説明

光検出装置

【課題】試料液の経時による蒸発や試料液注入時の液量バラつき等による試料液表面の曲率変化に影響されることなく安定した測定が可能な光検出装置を提供する。
【解決手段】検体5と検体5と反応する試料液6を保持する検査部1と、検査部1を三次元に移動させるステージ部2と、検査部1からの光を集光するレンズ部3と、レンズ部3が集光した検査部1からの光を受光する受光部4とを含み、レンズ部3を検査部1内に保持した試料液6内に挿入して検査部1からの光を受光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微弱光を検出するような光検出装置に関し、特に液体試料が発する光を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野における検査機器の自動化や医療検査技術の発達に伴い、生化学分野における蛍光物質を含む試料の蛍光特性を生かした分析が多く検討されている。一般的な手法としては、蛍光物質を含む試料に励起光を照射し、照射した励起光とは異なる試料からの波長の蛍光のみを検出器にて検出し、その情報を基に分析を行う方法がよく知られている。また、検体と反応して自家発光する試料を用いた分析方法もある。
【0003】
しかし、一般に蛍光及び自家発光は微弱であることから、試料が液体であった場合には、試料液の蒸発などによる試料液表面の曲率変化によって液体試料の外側に位置する光検出部に到達する光量が変化して検出感度の低下や測定データのバラつきが発生する。
【0004】
従来は試料液の温度制御を行ったり試料液に界面活性剤を添加することにより試料液表面の曲率を制御することで、検出感度の低下及び測定データのバラつきを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−258744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術では、試料液の温度変化や界面活性剤の添付により試料液の特性が変化し発光量が変化してしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、試料液の特性を変化させることなく光検出の精度を安定させる光検出装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の光検出装置は、検体と前記検体と反応する試料液を保持する検査部と、前記検査部を三次元に移動させるステージ部と、前記検査部からの光を集光するレンズ部と、前記レンズ部が集光した前記検査部からの光を受光する受光部とを含み、前記レンズ部を前記検査部内に保持した試料液内に挿入して前記検査部からの光を受光することを特徴とするものである。
【0008】
さらに光検出装置において、前記レンズ部の前記検査部に対向する面は前記検査部に向かって凸形状であることを特徴とするものである。
【0009】
さらに光検出装置において、前記レンズ部の前記検査部に対向する面の表面に撥水コート処理を施してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光検出装置によれば、試料液表面の曲率変化に影響されることなく安定した光検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の光検出装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における光検出装置を示したものである。光検出装置は、検査部1と、検査部1を保持するステージ部2と検査部1から発せられた光を集光及び導光するレンズ部3と、レンズ部3で導光された光を受光する受光部4とで構成されている。
【0013】
図2は検査部1を詳細に示したものであり、検査ホルダー7は検体5と試料液6とが注入されるように構成されている。ここで、試料液6は検体5と反応して自家発光するものを前提としているが、検体5と反応した試料液6が励起光によって蛍光する場合には、検査ホルダー7上に試料液6に対して特定波長の励起光を発光する光源を備えるようにする。あるいは自家発光が電気的に発生する場合には試料液6に電圧を印加する加電圧部を備える。検査部1は、ステージ部2によってX、Y、Zの3方向に移動される構成となっている。
【0014】
図3は検査部1とレンズ部3と受光部4の断面図を示したものである。レンズ部3は検査部1からの光を受光部4内の受光素子11へと導くように、集光レンズ8と第一リレーレンズ9と第ニリレーレンズ10と結合レンズ12と、各レンズを所定の間隔で保持するレンズホルダー13で構成される。第一リレーレンズ9と第ニリレーレンズ10と結合レンズ12については一般の導光及び結像用レンズ系と同様であるので、説明を省略する。
【0015】
次に、集光レンズ8とレンズホルダー13について図4を用いて詳細に説明する。図4は、検査部1内の検体5及び試料液6と集光レンズ8及びレンズホルダー13との位置関係を拡大して示したものである。本実施の形態における光検出装置は、図4に示すように集光レンズ8を試料液6内に挿入させることを特徴としている。
【0016】
そのために、集光レンズ8とレンズホルダー13は試料液6がレンズ部3内に浸入しないように密着して構成される。さらに、試料液6に挿入する部分のレンズホルダー13の外径は検査ホルダー7の内径よりも小さく形成されている。
【0017】
集光レンズ8又はレンズホルダー13ごと試料液6の液中へ挿入する際に、試料液6の液面と集光レンズ8の挿入するレンズ面との境界面に空気の巻き込みによる気泡の発生が起こると、その影響によって検体5から発せられる光の光路長の変化や屈折、回折、散乱が起こり、その結果、測定結果のバラつきが起こってしまう恐れがある。そこで、集光レンズ8の前記試料液6の液中に挿入するレンズ面14の形状を凸形状にすることで、試料液6の液面と集光レンズ8の挿入するレンズ面との境界面に空気の巻き込みによる気泡の発生を防止している。
【0018】
さらに、集光レンズ8の吸湿による焦点位置の変化、さらに繰り返し使用によるレンズ表面への汚れを防ぐために、レンズ表面14に撥水コート処理を施す。
【0019】
以上の構成からなる本実施の形態の光検出装置の動作について図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0020】
検査ホルダー7に試料液6を挿入し、ステージ部2にて最適なX、Y方向のポジションに調整を行う。その後、最適なZ方向のポジションに調整を行うが、その際に集光レンズ8または、レンズホルダー13ごと試料液6で満たされた液中へ挿入させる。またその後、化学的又は電気的反応により検体5から発せられた光は集光レンズ8にて集光され、第一リレーレンズ9及び第二リレーレンズ10にて導光され、結合レンズ12にて受光素子11へと結合され、その結合された光の情報を基に分析を行う。
【0021】
また、図6及び図7を用いて本実施の形態の光検出装置を用いて実際に測定を行った結果を以下に示す。図6は試料液6の経時による蒸発による試料液表面の曲率変化を示したものである。本発明において検査ホルダー7内に設けられた試料液6が注入されるエリアを直径dの円形とし、検査ホルダー7に一定量の試料液6を注入した場合、図6のグラフに示す通り試料液6の試料液表面が形成する曲率rは時間に伴い、変化していることがわかる。
【0022】
図7は、本実施の形態における光検出装置の構成と、集光レンズ8を試料液6に挿入しない一般的な光学系による構成での光検出装置による受光素子11で計測される結合効率の結果を示したものである。ここで一般的な光学系というのは、試料液には接しない最適な光学系で構成した試料液表面の曲率変化に影響を受けるものを前提とする。図7の結果に示されている通り、時間t=0での結果によると、一般的な光学系による構成での光検出装置では前記試料液の注入時の液量のバラつきにより試料液表面の曲率がバラついてしまうため、結合効率がバラついてしまう。しかし本実施の形態に示す光検出装置では、前記に述べた通り、レンズ又はレンズホルダーを試料液の液中に挿入する構成のため、試料液表面の曲率に全く影響を受けないため、時間t=0では常に同じ結合効率となる。また、時間tが増加するにつれて結合効率は試料液中に含まれる反応の減衰に比例して減少するが、一般的な光学系による構成での光検出装置では、試料液6の経時による蒸発による試料液表面の曲率変化の影響を受けるため、結合効率の変動が大きくなってしまう。しかし、本実施の形態に示す光検出装置の構成では、前記に述べた通り、試料液が形成する曲率変化に影響をうけないため、前記結合効率の大きな変動が抑制でき、試料液の液中の反応の時間に伴う減衰のみに比例した結合効率となることがわかる。
【0023】
以上のように、本実施の形態に記載の光検出装置によれば、レンズ又はレンズを保持したレンズホルダーを試料液の液中に挿入するような構成にすることで、試料液が形成する曲率に影響を受けることなく、かつ試料液が空気中に触れる面積が減少するため、試料液の経時による蒸発の抑制も図れ、結果として試料液の経時による蒸発や試料液の注入時の液量バラつき等による試料液表面の曲率変化に影響されることなく安定した測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明にかかる光検出装置は、試料液の経時による蒸発や試料液の注入時の液量バラつき等による試料液表面の曲率変化に影響されることなく安定した測定が可能となるため、試料液等の反応を利用した試料分析装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態における光検出装置を示す図
【図2】本発明の光検出装置における検査部の拡大図
【図3】本発明の光検出装置における装置の断面図
【図4】本発明の光検出装置における装置の詳細図
【図5】本発明の光検出装置における動作のフォローチャート
【図6】経時による試料液の液面の曲率変化を示す図
【図7】一般的な光検出装置と本発明の検出装置の結合効率の対比を示す図
【符号の説明】
【0026】
1 検査部
2 ステージ部
3 レンズ部
4 受光部
5 検体
6 試料液
7 検査ホルダー
8 集光レンズ
9 第一リレーレンズ
10 第二リレーレンズ
11 受光素子
12 結合レンズ
13 レンズホルダー
14 レンズ表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と前記検体と反応する試料液を保持する検査部と、
前記検査部を三次元に移動させるステージ部と、
前記検査部からの光を集光するレンズ部と、
前記レンズ部が集光した前記検査部からの光を受光する受光部とを含み、
前記レンズ部を前記検査部内に保持した試料液内に挿入して前記検査部からの光を受光する光検出装置。
【請求項2】
前記レンズ部の前記検査部に対向する面は前記検査部に向かって凸形状である請求項1記載の光検出装置。
【請求項3】
前記レンズ部の前記検査部に対向する面の表面に撥水コート処理を施してある請求項2記載の光検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−281457(P2008−281457A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126286(P2007−126286)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】