説明

光学装置

【課題】光学素子数や光学長を増大させることなく、半導体レーザのビームを、2枚の光学素子間で略平行光にするとともに、高い結合効率で受光部に集光することが可能な光学装置を提供する。
【解決手段】半導体レーザ55のビーム51を出射する発光部50と、受光部60と、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20を有し、ビーム51が発光部側光学素子と受光部側光学素子との間では略平行光である光学装置1において、発光部側光学素子はビームが入射する側にある第1の光学面10aと他方の側にある第2の光学面10bとが形成されていて、受光部側光学素子はビームが入射する側にある第3の光学面20aと他方の側にある第4の光学面20bとが形成されていて、第2の光学面が光軸を中心として回転対称かつ凸の非球面であり、第3の光学面が光軸を中心として回転対称かつ凸の非球面であり、第4の光学面がシリンドリカル面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを発光部としたビームを集光する光学装置に関し、とくに2枚の光学素子間の光路では平行光が得られるとともに高い結合効率で集光することが可能な光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを伝送媒体、半導体レーザを光源として、光通信は広く普及している。光通信において、通信端末からの電気信号は光信号に変換されて送信され、伝送媒体を経て受信された光信号が電気信号に復元される。送信用や中継用の入出力部もしくは受信用の入出力部等は光通信モジュールとして一体化された光学装置が用いられている。
【0003】
このような光学装置では、半導体レーザの発光部と光ファイバを取り付ける受光部との間にコリメートレンズや集光レンズなどの光学素子を用いて、高い結合効率で半導体レーザからのビームを光ファイバに結合させる。一般的に、半導体レーザの発光部の大きさは数μm程度、伝送媒体である光ファイバのコア径は10μm程度である。したがって、光学装置の組み立ては、発光部、光ファイバを取り付ける受光部、および必要な光学素子を、正確に位置合わせする必要がある。また、集光レンズの球面収差等により集光点のスポット径が大きくなると、受光部に位置するファイバ端面への光の結合効率が低下する。そのため、コリメートレンズや集光レンズに、光学面が光軸に回転対称の非球面レンズを用いて球面収差を補正している。
【0004】
しかるに、半導体レーザのビームは発散光であり、発散角が一様ではない。図8に示すように、通常の半導体レーザ155は、ダイオード構造の薄い活性層領域から横方向にビームが出射され、活性層の層方向(平行方向)とそれに直交する方向(垂直方向)で発散角が異なり、ビーム断面形状152は上記垂直方向を長軸とする楕円状になる。
【0005】
このビーム形状のままで光ファイバに入射すると、光ファイバのコア径に入らなかったりするためにロスを生じて、結合効率が低下してしまう。そこで、プリズムやシリンドリカルレンズ等のビーム補正用光学素子をビーム光路に挿入して、ビーム形状を補正することがおこなわれた。たとえば、特許文献1にはコリメートレンズまたは集光レンズとシリンダーレンズ(シリンドリカルレンズ)を一体に保持した光学装置が開示されている。
【0006】
一方、近年の通信技術の発展により、一定間隔で波長が異なる複数の光信号を1本の光ファイバで伝送するWDM(Wavelength Division Multiplexing)やDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)が使用されている。このような多重方式では、波長がずれて他チャンネルの波長に干渉する通信障害を生じないように、高い波長安定性が必要になる。
【0007】
波長を安定させるために、発光部の発光波長をモニターして発振波長を調整する光学装置が使用されている。また、受光部では異なる波長での干渉を防止するために、波長帯域の狭い波長フィルタによって、特定の波長だけを透過させて受信させることがおこなわれている。
【0008】
また、このような光通信用の光学装置には、送受信を1本の光ファイバでおこなう双方向通信モジュールがある。たとえば、特許文献2に、発光側レンズと光ファイバ側レンズとの間の光路を平行光とした一芯双方向光通信モジュールが開示されている。図9に示すように、発光側レンズ110と光ファイバ側レンズ120との間の光路をほぼ平行光となるようにしている。このように、レンズ間を略平行光の光路としたことによって、光路に挿入された光アイソレータ131や光学フィルタ132へのビーム入射角度が一定であり、発生する収差を低減できるので、結合効率を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−333245号公報
【特許文献2】特開2006−351608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、発光部150が半導体レーザで、そのビーム断面形状が楕円状の場合には、図9の構成で高い結合効率を得ることができず、特許文献1のように半導体レーザのビーム形状を補正するビーム補正用光学素子を追加する必要がある。発光側レンズ110と光ファイバ側レンズ120との間の光路に、ビーム補正用光学素子を挿入すると、光軸調整の必要な光学素子が増加するために、各光学素子の光軸調整が困難になり、かえって結合効率が低下してしまう問題があった。
【0011】
特許文献1ではビーム補正用光学素子を一体に保持することによって、光軸調整が困難になることを回避していたが、このようなビーム補正用光学素子を追加すると、その光学面での反射ロスが増加するうえに、光学装置の最適な光学長が増大してしまう。したがって、コスト増加や光学装置全体の大型化などの問題があり、さらなる改善が検討されていた。
【0012】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、必要な光学素子数や光学長を増大させることなく、半導体レーザのビームを、2枚の光学素子間で略平行光にするとともに、高い結合効率で受光部に集光することが可能な光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するため、半導体レーザのビームを出射する発光部と、前記発光部から出射されたビームが集光して結合する受光部と、前記発光部と前記受光部の間に配置された発光部側光学素子と、前記発光部側光学素子と前記受光部の間に配置された受光部側光学素子を有し、前記ビームが前記発光部側光学素子と前記受光部側光学素子との間では略平行光である光学装置において、前記発光部側光学素子は、前記ビームが入射する側にある第1の光学面と、他方の側にある第2の光学面と、が形成されていて、前記受光部側光学素子は、前記ビームが入射する側にある第3の光学面と、他方の側にある第4の光学面と、が形成されていて、前記第2の光学面が光軸を中心として回転対称かつ凸の非球面であり、前記第3の光学面が光軸を中心として回転対称かつ凸の非球面であり、前記第4の光学面がシリンドリカル面である、ことを特徴とする。
【0014】
より具体的には、第2の光学面は発光部から出射された半導体レーザの発散ビームを平行光と見なせるビームに収束させて、第2の光学面と第3の光学面との間で略平行光のビームを得るものであり、第3の光学面は前記略平行光のビームを受光部に集光するように収束させるものであり、第4の光学面は半導体ビーム形状を真円に近づけるように整形するものである。
【0015】
こうすれば、第2の光学面と第3の光学面との間で略平行光のビームが得られるとともに、第2の光学面と第3の光学面は球面収差が補正でき、さらに第4の光学面でビーム形状を補正することが、2枚レンズの光学系において実現できる。したがって、必要な光学素子数や光学長を増大させることなく、半導体レーザのビームを、2枚の光学素子間で略平行光にするとともに、高い結合効率で受光部に集光することが可能である。
【0016】
さらに、第1の光学面はシリンドリカル面である、ことが好ましい。こうすれば、第1の光学面と第4の光学面によって、収差を大きくすることなくビーム形状が補正できるので、結合効率を向上できる。
【0017】
とくに、第1の光学面が凸のシリンドリカル面であるとともに、第4の光学面が凹のシリンドリカル面であることが好適である。こうすれば、第1の光学面でビーム形状を補正し、第4の光学面で非点収差を抑制できるので、受光部に集光するビーム形状は直径が小さい円状となり、結合効率をさらに向上することができる。また、第1の光学面と第4の光学面との間隔に対応して、これに必要なレンズの曲率半径を大きくすることができる。
【0018】
また、第1の光学面が凹のシリンドリカル面であるとともに、第4の光学面が凸のシリンドリカル面である、こともできる。こうすれば、第1の光学面でビーム形状を補正し、第4の光学面で非点収差を抑制できるので、結合効率を向上することができる。また、第1の光学面と第4の光学面との間隔に対応して、これに必要なレンズの曲率半径を大きくすることができる。
【0019】
さらに、本発明の光学装置は、前記発光部側光学素子と前記受光部側光学素子との間の光路上に配置される第3の光学素子を有する、ことが好適である。
【0020】
このとき、発光部から出射された半導体レーザのビームは発光部側光学素子のコリメート作用によって、発光部側光学素子と受光部側光学素子との間で略平行光になっている。これにより、第3の光学素子は略平行光の光路上に配置されているので、第3の光学素子に入射するビームの入射角度が面内で一定である。第3の光学素子として、ビーム整形機能のみを有する光学素子を除き、特に限定されない。こうすれば、第3の光学素子を配置しても結合効率を低下させることがなく、高い結合効率で集光することが可能な光学装置を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光学装置によれば、必要な光学素子数や光学長を増大させることなく、半導体レーザのビームを、2枚の光学素子間で略平行光にするとともに、高い結合効率で受光部に集光できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態における光学装置の模式断面図である。
【図2】第1の実施形態における発光部側光学素子及び受光部側光学素子を説明するための模式断面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図3】第1の実施形態における発光部側光学素子及び受光部側光学素子の変形例を示す模式断面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図4】第2の実施形態における発光部側光学素子及び受光部側光学素子を説明するための模式断面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図5】第2の実施形態における発光部側光学素子及び受光部側光学素子の変形例を示す模式断面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図6】第3の実施形態における光学装置の模式断面図である。
【図7】第4の実施形態における光学装置の模式断面図である。
【図8】半導体レーザのビーム形状を示す模式図である。
【図9】従来の光学装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。図1は第1の実施形態における光学装置1の模式断面図であり、図2は第1の実施形態における発光部側光学素子10及び受光部側光学素子20を説明するための模式断面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。なお、説明上、光軸80方向をZ軸、これに直交する軸をX軸及びY軸とし、水平面をX−Z面、垂直面をY−Z面と定義する。
【0024】
図1に示すように、光学装置1は発光部50と受光部60との間に、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20とが光軸80に一致するように配置される。発光部50には半導体レーザ55を用い、半導体レーザ55は半導体レーザ固定台56に固定されている。発光部側光学素子10は角型の外形を有し、基板90に面実装すれば位置調整が容易にできる。半導体レーザ固定台56及び発光部側光学素子10は基板90で光軸80と焦点の位置合わせがおこなわれてから固定される。これによって、半導体レーザ55から出射されたビーム51は平行光と見なせる略平行光のビーム状態に調整されている。
【0025】
なお、「略平行光」とは、光軸80に対する角度が0度〜2度程度のほぼ平行光のビーム状態を意味している。これには、弱い収束ビーム及び弱い発散ビームのビーム状態が含まれる。光軸80に対するこの程度の角度であれば、光学設計上は平行光として見なせる。
【0026】
このビーム51は受光部側光学素子20で集光されて受光部60に結合する。本明細書において、受光部60は光学装置1内の空間位置を定義したものである。図1に示すように、受光部60に一致するようにファイバ取り付け部75にガイドされて光ファイバ70を取り付けることができ、光ファイバ70を伝送媒体とした光通信が可能になっている。ただし、光学装置1は光ファイバ70を含まない。
【0027】
発光部側光学素子10は、ビーム51が入射する側にある第1の光学面10aと、他方の側にある第2の光学面10bとを有する。
【0028】
受光部側光学素子20は、ビーム51が入射する側にある第3の光学面20aと、他方の側にある第4の光学面20bとを有する。
【0029】
第2の光学面10bと第3の光学面20aとは、光軸80を中心として回転対称かつ凸の非球面であり、第2の光学面10bのコリメートレンズ作用及び第3の光学面20aの集光レンズ作用における球面収差が補正されており、両光学面の中央付近を通過する光と外周付近を通過する光との焦点位置が一致する。これにより、受光部60での結合効率が向上している。
【0030】
これだけでは、半導体レーザ55のビーム51は発散角が一様ではない発散光なので、受光部60の焦点面におけるビーム形状はダイオード構造の薄い活性層と垂直の方向を長軸とする楕円状になり、光ファイバ70のコアに対して受光部60での結合効率が低下する。
【0031】
本実施形態では、受光部側光学素子20の第4の光学面20bを、シリンドリカル面にしているので、ビーム51の断面形状を受光部60で円状になるように補正することができる。したがって、必要な光学素子数や光学長を増大させることなく、半導体レーザ55のビーム51を、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との2枚の光学素子間の光路で略平行光にするとともに、高い結合効率で受光部60に集光することが可能である。
【0032】
これについて、図2を参照して説明する。図2に示すように、発光部側光学素子10の第2の光学面10bはビーム51が平行光と見なせるビーム状態に調整するコリメートレンズ作用を有する。ビーム51は発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路で略平行光であり、半導体レーザ55のビーム形状は補正されていない。ビーム51は受光部側光学素子20の第3の光学面20aで受光部60に集光する屈折作用を受ける。これらの第1の光学面10b及び第3の光学面20aは非球面であり、球面収差を補正している。
【0033】
受光部側光学素子20の第4の光学面20bは凹のシリンドリカル面であり、シリンドリカル面の母線に垂直な方向に凹レンズ作用を有する。このため、Y−Z面では第3の光学面20aでの屈折作用を弱めて焦点距離を長くするように機能する。したがって、受光部側光学素子20はX−Z面とY−Z面で異なる焦点位置に集光し、受光部60の位置では円状のビーム形状となるように位置調整することが可能である。
【0034】
たとえば、整形していないときのビーム形状が楕円で長径(Y方向)が短径(X方向)の2倍、すなわちビーム発散角倍率が2倍の半導体レーザ55を用いた光学装置1は、発光部側光学素子10が焦点距離0.4167mm、NA0.4、受光部側光学素子20が焦点距離0.5mm、NA0.4であれば、第4の光学面20bが平面の場合の結合効率は87%であった。このとき、第4の光学面20bを凹のシリンドリカル面としてY−Z面の焦点距離を0.6mmに変化させて、受光部60のZ方向位置を+0.027mmずらした場合の結合効率は91.28%が得られた。すなわち、光学素子数を増加させることなく、結合効率を約4%向上させることができた。
【0035】
図3は、第1の実施形態における発光部側光学素子10及び受光部側光学素子20の変形例を示す模式断面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。発光部側光学素子10と受光部側光学素子20の第3の光学面20aとは第1の実施形態と同じであり、第4の光学面20bが凸のシリンドリカル面であることが異なっている。これにより、シリンドリカル面の母線に垂直な方向に凸レンズ作用を有する。このため、X−Z面では第3の光学面20aでの屈折作用を強めて焦点距離を短くするように機能する。なお、第1の実施形態と第1の実施形態の変形例では、焦点位置が同じではないので、配置を調整するか、または第3の光学面20aの設計を変更して製作する。
【0036】
こうすれば、第1の実施形態と同様に、受光部側光学素子20はX−Z面とY−Z面で異なる焦点位置に集光し、受光部60の位置では円状のビーム形状となるように位置調整することが可能である。したがって、必要な光学素子数や光学長を増大させることなく、半導体レーザ55のビーム51を、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路で略平行光にするとともに、高い結合効率で受光部60に集光することが可能である。
【0037】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態における発光部側光学素子10及び受光部側光学素子20を説明するための模式断面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【0038】
図4に示すように、発光部側光学素子10の第2の光学面10bはビーム51が平行光と見なせるビーム状態に調整するコリメートレンズ作用を有する。ビーム51は発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路で略平行光である。ビーム51は受光部側光学素子20の第3の光学面20aで受光部60に集光する屈折作用を受ける。第2の光学面10b及び第3の光学面20aは非球面であり、球面収差を補正している。
【0039】
発光部側光学素子10の第1の光学面10aは凸のシリンドリカル面であり、受光部側光学素子20の第4の光学面20bは凹のシリンドリカル面である。第1の光学面10aはY−Z面でビーム51の広がりを補正し、第2の光学面10bが発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路で略平行光に調整するので、略平行光であるとともにビーム形状が円状のビーム51を得ることができる。いっぽう、第1の光学面10aの光学作用によって焦点位置がずれる非点収差を生じるが、第4の光学面20bは非点収差が抑制されるようにY−Z面の焦点位置を補正している。すなわち、第1の光学面10aと第4の光学面20bのシリンドリカル曲率半径を変え、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間隔に対応して適正な曲率半径の比率にする。
【0040】
たとえば、ビーム形状が楕円で長径(Y方向)が短径(X方向)の2倍である半導体レーザ55を用いた光学装置1は、発光部側光学素子10が焦点距離0.4167mm、NA0.4、受光部側光学素子20が焦点距離0.5mm、NA0.4であれば、第4の光学面20bが平面の場合の結合効率は87%であった。このとき、第1の光学面10aを凸のシリンドリカル面としてY−Z面の焦点距離を0.3585mmに変化させ、第4の光学面20bを凹のシリンドリカル面としてY−Z面の焦点距離を0.65mmに変化させた場合に、非点収差が抑制され、結合効率は97.6%が得られた。すなわち、光学素子数を増加させることなく、結合効率を約10%向上させることができた。
【0041】
こうすれば、非点収差を補正していない場合に比べ、結合効率をさらに向上することができる。また、第1の光学面10aと第4の光学面20bとの間隔に対応して、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間にビーム整形レンズを配置する場合に比べ、ビーム整形に必要なレンズの曲率半径を大きくすることができ、また、光学長を増大させることなく光学装置1内に配置できる。
【0042】
したがって、必要な光学素子数や光学長を増大させることなく、半導体レーザ55のビーム51を、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路で略平行光にするとともに、高い結合効率で受光部60に集光することが可能である。
【0043】
図5は、第2の実施形態における発光部側光学素子10及び受光部側光学素子20の変形例を示す模式断面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。発光部側光学素子10の第2の光学面10bと受光部側光学素子20の第3の光学面20aとは第2の実施形態と同じであり、発光部側光学素子10の第1の光学面10aは凹のシリンドリカル面であること、及び、受光部側光学素子20の第4の光学面20bは凸のシリンドリカル面であること、が異なっている。
【0044】
第1の光学面10aはX−Z面でビーム51の広がりを補正し、第2の光学面10bが発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路で略平行光に調整するので、略平行光であるとともにビーム形状が円状のビーム51を得ることができる。いっぽう、第1の光学面10aの光学作用によって焦点位置がずれる非点収差を生じるが、第4の光学面20bは非点収差が抑制されるようにX−Z面の焦点位置を補正している。したがって、非点収差を補正していない場合に比べ、結合効率をさらに向上することができる。また、ビーム整形に必要なレンズの曲率半径を大きくすることができ、光学長を増大させることなく光学装置1内に配置できる。
【0045】
したがって、必要な光学素子数や光学長を増大させることなく、半導体レーザ55のビーム51を、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路で略平行光にするとともに、高い結合効率で受光部60に集光することが可能である。
【0046】
<第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態における光学装置1の模式断面図である。図6に示すように、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路に、第3の光学素子30としてアイソレータ31及びビームスプリッタ32を配置している。このように、第3の光学素子30については単体でなく複数個であってもよく、ビーム整形機能のみを有する光学素子を除き、光学機能の種類及び配置個数は限定されない。
【0047】
本実施形態では、発光部50の半導体レーザ55の発光波長と異なる波長の受信光が光ファイバ70を伝送媒体として光学装置1に入射し、ビームスプリッタ32によって反射して受信部側光学素子41及び波長選択フィルタ42を介してフォトダイオード40に到達する。すなわち、受光部側光学素子20と受信部側光学素子41とによって受光部60とフォトダイオード40とが結合している。フォトダイオード40は受光面積が大きいので、光ファイバ70に比べてビーム径及びビーム形状への要求が緩く、第4の光学面20bがシリンドリカル面であることの影響は受けない。
【0048】
いっぽう、アイソレータ31は不要な反射光が半導体レーザ55に戻ってくることを防止する。また、ビームスプリッタ32は半導体レーザ55のビームに影響せず、そのまま透過させる。したがって、半導体レーザ55のビーム51はアイソレータ31及びビームスプリッタ32を透過し、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20とよって受光部60に結合されている。これにより、光ファイバ70を伝送媒体とした送信が可能である。
【0049】
こうして、本実施形態の光学装置1は一芯双方向光通信モジュールとして、光通信における受信と送信をおこなうことができる。
【0050】
本実施形態において、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路でビーム51は略平行光である。こうすれば、光軸80に対する角度が0度〜2度程度のほぼ平行光のビーム状態(略平行光)であり、アイソレータ31及びビームスプリッタ32に入射するビーム51の入射角度が面内でほぼ一定であるので、アイソレータ31及びビームスプリッタ32は設計性能が発揮できるとともに、アイソレータ31及びビームスプリッタ32を配置することによる光学的な悪影響が低減される。したがって、第3の光学素子30を配置しても結合効率を低下させることがなく、高い結合効率で集光することが可能な光学装置1を実現できる。
【0051】
<第4の実施形態>
図7は、第4の実施形態における光学装置1の模式断面図である。図7に示すように、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路に、第3の光学素子30としてビームスプリッタ32及びアイソレータ31を配置している。本実施形態の光学装置1は、半導体レーザ55が波長を可変できるチューナブルレーザである場合に好適である。なお、図7では、チューナブルレーザを構成するための半導体レーザ55の詳細は省略している。
【0052】
半導体レーザ55のビーム51は発光部側光学素子10によって略平行光に調整されて、ビームスプリッタ32に入射する。ビームスプリッタ32で反射された分岐光は受信部側光学素子41を介してフォトダイオード40に到達し、半導体レーザ55のビーム51をモニターする。ビームスプリッタ32を透過した透過光はアイソレータ31及び受光部側光学素子20を介して受光部60に結合され、光ファイバ70を伝送媒体とした送信が可能である。
【0053】
本実施形態において、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路でビーム51は略平行光である。こうすれば、光軸80に対する角度が0度〜2度程度のほぼ平行光のビーム状態(略平行光)であり、アイソレータ31及びビームスプリッタ32に入射するビーム51の入射角度が面内でほぼ一定であるので、アイソレータ31及びビームスプリッタ32は設計性能が発揮できるとともに、アイソレータ31及びビームスプリッタ32を配置することによる光学的な悪影響が低減できる。したがって、第3の光学素子30を配置しても結合効率を低下させることがなく、受光部60に高い結合効率で集光することが可能な光学装置1を実現できる。
【0054】
第3の実施形態及び第4の実施形態と同様の結合効率を得るために、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20との間の光路に第3の光学素子30とビーム補正用光学素子とを配置しようとすると、ビーム補正用光学素子のサイズと必要な光学長の増大によって光学装置1全体をより大きくしなければならない。
【0055】
したがって、第3の実施形態及び第4の実施形態において、光学装置1を小型化したままで装置性能を向上させることが可能である。また、第3の光学素子30が他の光学機能を有する光学素子であってもよい。
【0056】
なお、第1の実施形態〜第4の実施形態において、発光部側光学素子10と受光部側光学素子20とは、ガラスレンズ用の硝材をプレス成形して製作した。成形レンズは公知の製造方法で製作できるが、第1の光学面10aと第2の光学面10b、第3の光学面20aと第4の光学面20bは、それぞれの偏心に充分注意して形成した。ガラスレンズでなく、プラスチックレンズで成形してもよいし、他の製造方法で製作してもよい。
【0057】
なお、光学装置1は光ファイバ70を含まないが、光学装置1に光ファイバ70が固定されていても何ら差し支えない。
【0058】
以上の詳細において、半導体レーザ55の発光点が点でないために生じる「非点隔差」は無視した説明にしていたが、実用上は非点収差の補正において非点隔差を考慮していれば、非点隔差を含めた収差の補正が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1、100 光学装置
10発光部側光学素子
10a 第1の光学面
10b 第2の光学面
20 受光部側光学素子
20a 第3の光学面
20b 第4の光学面
30 第3の光学素子
31、131 アイソレータ
32 ビームスプリッタ
40、140 フォトダイオード
41、141 受信部側光学素子
42、142 波長選択フィルタ
50、150 発光部
51 ビーム
55、155 半導体レーザ
56 半導体レーザ固定台
60 受光部
70、170 光ファイバ
75 ファイバ取り付け部
80 光軸
90 基板
95 ハウジング
110 発光側レンズ(発光部側光学素子)
120 光ファイバ側レンズ(受光部側光学素子)
132 光学フィルタ(ビームスプリッタ)
152 ビーム断面形状


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザのビームを出射する発光部と、
前記発光部から出射されたビームが集光して結合する受光部と、
前記発光部と前記受光部の間に配置された発光部側光学素子と、
前記発光部側光学素子と前記受光部の間に配置された受光部側光学素子を有し、
前記ビームが前記発光部側光学素子と前記受光部側光学素子との間では略平行光である光学装置において、
前記発光部側光学素子は、前記ビームが入射する側にある第1の光学面と、他方の側にある第2の光学面と、が形成されていて、
前記受光部側光学素子は、前記ビームが入射する側にある第3の光学面と、他方の側にある第4の光学面と、が形成されていて、
前記第2の光学面が光軸を中心として回転対称かつ凸の非球面であり、
前記第3の光学面が光軸を中心として回転対称かつ凸の非球面であり、
前記第4の光学面がシリンドリカル面である、
ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記第1の光学面はシリンドリカル面であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記第1の光学面が凸のシリンドリカル面であるとともに、前記第4の光学面が凹のシリンドリカル面であることを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第1の光学面が凹のシリンドリカル面であるとともに、前記第4の光学面が凸のシリンドリカル面であることを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項5】
前記発光部側光学素子と前記受光部側光学素子との間の光路上に配置される第3の光学素子を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光学装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−133191(P2012−133191A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285996(P2010−285996)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】