説明

光拡散性粘着剤組成物、光拡散性粘着シート、偏光板及び液晶表示パネル

【課題】偏光板を液晶セルガラスに貼合するための粘着剤に微粒子を配合して光拡散性を付与するとともに、偏光板に適用したときに、粘着耐久性が良好であり、凹凸面を有するシート部材から発生するモアレを抑制し、画質に優れた液晶表示装置を与えることができる光拡散性粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】アクリル樹脂と球状微粒子を含有し;アクリル樹脂と球状微粒子の屈折率差が0.01を超え0.09未満の範囲にあり;アクリル樹脂は、重量平均分子量が50万〜200万の範囲にある高分子量アクリル樹脂と、重量平均分子量が千〜15万の範囲にある低分子量アクリル樹脂との混合物であり、その低分子量アクリル樹脂を5〜33重量%含有し;球状微粒子は、平均粒径が5〜15μmの範囲にあり、上記アクリル樹脂100重量部に対して20〜50重量部配合されている光拡散性粘着剤組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性粘着剤組成物及び光拡散性粘着シートに関し、詳しくは、偏光板に好適に用いられる光拡散性粘着剤組成物及び光拡散性粘着シートに関するものである。本発明はまた、この光拡散性粘着剤組成物を用いた粘着層付き偏光板及び液晶表示パネルにも関係している。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置を構成する部材として広く用いられている。液晶表示装置は、液晶テレビ、液晶モニタ、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータなどに用いられる薄型の表示装置として用途が急拡大している。
【0003】
通常の液晶表示装置は、冷陰極管やLEDを光源とするバックライト、一つ又は複数の拡散シート、集光シート、及び、液晶表示セルに偏光板が貼合されている液晶表示パネルを含んで構成される。近年、ノート型パーソナルコンピュータや液晶モニタにおいて、液晶表示装置の薄型化の要求が顕在化しており、それに対応して、使用する部材の薄肉化や部材点数の削減も求められている。
【0004】
例えば、特開平 11-295714号公報(特許文献1)には、偏光板の片面に集光性を有するプリズムシートを直接設け、そのプリズム面をバックライト(面光源装置)側に向ける技術が開示されている。特開 2005-17355 号公報(特許文献2)には、液晶表示装置の背面側に配置される偏光板のバックライト側表面に、集光性プリズム構造を有する保護フィルムを配置する構成が開示されている。さらに、特開 2008-262133号公報(特許文献3)には、バックライトを構成する導光板の光出射面にマイクロレンズフィルムをそのマイクロレンズ面が外側となるように積層し、一方で背面側偏光板にはマイクロプリズムフィルムを積層し、そのマイクロプリズム面(波型面)をマイクロレンズフィルムに対面させて配置する構成が開示されている。特許文献3には、液晶表示装置の背面側に配置される偏光板のバックライト側透明保護フィルムを、上記のマイクロプリズムフィルムで構成することも開示されている。このように、液晶表示装置から一つ又は複数の部材を省略し、部材点数を削減して液晶表示装置の薄型化を図ろうとする技術が盛んに提案されている。
【0005】
一方、偏光板を液晶セルに貼るための粘着剤(感圧接着剤ともいう)の分野において、粘着剤を構成するアクリル樹脂を、高分子量体と低分子量体の混合物とすることにより、浮きや剥がれ、白抜けなどを抑制することが知られている。例えば、特開 2004-2782号公報(特許文献4)には、反応性官能基を有し、重量平均分子量が90万〜250万の範囲にある高分子量アクリル樹脂と、重量平均分子量が5万〜20万の範囲にある低分子量アクリル樹脂との混合物に、架橋剤を配合して、偏光板用の感圧接着剤組成物とすることが開示されている。また、特開 2006-77224 号公報(特許文献5)には、重量平均分子量が5万〜50万の範囲にある低分子量アクリル樹脂と、極性官能基を有し、重量平均分子量が100万〜150万の範囲にあり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である分子量分布Mw/Mnを5以下と狭くした高分子量アクリル樹脂の混合物に、架橋剤を配合して、粘着剤とすることが開示されている。
【0006】
偏光板の表面に、このような粘着剤から形成される粘着層を設けて粘着層付き偏光板とし、その粘着層側で液晶セルガラスに貼着して液晶パネルとされる。この状態で高温又は高温高湿条件に置かれたり、加熱と冷却が繰り返されたりした場合に、偏光板の寸法変化に伴って、粘着層に発泡を生じたり、光学フィルムと粘着層の間、又は粘着層と液晶セルガラスの間に浮きや剥がれなどを生じたりすることがあるため、粘着層付き偏光板には、このような不具合を生じず、いわゆる粘着耐久性に優れることが求められる。また高温にさらされた場合に、偏光板に作用する残留応力の分布が不均一となり、偏光板の外周部に応力集中が起こる結果、黒表示時に外周部が白っぽくなる白抜けと呼ばれる現象を生じたり、色ムラを生じたりすることがあるため、このような白抜けや色ムラの抑制も求められる。さらに、粘着層付き偏光板を液晶セルに貼着する際、不備があった場合には、その偏光板を一旦剥がしてから再度新しい偏光板を貼り直すことになるが、その剥離のときに粘着層が偏光板に伴って引き剥がされ、セルガラス上に粘着剤が残らず、曇りなども生じないという、いわゆるリワーク性も求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−295714号公報
【特許文献2】特開2005−17355号公報
【特許文献3】特開2008−262133号公報
【特許文献4】特開2004−2782号公報
【特許文献5】特開2006−77224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、上記特許文献1〜3に開示されるような、マイクロプリズムシート等の凹凸面を有する部材を備える偏光板を用いた液晶表示装置においては、その表示にモアレを生じることがしばしばあった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、マイクロプリズムシート等の凹凸面を有する部材を備える偏光板を用いた液晶表示装置においても、モアレの発生を抑制することができるよう、偏光板を液晶セルガラスに貼着するための粘着剤に微粒子を配合して光拡散性を付与するとともに、偏光板に適用した場合に、粘着耐久性が良好であり、プリズムシート等の凹凸面を有するシート部材から発生するモアレを抑制し、画質に優れた液晶表示装置を与えることができる光拡散性粘着剤組成物を提供することにある。本発明はまた、その光拡散性粘着剤組成物を用いた光拡散性粘着シート、及び粘着層付き偏光板を提供すること、さらにはこの粘着層付き偏光板を液晶表示パネルに適用することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明によれば、アクリル樹脂と球状微粒子を含有し;上記アクリル樹脂と上記球状微粒子は、両者の屈折率差が0.01を超え、0.09未満の範囲にあり;上記アクリル樹脂は、重量平均分子量が50万〜200万の範囲にある高分子量アクリル樹脂と、重量平均分子量が千〜15万の範囲にある低分子量アクリル樹脂との混合物であり、その低分子量アクリル樹脂を5〜33重量%含有し;上記球状微粒子は、平均粒径が5〜15μm の範囲にあり、上記アクリル樹脂100重量部に対して20〜50重量部配合されている、光拡散性粘着剤組成物が提供される。
【0011】
この光拡散性粘着剤組成物において、上記の高分子量アクリル樹脂は、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を70〜99.8重量%、 及び架橋可能な極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を 0.2〜10重量%含有することが好ましい。上記の低分子量アクリル樹脂は、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を80〜100重量%含有することが好ましく、この場合は任意に、架橋可能な極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を0〜10重量%含有することができる。
【0012】
これらの光拡散性粘着剤組成物は、さらに架橋剤、好ましくはイソシアネート系架橋剤を含有することができ、また液晶セルガラスとの密着性を向上させるため、シラン系化合物を含有することができ、さらに帯電防止性を付与するためにイオン性化合物を含有することができる。
【0013】
これらいずれかの光拡散性粘着剤組成物からなる粘着層を基材フィルムに形成することにより、光拡散性粘着シートとすることができる。この光拡散性粘着シートにおいて、粘着層は、ヘーズが25〜50%の範囲となるようにすることが好ましく、また、暗部と明部の幅が0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度の合計値が150%以下となるようにすることが好ましい。
【0014】
上記いずれかの光拡散性粘着剤組成物から形成される光拡散性粘着層を偏光板の表面に設けることにより、光拡散性が付与された粘着層付き偏光板とすることができる。また、この粘着層付き偏光板をその光拡散性粘着層側で液晶セルガラスに貼着することにより、液晶表示パネルとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光拡散性粘着剤組成物は、それを偏光板に適用し、さらに液晶表示パネル又は液晶表示装置に適用した場合に、粘着耐久性が良好であり、モアレ等の表示不良を抑制することができ、表示品位に優れるものとなる。また、本発明によれば、粘着層に光拡散機能を付与しているので、偏光板、及びこれを適用した液晶表示パネルの薄肉化を達成することができる。この粘着層を有する偏光板が適用された液晶表示装置は、ノート型パーソナルコンピュータや液晶モニタなどに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る光拡散性粘着シートの好ましい一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る粘着層付き偏光板の好ましい一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る液晶表示パネルの好ましい一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
[光拡散性粘着剤組成物]
本発明では、アクリル樹脂に球状微粒子を配合して、光拡散性粘着剤組成物とする。このとき、アクリル樹脂と球状微粒子は、両者の屈折率差が0.01を超え、0.09未満の範囲となるようにする。またアクリル樹脂は、重量平均分子量が50万〜200万の範囲にある高分子量アクリル樹脂と、重量平均分子量が千〜15万の範囲にある低分子量アクリル樹脂との混合物で構成し、その低分子量アクリル樹脂が、アクリル樹脂の全体量を基準に5〜33重量%を占めるようにする。さらに球状微粒子は、平均粒径が5〜15μm の範囲にあるものを選択し、アクリル樹脂100重量部に対して20〜50重量部の割合で配合される。このような特定の組合せとしたことで、良好な粘着性能及び光学性能が発現される。
【0019】
この光拡散性粘着剤組成物は、粘着層としたときに良好な架橋構造を形成させるため、架橋剤を含有することができる。また、液晶セルガラスとの密着性を向上させるため、シラン系化合物を含有することができる。さらに、帯電防止性を付与するため、イオン性化合物を含有することもできる。まず、光拡散性粘着剤組成物を構成するこれらの各成分について、順を追って説明を進めていく。
【0020】
〈アクリル樹脂〉
粘着剤組成物を構成するアクリル樹脂は、一般に、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、遊離カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ環をはじめとする複素環基の如き、架橋可能な極性官能基を有する不飽和単量体、好ましくは極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を含むものである。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれでもよいことを意味し、その他、(メタ)アクリレートなどというときの「(メタ)」も同様の趣旨である。
【0021】
アクリル樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステルは、アルキルエステル又はアルコキシアルキルエステルを主成分とすることが好ましく、具体的には、下式(I)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とすることが好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基を表す。
【0024】
上記式(I)において、R2 がアルキル基である(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ラウリルの如き、直鎖状のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチルの如き、分枝状のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリルの如き、直鎖状のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチルの如き、分枝状のメタクリル酸アルキルエステルなどが例示される。
【0025】
また、上記式(I)において、R2 がアルコキシ基で置換されたアルキル基、すなわちアルコキシアルキル基である(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチルなどが例示される。
【0026】
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、それぞれ単独で用いることができるほか、異なる複数のものを用いて共重合させてもよい。
【0027】
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルには、さらに、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する不飽和単量体を共重合させることもできる。オレフィン性二重結合を含む基として、(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。かかる芳香環を有する不飽和単量体の例を挙げると、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−フェノキシエトキシ)エチル、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2−(o−フェニルフェノキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、ネオペンチルグリコールの安息香酸・(メタ)アクリル酸混合エステルなどがある。特に、フェノキシエチル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。これらの分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
また、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合させることもできる。脂環式構造とは、炭素数が通常5以上、好ましくは炭素数5〜7程度のシクロパラフィン構造である。脂環式構造を有するアクリル酸エステルの具体例を挙げると、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロドデシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、α−エトキシアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルフェニルなどがある。脂環式構造を有するメタクリル酸エステルの具体例を挙げると、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸シクロドデシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられる。
【0029】
以上のような(メタ)アクリル酸エステルには、先にも述べたとおり、架橋可能な極性官能基を有する不飽和単量体、好ましくは極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物が共重合される。かかる架橋可能な極性官能基を有する不飽和単量体の例を挙げると、アクリル酸、メタクリル酸、及びβ−カルボキシエチルアクリレートの如き、遊離カルボキシル基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、及びジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの如き、水酸基を有する不飽和単量体;アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、及び2,5−ジヒドロフランの如き、複素環基を有する不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き、複素環とは異なるアミノ基を有する不飽和単量体などがある。これらの極性官能基を有する不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数のものを用いてもよい。
【0030】
本発明では先述したとおり、重量平均分子量が50万〜200万の範囲にある高分子量アクリル樹脂と、重量平均分子量が千〜15万の範囲にある低分子量アクリル樹脂とを混合して、粘着剤組成物を構成するアクリル樹脂とする。これらのうち、高分子量アクリル樹脂は、上で説明した(メタ)アクリル酸アルキルエステル、とりわけ前記式(I)で示される炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位と、架橋可能な極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位とを少なくとも有する共重合体であることが好ましい。
【0031】
具体的には、高分子量アクリル樹脂の不揮発分全体を100重量%として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を、通常は 60〜99.9重量%、好ましくは 70〜99.8重量%の割合で含有し、また極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を、通常は0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%の割合で含有するものであることができる。分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する不飽和単量体や、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合させる場合、それぞれに由来する構造単位は、高分子量アクリル樹脂の不揮発分全体を基準に、20重量%以下程度の割合で含有される。
【0032】
高分子量アクリル樹脂は、上で説明したアルキルエステルを含む(メタ)アクリル酸エステル及び極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。これらの例として、スチレン系単量体に由来する構造単位、ビニル系単量体に由来する構造単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構造単位などを挙げることができる。
【0033】
スチレン系単量体の例を挙げると、スチレンのほか、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、及びオクチルスチレンの如きアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、及びヨードスチレンの如きハロゲン化スチレン;さらに、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどがある。
【0034】
ビニル系単量体の例を挙げると、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、及びラウリン酸ビニルの如き脂肪酸ビニルエステル;塩化ビニルや臭化ビニルの如きハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンの如きハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、及びビニルカルバゾールの如き含窒素芳香族ビニル;ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンの如き共役ジエン単量体;さらに、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどがある。
【0035】
分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の例を挙げると、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートの如き、分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体; トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの如き、分子内に3個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体などを挙げることができる。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル及び極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物以外の単量体を共重合させる場合、以上説明したようなものをそれぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。粘着剤組成物に使用されるアクリル樹脂において、(メタ)アクリル酸エステル及び極性官能基を有する単量体以外の単量体に由来する構造単位は、高分子量アクリル樹脂の不揮発分全体の重量を基準に、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下の割合とされる。
【0037】
高分子量アクリル樹脂は、以上のような、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主成分とし、極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を含むアクリル樹脂を2種類以上含むものであってもよい。
【0038】
以上説明した高分子量アクリル樹脂に、重量平均分子量が千〜15万の範囲にある低分子量アクリル樹脂を混合して、本発明の光拡散性粘着剤組成物に用いるアクリル樹脂とする。ここで用いる低分子量アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、それも前記式(I)で示される炭素数1〜14程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる単量体とするものであることができる。その具体例は、先に高分子量アクリル樹脂について説明したものと同様である。この低分子量アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルだけの重合体であってもよいし、架橋可能な極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物が共重合されたものであってもよい。
【0039】
低分子量アクリル樹脂は、その不揮発分全体を基準に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を、通常は60〜100重量%、とりわけ80〜100重量%の割合で含有し、そして任意に、架橋可能な極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を、通常は0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%の割合で含有するものであることができる。その他の単量体を共重合させる場合は、低分子量アクリル樹脂の不揮発分全体を基準に、10重量%以下程度とするのが好ましい。
【0040】
高分子量アクリル樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が、50万〜200万の範囲にあるものとする。その重量平均分子量が50万以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着層との間に浮きや剥がれの発生する可能性が小さくなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。また、その重量平均分子量が200万以下であると、粘着層に貼合される偏光板の寸法が変化しても、その寸法変化に粘着層が追随して変動するので、液晶表示パネルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。その重量平均分子量は、100万〜180万の範囲にあることがより好ましい。重量平均分子量Mw と数平均分子量Mn の比Mw/Mnで表される分子量分布は、2〜10の範囲にあることが好ましく、さらには2〜5の範囲にあることがより好ましい。
【0041】
一方、低分子量アクリル樹脂は、GPCによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が、千〜15万の範囲にあるものとする。重量平均分子量が千以上の低分子量アクリル樹脂を用いることにより、低分子量体の絡み合い効果が発現し、それを含む粘着剤組成物から偏光板上に粘着層を形成し、その粘着層付き偏光板を裁断するとき、断面から粘着剤がはみ出したり、そのはみ出した粘着剤によって偏光板が汚染されたりする可能性が小さくなる。また、重量平均分子量が15万以下の低分子量アクリル樹脂を用いることにより、その低分子量アクリル樹脂の柔軟性を維持し、高分子量アクリル樹脂のゲル構造の間に入り込んで、粘着層全体を密にし、粘着耐久性などを高めることができる。その重量平均分子量は、千〜5万の範囲、さらには千〜1万の範囲にあることがより好ましい。低分子量アクリル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1〜9の範囲、さらには1〜5の範囲、とりわけ2〜3にあることが好ましい。
【0042】
低分子量アクリル樹脂の配合量は、粘着剤組成物を構成する高分子量アクリル樹脂を含むアクリル樹脂全体の量を基準に、5〜33重量%の範囲とする。その含有量が5重量%を下回ると、それを含む粘着剤組成物から偏光板上に粘着層を形成し、液晶セルガラスに貼着したときに、偏光板の応力集中を効果的に緩和できなくなる可能性があり、一方でその含有量が33重量%を上回ると、粘着剤の凝集力が低下し、発泡や剥がれの原因になりやすい。
【0043】
アクリル樹脂は、高分子量体及び低分子量体とも、必要な単量体を有機溶剤に溶解し、重合開始剤の存在下に溶液重合する方法によって、有利に製造することができる。単量体の組合せや各種重合条件によって分子量は変化するが、単量体の組合せが同じであれば、重合開始剤の量を変化させることにより、分子量を調節することができる。例えば、重合開始剤の量を多くすれば、重合開始点が多くなるので、分子量の小さい樹脂を製造することができる。
【0044】
〈球状微粒子〉
本発明では、以上説明したアクリル樹脂を主成分とする粘着剤に、球状微粒子を配合して、得られる粘着層に光拡散性を付与する。球状微粒子の材質は特に制限されず、公知の有機微粒子や無機微粒子が使用できる。有機微粒子として、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレンの如きポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂やポリアクリレート系樹脂の如き(メタ)アクリル系樹脂などからなる樹脂粒子が挙げられ、架橋された架橋高分子であってもよい。さらに、エチレン、プロピレン、スチレン、メタクリル酸メチル、ベンゾグアナミン、ホルムアルデヒド、メラミン、ブタジエンなどから選ばれる2種又はそれ以上の単量体が共重合された共重合樹脂を使用することもできる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、シリコーン樹脂、酸化チタン、酸化アルミニウムなどからなる粒子が挙げられる。高分子量アクリル樹脂及び低分子量アクリル樹脂の混合物であるアクリル樹脂に対する分散性、粘着剤組成物の塗工性、得られる粘着層の光学特性などを考慮すると、微粒子は、シリコーン樹脂又はポリメチルメタクリレート系樹脂からなるものが好ましい。
【0045】
球状微粒子は、完全な球状であることが最も好ましいが、略球状であれば問題なく使用することができる。その平均粒径は、5〜15μm の範囲にあるものとする。その平均粒径が5μm を下回ると、得られる粘着層の透過鮮明度が大きくなって、表示上にしばしばモアレを生じるようになる。一方、その平均粒径が15μm を超えると、粘着層の表面に粒子が突き出して、表示品位の低下及び粘着耐久性の低下を招く。球状微粒子の平均粒径は、7〜13μm、さらには9〜11μmの範囲にあることが、一層好ましい。
【0046】
またこの球状微粒子は、高分子量アクリル樹脂及び低分子量アクリル樹脂の混合物であるアクリル樹脂との屈折率差が、0.01を超え、0.09未満のものを選択する。この屈折率差は、アクリル樹脂の屈折率をn1、球状微粒子の屈折率をn2としたときに、次式(1)を満足することを意味する。
0.01<|n1−n2|<0.09 …(1)
【0047】
この屈折率差は、好ましくは0.01を超え0.07以下、さらに好ましくは 0.01を超え0.04以下である。両者の屈折率差が0.01以下になると、得られる粘着層に所望の光学性能が発現せず、結果として透明な粘着剤に近いものとなる。一方、両者の屈折率差が大きくなりすぎると、光拡散性が強く発現するので、液晶表示装置を正面から見たときの白輝度を低下させることになる。
【0048】
以上のような条件を満たす球状微粒子であれば、単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。2種以上の球状微粒子を混合する場合には、屈折率の異なるものを混合してもよいし、粒子径のみが異なるものを混合してもよい。
【0049】
球状微粒子の配合量は、高分子量アクリル樹脂及び低分子量アクリル樹脂の混合物であるアクリル樹脂の不揮発分100重量部に対して、20〜50重量部とする。その配合量がアクリル樹脂100重量部に対して20重量部を下回ると、所望の光学性能、特にヘーズが発現せず、一方でその配合量が50重量部を上回ると、得られる粘着層の粘着力の低下による剥がれなど、粘着性能を低下させる。
【0050】
〈架橋剤〉
アクリル樹脂を主成分とする粘着剤組成物には通常、架橋剤が配合される。架橋剤は、アクリル樹脂を構成する極性官能基と反応して架橋構造を形成しうる官能基を分子内に少なくとも2個有する化合物である。具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート化合物、アジリジン系化合物などを挙げることができる。
【0051】
イソシアネート系化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(−NCO)を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのイソシアネート化合物に、グリセロールやトリメチロールプロパンなどのポリオールを反応せしめたアダクト体や、イソシアネート化合物を2量体、3量体等にしたものも、粘着層に用いられる架橋剤となりうる。さらに、2種類以上のイソシアネート系化合物を混合して用いることもできる。
【0052】
エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。2種類以上のエポキシ系化合物を混合して用いることもできる。
【0053】
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウムなどの多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位した化合物などが挙げられる。
【0054】
アジリジン系化合物は、エチレンイミンとも呼ばれる1個の窒素原子と2個の炭素原子からなる3員環の骨格を分子内に少なくとも2個有する化合物であり、例えば、ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、イソフタロイルビス−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン トリス−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン トリス−β−アジリジニルプロピオネートなどが挙げられる。
【0055】
これらの架橋剤の中でも、イソシアネート系化合物が好ましく用いられる。架橋剤は、粘着剤組成物を構成するアクリル樹脂の不揮発分100重量部に対し、通常 0.1〜10重量部程度、好ましくは0.1〜7重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度配合される。架橋剤の量は、後述するゲル分率とも関係するので、必要とされるゲル分率に合わせて、上記範囲から適宜選択すればよい。
【0056】
〈シラン系化合物〉
アクリル樹脂を主成分とする粘着剤組成物には、粘着層と液晶セルガラスとの密着性を向上させるために、シラン系化合物を含有させることが好ましく、とりわけ、架橋剤を配合する前に、シラン系化合物を配合しておくことが好ましい。
【0057】
シラン系化合物は、ケイ素原子に、アルコキシ基の如き加水分解性の基が結合するとともに、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、ハロアルキル基、(メタ)アクリロイル基又はメルカプト基の如き反応性官能基を有する有機基が結合した化合物でありうる。それぞれの具体的化合物を例示すると、ビニル基を有するシラン系化合物には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどがある。アミノ基を有するシラン系化合物には、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどがある。エポキシ基を有するシラン系化合物には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどがある。ハロアルキル基を有するシラン系化合物には、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどがある。(メタ)アクリロイル基を有するシラン系化合物には、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどがある。メルカプト基を有するシラン系化合物には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどがある。2種類以上のシラン系化合物を併用してもよい。
【0058】
シラン系化合物は、ポリマーやオリゴマータイプのものであってもよい。ポリマーやオリゴマータイプのシラン系化合物を(単量体)−(単量体)コポリマーの形式で示すと、例えば、次のようなものを挙げることができる。
【0059】
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、及び3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマーの如き、メルカプトプロピル基含有のコポリマー;
【0060】
メルカプトメチルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、及びメルカプトメチルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマーの如き、メルカプトメチル基含有のコポリマー;
【0061】
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、及び3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマーの如き、メタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
【0062】
3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、及び3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマーの如き、アクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
【0063】
ビニルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、及びビニルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマーの如き、ビニル基含有のコポリマー;
【0064】
3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、及び3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマーの如き、アミノ基含有のコポリマーなど。
【0065】
これらのシラン系化合物は、多くの場合、液体である。粘着剤組成物におけるシラン系化合物の配合量は、アクリル樹脂の不揮発分100重量部に対して、通常 0.0001〜10重量部程度であり、好ましくは 0.01〜5重量部の割合で使用される。アクリル樹脂の不揮発分100重量部に対するシラン系化合物の量が 0.0001重量部以上であると、粘着層とガラス基板との密着性が向上することから好ましい。また、その量が10重量部以下であると、粘着層からシラン系化合物がブリードアウトすることが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0066】
〈イオン性化合物〉
アクリル樹脂を主成分とする粘着剤組成物には、イオン性化合物を配合することも好ましい。イオン性化合物は、帯電防止剤として作用し、粘着層に帯電防止性を付与する。この化合物は特に、室温(25℃)において固体であるものが好ましい。また、有機カチオンを有するものが好ましい。
【0067】
イオン性化合物を構成するカチオン成分は、有機のカチオンであればよく、特に上記のとおり、室温において固体であるイオン性化合物を与えるものが好ましい。例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられるが、偏光板の粘着層に使用された場合、その上に設けられる剥離フィルムを剥がすときに帯電しにくいという観点から、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン又はアンモニウムカチオンが好ましい。
【0068】
一方、イオン性化合物において、上記カチオン成分の対イオンとなるアニオン成分は、無機のアニオンであってもよいし、有機のアニオンであってもよい。やはり、室温において固体であるイオン性化合物を与えるものが好ましい。例えば、次のようなアニオンを挙げることができる。
【0069】
クロライドアニオン〔Cl-〕、
ブロマイドアニオン〔Br-〕、
ヨーダイドアニオン〔I-〕、
テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl4-〕、
ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔Al2Cl7-〕、
テトラフルオロボレートアニオン〔BF4-〕、
ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF6-〕、
パークロレートアニオン〔ClO4-〕、
ナイトレートアニオン〔NO3-〕、
アセテートアニオン〔CH3COO-〕、
トリフルオロアセテートアニオン〔CF3COO-〕、
メタンスルホネートアニオン〔CH3SO3-〕、
トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CF3SO3-〕、
p−トルエンスルホネートアニオン〔p−CH364SO3-〕、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CF3SO22-〕、
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CF3SO23-〕、 ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF6-〕、
ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF6-〕、
ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF6-〕、
ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF6-〕、
ジメチルホスフィネートアニオン〔(CH32POO-〕、
(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF)n-〕(nは1〜3程度)、 ジシアナミドアニオン〔(CN)2-〕、
チオシアンアニオン〔SCN-〕、
パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔C49SO3-〕、
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(C25SO22-〕、 パーフルオロブタノエートアニオン〔C37COO-〕、
(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)(CF3CO)N-〕など。
【0070】
これらの中でも特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから好ましく用いられ、とりわけ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンが好ましい。
【0071】
イオン性化合物の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分の組合せから適宜選択することができる。具体的なカチオン成分とアニオン成分の組合せである化合物として、次のようなものが挙げられる。
【0072】
N−ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ブチル−4−メチルルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム p−トルエンスルホネート、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム メタンスルホネート、
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム p−トルエンスルホネート、
(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネート、
テトラメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラエチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリエチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリブチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリメチルデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
ジエチル(2−メトキシエチル)メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
グリシジルトリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなど。
【0073】
このようなイオン性化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。もちろん、イオン性化合物の例は、ここに例挙したものに限られない。
【0074】
室温において固体であるイオン性化合物は、前述したとおり、アクリル樹脂を主成分とする粘着剤組成物から形成される粘着層に帯電防止性を付与するとともに、粘着剤としての諸物性を保つうえで特に有効である。常温において液体であるイオン性化合物を用いる場合に比べ、帯電防止性能を長期間保持できるようになる。このような帯電防止性の長期安定性という観点からすると、イオン性化合物は、30℃以上、さらには35℃以上の融点を有することが好ましい。一方で、その融点があまり高すぎると、アクリル樹脂との相溶性が悪くなるため、90℃以下、さらには80℃以下の融点を有することが好ましい。イオン性化合物の分子量は、特に限定されないが、例えば、分子量700以下、さらには500以下であることが好ましい。
【0075】
イオン性化合物は、粘着剤組成物を構成するアクリル樹脂の不揮発分100重量部に対して、 0.3〜12重量部の割合で含有させることが好ましい。アクリル樹脂の不揮発分100重量部に対して、イオン性化合物を 0.3重量部以上配合すると、帯電防止性能が向上することから好ましく、またその量が12重量部以下であると、粘着耐久性を保つのが容易であることから好ましい。アクリル樹脂の不揮発分100重量部に対するイオン性化合物の量は、好ましくは0.5重量部以上、また5重量部以下である。
【0076】
〈粘着剤組成物に配合しうるその他の添加剤〉
以上説明した光拡散性粘着剤組成物にはさらに、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料などを配合してもよい。中でも、粘着剤に架橋剤とともに架橋触媒を配合すると、粘着層を短時間の熟成で調製することができ、得られる液晶表示パネルにおいて、粘着層と偏光板との間に浮きや剥がれが発生したり、粘着層内で発泡が起こったりすることを抑制することができ、またリワーク性も一層良好になることがある。架橋触媒としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、トリメチレンジアミン、ポリアミノ樹脂、メラミン樹脂の如きアミン系化合物などを挙げることができる。粘着剤に架橋触媒としてアミン系化合物を配合する場合、架橋剤としてはイソシアネート系化合物が好適である。
【0077】
〈粘着剤組成物の調製〉
以上説明した各成分を含有する光拡散性粘着剤組成物は、アクリル樹脂をはじめとする球状微粒子以外の各成分が有機溶媒に溶解し、そこに球状微粒子が分散した状態で調製することができる。球状微粒子を分散させるための溶媒は、特に制限されない。例えば、前記した高分子量アクリル樹脂及び低分子量アクリル樹脂を製造する際に用いた溶媒と同じものを使用することができるし、また、有機微粒子に対する分散性及び耐性に優れるアセテート系、ベンゼン系又はケトン系溶媒である、酢酸エチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトンなどを使用することもできる。
【0078】
[光拡散性粘着シート]
以上説明した光拡散性粘着剤組成物を基材フィルム上に塗布し、溶媒を除去して粘着層を形成し、光拡散性粘着シートとすることができる。また、他のフィルム上で粘着層を形成し、それを基材フィルムに転写して、光拡散性粘着シートとすることもできる。基材フィルムは、剥離フィルムや、偏光板をはじめとする各種の光学フィルムであることができる。図1に、本発明に係る光拡散性粘着シートの典型的な構成例を概略断面図で示した。図1に示す光拡散性粘着シート10は、光拡散性粘着剤組成物から形成される粘着層11の一方の面に、重剥離フィルム12が配置され、他方の面には軽剥離フィルム13が配置された構成になっている。ここで、重剥離フィルム12と軽剥離フィルム13は、粘着層11からの剥離レベルに違いをもたせたものであり、重剥離フィルム12は粘着層11からの剥離力が相対的に大きいもの、そして軽剥離フィルム13は粘着層11からの剥離力が相対的に小さいものである。
【0079】
このように構成される光拡散性粘着シート10は、例えば、以下のような形で使用される。すなわち、まず軽剥離フィルム13を粘着層11から剥がして、その剥離面(粘着層面)を偏光板に貼合して、粘着層付き偏光板とする。その状態で運搬、保管等に供され、その粘着層付き偏光板を液晶セルに貼着するとき、重剥離フィルム12を剥がして、その剥離面(粘着層面)を液晶セルガラスに貼着する。
【0080】
粘着層11からの適当な剥離性が得られるようにするため、重剥離フィルム12及び軽剥離フィルム13を構成するそれぞれのフィルムは、少なくとも粘着層11と接する側の面に離型処理が施されている。
【0081】
重剥離フィルム12を構成するフィルムは、偏光板に貼合された後でも残り、その状態で偏光板が検品されることもあるため、配向主軸の最大歪みが10度以下の一軸又は二軸延伸ポリエステルフィルムを用いることが多い。このポリエステルは、光学特性が保たれるものであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを用いることができる。これらの樹脂は、単独で使用しても、2種以上をブレンドして使用してもよい。耐熱性やその後の離型処理のしやすさなどからは、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートが好適であり、さらにコストの点を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートが最も実用的である。
【0082】
軽剥離フィルム13は、偏光板への貼合時に剥離除去されるので、配向主軸の最大歪みが10度以下という制限は受けない。やはり例えば、一軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ポリエステルフィルムを用いることができ、他の無延伸の又は延伸されたフィルムを用いることもできる。他のフィルムの例を挙げると、ポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム、セルロース誘導体系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、各種液晶ポリマーフィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリ塩化ビニリデン系フィルム、各種の生分解性フィルムなどがある。
【0083】
先述のとおり、重剥離フィルム12と軽剥離フィルム13のそれぞれ粘着層11に接触する面には、離型剤を用いた離型処理が施される。離型剤としては、剥離特性に優れるシリコーン系離型剤が好ましく用いられる。また、剥離強度はシリコーン系離型剤の厚み及びオリゴマー添加の有無によって調節でき、軽剥離フィルム13に比べ、重剥離フィルム12の剥離強度が1.2倍以上となるようにすることが好ましい。
【0084】
重剥離フィルム12及び軽剥離フィルム13の厚みにも特に制限はないが、使用時の取り扱いのしやすさやコストなどの観点から、5〜100μm 程度とすることが好ましい。
【0085】
図1に示される光拡散性粘着シート10は、例えば、2枚の剥離フィルム12、13のうち一方の離型処理面に、上で説明した光拡散性粘着剤組成物を塗布し、乾燥して溶媒を除去した後、もう一方の剥離フィルムの離型処理面を貼合することにより製造できる。一方の剥離フィルム12又は13上に形成された光拡散性粘着剤組成物の乾燥は、例えば、60〜120℃程度の温度で 0.5〜10分間程度加熱することにより行われる。引き続きもう一方の剥離フィルム13又は12を貼合した後は、例えば、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下であれば、5〜20日程度熟成し、架橋剤を充分反応させる。
【0086】
かくして得られる光拡散性粘着シート10において、粘着層11は、ゲル分率が40〜75重量%、さらには45〜70重量%、とりわけ50〜70重量%の範囲となるようにすることが好ましい。ここでゲル分率は、以下の(I)〜(IV)に従って測定される値である。
【0087】
〈粘着層のゲル分率の測定方法〉
(I)約8cm×約8cmの面積の粘着層と、約10cm×約10cmのSUS304からなる金属メッシュ(その重量をWm とする)とを貼合する。
(II)上記(I)で得られた貼合物を秤量して、その重量をWs とし、次に粘着層を包み込むように4回折りたたんでホッチキス(ステープラー)で留めたのち秤量して、その重量をWb とする。
(III)ガラス容器に上記(II)でホッチキス留めしたメッシュを入れ、酢酸エチル60mlを加えて浸漬した後、このガラス容器を室温で3日間保管する。
(IV)ガラス容器からメッシュを取り出し、120℃で24時間乾燥した後、秤量して、その重量をWa とし、次式(2)に基づいてゲル分率を計算する。
ゲル分率(重量%)=[{Wa−(Wb−Ws)−Wm}/(Ws−Wm)]×100 …(2)
【0088】
粘着層11のゲル分率が75重量%を上回ると、高温高湿下での接着性が低下し、液晶セルガラスと粘着層との間に浮きや剥がれが発生しやすくなる傾向にある。一方、粘着層11のゲル分率が40重量%を下回ると、粘着層の凝集力が弱くなって、高温高湿下で凝集破壊の原因となる気泡が発生しやすくなる傾向にある。
【0089】
粘着層11のゲル分率を40〜75重量%に調整するには、粘着剤組成物の有効成分である高分子量アクリル樹脂及び低分子量アクリル樹脂の種類、球状微粒子の種類、及び各成分の混合比によっても異なるが、架橋剤の量を多くすればゲル分率が高くなるので、架橋剤の量によってゲル分率を調整することができる。具体的には、光拡散性粘着剤組成物を構成する高分子量アクリル樹脂及び低分子量アクリル樹脂の混合物であるアクリル樹脂の不揮発分100重量部に対する架橋剤の配合量を、 0.1〜3重量部程度の範囲から、アクリル樹脂の種類に合わせて適宜選択するのが好ましい。
【0090】
粘着層11の厚みは特に限定されないが、通常は30μm 以下であるのが好ましく、また10μm 以上であるのが好ましい。粘着層の厚みが30μm 以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着層との間に浮きや剥がれの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましく、またその厚みが10μm 以上であると、そこに貼合されている偏光板の寸法が変化しても、その寸法変化に粘着層が追随して変動するので、液晶表示パネルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0091】
光拡散性粘着シート10は、粘着層11のヘーズが25〜50%の範囲にあること、また、暗部と明部の幅が0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度の合計値が150%以下であることが好ましい。さらには、ヘーズが25〜45%の範囲にあること、また、4種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度の合計値が130%以下であることが一層好ましい。一般的にヘーズと透過鮮明度の関係は反比例し、ヘーズが高くなるほど透過鮮明度が低くなり、ヘーズが低くなるほど透過鮮明度が高くなる。
【0092】
ヘーズ及び透過鮮明度は、 JIS K 7105-1981「プラスチックの光学的特性試験方法」に規定されており、ヘーズの求め方自体は、 JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」にも規定されている。ヘーズは、次式(3)で定義される値である。
ヘーズ=(拡散透過率/全光線透過率)×100(%) …(3)
【0093】
一方、透過鮮明度は、透過法によって測定される像鮮明度を意味する。上の規格に規定されるとおり、像鮮明度は、ある光学くしを用いたとき、記録紙上に記録される最高波高及び最低波高から、次式(4)によって求められる値である。なお本明細書においては、試験片の縦方向と横方向の測定結果の平均値を採用した。
像鮮明度=[(最高波高−最低波高)/(最高波高+最低波高)]×100(%) …(4)
【0094】
この規格では、像鮮明度の測定に用いる光学くしとして、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類が規定されているが、本明細書においては、これら4種類の光学くしを用いて透過法により測定される像鮮明度の合計値をもって、透過鮮明度とする。このように4種類の光学くしを用いて測定される値の合計値を透過鮮明度とするので、その最大値、すなわち試料なしで測定される値(の合計値)は、400%となる。
【0095】
光拡散性粘着シート10を構成する粘着層11における上記のヘーズ及び透過鮮明度を含む光学特性は、粘着剤組成物を構成するアクリル樹脂と球状微粒子の屈折率差、球状微粒子の配合量及び粒径などを調節することにより、上記の特性を満足するようにすることができる。例えば、ヘーズが50%を超えれば、4種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度の合計値が150%以下になることが多いものの、これではヘーズが大きすぎて前方散乱性が高く、液晶表示装置を正面から見たときの白輝度が落ちることになる。一方でヘーズが25%を下回れば、4種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度の合計値が150%以上になることが多いので、正面から見たときの白輝度は問題ないものの、プリズムシート等の表面に凹凸を有するフィルムに起因するモアレ現象が生じやすくなる。
【0096】
[拡散粘着層付き偏光板]
図1に示す光拡散性粘着シートは、先にも述べたとおり、そこから軽剥離フィルム13を剥がして、その剥離面で露出する粘着層を偏光板に貼り、粘着層付き偏光板とすることができる。この粘着層付き偏光板は、先に説明した光拡散性粘着シートにおいて、基材フィルムが偏光板であるものとみることもできる。図2に、本発明に係る拡散粘着層付き偏光板の典型的な構成例を概略断面図で示した。図2に示す拡散粘着層付き偏光板30は、偏光板20に、上で説明した本発明に係る光拡散性粘着剤組成物から形成される光拡散性粘着層11が形成された構造となっている。粘着層11の外側表面には、図1を参照して説明した重剥離フィルム12が存在し、粘着層11を保護するようになっている。また、偏光板20は、偏光フィルム21の一方の面に第一の保護フィルム23が貼合され、他方の面に第二の保護フィルム24が貼合された構造になっている。
【0097】
偏光板20を構成する偏光フィルム21は、自然光などの入射光に対して、偏光を出射する機能を有するものである。通常は、ある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それに直交する振動面を有する直線偏光を透過する機能により、このような偏光出射機能が発現される。偏光フィルム21は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料の如き二色性色素が吸着配向されているもので構成することができる。このような偏光フィルムは一般に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、一軸延伸、二色性色素による染色及びホウ酸処理を施すことにより製造される。
【0098】
偏光フィルム21の両面にそれぞれ、第一の保護フィルム23及び第二の保護フィルム24が配置されている。保護フィルム23,24には、透明な樹脂フィルムが用いられ、その透明樹脂の例を挙げると、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースの如きアセチルセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレートの如きメタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂などがある。保護フィルムを構成する樹脂には、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、又はニッケル錯塩系化合物の如き紫外線吸収剤が配合されていてもよい。アセチルセルロース系樹脂は、保護フィルム23,24を構成する樹脂フィルムの一つの好ましい形態であり、なかでもトリアセチルセルロースフィルムが好ましく用いられる。後述する液晶セルガラス側、すなわち図2の状態では光拡散性粘着層11側となる第一の保護フィルム23には、ノルボルネン系樹脂などを代表例とするポリオレフィン系樹脂も好適に用いられる。保護フィルム23,24の厚みは特に制限されないが、20〜90μm の範囲内であることが好ましく、さらには30〜90μm の範囲内であることがより好ましい。その厚みが20μm を下回ると、フィルムの取扱いが難しくなり、一方、その厚みが90μm を超えると、加工性に劣るものとなり、また、得られる偏光板の薄肉化及び軽量化においても不利になる。
【0099】
偏光フィルム21と保護フィルム23,24の貼合には、通常、透明な接着剤が用いられる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液など、水系の接着剤は、好適なものの一つである。また、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化性接着剤を用いることもある。
【0100】
図2に示される拡散粘着層付き偏光板30は、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわちまず、第一の保護フィルム23/偏光フィルム21/第二の保護フィルム24の構成となっている偏光板30を用意する。次に、図1に示した光拡散性粘着シート10から軽剥離フィルム13を剥がしたものを、その剥離フィルム剥離後の光拡散性粘着層11側で、偏光板20の第一の保護フィルム23側表面に転写することで、図2の構成のものが得られる。
【0101】
これとは別に、以下のようにして図2に示される拡散粘着層付き偏光板30を製造することもできる。すなわちまず、上で説明した本発明に係る光拡散性粘着剤組成物を有機溶媒にて希釈した状態で用意し、これを重剥離フィルム12の離型処理面に塗布して、60〜120℃で 0.5〜10分間程度加熱することにより有機溶媒を除去し、重剥離フィルム12上に形成された光拡散性粘着層11を得る。次にこの光拡散性粘着層11に、第一の保護フィルム23/偏光フィルム21/第二の保護フィルム24の構成となっている偏光板20をその第一の保護フィルム23側で貼合したのち、室温(23℃前後)、相対湿度65%前後の雰囲気であれば、5〜20日程度熟成して、架橋剤を十分に反応させる方法により、図2の構成のものが得られる。
【0102】
第一の保護フィルム23/偏光フィルム21/第二の保護フィルム24の構成からなる偏光板20の第一の保護フィルム23側に、重剥離フィルム12/光拡散性粘着層11の構成からなるシートをその光拡散性粘着層11側で貼り付ける際、光拡散性粘着層11の貼合面には、第一の保護フィルム23との接着力を高めるために、コロナ放電処理を施しておくことが好ましい。コロナ放電処理とは、電極間に高電圧をかけて放電し、そこに配置された樹脂フィルムを活性化する処理である。コロナ放電処理は、その出力を200〜1,000W程度に設定して行うのが好ましい。 コロナ放電処理の出力を200W以上とすることで、この処理による効果が顕著になり、光拡散性粘着層11と第一の保護フィルム23との間の接着力が向上する。また、コロナ放電処理の出力を 1,000W以下とすることで、この処理によって生じやすい粉塵の発生が抑えられる。コロナ放電処理の効果は、電極の種類、電極間隔、電圧、湿度、使用する樹脂フィルムの種類などによって変化するが、例えば、電極間隔を1〜5mm、移動速度を3〜20m/分程度に設定することが好ましい。
【0103】
[液晶表示パネル]
図2に示される拡散粘着層付き偏光板30は、その重剥離フィルム12を剥がした後、光拡散性粘着層11側を液晶セルガラスに貼着することにより、液晶表示パネルとすることができる。液晶セルガラスのもう一方の面には、上で説明した光拡散性粘着層と同じ粘着層を介してもう一つの偏光板を貼り合わせることもできるが、視認性を高めるために、光拡散性能を有しない、すなわち透明な粘着層を介して偏光板を貼り合わせることも有効である。このように、液晶セルガラスの少なくとも一方の面に、光拡散性粘着層を介して偏光板20が貼り合わされた状態のものを、以下では「光学積層体」と呼ぶこともある。
【0104】
図3に、本発明に係る液晶表示パネルの典型的な構成例を断面模式図で示した。図3に示す液晶表示パネル40は、液晶セルガラス45の片面に、拡散粘着層付き偏光板30、すなわち図2に示す状態から重剥離フィルム12を剥がしたものが、その光拡散性粘着層11側で貼着され、液晶セルガラス45の他面には、光拡散性能を有しない通常の透明な粘着層16を介して、偏光板20が貼着された構成となっている。図3では、液晶セルガラス45の上側に示される、偏光板20に透明な粘着層16が設けられたものを、透明な粘着層付き偏光板31として表示している。
【0105】
この液晶表示パネル40において、拡散粘着層付き偏光板30及び透明な粘着層付き偏光板31のどちらを、液晶表示装置の前面側(視認側)とし、どちらを背面側(バックライト側)とするかは任意であるが、一般には、拡散粘着層付き偏光板30を背面側とするのが好ましい。この場合は図3に示すように、前面側となる透明な粘着層付き偏光板31の外側(液晶セルガラス45に貼着される粘着層16とは反対側)に、表面処理層25を設けるのが好ましい。
【0106】
液晶セルガラス45は、ガラス基板を含むものであり、一般には、2枚のガラス基板の間に液晶化合物を充填したものが液晶表示装置に用いられる。液晶セルガラス45における液晶表示モードは、TN(Twisted Nematic)やSTN(Super Twisted Nematic)のほか、IPS(In-Plane Switching)、VA(Vertical Alignment)、OCB(Optically Compensated Birefringence )など、この分野で知られている各種のものであることができる。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスなどが挙げられるが、液晶表示用には無アルカリガラスが好適に用いられる。
【0107】
透明な粘着層16を有する偏光板31の外側に必要に応じて設けられる表面処理層25は、表示特性や表面物性を高めるために、例えば、蛍光灯などの外部光源から照射される光線の反射を少なくし、液晶表示装置の視認性を高めるために設けられる。具体的には、表面に凹凸を設けて反射光を散乱させる防眩(AG)層、光の干渉を利用して反射を防ぐ反射防止(AR)層、塗膜により反射率を下げる低反射(LR)層などが挙げられる。また、偏光板20の表面に直接ハードコート層が設けられている場合や、上記の如き防眩層や反射防止層、低反射層などの上にさらにハードコート層が設けられている場合、そのハードコート層も表面処理層25となりうる。
【0108】
拡散粘着層付き偏光板30及び透明な粘着層付き偏光板31は、通常、それぞれの透過軸が所定の角度をなすように、例えば、液晶セルガラス45が、TNモード、IPSモード又はVAモードであればそれぞれの透過軸が直交するように、それぞれの粘着層11,16を介して、液晶セルガラス45の両面に貼り合わされる。
【0109】
[液晶表示装置]
図3に示すものを一例とする本発明の液晶表示パネルは、透過型の液晶表示装置として有利に用いられる。この場合は、図3に示す構造なら、拡散粘着層付き偏光板30の外側又は透明な粘着層付き偏光板31の外側、好ましくは拡散粘着層付き偏光板30の液晶セルガラス45と反対側にバックライトが設けられ、液晶表示装置となる。
【0110】
この液晶表示パネルから形成される液晶表示装置は、例えば、ノート型、デスクトップ型、PDA(Personal Digital Assistance )などを包含するパーソナルコンピュータ用ディスプレイ、テレビ、車載用ディスプレイ、電子辞書、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子卓上計算機、時計などに用いることができる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、使用量ないし含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0112】
以下の例において、重量平均分子量及び数平均分子量の測定は、GPC装置に、カラムとして東ソー(株)製の“TSK gel GMHHR-H(S)”2本を直列につないで配置し、テトラヒドロフランを溶出液として、試料濃度5mg/ml、試料導入量100μl 、温度40℃、流速1ml/分の条件で、標準ポリスチレン換算により行った。また屈折率の測定は、(株)アタゴ製のアッベ屈折計 Type No.2007 を用いて行った。
【0113】
まず、本発明で規定する高分子量のアクリル樹脂及び低分子量のアクリル樹脂を製造した例を示す。
【0114】
[重合例1:高分子量のアクリル樹脂]
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応器に、酢酸エチル 169.8部、アクリル酸ブチル98.6部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0部、及びアクリル酸0.4部の混合溶液を仕込み、 窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら、内温を55℃に上げた。次に、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤) 0.14部を酢酸エチル5部に溶かした溶液を全量添加した。その後、内温を54〜56℃に保ちながら12時間保温し、最後に酢酸エチルを添加して、アクリル樹脂の濃度が28%となるように調節した。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が134万、Mw/Mnが1.7であり、屈折率が1.46であった。これをアクリル樹脂A1とする。このアクリル樹脂A1において、単量体の合計重量を100としたときの各単量体の重量割合は、アクリル酸ブチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/アクリル酸=98.6/1.0/0.4である。
【0115】
[重合例2:高分子量のアクリル樹脂]
単量体組成を、アクリル酸ブチル78.6部、アクリル酸2−フェノキシエチル20.0部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0部及びアクリル酸0.4部に変更した以外は、重合例1と同様にしてアクリル樹脂の酢酸エチル溶液を得た。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が123万、Mw/Mn が2.3であり、屈折率が1.48であった。これをアクリル樹脂A2 とする。このアクリル樹脂A2において、単量体の合計重量を100としたときの各単量体の重量割合は、アクリル酸ブチル/アクリル酸2−フェノキシエチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/アクリル酸=78.6/20.0/1.0/0.4である。
【0116】
[重合例3:低分子量のアクリル樹脂]
重合例1で用いたのと同じ反応器に、酢酸エチル215部、アクリル酸ブチル33部、メタクリル酸ブチル38部、アクリル酸メチル28部及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル1部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら、内温を75℃に上げた。次に、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤) 0.67部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。その後、内温を74〜76℃に保ちながら8時間保温し、最後に酢酸エチルを添加して、アクリル樹脂の濃度が30%となるように調節した。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が10万、Mw/Mnが2.5であり、屈折率が1.46であった。これをアクリル樹脂B1とする。このアクリル樹脂B1において、単量体の合計重量を100としたときの各単量体の重量割合は、アクリル酸ブチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸メチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル=33/38/28/1である。
【0117】
[重合例4:低分子量のアクリル樹脂]
重合開始剤アゾビスイソブチロニトリルの量を 0.13部に変更した以外は、重合例3と同様にしてアクリル樹脂の酢酸エチル溶液を得た。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが36万5千、Mw/Mnが4.5であり、屈折率が1.46であった。これをアクリル樹脂B2 とする。このアクリル樹脂B2における単量体の重量割合は、重合例3と同じである。
【0118】
このほか、低分子量のアクリル樹脂として、次の商品名のものも用いた。
【0119】
“アルフォン UP-1000”:官能基を有しないオールアクリルの液状ポリマー(不揮発分98%以上)であって、重量平均分子量Mw が3千、Mw/Mnが1.4、屈折率が1.46のもの、東亞合成(株)から入手。後掲の表1では、このポリマーを「UP1000」と略記する。
【0120】
“アルフォン UH-2000”:官能基として水酸基を有するオールアクリルの液状ポリマー(不揮発分98%以上)であって、重量平均分子量Mwが1万1千、Mw/Mnが1.5、屈折率が1.46のもの、東亞合成(株)から入手。 後掲の表1では、このポリマーを「UH2000」と略記する。
【0121】
また、球状微粒子として、次の商品名のものを用いた。
【0122】
“MX-1000” :球状タイプのアクリル微粒子であって、平均粒径が10μm 、屈折率が1.49のもの、綜研化学(株)から入手。 後掲の表1では、この微粒子を「MX1000」と略記する。
【0123】
“MX-500”:球状タイプのアクリル微粒子であって、平均粒径が6μm 、屈折率が
1.49のもの、綜研化学(株)から入手。 後掲の表1では、この微粒子を「MX-500」と記す。
【0124】
“MX-180TA”:球状タイプのアクリル微粒子であって、平均粒径が2μm 、屈折率が
1.49のもの、綜研化学(株)から入手。後掲の表1では、この微粒子を「MX180TA」と略記する。
【0125】
“MX-3000” :球状タイプのアクリル微粒子であって、平均粒径が30μm 、屈折率が1.49のもの、綜研化学(株)から入手。 後掲の表1では、この微粒子を「MX3000」と略記する。
【0126】
“トスパール 1110” :球状タイプのシリコーン樹脂微粒子であって、平均粒径が10μm、屈折率が1.43のもの、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社から入手。後掲の表1では、この微粒子を「TP1110」と略記する。
【0127】
“EMB-20”:球状タイプの低アルカリガラス微粒子であって、平均粒径が10μm 、屈折率が 1.56のもの、ポッターズ・バロティーニ(株)から入手。後掲の表1では、この微粒子を「EMB-20」と記す。
【0128】
さらに、その他の添加物として、次の商品名のものを用いた。
【0129】
イソシアネート系架橋剤:
“コロネートL”:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、日本ポリウレタン工業(株)から入手。
【0130】
シラン系化合物:
“KBM-403” :3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(液体)、信越化学工業(株)から入手。
【0131】
イオン性化合物:
“FC-4400” :式 (C49)3(CH3)N+ (CF3SO2)2- の構造を有するトリブチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、住友スリーエム(株)から入手。融点26℃。
【0132】
[実施例1〜9及び比較例1〜8]
(粘着剤液の調製)
高分子量アクリル樹脂として、重合例1及び2で調製したアクリル樹脂A1及びA2を、また低分子量アクリル樹脂として、重合例3及び4で調製したアクリル樹脂B1及びB2、並びに上に示した“アルフォン UP-1000”及び“アルフォン UH-2000”を用い、それぞれを表1に示す割合で、アクリル樹脂の固形分合計量が100部となるように配合した。このアクリル樹脂溶液に、先に示したイソシアネート系架橋剤“コロネートL”を 0.16部、シラン系化合物“KBM-403”を0.5部、イオン性化合物“FC-4400”を1.0部、及び表1に記載する量の球状微粒子を配合して、粘着剤液を調製した。
【0133】
なお、実施例9の粘着剤液は、屈折率1.48の高分子量アクリル樹脂A1 を83%、及び屈折率 1.46の低分子量アクリル樹脂“アルフォン UP-1000”を17%の割合で配合したものであるが、混合後のアクリル樹脂全体の屈折率は、両者の配合割合を加味した加重平均で1.48とした。
【0134】
【表1】

【0135】
(光拡散性粘着シートの作製)
上で調製した各粘着剤液を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名“MRV(08)” 、新タック化成(株)から入手;重剥離フィルムと呼ぶ)の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが25μm となるように塗布し、90℃で2分間乾燥させて、シート状粘着剤を得た。次いで、離型処理が施された別のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名“MRF38” 、新タック化成(株)から入手;軽剥離フィルムと呼ぶ)の離型処理面に、上で得たシート状粘着剤の重剥離フィルムと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼り合わせたのち、温度23℃、相対湿度65%の条件で10日間熟成して、光拡散性粘着シートを作製した。なお、ここで用いた重剥離フィルムと軽剥離フィルムとでは、後者(軽剥離フィルム)のほうが、粘着剤からの剥離力が小さい、すなわち剥離しやすいものである。
【0136】
(拡散粘着層付き偏光板の作製)
ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコールからなる偏光フィルムの両面をトリアセチルセルロースからなる保護フィルムで挟んだ3層構造の偏光板の片面に、上で作製した光拡散性粘着シートから軽剥離フィルムを剥がして、その軽剥離フィルム剥離後の粘着剤面をラミネーターで貼り合わせることにより、拡散粘着層付き偏光板を作製した。
【0137】
[評価試験]
(1)光拡散性粘着シートのゲル分率評価
各実施例及び比較例で調製した光拡散性粘着シート(熟成後のもの)から粘着剤層を切り出して、先に示した方法でゲル分率を測定し、結果を表2に示した。
【0138】
(2)拡散粘着層付き偏光板における粘着力評価
各実施例及び比較例で作製した拡散粘着層付き偏光板から25mm×150mmの試験片を裁断した。それぞれの試験片から重剥離フィルムを剥がしたものを、貼付装置〔フジプラ(株)製の“ラミパッカー”(商品名)〕を用いて、その粘着層側で液晶セル用ガラス基板〔コーニング社製の“イーグルXG”(商品名)〕に貼り付け、温度50℃、圧力5kg/cm2(490.3kPa) で20分間オートクレーブ処理を行った。引き続き、常温(23℃)で24時間保管した後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中にて、この貼着試験片から偏光板の25mm幅一端を粘着層とともに掴んで、300mm/分の速度で180°方向(折り返してガラス基板面に沿う方向)に剥離する180°剥離試験を行い、粘着力を評価した。結果を併せて表2に示した。
【0139】
(3)拡散粘着層付き偏光板の粘着耐久性評価
それぞれの実施例及び比較例で作製した拡散粘着層付き偏光板(重剥離フィルムをはがしたもの)を上の(2)で用いたのと同じ液晶セル用ガラス基板の片面に貼着し、光学積層体(液晶表示パネルに相当する)を作製した。この光学積層体につき、70℃に加熱した状態から−30℃に降温し、次いで70℃に昇温する過程を1サイクル(1時間)として、これを100サイクル繰り返す耐ヒートショック試験を行い、試験後の光学積層体を目視で観察した。結果を以下の基準で分類し、表2にまとめた。
【0140】
◎:浮き、剥がれ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥がれ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥がれ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥がれ、発泡等の外観変化が顕著に認められる。
【0141】
(4)ヘーズの測定
上の(3)と同様に作製した光学積層体につき、 JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準拠している(株)村上色彩技術研究所製のヘーズメーター“HM-150型”を用いて、全へーズを測定した。なお、ガラス基板及び偏光板のヘーズはほぼ無視できるので、ここで測定されたヘーズ値は、粘着層の値とみてよい。得られたヘーズ値自体を表2に示すとともに、そのヘーズ値をもとに以下の基準で分類し、併せて表2中「ヘーズ」の「判定」の欄に示した。
【0142】
○:全へーズが25〜50%の範囲にある。
×:全へーズが25〜50%の範囲から外れる。
【0143】
(5)透過鮮明度の測定
上の(3)と同様に作製した光学積層体につき、 JIS K 7105-1981「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠しているスガ試験機(株)製の写像性測定器“ICM-1DP” を用いて、偏光板側から光を入射し、透過鮮明度を測定した。ここでは、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて透過鮮明度を測定し、それぞれの値及びそれらの合計値を表2に示した。合計値の最大値は400%となる。なお、ガラス基板及び偏光板の透過鮮明度は、いずれの光学くしを用いた場合もほぼ100%になるので、ここで求められた透過鮮明度は、粘着層の値とみてよい。また、4種類の光学くしを用いて測定された透過鮮明度の合計値をもとに以下の基準で分類し、併せて表2中「透過鮮明度」の「判定」の欄に示した。
【0144】
○:透過鮮明度(合計値)が150%未満。
×:透過鮮明度(合計値)が150%以上。
【0145】
【表2】

【0146】
表1及び表2からわかるように、低分子量アクリル樹脂が配合されていない比較例1、及び低分子量アクリル樹脂の配合量がアクリル樹脂全体のうち41%と多くなった比較例2は、粘着耐久性が十分でない。球状微粒子の配合量が少ない比較例3は、ヘーズが十分でなく、透過鮮明度も極めて高い値を与える。一方、球状微粒子の配合量がアクリル樹脂100部に対して58部と多くなった比較例4は、粘着耐久性が十分でなく、ヘーズも大きすぎる。平均粒径の小さい球状微粒子を用いた比較例5は、透過鮮明度が高すぎる値を与える。一方、平均粒径の大きい球状微粒子を用いた比較例6は、粘着耐久性が十分でない。低分子量アクリル樹脂として、重量平均分子量Mw が36万5千と高めのアクリル樹脂B2を用いた比較例7は、粘着耐久性が十分でない。また、アクリル樹脂と球状微粒子の屈折率差が0.10と大きくなった比較例8は、ヘーズが大きすぎる。
【0147】
これに対し、アクリル樹脂と球状微粒子の屈折率差、低分子量アクリル樹脂の分子量、高分子量アクリル樹脂と低分子量アクリル樹脂の配合割合、球状微粒子の平均粒径、及び球状微粒子の配合量を本発明で規定する範囲とした実施例1〜9は、各試験項目とも良好な結果を与えている。
【符号の説明】
【0148】
10……光拡散性粘着シート、
11……光拡散性粘着層、
12……重剥離フィルム、
13……軽剥離フィルム、
16……透明な粘着層、
20……偏光板、
21……偏光フィルム、
23……第一の保護フィルム、
24……第二の保護フィルム、
25……表面処理層、
30……拡散粘着層付き偏光板、
31……透明な粘着層付き偏光板、
40……液晶表示パネル、
45……液晶セルガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂と球状微粒子を含有する光拡散性粘着剤組成物であって、
前記アクリル樹脂と前記球状微粒子は、両者の屈折率差が0.01を超え、0.09未満の範囲にあり、
前記アクリル樹脂は、重量平均分子量が50万〜200万の範囲にある高分子量アクリル樹脂と、重量平均分子量が千〜15万の範囲にある低分子量アクリル樹脂との混合物であり、該低分子量アクリル樹脂を5〜33重量%含有し、
前記球状微粒子は、平均粒径が5〜15μm の範囲にあり、前記アクリル樹脂100重量部に対して20〜50重量部配合されていることを特徴とする光拡散性粘着剤組成物。
【請求項2】
前記高分子量アクリル樹脂は、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を 70〜99.8重量%、及び架橋可能な極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を 0.2〜10重量%含有する請求項1に記載の光拡散性粘着剤組成物。
【請求項3】
前記低分子量アクリル樹脂は、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を80〜100重量%含有し、そして任意に、架橋可能な極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を0〜10重量%含有する請求項1又は2に記載の光拡散性粘着剤組成物。
【請求項4】
さらにイソシアネート系架橋剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散性粘着剤組成物。
【請求項5】
さらにシラン系化合物を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散性粘着剤組成物。
【請求項6】
さらにイオン性化合物を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散性粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散性粘着剤組成物からなる粘着層が基材フィルムに形成されていることを特徴とする光拡散性粘着シート。
【請求項8】
前記粘着層は、ヘーズが25〜50%の範囲にあり、かつ暗部と明部の幅が 0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mm である4種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度の合計値が150%以下である請求項7に記載の光拡散性粘着シート。
【請求項9】
偏光板の表面に、請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散性粘着剤組成物から形成された光拡散性粘着層を有することを特徴とする粘着層付き偏光板。
【請求項10】
液晶セルガラスの表面に、請求項9に記載の粘着層付き偏光板が、その光拡散性粘着層側で貼着されていることを特徴とする液晶表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−1745(P2013−1745A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131925(P2011−131925)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】