光学部品および表示装置
【課題】同じ波長範囲の励起光で励起する複数種の蛍光体を用いつつ、複数の発光状態を可能とする。
【解決手段】光学部品10は、3つの光変換層11〜13を有する。各光変換層11〜13には、近紫外領域にピーク波長を有する励起光を全て変換する蛍光材料が設けられている。蛍光材料は、励起光により励起される赤色蛍光体、緑色蛍光体および青色蛍光体の1以上を含んでいる。隣り合う2つの光変換層同士の関係において、蛍光材料が設けられた領域は少なくとも一部が重なり、かつ、重なっている領域の少なくとも一部は、励起光による発光スペクトルが互いに異なるように蛍光体を含んでいる。
【解決手段】光学部品10は、3つの光変換層11〜13を有する。各光変換層11〜13には、近紫外領域にピーク波長を有する励起光を全て変換する蛍光材料が設けられている。蛍光材料は、励起光により励起される赤色蛍光体、緑色蛍光体および青色蛍光体の1以上を含んでいる。隣り合う2つの光変換層同士の関係において、蛍光材料が設けられた領域は少なくとも一部が重なり、かつ、重なっている領域の少なくとも一部は、励起光による発光スペクトルが互いに異なるように蛍光体を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定波長の励起光によって励起される蛍光体を含有する複数の光変換層を有する光学部品、およびその光学部品を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光体の発光を利用した表示装置が、様々な機器における視認性を向上させたり視覚的効果を向上させたりするためなどに広く用いられている。
【0003】
このような表示装置の一例として、特許文献1(特開2003−76305号)には、紫外線に反応して発光する蛍光体を透明な樹脂板からなる文字盤の片面の少なくとも一部に設けるとともに、文字盤の裏面側に、紫外線発光素子を設けた腕時計が開示されている。蛍光体は、紫外線が照射されない状態では透明である。よって、紫外線が殆ど当たらない屋内などでは、文字盤は蛍光体の影響を受けずにそのまま視認することができる。一方、紫外線発光素子を点灯させると、紫外線が文字盤を通して蛍光体に照射され、蛍光体が発光する。
【0004】
また、特許文献2(特開2001−67030)には、第1および第2の波長範囲の紫外線によってそれぞれ発光する第1および第2の蛍光体を含む発光板を、第1および/または第2の紫外線放射ランプで照射するように構成された発光装置が開示されている。第1の紫外線放射ランプは第1の波長範囲の紫外線を放射し、第2の紫外線放射ランプは第2の波長範囲の紫外線を放射する。発光板には、それぞれ第1の蛍光体および第2の蛍光体を用いて印刷等によって画像が形成されている。このような構成によって、第1の紫外線放射ランプを点灯させると、第1の蛍光体が発光して、第1の蛍光体で形成された画像が表示され、第2の紫外線放射ランプを点灯させると、第2の蛍光体が発光して、第2の蛍光体で形成された画像が表示される。
【特許文献1】特開2003−76305号公報
【特許文献2】特開2001−67030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された表示装置では、文字盤は、蛍光体が発光した状態と発光しない状態との2つの状態をとるのみであり、変化に乏しい。一方、特許文献2に開示された表示装置は、第1および第2の紫外線放射ランプを単独でまたは同時に点灯させることで、蛍光体の発光状態を、第1の蛍光体のみが発光した状態、第2の蛍光体のみが発光した状態、および第1および第2の蛍光体が発光した状態に変化させることができる。しかし、第1の蛍光体のみ、または第2の蛍光体のみを発光させるためには、第1の紫外線放射ランプの波長範囲と第2の紫外線放射ランプの波長範囲とが十分に離れている必要がある。そのため特許文献2に開示された表示装置では、第1の紫外線放射ランプとしてUV−A波長域の紫外線を照射するランプを用いるとともに、第2の紫外線放射ランプとしてUV−C波長域の紫外線を照射するランプを用いている。これらの紫外線の中でも特に、波長が極めて短いUV−C波長域の紫外線は生体に悪影響を及ぼし、また、蛍光体を劣化させやすいため、使用するのは好ましくない。
【0006】
本発明は、同じ波長範囲の励起光で励起する複数種の蛍光体を用いつつ、発光状態が複数に変化する光学部品およびそれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の光学部材は、360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を実質的に全て変換する蛍光材料が少なくとも一部に設けられ、互いに重ねて配置された複数の光変換層を有している。蛍光材料は、
(A)励起光により励起され、420nm以上480nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第1の蛍光体、
(B)励起光により励起され、480nmよりも大きく550nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第2の蛍光体、および
(C)励起光により励起され、550nmよりも大きく700nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第3の蛍光体、
の1以上を含んでいる。
【0008】
そして、本発明の第1の態様では、互いに隣り合う2つの光変換層同士の関係で、蛍光材料が設けられた領域は少なくとも一部が重なり、かつ、重なっている領域の少なくとも一部は、励起光による発光スペクトルが互いに異なるように前記蛍光体を含んでいる。本発明の第2の態様では、光変換層は、蛍光材料が設けられていない部分に、励起光を吸収する紫外線吸収剤を含有している。
【0009】
本発明の光学部品において、第1の蛍光体は、下記一般式(1)で表される構造からなる青色有機蛍光体を含むことが好ましい。
【0010】
【化1】
ただし、一般式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、および置換基を有していてもよいアルキル基のいずれかを表す。
【0011】
また、第2の蛍光体は、下記一般式(2)
【0012】
【化2】
で表される構造からなる緑色有機蛍光体を含むことが好ましい。
【0013】
さらに、第3の蛍光体は、β−ジケトネート、芳香族カルボン酸、またはブレンステッド酸のアニオンを配位子とする希土類イオン錯体のうち少なくとも1種からなる赤色有機蛍光体を含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明の光学部品において、光変換層は実質的に無色透明であることが好ましい。
【0015】
蛍光材料は、上記(A)〜(C)のうち1以上の蛍光体と、その蛍光体を保持するバインダ樹脂とを有していてもよい。
【0016】
さらに、本発明の光学部品は、液晶セルを有していてもよい。
【0017】
本発明の表示装置は、上記本発明の光学部品と、
光学部品が有する複数の光変換層のうち異なる光変換層に、360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を照射するための複数の光照射手段と、
を有する。
【0018】
本発明の表示装置において、複数の光照射手段のうち2つは、光学部品の互いに反対側から励起光を照射するように配置されていてもよい。また、複数の光照射手段のうち少なくとも1つは、光変換層の間に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、励起光を全て特定の波長の光に変換する蛍光材料を含む複数の光変換層を重ね合わせた構成を有することにより、励起光の波長範囲を変えることなく、励起光の照射方向を変えるだけで光学部品の発光状態を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による表示装置を、構成部分ごとに分離して示す模式的斜視図である。
【0022】
図1に示す表示装置1は、励起光の照射によって発光する光学部品10と、光学部品10に励起光を照射するために光学部品10を挟んで互いに反対側に配された2つの光照射ユニット20A、20Bとを有する。光学部品10は、3つの光変換層11、13、12がこの順番に重ね合わせられた構成を有している。これら光変換層11〜13は、互いに接着されて一体化されることによって光学部品10が全体としてシート状に構成されるようにされてもよいし、フレームなどの支持部材(不図示)に一体的に支持されていてもよい。
【0023】
光変換層11〜13は、実質的に無色透明であり、実質的に無色透明なシート状の基材と、基材に設けられた蛍光材料とを含んでいる。基材および蛍光材料は、実質的に無色透明であり、従って、光変換層11〜13も全体として無色透明である。蛍光材料は、基材の表面に塗布してもよいし、基材中に含有させてもよい。基材自身は、光照射ユニット20A、20Bから照射される励起光に対しても、入射した励起光を透過する程度に透明である。このような基材としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)などを好ましく用いることができる。なお、蛍光材料が設けられていない部分を基材が有している場合は、基材に紫外線吸収剤が添加されていてもよい。
【0024】
なお、本発明において「無色透明」とは、着色が認められないかほとんど認められず、透き通っている状態を意味し、具体的には、可視光領域(420nm以上700nm以下の波長範囲)の光の透過率が80%以上、好ましくは90%以上であることを意味する。
【0025】
蛍光材料は、光照射ユニット20A、20Bから照射される励起光を実質的に全て変換するものであり、以下の(A)〜(C)の蛍光体を1以上含んでいる。
(A)励起光により励起され、420nm以上480nm以下の波長範囲にピーク波長を有する青色の光に変換して発光する蛍光体(以下、青色蛍光体ともいう)。
(B)励起光により励起され、480nmを超え、550nm以下の波長範囲にピーク波長を有する緑色の光に変換して発光する蛍光体(以下、緑色蛍光体ともいう)。
(C)励起光により励起され、550nmを超え、700nm以下の波長範囲にピーク波長を有する赤色の光に変換して発光する蛍光体(以下、赤色蛍光体ともいう)。
【0026】
蛍光材料は、これら蛍光体をバインダ樹脂中に保持した構成を有していることが好ましい。バインダ樹脂としては、透明な樹脂であれば特に制限はなく、ポリメタクリ酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリジメチルシロキサン等を用いることができる。蛍光材料を光変換層の基材中に含有させる場合、基材がバインダ樹脂を兼ねていてもよい。
【0027】
バインダ樹脂に対する蛍光体の含有濃度は、光変換層の透明性が損なわれないように、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは30重量%以下である。一方、蛍光体の含有量が少なすぎると十分な発光量が得られなくなるおそれがあるので、蛍光体の含有濃度は、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.2重量%以上である。
【0028】
バインダ樹脂中での蛍光体の存在状態としては、公知の構成を任意に適用することができる。通常は、バインダ樹脂中に蛍光体を相溶させた相溶状態や、蛍光体を固体状態(結晶)でバインダ樹脂に分散させた分散状態などがある。ただし、分散状態では、蛍光体の結晶とバインダ樹脂との屈折率差により光変換層が白化し、透明性が損なわれるおそれがあるので、相溶状態であることが好ましい。
【0029】
上記(A)〜(C)の蛍光体を含む蛍光材料は各光変換層11〜13の全面に設けられていてもよいし、一部にのみ設けられていてもよい。
【0030】
光変換層11〜13の一部に蛍光材料が設けられる場合、個々の光変換層11〜13での、蛍光材料が設けられる領域の大きさ、形状、および数は任意である。ただし、互いに隣り合う2つの光変換層同士の関係において、蛍光材料が設けられた領域は少なくとも一部が重なっている。
【0031】
さらに、各光変換層11〜13に設けられた蛍光材料は、上記(A)〜(C)の蛍光体を1以上含んでいれば、どのような状態で含んでいてもよい。例えば、(A)〜(C)の蛍光体は、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。また、1つの光変換層11〜13に対して蛍光材料が複数の領域に設けられた場合も、各領域では、(A)〜(C)のいずれかの蛍光体を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。ただし、互いに隣り合う2つの光変換層同士の関係において、蛍光材料が設けられた領域が重なっている部分の少なくとも一部は、蛍光体が励起光により発光したとき互いに異なる発光スペクトルを有するように蛍光体を含有しており、これによって、光照射ユニット20A、20Bから別々に光を照射したとき、光学部品10は全体として互いに異なる色および/またはパターンで発光できるようになる。そのために、好ましくは、蛍光材料が設けられた領域が重なっている部分の少なくとも一部において、一方の光変換層は他方の光変換層に含まれていない蛍光体を含んでいる。
【0032】
例えば、本形態においては、一方の光照射ユニット20A側の光変換層11には、赤色に発光する赤色蛍光体を含む蛍光材料が、中央部が矩形状に空いた円形のパターン11aで設けられ、反対側の光照射ユニット20B側の光変換層13には、青色に発光する青色蛍光体を含む蛍光材料が矢印形のパターン11bで設けられている。さらに、中央の光変換層13には、赤色、緑色および青色の3色の蛍光体を混合した蛍光材料が、光変換層13全面にわたって設けられている。
【0033】
2つの光照射ユニット20A、20Bは、光源21A、21Bおよび導光板22A、22Bを有する。光源21A、21Bは、好ましくは線状光源であり、近紫外領域の光を導光板22A、22Bに向けて出射する。光源21A、21Bから出射する光のピーク波長は、360nm以上、好ましくは380nm以上、さらに好ましくは390nm以上であり、かつ、420nm以下、好ましくは410nm以下、さらに好ましくは405nm以下である。
【0034】
このような近紫外光の波長範囲にピーク波長を有する光を出射する光源としては、半導体発光素子を用いることができる。半導体発光素子としては、380nm〜420nmの波長範囲にピーク波長を有する光を発するものであれば特に制限はなく、任意のものを用いることができる。半導体発光素子から発光される380nm〜420nmの波長範囲にピーク波長を有する光が、蛍光材料中の蛍光体によって吸収され、蛍光体はより長波長の可視光を発光する。半導体発光素子のピーク波長が過度に短波長側にあると、蛍光体およびバインダ樹脂等の有機化合物が光劣化しやすい傾向にあるので好ましくない。また、ピーク波長が過度に長波長側にある場合は、光変換効率の低下に伴う発光輝度の低下の理由により好ましくない。
【0035】
半導体発光素子としては、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等を挙げることができる。その中でも、GaN系化合物半導体を使用した、GaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比較して、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。
【0036】
例えば、20mAの電流負荷に対し、通常、GaN系のLEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。このGaN系のLEDやLDにおいては、AlXGaYN発光層、GaN発光層、またはInXGaYN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInXGaYN発光層を有するものが、発光強度が非常に強いので、特に好ましい。さらに、GaN系のLDにおいては、InXGaYN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが、発光強度が非常に強いので特に好ましい。なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0037】
GaN系のLEDは、これら発光層、p層、n層、電極、および基板を基本構成要素としている。中でも、発光層をn型とp型のAlXGaYN層、GaN層、またはInXGaYN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高いため、好ましい。さらに、ヘテロ構造を量子井戸構造にしたものは、発光効率がより高く、より好ましい。
【0038】
例えば、シリコンカーバイドやサファイア、窒化ガリウム等の基板にMOCVD法などで結晶成長されたInGaN系、GaAlN系、InGaAlN系、ZnSeS系などの半導体発光素子を好適に用いることができる。半導体発光素子には、LED(発光ダイオード)やLD(レーザーダイオード)などがあり、それらの中でもLEDを好ましく用いることができる。
【0039】
LEDを光源21A、21Bに用いた場合、複数のLEDを直線状に並べた構成や、ロッド状のライトガイドの一端側にLEDを配した構成などを採用することにより、光源21A、21Bを線状光源とすることができる。
【0040】
導光板22A、22Bは、光源21A、21Bからの光を面状に変換して光学部品10の全面に入射させるものであり、光学部品10を挟んで配置されている。すなわち、一方の導光板22Aは光変換層11と対向して配置され、他方の導光板21Bは光変換層12と対向して配置される。また、各導光板22A、22Bは、少なくとも可視光に対して透明である。このような導光板22A、22Bは、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリカーボネートなどで形成することができる。
【0041】
各導光板22A、22Bは、光源21A、21Bからの光が入射される入射面と、入射面から入射した光を光学部品10に向けて全反射させる傾斜面と、全反射した光が出射される出射面と、を有する。導光板22A、22Bの出射面は、それぞれ光変換層11、12と対面して配置されている。また、傾斜面は、出射面を通して導光板22A、22Bの外部から入射してきた光、および傾斜面を通して導光板22A、22Bの外部から入射してきた光を、反射させるのではなく透過させるように形成されている。ここでは、全体が一様に傾斜している傾斜面を有する導光板22A、22Bを示したが、傾斜面の代わりに、傾斜面と同様に作用するように構成されたプリズムアレイが設けられていてもよい。
【0042】
以上のように構成された本形態の表示装置1においては、一方の光源21Aを駆動することによって光照射ユニット20Aから光学部品10に励起光を照射し、または、他方の光源21Bを駆動することによって光照射20Bから光学部品10に励起光を照射する。励起光は、360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有している。
【0043】
一方の光照射ユニット20Aから光学部品10に励起光を照射した場合、励起光は、まず、光照射ユニット20Aから見て最も手前の光変換層11に入射する。光変換層11には赤色蛍光体を含む蛍光材料でパターン11aが形成されており、赤色蛍光体は、励起光によって励起され、パターン11aの部分に入射した励起光を全て赤色領域の光に変換して発光する。これによって、パターン11aが形成された部分が赤色に発光する。そして、パターン11aの部分に入射した励起光は、ここで全て吸収され、光変換層11を透過しない。一方、光変換層11のパターン11a以外の部分に入射した励起光は、そのまま光変換層11を透過する。
【0044】
光照射ユニット20Aから見て次の光変換層13へは、光変換層11のパターン11aの部分で生じた赤色領域の光と、光変換層11のパターン11a以外の部分を透過した励起光とが入射する。
【0045】
光変換層13には、上述したように、青色、緑色および赤色の3色の蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている。よって、光変換層13は、光照射ユニット20Aから光変換層11を透過した励起光が照射された部分で、各色の蛍光体が励起され、それぞれ入射した光を青色領域の光、緑色領域の光および赤色領域の光に変換して発光する。その結果、観察者からは白色の発光として確認される。そして、光変換層13に入射した励起光は、ここで全て吸収され、光変換層13を透過しない。
【0046】
一方、光変換層11のパターン11aの部分で生じた赤色領域の光は、光変換層13に入射するが、光変換層13に設けられた各色の蛍光体は赤色領域の光によっては励起されない。したがって、光変換層11のパターン11aに対向する光変換層13の部分では、光変換層13は無色透明のままであり、光変換層11から入射した赤色領域の光をそのまま透過する。
【0047】
さらに、光変換層13の各色蛍光体により生じた光、および光変換層13を透過した、光変換層11からの赤色領域の光は、光照射ユニット20Aからみて光変換層13の次に位置している光変換層12に入射する。しかし、光照射ユニット20Aから光学部品10に入射した励起光は、2つの光変換層11、13で全て吸収され、青色領域の光、緑色領域の光および赤色領域の光に変換される。そのため、光照射ユニット20Aからの励起光は、光変換層12には到達せず、光変換層12は透明のままである。
【0048】
次に、もう一方の光照射ユニット20Bから光学部品10に励起光を照射した場合を考える。光照射ユニット20Bから光学部品10に照射された励起光は、まず、光照射ユニット20Bから見て最も手前の光変換層12に入射する。
【0049】
光変換層12には青色蛍光体を含む蛍光材料でパターン12aが形成されているので、この光変換層12に励起光が入射すると、青色蛍光体は励起光によって励起され、パターン12aの部分に入射した励起光を全て青色領域の光に変換して発光する。これによって、パターン12aが形成された部分が青色に発光する。パターン12aの部分に入射した励起光は、ここで全て吸収され、光変換層12を透過しない。一方、光変換層12のパターン12a以外の部分に入射した励起光は、そのまま光変換層12を透過する。
【0050】
その結果、光照射ユニット20Bから見て次の光変換層13へは、光変換層12のパターン12aの部分で生じた青色領域の光と、光変換層12のパターン12a以外の部分を透過した励起光とが入射する。光変換層13では、前述したのと同様、光変換層12を透過した励起光が入射した部分のみで各色の蛍光体が発光する。このようにして、光照射ユニット20Bから光学部品10に入射した励起光は、2つの光変換層12、13で全て吸収され、青色領域の光、緑色領域の光および赤色領域の光に変換される。そのため、光照射ユニット20Bからの励起光は、光変換層11には到達せず、光変換層11は透明のままである。
【0051】
以上説明したように、光学部品10にその光変換層11側から励起光を入射させた場合は、光学部品10は、光変換層11のパターン11aの部分が赤色に発光するとともに、パターン11aに対応する部分以外の光変換層13の部分が白色に発光する。それにより、図2に示すように、表示装置1には、白地に赤色のマーク2が表示される。その逆側、すなわち光変換層12側から励起光を入射させた場合は、光学部品10は、光変換層12のパターン12aの部分が青色に発光するとともに、パターン12aに対応する部分以外の光変換層13の部分が白色に発光する。それにより、図3に示すように、表示装置1には、白地に青色のマーク3が表示される。
【0052】
これらの表示は、観察者が見る方向(すなわち、一方の光照射ユニット20A側から見るか、他方の光照射ユニット20B側から見るか)には依存せず、表示装置1の表裏どちら側から励起光を照射するかに依存する。
【0053】
このように、本形態の表示装置1によれば、複数の光変換層11〜13を重ね合わせた構成を有する光学部品10を用い、その光学部品10への励起光の照射方向を一方の面側からとその反対面側とで切り替えるようにすることで、同じ波長範囲の励起光によって発光する蛍光体を用いつつも、励起光の照射方向に応じて表示の状態を変化させることができる。
【0054】
図1に示した光学部品10では、両側の2つの光変換層11、12の間に、励起光によって全面が白色に発光する光変換層13を配した例を示したが、図4に示すようにそれぞれ蛍光体を含むパターン11a、12aが設けられた2つの光変換層11、12のみで光学部品30を構成することもできる。各光変換層11、12は、図1に示したものと同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0055】
この場合は、矢印A側(光変換層11側)から光学部品30に励起光を照射すると、図5に示すように、光変換層12のパターン12aの上に光変換層11のパターン11aが表示される。2つのパターン11a、12aが重なり合っている部分では、励起光の照射方向について手前側のパターン11aの部分のみが発光し、奥側のパターン12aの部分は発光しない。
【0056】
この逆に、矢印B側(光変換層12側)から光学部品30に励起光を照射すると、図6に示すように、光変換層11のパターン11aの上に光変換層12のパターン12aが表示される。2つのパターン11a、12aが重なり合っている部分では、励起光の照射方向について手前側のパターン12aの部分のみが発光し、奥側のパターン11aの部分は発光しない。
【0057】
なお、図4に示す例において、2つのパターン11a、12aを、同じ色の蛍光体を含む蛍光材料で形成し、光変換層11、12の残りの部分に、赤色、緑色および青色の3色の蛍光体を混合した蛍光材料を設けると、光学部品30への励起光の照射方向に応じて、パターン11a、12aに対応したマークが白地の上に表示される。この場合、表示されるマークはともに同じ色であるが、2つの光変換層11、12の蛍光材料が設けられた領域が重なっている部分の一部(ここでは、両パターン11a、12aが互いに重なっていない部分)では、各光変換層11、12上の蛍光材料は、励起光による発光スペクトルが異なるように蛍光体を含んでいる。
【0058】
あるいは、図4に示す例において、光変換層11、12の基材に紫外線吸収剤を添加するなどして各光変換層11、12に紫外線吸収機能を持たせるとともに、各光変換層11、12の励起光が照射される側の面である外側の面(貼り合わせた面と反対側の面)に、蛍光材料によってパターン11a、12aを設けることもできる。この場合は、パターン11a、12a以外の部分に入射した励起光は基材で吸収され、次の光変換層へは入射しない。このことにより、パターン11a、12a以外の部分に赤色、緑色および青色の3色の蛍光体を混合した蛍光材料を設けなくても、光学部品30への励起光の照射方向に応じて、パターン11a、12aに対応したマークが透明地の上に表示される。
【0059】
このように、基材に紫外線吸収剤を添加することで、基材自身が他の光変換層への励起光の影響を排除することができるので、パターン11a、12aは、互いに異なる蛍光材料で形成されるか、または互いに異なる形状で形成されていれば、互いに重なる位置に設けられていなくてもよい。また、各光変換層11、12の基材を共通化し、実質的に1つの基材の両面にパターン11a、12aを形成した構成とすることもできる。紫外線吸収剤は、基材の蛍光材料が設けられていない部分(パターン11a、11bが形成されていない部分)のみに含有されていてもよい。この場合は、蛍光材料を基材のどちらの面に設けてもよい。
【0060】
あるいは、図7に示すように、それぞれパターン11a、12aが設けられた、前述したのと同様の光変換層11、12の間に、別の2つの光変換層14、15を配置することもできる。光変換層11に隣接する光変換層14には、青色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている。また、光変換層12に隣接する光変換層15には、赤色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている。
【0061】
このように構成された光学部品40では、光変換層11側から励起光を照射すると、光変換層11のパターン11aの部分が赤色に発光するとともに、パターン11aに対応する部分以外の光変換層14の部分が青色に発光する。その逆側、すなわち光変換層12側から励起光を照射すると、光変換層12のパターン12aの部分が青色に発光するとともに、パターン12aに対応する部分以外の光変換層15の部分が赤色に発光する。
【0062】
図7に示す光学部品40では、外側の光変換層11、12の間に配された2つの光変換層14、15は、それぞれが隣接する光変換層11、12に設けられたパターン11a、12aに対応する部分に励起光は照射されない。したがって、図8に示す光学部品50のように、外側にある2つの光変換層11、12のパターン11a、12aと相補関係にあるパターン14’a、15’aを、光変換層11、12にそれぞれ隣接する光変換層14’、15’に設けても、図7に示した例と同様に発光させることができる。図8に示す例は、発光に関与しない部分では蛍光体が設けられていないので、蛍光体の使用量を低減することができる。
【0063】
ここまでの例では、2つの光照射ユニットを用いて発光状態を2通りに変化させることを前提にして説明したが、3つ以上の光照射ユニットを用いれば、表示状態がさらに変化する表示装置を実現することができる。
【0064】
その幾つかの例を以下に説明する。以下の説明において、上述した要素と同じ要素については、上述した要素と同じ参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0065】
図9に示す表示装置では、光学部品60は、互いに重なり合うように配された3つの光変換層11、12、16を有する。外側の2つの光変換層11、12の間に位置する光変換層16には、緑色蛍光体を含む蛍光材料がその一面全体にわたって設けられている。中間の光変換層16と、それに隣接する光変換層12との間に、第3の光照射ユニット20Cが配置されている。光照射ユニット20Cは、他の光照射ユニット20A、20Bと同様に構成されており、その導光板は、光源からの励起光を中間の光変換層16に向けて出射する。なお、光照射ユニット20Cは、励起光を外側の光変換層11、12を通さずに中間の光変換層16に入射させることができるように構成されていれば、もう一方の光変換層11と中間の光変換層16との間に配置されていてもよい。
【0066】
表示装置をこのように構成することで、光照射ユニット20Aから光学部品60に励起光を照射した場合は、その光照射ユニット20Aに最も近い光変換層11でパターンの部分が赤色に発光し、次の光変換層12では残りの部分が緑色に発光する。これによって、光学部品60に入射した励起光は全て赤色の波長範囲および緑色の波長範囲の光に変換されるので、残りの光変換層12の蛍光体は励起されず、表示装置には緑地に光変換層11による赤色のパターンが表示される。
【0067】
反対側の光照射ユニット20Bから励起光を照射した場合は、その光照射ユニット20Bに最も近い光変換層12でパターンの部分が青色に発光する。そして、光変換層12で生じた青色の光および光変換層12で変換されずに光変換層12を透過した励起光は光照射ユニット20Cを透過して次の光変換層16に入射し、次の光変換層16では、変換されない励起光が入射した部分が緑色に発光する。これにより、光学部品60に入射した励起光は全て青色の波長範囲および緑色の波長範囲の光に変換されるので、残りの光変換層11の蛍光体は励起されず、表示装置には緑地に光変換層12による青色のパターンが表示される。
【0068】
一方、光学部品60の間に配されている光照射ユニット20Cから励起光を照射した場合、励起光は中間の光変換層16に入射する。この光変換層16には緑色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられているので、光照射ユニット20Cから入射した励起光はすべてこの光変換層16で変換されて緑色領域の光として発光する。これにより、光学部品60に入射した励起光は全て緑色の波長範囲の光に変換されるので残りの光変換層11、12の蛍光体は励起されず、表示装置には全体が緑色に表示される。
【0069】
このように、3つの光照射ユニット20A、20B、20Cからの励起光をそれぞれ異なる光変換層に入射させるようにすることで、励起光を照射する光照射ユニット20A、20B、20Cを適宜切り替えることによって3通りの表示が可能となる。
【0070】
図10に示す表示装置は、6つの光変換層11、12、14〜17を有する光学部品70と、3つの光照射ユニット20A、20B、20Cとを備えている。
【0071】
図10に示す光学部品70では、2つの光変換層11、16の間に配置された3つの光変換層15、17、14が、図9に示す光学部品60に対してさらに追加されている。光変換層15は、赤色蛍光体を含む蛍光材料でパターンが設けられた光変換層11に隣接して配置され、青色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている。光変換層14は、緑色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている光変換層16に隣接して配置され、赤色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている。光変換層17は、これら2つの光変換層15、14の間に配置され、緑色蛍光体を含む蛍光材料が中央部に矩形状のパターンで設けられている。光照射ユニット20Cは、2つの光変換層15、17間に配置され、緑色蛍光体を含む蛍光材料で矩形状のパターンが設けられた光変換層17に励起光を照射するように構成されている。
【0072】
このように構成された表示装置によれば、光照射ユニット20Aから光学部品70に励起光を照射した場合は、光変換層11でパターンの部分が赤色に発光するとともに、次の光変換層15では残りの部分が青色に発光し、結果的に、表示装置には青地に光変換層11による赤色のパターンが表示される。反対側の光照射ユニット20Bから励起光を照射した場合は、光変換層12でパターンの部分が青色に発光するとともに、次の光変換層では残りの部分が緑色に発光し、結果的に、表示装置には緑地に光変換層12による青色のパターンが表示される。
【0073】
中間の光照射ユニット20Cから光学部品70に励起光を照射した場合は、光変換層17でパターンの部分が緑色に発光するとともに、次の光変換層14では残りの部分が赤色に発光し、結果的に、表示装置には赤地に光変換層17による緑色のパターンが表示される。
【0074】
図9および図10に示した表示装置を応用することにより、4つ以上の光照射ユニットを用いて4通り以上に表示状態を変化させることができる表示装置が可能である。
【0075】
以上、本発明の好ましい幾つかの実施形態について説明してきた。ここで、本発明に好ましく用いられる蛍光体について説明する。
【0076】
本発明で用いられる蛍光体は、360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を実質的に全て変換する青色蛍光体、赤色蛍光体および緑色蛍光体の1以上を含む。各色蛍光体には有機蛍光体および無機蛍光体がある。これらの中でも、吸光度が高く、励起光を殆ど吸収できるという観点から、本発明では有機蛍光体を好ましく用いることができる。すなわち、結晶を分散させた無機蛍光体では、吸光効率が低いため、透明なバインダ樹脂に相溶し、分子レベルで吸光する有機蛍光体が望ましい。以下に、本発明で好ましく用いられる各色蛍光体について詳しく説明する。
【0077】
[青色有機蛍光体]
本発明で用いられる青色有機蛍光体は、380nm〜420nmの波長範囲にピーク波長大を有する励起光を用いて励起させることにより、青色の発光(通常420nm以上、好ましくは440nm以上、また、通常480nm以下、好ましくは470nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光)を呈するものであり、下記一般式(1)で表される構造からなる化合物(以下「化合物(1)」と称す場合がある。)を含むものである。なお、本発明の有機蛍光体は青色発光を呈するものであるが、R1〜R4の置換基を選択することにより緑色発光を呈するものを得ることもできる。
【0078】
【化3】
式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、置換基を有していても良いアルキル基をあらわす。
【0079】
化合物(1)を含む有機蛍光体は、発光波長の半値幅が狭く、色純度に優れる点において好ましい。
【0080】
以下に、化合物(1)について詳細に説明する。
【0081】
<語句の説明>
本発明において「置換基を有していても良い」とは、置換基を1以上有していても良いことを意味する。
【0082】
<R1〜R4>
(置換基R1〜R4の種類)
R1〜R6はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、置換基を有していても良いアルキル基をあらわす。
【0083】
耐光性を得るという点で、R1〜R4の置換基は、フッ素原子もしくはパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0084】
アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、具体例としてはメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0085】
<分子量>
以上説明した化合物(1)は、単位量あたりの分子数を増やすことによる高効率化の点から、通常分子量1500以下、中でも1200以下であることが好ましい。なお、化合物(1)は、潮解性による取り扱いの困難さの理由から、通常水不溶性であることが好ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であることを言う。
【0086】
<具体例>
化合物(1)の具体例を以下に例示する。
【0087】
【化4】
ただし、化合物(1)は、本発明はその要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
【0088】
<合成法>
化合物(1)は、下記スキームで表される種々の方法によって容易に合成することができる。
【0089】
【化5】
ピレンと臭素をニトロベンゼン中で加熱還流することにより得られる1,3,6,8−テトラブロモピレンと、各種ボロン酸や有機マグネシウムハライド、スズ化合物、アセチレン誘導体、エチニル誘導体とから、パラジウムなどの触媒を用いたカップリング反応により得ることができる。
【0090】
このようにして得られる化合物(1)は、380nm〜420nmの波長範囲にピーク波長を有する励起光を用いて励起することにより、青色から緑色の光、即ち、波長420nm〜550nmの光を発するものであり、高い耐熱性、固体状態での高い発光強度、媒体への高い分散性などの特長を有するものである。
【0091】
なお、化合物(1)の耐熱性を示す指標として、融点と分解温度が挙げられ、示差走査熱量計(DSC)や示差熱重量分析装置(TG−DTA)で容易に確認することができる。
【0092】
励起光源として好適に用いられる可視光発光ダイオードは、経時使用により熱を帯びるが、励起光源の熱により、有機蛍光体が溶融したり分解したりすると、発光効率の低下や色ムラに繋がるため、有機蛍光体には高い耐熱性が求められている。
【0093】
従って、有機蛍光体としての化合物(1)には、好ましくは融点120℃以上、さらに好ましくは融点150℃以上であることが求められる。
【0094】
また、化合物(1)の分解温度としては、窒素フロー条件下で5%以上重量減少する温度が150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。
【0095】
有機蛍光体材料の固体状態での発光強度に関しては、蛍光分光測定器(日立分光高度計F−4500)を用いて測定することができる。
【0096】
化合物(1)の発光強度は通常1.0×107cps(count/s)以上、好ましくは2.0×107cps(count/s)以上、特に好ましくは3.0×107cps(count/s)以上である。発光強度は無機蛍光体と同程度以上であれば有機蛍光体として十分使用することが可能であり、化合物(1)の発光強度として好ましくは106cps(count/s)以上、より好ましくは107cps(count/s)以上である。
【0097】
また、化合物(1)は、発光ピークの半値幅(前記発光強度の1/2強度における最大発光ピークの幅)が、通常200nm以下、好ましくは150nm以下、特に好ましくは100nm以下である。
【0098】
これらの特性は、サンプルを乳鉢などで細かく粉砕したあと、専用の測定セルに詰めて測定することにより得ることができる。
【0099】
なお、有機化合物である化合物(1)は、無機蛍光体に比べて明らかに比重が小さいため、媒体への分散性に関しては無機蛍光体に比べて明らかに良く、このことは有機蛍光体の利点である。
【0100】
有機化合物(1)は、分子間相互作用の効果が大きく、フラットな励起スペクトルが得られることから、有機蛍光体材料において固体状態で使用されることが好ましい。ここで固体状態とは、結晶状態、アモルファス状態、固溶体状態、もしくはそれらの混合状態であり、特に励起子寿命の長い結晶状態の微粒子で使用されることが好ましい。即ち、本発明にかかる蛍光材料は、前述の化合物(1)を含む本発明の有機蛍光体を粉末状態で含むことが特徴である。
【0101】
[赤色有機蛍光体]
本発明で用いることのできる赤色有機蛍光体としては、例えば特開2005−276785号公報などに開示される、β―ジケトネート、芳香族カルボン酸、またはブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体のうちの少なくとも1種からなる赤色有機蛍光体が挙げられる。
【0102】
ここで、希土類元素イオン錯体における希土類元素としては、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)等の元素が使用できる。中でも、近紫外光照射において高輝度に発光する赤色蛍光体となることから、ユーロピウム(Eu)が好適に用いられる。
【0103】
(i)β−ジケトネートのアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体の説明
本発明にかかる赤色蛍光体として使用できる希土類元素イオン錯体のうち、β−ジケトネートのアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体(β−ジケトネートから誘導されるアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体;ジケトネート錯体)の例としては、一般式Eu(β−ジケトネート)3Lnで表され、β−ジケトン化合物から誘導されるβ−ジケトネートアニオンを配位子とする錯体が挙げられる。ここで、Lは単座または複座を有する中性配位子を表わし、nは1または2を表わす。
【0104】
また、β−ジケトネートのアニオンが誘導されるβ−ジケトン化合物は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、励起波長域の点から、その構造中に、β−ジケトン構造と、少なくとも1つの、置換基を有することがある芳香族環または芳香族複素環(以下適宜「芳香族基」という)を置換基として有することが好ましい。β−ジケトン構造と芳香族基との連結方法は、直接でも2価の基で連結してもよいが、少なくとも一方のケトンに直接芳香族環が連結しているものが好ましい。
【0105】
上記の芳香族基の種類は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、芳香族基のうち、芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、インデン、ビフェニレン、アセナフテン、フルオレン、テトラリン、インダン等の芳香族単環式炭化水素または芳香族縮合多環式炭化水素が挙げられる。一方、芳香族基のうち、芳香族複素環としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピリジン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾピラン、カルバゾール、キサンテン、キノリン、トリアジン等の芳香族単環式複素環または芳香族縮合多環式複素環等が挙げられる。
【0106】
また、上記のとおり、芳香族基(即ち、芳香族環または芳香族複素環)は置換基を有していてもよい。この際、芳香族基の置換基は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その例を挙げると、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等のフルオロアルキル基;エチニル基;フェニルエチニル、ピリジルエチニル、チエニルエチニル等のアリールエチニル基;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基;フェニル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル等のアラルキル基;フェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ等のアリールオキシ基;ヒドロキシル基;アリル基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、トルオイル等のアシル基;アセトキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、アセチルメチルアミノ等の置換アミノ基;メチルチオ、エチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ等の置換チオ基;メルカプト基;エチルスルフォニル、フェニルスルフォニル等の置換スルフォニル基;シアノ基;フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン基等が挙げられる。これらの置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0107】
また、β−ジケトネートのアニオンが誘導されるβ−ジケトン化合物は、上記の芳香族基以外の基を有していてもよい。β−ジケトン化合物を構成する上記の芳香族基以外の基としては、例えば、前述した芳香族環または芳香族複素環の置換基と同様な置換基(但し、ハロゲン基は除く)が挙げられる。
【0108】
以下に、β−ジケトネートアニオンが誘導されるβ−ジケトン化合物の具体例を示す。
【0109】
【化6】
【0110】
【化7】
ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0111】
さらに、上記の一般式「Eu(β−ジケトネート)3Ln」中、中性配位子Lは、中性配位子であれば、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。ただし、通常は、Eu3+に配位可能な、N、O等の原子を有する化合物である。例えば、アミン、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、ケトン、スルホキシド、エーテル等が挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、中性配位子Lは、Eu3+への合計配位数が7または8となるように選択される。
【0112】
中性配位子Lの具体例を挙げると、例えばアミンとしては、置換基を有することもあるピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン等が挙げられる。
【0113】
また、例えばアミンオキシドとしては、置換基を有することもあるピリジン−N−オキシド、イソキノリン−N−オキシド、2,2’−ビピリジン−N,N’−ジオキシド、1,10−フェナントロリン−N,N’−ジオキシド等上記アミンのN−オキシド等が挙げられる。
【0114】
さらに、例えばホスフィンオキシドとしては、置換基を有することもあるトリフェニルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等のアルキルホスフィンオキシド;1,2−エチレンビス(ジフェニレンホスフィンオキシド)、(ジフェニルホスフォンイミド)トリフェニルホスフォラン、リン酸トリフェニルエステル等が挙げられる。
【0115】
また、例えばケトンとしては、置換基を有することもあるジピリジルケトン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0116】
さらに、例えばスルホキシドとしては、置換基を有することもあるジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド等が挙げられる。
【0117】
また、例えばエーテルとしては、置換基を有することもあるエチレングリコールジメチルエーテルやジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0118】
さらに、これらの中性配位子Lが置換基を有する場合、その置換基としては、芳香族基の置換基として前述した置換基が例示される。
【0119】
以下に、中性配位子Lの具体例を示す。
【0120】
【化8】
【0121】
【化9】
本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0122】
(ii)芳香族カルボン酸のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体
本発明にかかる赤色蛍光体として使用できる希土類元素イオン錯体のうち、芳香族カルボン酸(芳香族環を含む置換基を有するカルボン酸)のアニオンを配位子とする錯体(芳香族カルボン酸から誘導されるアニオンを配位子とする錯体;芳香族カルボン酸錯体)としては、例えば、下記一般式(r4)で表されるユーロピウム錯体が挙げられる。
〔R5−(X)n−COO〕3Eu(R6)2 (r4)
〔一般式(r4)中、R5は、芳香族環を含む1価の基を示し、Xは2価の連結基を示し、nは0又は1であり、R6はルイス塩基からなる補助配位子を示す。〕
前記一般式(r4)で表されるユーロピウム錯体は、芳香族環を含み、π電子を8個以上有し、π電子共役系を構成するカルボン酸イオンを配位子とすることが、吸収波長域の点から好ましい。また、芳香族環の芳香族単環としての個数は、カルボン酸イオンの母体化合物の三重項エネルギーが、ユーロピウムイオン励起状態エネルギーレベルよりも高いものであれば特に制限されないが、通常、3個以下であるのが好ましい。芳香族単環としての個数が4個以上の場合、例えば、ベンゼン環を4個有するピレン等の化合物は、半導体発光素子等の第1の発光体からの光を吸収して励起された三重項エネルギーが低くなり、ユーロピウム錯体が発光しなくなる虞がある。
【0123】
前記一般式(r4)において、R5は、芳香族環を含む1価の基を表わす。中でも、芳香族単環としての個数が3個以下であるものが好ましい。その芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インデン、ビフェニレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントレン、テトラリン、インダン等の芳香族単環式炭化水素化合物及び芳香族縮合多環式炭化水素化合物、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン等の芳香族炭化水素化合物からの誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン等の芳香族単環式複素環化合物、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、クマリン、ベンゾピラン、カルバゾール、キサンテン、キノリン等の複素環縮合芳香族炭化水素化合物等が挙げられる。
【0124】
また、これらの芳香族環は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等のフルオロアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;エチニル基;フェニルエチニル、ピリジルエチニル、チエニルエチニル等のアリールエチニル基;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基;フェニル、ナフチル等のアリール基;ベンジル、フェネチル等のアラルキル基;フェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ等のアリールオキシ基;ヒドロキシル基;アリル基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、トルオイル、ビフェニルカルボニル等のアシル基;アセトキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、アセチルメチルアミノ等の置換アミノ基;メチルチオ、エチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ等の置換チオ基;メルカプト基;エチルスルフォニル、フェニルスルフォニル基等の置換スルフォニル基;シアノ基;フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン基等が挙げられ、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。これらの中でも、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、アリールオキシ基、アラルキル基、エチニル基、ハロゲン基が好ましい。
【0125】
また、前記一般式(r4)において、Xは2価の連結基を表わす。さらに、前記一般式(r4)において、nは0又は1を表わす。したがって、前記一般式(r4)におけるカルボン酸イオンは、2価の連結基であるXを有さない場合(n=0)と、有する場合(n=1)とに分類される。更に、2価の連結基であるXを有する場合(n=1)は、Xが、カルボニル基を有する場合と有さない場合との2種類の形態に分類される。このため、前記一般式(r4)におけるカルボン酸イオン〔R5−(X)n−COO〕-は、更に、カルボニル基を有さない下記一般式(r5)とカルボニル基を有する下記一般式(r6)とで表される。一般式(r4)で表されるユーロピウム錯体は、これらのカルボン酸イオンを配位子とする錯体構造のいずれであってもよい。
【0126】
R5−R7−COO- (r5)
R5−CO−(R7)m−COO- (r6)
〔式(r5)及び(r6)中、R5は式(r4)におけるものと同じであり、R7は2価の連結基を示し、mは0又は1である。〕
前記一般式(r5)及び(r6)におけるR7としての2価の連結基としては、例えば、メチレン、エチレン等のアルキレン基、ビフェニル、テルフェニル、ビナフチル、シクロヘキシルベンゼン、フェニルナフタレン等の環集合炭化水素化合物から誘導される2価基、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルボルナン、ビシクロヘキシル等の脂環式炭化水素化合物から誘導される2価基、前述した芳香族環の具体例として挙げたと同様の化合物から誘導される2価基、ピラゾリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、モルホリン等の脂肪族複素環化合物から誘導される2価基、−SCH2−等のチオアルキレン基、−OCH2−等のオキシアルキレン基、及びビニレン基等が挙げられる。また、これらの2価の連結基は置換基を有していてもよい。
【0127】
さらに、前記一般式(r4)において、R6はルイス塩基からなる補助配位子を表わす。ルイス塩基からなる補助配位子は特に限定されないが、通常、ユーロピウムイオンに配位可能な窒素原子又は酸素原子を有するルイス塩基化合物から選択される。それらの例としては、置換基を有することがあるアミン、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、スルホキシド等が挙げられる。補助配位子として使用される2個のルイス塩基化合物は、それぞれ異なる化合物でもよく、又、2個の化合物で1つの化合物を形成していてもよい。
【0128】
具体的には、例えば、アミンとしては、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン等が挙げられる。アミンオキシドとしては、ピリジン−N−オキシド、2,2’−ビピリジン−N,N’−ジオキシド等の上記アミンのN−オキシドが挙げられる。ホスフィンオキシドとしては、トリフェニルホスフィンオキシド、トリメチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等が挙げられる。スルホキシドとしては、ジフェニルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド等が挙げられる。これらに置換する置換基としては、前述した置換基が例示される。中でも、特に、アルキル基、アリール基、アルコシキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン基等が好ましい。
【0129】
これらのルイス塩基化合物の中でも、ビピリジンやフェナントロリン等のように、分子内に配位する原子、例えば窒素原子等の2個存在する場合は、1つのルイス塩基化合物で2個の補助配位子と同様な働きをさせてもよい。なお、これらのルイス塩基化合物に置換する置換基としては、前述した置換基が例示される。中でも、特に、アルキル基、アリール基、アルコシキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン基等が好ましい。補助配位子として使用するルイス塩基化合物の具体例(1〜23)を以下に例示する。
【0130】
【化10】
なお、本実施の形態において使用するルイス塩基化合物は、これらに限定されるものではない。
【0131】
前記一般式(r4)におけるカルボン酸イオンが誘導されるカルボン酸の具体例を以下に例示する。尚、本実施の形態においては、これらに限定されるものではない。
【0132】
前記一般式(r4)においてnが0の場合のカルボン酸としては、以下の化合物が挙げられる。
【0133】
【化11】
また、前記一般式(r4)においてnが1であり、XがR7である場合の、前記一般式(r5)で表されるカルボン酸としては、以下の化合物が挙げられる。
【0134】
【化12】
また、前記一般式(r6)において、mが0の場合のカルボン酸としては、以下の化合物が挙げられる。
【0135】
【化13】
また、前記一般式(r6)において、mが1の場合のカルボン酸としては、以下の化合物が挙げられる。
【0136】
【化14】
【0137】
【化15】
【0138】
【化16】
(iii)ブレンステッド酸のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体
本発明にかかる赤色蛍光体として使用できる希土類元素イオン錯体のうち、ブレンステッド酸のアニオンを配位子とする錯体(ブレンステッド酸から誘導されるアニオンを配位子とする錯体;ブレンステッド酸錯体)としては、例えば、特開2005−8872号公報に記載されている赤色有機蛍光体が挙げられる。
【0139】
(iv)好ましい赤色蛍光体の例
上述した本発明にかかる赤色蛍光体のうち、特に以下に示す赤色蛍光体が好ましい。
【0140】
【化17】
【0141】
【化18】
【0142】
【化19】
【0143】
【化20】
【0144】
【化21】
【0145】
【化22】
【0146】
【化23】
【0147】
【化24】
【0148】
【化25】
【0149】
【化26】
また、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料などを用いることもできる。
【0150】
[緑色有機蛍光体]
本発明で好ましく用いることができる緑色有機蛍光体としては、一般式(g1)または一般式(g2)で表される化合物、それらの互変異性体、または、亜鉛錯体を用いることができる。
【0151】
【化27】
【0152】
【化28】
【0153】
一般式(g1)および一般式(g2)で表される化合物において、R11およびR12は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、X1〜X4およびY1〜Y10は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニルチオ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアミノ基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、−COOR13基(基中、R13は水素原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよいアリール基を表す)、−COR14基(基中、R14は水素原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、あるいはアミノ基を表す)、あるいは−OCOR15(基中、R15は置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよいアリール基を表す)を表し、さらに、X1〜X4、Y1〜Y4およびY5〜Y10から選ばれる隣接する基は、置換している炭素原子と共に、置換基を有していてもよい炭素環式脂肪族環、置換基を有していてもよい炭素環式芳香族環、置換基を有していてもよい複素環式脂肪族環、または、置換基を有していてもよい複素環式芳香族環を形成していてもよい。尚、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基などの炭素環式芳香族基、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基などの複素環式芳香族基を表す。
【0154】
一般式(g1)および一般式(g2)において、R11およびR12は、好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の置換基を有していてもよいアルキル基、炭素数6〜12のアリール基を表し、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜6の地喚起を有していてもよいアルキル基、炭素数6〜10のアリール基を表す。尚、R13およびR12の置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基の具体例としては、後述するX1 〜X4およびY1〜Y10の具体例として述べる置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を挙げることができる。
【0155】
また、一般式(g1)および一般式(g2)において、X1 〜X4およびY1〜Y10の直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、直鎖、分岐または環状のアルキルチオ基、直鎖、分岐または環状のアルケニル基、直鎖、分岐または環状のアルケニルオキシ基、および直鎖、分岐または環状のアルケニルチオ基は置換基を有していてもよく、例えば、ハロゲン原子、炭素数4〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数4〜20のアラルキルオキシ基、炭素数5〜20のアラルキルオキシアルコキシ基、炭素数3〜20のアリールオキシ基、炭素数4〜20のアリールオキシアルコキシ基、炭素数5〜20のアリールアルケニル基、炭素数6〜20のアラルキルアルケニル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルコキシアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルケニルチオ基、炭素数4〜20のアラルキルチオ基、炭素数5〜20のアラルキルオキシアルキルチオ基、炭素数5〜20のアラルキルチオアルキルチオ基、炭素数3〜20のアリールチオ基、炭素数4〜20のアリールオキシアルキルチオ基、炭素数4〜20のアリールチオアルキルチオ基、炭素数4〜20のヘテロ原子含有の環状アルキル基、あるいは水酸基、シアノ基、ハロゲン原子などで単置換または多置換されていてもよい。さらに、これらの置換基に含まれるアリール基は、さらにハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数3〜10のアリール基、炭素数4〜10のアラルキル基などで置換されていてもよい。
【0156】
一般式(g1)および一般式(g2)において、X1 〜X4およびY1〜Y10のアラルキル基、アラルキルオキシ基、アラルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、およびアリールチオ基中のアリール基は置換基を有していてもよく、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数4〜20のアラルキル基、炭素数3〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキルオキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルオキシアルキル基、炭素数3〜20のアルケニルオキシアルキルオキシ基、炭素数4〜20のアラルキルオキシ基、炭素数5〜20のアラルキルオキシアルキル基、炭素数5〜20のアラルキルオキシアルキルオキシ基、炭素数3〜20のアリールオキシ基、炭素数4〜20のアリールオキシアルキル基、炭素数4〜20のアリールオキシアルキルオキシ基、炭素数2〜20のアルキルカルボニル基、炭素数3〜20のアルケニルカルボニル基、炭素数5〜20のアラルキルカルボニル基、炭素数4〜20のアリールカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数3〜20のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数5〜20のアラルキルオキシカルボニル基、炭素数4〜20のアリ−ルオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数5〜20のアラルキルカルボニルオキシ基、炭素数4〜20のアリールカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数4〜20のアラルキルチオ基、炭素数3〜20のアリールチオ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、アミノ基、炭素数1〜20のN−モノ置換アミノ基、炭素数2〜40のN,N−ジ置換アミノ基などの置換基で単置換あるいは多置換されていてもよい。さらに、これらの置換基に含まれるアリール基は、さらにハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基などで置換されていてもよい。
【0157】
一般式(g1)および一般式(g2)において、X1〜X4およびY1〜Y10のアミノ基は置換基を有していてもよく、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20のアラルキル基、あるいは炭素数3〜20のアリール基で単置換またはジ置換されていてもよい。一般式(g1)および一般式(g2)において、R13、R14およびR15のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよく、例えば、X1 〜X4およびY1〜Y10で挙げた置換基で単置換または多置換されていてもよい。
【0158】
R13 は、好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基であり、より好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基である。
【0159】
R14は、好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基、あるいはアミノ基であり、より好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基、あるいはアミノ基である。
【0160】
R15は、好ましくは、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基である。
【0161】
X1〜X4およびY1〜Y10は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニルチオ基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキルチオ基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリールチオ基、未置換のアミノ基、総炭素数1〜24の置換アミノ基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、−COOR13、−COR14、あるいは−OCOR15(但し、基中、R13〜R15は前記に同じ意味を表す)であり、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜12の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数1〜12の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜12の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜16のアラルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜12のアリール基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜12のアリールチオ基、未置換のアミノ基、総炭素数1〜12の置換アミノ基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、−COOR13、−COR14、あるいは−OCOR15(但し、基中、R13〜R15は前記に同じ意味を表す)である。
【0162】
さらに、X1〜X4、Y1〜Y4およびY5〜Y10から選ばれる隣接する基は、置換している炭素原子と共に、置換基を有していてもよい炭素環式脂肪族環、置換基を有していてもよい炭素環式芳香族環、置換基を有していてもよい複素環式脂肪族環、または、置換基を有していてもよい複素環式芳香族環を形成していてもよく、好ましくは、総炭素数4〜20の置換基を有していてもよい炭素環式脂肪族環、総炭素数4〜20の炭素環式芳香族環、総炭素数4〜20の置換基を有していてもよい複素環式脂肪族環環、総炭素数4〜20の複素環式芳香族環を形成していてもよい。
【0163】
上述した化合物の中でも、本発明においてより好ましく用いることのできる緑色有機蛍光体としては、以下の式で表されるキノリン誘導体とフタルイミドの縮合化合物が挙げられる。
【0164】
【化29】
本化合物は、通常、黄色味を呈しており、そのまま利用すると青色の光を吸収する。従って、上記式で表される緑色有機蛍光体を含む蛍光材料を無色透明とする方法としては、例えば以下のような方法を挙げることができる。
(i)この化合物の含有濃度を低くし、実質的に無色透明となるようにする。
(ii)この化合物にポリマーコート等を施す。具体的には、例えば少量の前記化合物を溶媒に溶かして、前記化合物と相互作用しやすいポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリフルオレンなどの芳香族系のポリマーを挙げることができる。)に練り込んで、乾燥・硬化させ、ナノ粒子にする。
【0165】
本発明による表示装置は種々の表示装置に利用することができる。
【0166】
例えば、図1〜図3を用いて説明した表示装置1は、駅の改札口や建物の入場ゲートなどの通行案内表示に利用することができる。また、光変換層11、12に設けるパターン11a、12aを他の図形または文字などを表すパターンとすれば、表示を2通りに切り替えられる他の案内表示装置に利用可能である。もちろん、図9や図10に示したような構成を利用すれば、表示を3通りに切り替えられる案内表示装置にも利用できる。
【0167】
あるいは、本発明による表示装置は、時計にも利用可能である。図11に、本発明による表示装置を文字盤に利用した腕時計の模式的断面図を示す。
【0168】
本形態の腕時計100は、水晶振動子を備えたムーブメント160と、ムーブメント160からの電気信号に基づいて時刻をデジタル表示する文字盤130と、文字盤130の上側および下側にそれぞれ設けられた2つの光照射ユニット171、172と、を有する。文字盤130は、光学部品140と、光学部品140の下面に配置された半透過反射板150とを有する。光学部品140は、一対の透明な電極基板の間に液晶を封止した構成を有する液晶セル131と、液晶セル131の下面に配置された3つの光変換層141〜143を含んでいる。
【0169】
これら各部品は、上面に風防120が設けられたケース110内に収納されている。
【0170】
光変換層141〜143は互いに重ねられて配置されており、光変換層141〜143には、図12に示すように蛍光材料が設けられている。すなわち、光変換層141には、赤色蛍光体を含む蛍光材料によるパターン141a、および青色蛍光体を含む蛍光材料によるパターン141bが設けられている。光変換層142にも、赤色蛍光体を含む蛍光材料によるパターン142a、および青色蛍光体を含む蛍光材料によるパターン142bが設けられているが、これらのパターン142a、142bは、光変換層141のパターン141a、141bとは異なる配置および形状で光変換層142に設けられている。これらの変換層141、142の間に配置されている光変換層143には、赤色、緑色および青色の3色の蛍光体を混合した蛍光材料が全面にわたって設けられている。本形態では、光変換層141が下の光照射ユニット171側を向くように配置される。
【0171】
光照射ユニット171、172は、それぞれ独立して励起光を照射する。腕時計100には、これら光照射ユニット171、172を駆動させるためのスイッチ(不図示)が設けられている。光照射ユニット171、172から照射される励起光は、前述したものと同様の波長範囲にピーク波長を有している。また、光照射ユニット171、172は、光学部品140の全面に均一に励起光を照射できるように導光板を有していてもよい。
【0172】
以上のように構成された腕時計100によれば、風防120を通してケース110の内部に入射してきた光は、上側の光照射ユニット171、液晶セル131、各光変換層141〜143を透過し、半透過反射板150で反射される。これによって、液晶セル130に表示された時刻などの情報を視認することができる。
【0173】
所定の操作によって下側の光照射ユニット172を駆動すると、励起光は、半透過反射板150を透過して光学部品140に入射する。光学部品140の下側から励起光が入射すると、光変換層141でパターン141a、142bの部分がそれぞれ赤色および青色に発光するとともに、次の光変換層143では残りの部分が白色に発光する。これにより、液晶セル131による時刻などの表示の背景に、光変換層141に設けられたパターン141a、141bに対応した赤色、青色および白色のパターンが表示される(図13参照)。
【0174】
一方、上側の光照射ユニット171を駆動すると、励起光は、液晶セル131を透過して光変換層142に入射する。光変換層142に励起光が入射すると、光変換層142でパターン142a、142bの部分がそれぞれ赤色および青色に発光するとともに、次の光変換層143では残りの部分が白色に発光する。これにより、液晶セル131による時刻などの表示の背景に、光変換層142に設けられたパターン142a、142bに対応した赤色、青色および白色のパターンが表示される(図14参照)。
【0175】
ここでは、3色の蛍光体を含む蛍光材料が設けられた光変換層143を他の2つの光変換層141、142の間にサンドイッチした構成を有する光学部品140を用いた例を示したが、両側の光変換層141、142の基材として紫外線吸収剤を添加したものを用いることもできる。蛍光材料は、各光変換層141、142の外側の面に設けられる。このような構成によれば、白色の発光は生じないが、中間の光変換層143は不要となり、光学部品140の構成が簡単になる。
【0176】
また、ここでは2つの光照射ユニット171、172からの励起光の照射を切り替えることにより表示状態が2通りに変化する例を示したが、図9や図10に示した構成を利用または応用することによって、3つ以上の光照射ユニットを用いて表示状態を3通り以上に変化させることもできる。
【実施例】
【0177】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0178】
本実施例では、図15に示す光学部品80を作製した。光学部品80は、赤色蛍光体を含む蛍光材料が塗布された光変換層81と、青色蛍光体を含む蛍光材料が塗布された光変換層82とを有する。
【0179】
赤色蛍光体を含む蛍光材料には、アクリル系樹脂であるPMMA(アルドリッチ社製、平均分子量Mw:35万)をバインダ樹脂として用い、そのバインダ樹脂0.6gと、下記構造式で表される赤色有機蛍光体(Eu(TTA)3Phen)0.3gとを溶剤(トルエン)6g中に相溶状態で溶解させたものを用いた。
【0180】
【化30】
この蛍光材料を、ワイヤーバー#40を用いて基材(PET製のフィルム)の片面全面に塗布した。これを15分間、自然乾燥させることによって、基材の片面に蛍光材料からなる被膜を形成し、光変換層81を得た。得られた光変換層81は、若干オレンジ色味を帯びていたが実質的には無色透明であった。
【0181】
青色蛍光体を含む蛍光材料には、上記のバインダ樹脂0.6gと、以下の合成例2によって製造された青色有機蛍光体0.3gとを溶剤(トルエン)6g中に相溶状態で溶解させたものを用いた。この蛍光材料を、上記と同様にPET製のフィルムの片面全体に塗布し、15分間、自然乾燥させることによって、光変換層82を得た。得られた光変換層82は、実質的に無色透明であった。
【0182】
[合成例1]青色蛍光体1,3,6,8−テトラブロモピレンの製造
【0183】
【化31】
ピレン(東京化成(株)製:試薬、純度95%)27gを水195mLに加え、テトラグライム(東京化成(株)製:試薬)7mLを加え、さらに塩酸70mLを加えて、90℃にて2時間攪拌してピレンの水分散液を調整した。次いで、40℃にて、臭素カリウム(東京化成(株)製:試薬)47gを加えた。そして、温度を保持したまま、臭素酸ソーダ(東京化成(株)製:試薬)30gを水110mLに溶解させた臭素酸ソーダ溶液を、3時間かけて滴下した。その後、濾別し、メタノール約300gにて充分に洗浄し、次いで、85〜95℃で乾燥して、1,3,6,8−テトラブロモピレン70gを得た。
【0184】
[合成例2]青色蛍光体1,3,6,8−テトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ピレンの製造
【0185】
【化32】
3−トリフルオロメチルフェニルボロン酸(アルドリッチ(株)製:試薬)15g、前記合成例1で製造した1,3,6,8−テトラブロモピレン9.2g、及び炭酸セシウム6.4g(キシダ化学(株)製:試薬)にトルエン400ml(純正化学(株)製:試薬)、エタノール50ml(純正化学(株)製:試薬)、純水50mlを入れ、窒素置換した後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)2g(東京化成(株)製:試薬)を加え、7時間加熱還流をおこなった。
【0186】
反応溶液を減圧濃縮したのち、水100mL加え、ジクロロメタンで数回抽出し、抽出液に炭酸ナトリウムを加え脱水した。濾過濃縮した後、得られた残渣をトルエンで再結することにより3.7gの黄色の固体を得た。FAB質量分析からm/z=563が得られたことからこの成分が1,3,6,8−テトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ピレンであることが分かった。
【0187】
次に、得られた2つの光変換層81、82を重ね合わせて4隅をボルトで固定することによって、光学部材80を作製した。
【0188】
以上のようにして作製した光学部品80の、赤色蛍光体を含む蛍光材料が設けられた光変換層81側から、近紫外光を照射した。近紫外光を照射する光源としては、405nmにピーク波長を有するLEDを用いた。その結果、光学部品80は、全体が赤色に発光し、青色蛍光体による発光は見られなかった。
【0189】
次に、青色蛍光体を含む蛍光材料が設けられた光変換層82側から、上記と同じ光源を用いて近紫外光を照射した。その結果、光学部品80は全体が青色に発光し、赤色蛍光体による発光は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の一実施形態による表示装置を、構成部分ごとに分離して示す模式的斜視図である。
【図2】図1に示す表示装置において、一方の光照射ユニットから励起光を照射したときの表示を示す図である。
【図3】図1に示す表示装置において、他方の光照射ユニットから励起光を照射したときの表示を示す図である。
【図4】図1に示す表示装置の一変形例を示す、光学部品の分解斜視図である。
【図5】図4に示す光学部品にA方向から励起光を照射したときの表示を示す図である。
【図6】図4に示す光学部品にB方向から励起光を照射したときの表示を示す図である。
【図7】図1に示す表示装置の他の変形例を示す、光学部品の分解斜視図である。
【図8】図1に示す表示装置のさらに他の変形例を示す、光学部品の分解斜視図である。
【図9】3つの光照射ユニットを有する本発明による表示装置の一例の、構成部分ごとに分離して示す模式的斜視図である。
【図10】3つの光照射ユニットを有する本発明による表示装置の他の例の、構成部分ごとに分離して示す模式的斜視図である。
【図11】本発明を適用した腕時計の模式的断面図である。
【図12】図11に示す腕時計に用いられる光変換層を層ごとに分離した斜視図である。
【図13】図11に示す腕時計の、第1の表示状態を示す正面図である。
【図14】図11に示す腕時計の、第2の表示状態を示す正面図である。
【図15】本発明の実施例で作製した光学部品の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0191】
1 表示装置
10、30、40、50、60、70、140 光学部品
11、12、13、14、15、16、17 光変換層
11a、12a パターン
20A、20B、20C、171、172 光照射ユニット
21A、21B 光源
22A、22B 導光板
100 腕時計
110 ケース
131 液晶セル
160 ムーブメント
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定波長の励起光によって励起される蛍光体を含有する複数の光変換層を有する光学部品、およびその光学部品を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光体の発光を利用した表示装置が、様々な機器における視認性を向上させたり視覚的効果を向上させたりするためなどに広く用いられている。
【0003】
このような表示装置の一例として、特許文献1(特開2003−76305号)には、紫外線に反応して発光する蛍光体を透明な樹脂板からなる文字盤の片面の少なくとも一部に設けるとともに、文字盤の裏面側に、紫外線発光素子を設けた腕時計が開示されている。蛍光体は、紫外線が照射されない状態では透明である。よって、紫外線が殆ど当たらない屋内などでは、文字盤は蛍光体の影響を受けずにそのまま視認することができる。一方、紫外線発光素子を点灯させると、紫外線が文字盤を通して蛍光体に照射され、蛍光体が発光する。
【0004】
また、特許文献2(特開2001−67030)には、第1および第2の波長範囲の紫外線によってそれぞれ発光する第1および第2の蛍光体を含む発光板を、第1および/または第2の紫外線放射ランプで照射するように構成された発光装置が開示されている。第1の紫外線放射ランプは第1の波長範囲の紫外線を放射し、第2の紫外線放射ランプは第2の波長範囲の紫外線を放射する。発光板には、それぞれ第1の蛍光体および第2の蛍光体を用いて印刷等によって画像が形成されている。このような構成によって、第1の紫外線放射ランプを点灯させると、第1の蛍光体が発光して、第1の蛍光体で形成された画像が表示され、第2の紫外線放射ランプを点灯させると、第2の蛍光体が発光して、第2の蛍光体で形成された画像が表示される。
【特許文献1】特開2003−76305号公報
【特許文献2】特開2001−67030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された表示装置では、文字盤は、蛍光体が発光した状態と発光しない状態との2つの状態をとるのみであり、変化に乏しい。一方、特許文献2に開示された表示装置は、第1および第2の紫外線放射ランプを単独でまたは同時に点灯させることで、蛍光体の発光状態を、第1の蛍光体のみが発光した状態、第2の蛍光体のみが発光した状態、および第1および第2の蛍光体が発光した状態に変化させることができる。しかし、第1の蛍光体のみ、または第2の蛍光体のみを発光させるためには、第1の紫外線放射ランプの波長範囲と第2の紫外線放射ランプの波長範囲とが十分に離れている必要がある。そのため特許文献2に開示された表示装置では、第1の紫外線放射ランプとしてUV−A波長域の紫外線を照射するランプを用いるとともに、第2の紫外線放射ランプとしてUV−C波長域の紫外線を照射するランプを用いている。これらの紫外線の中でも特に、波長が極めて短いUV−C波長域の紫外線は生体に悪影響を及ぼし、また、蛍光体を劣化させやすいため、使用するのは好ましくない。
【0006】
本発明は、同じ波長範囲の励起光で励起する複数種の蛍光体を用いつつ、発光状態が複数に変化する光学部品およびそれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の光学部材は、360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を実質的に全て変換する蛍光材料が少なくとも一部に設けられ、互いに重ねて配置された複数の光変換層を有している。蛍光材料は、
(A)励起光により励起され、420nm以上480nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第1の蛍光体、
(B)励起光により励起され、480nmよりも大きく550nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第2の蛍光体、および
(C)励起光により励起され、550nmよりも大きく700nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第3の蛍光体、
の1以上を含んでいる。
【0008】
そして、本発明の第1の態様では、互いに隣り合う2つの光変換層同士の関係で、蛍光材料が設けられた領域は少なくとも一部が重なり、かつ、重なっている領域の少なくとも一部は、励起光による発光スペクトルが互いに異なるように前記蛍光体を含んでいる。本発明の第2の態様では、光変換層は、蛍光材料が設けられていない部分に、励起光を吸収する紫外線吸収剤を含有している。
【0009】
本発明の光学部品において、第1の蛍光体は、下記一般式(1)で表される構造からなる青色有機蛍光体を含むことが好ましい。
【0010】
【化1】
ただし、一般式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、および置換基を有していてもよいアルキル基のいずれかを表す。
【0011】
また、第2の蛍光体は、下記一般式(2)
【0012】
【化2】
で表される構造からなる緑色有機蛍光体を含むことが好ましい。
【0013】
さらに、第3の蛍光体は、β−ジケトネート、芳香族カルボン酸、またはブレンステッド酸のアニオンを配位子とする希土類イオン錯体のうち少なくとも1種からなる赤色有機蛍光体を含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明の光学部品において、光変換層は実質的に無色透明であることが好ましい。
【0015】
蛍光材料は、上記(A)〜(C)のうち1以上の蛍光体と、その蛍光体を保持するバインダ樹脂とを有していてもよい。
【0016】
さらに、本発明の光学部品は、液晶セルを有していてもよい。
【0017】
本発明の表示装置は、上記本発明の光学部品と、
光学部品が有する複数の光変換層のうち異なる光変換層に、360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を照射するための複数の光照射手段と、
を有する。
【0018】
本発明の表示装置において、複数の光照射手段のうち2つは、光学部品の互いに反対側から励起光を照射するように配置されていてもよい。また、複数の光照射手段のうち少なくとも1つは、光変換層の間に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、励起光を全て特定の波長の光に変換する蛍光材料を含む複数の光変換層を重ね合わせた構成を有することにより、励起光の波長範囲を変えることなく、励起光の照射方向を変えるだけで光学部品の発光状態を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による表示装置を、構成部分ごとに分離して示す模式的斜視図である。
【0022】
図1に示す表示装置1は、励起光の照射によって発光する光学部品10と、光学部品10に励起光を照射するために光学部品10を挟んで互いに反対側に配された2つの光照射ユニット20A、20Bとを有する。光学部品10は、3つの光変換層11、13、12がこの順番に重ね合わせられた構成を有している。これら光変換層11〜13は、互いに接着されて一体化されることによって光学部品10が全体としてシート状に構成されるようにされてもよいし、フレームなどの支持部材(不図示)に一体的に支持されていてもよい。
【0023】
光変換層11〜13は、実質的に無色透明であり、実質的に無色透明なシート状の基材と、基材に設けられた蛍光材料とを含んでいる。基材および蛍光材料は、実質的に無色透明であり、従って、光変換層11〜13も全体として無色透明である。蛍光材料は、基材の表面に塗布してもよいし、基材中に含有させてもよい。基材自身は、光照射ユニット20A、20Bから照射される励起光に対しても、入射した励起光を透過する程度に透明である。このような基材としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)などを好ましく用いることができる。なお、蛍光材料が設けられていない部分を基材が有している場合は、基材に紫外線吸収剤が添加されていてもよい。
【0024】
なお、本発明において「無色透明」とは、着色が認められないかほとんど認められず、透き通っている状態を意味し、具体的には、可視光領域(420nm以上700nm以下の波長範囲)の光の透過率が80%以上、好ましくは90%以上であることを意味する。
【0025】
蛍光材料は、光照射ユニット20A、20Bから照射される励起光を実質的に全て変換するものであり、以下の(A)〜(C)の蛍光体を1以上含んでいる。
(A)励起光により励起され、420nm以上480nm以下の波長範囲にピーク波長を有する青色の光に変換して発光する蛍光体(以下、青色蛍光体ともいう)。
(B)励起光により励起され、480nmを超え、550nm以下の波長範囲にピーク波長を有する緑色の光に変換して発光する蛍光体(以下、緑色蛍光体ともいう)。
(C)励起光により励起され、550nmを超え、700nm以下の波長範囲にピーク波長を有する赤色の光に変換して発光する蛍光体(以下、赤色蛍光体ともいう)。
【0026】
蛍光材料は、これら蛍光体をバインダ樹脂中に保持した構成を有していることが好ましい。バインダ樹脂としては、透明な樹脂であれば特に制限はなく、ポリメタクリ酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリジメチルシロキサン等を用いることができる。蛍光材料を光変換層の基材中に含有させる場合、基材がバインダ樹脂を兼ねていてもよい。
【0027】
バインダ樹脂に対する蛍光体の含有濃度は、光変換層の透明性が損なわれないように、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは30重量%以下である。一方、蛍光体の含有量が少なすぎると十分な発光量が得られなくなるおそれがあるので、蛍光体の含有濃度は、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.2重量%以上である。
【0028】
バインダ樹脂中での蛍光体の存在状態としては、公知の構成を任意に適用することができる。通常は、バインダ樹脂中に蛍光体を相溶させた相溶状態や、蛍光体を固体状態(結晶)でバインダ樹脂に分散させた分散状態などがある。ただし、分散状態では、蛍光体の結晶とバインダ樹脂との屈折率差により光変換層が白化し、透明性が損なわれるおそれがあるので、相溶状態であることが好ましい。
【0029】
上記(A)〜(C)の蛍光体を含む蛍光材料は各光変換層11〜13の全面に設けられていてもよいし、一部にのみ設けられていてもよい。
【0030】
光変換層11〜13の一部に蛍光材料が設けられる場合、個々の光変換層11〜13での、蛍光材料が設けられる領域の大きさ、形状、および数は任意である。ただし、互いに隣り合う2つの光変換層同士の関係において、蛍光材料が設けられた領域は少なくとも一部が重なっている。
【0031】
さらに、各光変換層11〜13に設けられた蛍光材料は、上記(A)〜(C)の蛍光体を1以上含んでいれば、どのような状態で含んでいてもよい。例えば、(A)〜(C)の蛍光体は、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。また、1つの光変換層11〜13に対して蛍光材料が複数の領域に設けられた場合も、各領域では、(A)〜(C)のいずれかの蛍光体を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。ただし、互いに隣り合う2つの光変換層同士の関係において、蛍光材料が設けられた領域が重なっている部分の少なくとも一部は、蛍光体が励起光により発光したとき互いに異なる発光スペクトルを有するように蛍光体を含有しており、これによって、光照射ユニット20A、20Bから別々に光を照射したとき、光学部品10は全体として互いに異なる色および/またはパターンで発光できるようになる。そのために、好ましくは、蛍光材料が設けられた領域が重なっている部分の少なくとも一部において、一方の光変換層は他方の光変換層に含まれていない蛍光体を含んでいる。
【0032】
例えば、本形態においては、一方の光照射ユニット20A側の光変換層11には、赤色に発光する赤色蛍光体を含む蛍光材料が、中央部が矩形状に空いた円形のパターン11aで設けられ、反対側の光照射ユニット20B側の光変換層13には、青色に発光する青色蛍光体を含む蛍光材料が矢印形のパターン11bで設けられている。さらに、中央の光変換層13には、赤色、緑色および青色の3色の蛍光体を混合した蛍光材料が、光変換層13全面にわたって設けられている。
【0033】
2つの光照射ユニット20A、20Bは、光源21A、21Bおよび導光板22A、22Bを有する。光源21A、21Bは、好ましくは線状光源であり、近紫外領域の光を導光板22A、22Bに向けて出射する。光源21A、21Bから出射する光のピーク波長は、360nm以上、好ましくは380nm以上、さらに好ましくは390nm以上であり、かつ、420nm以下、好ましくは410nm以下、さらに好ましくは405nm以下である。
【0034】
このような近紫外光の波長範囲にピーク波長を有する光を出射する光源としては、半導体発光素子を用いることができる。半導体発光素子としては、380nm〜420nmの波長範囲にピーク波長を有する光を発するものであれば特に制限はなく、任意のものを用いることができる。半導体発光素子から発光される380nm〜420nmの波長範囲にピーク波長を有する光が、蛍光材料中の蛍光体によって吸収され、蛍光体はより長波長の可視光を発光する。半導体発光素子のピーク波長が過度に短波長側にあると、蛍光体およびバインダ樹脂等の有機化合物が光劣化しやすい傾向にあるので好ましくない。また、ピーク波長が過度に長波長側にある場合は、光変換効率の低下に伴う発光輝度の低下の理由により好ましくない。
【0035】
半導体発光素子としては、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等を挙げることができる。その中でも、GaN系化合物半導体を使用した、GaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比較して、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。
【0036】
例えば、20mAの電流負荷に対し、通常、GaN系のLEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。このGaN系のLEDやLDにおいては、AlXGaYN発光層、GaN発光層、またはInXGaYN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInXGaYN発光層を有するものが、発光強度が非常に強いので、特に好ましい。さらに、GaN系のLDにおいては、InXGaYN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが、発光強度が非常に強いので特に好ましい。なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0037】
GaN系のLEDは、これら発光層、p層、n層、電極、および基板を基本構成要素としている。中でも、発光層をn型とp型のAlXGaYN層、GaN層、またはInXGaYN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高いため、好ましい。さらに、ヘテロ構造を量子井戸構造にしたものは、発光効率がより高く、より好ましい。
【0038】
例えば、シリコンカーバイドやサファイア、窒化ガリウム等の基板にMOCVD法などで結晶成長されたInGaN系、GaAlN系、InGaAlN系、ZnSeS系などの半導体発光素子を好適に用いることができる。半導体発光素子には、LED(発光ダイオード)やLD(レーザーダイオード)などがあり、それらの中でもLEDを好ましく用いることができる。
【0039】
LEDを光源21A、21Bに用いた場合、複数のLEDを直線状に並べた構成や、ロッド状のライトガイドの一端側にLEDを配した構成などを採用することにより、光源21A、21Bを線状光源とすることができる。
【0040】
導光板22A、22Bは、光源21A、21Bからの光を面状に変換して光学部品10の全面に入射させるものであり、光学部品10を挟んで配置されている。すなわち、一方の導光板22Aは光変換層11と対向して配置され、他方の導光板21Bは光変換層12と対向して配置される。また、各導光板22A、22Bは、少なくとも可視光に対して透明である。このような導光板22A、22Bは、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリカーボネートなどで形成することができる。
【0041】
各導光板22A、22Bは、光源21A、21Bからの光が入射される入射面と、入射面から入射した光を光学部品10に向けて全反射させる傾斜面と、全反射した光が出射される出射面と、を有する。導光板22A、22Bの出射面は、それぞれ光変換層11、12と対面して配置されている。また、傾斜面は、出射面を通して導光板22A、22Bの外部から入射してきた光、および傾斜面を通して導光板22A、22Bの外部から入射してきた光を、反射させるのではなく透過させるように形成されている。ここでは、全体が一様に傾斜している傾斜面を有する導光板22A、22Bを示したが、傾斜面の代わりに、傾斜面と同様に作用するように構成されたプリズムアレイが設けられていてもよい。
【0042】
以上のように構成された本形態の表示装置1においては、一方の光源21Aを駆動することによって光照射ユニット20Aから光学部品10に励起光を照射し、または、他方の光源21Bを駆動することによって光照射20Bから光学部品10に励起光を照射する。励起光は、360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有している。
【0043】
一方の光照射ユニット20Aから光学部品10に励起光を照射した場合、励起光は、まず、光照射ユニット20Aから見て最も手前の光変換層11に入射する。光変換層11には赤色蛍光体を含む蛍光材料でパターン11aが形成されており、赤色蛍光体は、励起光によって励起され、パターン11aの部分に入射した励起光を全て赤色領域の光に変換して発光する。これによって、パターン11aが形成された部分が赤色に発光する。そして、パターン11aの部分に入射した励起光は、ここで全て吸収され、光変換層11を透過しない。一方、光変換層11のパターン11a以外の部分に入射した励起光は、そのまま光変換層11を透過する。
【0044】
光照射ユニット20Aから見て次の光変換層13へは、光変換層11のパターン11aの部分で生じた赤色領域の光と、光変換層11のパターン11a以外の部分を透過した励起光とが入射する。
【0045】
光変換層13には、上述したように、青色、緑色および赤色の3色の蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている。よって、光変換層13は、光照射ユニット20Aから光変換層11を透過した励起光が照射された部分で、各色の蛍光体が励起され、それぞれ入射した光を青色領域の光、緑色領域の光および赤色領域の光に変換して発光する。その結果、観察者からは白色の発光として確認される。そして、光変換層13に入射した励起光は、ここで全て吸収され、光変換層13を透過しない。
【0046】
一方、光変換層11のパターン11aの部分で生じた赤色領域の光は、光変換層13に入射するが、光変換層13に設けられた各色の蛍光体は赤色領域の光によっては励起されない。したがって、光変換層11のパターン11aに対向する光変換層13の部分では、光変換層13は無色透明のままであり、光変換層11から入射した赤色領域の光をそのまま透過する。
【0047】
さらに、光変換層13の各色蛍光体により生じた光、および光変換層13を透過した、光変換層11からの赤色領域の光は、光照射ユニット20Aからみて光変換層13の次に位置している光変換層12に入射する。しかし、光照射ユニット20Aから光学部品10に入射した励起光は、2つの光変換層11、13で全て吸収され、青色領域の光、緑色領域の光および赤色領域の光に変換される。そのため、光照射ユニット20Aからの励起光は、光変換層12には到達せず、光変換層12は透明のままである。
【0048】
次に、もう一方の光照射ユニット20Bから光学部品10に励起光を照射した場合を考える。光照射ユニット20Bから光学部品10に照射された励起光は、まず、光照射ユニット20Bから見て最も手前の光変換層12に入射する。
【0049】
光変換層12には青色蛍光体を含む蛍光材料でパターン12aが形成されているので、この光変換層12に励起光が入射すると、青色蛍光体は励起光によって励起され、パターン12aの部分に入射した励起光を全て青色領域の光に変換して発光する。これによって、パターン12aが形成された部分が青色に発光する。パターン12aの部分に入射した励起光は、ここで全て吸収され、光変換層12を透過しない。一方、光変換層12のパターン12a以外の部分に入射した励起光は、そのまま光変換層12を透過する。
【0050】
その結果、光照射ユニット20Bから見て次の光変換層13へは、光変換層12のパターン12aの部分で生じた青色領域の光と、光変換層12のパターン12a以外の部分を透過した励起光とが入射する。光変換層13では、前述したのと同様、光変換層12を透過した励起光が入射した部分のみで各色の蛍光体が発光する。このようにして、光照射ユニット20Bから光学部品10に入射した励起光は、2つの光変換層12、13で全て吸収され、青色領域の光、緑色領域の光および赤色領域の光に変換される。そのため、光照射ユニット20Bからの励起光は、光変換層11には到達せず、光変換層11は透明のままである。
【0051】
以上説明したように、光学部品10にその光変換層11側から励起光を入射させた場合は、光学部品10は、光変換層11のパターン11aの部分が赤色に発光するとともに、パターン11aに対応する部分以外の光変換層13の部分が白色に発光する。それにより、図2に示すように、表示装置1には、白地に赤色のマーク2が表示される。その逆側、すなわち光変換層12側から励起光を入射させた場合は、光学部品10は、光変換層12のパターン12aの部分が青色に発光するとともに、パターン12aに対応する部分以外の光変換層13の部分が白色に発光する。それにより、図3に示すように、表示装置1には、白地に青色のマーク3が表示される。
【0052】
これらの表示は、観察者が見る方向(すなわち、一方の光照射ユニット20A側から見るか、他方の光照射ユニット20B側から見るか)には依存せず、表示装置1の表裏どちら側から励起光を照射するかに依存する。
【0053】
このように、本形態の表示装置1によれば、複数の光変換層11〜13を重ね合わせた構成を有する光学部品10を用い、その光学部品10への励起光の照射方向を一方の面側からとその反対面側とで切り替えるようにすることで、同じ波長範囲の励起光によって発光する蛍光体を用いつつも、励起光の照射方向に応じて表示の状態を変化させることができる。
【0054】
図1に示した光学部品10では、両側の2つの光変換層11、12の間に、励起光によって全面が白色に発光する光変換層13を配した例を示したが、図4に示すようにそれぞれ蛍光体を含むパターン11a、12aが設けられた2つの光変換層11、12のみで光学部品30を構成することもできる。各光変換層11、12は、図1に示したものと同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0055】
この場合は、矢印A側(光変換層11側)から光学部品30に励起光を照射すると、図5に示すように、光変換層12のパターン12aの上に光変換層11のパターン11aが表示される。2つのパターン11a、12aが重なり合っている部分では、励起光の照射方向について手前側のパターン11aの部分のみが発光し、奥側のパターン12aの部分は発光しない。
【0056】
この逆に、矢印B側(光変換層12側)から光学部品30に励起光を照射すると、図6に示すように、光変換層11のパターン11aの上に光変換層12のパターン12aが表示される。2つのパターン11a、12aが重なり合っている部分では、励起光の照射方向について手前側のパターン12aの部分のみが発光し、奥側のパターン11aの部分は発光しない。
【0057】
なお、図4に示す例において、2つのパターン11a、12aを、同じ色の蛍光体を含む蛍光材料で形成し、光変換層11、12の残りの部分に、赤色、緑色および青色の3色の蛍光体を混合した蛍光材料を設けると、光学部品30への励起光の照射方向に応じて、パターン11a、12aに対応したマークが白地の上に表示される。この場合、表示されるマークはともに同じ色であるが、2つの光変換層11、12の蛍光材料が設けられた領域が重なっている部分の一部(ここでは、両パターン11a、12aが互いに重なっていない部分)では、各光変換層11、12上の蛍光材料は、励起光による発光スペクトルが異なるように蛍光体を含んでいる。
【0058】
あるいは、図4に示す例において、光変換層11、12の基材に紫外線吸収剤を添加するなどして各光変換層11、12に紫外線吸収機能を持たせるとともに、各光変換層11、12の励起光が照射される側の面である外側の面(貼り合わせた面と反対側の面)に、蛍光材料によってパターン11a、12aを設けることもできる。この場合は、パターン11a、12a以外の部分に入射した励起光は基材で吸収され、次の光変換層へは入射しない。このことにより、パターン11a、12a以外の部分に赤色、緑色および青色の3色の蛍光体を混合した蛍光材料を設けなくても、光学部品30への励起光の照射方向に応じて、パターン11a、12aに対応したマークが透明地の上に表示される。
【0059】
このように、基材に紫外線吸収剤を添加することで、基材自身が他の光変換層への励起光の影響を排除することができるので、パターン11a、12aは、互いに異なる蛍光材料で形成されるか、または互いに異なる形状で形成されていれば、互いに重なる位置に設けられていなくてもよい。また、各光変換層11、12の基材を共通化し、実質的に1つの基材の両面にパターン11a、12aを形成した構成とすることもできる。紫外線吸収剤は、基材の蛍光材料が設けられていない部分(パターン11a、11bが形成されていない部分)のみに含有されていてもよい。この場合は、蛍光材料を基材のどちらの面に設けてもよい。
【0060】
あるいは、図7に示すように、それぞれパターン11a、12aが設けられた、前述したのと同様の光変換層11、12の間に、別の2つの光変換層14、15を配置することもできる。光変換層11に隣接する光変換層14には、青色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている。また、光変換層12に隣接する光変換層15には、赤色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている。
【0061】
このように構成された光学部品40では、光変換層11側から励起光を照射すると、光変換層11のパターン11aの部分が赤色に発光するとともに、パターン11aに対応する部分以外の光変換層14の部分が青色に発光する。その逆側、すなわち光変換層12側から励起光を照射すると、光変換層12のパターン12aの部分が青色に発光するとともに、パターン12aに対応する部分以外の光変換層15の部分が赤色に発光する。
【0062】
図7に示す光学部品40では、外側の光変換層11、12の間に配された2つの光変換層14、15は、それぞれが隣接する光変換層11、12に設けられたパターン11a、12aに対応する部分に励起光は照射されない。したがって、図8に示す光学部品50のように、外側にある2つの光変換層11、12のパターン11a、12aと相補関係にあるパターン14’a、15’aを、光変換層11、12にそれぞれ隣接する光変換層14’、15’に設けても、図7に示した例と同様に発光させることができる。図8に示す例は、発光に関与しない部分では蛍光体が設けられていないので、蛍光体の使用量を低減することができる。
【0063】
ここまでの例では、2つの光照射ユニットを用いて発光状態を2通りに変化させることを前提にして説明したが、3つ以上の光照射ユニットを用いれば、表示状態がさらに変化する表示装置を実現することができる。
【0064】
その幾つかの例を以下に説明する。以下の説明において、上述した要素と同じ要素については、上述した要素と同じ参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0065】
図9に示す表示装置では、光学部品60は、互いに重なり合うように配された3つの光変換層11、12、16を有する。外側の2つの光変換層11、12の間に位置する光変換層16には、緑色蛍光体を含む蛍光材料がその一面全体にわたって設けられている。中間の光変換層16と、それに隣接する光変換層12との間に、第3の光照射ユニット20Cが配置されている。光照射ユニット20Cは、他の光照射ユニット20A、20Bと同様に構成されており、その導光板は、光源からの励起光を中間の光変換層16に向けて出射する。なお、光照射ユニット20Cは、励起光を外側の光変換層11、12を通さずに中間の光変換層16に入射させることができるように構成されていれば、もう一方の光変換層11と中間の光変換層16との間に配置されていてもよい。
【0066】
表示装置をこのように構成することで、光照射ユニット20Aから光学部品60に励起光を照射した場合は、その光照射ユニット20Aに最も近い光変換層11でパターンの部分が赤色に発光し、次の光変換層12では残りの部分が緑色に発光する。これによって、光学部品60に入射した励起光は全て赤色の波長範囲および緑色の波長範囲の光に変換されるので、残りの光変換層12の蛍光体は励起されず、表示装置には緑地に光変換層11による赤色のパターンが表示される。
【0067】
反対側の光照射ユニット20Bから励起光を照射した場合は、その光照射ユニット20Bに最も近い光変換層12でパターンの部分が青色に発光する。そして、光変換層12で生じた青色の光および光変換層12で変換されずに光変換層12を透過した励起光は光照射ユニット20Cを透過して次の光変換層16に入射し、次の光変換層16では、変換されない励起光が入射した部分が緑色に発光する。これにより、光学部品60に入射した励起光は全て青色の波長範囲および緑色の波長範囲の光に変換されるので、残りの光変換層11の蛍光体は励起されず、表示装置には緑地に光変換層12による青色のパターンが表示される。
【0068】
一方、光学部品60の間に配されている光照射ユニット20Cから励起光を照射した場合、励起光は中間の光変換層16に入射する。この光変換層16には緑色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられているので、光照射ユニット20Cから入射した励起光はすべてこの光変換層16で変換されて緑色領域の光として発光する。これにより、光学部品60に入射した励起光は全て緑色の波長範囲の光に変換されるので残りの光変換層11、12の蛍光体は励起されず、表示装置には全体が緑色に表示される。
【0069】
このように、3つの光照射ユニット20A、20B、20Cからの励起光をそれぞれ異なる光変換層に入射させるようにすることで、励起光を照射する光照射ユニット20A、20B、20Cを適宜切り替えることによって3通りの表示が可能となる。
【0070】
図10に示す表示装置は、6つの光変換層11、12、14〜17を有する光学部品70と、3つの光照射ユニット20A、20B、20Cとを備えている。
【0071】
図10に示す光学部品70では、2つの光変換層11、16の間に配置された3つの光変換層15、17、14が、図9に示す光学部品60に対してさらに追加されている。光変換層15は、赤色蛍光体を含む蛍光材料でパターンが設けられた光変換層11に隣接して配置され、青色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている。光変換層14は、緑色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている光変換層16に隣接して配置され、赤色蛍光体を含む蛍光材料が全面に設けられている。光変換層17は、これら2つの光変換層15、14の間に配置され、緑色蛍光体を含む蛍光材料が中央部に矩形状のパターンで設けられている。光照射ユニット20Cは、2つの光変換層15、17間に配置され、緑色蛍光体を含む蛍光材料で矩形状のパターンが設けられた光変換層17に励起光を照射するように構成されている。
【0072】
このように構成された表示装置によれば、光照射ユニット20Aから光学部品70に励起光を照射した場合は、光変換層11でパターンの部分が赤色に発光するとともに、次の光変換層15では残りの部分が青色に発光し、結果的に、表示装置には青地に光変換層11による赤色のパターンが表示される。反対側の光照射ユニット20Bから励起光を照射した場合は、光変換層12でパターンの部分が青色に発光するとともに、次の光変換層では残りの部分が緑色に発光し、結果的に、表示装置には緑地に光変換層12による青色のパターンが表示される。
【0073】
中間の光照射ユニット20Cから光学部品70に励起光を照射した場合は、光変換層17でパターンの部分が緑色に発光するとともに、次の光変換層14では残りの部分が赤色に発光し、結果的に、表示装置には赤地に光変換層17による緑色のパターンが表示される。
【0074】
図9および図10に示した表示装置を応用することにより、4つ以上の光照射ユニットを用いて4通り以上に表示状態を変化させることができる表示装置が可能である。
【0075】
以上、本発明の好ましい幾つかの実施形態について説明してきた。ここで、本発明に好ましく用いられる蛍光体について説明する。
【0076】
本発明で用いられる蛍光体は、360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を実質的に全て変換する青色蛍光体、赤色蛍光体および緑色蛍光体の1以上を含む。各色蛍光体には有機蛍光体および無機蛍光体がある。これらの中でも、吸光度が高く、励起光を殆ど吸収できるという観点から、本発明では有機蛍光体を好ましく用いることができる。すなわち、結晶を分散させた無機蛍光体では、吸光効率が低いため、透明なバインダ樹脂に相溶し、分子レベルで吸光する有機蛍光体が望ましい。以下に、本発明で好ましく用いられる各色蛍光体について詳しく説明する。
【0077】
[青色有機蛍光体]
本発明で用いられる青色有機蛍光体は、380nm〜420nmの波長範囲にピーク波長大を有する励起光を用いて励起させることにより、青色の発光(通常420nm以上、好ましくは440nm以上、また、通常480nm以下、好ましくは470nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光)を呈するものであり、下記一般式(1)で表される構造からなる化合物(以下「化合物(1)」と称す場合がある。)を含むものである。なお、本発明の有機蛍光体は青色発光を呈するものであるが、R1〜R4の置換基を選択することにより緑色発光を呈するものを得ることもできる。
【0078】
【化3】
式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、置換基を有していても良いアルキル基をあらわす。
【0079】
化合物(1)を含む有機蛍光体は、発光波長の半値幅が狭く、色純度に優れる点において好ましい。
【0080】
以下に、化合物(1)について詳細に説明する。
【0081】
<語句の説明>
本発明において「置換基を有していても良い」とは、置換基を1以上有していても良いことを意味する。
【0082】
<R1〜R4>
(置換基R1〜R4の種類)
R1〜R6はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、置換基を有していても良いアルキル基をあらわす。
【0083】
耐光性を得るという点で、R1〜R4の置換基は、フッ素原子もしくはパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0084】
アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、具体例としてはメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0085】
<分子量>
以上説明した化合物(1)は、単位量あたりの分子数を増やすことによる高効率化の点から、通常分子量1500以下、中でも1200以下であることが好ましい。なお、化合物(1)は、潮解性による取り扱いの困難さの理由から、通常水不溶性であることが好ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であることを言う。
【0086】
<具体例>
化合物(1)の具体例を以下に例示する。
【0087】
【化4】
ただし、化合物(1)は、本発明はその要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
【0088】
<合成法>
化合物(1)は、下記スキームで表される種々の方法によって容易に合成することができる。
【0089】
【化5】
ピレンと臭素をニトロベンゼン中で加熱還流することにより得られる1,3,6,8−テトラブロモピレンと、各種ボロン酸や有機マグネシウムハライド、スズ化合物、アセチレン誘導体、エチニル誘導体とから、パラジウムなどの触媒を用いたカップリング反応により得ることができる。
【0090】
このようにして得られる化合物(1)は、380nm〜420nmの波長範囲にピーク波長を有する励起光を用いて励起することにより、青色から緑色の光、即ち、波長420nm〜550nmの光を発するものであり、高い耐熱性、固体状態での高い発光強度、媒体への高い分散性などの特長を有するものである。
【0091】
なお、化合物(1)の耐熱性を示す指標として、融点と分解温度が挙げられ、示差走査熱量計(DSC)や示差熱重量分析装置(TG−DTA)で容易に確認することができる。
【0092】
励起光源として好適に用いられる可視光発光ダイオードは、経時使用により熱を帯びるが、励起光源の熱により、有機蛍光体が溶融したり分解したりすると、発光効率の低下や色ムラに繋がるため、有機蛍光体には高い耐熱性が求められている。
【0093】
従って、有機蛍光体としての化合物(1)には、好ましくは融点120℃以上、さらに好ましくは融点150℃以上であることが求められる。
【0094】
また、化合物(1)の分解温度としては、窒素フロー条件下で5%以上重量減少する温度が150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。
【0095】
有機蛍光体材料の固体状態での発光強度に関しては、蛍光分光測定器(日立分光高度計F−4500)を用いて測定することができる。
【0096】
化合物(1)の発光強度は通常1.0×107cps(count/s)以上、好ましくは2.0×107cps(count/s)以上、特に好ましくは3.0×107cps(count/s)以上である。発光強度は無機蛍光体と同程度以上であれば有機蛍光体として十分使用することが可能であり、化合物(1)の発光強度として好ましくは106cps(count/s)以上、より好ましくは107cps(count/s)以上である。
【0097】
また、化合物(1)は、発光ピークの半値幅(前記発光強度の1/2強度における最大発光ピークの幅)が、通常200nm以下、好ましくは150nm以下、特に好ましくは100nm以下である。
【0098】
これらの特性は、サンプルを乳鉢などで細かく粉砕したあと、専用の測定セルに詰めて測定することにより得ることができる。
【0099】
なお、有機化合物である化合物(1)は、無機蛍光体に比べて明らかに比重が小さいため、媒体への分散性に関しては無機蛍光体に比べて明らかに良く、このことは有機蛍光体の利点である。
【0100】
有機化合物(1)は、分子間相互作用の効果が大きく、フラットな励起スペクトルが得られることから、有機蛍光体材料において固体状態で使用されることが好ましい。ここで固体状態とは、結晶状態、アモルファス状態、固溶体状態、もしくはそれらの混合状態であり、特に励起子寿命の長い結晶状態の微粒子で使用されることが好ましい。即ち、本発明にかかる蛍光材料は、前述の化合物(1)を含む本発明の有機蛍光体を粉末状態で含むことが特徴である。
【0101】
[赤色有機蛍光体]
本発明で用いることのできる赤色有機蛍光体としては、例えば特開2005−276785号公報などに開示される、β―ジケトネート、芳香族カルボン酸、またはブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体のうちの少なくとも1種からなる赤色有機蛍光体が挙げられる。
【0102】
ここで、希土類元素イオン錯体における希土類元素としては、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)等の元素が使用できる。中でも、近紫外光照射において高輝度に発光する赤色蛍光体となることから、ユーロピウム(Eu)が好適に用いられる。
【0103】
(i)β−ジケトネートのアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体の説明
本発明にかかる赤色蛍光体として使用できる希土類元素イオン錯体のうち、β−ジケトネートのアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体(β−ジケトネートから誘導されるアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体;ジケトネート錯体)の例としては、一般式Eu(β−ジケトネート)3Lnで表され、β−ジケトン化合物から誘導されるβ−ジケトネートアニオンを配位子とする錯体が挙げられる。ここで、Lは単座または複座を有する中性配位子を表わし、nは1または2を表わす。
【0104】
また、β−ジケトネートのアニオンが誘導されるβ−ジケトン化合物は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、励起波長域の点から、その構造中に、β−ジケトン構造と、少なくとも1つの、置換基を有することがある芳香族環または芳香族複素環(以下適宜「芳香族基」という)を置換基として有することが好ましい。β−ジケトン構造と芳香族基との連結方法は、直接でも2価の基で連結してもよいが、少なくとも一方のケトンに直接芳香族環が連結しているものが好ましい。
【0105】
上記の芳香族基の種類は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、芳香族基のうち、芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、インデン、ビフェニレン、アセナフテン、フルオレン、テトラリン、インダン等の芳香族単環式炭化水素または芳香族縮合多環式炭化水素が挙げられる。一方、芳香族基のうち、芳香族複素環としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピリジン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾピラン、カルバゾール、キサンテン、キノリン、トリアジン等の芳香族単環式複素環または芳香族縮合多環式複素環等が挙げられる。
【0106】
また、上記のとおり、芳香族基(即ち、芳香族環または芳香族複素環)は置換基を有していてもよい。この際、芳香族基の置換基は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その例を挙げると、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等のフルオロアルキル基;エチニル基;フェニルエチニル、ピリジルエチニル、チエニルエチニル等のアリールエチニル基;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基;フェニル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル等のアラルキル基;フェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ等のアリールオキシ基;ヒドロキシル基;アリル基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、トルオイル等のアシル基;アセトキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、アセチルメチルアミノ等の置換アミノ基;メチルチオ、エチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ等の置換チオ基;メルカプト基;エチルスルフォニル、フェニルスルフォニル等の置換スルフォニル基;シアノ基;フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン基等が挙げられる。これらの置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0107】
また、β−ジケトネートのアニオンが誘導されるβ−ジケトン化合物は、上記の芳香族基以外の基を有していてもよい。β−ジケトン化合物を構成する上記の芳香族基以外の基としては、例えば、前述した芳香族環または芳香族複素環の置換基と同様な置換基(但し、ハロゲン基は除く)が挙げられる。
【0108】
以下に、β−ジケトネートアニオンが誘導されるβ−ジケトン化合物の具体例を示す。
【0109】
【化6】
【0110】
【化7】
ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0111】
さらに、上記の一般式「Eu(β−ジケトネート)3Ln」中、中性配位子Lは、中性配位子であれば、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。ただし、通常は、Eu3+に配位可能な、N、O等の原子を有する化合物である。例えば、アミン、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、ケトン、スルホキシド、エーテル等が挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、中性配位子Lは、Eu3+への合計配位数が7または8となるように選択される。
【0112】
中性配位子Lの具体例を挙げると、例えばアミンとしては、置換基を有することもあるピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン等が挙げられる。
【0113】
また、例えばアミンオキシドとしては、置換基を有することもあるピリジン−N−オキシド、イソキノリン−N−オキシド、2,2’−ビピリジン−N,N’−ジオキシド、1,10−フェナントロリン−N,N’−ジオキシド等上記アミンのN−オキシド等が挙げられる。
【0114】
さらに、例えばホスフィンオキシドとしては、置換基を有することもあるトリフェニルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等のアルキルホスフィンオキシド;1,2−エチレンビス(ジフェニレンホスフィンオキシド)、(ジフェニルホスフォンイミド)トリフェニルホスフォラン、リン酸トリフェニルエステル等が挙げられる。
【0115】
また、例えばケトンとしては、置換基を有することもあるジピリジルケトン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0116】
さらに、例えばスルホキシドとしては、置換基を有することもあるジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド等が挙げられる。
【0117】
また、例えばエーテルとしては、置換基を有することもあるエチレングリコールジメチルエーテルやジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0118】
さらに、これらの中性配位子Lが置換基を有する場合、その置換基としては、芳香族基の置換基として前述した置換基が例示される。
【0119】
以下に、中性配位子Lの具体例を示す。
【0120】
【化8】
【0121】
【化9】
本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0122】
(ii)芳香族カルボン酸のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体
本発明にかかる赤色蛍光体として使用できる希土類元素イオン錯体のうち、芳香族カルボン酸(芳香族環を含む置換基を有するカルボン酸)のアニオンを配位子とする錯体(芳香族カルボン酸から誘導されるアニオンを配位子とする錯体;芳香族カルボン酸錯体)としては、例えば、下記一般式(r4)で表されるユーロピウム錯体が挙げられる。
〔R5−(X)n−COO〕3Eu(R6)2 (r4)
〔一般式(r4)中、R5は、芳香族環を含む1価の基を示し、Xは2価の連結基を示し、nは0又は1であり、R6はルイス塩基からなる補助配位子を示す。〕
前記一般式(r4)で表されるユーロピウム錯体は、芳香族環を含み、π電子を8個以上有し、π電子共役系を構成するカルボン酸イオンを配位子とすることが、吸収波長域の点から好ましい。また、芳香族環の芳香族単環としての個数は、カルボン酸イオンの母体化合物の三重項エネルギーが、ユーロピウムイオン励起状態エネルギーレベルよりも高いものであれば特に制限されないが、通常、3個以下であるのが好ましい。芳香族単環としての個数が4個以上の場合、例えば、ベンゼン環を4個有するピレン等の化合物は、半導体発光素子等の第1の発光体からの光を吸収して励起された三重項エネルギーが低くなり、ユーロピウム錯体が発光しなくなる虞がある。
【0123】
前記一般式(r4)において、R5は、芳香族環を含む1価の基を表わす。中でも、芳香族単環としての個数が3個以下であるものが好ましい。その芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インデン、ビフェニレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントレン、テトラリン、インダン等の芳香族単環式炭化水素化合物及び芳香族縮合多環式炭化水素化合物、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン等の芳香族炭化水素化合物からの誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン等の芳香族単環式複素環化合物、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、クマリン、ベンゾピラン、カルバゾール、キサンテン、キノリン等の複素環縮合芳香族炭化水素化合物等が挙げられる。
【0124】
また、これらの芳香族環は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等のフルオロアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;エチニル基;フェニルエチニル、ピリジルエチニル、チエニルエチニル等のアリールエチニル基;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基;フェニル、ナフチル等のアリール基;ベンジル、フェネチル等のアラルキル基;フェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ等のアリールオキシ基;ヒドロキシル基;アリル基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、トルオイル、ビフェニルカルボニル等のアシル基;アセトキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、アセチルメチルアミノ等の置換アミノ基;メチルチオ、エチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ等の置換チオ基;メルカプト基;エチルスルフォニル、フェニルスルフォニル基等の置換スルフォニル基;シアノ基;フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン基等が挙げられ、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。これらの中でも、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、アリールオキシ基、アラルキル基、エチニル基、ハロゲン基が好ましい。
【0125】
また、前記一般式(r4)において、Xは2価の連結基を表わす。さらに、前記一般式(r4)において、nは0又は1を表わす。したがって、前記一般式(r4)におけるカルボン酸イオンは、2価の連結基であるXを有さない場合(n=0)と、有する場合(n=1)とに分類される。更に、2価の連結基であるXを有する場合(n=1)は、Xが、カルボニル基を有する場合と有さない場合との2種類の形態に分類される。このため、前記一般式(r4)におけるカルボン酸イオン〔R5−(X)n−COO〕-は、更に、カルボニル基を有さない下記一般式(r5)とカルボニル基を有する下記一般式(r6)とで表される。一般式(r4)で表されるユーロピウム錯体は、これらのカルボン酸イオンを配位子とする錯体構造のいずれであってもよい。
【0126】
R5−R7−COO- (r5)
R5−CO−(R7)m−COO- (r6)
〔式(r5)及び(r6)中、R5は式(r4)におけるものと同じであり、R7は2価の連結基を示し、mは0又は1である。〕
前記一般式(r5)及び(r6)におけるR7としての2価の連結基としては、例えば、メチレン、エチレン等のアルキレン基、ビフェニル、テルフェニル、ビナフチル、シクロヘキシルベンゼン、フェニルナフタレン等の環集合炭化水素化合物から誘導される2価基、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルボルナン、ビシクロヘキシル等の脂環式炭化水素化合物から誘導される2価基、前述した芳香族環の具体例として挙げたと同様の化合物から誘導される2価基、ピラゾリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、モルホリン等の脂肪族複素環化合物から誘導される2価基、−SCH2−等のチオアルキレン基、−OCH2−等のオキシアルキレン基、及びビニレン基等が挙げられる。また、これらの2価の連結基は置換基を有していてもよい。
【0127】
さらに、前記一般式(r4)において、R6はルイス塩基からなる補助配位子を表わす。ルイス塩基からなる補助配位子は特に限定されないが、通常、ユーロピウムイオンに配位可能な窒素原子又は酸素原子を有するルイス塩基化合物から選択される。それらの例としては、置換基を有することがあるアミン、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、スルホキシド等が挙げられる。補助配位子として使用される2個のルイス塩基化合物は、それぞれ異なる化合物でもよく、又、2個の化合物で1つの化合物を形成していてもよい。
【0128】
具体的には、例えば、アミンとしては、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン等が挙げられる。アミンオキシドとしては、ピリジン−N−オキシド、2,2’−ビピリジン−N,N’−ジオキシド等の上記アミンのN−オキシドが挙げられる。ホスフィンオキシドとしては、トリフェニルホスフィンオキシド、トリメチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等が挙げられる。スルホキシドとしては、ジフェニルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド等が挙げられる。これらに置換する置換基としては、前述した置換基が例示される。中でも、特に、アルキル基、アリール基、アルコシキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン基等が好ましい。
【0129】
これらのルイス塩基化合物の中でも、ビピリジンやフェナントロリン等のように、分子内に配位する原子、例えば窒素原子等の2個存在する場合は、1つのルイス塩基化合物で2個の補助配位子と同様な働きをさせてもよい。なお、これらのルイス塩基化合物に置換する置換基としては、前述した置換基が例示される。中でも、特に、アルキル基、アリール基、アルコシキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン基等が好ましい。補助配位子として使用するルイス塩基化合物の具体例(1〜23)を以下に例示する。
【0130】
【化10】
なお、本実施の形態において使用するルイス塩基化合物は、これらに限定されるものではない。
【0131】
前記一般式(r4)におけるカルボン酸イオンが誘導されるカルボン酸の具体例を以下に例示する。尚、本実施の形態においては、これらに限定されるものではない。
【0132】
前記一般式(r4)においてnが0の場合のカルボン酸としては、以下の化合物が挙げられる。
【0133】
【化11】
また、前記一般式(r4)においてnが1であり、XがR7である場合の、前記一般式(r5)で表されるカルボン酸としては、以下の化合物が挙げられる。
【0134】
【化12】
また、前記一般式(r6)において、mが0の場合のカルボン酸としては、以下の化合物が挙げられる。
【0135】
【化13】
また、前記一般式(r6)において、mが1の場合のカルボン酸としては、以下の化合物が挙げられる。
【0136】
【化14】
【0137】
【化15】
【0138】
【化16】
(iii)ブレンステッド酸のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体
本発明にかかる赤色蛍光体として使用できる希土類元素イオン錯体のうち、ブレンステッド酸のアニオンを配位子とする錯体(ブレンステッド酸から誘導されるアニオンを配位子とする錯体;ブレンステッド酸錯体)としては、例えば、特開2005−8872号公報に記載されている赤色有機蛍光体が挙げられる。
【0139】
(iv)好ましい赤色蛍光体の例
上述した本発明にかかる赤色蛍光体のうち、特に以下に示す赤色蛍光体が好ましい。
【0140】
【化17】
【0141】
【化18】
【0142】
【化19】
【0143】
【化20】
【0144】
【化21】
【0145】
【化22】
【0146】
【化23】
【0147】
【化24】
【0148】
【化25】
【0149】
【化26】
また、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料などを用いることもできる。
【0150】
[緑色有機蛍光体]
本発明で好ましく用いることができる緑色有機蛍光体としては、一般式(g1)または一般式(g2)で表される化合物、それらの互変異性体、または、亜鉛錯体を用いることができる。
【0151】
【化27】
【0152】
【化28】
【0153】
一般式(g1)および一般式(g2)で表される化合物において、R11およびR12は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、X1〜X4およびY1〜Y10は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニルチオ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアミノ基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、−COOR13基(基中、R13は水素原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよいアリール基を表す)、−COR14基(基中、R14は水素原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、あるいはアミノ基を表す)、あるいは−OCOR15(基中、R15は置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよいアリール基を表す)を表し、さらに、X1〜X4、Y1〜Y4およびY5〜Y10から選ばれる隣接する基は、置換している炭素原子と共に、置換基を有していてもよい炭素環式脂肪族環、置換基を有していてもよい炭素環式芳香族環、置換基を有していてもよい複素環式脂肪族環、または、置換基を有していてもよい複素環式芳香族環を形成していてもよい。尚、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基などの炭素環式芳香族基、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基などの複素環式芳香族基を表す。
【0154】
一般式(g1)および一般式(g2)において、R11およびR12は、好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の置換基を有していてもよいアルキル基、炭素数6〜12のアリール基を表し、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜6の地喚起を有していてもよいアルキル基、炭素数6〜10のアリール基を表す。尚、R13およびR12の置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基の具体例としては、後述するX1 〜X4およびY1〜Y10の具体例として述べる置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を挙げることができる。
【0155】
また、一般式(g1)および一般式(g2)において、X1 〜X4およびY1〜Y10の直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、直鎖、分岐または環状のアルキルチオ基、直鎖、分岐または環状のアルケニル基、直鎖、分岐または環状のアルケニルオキシ基、および直鎖、分岐または環状のアルケニルチオ基は置換基を有していてもよく、例えば、ハロゲン原子、炭素数4〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数4〜20のアラルキルオキシ基、炭素数5〜20のアラルキルオキシアルコキシ基、炭素数3〜20のアリールオキシ基、炭素数4〜20のアリールオキシアルコキシ基、炭素数5〜20のアリールアルケニル基、炭素数6〜20のアラルキルアルケニル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルコキシアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルケニルチオ基、炭素数4〜20のアラルキルチオ基、炭素数5〜20のアラルキルオキシアルキルチオ基、炭素数5〜20のアラルキルチオアルキルチオ基、炭素数3〜20のアリールチオ基、炭素数4〜20のアリールオキシアルキルチオ基、炭素数4〜20のアリールチオアルキルチオ基、炭素数4〜20のヘテロ原子含有の環状アルキル基、あるいは水酸基、シアノ基、ハロゲン原子などで単置換または多置換されていてもよい。さらに、これらの置換基に含まれるアリール基は、さらにハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数3〜10のアリール基、炭素数4〜10のアラルキル基などで置換されていてもよい。
【0156】
一般式(g1)および一般式(g2)において、X1 〜X4およびY1〜Y10のアラルキル基、アラルキルオキシ基、アラルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、およびアリールチオ基中のアリール基は置換基を有していてもよく、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数4〜20のアラルキル基、炭素数3〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキルオキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルオキシアルキル基、炭素数3〜20のアルケニルオキシアルキルオキシ基、炭素数4〜20のアラルキルオキシ基、炭素数5〜20のアラルキルオキシアルキル基、炭素数5〜20のアラルキルオキシアルキルオキシ基、炭素数3〜20のアリールオキシ基、炭素数4〜20のアリールオキシアルキル基、炭素数4〜20のアリールオキシアルキルオキシ基、炭素数2〜20のアルキルカルボニル基、炭素数3〜20のアルケニルカルボニル基、炭素数5〜20のアラルキルカルボニル基、炭素数4〜20のアリールカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数3〜20のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数5〜20のアラルキルオキシカルボニル基、炭素数4〜20のアリ−ルオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数5〜20のアラルキルカルボニルオキシ基、炭素数4〜20のアリールカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数4〜20のアラルキルチオ基、炭素数3〜20のアリールチオ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、アミノ基、炭素数1〜20のN−モノ置換アミノ基、炭素数2〜40のN,N−ジ置換アミノ基などの置換基で単置換あるいは多置換されていてもよい。さらに、これらの置換基に含まれるアリール基は、さらにハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基などで置換されていてもよい。
【0157】
一般式(g1)および一般式(g2)において、X1〜X4およびY1〜Y10のアミノ基は置換基を有していてもよく、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20のアラルキル基、あるいは炭素数3〜20のアリール基で単置換またはジ置換されていてもよい。一般式(g1)および一般式(g2)において、R13、R14およびR15のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよく、例えば、X1 〜X4およびY1〜Y10で挙げた置換基で単置換または多置換されていてもよい。
【0158】
R13 は、好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基であり、より好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基である。
【0159】
R14は、好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基、あるいはアミノ基であり、より好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基、あるいはアミノ基である。
【0160】
R15は、好ましくは、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、あるいは置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基である。
【0161】
X1〜X4およびY1〜Y10は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルケニルチオ基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜24のアラルキルチオ基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリール基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリールチオ基、未置換のアミノ基、総炭素数1〜24の置換アミノ基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、−COOR13、−COR14、あるいは−OCOR15(但し、基中、R13〜R15は前記に同じ意味を表す)であり、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい総炭素数1〜12の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数1〜12の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数2〜12の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい総炭素数7〜16のアラルキル基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜12のアリール基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜24のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい総炭素数6〜12のアリールチオ基、未置換のアミノ基、総炭素数1〜12の置換アミノ基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、−COOR13、−COR14、あるいは−OCOR15(但し、基中、R13〜R15は前記に同じ意味を表す)である。
【0162】
さらに、X1〜X4、Y1〜Y4およびY5〜Y10から選ばれる隣接する基は、置換している炭素原子と共に、置換基を有していてもよい炭素環式脂肪族環、置換基を有していてもよい炭素環式芳香族環、置換基を有していてもよい複素環式脂肪族環、または、置換基を有していてもよい複素環式芳香族環を形成していてもよく、好ましくは、総炭素数4〜20の置換基を有していてもよい炭素環式脂肪族環、総炭素数4〜20の炭素環式芳香族環、総炭素数4〜20の置換基を有していてもよい複素環式脂肪族環環、総炭素数4〜20の複素環式芳香族環を形成していてもよい。
【0163】
上述した化合物の中でも、本発明においてより好ましく用いることのできる緑色有機蛍光体としては、以下の式で表されるキノリン誘導体とフタルイミドの縮合化合物が挙げられる。
【0164】
【化29】
本化合物は、通常、黄色味を呈しており、そのまま利用すると青色の光を吸収する。従って、上記式で表される緑色有機蛍光体を含む蛍光材料を無色透明とする方法としては、例えば以下のような方法を挙げることができる。
(i)この化合物の含有濃度を低くし、実質的に無色透明となるようにする。
(ii)この化合物にポリマーコート等を施す。具体的には、例えば少量の前記化合物を溶媒に溶かして、前記化合物と相互作用しやすいポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリフルオレンなどの芳香族系のポリマーを挙げることができる。)に練り込んで、乾燥・硬化させ、ナノ粒子にする。
【0165】
本発明による表示装置は種々の表示装置に利用することができる。
【0166】
例えば、図1〜図3を用いて説明した表示装置1は、駅の改札口や建物の入場ゲートなどの通行案内表示に利用することができる。また、光変換層11、12に設けるパターン11a、12aを他の図形または文字などを表すパターンとすれば、表示を2通りに切り替えられる他の案内表示装置に利用可能である。もちろん、図9や図10に示したような構成を利用すれば、表示を3通りに切り替えられる案内表示装置にも利用できる。
【0167】
あるいは、本発明による表示装置は、時計にも利用可能である。図11に、本発明による表示装置を文字盤に利用した腕時計の模式的断面図を示す。
【0168】
本形態の腕時計100は、水晶振動子を備えたムーブメント160と、ムーブメント160からの電気信号に基づいて時刻をデジタル表示する文字盤130と、文字盤130の上側および下側にそれぞれ設けられた2つの光照射ユニット171、172と、を有する。文字盤130は、光学部品140と、光学部品140の下面に配置された半透過反射板150とを有する。光学部品140は、一対の透明な電極基板の間に液晶を封止した構成を有する液晶セル131と、液晶セル131の下面に配置された3つの光変換層141〜143を含んでいる。
【0169】
これら各部品は、上面に風防120が設けられたケース110内に収納されている。
【0170】
光変換層141〜143は互いに重ねられて配置されており、光変換層141〜143には、図12に示すように蛍光材料が設けられている。すなわち、光変換層141には、赤色蛍光体を含む蛍光材料によるパターン141a、および青色蛍光体を含む蛍光材料によるパターン141bが設けられている。光変換層142にも、赤色蛍光体を含む蛍光材料によるパターン142a、および青色蛍光体を含む蛍光材料によるパターン142bが設けられているが、これらのパターン142a、142bは、光変換層141のパターン141a、141bとは異なる配置および形状で光変換層142に設けられている。これらの変換層141、142の間に配置されている光変換層143には、赤色、緑色および青色の3色の蛍光体を混合した蛍光材料が全面にわたって設けられている。本形態では、光変換層141が下の光照射ユニット171側を向くように配置される。
【0171】
光照射ユニット171、172は、それぞれ独立して励起光を照射する。腕時計100には、これら光照射ユニット171、172を駆動させるためのスイッチ(不図示)が設けられている。光照射ユニット171、172から照射される励起光は、前述したものと同様の波長範囲にピーク波長を有している。また、光照射ユニット171、172は、光学部品140の全面に均一に励起光を照射できるように導光板を有していてもよい。
【0172】
以上のように構成された腕時計100によれば、風防120を通してケース110の内部に入射してきた光は、上側の光照射ユニット171、液晶セル131、各光変換層141〜143を透過し、半透過反射板150で反射される。これによって、液晶セル130に表示された時刻などの情報を視認することができる。
【0173】
所定の操作によって下側の光照射ユニット172を駆動すると、励起光は、半透過反射板150を透過して光学部品140に入射する。光学部品140の下側から励起光が入射すると、光変換層141でパターン141a、142bの部分がそれぞれ赤色および青色に発光するとともに、次の光変換層143では残りの部分が白色に発光する。これにより、液晶セル131による時刻などの表示の背景に、光変換層141に設けられたパターン141a、141bに対応した赤色、青色および白色のパターンが表示される(図13参照)。
【0174】
一方、上側の光照射ユニット171を駆動すると、励起光は、液晶セル131を透過して光変換層142に入射する。光変換層142に励起光が入射すると、光変換層142でパターン142a、142bの部分がそれぞれ赤色および青色に発光するとともに、次の光変換層143では残りの部分が白色に発光する。これにより、液晶セル131による時刻などの表示の背景に、光変換層142に設けられたパターン142a、142bに対応した赤色、青色および白色のパターンが表示される(図14参照)。
【0175】
ここでは、3色の蛍光体を含む蛍光材料が設けられた光変換層143を他の2つの光変換層141、142の間にサンドイッチした構成を有する光学部品140を用いた例を示したが、両側の光変換層141、142の基材として紫外線吸収剤を添加したものを用いることもできる。蛍光材料は、各光変換層141、142の外側の面に設けられる。このような構成によれば、白色の発光は生じないが、中間の光変換層143は不要となり、光学部品140の構成が簡単になる。
【0176】
また、ここでは2つの光照射ユニット171、172からの励起光の照射を切り替えることにより表示状態が2通りに変化する例を示したが、図9や図10に示した構成を利用または応用することによって、3つ以上の光照射ユニットを用いて表示状態を3通り以上に変化させることもできる。
【実施例】
【0177】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0178】
本実施例では、図15に示す光学部品80を作製した。光学部品80は、赤色蛍光体を含む蛍光材料が塗布された光変換層81と、青色蛍光体を含む蛍光材料が塗布された光変換層82とを有する。
【0179】
赤色蛍光体を含む蛍光材料には、アクリル系樹脂であるPMMA(アルドリッチ社製、平均分子量Mw:35万)をバインダ樹脂として用い、そのバインダ樹脂0.6gと、下記構造式で表される赤色有機蛍光体(Eu(TTA)3Phen)0.3gとを溶剤(トルエン)6g中に相溶状態で溶解させたものを用いた。
【0180】
【化30】
この蛍光材料を、ワイヤーバー#40を用いて基材(PET製のフィルム)の片面全面に塗布した。これを15分間、自然乾燥させることによって、基材の片面に蛍光材料からなる被膜を形成し、光変換層81を得た。得られた光変換層81は、若干オレンジ色味を帯びていたが実質的には無色透明であった。
【0181】
青色蛍光体を含む蛍光材料には、上記のバインダ樹脂0.6gと、以下の合成例2によって製造された青色有機蛍光体0.3gとを溶剤(トルエン)6g中に相溶状態で溶解させたものを用いた。この蛍光材料を、上記と同様にPET製のフィルムの片面全体に塗布し、15分間、自然乾燥させることによって、光変換層82を得た。得られた光変換層82は、実質的に無色透明であった。
【0182】
[合成例1]青色蛍光体1,3,6,8−テトラブロモピレンの製造
【0183】
【化31】
ピレン(東京化成(株)製:試薬、純度95%)27gを水195mLに加え、テトラグライム(東京化成(株)製:試薬)7mLを加え、さらに塩酸70mLを加えて、90℃にて2時間攪拌してピレンの水分散液を調整した。次いで、40℃にて、臭素カリウム(東京化成(株)製:試薬)47gを加えた。そして、温度を保持したまま、臭素酸ソーダ(東京化成(株)製:試薬)30gを水110mLに溶解させた臭素酸ソーダ溶液を、3時間かけて滴下した。その後、濾別し、メタノール約300gにて充分に洗浄し、次いで、85〜95℃で乾燥して、1,3,6,8−テトラブロモピレン70gを得た。
【0184】
[合成例2]青色蛍光体1,3,6,8−テトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ピレンの製造
【0185】
【化32】
3−トリフルオロメチルフェニルボロン酸(アルドリッチ(株)製:試薬)15g、前記合成例1で製造した1,3,6,8−テトラブロモピレン9.2g、及び炭酸セシウム6.4g(キシダ化学(株)製:試薬)にトルエン400ml(純正化学(株)製:試薬)、エタノール50ml(純正化学(株)製:試薬)、純水50mlを入れ、窒素置換した後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)2g(東京化成(株)製:試薬)を加え、7時間加熱還流をおこなった。
【0186】
反応溶液を減圧濃縮したのち、水100mL加え、ジクロロメタンで数回抽出し、抽出液に炭酸ナトリウムを加え脱水した。濾過濃縮した後、得られた残渣をトルエンで再結することにより3.7gの黄色の固体を得た。FAB質量分析からm/z=563が得られたことからこの成分が1,3,6,8−テトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ピレンであることが分かった。
【0187】
次に、得られた2つの光変換層81、82を重ね合わせて4隅をボルトで固定することによって、光学部材80を作製した。
【0188】
以上のようにして作製した光学部品80の、赤色蛍光体を含む蛍光材料が設けられた光変換層81側から、近紫外光を照射した。近紫外光を照射する光源としては、405nmにピーク波長を有するLEDを用いた。その結果、光学部品80は、全体が赤色に発光し、青色蛍光体による発光は見られなかった。
【0189】
次に、青色蛍光体を含む蛍光材料が設けられた光変換層82側から、上記と同じ光源を用いて近紫外光を照射した。その結果、光学部品80は全体が青色に発光し、赤色蛍光体による発光は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の一実施形態による表示装置を、構成部分ごとに分離して示す模式的斜視図である。
【図2】図1に示す表示装置において、一方の光照射ユニットから励起光を照射したときの表示を示す図である。
【図3】図1に示す表示装置において、他方の光照射ユニットから励起光を照射したときの表示を示す図である。
【図4】図1に示す表示装置の一変形例を示す、光学部品の分解斜視図である。
【図5】図4に示す光学部品にA方向から励起光を照射したときの表示を示す図である。
【図6】図4に示す光学部品にB方向から励起光を照射したときの表示を示す図である。
【図7】図1に示す表示装置の他の変形例を示す、光学部品の分解斜視図である。
【図8】図1に示す表示装置のさらに他の変形例を示す、光学部品の分解斜視図である。
【図9】3つの光照射ユニットを有する本発明による表示装置の一例の、構成部分ごとに分離して示す模式的斜視図である。
【図10】3つの光照射ユニットを有する本発明による表示装置の他の例の、構成部分ごとに分離して示す模式的斜視図である。
【図11】本発明を適用した腕時計の模式的断面図である。
【図12】図11に示す腕時計に用いられる光変換層を層ごとに分離した斜視図である。
【図13】図11に示す腕時計の、第1の表示状態を示す正面図である。
【図14】図11に示す腕時計の、第2の表示状態を示す正面図である。
【図15】本発明の実施例で作製した光学部品の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0191】
1 表示装置
10、30、40、50、60、70、140 光学部品
11、12、13、14、15、16、17 光変換層
11a、12a パターン
20A、20B、20C、171、172 光照射ユニット
21A、21B 光源
22A、22B 導光板
100 腕時計
110 ケース
131 液晶セル
160 ムーブメント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を実質的に全て変換する蛍光材料が少なくとも一部に設けられ、互いに重ねて配置された複数の光変換層を有し、
前記蛍光材料は、
(A)前記励起光により励起され、420nm以上480nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第1の蛍光体、
(B)前記励起光により励起され、480nmよりも大きく550nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第2の蛍光体、および
(C)前記励起光により励起され、550nmよりも大きく700nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第3の蛍光体、
の1以上を含み、
互いに隣り合う2つの前記光変換層同士の関係で、前記蛍光材料が設けられた領域は少なくとも一部が重なり、かつ、重なっている前記領域の少なくとも一部は、前記励起光による発光スペクトルが互いに異なるように前記蛍光体を含んでいる光学部品。
【請求項2】
前記光変換層は基材を有し、該基材上に前記蛍光材料が設けられている請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を実質的に全て変換する蛍光材料が少なくとも一部に設けられ、互いに重ねて配置された複数の光変換層を有し、
前記蛍光材料は、
(A)前記励起光により励起され、420nm以上480nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第1の蛍光体、
(B)前記励起光により励起され、480nmよりも大きく550nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第2の蛍光体、および
(C)前記励起光により励起され、550nmよりも大きく700nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第3の蛍光体、
の1以上を含み、
前記光変換層は、前記蛍光材料が設けられていない部分に、前記励起光を吸収する紫外線吸収剤を含有している光学部品。
【請求項4】
前記光変換層は、前記紫外線吸収剤が添加された基材を有し、該基材の前記励起光が入射される側の面に前記蛍光材料が設けられている請求項3に記載の光学部品。
【請求項5】
前記第1の蛍光体は、下記一般式(1)で表される構造からなる青色有機蛍光体を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の光学部品。
【化1】
(一般式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、および置換基を有していてもよいアルキル基のいずれかを表す。)
【請求項6】
前記第2の蛍光体は、下記一般式(2)で表される構造からなる緑色有機蛍光体を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の光学部品。
【化2】
【請求項7】
前記第3の蛍光体は、β−ジケトネート、芳香族カルボン酸、またはブレンステッド酸のアニオンを配位子とする希土類イオン錯体のうち少なくとも1種からなる赤色有機蛍光体を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項8】
前記光変換層は実質的に無色透明である請求項1から7のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項9】
前記蛍光材料は、前記蛍光体と、前記蛍光体を保持するバインダ樹脂とを有する請求項1から8のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項10】
液晶セルをさらに有する請求項1から9のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光学部品と、
前記光学部品が有する複数の光変換層のうち異なる光変換層に、360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を照射するための複数の光照射手段と、
を有する表示装置。
【請求項12】
前記複数の光照射手段のうち2つは、前記光学部品の互いに反対側から前記励起光を照射するように配置されている請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記複数の光照射手段のうち少なくとも1つは、前記光変換層の間に配置されている請求項11または12に記載の表示装置。
【請求項1】
360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を実質的に全て変換する蛍光材料が少なくとも一部に設けられ、互いに重ねて配置された複数の光変換層を有し、
前記蛍光材料は、
(A)前記励起光により励起され、420nm以上480nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第1の蛍光体、
(B)前記励起光により励起され、480nmよりも大きく550nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第2の蛍光体、および
(C)前記励起光により励起され、550nmよりも大きく700nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第3の蛍光体、
の1以上を含み、
互いに隣り合う2つの前記光変換層同士の関係で、前記蛍光材料が設けられた領域は少なくとも一部が重なり、かつ、重なっている前記領域の少なくとも一部は、前記励起光による発光スペクトルが互いに異なるように前記蛍光体を含んでいる光学部品。
【請求項2】
前記光変換層は基材を有し、該基材上に前記蛍光材料が設けられている請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を実質的に全て変換する蛍光材料が少なくとも一部に設けられ、互いに重ねて配置された複数の光変換層を有し、
前記蛍光材料は、
(A)前記励起光により励起され、420nm以上480nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第1の蛍光体、
(B)前記励起光により励起され、480nmよりも大きく550nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第2の蛍光体、および
(C)前記励起光により励起され、550nmよりも大きく700nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発光する第3の蛍光体、
の1以上を含み、
前記光変換層は、前記蛍光材料が設けられていない部分に、前記励起光を吸収する紫外線吸収剤を含有している光学部品。
【請求項4】
前記光変換層は、前記紫外線吸収剤が添加された基材を有し、該基材の前記励起光が入射される側の面に前記蛍光材料が設けられている請求項3に記載の光学部品。
【請求項5】
前記第1の蛍光体は、下記一般式(1)で表される構造からなる青色有機蛍光体を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の光学部品。
【化1】
(一般式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、および置換基を有していてもよいアルキル基のいずれかを表す。)
【請求項6】
前記第2の蛍光体は、下記一般式(2)で表される構造からなる緑色有機蛍光体を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の光学部品。
【化2】
【請求項7】
前記第3の蛍光体は、β−ジケトネート、芳香族カルボン酸、またはブレンステッド酸のアニオンを配位子とする希土類イオン錯体のうち少なくとも1種からなる赤色有機蛍光体を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項8】
前記光変換層は実質的に無色透明である請求項1から7のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項9】
前記蛍光材料は、前記蛍光体と、前記蛍光体を保持するバインダ樹脂とを有する請求項1から8のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項10】
液晶セルをさらに有する請求項1から9のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光学部品と、
前記光学部品が有する複数の光変換層のうち異なる光変換層に、360nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を照射するための複数の光照射手段と、
を有する表示装置。
【請求項12】
前記複数の光照射手段のうち2つは、前記光学部品の互いに反対側から前記励起光を照射するように配置されている請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記複数の光照射手段のうち少なくとも1つは、前記光変換層の間に配置されている請求項11または12に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−287104(P2008−287104A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133356(P2007−133356)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
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