説明

光拡散性樹脂組成物および光拡散板

【課題】 物性、成形安定性、取り扱い性に優れた光拡散性樹脂組成物、並びに当該組成物から得られる光拡散版を提供する。
【解決手段】 体積平均粒子径が0.8〜25μmであるラテックス状態のポリオルガノシロキサン(a)30〜95重量部の存在下に、重合性不飽和結合を2以上含む多官能性単量体(b−1)100〜50重量%およびその他の共重合可能な単量体(b−2)0〜50重量%からなるビニル系単量体(b)0〜20重量部を重合し、さらにビニル系単量体(c)5〜70重量部(ただし、(a)、(b)、(c)の合計は100重量部)を1段以上重合することにより得られるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)、並びに熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の透明樹脂(B)を含有することを特徴とする光拡散性樹脂組成物、該組成物から得られる光拡散板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プロジェクションテレビ用透過型スクリーン、液晶バックライト用光拡散板あるいは照明カバー、照明看板等に使用されうる光拡散板等に好適な光拡散性樹脂組成物、並びに該組成物から得られる光拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクションテレビジョン、液晶表示装置、照明カバー等において、光拡散性を得るために、透明樹脂中に、当該透明樹脂とは屈折率の異なる無機系若しくは有機系の微粒子を分散させたものが、光拡散性樹脂組成物として従来より広く使用されている。
【0003】
例えば、この様な用途で使用される無機系微粒子としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石英等の無機系微粒子、有機系微粒子としては、架橋構造を有するアクリル系、スチレン系、シリコン系の樹脂の微粒子等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、一般に、従来から使用されている前記無機系微粒子や架橋構造を有する有機系微粒子を光拡散剤として透明樹脂に配合した場合、光拡散性樹脂組成物の衝撃強度が低下する場合があった。このため、限られた用途でしか使用できないという問題があった。
【0005】
これに対し、微粒子をマトリックス重合体に分散させた際のマトリックス重合体の物理的強度の低下を抑制することを目的に、芯/外殻重合体からなる高分子微粒子であって、芯は炭素数が2〜8個のアルキル基を有するゴム状のアルキルアクリレートからなり、外殻はマトリックス重合体と混和性があって当該微粒子中に約5〜40重量%存在することを特徴とするアクリル系の高分子微粒子が開示されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。しかし、これらアクリル系の高分子微粒子は、従来の無機系微粒子と比較すると耐熱性が劣るという問題があった。
【0006】
前記問題を解決するために、二官能シロキサン単位及び三官能シロキサン単位からなる骨格の表面に有機官能基を有する0.5〜10μmのシリコーン樹脂を含有する光拡散樹脂組成物が開示されている(特許文献4)。しかし、これも表面に有機官能基が導入されているものの、マトリックスとなる透明性樹脂との親和性が充分ではなく、そのため衝撃強度が低く、また透明樹脂と溶融混練して成形する押出成形や射出成形において親和性が低いことから、不安定な成形状態、不均質な成形物となりやすい問題があった。さらに、体積平均粒子径が通常10μm未満と微粉末のため、製品の粉体特性が劣る場合が多く、このため取扱性に劣り、粉立ちが激しく、作業環境が悪化、あるいは粉塵爆発の危険を招く場合があるなどの問題があった。
【特許文献1】特開昭63−137911号公報
【特許文献2】特開平2−311685号公報
【特許文献3】特開平7−238200号公報
【特許文献4】特開平6−299035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術が有する上記問題点を解決し、物性、成形安定性、取り扱い性に優れた光拡散性樹脂組成物、並びに当該組成物から得られる光拡散版を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、耐衝撃性、耐熱性、成形安定性に優れた光拡散性樹脂組成物を提供するために検討を重ねた結果、特定のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を透明樹脂に配合することによって、前述の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、体積平均粒子径が0.8〜25μmであるラテックス状態のポリオルガノシロキサン(a)30〜95重量部の存在下に、重合性不飽和結合を2以上含む多官能性単量体(b−1)100〜50重量%およびその他の共重合可能な単量体(b−2)0〜50重量%からなるビニル系単量体(b)0〜20重量部を重合し、さらにビニル系単量体(c)5〜70重量部(ただし、(a)、(b)、(c)の合計は100重量部)を1段以上重合することにより得られるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)、並びに熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の透明樹脂(B)を含有することを特徴とする、光拡散性樹脂組成物に関する。
【0010】
好ましい実施態様は、前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)が、ポリオルガノシロキサン(a)30〜95重量部の存在下に、重合性不飽和結合を2以上含む多官能性単量体(b−1)100〜50重量%およびその他の共重合可能な単量体(b−2)0〜50重量%からなるビニル系単量体(b)0.5〜10重量部を重合し、さらにビニル系単量体(c)4.5〜69.5重量部(ただし、(a)、(b)、(c)の合計は100重量部)を1段以上重合することにより得られることを特徴とする、前記の光拡散性樹脂組成物に関する。
【0011】
好ましい実施態様は、前記ポリオルガノシロキサン(a)が、水酸基、アミノ基および加水分解性基から選択される末端基を有する直鎖状若しくは分岐鎖状シロキサンを重合することにより得られたものであることを特徴とする、前記いずれかの光拡散性樹脂組成物に関する。
【0012】
好ましい実施態様は、ビニル系単量体(b)および/またはビニル系単量体(c)の重合を乳化重合で実施することを特徴とする、前記いずれかの光拡散性樹脂組成物に関する。
【0013】
好ましい実施態様は、前記ビニル系単量体(c)が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体および塩化ビニルから選ばれる1種または2種以上の単官能性単量体50〜100重量%、並びに重合性不飽和結合を2以上含む1種または2種以上の多官能性単量体0〜50重量%からなることを特徴とする、前記いずれかの光拡散性樹脂組成物に関する。
【0014】
好ましい実施態様は、前記透明樹脂(B)100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)0.01〜500重量部を含有することを特徴とする、前記いずれかの光拡散性樹脂組成物に関する。
【0015】
好ましい実施態様は、前記透明樹脂(B)が、その厚さ2mmの成形体の全光線透過率が50%以上であることを特徴とする、前記いずれかの光拡散性樹脂組成物に関する。
【0016】
本発明は、前記いずれかの光拡散性樹脂組成物から得られる光拡散板に関する。
【0017】
好ましい実施態様は、全光線透過率が10%以上、ヘイズが40%以上であることを特徴とする、前記の光拡散板に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐衝撃性、耐熱性、成形安定性に優れた光拡散性樹脂組成物を提供することができる。この光拡散性樹脂組成物は、例えば、プロジェクションテレビ用透過型スクリーン、液晶バックライト用光拡散板、あるいは照明カバー、照明看板等に使用される光拡散板等に好適に用いられうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、特定のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)および透明樹脂(B)を含有する光拡散性樹脂組成物、並びに当該樹脂組成物から得られる光拡散板に関するものである。
【0020】
本発明において、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の製造に用いられうるポリオルガノシロキサン(a)については、その体積平均粒子径が0.8〜25μmであるポリオルガノシロキサンである限り特に制限されず、例えば、環状、直鎖状または分岐鎖状のオルガノシロキサンを、酸、アルカリ、塩、フッ素化合物などの触媒を用いて重合する公知の方法により得ることができる。
【0021】
中でも、ポリオルガノシロキサン(a)の体積平均粒子径を目的範囲に制御する観点からは、水酸基、アミノ基、加水分解性基から選択される末端基を有する直鎖状または分岐鎖状シロキサンを重合することによりポリオルガノシロキサン(a)のラテックスを得ることが好ましい。前記により、ラテックス状態のポリオルガノシロキサン(a)を得る方法は、例えば、特開2001−288269号公報、特開平11−222554号公報などに開示されている。一方、環状オルガノシロキサンを開環、縮合重合することにより得ることもできるが、環状オルガノシロキサンは重合時に乳化分散させた油滴の粒子径を保つことが困難である傾向があり、体積平均粒子径を0.8〜25μmの範囲に制御しにくい場合がある。このため、ラテックス状態のポリオルガノシロキサン(a)は、直鎖状または分岐鎖状のシロキサンを用いて、重合することにより得ることがより好ましい。
【0022】
前記ポリオルガノシロキサン(a)は、例えば、末端がヒドロキシル基、アミノ基、または加水分解性基であり、必要に応じてメルカプトプロピル基、メタクリロイルオキシプロピル基、アクリロイルオキシプロピル基、ビニル基、ビニルフェニル基、アリル基などのラジカル反応性基などで部分置換された変性若しくは非変性の直鎖状または分岐鎖状オルガノシロキサンを、必要に応じて公知のグラフト交叉剤等と混合し、これに水、乳化剤などを加え、次いで機械剪断により所望の粒子径になるよう強制乳化し、水中に乳化分散して酸性状態にすることで重合を行って得ることができる。
【0023】
前記の機械剪断により乳化分散を実施する装置としては、剪断の強さを調節可能な乳化分散装置であれば特に制限なく使用できる。このような乳化分散装置としては、例えば、ホモミキサー、遠心ポンプ、高圧ホモジナイザー、あるいは超音波分散装置等の公知の乳化分散装置を好適に用いることができる。
【0024】
上記方法においては、前記の乳化分散時における分散滴の粒子径が前記ポリオルガノシロキサン(a)の平均粒子径をほぼ決定することから、乳化液の分散滴の体積平均粒子径が0.8〜25μmになるように、使用するシロキサン、水、乳化剤の量、並びに機械剪断の強さを調節するのが好ましい。
【0025】
本発明に用いることのできる水酸基、アミノ基、加水分解性基から選択される末端基を有する直鎖状または分岐鎖状シロキサンは、揮発性の低分子量シロキサンの含有量が5重量%以下であることが好ましく、更には1重量%以下であることがより好ましい。前記直鎖状または分岐鎖状シロキサンにおいて、低分子量シロキサンの含有量が多い場合は、重合後の低分子量シロキサンの含有量が多くなる傾向がある。さらに、前記直鎖状または分岐鎖状シロキサンの重量平均分子量は、500〜100,000のものを使用することが好ましい。前記シロキサンの重量平均分子量が500未満の場合、若しくは100,000を超える場合は、機械剪断による乳化分散で体積平均粒子径が0.8〜25μmの乳化液を安定的に得ることが困難になる傾向がある。さらに、高圧ホモジナイザーや超音波分散装置などを用いずに、ホモミキサー、遠心ポンプ等を用いることで所望の平均粒子径のものが得られるという点から、前記直鎖状または分岐鎖状シロキサンの重量平均分子量は、より好ましくは1,000〜10,000であり、さらに好ましくは2,000〜6,000のものを用いることができる。なお、前記直鎖状または分岐鎖状シロキサンの末端の加水分解性基としては、アルコキシル基、アシロキシ基、ケトオキシム基、アルケノキシ基、アミド基、アミノキシ基などをあげることができる。
【0026】
本発明に用いることのできるポリオルガノシロキサン(a)の重合においては、必要に応じてラジカル反応性基を有するシランなどのグラフト交叉剤を使用し、さらに必要に応じて架橋剤も使用することができる。
【0027】
前記グラフト交叉剤については、公知のものを用いることができるが、好ましくは2官能のビニル系重合性基含有シラン化合物が用いられうる。3官能以上のビニル系重合性基含有シラン化合物を用いた場合には、本発明の樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性が低下する場合があるため、2官能のビニル系重合性基含有シラン化合物の方がより好適である。前記グラフト交叉剤の具体例としては、例えば、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等があげられる。これらグラフト交叉剤は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して使用することもできる。前記グラフト交叉剤の使用割合は、ポリオルガノシロキサン量に対して0.1〜10重量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜7重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。グラフト交叉剤の使用量が10重量%を超えると最終成形体の耐衝撃性が低下する場合があり、グラフト交叉剤の使用量が0.1重量%未満だと成形体の光拡散性が低下するとともに、最終成形体の成形性が低下する場合がある。
【0028】
本発明に用いるポリオルガノシロキサン(a)の製造の際に、必要なら架橋剤を使用することもできる。前記架橋剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランなどの3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン、1,3ビス〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1−〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕−3−〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1−〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕−4−〔2−ジメトキシメチルシリル〕エチル〕ベンゼンなどの4官能性架橋剤を挙げることができる。これら架橋剤は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。この架橋剤の使用量は、ポリオルガノシロキサン(a)量に対して10重量%以下が好ましく、更には3.0重量%以下がより好ましい。架橋剤の使用量が10重量%を超えると、ポリオルガノシロキサン(a)の柔軟性が損なわれるため、最終成形体の耐衝撃性が低下する場合がある。
【0029】
前記ポリオルガノシロキサン(a)の重合においては、酸性状態下で重合する場合には、酸性条件下においても乳化状能を失わない乳化剤を用いることが好ましい。具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、(ジ)アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウムなどをあげることができる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、(ジ)アルキルスルホコハク酸ナトリウムが、エマルジョンの乳化安定性が比較的高いことから、より好ましい。さらに、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルスルホン酸は、ポリオルガノシロキサン形成成分の重合触媒としても作用する点からも好ましい。
【0030】
また、ポリオキシエチレンドデシルエーテルに代表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルに代表されるポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルに代表されるポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、ソルビタンモノラウリン酸エステルなどのノニオン系乳化剤を用いることもできる。これらは、前記乳化剤と併用することもできる。
【0031】
前記酸性状態は、系に硫酸や塩酸などの無機酸、或いはアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸を添加することで調整することができる。系のpHは、生産設備を腐食させないことや適度な重合速度がえられるという点から、1〜3に調整することが好ましく、さらには1.0〜2.5に調整することがより好ましい。重合温度は適度な重合速度が得られるという点で0〜100℃が好ましい。特に、前記ポリオルガノシロキサン(a)が、水酸基、アミノ基および加水分解性基から選択される末端基を有する直鎖状若しくは分岐鎖状シロキサンを重合して得られる場合は、適度な重合速度が得られ、さらに揮発性のシロキサン量を少なくするという点で0〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜30℃である。重合温度が0℃よりも低い場合は凍結により乳化液の安定性が低下し、50℃よりも高くなると揮発性シロキサンが増加する傾向がある。
【0032】
前記酸性条件下におけるポリオルガノシロキサンの生成反応は平衡反応であるため、酸性条件下での重合が終了した後には、必要に応じて室温付近で数時間以上熟成してポリオルガノシロキサンを高分子量化した後に、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液を添加して系のpHが5〜8になるように中和することにより重合を停止させ、シロキサン鎖を安定化させることが好ましい。
【0033】
同様にポリオルガノシロキサン(a)の製造において塩基性重合条件を用いる場合には、乳化剤としては塩基性でも界面活性能が発揮されうる乳化剤を用いることが好ましい。その様な乳化剤としては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイドなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイドなどのジアルキルジメチルアンモニウム塩、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどのアルキルアラルキルアンモニウム塩などのカチオン系乳化剤をあげることができる。また、前述のごときノニオン系乳化剤を用いることもできる。これらは、前記カチオン系乳化剤等と併用することもできる。
【0034】
塩基性条件にするための塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムなどの無機塩基、アルキルアンモニウムヒドロキサイドなどの有機塩基を用いることができる。例えば、特開2001−106787号公報に記載のセチルトリメチルアンモニウムヒドロキサイドなどのテトラオルガノアンモニウムヒドロキサイドは、カチオン系乳化剤と塩基の両方の機能を有し、場合によってはそれのみの使用で済む場合があることから、好ましく用いられる。しかしこれに限定するものではなく、前記の塩基、乳化剤はそれぞれ単一、複数成分の組み合わせのいずれであっても良い。塩基性条件下で重合が終了した後は、必要に応じて熟成し、硫酸などの無機酸、または酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸などで系を前述同様に中和することによりシロキサンの重合を停止することができる。
【0035】
ポリオルガノシロキサン(a)粒子の体積平均粒子径は0.8〜25μmであることが好ましいが、中でも1〜20μmがより好ましく、さらには2〜10μmであることが特に好ましい。ポリオルガノシロキサン(a)の体積平均粒子径が0.8μm未満の場合は、粒子表面積の相対的な増加に伴って光の反射面が相対的に増加することにより、光拡散板の光透過性が低くなりやすい傾向がある。逆にポリオルガノシロキサン(a)の体積平均粒子径が25μmを超える場合は、ポリオルガノシロキサン(a)を製造する際にスケールが発生するなど重合が不安定化する場合があり、また光拡散性能が低下するとともに、得られる成形体の衝撃強度も低下する傾向がある。さらに、光拡散板の表面外観を悪化させる場合がある。なお、ポリオルガノシロキサン(a)の体積平均粒子径は、例えば、マイクロトラック粒度分析計Model9220FRA(日機装(株)製)を用いて測定することができる。
【0036】
本発明のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の製造に用いるビニル系単量体(c)は、本発明のポリオルガノシロキサン系共重合体(A)とマトリックス樹脂となる透明樹脂(B)の相溶性を確保するために用いられうる成分である。ビニル系単量体(c)は1段で重合しても2段以上で重合してもかまわない。また、ビニル系単量体(c)は単一化合物でも2以上の化合物の混合物であってもかまわない。
【0037】
ビニル系単量体(c)として用いることのできる単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等に代表されるような(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン等に代表されるような芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等に代表されるようなシアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸等に代表されるようなカルボキシル基含有ビニル系単量体、酢酸ビニル、塩化ビニルに例示されうる単官能性単量体、或いは(メタ)アクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、イタコン酸ジアリル、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等に代表されるような分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能性単量体、更にはこれらの混合物などが挙げられる。なお、本発明においては、特に断らない限り、例えば(メタ)アクリルとはアクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0038】
中でも、本発明のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)とマトリックスとなる透明樹脂(B)との親和性の観点から、ビニル系単量体(c)として、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、及び塩化ビニルから選ばれる1種または2種以上の単官能性単量体50〜100重量%、並びに重合性不飽和結合を2以上含む1種または2種以上の多官能性単量体0〜50重量%からなることが好ましい。さらには、前記ビニル系単量体(c)は、前記の単官能性単量体からなり、前記多官能性単量体を含まない方がより好ましい。
【0039】
前記ビニル系単量体(c)の重合に際しては、公知の連鎖移動剤を適宜、併用して使用することもできる。具体的な連鎖移動剤としては、α−ピネン、ターピノーレン、リモネンなどの不飽和テルペン類、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのメルカプタン類などが例示されうる。中でも前記メルカプタン類が好ましく用いられうる。さらに臭気のないポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体もしくは樹脂組成物が得られることから、2−エチルヘキシルチオグリコレートが最も好ましく用いられうる。
【0040】
前記連鎖移動剤のビニル系単量体(c)に対する使用量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらには2重量%以下である。10重量%を超えての連鎖移動剤の使用は、ビニル系単量体(c)から生成する重合体のグラフト効率が低下する傾向が見られる場合がある。
【0041】
前記ビニル系単量体(c)の重合は、乳化重合法により実施することが好ましい。乳化重合法を採用する場合には、公知の重合開始剤、すなわち2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどを熱分解型重合開始剤として用いることができる。また、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキサイドなどの有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物といった過酸化物と、必要に応じてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤、および必要に応じて硫酸鉄(II)などの遷移金属塩、さらに必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物などを併用したレドックス型重合開始剤として使用することもできる。
【0042】
レドックス型重合開始剤系を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができることから、重合温度を広い範囲で設定できるようになり好ましい。中でもクメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの芳香族環含有過酸化物をレドックス型重合開始剤として用いることが好ましい。前記重合開始剤の使用量、またレドックス型重合開始剤を用いる場合の前記還元剤・遷移金属塩・キレート剤などの使用量は、公知の範囲で用いることができる。
【0043】
また、乳化重合中に、必要に応じて追加的に乳化剤を添加することができるが、これも公知の範囲で用いることができる。
【0044】
前記乳化重合に際しての重合温度、圧力、脱酸素などの諸条件は、公知の範囲のものが適用できる。また、前記ビニル系単量体(c)の重合は1段で行なっても2段以上で行なっても良い。ポリオルガノシロキサン(a)、若しくはポリオルガノシロキサン(a)の存在下に後述のビニル系単量体(b)を重合したエマルジョンに、前記のビニル系単量体(c)を一度に添加する方法、連続追加する方法、若しくは予めビニル系単量体(c)を含む単量体が仕込まれた反応器に、ポリオルガノシロキサン(a)若しくはポリオルガノシロキサン(a)の存在下に後述のビニル系単量体(b)を重合したエマルジョンを加えてから重合を実施する方法などを適宜採用することができる。
【0045】
本発明のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の製造においては、ラテックス状態のポリオルガノシロキサン(a)の存在下に、必要に応じて、重合性不飽和結合を2以上含む多官能性単量体(b−1)100〜50重量%およびその他の共重合可能な単量体(b−2)0〜50重量%からなるビニル系単量体(b)を重合し、その後、前記のビニル系単量体(c)を重合することができる。
【0046】
本発明のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の製造に用いることのできるビニル系単量体(b)は、分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む多官能性単量体(b−1)およびその他の共重合可能な単量体(b−2)からなるが、前記多官能性単量体(b−1)は100〜50重量%であることが好ましく、さらには100〜80重量%であることがより好ましい。一方、その他の共重合可能な単量体(b−2)は、0〜50重量%であることが好ましく、さらには0〜20重量%であることがより好ましい。
【0047】
前記多官能性単量体(b−1)の具体例としては、(メタ)アクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、フタル酸ジアリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、イタコン酸ジアリル、ジビニルベンゼン、などがあげられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、経済性および効果の点でとくに(メタ)アクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリルの使用が好ましい。
【0048】
前記その他の共重合可能な単量体(b−2)の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、パラブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の製造において、多官能性単量体(b−1)が主成分となるビニル系単量体(b)を用いると、その後、前記ビニル系単量体(c)を重合する際におけるポリオルガノシロキサン(a)へのグラフト効率を高めることができ、マトリックスとなる透明樹脂(B)との相溶性が高まると考えられる。これにより、成形安定性や最終成形体の光拡散性、耐衝撃性が向上する傾向がある。なお、ビニル系単量体(b)の重合は、前記ビニル系単量体(c)と同様に、乳化重合法により行うことが好ましい。
【0050】
本発明に係るポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)は、前記のポリオルガノシロキサン(a)30〜95重量部の存在下に、前記ビニル系単量体(b)0〜20重量部を重合し、さらに前記ビニル系単量体(c)5〜70重量部(ただし、(a)、(b)、(c)の合計は100重量部)を重合することにより得られるものが好ましく、更には、前記ポリオルガノシロキサン(a)30〜95重量部の存在下に、前記ビニル系単量体(b)0.5〜10重量部を重合し、さらに前記ビニル系単量体(c)4.5〜69.5重量部(ただし、(a)、(b)、(c)の合計は100重量部)を重合することにより得られるものがより好ましい。
【0051】
前記のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)100重量部におけるポリオルガノシロキサン(a)量は、30〜95重量部が好ましく、更には50〜90重量部であることがより好ましい。ポリオルガノシロキサン(a)量が、30重量部より少ない場合は、ポリオルガノシロキサン(a)の含有率が低過ぎるために、ポリオルガノシロキサンに由来の耐衝撃性、耐熱性を発現し難くなる場合がある。逆に、ポリオルガノシロキサン(a)が95重量部より多い場合は、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)とマトリックスとなる透明樹脂(B)との親和性が充分ではなく、これらを溶融混練して成形する押出成形や射出成形において、不安定な成形状態、不均質な成形物となりやすく、光拡散板の表面外観を悪化させる場合がある。
【0052】
前記のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)100重量部におけるビニル系単量体(c)量は、5〜70重量部が好ましく、更には10〜50重量であることがより好ましい。ビニル系単量体(c)量が70重量部より多い場合は、相対的にポリオルガノシロキサン(a)の含有率が低下するため、ポリオルガノシロキサンに由来の耐衝撃性、耐熱性を発現し難くなる場合がある。逆に、ビニル系単量体(c)量が5重量部より少ない場合は、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)とマトリックスとなる透明樹脂(B)との親和性が充分ではなく、これらを溶融混練して成形する押出成形や射出成形において、不安定な成形状態、不均質な成形物となりやすく、光拡散板の表面外観を悪化させる場合がある。
【0053】
前記のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)100重量部におけるビニル系単量体(b)量は0〜20重量部が好ましく、更には0.5〜10重量部がより好ましく、1〜5重量%が特に好ましい。ビニル系単量体(b)量が20重量部より多い場合は、最終成形体の耐衝撃性が低くなる場合がある。
【0054】
かくして乳化重合により本発明のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)を得た場合には、ラテックスに、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウムなどの二価以上の金属塩を添加することによりラテックスを凝固した後に、公知の方法に従って熱処理・脱水・洗浄・乾燥することにより、グラフト共重合体(A)を水性媒体から分離することができる(凝固法)。上記二価以上の金属塩としては、特に経済的に安価に入手でき、さらに取扱いやすい点から、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。さらに、環境への配慮から微量のハロゲンも含まないことが望まれる場合には、硫酸マグネシウムが好適に用いられうる。塩凝固の後の工程において、脱水前までにスラリーを好ましくは20倍、より好ましくは30倍、さらには50倍以上に希釈するか、脱水後の工程でグラフト共重合体(A)の固形分の好ましくは3倍、より好ましくは5倍、さらには10倍以上の溶剤、好ましくは環境負荷の観点から水を散布して洗浄することにより、透明樹脂(B)の成形時の焼けや分解などの問題を減少させることができる。
【0055】
あるいは、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール、アセトンなどの水溶性有機溶剤をラテックスに添加してグラフト共重合体(A)を析出させ、これを遠心脱水または濾過などにより溶剤と分離した後、乾燥させ、単離することもできる。別の方法として、本発明のグラフト共重合体(A)を含むラテックスにメチルエチルケトンなどの若干の水溶性を有する有機溶剤を加えてラテックス中の共重合体(A)を有機溶剤層に抽出し、有機溶剤層を分離した後、水と混合して共重合体成分を析出させる方法などを挙げることができる。
【0056】
また、ラテックスを噴霧乾燥法により直接粉体化することもできる。この場合、得られたグラフト共重合体(A)の粉体を前述の凝固法同様に溶剤で洗浄することにより、同様の効果を得ることができる。
【0057】
本発明に係る透明樹脂(B)として粉体状のものを用いる場合には、本発明のグラフト共重合体(A)を、体積平均粒子径が好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、さらには50μm以上、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、さらには200μm以下の粉体として回収することが好ましい。特に透明樹脂(B)の粉体の平均粒子径に近い、あるいは同様の体積平均粒子径であることが、分級しにくくなるので好ましい。前記グラフト共重合体(A)の粉体としては、本発明のグラフト共重合体(A)が緩やかに凝集した状態のものであることが、透明樹脂(B)中でグラフト共重合体(A)の一次粒子が容易に分散する観点から、好ましい。
【0058】
本発明のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)は、透明樹脂(B)と混ぜて成形加工、塗工等を実施することにより、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粒子単位の大きさに分散させることが可能である。また、得られた光拡散性樹脂組成物は、例えばプロジェクションテレビ用透過型スクリーン、液晶バックライト用光拡散板、あるいは照明カバー、照明看板等に使用される光拡散板等に好適に用いられうる。
【0059】
本発明における透明樹脂(B)としては、公知の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0060】
前記マトリックス樹脂となる透明樹脂(B)として用いることができる好ましい熱可塑性樹脂としては、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネートなどのポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂、ポリプロピレンなどの透明ポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、アセチルセルロースなどの透明セルロース樹脂などが挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上をブレンドして用いることができる。
【0061】
本発明に用いることができる塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体、又は塩化ビニルと共重合し得る二重結合を少なくとも1個有する他のビニル単量体と塩化ビニルとの共重合体、塩素化塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂を例示することができ、共重合体中の他のビニル単量体は好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下である。上記二重結合を少なくとも1個有する他のビニル単量体の例としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸およびそのエステル、マレイン酸およびそのエステル、塩化ビニリデン、臭化ビニルならびにアクリロニトリルなどが挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単独または塩化ビニルと前記他のビニル単量体とを、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で単独重合または共重合することによって得ることができる。この塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常400〜4500であり、特に400〜1500の範囲が好ましい。
【0062】
本発明において用いることができる芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれる1種以上のビニル単量体を重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂には、ジエン系単量体、オレフィン系単量体、マレイミド系単量体などが共重合されても良く、さらにそれらが水添されていても良い。かかるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、s−ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリクロルスチレン樹脂、ポリブロムスチレン樹脂、ポリα−メチルスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、スチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、スチレン−マレイミド共重合体樹脂、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂、スチレン−N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル共重合体樹脂、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体樹脂、メチルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体樹脂、スチレン−アクリロニトリル−α−メチルスチレン三元共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム−α−メチルスチレン共重合体樹脂、芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂等が挙げられる。
【0063】
本発明に用いることができるポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸またはジカルボン酸のアルキルエステルのような誘導体と、ジオールとの重縮合物によって得られたもの、あるいは一分子中にカルボン酸またはカルボン酸のアルキルエステルのような誘導体と水酸基をともに有する単量体を重縮合したもの、一分子中に環状エステル構造を有する単量体を開環重合したものが例示されうる。
【0064】
前記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。ジオールとしては、例えば、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどが挙げられる。一分子中にカルボン酸またはカルボン酸のアルキルエステルのような誘導体と水酸基をともに有する単量体としては、例えば、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸などのヒドロキシアルカン酸などが挙げられる。一分子中に環状エステル構造を有する単量体としては、例えば、カプロラクトンなどが挙げられる。
【0065】
ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリコハク酸ブチレン、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ(α−オキシ酸)およびこれらの共重合体、ならびにこれらのブレンド物が例示されうるが、本発明においてはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸が特に好ましい。
【0066】
本発明に用いることができるポリビニルアセタール樹脂とは、ポリビニルアルコールをアルデヒド類で変性したもので、ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラールなどを挙げることができる。
【0067】
本発明に用いることができる透明ポリオレフィン樹脂とは、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、シクロオレフィン重合体若しくは共重合体に代表されるオレフィンのみからの重合体だけでなく、オレィンと共重合性二重結合を少なくとも1個有する化合物との共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体も含まれる。前記オレフィンと共重合性を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸およびそのエステル、マレイン酸およびそのエステル、無水マレイン酸、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0068】
本発明に用いられうるポリカーボネート樹脂とは、二価フェノールとホスゲンまたはカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。二価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシアリール)アルカンが好ましく、例えばビス(ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。他の二価フェノールとしては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;1,1−ビスクレゾールフルオレン;1,1−ビスフェノキシエタノールフルオレンなどのフルオレン誘導体、フェニルビス(ヒドロキシフェニル)メタン;ジフェニルビス(ヒドロキシフェニル)メタン;1−フェニル−1,1―ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのフェニル基含有ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ハイドロキノン、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシンなどが挙げられる。これらの二価フェノールは、単独または混合して用いられうる。またこれらのうちで、ハロゲンを含まない二価フェノールが好ましく用いられうる。特に好ましく用いられる二価フェノールは、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンである。カーボネート前駆体としてはジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートなどを挙げることができる。これら芳香族系のポリカーボネート樹脂の他に、ポリエチレンカーボネートのような脂肪族ポリカーボネート樹脂も使用することができる。これらポリカーボネート樹脂は主鎖中にジメチルシロキサンが共重合されたものであってもかまわない。
【0069】
前記透明樹脂(B)として用いることができる好ましい熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0070】
本発明に用いることができるエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の、フェノール類、ビフェノール類或いはナフトール類をアルデヒド類と縮合して得られるノボラック樹脂をグリシジルエーテル化したノボラック型エポキシ樹脂、2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェノール或いは芳香核置換ビフェノール類或いはビスフェノールA、F、S、トリメチロールプロパン等の多価フェノール類または多価アルコール類のポリグリシジルエーテル或いはその縮合物、或いは1分子中にシクロオレフィンオキシド構造骨格を含有する脂環式エポキシ樹脂等、一般的に使用されうるエポキシ樹脂が幅広く使用可能である。
【0071】
これらのなかでも、ビフェノールまたは芳香核置換ビフェノールのジグリシジルエーテル或いはその縮合物、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエニル型エポキシ樹脂、1分子中にシクロオレフィンオキシド構造骨格を含有する脂環式エポキシ樹脂から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂を、熱硬化性樹脂の全量に対して50重量%以上含有することが好ましい。これらはフェノールノボラック等のフェノール樹脂、脂肪族アミン、芳香族アミン、あるいは酸無水物やブロック化カルボン酸等のカルボン酸誘導体などを用いて硬化することができる。この中では特に、得られる硬化物の耐熱性が高くなるという点より、フェノール樹脂を使用することがより好ましい。
【0072】
前記透明樹脂(B)として例示される樹脂の中でも、光透過性が優れている観点から、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体樹脂などの(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(ABS)樹脂、塩化ビニル系樹脂がより好ましい。上記透明樹脂(B)は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。しかしながら、複数の樹脂を組み合わせて使用すると、全光線透過率が低下することが多いので、単独で使用することが好ましい。
【0073】
本発明における透明樹脂(B)としては、透明性を有する公知の樹脂であれば特に制限されないが、本発明に係る光拡散性樹脂組成物から得られる光拡散板が優れた光拡散性能を発現できる観点から、透明樹脂(B)からなる厚さ2mmの成形体の全光線透過率が50%以上であるものが好ましく、更には60%以上、特には80%以上の全光線透過率を示すものがより好ましい。例えば、前記2mm厚の成形体は、プレス成形法、射出成形法、押出成形法などの公知の方法に従い得ることができる。例えば、射出成形法により得られた成形体について、市販の光線透過率測定装置を用いることにより全光線透過率を測定することができる。
【0074】
本発明の光拡散性樹脂組成物から得られる光拡散板は、例えば、透明樹脂(B)の製造に用いられる単量体、単量体混合物、または重合体と単量体との混合物(シラップ)等に、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)を混合分散し、鋳型中で重合させる鋳込み重合法や、透明樹脂(B)にポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)を混合分散し、得られた混合物を押出機等を用いてペレット化し、押出成形あるいは射出成形する方法、或いはポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)を分散させた透明樹脂(B)を、平板状あるいはフィルム状の樹脂の片方あるいは両方に均一に塗布する方法により、製造することが可能である。
【0075】
上記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の透明樹脂(B)に対する配合量は、光拡散板の用途により光拡散板に求められる特性が異なるため、一概にはいえないが、通常、透明樹脂(B)100重量部に対して、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)は0.01〜500重量部、好ましくは0.05〜300重量部の範囲で配合されるのが好ましい。
【0076】
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の最適な配合量は、透明樹脂(B)の特性(全光線透過率、屈折率等)とポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の特性(全光線透過率、屈折率、平均粒子径等)との関係で決定することができる。例えば、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)と透明樹脂(B)の屈折率の差が小さい場合には、透明樹脂(B)に対してポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)を多量に配合しなければ良好な光拡散性が得られず、またポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の平均粒子径が相対的に小さい場合には、透明樹脂(B)に対してポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の配合量を少なくしなければ良好な光透過性が得られ難い。逆に、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)と透明樹脂(B)の屈折率の差が大きい場合には、透明樹脂(B)に対してポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の配合量を少なくしなければ良好な光透過性が得られ難く、またポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の平均粒子径が相対的に大きい場合には、透明樹脂(B)に対してポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の配合量が過多であると光拡散板表面の良好な平滑性が得られない、光拡散性樹脂組成物の塗工が困難になるなどの現象が起こる場合がある。
【0077】
本発明の光拡散性樹脂組成物を用いて製造した光拡散板は、良好な光透過性、光拡散性を有している。光拡散板の厚さ、ポリオルガノシロキサン(a)の平均粒子径、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)と透明樹脂(B)の屈折率の差、光拡散板中におけるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)の含有量などによって変動するが、厚さ2mmの光拡散板の光透過性(全光線透過率)は10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上であり、光拡散性(ヘイズとも言う。)は40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは90%以上である。なお、前記の光透過性、光拡散性は、例えば、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業(株)製 NDH2000)を用いることにより、測定することができる。
【0078】
なお、本発明の光拡散性樹脂組成物中には、必要に応じて、例えば、可塑剤、硬化剤、分散剤、各種レべリング剤、紫外線吸収剤、粘性改質剤、滑剤、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、蛍光増白剤、蛍光染料、顔料、着色剤、酸化防止剤(例えば、イオウ含有分子、ホスファイト、ヒンダードフェノール、ハイポホスファイト、ホスホナイト等)や光安定化剤(紫外線安定剤等)などの安定剤、粘着性付与剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、加工助剤、充填剤(例えば、ガラス繊維等)、耐熱性付与剤等、通常光拡散板に配合する添加剤を適宜使用することができる。
【0079】
また、本発明の光拡散性樹脂組成物を構成する透明樹脂(B)とポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)は、光拡散板の特性を損なわないかぎり、どのような組み合わせで使用してもよい。
【0080】
この光拡散性樹脂組成物は、例えばプロジェクションテレビ用透過型スクリーン、液晶バックライト用光拡散板、あるいは照明カバー、照明看板等の光の拡散性を必要とする用途に幅広く使用することができる。
【実施例】
【0081】
次に具体的な実施例を挙げて説明するが、これらはいずれも例示的なものであり、本発明の内容を何ら限定するものではない。
【0082】
なお、体積平均粒子径の測定は、マイクロトラック粒度分析計Model9220FRA(日機装(株)製)により行った。
【0083】
光透過性は、JIS K7361−1に準じ、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業(株)製 NDH2000)を用いて全光線透過率を測定することにより評価した。
【0084】
光拡散性は、JIS K7136に準じ、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業(株)製NDH2000)を用いてヘイズを測定することにより評価した。
【0085】
Izod強度は、JIS K7110に準拠し、2号試験片(Aノッチ、幅b=6.4±0.3mm)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の状態で測定した。
【0086】
成形体の外観性は、光拡散板成形体のゲート部分に発生する表面荒れ部分の大きさで判定を行った。表面荒れ面積0.5cm2未満を○(優)、表面荒れ面積0.5〜1cm2を△(並)、表面荒れ面積1cm2以上を×(劣)とした。
【0087】
粉体特性は、作業時の取扱性により評価した。すなわち、光拡散性樹脂組成物を取扱う際に粉立ちがほとんどない場合は○(優)、激しい場合は×(劣)とした。
【0088】
(製造例1)
水100重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸1重量部、末端ヒドロキシオルガノポリシロキサン(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製 商品名:PRX413)100重量部、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(以下、DSMAともいう。)3重量部からなる混合液を、T.K.ロボミックスにより10,000rpmの回転数で5分間機械剪断を与え、O/W型のシロキサンエマルジョンを調製した。このシロキサンエマルジョンを速やかに撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えたフラスコに一括して仕込んだ。水150重量部を添加し、系を撹拌しながら、25℃で24時間反応させた。その後、系のpHを水酸化ナトリウムで6.8にして重合を終了させ、体積平均粒子径が6.1μmであるポリオルガノシロキサン重合体粒子を含むラテックス(SR)を得た。
【0089】
つづいて、ラテックスを純水で希釈し、固形分濃度を15重量%にしたのち、2.5重量%塩化カルシウム水溶液4重量部(固形分量)を添加して、凝固スラリーを得た。凝固スラリーを100℃まで加熱したのち、50℃まで冷却して脱水後、乾燥させて体積平均粒子径が60μmであるポリオルガノシロキサンの粉体(SR−1)を得た。
【0090】
(製造例2)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口および温度計を備えた5口フラスコに、製造例1で得たポリオルガノシロキサン粒子ラテックス(SR)を70重量部(固形分量)仕込み、撹拌しながら窒素気流下で60℃まで昇温した。60℃到達後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(以下、SFSとも言う。)0.39重量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(以下、EDTAとも言う。)0.004重量部、硫酸第一鉄0.001重量部を添加したのち、メタクリル酸アリル(以下、ALMAとも言う。)1.5重量部とクメンハイドロパーオキサイド0.04重量部を混合したのち一括で追加し、60℃で1時間撹拌を続けた。そののち、メタクリル酸メチル(以下、MMAとも言う。)28.5重量部とクメンハイドロパーオキサイド0.23重量部を混合したのち1.5時間かけて連続的に滴下追加し、追加終了後1時間撹拌を続けて、グラフト共重合体ラテックスを得た。
【0091】
つづいて、ラテックスを純水で希釈し、固形分濃度を15重量%にしたのち、2.5重量%塩化カルシウム水溶液4重量部(固形分量)を添加して、凝固スラリーを得た。凝固スラリーを100℃まで加熱したのち、50℃まで冷却して脱水後、乾燥させて体積平均粒子径が110μmであるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)を得た。
【0092】
(製造例3)
製造例2において、メタクリル酸アリルの重合を実施せず、メタクリル酸メチル(MMA)の重量部を30重量部に変更した以外は同様にして、体積平均粒子径が130μmであるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−2)を得た。
【0093】
(実施例1、2)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、パンライトL−1225WX、2mm厚の成形体の全光線透過率90.1%)100重量部に対して、製造例2で得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)を表1に示す添加部数(重量部)で配合した。得られた配合物をベント付単軸押出機(HW−40−28:40m/m、L/D=28、田端機械(株)製)を用い、設定温度C3=260℃で押出混練しペレット化した。得られたペレットを140℃で5時間以上乾燥したあと、射出成形機(160MSP−10型、三菱樹脂(株)製)を使用して、シリンダー温度C3=265℃、ノズル温度N=280℃で射出成形して厚み2mmの平板サンプルを得た。また同じペレット化、射出成形条件にてIzod強度測定用試験片を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0094】
(実施例3、4)
実施例1においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、製造例3で得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−2)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0095】
(比較例1、2)
実施例1においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、製造例1で得られたポリオルガノシロキサンの粉体(SR−1)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0096】
(比較例3、4)
実施例1においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、GE東芝シリコーン株式会社製のシリコーン系光拡散剤(架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子、トスパール2000B、平均粒子径4.0μm)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0097】
(比較例5、6)
実施例1においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、信越化学工業株式会社製のシリコーン系光拡散剤(架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子、X−52−1621、平均粒子径5.4μm)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0098】
(比較例7)
実施例1においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)を使用しないこと以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0099】
(実施例5)
ポリメチルメタクリレート樹脂(CYRO社製、アクリライトH−12、2mm厚の成形体の全光線透過率92.3%)100重量部に対して、酸化防止剤であるアデカスタブ2112(旭電化工業(株)製)を0.2重量部、製造例2で得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)を表1に示す添加部数で配合した。得られた配合物をベント付単軸押出機(HW−40−28:40m/m、L/D=28、田端機械(株)製)を用い、設定温度C3=200℃で押出混練しペレット化した。得られたペレットを90℃で4時間以上乾燥したあと、射出成形機(160MSP−10型、三菱樹脂(株)製)を使用してシリンダー温度C3=250℃、ノズル温度N=255℃で射出成形して厚み2mmの平板サンプルを得た。また、同じペレット化および射出成形条件にてIzod強度測定用試験片を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0100】
(実施例6)
実施例5においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、製造例3で得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−2)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0101】
(比較例8)
実施例5においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、製造例1で得られたポリオルガノシロキサンの粉体(SR−1)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0102】
(比較例9)
実施例5においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、GE東芝シリコーン株式会社製のシリコーン系光拡散剤(架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子、トスパール2000B、平均粒子径4.0μm)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0103】
(比較例10)
実施例5においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、信越化学工業株式会社製のシリコーン系光拡散剤(架橋ポリメチルシルセキオキサン粒子、X−52−1621、平均粒子径5.4μm)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0104】
(比較例11)
実施例5においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)を使用しないこと以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0105】
(実施例7)
メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂(新日鐵化学(株)製、エスチレンMS MS−600、2mm厚の成形体の全光線透過率91.3%)100重量部に対して、製造例2で得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)を表1に示す添加部数で配合した。得られた配合物をベント付単軸押出機(HW−40−28:40m/m、L/D=28、田端機械(株)製)を用い、設定温度C3=180℃で押出混練しペレット化した。得られたペレットを80℃で3時間以上乾燥したあと、射出成形機(160MSP−10型、三菱樹脂(株)製)を使用してシリンダー温度C3=220℃、ノズル温度N=225℃で射出成形して厚み2mmの平板サンプルを得た。また同じペレット化、射出成形条件にてIzod強度測定用試験片を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0106】
(実施例8)
実施例7においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、製造例3で得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−2)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0107】
(比較例12)
実施例7においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、製造例1で得られたポリオルガノシロキサンの粉体(SR−1)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0108】
(比較例13)
実施例7においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、GE東芝シリコーン株式会社製のシリコーン系光拡散剤(架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子、トスパール2000B、平均粒子径4.0μm)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0109】
(比較例14)
実施例7においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)の代わりに、信越化学工業株式会社製のシリコーン系光拡散剤(架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子、X−52−1621、平均粒子径5.4μm)を用いた以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0110】
(比較例15)
実施例7においてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の粉体(SG−1)を使用しないこと以外は同様にして成形品を得た。得られた成形品を評価し、その結果を表1に示した。
【0111】
【表1】

【0112】
表1より明らかなように、実施例は光透過性(全光線透過率)、光拡散性(ヘイズ)、Izod強度、成形体の外観、粉体特性が優れている。
【0113】
以上に示した通り、本発明は、物性、成形安定性、取り扱い性に優れた光拡散性樹脂組成物を提供することができる。この光拡散性樹脂組成物は、例えば、プロジェクションテレビ用透過型スクリーン、液晶バックライト用光拡散板、あるいは照明カバー、照明看板等に使用されうる光拡散板等に好適に用いられうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒子径が0.8〜25μmであるラテックス状態のポリオルガノシロキサン(a)30〜95重量部の存在下に、重合性不飽和結合を2以上含む多官能性単量体(b−1)100〜50重量%およびその他の共重合可能な単量体(b−2)0〜50重量%からなるビニル系単量体(b)0〜20重量部を重合し、さらにビニル系単量体(c)5〜70重量部(ただし、(a)、(b)、(c)の合計は100重量部)を1段以上重合することにより得られるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)、並びに熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の透明樹脂(B)を含有することを特徴とする、光拡散性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)が、ポリオルガノシロキサン(a)30〜95重量部の存在下に、重合性不飽和結合を2以上含む多官能性単量体(b−1)100〜50重量%およびその他の共重合可能な単量体(b−2)0〜50重量%からなるビニル系単量体(b)0.5〜10重量部を重合し、さらにビニル系単量体(c)4.5〜69.5重量部(ただし、(a)、(b)、(c)の合計は100重量部)を1段以上重合することにより得られることを特徴とする、請求項1に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサン(a)が、水酸基、アミノ基および加水分解性基から選択される末端基を有する直鎖状若しくは分岐鎖状シロキサンを重合することにより得られたものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項4】
ビニル系単量体(b)および/またはビニル系単量体(c)の重合を乳化重合で実施することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビニル系単量体(c)が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体および塩化ビニルから選ばれる1種または2種以上の単官能性単量体50〜100重量%、並びに重合性不飽和結合を2以上含む1種または2種以上の多官能性単量体0〜50重量%からなることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項6】
前記透明樹脂(B)100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(A)0.01〜500重量部を含有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項7】
前記透明樹脂(B)が、その厚さ2mmの成形体の全光線透過率が50%以上であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物から得られる光拡散板。
【請求項9】
全光線透過率が10%以上、ヘイズが40%以上であることを特徴とする、請求項8記載の光拡散板。

【公開番号】特開2007−297562(P2007−297562A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128859(P2006−128859)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】