説明

光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物及び透光性成形品

【課題】 ポリカーボネート樹脂に高分子微粒子を配合した光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物に、液晶パネルなどの導光板等に用いることが可能なように、充分な耐光性を付与する。
【解決手段】 (A)ポリカーボネート樹脂100質量部に(B)拡散剤(高分子微粒子)0.01〜20質量部及び(C)下記一般式(I)(式中、R1は炭素原子数2〜6のアルキレン基を、R2は炭素原子数1〜30のアルキル基を、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子又はメチル基を表す。)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤0.01〜10質量部を配合した光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂に高分子微粒子系光拡散剤と特定のトリアジン系紫外線吸収剤を添加した透過率と耐光安定性に優れた光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを成形してなる透光性成形品、特に液晶表示パネル用導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種照明カバー、ディスプレイカバー、自動車メーター、各種銘板などの光拡散性が要求される用途に、芳香族ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂のような透明性樹脂に有機物や無機物の光拡散剤を分散させた材料が広く用いられている。この様な透明性樹脂の中で、特に芳香族ポリカーボネート樹脂は機械的特性、耐熱性に優れている上、高い光線透過率を備えた樹脂として幅広く使用されている。
また光拡散剤としては、有機系や無機系のものが知られている。有機系の光拡散剤としては、架橋構造を有する有機系粒子があり、さらに詳しくは架橋アクリル系粒子、架橋シリコン系粒子、架橋スチレン系粒子などが挙げられる。無機系のものとしては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、弗化カルシウムなどの無機系粒子あるいはガラス短繊維などの無機系繊維がある。
特に有機系粒子は無機系粒子に比べて成形品の表面平滑性に優れており、高度な成形品外観を達成できるため、幅広い用途に適用可能である。
【0003】
芳香族ポリカーボネート樹脂に光拡散剤を配合した光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を、液晶パネルなどの導光板に用いる場合には、強い光に曝され続けても色調の変化や透過率の低下がない高度の耐光性が必要である。従来から、ポリカーボネートなどの合成樹脂の耐光性改良には、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤やヒンダードアミン化合物を用いることで耐光性が向上することが知られている。
【0004】
例えば、特開昭62−146951号公報には、ポリカーボネート樹脂にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を添加することが、また、特開平5−93089号公報には、ポリカーボネート樹脂にトリアジン系紫外線吸収剤を添加することが提案され、耐光性が向上している。
【0005】
しかし、いずれの紫外線吸収剤も耐光性は向上するものの、導光板のような色調の変化や透過率の変化を抑制する効果は、液晶パネルのような製品において不十分であった。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−146951号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平5−93089号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリカーボネート樹脂に高分子微粒子を配合した光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物に、液晶パネルなどの導光板等に用いることが可能なように、充分な耐光性を付与する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の第1は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に(B)拡散剤(高分子微粒子)0.01〜20質量部及び(C)下記一般式(I)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤0.01〜10質量部を配合した光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1は炭素原子数2〜6のアルキレン基を、R2は炭素原子数1〜30のアルキル基を、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子又はメチル基を表す。)
本発明の第2は、上記一般式(I)におけるR1がエチレン基、R2が炭素原子数5〜17のアルキル基である本発明の第1に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
本発明の第3は、本発明の第1または2に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる透光性成形品を提供する。
本発明の第4は、液晶表示パネル用導光板に用いられる本発明の第3に記載の透光性成形品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
液晶パネルなどに適した光線透過率保持性、色調安定性において優れた耐光性を示す光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物及び透光性成形品、特に液晶表示パネル用導光板を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)
本発明のA成分であるポリカーボネート樹脂、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるもの等である。
【0013】
上記二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0014】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびはα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選択される少なくとも1種の二価フェノールとの共重合体が好ましく使用される。
【0015】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0016】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。
【0017】
またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0018】
上記三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0019】
かかる分岐ポリカーボネート樹脂を生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、ポリカーボネート樹脂(A)全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、ポリカーボネート樹脂(A)全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0020】
界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。
酸結合剤としては、塩基であり、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。
有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。
また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。
その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0021】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用される。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(5)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル基置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0024】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類も示すことができる。これらのなかでは、下記一般式(6)および(7)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
(式6,7中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。置換位置はヒドロキシル基に対して、o−、m−又はp−位置である。)
【0028】
かかる一般式(6)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0029】
また、一般式(7)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0030】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0031】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0032】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0033】
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えばビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、ビス(フェニル)カーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。なかでも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0034】
さらにかかる重合反応終了時において触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。この失活剤の具体例としては、例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル;さらに、トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル−スルホン化スチレン共重合体、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−ブチル、オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、デシルアンモニウムブチルサルフェート、デシルアンモニウムデシルサルフェート、ドデシルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルアンモニウムエチルサルフェート、ドデシルメチルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルジメチルアンモニウムテトラデシルサルフェート、テトラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラメチルアンモニウムヘキシルサルフェート、デシルトリメチルアンモニウムヘキサデシルサルフェート、テトラブチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラメチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの化合物を二種以上併用することもできる。
【0035】
失活剤の中でもホスホニウム塩もしくはアンモニウム塩型のものが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましく、また重合後のポリカーボネート樹脂に対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。
【0036】
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は特定されないが、粘度平均分子量で、10,000未満であると高温特性等が低下し、50,000を超えると成形加工性が低下するようになるので、10,000〜50,000のものが好ましく、14,000〜30,000のものが特に好ましい。また、ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合しても差し支えない。
【0037】
(B)高分子微粒子系光拡散剤(B成分)
本発明のB成分である高分子微粒子系光拡散剤は、光拡散性の観点から球状であるものが好ましく、真球状に近い形態であるほどより好ましい。
高分子微粒子系光拡散剤としては、非架橋性モノマーと架橋性モノマーを重合して得られる有機架橋粒子を挙げることができる。上記非架橋性モノマーとしてはアクリル系モノマー、スチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、オレフィン系モノマーなどを挙げることができる。これらは単独でも2種以上を混合して使用することもできる。更にかかるモノマー以外の他の共重合可能なモノマーを使用することもできる。
他の有機架橋粒子としては、シリコーン系架橋粒子を挙げることができる。
【0038】
B成分として、ポリエーテルサルホン粒子等の非晶性耐熱ポリマーの粒子も挙げることができる。かかるポリマーの粒子の場合には、A成分と加熱溶融混練した場合であっても微粒子の形態が損なわれることがないため、必ずしも架橋性モノマーを必要としない。
更に、B成分として、各種のエポキシ樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、フェノール樹脂粒子等も使用可能である。
【0039】
B成分の平均粒子径は、0.01〜50μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜8μmである。また粒径の分布については狭いものが好ましく、平均粒径±2μmである粒子が全体の70質量%以上の範囲であるものがより好ましい。
【0040】
またB成分の屈折率は、A成分の屈折率との差が0.02〜0.2であることが好ましく、かかる範囲では光拡散性と光線透過率が高いレベルで両立することが可能となる。より好ましくは、B成分の屈折率がA成分の屈折率よりも低い場合である。
【0041】
B成分の中でも好ましくは有機架橋粒子である。かかる有機架橋粒子において使用される前記非架橋性モノマーであるアクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を単独でまたは混合して使用することが可能である。この中でも特にメチルメタクリレートが特に好ましい。
前記スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン(ビニルトルエン)、エチルスチレン等のアルキルスチレン、ブロモ化スチレン等のハロゲン化スチレンを使用することができ、この中でも特にスチレンが好ましい。
前記アクリロニトリル系モノマーとしては、(メタ)アクリロニトリルを使用することができる。
また前記オレフィン系モノマーとしてはエチレン、各種ノルボルネン型化合物等を使用することができる。
更に前記他の共重合可能なモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチルマレイミド、無水マレイン酸等を例示でき、また結果としてN−メチルグルタルイミド等の単位を有することもできる。
【0042】
一方、前記架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0043】
アクリル系モノマー等からなる有機架橋粒子の製造方法としては、一般的な乳化重合法の他、過硫酸カリウム等の開始剤を使用するソープフリー重合法、シード重合法、二段階膨潤重合法等を挙げることができる。また懸濁重合法においても、水相とモノマー相とを個別に保持して両者を正確に連続式の分散機に供給し、粒子径を分散機の回転数で制御する方法や、同様に連続式の製造方法において分散能を有する水性液体中にモノマー相を数〜数十μmの細径オリフィスまたは多孔質フィルターを通すことにより供給して粒径を制御する方法なども可能である。
【0044】
シリコーン系架橋粒子は、シロキサン結合を主骨格としてケイ素原子に有機置換基を有するものであり、ポリメチルシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものと、メチルシリコーンゴム粒子に代表される架橋度の低いものがあるが、本発明ではポリメチルシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものが好ましい。かかるシリコーン系架橋粒子のケイ素原子に置換する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等の他、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、エーテル基等が挙げられる。
【0045】
かかるシリコーン系架橋粒子の製造法としては、3官能性のアルコキシシラン等を水中で加水分解と縮合反応によってシロキサン結合を成長させながら3次元架橋した粒子を形成させる方法が一般的であり、かかる粒子径は例えば触媒のアルカリ量や攪拌工程等により制御可能である。
【0046】
一方、有機架橋粒子以外の高分子微粒子の製造方法としては、スプレードライ法、液中硬化法(凝固法)、相分離法(コアセルベーション法)、溶媒蒸発法、再沈殿法等の他、これらを行う際にノズル振動法等を組み合わせたものを挙げることができる。
【0047】
B成分の形態としては、単相重合体の他、コア−シェル重合体の形態、また2種以上の成分が相互に絡み合った構造を有するIPN構造をとることも可能である。また無機微粒子をコアとし有機架橋粒子をシェルとする、または有機架橋粒子をコアとしエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等をシェルとする等の複合型粒子も使用するとことができる。
【0048】
B成分の割合は、A成分100質量部に対して0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜15質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。上記範囲未満で十分な光拡散性が得られず、上記範囲を超えると光線透過率が不十分となるので好ましくない。
【0049】
(C)トリアジン系紫外線吸収剤(C成分)
C成分は、前記一般式(I)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤である。一般式(I)におけるR1で表される炭素原子数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。合成原料の入手の容易さやポリカーボネートへの相溶性などからエチレン基が好ましい。
【0050】
一般式(I)におけるR2で表される炭素原子数1〜30のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ヘキサデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルなどが挙げられる。ポリカーボネート樹脂への相溶性と有効成分の濃度のバランスからプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルが好ましい。
【0051】
一般式(I)におけるR3、R4、R5で表される基は、水素原子またはメチル基を表すが、着色性に優れるので水素原子が好ましい。なお、二つのR3、R4、R5置換フェニル基は、同じでも異なってもよい。
【0052】
一般式(I)で表される化合物としては、より具体的には、以下の化合物No.1〜8が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物に制限されるものではない。
【0053】
【化5】

【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
【化10】

【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
一般式(I)で表される化合物の合成方法は特に制限されず、公知の種々の方法により合成されるが、光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物に用いるので、純度が高いほど好ましく、水洗、再結晶、吸着剤処理、カラム精製などの精製工程により純度98%以上が好ましく、99%以上が好ましい。
【0062】
C成分は、(A)ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部用いることが好ましく、0.05〜3質量部がより好ましい。0.01質量部未満では安定化効果が得られず、5質量部より多く用いると樹脂から吹き出して光線透過率を低下させる。
【0063】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には必要に応じて蛍光増白剤が用いられる。蛍光増白剤としては、樹脂等の色調を白色あるいは青白色に改善するために用いられるものであれば特に制限はなく、例えばスチルベン系、ベンズイミダゾール系、ベンズオキサゾール系、ナフタルイミド系、ローダミン系、クマリン系、オキサジン系化合物等が挙げられる。具体的には例えばCI Fluorescent Brightener 219:1や、イーストマンケミカル社製EASTOBRITE OB-1などを挙げることができる。ここで蛍光増白剤は、光線の紫外部のエネルギーを吸収し、このエネルギーを可視光として放射する作用を有するものである。蛍光増白剤の割合はA成分とB成分の合計100質量部に対して0〜0.5質量部であり、より好ましくは0.0005〜0.3質量部である。0.5質量部を超えても該組成物の色調の改良効果は小さい。
【0064】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、更に慣用の他の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で配合することも可能である。例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、離型剤、難燃助剤、滴下防止剤、染料、顔料、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛など)、グラフトゴムに代表される衝撃改質剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤を配合することができる。
【0065】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕などが挙げられ、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部が用いられる(以下の酸化防止剤でも同様である)。
【0066】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファィト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどが挙げられる。
【0067】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0068】
上記紫外線吸収剤としては、具体的に、ベンゾフェノン系では、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられ、ベンゾトリアゾール系では、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾールが挙げられ、これらを1種もしくは2種以上を併用することができる。好ましくは、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]である。かかる紫外線吸収剤は、A成分とB成分の合計100質量部に対して、0.01〜2質量部程度が好ましい。
【0069】
上記光安定剤としては、特にヒンダードアミン系の光安定剤を挙げることができ、具体的にはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2n−ブチルマロネート、1,2,3,4−ブタンカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンジカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリ{[6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンと2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−クロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどを挙げることができる。かかる光安定剤は1種もしくは2種以上を併用することができる。
【0070】
上記難燃剤としては、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAのオリゴマー、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネート、ブロム化ポリスチレン、ブロム化架橋ポリスチレン、ブロム化ポリフェニレンエーテル、ポリジブロムフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイドビスフェノール縮合物および含ハロゲンリン酸エステルに代表されるハロゲン系難燃剤;モノホスフェート化合物としてトリフェニルホスフェート、縮合リン酸エステルとしてレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、およびビスフェノールAビス(ジキシレニルホスフェート)、その他ペンタエリスリトールジフェニルジホスフェートなどに代表される有機リン酸エステル系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム塩、リン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウムなどの無機系リン酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アンチモンなどに代表される無機系難燃剤;パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カルシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸カリウム、β−ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物に代表される有機アルカリ(土類)金属塩系難燃剤;フェニル基を含有する(ポリ)オルガノシロキサン化合物、(ポリ)オルガノシロキサンとポリカーボネート樹脂の共重合体、およびポリオルガノシルセスキオキサンに代表されるシリコーン系難燃剤;フェノキシホスファゼンオリゴマーや環状フェノキシホスファゼンオリゴマーに代表されるホスファゼン系難燃剤などを挙げることができる。
【0071】
その他、難燃助剤としては、アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモン等が挙げられ、滴下防止剤としてはフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等を代表的に挙げることができる。更にかかるポリテトラフルオロエチレンは、配合時の形態として分散液状、分散液と他のポリマーとを共凝固等することにより得られた被覆状物等であり微分散形態が可能であるものが好ましい。また核剤としては、例えばステアリン酸ナトリウム、エチレン−アクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0072】
難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤は、通常A成分とB成分の合計100質量部に対して0.01〜20質量部程度が好ましい。
【0073】
上記離型剤は、その90%質量以上が一価アルコールと一価脂肪酸のエステルおよび/または多価アルコールと脂肪酸のエステルからなる離型剤が挙げられる。
【0074】
より具体的には、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルは、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数5〜30の飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレート、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ソルビタンジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールジステアレート等が挙げられ、単独あるいは二種以上の混合物で用いることができる。なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリルステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。
【0075】
かかる離型剤を使用する場合は、目的に応じて種々の割合をとることが可能であるが、A成分とB成分の合計100質量部に対して0.02〜1質量部程度が好ましい。
【0076】
更に本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物には、アンスラキノン系染料、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、チオキサントン系染料などに代表される各種の染料や、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、フタロシアニン系染料等に代表される染料を配合することができ、これらはA成分およびB成分の合計100質量部に対して、0.0001〜2質量部程度が好ましい。
【0077】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物の製造は任意の方法が採用される。タンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、一軸押出機や二軸押出機等の押出機等で混合する方法が適宜用いられる。その他溶融重合終了後、ポリカーボネート樹脂を溶融状態に保ったままリン化合物や添加剤を添加する方法や、溶液状態のポリカーボネート樹脂と乳化液状の高分子微粒子を混合し更にリン化合物や添加剤を配合して、その後溶媒等を除去する方法も取ることができる。
【0078】
また本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は通常高度な光学的特性を要求される分野に使用されることが多いことから、かかる光学特性を阻害する異物の存在を少なくすることが好ましい。かかる好ましい樹脂組成物を得るためには、原料として異物量の少ないものを使用するとともに、押出機やペレタイザー等の製造装置を清浄な空気の雰囲気下に設置すると共に、冷却バス用の冷却水についても異物量の少ないものを使用し、更に原料の供給ホッパー、供給流路や、得られたペレットの貯蔵タンク等についてもより清浄な空気等で満たすことが好ましい。例えば特開平11−21357号公報に提案されているのと同様な方法をとることができる。
【0079】
こうして得られる光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、そのまま又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから用いることができる。更に各種押出機や射出成形機等によりフィルム状、シート状、繊維状、各種の成形品形状とすることができる。またペレット粒径を小径または一旦得られたペレットを更に粉砕して小粒径化し、回転成形等に使用することも可能である。またこれらにより得られた各種の成形品は、照明カバー、各種ディスプレー表示板、液晶表示板、LED表示板、FED表示板、等に使用される光ガイド、光ガイドを利用したウインカーなどの表示器、LEDカバーなどの各種用途の透光性成形品に使用可能である。
【0080】
(実施例)
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施例によりなんら制限されるものではない。
【0081】
(参考実施例1および2、及び参考比較例1および2)
350nmでの透過率を再現性よく測定するため、高分子微粒子系光拡散剤を含有しない下記配合により耐揮散性を評価した。
ビスフェノールA型ポリカーボネート(固有粘度0.57;ジオキサン30℃)100質量部、表1記載の紫外線吸収剤5質量部をジクロロメタン400質量部に溶解し、ガラス板に塗布して減圧、脱溶剤により50μmのキャストフィルムを得た。該フィルム1gを窒素雰囲気300℃で10分間保持した前後の350nmの透過率の比により紫外線吸収剤の残存率(%)を耐揮散性として評価した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
*1:比較化合物1として、下記のトリアジン系紫外線吸収剤を用いた。
【0084】
【化13】

【0085】
(実施例1および2、及び比較例1および2)
前記キャストフィルムと同様にして、高分子微粒子系光拡散剤として架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(積水化成品工業(株)製:MBX−5、平均粒子系5μm)を3質量部、及び表2に記載のように紫外線吸収剤を配合して、厚さ50μmのキャストフィルムを作製した。得られたキャストフィルムをサンシャインウェザオメーターで、83℃、雨無しで1000時間処理後の黄色度を測定して着色性を評価した。結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
参考実施例より、C成分はポリカーボネートに配合すると優れた耐揮散性を示すことが明らかであり、実施例より、成形品が優れた耐着色性をも示すことが明らかである。
よって、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品は、透明性や色調が長期に安定しており、耐光性に優れる。また、ポリカーボネート樹脂をベースに用いるので、透明性に優れ、寸法安定性に優れた透光性成形品が得られ、大型の導光板に成形が容易であるので、液晶表示パネルの導光板として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂100質量部、(B)高分子微粒子系光拡散剤0.01〜20質量部及び(C)下記一般式(I)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤0.01〜10質量部からなる光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1は炭素原子数2〜6のアルキレン基を、R2は炭素原子数1〜30のアルキル基を、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項2】
1がエチレン基、R2が炭素原子数5〜17のアルキル基である請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる透光性成形品。
【請求項4】
液晶表示パネル用導光板に用いられる請求項3に記載の透光性成形品。

【公開番号】特開2006−45389(P2006−45389A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229798(P2004−229798)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】