説明

光帯電性トナーとその製造方法、および画像形成方法

【課題】トナーに機械的ストレスを与えることなく帯電でき、「良好な帯電維持」と「疲労・劣化の防止」とを両立することのできる静電現像用のトナーとその簡便で生産性の良い製造方法ならびに経時においても良好な画像形成が行える画像形成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも樹脂および着色剤を含有するトナー粒子表面に、蛍光性を有し、かつ官能基を有する化合物を化学結合させた光帯電性トナーとする。例えば、トナー粒子表面の酸基と蛍光性を有する有機酸を2価以上の金属を介して化学結合させ励起光の照射により帯電するようにする。有機酸として、キノリノール,イミダゾール,チアゾール,オキサゾール,トリアゾールのいずれかの誘導体を用いる。2価以上の金属として、ベリリウム,マグネシウム,ストロンチウム,亜鉛,カルシウム,バリウム,鉄,アルミニウム,クロム,コバルト,ガリウム,ジルコニウム,珪素,チタンのいずれかの金属を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などに用いられるトナー技術に関し、さらに詳しくは、励起光の照射によって帯電する静電現像用の光帯電性トナーとその製造方法、および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真、静電記録、静電印刷などで使用される現像剤は、例えば、その現像工程で静電荷像が形成されている感光体に一旦付着され、次に転写工程で感光体から転写紙などの被転写体に転写された後、定着工程で紙面に定着される。
このような感光体の潜像保持面上に形成される静電荷像を現像するための現像剤として、キャリアとトナーからなる二成分系現像剤、およびキャリアを必要としない磁性トナーあるいは非磁性トナーからなる一成分系現像剤が用いられ、これらは乾式トナーとして知られている。従来、このような乾式トナーとしては、スチレン系樹脂やポリエステル系樹脂などのトナーバインダーを着色剤などと共に溶融混練し、それを微粉砕したものが用いられている。
【0003】
上記電子写真プロセスの現像および転写工程におけるトナー移動の駆動力は、トナーに生じる静電荷によるものである。トナーの静電荷は、トナーとキャリア、あるいはトナーと現像ローラー、すなわちトナーと摩擦帯電部材との摩擦により発生する。
一部には帯電付与において電荷注入を併用する場合もあるが、あくまで電荷注入は摩擦帯電の補助的役割にしか過ぎず、乾式の電子写真プロセスでは、トナーが獲得する静電荷のほとんどをトナーの摩擦により得ている。
【0004】
例えば、光によって導電性が変化する光導電性材料または光により帯電特性が変化する光帯電制御材料を含有する非磁性一成分トナーを用い、発光量または発光頻度を制御する光制御機構によってトナーの帯電量や現像後の画像濃度などが適正値となるように制御する現像装置が提案されているが、この非磁性一成分トナーの帯電は摩擦帯電手段によって行うことが記載されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ところが、このような摩擦による帯電では、トナーに与えるストレスそのものが帯電の駆動力であることから、より速く、あるいはより大きな帯電量を得たい場合には、トナーに与えられるストレスもまたそれに比例して大きくなる。また、帯電したトナー全てが一度の画像形成で消費されるわけではなく、一部のトナーは長時間に亘り帯電と放電を繰り返すため、時間経過とともに劣化したトナーが形成される。トナーが劣化すると、例えば、トナー帯電量が低下したり、外添剤の埋没によってトナーの流動性が低下し、画像形成に著しく悪影響を及ぼす。
上記のように、摩擦によって帯電する場合、トナーの帯電を良好に維持しつつ、トナーの疲労・劣化を防ぐことは相反する事象であるため、両者を共に満足させることは極めて困難な課題であった。
【0006】
【特許文献1】特開平9−6132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、トナーに機械的ストレスを与えることなく帯電でき、「良好な帯電維持」と「疲労・劣化の防止」とを両立することのできる静電現像用の光帯電性トナーと、その簡便で生産性の良い製造方法を提供するとともに、経時においても良好な画像形成が行える画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも樹脂および着色剤を含有するトナー粒子表面に、蛍光性を有し、かつ官能基を有する化合物が化学結合してなることを特徴とする光帯電性トナーである。
【0009】
ここで、前記化合物が有機酸であり、前記トナー粒子表面の酸基と該有機酸が2価以上の金属を介して化学結合してなる光帯電性トナーとすることが好適である。
【0010】
また、前記有機酸が、キノリノール誘導体、イミダゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、またはトリアゾール誘導体から選ばれるいずれかの誘導体であることが好ましい。
【0011】
また、前記金属が、ベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、鉄、アルミニウム、クロム、コバルト、ガリウム、ジルコニウム、珪素、またはチタンから選ばれるいずれかの金属であることが好ましい。
【0012】
そして、上記本発明の光帯電性トナーは、励起光の照射により帯電するようになされていることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、少なくとも樹脂および着色剤を含有するトナー粒子表面に、蛍光性を有し、かつ官能基を有する化合物が化学結合してなる光帯電性トナーの製造方法であって、
前記トナー粒子に含有される組成分原料を水系媒体中で乳化あるいは懸濁分散して粒子化した後、該粒子表面の酸基に2価以上の金属陽イオンを反応させ、さらに該酸基と反応した金属と蛍光性を有する有機酸あるいは有機酸塩を反応させることを特徴とする光帯電性トナーの製造方法に係るものである。
【0014】
上記製造方法において、前記2価以上の金属陽イオンが、ベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、鉄、アルミニウム、クロム、コバルト、ガリウム、ジルコニウム、珪素、またはチタンから選ばれるいずれかの金属陽イオンであることが好ましい。
【0015】
また、上記製造方法において、前記有機酸が、キノリノール誘導体、イミダゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、またはトリアゾール誘導体から選ばれるいずれかの誘導体であることが好ましい。
【0016】
さらに、上記製造方法における有機酸塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、またはリチウム塩のいずれかであることが好ましい。
【0017】
そして上記いずれかの製造方法において、前記組成分原料を有機溶剤に溶解または分散し、該溶解物または分散物を界面活性剤の存在下に水系媒体中で乳化分散した後、該乳化分散液中の有機溶剤を除去してトナー粒子化を行うことが好適である。
【0018】
また上記いずれかの製造方法において、重付加反応するプレポリマーを含む前記組成分原料を有機溶剤に溶解または分散し、該溶解物または分散物を界面活性剤の存在下に水系媒体中で乳化分散した後、該乳化分散液の状態でプレポリマーの重付加反応を行い、反応後または反応させながら有機溶剤を除去してトナー粒子化を行うことが好適である。
そして、前記重付加反応するプレポリマーがイソシアネート基を末端に有する化合物であることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明は、画像形成装置の像担持体上に形成された静電潜像を、少なくとも樹脂および着色剤を含有するトナー粒子表面に、蛍光性を有し、かつ官能基を有する化合物が化学結合してなる光帯電性トナーを用いて現像し、該現像された画像を被転写体上に転写する画像形成方法であって、
前記トナー粒子表面に化学結合した化合物を励起光の照射により励起して該トナー粒子を帯電し、現像するようにしたことを特徴とする画像形成方法に係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の少なくとも樹脂および着色剤を含有するトナー粒子表面に、蛍光性を有し、かつ官能基を有する化合物が化学結合した光帯電性トナー構造(例えば、トナー粒子表面の酸基と蛍光性を有する有機酸が2価以上の金属を介して化学結合した構造)とすることにより、トナーに機械的ストレスを与えることなく帯電でき、しかも従来技術において相反事象であった、良好な帯電維持と、疲労・劣化の防止とを両立することが可能になる。
また、本発明の製造方法によれば、簡便でしかも良好な生産性を維持しながら品質の高い光帯電性トナーを製造することができる。
さらに、本発明の光帯電性トナーを静電現像用として用いて画像形成すれば、良好な帯電特性が実現するとともに、経時における摩擦によるトナー粒子のダメージを解消でき、品質の良好な画像が安定して得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本発明における静電現像用の光帯電性トナーについて説明する。
前記のように本発明の光帯電性トナーは、少なくとも樹脂および着色剤を含有するトナー粒子表面に、蛍光性を有し、かつ官能基を有する化合物が化学結合した構造を有している。ここで、化学結合した構造とは、トナー粒子表面の酸基と前記化合物の官能基が直接化学結合してもよいし、2価以上の金属を介して化学結合してもよい。また、化学結合としては、共有結合、イオン結合、配位結合、あるいは錯体の形成などが含まれる。このような構造としては、例えば、前記化合物が有機酸であり、この有機酸がトナー粒子表面の酸基と2価以上の金属を介して化学結合した有機金属化合物が挙げられる。以下、有機金属化合物が有機金属錯体である場合を主体に説明する。
【0022】
トナー粒子表面に存在する酸基は、主にバインダーの役割を担う樹脂成分に結合し、2価以上の金属と化学的に結合できるものである。このような酸基としては、例えば、カルボキシル基やスルホニル基などの官能基が挙げられる。本発明のトナー組成分として好ましく用いられるポリエステル樹脂を例にすると、カルボキシル基がこの酸基に該当する。
なお、光帯電性トナーの組成分として、少なくとも樹脂および着色剤が含有されるが、静電現像剤として要求される特性を満たすために、通常、離型剤、電荷制御剤もしくは帯電制御剤などが添加される。
【0023】
前記有機酸がトナー粒子表面の酸基と2価以上の金属を介して化学結合した有機金属化合物は、主に中性の分子内錯塩からなる有機金属錯体構造を有するものであり、化学構造から推測し、静電荷担体は「電子」であると考えられる。すなわち、このような有機金属化合物をトナー粒子表面に化学結合させ、帯電制御剤として用いると正帯電性を示す。このことから、上記有機金属化合物からキャリア側に電子移動していると判断される。
【0024】
上記有機金属化合物のHOMOは5.0〜6.0eV、LUMOは2.0〜3.5eVであり、二成分系現像剤のトナーとして用いる場合には、4〜5eV近傍にEf(フェルミレベル)を持つキャリアに対して電子移動するエネルギーダイヤグラムは成立しない。上記有機金属化合物からキャリア側に電子移動するためには、有機金属化合物の励起状態を必ず経由する必要が生じるわけである。摩擦帯電の場合には、トナー表面およびキャリア表面の局所的摩擦により、極めて大きなエネルギーを生じさせることができる。この摩擦のエネルギー(例えば、摩擦熱)により上記有機金属化合物が励起状態となり、帯電するものと推測される。しかし一方で、このような摩擦帯電の場合には前記のようにトナー疲労や劣化が問題となる。
【0025】
このようなトナー疲労や劣化問題を解決するには、本発明のように励起光によって有機金属化合物のエネルギーレベルをEg(バンドギャップ)以上とし、励起した有機金属化合物からキャリア側に電子移動できるダイヤグラムとすることが最も適切であると考えられる。すなわち、励起光の照射によって有機金属化合物を励起することにより、摩擦帯電と同様に帯電させることが可能になる。本発明はこの考えに基づくものである。
この場合、前記のようにトナー粒子には顔料などの着色剤成分が含有されており、光のエネルギーが内部にまでは到達しない。このため、光の吸収によって静電荷を発生し、帯電できるようにするためには、トナー粒子表面に蛍光性を有する化合物、例えば、蛍光性を有する有機酸と2価以上の金属が化学結合した有機金属化合物を選択的に配列しておく必要がある。
ここで、有機金属化合物を励起するには、有機金属化合物の最大励起波長以上の励起エネルギーを有する励起光の照射によって行うことができる。例えば、360nm程度の中波長紫外光などが励起光として用いることができる。
本発明の光帯電性トナーに用いられる蛍光性を有する有機酸としては、例えば、キノリノール誘導体、イミダゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、またはトリアゾール誘導体などが好適である。
【0026】
上記蛍光性を有する有機酸と、トナー粒子の表面に存在する酸基とを化学結合させるために介在する金属は、2価以上の金属であり、有機酸と化学結合して有機金属化合物を形成することができるものである。
このような2価以上の金属としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、鉄、アルミニウム、クロム、コバルト、ガリウム、ジルコニウム、珪素、またはチタンなどが好ましく用いられる。
【0027】
上記のような構造とした本発明の光帯電性トナーを用いることによって、励起光の照射だけで帯電させることが可能となり、トナーに疲労や劣化などを与えることなく優れた帯電特性を付与することができる。これによって、例えば、帯電立ち上り性、飽和帯電量などの良好な帯電が実現するとともに、摩擦によるトナーダメージが回避される。
【0028】
次に、本発明における光帯電性トナーの製造方法について説明する。
本発明における光帯電性トナーの製造方法は、トナー粒子を構成する前記少なくとも樹脂および着色剤からなる組成分原料を、水系媒体中で乳化あるいは懸濁分散してトナー粒子化した後、トナー粒子表面の酸基、すなわち、樹脂に結合した酸基に2価以上の金属陽イオンを反応させ、さらに酸基に反応させた2価以上の金属と蛍光性を有する有機酸あるいは有機酸塩を反応させることによって、有機酸を有機金属化合物の形で化学的に結合するものである。
水系媒体中で乳化あるいは懸濁分散してトナー粒子化した後の粒子表面に存在する酸基に、2価以上の金属を介して蛍光性を有する有機酸を化学結合する製造方法の概略を下記に示す。なお、水系媒体中で乳化あるいは懸濁分散してトナー粒子を製造する方法は後述する。また、下記製造方法は一例であって、これに限定されるものではない。
【0029】
まず、例えば後述のポリマー懸濁法によって製造されたトナー粒子を水に再分散させてスラリー状態とし、これに適量のアルカリ水溶液を5℃〜30℃の室温で滴下して充分に攪拌する。トナー粒子の酸基をアルカリ塩とした後、所定の2価以上の金属陽イオンを含む水溶液を滴下し、アルカリ塩を2価以上の金属塩に置換する。
ここで、最初にアルカリを加え、トナー粒子表面の酸基を一旦アルカリ塩とする工程を導入することによって、低温でしかも迅速に2価以上の金属と置換することができる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水溶液を用いることができる。
【0030】
上記アルカリ塩とした酸基に置換する2価以上の金属陽イオンは、前述したベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、鉄、アルミニウム、クロム、コバルト、ガリウム、ジルコニウム、珪素、またはチタンから選ばれるいずれかの金属陽イオンであるものが好ましい。
【0031】
次いで、上記トナー粒子表面の酸基が2価以上の金属塩とされたスラリーに、蛍光性を有する有機酸(例えば、8−ヒドロキシキノリン)を予め水酸化ナトリウムなどのアルカリで処理して有機酸の塩(例えば、8−ヒドロキシキノリンのナトリウム塩)とした水溶液を添加する。有機酸の塩は、5℃〜30℃の室温で瞬時にトナー粒子表面の酸基に結合した2価以上の金属塩と反応し、有機金属化合物を生成する。すなわち、2価以上の金属を介してトナー粒子表面と化学的に結合する。
この工程における分散液のpHは、4〜6の酸性とするのが好ましく、アルカリ領域では反応が未完結となる。また、加える金属陽イオンと有機酸のモル比を調整することにより、帯電性などの特性を制御することができる。
上記酸基としては、前述のように本発明の樹脂成分として好ましく用いられるポリエステル樹脂の場合、カルボキシル基が該当する。
また、上記蛍光性を有する有機酸は、上記キノリノール誘導体のほか、イミダゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、またはトリアゾール誘導体から選ばれるいずれかの誘導体であるものが好ましい。上記有機酸のアルカリ処理には、ナトリウムのほか、カリウム、またはリチウムなどの水酸化物が用いられ、有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などに調整して、酸基に結合した2価以上の金属塩と反応させることが好ましい。
【0032】
上記製造方法によってトナー粒子の表面を化学反応で処理した場合、トナー粒子表面に結合した蛍光性を有する有機酸の有機金属化合物分子は、高度に配向した単分子層を形成する。このため、光帯電性トナー全量(100重量部)に対し、0.01〜1.0重量部の極く少量でも表面を効果的に処理できるという利点を有する。
【0033】
次に、前記表面処理において用いられるトナー粒子の製造方法について説明する。
トナー粒子の製造方法としては、ポリマー懸濁法、懸濁重合法、乳化重合凝集法などがあるが、以下ポリマー懸濁法を主体に説明する。
【0034】
〔ポリマー懸濁法〕
ポリマー懸濁法としては、(1)トナー粒子の組成分原料を有機溶剤に溶解または分散し、当該溶解物または分散物を界面活性剤の存在下に水系媒体中で乳化分散した後、該乳化分散液中の有機溶剤を除去してトナー粒子化を行う方法、あるいは(2)トナー粒子の組成分原料に重付加反応するプレポリマーを含み、これらの組成分原料を有機溶剤に溶解または分散し、当該溶解物または分散物を界面活性剤の存在下に水系媒体中で乳化分散した後、該乳化分散液の状態でプレポリマーの重付加反応を行い、反応後または反応させながら有機溶剤を除去してトナー粒子化を行う方法がある。
トナー粒子の組成分原料およびポリマー懸濁法によるトナー粒子の製造方法について詳細を以下に示す。
【0035】
本発明におけるトナー粒子の組成分原料に用いられる樹脂としては、前記2価以上の金属陽イオンと反応する酸基を有し、トナーバインダーとしての性能を備えていればいずれでもよく、例えば、結着樹脂としては、公知のものであれば、いずれも使用できる。ポリエステル樹脂、ウレア変性ポリエステル樹脂、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、またはこれらの単量体2種類以上からなる共重合体等、あるいはポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂など各種挙げられるが、特にポリエステル樹脂とウレア変性ポリエステル樹脂が好適である。
本発明に好適に用いられるポリエステル樹脂は、いわゆるポリオールとポリカルボン酸の重縮合反応によって得られるものであり、ウレア変性ポリエステル樹脂は、重付加反応するイソシアネート基を末端に有するプレポリマーとアミン類との反応によって得られるものである。特に、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類を重付加反応させたウレア変性ポリエステル樹脂は、耐ホットオフセット性、耐熱保存性と低温定着性の両立など優れた特性が発揮されるため好適である。
なお、ポリエステル樹脂とウレア変性ポリエステル樹脂の詳細は後述する。
これら樹脂の使用量は、一般にトナー組成分として、73〜95重量部程度使用される。
【0036】
また、本発明のトナー粒子の組成分原料に用いられる着色剤としては、公知の染料および顔料が全て使用でき、例えば、黒トナー用では、黒色または青色の染料または顔料粒子が挙げられる。黒色または青色の顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。黒色または青色の染料としてはアゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料等が挙げられる。カラー用トナーとして使用する場合には、マゼンダ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基性染料、レーキ染料、ナフトール染料、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン、塩基染料レーキ化合物が利用できる。イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。
これら着色剤の使用量は、着色剤の材質にもよるが一般に、樹脂100重量部に対し、3〜15重量部程度使用される。
着色剤の使用量が3重量部未満では、十分な画像濃度が得られる領域がせまく、目的の画像濃度を得ようとするとトナー消費量が著しく増大するといった問題が生じる。また逆に15重量部を超過すると、バインダー樹脂に対する顔料の比が大となるため、紙への定着不良を発生しやすくなり、またカラー用着色剤の種類によっては顔料が帯電付与効果をもっていたり、黒用着色剤では逆に帯電低下効果を有することが多く、いずれの場合も目標とする帯電量に制御できなくなる問題が発生する。
【0037】
さらに、トナーに離型性を持たせるため、本発明のトナー粒子の組成分原料として一般にトナーに使用される離型剤を用いることができる。離型剤として、カルナウバワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ライスワックスなどが挙げられ、いずれのワックスも問題なく使用することができる。
ワックスの含有量は、樹脂100重量部に対し、2〜7重量部程度が好ましい。
離型剤の使用量が2重量部未満では、ワックスによる離型効果が乏しく定着時のオフセットが発生し、ワックスが7重量部を超過すると、ワックスがキャリアや現像スリーブあるいは感光体などに移行し、現像材の帯電性を劣化させたり画像ボケを発生させたりする問題が生じる。
【0038】
また、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えば、カラートナー用では無色の第4級アンモニウム塩系帯電制御剤、黒トナー用ではニグロシン染料系帯電制御剤などが挙げられる。
帯電制御剤の含有量は、樹脂100重量部に対し、0.05〜5重量部程度が好ましい。
帯電制御剤の使用量が0.05重量部未満では、実質的効果が殆ど発現せず、使用量が5重量部を超過すると、キャリアや現像スリーブあるいは感光体などに移行し、現像材の帯電性を劣化させたり画像ボケを発生させたりする問題が生じる。
【0039】
上記トナー粒子の組成分原料を用いて、ポリマー懸濁法でトナー粒子を製造する場合まず、樹脂、プレポリマー、着色剤、離型剤、帯電制御剤などを有機溶剤に溶解または分散する。いわゆる、油相を形成しておく。
有機溶剤としては、組成分原料を溶解または分散して調製した溶解物または分散物を低粘度化し、しかも樹脂成分を溶解し乳化が可能であるものが用いられるが、特にトナー粒子化の工程において除去しやすい、沸点が100℃未満である揮発性の有機溶剤が好ましい。
【0040】
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。その他アルコール、水等の水性媒体に溶解可能な溶剤を併用することにより光帯電性トナー形状をさらに適切に調節することもできる。
有機溶剤の使用量は、光帯電性トナー組成分100重量部に対して、通常10〜900重量部である。
【0041】
次に、上記分散された溶解物または分散物を界面活性剤の存在下に水系媒体中で乳化分散する。本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。
混和可能な溶剤としては、アルコール(例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(例えば、メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
【0042】
以下、本発明のトナー粒子の組成分原料として重付加反応するプレポリマーを含有する場合について説明する。本発明において好ましく使用される重付加反応するプレポリマーは、イソシアネート基を末端に有する化合物(以降、イソシアネート基を有するプレポリマーと呼称する。)
このイソシアネート基を有するプレポリマーを組成分原料の一つとして用いる際には、例えば、後述するアミン類により重付加反応させてポリマー化することができる。
例えば、イソシアネート基を有するプレポリマーとその他の組成分原料を揮発性有機溶剤中に分散した分散物を、水系媒体中でアミン類と反応してポリマー化することもできる。
なお、プレポリマーや、樹脂、着色剤、離型剤、帯電制御剤などの各組成分原料を、それぞれ水系媒体中で分散液を形成させる際に混合しても構わないが、トナー粒子の組成分原料を予め有機溶剤中で混合して溶解物または分散物としておき、これを水系媒体中に分散させた方がより好ましい。
【0043】
また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー粒子組成分原料は、必ずしも水系媒体中でトナー粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、トナー粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0044】
上記水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマーとトナー粒子組成分原料からなる乳化分散液を安定して形成させる方法としては、例えば水系媒体中に、揮発性有機溶剤にイソシアネート基を有するプレポリマーと他の組成分を分散した分散物を添加して、せん断力により分散させる方法がある。
上記分散には、通常の攪拌式による混合機、より好ましくは高速回転体とステータを有するホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、あるいはボールミル、ビーズミル、サンドミルなどのメディアを用いた分散機が用いられる。
分散の方法としては、特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、あるいは超音波などを採用した公知の設備が適用できる。
【0045】
分散液中のトナー粒子の粒径を2〜20μmにするためには、高速せん断式が好ましい。回転羽根を有する乳化機としては、特に限定されるものではないが、乳化機、あるいは分散機として一般に市販されているものであれば使用することができる。
例えば、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(特殊機化工業(株)製)、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKパイプラインホモミクサー、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工(株)製)などの連続式乳化機、あるいはクレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)などのバッチまたは連続両用乳化機等が挙げられる。
【0046】
高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、加圧下において、0〜150℃、好ましくは10〜98℃である。高温である方が前記プレポリマーからなる乳化分散液の粘度が低くなり、分散が容易となる点で好ましい。
【0047】
イソシアネート基を有するプレポリマーを含むトナー粒子の組成分原料100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。水系媒体の使用量が50重量部未満では、トナー組成分の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。一方、水系媒体の使用量が2000重量部を超えると多過ぎて経済的でない。
【0048】
水系媒体には乳化分散安定剤として界面活性剤のほか、固体微粒子を分散剤として分散しておいてもよい。また、高分子系保護コロイドにより分散液の安定性を調節してもよい。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)などの陰イオン界面活性剤や、第4級アンモニウム塩に代表される陽イオン界面活性剤、もしくは脂肪酸エステルや高級アルコールなどの非イオン界面活性剤、あるいはアミノ脂肪酸ナトリウムなどの両性界面活性剤を用いることができるが、特に粒子安定性の面では陰イオン界面活性剤が望ましい。
これらの界面活性剤と固体微粒子分散剤を併用することによってトナー粒子の安定性や粒径分布の調整をさらに高めることができる。
【0049】
固体微粒子分散剤としては、無機微粒子や有機物の固体微粒子などが用いられるが、これらは水に難溶のため水系媒体中において固体状態で存在する。このような分散剤として好ましい微粒子の平均粒径は、0.01〜1μmである。
無機微粒子の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
好ましくは、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、コロイド状酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイなどであり、特に好ましくは、水中でリン酸ナトリウムと塩化カルシウムを塩基性の条件で下反応させて合成したヒドロキシアパタイトである。
【0050】
一方、有機物の固体微粒子分散剤の例としては、低分子有機化合物の微結晶や高分子系微粒子、例えば、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるメタクリル酸などカルボキシル基を有するモノマーと共重合されたポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体、あるいはシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0051】
高分子系保護コロイドにより分散液の安定性を調節する場合、高分子分散剤を用いることができるが、このような高分子分散剤として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、αーシアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体(例えば、アクリル酸β一ヒドロキシエチル、メタクリル酸β一ヒドロキシエチル、アクリル酸βーヒドロキシプロビル、メタクリル酸β一ヒドロキシプロピル、アクリル酸γーヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ一ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3ークロロー2一ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、Nーメチロールメタクリルアミドなど)、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類(例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど)、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど)、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、もしくはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、あるいはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0052】
分散剤を使用した場合には、例えば、前記トナー粒子組成分原料中に含まれる重付加反応するプレポリマーがイソシアネート基を有するプレポリマーの場合、該分散剤が光帯電性トナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、プレポリマーの伸長および/または架橋反応後、残存する固体微粒子分散剤を溶解処理して洗浄、除去してもよい。
ちなみに、伸長および/または架橋反応時間は、イソシアネート基を有するプレポリマー(例えば、後述のポリエステルプレポリマー(A))の有するイソシアネート基構造と反応剤(例えば、後述のアミン類(B))の組み合わせによる反応性に応じて選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。また、反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的には、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどの触媒が挙げられる。
【0053】
さらに、得られた水系媒体中の乳化分散液から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温して有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができるほか、乳化分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去しながら粒子化し、併せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。
乳化分散液が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガスなどを加熱した気体、特に使用される有機溶剤の沸点以上の温度に加熱された気体が用いられ、スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの装置による短時間の処理により、十分目的とする品質が得られる。
【0054】
一方、乳化分散時のトナー粒度分布が広く、その粒度分布を保ったまま洗浄、乾燥処理が行われた場合には、分級によって粒度分布を調整して所望の粒度分布とすることができる。すなわち、液中で、サイクロン、デカンター、遠心分離などの分級操作を行うことにより、所望の粒度分布とすることができる。もちろん、乾燥後に粉体として取得したトナー粒子を分級操作によって分級してもよいが、液中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子あるいは粗粒子は、再び混練工程に戻して繰り返してトナー粒子の製造に用いることができる。その際、不要の微粒子または粗粒子はウェットの状態でも構わない。
また、用いた分散剤は分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
【0055】
前記本発明において好ましく使用されるイソシアネート基を有するプレポリマーについて以下さらに詳しく説明する。
イソシアネート基を有するプレポリマーとしては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた、いわゆる末端にイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(以降、ポリエステルプレポリマー(A)と呼称する。)などが挙げられる。
上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(例えば、アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0056】
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。
ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
【0057】
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
【0058】
3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0059】
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、および(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。
【0060】
これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。
なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
【0061】
上記ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比([OH]/[COOH])で、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
当量比が2/1よりも大きい場合や、当量比が1/1よりも小さい場合には、分子量が低くなるほか、水酸基量のバランスが崩れてポリイソシアネート(3)と反応させた場合に本発明のポリエステルプレポリマー(A)として要求される特性が発揮されない。
【0062】
また、ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(例えば、イソフォロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(例えば、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用、などが挙げられる。
【0063】
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比([NCO]/[OH])で、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。
ここで、当量比が5/1を超えると低温定着性が悪化する。一方、当量比が1/1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0064】
ポリエステルプレポリマー(A)中におけるポリイソシアネート(3)成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。ポリイソシアネート(3)の含有量が0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0065】
ポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、下記アミン類(B)と反応させて生成するウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0066】
次に、上記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)の伸長反応および/または架橋反応、すなわち重付加反応の反応剤として用いられるアミン類(B)について例示する。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。
【0067】
3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、あるいはオキサゾリン化合物などが挙げられる。
これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0068】
さらに、必要により伸長停止剤を用いて、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)が付加反応して生成するウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(例えば、ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0069】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比([NCO]/[NHx])として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。ここで、アミノ基[NHx]の式中、xは1または2であり、主体は2である。
当量比が2/1を超えたり、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなる。
本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル中に、ウレア結合とともにウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合とウレタン結合の全含有量を100モルとした場合のモル比([ウレア結合含有量]/[ウレタン結合含有量])は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合含有量が10未満であると、耐オフセット性などが悪化する。
なお、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)の重付加反応に用いられる反応剤はアミン類(B)に限定されるものではなく、イソシアネート基と反応して本発明の光帯電性トナーとしての性能を維持することができる化合物であれば用いることができる。
【0070】
本発明においては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)、アミン類(B)とともに変性されていないポリエステル(C)を光帯電性トナーの組成分原料として含有させることができる。
(C)としては、前記ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物などが挙げられ、好ましいものもポリエステルプレポリマー(A)のポリエステル成分と同様である。
【0071】
本発明のトナー粒子の製造方法として上記ポリマー懸濁法を中心に説明したが、下記懸濁重合法、あるいは乳化重合凝集法によってトナー粒子を形成することもできる。
すなわち、重合性単量体中に、着色剤、離型剤等のトナー粒子組成分原料を重合開始剤とともに溶解または分散し、この溶解物または分散物を界面活性剤の存在下に水系媒体中で懸濁分散した後、この懸濁分散液の状態で重合を行って粒子化を行う、いわゆる懸濁重合法によりトナー粒子を得ることができる。
また、水溶性重合開始剤、重合性単量体を水中で界面活性剤を用いて乳化し、通常の乳化重合の手法によりラテックスを合成する。別途着色剤、離型剤等を水系媒体中分散した分散体を用意し、これをラテックスと混合した後、トナーサイズまで凝集させて加熱融着する乳化重合凝集法によってもトナー粒子を得ることができる。
このようにして得たトナー粒子を用いて、その表面の酸基に前記反応処理を施すことによって本発明の光帯電性トナーとすることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り下記実施例に限定されるものではない。なお部の表記はいずれも重量部である。
実施例1
以下の条件で、トナー粒子の原料に用いる樹脂を合成し、これと他のトナー粒子組成分を調合してトナー粒子を作製し、そのトナー粒子表面の酸基と8−ヒドロキシキノリンをアルミニウムを介して結合して実施例1の光帯電性トナーを作製した。
【0073】
<ポリエステル樹脂の合成>
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、テレフタル酸276部、およびジブチルチンオキサイド2部を仕込み、常圧において230℃で8時間重縮合反応した。さらに、10〜15mmHgの減圧下で5時間反応して、ピーク分子量4800のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂100部を酢酸エチル100部に溶解し溶液とした。この溶液の一部を採取して減圧乾燥によりポリエステル樹脂を単離し、測定したところTgは58℃であり、酸価は8であった。
【0074】
<トナー粒子化>
密閉されたポット内に、上記で調製したポリエステル樹脂の酢酸エチル溶液200部、カルナウバワックス5部、銅フタロシアニンブルー顔料4部を仕込み、5mmφのジルコニアビーズを用いて24時間ボールミルで分散を行い均一な分散物を得た。
これとは別に、ビーカー内にイオン交換水600部、リン酸三カルシウム60部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部を入れ均一に溶解分散した水系媒体を準備した。次に、ビーカー内の水系媒体を20℃に保ち、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)で12000rpmに攪拌しながら上記分散物を投入し、3分間攪拌して乳化した。さらに、この乳化分散液を攪拌棒および温度計付のフラスコに移し、30℃、50mmHgの条件で8時間減圧処理して溶剤を除去した。
溶剤除去後に、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果、分散液中の酢酸エチルは100ppm以下になっていることを確認した。
【0075】
次いで、上記分散液を室温まで冷却し、35%濃塩酸を120部加え、1時間室温下で攪拌してリン酸三カルシウムを溶解した。溶解後、分散液を濾別して得られたケーキを蒸留水に再分散し、ろ過操作を3回繰り返して洗浄した。さらに、このケーキ中のトナー粒子固形分が10重量%になるように蒸留水に再分散した。
【0076】
<蛍光性を有する有機酸の結合>
上記生成したトナー粒子を含む分散溶液の液温を20℃に保持しつつ攪拌しながら、水酸化ナトリウムの1重量%水溶液をトナー粒子の固形分に対し、ナトリウム純分として、次に加えるアルミニウム純分と等モルとなるように0.013重量%添加し、15分間攪拌した。さらに、液温を保持しながら、塩化アルミニウムの1重量%水溶液を、トナー粒子の固形分に対して、アルミニウム純分として0.015重量%となるように添加し、15分間攪拌した。
【0077】
次に、液温を20℃に保持しながら、8−ヒドロキシキノリンのナトリウム塩の1重量%水溶液を、トナー粒子の固形分に対し、8−ヒドロキシキノリン純分として0.285重量%となるように滴下し、1時間攪拌を続けた。その後、ろ過、分離して得られたケーキを40℃で24時間減圧乾燥し、目的の光帯電性トナーを得た。
【0078】
実施例2
以下の条件で、トナー粒子の原料に用いる末端にイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、およびケチミン化合物を合成し、これと他のトナー粒子組成分を調合してトナー粒子を作製し、そのトナー粒子表面の酸基と8−ヒドロキシキノリンを亜鉛を介して結合して実施例2の光帯電性トナーを作製した。
【0079】
<末端にイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーの合成>
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、イソフタル酸276部、およびジブチルチンオキサイド2部を仕込み、常圧で230℃で8時間重縮合反応した。さらに、10〜15mmHgの減圧下で5時間反応した後、160℃まで冷却し、これに32部の無水フタル酸を加えて2時間反応した。次いで、80℃まで冷却して酢酸エチル中で、イソフォロンジイソシアネート188部と2時間反応を行い末端にイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを得た。
【0080】
<ケチミン化合物の合成>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行ってケチミン化合物を得た。このケチミン化合物のアミン価は418であった。
【0081】
<トナー粒子化>
密閉されたポット内に前記実施例1で合成したポリエステル樹脂の酢酸エチル溶液200部、カルナウバワックス5部、銅フタロシアニンブルー顔料4部を仕込み、5mmφのジルコニアビーズを用いて24時間ボールミルで分散を行った。その後、末端にイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを固形分換算で20部加えて攪拌混合し、均一な分散物を得た。
これとは別に、ビーカー内にイオン交換水600部、リン酸三カルシウム60部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部を入れ、均一に溶解分散した水系媒体を準備した。次に、ビーカー内の水系媒体を20℃に保ち、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)で12000rpmに攪拌しながら、上記分散物に、ケチミン化合物の1部を乳化直前に混合して調製した油相を投入し、3分間攪拌混合して乳化した。さらに、この混合液を攪拌棒および温度計付のフラスコに移し、30℃、50mmHgの条件で8時間減圧処理して溶剤を除去した。
ガスクロマトグラフィーにより分析した結果、分散液中の酢酸エチルは100ppm以下になっていることを確認した。
【0082】
次いで、上記分散液を室温まで冷却し、35%濃塩酸を120部加え、1時間室温下で攪拌してリン酸三カルシウムを溶解した。溶解後、分散液を濾別して得られたケーキを蒸留水に再分散して、ろ過操作を3回繰り返し洗浄した。このケーキ中のトナー粒子の固形分が10重量%になるように蒸留水に再分散した。
【0083】
<蛍光性を有する有機酸の結合>
上記生成したトナー粒子を含む分散溶液の液温を20℃に保持しつつ攪拌しながら、水酸化ナトリウムの1重量%水溶液をトナー粒子の固形分に対し、ナトリウム純分として、次に加える亜鉛純分と等モルとなるように0.012重量%添加し、15分間攪拌した。さらに、液温を保持しながら、塩化亜鉛の1重量%水溶液を、トナー粒子の固形分に対して、亜鉛純分として0.030重量%となるように添加し、15分間攪拌した。
【0084】
次に、液温を20℃に保持しながら、8−ヒドロキシキノリンのナトリウム塩の1重量%水溶液を、トナー粒子の固形分に対し、8−ヒドロキシキノリン純分として0.270重量%となるように滴下し、1時間攪拌を続けた。その後、ろ過分離し、得られたケーキを40℃で24時間減圧乾燥し、目的の光帯電性トナーを得た。
【0085】
実施例3
実施例1においてトナー粒子を含む分散液に加える水酸化ナトリウムの1重量%水溶液をトナー粒子の固形分に対し、ナトリウム純分として0.013重量%添加したのを0.012重量%に代え、また塩化アルミニウムの1重量%水溶液をトナー粒子の固形分に対してアルミニウム純分として0.015重量%添加したのを0.028重量%に代え、蛍光性を有する有機酸の塩を8−ヒドロキシキノリンのナトリウム塩からベンゾチアゾールのナトリウム塩に代え、ベンゾチアゾール純分として0.272重量%添加した以外は、実施例1と同様にして実施例3の光帯電性トナーを得た。
【0086】
実施例4
実施例1においてトナー粒子を含む分散液に加える水酸化ナトリウムの1重量%水溶液をトナー粒子の固形分に対し、ナトリウム純分として0.013重量%添加したのを0.034重量%に代え、また塩化アルミニウムの1重量%水溶液をトナー粒子の固形分に対してアルミニウム純分として0.015重量%添加したのを0.029重量%に代え、蛍光性を有する有機酸の塩を8−ヒドロキシキノリンのナトリウム塩からベンズオキサゾールのナトリウム塩に代え、ベンズオキサゾール純分として0.029重量%添加した以外は、実施例1と同様にして実施例4の光帯電性トナーを得た。
【0087】
〔実施例1〜3で得られた光帯電性トナーの分析〕
上記実施例1〜3で得られた光帯電性トナーの表面の金属量をESCAで測定したところ、いずれも定量的に結合していることが確認された。
また、光帯電性トナーのスラリー液を水酸化ナトリウムによりアルカリ性とした後、この溶液をろ過し、トナーとろ液に分離した。分離したろ液を塩酸により中和し、ろ液と同量のクロロホルムを加えて攪拌混和した後、静置して水相とクロロホルム相の分液を行った。
クロロホルム分液の抽出物を高速液体クロマトグラフィーで定量分析した結果、蛍光性を有する有機酸は検出されず、この結果から、いずれも光帯電性トナーの表面に定量的に結合していることが確認された。
さらに、各光帯電性トナーを水で再度分散し、超音波分散機を用いて30分間分散させた。すぐに遠心分離機により、固液分離を行ったが上澄み液は完全に透明であり、反応により形成した有機金属化合物の微粒子などの浮遊は確認されなかった。このことから、いずれもトナー表面に極めて強固に化学結合しているものと判断される。
【0088】
比較例1
実施例1と同じようにして得られたケーキを蒸留水に再分散し、ろ過操作を3回繰り返して洗浄した後、乾燥した。この乾燥物に、実施例1における蛍光性を有する有機酸の結合を行う工程は設けず、8−ヒドロキシキノリンの1:3型アルミニウム錯体化合物を3部添加して予備混合したものを2軸押出機によって熱溶融混練し、ジェットミルで粉砕後、気流式分級機で分級を行って平均粒径6.8μmの粉砕トナーを得た。
【0089】
比較例2
実施例1と同じようにして得られたケーキを蒸留水に再分散し、ろ過操作を3回繰り返して洗浄した後、乾燥した。この乾燥物に、実施例1における蛍光性を有する有機酸の結合を行う工程は設けず、ベンズイミダゾールの1:2型亜鉛錯体化合物を3部添加して予備混合したものを2軸押出機によって熱溶融混練し、ジェットミルで粉砕後、気流式分級機で分級を行って平均粒径6.8μmの粉砕トナーを得た。
【0090】
上記実施例1〜3および比較例1、2で得られた各トナーの帯電立ち上り性、飽和帯電量、高温高湿環境下(HH)飽和帯電量について、キャリアを使用し、ブローオフ法によって評価した。
キャリアとしては、アミノシラン系カップリング剤とシリコーン樹脂をトルエンに分散させて分散液を調整後、加温状態で芯材にスプレーコートし、焼成、冷却後、平均コート樹脂膜厚み0.2μmのキャリア粒子を得た。
すなわち、平均粒径50μmの球形フェライト粒子からなる芯材と、アミノシラン系カップリング剤を分散したシリコーン樹脂からなるコート材構成材料により構成されているものを使用した。
【0091】
各評価条件は下記による。
〈帯電立ち上り性〉
温度20℃、湿度50%の試験室で上記キャリア100部と各トナー5部をガラス製のポットに仕込み、帯電時には360nmの中波長紫外光を照射し、これをボールミル架台上で20rpmの低回転数で回転混合させた。回転スタートから15秒後に停止させ、得られた現像剤の帯電量(μC/g)をブローオフ装置によって測定した。
〈飽和帯電量〉
上記帯電立ち上り性と同様の条件で360nmの中波長紫外光を照射して帯電させつつキャリアと各トナーを低回転数で回転混合させ、回転スタートから10分攪拌後に停止させ、得られた現像剤の帯電量(μC/g)をブローオフ装置によって測定した。
〈高温高湿環境下(HH)の飽和帯電量〉
温度30℃、湿度90%の環境試験室で、上記キャリア100部と各トナー5部を1時間放置し、環境試験室でガラスのポットに仕込み、帯電時には360nmの中波長紫外光を照射し、これをボールミル架台上で20rpmの低回転数で回転混合させた。回転スタートから10分後に停止させ、得られた現像剤の帯電量(μC/g)をブローオフ装置によって測定した。
上記各トナーの帯電立ち上り性、飽和帯電量、高温高湿環境下(HH)飽和帯電量の評価結果を下記表1に示す。
【0092】
また、上記実施例1〜3および比較例1、2で得られた各トナーを用いて、細線再現性によるトナーダメージの評価を下記評価条件で行った。
〈細線再現性によるトナーダメージの評価〉
細線再現性は、タンデム、中間転写方式の一成分市販カラー複写機(イマジオカラー:リコー社製)の現像ローラーとドクターローラーのニップ部に360nmの中波長紫外光を照射することができるように改造した現像器に各トナーを充填し、画像占有率7%の印字率でリコー社製6000ペーパーを用いてランニングを実施した。ランニングにおける初期10枚目の画像と1万枚目の画像の細線部を原稿と比較し、光学顕微鏡で100倍で拡大観察し、ラインの抜けの状態を段階見本と比較しながら4段階で評価した。いずれも ◎ > ○ > △ > ×の順に画像品質が高い。特に、×の評価は製品として採用できないレベルである。
上記各トナーの細線再現性によるトナーダメージの評価結果を下記表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
上記試験結果に示されるように、本発明の光帯電トナーを使用することにより、トナーにダメージを与えることなく優れた帯電特性を付与することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂および着色剤を含有するトナー粒子表面に、蛍光性を有し、かつ官能基を有する化合物が化学結合してなることを特徴とする光帯電性トナー。
【請求項2】
前記化合物が有機酸であり、前記トナー粒子表面の酸基と該有機酸が2価以上の金属を介して化学結合してなることを特徴とする請求項1に記載の光帯電性トナー。
【請求項3】
前記有機酸が、キノリノール誘導体、イミダゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、またはトリアゾール誘導体から選ばれるいずれかの誘導体であることを特徴とする請求項2に記載の光帯電性トナー。
【請求項4】
前記金属が、ベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、鉄、アルミニウム、クロム、コバルト、ガリウム、ジルコニウム、珪素、またはチタンから選ばれるいずれかの金属であることを特徴とする請求項2に記載の光帯電性トナー。
【請求項5】
前記トナーが励起光の照射により帯電するようになされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光帯電性トナー。
【請求項6】
少なくとも樹脂および着色剤を含有するトナー粒子表面に、蛍光性を有し、かつ官能基を有する化合物が化学結合してなる光帯電性トナーの製造方法であって、
前記トナー粒子に含有される組成分原料を水系媒体中で乳化あるいは懸濁分散して粒子化した後、該粒子表面の酸基に2価以上の金属陽イオンを反応させ、さらに該酸基と反応した金属と蛍光性を有する有機酸あるいは有機酸塩を反応させることを特徴とする光帯電性トナーの製造方法。
【請求項7】
前記2価以上の金属陽イオンが、ベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、鉄、アルミニウム、クロム、コバルト、ガリウム、ジルコニウム、珪素、またはチタンから選ばれるいずれかの金属陽イオンであることを特徴とする請求項6に記載の光帯電性トナーの製造方法。
【請求項8】
前記有機酸が、キノリノール誘導体、イミダゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、またはトリアゾール誘導体から選ばれるいずれかの誘導体であることを特徴とする請求項6に記載の光帯電性トナーの製造方法。
【請求項9】
前記有機酸塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、またはリチウム塩のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の光帯電性トナーの製造方法。
【請求項10】
前記組成分原料を有機溶剤に溶解または分散し、該溶解物または分散物を界面活性剤の存在下に水系媒体中で乳化分散した後、該乳化分散液中の有機溶剤を除去してトナー粒子化を行うことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の光帯電性トナーの製造方法。
【請求項11】
重付加反応するプレポリマーを含む前記組成分原料を有機溶剤に溶解または分散し、該溶解物または分散物を界面活性剤の存在下に水系媒体中で乳化分散した後、該乳化分散液の状態でプレポリマーの重付加反応を行い、反応後または反応させながら有機溶剤を除去してトナー粒子化を行うことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の光帯電性トナーの製造方法。
【請求項12】
前記重付加反応するプレポリマーがイソシアネート基を末端に有する化合物であることを特徴とする請求項11に記載の光帯電性トナーの製造方法。
【請求項13】
画像形成装置の像担持体上に形成された静電潜像を、少なくとも樹脂および着色剤を含有するトナー粒子表面に、蛍光性を有し、かつ官能基を有する化合物が化学結合してなる光帯電性トナーを用いて現像し、該現像された画像を被転写体上に転写する画像形成方法であって、
前記トナー粒子表面に化学結合した化合物を励起光の照射により励起して該トナー粒子を帯電し、現像するようにしたことを特徴とする画像形成方法。



【公開番号】特開2006−3578(P2006−3578A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179209(P2004−179209)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】