説明

光学装置の製造方法

【課題】
封止空間内に所望の形状および厚みの粘性吸湿部材を適切に設けることができ、封止空間内に曝される粘性吸湿部材の表面積のばらつきを低減できる。
【解決手段】
本発明に係る有機EL表示装置の製造方法は、基板、対向基板、両基板間の封止空間内に形成された有機EL素子とを有する製造方法であり、所定領域の開口300aを有するメタルマスク300を対向基板106上に配置し、粘性吸湿部材107を開口300a内に塗布し、塗布された粘性吸湿部材107を押圧して、その壁の内側で広げ、メタルマスク300を対向基板106上から外し、粘性吸湿部材107が封止空間内に配置されるように、両基板を接着剤によって接着するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学装置の製造方法に関し、特に、その粘性吸湿部材の塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)素子は、有機発光性化合物を含む有機EL層を陽極と陰極との間に挟んだ積層体構造を有している。陽極と陰極の間に電圧を印加すると、陽極からは正孔が、陰極からは電子がそれぞれ有機EL層に注入されて再結合し、その際に生ずるエネルギーにより有機EL層に含まれる有機発光性化合物の分子が励起される。このようにして励起された分子が基底状態に失活する過程で発光現象が生じる。有機EL素子はこの発光現象を利用した自発光素子である。
【0003】
有機EL層は、正孔と電子が再結合して発光する発光層と呼ばれる有機層を少なくとも含み、必要に応じて、正孔が注入されやすくかつ電子を移動させにくい正孔輸送層と呼ばれる有機層、電子が注入されやすくかつ正孔を移動させにくい電子輸送層と呼ばれる有機層のうちの一方又は両方を含む単層構造又は多層積層構造を有している。
【0004】
一般に、有機ELパネルは、ガラスなどからなる基板上に、ITO(Indium Tin Oxide)等によって陽極となる透明電極と、有機EL層と、アルミニウム等によって陰極となる電極とを順次積層して積層体である有機EL素子を形成し、この積層体を覆うガラスなどからなる凹形状の対向基板を上記基板上に紫外線硬化性接着剤を介して気密的に配設することによって製造される。
【0005】
この有機ELパネルの大きな課題の1つは、発光層の寿命の改善である。寿命を短くする原因の1つは、ダークフレームやダークスポットと呼ばれる非発光部の発生である。この非発光部は点灯経過時間とともに成長し、次第に非発光面積が大きくなり、発光部の発光輝度は低下していく。この非発光部が発生する主な原因は、有機EL素子を構成している有機EL層と密封容器内の水分や酸素との反応である。これによって、非発光部が発生・成長することが知られている。
【0006】
そこで、従来の有機EL表示装置においては、有機EL素子を配設する基板と対向基板とで得られる封止空間内に吸湿部材を配設することで有機EL素子の寿命を改善している。この吸湿部材としては、無機系の乾燥剤が知られている(特許文献1参照。)。
【0007】
また、水分と反応性の高い有機金属化合物を膜状にして、有機EL素子を配設する基板と対向基板とで得られる封止空間内に捕水層を形成し、化学反応を利用して効果的に水分を捕水する方法が知られている(特許文献2参照。)。
【0008】
さらに、例えばフッ素系オイルからなる不活性液体中に固体の吸着剤を所定の割合で混合することによって得られる粘性を持った吸湿部材を対向基板の積層体との対向面に塗布し、封止空間内の水分を吸収する構造が知られている(特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平9−148066号公報
【特許文献2】特開2002−33187号公報
【特許文献3】特開2003−163076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3に開示されているように、粘性を持った吸湿部材を用いた有機EL表示装置は、対向基板の積層体との対向面に吸湿部材を塗布することによって製造される。この塗布工程において、吸湿部材はディスペンサなどの塗布装置を用いて所定の位置に塗布される。粘性吸湿部材はディスペンサによって所望の位置に吸湿部材を配設することができ、また、コストの点からも優れた吸湿部材である。
【0010】
吸湿部材の吸湿量は、一般に封止空間に曝される吸湿部材の表面積に依存することが知られている。ディスペンサなどの塗布装置を用いて粘性吸湿部材を塗布した場合、対向基板に粘性吸湿部材を薄く広く塗布することができず、封止空間に曝される粘性吸湿部材の表面積を広く確保することができない。
【0011】
また、有機EL表示装置を大量に製造した場合、封止空間に曝される粘性吸湿部材の表面積のばらつきを抑制することが重要である。表面積のばらつきは、各有機EL表示装置の間で吸湿量や吸湿速度に差を生じさせ、その品質にばらつきが生じるからである。
本発明は、上述のような事情を背景としてなされたものであって、封止空間内に所望の形状の粘性吸湿部材を適切に設け、封止空間内に曝される粘性吸湿部材の表面積のばらつきを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る光学装置の製造方法は、第1の基板と、第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間の封止空間内に形成された素子とを有する光学装置の製造方法であって、第2の基板表面の所定領域を包囲する壁を第2の基板上に設けるステップと、粘性吸湿部材を第2の基板上の壁の内側に塗布し、その塗布された粘性吸湿部材を押圧して、その壁の内側で広げるステップと、粘性吸湿部材が封止空間内に配置されるように、第1の基板と第2の基板を固着するステップと、を含むものである。
【0013】
このように、第2の基板表面の所定領域を包囲する壁を第2の基板上に設け、粘性吸湿部材を第2の基板上の壁の内側に塗布し、その塗布された粘性吸湿部材を押圧して、その壁の内側で広げるので、封止空間内に所望の形状の粘性吸湿部材を適切に設けることができ、封止空間内に曝される粘性吸湿部材の表面積のばらつきを低減できる。
【0014】
また、所定領域の開口を有するマスクを第2の基板上に密着して配置して第2の基板表面の所定領域を包囲する壁を設け、粘性吸湿部材を広げた後にマスクを第2の基板から取り外すとよい。
このようにすることにより、更にマスク厚に合わせて粘性吸湿部材を塗布でき、封止空間内に所望の形状および厚みの粘性吸湿部材を適切に設けることができ、封止空間内に曝される粘性吸湿部材の表面積のばらつきを低減できる。
【0015】
また、上記粘性吸湿部材を押圧する押圧部材を第2の基板表面に向かう方向に移動させながら粘性吸湿部材を押圧して広げるとよい。このように、押圧部材を使用することで、容易に効率よく粘性吸湿部材を塗り広げることができる。
また、上記粘性吸湿部材を押圧する押圧部材を第2の基板上の表面に沿って移動させながら粘性吸湿部材を押圧して広げるとよい。これにより、余分な粘性吸湿部材を除去しながら、封止空間内に所望の形状および厚みの粘性吸湿部材を適切に設けることができ、封止空間内に曝される粘性吸湿部材の表面積のばらつきをより安定的に低減できる。
【0016】
また、押圧部材を壁の上面に当接させて位置決めし、粘性吸湿部材を所定の厚みとなるように押圧して広げるとよい。このようにすることにより、封止空間内に所望の形状および厚みの粘性吸湿部材を更に適切に設けることができ、封止空間内に曝される粘性吸湿部材の表面積のばらつきをより安定的に低減できる。
【0017】
また、押圧部材の粘性吸湿部材側の表面には凹凸面が形成するとよい。また、マスクは複数の開口を有し、粘性吸湿部材は第2の基板上の複数箇所に塗布するとよい。このようにすることにより、封止空間内に曝される粘性吸湿部材の表面積を広く確保することができる。
【0018】
また、粘性吸湿部材に対してガスを吹き付けながら、マスクを第2の基板上から外すとよい。このようにしたことにより、マスクを第2の基板上から外すときに生じる粘性吸湿部材の糸引きやツノの発生を低減でき、粘性吸湿部材と表示素子の接触を防止することができる。
【0019】
また、第2の基板上には段差が形成されており、マスクは段差形状に合わせた形状に形成するとよい。このようにしたことにより、第2の基板に段差が形成されている場合にも、メタルマスクの底面における開口部の内側端面側を第2の基板上に密着させて粘性吸湿部材を塗布でき、封止空間内に所望の形状および厚みの粘性吸湿部材を適切に設けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、封止空間内に粘性吸湿部材を適切に設けることができ、封止空間内に曝される粘性吸湿部材の表面積のばらつきを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の構成について、図に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る有機ELパネル100の構成の一部を示す模式的断面図である。なお、図1は有機ELパネルの構成を模式的に示すものであって、実際の有機ELパネルの詳細構成を反映するものではない。
【0022】
有機ELパネル100は、ガラスなどよりなる基板101と対向基板106とで得られる気密空間(封止空間)内に、有機EL素子110が形成されてなる構成を有する。基板101と対向基板106は、接着剤108によって接着されている。基板101上に形成される有機EL素子110は、陽極102、絶縁層103、有機EL層104及び陰極105から構成されている。陽極102と陰極105の間に電圧を印加すると、陽極からは正孔が、陰極からは電子がそれぞれ有機EL層104に注入されて再結合し、その際に生ずるエネルギーにより有機EL層104内の有機発光性化合物の分子が励起される。励起された分子は基底状態に失活し、その過程において有機EL層104が発光する。
【0023】
図1に示されるように、基板101上において、最下層には陽極102が形成されている。陽極102は、ITOなどの透明導電性薄膜で形成される。陽極102の上には、ポリイミドなどからなる絶縁層103が形成されている。この絶縁層103には、陽極102と陰極105が交差する位置(すなわち画素が形成される位置)に開口部が設けられている。そして、この絶縁層103の開口部に有機EL層104が形成されている。
【0024】
絶縁層103は、有機EL層104と陽極102とが接触する開口部を画定する役割を果たしている。また、絶縁層103は、陽極102と陰極105の短絡が発生しないように配設される。図1に示されるように、有機EL層104上には、発光輝度を高めるために、Alなどの光反射率の高い金属からなる陰極105が設けられている。ここでは図示していないが、陰極105の分離のために例えばノボラック樹脂などからなる隔壁(不図示)が設けられている。
【0025】
基板101上には、複数の有機EL素子110が設けられ、有機EL素子110が形成されている領域が表示領域となる。基板101上には、さらに、各有機EL素子110に信号を供給する補助配線が設けられている。図1では、陰極105に接続される陰極補助配線109の部分について図示している。有機EL素子110の陽極102及び陰極105はそれぞれの補助配線に接続されており、これら補助配線は接着剤108の外側に延設されている。基板101の端部には駆動回路(不図示)が搭載され、陽極102及び陰極105はそれぞれ補助配線を介して、駆動回路に接続される。この駆動回路から有機EL素子110に電流を供給することにより、有機EL素子110が発光して所望の画像を表示することができる。
【0026】
対向基板106は、パネル中に水分や酸素が入らないように設けられる。対向基板106としては、ステンレス鋼、アルミニウム又はその合金などの金属類のほか、ガラス、アクリル系樹脂などの1種類又は、2種類以上からなるものを使用することができる。図1に示されるように、対向基板106と基板101は接着剤108によって接着され、対向基板106と基板101の間に封止空間(領域)が形成されている。封止空間内には、有機EL素子110の他、粘性吸湿部材107が配設されている。粘性吸湿部材107は、有機EL素子110への水分や酸素の影響を抑制し、安定した発光特性を維持するために用いられる。図1に示されるように、粘性吸湿部材107は、対向基板106上であって、有機EL素子110と対向する面上に配設されている。
【0027】
粘性吸湿部材107は、吸着剤が流動しない程度の粘性を有する。クリーム状あるいはゲル状で塗布面に粘着するものである。吸着剤としては、活性アルミナ、モレキュラシーブス、酸化カルシウム及び酸化バリウム等の物理的あるいは化学的に水分を吸着するものが使用される。粘性吸湿部材107は、例えば、フッ素系オイルからなる不活性液体中に所定量の吸着剤を混合して構成する、あるいは、フッ素系ゲルなどの不活性のゲル状部材に所定量の吸着剤を混合することで得られる。フッ素系オイルとしては、例えば、ポリ・トリフルオロ・クロルエチレン、ポリ・フルオロアルキレングリコール等がある。図1に示されるように、粘性吸湿部材107は、対向基板106に形成された凹部の内部側面と接触しないように、一定の間隔dを設けて配設されている。
【0028】
また例えば、シリコーン系オイルからなる不活性液体や不活性のゲル状部材中に所定量の吸着剤を混合して粘性吸湿部材107を構成することもできる。このシリコーン系オイルとして、メチルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のジメチルシリコン類、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、環状構造のポリメチルシロキサン等の環状ジメチルシリコン類、メチルフェニルポリシロキサン等のメチルフェニルシリコン類やメチル基の他フェニル基を持つポリシロキサンがある。
【0029】
他のシリコーン系オイルとして、トリメチルシロキシケイ酸やこれを含有するメチルポリシロキサン、ポリオキシエチレン/メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン、オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体等のポリエーテル変性シリコーン、メチルホイドロジェンポリシロキサン等がある。シリコーン系オイルと吸着材との混合比は、例えば、シリコーン系オイルと吸着材とが分離しないように、25〜60wt%程度とすることができる。好ましくは、この混合比は、40〜60wt%程度であり、この場合には、チクソ性を高めることができる。
【0030】
なお、チクソ性とは、動いている状態(例:かき混ぜる)では粘度が低く、止まっている状態(静止状態)では粘度が高くなる性状をいう。より好ましくは、この混合比は、50〜60wt%程度であり、ディスペンサで安定して塗布することができる。また、本実施形態においては、シリコーン系オイルを用いた粘性吸湿部材107の一例として、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製)7.0gとモレキュラシーブス8.5gの55wt%が混合された材料を用いることにより、分離せず、チクソ性の高い粘性吸湿部材107をディスペンサにより安定した塗布を行うことができる。
【0031】
次に、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法について、図に基づいて説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造工程を示すフローチャートである。
まず、図1および図2に示されるように、有機EL素子110を形成する基板101を用意する(ステップ(以下、Sと称する)101)。その基板101上に、陽極材料を成膜する(S102)。陽極材料は、例えば蒸着法やスパッタリング法により基板上に均一性よく成膜される。その後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより所定のパターン形状にパターニングされ(S103)、このパターンが陽極102となる。
【0032】
次に、図2に示されるように、陽極102上に補助配線材料(不図示)を成膜する(S104)。補助配線材料蒸着法、スパッタリング法などによって成膜することができる。次に、図2に示されるように、この補助配線材料をフォトリソグラフィ及びエッチングによりパターニングして、補助配線パターンを形成する(S105)。陽極102および後に形成される陰極105は、この補助配線パターンを介して、基板の端部に搭載されている駆動回路に接続され、信号が供給される。
【0033】
次に、図1および図2に示されるように、陽極102の上に、スピンコート及びフォトリソグラフィを使用して、絶縁層103を形成する(S106)。絶縁層103には、陽極102と後述する陰極105が交差する位置(すなわち表示画素が形成される位置)に開口部が設けられる。この開口部に有機EL層104が形成される。次に、陰極105の分離のために、隔壁(不図示)を形成する(S107)。隔壁には、例えば、ノボラック樹脂をスピンコートして、フォトリソグラフィ工程でパターニングした後、光反応させて陰極隔壁を形成する。陰極隔壁が逆テーパ構造を有するようネガタイプの感光性樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
次に、図1および図2に示されるように、絶縁層103の開口部に形成された陽極102上に、蒸着法、塗布法などにより、有機EL層104を積層する(S108)。有機EL層104は正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層などから構成されることが多い。例えば、正孔注入層として銅フタロシアニン(CuPc)を用いることができる。また、正孔輸送層としてN,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(α―NPD)を用いることができる。そして、発光層としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を、電子注入層としてはフッ化リチウム(LiF)を用いることができる。
【0035】
次に、図1および図2に示されるように、有機EL層104上にスパッタリング法などの物理的気相成長法(PVD)で陰極105を形成する(S109)。このように陽極102、絶縁層103、有機EL層104、陰極105を積層することによって、有機EL素子110が形成される。これらの工程により基板101上に複数の有機EL素子110が形成された素子基板が製造される。
【0036】
次に有機EL素子110を封止するための対向基板106の製造工程について説明する。対向基板106を用意する(S201)。次に、対向基板106上に所定領域の開口を有するメタルマスク(図3において不図示)を所定の位置に配置する(S202)。対向基板106上に配置されたメタルマスクの開口内に、所定量の粘性吸湿部材107を配設する(S203)。つまり、まず、水分を極力取り除いた不活性ガス(例えばドライ窒素)によるドライ雰囲気において、対向基板106上に粘性吸湿部材107を塗布する。
【0037】
続いてメタルマスクの開口内の粘性吸湿部材107を押圧部材(図3において不図示)により押圧する(S204)。次に、対向基板106上からメタルマスクを取り外す(S205)。なお、粘性吸湿部材107の配設方法(S202〜S205)については、後に詳述する。次に、基板101と対向基板106を固着するための接着剤108を塗布する(S206)。接着剤108は、ディスペンサを用いて、粘性吸湿部材107の外側に設けられ、表示領域の全周を囲むように対向基板106上に設けられる。接着剤108は、水分などの透過性の低いエポキシ樹脂系接着剤、光硬化性樹脂などを用いることができる。
【0038】
次に、図1および図2に示されるように、粘性吸湿部材107を配設した対向基板106と、有機EL素子110を形成した基板101とを貼り合わせて封止する(S110)。両基板の位置合わせを行った後、加圧しながらUV光を照射することによって、接着剤108を硬化し、両基板を貼り合わせることができる。このようにして有機ELパネル100を製造する。上述の工程により、基板101と対向基板106との間の空間は接着剤108により封止される。
【0039】
その後、駆動回路等を実装する(S111)。補助配線の外側の端部には端子部が形成されており、この端子部に異方性導電フィルム(ACF)を貼付け、駆動回路が設けられたTCP(Tape Carrier Package)を接続する。この有機ELパネルが筐体に取り付けられ、有機ELディスプレイが完成する(S112)。
【0040】
ここで、粘性吸湿部材107の配設方法(ステップS202〜S205)について図3〜図5を参照して詳細に説明する。図3は、粘性吸湿部材の塗布装置を示す模式的概略図である。図4は、本発明の実施の形態の粘性吸湿部材の塗布工程を説明するための図であって、図4(a)は対向基板上にメタルマスク300を配置して粘性吸湿部材107を塗り広げた状態を示す平面図であり、図4(b)は図4(a)のA−A切断線における断面図である。なお、図4(b)では、粘性吸湿部材107への押圧部材400もあわせて示している。図5は、本発明の実施の形態の粘性吸湿部材107の塗布状態を示す図であって、図5(a)は、対向基板106上に粘性吸湿部材107を塗り広げた状態の平面図であり、図5(b)は、図5(a)のB−B切断線における断面図である。
【0041】
図3に示されるように、塗布装置200は、対向基板106を搭載するステージ201と、粘性を有する粘性吸湿部材107を塗布するためのディスペンサ202を備えており、このディスペンサ202は、粘性吸湿部材107を吐出するニードル203を備えている。また、塗布装置200は、ニードル203の吐出口から吐出される粘性吸湿部材107や、メタルマスク300を対向基板106から離間する際に粘性吸湿部材107にガスを吹き付けるためのノズル204を備えている。また、塗布装置200は、アクチュエータやサーボモータなどからなるX−Y−Z移動手段205を備えており、ディスペンサ202およびノズル204を任意の位置および高さに移動できる。さらに、粘性吸湿部材107の吐出量やディスペンサ202の位置及び移動速度、またガスの吹き付け位置などを制御できる制御装置206を備えている。
【0042】
まず、ステージ201に対向基板106を載せる。次に、図3および図4(a)に示されるように、所定領域の開口300aを有するメタルマスク300を対向基板107上に密着させて配置する(S202)。なお、対向基板106上およびメタルマスク300に位置決めピンや位置決め穴等の位置決め部が設けられている場合には、これに合わせて矩形状の所定領域の開口300aを有するメタルマスク300を対向基板106上に配置する。これにより、メタルマスク300の開口300aを対向基板106上の所望の位置に正確に配置することができる。メタルマスク300は、基板101と対向基板106とを接合して、有機EL素子110を封止した後に(S110)、基板101上に形成された有機EL素子110に接触しないような厚み(例えば、約0.2mm〜約0.3mm)に形成されている。
【0043】
そして、図3に示されるように、X−Y−Z移動手段205によって、ディスペンサ202を下降させて、ニードル203と対向基板106とが所定の距離になるようにニードル203を対向基板106に近接配置させる。次に、ニードル203の吐出口から粘性を有する粘性吸湿部材107を吐出させ、対向基板106上に塗布する。具体的には、X−Y−Z移動手段205によって、ニードル203を対向基板106との距離をほぼ一定に保ちながら、メタルマスク300の開口300aの内側全体にわたり、平行移動させながら粘性吸湿部材107を塗布する(S203)。
【0044】
塗布される粘性吸湿部材107の対向基板106上の位置、吐出量、ディスペンサ202の移動速度などは制御装置206によって任意に設定することができ、制御装置206から出力される制御信号によって制御される。塗布始点位置から塗布終点位置までの間、粘性吸湿部材107は常に吐出され、対向基板106上に連続的に塗布される。塗布終点位置まで移動したところで、粘性吸湿部材107の吐出及びディスペンサ202の移動を停止する。停止位置においてディスペンサ202を上昇させて粘性吸湿部材107とニードル203を切り離す。ディスペンサ202の上昇の開始前あるいはディスペンサ202の上昇中に、粘性吸湿部材107の塗布終端部にノズル204からガスを吹き付ける。
【0045】
このとき、塗布終点位置において、ガス吹き付けを行なうのは、粘性を持った粘性吸湿部材107がニードル203の先端に引きずられ、ツノがたったり、糸引きを起こしたりするのを防止するためである。次に、図4(b)に示されるように、例えば、ステンレス鋼等の金属や樹脂材料等により形成された押圧部材400を用いて、メタルマスク300の開口300a内の粘性吸湿部材107を押圧して広げる(S204)。押圧部材400は対向基板106表面に向かって降下し、メタルマスク300上面に当接した位置で停止する。本例では、押圧部材400は対向基板106表面に垂直(図4(b)Z方向)に移動する。
【0046】
押圧部材400はメタルマスク300の開口300aよりも大きい外形を有しており、押圧部材400がメタルマスク300の上面に当接して位置決めされた状態において、開口300aの全てがカバーされている。粘性吸湿部材107は、開口300a内の容積と実質的に同一量が塗布されており、押圧部材400によって塗り広げられることによって、開口300a内部を満たす。つまり、粘性吸湿部材107は、メタルマスク300の各内壁に接触している。また、粘性吸湿部材107の厚みは、メタルマスク300の厚みと実質的に同一となる。
押圧部材400の粘性吸湿部材107側の表面には、フッ化樹脂等の離型性を有する材料を塗布するとよい。これにより、押圧後に、押圧部材400を粘性吸湿部材107から引き離すときに生じる粘性吸湿部材107のツノや糸引きの発生を防止することができる。
【0047】
さらに、メタルマスク300を対向基板106から取り外す(S205)。メタルマスク300の離間時に、メタルマスク300の開口300aの内側端部に沿って、ノズル204から粘性吸湿部材107に、粘性吸湿部材107の形状が変形しない程度の強さでガスを吹き付けると更によい。これによって、粘性を持った粘性吸湿部材107がメタルマスク300の開口300aの周囲、特に角部に引きずられ、ツノが形成されあるいは糸引きを起こすことを防止する。具体的には、メタルマスク300の上昇時にノズル204からガスの吹き付けを行うことによって、粘性吸湿部材107のツノの形成もしくは糸引きを防止する。なお、メタルマスク300の開口300aの内側面にフッ化樹脂等の離型性を有する材料を塗布する、あるいは、マスクをフッ化樹脂により形成することができる。これにより、より容易にマスクを対向基板106上から外すことができる。
【0048】
そして、図5(a)および図5(b)に示されるように、粘性吸湿部材107が、対向基板106上に、メタルマスク300の開口300a内側の輪郭に沿った形状および厚みを有して配設される。このように、所定領域の開口300aを有するメタルマスク300を使用し、その開口300a内で粘性吸湿部材107を塗り広げることで、封止空間内に所望の形状の粘性吸湿部材107を適切に設けることができ、その表面積のばらつきを低減できる。また、押圧部材400を使用することで、容易に効率よく粘性吸湿部材107を塗り広げることができる。
【0049】
上述と異なり、押圧部材400を対向基板106面に沿って移動させることにより、押圧領域を徐々に移動させながら、メタルマスク300の開口300a内で粘性吸湿部材107を押圧して広げてもよい。押圧部材400は、図4の紙面に対して垂直な方向(Y方向)は薄く形成されている。押圧部材400は、Y方向において移動する。移動方向と垂直は方向(X方向)において、押圧部材400の長さは開口300aよりも大きく、押圧部材400はメタルマスク300の上面に当接した状態において、粘性吸湿部材107を押圧しながら移動する。このように、押圧部材400を移動させて押圧領域を徐々に移動させることによって、メタルマスク300の開口300aから溢れた余分な粘性吸湿部材107を除去でき、対向基板106上の粘性吸湿部材107の形状や厚みをより安定的に一定にすることができる。なお、粘性吸湿部材107を塗布した後は、押圧部材400に付着した余分な粘性吸湿部材を洗浄する。
【0050】
ここで、一般に、粘性吸湿部材107の吸湿量は、基板101と対向基板106との間の封止空間に曝される当該粘性吸湿部材107の表面積に依存するところ、当該粘性吸湿部材107の表面積をより広く確保するために、図6に示されるように、押圧部材401の表面に凹凸面401aを形成してもよい。
図6に示されるように、押圧部材401の粘性吸湿部材107側の表面には、凹凸面401aが形成されている。凹凸面401aは、図6に示されるように、のこぎりの歯状に形成されている。なお、この形状に限らず、凹凸面401aの形状を波形状や矩形状の凸凹面に形成してもよい。このようにしたことにより、粘性吸湿部材107の押圧部材401側の表面積を広くすることができる。
【0051】
また、押圧部材401の粘性吸湿部材107側の表面に、凹凸面401aを形成する以外に、例えば、粘性吸湿部材107を離間した複数箇所に配置することによっても、基板101と対向基板106との間の封止空間内に曝される粘性吸湿部材107の表面積を広く確保することができる。図7は、本発明の実施の形態の粘性吸湿部材の塗布工程の第二の変形例を説明するための図であって、図7(a)は対向基板上にメタルマスクを配置して粘性吸湿部材を塗布した状態を示す平面図であり、図7(b)は図7(a)のC−C切断線における断面図である。
【0052】
図7(a)に示されるように、メタルマスク301には、離間した複数の所定領域の開口301aが形成されている。図7(a)では、例示として、4行10列の矩形状の開口301aが形成されたメタルマスク301を示している。このように形成された複数の開口301aの内側に粘性吸湿部材107を塗布し、メタルマスク301の複数の開口301aの各々の内側に塗布された粘性吸湿部材107を、押圧部材400によりメタルマスク301上からZ方向に押圧し、メタルマスク301を対向基板106から取り外す。
【0053】
この結果、対向基板106上には、複数の矩形状の粘性吸湿部材107がそれぞれ離間して配列されて配設される。このようにしたことにより、基板101と対向基板106との間の封止空間内に曝される粘性吸湿部材107の表面積を広く確保することができる。なお、粘性吸湿部材107のツノや糸引きの発生を防止するために、メタルマスク301の各開口301aの内側端面や押圧部材400の粘性吸湿部材107側の表面に、フッ化樹脂等の離型材料を塗布すると更によい。
【0054】
また、図5(b)に示されるように、粘性吸湿部材107の厚み、つまり本例においてメタルマスクの厚み(高さ)tは、対向基板106の凹部の深さDの50〜90%であることが好ましい。より好ましくは、70〜90%である。これによって、有機EL素子110への接触を確実に防止することができ、これに伴う表示特性の劣化を抑制することができる。すなわち、粘性吸湿部材107の最大の厚みを、対向基板106と有機EL素子110との距離未満にすることができ、粘性吸湿部材107が有機EL素子110に接触することを防止することができる。
【0055】
また、図1および図5(b)に示されるように、粘性吸湿部材107が対向基板106に形成された凹部の内部側面と接触しないように、一定の間隔dを設けて配設することが好ましい。このようにすることにより、接着剤108の位置に粘性吸湿部材107が入り込むことがなく、対向基板106と、有機EL素子が形成された基板101とを確実に貼り合わせを行うことができる。
【0056】
また、対向基板106を多面取りする場合、効率よく各対向基板106上に粘性吸湿部材107を塗布するには、対向基板106の周囲に形成された段差を考慮する必要がある。図8は、対向基板を多面取りする場合の対向基板上にメタルマスクを配置した断面図である。図8に示されるように、複数の対向基板106が配列された対向基板106用マザー基板160の各対向基板106間には、各対向基板106間を分断するための切断線M−Mおよび切断線N−Nを中央部に有する段差161が形成されている。
【0057】
そこで、図8に示されるように、各対向基板106上に粘性吸湿部材107を一度に塗布できるように、メタルマスク302に、対向基板のマザー基板160の各段差161の形状に合わせて屈曲された屈曲部302bを形成している。
このようにしたことにより、対向基板106に段差が形成されている場合にも、メタルマスク302の底面の開口部302aの内側端面側を対向基板106上に密着させた状態で粘性吸湿部材107を塗布することができ、封止空間内に所望の形状および厚みの粘性吸湿部材107を適切に設けることができる。
【0058】
以上の説明は、本発明を実施の形態を説明するものであり、本発明が以上の実施の形態に限定されるものではない。また、当業者であれば、以上の実施の形態の各要素を、本発明の範囲において、容易に変更、追加、変換することが可能である。
例えば、上記発明の態様では、メタルマスク300等を用いて所定領域の粘性吸湿部材107を対向基板106上に塗布するとしたが、対向基板106表面の所定領域を包囲する壁(不図示)を、対向基板106上に突出させて設け、粘性吸湿部材107を対向基板106上に設けた壁(不図示)の内側に塗布するようにしてもよい。また、上記発明の態様と同様に、押圧部材を壁の上面に当接させて、壁の高さまで粘性吸湿部材107を押圧してもよく、上記実施の態様と同様の作用効果を奏する。また、粘性吸湿部材107を押圧するのに、押圧部材を図4に示されるX方向またはY方向や、Z方向に相当する方向に移動させながら押圧してもよく、上記実施の態様と同様の作用効果を奏する。
【0059】
例えば、上記発明の態様では、対向基板106上に配設する粘性吸湿部材107の形状を矩形状としたが、メタルマスクや対向基板上に設ける壁の作製可能な範囲において、円形状、楕円形状、多角形状、星形状等、どのような形状であってもよい。また、上記発明の形態では、粘性吸湿部材107の塗布にディスペンサ202を用いた例を示したが、例えば薬さじのような塗布手段を用いた手塗り塗布などに本発明を適用することも可能である。本形態の粘性吸湿部材の塗布は、有機ELパネルの製造に特に好適であるが、他の基板への粘性吸湿部材の塗布に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の模式的断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態の粘性吸湿部材を塗布する塗布装置の模式的概略図である。
【図4】本発明の実施の形態の粘性吸湿部材の塗布工程を説明するための図であって、図4(a)は対向基板上にメタルマスクを配置して粘性吸湿部材を塗り広げた状態を示す平面図であり、図4(b)は図4(a)のA−A切断線における断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の粘性吸湿部材の塗布状態を示す図であって、図5(a)は、対向基板上に粘性吸湿部材を塗り広げた状態の平面図であり、図5(b)は、図5(a)のB−B切断線における断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の粘性吸湿部材の塗布工程の第一の変形例を説明するための図であって、対向基板上にメタルマスクを配置して粘性吸湿部材を塗布し、メタルマスク上から粘性吸湿部材を押圧した状態を示す断面図であり、図5(b)に相当する断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の粘性吸湿部材の塗布工程の第二の変形例を説明するための図であって、図7(a)は対向基板上にメタルマスクを配置して粘性吸湿部材を塗布した状態を示す平面図であり、図7(b)は図7(a)のC−C切断線における断面図である。
【図8】複数の対向基板が配列された対向基板用マザー基板の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0061】
100 有機ELパネル、101 基板、102 陽極、103 絶縁層
104 有機EL層、105 陰極、106 対向基板、107 粘性吸湿部材
108 接着剤、109 陰極補助配線、160 対向基板のマザー基板
161 段差、200 塗布装置、201 ステージ、202 ディスペンサ
203 ニードル、204 ノズル、205 移動手段、206 制御装置
300、301、302 メタルマスク、300a、301a、302a 開口
302b 屈曲部、400、401 押圧部材、 401a 凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、第2の基板と、上記第1の基板と上記第2の基板との間の封止空間内に形成された素子とを有する光学装置の製造方法であって、
上記第2の基板表面の所定領域を包囲する壁を上記第2の基板上に設けるステップと、
粘性吸湿部材を上記第2の基板上の上記壁の内側に塗布し、その塗布された粘性吸湿部材を押圧して、その壁の内側で広げるステップと、
上記粘性吸湿部材が上記封止空間内に配置されるように、上記第1の基板と上記第2の基板を固着するステップと、を含む光学装置の製造方法。
【請求項2】
所定領域の開口を有するマスクを上記第2の基板上に密着して配置して上記第2の基板表面の所定領域を包囲する壁を設け、上記粘性吸湿部材を広げた後に上記マスクを上記第2の基板から取り外す、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記粘性吸湿部材を押圧する押圧部材を上記第2の基板表面に向かう方向に移動させながら上記粘性吸湿部材を押圧して広げる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記粘性吸湿部材を押圧する押圧部材を上記第2の基板上の表面に沿って移動させながら上記粘性吸湿部材を押圧して広げる請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
上記押圧部材を上記壁の上面に当接させて位置決めし、上記粘性吸湿部材を所定の厚みとなるように押圧して広げる、請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
上記押圧部材の上記粘性吸湿部材側の表面には凹凸面が形成されている、請求項3、4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記マスクは複数の開口を有し、上記粘性吸湿部材は上記第2の基板上の複数箇所に塗布される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項8】
上記粘性吸湿部材に対してガスを吹き付けながら、上記マスクを上記第2の基板上から外す、請求項2または7に記載の製造方法。
【請求項9】
上記第2の基板上には段差が形成されており、上記マスクは上記段差形状に合わせた形状に形成されている、請求項2、7または8に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−12372(P2007−12372A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190112(P2005−190112)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】