説明

光導波路形成用材料、光導波路の製造方法、および光導波路

【課題】本発明の目的は、少ない活性エネルギー線の照射量で硬化することで、低コストで量産性に優れた製造に適した、光導波路用材料、それを用いた光導波路を提供することである。
【解決手段】スルホニウムカチオンと下記一般式(1)で表されるボレートアニオンとを含んでなり、波長365nmのモル吸光係数が、500から25000の範囲である酸発生剤(A)、および、カチオン重合性化合物(B)を含んでなる光導波路形成用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野、光情報処理分野に用いられる光回路を形成するための光導波路形成用材料、光導波路の製造方法およびその方法により得られた光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチメディア時代を迎え、光通信システムやコンピュータにおける情報処理の大容量化および高速化の要求から、光を伝送媒体とする伝送システムが、公衆通信網、LAN(ローカルエリアネットワーク)、FA(ファクトリーオートメーション)、コンピュータ間のインターコネクト、家庭内配線等に使用されつつある。この伝送システムのうち、光導波路は、例えば映画や動画等の大容量の情報伝達や光コンピュータ等を実現するための光デバイス、光電集積回路(OEIC)、並びに光集積回路(光IC)等における基本構成要素である。そして、光導波路は、大量の需要があることから鋭意研究される一方、特に高性能で、低コストの製品が求められている。
【0003】
従来、この種の光導波路としては、石英などの無機ガラスが用いられていた。石英系の光導波路は、耐熱性、低偏波面依存性、低損失、低温度依存性という優れた性質を有するが、高温プロセスやRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)プロセスを含みコスト高になっていた。
【0004】
一方、近年、高分子材料を用いた光導波路が提案され、実用化されつつある。高分子材料は、無機材料と比較して加工が容易であり、大面積化やフィルム化を容易に行うことができる。また、フレキシブルであるため用途が広いこと、屈折率の調整が容易であること等の種々の利点を有する。中でも、紫外線硬化型の樹脂は、大量生産を行うことが可能な材料であるために、光導波路用の材料として期待されている。
【0005】
高分子材料を用いた光導波路の形成方法としては、RIE法、スタンパ法(特許文献1)、直接露光法、フォトブリーチング法(特許文献2、3)等が検討されている。
【0006】
まず、RIE法では薄膜作製後、レジストをUV(紫外線)露光し、現像して導波路パターンを形成し、反応性イオンエッチングによりレジストで覆われていない部分を除去する。その後、不要になったレジストを除去するというプロセスがある。このRIE法は、反応性イオンエッチングの際の真空プロセスやレジストプロセスを有することから、一般に高コストになってしまう。
【0007】
また、反応性イオンエッチングにより、コア側面に微小な縦傷(厚さ方向の傷)が形成されることにより、光導波路作製後の散乱損失が大きくなってしまう。
【0008】
スタンパ法ではクラッドに溝を形成した後、その溝に樹脂を流し込んでコアを形成するので、大幅な低コスト化が図れる。しかしながら、スタンパ法では、ボイドの発生や上部クラッド作製時におけるバリ等により十分な導波効率が得られていない。
【0009】
これに対して、直接露光法は、レジストで覆うプロセスが無く、直接光等のエネルギー線を照射した後、現像により未露光部を除去することでパターンを作製することができるため、RIE法よりもプロセスが簡単になり、低コスト化が図れる。
【0010】
さらに、フォトブリーチング法は、光等の活性エネルギー線を照射して屈折率差を設けるだけで光導波路を作製することができるので、フォトレジスト塗布プロセス、反応性イオンエッチングプロセス、現像プロセスをなくすことができるので、低コストで量産性に優れた製造方法であり、RIE法やスタンパ法で見られるような側面形状の揺らぎによる散乱損失も抑えることができる。
【0011】
直接露光法やフォトブリーチング法で照射される光等の活性エネルギー線は、X線、α線、β線、γ線、紫外線、可視光線、赤外線、電子線など多岐にわたっている。これらの中でも、一定のエネルギーレベルを有し、照射装置が比較的安価で小型な観点から、紫外線を使用するのが最も好ましい。高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどは最も一般的な光源に属し、これらの光源を利用する場合300nmから450nmの波長領域に主波長を有する光が照射されることとなる(非特許文献1)。近年、光導波路の分野では、これらの光源に対応し、速やかに所望の重合度まで硬化が進行し、良好な特性を発現する材料が普遍的に求められている。
【0012】
【特許文献1】特開平8−327844号公報
【特許文献2】特開2000−275456号公報
【特許文献3】特開2001−356227号公報
【非特許文献1】ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の現状と展望」シーエムシー出版 (2002年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、少ない活性エネルギー線の照射量で硬化することで、低コストで量産性に優れた製造に適した、光導波路用材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明者は、鋭意研究の結果、上記課題をすべて解決する材料を開発するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、スルホニウムカチオンと下記一般式(1)で表されるボレートアニオンとを含んでなり、波長365nmのモル吸光係数が、500から25000の範囲である酸発生剤(A)、および、
カチオン重合性化合物(B)を含んでなる光導波路形成用材料に関する。
【0016】
一般式(1)
【化1】

【0017】
(ただし、Yはフッ素または塩素原子、
Zは、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基の中から選ばれる基で2つ以上置換されたフェニル基、
mは0から3の整数、nは1から4の整数を表し、m+n=4である。)
【0018】
また本発明は、スルホニウムカチオンが、一般式(2)で表される上記光導波路形成用材料に関する。
【0019】
一般式(2)
【化2】

【0020】
(ただし、R1は、置換されたベンジル基、置換されたフェナシル基、置換されたアリル基、置換されたアルコキシル基、置換されたアリールオキシ基より選ばれる基を、
2 およびR3 はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいベンジル基、置換基を有してもよいフェナシル基、置換基を有してもよいアリル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、または、置換基を有してもよいアルケニル基より選ばれる基を、
4 は酸素原子もしくは孤立電子対を示す。
また、R1 、R2 およびR3はその2個以上の基が結合して環状構造となってもよい。)
【0021】
また本発明は、カチオン重合性化合物(B)が、分子内に少なくとも1個のエポキシ基または分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有する化合物または加水分解性シラン化合物の加水分解物である上記光導波路形成用材料に関する。
【0022】
また本発明は、上記光導波路用材料を硬化させてなる光導波路に関する。
【0023】
また本発明は、コア部およびグラット層を有する光導波路の製造方法であって、コア部またはグラット層の少なくとも一方となるよう基板上に、上記光導波路形成用材料を塗工した後、光照射して硬化させることを特徴とする光導波路の製造方法に関する。
【0024】
また本発明は、上記光導波路の製造方法により製造された光導波路に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光導波路形成用材料は、特定の酸発生剤(A)を含有しているため、少ない活性エネルギー線の照射量できわめて容易かつ単時間で、硬化することが出来る。また、本発明光導波路形成用材料は、パターン露光できる、または活性エネルギー線の照射で屈折率を変化させることが出来るため、容易に光導波路を形成することができる。本発明の光導波路形成用材料は、低コストで量産性に優れた光導波路の生産に用い得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、詳細にわたって本発明の実施形態を説明する。
【0027】
[酸発生剤(A)]
まず初めに、本発明で用いられる酸発生剤(A)について説明する。本発明で用いられる酸発生剤(A)は光等の活性エネルギー線の照射により酸を発生する材料であり、酸発生剤から発生した酸がカチオン重合性化合物(B)のカチオン重合による架橋を開始かつ促進させる機能を有している。
【0028】
本発明で用いられる酸発生剤(A)の特徴は、波長365nmのモル吸光係数を500から25000の範囲に調整することにより、エネルギー線、特に350nmから450nmの波長領域の光照射に対する大幅な高感度化を実現している。そのため本発明の酸発生剤(A)は、単独で使用することも可能であり、且つ増感剤を併用する場合も、その使用量を最小限に抑えることが出来るために、本発明の光導波路形成用材料の高透明性を維持することが可能である。
酸発生剤(A)が波長365nmのモル吸光係数を500から25000の範囲に調整するためには、スルホニウムカチオン部位に、例えば、一般式(2)で示されるような特定の構造を有させることで実現できる。
【0029】
本発明の酸発生剤(A)の波長365nmのモル吸光係数が500未満の場合、該波長領域の光照射において十分な酸を発生することが出来ないために、本発明の光導波路形成用材料の硬化が不十分となる。
また、本発明で用いられる酸発生剤(A)の波長365nmのモル吸光係数が25000を超える場合、酸発生剤(A)由来の着色の問題や、照射された光が十分に透過しないために、最深部において十分な酸を発生することが出来ないために、本発明の光導波路形成用材料の硬化が不十分となる。
【0030】
本発明で用いられる酸発生剤(A)から酸を発生するために使用するエネルギー線源は特に限定されないが、特に好適な感度を発現する350nmから450nmの波長領域の光を照射できる光源が好ましく、上記波長領域の光と同時に他のエネルギー線を発していても良い。特に好ましい光源としては、350nmから450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源であり、具体例としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、Nd−YAG3倍波レーザー、He−Cdレーザー、窒素レーザー、Xe−Clエキシマレーザー、Xe−Fエキシマレーザー、半導体励起固体レーザー等の350nmから450nmの波長領域に発光波長を有するレーザーも好適なエネルギー線源として使用することができる。また、電子線も好適なエネルギー線源として使用することが可能である。本発明に用いられる酸発生剤はいずれも350nmから450nmの波長領域に好適な吸収を有しており置換基によって吸収特性がやや異なるが、上記した光源を適宜選択することにより、非常に高感度な感エネルギー線酸発生剤として機能することが可能である。また、これらの光源は適宜、フィルター、ミラー、レンズ等の光学機器を介して照射することも可能である。
【0031】
次に、本発明で用いられる酸発生剤(A)の構造について詳細に説明する。
【0032】
本発明で用いられる酸発生剤(A)は、スルホニウムカチオンと一般式(1)で表されるボレートアニオンとからなるオニウム塩型の酸発生剤である。スルホニウムカチオンは、その還元電位が高いこと、すなわち、電子受容性が高いことがあげられる。そのため、エネルギー線、ことに光の照射によって、分解し、容易に酸を発生する。
【0033】
特に好ましいスルホニウムカチオンの構造としては、一般式(2)で表されるスルホニウムカチオンをあげることができる。
【0034】
一般式(2)
【化3】

【0035】
(ただし、R1は、置換されたベンジル基、置換されたフェナシル基、置換されたアリル基、置換されたアルコキシル基、置換されたアリールオキシ基より選ばれる基を、
2 およびR3 はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいベンジル基、置換基を有してもよいフェナシル基、置換基を有してもよいアリル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、または、置換基を有してもよいアルケニル基より選ばれる基を、
4 は酸素原子もしくは孤立電子対を示す。
また、R1 、R2 およびR3はその2個以上の基が結合して環状構造となってもよい。)
【0036】
一般式(2)における置換基R1は、置換されたベンジル基、置換されたフェナシル基、置換されたアリル基、置換されたアルコキシル基、置換されたアリールオキシ基であり、具体的には一般式(3)〜一般式(6)から選ばれる構造である。

【0037】
【化4】

【0038】
(ただし、R5は、一般式(3)〜一般式(6)に共通して、ヘテロ原子を含んでよい炭素数4から24の単環または縮合多環アリール基、置換されたヘテロ原子を含んでよい炭素数4から24の単環または縮合多環アリール基、アルキル基(一般式(6)の場合)、置換されたアルキル基(一般式(6)の場合)を表す。ただし、さらに、350nmから450nmの波長領域の光を吸収するための後述の置換基を必要とする。
6およびR7は一般式(3)〜一般式(5)に共通して、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換されたアルキル基、アリール基、置換されたアリール基、アルコキシル基、置換されたアルコキシル基、アリールオキシ基、置換されたアリールオキシ基、アルケニル基または置換されたアルケニル基を表す。
ただし、R5、R6およびR7は一体となって、環を形成してもよい。)
【0039】
以下に本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成するスルホニウムカチオン中の置換基について説明する。まず、本発明の酸発生剤(A)を構成する一般式(3)〜一般式(6)で表されるスルホニウムカチオンにおける置換基R5において、
【0040】
ヘテロ原子を含んでよい炭素数4から24の単環または縮合多環アリール基としては、フェニル基、1ーナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、9−アンスリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−インデニル基、2−フルオレニル基、9−フルオレニル基、3−ペリレニル基、2−フリル基、2−チエニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−アクリジニル基、2−チアンスレニル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−キノリニル基、4−イソキノリル基、3−フェノチアジニル基、2−フェノキサチイニル基、3−フェニキサジニル基、3−チアントレニル基、3−クマリニル基等が挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また、これらのアリール基は上記以外の置換位置で炭素原子と結合していてもよく、それらも本発明のR4で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0041】
この内、一般式(3)〜一般式(6)で表されるスルホニウムカチオンにおける置換基R5において、より好ましいヘテロ原子を含んでよい炭素数4から24の単環または縮合多環アリール基としては、一般式(7)〜一般式(10)から選ばれる構造をあげることができる。

【0042】
【化5】

【0043】
(ただし、R8は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、ハロゲン原子を表す。
9は、アルキル基、アリール基、アシル基またはアルケニル基を表す。
R(Rj、Rk、Rl、Rp)は、一般式(8)〜一般式(10)に共通して、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子を表す。
10は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、ハロゲン原子を表す。
j、k、l、pは置換基Rが置換されている個数を表し、jは1〜5の整数を表す。kは、一般式(8)〜一般式(10)に共通して、0〜4の整数を表す。lは0〜3の整数を表す。pは0〜3の整数を表す。さらに、隣接した、R同士、R8同士、もしくは、RとR9、RとR10は、互いに共有結合によって環構造を形成していてもよい。
なお、一般式(8)〜一般式(10)において、上記以外の置換位置で一般式(3)〜一般式(5)の炭素原子または、一般式(6)の酸素原子と結合していても良い。)
【0044】
また、本発明で用いられる酸発生剤(A)が、350nmから450nmの波長領域の光を吸収するため導入する置換基として、好ましいものとしては、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アシル基が挙げられる。
【0045】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成する一般式(2)における置換基R2とR3、一般式(3)〜一般式(5)における置換基R6とR7、一般式(7)における置換基R8、一般式(9)における置換基R9、一般式(10)における置換基R10、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアルキル基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成する一般式(3)〜一般式(5)における置換基R6とR7、一般式(7)における置換基R8、一般式(9)における置換基R9、一般式(10)における置換基R10、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアリール基としては、置換基R5でアリール基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、一般式(9)における置換基R9において、これらのアリール基は上記以外の置換位置で窒素原子と結合していてもよく、それらも本発明のR9で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0047】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成する一般式(2)における置換基R2とR3、一般式(3)〜一般式(5)における置換基R6とR7、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアルケニル基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルケニル基が挙げられ、それらは構造中に複数の炭素−炭素二重結合を有していてもよく、具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成する一般式(2)における置換基R2とR3、一般式(3)〜一般式(5)における置換基R6とR7、一般式(7)における置換基R8、一般式(10)における置換基R10、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアルコキシル基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基があげられ、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、t−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基、2−テトラヒドロフラニルオキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成する一般式(2)における置換基R2とR3、一般式(3)〜一般式(5)における置換基R6とR7、一般式(7)における置換基R8、一般式(10)における置換基R10、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアリールオキシ基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭素数4〜18の単環または縮合多環アリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェノキシ基、1ーナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、5−ナフタセニルオキシ基、1−インデニルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、1−アセナフチルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、2−カルバゾリルオキシ基、3−カルバゾリルオキシ基、4−カルバゾリルオキシ基、9−アクリジニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成する一般式(7)における置換基R8、一般式(9)における置換基R9、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアシル基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族基が結合したカルボニル基、あるいは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4から18の単環状あるいは縮合多環状芳香族が結合したカルボニル基が挙げられ、それらは構造中に不飽和結合を有していてもよく、具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、シンナモイル基、3−フロイル基、2−テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成する一般式(7)における置換基R8、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアルキルチオ基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキルチオ基が挙げられ、具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成する一般式(7)における置換基R8、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアリールチオ基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭素数4〜18の単環または縮合多環アリールチオ基が挙げられ、具体例としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、9−アンスリルチオ基、9−フェナントリルチオ基、2−フリルチオ基、2−チエニルチオ基、2−ピロリルチオ基、6−インドリルチオ基、2−ベンゾフリルチオ基、2−ベンゾチエニルチオ基、2−カルバゾリルチオ基、3−カルバゾリルチオ基、4−カルバゾリルチオ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成する一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアシルオキシ基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族基が結合したカルボニルオキシ基、あるいは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4から18の単環状あるいは縮合多環状芳香族が結合したカルボニルオキシ基が挙げられ、具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトノイルオキシ基、イソクロトノイルオキシ基、オレオイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基、2−ナフトイルオキシ基、シンナモイルオキシ基、3−フロイルオキシ基、2−テノイルオキシ基、ニコチノイルオキシ基、イソニコチノイルオキシ基、9−アンスロイルオキシ基、5−ナフタセノイルオキシ基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成する一般式(10)における置換基R10、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げることができる。
【0055】
上述した本発明の酸発生剤(A)を構成する一般式(2)における置換基R2とR3、一般式(3)〜一般式(5)における置換基R6とR7、一般式(7)における置換基R8、一般式(9)における置換基R9、一般式(10)における置換基R10、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアルキル基、
一般式(3)〜一般式(6)における置換基R5、一般式(3)〜一般式(5)における置換基R6とR7、一般式(7)における置換基R8、一般式(9)における置換基R9、一般式(10)における置換基R10、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアリール基、
一般式(2)における置換基R2とR3、一般式(3)〜一般式(5)における置換基R6とR7、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアルケニル基、
一般式(2)における置換基R2とR3、一般式(3)〜一般式(5)における置換基R6とR7、一般式(7)における置換基R8、一般式(10)における置換基R10、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアルコキシル基、
一般式(2)における置換基R2とR3、一般式(3)〜一般式(5)における置換基R6とR7、一般式(7)における置換基R8、一般式(10)における置換基R10、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアリールオキシ基、
一般式(7)における置換基R8、一般式(9)における置換基R9、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアシル基、
一般式(7)における置換基R8、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアルキルチオ基、
一般式(7)における置換基R8、一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアリールチオ基、
一般式(7)〜一般式(10)における置換基Rにおけるアシルオキシ基は、さらに他の置換基で置換されていてもよく、そのような他の置換基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、等を挙げることができる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基としては炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基などが挙げられる。
アリール基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭素数4〜18の単環または縮合多環アリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、1ーナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、1−アセナフチル基、9−フルオレニル基、2−フラニル基、2−チエニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−アクリジニル基等が挙げられる。
アシル基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族が結合したカルボニル基、あるいは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4から18の単環状あるいは縮合多環状芳香族が結合したカルボニル基が挙げられ、
それらは構造中に不飽和結合を有していてもよく、具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、シンナモイル基、3−フロイル基、2−テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、9−アンスロイル基、5−ナフタセノイル基などを挙げられる。
アルコキシル基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基があげられ、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、t−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基、2−テトラヒドロフラニルオキシ基、2−テトラヒドロフラニルオキシ基、等を挙げることができる。
アリールオキシ基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭素数4〜18の単環または縮合多環アリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェノキシ基、1ーナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、5−ナフタセニルオキシ基、1−インデニルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、1−アセナフチルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、2−カルバゾリルオキシ基、3−カルバゾリルオキシ基、4−カルバゾリルオキシ基、9−アクリジニルオキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族が結合したカルボニルオキシ基、あるいは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4から18の単環状あるいは縮合多環状芳香族が結合したカルボニルオキシ基が挙げられ、具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトノイルオキシ基、イソクロトノイルオキシ基、オレオイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基、2−ナフトイルオキシ基、シンナモイルオキシ基、3−フロイルオキシ基、2−テノイルオキシ基、ニコチノイルオキシ基、イソニコチノイルオキシ基、9−アンスロイルオキシ基、5−ナフタセノイルオキシ基などを挙げることができる。
アルキルチオ基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキルチオ基が挙げられ、具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭素数4〜18の単環または縮合多環アリールチオ基が挙げられ、具体例としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、9−アンスリルチオ基、9−フェナントリルチオ基、2−フリルチオ基、2−チエニルチオ基、2−ピロリルチオ基、6−インドリルチオ基、2−ベンゾフリルチオ基、2−ベンゾチエニルチオ基、2−カルバゾリルチオ基、3−カルバゾリルチオ基、4−カルバゾリルチオ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
置換基R2は2価の有機残基を介してR6、R7、R8、R9、R10、およびRのいずれかと互いに結合し、環構造を形成していてもよい。また、置換基R6、R7は2価の有機残基を介してR8、R9、R10、およびRのいずれかと結合し、環構造を形成してもよい。ここでいう2価の有機残基とは、炭素数1〜4の置換基を有してもよいアルキレン基、置換を有しても良いアリーレン基、アリールアルキレン基、もしくは−C=C−、−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CO−、−COO−、−OCOO−、−CONH−、−SO2−O−及びこれらの結合を一部に有するような置換基を有しても良いアルキレン基を意味する。
【0057】
次に、本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成するボレートアニオンについて説明する。
【0058】
本発明で用いられる酸発生剤(A)を構成するボレートアニオンは、以下の一般式(1)で示される。
【0059】
一般式(1)
【化6】

【0060】
(ただし、Yはフッ素または塩素原子、
Zは、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基の中から選ばれる基で2つ以上置換されたフェニル基、
mは0から3の整数、nは1から4の整数を表し、m+n=4である。)
一般式(2)における置換基Zとしては、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,3,4,6−テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6−トリフルオロ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、2,4,6−トリフルオロ−3,5−ジニトロフェニル基、2,4−ジシアノフェニル基、4−シアノ−3,5−ジニトロフェニル基、4−シアノ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
したがって、一般式(2)で表記されるのボレートアニオンの構造として、具体的には、ペンタフルオロフェニルトリフルオロボレート、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルトリフルオロボレート、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジフルオロボレート、ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ジフルオロボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)フルオロボレート、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]フルオロボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート等があげられる。
【0062】
この内、一般式(1)で表記されるアニオンとして特に好ましいものは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートである。
【0063】
その理由として、比較的容易に合成でき、発生する酸が非常に強く、高い溶解度と高い安全衛生性を有することが挙げられる。
【0064】
本発明で用いられる酸発生剤(A)は上記で例示したスルホニウムカチオンと各種アニオンの組み合わせからなる。
【0065】
以下に具体的な構造を示すが、本発明の酸発生剤の構造はそれらに限定されるものではない。

【0066】
【化7】

【0067】
【化8】


【0068】
【化9】


【0069】
【化10】

【0070】
【化11】

【0071】
【化12】

【0072】
ただし、上記構造式中のX-は、以下に示した構造から選ばれるアニオンいずれであってもよい。
【0073】
【化13】

【0074】
本発明で用いられる酸発生剤(A)は、1種または2種以上を組み合わせて使用される。また、熱による酸発生剤を併用することも可能である。被着される基材の熱安定性が高い場合には、これらを併用して、光照射後に加熱することにより、さらに速やかにカチオン重合性化合物(B)の架橋を進行させることが可能である。
【0075】
本発明で用いられる酸発生剤(A)の使用量は、100重量部のカチオン重合性化合物(B)に対して、0.01重量部〜20重量部の範囲内が好ましく、特に好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。酸発生剤(A)の添加量が0.01重量部未満の場合、感度不良となり、充分に硬化するためには著しく大きな活性エネルギー線の照射が必要となるか、最終的に充分な硬化が得られない場合がある。また、酸発生剤(A)の添加量が20重量部を超えて添加しても、感度の向上はせず、逆に硬化物中に未硬化成分として残存する量が多くなり、硬化物の物性が低下する場合がある。
【0076】
[カチオン重合性化合物(B)]
次にカチオン重合性化合物(B)について説明する。カチオン重合性化合物(B)は、活性エネルギー線の照射により酸発生剤(A)から発生する酸により重合または架橋する。カチオン重合性化合物(B)は、分子内にカチオン重合性の官能基、例えば、ビニルエーテル基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基、エピスルフィド基、エチレンイミン基、水酸基を有する種々のモノマー、オリゴマーまたはポリマーや、また、これらの官能基を有するポリマーについても限定されず、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリエーテル系、天然ゴム、ブロック共重合体ゴム、シリコーン系などの各ポリマーを用いることができる。
【0077】
また、カチオン重合性化合物(B)は、加水分解性シラン化合物の加水分解物を用いることができる。
【0078】
上記カチオン重合性化合物(B)は、単独で用いられてもよく、2種以上併用されてもよい。上記カチオン重合性化合物(B)としては、好ましくは、エポキシ基、オキセタン基を有する化合物が用いられる。これらの官能基の重合は比較的反応性が高く、かつ硬化時間が短いため、硬化時間の短縮を図ることができる。
【0079】
エポキシ基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、異節環状型エポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのアルコール型エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂などのハロゲン化エポキシ樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エポキシ基含有ポリエステル樹脂、エポキシ基含有ポリウレタン樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ポリシラン等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は常温で液体であっても良いし、固体であっても良い。また、エポキシ基含有オリゴマーも好適に用いることができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマー(例えば、油化シェルエポキシ社製、エピコート1001、1002等)を挙げることができる。さらに、上記エポキシ基含有モノマーやオリゴマーの付加重合体を用いてもよく、例えば、グリシジル化ポリエステル、グリシジル化ポリウレタン、グリシジル化アクリルなどを挙げることができる。
【0080】
特にフッ素化エポキシ樹脂は、同様な構造を有する炭化水素型エポキシ化合物と比較して小さな屈折率を有していることから、本発明の光導波路の屈折率を所望の値に調整するのに、最適な樹脂である。
【0081】
なかでも、光カチオン重合性がより高く、少ない光量でもより効率的に光硬化が進行することから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、エポキシ基含有ポリシラン等が好適に用いられる。これらのエポキシ基を有する化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0082】
上記脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、1,2:8,9−ジエポキシリモネン、4−ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ノルボルネンモノエポキサイド、リモネンモノエポキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチレン)アジペート、ビス−(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、(2,3−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、BHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製脂環式エポキシ樹脂(軟化点71℃)等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、例えば1,4−ブタンジオールジクリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールモノグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グルセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
オキセタニル基を有する化合物としては、例えば、フェノキシメチルオキセタン、3,3−ビス(メトキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
加水分解性シラン化合物としては、通常、無触媒、過剰の水の共存下で25℃〜100℃の温度範囲で加熱することにより、加水分解されてシラノールを生成できる置換基、もしくはシロキサン縮合物を形成できる置換基を有する化合物が挙げられる。
【0086】
本発明の加水分解性シラン化合物の加水分解物とは、一部未加水分解の加水分解性シラン化合物が残っていても良く、さらに加水分解性シラン化合物の加水分解物とは、加水分解反応によりシラノール基が生成したものばかりではなく、一部のシラノール基同士が縮合した部分縮合物をも含む。
【0087】
加水分解性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン等のメチルアルコキシシラン、テトラメトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジアミノシラントリメチルクロロシラン等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本発明の光導波路形成用材料には、耐熱性を向上させる目的でポリイミド系樹脂を用いることもできる。
【0089】
また、本発明の光導波路形成用材料には、密着性付与剤として、シランカップリング剤またはチタネートカップリング剤を用いることもできる。
【0090】
ここで、シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン、さらに、エポキシ系、アミノ系、ビニル系の高分子タイプのシラン等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
特に、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシランが好ましい。
【0091】
一方、チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
これらのカップリング剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用することもできる。このときカップリング剤の使用量は、カチオン重合性化合物(B)100重量部に対して0.1〜1重量部の範囲が好ましい。
【0093】
また、本発明の光導波路形成用材料は、酸発生剤(A)を使用した効果により、増感剤を用いなくともエネルギー線、特に350nmから450nmの波長領域の光照射に対して非常に迅速かつ確実に硬化することが可能であるが、必要に応じて増感剤を併用して用いてもよい。
【0094】
本発明と併用することができる増感剤の例としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、ペリレン誘導体、ペンタセン誘導体等の縮合多環芳香族誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、カルコン誘導体やジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2−ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノール誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、フェノチアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、カルバゾール誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体等があげられ、その他さらに具体的には大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)、フォトポリマー懇話会編、「感光材料リストブック」(1996年、ぶんしん出版)に記載の色素および増感剤があげられるがこれらに限定されるものではなく、これらは必要に応じて任意の比率で二種以上用いてもかまわない。
【0095】
これらの増感剤のうち、好ましいものとしては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体の縮合多環芳香族誘導体および、フェノチアジン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体があげられ、中でも特に好ましいものとして、アントラセン誘導体があげられる。
【0096】
これらの具体例としては、アントラセン、1−アントラセンカルボン酸、2−アントラセンカルボン酸、9−アントラセンカルボン酸、9−アントラアルデヒド、9,10−ビス(クロロメチル)アントラセン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、9−ブロモアントラセン、1−クロロ−9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、9−シアノアントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、9,10−ジシアノアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブチルアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ジ−p−トリルアントラセン、9,10−ビス(p−メトキシフェニル)アントラセン、2−ヒドロキシメチルアントラセン、9−ヒドロキシメチルアントラセン、9−メチルアントラセン、9−フェニルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジフェノキシアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸ナトリウム、1,4,9,10−テトラヒドロキシアントラセン、2,2,2−トリフルオロー1−(9−アンスリル)エタノール、1,8,9−トリヒドロキシアントラセン、1,8−ジメトキシ−9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、9−ビニルアントラセン、9−アントラセンメタノール、9−アントラセンメタノールのトリメチルシロキシエーテル、フェノチアジン、N−エチルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン。1,4−ジメトキシナフタレンなどが挙げられる。
【0097】
上記増感剤を併用する場合の添加量は特に限定されないが、本発明の酸発生剤100重量部に対し、0〜100重量部が好ましい。
【0098】
本発明で用いられる酸発生剤(A)は酸発生剤として十分高い感度を有しているが、他の酸発生剤と併用して用いることも可能である。酸発生剤(A)と併用することが可能な酸発生剤は特に限定されず、「PAG」、「酸発生剤」、「光酸発生剤」、「光重合開始剤」、「カチオン重合開始剤」、「重合触媒」等の名称で業界公知の材料を適宜選択して使用することできる。また、他の酸発生剤を使用する場合は、単独または複数組み合わせて使用することも可能である。
【0099】
本発明で用いられる酸発生剤(A)と併用することが可能な他の酸発生剤としては、まず、オニウム塩系化合物が挙げられる。このようなオニウム塩系化合物の例としては、スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、ホスホニウム塩系、ジアゾニウム塩系、ピリジニウム塩系、ベンゾチアゾリウム塩系、スルホキソニウム塩系、フェロセン系の化合物が挙げられ、これらの構造は特に限定されず、ジカチオンなどの多価カチオン構造を有していてもよく、カウンターアニオンも公知のものを適宜、選択して使用することができる。
【0100】
また、本発明で用いられる酸発生剤と併用することが可能なオニウム塩以外の感エネルギー線酸発生剤としては、ニトロベンジルスルホナート類、アルキルまたはアリール−N−スルホニルオキシイミド類、ハロゲン化されていてもよいアルキルスルホン酸エステル類、1,2−ジスルホン類、オキシムスルホナート類、ベンゾイントシラート類、β−ケトスルホン類、β−スルホニルスルホン類、ビス(アルキルスルホニル)ジアゾメタン類、イミノスルホナート類、イミドスルホナート類、トリハロメチルトリアジン類などのトリハロアルキル基を有する化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
本発明で用いられる酸発生剤(A)と併用する他の酸発生剤の比率は特に限定されないが、本発明の酸発生剤(A)100重量部に対して0〜99重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0102】
さらに必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤、無機充填剤、界面活性剤、重合禁止剤、濡れ性改良剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸拡散制御剤、脱水剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、光(活性エネルギー線)硬化性を向上させるための「ラジカル重合性不飽和基を有する化合物と光ラジカル開始剤」等を用いても良い。
【0103】
[光導波路の形成方法]
次に、本発明の光導波路形成用材料を用いた光導波路の形成方法について説明する。本発明の光導波路形成用材料を用いた光導波路の形成方法は、下部クラッド層形成工程と、コア部形成工程と、および上部クラッド層形成工程とから主として構成されている。本発明の光導波路形成用材料は、下部クラッド層、コア部、上部クラッド層のいずれの形成用材料にも用いることができる。
【0104】
図1(A)〜図1(F)は、本発明の光導波路の形成方法の一実施の形態を示す工程図である。
【0105】
まず、基板1を準備する(図1(A))。なお、基板1は平坦な表面を有するものであれば、特に制限されるものではないが、例えばシリコン基板やガラス基板等を用いることが出来る。
【0106】
基板1の表面に、下部クラッド層形成用材料を塗布し、乾燥またはプリベークさせて、下層用薄膜を形成する。そして、この下層用薄膜に、感エネルギー線を照射することにより硬化させて、下部クラッド層2を形成する(図1(B))。なお、下部クラッド層2の形成工程では、薄膜の全面に感エネルギー線を照射し、その全体を硬化させることが好ましい。
【0107】
ここで、下部クラッド層形成用材料を塗布する手段としては、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、またはインクジェット法等の方法を用いることができる。このうち、均一な厚さを有する塗膜が得られることから、特にスピンコート法を用いることが好ましい。
【0108】
この場合、下部クラッド層形成用材料は、有機溶剤で希釈して用いることが好ましい。
【0109】
有機溶剤としては、下部クラッド層形成用材料を均一に溶解できるものであれば特に限定されない。具体例としては1,1,2,2−テトラクロロエタン、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルメトキシプロピオナート、エチルエトキシプロピオナート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、エチレングリコールモノエチルエ一テルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエ一テル、プロピレングリコールモノメチルエ一テルアセテート、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、N,N一ジメチルホルムアミド、N,N一ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどが好ましく、これらの溶剤を単独あるいは混合して使用する。
【0110】
また、下部クラッド層形成用材料から形成された塗布膜は、50〜90℃の温度で乾燥させ、あるいは必要に応じてさらに60〜200℃に加熱してプレベークすることにより、薄膜として形成することができる。このようなプレベーク条件は、下部クラッド層形成用材料の各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、通常60〜120℃で、10〜600秒のプレベーク条件とすることが好ましい。なお、下部クラッド層の形成工程における塗布方法は、後述するコア部の形成工程や、上部グラッド層の形成工程においてもあてはまる内容である。
【0111】
また、下部クラッド層を形成する際のエネルギー線は、本発明で用いている酸発生剤(A)が吸収して分解し、酸を発生できるものであり、被着体にダメージを与えないものであれば特に限定されない。このようなエネルギー線の例としては光酸発生剤(A)の説明で述べたエネルギー線と同様である。
【0112】
さらに、活性エネルギーを照射後に、塗膜全面が十分硬化するように、必要に応じて加熱処理を行っても良い。この加熱条件は下部クラッド層形成用材料の配合組成、添加剤の種類等により変わるが、通常、30〜400℃、好ましくは50〜300℃で、例えば5分間〜72時間である。なお、下部クラッド層の形成工程におけるエネルギー線および加熱処理については、後述するコア部の形成工程や、上部グラッド層の形成工程においてもあてはまる内容である。
【0113】
次に、この下部クラッド層2上に、コア形成用材料を塗布し、乾燥またはさらにプリベークさせてコア用薄膜3を形成する。その後、コア用薄膜3の上面に対して、所定のパターンに従って、例えば所定のラインパターンを有するフォトマスク4を介して活性エネルギー線5の照射を行う(図1(C))。これにより、放射線が照射された箇所のみが硬化するので、それ以外の未硬化の部分を現像除去することにより、下部クラッド層2上に、パターニングされた硬化膜よりなるコア部6を形成することができる。(図1(D))
【0114】
このようにして所定のパターンに従ってパターン露光し、選択的に硬化させた薄膜に対しては、硬化部分と未硬化部分との溶解性の差異を利用して、現像処理することができる。したがって、パターン露光後、未硬化部分を除去するとともに、硬化部分を残存させる
ことにより、結果として、コア部を形成することができる(図1(E))。
【0115】
ここで、現像液としては、有機溶剤、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、N−メチルピロリドン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノナンなどのアルカリ類からなるアルカリ水溶液等を用いることができる。また、アルカリ水溶性を使用する場合、その
濃度を、通常0.05〜25重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%の範囲内の値とすることが好ましい。なお、このようなアルカリ水溶液に、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶剤や界面活性剤などを適当量添加して、現像液として使用することも好ましい。
【0116】
また、現像方法は液盛り法、ディッピング法、シャワー現像法などの公知の方法を採用することができる。
【0117】
次に、コア部6が形成された下部クラッド層2の表面に、上部クラッド層形成用材料を塗布し、乾燥またはプリベークさせて上部クラッド層用薄膜を形成する。この上部クラッド層用薄膜に対し、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、図1に示したように上部クラッド層7を形成することができる(図1(F))。
【0118】
また、活性エネルギー線の照射によって得られる上部クラッド層7は、必要に応じて、さらに上述したポストベークすることが好ましい。ポストベークすることにより、硬度および耐熱性に優れた上部クラッド層を得ることができる。
【0119】
図1(G)〜図1(K)は、本発明の光導波路の形成方法の、他の実施の形態を示す工程図である。なお、図1(A)〜図1(F)に示した部材と同様の部材には共通の符号を用いた。
【0120】
まず、基板1を準備する(図1(G))。
【0121】
基板1上に上述した方法で下部クラッド層2を形成する(図1(H))。
【0122】
下部クラッド層2上に、コア部形成用材料を塗布し、乾燥またはさらにプリベークさせてコア部用薄膜3を形成する。その後、コア部用薄膜3の上面に対して、所定のパターンに従って、例えば所定のラインパターンを有するフォトマスク4を介して活性エネルギー線5の照射を行う(図1(I))。
【0123】
この際、コア部形成用材料に、活性エネルギー線の照射により屈折率が増加するような本発明の光導波路形成用材料を用いた場合、図1の(I)のように、コア部となる部分に活性エネルギー線を照射する。
【0124】
逆に、コア部形成用材料に、活性エネルギー線の照射により屈折率が減少するような本発明の光導波路形成用材料を用いた場合、図1の(I)とは逆に、コア部ではない側面クラッド層のみに活性エネルギーが照射されるようなフォトマスクを使用する。
【0125】
次に、コア部6が形成された下部クラッド層2の表面(図1(J))に、上部クラッド層形成用材料を塗布し、乾燥またはプリベークさせて上部クラッド層用薄膜を形成する。この上部クラッド層用薄膜に対し、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、図1に示したように上部クラッド層7を形成することができる(図1(K))。
【実施例】
【0126】
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例のみに、なんら限定されるものではない。
【0127】
[光導波路形成用材料の調整]
(1)光導波路形成用材料A(コア部形成用材料)
フェニルトリメトキシシランとメチルトリメトキシシランとからの加水分解から得られた加水分解物40重量部と、メチルイソブチルケトン60重量部とからなるカチオン重合性化合物(B)100重量部に対し、酸発生剤(A)として、[2−(4−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−ジメチル−スルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを2重量部添加し、均一に混合することにより、コア部形成用材料として、光導波路形成用材料Aを得た。
【0128】
(2)光導波路形成用材料B(下部クラッド層形成用材料または上部クラッド層形成用材料)
メチルトリメトキシシランからの加水分解から得られた加水分解物40重量部とメチルイソブチルケトン60重量部とからなるカチオン重合性化合物(B)100重量部に対し、酸発生剤(A)として、[2−(4−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−ジメチル−スルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを2重量部添加し、均一に混合することにより、下部クラッド層形成用材料または上部クラッド層形成用材料として、光導波路形成用材料Bを得た。
【0129】
(3)光導波路形成用材料C(コア部形成用材料)
メチルトリメトキシシランと、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタンとからの加水分解から得られた加水分解物50重量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル50重量部とからなるカチオン重合性化合物(B)100重量部に対し、酸発生剤(A)として、[2−(4−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−2−オキソ−エチル]−ジメチル−スルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを2重量部添加し、均一に混合することにより、コア部形成用材料として、光導波路形成用材料Cを得た。
【0130】
(実施例1)
光導波路形成用材料Bをシリコン基板の表面上にスピンコータで塗布し、70℃で10分間乾燥させた後、波長365nmの光のみを選択的に透過するバンドパスフィルターを介して1000mJ/cm2照射することにより、厚み10μmの下部クラッド層を形成した。この下部クラッド層における波長1550nmの光の屈折率は1.423であった。次いで、光導波路形成用材料Aを下部クラッド層の上にスピンコータで塗布し、70℃で10分間乾燥させた後、幅4〜20μmの光導波路パターンを刻んだフォトマスクを用いて、波長365nmの光のみを選択的に透過するバンドパスフィルターを介して1000mJ/cm2照射することにより、露光を行った。その後、この基板をエタノールよりなる現像液中に浸漬して未露光部を溶解し、厚さ7μmのコア部を形成した。得られたコア部における波長1550nmの光の屈折率は、1.452であった。さらに、このコア部を有する下部クラッド層の上面に、光導波路形成用材料Bをスピンコータで塗布し、70℃で10分間乾燥させた後、波長365nmの光のみを選択的に透過するバンドパスフィルターを介して1000mJ/cm2照射することにより、厚み15μmの上部クラッド層を形成し、これにより、光導波路を形成した。形成された上部クラッド層における波長1550nmの光の屈折率は1.423であった。
【0131】
(実施例2)
実施例1における光導波路形成用材料Aの代りに、光導波路形成用材料Cを用いたほかは、実施例1と同様に光導波路を形成し、屈折率を測定した。その結果、形成された下部クラッド層における波長1550nmの光の屈折率は1.423であり、コア部における屈折率は、1.436であり、上部クラッド層における屈折率は1.423であった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の光導波路形成用材料は、少ない活性エネルギー線の照射量できわめて容易かつ単時間で、硬化することが出来る。また、本発明光導波路形成用材料は、パターン露光できる、または活性エネルギー線の照射で屈折率を変化させることが出来るため、容易に光導波路を形成することができる。本発明の光導波路形成用材料は、低コストで量産性に優れた、光導波路の生産に用い得る。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】光導波路の製造方法の一部工程図である。 (A)〜(F)は、直接露光法による製造の一部工程図である。 (G)〜(K)は、フォトブリーチング法による製造の一部工程図である。
【符号の説明】
【0134】
1 基板
2 下部クラッド層
3 コア部用薄膜
4 フォトマスク
5 活性エネルギー線
6 コア部
7 上部クラッド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホニウムカチオンと下記一般式(1)で表されるボレートアニオンとを含んでなり、波長365nmのモル吸光係数が、500から25000の範囲である酸発生剤(A)、および、
カチオン重合性化合物(B)を含んでなる光導波路形成用材料。
一般式(1)
【化1】

(ただし、Yはフッ素または塩素原子、
Zは、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基の中から選ばれる基で2つ以上置換されたフェニル基、
mは0から3の整数、nは1から4の整数を表し、m+n=4である。)
【請求項2】
スルホニウムカチオンが、一般式(2)で表される請求項1記載の光導波路形成用材料。
一般式(2)
【化2】


(ただし、R1は、置換されたベンジル基、置換されたフェナシル基、置換されたアリル基、置換されたアルコキシル基、置換されたアリールオキシ基より選ばれる基を、
2 およびR3 はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいベンジル基、置換基を有してもよいフェナシル基、置換基を有してもよいアリル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、または、置換基を有してもよいアルケニル基より選ばれる基を、
4 は酸素原子もしくは孤立電子対を示す。
また、R1 、R2 およびR3はその2個以上の基が結合して環状構造となってもよい。)
【請求項3】
カチオン重合性化合物(B)が、分子内に少なくとも1個のエポキシ基または分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有する化合物または、加水分解性シラン化合物の加水分解物である請求項1または2記載の光導波路形成用材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の光導波路用材料を硬化させてなる光導波路。
【請求項5】
コア部およびグラット層を有する光導波路の製造方法であって、コア部またはグラット層の少なくとも一方となるよう基板上に、請求項1〜3のいずれか一つに記載の光導波路形成用材料を塗工した後、光照射して硬化させることを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の光導波路の製造方法により製造された光導波路。

【図1】
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【公開番号】特開2006−163242(P2006−163242A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357990(P2004−357990)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】