光情報記録再生装置
【課題】エア噛みを防止して薄型フレキシブルディスクに確実かつ安定して情報の記録再生を行う光情報記録再生装置を提供する。
【解決手段】本発明による情報記録再生装置は、ターンテーブルとフレキシブルディスクとの間に隙間を形成するためのスペーサとを備える。ターンテーブルは、対向する前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側の位置に設けられ、スペーサによって形成される隙間に空気を流入させるための貫通孔を有する。また、スペーサは、フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側にあり、貫通孔と塞がないように側面部から延設した凸部を有し、ターンテーブルを回転させたときに、スペーサにより形成された隙間に空気流を生じさせる。
【解決手段】本発明による情報記録再生装置は、ターンテーブルとフレキシブルディスクとの間に隙間を形成するためのスペーサとを備える。ターンテーブルは、対向する前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側の位置に設けられ、スペーサによって形成される隙間に空気を流入させるための貫通孔を有する。また、スペーサは、フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側にあり、貫通孔と塞がないように側面部から延設した凸部を有し、ターンテーブルを回転させたときに、スペーサにより形成された隙間に空気流を生じさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型光記録媒体(フレキシブルディスク)に対して情報の記録鎖再生を行う光情報記録再生装置に関し、より詳細には、例えば、フレキシブルディスクに機械的な損傷等を与えることなく、情報記録再生時にフレキシブルディスクの反りや面ぶれを抑制し、記録再生動作の安定化を図る光情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの高容量化を図る様々な試みがなされており、中でも効率的な方法として、光ディスク基板の厚みを薄くして体積当たりの容量を増やすことが注目されている。例えば、特許文献1、特許文献2にあるように、薄い基板とその薄い基板を面ぶれが少なく安定に回転させるためのスタビライザーを組み合わせることにより、体積当たりの記録容量を増加する試みが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−331561
【特許文献2】特開2003―91970
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の試みでは、ディスク厚が1.2mmである従来のDVDやCDなどと比べて機械的強度の弱い薄型フレキシブルディスクを折り曲げながら回転させたり、またはディスクの面ぶれを抑制するためのスタビライザーが回転する薄型ディスクに接触するなどして、フレキシブルディスクに機械的な損傷を与える可能性があり、薄型フレキシブルディスクに確実かつ安定して記録再生することが困難である。
【0005】
そこで、フレキシブルディスクを用いるに際し、より確実かつ安全なシステムを構築するために、スタビライザーの代わりにターンテーブルを用いることが考えられる。そして、ターンテーブルを用いるにあたり、上方に薄型フレキシブルディスクを保持し回転させるが、仮に、光学系を上方に配置すると、光ヘッドが薄型フレキシブルディスクに接触するおそれがあり、また接触しないまでも、回転に伴う空気流で光ヘッドによる渦が生じ、この渦が薄型フレキシブルディスクに作用するので、回転の安定性が損なわれると可能性がある。そのため、光ヘッドを下方に配置し、光ヘッドなどに当る空気の流れの乱れは、ターンテーブルでパージする構成とするのが好ましい。
【0006】
すなわち、光ヘッドを含む光学系をターンテーブル上の薄型フレキシブルディスクとは反対側に配置し、記録再生光はターンテーブルを透過させて薄型フレキシブルディスクに合焦させることにより、ターンテーブルとともに回転中の薄型フレキシブルディスクに光ヘッド等による空気流の影響を与えず、安定な記録再生を実現するのである。
【0007】
そこで、本発明者らは、フレキシブルディスクをターンテーブルに載置して種々の実験を繰り返したが、フレキシブルディスクは、以下に述べるように従来の記録媒体とは異なる挙動を示し、確実な記録再生が困難であることが判った。
【0008】
上記実験に際し、本発明者らは、まず厚さ100μm程度のフレキシブルディスクを、基板とほぼ同じ大きさのターンテーブルの上に載せて、このターンテーブルでフレキシブルディスクを支持することを試みた。なお、ターンテーブルは光学ガラスで作製し、レーザをこのターンテーブル越しにフレキシブルディスクに照射する。
【0009】
そして、例えば100μm厚のフレキシブルディスクと500μm厚のターンテーブルを用意し、前者を後者の上に偏心が小さくなるように載せてみたところ、次のような現象が現れた。
(イ)ターンテーブルとフレキシブルディスクで、その一部の領域だけが吸着してしまった。
(ロ)その吸着部分は他の部分を次々に巻き込んで吸着領域が拡がっていくのが観察された。
(ハ)ところが吸着領域の拡大はある範囲で落ち着いてそれ以上は拡がらなかった。
(ニ)結局、ターンテーブルとフレキシブルディスクは一様に吸着せず、所々にエア噛み部分が残った。
(ホ)このエア噛み部分が残ったターンテーブルにフレキシブルディスクが貼り付いたものをDVDプレーヤで記録再生を試みたが、全く記録再生ができなかった。
【0010】
このようなフレキシブルディスクの現象は、そのディスクの剛性が低くかつ静電気を持ちやすいため生じるものである。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、エア噛みを防止して薄型フレキシブルディスクに確実かつ安定して情報の記録再生を行う光情報記録再生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述のように、エア噛み現象は記録再生を阻害する原因となるものであるが、本発明者らはこのエア噛み現象が起こる理由を検証し、それを回避する方策を提供する。
【0013】
まず、吸着部分が常に局所的に生成する現象であること、また、フレキシブルディスクやターンテーブルは不導体でできていることに注目すると、現象に静電気が関与していることを分かる。そして、静電気はある帯電した部分同士が接触し中和されると、吸着部分はそれ以上に拡がらず、帯電部分に応じて吸着部分が局所的に発生する。この結果、フレキシブルディスクには部分的にひずみができるから、中和が済んでいない部分同士の領域に過不足が生じ、吸着することなく取り残された島状部が残存する。このような理由でエア噛み現象が起こるのである。
【0014】
また、確実かつ安定に情報の記録再生ができないのは、エア噛みによって局所的な面ぶれが発生し、ドライブによるフォーカス追従が実行されなかったことによることが分かった。
【0015】
そこで、本発明による光情報記録再生装置は、上記エア噛みを防止するために、情報の記録再生時にターンテーブルと薄型フレキシブルディスクとの間にスペーサを設けて空間を生成し、空気の流れを生じさせるような構成を採っている。また、その際に薄型フレキシブルディスクとスペーサが滑ってディスク表面に傷がつかないようにスペーサの形状を工夫している。
【0016】
より具体的には、本発明による光情報記録再生装置は、厚みが0.3mm以下のフレキシブルディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光情報記録再生装置であって、情報記録及び/又は再生に用いる光を前記フレキシブルディスクに照射するための光ヘッドと、前記フレキシブルディスクを保持し、前記光ヘッドからの光を透過して前記光ヘッドからの光を前記フレキシブルディスクに照射することを可能とする、ターンテーブルと、前記ターンテーブルと前記フレキシブルディスクとの間に隙間を形成するためのスペーサと、を備え、前記ターンテーブルは、対向する前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側の位置に設けられ、前記スペーサによって形成される隙間に空気を流入させるための貫通孔を有し、前記スペーサは、前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側にあり、前記貫通孔と塞がないように側面部から延設した凸部を有し、前記ターンテーブルを回転させたときに、前記スペーサにより形成された前記隙間に空気流を生じさせることを特徴とする。
【0017】
また、前記ターンテーブルの径は、前記フレキシブルディスクの径より大きいのが好ましい。
【0018】
さらに、前記貫通孔は、複数個、回転中心対称に円周状に前記ターンテーブルに設けられている。
【0019】
また、前記スペーサは、前記フレキシブルディスクと接触する面積が500mm2よりも大きくなるように構成されている。なお、前記スペーサは凸部を有する円環形状をなしており、回転中心から凸部外周までの距離を、前記貫通孔の回転中心からの最大距離以上とすることにより、前記スペーサと前記フレキシブルディスクとの接触面積が500mm2よりも大きくなる形成されている。また、前記スペーサの、前記回転中心から凸部外周までの距離は、前記回転中心から前記フレキシブルディスクの光情報記録領域までの距離よりも小さいことが好ましい。
【0020】
前記スペーサは、前記ターンテーブルと一体に形成されていてもよく、前記ターンテーブルは、着脱式であってもよい。
【0021】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の情報記録再生装置によれば、フレキシブルディスクとターンテーブルとの間に間隙を確保し、フレキシブルディスクの面ぶれを低減し、良好な記録再生が行える。さらには、フレキシブルディスクおよびターンテーブルの傷付きを防止して、フレキシブルディスクおよびターンテーブルの破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面等を参照して本発明による実施形態による光情報記録再生装置について説明する。まず、本発明の基本的構成について説明し、次いで基本的構成をさらに改良した構成について説明する。本実施形態は単なる一例に過ぎず、特許請求の範囲を逸脱しない限りにおいて、構成要素の追加変更、代用は可能であることに注意されたい。
【0024】
<基本的構成>
図1乃至図6は、本実施形態による光情報記録再生装置の基本的構成を示す概略図である。図1及び図2はターンテーブルとスペーサとが分離可能な構成となっており、図3及び図4はターンテーブルとスペーサとが一体的に形成された構成であり、図5及び図6はハブを用いた構成である。
【0025】
本実施形態の基本的構成において、ターンテーブルを用いるに当たり、フレキシブルディスク101への記録再生を行う光ヘッド106を下に配置した場合、(1)下から、スピンドル、ターンテーブル102、フレキシブルディスク101、ターンテーブルおよびフレキシブルディスクを固定するクランパ103の順に積み重ねる場合(図1、図3、図5)と、(2)スピンドル、フレキシブルディスク101、ターンテーブル102、クランパ103の順に積み重ねる場合(図2、図4、図6)とがあり得る。
【0026】
まず(1)の場合、ターンテーブル102は光ヘッド106とフレキシブルディスク101との間に配置されることになるので、屈折率が光ディスク基板とおおよそ等しくなる屈折率1.6以下で光を透過するBK7等の硝材、石英、あるいは、光ディスク基板やレンズ材料に用いられるポリカーボネート、シクロポリオレフィン、アクリルなどを用いるのが好ましい。また、ターンテーブル102の厚みに関して、例えば、フレキシブルディスク101がDVD−Rとは基板厚が薄いことを除いて全て同じものである場合、フレキシブルディスク101とターンテーブル102の光学距離を足した値が、DVD−Rに用いられる基板の光学距離と等しくなるようにターンテーブル厚を設定する必要がある。
【0027】
一方、(2)の場合には(1)の場合と異なりターンテーブル材料および厚みの制約はないが、光ヘッド106とフレキシブルディスク101との間に光学距離を調整するための光学補正板107を挿入する必要がある。
【0028】
ターンテーブル等の光学補正板を用いることにより、光ヘッド出射後のレーザ光はフレキシブル基板の基板空気界面だけでなく、光学補正板の表裏の空気界面を余分に通過する。通常、屈折率約1.5の物質と空気との界面における反射率は約4%であり、光学補正板だけで約8%の光量をロスすることとなる。従って、光学補正板の表面には反射防止コート(ARコート)を施した。ARコートとしては、SiO2とTaO2など屈折率の異なる透光性の無機化合物の多層膜を用いた。
【0029】
また、ターンテーブルを用いると、(2)の場合、光ヘッド106が薄型フレキシブルディスク101に接触するおそれがあり、また接触しないまでも、回転に伴う空気流で光ヘッドによる渦が生じ、この渦が薄型フレキシブルディスク101に作用するので、回転の安定性が損なわれる可能性がある。その場合、光ヘッド106周辺に空気流を整流するための整流板を設ける必要がある。
【0030】
一方、(1)の場合は、光ヘッドなどに当る空気の流れの乱れは、ターンテーブル102でパージする構成となっているので光ヘッド106周辺には必要ない。
【0031】
前述のように、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101とを接触させて回転させると、フレキシブルディスク101が、剛性が低くかつ静電気を持ちやすいために、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101が局所的に空気を噛み込んで静電吸着し、その凹凸によりフォーカスサーボが追従できず、デフォーカスにより正常な記録再生が阻害されてしまう。本発明では、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101との間にスペーサ104を挟み、さらにターンテーブル102に空気流入用の貫通孔を設けている。即ちスペーサ104を挟むことにより、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101との間に間隙を確保し、該間隙を通してディスクの回転により空気流入用の貫通孔から空気を導入するようにしている。
【0032】
このような空気流の制御をしながら回転を安定させるには、フレキシブルディスク101の見かけの比重は0.9〜1.1に調整することが望ましい。一方、静電気の発生を抑えるため、ターンテーブル102は10の12乗Ω以下の表面電気抵抗(ρ)の材料で構成することが望ましい。
【0033】
さらに、この上に表面電気抵抗の小さい膜を付加することにより帯電防止対策を行うことを試みたが、そのこと自体にはあまり効果がなかった。そこで、帯電状態の解消を図るのではなく、回転中に、フレキシブルディスク101がターンテーブル102と静電気的に反発状態を確保することで、静電吸着を防止した。フレキシブルディスク101とターンテーブル102の両者のそれぞれの対向する表面を同じ符合の帯電状態とすべく、各々の相対する表面に情報記録または再生に用いる光を透過する同じ組成の無機化合物の薄膜を付加した。このような帯電状態を制御する対策を行うことにより、静電吸着に起因する面ぶれ量を低減した。このような帯電状態を制御してフレキシブルディスク101を安定して回転させるには、フレキシブルディスク101の重さを0.8g〜1.2gが望ましい。更にフレキシブルディスク101に積層された無機化合物の薄膜は、回転の際に生ずる空気流に混在した塵埃の衝突によってフレキシブルディスク101を構成するプラスチックフィルムが傷つくことを防止する保護層としても機能する。また、無機多層膜を形成し、ARコートを兼ねることも可能である。
【0034】
更にターンテーブル102の表面を荒らすことにより、仮にフレキシブルディスク101がターンテーブル102に貼り付いた場合であっても、スペーサ104により形成されたフレキシブルディスク101とターンテーブル102との間の間隙から流入した空気がターンテーブル102の表面に沿って外側に向かって流れ、安定つりあい状態に復帰させることが容易となる。
【0035】
静止時にはスペーサ104の働きで、空気流入部分のディスクの静電気による部分的貼り付き(エア噛み現象)が防止され、更に回転時にはスペーサ104により作られたターンテーブル102とフレキシブルディスク101との間の隙間に空気流入用の貫通孔から流れ込んだ空気が、遠心力の働きもあいまってエア噛み現象を解消し、かつ、フレキシブルディスク101とターンテーブル102との間の静電的反発力により、フレキシブルディスク101の浮上を助け、フレキシブルディスク101の面ぶれを低減することができる。また、ターンテーブル102の径をフレキシブルディスク101の径より3mm〜7mm程度大きくすることにより、フレキシブルディスク端面での渦の発生を防ぐことができる。
【0036】
図1から図6に示すように、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101の間に配置するスペーサ104によって、回転が始まると、スペーサ104によってできた空間を起点として、フレキシブルディスク101とターンテーブル102に挟まれた空間の空気が遠心力により内周から外周へと定常的に移動する。これにより静止時に静電気によってできた局所的なエア噛み現象が全面的に取り除かれる。スペーサ104によってできるフレキシブルディスク101とターンテーブル102との間隔は通常0.01〜0.5mmであることが望ましい。
【0037】
また、ターンテーブル102の外径をフレキシブルディスク101の外径より大きくすることにより、フレキシブルディスク101とターンテーブル102の間から流出した空気がフレキシブルディスク101の最外周で生じる乱流を低減することができ、面ぶれを少なくすることができる。
【0038】
空気流入用の貫通孔105は、ターンテーブル102のドーナツ板自体に設けられても良いが、ターンテーブル102のドーナツ板中心に同芯に取り付けられたハブに設けても良い(図5及び図6参照)。これにより、空気の流れがよりスムーズに行われるようになるため、局所的な面ぶれを低減しかつ面ぶれがより少なく安定した状態を保つことができるようになった。空気流入用の貫通孔105は多数満遍なく設けることにより均一な空気の流れを実現することが望ましい。実際的には、複数個、好ましくは3個〜50個、回転中心対称に円周状に配置するのが望ましい。貫通孔105の径は2mmφ〜7mmφが望ましい。ともかくターンテーブル102の強度が極端に落ちない程度の径と数にする。図示しないが、貫通孔105には渦発生防止のため孔周縁はR加工されることが望ましい。また、貫通孔105は、記録再生に用いる光ビームが通過しない領域、すなわち、フレキシブルディスク101の記録再生を行う最も最内周(DVDの場合、MBCAの最内周)よりも内側に形成されている必要がある。
【0039】
<改良された構成>
スペーサ104は、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101との間に空気層を形成するために設けるので、ターンテーブル102に形成した貫通孔105をふさがないように設置しなければならない。
【0040】
一方で、スペーサ104とフレキシブルディスク102の接触面積を余り狭くすると、スピンドル回転数の変化時、特に停止状態からの起動時及びディスクを停止させる際に、スペーサ104とフレキシブルディスク101が滑って傷付く可能性がある。さらに、ターンテーブル102がスピンドルに対して着脱式の場合、スピンドルクランプに対してターンテーブル102も滑る可能性がある。ターンテーブル102をガラスで構成した場合、ターンテーブルが破損する危険もある。
【0041】
フレキシブルディスク101とターンテーブル102の滑りを防止するために、スペーサ108を図7に示すような形状とした。すなわち、ディスク内径とディスク記録再生エリアに挟まれた狭い領域において、スペーサの外径を空気流入用の貫通孔の存在する径よりも大きくし、かつ、貫通孔105からターンテーブル102とフレキシブルディスク101との間に流入する空気の流れを阻害しないように貫通孔105とその外側方向にスリットを設けたスペーサ108(若しくは、円環部材(ドーナツ状部材)に貫通孔105を塞がないように凸部を複数設けたスペーサ108)を、ターンテーブルに固定することにより、空気の流れとディスククランプ面積を両立する構成を採っている。
【0042】
また、スペーサ108は後述するように、フレキシブルディスク101と接触する面積が500平方mmよりも大きくなるように構成されることが好ましい。
【0043】
ドーナツ形状のスペーサ108に関して、ディスク回転中心からスペーサの凸部外周までの距離を、貫通孔105における回転中心からの最大距離以上とすることにより、スペーサ108とフレキシブルディスク101との接触面積が500平方mmよりも大きくなるようにするとよい。ただし、これは貫通孔105の個数及びそれが占める面積に依存するものである。
【0044】
また、スペーサ108に関しては、ディスク回転中心から凸部外周までの距離は、ディスク回転中心からフレキシブルディスク101の光情報記録領域までの距離よりも小さいことが好ましい。情報記録領域を最大限に活用するためである。
【0045】
図8及び9は、図7に示されるスペーサ108を装着する光情報記録再生装置の概略構成を示す図である。図8及び9では、スペーサ108の形状が上述の基本構成で用いられるスペーサ104と異なるだけで、その他の構成は同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0046】
図7乃至図9を参照すれば分かるように、スペーサ108は、ターンテーブル108に設けた空気流入用の貫通孔105を塞がないような形状にしている。そして、スペーサ108は、ターンテーブル102およびにフレキシブルディスク101と共に一体となって回転する。スペーサ108がフレキシブルディスク101と接する面積は、上述の基本構成のスペーサ104よりも大きいので、ディスクを停止状態からの起動させた時及びディスクを停止させる際に、スペーサ104とフレキシブルディスク101が滑って傷付くことを防止することができるようになる。
【0047】
なお、ここでは、図1及び図2に示される基本的構成に対応する改良された構成のみを図8及び9で示しているが、図3乃至図6に対応する改良された構成も実現可能であることはもちろんである。つまり、例えばスペーサ108は、図8及び図9ではターンテーブル102と分離した構成を採っているが、図3及び図4のように、ターンテーブル102と一体として形成してもよく、また、部材としては分子されたものであってもターンテーブル102に接着等により固定してもよい。また、スペーサ108は、樹脂で構成しても金属で構成してもよい。
【0048】
<カートリッジ>
上述のようなフレキシブルディスク101は、多数枚を1カートリッジに収納し、1カートリッジ当たり(単位体積当たり)の記録容量を大きくすることができる。この目的のため、カートリッジとしては、内部で、フレキシブルディスクの両側に不織布等のセパレータを挿入し、フレキシブルディスク同士が直接貼り付いたり、互いに擦れ合ったりすることの無いようにすることもできる。
【0049】
図10は、複数枚のフレキシブルディスクを収納することのできるカートリッジの概略構成を示す図である。図10において、カートリッジ内には、薄い板状の隔壁210が層状に形成されており、隔壁210の間に薄型光ディスク220が1枚ずつ収納されている。また、各隔壁210の一部には、収納位置を示す識別子230が形成されている。本実施形態では、隔壁210を透明なPET(PolyEthylene Terephthalate)等で作製し、その一部に黒インクで識別子230を印刷しているが、隔壁210はディスク寸法や収納枚数に応じて適当な材質を有する材料から作製することができ、識別子230は光学的に読み取り可能な適当な材料を用いて形成することができる。
【0050】
さらに、このように収納中にあって、フレキシブルディスクがセパレータと接する場合でも、フレキシブルディスク表面に無機化合物からなる耐摩擦保護層を積層すれば、フレキシブルディスクの収納時の信頼性を高めることができる。
【0051】
また、フレキシブルディスク101の基材には、ポリカーボネート製のシートを用いた。これはフレキシブルディス101クが3000rpm以上で回転し、大きな遠心力が加わること以外に、この周波数(50Hz以上)で、フレキシブルディスクの固有振動に由来する非定常的な振動が起こると、面ぶれがきっかけとなってフレキシブルディスクが破壊される危険があり、本発明者らの実験によれば、ポリカーボネート製のシートが最も安定していたとの経験に基づく。また、多数枚を1カートリッジに収納した際にも、カートリッジ内壁に接当して端面にエッジ折れなどが起こることもない。
【0052】
さらに、フレキシブルディスク101の、カートリッジとドライブ間の搬送に際しても、フレキシブルディスク101のドーナツ板内端面に搬送アームを押し拡げて持ち上げる際に、このエッジの損傷や、曲がりやたわみを少なくすることができる。即ち、ポリカーボネートを用いることにより、搬送が容易なフレキシブルディスクとすることができた。この搬送の容易性は、更にスペーサを設けることにより高められる。本来スペーサ104及び108は、フレキシブルディスク101とターンテーブル102との間に間隙を確保し、フレキシブルディスク101の面ぶれを低減するためのものであるが、他方、フレキシブルディスクの搬送時にはフレキシブルディスクのセンターホール端を掴むための掴み代としても機能させることが出来る。
【0053】
なお、フレキシブルディスク同士が貼りついたり、互いに擦れ合うことの無いように積層して(例えば、0.1mm厚の不織布を挟みながら積層)保存することができるが、その際に不織布に水分を含んだ場合でもフレキシブルディスクが侵食されないように、表面にSiNn等の無機化合物よりなる耐水膜を積層するのが望ましい。
【0054】
<実験結果>
以下、具体的に実験結果について示す。ここでは、厚さ100μmのポリカーボネートフィルムに色素記録層、銀を主成分とする金属反射層、保護コートを積層し、ディスク外径を120mmφ、内径を15mmφのドーナツ板とし、重さを1gに調整して、フレキシブルディスク101を構成している。なお、基板裏面と保護コート面にスパッタリングによりSiN薄膜を3nm積層している。
【0055】
また、ターンテーブル102として、厚さ500μmのソーダガラス板で内径15mmφ、外径125mmφのもの3枚および外径120mmφのもの1枚(10の14乗Ωの表面電気抵抗(ρ))を用意した。外径125mmφのもの2枚と外径120mmφのもの1枚について、空気流入用の貫通孔105として、超音波ドリルを用いて、6mmφのものをターンテーブル中心から18mmの位置に円周状に合計8個等間隔に配置した。さらに、空気流入用の貫通孔を開けた外径125mmφのもの1枚を除いて残りの3枚にはフレキシブルディスク101と同様にスパッタリングでSiN薄膜を3nm積層した。SiN薄膜を積層することにより、表面抵抗は10の13乗Ωに変化した。以上、用意したターンテーブルの比較表を表1にまとめる。
【0056】
【表1】
【0057】
またスペーサとして、SUS304製で外径33mmφ、内径15mmφ、厚さ0.1mmのスペーサ104と、さらに、図7に示す形状をなすスペーサ108も同じ内径および厚さのものと2種類用意した。
【0058】
このようにして得た、ターンテーブル102A〜Dおよびフレキシブルディスク101を、スペーサ104を介して同芯にDVDドライブに装着した。ターンテーブル102Aを装着した状態は図1、図3及び図5のいずれかに示される通りである。そして、DVDドライブを4000rpmの回転数で駆動し、フォーカスエラー信号レベルの測定を行った。なお、DVDドライブは、容易に実験するために用いたのであり、図1乃至図6の構成を有する記録再生装置を用いて実験することを排除するものではないことに注意されたい。
【0059】
ターンテーブル102A、B及びCに用いて測定した結果を表2および図12乃至14に示す。記録再生用ドライブのフォーカスエラー信号はディスクの面ぶれの加速度とほぼ比例するので、フォーカスエラー信号を比較すると、面ぶれの程度が把握できる。本測定に使用した記録再生用ドライブにおいては、フォーカスエラー信号が700mVを超えるあたりから、顕著なデフォーカスが観測され、トラッキングエラー信号の振幅低下によるトラッキング性能の低下、情報再生信号の劣化が起きることが確かめられている。
【0060】
【表2】
【0061】
貫通孔を設けたターンテーブル102Aは、貫通孔がないターンテーブル102Bに対してフォーカスエラー信号が顕著に小さくなることがわかる。これは、貫通孔を設けることによりフレキシブル基板とガラス基板間に空気の流れが発生し、これによりエア噛みが防止されたと考えられる。ターンテーブル102Aでは、フレキシブルディスクとターンテーブルのそれぞれの対向する表面を同じ符号の帯電状態とすることができて互いに静電気反発力を発生させることで、両者が吸着することがないのに対し、ターンテーブル102Cでは、静電気的に不安定なことが原因でフォーカスエラー信号が大きくなったと考えられる。
【0062】
ターンテーブル102Aとターンテーブル102Dはターンテーブル外径が異なる以外全て同等であるが、同様の条件でフォーカスエラー信号レベル最大値のフレキシブルディスク半径依存性を調べたところ、図11の結果を得た。即ち、ターンテーブルとフレキシブルディスクが共に同じ径である場合には、フレキシブルディスクの外周部におき面ぶれが大きくなる現象が見られた。フレキシブルディスク外周部を注目すると、フレキシブルディスクとターンテーブルの回転に伴って、空気の乱流が発生していることが予想される。このため、この空気の乱流によってフレキシブルディスクに非定常的な力が発生し、その結果フレキシブルディスクの面ぶれ量が増えると考えられる。ターンテーブルの外径が120mmφの場合は外径が125mmφであるものより乱流の効果が強く受け、面ぶれ量が大きくなると考えられる。
【0063】
さらに、DVDドライブの光ピックアップに厚み0.5mmのガラス板を貼り付けて、光学状態をDVDドライブにターンテーブル102Aを装着した場合と同等の状態に保持した改造ドライブ(図示せず)を用い、このドライブに、まずフレキシブルディスク101を装着し、その上にスペーサ104、更にその上にターンテーブル102Aを載せ、それぞれ同芯に固定した(図2、図4及び図6参照)。この改造ドライブを4000rpmで回転させ、フォーカスエラー信号レベルの最大値を測定したところ、最大値は400mVであった。この結果からフレキシブルディスクとターンテーブルとを反転させて、ドライブにセットした場合でも同様の効果が得られることがわかる。
【0064】
次に、ターンテーブル102Aの貫通孔とスペーサ108の切り欠きの位置を合わせて、さらにフレキシブルディスク101を順にDVDドライブに装着して、これまでと同様にフォーカスエラー信号レベルの最大値を測定したところ、最大値は430mVであった。この結果より、スペーサ104とスペーサ108とで、ターンテーブル102Aとフレキシブルディスク101の間の空気の流れにほとんど差がないことがわかる。
【0065】
DVDのクランプエリアは22mmφ〜33mmφ(フレキシブルディスク101も同様)であり、その面積は約475平方mmである。一方、スペーサ104の面積は、ターンテーブル102Aの場合15mmφ〜27mmφのドーナツ状円盤であることから、約395平方mmであり、貫通孔105がない場合に比べて2割近く面積が減るため、回転起動時や回転停止時にディスクがスリップしやすい可能性がある。一方、スペーサ108の場合、その外径を39mmにすると貫通孔部分の面積を除いても約560平方mmとなり、逆にDVDと比べても2割程度クランプ面積が増加する。
【0066】
実際に、停止状態から10000rpmまでのスピンアップ時間と10000rpmから停止状態までのスピンダウン時間が約1秒の試験装置を用いて1000回回転と停止を繰り返した。このときのクランプ力は2Nとした。その結果スペーサ104を用いた場合はフレキシブルディスク101のr=27mmにスリップが原因と考えられる傷が付いた。一方、スペーサ108を用いた場合にはディスク表面は無傷だった。
【0067】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態による情報記録再生装置によれば、ターンテーブルと、そのターンテーブルと薄型フレキシブルディスクとの間に隙間を形成するためのスペーサとを備えている。そして、ターンテーブルは、対向する前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側の位置に設けられ、スペーサによって形成される隙間に空気を流入させるための貫通孔を有し、スペーサは、フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側にあり、貫通孔と塞がないように側面部から延設した凸部を有している。このように構成することにより、ターンテーブルを回転させたときに、スペーサにより形成された前記隙間に空気流を生じさせて、ディスク上にエア噛みが発生するのを防止できる。また、スペーサの側面部から凸部が形成されているので、フレキシブルディスクとスペーサとの接触面積を大きくとることができるので、ディスクとスペーサとの間に生じる滑りを防止することができ、よって、ディスクに傷が生じるのを防止することができる。
【0068】
また、ターンテーブルの径をフレキシブルディスクの径より大きくすることにより、フレキシブルディスク101とターンテーブル102の間から流出した空気がフレキシブルディスク101の最外周で生じる乱流を低減することができ、面ぶれを少なくすることができる。よって、より安定的な情報の記録再生動作を実現できる。
【0069】
さらに、ターンテーブルに貫通孔を複数個、回転中心対称に円周状に設けることにより、空気の流れを均一にすることができ、より安定的な情報記録再生動作を実現することができるようになる。
【0070】
なお、スペーサとフレキシブルディスクと接触する面積が500平方mmよりも大きくなるようにすると、ディスクとスペーサとの間に生じる滑りを効果的に防止するには充分な面積となる。それには、スペーサは凸部を有する円環形状をなしており、回転中心から凸部外周までの距離を、貫通孔の回転中心からの最大距離以上とすればよい。
【0071】
また、スペーサに関し、回転中心から凸部外周までの距離は、回転中心からフレキシブルディスクの光情報記録領域までの距離よりも小さくなるように構成することにより、光情報記録領域を最大限に情報記録のために用いることができると共に、ディスクとスペーサとの滑りも防止できるようになるので、安定的な情報記録を実現できる。
【0072】
さらに、スペーサをターンテーブルと一体に形成することにより、スペーサをターンテーブルに載置する際にターンテーブルの貫通孔をスペーサで塞いでしまうということが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その1)を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その2)を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その3)を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その4)を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その5)を示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その6)を示す概略図である。
【図7】本発明の実施形態による情報記録再生装置の改良された構成に用いられるスペーサの形状を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による情報記録再生装置の改良された構成(その1)を示す概略図である。
【図9】本発明の実施形態による情報記録再生装置の改良された構成(その2)を示す概略図である。
【図10】複数枚のフレキシブルディスクを収納することのできるカートリッジの概略構成を示す図である。
【図11】本発明のターンテーブルの外径が120mmφ及び125mmφであるときの、フォーカスエラー信号の最大値の半径依存を示す図である。
【図12】実施例の各ターンテーブルA,B及びCを用いたときのフォーカスエラー信号(その1)
【図13】実施例の各ターンテーブルA,B及びCを用いたときのフォーカスエラー信号(その2)
【図14】実施例の各ターンテーブルA,B及びCを用いたときのフォーカスエラー信号(その3)
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型光記録媒体(フレキシブルディスク)に対して情報の記録鎖再生を行う光情報記録再生装置に関し、より詳細には、例えば、フレキシブルディスクに機械的な損傷等を与えることなく、情報記録再生時にフレキシブルディスクの反りや面ぶれを抑制し、記録再生動作の安定化を図る光情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの高容量化を図る様々な試みがなされており、中でも効率的な方法として、光ディスク基板の厚みを薄くして体積当たりの容量を増やすことが注目されている。例えば、特許文献1、特許文献2にあるように、薄い基板とその薄い基板を面ぶれが少なく安定に回転させるためのスタビライザーを組み合わせることにより、体積当たりの記録容量を増加する試みが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−331561
【特許文献2】特開2003―91970
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の試みでは、ディスク厚が1.2mmである従来のDVDやCDなどと比べて機械的強度の弱い薄型フレキシブルディスクを折り曲げながら回転させたり、またはディスクの面ぶれを抑制するためのスタビライザーが回転する薄型ディスクに接触するなどして、フレキシブルディスクに機械的な損傷を与える可能性があり、薄型フレキシブルディスクに確実かつ安定して記録再生することが困難である。
【0005】
そこで、フレキシブルディスクを用いるに際し、より確実かつ安全なシステムを構築するために、スタビライザーの代わりにターンテーブルを用いることが考えられる。そして、ターンテーブルを用いるにあたり、上方に薄型フレキシブルディスクを保持し回転させるが、仮に、光学系を上方に配置すると、光ヘッドが薄型フレキシブルディスクに接触するおそれがあり、また接触しないまでも、回転に伴う空気流で光ヘッドによる渦が生じ、この渦が薄型フレキシブルディスクに作用するので、回転の安定性が損なわれると可能性がある。そのため、光ヘッドを下方に配置し、光ヘッドなどに当る空気の流れの乱れは、ターンテーブルでパージする構成とするのが好ましい。
【0006】
すなわち、光ヘッドを含む光学系をターンテーブル上の薄型フレキシブルディスクとは反対側に配置し、記録再生光はターンテーブルを透過させて薄型フレキシブルディスクに合焦させることにより、ターンテーブルとともに回転中の薄型フレキシブルディスクに光ヘッド等による空気流の影響を与えず、安定な記録再生を実現するのである。
【0007】
そこで、本発明者らは、フレキシブルディスクをターンテーブルに載置して種々の実験を繰り返したが、フレキシブルディスクは、以下に述べるように従来の記録媒体とは異なる挙動を示し、確実な記録再生が困難であることが判った。
【0008】
上記実験に際し、本発明者らは、まず厚さ100μm程度のフレキシブルディスクを、基板とほぼ同じ大きさのターンテーブルの上に載せて、このターンテーブルでフレキシブルディスクを支持することを試みた。なお、ターンテーブルは光学ガラスで作製し、レーザをこのターンテーブル越しにフレキシブルディスクに照射する。
【0009】
そして、例えば100μm厚のフレキシブルディスクと500μm厚のターンテーブルを用意し、前者を後者の上に偏心が小さくなるように載せてみたところ、次のような現象が現れた。
(イ)ターンテーブルとフレキシブルディスクで、その一部の領域だけが吸着してしまった。
(ロ)その吸着部分は他の部分を次々に巻き込んで吸着領域が拡がっていくのが観察された。
(ハ)ところが吸着領域の拡大はある範囲で落ち着いてそれ以上は拡がらなかった。
(ニ)結局、ターンテーブルとフレキシブルディスクは一様に吸着せず、所々にエア噛み部分が残った。
(ホ)このエア噛み部分が残ったターンテーブルにフレキシブルディスクが貼り付いたものをDVDプレーヤで記録再生を試みたが、全く記録再生ができなかった。
【0010】
このようなフレキシブルディスクの現象は、そのディスクの剛性が低くかつ静電気を持ちやすいため生じるものである。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、エア噛みを防止して薄型フレキシブルディスクに確実かつ安定して情報の記録再生を行う光情報記録再生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述のように、エア噛み現象は記録再生を阻害する原因となるものであるが、本発明者らはこのエア噛み現象が起こる理由を検証し、それを回避する方策を提供する。
【0013】
まず、吸着部分が常に局所的に生成する現象であること、また、フレキシブルディスクやターンテーブルは不導体でできていることに注目すると、現象に静電気が関与していることを分かる。そして、静電気はある帯電した部分同士が接触し中和されると、吸着部分はそれ以上に拡がらず、帯電部分に応じて吸着部分が局所的に発生する。この結果、フレキシブルディスクには部分的にひずみができるから、中和が済んでいない部分同士の領域に過不足が生じ、吸着することなく取り残された島状部が残存する。このような理由でエア噛み現象が起こるのである。
【0014】
また、確実かつ安定に情報の記録再生ができないのは、エア噛みによって局所的な面ぶれが発生し、ドライブによるフォーカス追従が実行されなかったことによることが分かった。
【0015】
そこで、本発明による光情報記録再生装置は、上記エア噛みを防止するために、情報の記録再生時にターンテーブルと薄型フレキシブルディスクとの間にスペーサを設けて空間を生成し、空気の流れを生じさせるような構成を採っている。また、その際に薄型フレキシブルディスクとスペーサが滑ってディスク表面に傷がつかないようにスペーサの形状を工夫している。
【0016】
より具体的には、本発明による光情報記録再生装置は、厚みが0.3mm以下のフレキシブルディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光情報記録再生装置であって、情報記録及び/又は再生に用いる光を前記フレキシブルディスクに照射するための光ヘッドと、前記フレキシブルディスクを保持し、前記光ヘッドからの光を透過して前記光ヘッドからの光を前記フレキシブルディスクに照射することを可能とする、ターンテーブルと、前記ターンテーブルと前記フレキシブルディスクとの間に隙間を形成するためのスペーサと、を備え、前記ターンテーブルは、対向する前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側の位置に設けられ、前記スペーサによって形成される隙間に空気を流入させるための貫通孔を有し、前記スペーサは、前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側にあり、前記貫通孔と塞がないように側面部から延設した凸部を有し、前記ターンテーブルを回転させたときに、前記スペーサにより形成された前記隙間に空気流を生じさせることを特徴とする。
【0017】
また、前記ターンテーブルの径は、前記フレキシブルディスクの径より大きいのが好ましい。
【0018】
さらに、前記貫通孔は、複数個、回転中心対称に円周状に前記ターンテーブルに設けられている。
【0019】
また、前記スペーサは、前記フレキシブルディスクと接触する面積が500mm2よりも大きくなるように構成されている。なお、前記スペーサは凸部を有する円環形状をなしており、回転中心から凸部外周までの距離を、前記貫通孔の回転中心からの最大距離以上とすることにより、前記スペーサと前記フレキシブルディスクとの接触面積が500mm2よりも大きくなる形成されている。また、前記スペーサの、前記回転中心から凸部外周までの距離は、前記回転中心から前記フレキシブルディスクの光情報記録領域までの距離よりも小さいことが好ましい。
【0020】
前記スペーサは、前記ターンテーブルと一体に形成されていてもよく、前記ターンテーブルは、着脱式であってもよい。
【0021】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の情報記録再生装置によれば、フレキシブルディスクとターンテーブルとの間に間隙を確保し、フレキシブルディスクの面ぶれを低減し、良好な記録再生が行える。さらには、フレキシブルディスクおよびターンテーブルの傷付きを防止して、フレキシブルディスクおよびターンテーブルの破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面等を参照して本発明による実施形態による光情報記録再生装置について説明する。まず、本発明の基本的構成について説明し、次いで基本的構成をさらに改良した構成について説明する。本実施形態は単なる一例に過ぎず、特許請求の範囲を逸脱しない限りにおいて、構成要素の追加変更、代用は可能であることに注意されたい。
【0024】
<基本的構成>
図1乃至図6は、本実施形態による光情報記録再生装置の基本的構成を示す概略図である。図1及び図2はターンテーブルとスペーサとが分離可能な構成となっており、図3及び図4はターンテーブルとスペーサとが一体的に形成された構成であり、図5及び図6はハブを用いた構成である。
【0025】
本実施形態の基本的構成において、ターンテーブルを用いるに当たり、フレキシブルディスク101への記録再生を行う光ヘッド106を下に配置した場合、(1)下から、スピンドル、ターンテーブル102、フレキシブルディスク101、ターンテーブルおよびフレキシブルディスクを固定するクランパ103の順に積み重ねる場合(図1、図3、図5)と、(2)スピンドル、フレキシブルディスク101、ターンテーブル102、クランパ103の順に積み重ねる場合(図2、図4、図6)とがあり得る。
【0026】
まず(1)の場合、ターンテーブル102は光ヘッド106とフレキシブルディスク101との間に配置されることになるので、屈折率が光ディスク基板とおおよそ等しくなる屈折率1.6以下で光を透過するBK7等の硝材、石英、あるいは、光ディスク基板やレンズ材料に用いられるポリカーボネート、シクロポリオレフィン、アクリルなどを用いるのが好ましい。また、ターンテーブル102の厚みに関して、例えば、フレキシブルディスク101がDVD−Rとは基板厚が薄いことを除いて全て同じものである場合、フレキシブルディスク101とターンテーブル102の光学距離を足した値が、DVD−Rに用いられる基板の光学距離と等しくなるようにターンテーブル厚を設定する必要がある。
【0027】
一方、(2)の場合には(1)の場合と異なりターンテーブル材料および厚みの制約はないが、光ヘッド106とフレキシブルディスク101との間に光学距離を調整するための光学補正板107を挿入する必要がある。
【0028】
ターンテーブル等の光学補正板を用いることにより、光ヘッド出射後のレーザ光はフレキシブル基板の基板空気界面だけでなく、光学補正板の表裏の空気界面を余分に通過する。通常、屈折率約1.5の物質と空気との界面における反射率は約4%であり、光学補正板だけで約8%の光量をロスすることとなる。従って、光学補正板の表面には反射防止コート(ARコート)を施した。ARコートとしては、SiO2とTaO2など屈折率の異なる透光性の無機化合物の多層膜を用いた。
【0029】
また、ターンテーブルを用いると、(2)の場合、光ヘッド106が薄型フレキシブルディスク101に接触するおそれがあり、また接触しないまでも、回転に伴う空気流で光ヘッドによる渦が生じ、この渦が薄型フレキシブルディスク101に作用するので、回転の安定性が損なわれる可能性がある。その場合、光ヘッド106周辺に空気流を整流するための整流板を設ける必要がある。
【0030】
一方、(1)の場合は、光ヘッドなどに当る空気の流れの乱れは、ターンテーブル102でパージする構成となっているので光ヘッド106周辺には必要ない。
【0031】
前述のように、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101とを接触させて回転させると、フレキシブルディスク101が、剛性が低くかつ静電気を持ちやすいために、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101が局所的に空気を噛み込んで静電吸着し、その凹凸によりフォーカスサーボが追従できず、デフォーカスにより正常な記録再生が阻害されてしまう。本発明では、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101との間にスペーサ104を挟み、さらにターンテーブル102に空気流入用の貫通孔を設けている。即ちスペーサ104を挟むことにより、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101との間に間隙を確保し、該間隙を通してディスクの回転により空気流入用の貫通孔から空気を導入するようにしている。
【0032】
このような空気流の制御をしながら回転を安定させるには、フレキシブルディスク101の見かけの比重は0.9〜1.1に調整することが望ましい。一方、静電気の発生を抑えるため、ターンテーブル102は10の12乗Ω以下の表面電気抵抗(ρ)の材料で構成することが望ましい。
【0033】
さらに、この上に表面電気抵抗の小さい膜を付加することにより帯電防止対策を行うことを試みたが、そのこと自体にはあまり効果がなかった。そこで、帯電状態の解消を図るのではなく、回転中に、フレキシブルディスク101がターンテーブル102と静電気的に反発状態を確保することで、静電吸着を防止した。フレキシブルディスク101とターンテーブル102の両者のそれぞれの対向する表面を同じ符合の帯電状態とすべく、各々の相対する表面に情報記録または再生に用いる光を透過する同じ組成の無機化合物の薄膜を付加した。このような帯電状態を制御する対策を行うことにより、静電吸着に起因する面ぶれ量を低減した。このような帯電状態を制御してフレキシブルディスク101を安定して回転させるには、フレキシブルディスク101の重さを0.8g〜1.2gが望ましい。更にフレキシブルディスク101に積層された無機化合物の薄膜は、回転の際に生ずる空気流に混在した塵埃の衝突によってフレキシブルディスク101を構成するプラスチックフィルムが傷つくことを防止する保護層としても機能する。また、無機多層膜を形成し、ARコートを兼ねることも可能である。
【0034】
更にターンテーブル102の表面を荒らすことにより、仮にフレキシブルディスク101がターンテーブル102に貼り付いた場合であっても、スペーサ104により形成されたフレキシブルディスク101とターンテーブル102との間の間隙から流入した空気がターンテーブル102の表面に沿って外側に向かって流れ、安定つりあい状態に復帰させることが容易となる。
【0035】
静止時にはスペーサ104の働きで、空気流入部分のディスクの静電気による部分的貼り付き(エア噛み現象)が防止され、更に回転時にはスペーサ104により作られたターンテーブル102とフレキシブルディスク101との間の隙間に空気流入用の貫通孔から流れ込んだ空気が、遠心力の働きもあいまってエア噛み現象を解消し、かつ、フレキシブルディスク101とターンテーブル102との間の静電的反発力により、フレキシブルディスク101の浮上を助け、フレキシブルディスク101の面ぶれを低減することができる。また、ターンテーブル102の径をフレキシブルディスク101の径より3mm〜7mm程度大きくすることにより、フレキシブルディスク端面での渦の発生を防ぐことができる。
【0036】
図1から図6に示すように、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101の間に配置するスペーサ104によって、回転が始まると、スペーサ104によってできた空間を起点として、フレキシブルディスク101とターンテーブル102に挟まれた空間の空気が遠心力により内周から外周へと定常的に移動する。これにより静止時に静電気によってできた局所的なエア噛み現象が全面的に取り除かれる。スペーサ104によってできるフレキシブルディスク101とターンテーブル102との間隔は通常0.01〜0.5mmであることが望ましい。
【0037】
また、ターンテーブル102の外径をフレキシブルディスク101の外径より大きくすることにより、フレキシブルディスク101とターンテーブル102の間から流出した空気がフレキシブルディスク101の最外周で生じる乱流を低減することができ、面ぶれを少なくすることができる。
【0038】
空気流入用の貫通孔105は、ターンテーブル102のドーナツ板自体に設けられても良いが、ターンテーブル102のドーナツ板中心に同芯に取り付けられたハブに設けても良い(図5及び図6参照)。これにより、空気の流れがよりスムーズに行われるようになるため、局所的な面ぶれを低減しかつ面ぶれがより少なく安定した状態を保つことができるようになった。空気流入用の貫通孔105は多数満遍なく設けることにより均一な空気の流れを実現することが望ましい。実際的には、複数個、好ましくは3個〜50個、回転中心対称に円周状に配置するのが望ましい。貫通孔105の径は2mmφ〜7mmφが望ましい。ともかくターンテーブル102の強度が極端に落ちない程度の径と数にする。図示しないが、貫通孔105には渦発生防止のため孔周縁はR加工されることが望ましい。また、貫通孔105は、記録再生に用いる光ビームが通過しない領域、すなわち、フレキシブルディスク101の記録再生を行う最も最内周(DVDの場合、MBCAの最内周)よりも内側に形成されている必要がある。
【0039】
<改良された構成>
スペーサ104は、ターンテーブル102とフレキシブルディスク101との間に空気層を形成するために設けるので、ターンテーブル102に形成した貫通孔105をふさがないように設置しなければならない。
【0040】
一方で、スペーサ104とフレキシブルディスク102の接触面積を余り狭くすると、スピンドル回転数の変化時、特に停止状態からの起動時及びディスクを停止させる際に、スペーサ104とフレキシブルディスク101が滑って傷付く可能性がある。さらに、ターンテーブル102がスピンドルに対して着脱式の場合、スピンドルクランプに対してターンテーブル102も滑る可能性がある。ターンテーブル102をガラスで構成した場合、ターンテーブルが破損する危険もある。
【0041】
フレキシブルディスク101とターンテーブル102の滑りを防止するために、スペーサ108を図7に示すような形状とした。すなわち、ディスク内径とディスク記録再生エリアに挟まれた狭い領域において、スペーサの外径を空気流入用の貫通孔の存在する径よりも大きくし、かつ、貫通孔105からターンテーブル102とフレキシブルディスク101との間に流入する空気の流れを阻害しないように貫通孔105とその外側方向にスリットを設けたスペーサ108(若しくは、円環部材(ドーナツ状部材)に貫通孔105を塞がないように凸部を複数設けたスペーサ108)を、ターンテーブルに固定することにより、空気の流れとディスククランプ面積を両立する構成を採っている。
【0042】
また、スペーサ108は後述するように、フレキシブルディスク101と接触する面積が500平方mmよりも大きくなるように構成されることが好ましい。
【0043】
ドーナツ形状のスペーサ108に関して、ディスク回転中心からスペーサの凸部外周までの距離を、貫通孔105における回転中心からの最大距離以上とすることにより、スペーサ108とフレキシブルディスク101との接触面積が500平方mmよりも大きくなるようにするとよい。ただし、これは貫通孔105の個数及びそれが占める面積に依存するものである。
【0044】
また、スペーサ108に関しては、ディスク回転中心から凸部外周までの距離は、ディスク回転中心からフレキシブルディスク101の光情報記録領域までの距離よりも小さいことが好ましい。情報記録領域を最大限に活用するためである。
【0045】
図8及び9は、図7に示されるスペーサ108を装着する光情報記録再生装置の概略構成を示す図である。図8及び9では、スペーサ108の形状が上述の基本構成で用いられるスペーサ104と異なるだけで、その他の構成は同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0046】
図7乃至図9を参照すれば分かるように、スペーサ108は、ターンテーブル108に設けた空気流入用の貫通孔105を塞がないような形状にしている。そして、スペーサ108は、ターンテーブル102およびにフレキシブルディスク101と共に一体となって回転する。スペーサ108がフレキシブルディスク101と接する面積は、上述の基本構成のスペーサ104よりも大きいので、ディスクを停止状態からの起動させた時及びディスクを停止させる際に、スペーサ104とフレキシブルディスク101が滑って傷付くことを防止することができるようになる。
【0047】
なお、ここでは、図1及び図2に示される基本的構成に対応する改良された構成のみを図8及び9で示しているが、図3乃至図6に対応する改良された構成も実現可能であることはもちろんである。つまり、例えばスペーサ108は、図8及び図9ではターンテーブル102と分離した構成を採っているが、図3及び図4のように、ターンテーブル102と一体として形成してもよく、また、部材としては分子されたものであってもターンテーブル102に接着等により固定してもよい。また、スペーサ108は、樹脂で構成しても金属で構成してもよい。
【0048】
<カートリッジ>
上述のようなフレキシブルディスク101は、多数枚を1カートリッジに収納し、1カートリッジ当たり(単位体積当たり)の記録容量を大きくすることができる。この目的のため、カートリッジとしては、内部で、フレキシブルディスクの両側に不織布等のセパレータを挿入し、フレキシブルディスク同士が直接貼り付いたり、互いに擦れ合ったりすることの無いようにすることもできる。
【0049】
図10は、複数枚のフレキシブルディスクを収納することのできるカートリッジの概略構成を示す図である。図10において、カートリッジ内には、薄い板状の隔壁210が層状に形成されており、隔壁210の間に薄型光ディスク220が1枚ずつ収納されている。また、各隔壁210の一部には、収納位置を示す識別子230が形成されている。本実施形態では、隔壁210を透明なPET(PolyEthylene Terephthalate)等で作製し、その一部に黒インクで識別子230を印刷しているが、隔壁210はディスク寸法や収納枚数に応じて適当な材質を有する材料から作製することができ、識別子230は光学的に読み取り可能な適当な材料を用いて形成することができる。
【0050】
さらに、このように収納中にあって、フレキシブルディスクがセパレータと接する場合でも、フレキシブルディスク表面に無機化合物からなる耐摩擦保護層を積層すれば、フレキシブルディスクの収納時の信頼性を高めることができる。
【0051】
また、フレキシブルディスク101の基材には、ポリカーボネート製のシートを用いた。これはフレキシブルディス101クが3000rpm以上で回転し、大きな遠心力が加わること以外に、この周波数(50Hz以上)で、フレキシブルディスクの固有振動に由来する非定常的な振動が起こると、面ぶれがきっかけとなってフレキシブルディスクが破壊される危険があり、本発明者らの実験によれば、ポリカーボネート製のシートが最も安定していたとの経験に基づく。また、多数枚を1カートリッジに収納した際にも、カートリッジ内壁に接当して端面にエッジ折れなどが起こることもない。
【0052】
さらに、フレキシブルディスク101の、カートリッジとドライブ間の搬送に際しても、フレキシブルディスク101のドーナツ板内端面に搬送アームを押し拡げて持ち上げる際に、このエッジの損傷や、曲がりやたわみを少なくすることができる。即ち、ポリカーボネートを用いることにより、搬送が容易なフレキシブルディスクとすることができた。この搬送の容易性は、更にスペーサを設けることにより高められる。本来スペーサ104及び108は、フレキシブルディスク101とターンテーブル102との間に間隙を確保し、フレキシブルディスク101の面ぶれを低減するためのものであるが、他方、フレキシブルディスクの搬送時にはフレキシブルディスクのセンターホール端を掴むための掴み代としても機能させることが出来る。
【0053】
なお、フレキシブルディスク同士が貼りついたり、互いに擦れ合うことの無いように積層して(例えば、0.1mm厚の不織布を挟みながら積層)保存することができるが、その際に不織布に水分を含んだ場合でもフレキシブルディスクが侵食されないように、表面にSiNn等の無機化合物よりなる耐水膜を積層するのが望ましい。
【0054】
<実験結果>
以下、具体的に実験結果について示す。ここでは、厚さ100μmのポリカーボネートフィルムに色素記録層、銀を主成分とする金属反射層、保護コートを積層し、ディスク外径を120mmφ、内径を15mmφのドーナツ板とし、重さを1gに調整して、フレキシブルディスク101を構成している。なお、基板裏面と保護コート面にスパッタリングによりSiN薄膜を3nm積層している。
【0055】
また、ターンテーブル102として、厚さ500μmのソーダガラス板で内径15mmφ、外径125mmφのもの3枚および外径120mmφのもの1枚(10の14乗Ωの表面電気抵抗(ρ))を用意した。外径125mmφのもの2枚と外径120mmφのもの1枚について、空気流入用の貫通孔105として、超音波ドリルを用いて、6mmφのものをターンテーブル中心から18mmの位置に円周状に合計8個等間隔に配置した。さらに、空気流入用の貫通孔を開けた外径125mmφのもの1枚を除いて残りの3枚にはフレキシブルディスク101と同様にスパッタリングでSiN薄膜を3nm積層した。SiN薄膜を積層することにより、表面抵抗は10の13乗Ωに変化した。以上、用意したターンテーブルの比較表を表1にまとめる。
【0056】
【表1】
【0057】
またスペーサとして、SUS304製で外径33mmφ、内径15mmφ、厚さ0.1mmのスペーサ104と、さらに、図7に示す形状をなすスペーサ108も同じ内径および厚さのものと2種類用意した。
【0058】
このようにして得た、ターンテーブル102A〜Dおよびフレキシブルディスク101を、スペーサ104を介して同芯にDVDドライブに装着した。ターンテーブル102Aを装着した状態は図1、図3及び図5のいずれかに示される通りである。そして、DVDドライブを4000rpmの回転数で駆動し、フォーカスエラー信号レベルの測定を行った。なお、DVDドライブは、容易に実験するために用いたのであり、図1乃至図6の構成を有する記録再生装置を用いて実験することを排除するものではないことに注意されたい。
【0059】
ターンテーブル102A、B及びCに用いて測定した結果を表2および図12乃至14に示す。記録再生用ドライブのフォーカスエラー信号はディスクの面ぶれの加速度とほぼ比例するので、フォーカスエラー信号を比較すると、面ぶれの程度が把握できる。本測定に使用した記録再生用ドライブにおいては、フォーカスエラー信号が700mVを超えるあたりから、顕著なデフォーカスが観測され、トラッキングエラー信号の振幅低下によるトラッキング性能の低下、情報再生信号の劣化が起きることが確かめられている。
【0060】
【表2】
【0061】
貫通孔を設けたターンテーブル102Aは、貫通孔がないターンテーブル102Bに対してフォーカスエラー信号が顕著に小さくなることがわかる。これは、貫通孔を設けることによりフレキシブル基板とガラス基板間に空気の流れが発生し、これによりエア噛みが防止されたと考えられる。ターンテーブル102Aでは、フレキシブルディスクとターンテーブルのそれぞれの対向する表面を同じ符号の帯電状態とすることができて互いに静電気反発力を発生させることで、両者が吸着することがないのに対し、ターンテーブル102Cでは、静電気的に不安定なことが原因でフォーカスエラー信号が大きくなったと考えられる。
【0062】
ターンテーブル102Aとターンテーブル102Dはターンテーブル外径が異なる以外全て同等であるが、同様の条件でフォーカスエラー信号レベル最大値のフレキシブルディスク半径依存性を調べたところ、図11の結果を得た。即ち、ターンテーブルとフレキシブルディスクが共に同じ径である場合には、フレキシブルディスクの外周部におき面ぶれが大きくなる現象が見られた。フレキシブルディスク外周部を注目すると、フレキシブルディスクとターンテーブルの回転に伴って、空気の乱流が発生していることが予想される。このため、この空気の乱流によってフレキシブルディスクに非定常的な力が発生し、その結果フレキシブルディスクの面ぶれ量が増えると考えられる。ターンテーブルの外径が120mmφの場合は外径が125mmφであるものより乱流の効果が強く受け、面ぶれ量が大きくなると考えられる。
【0063】
さらに、DVDドライブの光ピックアップに厚み0.5mmのガラス板を貼り付けて、光学状態をDVDドライブにターンテーブル102Aを装着した場合と同等の状態に保持した改造ドライブ(図示せず)を用い、このドライブに、まずフレキシブルディスク101を装着し、その上にスペーサ104、更にその上にターンテーブル102Aを載せ、それぞれ同芯に固定した(図2、図4及び図6参照)。この改造ドライブを4000rpmで回転させ、フォーカスエラー信号レベルの最大値を測定したところ、最大値は400mVであった。この結果からフレキシブルディスクとターンテーブルとを反転させて、ドライブにセットした場合でも同様の効果が得られることがわかる。
【0064】
次に、ターンテーブル102Aの貫通孔とスペーサ108の切り欠きの位置を合わせて、さらにフレキシブルディスク101を順にDVDドライブに装着して、これまでと同様にフォーカスエラー信号レベルの最大値を測定したところ、最大値は430mVであった。この結果より、スペーサ104とスペーサ108とで、ターンテーブル102Aとフレキシブルディスク101の間の空気の流れにほとんど差がないことがわかる。
【0065】
DVDのクランプエリアは22mmφ〜33mmφ(フレキシブルディスク101も同様)であり、その面積は約475平方mmである。一方、スペーサ104の面積は、ターンテーブル102Aの場合15mmφ〜27mmφのドーナツ状円盤であることから、約395平方mmであり、貫通孔105がない場合に比べて2割近く面積が減るため、回転起動時や回転停止時にディスクがスリップしやすい可能性がある。一方、スペーサ108の場合、その外径を39mmにすると貫通孔部分の面積を除いても約560平方mmとなり、逆にDVDと比べても2割程度クランプ面積が増加する。
【0066】
実際に、停止状態から10000rpmまでのスピンアップ時間と10000rpmから停止状態までのスピンダウン時間が約1秒の試験装置を用いて1000回回転と停止を繰り返した。このときのクランプ力は2Nとした。その結果スペーサ104を用いた場合はフレキシブルディスク101のr=27mmにスリップが原因と考えられる傷が付いた。一方、スペーサ108を用いた場合にはディスク表面は無傷だった。
【0067】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態による情報記録再生装置によれば、ターンテーブルと、そのターンテーブルと薄型フレキシブルディスクとの間に隙間を形成するためのスペーサとを備えている。そして、ターンテーブルは、対向する前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側の位置に設けられ、スペーサによって形成される隙間に空気を流入させるための貫通孔を有し、スペーサは、フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側にあり、貫通孔と塞がないように側面部から延設した凸部を有している。このように構成することにより、ターンテーブルを回転させたときに、スペーサにより形成された前記隙間に空気流を生じさせて、ディスク上にエア噛みが発生するのを防止できる。また、スペーサの側面部から凸部が形成されているので、フレキシブルディスクとスペーサとの接触面積を大きくとることができるので、ディスクとスペーサとの間に生じる滑りを防止することができ、よって、ディスクに傷が生じるのを防止することができる。
【0068】
また、ターンテーブルの径をフレキシブルディスクの径より大きくすることにより、フレキシブルディスク101とターンテーブル102の間から流出した空気がフレキシブルディスク101の最外周で生じる乱流を低減することができ、面ぶれを少なくすることができる。よって、より安定的な情報の記録再生動作を実現できる。
【0069】
さらに、ターンテーブルに貫通孔を複数個、回転中心対称に円周状に設けることにより、空気の流れを均一にすることができ、より安定的な情報記録再生動作を実現することができるようになる。
【0070】
なお、スペーサとフレキシブルディスクと接触する面積が500平方mmよりも大きくなるようにすると、ディスクとスペーサとの間に生じる滑りを効果的に防止するには充分な面積となる。それには、スペーサは凸部を有する円環形状をなしており、回転中心から凸部外周までの距離を、貫通孔の回転中心からの最大距離以上とすればよい。
【0071】
また、スペーサに関し、回転中心から凸部外周までの距離は、回転中心からフレキシブルディスクの光情報記録領域までの距離よりも小さくなるように構成することにより、光情報記録領域を最大限に情報記録のために用いることができると共に、ディスクとスペーサとの滑りも防止できるようになるので、安定的な情報記録を実現できる。
【0072】
さらに、スペーサをターンテーブルと一体に形成することにより、スペーサをターンテーブルに載置する際にターンテーブルの貫通孔をスペーサで塞いでしまうということが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その1)を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その2)を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その3)を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その4)を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その5)を示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態による情報記録再生装置の基本的構成(その6)を示す概略図である。
【図7】本発明の実施形態による情報記録再生装置の改良された構成に用いられるスペーサの形状を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による情報記録再生装置の改良された構成(その1)を示す概略図である。
【図9】本発明の実施形態による情報記録再生装置の改良された構成(その2)を示す概略図である。
【図10】複数枚のフレキシブルディスクを収納することのできるカートリッジの概略構成を示す図である。
【図11】本発明のターンテーブルの外径が120mmφ及び125mmφであるときの、フォーカスエラー信号の最大値の半径依存を示す図である。
【図12】実施例の各ターンテーブルA,B及びCを用いたときのフォーカスエラー信号(その1)
【図13】実施例の各ターンテーブルA,B及びCを用いたときのフォーカスエラー信号(その2)
【図14】実施例の各ターンテーブルA,B及びCを用いたときのフォーカスエラー信号(その3)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.3mm以下のフレキシブルディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光情報記録再生装置であって、
情報記録及び/又は再生に用いる光を前記フレキシブルディスクに照射するための光ヘッドと、
前記フレキシブルディスクを保持し、前記光ヘッドからの光を透過して前記光ヘッドからの光を前記フレキシブルディスクに照射することを可能とする、ターンテーブルと、
前記ターンテーブルと前記フレキシブルディスクとの間に隙間を形成するためのスペーサと、を備え、
前記ターンテーブルは、対向する前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側の位置に設けられ、前記スペーサによって形成される隙間に空気を流入させるための貫通孔を有し、
前記スペーサは、前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側にあり、前記貫通孔と塞がないように側面部から延設した凸部を有し、
前記ターンテーブルを回転させたときに、前記スペーサにより形成された前記隙間に空気流を生じさせることを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項2】
前記ターンテーブルの径が、前記フレキシブルディスクの径より大きいことを特徴とする請求項1に記載の光情報記録再生装置。
【請求項3】
前記貫通孔が、複数個、回転中心対称に円周状に前記ターンテーブルに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録再生装置。
【請求項4】
前記スペーサは、前記フレキシブルディスクと接触する面積が500平方mmよりも大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項5】
前記スペーサは凸部を有する円環形状をなしており、回転中心から凸部外周までの距離を、前記貫通孔の回転中心からの最大距離以上とすることにより、前記スペーサと前記フレキシブルディスクとの接触面積が500平方mmよりも大きくなるようにすることを特徴とする請求項4に記載の光情報記録再生装置。
【請求項6】
前記スペーサに関し、前記回転中心から凸部外周までの距離は、前記回転中心から前記フレキシブルディスクの光情報記録領域までの距離よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の光情報記録再生装置。
【請求項7】
前記ターンテーブルの少なくとも一部がガラスによりなることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項8】
前記スペーサは、前記ターンテーブルと一体に形成してなることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項9】
前記ターンテーブルは、着脱式であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項1】
厚みが0.3mm以下のフレキシブルディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光情報記録再生装置であって、
情報記録及び/又は再生に用いる光を前記フレキシブルディスクに照射するための光ヘッドと、
前記フレキシブルディスクを保持し、前記光ヘッドからの光を透過して前記光ヘッドからの光を前記フレキシブルディスクに照射することを可能とする、ターンテーブルと、
前記ターンテーブルと前記フレキシブルディスクとの間に隙間を形成するためのスペーサと、を備え、
前記ターンテーブルは、対向する前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側の位置に設けられ、前記スペーサによって形成される隙間に空気を流入させるための貫通孔を有し、
前記スペーサは、前記フレキシブルディスクの光情報記録領域に対向する位置より内側にあり、前記貫通孔と塞がないように側面部から延設した凸部を有し、
前記ターンテーブルを回転させたときに、前記スペーサにより形成された前記隙間に空気流を生じさせることを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項2】
前記ターンテーブルの径が、前記フレキシブルディスクの径より大きいことを特徴とする請求項1に記載の光情報記録再生装置。
【請求項3】
前記貫通孔が、複数個、回転中心対称に円周状に前記ターンテーブルに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録再生装置。
【請求項4】
前記スペーサは、前記フレキシブルディスクと接触する面積が500平方mmよりも大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項5】
前記スペーサは凸部を有する円環形状をなしており、回転中心から凸部外周までの距離を、前記貫通孔の回転中心からの最大距離以上とすることにより、前記スペーサと前記フレキシブルディスクとの接触面積が500平方mmよりも大きくなるようにすることを特徴とする請求項4に記載の光情報記録再生装置。
【請求項6】
前記スペーサに関し、前記回転中心から凸部外周までの距離は、前記回転中心から前記フレキシブルディスクの光情報記録領域までの距離よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の光情報記録再生装置。
【請求項7】
前記ターンテーブルの少なくとも一部がガラスによりなることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項8】
前記スペーサは、前記ターンテーブルと一体に形成してなることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の光情報記録再生装置。
【請求項9】
前記ターンテーブルは、着脱式であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の光情報記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−65928(P2008−65928A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243895(P2006−243895)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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