のミラーを時計回り方向へθ1回転させた状態を示す図である。
【図3−3】図3−3は、本発明の実施の形態1に係る光学装置における分岐機構のミラーを時計回り方向へθ2回転させた状態を示す図である。
【図3−4】図3−4は、本発明の実施の形態1に係る光学装置における分岐機構のミラーを反時計回り方向へθ1回転させた状態を示す図である。
【図3−5】図3−5は、本発明の実施の形態1に係る光学装置における分岐機構のミラーを反時計回り方向へθ2回転させた状態を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2に係る光学装置の分岐機構にレーザービームを入射させた状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。
【図6−1】図6−1は、ウェーハの分割予定ライン近傍の断面図である。
【図6−2】図6−2は、ウェーハの分割予定ラインに所定間隔を隔てた位置に分岐ビームを照射している状態を示す断面図である。
【図6−3】図6−3は、ウェーハの分割予定ラインの幅方向中央に沿ってビームを照射して分割溝を形成している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施の形態に係る光学装置およびレーザー加工装置ついて図面に基づいて説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1〜図3は、本発明の実施の形態1に係る光学装置1を示している。本実施の形態に係る光学装置1は、ワークの分割予定ラインに沿って分割する際に、レーザー加工を行う場合に適用することができる。
【0016】
図1に示すように、光学装置1は、レーザービームLbを発振する発振器2と、発振器2から発振されたレーザービームLbが入射され、このレーザービームLbを、第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb2の2つに分岐し、または1つビームとして出射させる分岐機構3と、これら分岐機構3から出射されたビームを集光してワークWに対して所定のビーム径となるように調整する集光器4と、分岐機構3を調節するために駆動させる駆動部5と、駆動部5を制御する制御部6と、を備える。
【0017】
発振器2は、所定波長のレーザー光線を発振するためのものであり、例えばYAGレーザー発振器やYVO4レーザー発振器など各種のレーザー光線発振器を適用することが可能である。
【0018】
図2に示すように、分岐機構3は、発振器2から発振されたレーザービームLbを、透過して進む第一の分岐ビームLb1と、反射して進む第二の分岐ビームLb2と、に分岐させるビームスプリッター31と、このビームスプリッター31から出射した第一の分岐ビームLb1を再びビームスプリッターに向けて反射する第一のミラー34と、このビームスプリッター31から出射した第二の分岐ビームLb2を再びビームスプリッター31に向けて反射する第二のミラー36と、ビームスプリッター31におけるレーザービームLbの分岐点32を回転中心として、第一のミラー34と第二のミラー36とを一体的に回転させる円板状の回転部37と、を備えている。
【0019】
特に、第一のミラー34と第二のミラー36とは、回転部37の回転に伴い、同じ円上を回転移動するように設定されている。換言すると、第一のミラー34と第二のミラー36は、分岐点32までの距離が等しくなるように設定されている。
【0020】
上記の回転部37は、図1に示した駆動部5を駆動、回転させることで、第一のミラー34への第一の分岐ビームLb1の入射角度と第二のミラー36への第二の分岐ビームLb2の入射角度とを変更するようになっている。このため、第一のミラー34で反射した後にビームスプリッター31で反射する第一の分岐ビームLb1と、第二のミラー36で反射した後にビームスプリッター31を透過する第二の分岐ビームLb2とが成す角度2θ(図2参照)が回転部37を駆動することにより調整されるようになっている。
【0021】
ビームスプリッター31は、発振器2から出射されたレーザービームLbを2つに分割するものであり、本実施の形態では偏光成分を分離できる偏光ビームスプリッターを用いている。このビームスプリッター31の構造は、直角プリズムを2つ貼り合わせた正四角柱形状であり、接合面31Aに誘電体多層膜や金属薄膜のコーティングが施されている。また、本実施の形態で用いるビームスプリッター31は、反射光と透過光の強さがほぼ一対一のハーフミラーが用いられている。
【0022】
本実施の形態では、ビームスプリッター31が偏光ビームスプリッターであるため、ビームスプリッター31において、接合面31Aを透過して進む第一の分岐ビームLb1が出射する面312と第一のミラー34との間に、第一の1/4波長板33が配置されている。また、ビームスプリッター31において、接合面31Aで反射して進む第二の分岐ビームLb2が出射する面313と第二のミラー36との間に、第二の1/4波長板35が配置されている。このような配置により、ビームスプリッター31の接合面31Aを透過した第一の分岐ビームLb1は、第一のミラー34で反射されることにより、第一の1/4波長板33を2回通過して直線偏光状態が90°回転した状態で接合面31Aに戻るため、接合面31Aで反射される。また、接合面31Aで反射された第二の分岐ビームLb2は、第二のミラー36で反射されることにより、第二の1/4波長板35を2回通過することで直線偏光状態が90°回転した状態で接合面31Aに戻るため、接合面31Aを通過する。本実施の形態では、ビームスプリッター31が偏光ビームスプリッターであるため、分岐の際のビームのエネルギーロスが無偏光ビームスプリッターを使用した場合よりも低減される。
【0023】
図2において、本実施の形態では、ビームスプリッター31は固定側であり、回転部37が回転することにより、第一のミラー34と第二のミラー36が、ビームスプリッター31の周りを回動するようになっている。なお、回転部37は、ビームスプリッター31におけるレーザービームLbの分岐点32を通り、かつ、分岐点32で分岐した直後の該第一の分岐ビーム及び該第二の分岐ビームが形成する面と直交する線を回転軸としている。第一のミラー34と第二のミラー36は、円板状の回転部37の周縁に沿って互いに90度の角度をなす位置に配置され、回転部37の周縁に対してミラー面が接線方向となるように取り付けられている。なお、図2は、ビームスプリッター31の面311から入射したビームLbが分岐点32で分岐して透過する第一の分岐ビームLb1および分岐点32で反射する第二の分岐ビームLb2に対して、図面において時計回り方向にわずかに回転移動させた状態を示している。
【0024】
駆動部5は、回転部37を回転駆動するモータなどを備え、制御部6は、回転部37の回転移動量を駆動部5の駆動を介して制御するようになっている。具体的には、制御部6は、最終的に分岐機構3から出射される2本のビームの間隔の変更や、1本のビームとする場合などの制御を回転部37の回転角度を調整することにより行っている。
【0025】
集光器4としては、角度の調整を容易にするために、fθレンズを使用することが好ましい。本実施の形態では、このようなfθレンズを使用した状態で、第一のミラー34および第二のミラー36での反射角度θを0.001°にすることによってビームの間隔を100μm(中心位置からそれぞれビームが50μmずつ離れる)となるように設定されている。
【0026】
以下、図3−1〜図3−5を用いて、分岐機構3の作用・動作について説明する。なお、図3−1〜図3−5においては、説明を簡略にするため、第一の1/4波長板33および第二の1/4波長板35の図示を省略する。
【0027】
図3−1は、ビームスプリッター31の接合面31Aを透過した第一の分岐ビームLb1が第一のミラー34に直角に入射し、接合面31Aを反射した第二の分岐ビームLb2が、第二のミラー36に直角に入射する場合を示している。この場合は、ビームスプリッター31の面312から出射されるビームLb1は第一のミラー34とので反射されて分岐点32に戻り接合面31Aで反射されて面314から出射される。また、ビームスプリッター31の面313から出射されるビームLb2は第二のミラー36で反射されて分岐点32に戻り接合面31Aを透過して面314から出射されるビームLb1と合流する。したがって、この場合、面314から出射されるビームは、第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb2を合わせたものとなり、ビームの強度が高い。
【0028】
図3−2は、図3−1の状態から回転部37を僅かに時計回り方向にθ1回転移動させた状態を示している。この場合、分岐点32から分岐された第一の分岐ビームLb1は、第一のミラー34で分岐点32の近傍の接合面31Aに向けて反射され、接合面31Aで反射されて面314から出射される。この面314から出射される第一の分岐ビームLb1は、面314の法線に対して−θ1の角度をなす。分岐点32から分岐された第二の分岐ビームLb2は、第二のミラー36で分岐点32の近傍の接合面31Aに向けて反射され、接合面31Aを透過して面314から出射される。この面314から出射される第二の分岐ビームLb2は、面314の法線に対して+θ1の角度をなす。したがって、回転部37をθ1だけ回転することにより、面314から出射される第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb3とのなす角度を2θ1にすることが可能となる。本実施の形態では、このようなfθレンズを使用した状態で、第一のミラー34および第二のミラー36での反射角度θを0.001°にすることによってビームの間隔を100μm(中心位置からそれぞれビームが50μmずつ離れる)となるように設定されている。図3−3は、更に回転部37を時計回り方向へθ2だけ回転させた場合を示す。この場合は、面314から出射される第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb3とのなす角度を2θ2にすることが可能となる。
【0029】
図3−4は、回転部37をビームスプリッター31に対してθ1だけ反時計回り方向に回転させた場合を示す。この場合は、図3−2に示した場合と同様に、ビームスプリッター31の面314から出射される第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb2とのなす角度は2θ1となる。図3−5は、回転部37をビームスプリッター31に対して、θ1より大きいθ2だけ反時計回り方向に回転させた場合を示す。この場合は、図3−2に示した場合と同様に、面314から出射される第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb2とのなす角度は2θ2となる。
【0030】
以上、本実施の形態に係る光学装置1の構成および作用・動作について説明したが、この光学装置1によれば、第一のミラー34と第二のミラー36を回転部37に一体的に設けるという簡素な構成で2ビーム(Lb1,Lb2)の分岐と2ビーム間の間隔の調整を簡単に行うことができる。
【0031】
また、本実施の形態に係る光学装置1を用いれば、図3−1に示すように、ビームスプリッター31の面314から出射されるビームを1本にすることができ、例えば、ウェーハの分割予定ラインにおける分割溝などの形成に用いることができる。さららに、この光学装置1を用いれば、回転部37の角度調整を制御部6で行うことにより、ウェーハの分割予定ラインの幅方向の両端部分に一対の互いに離れた膜剥がれ防止用の浅い溝を加工することが容易となる。したがって、このような浅い溝を2本のビームで加工して膜剥がれを防止できる構造を形成した後、これら浅い溝の中間に1本のビームで分割溝を形成することも簡単な切り換え操作で行うことが可能となる。
【0032】
さらに、本実施の形態では、偏光ビームスプリッターと1/4波長板33を使用することでレーザービームLbが分岐する際のビームのロスが無偏光ビームスプリッターを使用した場合よりも低減される。
【0033】
(実施の形態2)
次に、図4を用いて、本発明の実施の形態2に係る光学装置について説明する。なお、本実施の形態の光学装置は、上記実施の形態1に係る光学装置1と分岐機構3Aの構成が異なるだけであるため、分岐機構3A以外の部分の構成の説明は省略する。また、上記実施の形態1と同一部分には同一の符号、類似部分には類似の符号を用いて説明する。また、本実施の形態においても、ビームスプリッター31は、偏光ビームスプリッターを用いているが、1/4波長板の図示を省略して説明する。
【0034】
図4に示すように、本実施の形態に係る分岐機構3Aは、ビームスプリッター31の面312側には接合面31Aで分岐して接合面31Aを透過した第一の分岐ビームLb1が入射する第一の中間ミラー34−1が配置されている。この第一の中間ミラー34−1のミラー面34Aは、Y方向と反対の方向へ向けて面312に対して45度傾斜するように配置されている。また、ビームスプリッター31の面313側には接合面31Aで分岐して接合面31Aを反射した第二の分岐ビームLb2が入射する第二の中間ミラー36−1が配置されている。この第二の中間ミラー36−1のミラー面36Aは、Y方向と反対の方向へ面313に対して45度傾斜するように配置されている。ビームスプリッター31と第一の中間ミラー34−1と第二の中間ミラー36−1は、位置関係が固定されている。
【0035】
分岐機構3Aは、固定されたビームスプリッター31に対して、ビームスプリッター31の周りを回転可能に設けられた第一のミラー34−2と第二のミラー36−2を備えている。これら第一のミラー34−2と第二のミラー36−2は、直角に屈曲したL字形状のアーム30のそれぞれ端部に固定されている。アーム30は屈曲する部分に回転部30Aが設けられている。この回転部30Aの中心軸は、ビームスプリッター31におけるレーザービームLbが入射する接合面31Aの分岐点32を通り、分岐点32で分岐した直後の該第一の分岐ビーム及び該第二の分岐ビームが形成する面と直交するように設定されている。このアーム30に固定された第一のミラー34−2と第二のミラー36−2は、図4に示すように、矢印a方向に回動可能となっている。回転軸30Aは、上記の実施の形態1と同様の駆動部5および制御部6により回転制御されるようになっている。
【0036】
第一のミラー34−2のミラー面34Bは、第一の中間ミラー34−1のミラー面34Aと直角をなすように配置されている。第一の中間ミラー34−1のミラー面34Aは、分岐点32から到る第一の分岐ビームLb1を、上記中心軸に平行をなす方向に向けて反射するようになっている。すなわち、第一の中間ミラー34−1のミラー面34Aから出射された第一の分岐ビームLb1は、第一のミラー34−2のミラー面34Bへ到るようになっている。そして、第一のミラー34−2のミラー面34Bで出射された第一の分岐ビームLb1を、ビームスプリッター31における分岐点32からY方向逆の方向に位置する箇所の面312へほぼ直角に入射させるように設定されている。第二のミラー36−2のミラー面36Bは、第二の中間ミラー36−1のミラー面36Aと直角をなすように配置されている。そして、ミラー面36Aから出射された第二の分岐ビームLb2を、ビームスプリッター31における分岐点32からY方向と逆の方向に位置する箇所の面313へほぼ直角なすように入射させるように設定されている。なお、本実施の形態では、図示しない1/4波長板の配置位置としては、分岐点32を通過した第一の分岐ビームLb1の経路については、例えば、面312と第一の中間ミラー34−1との間と、第一のミラー34−2と面312との間と、の2箇所に配置すればよい。また、第二の分岐ビームLb2の経路については、例えば面313と第二の中間ミラー36−1との間と、第二のミラー36−2と面313との間と、の2箇所に配置すればよい。なお、このように2つの1/4波長板を使用せずに1/2波長板を用いるならば、例えば、面312と第一の中間ミラー34−1との間と、面313と第二の中間ミラー36−1との間と、にそれぞれ1つずつ1/2波長板配置すればよい。要は、ビームスプリッター31から出射して再び入射するまでの間の光路に1/2波長板が1つ、若しくは1/4波長板が2つあればよい。
【0037】
図4は、第一のミラー34−2と第二のミラー36−2が回転していない初期状態において、分岐機構3Aにおけるビームスプリッター31の分岐点32に、レーザービームLbを入射させた状態を示すものである。この場合、分岐点32で分岐し接合面31Aを通過した第一の分岐ビームLb1は、第一の中間ミラー34−1のミラー面34Aで反射され、第一のミラー34−2のミラー面34Bに入射し、面312へ向けて反射される。面312に入射した第一の分岐ビームLb1は、接合面31Aで反射されてZ方向と逆の方向へ出射される。分岐点32で分岐し接合面31Aで反射された第二の分岐ビームLb2は、第二の中間ミラー36−1のミラー面36Aで反射され、第二のミラー36−2のミラー面36Bに入射し、面313へ向けて反射される。面313に入射した第二の分岐ビームLb2は、接合面31Aを透過してZ方向と逆の方向へ出射される。
【0038】
本実施の形態に係る光学装置においても、分岐機構3Aにおいて第一のミラー34−2と第二のミラー36−2とを一体的に回動させることにより、図4に示すように、最終的に第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb2とが重なって出射される状態や、これらの分岐ビームが互いに任意の距離だけ離れるように出射される状態に制御することが可能となる。
【0039】
特に、本実施の形態では、ビームスプリッター31から一旦出射された第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb2は、第一の中間ミラー34−1、第二の中間ミラー36−1と、第一のミラー34−2と第二のミラー36−2を介して反射されることにより、ビームスプリッター31における分岐点32から離れた場所に入射するため、ビームスプリッター31がレーザービームによって劣化することを抑制することができる。
【0040】
(レーザー加工装置の構成)
次に、図5を用いて、本発明の実施の形態1に係る光学装置1を適用したレーザー加工装置100の構成について説明する。
【0041】
図5は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置100の構成を示す概略斜視図である。図5に示すように、レーザー加工装置100は、ワークを保持するための保持機構101と、保持機構101を加工送り方向であるX軸方向及び割り出し送り方向であるY軸方向に移動させるためのXY駆動機構102と、保持機構101によって保持されたワークにレーザー光線を照射するための上記実施の形態に係る光学装置1と、レーザー加工装置100に内蔵されレーザー加工装置100の各部分を統括的に制御する図示しない制御装置とを備える。
【0042】
保持機構101は、ワークに応じた大きさのチャックテーブルを主体とするものであり、図示しない吸引手段によって上面である保持面101A上に載置されたワークを吸引保持する。ワークは、図示しない搬送手段によって例えば表面側を上にして保持機構101に搬入され、保持面101A上に吸引保持される。このようにワークを保持面101A上で保持する保持機構101は、円筒部材103の上端に設けられ、円筒部材103内に配設された図示しないパルスモータによって鉛直軸を軸中心として回転自在な構成となっている。
【0043】
XY駆動機構102は、2段の滑動ブロック104,105を備える。保持機構101は、円筒部材103を介して2段の滑動ブロック104,105の上に搭載されている。XY駆動機構102は、ボールネジ106やパルスモータ107等によって構成された加工送り機構108を備え、滑動ブロック104は、この加工送り機構108によってX軸方向への移動が自在である。そして、加工送り機構108が駆動して滑動ブロック103が移動し、光学装置1に対して保持機構101がX軸方向に移動することによって、滑動ブロック104に搭載された保持機構101と光学装置1とをX軸方向に沿って相対的に移動させる。なお、以下の説明において、加工送り方向であるX軸方向について、図5中で矢印が指し示す方向を正の方向、その逆方向を負の方向と呼ぶ。
【0044】
XY駆動機構102は、ボールネジ109やパルスモータ110等で構成された割り出し送り機構111を備え、滑動ブロック105は、割り出し送り機構111によってY軸方向への移動が自在である。そして、割り出し送り機構111が駆動して滑動ブロック105が移動し、光学装置1に対して保持機構101がY軸方向に移動することによって、滑動ブロック105に搭載された保持機構101と光学装置1とをY軸方向に沿って相対的に移動させる。
【0045】
本実施の形態では、保持機構101をX軸方向及びY軸方向に移動させることによって保持機構101と光学装置1とを相対的に移動させる構成とした。これに対して、保持機構101を移動させずに光学装置1をX軸方向及びY軸方向に移動させる構成としてもよい。また、保持機構101及び光学装置1の双方をX軸方向に沿って逆方向に移動させ、保持機構101及び光学装置1の双方をY軸方向に沿って逆方向に移動させてこれらを相対移動させる構成としてもよい。
【0046】
加工送り機構108に対しては、保持機構101の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段112が付設されている。加工送り量検出手段112は、X軸方向に沿って配設されたリニアスケールや、滑動ブロック104に配設されて滑動ブロック104と共に移動することによってリニアスケールを読み取る読み取りヘッド等で構成される。同様に、割り出し送り機構111に対しては、保持機構101の割り出し送り量を検出するための割り出し送り量検出手段113が付設されている。割り出し送り量検出手段113は、Y軸方向に沿って配設されたリニアスケールや、滑動ブロック105に配設されて滑動ブロック105と共に移動することによってリニアスケールを読み取る読み取りヘッド等によって構成される。
【0047】
光学装置1は、保持面101A上に吸引保持されたワークにレーザー光線を照射し、ワークの加工すべき位置に沿ってレーザー加工を施すためのものである。光学装置1に備えられた制御部6(図1参照)は、レーザー加工装置100の動作に必要な各種データを保持するメモリを内蔵したマイクロコンピュータ等によって構成される。
【0048】
本実施の形態に係るレーザー加工装置100は、光学装置1が簡単な構成で、2ビームの分岐と2ビーム間の間隔の調整が可能であるため、簡単な制御で光学装置1から出射させるビームを1本にしたり2本にしたりことができ、さらに2本にした場合に2本のビームの間隔を簡単に制御することが可能である。
【0049】
次に、図6−1〜図6−3を用いて、このレーザー加工装置100を用いてウェーハの分割予定ラインに分割溝を形成する方法について説明する。
【0050】
図6−1は、表面に複数のデバイス202が形成され、デバイス202を区画する分割予定ライン204が形成されると共に、裏面に剥離シート210が貼着されたウェーハ201の断面を示している。
【0051】
先ず、ウェーハ201を図5に示す保持面101A上に吸引保持させる。その後、光学装置1において、例えば図3−1に示すように、ビームスプリッター31から出射するビームを1本にした状態で、レーザービームが照射される位置が分割予定ラインの中心となる様に位置合わせ(アライメント)を行う。
【0052】
次に、例えば図3−2に示すように回転部37を回転駆動して第一のミラー34と第二のミラー36をビームスプリッター31に対して回転させることにより、ビームスプリッター31から最終的に出射される第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb2とのなす角度を制御する。この状態で、図6−2に示すように、分割予定ライン204の幅方向の両端部にラインに沿って、互いに所定の距離を隔てた、第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb2を照射して浅い溝の膜剥離防止用溝205を形成する。ここで、膜剥離防止用溝20の形成は分割予定ライン204の中心位置に対して線対称位置に形成されることが望ましいが、本発明によれば第一の分岐ビームLb1と第二の分岐ビームLb2は分割予定ライン204の中心を基準として等角度に分岐するので分割予定ライン204の中心位置に対して線対称位置に膜剥離防止用溝20を形成する調整が容易に可能となる。
【0053】
その後、図3−1に示すように、ビームスプリッター31から出射するビームを1本にするように調整して、図6−3に示すように、膜剥離防止用溝205の間に、ラインに沿って比較的深い分割用溝206を形成する。その後、ウェーハ201を取り外し、メカニカルブレーキングによって、個々のチップに分割すればよい。
【0054】
上述のように、このような構成のレーザー加工装置100を用いることにより、ウェーハ201のアライメントの際に、光学装置1のビームを1本にして用い、膜剥離防止用溝205の形成の際に、ビームを2本にして用い、分割用溝206を形成する場合にビームを1本にして用いるという切り換えを簡単に行えるという利点がある。
【0055】
(その他の実施の形態)
以上、この発明の実施の形態について説明したが、上記の実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものではない。この開示から当業者に様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0056】
例えば、上記の実施の形態では、ビームスプリッター31として偏光ビームスプリッターを用い、1/4波長板を用いたが、無偏光ビームスプリッターを用いて1/4波長板を用いない構成としても勿論よい。
【0057】
なお、ワークとしては、特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ(Si)、ガリウムヒソ(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)等の半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、あるいは半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイア(Al)などの無機材料基板、液晶ディスプレイドライバー等の各種電子部品、さらには、ミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明に係る光学装置およびレーザー加工装置は、ウェーハの分割の際に有用であり、特に、ウェーハのダイシング装置などに適している。
【符号の説明】
【0059】
1 光学装置
2 発振器
3,3A 分岐機構
4 集光器
5 駆動部
6 制御部
31 ビームスプリッター
31A 接合面
32 分岐点
33 第一の1/4波長板
34−1 第一の中間ミラー
34,34−2 第一のミラー
35 第二の1/4波長板
36−1 第二の中間ミラー
36,36−2 第二のミラー
37 回転部
100 レーザー加工装置
101 保持機構
Lb レーザービーム
Lb1 第一の分岐ビーム
Lb2 第二の分岐ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームを発振する発振器と、
該発振器から発振されたレーザービームを2つに分岐させる分岐機構と、
該分岐機構から出射された2つのレーザービームを集光する集光器と、を有する光学装置であって、
該分岐機構は、
該発振器から発振されたレーザービームを、透過して進む第一の分岐ビームと、反射して進む第二の分岐ビームと、に分岐させるビームスプリッターと、
該ビームスプリッターから出射した該第一の分岐ビームを再び該ビームスプリッターに向けて反射する第一のミラーと、
該ビームスプリッターから出射した該第二の分岐ビームを再び該ビームスプリッターに向けて反射する第二のミラーと、
該ビームスプリッターにおける該レーザービームの分岐点を回転中心として、該第一のミラーと該第二のミラーとを一体的に回転させる回転部と、
該回転部を回転させて該第一のミラーへの該第一の分岐ビームの入射角度と該第二のミラーへの該第二の分岐ビームの入射角度とを変更することによって、該第一のミラーで反射した後に該ビームスプリッターで反射する第一の分岐ビームと、該第二のミラーで反射した後に該ビームスプリッターを透過する第二の分岐ビームとが成す角度を調整する制御部と、を有し、
該集光器は、
該ビームスプリッターを透過した後に、該第一のミラーで反射して該ビームスプリッターに再び入射し、該ビームスプリッターで反射して該ビームスプリッターから出射した該第一の分岐ビームと、
該ビームスプリッターで反射した後に、該第二のミラーで反射して該ビームスプリッターに再び入射し、該ビームスプリッターを透過して該ビームスプリッターから出射した該第二の分岐ビームと、
が進む光路上に配置されたことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
該ビームスプリッターは偏光ビームスプリッターであり、
該分岐機構は、
該レーザービームの分岐点と該第一のミラーとの間に配設された第一の1/4波長板と、該レーザービームの分岐点と該第二のミラーとの間に配設された第二の1/4波長板と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
該ビームスプリッターはハーフミラーであることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
該ビームスプリッターから出射された該第一の分岐ビームを、前記回転中心を通る回転軸に平行をなす方向に向けて反射する第一の中間ミラーと、該ビームスプリッターから出射された該第二の分岐ビームを、前記回転中心を通る回転軸に平行をなす方向に向けて反射する第二の中間ミラーと、を備え、
該第一のミラーは該第一の中間ミラーで反射された該第一の分岐ビームを該ビームスプリッターにおける、該発振器から発振されたレーザービームが入射する位置から前記回転軸方向に離れた位置に入射させ、該第二のミラーは該第二の中間ミラーで反射された該第二の分岐ビームを該ビームスプリッターにおける、該発振器から発振されたレーザービームが入射する位置から該回転軸方向に離れた位置に入射させるように設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光学装置。
【請求項5】
ワークを保持する保持手段と、
該保持手段に保持されたワークにレーザービームを照射して加工する加工手段と、
を有するレーザー加工装置であって、
該加工手段は請求項1〜4のいずれか一つに記載の光学装置を有するレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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