説明

光沢インクジェット記録用紙および記録物

【課題】不透明度が高く、印刷インクの裏抜け(プリントスルー)防止適性、印刷適性(ブランケット汚れ)に優れ、光沢度が高く、他面にインクジェットプリンターを用いて印字した際の印字濃度が高いインクジェット記録用紙を提供する。
【解決手段】紙支持体上に少なくとも1層のインクジェット記録層を有し、該記録層表面が鏡面仕上げされた光沢インクジェット記録用紙において、紙支持体のJIS P8251に基づく灰分が1〜12%であり、填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムが併用してなり、且つ光沢インクジェット記録用紙のJIS P8149に基づく不透明度が98%以上であることを特徴とする光沢インクジェット記録用紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢タイプのインクジェット記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタによる記録は、騒音が少なく、高速記録が可能であり、かつ、多色化が容易なために多方面で利用されている。インクジェット記録用紙としては、インク吸収性に富むように工夫された上質紙や、表面に多孔性顔料を塗工した塗工紙等が適用されている。ところで、これらの記録用紙はすべて表面光沢の低い、いわゆるマット調のインクジェット記録用紙が主体であるため、表面光沢の高い、優れた外観を持つインクジェット記録用紙が要望されている。
【0003】
表面光沢を有するインクジェット記録用紙としては、印刷用紙で使用されているキャスト法をインクジェット記録用紙に利用した記録用紙が提案されている。例えば、顔料および接着剤を主成分とする記録層を設けた原紙上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる40℃以上のガラス転移点を有する共重合体を主成分とする塗工液を塗工してキャスト用塗工層を形成せしめ、該キャスト用塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げることにより、優れた光沢とインク吸収性を兼ね備えるインクジェット記録用キャスト紙が得られることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、インクジェット記録の高速化、記録画像の高精細化、フルカラー化といった用途の拡大に伴い、さらに強光沢かつ高画質、高記録濃度の品質が望まれている。このような要求を達成するために、紙支持体に2次粒子の平均粒子径が1μm以下である凝集体微細粒子および接着剤を含有するインクジェット記録層を少なくとも2層設け、且つインクジェット記録層の表面が鏡面仕上げされたインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−89220号公報
【特許文献2】特開2001−10220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらのキャスト法によるインクジェット記録用紙は、光沢を有する面のインクジェット記録適性は優れるものの、不透明度が低く、他面側にオフセット印刷等の印刷を行った際に、光沢面側への印刷インクの裏抜け(プリントスルー)を生じるものであった。
【0007】
例えば、光沢インクジェット記録用紙を葉書として使用する場合、通常、他面(非光沢面)に予め郵便番号の枠等のオフセット印刷を行うが、不透明度が低く、光沢面側への印刷インクの裏抜け(プリントスルー)が生じ、光沢インクジェット記録層の印字品質に支障が生じる恐れがある。
不透明度を高くするために、紙支持体の填料を多く添加する方法が考えられるが、紙の強度を低下させるといった難点があり、また、印刷時に、ブランケットへの紙粉や填料成分の堆積による汚れを発生し、印刷適性を阻害する恐れがある。更に、断紙などの印刷走行性が低下するといった問題点が発生することがあるため、あまり多く填料を添加することができない。
また、葉書等として使用する場合、光沢インクジェット記録層に写真などの本文を印字するので、その印字品質は要求されるが、他面にもあて先などをインクジェット記録で印字するため、そのあて先の印字濃度が低く、不鮮明であったりすることのないよう、他面側の印字品質も要求される。
【0008】
本発明は、不透明度が高く、印刷インクの裏抜け(プリントスルー)防止適性、印刷適性(ブランケット汚れ)に優れ、光沢度が高く、他面にインクジェットプリンターを用いて印字した際の印字濃度が高いインクジェット記録用紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、紙支持体に用いる填料について、鋭意研究を行なった。
紙支持体の不透明度は、原料の有する光の吸収率や散乱率、屈折率に左右され、これらの中でも特に空気と填料、パルプ繊維相互間の光の屈折率に大きく影響を受ける。紙支持体に添加される填料の中でも酸化チタンは光に対する屈折率が最も高い。さらに、一般に、酸化チタンの粒子径は、一次粒子径が0.1〜0.4μmであるが、填料の粒子径が可視光線の波長の1/2前後、即ち約0.3μmのときに光の散乱が最大となり、不透明度が最も高くなる。このように酸化チタンは、屈折率や粒子径が紙の不透明度向上に適していることから、不透明度改良効果が非常に優れた材料である。
【0010】
しかし、酸化チタンを用いた場合、鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げた光沢発現層を設けたインクジェット記録用紙においては、光沢度が低下し、さらに、他面のインクジェット記録品質を満たした印字濃度を得るには至らなかった。
本発明者等は、更に研究を重ねた結果、紙支持体の灰分が1〜12%であり、填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムを併用した不透明度の高い紙支持体を用いることで、上記課題の全てを解決でき本発明に至ったのである。
【0011】
本発明は下記の態様を含む。
[1]紙支持体上に少なくとも1層のインクジェット記録層を有し、該記録層表面が鏡面仕上げされた光沢インクジェット記録用紙において、紙支持体のJIS P8251に基づく灰分が1〜12%であり、填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムが併用してなり、且つ光沢インクジェット記録用紙のJIS P8149に基づく不透明度が98%以上であることを特徴とする光沢インクジェット記録用紙。
[2]紙支持体上に少なくとも1層のインクジェット記録層を有し、該記録層表面が鏡面仕上げされた光沢インクジェット記録用紙において、紙支持体の、JIS P8251に基づく灰分が1〜12%であり、填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムが併用してなり、且つJIS P8149に基づく不透明度が97%以上であることを特徴とする光沢インクジェット記録用紙。
[3]填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムの配合比率が1:1〜1:6である[1]又は[2]記載の光沢インクジェット記録用紙。
[4]インクジェット記録層が、紙支持体上に形成される溶媒吸収層、溶媒吸収層上に形成されるインク定着層、及び鏡面仕上げが施される光沢発現層を少なくともを有し、且つ溶媒吸収層が、平均粒子径が1〜20μmの顔料および接着剤を含有する[1]〜[3]のいずれか一に記載の光沢インクジェット記録用紙。
[5]インク定着層の顔料が、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種の平均1次粒子径が3〜40nm、且つ平均2次粒子径が10〜1000nmの2次粒子であることを特徴とする[4]記載の光沢インクジェット記録用紙。
[6]紙支持体中のパルプとして塩素フリーパルプを含む[1]〜[5]のいずれか一に記載の光沢インクジェット記録用紙。
[7][1]〜[6]のいずれか一に記載された光沢インクジェット記録用紙のインクジェット記録層面及び他面の両方にインクジェット記録を行ったインクジェット記録物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光沢インクジェット記録用紙は、不透明度、光沢度が高く、他面印刷時の印刷インクの裏抜け(プリントスルー)防止適性、印刷適性(ブランケット汚れ)に優れ、他面印字時の印字濃度が高い光沢インクジェット記録用紙である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本第1発明は、紙支持体上に少なくとも1層のインクジェット記録層を有し、該記録層表面が鏡面仕上げされた光沢インクジェット記録用紙において、紙支持体のJIS P8251に基づく灰分が1〜12%であり、填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムが併用してなり、且つ光沢インクジェット記録用紙のJIS P8149に基づく不透明度が98%以上であることを特徴とする光沢インクジェット記録用紙である。
即ち、紙支持体として、
(1)紙支持体のJIS P8251に基づく灰分が1〜12%であること。
(2)填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムを併用すること。
を満足し、且つ得られた光沢インクジェット記録用紙の不透明度が98%以上である必要がある。
【0014】
本第2発明は、紙支持体上に少なくとも1層のインクジェット記録層を有し、該記録層表面が鏡面仕上げされた光沢インクジェット記録用紙において、紙支持体の、JIS P8251に基づく灰分が1〜12%であり、填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムが併用してなり、且つJIS P8149に基づく不透明度が97%以上であることを特徴とする光沢インクジェット記録用紙である。
即ち、紙支持体として、
(1)紙支持体のJIS P8251に基づく灰分が1〜12%であること。
(2)填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムを併用すること。
(3)紙支持体のJIS P8149に基づく不透明度が97%以上であること。
を満足する必要がある。
【0015】
「紙支持体について」
(1)本発明において、紙支持体中の填料のJIS P8251に基づく灰分は、1〜12%である必要がある。灰分は、3〜11%が好ましく、4〜10%がより好ましい。多すぎると紙の強度を低下させるといった難点があり、また、印刷時には、ブランケットへの紙粉や填料成分の堆積による汚れや、断紙などの印刷走行性が低下するといった問題点が発生する。少ないと不透明度を低下させるといった難点があり、また、紙支持体の透気性が悪くなるといった問題点が発生する。
【0016】
(2)本発明において、填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムを併用する。併用することにより、インクジェット記録用紙の光沢感を高め、また不透明度を高め、且つ、印刷インクの裏抜け(プリントスルー)防止適性、印刷の際のブランケットへの紙粉防止などを改善することができる。特に、酸化チタンおよび炭酸カルシウムの配合比率が1:1〜1:6の範囲で併用するとよい。なお、炭酸カルシウムの使用することは、白色度が高い紙支持体となり、また、インクジェット記録用紙の光沢感が高まる傾向にあるので好ましいが、高い不透明度を得るために多量に添加すると、印刷の際にブランケットへ紙粉や填料成分の堆積による汚れを発生し、印刷適性を阻害するなどのおそれがある。また、酸化チタンを使用するとこは、不透明度改良効果が非常に優れた紙支持体となるが、鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げた光沢発現層を設けたインクジェット記録用紙においては、光沢度が低下し、さらに、他面のインクジェット記録品質を満たした印字濃度を得られない傾向にある。なお、填料として、上記作用効果を損なわない範囲で、焼成カオリン、クレー、タルク、ホワイトカーボン、シリカ等をさらに必要に応じて併用することができる。
【0017】
(3)更に、第2発明は、紙支持体のJIS P8149に基づく不透明度が97%以上であることを規定する。紙支持体のJIS P8149に基づく不透明度は97%以上であると、他面側にオフセット印刷等の印刷を行った際の、光沢面側への印刷インクの裏抜け(プリントスルー)による不具合が発生し難くなる。なお、第1発明は、紙支持体の不透明度を規定しないが、JIS P8149に基づく不透明度が97%以上であることが好ましい。
【0018】
紙支持体としては、上記条件を満足するものであれば特に限定するものではなく、一般の塗工紙等に使用される酸性紙、あるいは中性紙等の紙支持体が適宜使用される。紙支持体を構成する木材パルプとしては、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプ、或いは楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。また、パルプとして、塩素、二酸化塩素、酸素、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸等各種漂白法を組み合わせて漂白したパルプを使用すると、高白色度を得るために好ましい。中でも、ECF漂白やTCF漂白等された塩素フリーパルプは、黄変を起こし難く、好ましく使用される。これら単独でも、二種以上の混合で用いても良い。
【0019】
これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS P8121)程度である。平滑性を高めるためには叩解度を進めるほうが望ましいが、記録用紙に記録した場合にインク中の水分によって起こる用紙のボコツキや記録画像のにじみは、叩解を進めないほうが良好な結果を得る場合が多い。従ってフリーネスは300〜500ml程度が好ましい。
【0020】
紙支持体には、抄紙の際に、助剤としてサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等を添加することができる。さらに、抄紙機のサイズプレス工程において、デンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂等を塗布・含浸させ、表面強度、サイズ度等を調整できる。ステキヒトサイズ度(100g/mの紙として)は1〜200秒程度が好ましい。サイズ度が低いと、塗工時に皺が発生する等操業上問題となる場合があり、高いとインク吸収性が低下したり、印字後のカールやコックリングが著しくなる場合がある。より好ましいサイズ度の範囲は4〜120秒である。紙支持体の坪量は、特に限定されないが、20〜400g/m程度、好ましくは100〜350g/mである。坪量が小さすぎると、インクジェット記録を行った際に、カールやコックリングが著しくなったり、不透明度が得られ難い傾向にある。また、大きすぎると、光沢性が劣る傾向にある。
【0021】
なお、紙支持体はキャスト法に対する適性からして、透気性を有するものが使用でき、好ましくは、王研式透気度が10〜200秒/100cc程度、より好ましくは10〜150秒/100cc程度、更に好ましくは10〜100秒/100cc、特に好ましくは10〜70秒/100ccである。因みに、透気度が大きくなると、光沢性や像鮮明度が劣る傾向にある。これは、キャスト法は鏡面ドラムを用いて乾燥するため、塗工液の水分は紙支持体を通して蒸発されるが、透気度が高くなると乾燥が不十分であったり、必要以上に加熱されるため、光沢性や像鮮明度が劣る結果になると考えられる。なお、更に透気度が大きくなるとキャスト仕上げする際の操業性が劣ってくる。一方、10秒/100ccに満たないような紙支持体の場合もまた、光沢性が低下する傾向にある。これは、インクジェット記録層を形成する際に、塗工液中の接着剤の多くが紙支持体に浸透してしまい、インクジェット記録層中の接着剤量が減ってしまい、この結果、光沢性や像鮮明度が劣る傾向になると考えられる。
【0022】
抄紙装置としてはは特に限定するものではなく、公知の長網抄紙機、円筒抄紙機、ヤンキー抄紙機、ツインワイヤーフォーマー、傾斜ワイヤーフォーマーなど、ドライヤーとしては、ヤンキードライヤー、多筒式ドライヤーなどが各種公知の抄紙機が使用できる。カレンダー処理など、公知の処理も可能である。
【0023】
「インクジェット記録層について」
本発明は、紙支持体の片面に、インクジェット記録層を有し、該記録層の表面が鏡面仕上げされた光沢インクジェット記録層を有するものである。このような層としては、例えば、(1)紙支持体上に顔料と接着剤、必要に応じて配合されるカチオン性樹脂を含有する塗液を塗工し、この塗工層を鏡面仕上げして光沢を付与した1層タイプ(光沢性インク定着層のみ)、(2)(1)の構成の紙支持体とインク定着層の間に、インクジェット記録インク中の溶媒を吸収するために溶媒吸収層を形成した2層タイプ(溶媒吸収層と光沢性インク定着層)、(3)紙支持体上にインクジェットインクの色材を定着するための顔料と接着剤とカチオン性樹脂を含有するインク定着層と、その上に塗工され、鏡面仕上げされた光沢発現層とを有する2層タイプ(インク定着層と光沢発現層)、更には、(4)(3)の構成の紙支持体とインク定着層の間に、インクジェット記録インク中の溶媒を吸収するために溶媒吸収層を形成した3層タイプ(溶媒吸収層とインク定着層と光沢発現層)など、複数層から構成される場合も含まれる。
【0024】
以下、紙支持体上に、溶媒吸収層、インク定着層、光沢発現層を有する3層タイプ(前記(4))の構成のインクジェット記録層を説明するが、もちろん、本発明の光沢インクジェット記録層の層構成は、この形態に限定されるものではない。また、鏡面仕上げは、キャストドラムに代表される鏡面ロールを使用することが好ましいが、例えば、高平滑なフィルムを用いて光沢を付与することもできる。
【0025】
「インク定着層」
顔料としては、カオリン、クレー、焼成クレー、シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミノシリケート、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、公知公用の各種顔料が1種もしくはそれ以上、併用することができる。これらの中でも、インク吸収性の高い無定形シリカ、アルミノシリケート、アルミナ、ゼオライトを主成分として含有させるのが好ましい。
特に、シリカ、アルミノシリケート、アルミナより選ばれる微細粒子顔料を用いることが好ましい。好ましくはシリカ、アルミノシリケートであり、より好ましくはシリカである。
【0026】
以下シリカ微細粒子を例として説明する。インク定着層に用いるシリカ等の微細粒子調整方法は特に限定するものではないが、例えば、一般的に市販されている合成非晶質シリカ等(例えば2次粒子径は数ミクロン程度のもの)を機械的手段により強い力を与えて2次粒子径を小さくすることにより得ることができる。
この機械的手段としては、超音波ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動触媒ミル、触媒攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー等があげられる。このようにして処理されたシリカ微細粒子は、一般に固形分濃度が5〜20%程度の水分散体(スラリーあるいはコロイド粒子)として得られる。
【0027】
本発明でいう平均粒子径とは、電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒子径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し、平均したもの。「微粒子ハンドブック」(朝倉書店)のP52、1991年等に記載されている)。
インク定着層に用いるシリカ等の微細顔料(実質的に2次粒子が主体)の平均粒子径は、10〜1000nm程度である。二次粒子の平均粒子径が大きくなると、インク定着層の透明性が低下し、インク定着層中に定着された着色剤の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られない傾向にある。また、2次粒子の平均粒子径が極めて小さいシリカ微細粒子等を使用すると、インク吸収性が低下し、ニジミ等の発生のおそれがあり所望とする画像品位を得ることができないおそれもある。好ましい二次粒子の平均粒子径は、10〜800nmであり、さらに好ましくは10〜500nm以下であり、より好ましくは10〜300nm、特に好ましくは15〜150nm、最も好ましくは20〜100nmに調整される。
【0028】
シリカ等の微細粒子顔料の平均1次粒子径は、3〜40nm程度に調整するのが好ましく、より好ましくは5〜30nm、さらに好ましくは7〜20nmである。この1次粒子径の平均が3nm未満になると1次粒子間の空隙が著しく小さくなり、インキ中の溶剤や着色剤を吸収する能力が低下し、所望とする画像品位を得ることができないおそれがある。また、1次粒子径の平均が40nmを越えると、凝集した2次粒子が大きくなり、インク定着層の透明性が低下し、インク定着層中に定着された着色剤の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られないおそれがある。
【0029】
インク定着層中の全顔料中におけるシリカ等の微細粒子比率は、インク定着層の透明性を維持するために、50%以上が望ましい。全顔料中のシリカ微細粒子等の微細顔料比率が50%未満になると透明性の低下が懸念され、印字濃度等の画像品位が低下する場合もある。
【0030】
インク定着層に使用する接着剤としては、水溶性樹脂(例えばポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体)、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス等の水分散性樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤が単独あるいは併用して使用される。水性ポリウレタン樹脂は、ウレタンエマルジョン、ウレタンラテックス、ポリウレタンラテックス等とも通称されている。ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応から得られるものである。比較的多数のウレタン結合および尿素結合を含む高分子化合物である。
【0031】
インク定着層にカチオン性化合物を配合する場合、接着剤としてはカチオン性若しくはノニオン性のものが塗工用組成物の安定性が良いため好ましい。接着剤の配合量は顔料100質量部に対し1〜200質量部、より好ましくは5〜100質量部の範囲で調節される。ここで接着剤の量が少ないと、塗工層の強度が弱くなり上に形成される光沢発現層の表面が傷つきやすくなったり、粉落ちが発生する場合がある。逆に接着剤の量が多いと、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる場合がある。
【0032】
インクジェット用インクの着色剤は通常アニオン性であるため、インク定着層には、インク中の着色剤成分を定着させる目的で、カチオン性化合物を配合するのが好ましい。配合の方法は、前記シリカ等の微細粒子顔料に混合すれば良いが、特に微細顔料がシリカ微細粒子の場合、シリカ微細粒子は一般にアニオン性であり、混合の際にシリカ微細粒子の凝集が起こる場合がある。
【0033】
従って、非晶質シリカ(数ミクロンの二次粒子径を有する)を機械的手段により強い力を与えて微細粒子に粉砕する際、粉砕処理前の非晶質シリカにカチオン性化合物を一緒に混合分散してから機械的手段により分散・粉砕するか、あるいは微細化したシリカ2次粒子分散体にカチオン性化合物を混合し、一旦増粘・凝集させた後、再度機械分散・粉砕する方法等をとることにより、前記特定の粒子径に調整したカチオン性微細シリカを用いるとよい。このようにして処理したカチオン性微細シリカは、カチオン性化合物が一部結合した構造をとり、安定して分散したスラリーとなっているためか、更に別途カチオン性化合物を追加配合しても凝集し難いという特徴を有する。
【0034】
カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂や低分子カチオン性化合物(例えばカチオン性界面活性剤等)が例示できる。印字濃度向上の効果の点ではカチオン性樹脂が好ましく、水溶性樹脂あるいはエマルジョンとして使用できる。更にカチオン性樹脂を架橋等の手段により不溶化し粒子状の形態としたカチオン性有機顔料としても使用できる。このようなカチオン性有機顔料は、カチオン性樹脂を重合する際、多官能性モノマーを共重合し架橋樹脂とする、あるいは反応性の官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アセトアセチル基等)を有するカチオン性樹脂に必要に応じ架橋剤を添加し、熱、放射線等の手段により架橋樹脂としたものである。カチオン性化合物、特にカチオン性樹脂は接着剤としての役割を果たす場合もある。
【0035】
カチオン性樹脂は下記のものが例示できる。具体的には、1)ポリエチレンアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、2)第2級アミン基や第3級アミン基、第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、3)ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン、5員環アミジン類、4)ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、5)ジシアンジアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、6)エポクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、7)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO共重合物、8)ジアリルアミン−SO共重合物、9)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、10)ビニルベンジルトリアリルアンモニウム塩の単独重合体又は共重合体、11)アリルアミン塩の重合物、12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、13)アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物、14)ポリ塩化アルミニウム、ポリ酢酸アルミニウム、ポリ乳酸アルミニウムなどのアルミニウム塩等の一般市販されるものが挙げられる。
【0036】
カチオン性化合物は、さらに印字画像耐水性を向上させる効果も有する。インク定着層に配合できるカチオン性化合物は顔料100質量部に対し、1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部の範囲で使用することができる。配合量が少ないと印字濃度向上の効果が得られにくく、多いと逆に印字濃度が低下したり、画像のニジミやムラが発生するおそれもある。
【0037】
尚、カチオン性化合物は2層以上設けるインク定着層の少なくとも上層のインク定着層(表面に近い層)に配合すればその所望する効果は得られる場合が多いが、インク量が多い場合や上層のインク定着層の塗工量が少ない場合は下のインク定着層にも配合することもできる。カチオン性化合物は、印字濃度向上に特に効果があるものや、印字耐水性向上に特に効果があるもの等が存在し、それぞれを目的に応じて適宜使い分ける、或いは数種類のものを併用して使用することができる。
【0038】
インク定着層は、インク定着層用塗工液を紙支持体上、または必要に応じて紙支持体上に設けた溶媒吸収層上に、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知の塗工装置により塗工、乾燥される。インク定着層の塗工量(合計)は、乾燥固形分で1〜50g/m、好ましくは、1.5〜30g/mである。ここで、1g/m未満では、印字の際にじみが発生しやすくなり、50g/mを越えて多いと、印字濃度が不十分となりやすい。尚、溶媒吸収層を設けた場合、1〜10g/m程度で十分な効果が得られる場合がある。
【0039】
「溶媒吸収層について」
なお、本発明において、紙支持体とインク定着層の間に、インクの吸収容量、吸収速度を高める目的で、溶媒吸収層を設けることができ、また溶媒吸収層を形成することが好ましい。尚、インク定着層とは、主にインクジェットインク成分中の着色剤すなわち染料または着色顔料を定着させる層であり、溶媒吸収層は主にインクジェットインク成分中の溶媒を速やかに吸収する層である。ただし、その区別は必ずしも明確ではなく、インク量が少ない場合、着色剤はインク定着層のみに定着されることが考えられ、インク量が多くなると、着色剤の一部は溶媒吸収層に定着される。さらに、不透明度を上げる目的で、溶媒吸収層を設けることができる。
【0040】
溶媒吸収層は、顔料と接着剤を主成分として含有する。
溶媒吸収層の顔料としては、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)、合成非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗工紙製造分野で公知公用の各種顔料が1種もしくはそれ以上、併用することができる。これらの中でも、インク吸収性の高い無定形シリカ、アルミナ、ゼオライトを主成分として含有させるのが好ましい。
【0041】
これらの顔料(主成分として使用するもの)の平均粒子径(凝集顔料の場合は凝集粒径)は1〜20μm程度が好ましく、より好ましくは2〜15μm、さらに好ましくは3〜10μmである。1μm未満であるとインク吸収速度向上の効果に乏しくなり、20μmを超えて大きいと光沢発現層を設けた後での平滑性や光沢が不十分となるおそれがある。ただし、インク吸収性を調整したり、溶媒吸収層上に塗工する塗料の浸透を制御する目的で、副成分として粒子径の小さい顔料を配合することができる。この様な顔料としてはコロイダルシリカ、アルミナゾル、或いは後述するインク定着層に含有させるシリカ微細粒子等が挙げられる。
【0042】
溶媒吸収層の接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等、一般に塗工紙用として用いられている従来公知の接着剤が単独、あるいは併用して用いられる。
【0043】
溶媒吸収層の顔料と接着剤の配合割合は、その種類にもよるが、一般に顔料100質量部に対し接着剤1〜100質量部、好ましくは2〜70質量部の範囲で調節される。その他、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。溶媒吸収層中には蛍光染料、着色剤を添加することもできる。
【0044】
溶媒吸収層中には、インクジェット記録用インク中の着色剤(染料または着色顔料)成分を定着する目的で、カチオン性化合物を配合することもできる。カチオン性化合物としては、インク定着層に配合するカチオン性化合物として例示したものが適宜使用できる。しかし、インクの定着は、溶媒吸収層よりもインク定着層で定着する方が記録濃度が高く、鮮明な画像が得られるので、溶媒吸収層中のカチオン性化合物の量はインク定着層の50%以下、好ましくは20%以下とする。更に好ましくは、インク定着層中のみにカチオン性化合物を配合し、溶媒吸収層中にはカチオン性化合物が実質的に存在しないのが良い。実質的に存在しないとは、カチオン性界面活性剤等を助剤的に微量添加することは除外される。
【0045】
溶媒吸収層用塗工液は、一般に固形分濃度を5〜50質量%程度に調整し、紙支持体上に乾燥質量で2〜100g/m、好ましくは5〜50g/m程度、更に好ましくは5〜20g/m程度になるように塗工するとよい。塗工量が少ないと、インク吸収性改良効果が充分に得られなかったり、光沢発現層を設けた際に光沢が十分に出ないおそれがあり、多いと、印字濃度が低下したり、塗工層の強度が低下し粉落ちや傷が付き易くなる場合がある。
【0046】
溶媒吸収層は、上記溶媒吸収層用塗工液を、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知公用の塗工装置により塗工、乾燥される。さらに、必要に応じて溶媒吸収層の乾燥後にスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。
【0047】
「光沢発現層について」
インク定着層上に、顔料および接着剤を含有する塗工液を塗工し、該塗工液が湿潤状態或いは再湿潤状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げてなる。
【0048】
光沢発現層に用いる顔料としては、平均粒子径(凝集体顔料の場合は、凝集粒径平均値)が1μm以下のシリカ、アルミノシリケート、アルミナ、ゼオライトより選ばれる微細粒子顔料を使用する。好ましくはシリカ、アルミノシリケートであり、より好ましくはシリカである。粒子径は小さいほど透明性に優れるため、光沢を示し、且つインク定着層に形成したインクの濃度を低下することがないので好ましい。微細粒子顔料として更に好ましくはコロイダルシリカであり、特に好ましいのはアニオン性コロイダルシリカであり、真球状のものがとりわけ好ましい。
【0049】
光沢発現層は、光沢を発現するためにインク定着層上に形成する薄い厚み(インク定着層に比べて薄い)の層で、インク定着層の表面の微細な凹凸を無くすことにより乱反射を防ぎ、より高い光沢性を発現する層である。従って、微細粒子の使用が好ましく、シリカの一次粒子の分散体であるコロイダルシリカの使用が好ましい。特にアニオン性コロイダルシリカは、アニオン性であるため、インクの定着能を有さない光沢発現層が形成でき、好ましい。なお、カチオン性コロイダルシリカやカチオン性化合物を配合して、インク定着性を付与することもできるが、光沢性がやや低下する傾向にある。
【0050】
コロイダルシリカの平均粒子径は、0.01〜0.15μmであり、好ましくは0.015〜0.12μmであり、更に好ましくは0.02〜0.10μmである。平均粒子径が0.01μm未満の場合は、インクの吸収性が低下し、また、0.15μmを超える場合は、光沢性および記録画像の発色の鮮明性が低下する。
【0051】
本発明の光沢発現層に用いる接着剤は、例えば、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル系重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンックス、アクリル系共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤が単独あるいは併用して使用される。
【0052】
中でも、カゼインの使用は、光沢発現層を形成する際のキャストドラムからの離型性が優れるので好ましい。また、アクリル系共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョンは、記録画像の鮮明性と光沢感がすぐれるので好ましい。これらを併用することも可能である。
【0053】
光沢発現層の接着剤として、エマルジョンを用いる場合、好ましい質量平均分子量は、1000〜1000万であり、より好ましくは5000〜500万である。分子量が低い光沢発現層の強度が不十分となりやすく、分子量が高いとエマルジョンの安定性が不十分となりやすい。
また、エマルジョンの平均粒子径は、0.02〜0.15μm程度が好ましい。0.02μmに満たないとインク吸収性能が劣る傾向にある。0.15μmを超えると、光沢性や記録像の鮮明性が低下する傾向にある。
更に、エマルジョンのガラス転移温度は、50〜150℃が好ましい。ガラス転移温度が低い場合には、乾燥の際の光沢発現層の成膜が進み過ぎるために、表面の多孔性が低下し、インクの吸収速度が低下する傾向にある。ガラス転移温度が高い場合には、乾燥の際の成膜性が不十分となり、光沢性が不足する場合がある。
【0054】
光沢発現層の顔料と接着剤との組成比(固形分質量比)は、顔料100質量部に対して3〜150質量部が好ましく、7〜100質量部がより好ましく、10〜70質量部が更に好ましい。接着剤の比率が150質量部を超えると、記録画像の発色の鮮明性が低下する傾向にあり、3質量部未満では光沢性が低下する傾向にある。
【0055】
光沢発現層には、製造時に光沢発現層と鏡面ドラムの剥離をスムーズに行なうために、離型剤を配合することが好ましい。
離型剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモミウム等の高級脂肪酸アルカリ塩類、レシチン、シリコーンオイル、シリコーンワックス等のシリコーン化合物、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物が挙げられる。
【0056】
離型剤の配合量は、顔料100質量部に対し0.1〜50質量部、好ましくは0.3〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部の範囲で調節される。ここで配合量が少ないと、離型性改善の効果が得られにくく、多いと逆に光沢が低下したり、インクのハジキや記録濃度の低下が生じる場合がある。
【0057】
光沢発現層用を形成するための塗工組成物中には、白色度、粘度、流動性等を調節するために、一般の印刷用塗工紙やインクジェット用紙に使用されている顔料、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防腐剤及び分散剤、増粘剤等の各種助剤が適宜添加される。
【0058】
光沢発現層用塗工液をインク定着層上に塗工する場合、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知の塗工装置が使用できる。本発明において、光沢発現層はキャスト方式により形成された光沢発現層である。キャスト方式とは、塗工層を、平滑性を有する鏡面ドラム(キャストドラム)上で乾燥し、平滑面を塗工層上に写し取ることにより、平滑で光沢のある塗工層表面を得る方法である。
【0059】
鏡面ドラムを用いて光沢発現層を設ける方法としては、上記の光沢発現層用塗工液をインク定着層上に塗工して、該塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト法)、該塗工層を一旦乾燥後、再湿潤し、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト法)、該塗工層を流動性はないが変形可能なゲル状態に凝固させ、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥する方法(ゲル化キャスト法)等が例示できる。また加熱された鏡面ドラムに直接光沢発現層用塗工液を塗工した後、紙支持体側のインク定着層面に圧接、乾燥して積層仕上げる方法(プレキャスト法)も採用することができる。
【0060】
尚、鏡面ドラムの表面温度は40〜200℃程度が好ましく、70〜150℃がより好ましい。40℃未満であると乾燥に時間がかかり、成膜が不十分となりやすく、光沢が低下してしまう。200℃を超えて高いと、成膜が進みすぎ、表面の多孔性が低下し、インクの吸収速度が低下するばかりか、用紙表面が荒れたり光沢が低下する場合がある。
【0061】
光沢発現層用塗工液をインク定着層上に塗工して、インク定着層および光沢発現層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる場合、光沢発現層用塗工液のインク定着層への浸透を抑える目的で、光沢発現層用塗工液の不動化を促進する方法を採ることもできる。
この方法としては例えば、(1)インク定着層中に光沢発現層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を配合しておく、(2)インク定着層上に光沢発現層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を塗工・含浸させる、(3)光沢発現層用塗工液を塗工した後、光沢発現層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を表面に塗工・含浸させる、(4)光沢発現層用塗工液中に塗工液が乾燥する過程で不動化が促進されるようなゲル化剤を配合しておくことが挙げられる。
【0062】
この様なゲル化剤としては、光沢発現層用塗工液中の接着剤の架橋剤である、ほう酸、ぎ酸等およびそれらの塩、アルデヒド化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。上記の方式の内、ウェットキャスト法を採用する場合、インキ受容層上に光沢発現層用塗工液を塗工し、鏡面ドラム上に圧接し乾燥するまでの時間をなるべく短くした方が、塗工液の浸透が抑えられるため、光沢が発現しやすい。
さらに、インキ受容層面がドラムに圧接される直前に、圧接ロール(プレスロール)上のインキ受容層面と鏡面ドラム間に光沢発現層用塗工液を付与して直ちに圧接する方式(ニップキャスト方式と称する)が、塗工液の浸透が極力抑えられ、少ない塗工量で良好な光沢、印字品位が得られ易く、特に好ましい。
【0063】
光沢発現層の塗工量は、乾燥固形分で0.1〜20g/m程度、好ましくは0.2〜10g/m、より好ましくは0.5〜5g/mである。ここで、0.1g/m未満では、十分な光沢が得られ難く、20g/mを越えて多いと、印字の際にじみが発生しやすくなったり印字濃度が不十分となりやすい。キャスト仕上げにより設けた後で、さらにスーパーカレンダー等により平滑化処理を行うこともできる。
表層表面の75°光沢度(JIS P8142)は、印画紙の風合いを付与するためには、60%以上が好ましく、より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上である。
【実施例】
【0064】
以下に、発明の更に詳しい説明を実施例により行う。ここで、部および%は特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を示す。
【0065】
[溶媒吸収層用塗工液の作成]
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−30、(株)トクヤマ製、平均二次粒子径3.2μm)100部、シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R1130、クラレ(株)製)25部、蛍光染料(商品名:WhitexBPSH、住友化学(株)製)2部、カチオン性化合物(商品名:ユニセンスCP104)3部。
【0066】
「シリカゾルの調製」
市販気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均一次粒子径9nm、比表面積300m/g、(株)トクヤマ製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均二次粒子径80nmからなる10%分散液を調製した。
該分散液にカチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績(株)製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均二次粒子径300nmからなる8%分散液を調製しシリカゾルを得た。
【0067】
[インク定着層用塗工液の作成]
上記シリカゾル100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ(株)製)10部。
【0068】
[光沢発現層用塗工液の作成]
ガラス転移点100℃のアクリルエマルジョンとコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(商品名:アクアブリッド906、ダイセル化学工業(株)製、アクリルエマルジョンとコロイダルシリカは質量比で20:80、エマルジョンの粒子径は40nm)100部、カゼイン5部、増粘剤6部、離型剤(ステアリン酸)5部。
【0069】
[填料の調製]
(填料A):酸化チタン(商品名:R−21、堺化学工業(株)製)と炭酸カルシウムが1:5の比率になるように固形分濃度1%のスラリーを調製した。
【0070】
(填料B):酸化チタン(商品名:R−21、堺化学工業(株)製)と炭酸カルシウムが1:2の比率になるように固形分濃度1%のスラリーを調製した。
【0071】
(填料C):炭酸カルシウムのみの固形分濃度1%のスラリーを調製した。
【0072】
(填料D):酸化チタンのみの固形分濃度1%のスラリーを調製した。
【0073】
実施例1
「紙支持体の作製」
木材パルプ(LBKP:フリーネス=450mlCSF,Ze−E−P−Dの4段シーケンスで製造した塩素フリーパルプ)100部に、填料Aを7部、市販サイズ剤0.04部、硫酸バンド0.45部、澱粉1.00部、歩留向上剤少々よりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量175g/mの上質紙を得た後、ドライヤー、サイズプレス、100kg/cmの線圧でスーパーカレンダー処理を施し、紙支持体とした。上記サイズプレス工程にはカルボキシル変性ポリビニルアルコールとデンプン(商品名:エースA、王子コーンスターチ(株)製)を4:1で混合溶解させたもの6.5%、外添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(商品名:SPK−287、荒川化学工業(株)製)0.5%を含むサイズプレス液を使用した。
得られた紙支持体の灰分は5%、厚さは200μmであった。
【0074】
「インクジェット記録用紙の作製」
「溶媒吸収層の形成」
得られた紙支持体上に、溶媒吸収層用塗工液を、乾燥質量で10g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥した。
【0075】
「インク定着層および光沢発現層の形成」
次に、エアナイフコーター、乾燥装置を有するキャスト塗工装置を用い、先ず得られた溶媒吸収層上にインク定着層用塗工液を、乾燥質量で4g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工して、乾燥装置で乾燥した。続いて、光沢発現層用塗工液を鏡面ドラムとプレスロールの間のニップ部で、インク定着層面と鏡面ドラムの間に形成した液溜で塗布し、そのまま加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げ、インクジェット記録用紙を得た。このときの光沢発現層の塗工量は乾燥質量で、2g/mであった。
【0076】
実施例2
実施例1の紙支持体の作製において、填料Aの添加量を7部から13部に変更した以外は、実施例1と同様にして紙支持体およびインクジェット記録用紙を得た。なお、得られた紙支持体の灰分は9%、厚さは200μmであった。
【0077】
実施例3
実施例1の紙支持体の作製において、填料A7部の添加に代えて填料Bを8部添加した以外は、実施例1と同様にして紙支持体およびインクジェット記録用紙を得た。なお、得られた紙支持体の灰分は5%、厚さは200μmであった。
【0078】
実施例4
実施例1の紙支持体の作製において、填料A7部の添加に代えて填料Bを13部添加した以外は、実施例1と同様にして紙支持体およびインクジェット記録用紙を得た。なお、得られた紙支持体の灰分は8%、厚さは200μmであった。
【0079】
比較例1
実施例1の紙支持体の作製において、填料Aの添加量を7部から19部に変更した以外は、実施例1と同様にして紙支持体およびインクジェット記録用紙を得た。なお、得られた紙支持体の灰分は13%、厚さは200μmであった。
【0080】
比較例2
実施例1の紙支持体の作製において、填料A7部の添加に代えて填料Cを7部添加した以外は、実施例1と同様にして紙支持体およびインクジェット記録用紙を得た。なお、得られた紙支持体の灰分は5%、厚さは200μmであった。
【0081】
比較例3
実施例1の紙支持体の作製において、填料A7部の添加に代えて填料Cを20部添加した以外は、実施例1と同様にして紙支持体およびインクジェット記録用紙を得た。なお、得られた紙支持体の灰分は15%、厚さは200μmであった。
【0082】
比較例4
実施例1の紙支持体の作製において、填料A7部の添加に代えて填料Dを7部添加した以外は、実施例1と同様にして紙支持体インクジェット記録用紙を得た。なお、得られた紙支持体の灰分は4%、厚さは200μmであった。
【0083】
かくして得られた各インクジェット記録用紙について、以下の評価試験を行い、その結果を表1に記載した。
【0084】
[不透明度]
JIS P8149に基づき、不透明度を測定した。
[20°光沢度]
JIS Z8741に基づき、20°光沢度を測定した。
【0085】
[印字濃度]
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、PM−G800)を用い、他面側(インクジェット記録層を有さない面)に黒ベタ印字を行い、マクベス反射濃度計(マクベス社製、RD−914)で黒ベタ印字部の印字濃度を測定した。
【0086】
[印刷適性]
印刷機(三菱重工業(株)製、ダイヤ4E−4)を使用して印刷を行い、ブランケットの汚れ(紙粉)を目視で評価した。
○:汚れ(紙粉)が全く見られない。
△:よく見ると汚れ(紙粉)が見られる(印刷面への影響は少ない)。
×:汚れ(紙粉)が見られる(印刷面への影響は大きい)。
【0087】
[印刷インクの裏抜け(プリントスルー)]
印刷機(三菱重工業(株)製、ダイヤ4E−4)を使用して印刷を行い、光沢面側への印刷インクの裏抜け(プリントスルー)を目視で評価した。
○:印刷インクの裏抜け(プリントスルー)が全く見られない。
△:よく見ると印刷インクの裏抜け(プリントスルー)が見られる(光沢面への影響は少ない)。
×:印刷インクの裏抜け(プリントスルー)が見られる(光沢面への影響は大きい)。
【0088】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のインクジェット記録用紙は、不透明度が高く、印刷インクの裏抜け(プリントスルー)防止適性、印刷適性(ブランケット汚れ)に優れ、光沢度が高く、また、インクジェット記録層面及び他面にインクジェット記録した場合の印字濃度が優れた両面に記録可能な光沢インクジェット記録用紙であり、例えば、葉書、カードなどに有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙支持体上に少なくとも1層のインクジェット記録層を有し、該記録層表面が鏡面仕上げされた光沢インクジェット記録用紙において、紙支持体のJIS P8251に基づく灰分が1〜12%であり、填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムが併用してなり、且つ光沢インクジェット記録用紙のJIS P8149に基づく不透明度が98%以上であることを特徴とする光沢インクジェット記録用紙。
【請求項2】
紙支持体上に少なくとも1層のインクジェット記録層を有し、該記録層表面が鏡面仕上げされた光沢インクジェット記録用紙において、紙支持体の、JIS P8251に基づく灰分が1〜12%であり、填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムが併用してなり、且つJIS P8149に基づく不透明度が97%以上であることを特徴とする光沢インクジェット記録用紙。
【請求項3】
填料として酸化チタンおよび炭酸カルシウムの配合比率が1:1〜1:6である請求項1又は2記載の光沢インクジェット記録用紙。
【請求項4】
インクジェット記録層が、紙支持体上に形成される溶媒吸収層、溶媒吸収層上に形成されるインク定着層、及び鏡面仕上げが施される光沢発現層を少なくとも有し、且つ溶媒吸収層が、平均粒子径が1〜20μmの顔料および接着剤を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の光沢インクジェット記録用紙。
【請求項5】
インク定着層の顔料が、シリカ、アルミノシリケートおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種の平均1次粒子径が3〜40nm、且つ平均2次粒子径が10〜1000nmの2次粒子であることを特徴とする請求項4に記載の光沢インクジェット記録用紙。
【請求項6】
紙支持体中のパルプとして塩素フリーパルプを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の光沢インクジェット記録用紙。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載された光沢インクジェット記録用紙のインクジェット記録層面及び他面の両方にインクジェット記録を行ったインクジェット記録物。


【公開番号】特開2006−15510(P2006−15510A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193143(P2004−193143)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】