説明

光拡散用樹脂組成物

【課題】新規組成をもつ光拡散用樹脂組成物の提供することを解決すべき課題とする。
【解決手段】金属ケイ素粉末と酸素とを反応させて得られる体積平均粒径が1μm以上10μm以下の球状無定形シリカ粒子と、該球状無定形シリカ粒子を分散する熱可塑性透明樹脂材料とを有することを特徴とする。光を拡散させるために分散させる粒子として、従来添加されていたシリコーンに代えて無定形シリカを採用することで、光拡散用樹脂組成物の強度などの機械的特性を向上できる。また、球状の無定形シリカ粒子を採用することで光の拡散にムラが生じることが無くなる。熱可塑性透明樹脂中に球状無定形シリカ粒子を採用することで、均質な光拡散が実現できる。つまり、粒子形状として球状を採用した上で、結晶が存在しない無定形を採用したので、光学的な高い均質性が実現できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置などのバックライト用の導光板などに好適に使用できる光拡散用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、メタクリル樹脂中に架橋性シリコーン樹脂からなる真球状粒子を分散させたメタクリル樹脂組成物からなる光拡散用樹脂組成物が提案されている(特許文献1及び2)。光拡散用樹脂組成物は、分散させた粒子の散乱効果を利用して照明用カバー等に使用されている。また最近では、この散乱効果を利用してその樹脂組成物をサイドライト式面照明装置(バックライト)用導光板への用途にも使用している。
【特許文献1】特開平11−19928号公報
【特許文献2】特開平11−21357号公報
【特許文献3】特開2005−132983号公報
【特許文献4】特開平11−43605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では従来にない新規な組成をもつ光拡散用樹脂組成物を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明の光拡散用樹脂組成物は、金属ケイ素粉末と酸素とを反応させて得られる体積平均粒径が1μm以上10μm以下の球状無定形シリカ粒子と、該球状無定形シリカ粒子を分散する熱可塑性透明樹脂材料とを有することを特徴とする。そして、前記球状無定形シリカ粒子は全体の質量を基準として0.1%以上50%以下含有することが望ましい。更に、前記球状無定形シリカ粒子の表面には、シラノール基、シリル基又はそれらのアルキルエステルが導入されていることが望ましい。そして、前記熱可塑性透明樹脂はポリカーボネート、ポリメチルメタクリル酸、メチルメタクリル酸−スチレン共重合体、ポリアリレート・スチレン系共重合体、脂環式ポリオレフィンからなる群から選択される1種以上の樹脂であることが望ましい。
【0005】
光を拡散させるために分散させる粒子として、従来添加されていたシリコーンに代えてシリカを採用することで、光拡散用樹脂組成物の強度などの機械的特性を向上させることができる。また、分散させる粒子として金属ケイ素粉末と酸素とを反応させて得られる球状無定形シリカ粒子を採用することで光の拡散にムラが生じることが無くなることを発見して本発明を完成させた。
【0006】
従来技術として、光拡散用樹脂組成物中にシリカ粒子を分散させる技術が開示されている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3において用いられているシリカ粒子は特許請求の範囲欄における限定はないものの詳細な説明の(0015)段落の記載や、実施例の記載によると、溶融シリカを採用する技術である。本発明者らの検討によると、溶融シリカを採用すると、拡散する光にムラが生じる不都合があった。なお、特許文献3の記載によると特殊な組成をもつスチレン系共重合樹脂を採用することで光拡散性に優れた組成物を提供できることが開示されている。
【0007】
本発明者らの検討によると、特許文献3に開示の方法で用いた溶融シリカは、その製造方法上の限界から溶融シリカの内部には原料由来の結晶部分が残存することにより、そのまま単純に光拡散用樹脂組成物に適用すると光学的なムラが生じることが判った。つまり、溶融シリカ中に残存する結晶部分の存在により光学的な均質性が充分でなく、光の拡散性にムラが生じる原因になる。
【0008】
それに対して本発明で採用する、金属ケイ素粉末と酸素とを反応させて得られる球状無定形シリカ粒子は、速やかに反応が進行してシリカが生成するので、シリカの結晶が生じることなく粒子全体が無定形シリカから構成されるので、樹脂中に分散させた場合の光学的な均質性が向上するものである。
【0009】
また、シリコーンとそのシリコーン中に充填されているシリカ粒子とを有する光ファイバなどの光学材料に用いられるシリコーン組成物が開示されている(特許文献4)。しかしながら、特許文献4に記載のシリコーン組成物ではシリコーンと充填されているシリカ粒子との屈折率が同じであることが要求されており、シリコーンとシリカ粒子との界面において光は散乱されず、光拡散用樹脂組成物としての作用は発揮できない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光拡散用樹脂組成物は以上の構成を有することから以下の作用効果を発揮する。すなわち、熱可塑性透明樹脂中に球状無定形シリカ粒子を採用することで、均質な光拡散が実現できる。つまり、粒子形状として球状を採用した上で、結晶が存在しない無定形を採用したので、光学的な高い均質性が実現できた。更に、シリカは水分などに対する影響も受けがたい利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の光拡散用樹脂組成物について以下詳細に説明を行う。本実施形態の光拡散用樹脂組成物は球状無定形シリカ粒子とその球状無定形シリカ粒子を分散する熱可塑性透明樹脂とを有する。本実施形態の光拡散用樹脂組成物はシート状に成形してバックライト用の導光板など光を拡散させる用途に用いることができる。成形方法は特に限定されないが、熱可塑性樹脂なので樹脂の一般的な成形方法(射出成形など)が採用できる。
【0012】
球状無定形シリカ粒子と熱可塑性透明樹脂との混合比は特に限定しないが、全体の質量を基準として、球状無定形シリカ粒子が0.1質量%以上含有することが望ましく、1質量%以上含有することが更に望ましい。また、50質量%以下含有することが望ましく、20質量%以下含有することが更に望ましい。
【0013】
球状無定形シリカ粒子は金属ケイ素粉末と酸素とを反応させて製造される。なお、製造される粒子が無定形である限り、金属ケイ素粉末と同時にシリカ粉末を混合することもできる。球状無定形シリカ粒子の粒径は1μm以上であることが望ましく、1.5μm以上であることが更に望ましい。また、粒径は10μm以下であることが望ましく、5μm以下であることが更に望ましい。
【0014】
金属ケイ素粉末を酸素と反応させて球状無定形シリカ粒子を得る方法として代表的な方法は、いわゆるVMC(Vaperized Metal Combustion)法と称される方法である。VMC法では、酸素を含む雰囲気中でバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中に金属ケイ素粉末を粉塵雲が形成される程度の量投入し、爆燃を起こさせてシリカ粒子を得る。
【0015】
VMC法の作用について更に詳細に説明すれば以下のようになる。まず、容器中に反応ガスである酸素を含有するガスを充満させ、この反応ガス中で化学炎を形成する。次いで、この化学炎に金属ケイ素粉末を投入し高濃度(500g/m3以上)の粉塵雲を形成する。すると、化学炎により金属ケイ素粉末表面に熱エネルギが与えられ、金属ケイ素粉末の表面温度が上昇し、金属ケイ素粉末表面から金属ケイ素の蒸気が周囲に広がる。この金属ケイ素蒸気が酸素ガスと反応して発火し火炎を生じる。この火炎により生じた熱は、さらに金属ケイ素粉末の気化を促進し、生じた金属ケイ素蒸気と反応ガスが混合され、連鎖的に発火伝播する。このとき金属ケイ素粉末自体も破壊して飛散し、火炎伝播を促す。燃焼後に生成ガスが自然冷却されることにより、シリカ粒子の雲ができる。得られたシリカ粒子は、バグフィルターや電気集塵器等により捕集される。
【0016】
VMC法は粉塵爆発の原理を利用するものである。VMC法によれば、瞬時に大量のシリカ粒子が得られる。また、金属ケイ素粉末に対する酸化反応が瞬時に進行するので、得られるシリカ粒子には結晶が成長できず、無定形のシリカとなる。また、得られたシリカ粒子は、略真球状の形状をなす。投入する金属ケイ素粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られるシリカ粒子の粒子径を調整することが可能である。
【0017】
熱可塑性透明樹脂は拡散して使用する光に対して透明性をもつ樹脂である。そして、分散するシリカとは異なる屈折率をもつ樹脂である。例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル)、メタクリル酸、メタクリル酸エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル)、スチレン、スチレン誘導体、アクリロニトリルなどの単量体の単独重合体又は共重合体や、ポリカーボネートなどの一般的な透明樹脂を単独又は複数組み合わせて用いることができる。熱可塑性透明樹脂としては(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体を単独又は他の単量体と共に重合させた重合体が望ましい。
【0018】
熱可塑性透明樹脂に球状無定形シリカ粒子を分散させる方法は特に限定しない。例えば、両者を混合して適正な条件下(加熱溶融下や熱可塑性透明樹脂を溶解する適正な溶媒の存在下など)で混合することで分散させることができる。また、球状無定形シリカ粒子を混合した状態で熱可塑性透明樹脂を重合により製造する方法によっても分散させることができる。
【実施例1】
【0019】
熱可塑性透明樹脂としてのMS樹脂(メチルメタクリル酸−スチレン共重合体、MX121、PSジャパン株式会社製)を95質量部と、球状無定形シリカ粒子としてのSO−C6(アドマテックス製)を5質量部とを配合し、加熱しながら、ラボプラストミル(4C150、東洋精機製作所製)にて溶融混練を行い、光拡散用樹脂組成物を得た。溶融混練条件は230℃、乾燥空気雰囲気下で余熱3分、混練5分、60rpmであった。その後、厚み2mmの板を金型により成形して作成した。この板を実施例1の試験試料とした。
【0020】
(比較例1)
上記球状無定形シリカの代わりにビーズ状架橋シリコーン粒子(ジーイー東芝シリコーン(株)、トスパール120)を使用し、実施例1の試験試料と同様に厚み2mmの板を作成して比較例1の試験試料とした。
【0021】
(比較例2)
球状無定形シリカ粒子(金属ケイ素粉末を酸素とを反応させて得られるシリカ粒子)に替えて溶融シリカ(シリカを溶融して球状化することによって得られるシリカ微粒子)を採用した以外は実施例1と同様の方法で厚み2mmの板を作成し、比較例2の試験試料とした。
【0022】
〔評価〕
実施例1、比較例1及びの試験試料について、光学特性(全光線透過率、ヘイズ、a値、b値、輝度及び輝度ムラ)について評価を行った。光学特性の測定結果を表1に示す。評価は比較例1の結果を100とした場合の相対値として表した。なお、比較例2の試験試料では一見して比較例1の試験試料と大きく異なる外観をもち、導光板としての用途には使用できないことが明らかだったので詳細な光学特性の測定は行っていない。
【0023】
【表1】

【0024】
表1より明らかなように、実施例1の試験試料は市販品と同等の比較例1の試験試料と遜色のない光学的特性を有することが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ケイ素粉末と酸素とを反応させて得られる体積平均粒径が1μm以上10μm以下の球状無定形シリカ粒子と、該球状無定形シリカ粒子を分散する熱可塑性透明樹脂材料とを有することを特徴とする光拡散用樹脂組成物。
【請求項2】
前記球状無定形シリカ粒子は全体の質量を基準として0.1%以上50%以下含有する請求項1に記載の光拡散用樹脂組成物。
【請求項3】
前記球状無定形シリカ粒子の表面には、シラノール基、シリル基又はそれらのアルキルエステルが導入されている請求項1又は2に記載の光拡散用樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性透明樹脂はポリカーボネート、ポリメチルメタクリル酸、メチルメタクリル酸−スチレン共重合体、ポリアリレート・スチレン系共重合体、脂環式ポリオレフィンからなる群から選択される1種以上の樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散用樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−74970(P2008−74970A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256139(P2006−256139)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(501402730)株式会社アドマテックス (82)
【Fターム(参考)】