説明

光学部材表面保護フィルム用粘着剤組成物及び光学部材表面保護フィルム

【課題】 アンチグレア層など微細な凹凸を有する層を設けた偏光板などの光学部材表面保護フィルムとして、大面積の光学部材からの該フィルムの剥離に際して、高速剥離においても剥離帯電による静電気の発生が少なく、接着性 信頼性に優れた表面保護フィルム用アクリル系粘着剤組成物ならびに、それを用いてなるアクリル系粘着剤層を提供すること。
【解決手段】 反応性官能基を有し、重量平均分子量が30万〜100万、ガラス転移温度(Tg)が−50℃以下であるアクリル系共重合体(A)100重量部に対して、
重量平均分子量0.3万〜10万、ガラス転移温度(Tg)が−20℃〜20℃であって、分子内にアルキレンオキシド単位 20以上のアルキレンオキシド鎖を有するアルキレンオキシド鎖含有アクリル系共重合体(B)0.05 〜2.0重量部、およびアルカリ金属塩(C)0.005〜0.6重量部を含む表面保護フィルム用アクリル系粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示板など光学部材表面の一次保護のために使用される保護フィルム用粘着剤組成物に関するものであり、詳しくは、製造工程中で光学部材表面に一時的に貼り付けられ、保護を要する工程のあいだ表面を保護し、工程終了後剥離される表面保護フィルム用粘着剤組成物であって、帯電が少なく、剥離時の作業性が良い粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示板は、薄型軽量であること、消費電力が少なくて済むことなどから、近年、各種の情報関連機器、例えばワ−プロやノ−ト型パソコンなどの画面表示装置として利用されている。このような液晶表示板には、本体である液晶を内包したガラスセル(液晶セル)と共に偏光板や位相差板などの光学部材が用いられている。
【0003】
これらの光学部材は、通常、打抜加工、検査、輸送、液晶表示板の組立などの各工程を経る間にその表面が汚染されたり損傷したりしないように、さらに表面保護フィルムで接着被覆されて長尺の光学部材積層体として形成され、該表面保護フィルムは表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。
【0004】
このような表面保護フィルムは、光学部材の表面保護が必要とされる間、該部材の表面上でずれを生じたり表面から脱落したりすることがない程度にその表面に接着していると共に、液晶の性能など各種の検査に支障を来さないように、高度に透明であること及びフクレ、トンネリング、ハガレなど接着剤層内及び該接着剤層と光学部材との界面に欠陥がないことが要求される。光学部材からの該フィルムの剥離に際しては、剥離に伴う歪みによって光学部材や液晶セルを損傷することがないように、また液晶セルから光学部材が剥離してしまうなどの不都合が生じないように、容易に剥離できることが必要である。
近年、作業効率の向上を目的として表面保護フィルムの剥離の速度が高速化される傾向にあり高速剥離における作業性も接着剤の特性として要求されるようになった。
【0005】
これらの問題点を解消するため、従来から幾多の提案が知られている。例えば、特許文献1(特開平9−208910号公報)には、アルキル基の炭素数が1〜9のアクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合可能な不飽和モノマ−、アルキル基の炭素数が16〜22の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び反応性乳化剤をそれぞれ特定量共重合してなるアクリル系共重合体に、イソシアネ−ト系などの架橋剤を特定量配合してなる粘着剤組成物及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
【0006】
しかしながら上記提案の粘着剤を用いた表面保護フィルムでは、確かにフクレやトンネリングの発生を抑制することは可能であったが、再剥離性はまだ必ずしも十分とはいいがたく、その剥離力が実用に供し得ないほど大きなものとなることが判明した。
【0007】
例えば、特許文献2(特開2001−33624号公報)には、温度や湿度等の環境変化によっても光学部材から剥離することがなく、且つ剥離時には糊残りなく光学部材から剥離分離できるという基本的性能を満足させつつ、エ−ジング等の加熱処理後においても光学部材の損傷や液晶セルからの剥離なしに容易に剥離分離できる表面保護フィルムを得ることを目的とした表面保護フィルムであって、剥離速度300mm/分で180゜剥離において、80℃放置の接着力が常温放置の接着力の1.3倍以内である表面保護フィルムが開示されている。
【0008】
しかしながら、上記第2の提案の粘着剤は、被着体としてステンレス鋼板を用いた接着力試験では、80℃放置の接着力が常温放置の接着力1.3倍以内となってはいたが、被着体として、例えば表面にアンチグレア層を有する偏光板を用いたときには、オ−トクレ−ブ処理後に90℃で2時間エ−ジング処理を行ったところ、偏光板表面と表面保護フィルムとの間に多数のフクレが発生するなどの問題があることが判明した。
【0009】
本発明者等は、アクリル系粘着剤の改良研究を行い、特許文献3(特開平2003−41229号公報)、特許文献4(特開2005−97451号公報)等において、光学部材表面保護フィルム用粘着剤組成物を提案している。
【0010】
特許文献4で提案した組成物は、小面積の液晶表示部材に使用される場合はバランス良く良好な性質を示すものであったが、液晶表示部材の大型化が進んだことによる、大面積の表示部材を保護する用途においては、高速剥離での接着力が大きすぎて剥離作業に支障をきたすものであった。そこで、大面積を保護する保護フィルムにおいて十分な接着力(低速での剥離力)を保持しつつ、高速での剥離力を低下させることが必要となっている。
【0011】
一方、一般にフィルムを貼り付けたり、剥離したりする際の静電気の発生は避けられないものであり、本用途において表面保護フィルムに静電気が発生すると、光学フィルム表面にごみやホコリが吸着され製品に不都合が生じる。また、保護フィルムを剥離する際に、大きな静電気が発生すると表示部材の回路が破壊してしまうおそれもある。
そこで表面保護フィルムの一部に帯電防止剤を含む帯電防止層を設けて帯電防止性能を持たせることも行われており、例えば特許文献5(特開2000−273417号公報)には第4級アンモニウム塩を含む帯電防止層を有する表面保護フィルムが開示されている。しかしながら、この表面保護フィルムでは、支持体側に帯電防止処理が施されているため、表面保護フィルム側の帯電防止は図れるものの、被保護体の帯電防止は図れず、表面保護フィルムを剥離した際に被保護体が帯電するという不具合があった。
【0012】
さらに特許文献6(特開2005−330464号公報)、特許文献7(特開2005−131957号公報)、特許文献8(特開2007−297446号公報)等において、粘着剤層に、イオン性液体、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ポリエーテルポリオール類等を帯電防止成分として添加することにより、剥離帯電により発生する静電気量を低減した粘着剤が開示されている。しかしながら、粘着剤層を有する表面保護フィルムにおいては、帯電防止効果は図れるものの、表面保護フィルムとしての耐久性(耐熱性、耐湿熱性)や接着力の低下等において問題があった。
【0013】
本発明者らはさらに研究を続けた結果、特許文献9(特開2008−69202号公報)においてブレンド系樹脂を不均一に架橋した粘着剤層に特定の帯電防止剤を使用することを提案した。しかしながら、大画面化に伴い静電気発生量が増大し十分な帯電防止を図ることが困難であった。さらに、表面保護フィルムが被保護体から剥離されるまでの工程で凝集力不足のため剥がれてしまう等の問題があった。
【特許文献1】特開平9−208910号公報
【特許文献2】特開2001−33624号公報
【特許文献3】特開2003−41229号公報
【特許文献4】特開2005−97451号公報
【特許文献5】特開2000−273417号公報
【特許文献6】特開2005−330464号公報
【特許文献7】特開2005−131957号公報
【特許文献8】特開2007−297446号公報
【特許文献9】特開2008−69202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本願の解決すべき課題はアンチグレア層など微細な凹凸を有する層を設けた偏光板などの光学部材であっても、被着体を汚染することなく、光学部材表面保護フィルムとして、大面積の光学部材からの該フィルムの剥離に際して高速剥離においても剥離帯電による静電気の発生が少なく、接着性 信頼性に優れた表面保護フィルム用アクリル系粘着剤組成物ならびに、それを用いてなるアクリル系粘着剤層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らはさらに研究を続けた結果、水酸基を有する単量体を共重合成分として0.1〜10重量%含有し、重量平均分子量が30万〜100万であり、ガラス転移温度(Tg)が−50℃以下であるアクリル系共重合体(A)100重量部に対して、
重量平均分子量0.3万〜10万であり、ガラス転移温度(Tg)が−20℃〜20℃であって、分子内にアルキレンオキシド単位 20以上のアルキレンオキシド鎖を有するアルキレンオキシド鎖含有アクリル系共重合体(B)0.05 〜2.0重量部、
および アルカリ金属塩(C) 0.005〜0.6重量部
(ただしアルカリ金属塩(C)の量はアクリル系共重合体(B)の量を超えない。)
を含む表面保護フィルム用アクリル系粘着剤組成物。
が本課題を解決できることを見いだし、さらに研究を進めて本発明を完成した。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、架橋点として反応性官能基を含む特定の分子量範囲、特定のガラス転移温度範囲のアクリル系共重合体(A)に特定の構造、特定のガラス転移温度範囲のアルキレンオキシド鎖含有アクリル系共重合体(B)及び アルカリ金属塩を配合した帯電防止性を有する粘着剤組成物である。
【0017】
このように構成されることによって本発明のアクリル系粘着剤組成物を用いた表面保護フィルムは、光学部材の表面保護性及び高度な透明性を有すると共に、良好ななじみ性も有し、また例えば、表面にアンチグレア層など微細な凹凸を有する層を設けた偏光板などの光学部材に使用する場合でも、オ−トクレ−ブ処理やその後の作業上及び使用上の熱履歴を経た後にも、フクレ、トンネリング、ハガレなどの接着剤層欠陥の発生が見られず、さらにまた、大面積の光学部材からの該フィルムの剥離に際して高速剥離においても剥離帯電による静電気の発生が少なく、良好な剥離特性を示し、該光学部材や液晶セルの配向の乱れや、セルギャップの拡大、液晶セルからの光学部材の剥離などの不都合を生じさせることなく容易に剥離することができ、樹脂をブレンドすることなく帯電防止成分の組み合わせによって少量の添加で効果的な帯電防止性を付与することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の粘着剤組成物は、特定のアクリル系共重合体(A)、特定のアクリル系共重合体(B)及び、アルカリ金属塩(C)を含有する粘着剤組成物である。
【0019】
本発明のアクリル系共重合体(A)とは、重量平均分子量(Mw)が30万〜100万のアクリル系共重合体(A)であり、該重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40万〜80万であるのがよい。該重量平均分子量(Mw)が該下限値以上あれば、再剥離時の接着力が大きくなりすぎることがなく、特に加熱処理などを行っても光学部材の損傷や光学部材の不具合を生じることなしに表面保護フィルムを容易に剥離することができるので好ましい。一方該上限値以下であれば、得られる感圧接着剤層の流動性が優れており、表面の微小の凹凸を有する偏光板に用いたときにでも感圧接着剤が偏光板表面を十分に濡らすことができるため、偏光板表面と表面保護フィルムの感圧接着剤層との間にフクレを生じることがないので好ましい。
【0020】
なお、アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定された値である。重量平均分子量(Mw)の測定方法 下記(1)〜(3)に従って測定する。 (1) アクリル系共重合体溶液を剥離シートに塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状のアクリル系共重合体を得る。 (2) 上記(1)で得られたフィルム状のアクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2%になるように溶解させる。 (3) 下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0021】
(条件)GPC :HLC-8220 GPC〔東ソー(株)製〕カラム :TSK-GEL GMHXL 4本使用移動相溶媒:テトラヒドロフラン流速 :0.6ml/min カラム温度:40℃
【0022】
上記アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−50℃以下、更に好ましくは−55〜−80℃であるのがよい。Tgが該温度を超えて高すぎては、感圧接着剤層が硬く流動しにくくなり、特に表面にアンチグレア層などを有する偏光板に用いたとき、感圧接着剤が表面の凹凸を十分に濡らすことができず、そのため偏光板表面と表面保護フィルムの感圧接着剤層との間にフクレを生じることがあるので好ましくない。
【0023】
なお本発明において、アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は下記により測定し決定された値である。 ガラス転移温度(Tg) 下記(1)〜(3)に従って測定する。 (1) アクリル系共重合体溶液を剥離シートに塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状のアクリル系共重合体を得る。 (2) 厚さ約0.05mmアルミニウム箔製の、内径約5mm、深さ約5mmの円筒型のセルに、(1)で得た試料約10mgを秤量したものを測定試料とする。 (3)セイコー電子工業(株)製SSC−5000型示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter )を用い、−150℃から昇温速度10℃/minで測定する。
【0024】
本発明のアクリル系共重合体(A)は水酸基を有する単量体を含有する。水酸基を有する単量体としては、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体及びその他の水酸基を有する単量体を挙げることができるが、上記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、等を挙げることができ、その他の水酸基を有する単量体としては、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、メタリルアルコール等を挙げることができる。
【0025】
これらの単量体の中で、他の単量体と共重合してアクリル共重合体(A)を合成する際の他の単量体との相溶性及び共重合性が良好である、並びに架橋剤との架橋反応が良好である観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
上記水酸基含有単量体の上記アクリル共重合体(A)分子中に共重合性分として含まれる含有量は、アクリル系共重合体(A)に対し0.1〜10.0重量%、好ましくは2.0〜8.0重量%含有されることにより、共重合量が該下限値以上であれば被着体への汚染がないので好ましく、一方該上限値未満であれば、なじみ性(濡れ性)に問題を生じない。
【0027】
本発明においては、アクリル系共重合体(A)を構成する全単量体成分(共重合体を構成する単量体を単に共重合成分と記載することがある。)の50重量%以上、好ましくは90重量%以上がアクリル単量体である共重合体をいう。
【0028】
上記アクリル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、i-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ノニルアクリレート、i-ノニルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸の炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキルエステル;例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸の炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキルエステル、更にはこれらの各種誘導体の1種又は2種以上を選ぶことができる。
【0029】
上記アクリル系共重合体(A)は、アクリル単量体を主成分とした共重合体であるが、その他の種類の単量体を、前記の単量体の構成量を損なわれない範囲内でアクリル系共重合体(A)の重合成分として使用することができる。
【0030】
上記その他の種類の単量体としては、例えば、スチレン、αーメチルスチレン、tーブチルスチレン、pー クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族モノビニル単量体;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等、更にこれらの各種誘導体を挙げることができる。
【0031】
上記アクリル共重合体(A)に水酸基以外の官能基を有する単量体が共重合性分として含有されていてもよく、例えば、カルボキシル基含有単量体、グリシジル基含有単量体、アミド基,N−置換アミド基含有単量体、三級アミノ基含有単量体等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0032】
上記カルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリ レート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2-ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ) アクリレート等を挙げることができる。
【0033】
グリシジル基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0034】
アミド基,N−置換アミド基含有単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
三級アミノ基含有単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0036】
本発明のアクリル系粘着剤組成物は 特定の構造、特定のガラス転移温度範囲のアルキレンオキシド鎖を含有する アクリル系共重合体(B)を含有する。
【0037】
本発明のアクリル系共重合体(B)とは、アルキレンオキシド鎖含有アクリル単量体を共重合成分として含む 平均分子量(Mw)が0.3万〜10万 好ましくは0.5万〜6.0万のアクリル系共重合体(B)である。平均分子量(Mw)が0.3万以上であれば十分な接着力が得られ、6.0万未満であれば十分な相溶性が得られる。
【0038】
なお、アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)を測定したのと同様の方法で測定できる。
【0039】
上記アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−20℃〜20℃、更に好ましくは −10〜15℃であるのがよい。Tgが−20℃以上であれば、十分な接着力が得られ、20℃以下であれば基材密着性が低下することはない。
【0040】
また、上記下限値以上であると、凝集力不足などが生ずることがなく耐久性が確保できるので好ましい。
【0041】
なお本発明において、アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)はアクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)を測定したのと同様の方法で測定する。
【0042】
上記アクリル系共重合体(B)とは、本発明においては、アクリル系共重合体(B)を構成する全単量体成分(共重合体を構成する単量体を単に共重合成分と記載することがある。)の50重量%以上、好ましくは70重量%以上がアクリル単量体である共重合体をいう。
【0043】
上記アクリル単量体としてアクリル系共重合体(A)に記載したものと同様のアクリル単量体が使用できる。
【0044】
本発明においてアクリル系共重合体(B)は分子内にアルキレンオキシド鎖を有するアルキレンオキシド鎖含有アクリル系単量体を共重合成分として含むものである。
【0045】

本発明に用いられる、アルキレンオキシド鎖を有するアクリル系単量体として、たとえば、エチレンオキシド鎖、プロピレンオキサイド鎖を有するアクリル系単量体が挙げられ、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げることができ、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0046】

アルキレンオキシド単位は20以上であることが必要であり、40以上であることが好ましい。アルキレンオキシド単位が20以上のアクリル系単量体を共重合成分として含むものであれば後述するアルカリ金属塩との組み合わせによって顕著な帯電防止効果を発揮することができる。
【0047】
さらに、上記アクリル系共重合体(B)中に、構成成分としてカルボキシル基、水酸基等の官能基を有する他の単量体を含んでもよい。
【0048】
上記官能基を有する単量体としては、他にアクリル系共重合体(A)に記載したものと同様の官能基を有する単量体が使用できる。
【0049】
本発明に用いられるアクリル系共重合体(A)およびアクリル系共重合体(B)の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できるが、重合により得られたアクリル系共重合体を用いて本発明の粘着剤組成物を製造するに当り、処理工程が比較的簡単で且つ短時間で行えることから溶液重合により重合することが好ましい。
【0050】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行なうなど公知の方法を使用することができる。
【0051】
なお、本発明のアクリル系共重合体(A)およびアクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類や量により容易に調節することができる。
【0052】
前記 アクリル系共重合体(A)
およびアクリル系共重合体(B)の重合に際し、重合用有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素類;例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油などの脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、安息香酸メチルなどのエステル類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどのアルコール類;などを挙げることができる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0053】
これら重合用有機溶媒のうち、前記アクリル系共重合体(A)
およびアクリル系共重合体(B)の重合に際しては、重合反応中に連鎖移動を生じにくい有機溶媒、例えば、エステル類、ケトン類を使用することが好ましく、特に、アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さなどの点から、酢酸エチル、アセトンなどの使用が好ましい。
【0054】
前記の重合開始剤としては、通常の溶液重合で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することが可能である。
このような有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシビバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンなどが挙げられ、アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス-i-ブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルなどを挙げることができる。
【0055】
これら有機過酸化物のうち、前記アクリル系共重合体(A)およびアクリル系共重合体(B)の重合に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤が好ましく、特にアゾビス系が好ましい。その使用量は、通常、単量体合計100重量部に対して0.01〜2.0重量部、好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0056】
また、本発明に用いられるアクリル系共重合体(A)およびアクリル系共重合体(B)の製造に際しては、連鎖移動剤は使用しないのが普通であるが、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、必要に応じて使用することは可能である。
このような連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9-フェニルフルオレンなどの芳香族化合物類;p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、p-ニトロトルエンなどの芳香族ニトロ化合物類;ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体類;トリブチルボランなどのボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3-クロロ-1-プロペンなどのハロゲン化炭化水素類;クロラール、フラルデヒドなどのアルデヒド類:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類;チオフェノール、トルエンメルカプタンなどの芳香族メルカプタン類;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類;ビネン、ターピノレンなどのテルペン類;などを挙げることができる。
【0057】
重合温度としては、一般に約30〜180℃、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜90℃の範囲である。
【0058】
なお、溶液重合法などで得られた重合物中に未反応の単量体が含まれる場合は、該単量体を除くために、メタノールなどによる再沈澱法で精製することも可能である。
【0059】
本発明に用いられるアルカリ金属塩(C)は、リチウム、ナトリウム、カリウムをカチオンとする金属塩である。
具体的には、Li、Na、K等のカチオンと、Cl、Br、I、BF、PF、SCN、ClO、CFSO、(CFSO、(CSO、(CFSO等の アニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。 特に、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOC などのリチウム塩が好ましく用いられる。中でも LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOC 等の フルオロメチルスルフォニルリチウム塩は、帯電防止効果、金属腐食性が良好であるため特に好ましい。 これらのアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
上記粘着剤組成物のアルカリ金属塩の配合量については、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、アルカリ金属塩を0.005〜0.6重量部、好ましいくは0.005〜0.3重量部配より好ましくは、0.01〜0.2重量部配合することがよい。0.005重量部より以上であれば十分な帯電特性が得られな、一方、0.6重量部未満であれば配合量に対する帯電防止効果率が十分であるので好ましい。
【0061】
本発明の光学部材表面保護フィルム用粘着剤を、イソシアネート化合物(D)により架橋し、表面保護フィルム用アクリル系粘着剤層を形成する。
本発明で使用することのできるポリイソシアネート化合物(D)としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、該芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート;それらポリイソシアネートの2量体もしくは3量体又はそれらポリイソシアネートと、トリメチロールプロパンなどのポリオールとのアダクト体などの各種ポリイソシアネートに由来するポリイソシアネート化合物を挙げることができるが、これらのイソシアネート化合物の中では、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
これらのイソシアネート化合物は、単独でまたは2種類以上混合して使用することができる。
【0062】

これらのイソシアネート化合物は、例えば「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネート2234」「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上日本ポリウレタン(株)製〕、「デスモジュールN3400」〔住友バイエルウレタン(株)製〕、「デュラネートE−405−80T」、「デュラネート24A−100」、「デュラネートTSE−100」〔旭化成工業(株)製〕、「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」「MT−オレスターNP1200」〔以上三井武田ケミカル(株)製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0063】

これらポリイソシアネート化合物(D)の使用量は、前記アクリル系共重合体(A)および(B)の反応性官能基の合計を1当量とした時、イソシアネート基として0.3〜1.2当量、特には0.5〜0.9当量の範囲であることが好ましく、また、必要に応じて ジブチル錫ラウリレート等の硬化触媒を使用してもよい。
【0064】

本発明の光学部材表面保護フィルム用粘着剤組成物には、以上述べたアクリル系共重合体(A)アクリル系共重合体(B)及びアルカリ金属塩(C)の他に、必要に応じて、表面保護フィルム用粘着剤組成物に配合される配合物、例えば、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤、などを適宜配合することができる。
【0065】
中でも大面積での高速剥離用に使用する場合には、剥離助剤を配合することが好ましく、剥離力が小さく、更にジッピングを起こさず低速剥離における接着力に優れたシリコン化合物を剥離助剤として配合することは好ましい態様であり、中でもポリオキシアルキレン変性されたジメチルシリコン化合物を含有するのが好ましい。
【0066】
上記ポリオキシアルキレン変性されたジメチルシリコン化合物としては、ジメチルシリコンの側鎖をポリオキシアルキレン基で置換した化合物、メチルシリコンの末端部分をポリオキシアルキレン基で置換した化合物、ジメチルシリコンの側鎖及び両末端をポリオキシアルキレン基で置換した化合物等が挙げられる。
【0067】
ポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン及びこれらのブロック化合物が挙げられる。
【0068】
上記ポリオキシアルキレン変性されたシ゛メチルシリコン化合物(B)は、例えば「KF−351A」、「KF−352A」、「KF−353」、「KF−354L」、「KF−355A」、「KF−615A」、「KF−945」、「KF−640」、「KF−641」、「KF−642」、「KF−643」、「KF−6020」、「X−22−6191」、「X−22−4515」、「KF−6011」、「KF−6012」、「KF−6013」、「KF−6015」、「KF−6016」、「KF−6017」、「X−22−4741」、「KF−1002」、「X−22−4952」、「X−22−4272」、「X−22−6266」、「KF−6004」、「KP−301」、「KP−323」、「KP−354」、「KP−355」、「KP−341」、「KP−118」、「F−501」、「X−22−6191」、「X−22−3506」、「X−22−3004」、「KF−6005」、「KP−101」、「KF−889」、「KF−6003」、「X−22−4515」、「F−3031」、「X−24−1430」、「X−22−4991」、「KP−208」、「KF−6003」〔以上信越化学(株)製〕、「L−720」、「L−7604」、「Y−7006」、「BY−16−201」、「FZ−77」、「FZ−2101」、「FZ−2104」、「FZ−2110」、「FZ−2118」、「FZ−2120」、「FZ−2122」、「FZ−2130」、「FZ−2161」、「FZ−2162」、「FZ−2163」、「FZ−2164」、「FZ−2166」、「FZ−2191」、「FZ−2154」、「FZ−2203」、「FZ−2207」、「FZ−2208」、「L−7001」、「L−7002」、「SF−8427」、「SF−8428」、「SH−3749」、「SH−3773M」、「SH−8400」、「FZ−5609」、「FZ−7001」、「FZ−7002」〔東レ・ダウ(株)製〕、「TSF−4440」、「TSF−4441」、「TSF−4445」、「TSF−4446」、「TSF−4450」、「TSF−4452」、「TSF−4460」〔モメンィブ・パフォーマンス(株)製〕などの商品名により市販されている。
【0069】
また、目的に合わせ、ポリオキシアルキレン変性されたジメチルシリコン化合物以外に適宜シリコンオイルを組み合わせて配合しても良い。
【0070】
上記ポリオキシアルキレン変性されたジメチルシリコン化合物が感圧接着剤組成物に含有される量は、該アクリル系共重合体(A)100重量部に対し0.01〜2.0重量部であり、好ましくは0.05〜1.0重量部であり、更に好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0071】
上記ポリオキシアルキレン変性されたジメチルシリコン化合物が感圧接着剤組成物に含有される量が上記下限値未満であると、保護フィルム表面が外的応力を受けて表面保護フィルムの感圧接着剤層の一部が破壊された場合に、表面保護フィルムを剥離した時に破壊された感圧接着剤層の一部が光学部材表面に残る不具合が発生する。また、上記ポリオキシアルキレン変性されたジメチルシリコン化合物が感圧接着剤組成物に含有される量が上記上限値を超えると、表面保護フィルムの接着性等が経時変化するとともに、光学部材の表面に過剰のジメチルシリコン化合物が残存して表面汚染を起こす。
【0072】
かくして得られる本発明の光学部材表面保護フィルム用粘着剤組成物は、光学部材表面保護フィルムを作製するため、適宜の透明な表面保護基材の少なくとも一方の面に、従来公知の方法によって粘着剤層を形成するために用いられる。
【0073】
本発明の表面保護フィルムに用いられる基材としては、粘着剤が塗布できる基材であることが必要である。基材樹脂としては透視による光学部材の検査や管理の観点から、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などからなるフィルムを挙げることができるが、表面保護性能からポリエステル系樹脂が好ましく、実用性を考慮すればポリエチレンテレフタレート樹脂が特に好ましい。
【0074】
基材の厚さは一般には500μm以下、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは10〜200μm程度の厚さを例示することができる。これらの基材に片面又は両面には、剥離時の帯電防止を目的に、帯電防止層が設けられていてもよい。また該基材の、粘着剤層が設けられる側の表面には、粘着剤層との密着性を向上させるためにコロナ放電処理等が施されていてもよい。
【0075】
たとえば20インチ以上の液晶表示画面に使用されるような大型の光学部材に対して十分な接着力を持ち(低速剥離の接着力が十分大きい)かつ高速剥離時に容易に剥離でき(高速剥離の接着力が大きくならない)かつなじみ性が良好である(切断した場合に切断端がめくり上がらない)ことが必要である。
すなわち、光学部材に対する23℃での180度ピールの接着力は、剥離速度0.3m/分(低速剥離)において接着力(剥離力)が0.05N/25mm以上、好ましくは0.08N/25mm以上であるのがよく、低速剥離の接着力が0.05N/25mm未満であるとめくれやずれが発生しやすいので好ましくない。
【0076】
また、接着力が高くなると大面積における高速剥離の作業性が低下するので、剥離速度30m/分(高速剥離)において、接着力(剥離力)が1.5N/25mm以上にならないこと、好ましくは1.2N/25mmより大きくならないことが好ましい。
【0077】
さらに、剥離時の帯電が大きいと光学部材にダメージを与えるので、本発明の粘着剤組成物はアンチグレア偏光板に対する30m/分剥離時の剥離帯電圧が0.9KV以下であることが好ましく、0.5KV以下であればさらに好ましく0.3KV以下であれば特に好ましい。
【0078】
剥離の際のフィルム側の帯電を防止するために本発明の粘着剤組成物は表面抵抗値が1E+13(Ω/□)以下、好ましくは1E+11(Ω/□)以下であることが好ましい。
【0079】
基材上に形成される粘着剤層の厚さは、保護フィルムの求められる接着力や光学部材表面粗さなどに応じて適宜設定することができ、一般に1〜100μm、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは15〜30μm程度の厚さを例示することができる。
【0080】
粘着剤層の形成方法としては、本発明の粘着剤組成物を、そのまま又は、必要に応じて適宜の溶媒で希釈し、これを表面保護ベースフィルムに直接塗布・乾燥して溶媒を除去する方法を採用することができる。また、先ずシリコーン樹脂等により離型処理が施された紙やポリエステルフィルム等の適宜のフィルムからなる剥離シート上に、本発明の粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成させ、次に該剥離シートの接着剤層側を表面保護ベースフィルムに圧接して該接着剤層を該保護フィルムに転写させることもできる。
【0081】
かくして得られる保護フィルムは、光学部材の表面に積層されて、その光学部材の表面が汚染されたり損傷したりしないよう保護し、該光学部材が液晶表示板などに加工される際には、該保護フィルムが光学部材に積層された状態のまま、打抜加工、検査、輸送、液晶表示板の組立などの各工程に供され、必要に応じて、オートクレーブ処理や高温エージング処理などの加熱加圧処理が施され、表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。
【実施例】
【0082】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例及び比較例において用いた、試験片の作成、並びに各種の試験方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0083】
(1)試験用粘着シートの作成
シリコーン系離型剤で表面処理された離型紙上に、乾燥後の塗工量が20g/m2となるように、粘着剤組成物を塗布し、100℃で60秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名;E5001;東洋紡績(株)製〕上に該粘着剤層面が接するように載置し、加圧ニップロールを通して圧着して貼り合わせた後、23℃、50%RHで10日間養生を行って試験用表面保護フィルムを得た。
【0084】
(2)粘着剤層の外観
前(1)項により作製した試験用表面保護フィルムの粘着剤層が均一で透明なものであるか観察する。
○:粘着剤層が均一で透明である
△:粘着剤層は均一であるが、曇りが見られる
×:粘着剤層に欠陥が見られる
【0085】
(3) 接着力の測定
前(1)項により作製した試験用表面保護フィルムを25mm×150mmにカットしたのち、この表面保護フィルム片を、卓上ラミネート機を用いて、アンチグレア処理された偏光フィルム〔商品名;SQ−1852AP−AG6;住友化学工業(株)製〕に圧着して試験サンプルとした。このサンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置(コンディショニング処理)した後、180゜剥離における接着力を剥離速度0.3m/分(低速剥離)及び30m/分(高速剥離)でそれぞれ測定した。
【0086】
(4) 剥離後の偏光フィルムの表面状態の観察
前(3)項で試験した試験サンプルの剥離後の偏光フィルムの表面状態を観察した。
○:表面に糊残り等の異常は観察されない。
×:表面に糊残り等の異常が観察される。
【0087】
(5)剥離帯電圧測定
前(1)項により作製した試験用表面保護フィルムを25mm×150mmにカットしたのち、この表面保護フィルム片を、卓上ラミネート機を用いて、アンチグレア処理された偏光フィルム〔商品名;SQ−1852AP−AG6;住友化学工業(株)製〕に圧着して試験サンプルとした。このサンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置(コンディショニング処理)した後、180゜剥離、剥離速度30m/分(高速剥離条件)で剥離する。このときの発生する偏光板表面の電位を下図のとおり、所定の位置に固定してある電位測定機〔春日電機(株)製KSD−0303〕にて測定した。測定は、23℃×50%RHの環境下で行った。
【0088】
(6)表面抵抗
得られた粘着シートの剥離紙を剥がし、粘着剤層表面の表面抵抗値を表面抵抗測定装置((株)アドバンテスト:R12704 RESISTIVITY CHAMBER)を用いて測定した。
【0089】
アクリル系共重合体(A)溶液の製造
製造例1
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル20重量部、トルエン10重量部を入れ、また別の容器に、単量体(a1)として2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)95.0重量部、単量体(a2)として4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)5.0重量部を入れ混合して単量体混合物とし、その中の25%を反応容器中に加え、次いで該反応容器の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤としてアゾビスブチロニトリル(以下AIBNと言う)0.02重量部を添加して、攪拌下に窒素雰囲気中で該反応容器内の混合物温度を70℃に昇温させて初期反応を開始させた。初期反応がほぼ終了した後、残りの単量体混合物75%、並びに酢酸エチル20重量部、トルエン10重量部及びAIBN0.2重量部の混合物をそれぞれ逐次添加しながら約2時間反応させ、引き続いてさらに2時間反応させた。その後、トルエン25重量部にAIBN
0.25重量部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、さらに1.5時間反応させた。反応終了後、反応混合物をトルエン125重量部で希釈して、固形分35重量%のアクリル系共重合体溶液A-1を得た。
【0090】
得られたアクリル系共重合体溶液の粘度は730mPa・sであり、またアクリル系共重合体は、ガラス転移温度(Tg)-74℃であって、重量平均分子量(Mw)約59万であった。
【0091】
製造例2 〜製造例5
単量体組成を表1に示す単量体組成に変更する以外は製造例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液A-2〜A-5を製造した。得られたアクリル系共重合体溶液の粘度、固形分、ガラス転移点(Tg)、重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0092】
製造例6 アルキレンオキサイド含有アクリル系共重合体 (B)の製造
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコにt-BMA90重量部、アルキレンオキサイド基含有モノマー メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(アルキレンオキシド単位は45)10重量部、重合開始剤としてAIBN0.6重量部、酢酸エチル410重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃
付近に保って6 時間重合反応を行い、アルキレンオキサイド基含有アクリル系共重合体溶液B−1を調製した。前記アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は3.0 万、ガラス転移温度(Tg)
は15 ℃であった。
【0093】
製造例7〜製造例12
単量体組成を表1に示す単量体組成に変更する以外は製造例6と同様にしてアクリル系共重合体溶液B−2〜B−6を製造した。また、B−7としては、ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体(重量平均分子量:6000、エチレンオキシド基含有率 50重量%)使用した。
得られたアクリル系共重合体溶液の粘度、固形分、ガラス転移点(Tg)、重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
単量体組成を表1に示す単量体及びアルキレンオキサイド基含有モノマーの組成を表1に示すように変更する以外は製造例2と同様にしてアクリル系共重合体溶液B−2〜B−6 を製造した。得られたアクリル系共重合体溶液の粘度、固形分、ガラス転移点(Tg)、重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
実施例1 表面保護フィルム用粘着剤組成物の作製
攪拌羽根、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに前記アクリル系共重合体組成物(A−1)溶液(固形分34.7重量%)、 100重量部、 アルキレンオキサイド基含有アクリル系共重合体 (B-1)溶液(固形分20.0重量%) 0.87重量部、Li(CFSON(森田化学工業(株)製LiTFSI)0.0174重量部を仕込み、フラスコ内の液温を2 5 ℃ 付近に保って4.0時間混合撹拌を行い、アクリル系共重合体混合溶液を得た。これにイソシアネート化合物(D)として商品名:アクアネート210〔HMDI型、固形分100重量%、イソシアネート(NCO)含有量16.7重量%;日本ポリウレタン製〕2.4重量部(イソシアネートとして0.8当量)を添加し十分に攪拌して表3に示す光学部材表面保護フィルム用粘着剤組成物溶液を得た。 この粘着剤組成物は十分なポットライフを有するものであり、前記の試験用粘着シートの作成方法に従って試験用表面保護フィルムを作成し、前記の各種物性試験を行った。得られた結果を表4に示す。
【0098】
実施例2 〜実施例10
実施例1の配合条件の代わりに表2に示した各実施例の配合条件を使用する以外は、実施例1と同様にして表3に示すような表面保護フィルム用粘着剤組成物を作成した。 この粘着剤組成物を用い、前記の試験用表面保護フィルムの作成方法に従って試験用表面保護フィルムを作成し、前述した試験方法で各物性を測定した結果を表4に示す。
【0099】
比較例1〜比較例7
実施例1の配合条件の代わりに表2に示した各比較例の配合条件を使用する以外は、実施例1と同様にして表3に示すような表面保護フィルム用粘着剤組成物を作成した。 この粘着剤組成物を用い、前記の試験用表面保護フィルムの作成方法に従って試験用表面保護フィルムを作成し、前述した試験方法で各物性を測定した結果を表4に示す
【0100】
【表3】

【0101】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する単量体を共重合成分として 0.1〜10重量%含有し、重量平均分子量が30万〜100万であり、ガラス転移温度(Tg)が−50℃以下であるアクリル系共重合体(A)100重量部に対して、
重量平均分子量0.3万〜10万であり、ガラス転移温度(Tg)が−20℃〜20℃であって、分子内にアルキレンオキシド単位 20以上のアルキレンオキシド鎖を有するアルキレンオキシド鎖含有アクリル系共重合体(B)0.05 〜2.0重量部、
および アルカリ金属塩(C) 0.005〜0.6重量部
(ただしアルカリ金属塩(C)の量はアクリル系共重合体(B)の量を超えない。)
を含む表面保護フィルム用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項2】
アルカリ金属塩 がフルオロメチルスルフォニルリチウム塩である請求項1記載の表面保護フィルム用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、0.01〜2.0重量部のポリオキシアルキレン変性されたジメチルシリコン化合物を含む請求項1または請求項2記載の表面保護フィルム用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項4いずれかに記載のアクリル系粘着剤組成物をイソシアネート架橋剤(D)で架橋してなる表面保護フィルム用アクリル系粘着剤層。
【請求項5】
アクリル系共重合体(A)反応性基の合計を1当量とした時 0.3〜1.2当量の範囲であるイソシアネート化合物(D)で架橋してなる請求項4記載の光学部材表面保護フィルム用表面保護フィルム用アクリル系粘着剤層。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載のアクリル系粘着剤層をポリエチレン基材に積層した光学部材表面保護フィルムであって、アンチグレア偏光板に対する23℃での180度ピール、剥離速度30m/分時の剥離帯電圧が0.9KV以下である光学部材表面保護フィルム。
【請求項7】
光学部材に対する23℃での180度ピールの接着力において、剥離速度0.3m/分における接着力が0.05N/25mm以上である請求項6に記載の光学部材表面保護フィルム。
【請求項8】
光学部材に対する23℃での180度ピールの接着力において、剥離速度30m/分における接着力が1.2N/25mm以下である請求項6または請求項7に記載の光学部材表面保護フィルム。

【公開番号】特開2009−275128(P2009−275128A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128256(P2008−128256)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】