光検出器
【課題】プラズモン共鳴吸収を利用して光を検出するとともに、波長選択性が高く、光を電流に変換して検出する光検出器を提供する。
【解決手段】
基板4上に、電流検出プローブ1、ナノチェイン部2、電流検出プローブ3からなる光検出部が配置されている。ナノチェイン部2は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体であり、複数の金属ナノ粒子2aがボトルネックを介して互いに連結されている。電流検出プローブ1、3は、各々先端が所定の角度に形成された角部を有しており、この角部が、ナノチェイン部2の先端、すなわち、金属ナノ粒子2aの角と対向するように配置される。電流−電圧特性の初期電圧の変化により、光検出が行われる。
【解決手段】
基板4上に、電流検出プローブ1、ナノチェイン部2、電流検出プローブ3からなる光検出部が配置されている。ナノチェイン部2は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体であり、複数の金属ナノ粒子2aがボトルネックを介して互いに連結されている。電流検出プローブ1、3は、各々先端が所定の角度に形成された角部を有しており、この角部が、ナノチェイン部2の先端、すなわち、金属ナノ粒子2aの角と対向するように配置される。電流−電圧特性の初期電圧の変化により、光検出が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体を用いた光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な金属体(例えばナノメートルサイズの金属微粒子)は、その形状やサイズに応じて、可視から赤外の幅広い波長領域のうち、特定の波長領域に「局在(表面)プラズモン共鳴吸収」と称される光学応答を示しうる。局在プラズモン共鳴吸収を示す金属の例には、金、銀、および白金などの貴金属類が含まれるが、金属の種類が同じでも、サイズや形状が異なれば、局在プラズモン共鳴吸収波長も異なる。このような、微細な金属体のサイズや形状の違いによって吸収波長が変化する性質を、各種光学デバイスに応用することが試みられている。
【0003】
基板に、複数の微細な金属体を配置した金属構造体は、局在(表面)プラズモンの原理に基づいて、可視領域から赤外領域まで幅広い領域にプラズモン共鳴吸収を有しうる。このような金属構造体を、光学デバイスやセンサに応用しようとする場合には、そのプラズモン共鳴吸収の波長領域を調整することが重要である。
【0004】
また、金属構造体の表面におけるプラズモンを介した光電場増強現象により、赤外吸収が増強される現象が見いだされている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらのメカニズムは明らかにされているとは言えず、増強された吸収の定量的な計測方法なども確立されていない。したがって、所望の赤外領域にプラズモン共鳴周波数を有する金属構造体を作製することができれば、前述の現象を利用する光学デバイスや計測システムが構築されうる。
【0005】
前述の金属構造体が有するプラズモン共鳴吸収の波長領域は、基板上に配置された微細な金属体の「細長さ(微細な金属体がロッド状である場合は、そのアスペクト比)」に影響される。つまり、基板上に細長い(アスペクト比の高い)微細金属を配置すれば、プラズモン共鳴吸収の波長領域は長波長側にシフトし、基板上に短い(アスペクト比の低い)微細金属を配置すれば、プラズモン共鳴吸収の波長領域は短波長側にシフトする。
【0006】
一方、複数のロッド状のナノ金属(金:Au)体を、化学的に結合させて連結させる技術が知られている(例えば、非特許文献2、3参照)。化学結合(例えばストレプトアビジン−ビオチン相互作用)により連結されたナノ金属体は、あくまでも金属ではない化学物質を介して結合しているのであって、厳密にはナノ金属体同士が直接連結していない。また、直線上にナノ金属体を連結させることは困難である。
【非特許文献1】Applied Physics A,vol.29,pp.71-75(1982)
【非特許文献2】J.Phys.Chem.B,108,13066(2004)
【非特許文献3】JACS,125,13915(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の通り、長波長側(例えば赤外領域)にプラズモン共鳴吸収を有する金属構造体を得るには、細長い微細金属体(例えば、アスペクト比の高いロッド状微細金属体)を形成する必要があるが、細長い微細金属体単体であるとマルチモードに基づく吸収が発生して、波長選択性が悪くなり、光検出器等の光学デバイスに用いる際には問題となる。
【0008】
したがって、局在プラズモンの共鳴波長が長波長側にある金属構造体を用い、マルチモードに基づく吸収を示さず(つまり、波長選択性が高い)、テラヘルツ領域の光の検出を可能にした光検出器は実現されていなかった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、プラズモン共鳴吸収を利用して光を検出するとともに、波長選択性が高く、光を電流に変換して検出する光検出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、複数の金属ナノ粒子がボトルネックを介して互いに連結されたナノチェイン部と、正負の電流検出プローブが基板上に配置された光検出部を備えた光検出器であって、プラズモン共鳴吸収を有する前記ナノチェイン部が前記正負の電流検出プローブによって挟み込まれていることを特徴とする光検出器である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、前記ナノチェイン部の長さ方向の両端を前記正負の電流検出プローブによって挟み込んだ構造であって、前記ナノチェイン部の一端の金属ナノ粒子と少なくとも一方の電流検出プローブの先端とは、所定のギャップを隔てて配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器である。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、前記ナノチェイン部の一端の金属ナノ粒子の先端を前記正負の電流検出プローブで所定のギャップを隔てて挟み込むように配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器である。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、前記ナノチェイン部のいずれかの金属ナノ粒子の両側を前記正負の電流検出プローブで挟み込んだ構造であって、少なくとも一方の電流検出プローブと前記金属ナノ粒子との一側面とは所定のギャップを隔てて配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器である。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、前記正負の電流検出プローブ間には所定の電圧が印加されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光検出器。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、前記ナノチェイン部によるプラズモン共鳴吸収の吸収波長が異なるように形成された複数の光検出部を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光検出器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光検出器によれば、波長選択性が高いので、テラヘルツ領域の光を正確に検出することができ、光の強度についても検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1(a)は本発明の光検出器の平面図(上面図)を示し、図1(b)は、図1(a)の断面図を示す。
【0018】
基板4上に、電流検出プローブ1、ナノチェイン部2、電流検出プローブ3からなる光検出部が配置されている。ナノチェイン部2は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体であり、複数の金属ナノ粒子2aがボトルネックを介して互いに連結されている。ここでボトルネックとは、図1又は図4(b)に示されるように、金属ナノ粒子2aの一部が重なり合って形成される部位を意味する。つまり、一のナノ粒子2aと隣接するナノ粒子2aとがわずかに重なり合うことによって、一のナノ粒子に含まれる自由電子が、隣接するナノ粒子に移動することをある程度許容することができる。
【0019】
また、金属ナノ粒子2aの材質は、ナノ粒子とされることによって表面プラズモン吸収を生じる金属であればよく、その例には金、銀、白金などの貴金属類が含まれる。また金属ナノ粒子2aは、これらの金属によって被覆された、他の材料からなるナノ物体であってもよい。
【0020】
上述したように、ナノチェイン部2は、複数の金属ナノ粒子2aがボトルネックを介して互いに連結されているが、複数のボトルネックがある(つまり、3以上の金属ナノ粒子が連結されている)場合は、図3に示すように、それぞれのボトルネック中心は直線上に配置されることが好ましい。図3では、4個の金属ナノ粒子が連結されているが、ボトルネック中心は直線上に配置されている方が、それぞれのボトルネックを通じて、自由電子が微粒子間を移動しやすくなる。
【0021】
連結される金属ナノ粒子の形状は、特に制限されないが、例えば直方体状である。金属ナノ粒子の形状が直方体状である場合は、その稜線同士で金属ナノ粒子が連結されることによって、ボトルネックが形成されることが好ましい。それにより、ボトルネックのネック幅を容易に小さくすることができる。
【0022】
基板に対して垂直上から見たとき、すなわち平面図では金属ナノ粒子は多角形状となって、角部を有していることが好ましい。さらに、連結される金属ナノ粒子の形状は、正方形と長方形からなる面で構成される直方体であることが好ましく、正方形の面が基板面と水平となるように配置されていることが好ましい。つまり、平面図では金属ナノ粒子は正方形と見えることが好ましい。
【0023】
連結される金属ナノ粒子の堆積は10万nm3〜100万nm3程度であることが好ましい。さらに、金属ナノ粒子の、基板上面からみたときの面積は5千nm2〜2万nm2程度であることが好ましい。また、金属ナノ粒子の基板からの高さは10〜100nm程度であることが好ましい。
【0024】
連結される金属ナノ粒子の数は、2〜50程度であることが好ましい。吸収共鳴波長は金属ナノ粒子の数におよそ比例するので、連結される金属ナノ粒子の数(ボトルネックを通じる金属体の長さ)は、目的とする共鳴吸収波長に応じて適宜選択すればよい。
【0025】
次に、基板4は、金属ナノ粒子2aを配置することができる基板であればよいが、少なくとも金属ナノ粒子2aが配置される面が絶縁体である固体基板であることが好ましい。光検出器として利用するので、外部から入射される光(例えば、可視領域から近赤外領域の光)を吸収しない材質からなる基板であることが好ましく、例えば透明基板で構成される。ナノチェイン部2は、後述の通り半導体微細加工技術(例えば、電子線描画やスパッタリングなど)を用いて製造されるので、その加工に耐える基板であることが必要である。したがって、基板4には、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板等が使用される。
【0026】
次に、基板4上にナノチェイン部2を形成する場合の製造方法を図12を参照しつつ以下に述べる。ナノチェイン部2は、好ましくは半導体微細加工技術を用いて製造される。例えば、図12(a)に示されるように固体基板4を用意し、図12(a)のように固体基板4の表面にレジスト11をコートして、レジスト11に所望のナノ金属体の形状を電子線で描画し、図12(c)のように描画を現像してナノ金属体の形状に合わせて基板を露出させる。
【0027】
その後、図12(d)のように、現像画面上から金属をスパッタリングして金属膜12を形成して、リフトオフによりレジストとともに不要な金属膜を除去して図12(d)のように金属ナノ粒子2aが連結されたナノチェイン部2が形成される。
【0028】
ナノチェイン部の製造方法は、例えば特願2005−080579または特願2005−258364に記載された金属構造体の製造方法と同様にして行うことができる。重要な製造条件の一つは、基板にコートするレジストの膜厚である。当該膜厚は200nm以下とすることが好ましい。また、膜厚を薄くするためにはコートするレジスト溶液の濃度を下げることが好ましい。
【0029】
重要な製造条件の別の一つは、レジストに、所望のナノ金属体の形状を電子線で描画するステップにおける電子線の露光条件である。すなわち、電子線の加速電圧を大きくして、同時に露光のドーズレートを小さくすることが好ましく;より具体的には、電子線の加速電圧を100kV〜200kVとして、かつ露光のドーズレートを2マイクロC/cm2以下とすることが好ましい。
【0030】
重要な製造条件の別の一つは、描画されたレジストを除去する現象の条件、特に現象時間である。露光のドーズレートが小さいため、現像時間を長くすること、例えば30分程度行うことが好ましい。
【0031】
連結された金属ナノ粒子における複数のボトルネックは、前述の通り、直線上に配置されていることが好ましいが、図4(a)に示されるように、この直線上におけるナノチェイン部2全体の長さXは、共鳴波長に合わせて設定する。ナノチェイン部2の長さXは、連結される金属ナノ粒子のサイズ、および連結される金属ナノ粒子の数などによって調整される。当該ナノチェイン部2の長さを長くすると、金属構造体のプラズモン共鳴吸収波長が長波長側にシフトする。
【0032】
上記の内容については、特願2006−182637に詳しいのであるが、プラズモン共鳴吸収波長が、特にナノチェイン部2の長さXに依存することについて、以下に示す。
【0033】
まず、サファイア基板上にナノチェイン部2を以下のように形成した。サファイア基板(10mm×10mm)の表面を、アセトン、メタノール、超純水の順に、それぞれ3分間の超音波洗浄をした。洗浄された基板表面に、ポジ型電子リソグラフィ用レジスト(Zep-520a;日本ゼオン株式会社社製)をスピンコート(4000rpm)して、レジスト薄膜(厚さ:200nm)を形成した。加速電圧100kVの電子ビーム露光装置を用いて、1.2μC/cm2のドーズレートで、所望のナノチェイン部2のパターンを描画した。現像を30分間行い、リンスして、乾燥させた。
【0034】
次に基板上に金(Au)をスパッタリングして金属膜(40nm)を形成した。金属膜を形成された基板を、レジストリムーバー溶液中に浸漬して、超音波洗浄を行って、レジストの除去、およびリフトオフをした。
【0035】
サファイア基板上に、1から25の直方体状の金属ナノ粒子を連結させた形状を有する金属体をそれぞれ形成して、金属構造体(ナノチェイン部2)を得た。金属ナノ粒子の成分は金(Au)とした。各ナノブロック状のナノチェイン部の各金属ナノ粒子は、基板上面からみたときに100nm×100nmの正方形であって、基板からの高さが40nmである直方体状とした。直方体の稜線で連結するボトルネックを形成し、そのボトルネックのネック幅を図4(b)のように、4.4nmとした。基板に形成された各ナノチェイン部の方向をそれぞれ同一として、各ナノチェイン部の間隔を1000nmで一定とした。
【0036】
上記の形成により得られたそれぞれの金属構造体に、顕微FT−IR測定装置を用いて、その上面から波長を660nm〜7142nm(波数15000cm−1〜1400cm−1)の光を照射し、その吸収度を測定した。得られた結果が、図6(a)および(b)に示される。図6(a)には連結された金属ナノ粒子の数nが1〜7の金属体が配置されたナノチェイン部のデータが、図4(b)には連結された金属ナノ粒子の数nが6〜25のナノチェイン部が配置された金属構造体のデータが示される。金属ナノ粒子の数nが1である金属体が配置された金属構造体のスペクトルデータは、ピークが示されていないが、これは表示範囲外(より高エネルギー側)に存在しているためである。金蔵ナノ粒子の数nと、ナノチェイン部の長さXとの関係は、図5の通りである。
【0037】
図6(a)および(b)に示されるように、連結された金属ナノ粒子の数nを増やして金属体の長さXを長くするほど、スペクトルの半値幅が減少し、光子エネルギーの小さい領域の光(波長の長い光)を吸収することがわかる。これは、共鳴波長が長波長側にシフトすることによって、プラズモンの位相緩和時間が長くなるためであると考えられる。
【0038】
図6に示されるように、金属ナノ粒子を連結させたナノチェイン部を配置した金属構造体は、双極子モードのプラズモン共鳴吸収だけが観測された。これは、ボトルネックのナノコンタクトを行き来する自由電子に基づくプラズモン共鳴バンドだけが観測されるためであると推察される。
【0039】
以上のように、ナノチェイン部2の長さXを変化させることにより、吸収させる光の波長を変化させることができ、これを応用することにより、光の検出が行える。
【0040】
一方、電流検出プローブ1、3は、金属パターンで形成されており、例えば、Cr(クロム)を5nmの膜厚で基板4上に形成した後、Cr上にAu(金)を膜厚40nm積層した金属多層膜で構成される。金属ナノ粒子2aは、多角形状に形成されており、本実施例では正方形としている。これら電流検出プローブ1、3は、スパッタリングや蒸着により形成される。
【0041】
また、電流検出プローブ1、3は、各々先端が所定の角度に形成された角部を有しており、この角部が、ナノチェイン部2の先端に存在する金属ナノ粒子2aの角と対向するように配置される。図1では、電流検出プローブ1は負極側のプローブを、電流検出プローブ3は正極側のプローブを構成しており、図1のように正極側プローブ及び負極側プローブを各々1個だけとするのではなく、正負各極に複数のプローブを配置して電流を検出することも可能である。
【0042】
また、電流検出プローブ1、3の角部とナノチェイン部2の先端の金属ナノ粒子2aの角部とのギャップ幅tは、0<t≦10(nm)の範囲に形成される。このギャップは、電流検出プローブ1とナノチェイン部2の一端の金属ナノ粒子との間又は、電流検出プローブ3とナノチェイン部2の他端の金属ナノ粒子との間の少なくとも一方に存在すれば良く、完全に短絡していなければ良い。したがって、例えば、電流検出プローブ1とナノチェイン部2の一端の金属ナノ粒子とのギャップ幅tが0<t≦10(nm)の範囲に形成される場合は、電流検出プローブ3とナノチェイン部2の他端の金属ナノ粒子とのギャップ幅tは0≦t≦10(nm)の範囲に形成される。ここで、電流検出プローブ1と3の間には、抵抗5と電源6が直列に接続されている。電源6には、直流電源が用いられる。ナノチェイン部2が光を受光していない状態で、直流電源6の電圧Vを変化させて、電流検出プローブ1、3間に流れる電流Iを検出して、電流−電圧特性(I−V特性)を計測すれば、図2のX1のような特性となる。模式的に描いているが、階段状に近い形となる。
【0043】
電流検出プローブ1、3とナノチェイン部2とは、ギャップを有し、短絡していないので、電流は流れないのであるが、一定の電圧よりも大きくなれば、電流が流れる。一方、ナノチェイン部2に光が照射された場合には、ナノチェイン部2の長さXに対応した波長のプラズモン共鳴吸収が行われ、分極が発生する。これにより、一定電圧に対して流れる電流量が変化する。そのため、電流量の増減を見ることで、共鳴吸収が行われている波長の光強度の増減がわかる。
【0044】
この実験結果を示すのが、図7、8、9である。図7は、図1のような光検出器を作製し、ナノチェイン部2の長さXを調整して、波長1000nm付近にプラズモン共鳴吸収があるようにした。そして、電流検出プローブ3とナノチェイン部2の右側先端とは短絡し、波長約1000nmのレーザ光をナノチェイン部2と電流検出プローブ1とのギャップ間に照射して、電流−電圧特性がどのように変動するのかを測定したものである。
【0045】
レーザを駆動するための駆動電流を変化させていった場合、電流検出プローブ1、3間に電流が流れ始める初期電圧V0が、レーザ駆動電流が59mA以上になると急激に小さくなる(図の左側にシフト)ことが示されている。図8は、図7のLD駆動電流と初期電圧V0との関係をグラフにして示したものである。なお、図8の縦軸の初期電圧V0は、図7の電圧軸の正負を逆した値で表わしており、縦軸の上側になるほど、初期電圧V0の値が小さくなることを示す。
【0046】
レーザ発振が始まるレーザ閾値電流47.9mAまでは、初期電圧V0は、ほぼ0μVであるが、レーザ閾値電流47.9mAを越えたところから、初期電圧V0は小さくなりはじめ、レーザ駆動電流が60mA付近になると、急激に初期電圧V0が大きく変動している。このように、レーザ光の発振が始まった直後から、レーザ光の強度にしたがい、初期電圧V0の変動も大きくなる。
【0047】
一方、図1の光検出器を上記のレーザ照射の実験と同じ構成にして光源ランプの光を照射した状態で電流−電圧測定を行った結果が図9のY2であり、光源ランプをオフにして光を照射しない状態の電流−電圧測定の結果が図9のY1である。
【0048】
このように、光の照射があるY2の曲線の方が、Y1よりも電流が流れ始める初期電圧が小さくなっており、グラフ全体も左側にシフトしている。ところで、ナノチェイン部2と電流検出プローブ1を短絡し、ナノチェイン部2と電流検出プローブ3を短絡して図1の回路を短絡した場合に、光源ランプの光を照射したときの電流−電圧特性をZ2、光源ランプの光を照射しないときの電流−電圧特性をZ1で表わしている。このように、短絡した場合は、光を照射しても、しなくても、電流−電圧特性にほとんど変化はない。以上のように、光を照射することによりギャップ間に電位差が生じることがわかる。
【0049】
図10は、正極及び負極の電流検出プローブ1とナノチェイン部2との配置の変形例について示す。図10(a)は、ナノチェイン部2の端にある金属ナノ粒子2aの先端角部を電流検出プローブ1、3で挟み込むように配置したものである。このときの電流検出プローブ1、3間のギャップ幅tは、前述のように0<t≦10(nm)の範囲に形成される。
【0050】
図10(b)は、ナノチェイン部2の端にある金属ナノ粒子2aの対向する2つの角部の一方(一側面)に向かって電流検出プローブ1を、他方に電流検出プローブ3を配置したものである。この場合は、金属ナノ粒子2aと電流検出プローブ1とのギャップ幅t及び金属ナノ粒子2aと電流検出プローブ3とのギャップ幅tの少なくとも一方は、0<t≦10(nm)の範囲に形成され、他方のギャップ幅tは、0≦t≦10(nm)の範囲に形成される。図10(c)は、図10(b)における電流検出プローブ1、3の配置をナノチェイン部2の中央部にある金属ナノ粒子2aの角部に移動させた構成となっている。
【0051】
ところで、図1の構成では、電流検出プローブ1、ナノチェイン部2、電流検出プローブ3からなる光検出部が基板4上に1セットのみ配置されているが、基板上にナノチェイン部2の全体の長さを変えたものを複数配置し、この各ナノチェイン部に対応して正負1対の電流検出プローブを配置して、様々な波長を1度に検出できる光検出器を構成することができる。
【0052】
上記実施例では、ナノチェイン部2の金属ナノ粒子の平面形状を正方形としたが、その他の形状でも構成することができる。図12(a)は各金属ナノ粒子2bの平面形状が円形に、図12(b)は各金属ナノ粒子2cの平面形状が二等辺三角形に、図12(c)は各金属ナノ粒子2dの平面形状が菱形に形成されている。連結される金属ナノ粒子は、厚みを有しているので、3次元形状で言えば、図12(a)の形状は円柱状、図12(b)は三角柱状、図12(c)は四角柱状である。以下に、金属ナノ粒子の平面形状を変化させた場合の特性の相違を説明する。
【0053】
図13は、異なる形状の金属ナノ粒子のボトルネック部分を示したものであり、図13(a)は金属ナノ粒子の平面形状が正方形、図13(b)は図12(a)と同様、金属ナノ粒子の平面形状が円形、図13(c)は図12(b)と同様、金属ナノ粒子の平面形状が二等辺三角形、図13(d)は図12(c)と同様、金属ナノ粒子の平面形状が菱形に形成されている。
【0054】
図13の(a)、(b)、(c)、(d)には、金属ナノ粒子を連結するボトルネックのネック長さt1、t2、t3、t4が示されている。ネック長さが小さいほど、ナノチェイン部のマルチモードに基づく吸収が除去されて、波長選択性が向上する。一方ネック幅が小さすぎると、ボトルネック近傍におけるプラズモン電子の散乱が大きくなることがある。また、ナノチェイン部の金属ナノ粒子も連結個数を同じにし、そのときの長さXが、図13の(a)、(b)、(c)、(d)が各々等しくなるように構成した。Xは例えば、図13のように2つの金属ナノ粒子を連結した場合は282nmになるように形成し、各形状の金属ナノ粒子の厚みは30nmとした。
【0055】
図11に示される製造方法により、サファイア基板上に、図12(a)、(b)、(c)に示される金属ナノ粒子からなるナノチェインを作製した。また、図1又は図13(a)に示される正方形状の金属ナノ粒子による金属ナノチェインも作製した。この場合、図13に示されるボトルネックのネック長さt1、t2、t3、t4は、t1=t2=t3=t4=4.5nmとした。また、ナノチェイン部の金属ナノ粒子も連結個数を同じにし、そのときの長さXが、図13の(a)、(b)、(c)、(d)が各々等しくなるように構成した。図13のように2つの金属ナノ粒子を連結した場合は282nmになるように形成し、各形状の金属ナノ粒子の厚みは30nmとした。
【0056】
上記の形成により得られたそれぞれの金属構造体に、顕微FT−IR測定装置を用いて、その上面から波長を660nm〜7142nm(波数15000cm−1〜1400cm−1)の光を照射し、その吸光度を測定した。得られた結果が、図14、15に示される。
【0057】
図14の縦軸は吸光のピーク波長を、横軸は金属ナノ粒子の数を示す。また、黒四角が、図1又は図13(a)に示される正方形状の金属ナノ粒子によるデータを示し、黒丸(●)は、図12(a)の金属ナノチェインによるデータを、黒三角(▲)は図12(b)の金属ナノチェインによるデータを、黒菱形(◆)は図12(c)の金属ナノチェインによるデータを示す。金属ナノ粒子の数が増えて、金属ナノチェインの長さが大きくなると、ピークエネルギーが低下するため、ピーク波長は大きくなっている。
【0058】
図14で測定されたデータについて、各々吸光スペクトルのピーク周波数のFWHM(半値幅)を計測してグラフにしたのが、図15である。縦軸がFWHM(THz)を示し、横軸がピーク周波数f(THz)を示す。図15にプロットされたデータは、図14のデータと対応するもので、金属ナノ粒子の数が多くなるとピーク波長が大きくなり、一方ピーク周波数は小さくなるので、図15の横軸方向は、金属ナノ粒子の数が多いデータから少ないデータへの並びに対応する。
【0059】
正方形状の金属ナノ粒子(図の黒四角データ)の場合は、他の円形、三角形、菱形の金属ナノ粒子を用いた場合と比較すると、検出されたピーク周波数全般についてFWHMがかなり大きくなっていることがわかる。このように、金属ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の平面形状を円形、三角形、菱形のいずれかの形状とすることで、正方形の金属ナノ粒子を用いた場合よりも、狭帯域の波長を吸収させることができる。一方、正方形の形状を選んだ場合には、広帯域の波長を吸収させることができる。所望の波長分解能に応じて、ナノ粒子の形状を適宜選択して、本発明の光検出器を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の光検出器の構造を示す図である。
【図2】図1の光検出器に光を照射してプラズモン共鳴吸収が起きた場合の電流−電圧特性を示す模式図である。
【図3】ナノチェイン部の構造例を示す模式図である。
【図4】ナノチェイン部の長さとボトルネックのネック幅を示す模式図である。
【図5】金属ナノ粒子の数とナノチェイン部の長さとの関係を示す図である。
【図6】ナノチェイン部の局在プラズモンバンドを示す図である。
【図7】電流検出プローブとナノチェイン部とのギャップ間にレーザ光を照射した場合のI−V特性を示す図である。
【図8】図8のデータをLD駆動電流と初期電圧との関係に変換した場合の変化を示す図である。
【図9】光源ランプの光を照射した場合と照射しない場合の各I−V特性を示す図である。
【図10】正極及び負極の電流検出プローブとナノチェイン部との配置例を示す図である。
【図11】ナノチェイン部の製造工程の例を示す図である。
【図12】ナノチェイン部の他の構成例を示す模式図である。
【図13】ナノチェイン部のボトルネックの長さを示す模式図である。
【図14】図13の各ナノチェイン部を用いた場合の金属ナノ粒子数とピーク波長との関係を示す図である。
【図15】図14のデータに対応するピーク周波数とスペクトルのFWHMとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 電流検出プローブ
2 ナノチェイン部
2a 金属ナノ粒子
3 電流検出プローブ
4 基板
5 抵抗
6 電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体を用いた光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な金属体(例えばナノメートルサイズの金属微粒子)は、その形状やサイズに応じて、可視から赤外の幅広い波長領域のうち、特定の波長領域に「局在(表面)プラズモン共鳴吸収」と称される光学応答を示しうる。局在プラズモン共鳴吸収を示す金属の例には、金、銀、および白金などの貴金属類が含まれるが、金属の種類が同じでも、サイズや形状が異なれば、局在プラズモン共鳴吸収波長も異なる。このような、微細な金属体のサイズや形状の違いによって吸収波長が変化する性質を、各種光学デバイスに応用することが試みられている。
【0003】
基板に、複数の微細な金属体を配置した金属構造体は、局在(表面)プラズモンの原理に基づいて、可視領域から赤外領域まで幅広い領域にプラズモン共鳴吸収を有しうる。このような金属構造体を、光学デバイスやセンサに応用しようとする場合には、そのプラズモン共鳴吸収の波長領域を調整することが重要である。
【0004】
また、金属構造体の表面におけるプラズモンを介した光電場増強現象により、赤外吸収が増強される現象が見いだされている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらのメカニズムは明らかにされているとは言えず、増強された吸収の定量的な計測方法なども確立されていない。したがって、所望の赤外領域にプラズモン共鳴周波数を有する金属構造体を作製することができれば、前述の現象を利用する光学デバイスや計測システムが構築されうる。
【0005】
前述の金属構造体が有するプラズモン共鳴吸収の波長領域は、基板上に配置された微細な金属体の「細長さ(微細な金属体がロッド状である場合は、そのアスペクト比)」に影響される。つまり、基板上に細長い(アスペクト比の高い)微細金属を配置すれば、プラズモン共鳴吸収の波長領域は長波長側にシフトし、基板上に短い(アスペクト比の低い)微細金属を配置すれば、プラズモン共鳴吸収の波長領域は短波長側にシフトする。
【0006】
一方、複数のロッド状のナノ金属(金:Au)体を、化学的に結合させて連結させる技術が知られている(例えば、非特許文献2、3参照)。化学結合(例えばストレプトアビジン−ビオチン相互作用)により連結されたナノ金属体は、あくまでも金属ではない化学物質を介して結合しているのであって、厳密にはナノ金属体同士が直接連結していない。また、直線上にナノ金属体を連結させることは困難である。
【非特許文献1】Applied Physics A,vol.29,pp.71-75(1982)
【非特許文献2】J.Phys.Chem.B,108,13066(2004)
【非特許文献3】JACS,125,13915(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の通り、長波長側(例えば赤外領域)にプラズモン共鳴吸収を有する金属構造体を得るには、細長い微細金属体(例えば、アスペクト比の高いロッド状微細金属体)を形成する必要があるが、細長い微細金属体単体であるとマルチモードに基づく吸収が発生して、波長選択性が悪くなり、光検出器等の光学デバイスに用いる際には問題となる。
【0008】
したがって、局在プラズモンの共鳴波長が長波長側にある金属構造体を用い、マルチモードに基づく吸収を示さず(つまり、波長選択性が高い)、テラヘルツ領域の光の検出を可能にした光検出器は実現されていなかった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、プラズモン共鳴吸収を利用して光を検出するとともに、波長選択性が高く、光を電流に変換して検出する光検出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、複数の金属ナノ粒子がボトルネックを介して互いに連結されたナノチェイン部と、正負の電流検出プローブが基板上に配置された光検出部を備えた光検出器であって、プラズモン共鳴吸収を有する前記ナノチェイン部が前記正負の電流検出プローブによって挟み込まれていることを特徴とする光検出器である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、前記ナノチェイン部の長さ方向の両端を前記正負の電流検出プローブによって挟み込んだ構造であって、前記ナノチェイン部の一端の金属ナノ粒子と少なくとも一方の電流検出プローブの先端とは、所定のギャップを隔てて配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器である。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、前記ナノチェイン部の一端の金属ナノ粒子の先端を前記正負の電流検出プローブで所定のギャップを隔てて挟み込むように配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器である。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、前記ナノチェイン部のいずれかの金属ナノ粒子の両側を前記正負の電流検出プローブで挟み込んだ構造であって、少なくとも一方の電流検出プローブと前記金属ナノ粒子との一側面とは所定のギャップを隔てて配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器である。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、前記正負の電流検出プローブ間には所定の電圧が印加されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光検出器。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、前記ナノチェイン部によるプラズモン共鳴吸収の吸収波長が異なるように形成された複数の光検出部を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光検出器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光検出器によれば、波長選択性が高いので、テラヘルツ領域の光を正確に検出することができ、光の強度についても検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1(a)は本発明の光検出器の平面図(上面図)を示し、図1(b)は、図1(a)の断面図を示す。
【0018】
基板4上に、電流検出プローブ1、ナノチェイン部2、電流検出プローブ3からなる光検出部が配置されている。ナノチェイン部2は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体であり、複数の金属ナノ粒子2aがボトルネックを介して互いに連結されている。ここでボトルネックとは、図1又は図4(b)に示されるように、金属ナノ粒子2aの一部が重なり合って形成される部位を意味する。つまり、一のナノ粒子2aと隣接するナノ粒子2aとがわずかに重なり合うことによって、一のナノ粒子に含まれる自由電子が、隣接するナノ粒子に移動することをある程度許容することができる。
【0019】
また、金属ナノ粒子2aの材質は、ナノ粒子とされることによって表面プラズモン吸収を生じる金属であればよく、その例には金、銀、白金などの貴金属類が含まれる。また金属ナノ粒子2aは、これらの金属によって被覆された、他の材料からなるナノ物体であってもよい。
【0020】
上述したように、ナノチェイン部2は、複数の金属ナノ粒子2aがボトルネックを介して互いに連結されているが、複数のボトルネックがある(つまり、3以上の金属ナノ粒子が連結されている)場合は、図3に示すように、それぞれのボトルネック中心は直線上に配置されることが好ましい。図3では、4個の金属ナノ粒子が連結されているが、ボトルネック中心は直線上に配置されている方が、それぞれのボトルネックを通じて、自由電子が微粒子間を移動しやすくなる。
【0021】
連結される金属ナノ粒子の形状は、特に制限されないが、例えば直方体状である。金属ナノ粒子の形状が直方体状である場合は、その稜線同士で金属ナノ粒子が連結されることによって、ボトルネックが形成されることが好ましい。それにより、ボトルネックのネック幅を容易に小さくすることができる。
【0022】
基板に対して垂直上から見たとき、すなわち平面図では金属ナノ粒子は多角形状となって、角部を有していることが好ましい。さらに、連結される金属ナノ粒子の形状は、正方形と長方形からなる面で構成される直方体であることが好ましく、正方形の面が基板面と水平となるように配置されていることが好ましい。つまり、平面図では金属ナノ粒子は正方形と見えることが好ましい。
【0023】
連結される金属ナノ粒子の堆積は10万nm3〜100万nm3程度であることが好ましい。さらに、金属ナノ粒子の、基板上面からみたときの面積は5千nm2〜2万nm2程度であることが好ましい。また、金属ナノ粒子の基板からの高さは10〜100nm程度であることが好ましい。
【0024】
連結される金属ナノ粒子の数は、2〜50程度であることが好ましい。吸収共鳴波長は金属ナノ粒子の数におよそ比例するので、連結される金属ナノ粒子の数(ボトルネックを通じる金属体の長さ)は、目的とする共鳴吸収波長に応じて適宜選択すればよい。
【0025】
次に、基板4は、金属ナノ粒子2aを配置することができる基板であればよいが、少なくとも金属ナノ粒子2aが配置される面が絶縁体である固体基板であることが好ましい。光検出器として利用するので、外部から入射される光(例えば、可視領域から近赤外領域の光)を吸収しない材質からなる基板であることが好ましく、例えば透明基板で構成される。ナノチェイン部2は、後述の通り半導体微細加工技術(例えば、電子線描画やスパッタリングなど)を用いて製造されるので、その加工に耐える基板であることが必要である。したがって、基板4には、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板等が使用される。
【0026】
次に、基板4上にナノチェイン部2を形成する場合の製造方法を図12を参照しつつ以下に述べる。ナノチェイン部2は、好ましくは半導体微細加工技術を用いて製造される。例えば、図12(a)に示されるように固体基板4を用意し、図12(a)のように固体基板4の表面にレジスト11をコートして、レジスト11に所望のナノ金属体の形状を電子線で描画し、図12(c)のように描画を現像してナノ金属体の形状に合わせて基板を露出させる。
【0027】
その後、図12(d)のように、現像画面上から金属をスパッタリングして金属膜12を形成して、リフトオフによりレジストとともに不要な金属膜を除去して図12(d)のように金属ナノ粒子2aが連結されたナノチェイン部2が形成される。
【0028】
ナノチェイン部の製造方法は、例えば特願2005−080579または特願2005−258364に記載された金属構造体の製造方法と同様にして行うことができる。重要な製造条件の一つは、基板にコートするレジストの膜厚である。当該膜厚は200nm以下とすることが好ましい。また、膜厚を薄くするためにはコートするレジスト溶液の濃度を下げることが好ましい。
【0029】
重要な製造条件の別の一つは、レジストに、所望のナノ金属体の形状を電子線で描画するステップにおける電子線の露光条件である。すなわち、電子線の加速電圧を大きくして、同時に露光のドーズレートを小さくすることが好ましく;より具体的には、電子線の加速電圧を100kV〜200kVとして、かつ露光のドーズレートを2マイクロC/cm2以下とすることが好ましい。
【0030】
重要な製造条件の別の一つは、描画されたレジストを除去する現象の条件、特に現象時間である。露光のドーズレートが小さいため、現像時間を長くすること、例えば30分程度行うことが好ましい。
【0031】
連結された金属ナノ粒子における複数のボトルネックは、前述の通り、直線上に配置されていることが好ましいが、図4(a)に示されるように、この直線上におけるナノチェイン部2全体の長さXは、共鳴波長に合わせて設定する。ナノチェイン部2の長さXは、連結される金属ナノ粒子のサイズ、および連結される金属ナノ粒子の数などによって調整される。当該ナノチェイン部2の長さを長くすると、金属構造体のプラズモン共鳴吸収波長が長波長側にシフトする。
【0032】
上記の内容については、特願2006−182637に詳しいのであるが、プラズモン共鳴吸収波長が、特にナノチェイン部2の長さXに依存することについて、以下に示す。
【0033】
まず、サファイア基板上にナノチェイン部2を以下のように形成した。サファイア基板(10mm×10mm)の表面を、アセトン、メタノール、超純水の順に、それぞれ3分間の超音波洗浄をした。洗浄された基板表面に、ポジ型電子リソグラフィ用レジスト(Zep-520a;日本ゼオン株式会社社製)をスピンコート(4000rpm)して、レジスト薄膜(厚さ:200nm)を形成した。加速電圧100kVの電子ビーム露光装置を用いて、1.2μC/cm2のドーズレートで、所望のナノチェイン部2のパターンを描画した。現像を30分間行い、リンスして、乾燥させた。
【0034】
次に基板上に金(Au)をスパッタリングして金属膜(40nm)を形成した。金属膜を形成された基板を、レジストリムーバー溶液中に浸漬して、超音波洗浄を行って、レジストの除去、およびリフトオフをした。
【0035】
サファイア基板上に、1から25の直方体状の金属ナノ粒子を連結させた形状を有する金属体をそれぞれ形成して、金属構造体(ナノチェイン部2)を得た。金属ナノ粒子の成分は金(Au)とした。各ナノブロック状のナノチェイン部の各金属ナノ粒子は、基板上面からみたときに100nm×100nmの正方形であって、基板からの高さが40nmである直方体状とした。直方体の稜線で連結するボトルネックを形成し、そのボトルネックのネック幅を図4(b)のように、4.4nmとした。基板に形成された各ナノチェイン部の方向をそれぞれ同一として、各ナノチェイン部の間隔を1000nmで一定とした。
【0036】
上記の形成により得られたそれぞれの金属構造体に、顕微FT−IR測定装置を用いて、その上面から波長を660nm〜7142nm(波数15000cm−1〜1400cm−1)の光を照射し、その吸収度を測定した。得られた結果が、図6(a)および(b)に示される。図6(a)には連結された金属ナノ粒子の数nが1〜7の金属体が配置されたナノチェイン部のデータが、図4(b)には連結された金属ナノ粒子の数nが6〜25のナノチェイン部が配置された金属構造体のデータが示される。金属ナノ粒子の数nが1である金属体が配置された金属構造体のスペクトルデータは、ピークが示されていないが、これは表示範囲外(より高エネルギー側)に存在しているためである。金蔵ナノ粒子の数nと、ナノチェイン部の長さXとの関係は、図5の通りである。
【0037】
図6(a)および(b)に示されるように、連結された金属ナノ粒子の数nを増やして金属体の長さXを長くするほど、スペクトルの半値幅が減少し、光子エネルギーの小さい領域の光(波長の長い光)を吸収することがわかる。これは、共鳴波長が長波長側にシフトすることによって、プラズモンの位相緩和時間が長くなるためであると考えられる。
【0038】
図6に示されるように、金属ナノ粒子を連結させたナノチェイン部を配置した金属構造体は、双極子モードのプラズモン共鳴吸収だけが観測された。これは、ボトルネックのナノコンタクトを行き来する自由電子に基づくプラズモン共鳴バンドだけが観測されるためであると推察される。
【0039】
以上のように、ナノチェイン部2の長さXを変化させることにより、吸収させる光の波長を変化させることができ、これを応用することにより、光の検出が行える。
【0040】
一方、電流検出プローブ1、3は、金属パターンで形成されており、例えば、Cr(クロム)を5nmの膜厚で基板4上に形成した後、Cr上にAu(金)を膜厚40nm積層した金属多層膜で構成される。金属ナノ粒子2aは、多角形状に形成されており、本実施例では正方形としている。これら電流検出プローブ1、3は、スパッタリングや蒸着により形成される。
【0041】
また、電流検出プローブ1、3は、各々先端が所定の角度に形成された角部を有しており、この角部が、ナノチェイン部2の先端に存在する金属ナノ粒子2aの角と対向するように配置される。図1では、電流検出プローブ1は負極側のプローブを、電流検出プローブ3は正極側のプローブを構成しており、図1のように正極側プローブ及び負極側プローブを各々1個だけとするのではなく、正負各極に複数のプローブを配置して電流を検出することも可能である。
【0042】
また、電流検出プローブ1、3の角部とナノチェイン部2の先端の金属ナノ粒子2aの角部とのギャップ幅tは、0<t≦10(nm)の範囲に形成される。このギャップは、電流検出プローブ1とナノチェイン部2の一端の金属ナノ粒子との間又は、電流検出プローブ3とナノチェイン部2の他端の金属ナノ粒子との間の少なくとも一方に存在すれば良く、完全に短絡していなければ良い。したがって、例えば、電流検出プローブ1とナノチェイン部2の一端の金属ナノ粒子とのギャップ幅tが0<t≦10(nm)の範囲に形成される場合は、電流検出プローブ3とナノチェイン部2の他端の金属ナノ粒子とのギャップ幅tは0≦t≦10(nm)の範囲に形成される。ここで、電流検出プローブ1と3の間には、抵抗5と電源6が直列に接続されている。電源6には、直流電源が用いられる。ナノチェイン部2が光を受光していない状態で、直流電源6の電圧Vを変化させて、電流検出プローブ1、3間に流れる電流Iを検出して、電流−電圧特性(I−V特性)を計測すれば、図2のX1のような特性となる。模式的に描いているが、階段状に近い形となる。
【0043】
電流検出プローブ1、3とナノチェイン部2とは、ギャップを有し、短絡していないので、電流は流れないのであるが、一定の電圧よりも大きくなれば、電流が流れる。一方、ナノチェイン部2に光が照射された場合には、ナノチェイン部2の長さXに対応した波長のプラズモン共鳴吸収が行われ、分極が発生する。これにより、一定電圧に対して流れる電流量が変化する。そのため、電流量の増減を見ることで、共鳴吸収が行われている波長の光強度の増減がわかる。
【0044】
この実験結果を示すのが、図7、8、9である。図7は、図1のような光検出器を作製し、ナノチェイン部2の長さXを調整して、波長1000nm付近にプラズモン共鳴吸収があるようにした。そして、電流検出プローブ3とナノチェイン部2の右側先端とは短絡し、波長約1000nmのレーザ光をナノチェイン部2と電流検出プローブ1とのギャップ間に照射して、電流−電圧特性がどのように変動するのかを測定したものである。
【0045】
レーザを駆動するための駆動電流を変化させていった場合、電流検出プローブ1、3間に電流が流れ始める初期電圧V0が、レーザ駆動電流が59mA以上になると急激に小さくなる(図の左側にシフト)ことが示されている。図8は、図7のLD駆動電流と初期電圧V0との関係をグラフにして示したものである。なお、図8の縦軸の初期電圧V0は、図7の電圧軸の正負を逆した値で表わしており、縦軸の上側になるほど、初期電圧V0の値が小さくなることを示す。
【0046】
レーザ発振が始まるレーザ閾値電流47.9mAまでは、初期電圧V0は、ほぼ0μVであるが、レーザ閾値電流47.9mAを越えたところから、初期電圧V0は小さくなりはじめ、レーザ駆動電流が60mA付近になると、急激に初期電圧V0が大きく変動している。このように、レーザ光の発振が始まった直後から、レーザ光の強度にしたがい、初期電圧V0の変動も大きくなる。
【0047】
一方、図1の光検出器を上記のレーザ照射の実験と同じ構成にして光源ランプの光を照射した状態で電流−電圧測定を行った結果が図9のY2であり、光源ランプをオフにして光を照射しない状態の電流−電圧測定の結果が図9のY1である。
【0048】
このように、光の照射があるY2の曲線の方が、Y1よりも電流が流れ始める初期電圧が小さくなっており、グラフ全体も左側にシフトしている。ところで、ナノチェイン部2と電流検出プローブ1を短絡し、ナノチェイン部2と電流検出プローブ3を短絡して図1の回路を短絡した場合に、光源ランプの光を照射したときの電流−電圧特性をZ2、光源ランプの光を照射しないときの電流−電圧特性をZ1で表わしている。このように、短絡した場合は、光を照射しても、しなくても、電流−電圧特性にほとんど変化はない。以上のように、光を照射することによりギャップ間に電位差が生じることがわかる。
【0049】
図10は、正極及び負極の電流検出プローブ1とナノチェイン部2との配置の変形例について示す。図10(a)は、ナノチェイン部2の端にある金属ナノ粒子2aの先端角部を電流検出プローブ1、3で挟み込むように配置したものである。このときの電流検出プローブ1、3間のギャップ幅tは、前述のように0<t≦10(nm)の範囲に形成される。
【0050】
図10(b)は、ナノチェイン部2の端にある金属ナノ粒子2aの対向する2つの角部の一方(一側面)に向かって電流検出プローブ1を、他方に電流検出プローブ3を配置したものである。この場合は、金属ナノ粒子2aと電流検出プローブ1とのギャップ幅t及び金属ナノ粒子2aと電流検出プローブ3とのギャップ幅tの少なくとも一方は、0<t≦10(nm)の範囲に形成され、他方のギャップ幅tは、0≦t≦10(nm)の範囲に形成される。図10(c)は、図10(b)における電流検出プローブ1、3の配置をナノチェイン部2の中央部にある金属ナノ粒子2aの角部に移動させた構成となっている。
【0051】
ところで、図1の構成では、電流検出プローブ1、ナノチェイン部2、電流検出プローブ3からなる光検出部が基板4上に1セットのみ配置されているが、基板上にナノチェイン部2の全体の長さを変えたものを複数配置し、この各ナノチェイン部に対応して正負1対の電流検出プローブを配置して、様々な波長を1度に検出できる光検出器を構成することができる。
【0052】
上記実施例では、ナノチェイン部2の金属ナノ粒子の平面形状を正方形としたが、その他の形状でも構成することができる。図12(a)は各金属ナノ粒子2bの平面形状が円形に、図12(b)は各金属ナノ粒子2cの平面形状が二等辺三角形に、図12(c)は各金属ナノ粒子2dの平面形状が菱形に形成されている。連結される金属ナノ粒子は、厚みを有しているので、3次元形状で言えば、図12(a)の形状は円柱状、図12(b)は三角柱状、図12(c)は四角柱状である。以下に、金属ナノ粒子の平面形状を変化させた場合の特性の相違を説明する。
【0053】
図13は、異なる形状の金属ナノ粒子のボトルネック部分を示したものであり、図13(a)は金属ナノ粒子の平面形状が正方形、図13(b)は図12(a)と同様、金属ナノ粒子の平面形状が円形、図13(c)は図12(b)と同様、金属ナノ粒子の平面形状が二等辺三角形、図13(d)は図12(c)と同様、金属ナノ粒子の平面形状が菱形に形成されている。
【0054】
図13の(a)、(b)、(c)、(d)には、金属ナノ粒子を連結するボトルネックのネック長さt1、t2、t3、t4が示されている。ネック長さが小さいほど、ナノチェイン部のマルチモードに基づく吸収が除去されて、波長選択性が向上する。一方ネック幅が小さすぎると、ボトルネック近傍におけるプラズモン電子の散乱が大きくなることがある。また、ナノチェイン部の金属ナノ粒子も連結個数を同じにし、そのときの長さXが、図13の(a)、(b)、(c)、(d)が各々等しくなるように構成した。Xは例えば、図13のように2つの金属ナノ粒子を連結した場合は282nmになるように形成し、各形状の金属ナノ粒子の厚みは30nmとした。
【0055】
図11に示される製造方法により、サファイア基板上に、図12(a)、(b)、(c)に示される金属ナノ粒子からなるナノチェインを作製した。また、図1又は図13(a)に示される正方形状の金属ナノ粒子による金属ナノチェインも作製した。この場合、図13に示されるボトルネックのネック長さt1、t2、t3、t4は、t1=t2=t3=t4=4.5nmとした。また、ナノチェイン部の金属ナノ粒子も連結個数を同じにし、そのときの長さXが、図13の(a)、(b)、(c)、(d)が各々等しくなるように構成した。図13のように2つの金属ナノ粒子を連結した場合は282nmになるように形成し、各形状の金属ナノ粒子の厚みは30nmとした。
【0056】
上記の形成により得られたそれぞれの金属構造体に、顕微FT−IR測定装置を用いて、その上面から波長を660nm〜7142nm(波数15000cm−1〜1400cm−1)の光を照射し、その吸光度を測定した。得られた結果が、図14、15に示される。
【0057】
図14の縦軸は吸光のピーク波長を、横軸は金属ナノ粒子の数を示す。また、黒四角が、図1又は図13(a)に示される正方形状の金属ナノ粒子によるデータを示し、黒丸(●)は、図12(a)の金属ナノチェインによるデータを、黒三角(▲)は図12(b)の金属ナノチェインによるデータを、黒菱形(◆)は図12(c)の金属ナノチェインによるデータを示す。金属ナノ粒子の数が増えて、金属ナノチェインの長さが大きくなると、ピークエネルギーが低下するため、ピーク波長は大きくなっている。
【0058】
図14で測定されたデータについて、各々吸光スペクトルのピーク周波数のFWHM(半値幅)を計測してグラフにしたのが、図15である。縦軸がFWHM(THz)を示し、横軸がピーク周波数f(THz)を示す。図15にプロットされたデータは、図14のデータと対応するもので、金属ナノ粒子の数が多くなるとピーク波長が大きくなり、一方ピーク周波数は小さくなるので、図15の横軸方向は、金属ナノ粒子の数が多いデータから少ないデータへの並びに対応する。
【0059】
正方形状の金属ナノ粒子(図の黒四角データ)の場合は、他の円形、三角形、菱形の金属ナノ粒子を用いた場合と比較すると、検出されたピーク周波数全般についてFWHMがかなり大きくなっていることがわかる。このように、金属ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の平面形状を円形、三角形、菱形のいずれかの形状とすることで、正方形の金属ナノ粒子を用いた場合よりも、狭帯域の波長を吸収させることができる。一方、正方形の形状を選んだ場合には、広帯域の波長を吸収させることができる。所望の波長分解能に応じて、ナノ粒子の形状を適宜選択して、本発明の光検出器を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の光検出器の構造を示す図である。
【図2】図1の光検出器に光を照射してプラズモン共鳴吸収が起きた場合の電流−電圧特性を示す模式図である。
【図3】ナノチェイン部の構造例を示す模式図である。
【図4】ナノチェイン部の長さとボトルネックのネック幅を示す模式図である。
【図5】金属ナノ粒子の数とナノチェイン部の長さとの関係を示す図である。
【図6】ナノチェイン部の局在プラズモンバンドを示す図である。
【図7】電流検出プローブとナノチェイン部とのギャップ間にレーザ光を照射した場合のI−V特性を示す図である。
【図8】図8のデータをLD駆動電流と初期電圧との関係に変換した場合の変化を示す図である。
【図9】光源ランプの光を照射した場合と照射しない場合の各I−V特性を示す図である。
【図10】正極及び負極の電流検出プローブとナノチェイン部との配置例を示す図である。
【図11】ナノチェイン部の製造工程の例を示す図である。
【図12】ナノチェイン部の他の構成例を示す模式図である。
【図13】ナノチェイン部のボトルネックの長さを示す模式図である。
【図14】図13の各ナノチェイン部を用いた場合の金属ナノ粒子数とピーク波長との関係を示す図である。
【図15】図14のデータに対応するピーク周波数とスペクトルのFWHMとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 電流検出プローブ
2 ナノチェイン部
2a 金属ナノ粒子
3 電流検出プローブ
4 基板
5 抵抗
6 電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属ナノ粒子がボトルネックを介して互いに連結されたナノチェイン部と、正負の電流検出プローブが基板上に配置された光検出部を備えた光検出器であって、
プラズモン共鳴吸収を有する前記ナノチェイン部が前記正負の電流検出プローブによって挟み込まれていることを特徴とする光検出器。
【請求項2】
前記ナノチェイン部の長さ方向の両端を前記正負の電流検出プローブによって挟み込んだ構造であって、前記ナノチェイン部の一端の金属ナノ粒子と少なくとも一方の電流検出プローブの先端とは、所定のギャップを隔てて配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器。
【請求項3】
前記ナノチェイン部の一端の金属ナノ粒子の先端を前記正負の電流検出プローブで所定のギャップを隔てて挟み込むように配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器。
【請求項4】
前記ナノチェイン部のいずれかの金属ナノ粒子の両側を前記正負の電流検出プローブで挟み込んだ構造であって、少なくとも一方の電流検出プローブと前記金属ナノ粒子との一側面とは所定のギャップを隔てて配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器。
【請求項5】
前記正負の電流検出プローブ間には所定の電圧が印加されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光検出器。
【請求項6】
前記ナノチェイン部によるプラズモン共鳴吸収の吸収波長が異なるように形成された複数の光検出部を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光検出器。
【請求項1】
複数の金属ナノ粒子がボトルネックを介して互いに連結されたナノチェイン部と、正負の電流検出プローブが基板上に配置された光検出部を備えた光検出器であって、
プラズモン共鳴吸収を有する前記ナノチェイン部が前記正負の電流検出プローブによって挟み込まれていることを特徴とする光検出器。
【請求項2】
前記ナノチェイン部の長さ方向の両端を前記正負の電流検出プローブによって挟み込んだ構造であって、前記ナノチェイン部の一端の金属ナノ粒子と少なくとも一方の電流検出プローブの先端とは、所定のギャップを隔てて配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器。
【請求項3】
前記ナノチェイン部の一端の金属ナノ粒子の先端を前記正負の電流検出プローブで所定のギャップを隔てて挟み込むように配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器。
【請求項4】
前記ナノチェイン部のいずれかの金属ナノ粒子の両側を前記正負の電流検出プローブで挟み込んだ構造であって、少なくとも一方の電流検出プローブと前記金属ナノ粒子との一側面とは所定のギャップを隔てて配置されていることを特徴とする請求項1記載の光検出器。
【請求項5】
前記正負の電流検出プローブ間には所定の電圧が印加されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光検出器。
【請求項6】
前記ナノチェイン部によるプラズモン共鳴吸収の吸収波長が異なるように形成された複数の光検出部を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光検出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−58474(P2009−58474A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228159(P2007−228159)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
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