説明

光導波路及びその製造方法と光導波路装置

【課題】光のクロストークが防止される光導波路を提供する。
【解決手段】コア層24がクラッド層22で囲まれた光導波路層20と、光導波路層20の光入射側及び光出射側にそれぞれ設けられた光路変換部Sと、クラッド層22の外面に画定されて、光入射側の光路変換部Sに光が入射される光入射部L1と、クラッド層22の外面に画定されて、光出射側の光路変換部Sからの光が出射される光出射部L2とを含み、光入射部L1及び光出射部L2を除くクラッド層22の外面が粗化面RSとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光導波路及びその製造方法と光導波路を用いた光導波路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバ通信技術を中心に基幹系の通信回線の整備が着々と進行する中でボトルネックとなりつつあるのが情報端末内の電気的配線である。このような背景から、すべての信号伝達を電気信号によって行う従来の電気回路基板に代わって、電気信号の伝達速度の限界を補うために、高速部分を光信号で伝達するタイプの光電気複合基板が提案されている。
【0003】
光電気複合基板では、光信号はコア層がクラッド層で囲まれた構造の光導波路によって伝達される。そして、光導波路の端部に設けられた光路変換部によって光路が90°変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−20391号公報
【特許文献2】WO2003/58305号公報
【特許文献3】特開平11−248954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光導波路装置では、発光素子の複数の発光部が光導波路の各光路の光入射部にそれぞれ光結合され、各発光部から各光入射部に光がそれぞれ出射される。発光素子の各発光部からの光は横方向にも広がって出射される。
【0006】
このため、特に光導波路の光路が狭小ピッチで配置されている場合、発光部からの光が隣接する光路に余計な光として入射するため、光のクロストークが発生して光信号の劣化を招く問題がある。
【0007】
また、光導波路の各光路の光出射部から受光素子の各受光部に光がそれぞれ入射される際にも、光路変換部からの反射光によって同様な光のクロストークが発生しやすい。
【0008】
光導波路及びその製造方法と光導波路装置において、光のクロストークを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の開示の一観点によれば、コア層がクラッド層で囲まれた光導波路層と、前記光導波路層の光入射側及び光出射側にそれぞれ設けられた光路変換部と、前記クラッド層の外面に画定されて、前記光入射側の前記光路変換部に光が入射される光入射部と、前記クラッド層の外面に画定されて、前記光出射側の前記光路変換部からの光が出射される光出射部とを有し、前記光入射部及び前記光出射部を除く前記クラッド層の外面が粗化面となっている光導波路が提供される。
【0010】
また、その開示の他の観点によれば、請求項1乃至4のいずれかの光導波路と、前記光導波路の前記粗化面上に配置された配線基板と、前記配線基板に実装され、前記光導波路の前記光入射側の前記光路変換部に光結合される発光素子と、前記配線基板に実装され、前記光導波路の前記光出射側の前記光路変換部に光結合される受光素子とを有する光導波路装置が提供される。
【0011】
さらに、その開示の他の観点によれば、前記粗化面が上側になって配置された請求項1乃至4のいずれかの光導波路と、前記光導波路の下に配置された配線基板と、前記光導波路の前記粗化面の上に形成され、前記光導波路の光入射部及び光出射部の上に開口部が設けられた保護絶縁層と、前記配線基板に実装され、前記光導波路の前記光入射側の前記光路変換部に光結合される発光素子と、前記配線基板に実装され、前記光導波路の前記光出射側の前記光路変換部に光結合される受光素子とを有する光導波路装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
以下の開示によれば、光導波路では、クラッド層の外面に画定された光入射部及び光出射部を除く領域を梨地状の粗化面としている。このため、発光素子が光結合される光入射部では、光入射部を除く領域に当たる光は粗化面で乱反射して減衰するため、隣接する光入射部に不要な反射光が入射することが防止される。
【0013】
これにより、光入射部の配置ピッチが狭小化される場合であっても、隣接する光入射部に不要な光信号が入射することが防止される。
【0014】
また、受光素子が光結合される光出射部においても同様に、光出射部を除く領域に当たる光路変換部からの反射光は、光導波路の粗化面で乱反射して減衰するため、隣接する受光部との光のクロストークが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は第1実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図2】図2は第1実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図3】図3は第1実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図4】図4は第1実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その4)である。
【図5】図5は第1実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その5)である。
【図6】図6は第1実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その6)である。
【図7】図7は第1実施形態の光導波路を示す断面図である。
【図8】図8は第1実施形態の別の光導波路を示す断面図である。
【図9】図9は第1実施形態の光導波路装置を示す断面図である。
【図10】図10は第1実施形態の光導波路装置において光のクロストークが防止される様子を示す斜視図である。
【図11】図11は第2実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図12】図12は第2実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図13】図13は第2実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図14】図14は第2実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その4)である。
【図15】図15は第2実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図(その5)である。
【図16】図16は配線基板の上に形成された第2実施形態の光導波路を示す断面図である。
【図17】図17は図16の光導波路及び配線基板の上に保護絶縁層が形成された様子を示す断面図である。
【図18】図18は第2実施形態の光導波路装置を示す断面図である。
【図19】図19は第2実施形態の別の光導波路を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1〜図6は第1実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図、図7は同じく光導波路を示す断面図、図8は同じく光導波路装置を示す断面図である。
【0018】
第1実施形態の光導波路の製造方法では、図1に示すように、まず、基板10を用意する。基板10は最終的に除去される仮基板として用意され、引き剥がして除去できるポリカーボネート樹脂などからなる。
【0019】
次いで、図2に示すように、コア層24がクラッド層22で囲まれた光導波路層20を用意する。図2の上図は断面図であり、下図は平面図であり、以下の図3〜図6においても同様である。
【0020】
コア層24はその屈折率がクラッド層22の屈折率よりも高くなるように設定されている。コア層24及びクラッド層22の材料としては、フッ素化ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂などが好適に使用される。
【0021】
横方向に延在する帯状のコア層24が縦方向に並んで配置されており、図2の例では4本の光路として機能するコア層24が示されている。
【0022】
光導波路層20の両端部には、下側のクラッド層22及びコア層24を分断する逆V字状の溝Gが設けられており、溝Gの内側の内面が光路変換傾斜面S(光路変換部)となっている。一端側(左側)の光路変換傾斜面Sが光入射側の光路変換部であり、他端側(右側)の光路変換傾斜面Sが光出射側の光路変換部である。
【0023】
光路変換傾斜面Sは、内側から外側に向けて立ち上がるように傾斜しており、コア層24の延在方向(光伝播方向)と所定の角度(好ましくは45°)で交差している。
【0024】
図2の例では、光路変換傾斜面Sが光導波路層20の両端部に設けられて一系統の光路が形成されているが、光導波路層20の中央部にも光路変換傾斜面Sを設けることで光導波路層20に2系統の光路を形成してもよい。
【0025】
そして、一端側(左側)の光入射側の光路変換傾斜面Sに対応する位置のクラッド層22の外面(上面)に光入射部L1が画定されている。発光素子からの光が光入射部L1から光路変換傾斜面Sに入射される。
【0026】
また、他端側(右側)の光出射用の光路変換傾斜面Sに対応する位置のクラッド層22の外面(上面)に光出射部L2が画定されている。光路変換傾斜面Sからの光が光出射部L2から受光素子に出射される。
【0027】
続いて、図3に示すように、光導波路層20の下側のクラッド層22を基板10の上に仮接着する。光導波路層20の光路変換傾斜面Sを含む溝G内は空気層Aとなっており、光路変換傾斜面Sの空気界面においてコア層24を伝播する光路が90°変換される。
【0028】
従って、光導波路層20の光路変換傾斜面Sに接する空気層Aが接着剤で埋め込まれずに空気層Aが残るようにする必要がある。このため、接着剤として半硬化状態の流動性の弱い樹脂フィルム(不図示)が使用され、基板10の上に樹脂フィルムを介して光導波路層20を配置した後に加熱処理して硬化させることにより、光導波路層20を接着する。これにより、光路変換傾斜面Sに接する空気層Aが接着剤で埋め込まれずに光導波路層20が接着される。
【0029】
あるいは、空気層Aより内側の光導波路層20の領域を接着剤で部分的に基板10に仮接着してもよい。
【0030】
第1実施形態では、光導波路層20の光路変換部として光路変換傾斜面Sとそれに接する空気層Aを使用している。この他に、後述する第2実施形態のように、光路変換傾斜面Sに配置された金属層を光路変換ミラーとして使用する光導波路層を同様に基板10上に仮接着してもよい。
【0031】
次いで、図4に示すように、光導波路層20のクラッド層22の光入射部L1及び光出射部L2の上にレジストパターン28を形成して保護する。レジストパターン28は光導波路層20の周辺の基板10上にも同時に形成される。図4の平面図では、レジストパターン28は斜線ハッチング部で描かれている。
【0032】
レジストパターン28は、ドライフィルムレジストを貼付するか又は液状レジストを塗布した後に、フォトリソグラフィによる露光/現像を行うことによって形成される。マスクパターンとしてレジストパターン28を例示するが、その他にもパターニングできて後に除去できるマスク材料を使用することができる。
【0033】
続いて、図5に示すように、レジストパターン28をマスクとして、露出するクラッド層22の表面をブラスト加工することにより梨地状にして粗化する。つまり、図5の断面図の部分拡大図に示すように、クラッド層22の表面に微細な凹凸が形成されて粗化面RSとなる。クラッド層22の粗化面RSの表面粗さ(Ra)は、好適には1μm以上3μm以下の範囲に設定される。
【0034】
図5のクラッド層22の粗化面RSは、断面図では太線部で描かれ、平面図では点ハッチング部で描かれている。
【0035】
ブラスト加工は、圧縮空気や遠心力などを用いて研削材を加工面に高速で噴射し、その衝撃力で加工面を処理する方法である。好適には、硅砂(粉)などの研削材を圧縮空気などの方法で加工面に吹きつけるサンドブラスト法がある。ブラスト加工により所要の粗さの粗化面を容易に形成することができる。ブラスト加工を使用することにより、クラッド層22の材料が変わっても容易に粗化面RSを得ることができる。
【0036】
光入射部L1及び光出射部L2を除くクラッド層22の表面を粗化面RSとすることにより、粗化面RSでは光が乱反射して減衰するため、不要な光が低減されて光のクロストークを防止することができる。
【0037】
その後に、図6に示すように、レジストパターン28がアッシング又はレジスト剥離液により除去される。光導波路層20のクラッド層22の光入射部L1及び光出射部L2は、レジストパターン28で保護されているため、ブラスト加工されずに平滑面(透明層)のままで維持される。
【0038】
次いで、図7に示すように、図6の構造体から基板10を除去することにより下側のクラッド層22の下面を露出させる。基板10はポリカーボネート樹脂などからなり、下側のクラッド層22から引き剥がすことにより、容易に除去することができる。
【0039】
以上により、第1実施形態の光導波路1が得られる。
【0040】
図7に示すように、第1実施形態の光導波路1は、コア層24がクラッド層22で囲まれた光導波路層20を備えている。光導波路層20の光入射側及び光出射側の両端部に光路換傾斜面S(光路変換部)が対向して設けられており、光路変換傾斜面Sと空気層Aとの空気界面において光路を90°変換させることができる。
【0041】
光導波路層20の一端側(左側)の光路変換傾斜面Sは光入射用であり、光路変換傾斜面Sに対応する位置のクラッド層22の外面に光入射部L1が画定されている。また、光導波路層20の他端側(右側)の光路変換傾斜面Sは光出射用であり、光路変換傾斜面Sに対応する位置のクラッド層22の外面に光出射部L2が画定されている。
【0042】
そして、光入射部L1及び光出射部L2が画定されたクラッド層22の外面(図7の例では上側のクラッド層22の上面)において、光入射部L1及び光出射部L2を除く外面が粗化面RSとなっている(図6の平面図を同時に参照)。粗化面RSは、図7では太線部で描かれ、図6の平面図では点ハッチング部で描かれている。
【0043】
また、図7とは逆に、下側のクラッド層22の外面(下面)に光入射部L1及び光出射部L2が画定されるように光路変換傾斜面Sを形成してもよい。この場合は、同様に、下側のクラッド層22の外面(下面)において光入射部L1及び光出射部L2を除く領域が粗化面RSとなる。
【0044】
このように、第1実施形態の光導波路1では、光入射部L1及び光出射部L2を除くクラッド層2の外面が粗化面RSとなっている。このため、光入射部L1及び光出射部L2の外側領域に当たる光は粗化面RSで乱反射して減衰するため、不要な光が低減されて光のクロストークを防止することができる。
【0045】
また、図8に示す別の光導波路1xのように、光入射部L1が光導波路1の上側の外面(上面)に画定され、光出射部L2が光導波路1の下側の外面(下面)に画定されるように光路変換形成面Sをそれぞれ形成してもよい。
【0046】
この場合は、上側のクラッド層22の光入射部L1を除く外面(上面)を粗化面RSとし、下側のクラッド層22の光出射部L2を除く外面(下面)を粗化面RSとすればよい。つまり、両面側を光経路として利用する光導波路1xでは、光導波路1xの両面側においてクラッド層22の光経路部を除く外面が粗面化される。
【0047】
次に、第1実施形態の光導波路1を使用して製造される光導波路装置について説明する。
【0048】
図9に示すように、第1実施形態の光導波路装置2では、上記した図7の光導波路1の粗化面RSが形成されたクラッド層22の外面(上面)に、電気配線として機能する配線層(不図示)を備えた配線基板5が接着されて配置されている。配線基板5は基板としてポリイミドフィルムなどを使用するフレキシブル配線基板である。
【0049】
光導波路1のクラッド層22の光入射部L1及び光出射部L2を除く領域を粗化面RSとすることにより、光のクロストークを防止する他に、粗化面RSによるアンカー効果によって光導波路1の上に接着される配線基板5の密着性を向上させることができる。
【0050】
また、光導波路1の下側のクラッド層22の外面(下面)に封止層30が形成されて空気層Aが気密封止されている。封止層30の形成方法としては、半硬化状態のエポキシ樹脂などの樹脂フィルムを貼付し、加熱処理することに硬化させて接着する。
【0051】
本実施形態では、光路変換傾斜面Sと空気層Aとの空気界面において光路を変換させることから、空気層Aに封止層30が侵入しないようにする必要がある。このため、封止層30として硬化時に流動性が低い樹脂フィルムが使用され、封止層30でキャップされて空気層Aが残される。
【0052】
なお、光導波路1の空気層Aを気密封止する必要がない場合は、封止層30を省略してもよい。
【0053】
そして、光導波路1の一端側(左側)の光入射用の光路変換傾斜面Sに光結合するように、発光素子40が配線基板5の接続パッド(不図示)接続されて実装されている。発光素子40はその発光部が下側を向いた状態で配線基板5に実装される。発光素子40としては、面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)が好適に使用される。
【0054】
また、光導波路1の他端側(右側)の光出射用の光路変換傾斜面Sに光結合するように、受光素子42が配線基板5の接続パッド(不図示)に接続されて実装されている。受光素子42はその受光部が下側を向いた状態で配線基板5に実装される。受光素子42としては、フォトダイオードが好適に使用される。
【0055】
発光素子40及び受光素子42の真下の配線基板5には、光導波路1の光入射部L1及び光出射部L2を一括して露出させる光透過用開口部7がそれぞれ設けられている。
【0056】
第1実施形態の光導波路装置2では、図9の点線矢印で示す経路で、発光素子40から受光素子42に光が伝播される。詳しく説明すると、不図示の第1LSIチップ(ドライバなど)から出力される電気信号が発光素子40に供給され、発光素子40からの光が光導波路1の光入射部L1に入射される。
【0057】
光入射部L1から入射した光は、光導波路1の光路変換傾斜面Sに到達する。さらに、光路変換傾斜面Sと空気層Aとの空気界面で光が反射され、光路が90°変換されてコア層24に入射する。
【0058】
次いで、コア層24に入射した光は、コア層24内で全反射を繰り返して伝播し、他端側の光路変換傾斜面Sに到達する。そして、他端側の光路変換傾斜面Sと空気層Aとの空気界面で光が反射されて光路が90°変換され、光導波路1の光出射部L2から受光素子42に光が出射される。
【0059】
受光素子42は光信号を電気信号に変換し、不図示の第2LSIチップ(TIA : Transimpedance Amplifierなど)に電気信号が供給される。
【0060】
なお、前述した両面側を光経路として利用する光導波路1x(図8)を使用する場合は、受光素子42が光導波路1xの下面の光出射部L2に光結合されるように光導波路1xの下方に実装される。
【0061】
図10には、図9の配線基板5の光透過用開口部7内の光入射部L1及び発光素子40の様子が模式的に描かれている。
【0062】
図10に示すように、発光素子40は複数の発光部40a(図10の例では4つの発光チャネル)を備えており、発光部40aからの光は横方向にも広がって出射する。このため、各コア層24(光路)の配置ピッチPIが250μm程度に狭小化されると、光入射部L1の外側領域で反射した不要な光が隣接する別の光入射部L1に入射しやすくなり、光のクロストークが発生して光信号の劣化を招きやすい。
【0063】
第1実施形態では、光導波路1の表面(クラッド層22)の光入射部L1及び光出射部L2を除く領域を梨地状にして粗化面RSとしている。このため、光入射部L1の外側領域に当たる光は粗化面RSで乱反射して減衰するため、隣接する光入射部L1に不要な光信号が入射することが防止される。
【0064】
これにより、光入射部L1の配置ピッチが狭小化される場合であっても、隣接する光入射部L1の間で光のクロストークの発生が防止されて光信号の劣化を回避することができる。
【0065】
また、受光素子42が光結合される光出射部L2(図9)においても同様に、光出射部L2を除く領域に当たる光路変換傾斜面Sからの反射光は、光導波路1の粗化面RSで乱反射して減衰する。これにより、受光素子42の複数の受光部42aの間での光のクロストークの発生が防止されて光信号の劣化を回避することができる。
【0066】
しかも、光導波路1の光入射部L1及び光出射部L2は粗化されておらず平滑面(透明層)であるため、光の乱反射は起こらず、発光素子40及び受光素子42と光導波路1とが信頼性よく光結合される。
【0067】
(第2の実施の形態)
図11〜図16は第2実施形態の光導波路の製造方法を示す断面図、図17及び図18は第2実施形態の光導波路装置を説明するための断面図である。
【0068】
第2実施形態では、仮基板を使用せずに、リジットタイプの配線基板の上に光導波路が形成される。第2実施形態では、第1実施形態と同一工程及び同一要素については、同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0069】
第2実施形態の光導波路の製造方法では、図11に示すように、まず、剛性を有するリジッドタイプの配線基板6を用意する。配線基板6では、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁基板50の上面側の両端部に、電気配線として機能する複数の接続パッドPが並んで配置されている。特に図示しないが、接続パッドPは絶縁基板50に設けられた貫通電極を介して下面側の配線層に接続されている。
【0070】
次いで、図12に示すように、コア層24がクラッド層22で囲まれた光導波路層21を用意する。第2実施形態に係る光導波路層21では、終端部に設けられた光路変換傾斜面Sに金属層26が配置されており、金属層26が光路変換ミラーM(光路変換部)として機能する。金属層26としては、良好な光反射性を有する金(Au)層、銀(Ag)層又はアルミニウム(Al)層などが使用される。
【0071】
そして、第1実施形態と同様に、光導波路層21の一端側(左側)の光路変換ミラーMが光入射用であり、光路変換ミラーMに対応する位置のクラッド層22の外面(上面)に光入射部L1が画定されている。
【0072】
また、光導波路層21の他端側(右側)の光路変換ミラーMは光出射用であり、光路変換ミラーMに対応する位置のクラッド層22の外面(上面)に光出射部L2が画定されている。
【0073】
そして、図13に示すように、図12の光導波路層21の下側のクラッド層22の面を接着剤32によって配線基板6に接着して固定する。このとき、光導波路層21の終端部の光路変換ミラーM(金属層26)の側方が接着層32で埋め込まれる。
【0074】
なお、第1実施形態(図2)で使用した光導波路層20を配線基板6の上に接着してもよい。この場合は、第1実施形態と同様に、半硬化状態の樹脂フィルムを接着剤に使用することにより、光導波路層20の光路変換傾斜面Sに接する空気層Aが接着剤で埋め込まれずに残るようにする。
【0075】
次いで、図14に示すように、第1実施形態と同様に、光導波路層21のクラッド層24の光入射部L1及び光出射部L2の上にレジストパターン28(マスクパターン)を形成して保護する。レジストパターン28は光導波路層21の周辺の配線基板6の上にも同時に形成される。図14の平面図では、レジストパターン28は斜線ハッチング部で描かれている。
【0076】
続いて、図15に示すように、第1実施形態と同様に、レジストパターン28をマスクとして、露出するクラッド層22の表面をブラスト加工することにより梨地状の粗化面RSを形成する。
【0077】
クラッド層22の粗化面RSの表面粗さ(Ra)は、第1実施形態と同様に、好適には1μm以上3μm以下の範囲に設定される。
【0078】
その後に、図16に示すように、レジストパターン28が除去される。光導波路層21のクラッド層22の光入射部L1及び光出射部L2は、レジストパターン28で保護されているため、ブラスト加工されずに平滑面(透明層)のままで維持される。
【0079】
このようにして、第1実施形態と同様に、光導波路層21のクラッド層22の光入射部L1及び光出射部L2を除く表面が梨地状の粗化面RSとなる。これにより、配線基板6の上に第2実施形態の光導波路1aが得られる。
【0080】
次いで、図17に示すように、光導波路1aの光入射部L1及び光出射部L2をそれぞれ一括で露出させる開口部34x(図17の平面図では太線領域)が設けられた保護絶縁層34を光導波路1aの上に形成する。保護絶縁層34は配線基板6上にも同時に形成され、接続パッドP上に保護絶縁層34の開口部34xが設けられる。
【0081】
保護絶縁層34としてはソルダレジストが好適に使用され、印刷やフォトリソグラフィによって形成される
第1実施形態と同様に、光導波路1aのクラッド層22の表面を粗化面RSとすることにより、光のクロストークを防止する他に、アンカー効果によって光導波路層21の上に形成される保護絶縁層34の密着性を向上させることができる。
【0082】
そして、図18に示すように、第1実施形態と同様に、光導波路1aの一端側(左側)の光出射用の光路変換ミラーMに光結合するように、発光素子40が接続電極41によって配線基板6の接続パッドPに接続されて実装される。発光素子40はその発光部40aが下側を向いた状態で実装される。
【0083】
また、第1実施形態と同様に、光導波路1aの他端側(右側)の光出射用の光路変換ミラーMに光結合するように、受光素子42が接続電極43によって配線基板6の接続パッドPに接続されて実装される。受光素子42はその受光部42aが下側を向いた状態で実装される。
【0084】
これにより、第2実施形態の光導波路装置2aが得られる。
【0085】
第2実施形態においても、図18の点線矢印で示すように、第1実施形態と同様な経路で発光素子40から受光素子42に光が伝播される。第1実施形態では、光路変換傾斜面Sと空気層Aとの空気界面で光路が90°変換されるが、第2実施形態では、光路変換ミラーMによって光路が90°変換される。
【0086】
つまり、第2実施形態では、発光素子40の発光部40aから出射される光は、光導波路1aの光入射部L1から一端側(左側)の光路変換ミラーMに到達する。そして、光路変換ミラーMで光が反射されて光路が90°変換されてコア層24に入射する。
【0087】
次いで、コア層24を伝播する光は他端側(右側)の光路変換傾ミラーMで反射されて光路が90°変換され、光導波路1aの光出射部L2から受光素子42の受光部42aに光が出射される。
【0088】
第2実施形態の光導波路1a及び光導波路装置2aは第1実施形態と同様な効果を奏する。
【0089】
前述した第1、第2実施形態では、光入射部L1及び光出射部L2を除くクラッド層22の外面全体に粗化面RSを形成している。
【0090】
他の形態として、図19に示すように、光入射部L1及び光出射部L2を除くそれらの周囲部(Bで示される帯状部分)に粗化面RSを部分的に形成してもよい。つまり、粗化面RSは、光入射部L1及び光出射部L2を除くクラッド層22の外面のうち、少なくとも光入射部L1及び光出射部L2の近傍の周囲の領域に形成されていればよい。
【0091】
以上、好ましい実施形態及び変形例などを詳説したが、上述した実施形態に制限されることなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0092】
1,1x,1a…光導波路、2,2a…光導波路装置、5,6…配線基板、7…光透過用開口部、10…基板、20,21…光導波路層、22…クラッド層、24…コア層、26…金属層、28…レジストパターン(マスクパターン)、30…封止層、32…接着剤、34…保護絶縁層、34x…開口部、40…発光素子、40a…発光部、41,43…接続電極、42…受光素子、42a…受光部、50…絶縁基板、A…空気層、G…溝、L1…光入射部、L2…光出射部、M…光路変換ミラー、P…接続パッド、RS…粗化面、S…光路変換傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層がクラッド層で囲まれた光導波路層と、
前記光導波路層の光入射側及び光出射側にそれぞれ設けられた光路変換部と、
前記クラッド層の外面に画定されて、前記光入射側の前記光路変換部に光が入射される光入射部と、
前記クラッド層の外面に画定されて、前記光出射側の前記光路変換部からの光が出射される光出射部とを有し、
前記光入射部及び前記光出射部を除く前記クラッド層の外面が粗化面となっていることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記光路変換部は、前記クラッド層及び前記コア層に設けられた光路変換傾斜面とそれに接する空気層とからなることを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記光路変換部は、前記クラッド層及び前記コア層に設けられた光路変換傾斜面に配置された金属層から形成された光路変換ミラーからなることを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
【請求項4】
前記クラッド層の前記粗化面の表面粗さ(Ra)は、1μm以上3μm以下の範囲に設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの光導波路と、
前記光導波路の前記粗化面上に配置された配線基板と、
前記配線基板に実装され、前記光導波路の前記光入射側の前記光路変換部に光結合される発光素子と、
前記配線基板に実装され、前記光導波路の前記光出射側の前記光路変換部に光結合される受光素子とを有することを特徴とする光導波路装置。
【請求項6】
前記粗化面が上側になって配置された請求項1乃至4のいずれかの光導波路と、
前記光導波路の下に配置された配線基板と、
前記光導波路の前記粗化面の上に形成され、前記光導波路の光入射部及び光出射部の上に開口部が設けられた保護絶縁層と、
前記配線基板に実装され、前記光導波路の前記光入射側の前記光路変換部に光結合される発光素子と、
前記配線基板に実装され、前記光導波路の前記光出射側の前記光路変換部に光結合される受光素子とを有することを特徴とする光導波路装置。
【請求項7】
基板の上に、光導波路層を形成する工程であって、前記光導波路層は、コア層がクラッド層で囲まれて構造を有し、前記光導波路層の光入射側及び光出射側に光路変換部がそれぞれ設けられており、前記クラッド層の上面に、前記光入射側の前記光路変換部に光が入射される光入射部と、前記光出射側の前記光路変換部からの光が出射される光出射部とが画定されており、
前記クラッド層の前記光入射部及び前記光出射部の上にマスクパターンを形成する工程と、
前記マスクパターンをマスクにしてクラッド層の表面をブラスト加工することにより粗化面を形成する工程と、
前記マスクパターンを除去する工程とを有することを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項8】
前記基板は仮基板であり、
前記マスクパターンを除去する工程の後に、前記基板が除去されることを特徴とする請求項7に記載の光導波路の製造方法。
【請求項9】
前記光路変換部は、下側の前記クラッド層及び前記コア層に設けられた光路変換傾斜面とそれに接する空気層とからなり、
前記基板の上に光導波路層を形成する工程において、
前記光路変換傾斜面を接着剤で埋め込まずに前記空気層を残すことを特徴とする請求項7又は8に記載の光導波路の製造方法。
【請求項10】
前記光路変換部は、下側の前記クラッド層及び前記コア層に設けられた光路変換傾斜面に配置された金属層から形成された光路変換ミラーからなり、
前記基板の上に光導波路層を形成する工程において、
前記光路変換ミラーを接着剤で埋め込むことを特徴とする請求項7又は8に記載の光導波路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−3224(P2013−3224A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131779(P2011−131779)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】