説明

光拡散性樹脂組成物およびそれを用いた光拡散性部材

【課題】 高い光拡散性と高い全光線透過率を同時に有する光拡散性樹脂組成物、及びそれを用いた光拡散性部材を提供することにある
【解決手段】 芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、少なくとも側鎖にフェニル基を有し、かつ25℃における粘度が1〜1000cStのポリオルガノシロキサンを0.01〜2重量部、および、重量平均径0.7〜30μmのアクリル系拡散微粒子を0.1〜20重量部含有して成ることを特徴とする、及びそれを用いた光拡散性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材に関し、詳しくは、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐候性に優れ、更に、優れた光拡散性を有し、且つ全光線透過率が高く、溶融加工時の変色を抑えた、照明カバー、照明看板、透過形のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シートなどとして有用な光拡散性樹脂組成物、および当該光拡散性樹脂組成物から得られる光拡散性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れた熱可塑性樹脂として幅広い用途があり、さらに、無機ガラスに比較して軽量で、生産性にも優れているので、光拡散性を付与することにより、照明カバー、照明看板、透過型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シートなど、光拡散性の要求される用途に好適に使用できる。このポリカーボネート樹脂に光拡散性を付与するためには、ガラス、シリカ、水酸化アルミニウム等の無機化合物の添加が提案されているが、成形加工時や押出加工時の熱安定性が低く、衝撃強度など機械的強度の低下が大きいという欠点があった。このような欠点を改良した光拡散性ポリカーボネート樹脂として、例えば特許文献1には、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、該ポリカーボネート樹脂との屈折率差が0.08より大きく、かつ少なくとも部分的に架橋しており、その重量平均粒径が0.5〜100μmの範囲にあるポリメチルメタアクリレート微粒子0.05〜20重量部を分散添加せしめた光拡散性ポリカーボネート樹脂が開示されている。しかしこの方法では、実施例1〜3に記載の如く、ヘイズが96%未満と低く、実用性に劣るものであった。
【0003】
特許文献2には、ポリカーボネート樹脂100重量部に、粒径50μm以下で平均粒径5〜20μmの微粒子を0.05〜0.5重量部配合した組成物からなり、全光線透過率が85%以上で、拡散透過率が10〜30%を有するポリカーボネート樹脂製高透過率光拡散板が開示されているが、光拡散性が低く、実用性の劣る光拡散板であった。
【0004】
特許文献3には、光線透過率や光拡散性の優れた樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり、炭酸カルシウム(B)0.1〜5重量部、酸化チタン(C)0.01〜0.3重量部およびポリオルガノ水素シロキサン(D)0.0001〜2重量部からなることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物が開示されているが、熱安定性や耐衝撃性の点で満足できるものではなく、さらに、全光線透過率も不十分なものであった。
【0005】
特許文献4には、ポリカーボネート樹脂100重量部、および平均粒径1〜25μmの粒子1〜20重量部からなる組成物から形成された厚み30〜300μmのフィルムであって、全光線透過率92%以上であり、かつヘーズ(曇り度)60%以上を有するポリカーボネート樹脂製高透過光拡散フィルムであり、さらに好ましくはフィルム表面に凹凸形状の模様を有するポリカーボネート樹脂製高透過光拡散フィルムが開示されている。このフィルム表面に凹凸形状の模様を形成させるには、フィルム製造時に凹凸形状の模様を有する冷却ロール等で挟持加圧し、凹凸模様を転写させる方法が一般的であるが、この方法では、凹凸模様をロール表面に作製する必要があって生産コストが高くなり、さらに長時間の使用によってロール表面の凹凸模様が摩耗し、経時的にフィルムの全光線透過率やヘーズが変化するなどの欠点を有している。また、該特許文献4に開示されているフィルムの厚さは、30〜300μmであるが、300μmを越えた厚みのフィルムや成形品の全光線透過率及びヘーズ等の光学特性は言及されていない。
【0006】
特許文献5には、ポリカーボネート樹脂99.7〜80重量%および平均粒径1〜30μmの透明微粒子0.3〜20重量%の合計100重量部と蛍光増白剤0.0005〜0.1重量部からなる樹脂組成物より形成された厚み0.5〜3.0mmのポリカーボネート樹脂製直下型バックライト用光拡散板が開示されているが、光学特性についての記載はあるものの、蛍光増白剤を用いて輝度を向上させているため、熱安定性が不十分であり、成形加工時、押出時の変色、リサイクル時の変色を生じやすく、実用性の低いものであった。
【0007】
また、これら特許文献1〜5の樹脂組成物からなる成形品においては、高い光線透過率と、高い光拡散性を同時に有するものは無く、また表面にぎらつきがあり、視認性の劣るものであった。
また、特許文献6および特許文献7には、ポリカーボネートに添加した場合であっても、透明性を維持し、離型性を付与できるものとして、メチルフェニルポリシロキサンが提案されている。しかしながら、光拡散性樹脂として使用することや、その場合に、透過率や輝度向上効果があることについては全く記載されていない。
【0008】
【特許文献1】特開平03−143950号公報
【特許文献2】特開平05−257002号公報
【特許文献3】特開2000−169695号公報
【特許文献4】特開2003−240921号公報
【特許文献5】特開2004−029091号公報
【特許文献6】特開平10−219090号公報
【特許文献7】特開平11−293101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術の問題点をすべて解決し、高い光拡散性と高い全光線透過率を同時に有する光拡散性樹脂組成物、及びそれを用いた光拡散性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の構造および粘度を有するポリオルガノシロキサンと特定の粒径を持つシリコーン系拡散微粒子を、特定の比率で配合することにより、樹脂本来の性質を損なうことなく、高い光拡散性および高い全光線透過率を同時に満足し、且つ、透過光の色相が良好である拡散性樹脂を見いだし、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、少なくとも側鎖にフェニル基を有し、かつ25℃における粘度が1〜1000cStのポリオルガノシロキサンを0.01〜2重量部、および、重量平均径0.7〜30μmのアクリル系拡散微粒子を0.1〜20重量部含有して成ることを特徴とする光拡散性樹脂組成物、及び該光拡散性樹脂組成物を用いた光拡散性部材に存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光拡散性樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の特性を何ら損なうことなく、更に、白濁や透過率の低下がなく、高い光拡散性および高い全光線透過率を同時に有し、且つ透過光の色相が良好で、更に溶融加工時の変色が抑えられ、光源から出る紫外線による変色も少ないため、照明カバー、照明看板、透過形のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シートや光拡散板など、光拡散性の必要な用途に幅広く使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に関わるポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物と、ホスゲンとの界面重合法により得られるか、または、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとのエステル交換反応により作られる、分岐していてもよい芳香族ポリカーボネート重合体である。
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン(=テトラメチルビスフェノールA)等のビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系ジヒドロキシ化合物、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン(=テトラブロムビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン(=テトラクロロビスフェノールA)等のハロゲンを含むビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系ジヒドロキシ化合物の他、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはハロゲンを含んでいても良いビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系ジヒドロキシ化合物が挙げられ、特に好ましくは、ビスフェノールAが挙げられる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は1種でも良いが、複数用いても良い。
【0014】
また、分岐したポリカーボネートを得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、 1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、及び3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノールなどの3価以上のポリヒドロキシ化合物を、前記ジヒドロキシ化合物の一部として使用すれば良い。ポリヒドロキシ化合物を使用する場合の使用量は、例えば、前記ジヒドロキシ化合物の0.1〜2モル%程度である。
さらに、分子量調節剤として、一価の芳香族ヒドロキシ化合物などを使用することができる。分子量調整剤としては、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−ブロムフェノール、p−tert−ブチルフェノール及びp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。
【0015】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂の分子量は、25℃におけるメチレンクロライド溶液粘度より測定した粘度平均分子量が、好ましくは16,000〜38,000であり、より好ましくは18,000〜35,000である。
また、本発明で使用するポリカーボネート樹脂は2種以上の混合物であってもよい。
【0016】
本発明で使用されるポリオルガノシロキサンは、少なくとも側鎖にフェニル基を有し、かつ25℃における粘度が1〜1000cStのポリオルガノシロキサンであって、公知の有機合成反応によって容易に得ることが出来る。
該ポリオルガノシロキサンとしては、分岐シロキサン構造を有するものが、本発明の効果が高いので、好ましい。
さらに本発明のポリオルガノシロキサンは、下記一般式(1)で示される構造であるのが好ましい。
【0017】
【化1】

(式(1)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基から選ばれた基であり、Rはフェニル基を示す。mは1以上、nは0以上の整数を示す。)
【0018】
上記の一般式(1)を有するポリオルガノシロキサンにおいて、25℃における動粘度は、1〜1000cStであるが、好ましくは5〜200cSt、更に好ましくは10〜50cStである。動粘度が1cStより小さい場合、成形時のガス発生量が多くなり、ガスによる成形不良、例えば、未充填、ガスやけ、転写不良を発生する可能性がある。一方、動粘度が1000cStを超える場合、芳香族ポリカーボネートの色相および透過率を向上させる効果が充分に得られない。
【0019】
また、本発明で使用するポリオルガノシロキサンとしては、上述したように、少なくとも側鎖にフェニル基を有することが必要であり、好ましくは分岐シロキサン構造を有するものが選択されるが、その中でも、ポリカーボネートの透明性を阻害しない範囲で屈折率の低いものが最も好ましい。これは、本発明の用途である光拡散性部材を高透過率にするために、効果的である。
【0020】
本発明において、上記のポリオルガノシロキサンは、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜2重量部、好ましくは0.02〜1重量部、更に好ましくは0.04〜0.7重量部である。ポリオルガノシロキサンの使用割合が0.01重量部未満の場合は、芳香族ポリカーボネート樹脂の透過率および色相を向上させる効果が充分に得られず、使用割合が2重量部を超える場合は、芳香族ポリカーボネート樹脂の色相、透過率は良好であるが、ガスによる成形不良、例えば、未充填、ガスやけ、転写不良を発生する。
【0021】
本発明に使用するアクリル系光拡散微粒子は、重量平均径0.7〜30μmの微粒子であり、好ましくはポリカーボネート樹脂との屈折率差(Δn)が0.05以上、かつポリカーボネート樹脂と非相溶性の粒子状アクリル樹脂である。
該光拡散微粒子の重量平均径の測定は、例えば、コールター法(Coulter Multisizer)により行う。該粒子径が0.7μm未満の光拡散微粒子を配合すると、得られた樹脂組成物の光拡散性が劣り、光源が透けて見えたり、視認性に劣ったりする。逆に、粒子径が30μmを越える光拡散微粒子は、添加量に対する拡散効果が低い。該アクリル系光拡散微粒子の重量平均径としては、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μmの範囲である。
また、屈折率とは、温度25℃における、d線(587.562nm,He)の光に対する値で、実際の測定は、ポリカーボネートの屈折率(npc)は、Vブロック法(カルニュー光学製、形式KPR)により、光拡散微粒子の屈折率(nld)は、ベッケ法(標準溶液と比較する方法)により行う。本発明において好ましく使用されるビスフェノールAを原料とするポリカーボネート樹脂の屈折率は約1.58であるので、これとの差を考慮して、最適な屈折率を有するアクリル系拡散微粒子を選択するのが良い。ポリカーボネート樹脂と光拡散微粒子との屈折率差(Δn=npc−nld)は、好ましくは0.07以上である。ポリカーボネート樹脂との屈折率差が0.05未満であると、光拡散性が劣り、光源が透けて見えて、視認性に劣ることがあるので好ましくない。
【0022】
本発明に使用する粒子状アクリル樹脂は、架橋剤の存在下に(メタ)アクリル酸エステル系単量体を水系懸濁重合、乳化重合、シード重合または分散重合することにより製造できる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル等のメタクリル酸エステル類等が挙げられ、中でもエステル部分の炭素数が1〜8のアクリル酸エステル類が好ましい。これらの単量体はそれぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて用いてもよく、アクリル酸エステル類が全単量体中に50〜95%の割合で含有されているのが好ましい。また、単量体には、(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共重合可能な単量体を加えてもよく、そのような単量体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、酢酸ビニル等のビニル基を有する単量体が挙げられる。架橋剤としての架橋性単量体は、特に限定されず、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンのように1分子内に2つ以上のビニル基を有する単量体を挙げることができる。これらの架橋性単量体は単独で、または2種類以上を組み合わせて用いてもよく、その使用割合は、全単量体に対して5〜50重量%程度が好ましい。
【0023】
本発明の光拡散性樹脂組成物には、必要に応じて例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、白色系あるいは青色系の蛍光染料、離型剤、帯電防止剤、着色剤、熱安定剤、流動性改良剤、難燃剤、凝集防止剤等を添加してもよい。中でも、紫外線吸収剤、酸化防止剤、白色系あるいは青色系の蛍光染料、熱安定剤、難燃剤から少なくとも一種を使用するのが良い。
【0024】
紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤などが挙げられる。具体例としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、プロパネヂオイックアシッド[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ジメチルエステル等が挙げられる。
本発明においては、得られる光拡散性樹脂組成物、並びに光拡散性部材の着色を防ぐために、波長380nm〜400nmの透過率が小さい紫外線吸収剤を使用するのが好ましく、中でもマロン酸エステル系紫外線吸収剤が好ましく用いられる。マロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類が挙げられ、これはクラリアントジャパン(株)から、PR−25、B−CAPの商品名で市販されている。該紫外線吸収剤の使用量は、樹脂組成物中、0.05〜5重量%の範囲が好ましい。
【0025】
また、酸化防止剤の例としては、熱可塑性樹脂用として公知のものを目的に応じて選択すれば良いが、リン系、フェノール系などが好ましく、これらを併用しても良い。中でもリン系が好ましく、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(例えば、旭電化工業(株)製品、商品名:アデカスタブ2112として市販されている)等が好ましい。該酸化防止剤の使用量は樹脂組成物中、0.01〜2重量%の範囲が好ましい。
【0026】
また、白色系もしくは青色系の蛍光染料の例としては、熱可塑性樹脂用として公知の蛍光増白剤を使用可能であるが、中でも高分子量のものが好ましく、例えば、スチルベンベンゾオキサゾール系、フェニルアリルトリアゾリルクマリン系の蛍光増白剤が挙げられる。また有機EL用として公知の白色有機発光体や青色有機発光体が使用可能であり、例えば、ジスチリルビフェニル系青色発光材、アリールエチニルベンゼン系青色蛍光発光材、キンキピリジン系発光材、セキシフェニル系青色発光材、ジメシチルボリルアントラセン系発光材、キナクリドン系発光材等が上げられる。該蛍光染料の使用量は、樹脂組成物中0.0001〜0.1重量%の範囲が好ましい。
なお、白色度を高めるために、更に酸化チタン等の白色顔料を添加してもよい。
【0027】
本発明に関わる光拡散板用樹脂組成物の混合及び混練は、通常の熱可塑性樹脂に適用される方法で行えばよく、例えばリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリユー押出機、多軸スクリュー押出機等により行うことができる。混練の温度条件は通常、260〜300℃が適当である。
【0028】
本発明の光拡散性樹脂組成物を用いた成形は、一般的な熱可塑性樹脂の成形方法が用いることができるが、例えば生産性の点からペレット状樹脂組成物からの射出成形、射出圧縮成形、押出成形が可能で、さらに押出成形されたシート状成形品からの真空成形、圧空成形等を行い、目的の光拡散性部材とすることもできる。
本発明の光拡散性部材としては、照明カバー、照明看板、透過形のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シートや光拡散板が挙げられ、中でも液晶表示装置に用の光拡散シートや光拡散板として、特には、大型液晶テレビ用拡散板として、好適に用いることができる。
また、本発明の光拡散性部材には、光拡散性を上げるために、公知の方法でエンボス加工、V溝加工、畝状加工等の表面に凹凸加工を施しても良い。これらの加工を施すことにより、光拡散性を保持したまま、光拡散微粒子の添加量を減らすことができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の諸例で使用した原料および評価方法は次の通りである。なお、表1中の「商品名および内容」の欄に記載した記号「M」は粘度平均分子量、「n」は重合度を意味する。
【0030】
【表1】

【0031】
(1)粘度平均分子量:
ウベローデ粘度計を用いて塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式より求めた。
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83
(2)色相(YI)及び全光線透過率、ヘイズ:
射出成形機(日本製鋼所社製「J50」)により、300℃の温度で成形したプレート(90mm×50mm×3mm厚)について上記の各測定を行なった。YIの測定には分光式色彩計(日本電色工業社製「SE−2000型」)、全光線透過率、およびヘイズの測定には濁度計(日本電色工業社製「NDH−2000型」)を使用した。
(3)拡散率の測定
上記成形プレートについて測定を行った。拡散率は、以下の色により求めた。輝度値の測定はMURAKAMI COLOR RESEARCH LABORATORY社製のGP−5 GONIOPHOTOMETERを使用した。測定条件は、入射光0°、あおり角0°、受光範囲0°〜90°、光束絞り2.0、受光絞り3.0で行った。
(4)UV照射
前述の成形プレートについて、耐光性評価を行った。照射装置は、スガ試験機社製Super Xenon Weather Meterを用い、照射強度は156W/m、照射時間600時間とした。
拡散率(%)={(20°の輝度値+70°の輝度値)/(5°の輝度値×2)}×100
【0032】
実施例1〜11及び比較例1〜5
表2及び表3に示す割合で各原料をブレンドした後、スクリュー径40mmのベント付単軸押出機(田辺プラスチックス機械社製「VS−40」)により、シリンダー温度250℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得、得られたペレットを120℃で5〜7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、前記の条件で評価用成形品を成形した。そして、前記の評価を行ない、その結果を表2及び表3に示した。
【0033】
【表2】



















【0034】
【表3】

【0035】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、少なくとも側鎖にフェニル基を有し、かつ25℃における粘度が1〜1000cStのポリオルガノシロキサンを0.01〜2重量部、および、重量平均径0.7〜30μmのアクリル系拡散微粒子を0.1〜20重量部含有して成ることを特徴とする光拡散性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオルガノシロキサンが、分岐シロキサン構造を有するポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリオルガノシロキサンが、下記一般式(1)で示される構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の光拡散性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基から選ばれた基であり、Rはフェニル基を示す。mは1以上、nは0以上の整数を示す。)
【請求項4】
アクリル系拡散微粒子が、ポリカーボネート樹脂との屈折率差(Δn)が0.05以上、かつポリカーボネート樹脂と非相溶性の粒子状アクリル樹脂である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項5】
ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、マロン酸エステル系紫外線吸収剤0.05〜5重量部を含有してなる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光拡散性樹脂組成物を用いた光拡散性部材。

【公開番号】特開2006−63122(P2006−63122A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244723(P2004−244723)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】